第137回社会保障審議会医療保険部会 議事録

日時

令和2年12月17日(木)12:58~14:55

場所

全国都市会館

議題

医療保険制度改革について

議事

議事内容
○荻原推進官 定刻より少し早いのですが、御出席の委員の皆様はおそろいになりましたので、ただいまより第137回「医療保険部会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙の折、御参加いただきまして、ありがとうございます。
なお、本日は、委員の皆様には、会場で会議に御参加いただくことを基本としつつ、オンラインでの参加も可能としてございます。
会場で会議に御参加の委員におかれましては、御発言の際は、挙手をしていただきまして、部会長からの指名の後、御発言をお願いいたします。オンラインで御参加の方は、「手を挙げる」ボタンをクリックし、部会長の指名を受けてから、マイクのミュートを解除し、御発言をお願いいたします。御発言終了後は、再度マイクをミュートにしていただくようお願いいたします。また、議題に対して御賛同いただく際には、カメラに向かってうなずいていただくことで、いわゆる「異議なし」の旨を確認させていただきます。
次に、本日の委員の出欠状況について申し上げます。本日は、原委員、一瀬委員、藤原委員より、御欠席の御連絡をいただいております。また、菊池委員、平井委員、前葉委員、兼子委員より、途中退席されるとの御連絡をいただいております。なお、池端委員より、大雪の関係で少々遅れられると伺ってございます。
本日、記者の方には別室にて会議の模様を傍聴いただいております。
なお、会議冒頭のカメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。
(カメラ退室)
○荻原推進官 以降の議事運営は、遠藤部会長にお願いいたします。
○遠藤部会長 皆様、本日もよろしくお願いいたします。
議事に入る前に、欠席委員の代わりに出席される方についてお諮りいたします。
原委員の代理としまして山崎参考人、一瀬委員の代理として坂口参考人、藤原委員の代理として酒向参考人の出席につきまして御了承いただければと思いますが、よろしゅうございますか。
(委員首肯)
○遠藤部会長 ありがとうございます。
議事に入らせていただきます。
本日は、「医療保険制度改革について」を議題といたします。
事務局から、資料の確認をお願いいたします。
○荻原推進官 本日は、資料1「国民健康保険制度について」、資料2「議論の整理(案)」、参考資料1「議論の整理(案)に関する参考資料」、参考資料2としまして12月15日に閣議決定された「全世代型社会保障改革の方針」、参考資料3としまして11月24日の「全世代型社会保障検討会議(第11回)議事録」を提示させていただいております。また、前回議論いただきました産科医療補償制度につきまして、日本医療機能評価機構の検討会で報告書が取りまとまりましたので、参考資料4として配付しております。また、兼子委員、佐野委員、林委員から提出資料がございますので、紹介させていただきます。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
まず、資料1「国民健康保険制度について」について、事務局から関連の資料の説明をお願いしたいと思います。
よろしくお願いします。
○森田課長 国民健康保険課長です。
資料1をお願いいたします。
1ページになります。国民健康保険制度につきましては、11月12日の医療保険部会で報告しております。平成30年度の制度改革におきまして、財政運営の都道府県単位化や、それに伴う都道府県と市町村の役割分担、財政支援の拡充等を進めてまいりました。現在、施行から3年目を迎えておりますけれども、関係者の御尽力によりましておおむね順調に実施されていると承知しております。この資料の下にありますように、引き続きの課題としまして、法定外繰入れ等の解消、保険料水準の統一に向けた議論、医療費適正化のさらなる推進といった課題について、引き続き関係者の皆様と議論しております。国民健康保険制度につきましては、国と地方の間での協議の場ということで事務レベルワーキンググループを置いて議論を進めてきておりまして、本年は3月からこういった議論を開始いたしました。新型コロナウイルス感染症の関係もありまして一時中断せざるを得ない面もありましたけれども、特に10月以降、昨日も含めまして計6回のワーキンググループでの議論を経て、引き続き調整中の部分もございますけれども、議論の結果としてまとめられたものを御報告するものでございます。
2ページを御覧ください。具体的には3点ございまして、都道府県の財政調整機能のさらなる強化を図るための財政安定化基金の使途の拡充、2つ目が、都道府県と市町村の役割分担の下で、都道府県国民健康保険運営方針に基づいて、先ほどございました法定外繰入れ等の解消、保険料水準の統一に向けた議論、医療適正化の取組等を推進すること、3点目としては、その他、国会での附帯決議、骨太方針・改革工程表、政府・与党内での議論等について調整を進めております。上の「趣旨」の2行目以降ですけれども、国と地方、その他の関係者の間の調整を続けまして、結論が得られた事項について法改正を含めて対応してはどうかとしております。「見直し内容」ですけれども、まず、1点目、財政安定化基金です。都道府県の財政調整機能のさらなる強化ということで、平成30年度改革で都道府県に財政安定化基金が設置されております。使途は法律で決まっておりまして、要件を満たす場合に貸付や交付や取り崩しが行えるということでございます。今般、地方団体からの要望も踏まえまして、国保特別会計において余剰金が発生した場合に、基金に積み立てて計画的に留保して、医療費が急騰した年度にその留保財源を活用して市町村から都道府県への納付金の急騰を防ぐことができるようにするなど、年度間の財政調整に活用できるような使途を追加してはどうかということでございます。2つ目の○ですけれども、都道府県と市町村の役割分担の下での取組強化につきましては、今年度、都道府県の国保運営方針につきましては、それぞれ改定・見直しの時期となっておりまして、法定外繰入れ等の解消や将来的な保険料統一の議論につきましても、都道府県と市町村の間で協議を進めて、その結果を今年度の改定作業で反映していただくということを進めていただいております。法定外繰入れ等の解消につきましては、赤字市町村にそれぞれ解消計画を策定して取組を進めていただいておりまして、2014年度には1,000を超える市町村で総額3500億円程度の決算補塡等目的の法定外繰入れがございましたけれども、2018年度には350程度の市町村で1200億円程度まで減少してきております。また、保険料水準の統一に向けた議論につきましても、本年度の運営方針の改定・見直し作業の中で、47全ての都道府県で記載を盛り込んでいただく予定と承知しております。医療費適正化につきましても、国保の運営費方針あるいは医療費適正化計画に基づいて取り組んでいただいておりまして、継続的な取組が必要な課題と考えております。こうした見直しは、議論を継続して、運営方針の見直しを継続していただく必要があるものと考えておりまして、必要な対応につきまして、法律上の位置づけを含め、引き続き調整を続けているところでございます。一番下ですけれども、国会での附帯決議の一つとして、子どもの均等割保険料軽減について検討するというものがございます。事務レベルワーキングの中では具体的な制度設計案も含めて検討しておりまして、費用負担等の調整が整えば実現に向けて検討を進めていきたいと考えております。国民健康保険制度の取組強化につきましては、前回の部会におきまして、全国市長会あるいは全国町村会から提出された御意見は非常に重く受け止めております。我々厚生労働省といたしましては、国と地方を中心とする継続的な協議の結果を尊重することが基本と考えております。御意見にありましたように、地方分権の趣旨に反しないこと、あるいは、国が一方的に議論等を押しつけないことといった点は十分に配慮しながら、結論が得られた事項につきましては対応を行う方向で調整させていただきたいと考えております。
私からの報告は、以上になります。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
ただいまの説明に関連しまして、御意見、御質問等を承りたいと思います。
平井委員、前葉委員の順番でお願いいたします。
○平井委員 ありがとうございます。
遠藤部会長に御了解いただければということでもあるのですけれども、雪の害が出ていまして、私は今から孤立集落の救援の現場に向かわなければならないものでありますので、今お話がございました国保に加えまして論点整理のところも併せて発言させていただくことをお許しいただきたいと思います。よろしいでしょうか。
○遠藤部会長 御苦労さまです。そのようにしていただいて結構でございます。
○平井委員 まず、この国保のことでございます。かねて全国知事会からも要請させていただいておりましたが、財政調整の基金の在り方として自由度を増す、実態に即したものであるという基本線につきましては、私どもとしても了とさせていただけるものでございます。ただ、前葉委員をはじめ市町村の方もいらっしゃいますが、今、市町村が実質上の保険者でございまして、都道府県がそれを風呂敷で束ねるような仕組みになっています。市町村も含めまして、十分な制度の趣旨の説明等が必要ではないかと思います。例えば、一元化とか、法定外繰入れとか、鳥取県もそうでありますが、現実に赤字の繰入れはどの市町村もやらなくなりました。いろいろと我々も適正化の努力をしているのですが、例えば、一元化ということになりますと、これは自治の根幹にも関わるところもございます。十分な議論は必要でありまして、今、説明の中にもありましたが、国でこういうふうにしなさいということではなく、自治の基本にも配慮していただいて、それぞれの自由度を認める、また、その議論を認めるという形での扱いを工夫した上で、今日のお話を書き込んでいただくのがよいのではないかと思います。ぜひそうしたことには御配慮いただければと思います。
論点の整理のほうでありますが、後期の医療の窓口負担につきまして、政治的に一つの決着が出たということだと思います。現役世代と高齢者世代の調和を図ろうというものでありまして、長く国民皆保険を存在させていく、社会の負担の公平という面でも、私は評価できる方向だと思います。ただ、これも、今は新型コロナで私どもも大変なのですけれども、そうした医療費の負担ゆえに受診控え等にならないような配慮とか、関係の様々な当事者や関係者の御理解を得るという意味で、施行は先のことになると思いますが、拙速にならないように、十分な合意形成を国民全体の中で図っていただくことが肝要だと思います。ぜひそうした丁寧に進めていくということを論点整理の中でも明確にしていただければありがたいと思います。
あと一点、ここに必ずしも書いてあることではないところでもあるのですけれども、財制審で問題提起があると伺っております。この後期を都道府県単位で市町村がみんなでやって、広域連合、一部事務組合といった形がありますけれども、こうした連合体による実務は定着してきておりますし、例えば、保健指導なども含めてそれぞれの工夫もできているところだと思います。他方で、今、私どもは国保会計で全体の風呂敷を束ねる都道府県の役割をお引き受けさせていただきました。これは長い議論がありまして、市長会、町村会ともよく調整し、政府とも調整をさせていただきながら、私ども都道府県の立場からすれば、かなり踏み込んだところに来たところでございます。今、市町村の皆様と一緒に汗をかきながら、医療費の適正化や将来のあるべき国民健康保険の姿に向けて都道府県で努力を始めているところであります。正直に申し上げまして、ここにもう一つ後期高齢者を持ち込むことになりますと、今せっかく一年一年で段階的に適正化を進めているところが全部壊れてしまうのではないかと思います。ですから、財制審でそういう都道府県単位の同じような仕組みを考えているようでありますけれども、そうしたことが、今、国保を都道府県単位にまとめ上げた保険のセットの問題などを定着させることが先決問題でありまして、まずはこういう2割負担などの個別の課題に向き合っていただくべき時期ではないかと思います。ここは、今後、政治マターも出てくるかもしれませんが、我々部会としても、市町村の御意見も聴いていただければと思いますが、この辺は拙速な議論は厳に慎むべきだということは論点の整理の中でもしっかりと入れていただいたほうがよろしいのではないかと思います。その点も付け加えさせていただければと思います。
よろしくお願い申し上げます。
○遠藤部会長 どうもありがとうございました。
先ほど来お手を挙げておられます前葉委員、お願いいたします。
○前葉委員 ありがとうございます。
平井委員に続いて、会場の皆様に先立って、オンラインからで大変恐縮でございます。失礼いたします。
前回私どもが全国町村会様とともに提出をさせていただいた意見書は参考資料として出させていただきましたが、今ほど、厚生労働省の森田国保課長様から、地方分権の趣旨に反しないように、また、国の議論を一方的に地方に押しつけることのないようにしっかりと協議しますというお話をいただきましたので、ぜひそのようにお願い申し上げたいと思います。
その上で、特に法定外繰入れの解消や保険料水準の統一について法律に本当に書くかどうかというところでございますが、前回、原委員から、これは一定程度前に進みつつある話なのでそれに上からかぶせるように法律で縛ってくるのは乱暴ではないかという御意見がございました。私どもも基本的にそのように考えておりまして、進んでいないということであれば法律で強制していこうということは分かりますが、進みつつある中で法律に明記するというのは、その表現ぶりによってはかえって市町村や都道府県の努力に水を差すことになりはしないかと懸念をしております。特にコロナで国民の不安が広がる中で国保が果たす役割はまさしくセーフティーネットとして国民皆保険を支えていく仕組みだろうと思っておりますので、被保険者、保険者ともに不安をあおるようなことにつながりかねない議論は慎重にしていただきたいと思うわけでございます。
保険料の統一については、それぞれの地域において実情に応じてしてきております。法定外繰入れの解消につきましても、財政状況に応じてかなり少なくなる方向で成果が出てきておるところでございます。こうしたことを踏まえて御議論いただくことにより、地方分権の趣旨に沿い、また、極論をすれば、私どもの財政自主権をしっかりと守っていただくということでお願いしたいと思います。
今回、この資料の2ページに「国と地方、その他の関係者の間の調整を続け、結論が得られた事項について、法改正を含め、対応」と明記していただきましたので、全国市長会といたしましては、厚生労働省様から丁寧な御説明をいただいた上で、私どもの考え方をしっかりと申し述べ、十分に協議をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。
○遠藤部会長 どうもありがとうございました。
フロアから、何か御意見はございますか。
横尾委員、どうぞ。
○横尾委員 ありがとうございます。自治体ばかりが続いての発言となり、すみません。
首長として国保もお預かりしている訳でございますが、お示しいただいた見直しの内容でいいますと、上の方に記述があります調整機能のさらなる強化については有効に働くだろうと思います。複数年度で年度間の調整が可能ということになりますと、財政的にもいろいろと柔軟な対応ができるのではないかと思いますので、これは評価できるものと思います。
また、下の方に大きく3つ掲げられていますが、前葉委員もおっしゃったのですが、①と②で特徴的なのは、それぞれの後段に「記載して進めてはどうか」という記述になっていることです。ここにあえて書くのも一つの方法とは思いますが、先ほど他の委員からもありましたように、現状としては、各基礎自治体である市町村が都道府県と連携をしながらこのことについては前向きの方向で暫時進めているところですし、実際に進みつつあります。こういった状況を見守りながら、育んでいくという意味も含め、穏やかな対応と言いますか、現状の対応でいいのではないかと感じているところです。
また、③の医療費適正化については、各自治体では細かい健康データに基づくマンツーマンに近いぐらいの健康改善指導の努力をしながら、あるいは、フレイルへの配慮を含めた対策に向けて、集落単位やグループ単位での改善とかも努力していますので、こういったことに専門的知見からよりよい情報を提供いただいて、皆で改善ができるようにすることが重要です。例えば、日本健康会議との情報共有の在り方とか、もっと高めていくということでもぜひ進めていただければと思っています。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
お待たせしました。佐野委員、どうぞ。
○佐野委員 ありがとうございます。
資料でいいますと7ページの法定外繰入れについては、先ほども説明がございましたけれども、2015年度においては3000億を超えていたものの、直近の2018年度は1258億円と半分以下にまで縮減をされております。また、改革初年度である平成30年度について見ますと、財政状況も黒字になったと伺っております。そういう面で、この国保制度改革の効果が出ていると認識しております。
そういった中で、国保に対しては、御承知のとおり、毎年3400億円の財政支援が行われていますが、この中には後期高齢者支援金の総報酬割の全面導入によって捻出された財源も活用されています。国保制度改革の効果も踏まえて、今後も同じ程度の公費投入が必要なのかどうかについて、改めて検討が必要なのではないかと考えております。
以上でございます。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
ほかに何かございますか。
石上委員、お願いいたします。
○石上委員 ありがとうございます。
今回示された取組強化の方向性については、地方自治に関わる点も含まれていると思っておりますので、ぜひ国と地方で丁寧な議論を積み重ねていただきたいと思います。
この保険料水準の統一に向けた議論のところなのですけれども、平成27年の国民健康保険法等改正の際に、「都道府県内の保険料負担の平準化を進めるに当たっては、医療サービスの水準に地域格差がある現状に鑑み、受けられる医療サービスに見合わない保険料負担とならないよう配慮すること」という附帯決議がついております。当然こういった配慮は必要だと思いますけれども、逆に言うと、統一に向けた議論を進めるということは医療サービスの水準の地域格差を縮小していく努力を併せてしていくということだと思うのです。保険あって医療なしでは困るわけで、保険料の議論だけではなく医療サービス全体を都道府県内でどうしていくのかという議論を併せてやっていただきたいと思います。統一を進めていく中で、平準化をするということは当然下がる自治体と上がる自治体があるわけで、上がっていく自治体について、低所得者への対策も併せて検討をお願いしたいと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
ほかに御意見はございますか。
坂口参考人、お願いいたします。
○坂口参考人 全国町村会の行政委員会委員長、徳島県那賀町長の坂口です。本日は、一瀬委員の代理で発言をさせていただきたいと思います。
初めに、資料1の2ページ、国民健康保険制度の取組強化の方向性について、こちらの「趣旨」に「平成30年度改革が概ね順調に実施されており」とあるように、現在、都道府県と市町村がそれぞれの役割を果たしながら国保の安定運営に向け努力を続けており、特段大きな問題は発生していないと考えております。ただし、今回、「法改正を含め、対応」と提示されましたように、法律に記載し進める案については、市長会同様、町村会としても、このような取組を上からの押しつけで強制することになるのではないかと危惧しているところです。
次に、同じページの「見直し内容」にある法定外繰入れ等の解消についても、国保の財政安定化のための重要課題であると認識しております。実際、各保険者は構造的に厳しい財政状況の中で赤字解消に向けた取組を地道に進めております。そのような中、このことをあえて法律上に位置づけることの必要性の有無については慎重に議論をしていただきたいと思っております。保険利用水準の統一に向けた議論については、市町村国保の財政状況は様々であり、各保険者が地域の実態に合わせた保険料を設定してきた経緯があることから、都道府県と市町村が丁寧に議論を重ね、双方の合意を得て進める必要があると思っております。運営方針に記載されることにより、議論が拙速に推し進められ、都道府県と市町村の連携体制にも悪影響を及ぼすことが懸念されます。
以上、市町村国保の現場から意見を申し上げましたが、今回提示された課題と取組の方向性については、十分に時間をかけて地方自治体が納得のいく形で協議を進めていただくようお願いいたします。
以上でございます。よろしくお願いいたします。
○遠藤部会長 どうもありがとうございました。
ほかにございますか。よろしゅうございますか。
ありがとうございました。国保の内容につきましても、本日の議論を踏まえまして、議論の整理案の中に整理していただくことになるわけですけれども、いろいろな御意見が出ました。特に地方自治体の委員の方々からは厳しい御意見も出たということでありますので、事務局におかれましては、引き続き調整をしながら整理を進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。そのような整理ができましたら、次回の医療保険部会でまた御提案いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
続いて、その議論の整理案を議題といたします。
事務局から、議論の整理案の説明をお願いいたします。
○荻原推進官 ありがとうございます。
最初に、全世代型社会保障検討会議の状況につきまして御説明したいと思います。全世代型社会保障検討会議におきましては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴いまして審議を一時中断してございましたが、その影響を踏まえまして最終報告を本年末に延期しまして、本年6月25日に第2回目の中間報告が行われてございます。その中では、医療のテーマに関しまして、昨年12月の中間報告で示された方向性や進め方に沿ってさらに検討を進め、本年末の最終報告において取りまとめるとされてございます。その後、再開しまして、11月24日に医療に関するテーマの議論がございました。今般、先ほど申し上げたとおり、12月14日に全世代型社会保障検討会議としまして改革の方針案が提示されまして、12月15日に閣議決定をされたところでございます。参考資料2としまして改革の方針についてお配りしてございますので、適宜御参照いただければと思います。
資料2「議論の整理(案)」に関しまして御説明させていただきたいと思います。
本日に関しては、前回、2日の医療保険部会におきまして御議論いただいた際に、委員の皆様から御意見を頂戴してございます。その御意見を踏まえまして、修正などを行いました。さらに、先ほど申し上げましたように、改革の方針が閣議決定されたことを踏まえまして、前回はまだ調整中とさせていただいておりました、後期高齢者の窓口負担割合の在り方、不妊治療の保険適用、大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大の議論について、事務局におきまして整理したものを提示させていただいてございます。
最初に、2ページでございます。まず、「0.はじめに」の部分でございますが、2ページ目の1つ目の○の上段部分です。先ほど申し上げましたように、閣議決定された改革の方針について触れてございます。また、前回に委員から御指摘いただきまして、中段のほうの全世代型社会保障改革の視点に関しまして記載ぶりを修正してございます。「少子化への対応に配慮し、その更なる強化を図る」としているほか、その2行下でございますが、「全ての世代の方々が安心と信頼で支え合う、持続可能な社会保障制度を構築」といった形で表現を修正してございます。
3ページ目でございます。前回調整中としてございました後期高齢者の窓口負担の在り方について、今回、記載を盛り込んでございます。3ページ目の上段につきましては、これまでの経緯に触れてございます。中段以降で、まず、1つ目の所得基準について記載してございます。11月の部会におきまして、事務局が所得基準としまして提示いたしました後期高齢者に占める割合として、上位20%、25%、30%、38%、44%、これらはいずれも現役並み所得者7%を含んだ数字でございますが、こちらの5つの機械的な選択肢を提示させていただいてございます。それらについて委員の皆様から御意見を頂戴してございます。そこを集約したものがこの5つのポツでございますが、高齢者の医療機関への受診抑制が起きないよう範囲を限定的とすべき、高齢者の生活状況を踏まえて慎重に考えるべき、介護保険制度の考え方に倣うべき、70~74歳との負担の連続性から考えるべき、現役世代の負担軽減効果を最大とするため範囲を一般区分の方全員とすべきといった御意見を頂戴してございます。
4ページになります。それらの意見を集約しまして、今回、一定以上所得者の窓口負担割合を2割とすることの趣旨について改めて記載をしてございます。4ページにおきましては、改革の方針としまして、所得基準につきましては、所得上位30%、現役並みの方を除きますと23%、単身世帯の場合は課税所得28万円以上かつ年収200万円以上、複数世帯の場合は後期高齢者の年収合計が320万円以上の方とする旨について記述してございます。本日、この方針につきまして委員の皆様から御意見を頂戴した上で、今、空白部分がございますが、その御意見をここに記載させていただきまして、次回の部会で改めてお示ししたいと考えてございます。
その次、4ページ目の下段から5ページ目の中段にかけまして、長期頻回受診者への配慮措置について記載をしてございます。75歳以上の高齢者は、ほぼ全員、半数程度の方は毎月、外来受診をされてございます。2割負担となる場合については、年平均で3.4万円程度の負担増となり、その多くが外来によるものであることと、窓口負担が2倍となる方は約6割に及びます。そのため、外来診療に対しまして、長期頻回受診による急激な負担増に対する経過的な配慮が必要となり、その具体的な配慮措置について議論した旨を記述してございます。改革の方針につきまして、3つ目の○でございますが、配慮措置としまして、施行後3年間、1か月分の負担増を最大でも3,000円に収まるよう措置を導入することがお示しされてございます。この議論に関する部会の方向性にも沿うものと考えてございますので、その旨を記載してございます。3つ目、施行期日についてでございます。5ページ目にございますが、改革の方針に基づきまして、施行に要する準備期間なども考慮しまして、令和4年度、2022年度後半、具体的には令和4年10月から令和5年3月までの各月の初日を想定してございますが、施行期日としてはこのタイミングとするほか、令和3年の通常国会に必要な法案の提出を図ることを記載してございまして、この方針に沿って進めるべきとしてございます。
5ページ目の下から6ページ目にかけまして、この段のまとめとしまして、これまでの議論におきまして委員の皆様から御意見を頂戴してございますが、これを基に当部会における総括として記述してございます。今回の改革の趣旨について、現役世代もいずれは高齢者となり将来の負担を受け入れるものであること、また、現役世代も高齢者医療制度により安心した生活を営むことが可能となることを考えると、現在のみの時間軸や世代間の問題として考えるのではなく、全ての人のための人生100年の医療、そのための後期高齢者医療制度であり、持続可能性を高め、全ての人を支えるための改革であるとまとめてございます。6ページの傷病手当金の見直しについてでございます。こちらは、前回の委員からの御指摘を踏まえまして修正した箇所について御説明いたします。
7ページ目の3つ目の○でございます。「これらの意見を踏まえ、以下の措置を講じるべきである」の2ポツ目でございます。通算化により延長され得る支給期限については共済組合と同様に限度を定めず保険者ごとに定められた文書の保存期間により確認できる範囲内で対応することの旨を追記してございます。
また、7ページから8ページにかけまして、マルニとして資格喪失後の継続給付について記載をしてございますが、結論としまして「引き続き検討」と修正してございます。同じく、8ページでございますが、不妊治療の保険適用についても前回は調整中としてございました。8ページでは、当部会において体外受精や顕微授精等を含めた不妊治療を保険適用することに関しまして議論をいただいた際に、保険適用の方向性について積極的に評価する意見が多く見られたことから、その旨を記載してございます。また、それとともに、具体的な適用の範囲などについては、エビデンスも踏まえ、有効性、安全性を明らかにした上での検討が必要であること、不妊治療の標準化、アクセスの公平性の確保、混合診療との関係性の整理、助成制度と保険適用の接続など、様々な御意見があったことを触れてございます。
保険適用そのものに関しましては、9ページ目を御覧いただきたいと思いますが、改革の方針におきまして、令和4年度、2022年度当初から実施すること、工程表に基づき検討を進めていくこととしてございます。その上で、当部会としましてもこれまでの議論の経過を踏まえまして同様の方向性であることを記述してございます。同じく、9ページの任意継続被保険者制度の見直しでございます。前回の委員からの御指摘を踏まえて修正した箇所について御説明したいと思います。
ページを少し飛んでいただきまして、11ページ目にございます。中段に「なお」とございますが、こちらについて1つポツを加えてございます。マルニ、被保険者期間を最大1年とすることについては1年経過後の国保加入時に保険料が高くなるケースが一定数発生することとしてございますが、被保険者の選択の幅を制限する要因として、こちらについて追記をしてございます。その上で、結論としまして、マルニとマルサンに関して「引き続き検討すべき」ということで修正してございます。
育児休業中の保険料免除につきまして、具体的に、12ページ目になります。2つ目の○の3ポツ目になりますが、前回、こちらについてはなお書きという形で記載してございました。その際の委員の御意見を踏まえまして、フォローや検証を行うことや適切な運用に向けた必要な対応を行うことといった旨については以下の措置を講じるべきということで、まさに現行制度及び新たな仕組みに関して講じていくべき措置の一つとして明記してございます。なお書きの中で、育休の取得期間に関する御意見に関しまして、1週間程度が妥当であるといった旨の御意見があったことを追記してございます。12ページ目以降、前回、出産育児一時金を御議論いただきましたが、その議論の経緯を踏まえまして、こちらを追記してございます。
13ページ目から記載がありますが、上段のほうでは本制度における諸課題について触れてございます。具体的には、出産費用が年々増加している要因が明確ではない、費用構造の詳細が把握できていない、事前に出産費用が必ずしも明示されておらず選択が難しい、異常分娩の費用分析や費用のばらつきの大きさの要因分析が十分でない、また、人工妊娠中絶についての御指摘があったことを記載してございます。また、このページの2つ目の○でございますが、産科医療補償制度の補償対象基準について、先ほど資料にも触れましたが、日本医療機能評価機構における検討会の報告書が12月4日に取りまとめられまして、その内容について御紹介してございます。
これらを踏まえまして、部会としての取りまとめ案について記載してございます。13ページ目から14ページ目にかけて、当部会においては、費用の詳細の把握、医療機関における選択肢の明示の促進、産科医療補償制度見直しに伴う掛金の引下げ分を含めた出産育児一時金の金額について議論を行ってございまして、その際に、掛金の引下げ分について一時金支給額も引き下げるべきである、出産費用は年々増加傾向にありその水準まで引き上げていくべきである、支給額を引き下げることは少子化対策に逆行するメッセージになるといった御意見をいただいてございます。これらの意見を踏まえまして、当部会における整理としまして、出産に係る経済的負担を軽減していくため費用実態を踏まえた支給額の検討やサービス選択肢の確保を段階的に進めるべきとしてございます。具体的には、出産育児一時金として必要な額については請求様式の見直しや費用増加要因の調査などを通じ費用の詳細を把握・分析した上で検討すること、費用やサービスに応じて医療機関の選択が可能となるよう医療機関における選択肢の明示を促すことを検討することとしてございます。また、産科医療補償制度の見直しによる掛金の引下げ分4,000円につきましては、少子化対策としての重要性に鑑み、支給総額は維持し、本人の給付分を4,000円引き上げ、40.8万円とすべきとしてございます。
15ページ目にございます。薬剤自己負担の引上げについて、前回の委員からの御指摘を踏まえまして、修正してございます。
1ページをさらに進んでいただきまして16ページ目になりますが、こちらについて、なお書きという形でございますが、市販品類似の医薬品の保険給付の在り方等の薬剤自己負担の見直しやほかの薬剤給付の適正化策について、「引き続き検討すべき」と記載してございます。
19ページ目、「2.医療機関の機能分化・連携等」でございます。前回調整中となってございました大病院への患者集中を防ぎかかりつけ医機能の強化を図るための定額負担の拡大でございます。こちらについては、もともと昨年の全世代型社会保障検討会議の中間報告におきまして示されてございますが、1つ目が、大病院・中小病院・診療所の外来機能の明確化を行いつつ、それを踏まえ対象病院を病床数200床以上の一般病院に拡大すること、2つ目としまして、患者の負担額を増額し、増額分について公的医療保険の負担を軽減すること、3つ目としまして、定額負担を徴収しない場合の要件の見直しといった方針について議論を行ってございました。
19ページから20ページにかけて、こちらについていただいた御意見に触れてございます。特に、マルイチ、病院の拡大につきましては、機能分化・連携の観点から範囲を拡大すべき、一方で、地域によって一般病院が果たしている役割は異なるため、手上げ方式にするなど地域の実情に応じた対応すべきといった御意見がありました。また、2点目の患者の負担額の増額に関しましては、増額分については、公的医療保険の負担を軽減する仕組みは、患者による医療機関の適切な選択を促していくべき、窓口の混乱が生じないようにしっかりと説明すべきとの御意見があった上で、増額に関して公的医療保険の負担軽減の仕組みについては例外的・限定的な取扱いであることをしっかりと明示すべきであるといった御意見があったことに触れてございます。
21ページでございますが、これらの議論の中での御意見や改革の方針を踏まえまして、日常に行う診療はかかりつけ医機能を担う身近な医療機関で受け、必要に応じて紹介を受けて、患者自身の状態に合ったほかの医療機関を受診し、さらに逆紹介によって身近な医療機関に戻るという流れをより円滑にすべきであるということから、紹介患者への外来を基本とする医療機関のうち一般病床200床以上の病院にも対象医療機関を拡大をすること、これらの医療機関を紹介状なしで受診する患者の初・再診について、一定額、例えば、医科の初診の場合、2,000円程度でございますが、保険給付範囲から控除し、それと同じ額を定額負担として増額すること、また、この仕組みは、医療保険財政のためではなく、外来機能の分化・連携のために行うものであることから、例外的・限定的な取扱いとするとともに、国民に対し制度趣旨を丁寧に説明すること、3つ目のポツでございますが、大病院からかかりつけ医機能を担う医療機関への逆紹介を推進するとともに、再診を続ける患者への定額負担を中心に除外要件の見直しなどを行うこと、こうした方針に基づき、中医協において具体的に検討すべきであるということを記載してございます。
22ページの上にございます国民健康保険制度の取組強化につきましては、本日の議論を踏まえまして、次回に向けて議論の整理案について御確認いただければと思ってございます。22ページ目の「3.生涯現役で活躍できる社会づくりの推進(予防・健康づくりの強化)」の部分でございますが、40歳未満の事業主健診情報の保険者への集約等につきまして、前回の委員からの御指摘を踏まえて修正した箇所について御説明いたします。22ページ目の2つ目の○の3行目にございます「労働者の健診情報という個人情報を第三者である保険者に提供することについての懸念や事務負担を理由として」という中小企業からの提供実績が低い理由について追記してございます。
23ページの意見の記述におきまして、4つ目のポツでございますが、健診情報という機微な個人情報を保険者に集約する趣旨や目的の説明が必要といった御意見があったことを明記してございます。このほか、同じく、23ページの一番下のポツでございますが、40歳未満の事業主健診等の結果も含め、保険者に集約された健診情報を活用し、事業主と保険者が連携し、加入者に対して予防・健康づくりに取り組む重要性を説明することを講じるべき措置として追記してございます。
最後に、24ページ目でございますが、「4.終わりに」としまして、今般の整理の総括を付記してございます。新型コロナウイルス感染症に対し総力を挙げた取組が必要であることを前提としつつ、人口減少、少子高齢化は既に進行しており、今般の整理はいわゆる団塊の世代の方々が75歳以上となり始める2022年度を見据え、全ての世代の方々の安心を広く支え合い、公的医療保険制度を次世代に引き継いでいくために不可欠なものをまとめたものであり、厚生労働省においてこの意見を踏まえて確実に改革を行えるよう取組を進めていくべきこと、また、2022年度の先、団塊ジュニア世代が高齢期を迎え、支え手の中心となる生産年齢人口の減少が加速する2040年を見据え、今後の医療保険制度の在り方についてさらなる検討を進めていくべき旨を記載してございます。
議論の整理案の主な更新については、以上となります。このほか、文言の適正化などは、別途、適宜行ってございます。
なお、参考資料1のうち後期高齢者の窓口負担の在り方部分について、高齢者医療課長から御説明いたします。
○本後課長 高齢者医療課長でございます。
参考資料1「議論の整理(案)に関する参考資料」で2割負担の部分関係の資料を修正したところがありますので、紹介のみさせていただきたいと思います。
まず、4ページ目、これは全世代型社会保障検討会議の検討踏まえて閣議決定した内容を改めて整理したものでございます。
5ページ目、財政影響もそれに伴いまして修正をしております。
7ページ目、支援金の伸びと改正効果についても修正しております。なお、740億円、840億円は、いずれも満年度の数字でございます。実際の施行日は22年度後半になりますので、実際の財政影響につきましては、2022年度においてはこれよりも小さく、2025年度におきましては実際の財政影響はこれよりも大きくなるということでございます。
10ページ目、配慮措置の考え方は、月3,000円まで3年間とした場合の数字に置き直したものでございます。部会の議論の中で実際に医療機関ではどういう形になるのかという御指摘がございましたので、右下の箱の米印の2つ目を追加しております。
少し飛んでいただきまして、18ページ目、実際の所得基準への判定の仕方について、報道機関あるいは実際に我々の課に直接お電話をいただいたりするなどして御照会がありましたので、改めて資料をおつくりいたしております。
19ページ目、2022年度、満年度でございますが、保険者別の財政影響の資料を改めてお出ししております。
20ページ目、これも満年度ですけれども、2025年度の財政影響、保険者別の数字をお出ししております。
飛んでいただきまして、35ページ、2割負担となった場合の負担増加額の分布について、配慮措置の内容が原案と変わりましたことに伴いまして、改めて修正いたしております。
説明は、以上でございます。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
ただいま、事務局から前回の内容に加筆修正をしたようなところを中心に御説明いただきましたけれども、御質問、御意見等をいただければと思います。
中座の予定のある方を優先させていただきたいと思います。まず、菊池部会長代理、お願いいたします。
○菊池部会長代理 ありがとうございます。
同時並行で別の部会が行われておりまして、途中退席いたしますことをお許しください。申し訳ありません。
私からは、3点、述べさせていただきます。
1つ目は、後期高齢者の窓口負担の在り方について、所得基準について、報道によれば上位20%と38%の間を取って30%のところで決着が図られたということかもしれませんが、実態がそうであるとしても、今後、法律改正を図るのであれば、その基礎となる立法事実の確認や改正の趣旨の理屈づけの作業が必要かと思います。今回の基準は、後期高齢者の所得で負担能力をはかることに合理性があることからおのずと見いだされる基準であるという理解が可能かと思います。一つには、これは以前も述べたことですが、従来の窓口負担における現役並み所得者の判定はあくまで世帯内の後期高齢者のみに着目してなされていること。つまり、後期高齢者以外の世帯員は見てこなかったということ。もう一つは、家族形態が多様化し、世帯も多様化している中で、様々なタイプの世帯にとっての公平性という観点からは、結局のところ、個人、せいぜい後期高齢者に着目せざるを得ないのではないかという点です。以前に示された75歳以上の単身世帯の年収別モデルからすると、上位38%と44%の選択肢を取った場合、今回の窓口負担の引上げによって年収をモデル支出が超えてしまうおそれがある点を考えれば、おのずと上位30%はぎりぎりの線になるのではないかと思います。配慮措置につきましても、従前に申しましたように、最近、年金や生活保護の給付の切下げが行われております。その際の経過措置としては3年が一般的です。その趣旨は、受給権者の期待的利益の配慮という観点でありまして、その意味でも、今回、2年から3年に延長されたことは評価できると考えます。
2つ目に、不妊治療の保険適用ですが、この論点は10月15日の全世代型社会保障検討会議におきまして、少子化対策に関する論点として、待機児童の解消、男性の育児休業の取得促進とともに掲げられたものであります。しかし、この少子化対策という枠組みの発想と子どもを持つこととは完全には重なるものではありません。不妊治療に取り組みたいという気持ちに寄り添うためには非常にセンシティブな配慮が必要であることは当然ですけれども、少子化対策という枠組みからは、例えば、特別養子制度の普及といった児童福祉に関わる視点が抜け落ちてしまいます。これは本部会の所掌というよりは子ども家庭局の所掌かもしれませんが、不妊治療に限らず総合的な観点からの親と子どものための施策を展開していただきたいと要望しておきます。
最後に、大病院の定額負担の拡大について、私はこの点について今まで発言してきませんでしたけれども、初診料、再診料という療養の給付の主要部分を保険給付範囲から控除するというのは、3割負担、7割給付という医療保険制度の根幹に関わる可能性があります。混合診療禁止原則の例外である保険外併用療養費の選定療養は比較的政策目的の実現のために活用されているようですが、今後、便宜的に同様の措置が乱発されると、医療保険制度の根幹である3割負担が揺らぎかねない懸念は拭い切れません。その意味で、今回、例外的・限定的という位置づけが明確になされたのは評価したいと考えます。その際、今後の立法指針となり得ると思われるのは、今回の改正がフリーアクセスを原則としてきた日本の医療保障において、外来機能の分化、すなわち、かかりつけ医機能の推進という大きな政策目標の一環として捉えられる点であります。今般の政策課題となっているオンライン診療の推進に当たっても、また、医療に限らず地域包括ケアシステムの推進あるいは地域共生社会の構築といった近時の大きな社会保障政策全体の進むべき方向性に資する政策手段として位置づけられるという点で、正当化され得るように思います。逆に言えば、そうした正当化がなされ得ないのであればこの例外的・限定的という範疇には入らないわけで、その意味で、今回設ける歯止めは言わば立法裁量の自己抑制あるいは自己拘束を図る重い意思表明であると理解したいと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
前葉委員、お待たせしました。どうぞ。
○前葉委員 ありがとうございます。
私からは、4ページ、75歳以上の2割の問題です。これは政治の決断であろうかと思いますので、この200万という線を引く以上は、今後、国会での法律審議に向けて政治と行政の説明責任をぜひ果たしていただくようお願いしたいと思います。法が施行される段階になると、私ども首長も市民に対する説明が大いに出てまいります。我々としては、負担増になる75歳以上の世代の方に御理解いただくとともに、これはずっと申し上げていますが、現役世代からのお支えでこの制度が成り立っていることをいま一度しっかりとお伝えしていかなければいけないと思っておりまして、あくまでも対立ではなくて世代間が相互に理解することが今回の改正においても大変大切であり、その相互理解が次につながっていくものと思っております。
もう一点だけ発言させていただきますと、11ページ、任意継続被保険者制度について、国保側でお受け取りする場合に、国保加入時の保険料の問題を書いていただいています。マルサンの加入要件1年以上の話も書いていただいています。これは、ともに現状を変更しようとする制度改正についてこういう問題があるという論点を書いていただいていますので、前回のように、結局は被保険者の選択の幅を制限することが問題であるのですべきでないということだったと思いますが、「引き続き検討」という御意見も出たことは十分に理解いたしますので、私どもとしては、行うべきではないことを基本として今後も検討しましょうという意味だと、ここは理解しておきたいと思います。
以上でございます。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
酒向参考人、先ほど来お手を挙げておられますので、お願いします。
○酒向参考人 ありがとうございます。
この議論の整理につきまして、前回、経団連から指摘させていただいた点につきまして記載いただいております。このことに、まず、感謝させていただきます。
そのほかのところでございますが、まず、後期高齢者の窓口負担の在り方についてでございます。今回の政府の「全世代型社会保障の方針」につきましては、全ての世代が公平に支え合う真の意味での全世代型の社会保障の構築を目指す上で重要な前進であると考えております。ぜひその着実な施行をお願いしたいと思っておるところでございます。ただ、医療制度の持続可能性の確保といった点につきましてはまだ諸課題があるということで、24ページの「4.終わりに」の2つ目の○にも諸課題への対応が必要であるといったことも書かれておるところでございます。一つの例として、医療費適正化計画をより実効性のあるものにしていくといったところが重要であると思っております。議論の整理の中で盛り込んでいただければ幸いでございます。
次に、14ページの部分、出産育児一時金の関係でございます。前回、産科医療補償制度の掛金を引き下げる場合、その部分につきましては減額していくべきではないかといった意見を述べさせていただいております。結論としては、そうではないという形になっています。今後、掛金が下がった場合は必ず一時金の増額に充てることを前提にするということではなく、今後は、きちんと調査をされて、その調査に基づいて一時金の在り方を考えていくという形で整理されていると私どもは理解しております。そのような理解でよろしいかどうか、ぜひ確認させていただければと思います。
最後に、先ほど言いそびれてしまったのですが、国民健康保険の改革につきましては、多くの財源を投下して、また、長い議論を経て、国保の安定化をどのように制度化するかということで、皆様の御努力でここまで来ていると理解しておるところでございます。法律に改革の方向性を書くかどうかといった議論もあったところでございます。被用者保険のほうの人間ではございますが、もちろん合意を得てということでございますが、国保財政の安定化を図るという方向性が関係者に分かりやすく示されるような形に、安定化の方向に良い制度になっていくことを期待しておりますということを述べさせていただきたいと思います。
以上でございます。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
確認したいという事項がありましたので、事務局、お願いいたします。
○姫野課長 保険課長でございます。
出産育児一時金の部分でございますけれども、産科医療補償の掛金4,000円が引き下げられた部分は、今回については総額を維持して本人給付分を引き上げるべきと記載させていただいておりますけれども、これが前例となって今後はそういうルール化をするという趣旨ではないということは確認させていただきたいと思います。
○遠藤部会長 酒向参考人、よろしいですか。
また中座の御予定ということで、先ほど来お手を挙げておられますので、兼子委員、お願いいたします。
○兼子委員 ありがとうございます。
高齢者の一部負担金の問題ですけれども、これまでの繰り返しになりますが、窓口負担の強化は基本的にはやるべきではないという考え方であります。この一部負担金の推移も、前にも触れましたが、125回のこの部会で出された資料を見ましても、例えば、健康保険でいえば、窓口負担がない時代から、1割、2割、3割と、時代によっていろいろ変わってきているわけです。一つ忘れないでいただきたいのは、負担は現役世代が中心だということがよく言われますけれども、今の高齢者は、現役世代のときに、今申し上げました窓口負担が非常に低い時代あるいは高齢者の医療費が無料の時代を現役世代として支えてきた世代なわけですね。そのことはぜひ忘れないでいただきたいと思うわけです。自分たちが現役世代のときには、かなり大きな支えの役割を果たしてきた。それが、自分たちが高齢期に入って、様々な時代の変化ということはあるわけですけれども、このような形で負担が強化されることについては、多くの高齢者が複雑な思いで受け止めているということだろうと思います。
負担の問題ですけれども、ここの使われ方も国民の公平な負担という言葉が使われました。あるいは、この一部負担の応能負担という言葉も使われました。公平という言い方は非常に曖昧だと思いますし、私はこれまでに指摘させてもらったけれども、窓口での負担は、応能負担ではなくて、それを利用する人に対しての負担の強化、応益負担の強化であろうと思っております。そういう意味では、保険料の応能負担が私は基本だと思いますし、また、公的医療保険、要するに、公的で国民は強制加入です。この制度は、公平な負担という曖昧なものではなくて、基本的には能力に応じて負担してきているわけです。収入が人間らしい最小限度の生活費に満たない場合は、税制では免除制度があります。これは応能負担であり、言葉の使い方としては「公平」ではありませんが、「公正」な負担のあり方であるわけです。医療保険制度でも税制ほど明確ではありませんが、収入により免除・軽減制度があるわけであって、どのような所得であっても公平に負担することはこれまでにもなかったわけですし、これからもあってはならないものだろうと思っております。
私は、今日は資料を出させていただきました。この野村総研の資料は、推計ですので、あくまでも参考として受け止めていただきたいと思うのですが、私がここで触れたかったのは、今、日本の社会は格差が進んでいる。1989年に消費税が導入されましたけれども、これによって税の逆進性が生じ、それまでは税を負担しなくてもいい所得層と世代がありましたが、所得に関わりなく、あるいは稼働収入のない子供であっても、小遣いで何かを買えば、今は10%の消費税が課税される。こういう時代になっているわけです。
そのことによってどのように富が分かれてきているのか、この野村総研の資料を見ますと、ページ数は振ってありませんが、3ページのところを御覧いただきますと、下のほう、■の次のところです。これはあくまでも負債を除いた純金融資産の状況ですけれども、僅か0.16%にすぎない超富裕層が全金融資産の5.46%を占めている。富裕層を含めても2.36%の富裕層と超富裕層が全金融資産の19.43%を占めている。これは上のほうに表がありますけれども、富裕層と超富裕層は年々純金融資産の金額が増えている、あるいは、世帯数も増えており、富が偏ってきていることを示していると思っております。私たちの一般的な世帯は、ここで「マス層」と書かれていますけれども、このマス層については、純金融資産額が3000万未満、年間所得では500万円未満とされています。全体の8割ぐらいを占めておりますけれども、この中に所得が極めて少ない層から非常に多様な人たちが含まれております。
この「マス層」の上位の階層の純金融資産額の伸びは全体の伸び以上に伸ばしていますが、この「マス層」だけが全体の48%に対して34%にしかなっていません。こういう形で富裕層と超富裕層は純金融資産額も世帯数も大きく増えてきている、このように富・所得の格差がかなり広がってきているという中では、改めて国民がどのようにして公的な医療保険制度を支えていくのか、富・所得の実態をもう一度見直して、応能負担がきちんと貫かれているのかどうか、検討する必要があると思います。
今回の一部負担の問題については閣議で案が通ることになるわけですけれども、来年度以降、またこの保険制度の在り方について議論されますけれども、私はできれば新しい土俵をつくっていく必要があるのではないかと。基本的に、医療の財源がどうなのか、どうしていくべきなのか、こういう大きな角度から取り上げていかなければならないのではないか。そういう意味では、先ほども出しましたけれども、医療保険制度の患者の一部負担の推移が、軽減の方向であったり、負担が強化される方向であったり、時代によって大きく変わっておりますので、そういった時々のことで大きく左右されないような医療保険の在り方について検討する場として、この医療保険部会に役割を果たしていただきたいと思っております。
もう一点ですが、今日の議論の整理の15ページに医薬品の保険給付のあり方が出ておりますけれども、今回のコロナウイルスのことでも気がつくことですけれども、初期症状は風邪と似たような症状です。私たち一般市民が素人判断で風邪薬を飲んでしばらく状況を見るということは大きな問題があろうかと思います。特にこの感染症ではよく指摘されていることですけれども、初期症状が現れる直前は非常に感染力が高いと言われているわけですので、そういう初期症状が現れる前の段階で、あるいは、現れ始めたところでも、素人判断で売薬で対応することは非常に問題があろうと思います。私は、一般の売薬はあくまでも緊急的・一時的に使用して、その後、必ず医師の検診を受けて病気についての正確な診療がされ投薬されることが大事だと思います。市販薬の有無で医薬品の保険給付の取り扱いが左右されないよう慎重な対応をお願いしたいと思います。
私も小さな組織で活動しておりますが、この後、役員会があり、2時半には中座させていただきますので、お許しいただきたいと思います。
どうもありがとうございました。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
会議室でお手をどなたか。
佐野委員、お願いいたします。
○佐野委員 ありがとうございます。
まず、前回に申し上げた内容については資料に反映いただいております。感謝を申し上げたいと思います。
後期高齢者の窓口負担割合の在り方については、本日の委員提出資料において健保連の会長コメントを提出しております。
健保連としては、今回、全世代で社会保障を支える中で、現役世代の負担増軽減の必要性が示されたことは評価いたしますけれども、2割負担の対象範囲が所得基準200万円以上となって対象者数が370万人にとどまったことについては十分とは言えず、これからも現役世代のさらなる負担増軽減及び国民皆保険制度の持続可能性の観点から、国としては、今回の改革で終わらせることなく、次なる改革に向けて引き続き取り組んでいただくよう強く要望したいと考えております。
以下、この議論の整理の追加で変更をお願いしたい点を中心にコメントをさせていただきます。
まず、4ページの本日の部会における意見の部分は当然これから書かれると思うのですけれども、ここにおいては、2割負担の対象範囲はさらに拡大すべきであり、また、負担能力の評価の在り方についても、課税所得を基準とすることの妥当性も含めて、検討すべきと考えておりますので、その点を御追記いただければと思います。
さらに、施行期日は令和4年度の後半となっておりますけれども、10月に実施したとしても財政効果が半分になってしまうということもございますので、できるだけ早く実施すべきだということで、その点も追記いただければと思います。
資料の5ページの下のほう、窓口負担のまとめの部分について、高齢者の立場だけではなくて現役世代の立場に立った意見も追加いただきたいと思っています。例えば、この5ページから続く6ページの1つ目の○の上の部分に○を追加いただいて、一方で、今後も少子高齢化がさらに進み、人口構造のさらなる変化が見込まれる中で、我が国において将来を担う世代が希望を持てるような医療保険制度の構築を目指すべきだという意見もあったということの追加をお願いできればと思います。人口構造の変化は大変大きな要因だと思いますので、その部分を入れていただければと思います。
出産育児一時金については、先ほど経団連の酒向さんからもコメントがございましたけれども、14ページの最後のまとめの部分、「引き上げるべき」という表現は、今後の対応を考えても非常に違和感があることは申し上げておきたいと思います。当然ですが、支給額は本人への給付分と産科医療補償制度の掛金分の2つに分けて考えるべきであって、掛金分を引き下げる場合にはその分は支給額を引き下げるのが自然だと申し上げておきたいと思います。
最後でございますけれども、24ページ、「4.終わりに」の部分について、政府の全世代型社会保障改革の方針でもさらなる改革を推進するというものが出ておりますので、最後の表現ですけれども、細かい言い方ですが、「今後の医療保険制度の在り方について更なる検討を進められたい」となっていますけれども、できましたら、この「検討」を「改革」という言葉に変えていただければと思います。
以上でございます。
○遠藤部会長 どうもありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。
林委員、お願いいたします。
○林委員 ありがとうございます。
日本歯科医師会の林でございます。
日本歯科医師会は、後期高齢者の窓口負担につきましては、全世代型社会保障の議論をするのであれば、負担と給付のバランスの論点のみならず、生涯にわたり国民に健康で安心な生活をいかに保障するかという議論が必要であると従前から指摘してまいりました。
あわせまして、後期高齢者の窓口負担の増加は受診控えにつながり、新型コロナウイルス感染症による受診控えと重なりまして、誤嚥性肺炎の発症や疾病の重症化を招くリスクが高く、健康被害だけでなく、医療費、介護費用を増すリスクもあると指摘してまいりました。もともと歯科では後期高齢者の受診率が低うございます。本日、提出資料もございますので、それを見ていただけましたらお分かりかと思いますが、そのことからも強く懸念してございます。今回、所得水準200万円以上を2割負担とするという案がございますが、ぎりぎりまで議論が重ねられて、長期頻回受診の患者等への配慮もされた結果と理解はしておりますが、危惧はさらに強くなってくると思っております。
人生100年時代の人口減少問題に関しましては、健康な高齢者を増やし、支え手、担い手を確保することは必要不可欠でございますが、後期高齢者の窓口負担の今後の運用、また、開始時期につきましては、コロナの影響をしっかりと配慮していただきまして、国民が納得できるような配慮措置も含めて、引き続き精緻な議論をお願いしたく思っております。受診控えを防ぐための広報、また、後期高齢者歯科健診と必要な受診勧奨の推進も求めていきながら、こういった配慮措置の周知徹底も含めて、高齢者に健康被害が起こらないよう配慮を引き続き求めていきたく思っております。よろしくお願いしたいと思います。
以上でございます。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
こちらに行きまして、安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 ありがとうございます。
まず、後期高齢者の窓口負担割合の在り方につきまして、政府におきまして2割負担導入の方針が閣議決定されたことは、一定程度、評価したいと思います。しかしながら、その対象範囲は限定されておりまして、現役世代の負担軽減という観点からはいまだに不十分と言わざるを得ません。したがって、あくまでもこれを第一歩として、将来的には一般区分を全て2割負担とすることも視野に、2割負担導入後の実施状況も検証しつつ、継続して議論するなど、本日の議論の整理案の24ページ、「4.終わりに」に書いてありますように、今後の医療保険制度の在り方について、佐野委員と同じように、これも「改革」にしたほうがいいのかなと思いますが、改革を進めていくべきであると考えます。
また、窓口負担割合の在り方に加えまして、今後は給付と負担の世代間のアンバランスをさらに是正して、公平性、納得性を高めていく必要があると考えております。
こう申しますのも、平成20年度から令和2年度までの後期高齢者医療制度の月額の保険料の比較をしてみますと、当時を100としますと、後期高齢者の場合の保険料は20%上がっています。ただし、現役世代の後期高齢者に対する支援金の保険料の金額は96%、そこに76%の格差がいまだにあることを認識するべきであると思います。したがいまして、後期高齢者が負担する保険料の在り方についても、今後、検討していくべきであると思います。
また、薬剤自己負担の引上げにつきましては、前回に引き続きの検討課題としていただきたいとの意見を申し上げましたが、反映していただき、ありがとうございます。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
松原委員、お待たせしました。
○松原委員 日本医師会の松原でございます。
今回の後期高齢者の窓口負担の割合の変化は、患者さんにとって大変なインパクトがあるところであります。その中で、一番大事なのは、1人の人が幾ら払ったかという話ではない。つまり、若い人が幾らでお年寄りが幾らという話ではなくて、人生100年の中で、トータルで考えるべきと。どんな若い人も必ずお年を召して、病気にもなるわけでございますので、そういったことを視点として、人生100年の医療の持続可能性を高めて、この医療保険制度を全ての国民が全ての人を支えるといったものにきちんとすることが一番大事だと思っています。その中で、若い人の負担が幾らでお年寄りが幾らだから、これが平等ではない、公平ではないという意見をおっしゃいますけれども、75歳まで頑張って仕事をして年金生活に入られた方は、もちろん若いときには小さな子供さんや若い人の医療費もそこから支払われているわけでありますので、その方たちが働かなくなったら突然負担を増やすというのは公正ではないと思います。そういったことを考えていただいて、ある人の払う分がお年寄りの人の払う分よりも負担が大きいとか少ないとかという話ではないことをきちんと理解していただきたいと思います。また、先ほどもっと範囲を広げるようにという御意見がございましたけれども、もしそんな議論をするのだったら、むしろやるべきことは保険の一本化ではないでしょうか。いろいろな対応があります。健康保険は、企業の方々から半額、働いている若い人たちからも半額が来ています。国民健康保険はまた別であります。そういったことも含めて、もしそういう抜本的な改革をするとすれば、いわゆる一本化が筋であって、そういったことについて、1つのところに負担をかける、お年寄りに負担をかけるというのは間違っていると思っているところであります。その中で、私どもはこの数字で大変不満には思っておりますが、患者さんに説明するのが大変であります。厚生労働省さんにおかれましては、この変化についてよく丁寧に国民の皆さんに説明していただかないと、国民の皆さんも一体何でこうなったのか分からないまま、特にお年寄りの方々は不満に思ったまますることになりますので、その辺りのことをよろしくお願い申し上げます。
2番目は、出産育児一時金の話でございます。データを見せていただいても、現実の費用はかなり高うございます。特に大都市においては、土地も高く、部屋代が高いのも仕方のないことでありますけれども、若い人たちが安心して子供を産めるということが、今回の少子高齢化、つまり、少子に至っている一つの原因を排除する一番の方法でありますので、そこのところにお金を払うことは、最終的にはこういった問題を解決する方法となりますので、十分に考えていただきたいと思います。むしろ今の費用は若い人たちが残りを出さねばなりませんので、負担でございます。そういったことも含めて、もっと費用を高くしていただかないと、病院も実際にぎりぎりのところでやっております。私どもが現場の産婦人科の先生方に聞くと、昔と全く違う、とにかく大変なのだと。赤字になったら、やめたくなるのは当たり前の話であります。そうすると、今度は地方での出産する場がなくなってより大変なことになります。その辺りのことは十分に御理解いただきたいと思います。さらに、出産も多様性があります。無痛分娩であれば痛くなくて出産できると、そう簡単な話ではありませんけれども、そうすると、安全を高めるためには麻酔科の先生も必要となります。さらに、緊急時の帝王切開においては、1人で手術するというのは大変であり、2人、3人と産科医がそこにいらっしゃったほうが安全性は高いわけであります。若いお母さんたちにしても、安全に産めるということが大変重要なことであります。痛くなくて安全に産める無痛分娩などの出産形態の多様化が進む中で、こういったこともこの文章の中に入れていただきたいと思います。
3番目は、20ページ、21ページに、大病院への集中についてのまとめをしていただいております。これも随分議論したことでございます。明瞭に例外的・限定的な取扱いであることを文章化して出していただいたのは、中医協で議論をするときもこれからのことに対しても大事なことでありますので、これは大変いいことだと思います。また、私どもも、この方法はとにかく逆紹介が進まなければ絵に描いた餅になるのだと前から申し上げています。5,000円を払って、病院に居続けて、自分はブランド病院に行っているのだと思っているような人もいるやに聞いています。そういう話ではなくて、地域に戻していただいて地域の連携を取ることが大事です。これも中医協において十分に議論されますので、そこのところを書いていただいたので、中医協は適切に判断すると思いますので、よろしくお願いします。
最後に、紹介状を持たない患者さんの対象の義務化でございますが、議論の中で、地域はいろいろな状態があり、また、機能によっていろいろな病態があるので、手上げによって行うべきだということを何度も申し上げましたし、医療部会でもそのように発言されて了解されつつあると聞いております。今回、この中に「手上げ」という単語が最後のところにないので大変心配しております。手上げでなければ実際の地域の医療を守れなくなりますので、十分にその辺りのことを配慮していただきたいと思います。文章に「新たに地域の実情に応じて明確化される」、恐らく手上げ方式に対応するということがここに書いてあるのだと理解していますけれども、ここに手上げ式でやることが入っているという理解でよろしゅうございますか。これは質問であります。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
どうぞ。
○姫野課長 保険課長でございます。
今の松原委員の御指摘の部分ですが、まさにこの「新たに地域の実情に応じて明確化される『紹介患者への外来を基本とする医療機関』」は医療部会で検討されているものでございますが、今、こちらは手上げを前提として検討されていると承知しておりますので、そういった理解で我々もおります。そのことを確認いたします。
○遠藤部会長 松原委員。
○松原委員 中医協に出すときに、より明確に書いていただいて話していただくほうがよろしいかと思いますので、できれば明記していただきたいと思っているところであります。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
石上委員、お願いします。
○石上委員 ありがとうございます。
後期高齢者の窓口負担割合の関係ですが、今回は、長期頻回受診患者等への配慮措置を導入しつつ、年収200万円以上の後期高齢者の医療費の窓口負担割合を2割に引き上げるということは、年齢別から負担能力に応じた負担への転換と受け止めておりまして、評価したいと思います。一方、窓口負担の引上げで日常生活への支障、受診控えによる健康悪化などの懸念も残っております。引き続き、今回の見直しによる被保険者、患者、医療機関等への影響を検証して、所得の基準や配慮措置の妥当性についてさらに検討して、必要な対策を実施すべきだと考えます。また、現役並み所得者の後期高齢者医療制度には公費負担がなく、現役世代の負担になっていると考えます。現役世代の負担軽減の観点からは、公費の拡充なども併せて検討していくべきだと思います。
22ページの40歳未満の事業主健診情報の保険者への集約等の関係ですが、この記載は23ページから上から4つ目のポツの後に、保険者による適切な情報の管理についても追記をしていただきたいと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
お待たせしました。森委員、どうぞ。
○森委員 ありがとうございます。
2点あって、一点が後期高齢者の窓口負担の在り方なのですけれども、課税所得が28万円以上の方の窓口負担を2割にすることが示されました。これまでも何回も述べてきましたけれども、1人当たりの医療費が高い高齢者の窓口負担が増加することによって、受診控えや服薬調整による重症化が心配です。施行に当たっては、丁寧に説明して理解していただくこと、また、高齢者が混乱することや受診控えが起きないように、配慮措置を含めて十分に周知をしていただきたいと思います。その上で、施行後、高齢者の受診の状況や負担の状況などについてフォローをして、その状況により配慮措置の延長などを検討していく必要があると思います。
もう一点、16ページの薬剤自己負担の引上げの最初の○のところなのですけれども、上手な医療のかかり方の一つにもなるかと思いますけれども、適切なセルフケア、セルフメディケーションのためには、かかりつけ薬剤師・薬局を推進することが重要だと思います。国民がかかりつけ薬剤師・薬局を持っていただくことにより、市販薬を含めた服薬情報の一元的・継続的な把握を行い、かかりつけ医と連携して、医療用の医薬品と市販薬との重複投与や相互作用の防止はもちろん、市販薬が治療中の疾患に悪影響を及ぼすことがあり、そうしたことを防止することができます。また、兼子委員からも先ほどありましたけれども、一般用医薬品の対応が難しい場合などに関しては、医師への受診勧奨も行っています。予防・健康づくりという点では、特定健診や地域での検診情報などを、かかりつけ薬剤師として、その人の生活状況に合ったよりきめ細かな情報提供を行っています。国民がかかりつけ薬剤師・薬局を持っていただくことが重要と考えますので、保険者さんの立場からもかかりつけ薬剤師・薬局の推進を行っていただくよう、その旨をこの文章に加えていただければと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
横尾委員、どうぞ。
○横尾委員 ありがとうございます。
3点申し上げます。
1つは、高齢者の窓口負担ですけれども、持続可能な制度、また、国民皆保険という理念や、それぞれの能力に応じた負担ということを考えますと、今回の2割負担はある意味でやむを得ないと、考え方として認識しているところです。
そして、このことが円滑に移行していくためにも、国による被保険者や医療関係者の皆様への丁寧な周知や広報をぜひ行っていただきたいと思います。
それに関連して、事務処理を担っている現場の感覚を踏まえて意見を述べます。この2割負担への実施の時期等について記述がございます。例えば、「令和4年10月から令和5年3月まで各月の初日を想定」とあるのですが、実務面を見ますと、保険証あるいは負担割合の更新時期の8月というタイミング等があります。これに合わせるとか、あるいは、その年に限って施行時期まで有効期限を延ばすとかなど、全体の作業も落ち着いてできる方法などの新しい観点でぜひ検討していただきたいというのが現場を踏まえた感覚として思うところでございます。そうしないと大変混乱していくと思います。
また、その広報につきましては、先ほど少し述べましたが、より分かりやすい広報が大切だと思います。たとえば資料18ページに、月に28万円未満とか、年に200万円を基準に上下するというような形でのチャート図での表記もあって、この前後の資料等は大変分かりやすく整理されていると言えます。けれども、これらがより分かりやすく伝わっていかないと、多くの方は、単純に「全てが2倍になる」と受け止めて大変恐れおののいてしまわれると懸念されます。そのために医療の受診控えも起こったり、さらにはそれにより健康をかえって害したりするという混乱もあり得ますので、ぜひ十分な説明や広報を政府で行っていただきたいということを改めて強く思っております。
そして、6ページに記述のある理念等を読んでいきますと、まさにこれから10年間の世界のテーマであるSDGsの目標にある「だれ一人も取り残さない」ということを踏まえた、多様な方向性についての努力にも関係しますので、ぜひお願いしたいということを感じております。
2点目は、19ページ、20ページ辺りに書かれている大病院への患者集中の回避と病院機能の分化・分担というところです。今回の新型コロナウイルス感染症対策として、今週のニュース関連情報では、ドイツのメルケル首相が演説されたものが非常に話題になっています。メルケル首相は、「啓発や啓蒙の力を信じている」というスタンスで訴えられました。この啓発や啓蒙は極めて重要だと思っております。いわゆる制度をつくって強制するというやり方もありますけれども、私も以前にも述べましたように、この大病院への患者集中問題の改善については、本質的には国民の皆さんが理解して認識して行動を変えるということも重要と考えます。そのためには、本筋としても、課題の認識と理解、為すべき方策の理解にもとづき、事態改善を図れるよう、そのような努力も当然必要ですので、ぜひその国民の意識改革と行動変容の重要性についても付記していただきたいと心から願っているところです。
3点目は、先ほど平井委員が冒頭部分でおっしゃったことに関することです。財制審等のコメントや発表された内容を拝見いたしますと、今、後期高齢者医療制度の広域連合でやっているものは「都道府県に移管したらいいのではないか」という論調があると承っています。でも、唐突に不十分な情報量の発信でもあり、後期高齢者医療を担っている各都道府県の広域連合関係職員は非常に頑張っているところだけにこの情報について、現場としては大変混乱や困惑をしながら、どんな意味だろうかと不安がっている意見も一部あるように認識しています。現場の意見も十分に聴きながら、こういう方法でやったほうが有効とかの検討などをして、国で具体案を示していただくとか、議論を尽くすことがまずは必要だと思っています。
そのことなくしてやっていくと、混乱だけが残っていくと思います。
都道府県は、今、国民健康保険に関する主体的な参加をされている訳ですけれども、先ほど平井委員もおっしゃったように、どんどん新たな業務拡大が入ってくると大変なことになるという旨をおっしゃっておりました。現在都道府県がお持ちの保健行政等を含め、あるいは、医療に関する行政も含め、専門的知見からの助言、あるいは専門的な機関を有効に活用したサポートは当然必要です。そのことによってよりよいものが出ていくと思います。しかし、短兵急に変えればいいという問題ではないということを強く認識していますので、都道府県への単純な移管はいかがなものか、現状としては賛成しかねると思っているところでございます。
一方では、保険者として、健康づくりあるいはフレイルの対策を踏まえた保健事業と介護予防の一体的実施に、まさに今、取り組んでいるところですし、栄養で体のバランスが壊れることを予防する取組も行っているところです。
それらを踏まえて医療費の適正化や地域差の縮減等にも力を尽くしていますし、今、都道府県との連携でお互いの役割を強化してよりよいものを生み出したいと取り組んでいるところですので、ぜひ十分にそういったことを踏まえた対応をお願いしたいと改めて思っているところです。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
こちらで、秋山委員、お願いします。
○秋山委員 ありがとうございます。
日本看護協会です。
私から、1点、要望でございます。
後期高齢者の窓口負担割合2割の対象につきまして、所得上位30%とすることがこの資料2の4ページに示されておりますが、これまでも述べてきましたとおり、それによって受診抑制が生じることを懸念しております。4ページに「必要な受診が抑制されるといった事態が生じないようにすることが不可欠である」と書かれておりますのは、まさにそのとおりでございまして、受診抑制による悪影響が生じていないかどうかをきちんと評価することも併せて重要と考えます。ぜひ、評価が必要であるということにつきましてもこの4ページに加筆していただきますとともに、評価結果について当部会にも報告いただきたいと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
先に挙げた池端委員からお願いいたします。
○池端委員 ありがとうございます。
慢性期医療協会の池端です。
3点、簡単にお話しさせていただきたいと思います。
まず、後期高齢者の2割負担の件に関して一定の政治決着を見ているということに対しては、残念な部分もあり、やむを得ない部分もあるかなという印象を持っています。ここで、1点、お話ししたいのは、まず、後で確認をさせていただきたいのですけれども、あくまでも今回は現役世代との世代間格差をいかに減らそうかということが趣旨だったかと思っています。その世代間格差を減らすために、今回、一部2割負担に持っていくことによって、高齢者支援金が減る、現役世代の負担が減る、一方で、事業者負担も減るということもあるのだと理解しているのですが、それでよろしいかどうか確認したいと思います。そうなると、これはあくまでもコストシフティングの手法であって、これからどんどん持続可能な高齢者医療制度が維持できるかというとそうではない部分と、もう一方で、このやり方をこれからどんどん使えるかというと、最大の世代間格差、3割に揃えるということになりますけれども、これは非常に大きな収入格差があるものを負担だけ合わせることは不可能なので、今後は保険財政に対する財源をどうやって確保するかという問題も引き続き議論していかなければいけないのではないかということを感じました。前半部分については、確認させていただければと思います。
2点目ですけれども、不妊治療に関してお話ししたいと思います。保険適用に持っていくことに対しては決して反対するものではありませんし、是非そうあっていただきたいというところはありますけれども、前回も少しお話しさせていただきましたが、補助金をつけるのと違って、保険適用となると、どうしても治療の平準化・標準化が一方で必要になってきます。ただ、この不妊治療は現状でも非常に玉石混交で、しかも結果がはっきり出ます。赤ちゃんができるかできないかというイエスかノーしかありません。この結果がはっきり出るものに対して保険適用をすることはかなり困難ではないかというところがあって、例えば、中間を取って標準化でこの程度の価格設定をしたとはいえ、もうちょっと上げれば確実に産まれるということが分かれば、うちは自費でやりますというところが出てくると思うのですね。そうすると、適正価格を保険適用してもそれが本当に使えるものにならない可能性があるので、この辺は中医協の議論になるかと思いますけれども、しっかりデータを取って、本当にしっかりと専門家の意見も聴きつつ、丁寧に議論していかなければいけないのではないかということを危惧しておりますので、お話しさせていただきました。
最後、3点目ですけれども、大病院の定額負担の問題です。これもこれまで幾つかお話をさせていただいて、まとめにも入れていただいたことを大変ありがたく感じております。ただ私としては、もう一度、かかりつけ医機能の推進が大前提である、そのための手法だということ確認させて頂きたいと思います。特に今回、大病院で現状でも5,000円以上を取っているところがさらに2,000円以上を上乗せということが半ば義務づけられるような書きぶりになっておりますので、これに関して、どうしても受け取る側は病院が値段を上げるということに対して、患者さんから相当なクレームが来たりということを病院団体でもかなり危惧しております。そうではなくて、これはきちんとかかりつけ医を持ってそこから紹介すれば大丈夫なのですよということを本当に丁寧に説明していただいて、この主目的は決して公的保険医療の負担軽減をするための財源を皆さんから取るのではないのですよということを分かりやすく説明していただきたいと(思います)。これを全て病院の窓口でやりなさいとなると病院は本当に大変なことになると思うので、この辺の危惧をする先生方、病院関係者の方は多いので、ぜひその辺をお願いしたいと思います。私は慢性期医療協会の立場にここにいさせていただいていると思いますけれども、福井県医師会の会長という立場では、今、県内でコロナ禍の対策をしているのですが、インフルエンザ流行期の検査体制をどうするかということで、かかりつけ医で検査をできるようにしましたとマスコミに発表したときに、かなり多く受けたの、「がかかりつけ医がいない人はどうするのですか」という質問だったのですね。かかりつけ医というのは高齢者の一部の人だけでしょうというイメージが、まだマスコミの関係者の中にもある。これは日本の医療制度でもっと真剣に考えないといけない。基本的には、みんなどこかでかかりつけ医を持って、専門病院と組んでやっていくのです、日本の医療体制はそれができることがいいことなのですよということをもっと説明していただきたいという気がしていますので、ぜひそういう方向を中心にやっていただかないと、うまくいくものもいかなくなってくるのではないかということを危惧しております。
以上です。よろしくお願いいたします。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
樋口委員、お待たせいたしました。どうぞ。
○樋口委員 ありがとうございます。
あくまでも個人的な立場でございますけれども、後期高齢者の当時者として、今回の医療制度についていろいろ御議論いただきまして、このような報告書がまとまりましたことに心から感謝の思いをささげたいと思っております。こういう値上げ必至という前提が見えている委員会という場になりますと、かなり前からみんなが殺気立って、お互いに攻撃し合うということが多いのですけれども、この後期高齢者を中心とする高齢社会がここまで成熟していますと、私どもがびっくりするぐらい、若い方に、うちのおばあちゃまを見ていても複数の病気を抱えて薬袋が大きくなるのは75を過ぎてからよね、大変よねという声とか、あるいは、今度は、高齢者の人から、孫たちを見ていても若い人は大変だわと、お互いに思いやりに満ちた現実認識があった中での議論だったような気がいたします。それぞれがいい意味での妥協といいましょうか、妥協というよりも、ある政治家がおっしゃるには、この未曽有の国難というほどの事態を前にして、国民が協力し合わなくてはいけないのだなという雰囲気が出た中で、こんな結論を出していただいて、高齢者の立場にすれば、2割に行く人がもっと少なくて、部会長もおっしゃいましたけれども、実施に当たりましては激変を緩和すること、頻回受診者への配慮など事態を一つ一つ具体的に見ながら丁寧に移行することなどはぜひお願いしたいことの一つでございます。
ついでにまた余計なことを申し上げるのですけれども、私はこの部会の報告書提出ぐらいを境目にして日本の高齢社会は姿が変わっていくと思っております。一つは、2年後から団塊の世代の方々がまさに後期高齢者におなりになって、今まで高齢者といえば65~74歳までの人のほうが多かったのが、これからは75歳以上の人のほうが多くなるという高齢者層そのものの年齢の逆転現象が起こります。そうすると、75歳以上でフレイルとかと呼ばれている方々の健康維持とか、社会参加は、一層重要な課題となります。動きを見ていますと、恐らく、65~74歳ぐらいまでは、かなりの方の生活の場や生きがいが就労することになっていくだろうと思います。すでに統計でも、60代後半、70代の就労率はぐんぐん上がっております。そうすると、今度は、75歳の、疾病というほどでもない、要介護2でも3でもない、だけれども、心身の衰退を抱えた人が、市民として社会生活に参加し、ある程度の就労ならば働くことを通して、希望の持てる、市民として最期まで参加できる、「健康でなくても参加できる社会、姿の見える社会、非健康寿命などは気にしないで生きられるような社会」を、これからつくっていかなければならないのだろうと思っております。
そういうわけで、その成果をこの当事者年齢の方々に返していただく調査、統計、研究、政策を最後にぜひお願いしたいと思っております。
以上でございます。
○遠藤部会長 どうもありがとうございました。
ほかに御意見はございますか。
藤井委員、どうぞ。
○藤井委員 ありがとうございます。
まず、後期高齢者の窓口負担割合について、「改革の方針」で決定されたことはもちろん尊重はいたしますが、我々として次の3点を申し上げたいと思います。まず、1点目として、現役世代や企業、とりわけ中小企業の負担は限界に達しているということ、2点目として、さらなる負担増は、個人消費の低迷、企業の投資意欲の減退あるいは少子化の加速などを引き起こすのではないかということ、3点目として、今の現役世代のみならず、今のお子さんたち、あるいはこれから生まれてくる世代に大きな負担を残してしまうということ、以上の3点です。これらを踏まえますと、所得基準につきましては、原則2割負担、少なくとも高額療養費の一般区分の方を全て2割負担とすべきということを改めて申し上げるとともに、「改革の方針」で示された内容で終わらせることなく、さらなる改革に向けて引き続き取り組んでいただきますよう強くお願いしたいと思っております。
また、5ページ目の③の施行期日について、以前からできるだけ早急にということを申し上げておりますけれども、少なくとも2022年度の初めから行う必要があるのではないかと思っておりますので、そういった意見もあったということをぜひ記載をお願いしたいと思います。
続きまして、8ページの不妊治療の保険適用について、これはもちろん我々として反対するものではございません。しかし、幾つか前提があるのではないかと思っておりまして、一つは、若年層へのライフプランニング教育の実施、そして、未病領域への対応、最初から高度な保険医療を使う前にも自分たちでできることがあるのではないかということです。これは例ですけれども、OTC医薬品を活用した男性ホルモン補充療法とか、そういったことをぜひ啓発していただければと思っております。そもそも不妊に限らず、医療や健康に対する国民のリテラシーの向上、セルフメディケーションの推進をぜひ進めていただければと思います。誤解のないように申し上げますが、セルフメディケーションというのは勝手に自分だけでやっていいということではないのです。かかりつけの医師や、かかりつけの薬剤師にちゃんと相談しながら、御指導を得ながら、自分にできることは自分でやり、健康になる努力をするということがセルフメディケーションの基本でございますから、言わばこれは当たり前のことだと思っております。
続きまして、15ページの薬剤の関係について、記載内容に異論はございません。しかし、今後は、これに加えまして、レセプトデータをしっかりと分析して、明らかな重複投薬がないかどうかを掘り下げて調べていただけたらと思っております。日々一般消費者や患者さんから、明らかに異常な量の薬剤で飲めないというお問合せも多く受けております。これは、投薬実績の一元管理ができていないからだと言えますので、OTC医薬品も含めてしっかりと一元管理をした上で、かかりつけ医やかかりつけ薬剤師にちゃんとその情報を共有することが大切ではないかと考えております。
最後に、22ページの事業主健診情報の保険者への集約等について、2つ目の○に中小企業の提供実績が低い理由としまして個人情報や事務負担を挙げられておりますが、もっと言えば、健康情報を提供するメリットが中小企業にあまり理解されていないことも大きいのではないかと思ってございます。したがいまして、ぜひ政府として、健康情報を提供することによってどういうメリットがあるかということを周知・啓発していただければと思います。
以上でございます。
○遠藤部会長 どうもありがとうございました。
ほかにございますか。大体御意見を承ったということでよろしゅうございますか。
横尾委員、どうぞ。
○横尾委員 次回にでもと思ったのですが、少し時間があるそうですから、1点だけ。
今回、後期高齢者医療については一部の該当する方々が2割負担という手続になっていくと思います。時期については今後決定されるわけですけれども、その際に、効率的に実施するためにはシステム改修等が発生いたします。過去にもこのことにつきましてはシステムトラブルがあったりしたことがあるようですので、それらも踏まえていただきながら十分な対応が必要と思います。システム改修には経費もかかりますので、ぜひ国で負担いただくとともに、制度の詳細な変更点や対応についてもできるだけ早期に広域連合並びに市町村や都道府県へ情報の提供をお願いしたいと思っています。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
大体御意見は賜ったということでございますので、この議題につきましてはこれぐらいにさせていただきたいと思います。
本日は様々な御意見をいただきましたので、事務局におかれましては、本日の意見等を踏まえまして、次回、修正案を提出していただきたいと思いますので、準備のほどよろしくお願いいたします。
時間にそろそろなりますので、本日はこれまでとさせていただきたいと思います。
次回の開催日につきましては、追って事務局より御連絡いたします。
本日は、御多忙の折、御参加いただいて積極的な議論をしていただきまして、どうもありがとうございました。