第103回労働政策審議会障害者雇用分科会(議事録)

日時

令和3年1月22日(金)10:00~12:00

場所

オンラインによる開催(厚生労働省職業安定局第1会議室)

議事

○阿部分科会長 おはようございます。それでは定刻となりましたので、ただいまから第103回労働政策審議会障害者雇用分科会を開催いたします。委員の皆様方におかれましては、お忙しいところ御参集いただきまして、誠にありがとうございます。
本日の分科会もZoomによるオンラインでの開催となりますので、開催に当たりまして、改めて事務局から説明がありますので、お願いいたします。
○小林障害者雇用対策課課長補佐 障害者雇用対策課課長補佐の小林です。本日も、Zoomを使ったオンライン会議となっております。開催に当たり、簡単ではありますが、オンラインについて操作方法のポイントを改めて説明させていただきます。本日、分科会の進行中は、皆様のマイクはオフとさせていただきます。御発言をされる際には、サービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックいただき、分科会長の許可があった後にマイクをオンにしていただき、お名前を名乗ってから御発言をお願いいたします。会議進行中、トラブルがございましたら、事前にメールでお送りしております電話番号まで御連絡いただきますようお願いいたします。
なお、通信遮断等が生じた場合には、一時休憩とさせていただくこともございますので、御容赦くださいますようお願いいたします。オンライン会議に係る説明については以上でございます。
○阿部分科会長 本日ですが、中川委員、森口委員、山内委員が御欠席とお聞きしております。達谷窟高齢・障害者雇用開発審議官におかれましては、所用のため途中からの御参加と伺っております。
それでは、議事に入りたいと思います。本日の議題ですが、まず「障害者雇用率制度・納付金制度等について」、2番目に「その他」となっております。なお、本日は議題(1)の関係で、労働政策審議会運営規程に基づき、社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課の竹内課長に御出席いただいております。それでは、議題(1)について、まず事務局から説明をお願いいたします。
○小野寺障害者雇用対策課課長 障害者雇用対策課長の小野寺です。本日の(1)の議題については、主に資料1を用いて御説明申し上げたいと思いますが、その前に参考資料2-1と参考資料2-2を御覧いただければと思います。参考資料2-2については、年末までの議論の中での論点を整理したものです。参考資料2-1ですが、これまでにも雇用分科会としてのスケジュールは既に情報共有させていただいておりますが、前回御説明申し上げたとおり、障害者雇用福祉施策の連携強化に関する検討会が動き始めておりますので、そちらとの関係も整理した上で、改めて本日御提示させていただいております。
検討会については、右側のほうの流れで検討が進んでおり、現在既にワーキンググループ、グループによっては第2回まで進行しておりますが、検討が進んでいる状況でございます。これについてもある程度議論の整理ができましたら、適宜分科会にも御報告申し上げたいと思いますが、最終的には、親会である検討会の報告書を6月ぐらいに取りまとめることを目標として検討しております。
一方で、分科会ですが、今後、各省令の諮問や目標に係る議論等を予定しておりますが、今回は論点議論にのみ絞って整理させていただいております。本日1月22日以降、2月、3月、4月までで、全体として自由なフリーディスカッションの期間を一定終えたいと思っており、その後は6月にまとまった右側のほうの報告書と、1月から4月までの全体の議論を整理して、夏頃に改めて分科会としての論点を再整理し、少し優先順位、粒度などもそろえながら提示させていただきたいと、その論点に沿って更に夏以降議論を深めていきたいと考えています。スケジュール感については以上です。
本日の分科会については、参考資料2-2にあります雇用率制度の在り方について、特にマル2のA型の評価、マル5の中高年齢層等長期継続雇用の評価についてと、それから2ページにあります2番目の納付金制度の在り方に係る各種データ資料等をそろえて提示させていただいております。非常に多岐にわたっての論点になっていますので、毎回少しずつその中から絞り込んで関連する資料を御提示いたしますが、それに関する部分には御質問、御意見を頂ければと思いますし、それ以外の部分についても、今後特にこういった資料を用意してほしいといった御要望等も広めに頂ければと思っております。
それでは、資料1に移って御説明申し上げます。資料1ですが、まず、雇用率制度についてということで、制度の概要、現状等について共有したいと考えております。3ページ目ですが、これは先般発表した令和2年6月の状況も含めて、雇用の義務を課した昭和51年の翌年からの実雇用率の状況をプロットしています。御覧いただくとお分かりいただけますように、法定雇用率を段階的に上げてきておりますが、直近では実雇用率が法定雇用率に近付きつつあって、制度開始時点に比べると、法定雇用率と実雇用率が追い付いている状況が見て取れるかと思います。それから、ある意味ここ10年ぐらいは、精神障害の伸びというのが非常に高くなっているということが御覧いただけるかと思います。
4ページです。法定雇用率制度について改めて提示させていただいております。一般労働者と同じ水準で障害者雇用の機会を確保していただくことを課しております。算定式が記載してありますように、常用労働者数+失業者数を分母に置き、対象障害者である身体、知的、精神の常用労働者数と失業者数、それらをプロットした上で雇用率を算定したものを雇用率としているということです。
5ページですが、そういった算定式に基づいて、これまで民間等について雇用率が推移してきておりますけれども、現在は2.2%、3月には2.3%に引上げを予定しております。
6ページです。こうした法定雇用率の引上げに当たっては、まず法定としての義務を課す前に、実雇用率としての評価をするという時期を設けており、知的障害者の義務化に先立ち、10年余り知的障害者を身体障害者とみなしてカウントしている時期、精神障害者についても義務化に当たっては実雇用率としてカウントする時期を設けて、企業側の受入体制、雇用の環境の整備、ノウハウの蓄積等を押し進めながら義務化を果たすということで、段階的に進んできています。
7ページですが、精神障害者を義務化する際に特別に措置したもの、激変緩和の措置について改めて共有させていただいております。平成25年4月に法定雇用率の引上げを行った直後、平成30年4月に精神障害者の義務化というのが予定されましたので、雇用率が引き上がることを想定した上で、精神障害者についての雇用率の算定に当たっては、本来の計算式よりも雇用率を低くすることを可能にしたという激変緩和です。これにより、2.42という算定式から得た法定雇用率自体を2.3%と設定したという経緯があります。
8ページです。法定雇用率制度における主な考え方ということで整理しております。まず、常用労働という考え方については、長く働き続けられる環境を整えるという観点から、期間の定めなく雇用されている場合に加えて、1年を超えて引き続き雇用される見込みのある場合については、常用雇用として整理しているところです。重度障害については、いわゆる施設、設備等の物的な負担や職場指導等の体制の整備等のソフト支援も含めて、生ずる負担ということを勘案して2カウントと評価しているということです。一方で、短時間労働者の考え方については、通常の労働者の所定労働時間に比べて短いということで、現在は所定労働時間30時間未満を指すということにしており、大臣告示で規定しておりますが、下限については、通常の労働者の半分にも満たない時間しか労働していない場合を職業生活において自立していないと解釈して、通知で週20時間と定めております。これについては、雇用保険と同様の範囲として取り扱っているということです。
2つ目の継続雇用状況についてのデータは10ページ以降です。まず10ページですが、各3障害について、年齢別の雇用者割合をお示ししています。これについては実数をお示ししていませんので、あくまでも年齢の割合ということでの御提示になっておりますが、身体障害については、平成20年から平成30年の10年間について、実数も1.2倍弱ということでほぼ変わっていないという中で、55歳以上の割合もほぼ変化はないということです。これに比べて知的障害については、平成20年から平成30年の10年間で実数も約3倍ぐらいに伸びておりますが、55歳以上で見ると割合としては余り変わっていないという状況です。
一方で、知的障害の特徴としては、10年たった時点で24歳以下の層が非常に伸びが大きくなっており、この辺りは知的障害の雇用が進む中で、特別支援学校の卒業生を積極的に雇い入れていくという流れが背景的な要因かなと思っております。
精神障害については、10年前の平成20年は2.9万人でしたが、平成30年は20万人ということで、7倍近く伸びています。したがって、年齢の構成はかなり増減が見えますが、実数で見ると全ての年齢階層において増加しているという状況です。その中で、55歳以上の割合が小さくなっているように見えますが、これは45歳から54歳という壮年期の方の割合が非常に伸びているということで、平成30年の状況については、新たな雇入れが進んでくる中で中途採用が伸びてきたという、ハローワークでの求職層もこの層というのは非常にボリューム感としてありますので、そういった背景があるかなと考えています。
11ページからは障害種別でして、勤続年数の割合をプロットしております。まず、身体障害者です。左側のグラフが、全世代の合計を100%としたときにどういう年齢層がいらっしゃるかというものでして、これで見ると40、50代層が非常に膨らんでいて、60代で就業者数が減っています。身体障害の場合には、義務化当初からの義務の対象となっているということで、比較的長い期間にわたり雇用が続いている中で、一般的な労働者の方と同じような動きになっているかなと思っております。ですので、右側の各年代を100%としたときにも、年齢が上がるごとに20年以上の勤続の方が増えてきていて、それが60代頃から減ってくるということで、定年を迎えて新たに雇い入れられる方もいらっしゃるでしょうし、そういったような流れで変化しているということかなと思っております。
これに比べて、12ページの知的障害ですが、先ほども冒頭で申し上げたように、圧倒的に若い層が多いということで、20代のボリューム感が非常に多いことが見て取れるかと思います。特に、約10年ぐらい前に就業技術科といういわゆる100%企業に就職するような特別支援学校というのが設置されておりますので、その辺りの卒業生が定期的に採用されているということかなというのと、身体に比べると50代層以降の年齢層が非常に少ない形になっておりまして、これは、高齢化が早いという指摘もありますが、知的障害については、カウントは30年前からスタートしておりますけれども、義務化されたのが20年前ですし、身体に比べると雇用のスタートが若干遅れていたということでの影響もあるかなと思います。いずれにしても、各年代層を100%とした場合には、20年以上の勤続の方の割合は、身体障害者と大きく違ってはいないというところかなと思います。
次に、精神障害者、13ページです。精神障害の場合には、義務化も非常に直近の話ですし、そもそもの雇入れ自体もここ10年ぐらいで急激に伸びているというところですので、全体として勤続20年以上の層は少ないということになりますが、40代ぐらいをボリュームとして、50代以上についてやはり就業者数が急激に減少しているということです。また、年齢階層別、各年代100%とした場合にも、20年以上の勤続というのはなかなか見えてこないということです。
14ページは、離職の理由等についての調査結果を載せております。まず、離職理由です。身体、精神については、障害・病気のためというのが圧倒的に多いというのに比べ、知的障害の方については、業務遂行上の課題あるいは人間関係の悪化というようなことで、職場環境あるいは仕事とのマッチングというところが大きな離職理由になっているかなと思っております。一方で、こうした離職を防ぐための措置や配慮ということで見ると、やはり精神の方については、離職理由とも関連しておりますが、調子の悪いときに休みを取りやすくするといった配慮だったり、あるいは職場でのコミュニケーション手段の支援者の配置ということが図られています。知的障害者については、能力を発揮できる仕事への配置ということで、職務とのマッチングだったり、やはり職場でのコミュニケーション支援者の配置という環境調整に係る人員の配置の措置が見られております。
15ページです。この分科会の使用者代表からは、中高年齢層、特に継続していく上での負担ということのお声があったわけですが、実際に中高年齢層の障害者に対してどういった配慮をしているのかという調査について、事務局でもいろいろ洗ってみたのですけれども、なかなかいい調査が見付かりませんでした。ここにお載せしているのは2010年の調査ですので、10年ぐらい前の状況ということで、少し御留意いただきながら御覧いただければと思います。という意味では、特に配慮していないという割合も非常に高くなっていますので、配慮事項としてどのようなことがあるというところの参考としていただければと思います。まず、体力を要する作業を減らすといったこと、残業時間を規制するといったこと、作業の速度とか作業量自体を減らしていくといったこと、そういったことを可能にするような配置転換をするといったこと、このような対応が企業では取られているのかなと思います。この辺りは、また実態を使用者のほうからも頂ければと思っております。
16ページ以降は、納付金制度についてです。17ページは納付金制度の概要でして、御承知のとおりだと思いますが、本制度については、社会連帯の理念に基づいて経済的負担を調整するといったようなことです。達成していない企業は負担すべきコストを負担していないという中で、達成している企業のコスト負担に対して調整を行うといったことで、一種の負の受益者負担的な要素と、更に雇用を進めていくという意味で助成金制度等に活用しているということから、一種の目的税的、拠出金的な意味合いという2つの側面を持っている制度だと思っております。
18ページは、これまでの納付金・調整金・報奨金の推移を御参考までに載せています。
19ページは、納付金制度の適用範囲の拡大についての関連する情報です。当分の間、300人以下の企業については、法定雇用率自体は適用しているものの、納付金の対象からは外すということで制度がスタートしており、その後、300人以下の企業について雇用がなかなか進んでこなかったということもあって、平成20年法改正において平成22年7月からは200人超に、平成27年4月からは100人超にということで引下げを図ってきております。引下げに当たっては、納付金額を5万円から4万円と一時的に緩和して、現在においては100人超から5万円という形で運用されているところです。
次の20ページについては、この対象拡大がどう影響したかというところを御参考までにお載せしております。左側が実雇用率、右側が達成企業割合の推移でして、左側で見ると、平成22年のときに適用拡大された300人から200人という層について、ここのグラフでは黄緑の線ですが、やはり実雇用率が急激に改善しているというのが見て取れるかと思います。また、200人から100人に引下げを図ったタイミング、平成27年ですが、20年改正の時点で引下げをするということが周知されておりますので、それ以降、赤い線になりますけれども、この層について実雇用率の改善が見られるかなと思います。右側についても同じような形で、達成企業割合の改善がほかの時期に比べると進んだということが見て取れるかなと思います。という意味で、納付金自体の措置というのは、一定の影響はあるかなと考えております。
21ページですが、一方で納付金の義務が課せられていなくとも、4分の1程度の企業については、雇用の義務を超えて多くの障害者を雇っていただいているという状況もあるというデータです。
それから22ページですが、こちらは企業規模別の実雇用率、達成企業割合ということで、平成13年からプロットしております。左側で見ると、平成13年のスタートの時点は、企業規模において、格差はありますが、この格差が比較的小さかったものが、現行においてはかなり広がってきているということで、45.5人から100人、あるいは小さい層についての雇用の実雇用率が余り伸びていっていない中で、大きな企業においてはその率を伸ばしていったということで、格差が広がっているというのが見て取れるかなと思います。
一方で、達成企業割合については、企業規模に比例して達成企業割合が高くなっているわけではなく、一番高いのが1,000人以上という大規模な企業です。平成13年のスタート時点では一番低かったものが、一気に抜き去る形で達成企業割合を伸ばしてきたというところです。それに対して、次に高いのが実は100人から300人というところでして、ここは先ほど申し上げた適用拡大の影響があって改善が進んだような形になっております。それ以下の企業については、引き続き横ばいであったり伸びが余り見られないという中で、遅れが見られるところです。
23ページです。では、どんどん納付金の措置を引き下げればいいのかというと、中小企業を取り巻く状況をしっかりと見なければいけないだろうと。最低賃金について非常に高い伸びで引き上げられてきたという状況があるということと、社会保険の適用拡大という動きとか、働き方改革に基づく労働法制の見直しだったり、同一労働同一賃金といった取扱いが措置されることによって、経営環境についてはかなり厳しい状況にあると。分科会においても、特に使用者団体からも、そういったお声があったかと思いますが、こういった状況も踏まえながら慎重に検討すべきということかなと思っております。
24ページですが、納付金制度の中での納付金・調整金・報奨金についての状況をプロットしております。納付金については、300人超の負担と300人以下の負担で見ると、納付金額に大きな差はないということです。もちろん、企業の数でいうと100人から200人が多くなっていますが、全体の合計の額で見ると、大企業、中小企業それぞれの負担は大きな差はないということになります。一報で、調整金・報奨金は、どちらかというと300人超よりも、それ以下の企業に対して多くの額が支出されているということでして、個別の企業にお支払いしている金額を見ても、300人超で見ると、平均すると1社当たり6人分ぐらい支給されており、報奨金の方でいうと1社当たり11人分ぐらいになっています。。
25ページ以降は、納付金制度の財政状況について情報提供しております。
26ページ、これは確定値になりますが、令和元年度現在は300億ぐらいの納付金引当金額、いわゆる剰余金があって、単年度で見ても収支はプラスになっております。ただ、過去を見ると単年度でマイナスが続いている状況もあって、そのようなことから引当金額も20億といったところまで下がっている状況も見て取れます。
27ページですが、納付金制度に基づく助成金の実績について、ここで参考までにお示ししております。現在の助成金の実績は約6億ちょっとになっています。
28ページは、納付金財政の推移を示しております。グラフの背景のブルーの帯、白の帯は法定雇用率が一定の時期を表現しておりますが、法定雇用率一定の時期において、前半は、積立金額は右肩上がりで増加し、後半、おおむね実雇用率が追い付いてくるような状況の中で、単年度での収支がマイナスに傾いて、積立金が減じていくということで、一定の法定雇用率の期間において非常に大きく波打っている状態というのが見て取れるかと思います。この大きな増減の中で、現在、直近においては、法定雇用率の一定の期間が短くなっているというのと、実雇用率が法定雇用率に追い付いているという状況の中で、単年度の収支バランスというのも比較的マイナスに傾いていく状況にあろうかなと思っております。
そのような中で、29ページに今後の推計をお載せしております。令和5年に改めて法定雇用率の見直しの時期を迎えますので、令和4年度までの間の推計を出しています。今回、2.3%に引き上がるのが令和2年度末でして、その状況の中において雇用率を達成しない企業については、令和3年度に納付金額が生じてくるということになりますけれども、納付の時期は令和4年度になりますので、収入としては令和4年度に少し引き上がる形になっています。ただ、実雇用率自体は非常に高い推移ですので、支出はそんなに変わらないということと、新たに特例給付金を立ち上げておりますので、この辺りの支出も増えるということでして、収支バランスとしてはマイナスになっていくであろうと見込んでいます。以上が納付金制度についてです。
これ以降、その他としてA型の状況について資料を御用意しており、ここについては福祉課から御説明をお願いしたいと思います。
○竹内社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課課長 続いて、説明させていただきます。31ページを御覧ください。障害者総合支援法等における給付事業についてお示ししておりまして、障害者に対する福祉施策の全体像を示しているものでございます。色分けをしておりますが、緑色の部分が障害者総合支援法に基づくもの、右側のオレンジ色が児童福祉法に基づくもの、真ん中の下の水色が予算事業です。福祉施策のうち、いわゆる障害福祉サービスというのは、障害者総合支援法に基づき提供されるもので、このうち働くことを支援する障害福祉サービスとしては、左下に赤枠で囲んでいる就労移行支援、就労継続支援などがあります。後ほど御説明させていただきますが、就労継続支援A型もこの中に含まれております。
32ページ以降については、障害福祉施策に関する参考資料を付けております。就労継続支援A型については、障害者総合支援法の前進である障害者自立支援法が平成18年に施行された際に創設されたサービスです。当時は、障害者雇用の更なる進展が課題であった中で、一般就労が直ちに難しい障害者が一定の支援の下、働きながら一般就労を目指す仕組みとして、就労継続支援A型が創設されたということです。
33、34ページも参考資料です。33ページにあるとおり、障害福祉サービスにおきましては、その対価として報酬が設定されておりまして、これは障害福祉サービスを提供する事業者が、障害者にサービスを提供した場合に、そのサービスの対価として事業者に支払われる費用ということです。34ページ、報酬の仕組みに関する資料を付けておりますので、後ほど御確認いただければと思います。
35ページ、就労継続支援A型の概要です。就労継続支援A型というのは、一般の企業などでは雇用されることが困難であるものの、一定の適切な支援の下であれば雇用契約に基づく就労が可能な障害者の方に対して、働きながら一般就労への移行に向けた訓練などの支援を行うものです。令和2年9月時点では、事業所数としては全国で3,860の事業所があります。また、約7万4,000人の方が利用されておりまして、就労継続支援A型で働いておられるということです。
36ページ、ここ5年間の就労継続支援A型の総費用額等をお示ししております。グラフを御覧いただきますと、近年その伸びは少しずつ鈍化しているものの、各数値の趨勢としては、右肩上がりの状況となっております。
37ページ、就労継続支援A型の利用者の障害種別の数値をお示ししております。精神障害のある方、この横の棒グラフのピンク色の部分ですが、精神障害のある方の利用が増えておりまして、全利用者の半数近くになっている状況です。
38ページ、就労継続支援A型の利用者の年齢階層別の数値です。赤枠で囲っているように、40歳以上の方の利用が年々増えているという状況です。
39ページ、就労継続支援A型事業所の設置主体別の事業所数です。赤色の部分ですが、設置主体としては、株式会社などの営利法人が最も多いという状況です。以上、簡単ではございますが、障害福祉施策全体の枠組みと就労継続支援A型の概要について御説明させていただきました。
○小野寺障害者雇用対策課課長 引き続きまして、40ページ以降の部分です。今、御説明がありましたように、雇用という評価がなされている中で、労働市場におけるA型のプレゼンスについて関連する資料をお示ししております。
40ページ、この表は実雇用率が高い県から低い県に並べております。一番実雇用率が高いのが奈良県で2.83%、一番低いのが東京で2.04%ということで、平均して2.15%というのが実雇用率の状況です。隣がその県内にある雇用保険適用事業所数、つまりは雇用の受皿のポテンシャルに該当するかと思います。併せて、A型の事業所の数をプロットしております。その上で、A型の占める割合をお示ししております。赤い点線がA型割合の平均値で、全国平均が0.169%ということです。つまり、この赤い点線を超えて右側にブルーの帯が伸びている場合には、全国平均よりもA型の割合が高いということです。実雇用率の高い都道府県においてA型の割合が大きい県が見られる傾向があろうかなと思います。ちなみに相関係数は0.481%ぐらいということで、緩い相関ですが、事実としては比較的A型割合が大きい都道府県において実雇用率が高い都道府県が見られるという状況があります。
最後のページ、求人数、就職件数に占めるA型の割合をプロットしております。各地域における格差は非常に大きくありますが、全国平均で見ますと、障害者専用求人に占めるA型事業所の割合は24.2%になっておりまして、一番高い沖縄県では5割を超えている状況です。沖縄県はもともと企業が少ないという状況もあろうかと思いますが、一方で、東京では3.4%ということで非常に少ないです。東京はもちろん事業数も多いですし、特例子会社も全国の半分以上が位置しておりますので、そういった意味でA型の利用者の確保を考えると、東京に進出するというのは極めて難しいかもしれません。そういうことを反映して、このような形になっているということです。
一方で、就職に占めるA型事業所の割合は18.8%ということで、2割弱となっております。各地域においての格差はありますが、一定程度のA型のプレゼンスというのは労働市場上もあるだろうと考えております。資料の説明としては以上です。よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは質疑応答に入りたいと思います。御質問、御意見がありましたら、「手を挙げる」ボタンをクリックしていただいて、私が指名した後に、聴覚・視覚障害者の方々の皆様への情報保障の観点から、お名前を名乗っていただいて御発言いただくようお願いいたします。
本日は資料がかなりありますので、まず、2ページの障害者雇用率制度について御質問、御意見があれば伺って、順次進めていきたいと思います。それでは、まず障害者雇用率制度についてということで、資料の2~8ページまでで何か御質問、御意見があればお願いいたします。それでは竹下委員お願いいたします。
○竹下委員 日視連の竹下です。今回資料を出していただいたことによって、この間の障害者の雇用数の推移といいますか、それが非常に分かりやすくなったことが特徴だろうと思います。
その中で、既に課長も御指摘されたように、この間に大きく伸びてきているのは精神障害者あるいは知的障害者ということが数字で分かるわけです。これはこれとして重要な要素だとは思っておりますが、ただ、大事なことを2つ指摘しておきたいと思います。
1つは、身体障害者については10年間で1.2倍で、多少伸びていますが、その中で、肢体・聴覚・視覚という障害の部位別の推移が出てきていないのが残念だと思っております。すなわち、合理的配慮とか、そうした配慮の点で見ますと、聴覚・視覚というコミュニケーションの部分での支援が必要な人たちはどういう形で雇用が進んできたか、あるいはどういう形で配慮がされてきたか、それによって、雇用というものがどう前進したかという分析が必要だと思いますが、それが見えていないということは少し残念かなと思うわけです。
もう一点は、法定雇用率を考えていくときに、障害別で考える必要はありませんが、こういう推移からも分かるように、部位別や障害種別によって大きく違いがあることを十分に捉えた上で、単に数字だけ、例えば雇用率が前進した、あるいは上昇したという大もとだけで議論するのではなくて、あくまでも各障害別、時には部位別で法定雇用率がどう推移しているかということを見ていかないと、障害者雇用の状況や問題点は見えてこないということも併せて御理解いただきたいと思います。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。何かありますか。
○小野寺障害者雇用対策課課長 障害者雇用対策課長の小野寺です。竹下委員の御指摘は大変ごもっともです。先ほどお示ししたデータの中身というのは、実態調査の結果に基づいたものでして、今回はお出ししませんでしたが、部位別のデータもある程度ありますので、その詳細な分析もできれば対応したいと思います。
雇用率についても、今後民間に対して部位別まで踏み込んだ形での御報告を頂くということも、かねてから御意見として頂いておりますので、これも早期に対応すべく準備をしておりますので、頂きました御指摘を踏まえて、今後の状況分析については十分に留意をしてやっていきたいと思います。以上です。
○阿部分科会長 ほかに御質問、御意見はありませんか。よろしいですか。続いては、9ページ、障害者の継続雇用状況についてです。資料の10~15ページまでで、御質問、御意見があれば「手を挙げる」ボタンを押してください。それでは、池田委員、竹下委員、塩野委員、眞壁委員の順でお願いします。池田委員、どうぞ。
○池田委員 経団連の池田です。ありがとうございます。先ほどの点についても、手を挙げるタイミングを逸したため、併せて発言をさせていただきたいと思います。
まず、総論として、先週公表された調査によりますと、雇用されている障害者数は17年連続で過去最高を更新し、実雇用率は2.15%になったということです。障害者団体や行政の御尽力はもちろんですが、雇用率達成に向けた企業の多大なる努力も評価できると思っています。一方で、雇用率を達成している企業の割合は、近年5割を割り込んでおり、大企業と中小企業で二極化している状況にあります。こうした中、今年の3月には法定雇用率が2.3%に引き上げられ、更に2023年には次の引上げが想定されています。
現行の算定式は、雇用率達成に向けて企業が努力すればするほど、将来の法定雇用率が上昇するといった制度的な矛盾を抱えていると言えます。そのため、現行の一律に雇用率を適用し、雇用の量を追求していくという仕組みから、徐々に雇用管理の改善を評価するなど、雇用の質を評価する制度へと転換を図っていくべき時期が来ていると考えています。雇用の質の評価については、例えば、本年度から開始された「もにす」認定の評価基準なども参考になると思っています。
加えて、現行の雇用率制度の下では、障害者雇用に積極的に取り組む企業と、取り組むことが難しい企業との間での二極化が拡大していると懸念しています。そこで引上げの率、時期を分科会で検討する際には、例えば、雇用率達成企業割合などを重要指標として追加し、複数の指標を総合的に勘案して決定していく仕組みとしていただきたいと考えています。
続いて、法定雇用率の算定式では、失業している障害者の数が算定基礎となっていますが、「週所定20時間以上の就労が可能な状況にある方」について、誰が対象になっているのか教えていただきたいと思います。その上で、算定式が企業の実態と乖離することがないようにするため、就労可能かどうか不明な方も含まれている場合には、この項目については、基本的に手帳保持者であって、週所定20時間以上の就労可能な者である旨を明確にしていただきたいと考えます。同じ趣旨から、必ずしも一般就労とは縁遠い状況にある就労継続支援A型事業所で働いている就業者の数は、算定式から除外する、あるいは平均の移行率に応じた按分をしていくといったことをするべきではないかと考えております。併せて、A型事業所について、調整金、報奨金、納付金の対象から外していくということも検討するべきだと思っております。ここで1回区切らせていただきます。
○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、一応皆さんから御質問、御意見を伺って、その後事務局から御返答するということでよろしいですか。
○竹下委員 何度もすみません。日視連の竹下です。この雇用納付金制度で、私が非常に大事だと思っているのは、私の拙い記憶では、1980年代、1990年代、昭和の時期といいますか、その頃の障害者雇用を支えていたのは中小企業だったと理解しております。その頃の、いわば大企業の障害者雇用は、なかなか進まなかった時期だったと思っております。これに対して、池田さんがおっしゃったように、平成以降は大企業を中心に、非常に企業努力によって障害者雇用がどんどん前進してきたと理解しております。その結果が、今日の16年間の連続した障害者雇用の前進、増大につながっているのではないかと思っております。
ただ、そうであればあるほど、中小企業の障害者雇用の伸びが苦しくなっているのはどこに問題があるのか、納付金制度をてこにして、少し工夫ないしは議論が必要ではないかと思っております。例えば、納付金の額の問題であったり、補助金、報奨金の支給の基準や額の問題、そういう企業の実態に合わせた工夫、技術的な議論も少しされてもいい時期に来ているのではないかと思っております。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございます。納付金制度は後でやろうかと思っていましたので、皆さんには、また後で納付金制度のところで何かあれば御発言いただきたいと思います。
○塩野委員 使用者側の塩野です。長期継続雇用について、弊社の状況も踏まえて、意見を述べたいと思います。親会社では、早くから障害者雇用に取り組んでいたこともあって、弊社への出向者も含めて高齢化が進み、50代の身体障害のある社員が相当数います。一定の配慮を行った上で、それぞれの職場で各人の能力を発揮し活躍をしてもらっていますが、中には高齢化や障害の進行によって、これまでの業務を担当することが難しくなるケースもあります。その場合は、各職場において担当業務の変更や異動等、こういったことを配慮として個別に行っています。
また弊社では、主に知的障害のある社員を雇用しています。特例子会社ということもあって、通勤に配慮した就業時間の設定や、知的障害者を当社ではジョブスタッフと言っていますが、ジョブスタッフ5名に対してジョブコーチ1名を配置し、日頃からきめ細かいサポートができるような体制作りなどを行っております。設立から10年たっていないこともあって、20代、30代が中心ですが、40歳に近くなると、徐々にできないことが増えてくるスタッフもいます。通常はチームで業務を行っていますが、他のメンバーと一緒に行動することが難しくなったり、あるいはこれまでできていた業務が難しくなったりということもあります。その場合、特例子会社からの異動は難しいので、例えばチームではなくて、個人でもできる業務を行ってもらったり、あるいはジョブコーチが個別に指導を行ったり、そういったことも行っております。
障害の有無にかかわらず、業務を行う上で必要な配慮を行うのがマネジメントだと思いますが、障害のある社員については、障害特性もあり、より個人の状況を踏まえた配慮が求められています。このような長期継続雇用に向けた企業側の地道な取組について、雇用率制度などの中で何らかの評価をしていただければと思います。私からは以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。眞壁委員、お願いします。
○眞壁委員 全国精神保健福祉会連合会、みんなねっとの眞壁です。10ページの障害者の年齢別雇用割合について、身体、知的、精神とあって、精神障害者の雇用が随分増えたなと感じて、とてもうれしく思っております。
ただ、年齢別に見ますと、精神の場合は24歳以下というのは余り多くなく、25歳以上からだんだん増えてきておりますが、これは当然というか、しょうがないというか、やはり精神の発症の時期が思春期以降、中学2年生ぐらいから発症する率が高いのです。とにかく10代、20代ぐらいまでは、症状に振り回されて、本当に働けるような状態ではないということもあったり、また、いろいろ波がものすごく激しいものですから、自分なりに波をどうやってうまく乗り越えていくかというか、そういうことを学ぶ期間が、人によりますが10年ぐらいはかかるのかなと感じています。
私の娘は35年前から統合失調症なのですが、その頃の薬と比べるとかなり副作用も少なくなっていて、働けるようになってきたんだなということはすごく感じるのです。ですから、24歳以降、ある程度落ち着いて就職したいという人たちが、それなりに支援に結び付いて就職できるようなシステムをきちんと作ってほしいと思います。やはり一番大事なのは、皆、一応医療にかかっていますから、大分落ち着いてきたから少し就職してみたいということであれば、医療の現場で、こういう所に行ったらいいよということがきちんとアナウンスできるような、医療との関係構築をきちんと精神の場合は考えてほしいなと思います。
知的の場合などは、特別支援学校に支援者や企業の方が行ったりとかすると思いますが、精神の場合はそういうシステムが余りないのではないかと思いますので、その辺を考えていただけたら有り難いです。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。ここで一旦、事務局から御質問の件をお願いして、その後、また質疑応答に入りたいと思います。
○小野寺障害者雇用対策課課長 障害者雇用対策課長の小野寺です。御質問があったところについてお答えしたいと思います。池田委員から、算定式の中における短時間労働の取扱いについて御質問があったかと思いますが、そこについては、算定式上の対象障害者である常用労働者数、それから分母の常用労働者数については、当然、労働時間の概念を加えた上での算定式になっております。失業者のほうについては、いずれも労働時間の概念というのは入っておりませんので、短時間についての考慮はしていないということがお答えになります。以上です。
○阿部分科会長 続けて、御意見、御質問を承りたいと思います。阿部一彦委員、小出委員、池田委員の順番でお願いします。では、阿部委員お願いします。
○阿部(一)委員 日本身体障害者団体連合会の阿部です。私の質問の関係は、中高年齢層の障害者への配慮ということで、15ページに入っていますが、これは最新のデータではなく、こういうことが考えられるということでのお示しでした。
先ほど塩野委員から御説明がありましたが、私たち身体障害がありますと、二次障害というか、残存機能への負担が大きくて、年齢とともに、より体力が減少するために、二次障害という問題が大きい人がたくさんいます。そのような中で、塩野委員から、いろいろな工夫をされている企業での雇用についてお話していただいたことはとても有り難いことだと思います。
15ページ、残念ながら2010年ですが、合理的配慮が義務化されて、雇用促進法の改正とともに、合理的配慮が働き方の中でどういうふうな成果をもたらしたかということを、2010年の結果はJEEDでしたが、またそういうことをお示しいただければ、企業の方々も障害がある人の雇用に関する具体的な配慮が分かりますし、何よりも、当事者はどういうことが大変だから困っているということを、企業に相談しやすくなると思います。そのようなことから、合理的配慮というのは両者で取り組むことだと思いますので、もちろん、塩野委員の御発言はとても参考になりますが、もっとそういう参考事例が上がってくることが、私たちにとっても働きやすい環境になりますし、企業としても働く環境の整備ができるということはとても大事なことかなと思いまして、意見と調査のお願いということで発言させていただきました。よろしくお願いします。
○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは、引き続き小出委員、お願いします。
○小出委員 育成会の小出です。よろしくお願いします。10ページ、雇用割合、特に知的障害のことで御説明いただきました。平成30年までの10年間、非常に若年層が増えているということ、これはおっしゃるとおり、特別支援学校、特別支援学校の教育体制、高等部を卒業すると100%就職するという仕組みがこの10年間で出来上がっておりまして、実質的にも実数は3倍伸びているというのはそのとおりでございます。
それに対して、14ページ、継続雇用の課題となり得る要因ということで、まず離職について書かれております。特に、知的障害者が特出しているのは業務上の課題、それからもう1つは人間関係の悪化があります。下のほうで、どういうことに配慮したらということで、職場でのコミュニケーションを容易にする手段や支援者の配慮ということで、知的障害の場合は雇用の継続について、職場での支援、体制に大きく左右されるということです。
特に近年、コロナになる前、要は働き方改革ということで、有給休暇をしっかり取りましょうということで、職場に支援者が少なくなるという現象がありました。そこで我々も危惧していたのですが、このコロナになって、また一層知的障害者の離職者が多くなりました。それはテレワークとか在宅勤務という傾向が強くなった、多くなったということです。ということは、知的障害者はいかに支援が必要な障害であるということであります。ですから今後、知的障害にかかわらず、支援が必要だということはありますが、特別支援学校の制度がそういうふうになって知的障害者の雇用率がうんと上がったとか、世の中の働き方で離職が多くなるとか、知的障害はそういう仕組みとか制度に非常に左右されるところがありますので、直接支援になりますが、ジョブコーチとかそういうことの御配慮を今後お願いしたいなと思います。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは、池田委員お願いします。
○池田委員 経団連の池田でございます。ありがとうございます。先ほど、長期継続雇用に関して発言しなかったため、先ほどの塩野委員からの発言に加えて、当会に寄せられた実態や意見について御紹介させていただきたいと思います。
障害者に長く働き続けていただくためには、御本人の努力と企業の継続的な取組の双方が欠かせないと思っています。企業においては、人材面では、社員によるサポート体制の整備のほか、精神保健福祉士や臨床心理士などの専門家における定着支援担当をしっかり配置すること、あるいは職業生活相談員やジョブコーチのカウンセリング担当を配置するなど、極めて丁寧なケアを行っています。業務、労務管理面では教育訓練などを行いながら、加齢によって業務遂行能力の低下が生じた場合には、業務変更や配置転換を行うなど、モチベーションの維持向上に取り組んでいます。
このほか、障害に起因する通院等に要する時間を有給休暇にするといった制度を導入している企業も多い状況です。さらに設備、施設面では、パソコン読上げソフトや専用パソコンツールの導入、会社構内の点字ブロックの設置、身障者用トイレや駐車場、車いす用のスロープ、リフトなど、様々な面で配慮をしています。このように企業は、障害者の方々に長く活躍をしていただく観点から、障害の配慮や就労定着支援体制の構築など、必要な投資を積極的に進めていることを御理解いただければと思います。
こうした実態を踏まえれば、一定の勤続年数を超えた場合は1.0ではなく1.5カウントとするなど、インセンティブの付与を御検討いただきたいと思います。また、中高年齢者等の長期継続雇用をされている障害者について、加齢等に伴う職業能力の低下があります。障害者が状態変化に伴って作業に支障を来すことにより、本人の御了解の下で週所定30時間以上の労働から、週所定20時間以上の短時間労働に移行した場合は、0.5ではなく、1.0カウントするといったことも御検討いただければと思っております。ただ、障害者雇用にとって望ましい措置、インセンティブを仕組んだ場合に、将来の法定雇用率が上がってしまうような仕組みについて、多少なりとも違和感を感じており、何らかの配慮、工夫ができないかと思っています。
最後に、雇用と福祉の連携強化の議論と関連しますが、加齢や状態変化などに伴って働き方を見直す必要性が生じた場合、御本人の了解の下で、A型、B型事業所など福祉への円滑な移行を可能にする仕組みの構築も重要だと思います。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。阿部委員、小出委員、池田委員から御意見がありましたが、事務局から何かコメントはありますか。
○小野寺障害者雇用対策課課長 ありがとうございました。障害者雇用対策課長の小野寺でございます。多岐にわたって御意見を頂きまして、特に雇用の量ではなく、質の評価をということであったり、それから今の雇用状況について、実態の雇用率2.15%という世界からすると、実は格差が広がっていて、やはり中小に対してもう少し徹底的な支援をしていかなければいけないという点ですとか、精神の方が増える中での医療機関との連携といったようなこと、様々な御示唆の深い御指摘を頂きましたので、今後の議論の中で追加的に関連するような資料も御用意できるかどうか検討してまいりたいですし、頂いた御意見等を踏まえて、また今後の議論も進めていきたいと思っております。
○阿部分科会長 次に、障害者雇用納付金制度について、資料の16~24ページまででお願いします。倉知委員、お願いします。
○倉知委員 公益委員の倉知です。皆様のいろいろな意見を聞かせていただきまして、高齢化の対応のところが議論になっていると思いました。特に知的障害者の高齢化については、20、30年ぐらい前に、確かJEEDで研究がされたと思うのですけれども、約10年ぐらい早く老化が始まるのではないかという結果が出ていたかと思います。その辺りは、塩野委員からもお話が出たと思うのですが、大体どれぐらいからこの加齢に伴う職業能力の低下が始まっていくのかというのは、もう少しどこかで検討いただければ有り難いと思っています。低下が始まる年齢がある程度分かってきたら、その年齢をダブルカウントするとか、先ほど池田委員がおっしゃったような、短時間雇用になっても1という、ダブルカウントと同じというような仕組みを検討することもありかなと思いました。
それから、眞壁委員がおっしゃった話の中で、医療機関からはなかなかスムーズに就労につなげられてないという、確かにそのとおりだと思っていて、これは医療機関の精神保健福祉士に対する就労に関する情報の提供とか、あとは養成教育の段階で就労のことをしっかり教えていくとか、そういうことも考えられるのかなと思いました。
あともう1つ、眞壁委員がおっしゃっていた精神障害者像が、多分統合失調症の方を中心にお話をされていたと思うのですが、今はどちらかというと、ベースに発達障害があって、精神疾患そのものはそんなに重度化してないけれども、生きづらさをダブルで抱えているという方が、精神障害者の中心になっている方々ではないかと思うのです。ですから、むしろ40代の方々が今、いろいろな生活のしづらさを抱えていて、就職が非常に難しくなってきていると実感していますので、少し状態像が変わっているということは御理解いただいたほうがいいのではないかと思いました。
○阿部分科会長 ありがとうございました。高橋委員の手が挙がっていますので、お願いします。
○高橋委員 ダンウェイの高橋です。事前に資料を提出していただいておりまして、資料を分けることが難しいことから、納付金制度に加えて、先ほどの雇用率制度、継続雇用制度も含めて説明と意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、コロナ禍における中小企業の現状と障害者雇用施策に対する商工会議所の意見について、ポイントを説明させていただきたいと思います。資料1ページ目、中小企業の景況感につきましては回復基調にありましたが、感染の再拡大により、12月の業況DIは-46.1と再び悪化いたしました。今般の緊急事態宣言により、飲食や観光など、サービス業を中心に更に厳しい状況に陥ることが懸念されています。
2ページ目を御覧ください。新型コロナの影響を受けている中小企業は、実に9割に上ります。そうした中、雇用・採用関連の対応につきまして、「雇用調整助成金を検討・申込」と回答した中小企業が増える一方で、「従業員の人員整理を検討・実施」は、昨年の春以降、一貫して4%前後にとどまっていることから、多くの中小企業は支援策を活用しながら、「事業の継続」と「雇用の維持」に懸命に取り組んでいることが伺えます。
3ページ目を御覧ください。中小企業の労働分配率につきましては、コロナ禍で更に上昇し、支払い余力が非常に乏しいことが見て取れます。
4ページ目を御覧ください。今年度の賃金の動向についてです。賃上げをした中小企業は38.2%で、前年同月の調査と比べ20ポイントも減少しています。また、賃上げした企業の多くは業績の改善が見られない中での賃上げであり、決して前向きな賃上げではないというのが実態であります。
5ページ目を御覧ください。政府方針に配意した最低賃金の大幅な引上げにより、影響を受ける中小企業の割合は増加の一途をたどっており、負担感が増しています。
6ページ目を御覧ください。中小企業に対して、4月から施行される同一労働同一賃金につきましては、「対応済・対応中」の中小企業が52%にとどまるなど、多くの中小企業が対応に苦慮しています。
7ページ目を御覧ください。同一労働同一賃金は非正規社員の処遇改善を伴いますが、対象企業のうち人件費が増加する中小企業は4割強に上ります。
8ページ目を御覧ください。一方で、価格転嫁は非常に困難なことから、最低賃金の引上げや同一労働同一賃金に伴う人件費増が中小企業の経営を圧迫しています。
9ページ目を御覧ください。こうした厳しい状況の中、障害者雇用政策に関して、資料に記載の多くの声が商工会議所に寄せられています。特に、法定雇用率の引上げに対する懸念や、コロナ禍で障害者が担っている仕事が大幅に減少していること、納付金制度の適用対象範囲の拡大に対する懸念、除外率制度の維持、採用や定着に対する支援策の強化に関する声が多く聞かれます。総じて、厚生労働省は法的強制力を持って障害者雇用を進めるのではなく、ノウハウやマンパワーが乏しい中小企業の厳しい実態を考慮すべき、との意見が大半を占めています。
10、11ページには、そうした声を基に、日本商工会議所が昨年9月に取りまとめ、厚生労働省へ提出した意見書の概要を記載しています。
資料の説明は以上です。コロナ以前から中小企業の経営環境は厳しい状況でありましたが、今般のコロナショックにより、景気を支えていたインバウンド需要は一気に蒸発して、緊急事態宣言により企業の活動は大幅に制限されていて、国内消費も低迷していることから、これまでにない厳しい状況が続いています。今後は、倒産や廃業の増加も大いに懸念されております。
本日は、障害者雇用制度、納付金制度、継続雇用が議論となっていますが、中小企業の厳しい状況に鑑みて、日本商工会議所は納付金制度の適用範囲の拡大には反対いたします。
一方、中小企業主認定制度の「もにす」の周知、認定された企業のPRなど、実質的なインセンティブをもっと後押ししていただいて、前向きに頑張っている企業をより応援することが、真の障害者雇用促進につながると思います。
さらに中小企業の障害者雇用を後押しする観点から、特例給付金制度と連動する形で、週20時間未満の短時間労働者を法定雇用率の対象とすることなども、併せて検討をお願いいたします。
以上、雇用率制度、納付金制度、継続雇用の検討にあたりましては、中小企業の厳しい実態を最大限考慮していただきますよう、切にお願いいたします。
加えて、私の個人的な思いとしまして付け加えさせていただきますと、前述した日商の作成資料9ページに、企業からの生の声のページがございます。その関連で、障害者雇用をする上で、ノウハウやマンパワーが乏しい中小企業への採用や定着に対する支援策等は、ハローワークに加えて、先ほど障害福祉課長様からも御説明いただきましたけれども、障害者総合支援法における就労支援サービス等の更なる周知と連携強化、客観的アセスメントと能力の可視化からのシームレスな質の高いマッチングと定着支援を進めることが必要だと思っています。
昨年12月に、当社は神奈川労働局初の、中小事業主認定制度「もにす」の認定を受けさせていただきました。当社社員の実例ではありますが、進行性の難病の視覚障害の社員が継続10年、在宅勤務、週4日勤務ですけれども、その能力を活かして、現在管理職を担っていただいております。彼らからはたくさん教えていただき、勇気もたくさん頂いています。これらを踏まえて、認定制度の事業の普及、事例の研究、そして今後予想されるジョブシフト、働き方改革などを踏まえて、今後の障害者雇用促進の在り方も併せて御検討いただけますようお願いいたします。以上になります。
○阿部分科会長 ありがとうございました。続けて、池田委員お願いいたします。
○池田委員 経団連の池田でございます。何回も恐縮でございます。納付金財政の安定化の観点から、幾つかコメントをさせていただければと思います。納付金に関しまして、例えば法定雇用率達成に近付いている場合には減額する、あるいは、3年連続で障害雇用ゼロとなっているなど一定の場合は増額する、といった措置を講じることも一案ではないかと思います。福祉施設等に業務を発注した場合、一定割合を納付金に充当できるようにするという措置も考えられます。
また、調整金に関しまして、納付金財政を持続可能なものとする観点、運用面の改善を図る観点から、支給期間と支給対象者数の上限を設定することも一案ではないかと思っています。
納付金に基づく助成金に関しては、十分に予算が確保できない状況にある中で、支出超過になりやすい財政構造を改善し、助成金の予算の確保、充実を図っていただきたいと思います。また、雇用保険二事業でも支出されているものもありますので、双方をどのように整理をしていくのかという点も1つの論点かと思います。
○阿部分科会長 ありがとうございました。ほかに御発言される方はいらっしゃいますか。では、高橋委員と池田委員から御意見を賜りましたけれども、事務局は何かコメントはありますか。特になければ進めます。
○小野寺障害者雇用対策課課長 御意見として頂いておきます。
○阿部分科会長 では、御意見ありがとうございました。納付金制度についてよろしければ、25ページからの納付金財政について、御質問、御意見があれば御発言をお願いいたします。内田委員、お願いいたします。
○内田委員 労働側の内田です。私からは意見を述べさせていただきたいと思います。3項目の納付金制度にも関わりますが、この制度につきましては、雇用率達成企業の割合が増えれば増えるほど、財源が枯渇していくという制度的な課題を抱えていると思っております。もちろん、将来的にはノーマライゼーションの理念を突き進めて、全ての企業で雇用率が達成されており、納付金制度がない状態を目指すことも大切だと思います。しかし、現在の雇用率未達成の企業による納付金を前提とした制度でよいのかという疑問もあり、その財源の安定化に向けた方策については、改めて考える必要があるのではないかと思っております。やはり、法定雇用率を超えて障害者を雇い入れた中小企業や、安定的な雇用のために十分な合理的配慮をしている企業への支援を考えたときに、財源の枯渇を理由に、調整金や報奨金が全く支給されないという状態にならないことが大切であると思っております。そのためには、支給する金額の調整とともに、それでも解決が難しい非常事態においては、緊急的な公的資金の投入などの制度も検討してはいただけないでしょうか。以上となります。
○阿部分科会長 ありがとうございました。続いて、阿部委員の手が挙がっていますので、阿部一彦委員お願いいたします。
○阿部(一)委員 日身連の阿部一彦です。26ページの表についてです。働く環境を整えるためには、就労支援基金等はすごく大事だと思います。合理的配慮はもちろん大事ですけれども、就労支援基金の周知ということも大事ではないかと思いながら、26ページのこの表を見させていただきますと、助成金が平成21年度、22年度はとても多く支出があったのに、令和元年度を見ると6億円ということで、職場の環境を整えるための助成制度は大事なことだと思いながらもですけれども、これが減少してきているのは、もう既に環境が整ってきているということなのか、どういうことなのかを説明いただきたいと思いました。職場環境を整えるというのはすごく大事なことであって、それが難しい場合に、合理的配慮がもちろんあるのだと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 今、もしほかに発言される方がいなければ、今の阿部委員の質問がありましたので、事務局からお願いいたします。
○小野寺障害者雇用対策課課長 障害者雇用対策課長の小野寺でございます。御質問の職場環境に対しての整備が整ったのでというようなことですが、そういった状況を踏まえての助成金の見直し等ではなく、全体としての平成20年代前半のほうでの各種助成金メニューを精査いたしまして、障害者の雇用の管理の改善に資するという、特化したものとしての助成金メニューの集約化ということで、これは会計検査院からの御指摘等も踏まえて見直しを行った結果と思っております。
ただ、一方で全体としての財源の中のやり繰りという部分で、調整金額が非常に高くなってきている中で、助成金の予算を圧迫しているというのは、28ページのグラフからもお分かりいただけるように、直近においての状況としては、それも一因あるかなと思いますが、いずれにしても安定的な財源としての運営をある一定見定めながら、助成金としては、先ほど来、御指摘あるような、中小企業に対してもっと手厚い支援をということもありますので、そこはハローワーク等関係機関を通じての専門的支援のみならず、こうした助成措置についても何らかの拡充というのも必要かと思いますので、併せて検討していきたいと思います。
また、今御指摘のあったような職場環境につきましても、障害者にとっての職場環境の整備に向けての企業側の取組について、より後押しができるような形について、ニーズと実態を踏まえながら改めて検討していきたいと思っております。
○阿部分科会長 阿部委員、よろしいですか。
○阿部(一)委員 少しだけですけれども、私は以前、企業を訪問させていただいたことが何度かありまして、同じ業種であっても、職場の環境によって働く障害者の負担は随分違うと思いましたので、過度の負担で若くての加齢現象が起きることもあり得るのかなということでお話させていただきました。この辺も大事だと思います。
また、就労支援基金の周知ということもすごく大事だと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。以上です。ありがとうございます。
○阿部分科会長 ありがとうございます。ほかにこの関連で御発言ある方はいらっしゃいますか。倉知委員、どうぞ。
○倉知委員 公益委員の倉知です。皆様方の意見を聞かせていただいて、感じたことを少しお話させていただきます。私は、納付金制度の対象というのは、雇用義務企業に拡大したほうがいいのではないかと思っています。というのは、やはり障害者雇用の意識付けのところが、納付金制度に該当するかどうかで大きく変わってきていると思うので、まずは意識付けを高めるためには、雇用義務企業に拡大したほうがいいのかなと思っています。ただ、未達成企業への支援体制を同時に作ることをセットでやらないと、余り意味はないのではないかと思っています。1つが、納付金制度の助成金を、ハード面が結構大きく額が出ているのではないかと思うのですが、ハード面からソフト面に、つまり人的支援のほうに少し振り替えられ、もっと厚くできないかなと思っているのです。今は助成金では、企業に対する様々な人的支援への助成はあるのですけれども、もう1つ、例えば埼玉県がやっているような、企業を支援するようなセンターみたいな形を作れないかなと思っています。そういうことで、障害者雇用に苦労している企業に対して支援するような体制ができないかなということ、または、企業支援センターみたいなのを作るのは莫大なお金が掛かるので非常に難しいというのであれば、例えばナカポツセンターに納付金会計で企業支援担当を置くとかいったような、同時に未達成企業の支援体制を作るというのがセットかなと思っています。
もう1つが、障害者総合支援法の就労定着支援事業のほうに、これは多分就職した後になると思うのですが、企業支援というのをもう少し明確にしていけないかなと思うのです。それと、就職した直後というのは、今は6か月間は就労定着支援事業の対象にならないのです。実はこの6か月間が一番濃厚な支援が必要な時期で、この6か月間の空白期間をなくして、就職したら就労定着支援事業に入れるというような形でいけば、企業支援ももっと手厚くできるのではないかと思っています。以上、2点です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。ほかに何か関連して御発言される方はいらっしゃいますか。よろしいですか。御意見ありがとうございました。
では最後に、その他です。御質問、御意見があればお願いいたします。それでは、仁平委員、長谷川委員、竹下委員の順番でお願いいたします。まず、仁平委員お願いします。
○仁平委員 連合の仁平です。障害者それぞれの状態に置かれている環境というのは様々ある中で、一般就労だけではない働き方がこのように用意されているということは、A型で就労することも一定の意味があるというように認識しています。一方で、本来は一般就労で能力を発揮できる障害を持った方が、何らかの理由で、A型事業所から一般就労に移行できない実態というのがあるのだとすれば、それを解消する仕組みが必要ではないかというように考えております。
その上で、用意していただいた資料を見ますと、A型の事業所数、これは平成23年の1,958から、直近の平成29年では4倍増加しているとありますが、この急増をどのように理解すればよいのか、実態を教えていただきたいと思います。働く側の要因と事業所側の要因があるというように思いますが、それぞれの要因がどのようなものなのか、改めて解説していただけないかと思っております。
まず、事業所側の要因という意味では、財政審などの資料を見ますと、7割の事業所で事業による収入より障害者に払っている賃金のほうが多いというデータも拝見したことがあります。経営改善が必要な事業所が多いという、そうした中でA型事業所が増加している要因は何かということです。
また、利用者数も増加していますが、これも後ろの資料を見ますと、地域による差も随分大きいと改めて認識しています。利用者がそういう中で年々増加している要因についても、どういったことが考えられるのか教えていただけないかという質問です。以上です。
○阿部分科会長 続けて御意見を伺おうかと思ったのですが、今、御質問が出ましたので、ここで事務局から今の仁平委員への御回答をお願いいたします。
○竹内社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課課長 障害福祉課長の竹内でございます。今、頂いた御質問についてお答えさせていただきます。まずは、A型の事業所数が伸びてきている理由ですが、とりわけ平成25年から平成28年にかけて、営利法人立のA型が非常に増えているという状況ですけれども、A型の事業を創設後、A型の利用ニーズが徐々に増えてきているということがありまして、事業の新たな担い手として営利法人を含む事業者の参入が増加してきているという理解をしております。
逆に、A型の増加に伴いまして、営利法人を中心に、利用者の方に賃金を支払うための十分な生産活動が行われていないという、先ほど御指摘もありましたけれども、経営が必ずしもうまくいっていないという不適切な事例も出てきているところでして、国からの報酬あるいは助成金などを頼りに運営をしているというようなケースが見受けられるということです。
そうした状況がありますために、A型の適正な事業運営に向けまして、平成29年4月に指定基準を見直すなどの適正化を図ったところでして、こうした数字の適正化の取組によりまして、A型の事業所数については大幅に伸びていたわけですが、営利法人の事業者の数についても、横ばいの傾向になっているというように思料しているところです。
利用者数が伸びていることについて、先ほども少し触れさせていただきました。利用ニーズが増えてきているということで、とりわけ精神障害をお持ちの方の就労ニーズというのが増えてきているということが、その背景にあるのではないかと考えております。以上でございます。
○阿部分科会長 仁平委員、よろしいですか。
○仁平委員 どうもありがとうございます。
○阿部分科会長 それでは、長谷川委員お願いします。
○長谷川委員 福島大学の長谷川です。よろしくお願いします。最初の頃に竹下委員が、中小企業における障害者雇用が近年進んでいない背景には何があるのか、その原因についても検討していくべきではないかというような御発言があったかと思います。その御発言を伺うなかで、その他のところで御説明のあったA型事業所の増加が、中小企業における障害者雇用を圧迫というか、中小企業と競合関係にある可能性はないのだろうかというように考えました。中小企業での障害者雇用というのは、地域での雇用を支えていたとは思いますけれども、その部分をA型事業所によって代替されてしまっているかもしれないなと思いました。A型事業所であれば福祉報酬も入りますし、そういったところと、中小企業が1人、2人、障害者を雇用するということが、雇用しやすさというと全然違うのではないかと感じています。
中小企業における障害者雇用が、いろいろな面からも難しいという御発言は高橋委員からもあったと思うので、その辺りについても、A型事業所が中小企業における雇用にどのような影響を与えているかというのも、少し見ていく必要があるのではないかと感じました。例えば40ページで、都道府県別で見た際に、雇用保険適用事業所におけるA型事業所の割合によって実雇用率の達成具合が随分違う、つまり、A型事業所があるほうが都道府県における実雇用率が高いという表を示していただいたのですけれども、では、果たして中小企業の実雇用率はどうなっているかというのを見ていくというのも、1つ実態を見る上では大事かなと思っています。
もう一点プラスして、納付金制度のところでお話すればよかったのかもしれませんが、納付金制度は法定雇用率の達成具合で、1人不足すれば、一律で月5万円ということを支払うというものですが、やはりそこでも、大企業と中小企業とでは、障害者を雇用するという負担感が随分違うのかなと思っています。納付金制度の考え方自体も、雇用する障害者数が増えていけばコストは下がっていくというような観点から、納付金の額5万円と調整金の額が2万7,000円と差が設けられていると思うので、そういう意味でも、1人か2人の障害者を雇用する中小企業について、そこで生じるコストというのは、どれぐらい大きいのかという、何十人も雇用する大企業と一律に考えられるものなのかというのは、もう少し慎重に検討する必要があるのではないかと思います。すみません、余り分かりやすく説明できなかったと思いますけれども、私からの意見です。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。それでは、竹下委員お願いいたします。
○竹下委員 日視連の竹下です。A型事業所のことで意見を述べさせていただきたいと思います。私は、A型事業所は重要な位置付けを持った事業所だとは思っているのですが、その位置付けというものが少し再検討が必要ではないかと思っています。私は、これは福祉と雇用の連携というよりは、福祉施策と雇用政策の中間的な位置付けを持った事業所なのだろうと思っています。もともとこの制度ができるまで、平成18年以前の話になるかと思いますが、その頃にあった議論というのは、福祉工場であったり、それ以外のそういう作業所などで、実質的には労働者性が肯定されるべき場面で労働基準法が適用されなかったり、あるいは労災法の適用が否定されたりするということがあったわけで、それらを克服するために、個別のいろいろな裁判も含めてあったりしたわけです。そういう中で、障害者の主体性をより尊重するという視点から、雇用継続型就労支援事業所という名前から分かるように、雇用という、言わば観念というか考え方を取り入れて、福祉との中間的なものを作ったというように理解しているわけです。
そうであれば、一般就労の場面で法定雇用率を議論するときに、一般的な企業とA型事業所とを同列に置いて法定雇用率を議論するというのは、どう考えても私はおかしいと思っているわけです。それらは、やはりもう少し在り方を、次元を変えるというのか、少し本質を見て、やはりそこは区別すべきではないかというのが1点です。
もう一点は、A型事業所に対する在り方という中で、もう少し働いている方々の主体性を十分に尊重しながら、それこそA型から一般の就労に移行できるシステム作りというのはどうすればいいのかという議論が余りされているとは思わないわけです。すなわち、A型事業所でどういう職業訓練や職業開発がされれば一般就労に結び付くのかというのは、余り私は聞いた記憶がないわけです。そうすると、本来の設置の目標というのは、A型事業所にとどまるのではなくて、A型事業所から一般就労への移行がシステム的に出来上がっていなければ、結局のところ、A型事業所がそれに目的化された状態で終わってしまうということになりかねないと思っているわけです。
そういう点からも、A型事業所も、先ほど言ったことと同じことかもしれませんけれども、事業所の位置付けと一般就労の結び付きというものを、単に就労移行という形の問題だけではなくて、どういうシステムを、あるいはどういう流れを作ることが障害者の一般就労に結び付くのかという議論も是非していただくことをお願いしたいと思っております。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。小原委員が手が挙がっていましたので、小原委員お願いいたします。
○小原委員 たくさんの資料を提示していただいて、ありがとうございました。私も意見というか、感想めいたことを1つ話します。まず、見せていただいた資料で、納付金の対象拡大のときに雇用状況が改善するという資料があったのですが、普通に聞いていたら、なるほどと、当たり前のように思われがちなのですけれども、これ、対象を拡大したときに雇用が増えるかというのは、意外に増えないという研究成果もたくさんあって、これは規制ではないのですので、お金を納めて雇用は拡大しないという国もたくさん、そういう地域もあったり、当たり前ではない中で増えているというのが見えていて、やはり意識は変わっている、変えるという方向に貢献しているのだろうというのが、まず最初に思ったことです。
その上で、中小企業の今日のお話をお伺いしていても、少し考えなければいけないと思ったのは、これからどんどん上がっていくというか、実態よりも、かなり高いところにあるためにディスカレッジされている中小企業に関しては、そういうところが何か出始めていくと、結局は未達成の所がずっと長期にわたって存在してしまうというような悪循環に入ってしまうかなというのが少し思ったことです。
短期的には恐らく良い議論というのと、長期的に見たときにしなければいけない議論は違うと思うのですけれども、余りに不可能のところというか、不可能なところに設定しているわけではないのでしょうけれども、途中、高橋委員からありましが、もう少し細かいところで実態を見てくださいという声が、多分中小企業の中で上がっているのは事実で、そこから大きく乖離をしてしまうと、逆に促進と反対の方向の作用が働いてしまう可能性はあるのかなと思って聞きました。そのためには、企業には必要なサポートは、必要なのでしょうというのは当たり前なことですけれども、ですから、実態把握と必要なサポートをするということが重要なのだろうなというのが、これからの議論だろうと思います。
もう1つ、障害を持って働く人についての労働時間という議論がやたらにされるのですが、私は全く詳しくないので是非教えていただきたいのですが、長時間、短時間という議論で終わると少し危険なのかなと思うところがあります。女性の労働などを話しているときにはよくあることなのですが、長時間か短時間かどちらがいいかという議論より、長時間から短時間にフレキシブルに移行できる、短時間より長時間にフレキシブルに移行できるということのほうが叫ばれていて、つまり、短いほうを選択する人もいるので、できないから短いのを選ぶような動きのときに垣根があるというところが大きなことのような気がするので、フレキシビリティのような話も、単に短時間労働が0.5カウントになるとかということと、労働時間だけの、長さだけの話だけではないところも必要なのかと感じました。感想だけです。以上です。
○阿部分科会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。倉知委員、お願いします。
○倉知委員 公益委員の倉知です。のことについて、少しコメントさせてください。我が国の障害者雇用は経済的にも、人的にもサポート体制がすばらしいと思いますし、企業の障害者雇用に対する取組も、すばらしいと思っております。そして、もう1つ、障害者総合支援法には就労移行支援事業もあり、就労継続支援のB型事業もあり、地域活動支援センター事業まであるわけです。そうなってくると、A型事業所の対象者が見えづらいのです。一般企業で働くのは困難だけれども、最低賃金を支払える対象者が、今どれぐらいいるのか、これだけ障害者雇用が進んでいる中で、多くの企業で働ける人が、A型事業所にとどまっているのではないかなというのが、かなり容易に想像できるわけです。
例えば、私がA型事業所の対象者を考えたときに、1週間で20時間働くのが難しい、いわゆる超短時間雇用ならば働けるという方が、企業では障害者雇用率にカウントされないからA型で働くとか、または障害のある方だけの集団で働くことで安心や安全感があるからとか、そういうことはあり得るなと思いますが、それ以外のほとんどの方は民間企業で働ける方ではないかなと思っています。つまりA型は、雇用への移行を促進していないのではないかなということを少し考えていかないと、A型がどんどん増えていくことで、何度も先ほどから出ているように、例えば中小企業の障害者雇用がなかなか進まないという大きな一因としてあるのではないかと思っています。
もう1つは、先ほどの資料であったように、A型事業所で働く利用者が障害者雇用の2割を占めているとなると、一体、障害者雇用の実態はどれぐらいあるのかというのが見えなくて、やはり1回A型事業所で働く利用者を外してみて、企業の障害者雇用の実態というのもしっかり見た上で、今後の対策を考えていくということが必要なのではないかと思っています。
○阿部分科会長 ありがとうございました。ほかに御意見、御質問はありませんでしょうか。よろしいですか。何か事務局から。
○小野寺障害者雇用対策課課長 大丈夫です。
○阿部分科会長 それでは今、皆様から御質問と御意見がありましたけれども、全体を通して何か追加で御意見、御質問があれば承りたいと思いますが、いかがでしょうか。阿部委員、お願いします。
○阿部(一)委員 日身連の阿部です。佐渡委員の提出された意見書というか、資料を読ませていただいての確認というか、質問ということでよろしいでしょうか。
○阿部分科会長 はい、どうぞ。
○阿部(一)委員 地域によっては、中小企業が多い地域というのはとてもあると思いますし、私が暮らしている地域もそうなのですけれども、その中で事業協同組合算定特例ということで、中小企業の組合を作って、雇用率を達成しているということなのかなと思いました。この現状と、佐渡委員の報告にもこの制度の活用が進んでいないという報告もありましたので、どういう課題があるのかということについて教えていただいて、中小企業が多い地域では、これは、言ってみれば大事な仕組みなのかなと思いながら、確認させていただきたいと思いました。佐渡委員の報告があってから質問しようと思っていたのですが、書面の説明ということで、そのようにさせていただきます。よろしくお願いいたします。
○阿部分科会長 ありがとうございます。佐渡委員、何か今の時点で御発言はありますか。
○佐渡委員 算定特例の制度自体が進んでいないというところについては、我々愛媛県の協同組合では、障害者雇用というか、障害者の雇用の促進に向けて、そういう制度を利用させていただいているところなのですが、障害者の方の働き場所の確保がないところに雇用はありえないわけで、その辺を見ながら申し上げています。下のほうにも書いてありますけれども、優先調達法なり入札の制度等々に、もっとこれをしやすい環境になるようなインセンティブ的なところが進めば、もっといろいろな事業協同組合でそういう制度を利用できて、なおかつ進んでいくのではないかと思って書かせていただきました。
○阿部分科会長 ありがとうございます。それでは、御質問がありましたので、事務局からお願いします。
○小野寺障害者雇用対策課課長 障害者雇用対策課長の小野寺でございます。今、御指摘のありました事業協同組合等算定特例ですけれども、これ自体は今、事業協同組合等として認定されているのは令和元年時点で8団体となっております。御指摘のとおり、この取組は進んでおりませんで、この辺りについては、実は次の議論につなげるために、今現在、認定を受けている事業協同組合も含めてヒアリングなどを行わせていただいて、どういう枠組みを作ると、もっと取組が進んでいくかといったようなことも把握しているところでありまして、これもまた次回以降、議題のときにお示ししたいと思っております。いずれにしても、枠組みとしては、中小それぞれが個々に取り組んでいくのは難しい中での効果的な枠組みになるはずであったものだと思いますので、少し利活用に向けて検討してまいりたいと思います。
○阿部分科会長 阿部委員、よろしいですか。
○阿部(一)委員 ありがとうございます。是非この活用ということで、またお知らせいただきたいと思います。いろいろな地域で取り組めればいいと思います。ありがとうございました。
○阿部分科会長 ありがとうございます。ほかに御発言される方はいらっしゃいますか。よろしいですか。それでは、議題(1)はこの辺りにさせていただきたいと思います。本日も、委員の皆様から大変貴重な御意見を多数頂きましたので、事務局でこれらの意見を踏まえて論点整理等をしていただいて、また本日頂いた御質問などもありますので、調査も含めてお願いしたいと思います。この件は、また議論させていただきたいと思います。
それでは、議題(2)の「その他」に移りたいと思います。事務局から説明がありますので、お願いします。
○小野寺障害者雇用対策課課長 障害者雇用対策課長の小野寺でございます。その他としては、2つほど共有させていただきたいと思っておりまして、資料で申し上げますと、参考資料3-1から参考資料3-4、参考資料4ということでお示ししております。
1点目は、今日もスケジュールの中で御報告を申し上げましたが、検討会の中に置きますワーキンググループの開催が進んでおります。ワーキンググループについては、前回も共有させていただいたところでありまして、参考資料3-1に基づいて開催が行われております。今回、新しく共有させていただいたのが参考資料3-2以降でありまして、各ワーキンググループで、主な論点として事務局のほうから提示をいたしまして、こういった観点での議論が進んでいるということを、今日のところは共有させていただいておきたいと思います。また、どういった具体的な議論あるいは意見が出ているかということについては、回数を経た後に取りまとめて、中間報告としてこの分科会でも御報告申し上げたいと思います。
もう一点は、令和3年1月15日にプレスをしております。今日もデータとしてはお入れしておりましたが、令和2年の雇用状況の集計結果について参考資料4としてお示ししております。
ポイントだけを申し上げますと、先ほど御報告申し上げましたとおり、令和2年6月1日現在の障害者の雇用状況については、雇用障害者数は約58万人ということでありまして、17年連続で過去最高、また、実雇用率については、法定雇用率2.2%に対しまして、2.15%ということで、こちらのほうも9年連続で過去最高を更新しています。という意味でいうと、全体としては、障害者雇用は着実に進展しているということかと思っております。
それから、実雇用率の向上の要因としては、もちろん各企業の御努力によるものなのですけれども、特に大きな企業での牽引ということと、それから障害者、種別で見ますと精神障害者を中心に雇用が進んでいるという状況かと思っております。
ただ、今日も御指摘を頂いておりましたが、一方で中小企業における取組というのは、若干遅れを見ておりまして、今回、法定雇用率達成企業割合は48.6%ということですが、未達成企業だけで見ますと、未達成企業の8割以上が中小企業であるということと、99人未満で見ますと、この企業層の全体の9割が雇用ゼロ企業ということになっておりますので、やはり小さな企業における最初の一歩を、どのように積極的にアプローチして支援をしていくかということが課題になっているかと思っております。
なお、公務のほうについても、雇用障害者数は前年を上回っておりまして、こちらも教育委員会等課題はありますが、着実に進展していると考えております。私からは以上でございます。
○阿部分科会長 ありがとうございました。この件に関して、皆様から御質問や御意見があれば、「手を挙げる」ボタンをクリックしていただいて、私が指名した後に、聴覚・視覚障害者の方々の皆様への情報保障の観点から、お名前を名乗って御発言いただきたいと思いますが、何か御質問、御意見はありますでしょうか。よろしいですか。
それでは、御質問、御意見はないようですので、本日の議論は終了とさせていただきたいと思います。最後に事務局から連絡事項がありましたらお願いします。
○小林障害者雇用対策課課長補佐 障害者雇用対策課課長補佐の小林でございます。次回の日程については、2月19日の開催を予定しております。詳細は追って、事務局より連絡をさせていただきます。以上です。
○阿部分科会長 これをもちまして、障害者雇用分科会は終了とさせていただきたいと思います。
なお、労働政策審議会運営規程が改正されまして、議事録の署名が廃止されることとなりました。したがいまして、この分科会からは議事録署名人の指名は行わないこととさせていただきたいと思います。
本日もお忙しい中、活発に御議論いただきましてありがとうございました。また、次回もよろしくお願いいたします。