令和2年度職場における化学物質管理に関するリスクコミュニケーション(意見交換会)(第1回)議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

令和3年1月25日(月)13:30~15:58

議題

  1. 1基調講演
    1. (1)「職場における化学物質等の管理のあり方~未来編~」
      厚生労働省 労働基準局 安全衛生部
      化学物質対策課 化学物質対策室 室⾧補佐 植松 宗久
    2. (2)「我が国における化学物質管理の現状と課題について」
      慶應義塾大学 名誉教授 大前 和幸
  2. 2意見交換会

議事

議事内容
○事務局 それでは、定刻となりましたので、ただいまより令和2年度第1回職場における化学物質に関するリスクコミュニケーションを開催いたします。
 本日の東京開催においては、政府からの緊急事態宣言の発出、新型コロナウイルス感染症が拡大していることを鑑み、対面式の会場参加を中止とし、ウェブ会議システム「Zoom」を使用してのウェブ参加のみとさせていただく運びとなりました。開催形式変更となりましたことをお詫び申し上げます。
 さて、このリスクコミュニケーションにおいては、働く方の健康障害を防止するために厚生労働省が行っている化学物質のリスク評価に当たりまして、関係する事業者の方、また事業者の団体の方との情報共有、意見交換会を行うために実施しているものです。厚生労働省からの委託を受けまして、私どもテクノヒルが運営を担当しております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日のスケジュールについて簡単に御説明いたします。
 まず、「職場における化学物質などの管理のあり方」というタイトルで、厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質対策室室長補佐の植松様に30分ほど御講演いただきます。
 次に、「我が国における化学物質管理の現状と課題について」というタイトルで、厚生労働省の検討会である化学物質のリスク評価検討会で行われた検討内容につきまして、検討会委員でいらっしゃいます慶應義塾大学、名誉教授の大前先生に30分ほど御講演いただきます。
 その後、10分間の休憩を挟みまして、後半の意見交換会では、コーディネーターを東京理科大学薬学部医療薬学教育研究支援センター社会連携支援部門教授の堀口先生にお願いし、パネリストとして基調講演の大前先生、植松室長補佐とDIC株式会社レスポンシブルケア部化学物質情報管理グループグループマネジャーの山口様にお入りいただいて、あらかじめお寄せいただいた御質問についての回答や総括的なお話をさせていただきます。なお、全体の終了は16時半を予定しております。
 それでは、最初の基調講演、「職場における化学物質などの管理のあり方」を厚生労働省の植松室長補佐、どうぞよろしくお願いいたします。
○植松室長補佐 皆さん、こんにちは。御紹介いただきました厚生労働省、労働基準局、安全衛生部、化学物質対策課、化学物質評価室で室長補佐をしております植松と申します。
 本日は、「職場における化学物質等の管理のあり方(未来編)」ということで、30分程度のお時間をいただきまして御説明させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 今日のお話で皆さんに三つほど、お伝えしたいポイントがございます。一つは、今後、化学物質管理のあり方が大きく変わるということを、まず御理解いただきたいということでございます。二つ目は情報の継続的な収集をお願いしたいということでございます。国としてはいろいろ検討会などを行っているわけでございますけれども、我々、少ない予算を活用しながらホームページ等を更新しつつ、そういった情報を我々としても発信する努力はしておりますけれども、ぜひ、皆さんにおかれましても、情報を収集する姿勢というものを継続的に保っていただければ、こういったリスクコミュニケーションだけではなく日常的な情報共有ができるのかなというふうに考えております。
 あと、3点目でございますけれども、こういったリスクコミュニケーションの場などに参加いただける皆さんにおかれましては、すごくありがたいのですけれども、ぜひ、周りの皆さんにも、こういった機会で得た情報というものを共有していただきますと、社会的にというか、もう少し広い範囲で化学物質に関する理解を深めていただけるのかなというふうに思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、資料に沿って説明を開始させていただきます。
 本日のコンテンツということで、大きく三つに分けてございます。
 一つは、これまでの国によるリスク評価の御説明を簡単にさせていただきたいと思います。
 二つ目は、今日のメインになりますけれども、職場における化学物質管理等のあり方に関しまして、検討会とワーキンググループをつくって議論を重ねてまいりましたので、今回、それの御紹介ということでございます。それから、今後に向けた検討ということで、検討項目の御紹介ということでさせていただきます。
 まず初めに、これまでの国によるリスク評価ということで御説明させていただきます。
 右上の四角で囲ってございますけれども、概要でございますが、リスク評価というものが何かといいますと、国内外の情報を基に、特に有害性の高いと考えられる物質を選定しまして、その物質の有害性情報を収集するとともに使用状況を調査し、専門家による検討を経て必要に応じて特別規則に追加するというような仕組みでございまして、平成18年度から導入してきたものでございます。
 特に、有害性の中でも、我々としましては発がん性に着目していろいろとやってきたわけでございまして、「国によるリスク評価」と一番真ん中に書いてありますけれども、その前段として発がん性スクリーニングというようなものを行って、まず、発がん性の有無というものを国としてもしっかりと確認しながら、発がん性があると評価されたものであるとか、そのほかにも国際機関等の情報で発がん性があると分かったような物質について、優先的に国によるリスク評価の対象物質に選定しましてリスク評価を行ってきたという流れでございます。
 リスク評価も二つに分けられまして、有害性の評価とばく露評価というものに分かれます。有害性評価というものは、その物質が持っている固有の有害性について情報収集して評価するというものでございますし、ばく露評価というものは、実際の現場でばく露されている実態等を調査し、評価をすると。その二つを組み合わせて、実際にリスクがどれぐらいあるのかということを確かめるのがリスク評価という仕組みになります。それらのリスク評価を経て、規制措置等が必要とされた物質につきましては、特別規則への追加ということでやってきたところでございます。それぞれのステージにそれぞれの検討会が割り当てられていたというのを、このスライドで表しているところでございます。
 ここで、こういった図を用意しましたけれども、ちょっと見ていただきたいのですけれども、横軸として有害性の情報量の多いか少ないかというものと、縦軸として有害性が大きいか小さいかということで整理させていただきました。これまでのリスク評価というものは、特に有害性、発がん性を主とした有害性の高いかどうかということで、特に、第1象限にグルーピングされるような物質の中から対象物質を選んでやってきたところでございますけれども、全体を見ると、情報量にかかわらず有害性の小さい物質群に関しては、それほど注目しなくてもいいのかなと思いますけれども、最も注目すべきは、有害性情報が十分にないものであるにもかかわらず、実際は有害性が高いような物質群が相当数あるというところで、第2象限に区分されるような物質に関しては、今後、しっかりと対応していく必要があるというふうに考えてございます。
 以上のような考え方をまずベースとしまして、我々としては、今まで行ってきたリスク評価を今後どういうふうに変えていくかという見直しを重ねてまいりました。
 今回、職場における化学物質管理等のあり方に関する検討会というものの中で、昨年の末、12月23日に中間取りまとめということで、内容を一旦、取りまとめさせていただきまして、今度、2月1日に安全衛生分科会のほうに報告するというような運びになってございます。その中間取りまとめの内容を今日は御紹介させていただくということにしてございます。大きく四つに分けてございますけれども、まず、検討会の趣旨と開催状況、それから、これまでにまとまった検討結果の内容、それから今後の検討事項ということと検討スケジュールと、順に御説明させていただきます。
 まず、検討会の趣旨と開催状況を簡単に御説明させていただきますけれども、そもそも国内で輸入、製造、使用されている化学物質というものがどれぐらいあるかということでございますけれども、約7万物質程度あるということですが、その中で危険性や有害性が不明な物質というものが少なくないと。むしろ、相当数ある状況にあるということでございます。
 他方で、化学物質による労働災害というものは年間約450件程度で推移しているということで、近年であるとオルト-トルイジンであるとかMOCAであるとかによる膀胱がん事案であるとか、特に、法令による規制対象外の物質による労働災害という事案も頻発しているような状況でございます。
 こういった状況に鑑みまして、検討会の趣旨・目的ということでございますけれども、化学物質による労働災害を防ぐために、学識経験者、労使関係者による検討会を開催して、今後の職場における化学物質等の管理のあり方について検討するということで検討会を設置したわけでございます。
 検討会に関しましては、ここに書いてあるような三つの柱について検討を重ねてまいりまして、一昨年より昨年の12月までに11回、開催してまいりました。また、中でも技術的な事項につきましてはワーキンググループを設置しまして、昨年10月から計3回にわたり検討を重ねてまいったところでございます。
 それでは、早速、これまでにまとまった検討結果ということで、順に御説明させていただきたいと思います。
 まず、現状認識ということで皆さんと情報を共有させていただきたいと思うのですけれども、まず、労働災害の発生状況というところで(1)でございますが、注目していただきたいのは、特別規則の対象物質によって労働災害が発生したものは全体の約2割弱程度にあるにもかかわらず、他方で、特別規則の対象以外の物質によって起こった労働災害というものが約8割程度あるというところでございます。特に、内容を見てみますと、吸入して急性中毒が起こった割合よりも、目や皮膚の障害といった実際に接触して労働災害が起こったというような割合が高く出てきているところでございます。
 それから、有害作業に係る化学物質の管理状況というところで、作業環境測定を実施していただいた結果、最も状態が悪いとされる第3管理区分の割合というものが増加傾向にあることが見てとれるというところでございます。
 それから、リスクアセスメントの実施率というものも50%程度にとどまっているというような状況がございまして、実施しない理由の上位としては、状況が分かるような人材がいないであるとか、方法が分からないといったような声が寄せられているところでございます。
 それから、検討会の中で事業者さん等にヒアリング等も行っているのですけれども、中小企業さんにおける状況ということで確認してみたところ、企業規模が小さいほど法令の遵守状況が不十分な傾向にあるということと、労働者の有害作業やラベル、SDSに対する理解が低いというような声が寄せられているところでございます。
 それから、諸外国における化学物質管理の情報もまとめてございますけれども、欧州や米国ではGHS分類で危険・有害性のある全ての物質がラベル表示、SDS交付の義務対象とされているということでございます。また、欧州は、個別規制はしていないけれどもリスクアセスメントが義務づけられているということと、細かい流通規制が敷かれているというところでございます。また、米国のほうでは、インダストリアル・ハイジニストなる専門家の判断が重視されているというような状況でございます。
 こういった現状認識を背景としまして、今後、どういうふうに化学物質の規制体系を見直していくかということを検討してまいったのですが、ここにそのエッセンスというものをまとめてございます。現行というものが今までの仕組みですけれども、有害性、特に、がん原性の高い物質につきまして、国がリスク評価を行って特定化学物質障害予防規則等の対象物質に追加して、ばく露防止のために講ずべき措置を国が具体的に法令で定める仕組み、便宜的に「個別管理規制」と呼ばせていただきますけれども、そういったやり方でやってきたものでございます。が、今後は見直して、国がリスク評価を行わないような仕組み、事業者さんの自律的な管理に重点を置いていくような形にシフトしていきたいというふうに考えております。具体的には、国としましては、ばく露濃度等の管理基準を定めて危険性・有害性に関する情報伝達の仕組みを整備・拡充するということと、他方で、事業者さんがその情報に基づいてリスクアセスメントを行って、ばく露防止のために講ずべき措置を自ら選択して実行するということを原則とする仕組みということで「自律的な管理」とまとめております。
 こちらが現在の化学物質規制の仕組みということの概念図でございます。上に行けば行くほど規制が厳しいというような図でございまして、特に、一番上の三角形は製造・使用等の禁止の対象物質ということで、石綿等、8物質がここに該当するようになっております。その下の台形が、その次に厳しい規制の対象となっているということで、特化則や有機則等に基づく規制対象物質ということで、122物質程度、対象となっているわけでございます。その下に行けば行くほど、今度は規制が厳しくないというような図でございます。
 この図で、上に行けば行くほど有害性が高いかというと、実は、そうではなくて、有害性が高いと分かっているものは、もちろん厳しい規制の対象となるということで、上のほうの三角形ないし台形のほうに区分されるんですけれども、実は、下のほうの台形に区分されるような物質の中にも有害性が高い物質が多数存在するというところが問題であるかなというふうに認識しております。
 こちらの図は、これまでどこにも出したことはなくて、このリスクコミュニケーションのために僕が便宜的にまとめたものですが、今後、日の目を見るか、ちょっと分からないのですけれども、皆さんに御理解いただきやすいかなと思ってまとめた図でございます。これは見直した後の化学物質規制の仕組みということなのですけれども、これからは有害性の情報量が多いか少ないかということで物質がグルーピングされると。それらに応じて、事業者さんの自律的な管理と国による支援というものを整理していきたいというふうに考えてございます。
 詳しくは後々のスライドのほうで説明させていただきたいと思いますけれども、簡単に、ここで紹介させていただければと思いますが、まず、国がGHS分類を順次、行っていくというのが基本的な出発点になろうかと思います。国がGHS分類を行って危険・有害性が確認された物質に関して、事業者さんにおかれましては、ラベル表示であるとかSDS交付による危険性・有害性情報の伝達を義務としたいということを考えてございますし、併せましてSDSの情報等に基づくリスクアセスメントの実施も義務とさせていただきたいというふうに考えております。
 それら国がGHS分類を行って危険性・有害性が確認された物質の中でも、さらに一定程度の情報量があるものに関しては、ばく露限界値というものを設定してまいりたいというふうに考えてございます。ばく露限界値は何なのかというものは、次のスライドで御説明させていただきます。
 そういった形で、逆に、国が、まだGHS分類を行っていないような状態であるものに関しては、一番左の四角にグルーピングされるかと思いますけれども、そういった物質に関しては、ラベル表示、SDSの交付及びリスクアセスメントに関しては努力義務とさせていただきたいというふうに思っております。
 ばく露限界値のあるなしで区分けすると、ばく露限界値が設定されているような物質に関しては、ばく露濃度を当該ばく露限界値以下とすることを義務づけるということと、ばく露限界値が設定されていないような物質群に関しても、できるだけばく露濃度を低くするような措置を講じるということを義務とさせていただきたいというふうに考えております。
 それから、今までのところは経気道というか、口から吸入する場合のばく露濃度に着目した扱いですけれども、化学物質にばく露する経路はそれだけではなくて、皮膚への刺激性であるとか皮膚から吸収されるような場合も想定されます。そういった皮膚を介した健康影響があるような物質であるとか、また、健康影響があるかどうか分からないような物質につきましては、保護眼鏡であるとか保護手袋であるとか保護衣等の使用を義務とさせていただきたいというふうに考えてございます。
 これら自律管理にシフトしていくに当たっては、なかなか、特に中小企業さんのほうで対応し切れるかどうかというのがすごく論点になってくると思うんですけれども、国として行うべき支援というものをここでまとめてございます。標準的な管理方法等をまとめたガイドラインの作成であるとか、インダストリアル・ハイジニスト等の専門家による相談等の支援体制の整備であるとか、こういったことを検討しているところでございます。
 それから、この自律的な管理の枠組みだけでは対応し切れないような場合も想定されますので、例えばアスベスト等、非常に管理が困難な物質もあろうかと思いますし、物質という分け方ではなくて、ある特定の作業に関して、国がしっかりと規制すべきという状況も考えられるので、そういった場合には、国が個別に管理が困難な物質もしくは作業ということで、国がその都度、指定して、製造・使用を禁止したり許可制にしたりといったことを考えております。
 このように仕組みをシフトしていくに当たって、現在の特化則の対象物質の管理はどうするかという疑問があろうかと思いますけれども、基本的には、現行の特化則の対象物質は、引き続き同規則に基づいて管理していただくということを想定してございます。ただし、一定の要件を満たした企業さんにおかれましては、特化則の適用を除外するということで検討してございます。今、一定の要件は、どういったことを考えているかといいますと、対象物質となるような化学物質による健康被害が出ていないであるとか、専門人材がしっかりと配備されているとか、そういったことを念頭に置いて要件を整理しているところでございます。
 あと、もう1点、お伝えしたいのですが、今後、特化則等への物質の追加は基本的に行わないということで整理してございます。
 次に、先ほども少し触れましたけれども、ばく露限界値と暫定ばく露限界値というものの御説明でございます。この言葉自体は、まだ確定というわけではなくて、仮称ということで整理させていただいておりますが、自律管理における判断基準を明確化して化学物質へのばく露防止対策の適切な実施を促進するために、国が指標値を設定することというふうにしております。
 ばく露限界値のほうですけれども、特に、労働者が吸入する有害物の濃度を当該濃度以下に保つことを義務ということでさせていただきたいというふうに思っております。基本的な考え方は産衛学会の許容濃度と同様の考え方になろうかと思いますけれども、労働者が1日8時間、週40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で化学物質にばく露される場合に、当該化学物質の平均ばく露濃度がこの数値以下であれば、ほとんど全ての労働者に健康上の悪影響が見られないと考えられる濃度ということで設定することを想定しております。
 また、有害性情報に応じましては、最大許容濃度としてのばく露限界値を示すということで、これは作業中のどの時間でも、ばく露濃度がこの数値以下であれば健康上の悪影響を及ぼさないと判断される濃度ということで、いわゆるシーリングといったものを想定しているところでございます。
 ばく露限界値の設定に関しては、やはり根拠、科学的根拠をもってして設定してまいるところでございますけれども、そういった個別に科学的根拠が見つからなくて、なかなか指標値が科学的根拠をもってして決められないといった場合に、どういった対応が考えられるかということで出てきた概念が暫定ばく露限界値ということでございます。こちらは、2番目のほうを見ていただければと思いますけれども、有害性情報等が十分ではなく、ばく露限界値が設定できない物質に対して、多量の吸入による健康障害を予防する観点から、物質の種類によらず、少なくとも当該濃度以上、ばく露させてはならないとする濃度を指標値として考えております。ここで注意いただきたいのは、たとえ当該濃度以下であっても、未知の毒性による健康障害の可能性があるということに留意していただきたいというところでございます。
 こちらは、どういった決め方で暫定ばく露限界値を設定していくかというのは、まさにワーキンググループのほうで今、議論を重ねているところでございますので、また、情報は議事録等で御確認いただければと思いますし、なるべく皆さんが実際に働かれている現場に合ったような形で、暫定ばく露限界値をどういうふうに設定するかということもそうですけれども、皆さんに理解を得られるような形でまとめていきたいというふうに考えております。
 続きまして、新しい管理の仕組みを詳細に個別に御説明させていただければと思いますけれども、まず、GHS分類の分類済み危険有害物の管理ということで、これは国がGHS分類をするか、しないかということで大きく分けるというところでございます。国がGHS分類をした結果、危険性・有害性の区分がある全ての物質に関しましては、ラベル表示、SDS交付の義務対象とさせていただきたいということと、危険性・有害性情報に基づくリスクアセスメント、及びその結果に基づく措置の実施を義務づけたいというふうに考えております。
 リスクアセスメントの結果に基づく措置としまして、ここの四角で囲ってございますけれども、下の1から4の優先順位の考え方に即して事業者が自ら手段を選択する、ここが自律的な管理の肝というところでございますけれども、そういうことで、労働者が吸入する有害物質の濃度をなるべく低減することを義務とさせていただきたいということでございます。
 まず、1番として危険性・有害性が、より低い物質への変更等によるハザードの削減、2番目として密閉化・局所排気装置の設置等によるリスクの低減、3番目として作業手順の改善、立入禁止場所の設定、作業時間の短縮化等によるリスクの低減、4番目としまして有効な保護具の適切な選択、使用、管理の徹底によるリスクの低減ということで、いわゆるスリーステップアプローチという本質安全化、工業的な手法、管理的手法というような流れに沿って、ここに提示させていただいております。
 皮膚や眼への刺激性、皮膚腐食性または皮膚吸収による健康障害のおそれのある物質の取扱いであるとか労働災害が多発するなど、管理・使用が困難と認められる物質、特定の作業、特化則等の対象物質の取扱い等につきましては、先ほど御説明させていただいたので割愛させていただきます。
 次に、国が、まだGHSの分類をしていないような物質の管理についての説明ですけれども、これらに関しては、先ほど申し上げましたけれども、ラベル表示、SDS交付、リスクアセスメントに関して、努力義務とさせていただきたいということでございますが、基本的なリスクアセスメントの結果に基づく措置ということで、国がGHS分類をした物質の扱いと同様の情報を載せてございます。同様の考え方によって、労働者が吸入する有害物質の濃度をなるべく低減していただきたいというふうに考えてございますし、また、直接接触しないような作業手順の採用と皮膚障害等防止用保護具の使用を義務とさせていただきたいというふうに考えてございます。
 これら自律管理に関しましては、使用者だけではなくて、労働者等、関係者の中でしっかりと情報共有していただきたいということを考えてございますので、3番目ですけれども、労使等による化学物質管理状況のモニタリングということで項目を整理してございます。
 自律的な管理の実施状況ということで、リスクアセスメントの実施結果であるとか労働者のばく露の状況、保護具の選択・使用等の措置の実施状況などにつきましては、衛生委員会等において労使でしっかりと共有していただきたいということ、また、自律的な管理の実施状況については、しっかりと記録をしていただきまして一定期間の保存をお願いしたいということ、また、化学物質の取扱いの規模が一定以上の企業におかれましては、定期的に自律的な管理の実施状況につきまして、インダストリアル・ハイジニスト等の専門家の確認・指導を受けることというのを義務とさせていただきたく思っております。
 それから、健康影響の確認等の仕組みということでございますけれども、こちらは自律管理ということでございますので、健康診断に関しては、法令的な義務づけとすることは想定はしておりません。健康診断の実施の要否というものは、労使が判断するということに整理させていただきたいと思っております。健康診断を実施する場合の健診項目というのは、健診を実施する医師または産業医の判断に委ねたいということ、他方で、労働者がばく露限界値を超えてばく露した可能性がある場合には、臨時の健康診断の実施、これに関しては義務とさせていただきたいということでございます。また、年1回実施する一般定期健康診断の問診におきましては、化学物質の取扱い状況等を聴取して、健康への影響の有無について特に留意して確認していただきたいということでございます。
 続きまして、化学物質の危険性・有害性情報の伝達強化ということで項目を整理してございます。
 まず、1番目にラベル表示・SDS交付を促進するための取組ということでございますけれども、現在のラベル表示・SDS交付の対象物質の整理ということでございますけれども、主として一般消費者の生活の用に供するためのもの以外の製品については、すべからく対象ということになっておりますが、近年、一般店舗販売やインターネット販売されているというような状況もございますけれども、そういったものに関しても、一般消費者の生活の用に供するためのもの以外の製品については、全てラベル表示・SDS交付の義務対象であるということを改めてメッセージとしてお伝えするということを考えてございます。
 また、ラベル表示・SDS交付の義務対象外の化学物質であっても、化学物質の流通におきましてはラベル表示・SDS交付を伴うことが基本であるということを、行政だけではなく、業界であるとか労働組合の方々と協力して情報発信を広めてまいりたいということで考えております。
 また、ラベル表示・SDS交付の義務に関して違反をしていながらも、なかなか是正していただけないような場合には、対象製品名等を公表するなどにより指導を強化してまいりたいというふうに考えてございます。
 次に、SDSの記載内容と交付方法等の見直しということでございますが、SDSの記載項目の追加ということで、こちらは国際的には一般的であるというふうに聞いておりますけれども、推奨用途と使用上の制限というものを追加したいというふうに考えております。これは、当該化学物質を譲渡または提供する時点で想定しているものを記載すれば足りるということでございます。
 また、危険・有害性情報の定期的な見直しということで、SDSの交付対象物質の譲渡・提供者は、当該物質に係る危険・有害性情報の更新状況の定期的な確認と、更新されている場合にはSDSを再交付していただくということを義務づけたいということでございます。
 また、SDSの交付手段ということですけれども、近年というか、今までは紙ベースで情報を伝達していただいたようなところでございますけれども、今後はインターネットを通じた伝達方法も可とするということで、容器に印字されたQRコードを読み取っていただくであるとか、ホームページ等でSDSの内容を閲覧できるようにしていただければ、それでもよいのではないかということでございます。
 また、譲渡・提供時以外の場合における情報伝達の強化というところでございますけれども、もともと事業者間での譲渡・提供時に情報をしっかりと伝達するということを整理してまいったのですけれども、それだけではなくて、事業場の中でも情報伝達というものをしっかりしていく仕組みに整備する必要があるのではないかということでございまして、二つ例示させていただいておりますけれども、購入したGHS分類済みの危険有害物を事業場内でほかの容器に移し替えるときであるとか、自ら製造したGHS分類済みの危険有害物を容器に入れるときなども、ラベル表示などの方法によって、しっかりと労働者に危険・有害性の情報を伝達していただきたいということを考えてございます。
 また、GHS分類済みの危険有害物を製造し、または取り扱うような設備におきましては、改修、清掃等の作業を外部に委託するということも考えられますけれども、請負人に対しては、そういった当該物質の危険・有害性や作業についての注意事項などを記載した文書というものを交付していただきたいというふうに考えてございます。
 これらの取組に関する支援措置として考えてございますのが、危険性・有害性に関する最新情報を共有・活用できるプラットフォームづくりを関係省庁・機関で連携して推進してまいりたいということ、また、先進的な取組を行っていただいている企業や団体さんに関しましては、表彰制度などによって支援する仕組みを検討してまいりたいというふうに考えてございます。
 それから、労働者の意識啓発・教育の強化という項目でございますけれども、化学物質へのばく露防止を確実なものとするためには、事業者さんだけの理解だけではなくて、作業に従事する労働者自身の自ら取り扱う化学物質の危険・有害性を正しく理解していただくということ、作業において生じるリスクを正しく認識して正しい作業方法を遵守し、保護具を適切に使用していただくということが極めて重要であるということでございますので、以下の取組を進めることが適当ではないかということでございます。
 大きく三つに分けましたけれども、雇入れ時教育及び作業内容の変更時の教育の教育事項として、ラベルの内容であるとか作業場の注意点、保護具を使用させる場合には、その意義や使用方法などについて、項目として追加したいということでございます。それから、そもそも働いてからの教育だけではなくて、学校の教育など早い段階からラベル教育の導入についても検討するべきではないかというようなことでございます。また、SDSに基づいて行う化学物質のリスクアセスメントに作業に従事する労働者の参画を義務づけてはどうかということも提案されてございます。
 それから、中小企業に対する支援の強化というところでございますけれども、化学物質に関する知識や人材が十分でない中小企業さんも少なくないというところでございますので、適切な化学物質管理を行うことができるように以下の取組を進めていくことが適当ではないかということでございまして、特に、管理が困難な物質に関しましては、危険性・有害性が高い物質の標準的な管理方法等をまとめたガイドラインを策定するといったことや、企業のOBなどを活用して地域ごとに化学物質管理に関する高い専門性や豊富な経験を有する人材を育成・配置し、中小企業等からの無料相談対応等、助言支援等を行う体制の構築を検討してまいりたいということ。
 それから、専門知識がなくても化学物質管理が容易に実施可能な管理支援のシステムの開発であるとか、ポータルサイトを整備してまいるということであるとか、中小企業等でも混合物のSDS作成が簡単に行えるようなツールを開発していくというようなことを考えてございます。
 以上が、これまでに検討されてきた検討結果ということでございますけれども、今後の検討事項として残っている部分を紹介させていただければと思いますが、まず、検討会のほうで検討する事項としましては、化学物質管理を支える専門人材の確保・育成ということでございます。それから、特化則等に係る課題への対応ということで、ばく露リスクに応じた健康診断の実施頻度等の見直しということでございまして、適切に管理されているような場合には、健康診断の実施頻度というものを少なくしていくということも可能ではないかといったような議論でございます。
 それから、気中濃度を管理濃度以下に維持することが技術的に困難な場合の対策ということでございますけれども、どうしても場の管理というものが難しい場合には、個人ばく露の管理というものも検討してはどうかというようなことでございます。
 それから、遅発性疾病の把握方法等ということでございますけれども、冒頭、労働災害の状況ということで御説明させていただきましたが、特に、あれらは労働者死傷病報告により情報をまとめておりまして、急性毒性とか、傷であるとか、やけどであるとか、そういった短期的に分かるような疾病に関して情報をまとめてございますけれども、職業がんであるとか、時間をかけて目に見えるようなものについてはなかなか把握方法が難しいということで、どのように対応していくべきかということを議論していくということでございます。
 それから、リスク評価ワーキンググループにおける検討事項ということで、国によるGHS分類の進め方であるとか、先ほど御説明さしあげました、ばく露限界値及び暫定ばく露限界値の設定方法であるとか、あとは化学物質に関する危険・有害性に関する情報の収集等のあり方について、検討を重ねてまいりたいというふうに考えてございます。
  最後は検討のスケジュールということでございますけれども、検討会とリスク評価ワーキンググループで上と下で分けてございますが、まず、12月23日に検討会のほうで中間取りまとめを行いましたので、今度、2月1日に分科会に中間報告といたしまして、法令改正手続に進めるものは順次、進めていくということを考えてございます。
 ワーキンググループのほうでは、2月、3月ぐらいに中間取りまとめというものを行いつつ、5、6月を目処に最終取りまとめということを考えておりまして、その最終取りまとめは検討会に報告させていただくと。それを受けて検討会のほうで7月、8月ぐらいに最終取りまとめを行いまして、その結果を安全衛生分科会に再度報告ということで、また所定の法令改正手続に進んでまいりたいというふうに考えてございます。
 ということで、私の説明は、駆け足でございましたけど、以上になります。どうもありがとうございました。
○事務局 植松様、御講演ありがとうございました。
 続きまして、慶應義塾大学、名誉教授の大前先生に、「我が国における化学物質管理の現状と課題について」、御講演いただきます。
 それでは、大前先生、よろしくお願いいたします。
○大前氏 皆様、こんにちは。御安全に。慶応大学の大前でございます。
 皆様のお手元に資料があると思いますけれども、「我が国における化学物質管理の現状と課題」という大きなタイトルで、今、植松様がお話されたことが全体の流れなので、その中で比較的言及されていない部分だと思うのですけれども、産業医をどうするかというようなことについて意見を申し上げたいと思っております。
 まず、特殊健康診断に関しまして、最後のほうで、ある程度の条件が認められれば健診の省略等というお話がございましたけれども、なぜ、そんなことができるのかと。健康診断というのは、ある意味、一番最後、化学物質を扱った、ばく露した方の一番最後のとりでみたいなものですけれども、それにもかかわらず健診の省略が考え得るということで、そこら辺の、まずお話をしたいと思っております。
 これは、よく御存じのいわゆる三管理という、そういう仕組みに今はなっておりまして、作業環境管理、作業管理、これは、それぞれ場の管理あるいは個人の管理ということでございますけれども、それぞれに応じまして測定がされると。あるいは、その測定に関する基準がある。例えば、作業環境管理ですと、作業環境の濃度を測定しまして管理濃度という基準で今、判断をしているということになります。これらの後、健康管理、最後に健康管理が来るんですけれども、これは特殊健康診断、特健という形で今やられております。特健の目標というのは、当該物質に起因する健康影響の早期の検出・発見というのが目的になるわけです。ひどい場合には職業病という、非常に重症なことを判断することもあるということでございますけれども。
 こういうような三管理をやっておりますので、結局、健診が最後のとりでのようなことになります。その健診で省略が可能な場合があると。特別管理物質であっても個別管理物質であっても省略が可能である場合があるという、その根拠に関して、少しお話をしたいと思っております。
 これは概念的な図なのですけれども、量影響関係の図といいまして、横軸に、X軸のほうに量が書いてございます。これは、ばく露量でも作業環境の濃度でもいいんですけれども。縦軸のほうは、これは影響の強さが書いてございます。一番最悪の影響は、死んじゃうという影響が一番強い影響ですけれども、この影響の種類に様々な種類がある。それを示しておりますのが、左側の可逆的影響、不可逆的影響という、そういう観点で分けることができるとか、あるいは中毒、中毒まではいかない状況ということで分けることができると。あるいは、一番左の場合ですと、健康の観点から不利な影響か、あるいは不利ではない影響かと。一般に健康影響というと不利な影響というのを頭に浮かべると思うんですけれども、必ずしも防ぐ必要がない影響もある、不利ではない影響もあるということは認識していただきたいんです。
  こういうようなので、赤い線が3本、4本、書いてございますけれども、取りあえずcの一番太い線を見ていただくと、これはどういうことを意味しているかといいますと、いわゆる有害化学物質の健康影響というのは、化学物質の量が多くなれば多くなるほど、つまりX軸が右側に行けば行くほど健康影響の強さが強くなるというのが一般的な考え方です。
 この中でちょっと例外的なのは、a、点線のaというふうに書いてあるものでありまして、点線のaは、これは逆に量が少ないと強い影響が起きるというような化学物質もございます。例えば必須金属、生体を維持するために必要な金属というのはたくさんございます。亜鉛とかセレンとか、たくさん取ると有害ですけれども、足りないと、また有害という、そういうものもございます。そういうものは、このaのように、少ない量になると影響が強く出てくると。もちろん多ければ強く出るということでございますけれども、このようなものもあるということです。
 それで、GHS分類というのが今ありますけれども、GHS分類、様々な分類がありますが、GHS分類で有害性があるというふうに判断しているレベルは、実は、中毒になるか、ならないかというレベルで判断しているんです。ところが、ばく露限界値、産業衛生学会の許容濃度、あるいはACGIHのTLV-TWA、あるいは今度、新たにできるかもしれないばく露限界値(仮称)というのは、これは、中毒の話をしているんじゃなくて、健康にとって不利かどうか、防ぐべき影響かどうかという、そういう観点から数字を決めるということになっているんです。それが、括弧して「臨界影響」という変な言葉が書いてありますけれども、こういう言葉を使うんですが、こういうようなものを目処にして決めていると。したがって、ばく露限界値とGHS分類の有害性は、随分解離しているということです。
 例えば、GHS分類の考え方で、反復ばく露で分類を支持すると考えられる影響というのがずらっと並んでおります。例えば、Aですと、反復あるいは長期ばく露に起因する罹患または死亡という非常に強い影響です。それから、Bですと、これは赤いところだけちょっと見ていきますが、重大な機能変化とか、重大で有害な変化とか、重大な臓器の損傷あるいは壊死、線維症または肉芽腫の形成、臓器の著しい機能障害、それから、一番下のGのところは細胞死、このようなものが認められて、初めてGHS分類で有害というふうに言うという、そういう考え方ですので、許容濃度と全く違った判断基準になっているということです。
 これは、もう一つ概念的な図ですけれども、同じように横軸は量が取ってありまして、縦軸は特定の影響の反応率です。何%の人が、その影響を起こすかということが書いてあります。これも、いっぱい曲線がありますけれども、取りあえず赤い線を見てください。赤い太い線を。こういう類いの物質、すなわち赤い線の場合ですと、閾値の位置ぐらいの量ですと発生率が0%、誰も起こさないと。閾値からどんどん量が多くなっていきますと、発生率がどんどん高くなっていって、それで最後は全員が発生するというような、そういうような図です。
 許容濃度あるいはばく露限界値(仮称)というのは、この閾値前後の数字で決まるんです。したがって、先ほど、健康にとっていいか、不利ではない影響、臨界影響をターゲットにして閾値の前後で数字が決まるということは、非常に単純な言葉で言いますと、軽い影響を閾値の前後で見ているということなので、多少、ばく露の量が少なければ、軽い影響すらほとんど起きないというレベル、あるいは、ひょっとしたら軽い影響は多少起きるかもしれないけれども、それは重大な影響にはならないというレベルなので、特定の条件が満たされれば、今の特別則の中の健康診断に関しても省略なり、あるいは頻度の減少が十分可能であるということです。やっぱり、健康診断がなくなると心配される方がたくさんいらっしゃいます。特に労働者の方は、健診をやめる、中断するとなると、それなりの御心配をなさるんですが、そういう心配はする必要がないということです。
 この中でブルーの線を見てください。ブルーの線は、閾値がなしというところに行きます。これをもう少し拡大しますと、このようになるんですけれども、このブルーの線は、発がんなんかは、こういうブルーの線のような反応を起こすというふうに仮定しております。正しいかどうかは実は分からないんですが、そういうふうに仮定しております。すなわち、濃度が0でなければよくない、がんが起きるということ、そういう想定をしております。すなわちリスク0というのを求めることになるんですけれども、それはもともと不可能なので、では、どれくらいまでのリスクだったらオーケーとしようかということが概ね決まっております。
 この図は、赤い量反応関係と、それから黒いほうの量反応関係がありますけれども、赤いほうはバックグラウンドとしてその物質が存在する場合、例えば、ベンゼンもバックグラウンドで存在しますし、石綿だってバックグラウンドで存在します。そういう物質に関しては、濃度を0にできないんです、もともと。濃度を0にできないので、その濃度、自然に存在する濃度を0として、どれくらい余分にがんが起きるかということを、過剰リスク、過剰のリスクです、絶対リスクではなくて過剰のリスクということで、その数字をあらかじめ決めておいて、それに対応する濃度でばく露限界値(仮称)というようなものを決めるというようなことになります。
 この10-4というのは何なのということですが、これは、一番最初は環境庁、1990年代の半ばに中央環境審議会が一般環境における受容リスクの大きさを提案しました。それが10-5でした。日本にオギャアと生まれて80年間ぐらい生きて、そのうち10-5のリスク、すなわち10万分の1ですか、10万人に1人ぐらい、その化学物質によって発がんが起きたと、起きるということを受容しましょうという数字を中央環境審議会が出しました。これは一般環境の話なので、労働環境はそれの一桁上といいますか、で、10-4を今は便宜的に使っております。ただし、この10-4に関しては、文章になっているものではございません。成文は、10-5の環境庁はありますけれども、10-4の労働省、当時、労働省、今の厚労省の文章というものはございません。
 ちなみに、10-4、どれくらいのものかというのは、これは、それをほかの影響と比べたものでございます。すみません。交通事故にしても、みんな、ちょっとデータが古いんですが、これは僕がデータ更新をサボっています。サボっているものですから、こんな感じですけれども、大体、日本で生まれまして80年間、オギャアと生まれて生きますと、大体10-3のレベルで交通事故で死ぬんです。1,000人に数人が死ぬというのが、これが実態です。一番下に参考までに2019年の数字が書いてありますけれども、ちょうど大体比例しますので見ていただければいいんですけれども、それよりは少し厳しいといいますか、交通事故で死ぬほどではないというようなレベルが10-4というレベルです。これを受容してくださいということです。
 さて、次は、自律管理物質、未規制の物質でも、何で特健がやるんだと。個別管理物質は特健がやっていますけれども、未規制物質は、じゃあ、何で特健が要るんだということです。自律管理物質というのは、先ほど植松さんのリスクのお話で、どんなものかということは分かったと思います。これに類似したような絵が、これを少し、植松さんがリバイスした絵を出していただきましたけれども、今後、新しい仕組みとしては、有害物質に関する有害情報がどれくらいあるかということで分けようという形で、この四つ。
 個別管理物質は1個独立で、自律管理物質は、ばく露限界値が設定可能かどうか、それから設定できない、情報が不十分で、できないというものかどうか、それから、もともと有害性情報自体が少ないという、そのためにSDS、GHSも分類できないみたいなことだと思うんですけれども、こういう物質を自律管理物質の中に入れているんですが、こういう物質に関しては何が起きるか分からないですよね。医学的な立場でいくと、こういう物質は使っていただきたくないというのが立場なのですが、でも、そんなわけにいかないですから、現実は、使われるのはいいけれども、でも、何が起きるか分からない物質に関してはちゃんと観察してくださいということが自律管理における企業の義務だと思います。
 実際は、衛生管理者とか、あるいは看護師さんとか、そこら辺を中心に何が起きているかということを見ていただいて、それで、場合によっては産業医さん等と相談をして特健をやっていただくと。事業者のほうは、特健をちゃんとサポートしてくださいということです。このときに、こういうふうな観察をするときに重要なのは、何も起きていないということもしっかり出してほしいんです。この物質は、今のところは情報がないんだけれども、でも、どんなに観察しても労働者は何も起きない。それが非常に重要な情報なのです。悪い情報も重要ですけれども、悪くない情報も非常に重要なので、そういう情報もぜひ公開をしていただきたいということになります。
 そのときに、影響と、それからばく露とセットにしてくれないと、ばく露限界値がつくれないんです。だから、何か起きたと。もし、起きていれば、何か起きたということが分かった場合に、どれくらいの濃度で起きたかということをセットにして公開していただきたい。こうならないと、残念ながら、ばく露限界値はつくれない。あるいは、何も起きなかったというのでもいいんです。この濃度で何も起きなかったというのでも構わないんだけれども、両方セットになってくれないとばく露限界値ができないので、ぜひ、各企業で、自律管理物質でばく露濃度がつくれない、ばく露限界値がつくれない物質に関しては、こういう情報を積極的に集めていただきたいということになります。
 次は、産業医さんの話です。皆さんの会社で、当然、産業医さんは多分いらっしゃると思うんだけれども、特殊健康診断をやっているお医者さんというのは誰ですか。誰がやっているか、御存じですか。これは、非常に不思議なことに、産業医さんはやっていないというところがたくさんあります。一般の健康診断の健診機関、健診機関の先生がバスに乗ってやってきて、わあっと特殊健康診断をやって、それで帰ると。その結果は、何だかよく分からないけれども、判定がついて出てくるというのが結構あるんですよね。これは、まずいだろうということです。
 というのは、なぜかといいますと、これは産業医さんの仕事と役割、これは産業医科大学のホームページから持ってきているやつですけれども、まず巡視をしてくださいというのが1番目。
 それから、二つ目が、健康リスクを評価してくださいと。
 それから、三つ目が教育をしてください。
 それから、四つ目が衛生委員会に参加して全体を把握してくださいと。
 それから、五つ目が健康診断と事後措置と。これが産業医大に書いてある産業医の役割なのです。
 ところが、健診機関でバスに乗ってくるお医者さんは、こんなことはやっていないです。すなわち、作業現場の化学物質の使用に関する現状を知らないで、単に目の前に来た作業者の状態を見ていると。そういうところで、作業者が「何かありました」と。そうすると、その先生は何をやるかというと、「ああ、こういう所見がありましたね。まずいですね」という判断をすると有所見者になります。その有所見者をまとめて、厚労省のほうが集計をして有所見率というのを出す。でも、本当にその人は有所見者なの、その物質によってそれが起きているのという保証がないんですよね。したがって、そういうふうな情報で集計をするとバイアスが起きるというのは当然です。
 これが平成30年の有所見率のデータです。例えば、特化則の中で1,2-ジクロロプロパン、これは胆管がんを起こした物質ですけれども、この物質を扱っていた方の有所見率が8%。それから、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン等々、10%弱ぐらい。本当に、こんなに有所見率なの。もし、本当にテトラクロロエチレンを扱うことによって10%弱の方がピックアップされているのというと、そんなことは一般的にないはずなのです。恐らく、企業の方は実感として、うちはトリクロロエチレンをいっぱい使っているんだけれども、何も出ていないよということはいっぱいあると思います。
 それは、なぜ、こんなことが起きるかというと、これは特化則の報告書ですけれども、丸で大きく書いてありますが、上記のうち、一次健診をやったうち二次健診を要すると言われた人の数、その中で有所見があった人の数というのを報告することになっています。じゃあ、一次健診の中身はどうかといいますと、例えば、さっきの1,2-ジクロロプロパンですと、こんな中身です。多分、この中で有所見と言われるのは、5番目のAST、ALT、これは肝機能の指標です。この肝機能の指標が悪い、正常範囲を超えているということで二次健診に回されて、それで、まだ当然、今日、肝機能が悪い人が明日、治るわけじゃないので、まだ有所見で残っちゃうんです。
 でも、この有所見とばく露の濃度が関連しているかどうか、ここのところをやらなくちゃならないのが産業医の役割なのです。でも、それをやっていないわけです。そういうもので、データに誤差が出てくると。もちろん、ちゃんとやっていらっしゃる先生もいらっしゃいますよ。産業医としてやっている先生もいらっしゃいますけれども、比較的多くのところが、特殊健診は、もう、そういうような扱いをされているということです。非常にまずい状態だと思っています。
 これが特健の基本的な考え方ですけれども、ばく露している人に健診をやりましたと。所見がありましたと。例えば、肝機能が悪いという所見がありました。でも、肝機能が悪いという所見が、じゃあ、有害物質によって起きているのか、起きていないのか。起きているんだったら、当然、精密検診、二次健診に行くのは当たり前なのですけれども、お酒を飲み過ぎて数字が上がっている、あるいはB型肝炎、C型肝炎で数字が上がっているとなると、これはばく露と関係ないんです。そうすると、それは有所見じゃないんです。そこのところをちゃんと判断するのが産業医さんなんだけれども、今、実態として、なかなかそうなっていないというのが現状だと思います。
 したがって、自律管理が、これから自律管理の時代になってくる、未来像はそうだということでございますけれども、そのときは、当然、産業医の役割としては、さっきの産業医大に書いてあった、ずらずらずらっということと同時に、三つ目のポツ、健康障害の発生リスクの大小に応じて特健の要否、あるいは健診項目の選択、こういうことまでしっかりするような産業医さんになってくれないと自律管理ができない、自律管理時代に産業医さんが対応していけないということになると思います。
 それから、最後に、暫定ばく露限界値という先ほど出てきていた、これについてです。これ、暫定ばく露限界値というのは、残念ながら情報がないので、ばく露限界値をつくれない。でも、そういう物質はいっぱいあると。そういう物質を管理する場合には、どう考えるかということで出てきた概念です。これは、先ほど植松さんがおっしゃいました。
 これ、どういうふうに決めようかというのがワーキンググループの課題になっているんですけれども、あるいは決められないという結論になるかもしれませんけれども、どういう結論になるか分かりませんが、考え方としては、設定根拠がない数字を出す。というのは、恐らく、今まで行政がやったことがないこと、この数字を出すと袋だたきに遭う可能性があるような感じの数字ということになろうかと思います。
 例えば、この中で若干の根拠があるのが粉じんです。これは、ACGIHのPNOSという、そういう提案ですけれども、これをちょっと要約しますと、PNOSというのは、三つポツがついてあります、真ん中辺に、該当するTLVがない、水に不溶性または難溶性、それから毒性が低い等々、こういうものであっても濃度が高いと何らかの影響を起こす可能性があるので、こういうものに関しましては、まとめて空気中の吸入性粒子を3mg/m3、それから吸引性粒子を10mg/m3で保つことを勧告するということで、取りあえず、この数字で、情報がない粉じん、不溶性の粉じん等々に関しては、これで取りあえずやってくださいということです。ただし、この数字を守ったからといって何も起きないという保証は当然ありません。もともとデータがないものに数字を当てはめたといいますか、無理やり持ってきたわけですから。
 それから、日本産業衛生学会にも粉じんの許容濃度がありまして、これの第3種粉じんというのは、bの注意書きで水に不溶または難溶で、かつ明らかな毒性の報告がなく云々かんぬんというもので、下から2行目、そのため、たとえ、この濃度以下であっても、未知の毒性による障害発生の可能性があることに留意することということで、取りあえず、情報がない粉じんに関しては、これを使ってくださいと。ただし、この数字以下であれば、一番最初に申し上げました健康にとって不利じゃない影響で、しかも閾値ではないので、この数字は、この数字以下であればオーケーというわけではないですよというような形の数字があります。だから、暫定ばく露限界値(仮称)に関しましては、粉じんに関しては、これを使う可能性はあるということになります。
 これは粉じんなのですが、同じ粒子でもミストとかヒュームとか、そういうものは、また別個にあります。こういうものは、どういうふうに考えるかというのもワーキンググループの課題です。ACGIHはparticlesという言葉でまとめちゃっているんですけれども、でも、particlesの中には、今、言いました粉じんだけではなくてミスト、ヒュームがあると。一般論としては、ヒュームは粒径が小さいので、吸入しますと肺にたまりやすいというようなことがあるので、ひょっとしたら粉じんより厳しくしなくちゃいけないんじゃないかという、そういう意見もございます。
 それから、蒸気とかガス、分子状の物質、粒子状ではなくて分子状の物質に関しましては、今のところ世界中で適切な暫定ばく露限界値に相当するような適切なものはございませんので、これをどうしようかというのはワーキンググループの中で議論しなくちゃいけない問題ということになります。
 ということで、なかなかワーキンググループの課題としては重いものがございます。特に、暫定ばく露限界値については、どうやってやるんだというのは非常に難しい問題ですけれども、でも、この数字がないと、目安がないと、なかなか自律管理にならないんです。やったは、数字が出てきたは、判断する基準がないとなると、結局、やらないとイコールになっちゃうということなので、何とか何らかの、非常に大ざっぱなといいますか、丸めた根拠で、「根拠」という言葉はまずいですね、丸めた考え方で、それで数字を出していって、そういう物質に関して、どんどん情報を各企業から出していただいて、それで、できるだけ正しいといいますか、より妥当なばく露限界値のほうに持っていくような形になろうかと思います。
 なかなか難しい、決定に関しては難しいお話で、本当に様々な意見が出てくるというのは間違いないと思いますけれども、でも、やっぱり、なきゃやらないということが十分想定されるので、なかなか、ここのところは悩ましいところということになります。
 以上でございます。どうもありがとうございました。
○事務局 大前先生、御講演ありがとうございました。それでは、ここで10分間ほどの休憩時間を取らせていただきます。後半の意見交換会は、おおよそ14時50分以降から開始する予定でございます。後半開始までいましばらくお待ちください。
2時41分 休憩
(休憩時間)
2時52分 再開
○事務局 それでは、お時間となりましたので、後半の意見交換会を始めさせていただきます。コーディネーターは、先ほど御紹介いたしました東京理科大学教授の堀口先生にお願いしております。また、パネリストに基調講演を行っていただきました慶応義塾大学名誉教授の大前先生、厚生労働省の植松室長補佐とDIC株式会社の山口様に御出席いただき、あらかじめ頂戴しておりました御質問について先生方から回答をいただきたいと思います。
 それでは、堀口先生、よろしくお願いいたします。
○堀口氏 皆さん、こんにちは。東京理科大の堀口と申します。よろしくお願いいたします。
 今日は、コロナの流行により、全員マスクで失礼させていただきます。それで、実際にいつもはフロアのほうから質問を受けておりましたが、今回は、事前に質問を受ける形で、その質問にお答えするということで進めさせていただきます。ただし、質問があまりなかったので、どうしたものかなと、皆さん、今、お二方のお話を聞きながら、多分たくさん聞きたいことが悶々としているのではないかなと思ったりしております。
 それで、今回は企業のお立場で山口さんのほうに御参加していただいておりますので、企業のお立場から、今、植松室長補佐と大前先生からお話をいただきましたけれども、御意見、御感想、また御質問などありましたらよろしくお願いいたします。
 山口さん、よろしいですか。
○山口氏 はい、分かりました。よろしくお願いします。
○堀口氏 どうぞ、何か。
○山口氏 いきなりですか。
○堀口氏 大丈夫です。
○山口氏 質問に対してのやり取りはしないんですね。
○堀口氏 質問に対してもまた御意見をいただきますので。普通に今のお二方の資料とお話で、少し補足したほうがいいとか、あと、質問でも結構ですし、なかったでしょうか。
○山口氏 企業的な立場というか、私はDICという一つの会社にしかおりませんので、世間の会社を代表しているわけではございませんけれども、企業の立場として感じることとして、やっぱり新たにリスク管理という形の全てのものをリスク管理の中で自分たちの責任の中でやっていくという方向に、今回、舵を切るというところはもう決定されたものとして私のほうは参加させていただいているんですけれども、そうすると、やっぱり企業としては、リソースの問題とか、もう本当にできるのかとか、そういったところにやはり疑問というか、心配なところがやはりあります。
 また、製造メーカーと輸入メーカーや商社、あるいは使用者という、この立場によって、かかる内容が変わってくると思うんですけれども、それぞれに対して何をやらなければいけないということが明確にまだ見えてきていないというところ、そういうところが、これからもっとはっきり見えてくるといいのかなというふうに思う部分がございました。
 それから、ある一面では、大前先生等をはじめとして、専門の方々は有害性データそのものの見方、そういった難しいところを説明してくださるんですけれども、我々、企業はなかなかそこが理解ができないといったところ、これを簡単に説明していただくとか、あるいは、植松様のほうには、法的にそれがどういうふうに関わってきて、それで法的にどう対応しなければいけないのか、なぜ必要なのかというところは、ある程度の会社になれば分かってくるのかもしれませんけれども、全ての会社、中小企業も含めて、あるいは化学をメインで扱っていない川下メーカー、そういうところにでも分かりやすく説明していくということが今後必要になってくるのかなというところは感じました。
○堀口氏 ありがとうございます。植松室長補佐の資料でいくと、多分、10ページのスライドに「自律的な管理」と大きな文字で書かれているので、それに対する山口さんのお話だったのかと思います。
 そして、同じ企業でもそれぞれ立場が異なるということでしたので、輸入流通の事業者さんとか加工するメーカーさんとか、そういう企業のお立場によって何をどうやっていくのかというのが、もう少し明確に今後見えていかないと、実際の取組にはちょっとハードルが厳しいかなというようなお話だったのかなと思います。
 植松室長補佐のどこか資料に情報をしっかりと厚労省のほうから提供していくようにしたいんだというようなお話があったのではないかと記憶しているのですけれども、そういう意味では、個別の化学物質を見て管理をしていたところから、化学物質全体で、かつ、情報を収集して今あまり情報がないものも収集していってというようなところかなと思います。
 大前先生のスライドでいきますと、2枚目というのですか、3枚目とかに量影響関係とか、量反応関係とかのグラフがあるんですけど、ここのところですかね。もう少し分かりやすくというのは。
○山口氏 ここも含めてなのですけれども、有害性情報そのものというものが、どういった種類があって、どういうものが労働衛生のところではピックアップされて、それに対してどう対応していかなければいけないかというところですね。そういったところが経営側にうまく伝わるような形での、そういった分かりやすさと、そういった意味です。
○堀口氏 経営者に対してもという。
○山口氏 もということですね。
○堀口氏 大前先生、何か追加でありますか。
○大前氏 今回のこのお話というのは、業態に関係なく、ばく露があるか、ないかということがまず一つです。例えば輸送のところですと、例えばドラム缶に入った物なり、あるいは、タンクローリーで運ぶ物は、これは基本的にはばく露はないので、これはもともと該当しないということになろうかと思います。
 それから、量影響関係のところでお話ししましたけれども、GHSの分類というのと、それからばく露限界値(仮称)等々とは全然性質が違うので、GHSの分類では管理できない、していただきたくないということですね。
 それから、これは、いただいた質問にも関わるんですけれども、ばく露限界値というのを国が決める場合に、例えば産業衛生学会とか、あるいはACGIHが決めるときは、もう純粋に化学的な情報で決めればいいんですけれども、国が決める場合は、それプラス実行可能性とか、そういうマネジメントの数字になりますから、マネジメントに関わるところの判断も入れないと現実的ではないということなので、そういう面で、単純に許容濃度なり、あるいはTLV-TWAをそのまま持ってきてもいいのかどうかという議論は、これはまだまだしなくてはいけないということです。
 それから、結局、やり方は簡単で、単純にばく露をシャットすればいいということなので、そのばく露をシャットする手段として、皆さん、自分のところの会社に合わせてやってくださいというのが自律管理だと思うんですね。だから、その前段階として、ばく露があるかないかをちゃんと見てくださいと。ばく露がなければ、何もやることはないし、ばく露があれば、それなりの方法で局排でも、あるいはマスクでも、いろんな方法があると思うんですけれども、そういう形でシャットしてくださいというようなことでやることは簡単、やる概念は簡単、実際にお金がかかったりしますから、そういう意味では難しいでしょうけれども、考え方としては、そんなに難しくはないんじゃないかというふうに思います。
○堀口氏 ありがとうございます。それでは、いただいている御質問から入っていきたいと思います。資料に対して御質問をいただいています。
 まず、植松室長補佐の資料です。9ページになります。皆さん、9ページのスライドを御覧ください。
 労災の発生状況ですね。(1)労災の発生状況で特別規則対象物質SDS交付義務対象と物質名不明に分けて分類されています。それぞれの項目において、被災した労働者が被災の元になった化学物質の危険有害性を知った上で被災したのか、あるいは、知らないまま取扱い被災したのかのデータはありますか。知った上で被災したならば、作業環境や作業方法の問題になりますが、知らないで被災したら使用者の安全や衛生に対する意識が低いのが理由になり、どんなに規制を強化しても労災は減らないと考えます、という御質問と御意見ですが、まず、質問からお願いします。
○植松室長補佐 お答えとしては、この点に関して統計的なデータというものは把握していないということになります。ただ、実際の現場、現場というか労働災害が起こった状況についてお話をお聞きすると、どちらのケースもあろうかと思います。実際に情報を知った上で被災している方もいらっしゃれば、全く取扱いが分からない状況で被災したというケースもあるので、どちらかに偏るのでもなくて、どちらにも対応したアプローチというものを今後検討していく必要があるというふうに考えております。
○堀口氏 大前先生、実際に産業医をされていると思いますが、大前先生が産業医をされてきて、この労災についてはどのようにお考えですか。
○大前氏 産業医という立場ももちろんやっていますし、それから、以前は研究者という立場もやっておりましたので、研究のときにいろんな工場等々に行かせていただきまして、労災相当の障害なんかも見てきております。
 それで、まず一つ言えることは、それまで毒性が分かっていない物質は、これはほとんど何の防御もしないで使っていた、それによって残念ながら亡くなった方もいるという、こういうのがございます。これは、だから労働者本人の問題ではなくて、情報がなくて、会社も情報がなかったので分からなかったということで、ある意味、誰も責任がない状態で使っていたという場合もあります。
 それから、直接、僕は関わっておりませんけど、伺うところによると、使い方の間違いですね。例えば一番最近おうかがいしたのは、ベンジルアルコールですか、ベンジルアルコールで塗装を剥がす、剥離剤として使っていたときに、それ、外でやる仕事なものですから、結構、臭い等々するんで、囲っちゃってそれで剥離剤として使っていて、その中で中毒を起こしたというような場合は、これはもう使い方の間違いなのですけれども、この場合は、誰がそれを指示したのかということですね。要するに、それを防ぐために誰が何をやらなかったのかという、そこのところなので、これは、その労働者もやらなかったということでしょうし、彼を雇っていた方といいますか、その方々も何もやらなかった。あるいは、本当は全開放してやれば、こんなことは起きなかったんですけれども、そういう場合はむしろ一般環境とのせめぎ合いでやらざるを得なかったという、そういうお気の毒な面もあるということで、いろんなパターンがあると思います。
 もちろん、下流のほうに行けば行くほど、その情報がなかなか伝わらなくて、使い方も荒っぽくなるとか、そういうようなことで防御マスク、防毒マスクをやって仕事をやっているんだけれども、そのマスクを何日も使っているとか、そういうような、これは知識ですよね。そういうこともあるので、いろんなパターンで労災が起きていて、実際に若干見てきております。
 それから、一番感じるのは、あるところまでは情報がなくて、あるとき突然例えば発がん性があるということが分かった。でも、労働者はそのことが分かる前から当然ずっと仕事をしているわけで、そのときに分かった時点で何か対応をされればよかったんですが、その対応が遅れたりしたというときに、最初分からなかった時代から使っているところまでも企業が責任を負うのかという、そこら辺に関しては、非常にお気の毒な状態を見ております。分からなかったときは、もう仕方ないから、そこの例えば20年間で発がんが起きたとして、10年間は分からなかった時代があったら、10年間は免除してもいいんじゃないかみたいな、そういうようなことをよく感じることがございました。なかなかそこら辺は、法律のほうの問題なので、僕は答えを当然持っているわけではないんですけれども、どんどん情報が新しくなればなるほど、そういうことが起きてくると思いますね。
○堀口氏 山口さんのほうから追加で。
○山口氏 追加というわけではありませんけど、情報を伝達するという話と、今回、情報伝達の強化という形で厚生労働省さんのほうから、植松さんのほうから説明がございましたけれども、情報伝達は幾つかのステップがあるかと思うんですね。
 一番最初にお願いという形で植松さんが言われた情報を継続的に収集してください、これ情報の収集の部分ですね。これは、国や製造メーカーが、多分、役割としてあるんだろうと思うんです。それから、そのデータを一つにまとめて発信していくというところ、これは製造メーカー、輸入メーカーがSDSという形で、今、実現し、それを配ると。この後、利用者に飛びますね。利用者に飛ぶんですけど、利用者が、今度これを利用する、活用する、どうやってやるか。
 ただ、もう一つ問題があって、この間ですね。間というのは、SDSを作ったところから利用者まで伝える、ここの部分がうまく機能しているのかなというところは、これまでもずっと思ってきたところでして、今回、厚生労働省さんのほうから一つの提案として二次元バーコードを使った伝達の仕方といったようなところがあったかと思います。それも一つの方法として画期的なことだと思います法改正の必要な画期的なことです。まだほかにもいろんなそこで必要なことってあるのかなと。要は、確実に情報を渡すというところ、これに関しては、今回の議論から抜けている気がするんですね。どうやったらそれが渡るのか、確実に。渡ったところではじめて使うことができるというところ、SDSの配布率が今、多分、60%ぐらいしかないということが多分出ていたかと思うんですが、これ、10年前の前回の改正時と変わっていないんですね、配布率に関しては。何で変わらないんだろうというところにもやっぱり焦点を当てるべきなのかなというのは、今回は感じます。追加という形で。
○堀口氏 情報を発信して、キャッチの間のところが10年間変わっていないんですけどというところで、やっぱり一工夫、二工夫が必要だということですよね。
○山口氏 はい。それぞれの役割分担を考えた上で、その役割の人が何をやるかということを一つ一つまとめていくと、抜けているところが分かってくるのかなと思います。
○堀口氏 確かに。本当に目覚ましくいろいろなツールもできてきているので、いろいろなものが生かせるようになるといいかなと思います。その辺りもぜひ議論、先生方もよろしくお願いします。
 御質問、続きます。同じ植松室長補佐のスライドになりますが、12ページ、12枚目のスライドです。国のGHS分類により、危険性・有害性が確認された物質との記載は不明な点はない物質かのような誤解を与えかねない。あくまで一部の危険性・有害性が明らかになった物質である点を記載する必要があると思っていますという御意見なのですが、どうでしょうか、植松さん。
○植松室長補佐 スライドを作っていくに当たって、ちょっと言葉を端折っているような部分があるかと思いますので、ところどころ、こういった御意見をいただくのかなと思っておりました。一応、口頭で補わせていただきますけれども、ここで言っている「国のGHS分類により危険性・有害性が確認された物質」というのは、既存の情報を収集した中で得られる情報から判断して、GHSの区分の中で有害性が高いことが分かった、有害性もしくは危険性が高いということが確認できる項目があった物質というのですかね、ほかのものに関して全て有害性がないということを確認しているわけではないのですけれども、一部の有害性だけでも、国がGHS分類をしたことによって確認できた物質という意味合いでございます。
○堀口氏 ありがとうございます。それでは、スライドの14枚目になります。(1)GHS分類の分類済み危険有害物の管理とありますが、この定義をいま一度教えてほしい。全ての分類項目で分類ができている物質を指すのか。あるいは、一部は安全性データがなく、分類できないとされている物質でもGHS分類を実施できた物質を指すのか。実質的には後者の物質のほうが多く、明らかになっている有害性は正しく伝え管理することは大事だが、まだ分かっていない有害性もある点を正しく理解し、それに応じた管理を実施することが労災防止には必要ではないかと思っている。お願いします。
○植松室長補佐 今の御質問に関しては、後者のほうに該当しているということでございます。全ての危険、有害性について把握するということではなくて、もともとGHS分類の思想というのは、既存のある情報、既存であるデータに基づいて有害性を区分していくという発想があるかと思いますけれども、ここで言っているのは、国が対象を定めて、その対象を定めた物質に関してGHS分類をしていくと。そのGHS分類に関しては、既存で持ち合わせている情報をベースに判断するということでございますので、全ての分類項目で分類ができているわけではございません。
○堀口氏 それで、次の15枚目のスライドに、今度、(2)ですが、GHS未分類物質の管理とあるが、このGHS未分類とは全ての安全性に関する情報がなく、GHS分類が実施できない物質を指すのか。あるいは、その一部の項目に関する安全性に関する情報がなく、GHS分類が結果的に実施できない物質を指すのか。この物質の正確な定義を教えてほしい。実際にGHS分類を国のほうで実施している物質であっても、全ての安全性に関する情報がない物質もあり、現実的には、安全性データがなく、分類できないとしている物質のほうが多いかと思っており、そのような物質が長期的な毒性などで労災発生にまで至っているケースが多いかと思っている。その意味では、ここは分類できないとする項目が一つでもある物質とするのが正しい管理の方法ではないかと思っている。
 まず、そこから。
○植松室長補佐 ここで言っているGHS未分類の物質ということでございますけれども、今後、国が順次対象物質を定めてGHS分類をしていくということでございまして、現状、国がGHS分類をしている物質が約3,000物質程度あるのですけれども、それを順次追加していくようなイメージで捉えていただけるといいかと思います。
 そういった、国がGHS分類をまだ行っていない物質群について、ここで言っているGHS未分類の物質というふうに整理してございます。
○堀口氏 ありがとうございます。それでは、同じ15枚目のスライドの(3)の質問です。(3)労使等による化学物質管理状況のモニタリングで化学物質の取扱いの規模が一定以上の企業は、定期的に自律的な管理の実施状況について、インダストリアル・ハイジニストなどの専門家の確認、指導を受けることとされているが、実際にこのような専門家は確保できているのか。また、いつまでにその人材の育成と確保を実施しようと考えているのか。また、この項の施行はかなり先になるとの理解で正しいのかという御質問もありましたが、このインダストリアル・ハイジニストの今の現状について、もし御存じでしたらお願いします。
○植松室長補佐 この専門家に関しては、実はまだ検討の途中段階だということでございまして、現在、確保できているというようなものではございません。例えば衛生管理者の方とかを想定しつつ、そういった現状ある資格の保有者の方々を活用していったりといったようなことも考えてございますけれども、具体的にどういった要件で専門家を定義していくかということも今はまだ検討中でございます。
 そういったことから、今後どういった施行の時期とか、そういったスケジュール感というものも、今現時点ではお示しすることはできないというふうに考えております。
 以上です。
○堀口氏 人材育成の話が別途出ていたので、それにはそういうことも関係しているという理解でいいのかなと今お話を聞いていて思いました。
 それでは、次に行きたいと思います。新しい言葉が今回出てはきているんですが、その前に、ラベル表示の話がありますので、少しラベル表示の話をしたいと思います。危険・有害性がある物質は全てラベル表示、SDS交付などが義務化されることになるようですが、混合物、義務化が義務化されることになるようですが、混合物も対象との理解でよろしいでしょうか。
○植松室長補佐 それは、そういう理解で間違いありません。
○堀口氏 あとは、研究段階で原料の管理についてはどのような項目をデータベース化したらいいでしょうか。リスクアセスメントの方法を含めて一例を教えていただきたいですという質問があるんですけど、大前先生、お願いできますか。
○大前氏 研究段階ということは、研究室レベル等々だと思うんですけれども、あるいは、試作なんかも研究なんかに入るのかもしれませんけれども、そこで使っていらっしゃる化学物質が既に存在している既存の物質でしたら、それに合わせてやっていただくと、今までどおりやっていただくということです。
 新規に開発された物質、あるいは開発途中の物質みたいな、こういう物は、これ、ちょっとかかってこないので、これは十分注意しながらばく露しないようにやっていただくということしかちょっと言いようがないと思いますけれども、既存物質に関しては、今までのルール、そのものだと思っております。
○堀口氏 それでは、そのばく露限界値の話に行きたいと思います。新たな指標値であるばく露限界値(仮称)と暫定ばく露限界値(仮称)とは何なんでしょうか。化学的根拠のない値を導入し、義務もしくは努力義務を課す法的な根拠がどこにあり、どんな効果を期待して導入しようとしているのでしょうかという御質問なのですが、もう一度ばく露限界値(仮称)と暫定ばく露限界値(仮称)の説明をしたほうがいいですか。
○植松室長補佐 分かりました。僕のスライドで一旦御説明させていただきましたけれども、もう一度こちらを御覧いただければと思いますが、ばく露限界値というものは労働者が吸入する有害物の濃度をこの濃度以下に保つことを義務とするということを想定していますけれども、具体的には、労働者が1日8時間、週40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で化学物質にばく露される場合に、当該化学物質の平均ばく露濃度がこの数値以下であれば、ほとんど全ての労働者に健康上の悪影響が見られないと考えられる濃度として設定することを想定してございます。
 片や、暫定ばく露限界値ということでございますけれども、これも概念としては似ているんですけれども、労働者が吸入する有害物の濃度、今度、この濃度以下に保つことを努力義務ということでさせていただきたいと。なぜならば、こちらのほうは有害性情報等が十分ではなく、ばく露限界値が設定できない物質に対して、多量の吸入による健康障害を予防する観点から、物質の種類によらず、少なくとも当該濃度以上ばく露させてはならないとする濃度ということで、こちらのほうは化学的根拠をお示しすることが難しい場合を想定して、一つの指標値として御提示する、そういった値を想定していますので、こういった取扱いの違いになっております。
○堀口氏 私の理解なのですが、情報がない、植松室長補佐の最初のほうのスライドの5枚目のスライドで、化学物質の有害性と情報量の関係という四つの箱があったと思うんですけど、これで要注意のところが情報量が少ないんだけど、何とかしなきゃいけないよねというところが根底にあって、そのときに情報量が少ないから化学的な根拠を見出すのが非常に難しい、だけれども、何とかしなくちゃ、この労働災害は防げないというところで新たに出てきた概念というか、値というよりは考え方の概念かなという気がしているんですけど、そういう解釈でもいいんですかね。
○植松室長補佐 誠に的を得たフォローをいただきましてありがとうございます。おっしゃるとおりでございます。
○堀口氏 なので、皆さんの御指摘は、当然、化学的根拠がないからこういう値というものを出してくるのはいかがなものかという御意見だと思うんですが、多分、値という言葉が数字を連想させて、どうしても化学的根拠の話につながっていって、概念の話からはちょっとイメージが薄れたのかなと思いましたが、でも、これは概念の話ですよね。
○植松室長補佐 概念の話ですし、実際には数値としてもお示しすることを想定はしております。ただ、他方で、やはり数値としてお示しするというのも、なかなか、大前先生のお話にもありましたけど、勇気のいるところもございますので、数値でお示しするのがいいのか、それとも、別の形で事業者さんに取り組んでいただく事項を何らかお示しするような形で行動を促すことにつなげていけるのかどうかというのを今後検討してまいりたいというふうに考えています。
○堀口氏 大前先生、どうですか、御意見。
○大前氏 本当に根拠はない数字、数字を出した場合に根拠はございません。根拠がないからこそ暫定になっているわけでして、もともとそういう概念でそういうような、先ほどの第二象限のここら辺のことを何とかしなくちゃいけないという、本当はそういうことなのですね。
 だから、この数字を守ったからといって何も起きないという、ばく露限界値の場合は、さっき言いましたように、決めるときに非常に軽い影響をターゲットにしてそれが起きないようなレベル前後、閾値というふうにさっき言いましたけれども、閾値の前後で決めているので、これはちゃんと根拠があるんですけれども、ただ、暫定の場合は、それがないので、でもやっぱりないと困りますよね。自律管理ができないということで、何とか作らざるを得ない、作らないにこしたことはないんだけれども、作らざるを得ないという、そういうような感じで今おります。
 それからもう一個いいですか。もう一個、先ほどのGHSのところですね。有害性のところで有害性がある、ない、全部あるものを言っているのか、あるいは、全部ないものを言っているのかということがございましたけれども、これはばく露限界値を考えるときも全く同じで、今存在する情報でつくる、将来別の器官に、別の臓器に何か起きて、それが分かれば、そのときまた変えるということなので、いつも暫定なのですね。常に変わる可能性がある数字がばく露限界値になります。恐らくそれはGHSの分類もいつも変わる、そういう暫定の分類ということになるんじゃないかと思っております。
○堀口氏 要するに、情報がいろいろ収集されて、要するにエビデンスが確立されていくと、この暫定が変わっていくという考え方ですかね。
 山口さん、どうですか。
○山口氏 民間側というか、企業側からいくと、何をやっていいかというのがまず先に来るんですね。そうしたときには、暫定と言われたものが数値なのか概念なのか、概念としてのあやふやなものなのかによっては対応できるか、できないかにそのままかかってくると思うんですね。
 私としては、ぜひ今後の検討の中でいろいろ考えていってほしいのは、概念的なもの、あるいは数値でもそうなのですけれども、その数値がこうやったら対応したことになるんだよといったようなガイドラインとか、あるいは、やり方を示す、それがガイドラインなのですけれども、ほかの手段でも結構ですので、そういったものをぜひとも出していただきたい。そうしないと、多分、自主的に何かやってくださいと言われても、できないところだらけになってきて、大手でも非常に難しいというふうになってくるのではないかなということがちょっと懸念されるかなというふうには思っています。
 今回の場合だと、数字なんかでぱっと表してもらえると、そのやり方も含めて表現していただけると、企業としてはやりやすいのかな、あるいは、守る、やろうという気になるのかなという気がします。
○大前氏 今のお話の続きみたいですけれども、なりますけれども、ある特定の数字が暫定ばく露限界値になっていまして、それで企業がその物質を使っていて、健康な状態と濃度を見ていて、そこで何も起きなければ、その起きないという濃度を限界値に、ばく露限界値でもっていけると、そういうようなことだと思うんですよね。だから、ばく露限界値から外れて限界値に持っていける、それは、何も起きていないわけですから、ばく露限界値より高い濃度、要するに甘い濃度といいますか、そういう方向に行くので、そういうような考え方で捉えていただけると非常に企業にとってもメリットがあるんじゃないかなという気はいたします。
○山口氏 今回の暫定ばく露限界値の話というのは、全ての化学物質に一応考えていくと。適用できるかどうは別としても、全ての化学物質、何万種類でしたか、それに該当させていくということを考えたときには、全ての物に対して対応を行っていく、まず最初に対応を行うということになるわけですから、やり方も含めて、簡便である程度分かりやすい、説明のしやすい、そういった方法をぜひ提示していただけると、あるいは検討していただけるといいかなというふうに思います。
○堀口氏 私が、今、イメージしたのは、なので、リスクアセスメントのところと表裏一体になっていて、かつ、その化学物質を扱っている方々の健康観察というか、健診の結果というか、そこのところも加わって全体として企業側が見ないと先に進めないみたいな感じになるのかなと思ったんですけど。
 そのときに、所見の有所見が今の状況の記載の書き方だと、健康観察のところがあまりに信憑性というかが今弱いので、そこは産業医がきちんとしないと厳しいかなという大前先生からの投げかけだったのかなと。そうすると、企業の人は全部が曖昧になってとっても大変という状況になっちゃうのかなと、今、正直思ったんですけど、山口さん、どうですか。
○山口氏 そうですね。それぞれの専門家、あるいは、担当者による役割分担というのはそこには必ずあると思うんですね。その役割分担がはっきりして、自分たちはこれをやるんだ、あるいは、企業の中でも使用者だとか産業医の方、あるいは、人事系の方ですよね、そういった方々がどういうふうに何を自分たちはやればいいのかというのを認識ができるような形というのがやっぱり重要で、それが分かれば、一通りまとめて、こういうふうに、企業全体としては、こうやればいいんだなというのが分かってくるのかなというふうに思います。その辺がばらばらにあるという形でやはり感じてしまっているのが今の、まだ現段階ですね。これからまだ検討は続きますので、トータルとしてはこういうふうにやっていくといいんですよというふうにやっていただくと、中小企業も含めて、ある程度やれるようになってくるのかなというふうに思います。
○堀口氏 最終的に情報が積み上っていったときに、それは現場なので、企業が情報を持つことになるじゃないですか。労災の発生とか。だから、その情報がもう一回、暫定値、暫定何だっけ、暫定ばく露限界値(仮称)に反映させるときにぐるぐる回るんですよね。そこのフローも見えないんですけど。すみません。
○植松室長補佐 今、それも検討している状況ではございますけれども、暫定ばく露、ないしばく露限界値を決定するに必要な情報をどのように事業者さんから提供いただくかといった、そういった仕組みづくりについてもしっかりと整備していく必要があるかなというふうに考えています。
○堀口氏 ありがとうございます。それで、それに関して御意見を御紹介させていただきます。使用者の安全や衛生に対する意識が労災の原因であるなら、新たな指標値の導入に効果は期待できません。もし作業環境や作業方法が原因であるなら、よほど簡易な方法で評価できなければ自主管理物質の数が多いので決めたはいいけど、実質的に誰も新たな指標値と比較するための測定なんかできないと思います。なぜなら、特別規則対象物質ですら、作業環境測定を100%行われているというデータはないことから、さらに測定対象が自主管理物質に拡大化されるので、実質率は下がると思います。すなわち、労災を減らすことに影響を及ぼさないということです。よって、先にSDSの交付を確実に行わせ、使用者に教育することを義務化するのが先だと思います。指標値を導入するのはその後からでも遅くはありません。
 それから、現在の安衛令、別表9にない化学物質に由来する労災の発生割合が高いのは分かりますが、それは使用者が取り扱う化学物質の危険・有害性を理解しないまま使用するからであるので、まずは危険・有害性を理解させる方法を構築することが先であると思います。
 個別管理物質でさえ管理できていないような状態であるにも関わらず、追加で規制するための数値を導入しても労災を減ずる力にはならないだろうと考えます。もっと現場に入って実情を見てほしいと思います。たとえばく露限界値などという机上の数値を導入したところで、どのように定量分析するというのでしょうか。また、義務化するにしても、その根拠(化学的・法的)はどこにあるのでしょうか。分からないことだらけですので丁寧な説明をお願いしますという御意見でしたので、値に固執しないでねというところかなと思いました。
 それで、先ほどばく露限界値と作業環境測定結果の評価指標である管理濃度との違いについて教えてくださいという質問がありました。先生、お願いできますか。
○大前氏 管理濃度というのは、これはもうここに書いて、おっしゃるように、作業環境測定をやった結果を判断するための数値です。
 ばく露限界値というのは、作業環境濃度ではなくて、個人のばく露濃度ですね。作業員の方は同じ場所にずっといるわけじゃなくて、あちこち移動したり何だかんだするので、作業環境の測定の数値とずれることがしょっちゅうあります。そのための基準値がばく露限界値ということになります。だから、見ているものが違う、片や作業環境を見ている、片や本人のばく露を見ている。管理濃度のほうが、作業環境を見ているほうが、作業環境管理に属するところで、本人のばく露を見ているところは、どちらかといいますと作業管理、三管理の中ではそういう言い方ができるのではないかと思います。
○堀口氏 ありがとうございます。先ほどの御意見の中にSDSの交付を確実に行わせ、使用者に教育することを義務化するのが先だと思いますみたいなのがあったんですが、これらについて何か検討会でお話とはあったんですか。
 山口さん、もしよければ。
○山口氏 すみません、私、検討会のほうでなくてワーキングのメンバーで。
○堀口氏 ワーキングの。はい。
○山口氏 検討会のほうの議論として、多分、ありましたですね、少し。ワーキングでは、これ、やっていないので、私、議論には参加していないんですが。
○堀口氏 山口さんの御意見はどうですか。
○山口氏 要は、先ほども言ったんですけど、伝達するものをいろいろ検討したり、伝達した結果を利用するという議論を今ずっとしていると思うんですけど、左から右に情報を移す方法論というのが非常に少ししか議論がされていなかった、検討会でもされていなかったのかなという部分がありまして、それがさっき60%しか配布されていないというのが10年前と変わっていないという話になるんですけれども、誰がSDSを作って、誰が渡すのかというところに対して、法的にちょっと問題があるのかなというふうに前々から思っています。製造メーカーが作ったSDSを利用者まで直接確実に届くような、途中、仲介した会社があった場合には、その会社が確実に渡すという義務化ですね。例えばですね。そういったところが必要になるんだと思うんですけれども、化学物質を譲渡、提供した人が、そのSDSを渡さなければいけないというふうになっているので、じゃあこれ、誰が作成して渡すのかといったときに、非常に疑問が皆さんあるんですね。解釈がかなり分かれますというところとか、あと、今は何せ手渡し、要は紙による手渡しか、フロッピーディスクでしか渡せないんですね。ほかの方法を使う場合には、相手の許可を得なければいけないという、ちょっと世界ではあまり聞いたことのないやり方を、ちょっと古いやり方を今でもやっているので、それが、今回、多分改善されることになるんだと思うんですけれども。
 ただ、問題がここに一つだけあって、これ、厚生労働省さんの労働安全衛生法では変わります。ですが、SDSというのは三法で決まっておりまして、ほかに化管法と毒劇法とあるわけですね。こちらのほう、いまだに同じです。つまり、今回、厚生労働省さんだけ変えても、残りの2省さんが変えなければ、結局、我々は手配布、あるいはフロッピーディスク、あるいは相手から許可をもらって配布するという形になります。
○堀口氏 手間が2倍になるということですか。
○山口氏 2倍、3倍になってくると思いますね。ですので、そういったところを改善してうまく伝達する方法をやっぱりつくり上げていく、簡単に伝達する方法、今、幾らでもあるはずなんで、それをオーケーしていかないと配布率、お客様、利用者にSDSや情報を提供するのを確実に行うという義務の部分というのは変わってこないんじゃないかなと。義務化しても、うまく守れない義務として残っていくんじゃないかなというふうに思います。
○堀口氏 植松室長補佐、どうですか、今のことに関しまして。
○植松室長補佐 化学物質の管理に関しては、化管法であるとか毒劇法であるとか、いろんな法律でいろんな所管官庁があって、それらとはうまく連携していく必要があるというのは、いろんなところからも御指摘をいただいておりますし、我々としても十分認識してございますので、今、山口さんが御指摘いただいたようなSDSの交付方法などについても、もちろんながら連携、しっかりと情報共有しながら足並みをそろえて変えていく方法を模索していくのかなというふうに考えております。
○堀口氏 みんなで一斉にどんとやるのが一番楽なのですけど、取りあえず、切り込み隊長で頑張っていただけないと、ほかの省庁が、もしその方法がやっぱり受け取りやすさが企業としてはフロッピーの云々、書面よりはやっぱり厚労省で今回の改正でやれたほうがやりやすいよねとなれば、多分、ほかの省庁が追随してくると思うので、切り込み隊長として頑張っていただければと思いますが、山口さん、いかがですか。
○山口氏 ぜひそうしていただきたいと思います。まず誰かがやれば、それについてくるというのは多分あるかと思いますので。
○堀口氏 でも、そこのところが非常に、要するにうまくいっていない今の現状があるというところですよね。
○山口氏 企業的なというか、私の認識としては、そこがございます。
○堀口氏 いろいろな部分でちょっとずつでも改善が今回のことでできればいいというようなところかなというふうに思いました。
 お二方とも化学物質のことについて、知っている、知らないということをすごく強調して書かれているんですけど、知っていてもやらない人はやらないので、今回のコロナを見ていても、そこだけではない問題がいろいろあるのではないかなと現実は思っております。
 それから、ほかの質問に行きますけれども、今度、変わっていくところのスケジュール感のお話なのですが、どれぐらいの期間で、2021年7~8月に検討会の最終取りまとめが安全衛生分科会に報告される予定とのことですが、その後どれぐらいの期間で法令が改正されるのでしょうかという。
○植松室長補佐 法令改正については、順次進めていくということになるのですけれども、今回、12月23日に検討会のほうで中間取りまとめを行ったということは、先ほど申し上げましたとおりですけれども、2月1日に安全衛生分科会のほうに報告させていただきまして、それを受けて最終取りまとめに先んじて、法令改正のステップに進めるものは順次進めていくということも考えてございます。その後に、最終取りまとめを受けて、また分科会に報告して、またそれらに対応する形で法令改正手続を進めていくと。法令改正も政令、省令、告示と段階によっていろいろございますので、ここでちょっと一概にどれがどうだというのはちょっとまだ整理ができていない状況ではございます。
○堀口氏 21ページにありますように、都度・都度、法令改正の手続に入っていくということかと思います。
 それから、もう一つの質問ですけれども、ラベル表示、SDS交付、リスクアセスメント等の義務化に関し、全該当物質を一度に対象とするのでしょうか、それとも、危険・有害性が重篤な物から段階的に行われるのでしょうか、もし段階的に行われるなら、タイムスケジュールはどのようなものになりそうでしょうか。
○植松室長補佐 この点に関してですけれども、これも確定ではなくて、まだ検討段階ではございますけれども、現在の想定ということでお話しさせていただきますけれども、これは一度に全て対象とするということではなくて、段階的に対応してまいりたいというふうに考えてございます。
 ただ、あまり時間をかけるのも、それは時代に合っていないということで、全体的なスケジュールとしては大体5年、6年ぐらいのスパンで考えておりまして、その対象物質を二つないし四つ程度のカテゴリーに分けて順次改正作業を行いつつ、その経過措置、猶予期間ということで2年、3年ぐらいを見込みながら順次対象物質について改正作業を進めていくのかなというふうに想定しています。
 以上です。
○堀口氏 ありがとうございます。それから、御質問ですが、労働者の意識啓発、教育の強化で学校教育など早い段階からのラベル教育の導入について検討とされているが、もちろん文部科学省との連携で実施するのかと思っているが、具体的なアクションとその達成予定時期を教えてほしい。また、厚労省による今の労働者へのラベル教育の機会の設置はお考えではないのか。もしお考えがあれば、その義務化の是非についても教えてほしい。
○植松室長補佐 ラベル教育に関しては、文科省さんとの連携というのは当然考えられるんですけれども、文科省さんは、こんなことを言ってもあれですけれども、なかなか連携しづらいというか何というか、腰が重いといいますか、そういったところもあろうかと思いますので、そういった状況はありつつも、今後は文科省さんとの連携は欠かせないということなので、連携については今後進めていくというようなことでございます。なので、その達成予定時期というのは、現時点では決まっておりません。
 厚労省による労働者へのラベル教育の機会の設置ということですけれども、今後、そういうことも想定されるとは思いますけれども、現時点で考えているものはございません。
○堀口氏 ありがとうございます。ラベルに関して言うと、今は消費者向けの製品って、ラベル、該当しないじゃないですか、化粧品とか。だけれども、やっぱり化学物質全体と考えると、例えば小さい企業というか飲食店とか、ああいうところだと、業務用じゃなくて家庭用のものを使っていたりするので、次亜塩素酸とか何かで、事故が起こったりとかしたりするから、やっぱり文科省も大事なのですけど、消費者庁も大事かなとちょっと思ったり、お父さんとかお母さんが工場でこういう物を扱っているんだということを子どもたちが認識することも大事なことなのかしらと、子ども本人だけじゃなくですね、思ったりします。
 多分、こういうことが検討されていることを文部科学省には伝えておいたほうがよろしいのかしらと思うんですが、いかがでしょうか。
○植松室長補佐 そのように対応してまいりたいと思います。
○堀口氏 よろしくお願いします。
  いただいた御質問は今のところ全部処理ができました。もう少しお時間があるので、何か山口さんとか、ありませんでしょうか。
○山口氏 急に振られたんであれなのですけど、1点、これから議論を多分進めていく中で具体例というところでお願いしたいのがありまして、多分、今回の法律の考え方の変更では支援体制とか、先ほども私、お願いしましたガイドラインとかをたくさんつくってやりやすいようにしてほしいということを言ったかと思うんですけれども、その中で、これ、どうやって対応するのが一番いいんだろうと企業側でも非常に難しいと思う義務化の中で、植松さんの資料の17ページの中での事業所内での容器を移し替えたときの情報の伝達の仕方というのですかね、これって非常に難しいというか、ラベルそのものを幾つも貼っていくというわけにも多分いかないと思うんで、何らかのやり方というのがあるかとは思うんですが、そのやり方で何かいい例とかってあるのかなというような、そういったものをやはり提案、提示していただけると、それなりに可能となる、これだったらできるねというふうに納得ができるのかなというふうに思うんですね。
 現実には、少量多品種の企業、ある工場が少量多品種だと、もういろんな物があるので、それを一々ラベルを貼れない、今回使っているのは何だっけ、そのラベルの貼り間違いすらも起こるといったことまでやはり懸念しなければいけなくなるんですね。そうすると、それってどういうやり方がいいんだろうということが、企業任せで考えろではなくて、やはりみんなで考えていく必要があるのかなというふうに感じております。この辺って、検討していましたかね。
○植松室長補佐 そこまで具体的な議論にはまだ及んでいないというふうに承知しておりますけれども、山口さんの御指摘されたとおり、ラベルを貼り間違えるなんていうことは、そもそも労働災害を誘発するような要因にもなってしまいますので、丁寧な議論が必要だなというふうに改めて思いました。
○堀口氏 ワーキングとかでもぜひ議論してもらいたいという、議論したいというような感じですか。
○植松室長補佐 ちょっと検討会とワーキングのほうで棲み分けもございますので、議論が重ならないように整理しながら前に進んでまいりたいと思います。
○堀口氏 大前先生、今のお話に何かコメントありますか。
○大前氏 現場では小分けして使っているところ、結構あるので、少量多品種じゃなくてもやっぱりそういうところがありますので、大体現場で手作業でやっているところだと、全部剥がれちゃうですよね。だからなかなか難しいですね。一つの考え方としては、有機則なんかで看板を貼れというのがあるんで、看板でもうまとめちゃうとか、そんなのもありかもしれませんね。一個一個のボトルではなくて、もうまとめて。やっぱり一個一個のボトル、あれは無理ですよね、現実的に。
○山口氏 ほとんど無理だと思いますけれども、ボトルだけではなくて運ぶための例えば簡単な話、研究者はビーカーとかありますね、例えば。そういった容器に入れて現場で運ぶことだってあるわけですね。これ、どこまでを指しているのか分からないんですけれども、要は、物を移し替えて移動させて、そこで使うというやり方がいろいろある中で、少量だけではなくて、例えばコップみたいなものをどうするのとか、貼りにくいものも当然あるということ、いろんなパターンがあるということも想定した上での義務化でないと、守れない義務になってしまうということを懸念します。
 今、大前先生が言われたように、まとめて考え方として掲示しておくというのは一つのいい例だとは思いますけれども、じゃあどれとどれをまとめたら、どういうのになるのかということに関して、やはりそこも考え方というのがある程度一定になっていないと、その対応が難しいというふうに思う部分もありますので、企業によってばらばらになってしまう恐れがあって、それがインダストリアル・ハイジニストの方が見たときに、これ、おかしいよというふうな指摘になったりすると、またそこで溝ができてしまうという部分もできてしまうので、そうならないような形の情報提供とかガイドラインとか支援の方法というものをぜひ検討していただきたいというふうに、企業としては思います。
○堀口氏 なるほど。今後またこの最終取りまとめの前とかにパブリックコメントの募集とかするんですか。
○植松室長補佐 最終取りまとめの前にパブリックコメントを行うということは想定はしていません。
○堀口氏 そうなのですね。パブリックコメントが出せるんだったら、やはり企業の方々、今回、多分、お話を聞いて1回そしゃくすると思うんですよね、この今日の資料を基に。で、そうしたら、自分の会社でこれを具現化しようとしたときに、この辺りでどうしても詰まってしまうというか、どうしたらいいんだというものが出てくると、どこかで現実的にはこうなんだけど、これはどういうふうに解釈すればいいんだろうかとか、対応すればいいんだろうかとか、ここに載っていない部分の検討会やワーキングの方々のほうで気づけなかった部分がひょっとしたら出てくるかもしれないなと今ちょっと思ったんで、何かそういう、要するに、あと、大阪でもちょっとこういう意見交換会がありますから、本当はフロアから意見をいただけるといいのかなとは思っているんですけれども。
○植松室長補佐 個別に御意見を伺えれば、それがもちろんベストな方法だと思いますけれども、例えば検討会やワーキングでもそういった皆さんの個別個別の意見ではないですけれども、業界を代表した御意見を出していただくという観点から、専門家の方であるとか、業界団体の方に御参加いただいているということがまず一つございます。
 それを踏まえた上で取りまとめということをさせていただいた上で、実際に法令改正の段階に進む段階になれば、ちょっと時期としては遅めであるかもしれないですけれども、皆さんの御意見をいただくようなパブリックコメントというシステムがございますので、そういった時期も活用していただきながら、皆さんの御意見を真摯に受け止めてまいりたいというふうに思っております。
○堀口氏 ありがとうございます。それでは、大前先生、今日の資料の中でどうしてもこれだけは伝えておきたい1枚とか2枚とかないでしょうか。これを、私が、例えば今日聴講している側で、企業の上司に説明しろと言われたときに、これの中のどれを説明すればいいんだろうとちょっと思ったりしたので、先生、どれが、どれを絶対上司には伝えてくれという。
○大前氏 どれも、一つと言われれば、4枚目のスライド、量影響関係のスライド、これちょっと面倒くさいんですけれども、なかなか説明をされるのは面倒くさいんですが、とにかく、ばく露限界値をつくるときには、十分健康のレベルとしては軽いやつをターゲットにしているんだということはぜひ理解していただきたい。決して中毒みたいな、そんな話のレベルじゃないんだと。GHSはむしろ中毒の話のほうに偏っているんですけれども、ばく露限界値のほうはそうじゃなくてもっと軽い影響だという、ここのところの差ですね。そこのところはちゃんと認識してくださいというのは申し上げたいと思います。
 それからもう一つ言わせていただければ、産業医さんにちゃんと仕事をさせてください。
○堀口氏 仕事を振る。
○大前氏 そう。
○堀口氏 多分、そうすると、産業医さんがあまり働いてくれていないときはどうしたらいいんですかというのが跳ね返ってくるような気がするんですけど。
○大前氏 さっきもちょっと申し上げたんですけれども、作業現場を知らない人が特殊健診をやるというのは、これは非常に異常なことなので、本当は産業医という資格も分けたほうがいいかもしれないですね。衛生管理者は1種、2種という形で分けられております。2種のほうは化学物質関係はあまり扱わない、製造工場じゃないという、同じように、産業医さんもひょっとしたらグレードを分けたほうがいい可能性はありますよね。ちょっとこれは、随分大きな話なので、今回のこの話とは全然また違う話ですけれども、そのぐらいやらないと、まともな特殊健診はできないんじゃないかという気がします。
○堀口氏 ありがとうございます。この4枚目のスライドの、要するにばく露限界値と右側に青くありますが、健康に不利な影響なのか、そうじゃないのかというところがポイントで、これまでのGHSが目標としている影響の範囲の中毒が不顕性影響かというところとでずれていますよねというところですよね。ここがポイントということなので、ちょっと考え方が違う値になりますということです。
 ということで、室長補佐、何か、植松さん、言い残したりとか、このスライドはよろしくとか、説明するときぜひ使ってほしいスライドとか。
○植松室長補佐 本当はインパクトを考えれば、この最後のスライドをプッシュはしたいのですけれども、そうはいっておられないので真面目に話をしますと、特にメッセージとしては先ほどのスライドと一緒なのですけれども、やはり今までの仕組みと大きくこれから変わっていくよということをメッセージとしてお伝えしたいというふうに考えております。
 検討自体は、これからも続いていきますので、資料や議事録などを常に主体的に情報収集していただきながら、御意見等があれば、直接我々のほうにお電話なりメールなりでお寄せいただいても結構ですし、そういった形で自分のことであるということをまず認識していただきながら、行政だけではなく業界全体を交えた形でよりよい仕組みにしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
○堀口氏 仕組みが変わるときですので、ぜひ皆さんもいろいろと団体を通じてなり、御意見を出すときかなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 時間はあと30分もあるんですけど、何か、一応出尽くした感じがしておりまして。
 それでは、ちょっと30分早いんですけれども、直接的な今ちょっとチャットでやり取りとかをしていないので、本日これにて終了させていただきたいと思います。皆さん、長時間どうもありがとうございました。
○事務局 先生方、どうもありがとうございました。本日の第1回東京開催については、議事録を作成いたしまして、厚生労働省ホームページに掲載予定をしております。ホームページ掲載までに少々お時間をいただきますので、あらかじめご了承ください。
 なお、令和2年度職場における化学物質に関するリスクコミュニケーションにつきましては、来月2月24日、大阪にて第2回を開催予定しております。テクノヒルホームページにおいて参加申込みを受け付けておりますので、御都合がよろしければ御参加、お申込みください。
 また、今後のリスクコミュニケーション活動の参考のため、事後アンケートを実施させていただきます。今回のお申込みをいただきました皆様のメールアドレス宛にアンケート入力用のURLを送信させていただきますので、御協力のほど、よろしくお願いいたします。
 予定終了時刻より少々早い終了となりましたが、以上で令和2年度第1回職場における化学物質に関するリスクコミュニケーションを終了いたします。
 皆様、御参加くださり、誠にありがとうございました。