第311回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 議事録

日時

2020年(令和2年)11月25日(水)14:00~

場所

東京都港区新橋1-12-9 A-PLACE新橋駅前 AP新橋 Bルーム(3階)

出席者

公益代表委員
  • 小野 晶紀子
  • 鎌田 耕一(部会長)
労働者代表委員
  • 木住野 徹
  • 永井 幸子
  • 仁平 章
使用者代表委員
  • 佐久間 一浩
  • 中西 志保美
  • 平田 充
  • 森川 誠

議題

(1)社会福祉施設等への看護師の派遣に関するヒアリング(公開)
(2)押印を求める手続の見直しについて(職業安定分科会労働力需給制度部会関
係)(報告)(公開)
(3)労働者派遣事業の許可等について(非公開)
(4)有料職業紹介事業及び無料職業紹介事業の許可について(非公開)

議事

議事内容
○鎌田部会長 お待たせしました。ただいまから第311回労働力需給制度部会を開催いたします。本日は、公益代表の藤本委員、松浦委員及び労働者代表の奈良委員が所用により御欠席と聞いております。本日は、社会福祉施設等への看護師の派遣について、関係3団体からのヒアリングの後、押印を求める手続の見直しについて報告、許可の諮問に係る審査を行います。このうち、ヒアリング及び押印見直しの報告は公開で実施いたしますが、許可の諮問に係る審査については、公開することにより不利益を及ぼすおそれがあるため、非公開とさせていただきます。傍聴されている方につきましては、押印見直しの報告終了後に、御退席いただくことになりますので、あらかじめ御了承ください。それでは議事に入りますので、カメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。
まず、議題(1)社会福祉施設等への看護師の派遣に関するヒアリングです。初めに、公益社団法人日本看護協会より熊谷常任理事に御出席いただいております。大変御多忙のところ、本部会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。部会を代表いたしまして、私から御礼申し上げます。
本日は、貴会の立場から、社会福祉施設等への看護師の日雇派遣について御意見を述べていただければと思いますので、まずは5分程度御説明いただき、その後、質疑応答といたします。それでは熊谷常任理事、よろしくお願いいたします。
 
○日本看護協会熊谷常任理事 皆様、こんにちは。日本看護協会の常任理事をしております熊谷と申します。今日はどうぞよろしくお願いいたします。お手元の資料をお開きください。1ページ、全国の看護職は現在166万人が働いておりますが、日本看護協会は職能団体として、76万の看護職が加入しております。2ページ、本会の使命ですが、看護の質の向上、働き続けられる環境づくりを推進、看護領域の開発・展開を図るという使命を果たしております。
3ページ、日本看護協会の意見を述べさせていただきたいと思います。日本看護協会は、雇用管理上の問題が懸念されますので、看護師の日雇派遣の解禁には積極的には賛成ではありません。次のページの別添に、職業安定局で昨年実施されたニーズ調査の結果の一部をお配りしております。
この調査によれば、看護師等が派遣として働く際には、契約の範囲外の業務を求められる、指揮命令系統がはっきりしない、労働時間管理が不適切、労働者の安全・衛生面の確保などの雇用管理上の課題があると答えております。さらに、短期の派遣労働をする場合の問題としては、派遣先にすぐ順応できない、契約が細切れで収入が不安定、事故発生時に十分な補償を受けられるか不安、チームでの役割が発揮できるか心配などを看護師自身が懸念しております。また、福祉介護領域では医療ニーズの高い利用者が多くなっております。さらに、現在は新型コロナウイルス感染症も未だ収束が見通せないばかりか、福祉介護領域においてもクラスターが発生しております。感染防止対策や介護事故の防止対策も切実な課題で、看護師の役割や看護師への社会からの期待は大変大きいと認識しております。
日雇看護師が担う日常的な健康管理業務の実施において、日雇派遣では利用者の普段の状態が分からないため、適切に対処できないばかりか、安全なケア提供の確保に課題が生じることが危具されます。また、日雇派遣の雇用管理上、契約の範囲外の業務を求められる、指揮命令系統がはっきりしないなどの問題があると、看護師自身の不安が高くなり、ますます安全なケアが提供できなくなると推察いたします。
ただいま述べましたとおり、本会としては適正な雇用管理の観点から、また医療関連業務の適正実施の観点から、看護師の日雇派遣という働き方に懸念を抱いております。しかし、調査において、一定程度のニーズがあったことを根拠に日雇派遣を解禁するのであれば、業務を日常の健康管理に限定し、安全対策を徹底するとともに適正な雇用管理が確実に実施されるよう、監督指導を徹底していただくようお願い申し上げます。
具体的には、3ページの(1)から(5)のお願いです。(1)就業規則、処遇、業務内容など、適切な雇用管理の確保を行う。(2)業務内容の観点から、日雇派遣の看護師が行う業務は、入所者の日常的な健康管理業務の範囲内に限定する。(3)派遣元による事前のオリエンテーションと、派遣先における必要な教育訓練を実施する。(4)派遣先施設の利用者に混乱や不安が生じないよう、派遣先が必要な説明等を行う。(5)適切な派遣実施を監督指導等により確実に確認する。以上をお願いしたいと思います。
最後になりますが、日本看護協会は日雇派遣には雇用管理上の問題が懸念され、積極的には賛成いたしませんが、一定程度のニーズがあり、日雇派遣を解禁するということであれば、今、申し上げたような雇用管理、医療関係業務の適正実施の確保を求めたいと思います。以上です。
 
○鎌田部会長 どうもありがとうございます。ただいまの御説明について、御質問、御感想があれば自由に発言していただきたいと思います。よろしくお願いします。
 
○中西委員 熊谷理事、本日は御説明を頂き、ありがとうございました。私からは1点質問をさせていただきたいと思います。貴協会の御意見で、日雇派遣を解禁する場合に確保を求める5つの事項の中の3つ目に、派遣元による事前のオリエンテーションと、派遣先における必要な教育訓練とありますが、具体的に必要だと思われる内容がありましたら御教示いただければ幸いです。
 
○日本看護協会熊谷常任理事 中西先生、ありがとうございます。まず、本会が考えている事前のオリエンテーションについては、派遣先の利用者の状態、及び医療ニーズの理解、業務内容、指揮命令系統、緊急時の対応、業務上の相談・確認先などをオリエンテーションでお願いしたいと思っております。これは就業に伴うオリエンテーションとほぼ同じかと思っております。
必要な教育訓練については、医療的ケアに関する研修はもとより、医療的管理に関する研修です。例えば、今でしたら特に感染防止・予防、医療安全等になります。あとは倫理的、人道的な研修として、身体拘束の問題であるとか、昨今のアドバンス・ケア・プランニング等、マニュアルに沿った業務の実施等、これらを是非、教育の中でお願いしたいと思っております。以上です。
 
○中西委員 ありがとうございました。
 
○鎌田部会長 それでは仁平委員、どうぞ。
 
○仁平委員 連合の仁平と申します。どうも御説明ありがとうございました。3ページ、5つの条件が書いてある紙ですが、御説明いただいたとおり、積極的には賛成できないが、一定のニーズがあり、解禁することであればということで、5点の条件が付いているかと思います。私から2点の質問させていただきます。
(3)事前のオリエンテーション、派遣先における必要な教育訓練、(4)派遣先での必要な説明ということが条件として掲げられております。一方では、資料として付けていただいていますが、厚労省の実態調査では、例えば医療安全上の課題ということで、現場の率直な声だと思いますが、縷々様々な課題が見てとれます。情報提供や研修が今でも十分に実施されていないのではないかという声ではないかと思っております。1点目ですが、日雇派遣ということになれば、更にこういったことが形骸化するのではないかと私も心配するところです。確実に履行を確保するために、現行制度に加えて、何か必要なものがあるのか、この辺のお考えがあればお聞かせいただけないかと思っているのが1点目です。
2点目は、先ほどのペーパーの中に、入所者の日常的な健康管理業務の範囲内に業務を限定してほしいと書かれております。ただ、実態を考えますと、小規模な施設であれば、看護師の配置基準が1名という場合もあると思っております。そのような施設で突発的に緊急の事態が発生した場合には、限定された業務の範囲を超える可能性もあるのではないかと考えますが、看護師の方が安心して業務に従事するために、そういった場合に備えて、どのような措置があれば良いとお考えなのか、派遣元、派遣先、行政、それぞれに対する要望等がありましたら教えていただきたいと思います。この2点です。
 
○日本看護協会熊谷常任理事 仁平先生、ありがとうございます。御質問にお答えしたいと思います。まず最初ですが、医療的なケア、医療安全等に大変不安を持っている、そんな中でどう対応するかというお話と受け止めました。実は、社会福祉施設で働く看護職の研修教育の実態ですが、本会で全て把握しているかと言いますと、実はそこは全部把握できておりません。社会福祉施設での研修は、法人、事業者団体、自治体主催、本会のような職能団体が研修企画をしております。それぞれの内容や受講対象には違いがあります。ただ、社会福祉施設で働く看護師に求められる能力というのは、やはり医療と福祉をつなぐ重要な役割と考えておりまして、先ほど申し上げたような研修が大変重要だと思っております。
本会は、その実態を踏まえなければならないと思いまして、今年度、介護施設における看護職の役割に関する調査をただいま実施しております。その中で、研修受講の状況等も見えてくるような調査になっております。その実態を踏まえて、求められる研修内容を考えたり、受講しやすいシステム、今はこういう時代なので絶対に集合研修かと言いますとそうでもないので、eラーニングやオンデマンド研修等を構築して、とにかく安心して就業できることを職能団体として準備していきたいと考えているのが1点です。
もう1つの御質問が、日常業務、日常の健康管理業務に限定ということで、超えるときもあるのではないかということですが、やはり、そのときには派遣元に対して、派遣先に対して、それはできないとか、そういう場合はどうしたらいいかという、きちんとした申立てや相談ができる窓口を開いておいていただきたいと考えております。以上です。
 
○仁平委員 ありがとうございました。今実施されている調査と、それを踏まえた対応というのは貴重な資料になるのではないかと思いますので、是非、結果が出ましたら、我々にも教えていただきたいと思います。
あと事務局にお聞きします。看護師の配置基準が、例えば1名の場合に、「できない」という申し出があった場合はやらなくていいという、これは法律上そういうことになるのですか。この場での回答が難しければ、また調べてお答えいただきたいと思います。
 
○松原課長 仁平委員からの御質問ですが、労働者派遣法上という意味では、それは契約によるとしか言いようがないのですが、医療政策上とか、医療法上というのは、今、手元に資料がありませんので、確認させていただきます。以上です。
 
○鎌田部会長 仁平委員、それでよろしいですか。では、ほかにありますか。
 
○佐久間委員 本日はありがとうございます。資料を用意していただきまして本当にありがとうございました。端的に、1ページ目の下の段ですが、積極的には賛成できないが、解禁するのであれば雇用管理、医療関連業務の適正実施の確保を求めるということで、本当に率直な鋭い御意見だと思っております。
今回、看護師さんの日雇い派遣を協議していくに当たって、特に、私ども派遣元や派遣先が、今回は介護施設等が、いわゆる事業者になると思います。事業者とすれば、日雇派遣が認められることによって、間口が広がるということで、1つは有効な方策になると思っております。そこで、日本看護協会が看護師としての一番大きな団体ですので、そちらの意見と、労働者として捉えますと連合や看護師の労働組合側の意見というのは非常に重要ではないかということで、私はかねてより、発言してまいりました。
そこの中で今回、日本看護協会のお話をお伺いすることは大変参考になっているわけです。5つの条件というか、雇用管理上の要件確保を求めるということで伺っております。先ほど仁平委員からも言われましたが、私も、特に(1)から(4)までが、今の介護施設で十分対応できるというか、これも感覚で構わないのですが、これだけ整備をしてくださいということになれば、今の派遣元になる所で、これだけやれば十分できるのだと、それだけのことはやってくれるという能力は皆さん備えていると、そして、派遣先の事業者の方々は、確実にできるという意見をお伺いしたいと思います。
最後に、これも事務局にお伺いしたいのですが、もし日本看護協会において、(1)から(5)の条件で認めていただけるのであれば、労働局による監督指導というのがありますが、今は労働局の方は本当に忙しい中で、特に派遣もいろいろ見なければいけないというのがあります。介護施設とかに重点を置いて、労働局が監督指導を行えるものなのか、教えていただきたいと思います。以上です。
 
○鎌田部会長 お願いできますか。
 
○日本看護協会熊谷常任理事 佐久間先生、ありがとうございます。(1)から(4)までの、いわゆる施設派遣先の実態については、私どもよりも老施協の先生方にお尋ねするのが良いと思いますが、ここに書かせていただいたのは、事業所であれば当たり前におやりになることだと認識しておりますので、改めて、ここにお願いという形で書かせていただいたと認識いただいてよろしいかと思います。
 
○鎌田部会長 事務局、お願いします。
 
○松原課長 佐久間委員の御質問にお答えします。私ども労働局のほうで需給調整指導を行っておりますが、派遣会社、派遣先、あとは紹介事業者に対する監督指導権限を持っています。
何を重点にするかというのは、指導監督上の計画になりますので、詳らかにし難い部分があるのですが、可能かどうかという御質問でしたので、基本的には、そういう日雇等を重点にという形で指導監督を行っていくことは可能です。
 
○鎌田部会長 佐久間委員、よろしいですか。では、森川委員、どうぞ。
 
○森川委員 森川と申します。本日は分かりやすい御説明をありがとうございました。日雇派遣に一定のニーズがあればという言い方をされておりますが、協会として、ニーズの強い、弱いという辺りについて御見解がおありであれば教えていただきたいと思います。
 
○日本看護協会熊谷常任理事 森川先生、ありがとうございます。私どもは、法律に基づいて各都道府県に無料職業紹介事業所であるナースセンター(eナースセンター)を持っております。毎年そこで無料職業紹介を実施し、かつ、離職したナースたちの実態を把握しております。その状況を少し述べさせていただきます。
これは平成30年のナースセンター登録データに基づく看護職の求職、求人、就職に関する分析報告書からです。仕事を探しているナースの6割は常勤を希望しております。別途、派遣で働くことの意向について任意回答により調査していますが、全体の半数程度から回答が得られており、派遣で働くことを希望する者は全体の0.6%でした。私どもが持っているデータからも、そういう高いニーズではないということは事実です。これは余談ですが、再就業の際に、どういうことを重視して職場を選ぶかということについては、勤務時間や夜勤の実態等、多様な雇用形態を望んでいることは事実だろうと思います。あとは処遇です。そういったところが看護職が職場を選ぶときに重要視している要点だと認識しております。
 
○鎌田部会長 それでは、ほかにありますか。平田委員、どうぞ。
 
○平田委員 経団連の平田です。本日は御説明ありがとうございました。今の御質問に重なるところもありますが、私からも日雇派遣のニーズについて2点お聞きします。まずは、職場となる社会福祉施設等において、看護師の短期の就業ニーズがあるか、今一度お聞かせください。
もう1点は、働く側の看護師から、自分が働けるときに短期で働きたい等、多様な働き方に対するニーズがあると感じている、または何か把握している実態があれば、教えていただきたいと思います。以上、2点です。
 
○日本看護協会熊谷常任理事 平田先生、ありがとうございます。まず、施設側にあるかどうかということですが、現在、福祉施設で就業している看護職は、40歳以上が86%を占めております。そういったことを考えますと、突発的な出来事が生じる可能性が高いのです。例えば、介護や子供のこと、あとは御自身の体調不良等です。そうしますと、臨時に何か看護師を補充しなければならない。その日に担う役割を誰かに代わってもらわなければならないということが、おそらく生じていることが推察されますので、施設側にはそういった点でニーズがあるのではないかと私たちは考えております。
看護師側としては、先ほど申し上げたように6割が常勤です。あとの0.6%をどう読むかというのはありますが、ただ、なくはないというふうには認識しております。
 
○鎌田部会長 ほかにありますか。よろしいですか。それでは、この後、別のヒアリングもありますので、質問はここまでとしたいと思います。熊谷常任理事におかれましては、貴重な御意見をお聞かせいただきまして本当にありがとうございました。
 
○日本看護協会熊谷常任理事 ありがとうございました。それでは、失礼いたします。
 
○鎌田部会長 続いてのヒアリングに移りたいと思いますので、準備をよろしくお願いします。
 
(日本看護協会 退室)
(全国重症心身障害日中活動支援協議会 入室)
 
○鎌田部会長 それでは、次のヒアリングに移ります。一般社団法人 全国重症心身障害日中活動支援協議会より、末光会長、木村事務局長に御出席いただいております。本日は大変御多忙のところ、本部会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。本部会を代表いたしまして、私から御礼申し上げます。
本日は貴協議会の立場から、社会福祉施設等への看護師の日雇派遣について御意見を述べていただければと思います。まずは、5分程度御説明いただき、その後、質疑応答としたいと思います。それでは末光会長、木村事務局長、よろしくお願いいたします。
 
○全国重症心身障害日中活動支援協議会末光会長 お手元の資料に沿って説明させていただきます。私どもの協議会は、在宅の重症心身障害者の日中活動を支援する288事業所で構成されており、約5,000名の支援に関わっております。3ページを御覧ください。福祉・介護施設においては「緊密な連携が必要な高度なチーム医療」は一般的に行われていないとして、今回の日雇派遣の可能性を検討されていると伺いました。
下の4を御覧ください。知的にも身体的にも重度で、常時医療を必要とする重症心身障害児(者)の入所施設は、福祉施設であり、かつ医療施設であります。一方、在宅の重症心身障害者は、かつては医療が日常的に求められない人が中心を占めておりましたが、現在では様変わりしております。入所と在宅の差がなくなってきております。医療ニーズが高度な児・者を家族、特に母親が献身的に取り組んでいるケースが多いのが実情です。
その結果、福祉事業所である我々の支援事業所も、呼吸器管理などの必要な、いわゆる超重症児・準超重症児と言われる人たちが約40%を占めております。
5ページを御覧ください。利用者(重症児)サイドの特性について述べさせていただきます。重症児施設がスタートした当初の昭和40年代に、入園後に重篤な病状を来す事例が各地で発生しました。多くが、施設入所1週間程度で、発熱、嘔吐、緊張、けいれん、拒食、そして脱水状態に陥り、深刻な心身の不調を示します。各種の検査をしても、何ら原因と思われる病状は発見できません。そうこうしているうちに死に至るケースもあることを、小川助教授が報告しております。
共通点としては、4~7歳の緊張型(ジストニア性)の脳性マヒ児で、発語は全くないのに対し理解力はある、母子関係が緊密で、お母さんが我が子の独自かつ微細な思いを的確に察知し、速やかに対処しているのが特徴です。やがて、「母子分離不安」が原因だと判明し、段階的に母子分離を行うことにより、防止策が進んでまいりました。
6ページを御覧ください。今日では、短期入所が在宅支援の大きな柱となり、そして定着・普及しております。そこでは、以上の経験から、環境変化に慣れるための事前の体験入所、そして利用直前の詳細な情報交換を家族と受入れ側が重ねてやっております。更に、呼吸器系の変化への迅速な対応策等をとって不測の事態への予防を図っております。それでも中には病状の急変、そして原因不明の突然死の発生を経験しております。
7ページを御覧ください。つまり、物理的、人的環境の変化に極度に敏感なことが重症心身障害者に共通しております。「ことば」で思いを表現できないため、「全身」で反応し、重篤な状態に陥ってしまいがちです。そこで、介護・看護担当者は、本人の表情の動きや微細な変化を素早く受け止め、対応する感性が求められます。いざというときの緊急連絡体制も不可欠です。
8ページを御覧ください。公益社団法人日本重症心身障害福祉協会では、協会認定の「重症心身障害看護師」を10数年前からスタートさせております。対象は、5年以上の看護実務と3年以上の重症心身障害者看護経験者で、講義・実習・事例研究の12単位を取得した上での認定、そして3年後の更新審査に合格した者が、現在全国に554人が育ち、後進の育成、現場実践のリーダー役を果たしております。お母さんの中には、「無資格で素人の私が吸引等をできるのに、なぜ看護の資格を持った人が尻込みするのですか」と言われる方がいます。そのお母さんに、自分のお子さん以外の吸引などもやれるかと伺うと、「とんでもない」と言われることから、お母さんは「わが子」に特化したスペシャリストであり、一般化はできないと申してきております。
最後の9ページを御覧ください。以上、重症心身障害児者のケアは、『日常的な健康管理業務』を超えた医療行為が必要であり、リスクを伴います。重症心身障害者に対する経験のある看護師は大変少なく、呼吸器ケアの経験を有する看護師は更に稀少な状態にあります。常勤の看護師であっても、重症児・者一人一人と信頼関係を築き、個別性を理解した上で適切なケアを提供できるようになるには、数箇月から半年以上の期間(経験)を要します。重症児・者支援事業所への看護師が固定又は特定されない形での日雇派遣は大きなリスクを伴うと考えております。
ただし、「日常的な健康管理業務」の場合、それも重度の知的障害がなく、かつ個別的な医療ケアがない等の場合では、その知識と経験が生かされる現場もあり得ると考えております。以上です。今回、このような機会を与えていただき、ありがとうございます。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。それでは、ただいまの御説明に対する質問、御感想があれば、何でも結構です。どうぞ、御発言をお願いいたします。
 
○木住野委員 貴重な御報告をありがとうございました。率直な感想を最初に申し上げますと、日雇看護師に最もふさわしくない領域かなという印象を新たにしております。その上で、3点ほど質問させていただきます。
医療技術が発達し、それに伴う看護スキルも変化する中で、非常に専門性が必要になってきていると理解しました。8ページのDの重症心身障害者看護の「専門性」という項目ですが、重症心身障害看護師の認定制度を展開されているということで、非常に興味深く伺いましたが、これは先ほど申し上げた技術の変化と、それに伴うケアの内容の変化に伴って、スペシャリストの養成が求められているということだと思います。今後、必要性がますます広がり、その規模も広げていかなくてはいけないということなのかお伺いしたいと思います。
次に、最後のまとめの所にあるのですが、「日常的な健康管理業務」の場合は日雇派遣でも対応できるだろうということが書かれているのですが、重度心身障害施設において、そのような領域があるのかということもお伺いしたいと思います。
最後になりますが、もし、重度心身障害施設で日雇看護師の受入れを実現しようとするのであれば、派遣元と行政に対して、特に求めておきたい点がありましたら、お聞かせいただきたいと思います。以上です。
 
○全国重症心身障害日中活動支援協議会木村事務局長 まず、認定看護師についてです。これは我々の協会の認定ということです。全国に7か所ぐらいの育成機関・教育機関がありまして、毎年、5名、10名という認定看護師を育成していて、各施設から、この人が終わったら次はこの人というように、将来は施設の中心的な役割を担っていただけるという方に、毎年のように受けていただいていて、10数年で550名となっております。今後とも、こういった方々を増やしていって、我々の協会から離れたとしても、その知識をもって、市中の病院などを含めて、重症児の医療・看護・ケアに当たることのできる人材を増やしていく。これは我々の使命であると考えていますので、今後とも広げていきたい、増やしていきたいと考えております。
2つ目に御質問いただきましたが、我々の領域と言うか、業界のところで、日雇派遣の方に勤務していただける、活躍していただける余地があるかということですが、これは資料にも書かせていただいたとおり、難しい面があるのかなということで、私もなかなか具体的なイメージが湧かないところがあります。
と言うのは、必ずしも採用前から、重症児者に対する知識や経験を求めているのではなくて、実際に勤めていただいてから、一人一人の重症児者の方と向き合いながら、一人一人のケアを学びながらやっていただければと思っているわけです。それが早い人でも半年、入所施設でも数年かかる場合もあります。1人だけというわけにはいきませんので、5人も10人もの方々の対応を覚えなければなりませんし、さらには、重度の障害者の場合には、御家族の願い、希望、あるいは御家族の実際に行っている医療的ケアのやり方といったものも尊重して、共感しながら学んでいくということも必要です。そういったことから、ある日突然来て何かをということになりますと、なかなかできることは限定的になってしまい、必ずしも看護師でなければならないという点では難しいのかもしれないと思っております。
そういったような状況から、ご質問の最後の点についても、派遣をされた場合に双方に求めるものということについて、なかなか想定できないというのが現実でございます。
 
○全国重症心身障害日中活動支援協議会末光会長 私のほうからもよろしいでしょうか。3点目については、御承知のように、かつては医者でなければ駄目だと言われた部分も、どんどん看護師の方々がやれるようになりましたし、高齢者を中心とした医療的な吸引なども、介護福祉士の方々が一定の研修なりを積んだ上で可能になってきております。そういう意味では、だんだん裾野が広がってきていると思います。
そういう意味で、私どもとしては、すぐに大丈夫だとは言い難いのですが、変わってくる可能性は大きいのではないかと思っております。そして、変わってきてほしいと思っております。ただ、その際は慎重にお願いしたいということを重ねて申し上げさせていただきます。
 
○鎌田部会長 ほかにございますか。
 
○中西委員 本日はお忙しい中、御出席いただきましてありがとうございます。末光会長、木村事務局長、御説明を頂きまして誠にありがとうございます。
私からは、2点質問させていただきます。日本商工会議所が毎年実施している人手不足の状況に関する調査によりますと、「人手が不足している」と回答した企業の割合を業種別で見た場合に、今年は介護と看護が66.0%と最も高い結果として出てきております。貴協議会におかれましても、看護師の人手不足をお感じになっていらっしゃいますでしょうか。
それから、もう一つですが、採用に当たられまして、苦労していらっしゃる点等はおありでしょうか。また、どのような経路で採用していらっしゃるのでしょうか。お伺いさせていただきます。
 
○全国重症心身障害日中活動支援協議会木村事務局長 まず、人手不足の状況に関する調査で、介護・看護の分野で66.0%が「人手が不足している」と回答したということですが、ここには2つの理由があると思います。1つは、国が定める人員基準制度を満たしていたとしても、それでは必要なケアが十分にできないと現場では感じているのです。ですから、人手は満たされていたとしても、これでは十分なケアができていないというのが、ケアを提供している看護師や介護師の実感であるということが1点だと思います。
その上で、更にそれとは別の経営の観点から言いますと、人員基準を満たすという観点からしても、昨今の保育所の待機児童の解消などで、保育士の確保が障害福祉のほうでは非常に厳しくなっています。どんどん保育所ができていますので、その関係で保育士の争奪戦があって、非常に採れなくなっています。それから、福祉系大学を卒業した大学生が、福祉や介護の現場に来ないで民間企業で働いています。それは、やはり給与水準が違いますので、介護に来てくれないということがございます。こういった意味から、福祉職の人材確保は極めて厳しい状況にあります。
3点目に看護師ということになりますが、長らく重症児医療についてはなかなか看護師に振り向いてもらいにくい、やはり皆さん、まず急性期や一般病棟のほうに行かれます。大変長らく苦戦をしてきましたが、ここ2、3年は少し改善してきております。恐らくは診療報酬制度で、7対1の入院基本料の厳格化によって、7対1入院基本料の算定病院が減ることによって、そこから若干、看護師がほかの所にも、今まで来てくれなかった所にも回り始めたのかなという印象がございます。人手不足については、そのようなことを感じております。
採用での苦労やどのような経路かということについては、看護師については本当に苦労していて、施設開設以来、看護師の募集を止めたことがないぐらいです。数十年間、募集し続けているような状況です。ただ、正攻法で言うと、ハローワークと看護協会ということになりますが、そこだけではなかなか確保できないので、インターネットを使ったり、雑誌を使ったり、いろいろなことをしておりますが、これまではどうしても駄目です。そこで私ども法人という意味では、少なくとも3、4年ぐらい前からでしょうか、人材派遣、紹介会社にも頼らざるを得ない状況になって、そこから優先的に回してもらうようなことで、何とかぎりぎりで保ってきたというところです。ここ1、2年で、少し応募が増えてきたということはありますが、それまではそのようなことで、あの手この手でやってきております。
 
○全国重症心身障害日中活動支援協議会末光会長 補足させていただきます。どういうルートで来ているかというお尋ねだったかと思いますが、木村事務局長が言ったように、あの手この手ですが、やはり大きいのは口コミが大きいです。重症児施設でやっている看護師が、「重症児看護はこういう点がいいんですよ」ということを友人その他に言っていただく、これが1つ大きいと思います。
もう一つは、看護の学生時代に実習で、重症児施設で研修なり実習をしてくれた方が、すぐには来てくれません。ただ、一般病院で3年、5年やって、技術や知識に自信を持ったと同時に、あの重症心身障害児のために看護師として貢献したいという方が帰ってきます。私どもの所でも、大体3分の1がそうです。若いときの実習での体験というのが大きいです。
先ほど申し上げた「慎重に」というのは、そういう意味で、私どもは今回のことを駄目というのではなくて、慎重にやっていただく中で、理解の輪が広がれば安心してお願いできるような状況になっていくことが望ましいと思っております。
 
○中西委員 どうもありがとうございます。大変厳しい実態、私どもも知らないことを率直にお話いただき、感謝申し上げます。ありがとうございました。
 
○鎌田部会長 ほかに御質問、御意見はありますでしょうか。
 
○小野委員 今日は貴重な御意見を頂きまして、ありがとうございます。1つお伺いしたいのは、先ほどの人手不足の話と少し重なっている部分ではあるのですが、先般、厚生労働省で調査をして、その中で、人手不足が比較的深刻であるということが出ております。その中でも、特に理由としては、シフトの穴埋めや急な欠勤の代替で、各施設が人手不足で、その人員をどうしようかということで困っているというような実態が出ています。
特に、貴施設のような、非常に重要な役割を担った看護師が、個人の理由でお休みしなければいけないときもあると思うのですが、そういったときはどのように対処されているのでしょうか。
もう一点、付随した質問なのですが、先ほど非常に立派になって帰っていらっしゃる方が多いとおっしゃっていたのですが、例えばその方が個人の理由で常勤ではなくて、臨時的な立場で、ワーク・ライフ・バランスを確保しながら働きたいというようなニーズというのはあるのかないのか、あるいはそういうことができないから労働市場から退出せざるを得なくなっているような事例はないのか、あるいは例えば週に1回でもそういう人がヘルプに来てくれるような形で働いていらっしゃるような事例があるのかないのかというようなことを、少し具体的に教えていただければと思います。
 
○全国重症心身障害日中活動支援協議会木村事務局長 まず、障害福祉全般に言えることは、先ほど申し上げましたとおり、人員基準だと、我々としては最低レベルのサービスで、利用者や御家族が納得する最高のサービスを提供できるとは思ってはいないのです。なので、ぎりぎりですから、そこに穴が開いたら最低を更に下回ってしまうので、現場では大騒ぎになります。1人が休もうものなら大騒ぎです。なので、事業所によっては有休さえも取りにくいという福祉事業所が多いというのは、現実問題として、まずあると思います。
また、特に我々の業界の事業所は大変規模が小さいです。1日の定員が5人から20人ぐらいで、10人未満の事業所が半分以上あるような団体です。その中で、看護師は1名ないし2名です。基準は1名なのですが、医療的ケアが必要な人が多い事業所は1名では対応できないから2名なので、これは1名でも欠けられると困りますし、1名しかいない所は看護師が休んでしまうと、医療的ケアの必要な人が受けられないということになってしまいます。そうすると、その看護師は自分が有休さえも取れないのではないか、あるいは医療的ケアの方が出席されない曜日を限定してしか、休みを取れないのではないか。そういった大きなプレッシャーが掛かっているのも事実です。ですから、それを上回る人員が配置できない限り、個人の理由で自由に有休を取ることさえも大変難しいのが、この規模の小さい事業所の悩みです。
これを大きくすると、重症心身障害というのは大変少ない人たちですから、身近な所では通えなくなってしまいます。規模が大きくなると、1時間も2時間もかけないと通所施設に通えないことになってしまいますので、やはり規模は小さいほうがいいです。小さくすると、一人一人の有休が取りづらくなると。こういうことは現実問題として、我々の業界にはございます。
それから、派遣の場合はどなたが来るか分からないということなので、我々としては難しいと思いましたが、例えば仮に週1回であったとしても固定された同じ方が毎週同じ曜日に来られるのであれば、私は十分に可能だと思っております。特に、重症児の中でも超重症児や準超重症児と言われる方々は、週5回、毎日通う方は非常に少ないのです。週2回とか、曜日を決めて、月曜日と木曜日だけというような方は非常に多いわけです。その中で、毎週木曜日に来ていただけるのであれば、その医療の必要な方を毎週見て、毎週接していって、だんだん慣れていただくということが可能なので、固定、特定されるのであれば、週1、週2であったとしても、十分に我々の所でも勤めていただけるのではないかと、私は思っております。
 
○全国重症心身障害日中活動支援協議会末光会長 看護師の働き方も変わってきております。私はこの世界に50年ほど関わっているのですが、最初は、看護師は3交替が常識でした。ところが、出産、子育て等ができるような状況になってきましたので、日勤だけとか、あるいは週に何日だけとか、そういうパートの看護師も増えてきております。その先に、今回の日雇いになると思いますが、その日雇いのところは、先ほど来申し上げているように、慎重であってほしいと思っています。働き方は変わってきております。
それともう一つ、先ほど木村事務局長が言いましたように、適正な規模、適正な配置はどこにあるのかということを、我々、運営の責任者は考えなければいけないかなと思っているところです。
 
○鎌田部会長 ほかにございますか。なければ次のヒアリングもございますので、お二人に対する御質問はここまでとしたいと思います。末光会長、木村事務局長におかれましては、貴重な御意見をお聞かせいただきまして誠にありがとうございました。
 
○全国重症心身障害日中活動支援協議会末光会長 いい機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 
(全国重症心身障害日中活動支援協議会 退室)
(公益社団法人全国老人福祉施設協議会 入室)
 
○鎌田部会長 それでは、本日の最後のヒアリングに移りたいと思います。公益社団法人全国老人福祉施設協議会より、野口幹事に御出席を頂いております。本日は大変御多忙のところ、本部会に御出席いただきまして誠にありがとうございます。部会委員を代表いたしまして、私から御礼申し上げます。
本日は貴会の立場から、社会福祉施設等への看護師の日雇派遣について、御意見を述べていただければと思いますので、まず5分程度、御説明いただき、その後、質疑応答としたいと思います。それでは、野口幹事、よろしくお願いいたします。
 
○全国老人福祉施設協議会野口幹事 ただいま御紹介いただきました、全国老人福祉施設協議会からまいりました野口恭子と申します。よろしくお願いいたします。まず、資料に基づいて、私たち全国老施協に加入されている施設の中でも多くを占める特別養護老人ホームの現状について、まず御説明させていただきます。資料の右下の番号で言うと、4~6ページを御覧ください。
まず配置基準、看護師の配置基準を満たすのはもちろんなのですが、加算取得のために、ほとんどの老人施設においては最低でも常勤1名、また7割の施設においては看護体制加算と言われる加算を取得するために、24時間のオンコール体制が敷かれている中で看護師の方々に勤務していただいているのが現状です。
続いて、施設介護職員の職務についてですが、7、8枚目のスライドを御覧ください。看護師の職務としては、日々の健康管理はもちろんなのですが、比重の高い業務としては、服薬管理や、栄養を入れるための手段の経鼻経管栄養、また、胃に直接穴をあけて栄養を入れる形の胃ろうの管理になります。そういった行為や痰の吸引、点滴、在宅酸素療法の管理、人工肛門の管理、糖尿病の治療薬であるインシュリン注射の管理等、その他の医学的管理という分野においても、多くの業務をしているという現状があります。また、現在の環境では、コロナの感染症等に代表される施設全体の感染予防対策の主導を握っているといった職務も、日常業務として加わってきます。
実際に、特養をはじめとする施設で看護師の人材派遣を利用しているケースは、スライドの10、11を御覧ください。現状として、3割ほどが需要として存在しているのも事実であり、この人材派遣を利用する理由としては、正規・非正規の職員を募集しても集まらない、一時的な不足対応のためといったことが派遣を利用する主な理由になっています。
これは看護師の職務にもつながってきますが、特養の施設に入居される前の場所としては、スライドの12、13辺りを御覧ください。スライドの12枚目にあるように、病院や診療所から直接入居されるケースもかなり多くなっているため、13ページ以降にもあるように、医療度の高い状態で入居されるといったケースが増えてきており、実際に入居から退所に至るまでの間には、何らかの医療処置が必要なケースというものも多くなっているのが現状です。
これらの現状を踏まえて、日雇看護師の派遣に対する意見ですが、看護師の専門性を見た際には、やはり経験等にもよるとは思いますけれども、職務には支障ないものと考えています。しかし、特養をはじめとする施設において、ケアの質を高めることは当たり前とされる中、この質の高いケアは様々な専門職種の協働があって初めて実現することができます。1つの施設に長期間勤務する一般の看護師の派遣という形と、日雇いという形を比較していくと、この多職種連携というところにおいて重要な職種間の情報伝達や、日々の入居者の変化等の伝達がうまくいかないことも考えられ、それにより、例えば服薬投薬という行為を例に取ってみますと、誤薬、薬を間違えて飲ませてしまうリスクなど、医学的安全性に少なくとも影響を及ぼす可能性が否めないのではないかと考えています。そのため、それらを回避するための方法を慎重に検討する必要性が出てくるのではないかと思っています。それらを怠れば、事故が発生した際の専門職が故の看護師個人の資格を脅かす事態にもなり兼ねなくなってしまうのではないでしょうか。
他方では、働き方改革の動向から、日雇いといった雇用条件で働きたいという看護師側のニーズがあることも理解でき、それを踏まえつつ日雇看護師を派遣される派遣会社と、私たち特養事業者側の責任分界点を整理した対応方針を決めていかなければ、事業所も雇用リスクが大きく、せっかくの雇用の機会は机上のものとなってしまいますし、雇用される看護師の方々の働く環境としても、決して良いものにはなり得ない可能性も出てくるのではないかと考えています。
これらの課題を整理した上で、業務を限定する等のものを検討しつつ、働く機会を汲み取っていくことは考えられるのではないかと思います。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございました。それでは今の御説明について質問、御感想があれば自由に御発言いただきたいと思います。永井委員どうぞ。
 
○永井委員 今日はありがとうございました。2枚目のスライドの「現状」と「御意見」の所で、3点ほどお伺いいたします。まず、現状の所にありますように、特別養護老人ホームにおいては、一定の医学的管理や健康管理が必要な利用者が入居されているということですが、下のほうの日雇看護師を派遣することに関する意見においては、日雇いでは職種連携や情報伝達を行うことが困難となる場合があるほか、医学的安全性にも少なくとも影響しうる可能性があると記載されています。この点について、利用者の安全性の確保、そしてチーム医療という観点から、やはり日雇派遣については懸念があるという理解でよいかというのが1点です。
2つ目ですが、福祉施設等への看護師の派遣は今までの御説明にありましたように、現行でも可能ですが、日雇派遣ということになると、現行制度において示されている受入れの際の留意点に加えて、更に必要なことがあるのかどうかということです。先ほど触れたような懸念があるとすれば、それを軽減するために派遣元及び行政に求める対応として、どのようなことがあれば良いとお考えなのかをお聞かせいただければと思います。
3点目は、資料の「意見」の2つ目ですが、例えば「派遣会社と事業所側の責任分界点を整理した対応方針を整理するなど」という記載があります。現行の福祉施設等への看護師等の派遣については、責任の所在について、損害賠償責任を含む責任の所在について明確にするよう努めることという留意点が示されていると思いますが、契約されている現行の労働者派遣契約においては、責任の所在についてどのような定めになっていることが多いのか、もしお分かりになれば教えていただきたいと思います。以上3点です。
 
○鎌田部会長 お願いします。
 
○全国老人福祉施設協議会野口幹事 1点目に頂戴した、日雇派遣を入れることに関して懸念される点ということでよろしいですね。それは、先ほども御説明しましたが、やはり日雇いという性質上、特養に入られる利用者は御高齢であって、御高齢者の特徴としては、一般成人のような病気の経過をたどらないケースも多いということが考えられ、やはりそういう病気、高齢者特有のこと、また高齢者一人一人に関しても、かなり状況は変ってくるので、そういう全てのことを把握した上で看護に当たるのが望ましいのではないかと考えているため、やはり日雇いという性質上、その日にいらっしゃって、もちろん看護の専門知識は十分にあるとは思っていますが、お年寄り特有とか、その人特有の性質というのが理解できるかというところになってくると、その日という短時間の中でというのはすごく難しく、またいらっしゃる派遣の方々の負担も大きくなってしまうのではないかと考えているため、その辺がちょっと懸念する点です。
あとは責任分界点のところです。先ほどの説明でも申し上げましたが、先生の御質問にもあったとおり、事故等が起きたときの責任の所在というところになってきます。私たち事業者側としては、一般的なケアに対するオペレーションを施設で定めて運用しています。ただ、派遣でいらした方々が、その運用オペレーションの認識間違いを起こされた場合に、起こってしまった事故に関して、事業者側と派遣していただいた派遣会社のどちらの責任かというところの、オペレーションはあるけれどもその認識違いなのか、それともそのオペレーションの作り方が悪かったのかという、とてもケアの内容が微妙なだけに、その辺が決めづらくなってしまうのではないかと。
これが100か0かというような、判断できるようなお仕事であればそれは可能なのかもしれませんが、ケアの内容が、Aさんにとっては正しいケアだったとしても、Bさんにとってはそれが違うものになってしまうというような性質の仕事でもあるので、その辺がなかなか微妙で難しくなってくるのではないかと考えてのことです。
もう1点も共通してくるかと思いますが、賠償責任の具体的事例については、正直を言うと存じ上げておりません。申し訳ございません。
 
○鎌田部会長 永井委員、よろしいですか。ほかにありますか。中西委員どうぞ。
 
○中西委員 中西と申します。野口幹事、本日はありがとうございます。御説明いただいた中で感じることは、高齢者施設の高齢者医療に従事する関係者の方々の実態について多くを知る機会となりました。ありがとうございます。それで質問をさせていただきますが、2点ほどございます。
日本商工会議所の調査で、介護・看護業は業種で比較した中においても、最も人手不足感が強いという切実な結果が出てきています。それで貴協議会においても、同様に人手不足をお感じになっているかということが1点です。
仮に看護師の日雇派遣が可能な場合、どのような場面で活躍することが想定されるでしょうか。お話を承りたいと思います。
 
○全国老人福祉施設協議会野口幹事 御質問ありがとうございます。まず看護師の人手不足感という観点についてですが、こちらは職業安定局需給調整事業課の令和元年に実施されている調査結果等にも出ているのですが、人手不足に関してはやはり感じています。現実問題として人手にとても苦慮している事業所が多いので、人手不足であるとは思っています。
もう1つは、看護師の人数、日雇看護師の具体的な業務というところですね。失礼いたしました。業務については、もちろん看護師という性質上、本来ならば高齢者疾患から全てを理解する、把握するというのが職務になってくるとは思うのですが、やはりそれは性質上、難しいということで、例えば日常的健康管理に代表される体温、血圧等の測定等もどなたでも値として出てくる、その判断ができるという限定的な業務というところであれば可能かと思っています。ですので、まずそういう所が対象になってくると、施設というよりも、在宅の事業所とかですと、そういう健康管理、日常的に診ていただいているお医者さんがいる中での利用時の健康チェックになってくるので、可能な事業所もあるかとは思います。
 
○中西委員 どうもありがとうございます。もう一つ追加で質問ですが、夜勤の時間帯は、恐らく人手に難渋しているのではないかと想像しているのですけれども、どのように対応しているのが現状でしょうか。夜勤の勤務の方々の確保はどのようにしていますでしょうか。
 
○全国老人福祉施設協議会野口幹事 夜勤の勤務についてですが、私が御説明した特別養護老人という所では、夜勤に看護師を置くことが条件ではないので、オンコールという電話が掛かってくるのを覚悟の上、自宅待機ということになってくると思います。やはり先ほど申し上げた正規職員等で、なかなか雇用がかなわないというところの理由にもなってくるのですが、自宅に戻ってまで待機状態でいなければいけないというところがかなりの理由で、仕事をしたくないというところにつながってきてしまうので、やはり今働いてくださっている看護師の方々にとっても、確かに重荷の業務になっています。
自宅で、入居されている方を見ずして判断しないといけない、現状を見ないで電話で頂いた情報だけで高齢者に起こっている状況を判断して、病院にいくべきなのか等に関して判断しなければいけないという精神的な負担というのはかなり大きなものとなっています。やはりそこに関しては、それぞれの施設でかなり工夫されて、手当を手厚くして、それを理解して働いてくれる方を見付けるという現状になっています。
 
○鎌田部会長 よろしいですか。それでは、ほかに御質問、御感想ございますか。平田委員どうぞ。
 
○平田委員 経団連の平田と申します。本日はありがとうございました。スライドの2枚目の一番最後の3行のポツの所に、「派遣会社と事業者側の責任分界点を整理した対応方針の整理」とあります。実務においてこういった整理が必要とか、そのほか気になっている点があれば、イメージで結構なのでお聞かせください。
それから、もう1つ同じ所で、「限定的な範囲で捉えていくことも考えられる」と下線が引いてありますが、バイタルチェックや健康管理など、いわゆる健康管理業務であれば社会福祉施設でも利用が考えられると理解してよいか、以上2点お伺いいたします。
 
○全国老人福祉施設協議会野口幹事 ありがとうございます。まず1点目の責任分界点に関してですが、先ほどから何回も申し上げていると思いますが、利用者に事故が発生した場合の責任の所在になってきますが、利用者の事故が発生して、いくつかの裁判になったと考えた際、判例の積み重ねで運用が固まっていくというよりも、あらかじめこのような行為が運用上の対応に影響が出るとかの根拠となるとすれば、事業者としては雇入れに当たり、ここまでできたら免責されるといったようなマニュアルを設けていただけたなら、安心した雇用につながるのかなと考えています。
もう1つ、限定的な範囲というところですが、重ね重ねの説明になってしまいますが、先ほど御説明しました健康管理業務を代表として話しましたが、健康管理業務にかかわらず、この人のこれをやってくださいというような、看護師の職務の中で説明した中のどの業務でも構いませんが、その1つに限定してその情報を確実に働く人に覚えていただくのが確実にできるのであれば、可能だと思っています。
 
○鎌田部会長 ほかにありますでしょうか。小野委員どうぞ。
 
○小野委員 本日は貴重な御意見ありがとうございました。実は私の親も要介護状態でいろいろな介護施設にお世話になっておりまして、本当に職員の皆様には頭が下がる思いでおります。本当にいつ行ってもいらっしゃるという感じで、一体いつお休みになっているのだろうと心配になるぐらいです。
お話を聞いていましたら、看護師さんの一定のニーズ、有給を取りたいとか、恐らくはプライベートとの両立があったり、たまにはお休みを取りたいということがないと長続きもしないものだと思っていますので、そこは非常に重要な点だということは、ここにも書かれていて、お分かりになっておられる。
一方で、心配点もあるということですね。恐らく、質の確保をした上で事業を展開していくべきだということだと私は思っています。そこで質問ですが、派遣に限ったことではないのですけれども、介護施設の看護師さんが通常やられているような研修であったり、最低限、押さえておかなければいけないものとかがありましたら、教えていただきたいと思います。
それがあって初めて、日雇いの看護師さんも、まともにその現場で働けるということになると思いますので、こういった研修、オリエンテーションというのは必ず必要になってくるだろうというものがありましたら、教えていただきたいと思います。
 
○全国老人福祉施設協議会野口幹事 研修についてですが、研修は実施しておりますし、当老人福祉施設協議会に関しても質の高い介護を目指していくために、直近実績になってしまうのですが、加算算定に当たっての取組みに対してどのように進めていくか、どのように多職種連携を図っていったらいいか、今問題に挙げました情報連携等に関しての取り組み方を各種別研修会として実施していて、そこにもちろん看護師さん独自の視点の研修も展開していますし、介護士の側でも看護職と協働していくための方法の研修ということで、お互いが助け合っていけるようにという形の研修会、そういう術を教えられる研修会を実施していた実績があります。
 
○小野委員 それは各施設で独自に行っているというよりは、協会で実施されている研修ということで、言わば日雇いの看護師さんでやられるような場合は、協会での研修を受けることを必須にしてほしいというような感じでしょうか。
 
○全国老人福祉施設協議会野口幹事 日雇いの雇用を検討される施設は、やはり人手不足の観点から、そういった研修ができないケースもなきにしもあらずだと思いますので、もし実施施設で、こういう研修ができないとしたら、その団体等を利用した研修を受講していただくことで、働くという視点を持ったときに安心して働いていただけることにつながると考えています。
 
○小野委員 ありがとうございました。
 
○鎌田部会長 ほかに御質問ございますか。それではヒアリングはこの辺りで終了したいと思います。野口幹事におかれましては、貴重な御意見をお聞かせいただきありがとうございました。
 
(公益社団法人全国老人福祉施設協議会 退室)
 
○鎌田部会長 それでは、本日の予定されたヒアリングは終了しますが、本日は看護師の約半数が加入する団体と、派遣先の2団体からのヒアリングを行い、それぞれのお立場からお話を頂いたことで一定の理解が深まったと思います。次回については、本日や、これまでの議論の状況を踏まえ、どのような持ち方とするのが適当か、私と事務局で相談させていただいて進めていきたいと思います。こういった進め方でよろしいでしょうか。ありがとうございます、そうさせていただきます。
次の議題に入ってよろしいですか。それでは次の議題に入ります。議題2、押印を求める手続の見直しについて、事務局から説明をお願いします。
 
○東江補佐 資料2を御覧ください。「押印を求める手続の見直しのための厚生労働省関係省令の一部を改正する省令案(概要)」と書いている資料です。こちらは報告案件です。まず、背景としまして、令和2年7月に閣議決定されております「規制改革実施計画」において、「原則として全ての見直し対象手続について、恒久的な制度的対応として、年内に、必要な検討を行い、法令、告示、通達等の改正やオンライン化を行う」とされております。
これを踏まえ、厚生労働省といたしましては、所管する政省令等において、押印を求めている手続について、押印等を不要とする改正を行うということを省全体として現在進めているというところです。その上で、この労働力需給制度部会の関係省令の改正事項もあります。職業紹介事業者及び労働者派遣事業者に押印を求めている手続が関係しておりますが、その手続については事業者からの押印を求めないということといたします。
(1)と(2)の中で、職業紹介事業関係及び労働者派遣事業関係の手続を列挙させていただいております。申請手続について、具体例としては裏面になりますが、「職業紹介事業許可申請書」を参考として載せております。こちらの「印」と書いてある部分に削除としておりますけれども、こういった形で同様に、ほかの手続についても省令で定めている様式が様々ございますので、それらについても押印を求めないということとさせていただきたいと思っております。施行期日等については、公布日は12月末を予定しており、施行期日は公布日と考えております。
先んじまして、職業安定分科会のほうで議論がなされております。今月の19日に、労働政策審議会宛てに諮問がなされまして、20日付けで職業安定分科会として妥当であるという旨の報告がなされ、労政審としての答申がなされているということですので、そういった旨、御報告させていただきます。以上でございます。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。議論の進め方としては、今、御説明いただいたとおりでございます。この点につきまして御質問、御意見がございましたら、どうぞお願いいたします。よろしいですか。                              
ありがとうございます。それでは、公開での議題についてはここまでとさせていただきます。議事録の御署名は中西委員、それから永井委員にお願いいたします。冒頭申し上げましたとおり、傍聴の方々につきましては、ここで御退席いただくようお願いいたします。一旦休憩に入ります。
 
(傍聴者退席)