第10回 職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和2年11月6日(金) 14:00~16:00

場所

労働委員会会館7階講堂
(東京都港区芝公園1-5-32)

議題

  1. (1)職場における化学物質等の管理のあり方について
  2. (2)その他

議事

○化学物質対策課長補佐 本日は大変お忙しい中御参集いただき、ありがとうございます。第10回「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」を開催いたします。本日、三柴委員と宮腰委員が御欠席となっておりますが、宮腰委員の代理で林様に御出席いただいております。よろしくお願いします。名古屋委員は、所用により途中で退席されるということですので、よろしくお願いいたします。
本日はほぼ半年以上ぶりになるかと思いますが、一般傍聴入りで開催いたしますが、感染症予防のため、傍聴の方も含めましてマスク着用での開催ということで行いたいと思いますので、御協力をよろしくお願いいたします。それでは、以降の進行は、座長の城内先生、よろしくお願いいたします。
○城内座長 皆様、こんにちは。お寒い中御参集いただき、誠にありがとうございます。早速、進行いたします。まず事務局から、資料の確認をお願いします。
○化学物質対策課長補佐 本日はペーパーレス開催ということで、お手元のタブレットに入れておりますが、資料1から4までと、第1回から第9回までの資料も格納していますので、御確認いただければと思います。
○城内座長 ありがとうございます。では、議事に従って進めたいと思います。これまでの議論のまとめと今後の検討論点について、資料の御説明をお願いします。
○化学物質対策課長補佐 お手元の資料01と書かれているファイルを開いていただきますと、これまでの議論のまとめということで、資料1を御用意しております。これまで9回開催してきており、今、どこまで議論が進んでいて、これからどういう議論をしていくのかを整理する形で、資料1と資料2を用意しております。資料1が、前回までお示しした資料とかぶる内容もありますが、これまで委員の皆様に御議論いただいて、一応、ここまでは合意が取れたのではないかということをまとめさせていただいたものです。
資料1の1ページは、その前提条件となる、事実認識、現状認識ということで、これは第1回から資料などをお示ししておりますが、労働災害の発生状況とか、有害作業に係る化学物質の管理状況、中小企業における状況、諸外国の状況、こういったことを簡単にまとめたものです。
2ページからが内容的な話になっており、2ページの(1)、これは3ページまで続いておりますが、情報伝達について、これまで御議論いただいたことをまとめております。基本的に新しい内容は書いておりませんが、1点、前回の御議論を踏まえて、少し修正したものがありますので、そこを御説明させていただきたいと思います。
アですが、アの1つ目、2つ目の○は、これまで御議論いただいたとおり、今、673物質となっている労働安全衛生法に基づくモデルラベル・SDSの義務対象を、国がGHS分類したもの全てに拡大していくという方針について書いております。3つ目の○が、これまで何度か御議論いただいている、「一般消費者の生活の用に供するためのもの」の定義をどうするかという問題で、こちらは前回の御議論の中で、家庭用品品質表示法との関係についても御意見を頂いておりましたので、本日、別の資料として机上配布をさせていただいている紙の資料があるかと思いますが、こちらは、今の家庭用品品質表示法においてどういうものがそちらの法律の表示対象になっているのか、表示すべき事項としてはどういうものがあるのかを簡単にまとめさせていただいた資料になっております。
家庭用品品質表示法の中では、主に一般消費者が通常生活の中で使うものということで想定をされており、具体的に表示する内容としては、成分、性能、用途などになっております。1ページの下のほうから、具体的に対象になっているものが記載をされておりますが、労働安全衛生法の化学物質の表示で関係してきそうなものとしては、基本的に固形物といいますか、固体の状態のままのものは、労働安全衛生法でも対象にしておりませんので、1枚めくっていただきますと、1枚目、2枚目については、そういった固形物が例として出ているのですが、最後、3ページに雑貨工業品ということで、塗料が出てきます。さらに下のほうにいって、20と書いてある所が、いわゆる化学品のような種類のものが並んでおり、合成洗剤、洗浄剤、接着剤、あと、家庭用や住宅用のワックス、こういったものが家庭用品品質表示法の対象になっているということです。
こういったことを踏まえて、資料1に戻っていただきますと、今回、労働安全衛生法で規制の対象外とする一般消費者向けの製品については、家庭用品品質表示法に基づく表示が義務付けられているものと定義付けをして、それ以外のものについては、業務用に用いることを想定して製造・輸入されているということで、これは販売形態によらず、インターネット販売なり、店舗販売であってもということになりますが、労働安全衛生法に基づくラベル・SDSの表示の義務対象に整理し直してはどうかということで、少し書き方を修正しております。その下の、ラベル・SDSの普及のための協力であるとか、違反をしてラベル表示などをしない場合の指導や公表などについては、これまで御議論いただいたとおりです。
イのラベル・SDS記載内容の見直し等について、今は対象となっていない「推奨用途と使用上の制限」をSDSに加えていくといった内容、それから定期的にSDSの内容は更新しなければいけないこととすること、また、その交付の手段としては、ネットでの手段でも構わないことにするといったことは、これまで御議論いただいたとおりです。
ウの労働者等に対する教育の充実も、同様に危険有害性のある物質を取り扱う作業に従事する労働者に、初めて従事するとき、作業を変えるときなどについて、ラベル教育をさせるようにするという内容も、今回、特段変更をしておりません。
エの事業所の中で別の容器に移し替える時の表示、外部に委託する場合の情報伝達などについても、これまで御議論いただいているとおりです。
オの支援措置等についても何度か御意見を頂いておりますが、情報が分かりやすく入手できるようなプラットフォームづくりといった内容も、これまで御議論いただいているとおりです。
(2)(3)は、本日、御議論をお願いしたいと思っている事項ですが、(2)のアとして、作業環境管理が困難な場合について、作業環境測定をして管理区分3が続いてしまい、なかなかその克服が技術的にも難しい場合についての管理をどうするかという問題は、引き続き具体的な仕組みについて、この検討会で御議論いただきたいと思っております。
イのばく露リスクに応じた健康診断の実施頻度等の見直しも、何度かこの検討会で御議論を頂いており、前回も御紹介したように、労働衛生課で開催している別の検討会でも、これは健康診断の仕組みということで検討がされておりますので、そちらと協力をして議論を進めていくことを前回も御了解いただいたところですが、まだ労働衛生課の検討会の議論が続いておりますので、こちらのイのテーマについては、本日の具体的な議題とはせず、次回、衛生課の検討会の議論を踏まえた形での御検討をお願いしたいと思っております。
(3)も前々回、前回と御議論いただいておりますが、今の化学物質規制体系の全体を見直すというテーマです。こちらのマル1からマル4まで記載している内容は、前回までもお示しした内容であり、こういった方向性を踏まえて、具体的にどういう仕組みにしていくのかについては、本日、別途、資料も御用意しておりますが、この検討会で引き続き御議論いただきたいと思っております。最後の(4)の中小企業に対する支援の強化は、これまで何度も御議論いただいている内容です。
資料2も簡単に御紹介だけさせていただきます。今、御説明させていただいたこれまでの議論の成果を踏まえて、今後、この検討会で更に議論をお願いしたいと思っている事項が、1から5までに掲げている事項に整理しております。1は、先ほど申し上げましたように、本日、別途、資料で御議論いただきたい作業環境管理が困難な場合における措置ということで、この具体的な仕組みをどうしていくのかについて御議論をお願いしたいと。
2の健康診断の実施頻度等の見直しは、先ほど申し上げたように、本日は議論のテーマとして取り上げませんが、次回以降、労働衛生課の検討会の結果も踏まえながら御議論をお願いしたいと思っております。
3も先ほど申し上げたように、本日、別の資料で更に詳細を詰めていく議論をお願いしたいと思っておりますが、具体的な自律管理の仕組みの中で、例えばばく露限界値をどう設定していくのかといった、少し技術的な内容については、別途、この検討会の下で設置をしているワーキンググループでも細かく議論をしていただこうと思っておりますので、そちらの議論を踏まえながら、この検討会でも大枠の仕組みについての御議論をお願いしたいと思っております。
4は、次回以降、もう少し具体的な御議論いただけるような材料・資料を用意したいと思っておりますが、自律管理を中心にした規制に見直していくという中で、それを支える専門家というものをどう位置付けて、どう確保・育成していくのかといったテーマです。
最後の5は、まだこれまで具体的な論点などをお示ししておりませんが、がんなどの遅発性疾病については、今、労働災害の報告などでは把握することが難しいという課題がありますので、これを踏まえて、どのようにこういった遅発性疾病、職業性のということですが、これを把握するような仕組みを作っていけるかについても、この検討会で御議論いただければと思っております。私からは以上です。
○城内座長 これまでの議論をまとめていただきました。ここから先、御質問、御意見等ありましたらお願いしたいと思います。今日は、主として一般消費者の生活の用に供するためのものについても追加がありますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
○永松委員 日化協の永松です。どうもありがとうございました。2つございまして、1点目が確認事項なのですが、先ほどの資料1の2の(1)の3つ目の所で、「家庭用品品質表示表に基づく表示がなされているものに限定されることを明確化し」ということなのですが、これは以前の検討会で御説明がありました、医薬品だとか、農取法に基づくものだとか、いわゆる労安法上、対象としないものが幾つか列挙されておりましたが、それは今回の対象から除外されるということは、引き続きそのとおりであるということでよろしいのでしょうか。
○化学物質対策課長補佐 少し丁寧に表現をすれば良かったかと思いますが、今、御指摘いただきましたように、今の安衛法で対象外としている医薬品とか農薬については、引き続き同じ取扱いということになります。
○永松委員 分かりました。2つ目ですが、日化協の会員会社の作ってるものの中でも、例えば殺虫剤だとか芳香剤だとか、いわゆるこの一般家庭用品品質表示法に含まれていないものもまだありまして、ここで一般家庭用品品質表示法によって明確化することも一つの手段だと思うのですが、まだ曖昧な製品もあろうかと思うのです。足元で見ても、殺虫剤や芳香剤等は家庭でも結構使われていると思いますが、それについても各業界では一般家庭用品として使われるものを想定した危険性や有害性の情報提供をされているのですが、そこら辺をもう少し検討すると言いますか、明確化すべきだと思うのですが、いかがでしょうか。
○化学物質対策課長補佐 御承知のように、この家庭用品品質表示法というのも、法律にも書かれていますように、ポジティブリストでの規制になっています。例えば家庭で使われているもののありとあらゆるものを全て網羅しているかというと、そういう法律ではないということもあります。おっしゃるように、ものによってはどちらで対象にするのか、若しくは家庭用品品質表示法の対象になっていないが、そもそも安衛法の対象にすべきものなのかというものは、全てきれいに整理しきれるわけではないかもしれないので、基本的にここの検討会の場では、基本的な考え方を一度おまとめいただいて、個別により詳細に整理すべきものはいろいろあるかもしれませんが、そこは今後も、別途、整理させていただくという形がいいのではないかと思っております。
○永松委員 是非、それはお願いしたいと思います。主として家庭用に供給されているものも多数あろうかと思いますので、その中で、職場として使われるものというのは具体的にどんなものかということを検討された上で、この考え方を是非取り進めていただければと思います。
○城内座長 そのほかはございませんでしょうか。
○中澤委員 資料1の3ページ目のエの移し替え時あるいは外部委託時等における危険有害情報の伝達の強化の2つ目の○ですが、「外部に委託する場合に、その設備で取り扱っていた化学物質の危険性・有害性や作業について注意すべき事項などを記載した文書を交付しなければならない」ということで、恐らく外部委託のケースというのは結構あるのだろうと思います。そういう意味では、委託する側のほうが迷わないようにするために注意すべき事項などを記載した雛形のようなものを示していただくことが必要だと思っております。
それから、2ページ目の家庭用品品質表示法との関連ですが、医薬品とか農薬関係というのが実際、労働現場等で使われるときに、表示が二重になるということはあり得ないのでしょうか。SDSやラベル表示は農薬の関係の表示も求められるというケースがあるのでしょうか。
○化学物質対策課長補佐 一応、法律上は、農薬であれば農薬の規制する法律、医薬品であれば医薬品で規制する法律の対象になっているものは除くという形になっていますので、その実態の話は分からないのですが、法律的にはそこは二重に掛からない形にしております。
○城内座長 そのほかはございませんでしょうか。
○名古屋委員 1点ちょっとお聞きしたいのですが、4ページの「自律管理物質」の所で、ばく露限界値のないものについてという例が出ています。これを見てくると、これだとばく露限界値はないけれど分析法は確立しているという書き方なのです。でも、ばく露限界値が無い物質の中で2つに分けて、分析方法のあるものと分析方法のないものとを分けて議論しないとまずいのではないかと思います。要するに、ばく露限界値がなくても分析方法があれば作業現場の濃度を測って、その現場に患者が居なければ、その濃度より低くすることである程度のばく露限界値的な濃度を決めることができると思うけれども、分析方法がなかったら、これは基本的に考え方が違うので、ここのところはやはり2つに分けて、きちんとあるものとないもので考え方を分けたほうがいいのかなと思います。
○城内座長 よろしいですか、事務局から何かあれば。
○化学物質対策課長補佐 こちらの制度の詳細は、また後ほど議題3のほうで御議論させていただきたいと思います。
○城内座長 そのほかはいかがでしょうか。
○永松委員 今までの議論の中で、ちょっと会員のほうからも確認してほしいということが出ております。先ほどの2の(1)のアの3つ目の○の所で、最後の所に、「この際、SDSの用途情報には「業務用」であることを明記しなければならない」としているのですが、SDSそのものが業務用として供給されるものであるので、わざわざ個々に業務用と書く必要があるのかという御質問がありまして、そのとおりかと思っております。
それから、後ほどのところで明確にしていただけると思いますが、例えば2の(2)のアの所にありますが、「発散源の密閉化等の発散抑制対策と有害物取り扱い等作業との両立が困難」というのは、具体的にどのようなことなのかを分かりやすく示してほしいという御意見がございましたので、今後のところで是非そこのところを御検討いただきたいと思います。
それから先ほど名古屋先生からもありましたが、ばく露限界値がたとえ示されていても、では、それをどうやって測定して、自分の職場がそれ以下であるかという管理方法を示していただかないと、履行がなかなか難しいという御意見をもらっております。以上でございます。よろしくお願いいたします。
○城内座長 事務局から何かありますか。
○化学物質対策課長補佐 ありがとうございます。いずれも恐らく議題2、3と関わる話だと思います。そこでまた具体的に御議論いただければと思います。
○城内座長 そのほかはございますでしょうか。
○明石委員 今のところなのですが、これはまた別途整理になるかもしれませんが、前にも申し上げたように、例えば「業務用」を明記するのは誰の責任なのかとか、そこら辺を明確にしないと責任の在りかが分からなくなっていくのではないかと思います。
○化学物質対策課長補佐 今の点だけ補足をさせていただきますと、このラベルSDSは譲渡・提供時の内容ということになりますので、記載するべきかどうかという議論もあるかと思いますが、譲渡・提供する者が記載することを前提で考えております。
○城内座長 そのほかはございませんでしょうか。よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは続きまして議事の2つ目、「作業管理と作業環境管理について」の議論に進みたいと思います。事務局から資料の説明をお願いいたします。
○化学物質対策課長補佐 資料3を御覧ください。本日の中身の議論の1つ目になるかと思います。前回まで御議論いただいてきたことも踏まえて資料を作らせていただいておりまして、1枚目は、前回までこの検討会において出された意見を簡単にまとめたような資料にしております。2枚目がそれを踏まえた具体的な論点としておりますが、議論がしやすいように、まず3枚目のほうを御覧いただければと思います。今回御議論を頂くことの背景、必要性と、具体的にどういうことを今回やろうとしているのかを、もう少し図で分かりやすく整理しております。上のほうが現在の規制の仕組みということで整理をしておりますけれども、基本的にこの議論の対象としているのが、特定化学物質障害予防規則、有機溶剤中毒予防規則、こういった個別の規則で作業環境測定が義務付けられている物質の管理のお話で、基本的に半年ごとの作業環境測定を行い、その結果を濃度によって3つに区分をする仕組みになっております。第1管理区分が最も濃度が低いもの、第3管理区分が濃度が高いものとなっておりますけれども、測定の結果、第3管理区分になりますと、法令上の義務として、第1又は第2管理区分になるように、工学的対策、管理的対策を取らなければいけないことになっております。また、すぐに第1、第2に改善できない場合は、臨時的な措置として、呼吸用保護具の使用、それから健康診断その他の健康管理対策をやることが義務になっております。
ただ、前回御紹介させていただいたアンケートにもありましたし、統計的な調査で、第3理区分となっている作業場が5から7%ほどあるというデータもこれまで紹介させていただいておりますけれども、中には、例えば非常に管理濃度が低く設定をされているものなどについて、技術的に工学的対策を取っても、第1又は第2管理区分になかなか改善できないという事業所が一定数あることが一応把握されているので、こうした場合、今の制度の枠組みのままでは、ずっと第3管理区分のままが続いてしまうということになっているわけです。この作業場全体の濃度を下げることが難しいのであれば、もう少し別のばく露防止措置のやり方があるのではないか、というのが今回の議論の発端で、それが下の、新たな仕組みということで、作業者個人のばく露をばく露限界値以下に管理する仕組みを入れてはどうかというのが今回の議論のテーマになっております。
具体的にどういった作業がこれに該当するような作業になっていくのか、これはもう少し具体的な調査や情報収集は必要だと思いますけれども、この新しい仕組みの考え方としては、条件が3つほどあるのではないかということを議論も踏まえて提案をさせていただいております。まず、条件マル1として考えられるのは、作業場全体の濃度を下げることが難しいとしても、全く下げる努力をしなくていいわけではないだろうということで、これは例えばということで示しておりますけれども、管理濃度の10倍など、一定の目標値のようなものを設定をして、なるべく作業場の有害物の濃度を下げる努力が必要ではないかというのが条件マル1です。
その上で、条件マル2が具体的なばく露防止の対策になるわけですけれども、第2管理区分よりも高い濃度での作業になると思いますので、それを前提に十分な防護係数の呼吸用保護具を使用するということで、結果的に最終的に作業をされる労働者がばく露する濃度を抑えるという考え方を入れていくべきではないか。この場合、きちんと防護係数どおりの対策になるように、呼吸用保護具のフィットテストなど、きちんと使用の担保をするような制度の義務化が必要なのではないかというのが条件マル2です。
条件マル3としては、今までの作業環境測定に基づく管理ではなくなっていきますので、この個人用保護具がきちんと選定されているかとか、きちんと濃度管理がされているのか、フィットテストがされているのか、こういった新しい事業場におけるばく露管理をするための体制を構築する必要があるのではないかということです。これは後々の議論にも関係すると思いますけれども、インダストリアル・ハイジニストなどの専門家による確認とか、事業場の中に管理責任者を配置していただくとか、管理状況をきちんと記録していただく必要があるとか、実際に特に保護具の位置付けが重要になってきますので、労働者の方にもよくその理解をしていただくための教育が必要なのではないか。こういうことが考えられるのではないかということで条件マル3で整理させていただいております。
これがこの議論のイメージでして、資料の2枚目に戻っていただきますと、こうしたことを踏まえて今後御議論を頂きたいと思っている論点を2枚目に整理しております。今基本となっている、いわゆる三管理、作業環境管理、作業管理、健康管理と、この新しい管理方法にした場合の考え方との整理をどうするのか。それから先ほど申し上げたように、作業環境の改善が困難な場合とは具体的にどのような場合なのかといったことです。
論点2として、今、労働安全衛生法の中にない管理の仕組みだと思いますので、こうした個人ばく露管理とは具体的にどういうやり方でやるのか、その管理体制をどうしていくのか、どういった人材が必要なのか。また、この個人ばく露管理がきちんとされているかということをチェックするような仕組み、こういうことについても整理をしていく必要があるかと思っております。
論点3は、もう少し具体的になりますけれども、この保護具の位置付けが非常に重要になっていくということですので、保護具の選び方、使い方、管理の仕方、そのために必要となる情報をどのように整備をしていくのか。先ほどフィットテストということもありましたけれども、そうした管理を適切にやるための必要な知識や教育をどうしていくのか。さらに、ばく露限界値がない場合の保護具の選び方、こういったことは後々の自律管理の仕組みの中でも出てくるかと思いますけれども、こういったことの整理が必要なのではないかということで、論点としてまとめさせていただきました。1枚目は前回までの御意見なので、御参考として御覧いただければと思います。以上になります。
○城内座長 この議論は管理濃度がある物質について、特別則についての議論ですが、後々の自律管理のシステムで大きく関わるところでもありますので、たくさん御意見を伺いたいと思っています。何かございますでしょうか。
○漆原委員 御説明ありがとうございます。頂いた資料の3ページ、第3管理区分から新たな仕組みをという御提案ですが、第3管理区分では、母性保護の関係で女性の就労が制限をされています。この新たな仕組みにおいても、妊婦も含めて女性の仕事は制限されるのか、あるいは特定の要件で解除されるのか、母性保護のところで物質が列挙されていたと思うのですが、そこで規定されている物質を今後どうしていくかという話にもなるのかと思います。
あともう1点は、3つの条件があって、それぞれ必要なことだと思うのですけれども、労使で協力してこの条件をクリアしたときに、例えば労基署なりにクリアした証明を提出し、確認していただいて初めて効果が生じうるという理解でいいのか。仮にこの3つの条件をクリアしていて、何か問題があったときの責任の所在はどこになるのかについて、お聞きできればと思います。
○城内座長 お願いいたします。
○化学物質対策課長補佐 1つ目の妊産婦の話につきましては、そういう議論につながっていく可能性はあるだろうとは思いますけれども、今この検討会でそこを整理しようというようには思っておりません。基本的に今回の議論の考え方は、第3管理区分のような状態になっているところの管理を、もう少しきちんとするべきだろうということの議論だと思いますので、それによってどの程度のリスクの低減が図られる仕組みになるのかということも、その議論には関係してくるかと思っています。
それから労基署の確認を求めるかどうかというのは、正にこの論点のところにも書かせていただいておりますけれども、適切な個人ばく露管理の実施の状況をどうやってチェックするのか、それを例えば労使による自律的な管理に委ねるのか、それとも監督署が事前に確認するような仕組みにするのか、それは正にこの検討会の中でどういう位置付けにするのかという御議論次第かなと思っております。
それから責任の話は、よく御承知かと思いますけれども、労働安全衛生法の仕組みの中では、基本的にはその管理の責任は事業者となっているかと思います。
○城内座長 そのほかございませんでしょうか。
○中澤委員 2ページ目の論点1に掲げている方向性については、基本的には賛成をいたします。ただし、その後の論点2のほうに、それぞれ個人ばく露管理法の仕組み等々、いろいろな詳細を定めていく形になっておりますが、果たして複雑化した場合、企業において対応ができるのかどうかという観点を非常に懸念しているところです。できるだけシンプルな仕組みを作っていただく必要があるのではないかと思っております。
論点3の保護具の選択の関係についても、余りにも複雑化しすぎるとかえって取組が進まないこともあり得ると思いますので、その辺も考慮しながら進めていくべきではないかと思っております。
○城内座長 そのほか御意見ございませんでしょうか。
○永松委員 最後の図の所、第3管理区分から下に来るこの青く塗られた所が、先ほど御質問した、発生源の密閉化等の発生抑制対策と有害物取り扱い等との両立が困難であるということを示されていると思うのですけれども、やはり、両立が困難である状態とは何かを示すことによって、まず第2管理区分にいくという努力をしっかり促すことが大事かと思います。そこのところを明確にしていくことによって、事業者としても、適切な第2管理区分に向かうことの努力が実効性があるのか、あるいはそれが相当難しいことであって、この図の下のほうに行くことによって、より安全なところを保つのか、そこが大変重要かと思いますので、ここの考え方はより明確に検討していくべきかと思っております。
○城内座長 そのほか御意見ございませんでしょうか。
○永松委員 もう1つよろしいでしょうか。先ほども御意見がありましたけれども、作業管理をやるということに当たって、事業場によっては、その1日同じ仕事をするのではなくて、作業の場所を移るとか、その対象とする管理物質も変わるとか、あるいは同じ職場の中で対象とする化学物質が複数あって、それぞれにも当然何らかのリスクがあるわけですけれども、その作業管理をどうするのかということを示していただきたいと思っておりますので、その検討も大変重要かと思っております。
○城内座長 そのほかございませんでしょうか。
○大前委員 3枚目のスライドの、条件マル2の所の文言の問題ですけれども、2行目から、「作業者のばく露濃度をばく露限界値以下に維持する」とありますけれども、「ばく露濃度」という言葉を使うと、これはマスクの外の濃度になってしまうので、例えば、作業者の「吸入濃度」とか、そういう文言にしないと多分誤解をされるのではないかと思います。
それから今、永松委員がおっしゃった、複数の物質の同時ばく露とか、あるいは違う作業場の別の物質のばく露というお話ですが、それはそのとおりで、当然、ものが違えば、健康に対する影響も違う可能性があるわけですから、それはそれぞれ個別にやらざるを得ないだろうと。
それから、もし健康障害を起こす場所が同じ所だったら、例えば有機溶剤とかですと、ほとんどが神経系にという共通の影響があるわけですが、その場合は許容濃度分の濃度、それが1を超えるかどうかというような形で今は実際にやられていると思いますので、そういう形でできるのではないかと思いますけれども、いずれにしても、物質ごとに管理せざるを得ないということになろうかと思います。
○城内座長 そのほか御意見ございますか。
○名古屋委員 ちょっとお聞きしたいのですけれども、ばく露濃度の管理の所は、あくまでも作業環境測定があって、第3管理区分になったところを個人ばく露濃度で管理しようという考え方でいいのですか。そうではなくて、現在行っている作業環境測定そのもののところを、ばく露濃度測定の結果で、第1管理区分、第2管理区分、第3管理区分とするような新しい手法を導入して、個人ばく露濃度で環境管理をしようと。これはそうではなくて、第3管理区分のところだけについてばく露濃度の測定をして、環境管理を行うという形ですか。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長補佐 今回の資料で御提案をさせていただいているのは、前回までの御議論を踏まえてということですので、後者の、作業環境測定があって、その結果、第3管理区分が克服できない場合に限定してのお話ということですけれども、ここはもしかするとこの検討会での御議論があるかもしれないですが、仮にその下の新しい制度を入れた場合、ここで確保できる労働者の方のばく露防止のレベルが、ちょっと言い方が悪いかもしれませんが、上の作業環境測定によるばく露防止と同じぐらいの確実なばく露防止が図られるような仕組みになった場合は、その第3管理区分にいくかいかないかにかかわらず、どちらかの方法を選ぶというような選択肢も出てくるかもしれないとは思っています。それは今後どういう仕組みを目指すかというお話だと思いますので、ここはよく委員の皆さまからの御意見も頂きたいと思っているところです。
○名古屋委員 分かりました。昔、環境改善室の委託で、要するに諸外国と同じようにばく露濃度を測定して、その測定結果で作業環境評価を行うという作業環境管理の手法を作ったことがあるのです。それを持ってくるのではなくて、あくまでも第3管理区分のところにばく露管理を持ってくると。そうしたら、個人サンプラーを使ってばく露管理をどうするかということですよね。例えば作業環境が第3管理区分で環境の改善が困難な場合のときに、その作業環境の作業者に個人サンプラーを装着してばく露濃度の測定を行い、作業者のばく露評価を行う。その結果、作業者は測定点の位置で作業しているわけではないので、ばく露濃度が管理濃度より低い場合もある。その時は、作業環境は第3管理区分だけど、作業者の方のばく露防止のレベルは、作業者にとっては第3管理区分で無いかもしれない。また、ばく露濃度が管理濃度を超えている場合でも、作業者の現場での作業時間を調整することで、ばく露濃度を下げることができる。個人サンプリングを使うことで、作業者を改善が困難な作業環境で作業させることも可能になると思います。後は、改善が困難だといって、安易に呼吸用保護具に頼るのではなく、作業環境改善をしていって、どうしても改善が困難なときに、その状態を維持しながら呼吸用保護具に頼るというほうが良いのではないかなと思います。
ただ、実際に、化学物質は分かりませんが、この例がいいか分かりませんけれども、作業を見た限り、例えば鋳物工場の型込めなどはどう考えても局所排気装置等による工学的な対策ができない作業だから、当然、粉じん則では別表3になって、防じんマスクでしか対応できない。例えばアーク溶接も別表3になっているけれども、対策ができないわけではないわけですね。アーク溶接作業が別表3になっている理由は、作業の場所が動くということと、溶接点の所に0.5m以上の風が吹くと溶接不良が起こるから、局所排気装置等が使用できないと。だったらプッシュプル換気装置を使えば溶接点を通過する風速を0.2でできるので、溶接作業の防じん対策としてプッシュプル換気装置が使えます。でも多くの作業場ではなかなかプッシュプル換気装置は使ってもらえない。それはなぜかというと、設置費用が係る他に、溶接作業場にプッシュプル換気装置を設置してしまうと、プッシュプル換気装置を設置した作業場の作業環境、測定の義務が生じることにも関わってくる。何もしなければ別表3として防じんマスクだけで済むものが、環境改善しようとしてプッシュプル換気装置を設置することによって、測定義務が発生し、二重の経費がかかってくるということもあるわけです。また、別の例で、例えば溶解炉で金属を溶解する時の対策としてリングフードを使って溶解炉から発生するヒュームを吸引すると間違いなく発生濃度を落とせるけれども、そうすると結果的には溶解している金属の表面に酸化膜ができて、その酸化膜が不良品を作る原因の一つになるから、酸化膜ができないようにリングフードを制御するのが難しいという、そういう工学的な難しさもあるけれど、出来る限り創意工夫は大切なので、改善対策を試みること無く安易に呼吸用保護具も移行するのではなく、何らかの形で改善を試み、判断が難しいのですが、どうしても工学的な対策が困難なというところまで進めるような方式にし、安易に防じんマスクを選択しないような方式にした方が良いと思います。
○化学物質対策課長補佐 すみません、事務局です。1点誤解がないように、御議論の土台、共通認識を持ちたいと思っているのは、この下の仕組みにいったときに、全く測定しなくていいのかということではないと思っております。例えばマスクを選ぶときにどういう防護係数のマスクを使うかということを決めるためには、個人の方がどのぐらいの濃度ばく露しているのかを測定しないとそれは選べないわけですから、今の第3管理区分はそこまで厳格な管理をしていないので、安易にマスクにという発想が出るかもしれないのですけれども、新しいその仕組みの中では、マスクで最終的に防御するとしても、ある程度手間はかかるのだと思います。マスクを選ぶための測定も必要だと思いますし、例えばフィットテストを定期的にやっていただくというようなこともあるかと思いますので、例えば下に行けば楽になるという仕組みでもないのではないかなと思っています。
○名古屋委員 いや、そういう意味で言ったわけではなくて、今もマンガンに対して測定をして、その結果に対応したマスクを選択するというきちんとした流れができていますので、その流れでできると思うのです。ただ、そうではなくて、もうちょっと改善対策ができるけれども、マスクを選択することで改善をやめてしまうのではなく、どうしても改善対策ができなかった、そのときに初めてマスク選定のために測定して、ばく露防止に対応したマスクを選定するということです。対策が困難だからといってマスクを選定するというわけではなくて、改善が出来るところまで努力をする。努力をした後に対して、今はマンガンで実施しているように、ばく露濃度を個人サンプラーを使って測定して、作業に合ったマスクを選択していけばいいので。そうすると意外と改善が進まない時には電動ファン付き呼吸用保護具を使用しなければいけなかったのに、改善が進んでからマスクの選定をしたら電動ファン付呼吸用保護具は使わなくて、防じんマスクで大丈夫ということになるかもしれない。環境改善をしている段階でマスクを選ぶか、その判断は難しいのですが、改善努力をきちんとした段階で、マスクを選択できるようなことの決まりを付けたほうがいいのではないですかと。そのあとのマスクの選定のやり方は、今、マンガンでやったやり方ができていますので、そのまま踏襲していけばいいのではないかと思っています。
ただ、そのためには、ここに書いてあるように、マスクのフィットテストのところの義務化という形が大事かなと思っています。ここの条件マル2に呼吸用保護具のフィットテストの義務化はあるけれども、日本は罰則規定がないのです。ここが1つ大きなところで、罰則規定が付けられるかどうか分からないけれども、罰則規定があるかなしかによって、どれだけ機能するかということで、諸外国は罰則規定があるのに日本はない部分があって、やはりここはあったほうがいいように思います。
○城内座長 そのほか御意見ございませんでしょうか。
○高橋委員 この作業環境の改善が困難な場合の定義というのは、これから議論する内容かもしれませんけれども、方向性として確認したいのは、例えば同じ化学物質を使っていて、大手では設備投資を行って、ハード的に、工学的に対策をして、第2管理区分になったとします。一方、中小は予算的に同じだけのことができないので、工学的な対策はできませんということになった場合、工学的な対策ができるという事例があるにもかかわらず、中小に関しては、これは困難な場合ということに定義をされてしまうのかどうなのかということをお聞きしたいと思います。先ほどの名古屋委員の話にも通じるところがあるのですけれども、その努力はしたけれども、というのはやはり残しておくべきだなと思っておりまして、例えばこの困難な定義の中に、企業規模というのが入ってくるとすると、また少しややこしいことになるのではないかと思いますので、その辺りの見解をお聞かせいただければと思います。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長補佐 基本的に、企業の規模で労働者の保護レベルに差を付けるという考え方はあり得ないと思っていますので、技術的にできるかどうかというところが判断の基準になるかと。
ただ、おっしゃったように、いくらでも掛ければできるけれども、そこには限度があるだろうという議論も恐らく中には出てくるかと思いますので、そこは議論の1つかなと思っております。例えば何十億円もかければできるけれども、そこまでコストをかけるのかと。そんなのコストベネフィットの意味では無理だろうというようなこともあるかと思いますので、そこは一定の考え方の整理は必要かとは思いますけれども、基本的には技術的にできるかできないかというのが、その基準としては想定をしているものです。
○城内座長 そのほか。
○名古屋委員 ばく露管理を実施したときの良さというのは、例えば工学的な対策がある程度できなくても、作業者の作業時間の管理でばく露濃度の低減をすることが出来ることです。例えば作業者の作業環境で働く作業時間を、8時間ではなくて短くするということでばく露濃度の軽減を、また、短くした時間を他の濃度の低い作業環境で作業を続けていけるという、作業時間と作業環境濃度の程度をうまく組み合わせることで、作業効率を落とさずにばく露軽減ができるという1つのいい面は持っているので、そういうことをうまく利用して、要するに工学的対策の1点に集中するのではなくて、作業者の作業時間と働く作業環境の濃度を管理することによって、作業者のばく露低減が可能となるようなうまくいくチャンスも出てくるのではないかと思います。
○城内座長 そのほか御意見ありますか。
○永松委員 これは意見ではなくて、参考のために、大前先生にお聞きしたいのですけれども、先ほど、複数の化学物質を取り扱う作業の方のお話をしましたけれども、複数のものを使うときに、そのリスクの大小に応じて対象とする物質を特定するなり、そういう考え方はあるのでしょうか。
○大前委員 複数の物質をまとめてリスクを評価する方法は多分ないと思います。やはり個別になると思いますし、そのときにターゲットになる健康影響が同じだったら、まとめてという可能性はあると思うのですけれども、それが違えばやはり別々にならざるを得ないと思います。
○永松委員 そうしますと、健康影響がどういうことかによっては、そういうことも考え得るということですね。
○大前委員 そういうことです。
○永松委員 ありがとうございました。
○城内座長 そのほか御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。
○大前委員 実際の現場を見ていると、ばく露の場合に結構二次発塵とか、それからマスクを外した後の、例えば衣服の汚れとかそういうもので結構ばく露するのですね。だからここはあくまでも呼吸保護具のところだけの話になっていますけれども、そのようなところも現実的にはコントロールしていかないと、最終的なばく露は下がらないというところだけは注意しておいていただきたいと思います。
○城内座長 そのほか御意見ございますでしょうか。たくさん御意見を頂きましたけれども、全体として事務局から提出された、「作業管理と作業環境管理の考え方の整理」で、将来的には条件マル1マル2マル3等を考えて、特別則についてまず考えて、もしかしたらそれがまた自律管理物質のほうの考え方にも役に立つかもしれないのですが、現状出された方向でもっと話を詰めてみるということでよろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。では、今頂いた御意見を参考に、また次のペーパーを作っていただければと思います。
それでは、議題の3つ目、「化学物質規制の仕組みの見直し」について、議論したいと思います。事務局から説明をお願いいたします。
○化学物質対策課長補佐 資料4を御覧ください。資料4の1枚目に絵を付けておりまして、実はこれまで化学物質管理の体系をお示しするときには、三角形の図で示していたかと思いますが、今回、お示しの仕方を整理し直しました。これまで使っていた三角形の図だと、下に行けば行くほど、特に何もやらなくていいのではないかという誤解を生むのではないかといった御指摘も各方面から頂いておりましたので、考え方を少し整理し直したということです。この1ページ目の図を見ていただくと、一番上にありますように、有害性の情報量がどれだけあるかで幾つかの類型分けをしております。今後、自律管理ということを中心にしていくことになりますので、この自律管理の中の類型分けをどうするかが重要になってくるかと思います。
一番右の、点線で書いてある、有害性情報がない、若しくは不明な物質ということですが、こういった物質については有害性が分からないことが前提になりますので、使う際は最大限のばく露回避措置が必要になるだろうと。まず前提として、これは危いか危くないかは分からない物質だと、作業者の方には周知していただくことが大事だろうということ。実際に使用するとき、接触する場合、例えば、その物質の粉じんが舞うような作業であればマスクを付ける、直接手に触れるような作業であれば手袋を付けるといった、保護具着用による接触回避が原則になるだろうということです。
もう1つは、当然、有害性が分からないものですので、ばく露限界値のようなものもないわけです。例えば、粉体のようなものであれば、物質の種類によらず、一定の濃度以上の粉体のものにばく露するような作業は避けるようにするといったような、安全率を見越した暫定ばく露限界値のようなものを作って管理することはできないかということも、御議論の1つになるのではないかと思います。
それから、その下の●にある、有害性の情報がない状態ですが、これが市場に一定量以上出回ることになると、ばく露の機会も増えるでしょうし、ばく露のリスクも高くなると思いますので、その物質を一定量以上製造するような場合は、その物質に関する有害性の情報を製造者に収集していただいて、国に提供していただくような仕組みも検討する必要があるのではないかというのが一番右の物質です。
下の、黒くしてある部分は、国が何をやるかを整理しております。例えば、今の点につながりますが、製造・輸入量が多く、日本で多く流通しているものがあれば、その有害性情報、これは製造者のほうから収集するのが中心になるかと思いますが、そういった情報を基にGHS分類を実施していく、有害性をなるべく明らかにする努力をしていく。それから、管理を行う事業者への専門家による支援の仕組みを作っていく。こういったことが国の役割としてあるのではないかということです。
それから、真ん中の物質は、今の国による取組なども踏まえて、GHS分類がされた物質になりますので、有害性の情報も一定程度あることになりますが、ただ、ばく露限界値までは設定することができていない物質のグループになります。こちらは有害性情報がありますので、ラベル表示・SDS交付が必要になってくると思いますし、それに基づくリスクアセスメントも必要になってくるだろうということです。基本的にはリスクアセスメントに基づく自律的な管理となりますので、ばく露防止措置の中身自体については事業者のほうで自主的に判断して、講じていただくことになるかと思います。表題の所にある、こちらは先ほどの物質と同じように、ばく露限界値はないですが、安全率を見越した暫定ばく露限界値のようなものを設けて、管理の目安にしていくことは考えられるのではないかということです。国の役割のほうになりますが、こういった物質については有害性情報などの収集を進めて、なるべくばく露限界値を設定できるような努力をしていく。それから、専門家による支援は同様ですが、国がGHS分類をやっている物質ですので、これの更新などは当然やっていく必要があるだろうということで整理しております。
一番左の、ばく露限界値があるものについては、これもラベル表示・SDSの情報伝達、それからリスクアセスメントが共通になりますが、ばく露限界値以下で管理をする。先ほど大前先生から、ばく露限界値という言葉はどうなのかというお話がありましたが、最終的に労働者の方がばく露する濃度をばく露限界値以下で維持するということですので、その手段としては事業者のほうに委ねられるわけですが、目標値として、こういったことを設定して管理していくことになるかと思います。
一番左の、個別管理物質、これは今、特化物なり有機溶剤として法令で規制されているものですが、自律管理物質による管理を基本としていきますので、今、リスク評価でやっているような、個別管理物質をどんどん増やしていく取組は今後はやらないことが基本になるかと思います。この個別管理物質についても、後の論点で出てまいりますけれども、一定の要件を満たした事業者については、特化則なり有機則を適用するのではなくて、自律的にばく露防止の手段を選べることになりますが、自律管理を認めることも考えていってはどうかということです。これが全体の、今後の仕組みのイメージです。
2ページ目以降に、それぞれ考えられる論点を整理しております。まず2ページ目の上半分ですが、ばく露限界値が設定できる物質については、ばく露限界値以下に管理するやり方としてどういうものが考えられるか。これは先ほどの議論とも少し関連しますが、作業所全体の濃度を下げることによってばく露させないようにする方法もあると思いますし、必要な防護係数のマスクを使用させることによって、最終的な作業者のばく露を防ぐというやり方も考えられるだろうと思います。いずれにせよ、こういった管理方法の選択は事業者に委ねるのが自律管理の基本になると思います。ただ、自ら選択ということでも困難を伴うような場合も想定されるので、これは法令の義務ということではないと思いますが、国が何らかのガイドラインのようなものを示す必要があるのかどうかも御議論いただければと思います。それから、ばく露限界値での管理は、基本的には経気道による吸入ということになりますので、直接接触による経皮のばく露などについては別の基準が必要なのではないか、別の対策が必要なのではないかという論点です。
4つ目、これはほかのグループにも共通するかと思いますが、基本的に自律管理ということで、健康診断の義務付けなどにはならないことが前提になるかと思いますが、ばく露の状況をどのようにフォローしていくか、そもそもフォローしていく必要があるのか、するのであればどういうやり方でフォローしていく必要があるのかということについても、整理が必要かと思います。
2ページ目の下、これは真ん中のグループになりますが、ばく露限界値が設定できないものについて、先ほど申し上げた、十分な安全率を見越した暫定ばく露限界値を設けるというやり方をどう考えるのか。具体的に、暫定ばく露限界値をどうやって設定できるのかといったことも整理が必要かと。こちらはワーキングのほうでも御議論いただくことを想定していますが、論点として整理が必要かと思います。それから、それとつながる話かと思いますが、ばく露限界値がないので、管理をする明確なメルクマールがない中でのリスクアセスメント、リスクの評価をどういうふうにしていくのか、その結果として出てくるばく露防止措置として、どのマスクを選べばいいのかといったことも考え方を整理していく必要があるかと思います。それから、ばく露限界値がないので、作業におけるリスクをどうやって作業者に理解させるのか、こういったことも整理が必要かと思います。
次の3ページ目を御覧ください。最後の、一番右のグループ、有害性情報がない物質についてです。これは今までのと共通する部分が多いですが、当然、ばく露限界値もなければ有害性情報もないので、暫定のばく露限界値のようなものでどこまで管理できるのかといったこと、それから、どうやって保護具を選ぶのか、そういったことの整理も必要かと思います。先ほど御説明したとおり、4つ目の○にありますが、有害性情報がない状態でどんどん市場に流通させるのは一定の危険が伴うと思いますので、例えば、製造輸入者に対して有害性情報の収集・提供を求める仕組みが必要なのではないか。ただ、全てというわけにはいかないと思いますので、一定量以上のものについて求めることを考えてはどうか。この場合どのぐらいにするのかという議論もあるかと思いますが、こういったことの検討が必要かと思います。
その下の真ん中です。これは前回も御議論が出ているように、自律管理をどうやって運用していくのかという議論ですが、例えば、衛生委員会などで労使で管理状況を共有していくことが大事なのではないか、それから、実施状況について記録をきちんと残すことも大事ではないかということです。
それから、一番下、これは次回以降、より具体的に御議論いただけるように準備したいと思います。自律管理ということになると、法令で規定されていることをそのままやればいいということではなくなりますので、それを支える専門性を持った人材を十分に確保・育成していく必要があると思いますし、中小企業向けにはこういった人材による支援なども必要だと思いますので、どういう人材が必要なのか、どうやって育成していくのか、こういったことも整理していく必要があるかと思います。
最後になりますが、4ページ目。こちらは自律管理物質ではなくて個別管理物質について、先ほど少し御説明したように、一定の条件を満たした事業者については、特化則、有機則の適用をせずに、自律的に管理するようなことも認めていってはどうかという論点です。具体的には、ここに4つほど書いてある、一定の実務経験を有する専門家、インダストリアル・ハイジニストや衛生工学衛生管理者など、十分な数の専門人材が配置されているとか、この物質による有所見者が一定期間出ていない、良好な状態で管理されている、こういった要件を満たす場合に、自律的な管理ということで認めてはどうか。認める場合は、例えば、個別に認定していくような仕組みとするべきかどうか、こういったことを議論いただければと思います。以上になります。
○城内座長 ありがとうございました。今後の化学物質規制の仕組みの見直しということで、具体的な項目をたくさん挙げていただきました。多くの御意見があると思いますので、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。林さん、お願いいたします。
○林様(宮腰委員代理) 委員の宮腰の代理の林です。事務局から御提案いただいた中で、有害性情報がない物質並びに有害性情報はあるが、ばく露限界値を設定する情報は不十分な物質というところで、意見を2点申し述べさせていただければと思います。1点目が、例えば製造・輸入量の多いものなどという観点の切り口で、新たな考え方を導入してはどうかという御提案がありました。これについては確かに化審法・化管法上であれば、業者が届出をするということで量の把握ができる状況でして、逆に安衛法上ではそういうものがないというところで、量というものを1つのベンチマークとするという考え方に関しては、確かに納得するところもあるのですが、逆に量というところだけに着眼してしまいますと、当然取り扱っているものに関しては、固体のものもあれば流体のものもあるので、必ずしも物質固有の有害性があったとしても、それ自体がばく露することがないものもありますので、この後ワーキングでの検討になるかと思いますけれども、量、かつ、例えば使用現場での取扱いや流通における取扱いを併記するような形で、御検討を頂ければと思います。多分、量だけが独り歩きをすると、汎用品等だけを取り扱っている現場等だと混乱が生じる可能性がありますので、御留意いただきたいというのが1点目です。
もう1点は、同じく暫定ばく露値の考え方に関してです。これもワーキングの議論のときに具体的な御検討をされるということですが、いずれも有害性情報がない、若しくは情報が不十分なところに関して御留意いただきたい点は、エビデンスの構築だけは丁寧にやっていただきたいということです。例えば、以前あった酸化チタンのように、IRCの区分が必ずしも正しくなかったという場合もあります。きっといずれかのデータを持ってきて、暫定ばく露値を設定されることになるかと思うのですけれども、これが20年前、30年前のデータとか、先ほど先生のほうからありましたように、どういった検査法でそれが確立されたデータかということも、局所・極端な例であれば参考にならないということも大いにあり得るかと思います。そもそも情報が不十分というところなので、その辺はしっかりと最新のものか、若しくは、なければ、何か新たな試験を求めるという形で丁寧にエビデンスを構築いただいて、暫定ばく露値の設定をしていただけたらというところです。以上です。
○城内座長 そのほかに。名古屋委員、お願いします。
○名古屋委員 暫定ばく露値のところです。先ほども言ったように、例えば測定ができるものと測定ができないもので考え方が違います。なぜかというと、管理濃度を一番最初に作ったときに、多分、塩化ビニルだと思いますが、塩化ビニルがACGIHが200ppmで、イタリアの動物実験では50ppmで肝血管肉腫が出来ることを確認した結果を受けて、日本では、可能な限り濃度を下げる対策をした場合どこまで濃度が下げられるか実態調査を実施してみたら、日本の場合は2ppmまで可能という結果が得られた。それを受けて2ppmで環境を管理できるのだから、それを管理濃度にしましょうという決め方をしたのです。要するに、今ばく露限界値がないものに対して、現場に行って測定したときにその濃度で、そこの作業環境で疾病が起こってなかったとしたら、その濃度がある程度1つの安全値の目安になるのだろうと。
ただ、そうは言っても作業者の個体差や、ばく露の起こる期間などがあるので、そのままでは使えないのです。ですから、もしかしたらその濃度の10分の1の濃度を安全の目安の濃度にするというようなことができるので、そうした濃度があるとある程度の参考にはできると思います。現状の濃度に対してどのぐらい下げたらいいかということで。ただ、分析方法がなく、現場測定から濃度が求められないときに、どう濃度を設定するかというのが問題だと思います。例えばCASナンバーを見ていて分析できるものの場合は、ある程度の暫定値はできるけれども、分析法がなかったときにどのようにしたらいいか。これは大前先生が言っていたように、相関など、いろいろ見ながら濃度を決めてもらうという形になるのかもしれないのですが、やはりそういう手法によって分けたほうがいいのではないかと思います。測定できると、今までの経験からある程度の濃度を決めることができないことはないのではないかと思います。
○城内座長 事務局、どうぞ。
○化学物質対策課長補佐 特にこれからワーキングでの中心的な議論の1つになるかと思うのですが、今想定しているのは、暫定ばく露限界値というのは、物質ごとに決めていくというイメージを持っているわけではなく、例えば粉体の状態にあるものであれば、どの物質かということではなく、取り扱うときにこの濃度以下で取り扱うというようなものです。恐らくここの一番右のグループに入ってくるものというのは、本当に無数にあると思っていますので、それを一つ一つ設定していくのは実際には難しいと思っています。ですから共通的な基準のようなものが作れないかと。ただ、そうなるとそれを義務にするかどうかという問題も出てくると思いますので、それは何かの目標値みたいな形にするのかという議論もあるかと思うのですが、一応今想定しているのはそういうものですので、一つ一つ何かエビデンスを集めて評価し、暫定のものを作っていくというイメージで考えているわけではないということは、御理解いただければと思います。
○城内座長 そのほかにいかがでしょうか。
○大前委員 今の点ですが、例えば産業衛生学会では粉じんの許容濃度の中に、第3種粉じんというのがあるのです。これはその他の粉じんということで、毒性はよく分かってないけれども、とにかく粉体は粉体なりにそんなに高い濃度だとまずいだろうということで、その他ということで決めている数字があります。それは濃度で言うと8μmg/m3です。ACGIHは同じように、特段の今までの有害性情報がない部分に関しては、取りあえず数字は同じで8μmg/m3にしておきましょうという数字はあるのです。ですから粉体に関してはこのような数字を想定可能かと思います。ただ粉体ではなくて、例えばガスや蒸気などの数字はどうするかというと、今はアイディアもないのですけれども、いろいろな考え方があると。ガスの場合は常温でも当然気体整理ですから、放っておけば100%になってしまうわけですから、それはもうある程度どこかで数字を決めるしかないだろうと。蒸気の場合は、例えば蒸気圧を考えて、飽和蒸気圧の何分の1というような感じで決められないこともないのではないかというイメージはあります。
○城内座長 そのほかにいかがでしょうか。永松委員、お願いします。
○永松委員 ここにある図では製造・使用主体による有害性情報の収集及び国への提供というのが掲げられているのですけれども、一方でSDSについては見直しをしていくということもあります。そうすると、こういうものの中でSDSの対象物質もあれば、そうでない物質もあろうかと思うのです。そこら辺についてはどのようにお考えなのでしょうか。SDSの対象物質であれば、そういうものが定期的に見直されて、情報が提供されていくと思うのですが。
○化学物質対策課長補佐 有害性情報の提供を考えているのは、一番右のグループなので、SDSの対象になっていないものということです。
○永松委員 この図のこちらにある物質はSDSの対象になっていないものということですか。
○化学物質対策課長補佐 はい。なので、情報が何もないものということです。
○永松委員 分かりました。先ほども御意見がありましたけれども、やはり量だけではなくて、リスクのいわゆるばく露限界値の考え方も、これからの議論かと思うのですけれども、そのリスクの大きさも含めて、どういう物質を対象にすべきかというように考えていただければと思います。
もう1点は、先ほどからも出ておりますが、暫定ばく露限界値の考え方ということでは、なかなか難しいのではないかとか、私どもの会員の皆さんからも御意見が出ております。そういう点では、これを進めるとともに、やはり基本的な保護具の着用といった安全衛生管理をきちんとやるということを一緒にまず進めることが重要ではないかという意見が出ておりますので、申し伝えたいと思います。
○城内座長 今の御質問、御意見に関して私のほうから確認したいと思います。一番右の有害性情報がない物質の意味が不明なので確認したいのです。例えば、GHS分類をしていると30項目ぐらいのクラスがあって、1つか2つは埋まるけれども、そのほかは埋まらないというものもあるし、全く本当に情報がないかというと、そこを私は調べたことがないのですが、例えば欧州などだと2万、3万ぐらいはそういう情報がある。もしかしたら、もっとあると思うのです。本当に何もないのは、逆に新規化学物質に近いものではないかと思うのです。では、それをそのまま市場に出していいかというのが、私にはちょっと疑問なのです。その辺の区分けというか、どう考えているかというのが1つ分からない点です。
というのは、既存化学物質は行政がちゃんとデータを取りましょうということが、REACHの前の欧州の方針としてあったわけです。しかし、それには予算もないし、できかねるということで諦めてREACHになって、情報はなるべく企業が集めてSDSを作りなさいという方向にきたと思っています。日本でも化審法は、既存化学物質については行政がデータを取りましょうと言っていましたけれども、やはりREACH以降、それはどうも不可能だということになって、多分、法改正をしたのだと私は理解しているのです。そういうことを考えると、データがないものについてここで有害性の調査をします、それは多分、企業からのデータ提供があるのではないかと、先ほど事務局から説明があったと思うのですが、データが本当にないのかあるのか、どこまであればいいかという線引きが簡単ではないような気がするのです。その辺は今、どのように考えていらっしゃいますか。
○化学物質対策課長補佐 図を少し分かりやすくするために、「ない」と書いてしまったのですけれども、これが本当にゼロなのかという議論は、当然出るだろうとは思っていました。「ない」という表現が適切かどうかという問題はあるかと思いますけれども、非常に少ないという感覚で我々は書いています。これは日本の法制度の下での仕組みの議論をしなければいけないという制約があるものですから、GHSの考え方と少しずれてしまうところはあるかもしれないのですが、上にあるラベル表示・SDSの義務の対象にするとか、リスクアセスメントの義務の対象にするというものについて、ある程度、物質を具体的に決めてやっていくというのが、今の法制度の下での制約になっていますので、ですから本来あるべき議論とは別に、そこの範囲はある程度決めるために、国によるGHS分類というのをここではかませているのです。ただ、そこに至っていないものは、情報がないというのは言いすぎですけれども、非常に少ないから国のほうのGHS分類に持っていけないという整理を制度としてするのが分かりやすいのではないかという意味です。
○城内座長 例えば欧州だと多分、データが少しでもあれば、それをちゃんと集めてハザード情報として提供しなければ、市場に出してはいけないという原則がありますよね。ということは、本当に少しでもあれば、原則からいくと、SDSもラベルもできるはずなのです。だからここの今の懸念は、こういう書き方をするときっと誤解されるだろうと思うので、書き方をちょっと変えていただいたほうがいいのではないかという提案です。そのほかに御意見はありますか。
○大前委員 この図の「ばく露限界値」という言葉についてです。これは当然国がやる規制の話ですから、産衛学会やACGIHの許容濃度やばく露限界値ではないということを、やはり明確にしておかないと。このままの表現だと、学会の数字かというように思われてしまうととても困りますから、そこら辺はよろしくお願いします。
○城内座長 そのほかに御意見はありませんか。中澤委員、お願いします。
○中澤委員 4ページの、個別管理物質について自律管理を認める場合の基準についてということについて御質問します。ここに書かれている要件というのは、基本的には全てを満たすという前提での御提案なのでしょうか。それぞれを見ていくと、非常に雑駁な言い方をしますと、まず労働災害を発生させていないこととか、有所見者を発生させていないことというのが大前提になってくるような気がしています。そういったものを備えている事業所の場合に割愛できる余地というのも考慮できるのではないでしょうか。
○城内座長 では、事務局からお願いします。
○化学物質対策課長補佐 案を作らせていただいたときの考え方は、全て満たしている場合という考えで作らせていただいています。
○中澤委員 なかなかハードルが高くなってくるという逆の状況も考えられるので、何が一番優先されるものということも、考慮いただければ有り難いと思います。
○城内座長 大前委員、お願いします。
○大前委員 今の所の解釈ですが、私は、一定の要件を満たす事業者にはその物質に関する自律管理というように読んだのです。まさかたくさんの化学物質を使っていて、要件を満たせば全部セーフというのではなくて、この物質は大丈夫とか、この物質は外しますという意味だと思うのです。例えば労災にしても、その物質で労災が起きたうんぬんかんぬんというようにしないとまずいと思います。
○城内座長 そのほかにありませんか。永松委員どうぞ。
○永松委員 3、4ページの自律管理を支える人材、あるいは個別管理物質に自律管理を認める場合の基準に関係するところです。特に中小事業者にとって、この人材は非常に有用ですけれども、例えば個別管理物質について自律管理を認める場合の基準では、人数が配置されているというように書かれているのです。今は中小企業の支援についても外部機関の支援が検討されておりますが、これは外部の機関も使って行うといったそういう考え方も含めてと考えてよろしいのでしょうか。中小企業において人材の確保、あるいは今目指している個別管理物質を自律管理のほうに持っていこうということであれば、そこら辺の仕組みは非常に重要かと思います。
○化学物質対策課長補佐 当然、外部人材の登用というのはあると考えています。
○城内座長 そのほかに御意見はいかがでしょうか。漆原委員、お願いします。
○漆原委員 自律管理を支えるという3ページの下の所です。人材だけではなくて情報を十分に提供していなければ、そもそもどのような人材が必要かということもたどり着けない場合もあるので、国、あるいは業界団体もそうかもしれませんが、中小事業場も含めて、現場にどうやって情報を伝えていくのかが重要なポイントです。ここには記載されていないのですけれども、その点も付記いただければというのがまず1点です。
もう1点は2、3ページです。2ページで言えば真ん中のほうに、生物学的モニタリングの記載があります。これは労働者側としては是非、定期的に確認していただきたいところです。長期的な疾病のことを考えれば、それが特殊健診でないにしても定期的な確認をしていただきたいし、保存についても個社によらず、長期的に保存できる枠組みを設けていただきたということです。3ページには自律管理の実施の状況について、一定期間の保存というようにありますが、その中にも労働者のばく露の状況が入っていますので、ばく露の状況についても同様に、長期間の保存をお願いしたいというところです。
○城内座長 そのほかに御意見はありますか。永松委員、お願いします。
○永松委員 今の御意見の中で情報提供というのは、やはり大変重要かと思います。その中で有害性に関わる情報提供については、日化協もセミナーをやっておりますし、厚労省も安全サイト等でいろいろとやられているのですが、化学品の安全な管理の情報の中では、有害性はまずスタートなのですけれども、職場環境の測定方法とか、いわゆる保護具は何がいいか、その保護具をどこまで継続して使っていいかという技術的な情報がないと、やはり実効的な対策はなかなか難しいと思いますので、その点も含めて有用な情報提供を、是非お願いしたいと思います。
○城内座長 そのほかに御意見等はありますか。高橋委員、お願いします。
○高橋委員 これまでの議論の中でも、お願いさせていただいたことの繰り返しになると思いますけれども、3ページで、「自律管理物質の管理状況を労使で共有すること」と書いていただいております。これはやはり職場のほうでその管理をするというのが基本になると思いますので、これは進めていただきたいです。特に小規模の事業場における労使の情報の共有の仕方、具体的には衛生委員会の義務がない50人未満の所についても、こういったことがしっかりと担保できるようなことも、併せて考えていただきたいと思います。
もう1つは2ページに、そのガイドラインについてという記載があります。先ほどの議論にも通じるところがあるのかもしれませんけれども、保護具を着用するにしても、何らかのフィットテストなどを行うというのがあるとしても、やはり中小になるとハード的な対策ができなくて、個人の保護具の対策にならざるを得ないというケースが非常に多くあると、加盟組合のほうから聞いております。やはり基本的な考え方と言いますか、工学的な対策をするのが一番だといったものを含めて、こういったガイドラインのようなものを作っていただけると、中小のほうでの理解も進むのではないかと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
○城内座長 そのほかに御意見はありますか。大前委員、お願いします。
○大前委員 自律管理をする仕組みの中で、今、産業医はどういう立場というように想定されていらっしゃいますか。
○化学物質対策課長補佐 まだ個別の論点のほうには入れておりませんけれども、当然、産業医の役割としては、労働者の健康管理をするというのが法律上位置付けられておりますので、この自律管理の中で、いわゆる職場にいる医療職の方々をどういうように位置付けていくかというのは、今後、更に議論を頂ければと思います。それも検討のテーマの1つだと思っておりますし、専門家の確保・育成の中でもその方々、例えば衛生管理者やインダストリアル・ハイジニストの方々との位置付けを、どうしていくかということも整理が必要だと思っています。
○城内座長 よろしいでしょうか。そのほかにありませんか。先ほどの漆原委員の御質問に関係するのですが、生物学的モニタリングについては現状、幾つか決まっています。しかし、それは必ずしも長期的なモニタリングをしたほうがいいものばかりではないと、私は理解しています。長期的なモニタリングが必要かもしれない生物学的モニタリングの指標等があった場合には、今後入れていく可能性があるかどうかというのは、御意見をお伺いしたいというか、事務局の見解をお聞きしたいのです。いかがでしょうか。
○化学物質対策課長補佐 可能性としてはあると思いますけれども、まずはその前提となる話の中で自律的管理、要は管理のやり方を事業者に委ねますという仕組みにしたときに、健康に対する影響の確認のやり方を、誰がどう決めてどこまで求めていくのかということについての整理を、もう少しきちんとしたほうがいいのではないかと思います。今回はまだそこまで論点がお示しできていないのですけれども、事務局としてはそういうように考えております。
○城内座長 そのほかに御意見はありますか。私から1つお願いがあります。2ページの最後の○に書いてある「作業におけるリスク」と、3ページの上から3つ目の○にも、「作業におけるリスクをどのように作業者に伝え、理解させるか」と書かれています。私の理解では、作業者に伝えるのはリスクではなくてハザードではないかと思っています。これは前にも発言したかと思うのですが、GHSをやってきて、ラベルが最初に書いてあって、それでハザードをどう労働者に伝えるかが重要だというのが、私はポイントだと思っています。つまり労働者は、ハザードを知ってリスクの低減を図るというのは、事業者と一緒にやる立場なのです。
リスクコミュニケーションというのは多分、公害が激しかった時代にできた言葉だと思うのです。そのときはどちらかと言うと一方通行の、企業や政府から住民に対するリスクコミュニケーションという言葉から出てきたと思っています。実は、GHSの小委員会の中でも最初の頃に議論があったのですが、管理をするのはリスクだけれども、労働者に伝えるのはリスクではなくてハザードで、それは労働者が事業者と一緒になってリスクを削減していくというように、私は理解していますので、できれば労働者に伝えるのはリスクではなく、ハザードというようにしていただいたほうが、今後の展開というか、説明が合理的になるのではないかと理解しています。よろしくお願いいたします。
そのほかに御意見等はありませんか。よろしいでしょうか。まだ少し時間がありますけれども、もし御意見がなければ、ここで終わりたいと思います。よろしいでしょうか。大前委員、どうぞ。
○大前委員 今の城内座長のお話には、まだ違和感があります。ハザードを伝えるのは当然だと思うのですけれども、リスクというのはハザードがあって、労働リスクに備えて、今この会社はこのぐらいばく露しているから、これくらい危ないよというのが多分リスクだと思うのです。ですから、やはりリスクも伝えなくてはいけないのではないですか。両方要るのではないかという気がするのです。混乱しますかね。
○城内座長 両方要ると思います。ただ、GHSが入った時代、2000年頃、日本では御存じのように「リスク」と「ハザード」という言葉が、結構ごっちゃになっていて、私自身もそういうところがありました。それを一緒にしてしまうと、何を伝えればいいかというのが明白でなくなるのではないかというのもあって、私はこういう場合は「ハザード」を使ったほうがいいと思うのです。大前先生がおっしゃるように、両方伝える必要はあります。しかし初めから「リスク」と言うと、リスクだけを伝える危険性のほうが、私は大きいのではないかと思っていて、そういう意味で申し上げました。
そのほかに御意見はありますか。よろしいでしょうか。それでは、本日の議論はこれで終了したいと思います。事務局から連絡事項はありますか。
○化学物質対策課長補佐 非常に活発な御議論をありがとうございました。本日の議論を踏まえ、次回は更に論点を明確化したり、議論を進めたりすることができるような資料をまとめたいと思っております。次回は日程的に少し近いのですけれども、11月27日金曜日の午後2時からを予定しておりますので、正式な御連絡はまた追ってさせていただきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
○城内座長 以上で第10回職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会を閉会いたします。どうもありがとうございました。