第5回 事務所衛生基準のあり方に関する検討会 議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

日時

令和3年1月22日(金)10:00~12:00

場所

経済産業省別館 231各省庁共用会議室
(東京都千代田区霞が関1-3-1)

議題

(1)更衣設備・休養室等に関する基準について
(2)これまでの検討の取りまとめについて
(3)その他

議事

○矢吹有害作業環境指導係長 定刻となりましたので、ただいまより第5回事務所衛生基準のあり方に関する検討会を開催いたします。なお、本日は御都合により、柴田委員、林委員が御欠席です。また、田中安全衛生部長につきましては、所用により、途中で退席させていただきます。
 それでは、以降の議事進行を高田座長にお願いいたします。
○高田座長 よろしくお願いいたします。早速、議事に入りたいと思いますので、円滑な進行に御協力くださいますようお願いいたします。また、傍聴の皆様におかれましては、カメラ撮影等をここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。
 最初に、事務局から配布資料の確認をお願いいたします。
○矢吹有害作業環境指導係長 事務局から、本日の資料を確認させていただきます。資料1「更衣設備・休養室等に関する第4回検討会までの議論の整理(案)」、資料2「衛生基準としての更衣設備等の取扱いについて」、資料3「トイレ設備に関する見直しの方向性(案)」、資料4「報告書骨子案(作業環境測定、照度、便所関係)」です。また、参考資料1として「参集者名簿」、参考資料2として「事務所衛生基準規則ほか関係条文等」を御用意しております。お手元の資料に不足等がございましたら、事務局までお申し付けください。
○高田座長 よろしいでしょうか。それでは、議題の(1)更衣設備・休養室等に関する基準について、事務局から説明をお願いいたします。
○搆主任中央労働衛生専門官 資料1については、前回の議論をまとめたものですので、簡単に説明いたします。まず、(1)更衣設備、シャワー設備についてです。括弧書きで法令用語としての定義を入れています。更衣設備とは、具体的にはロッカーや更衣室、衣服の保管場所などを総称して言い、汚染・湿潤作業がある場合に事務所衛生基準規則で設置が義務付けられています。また、シャワー設備については事務所衛生基準規則に規定されていませんが、働き方改革法案の審議の際に、検討すべき具体例として更衣室とともに挙げられていたものです。
 更衣設備については、実際には、汚染・湿潤作業などよりも、制服の着替えなど日常の職場生活で使われている状況、更に最近では事務職向けの制服を廃止する動きもあり、また、シャワー設備については、業態によりニーズが様々だという調査結果となっています。これらを踏まえると、法令での一律の定めは、かえって事業場の選択肢が少なくなることにつながるのではないかということでした。
 (2)休憩設備について、事務所衛生基準規則では努力義務とされ、義務付けではないのですが、実際には、多くの事務所で設置されて利用されている状況にあります。調査結果からは、休憩設備の広さや備えられている機器は様々だということがわかり、労働者からの意見や不満として多かったのは、スペースが狭いことでした。休憩設備のスペースや設備については確かに課題がありますが、法令で一律にということではなく、事業場ごとに取り組むことが期待されるものです。
 (3)休養室・休養所についてです。事務所衛生基準規則では、労働者数50人以上又は女性労働者30人以上という一定規模以上の事務所を対象に、男性用、女性用それぞれ休養室・休養所を設けることが求められています。また、法令解釈において専用のものとすることとされており、事業場としては常に2つの休憩所を設けることは負担が大きいということでした。特に、休憩室の使用頻度が少ない実態や、企業部門の統廃合により法令上設備の設置義務が生じたりなくなったりという変化を鑑みるに負担は大きいというご指摘もありました。
 一方で、診療所や病院の機能は、法令制定当初と比べて充実していること、体調不良者を事務所に長く留めず帰宅させるという労務管理上の変化も、休養室・休養所の使用頻度低下につながっているという事情があります。したがって、休養室・休養所の役割は、長時間にわたる休養ではなく、体調不良者を一時的に休ませて回復を図る機能に特化しているということですが、横になって休む必要がある人もいますので、休養室を設けておく重要性はあるということでした。また、休養室・休養所の利用に当たっては、適切な管理が求められるものの、過剰な管理により利用しにくくなるという難しさに対する指摘もあり、想定される利用者に留意しつつプライバシー保護をどこまで優先するかということがポイントになります。以上です。
○高田座長 御説明ありがとうございました。更衣設備、休憩設備、休養室・休養所について、前回の検討会までの委員の皆様方の議論の内容を整理していただいたものになります。後ほどの議論にも影響しますので、この時点で議論の整理について、何か追加や質問等がございましたら、是非、御意見を頂きたいと思います。何かありますか、こちらについてはよろしいでしょうか。特に、欠席の委員からも御意見はありませんか。
○矢吹有害作業環境指導係長 特段ございませんでした。
○高田座長 ありがとうございます。そうしましたら、資料1の第4回検討会までの議論の整理については、こちらのとおりとさせていただきます。引き続き、更衣設備・休養室等の内容に関して、具体的に衛生基準としての更衣設備等の取り扱いについて事務局から説明をお願いします。
○搆主任中央労働衛生専門官 資料2を御覧ください。先ほどの資料1の議論を設備ごとに3つの論点に分けて整理したものです。まず、論点1は、更衣室・シャワー設備についてです。これらを設けるのであれば、性別を問わず安全に利用できること、最低限のプライバシーを確保することを明らかにする必要があるのではないかということです。先ほど申し上げたように、事務所の更衣設備というのは、ロッカーや更衣室、衣服の保管場所の総称ですが、この更衣設備については、汚染・湿潤作業がある場合やそのおそれがある場合に義務付けられています。シャワー設備については、特に事務所衛生基準規則では規定はありません。更衣設備やシャワー設備については、法令の規定があるかどうかというよりは、業態や着替えのニーズに応じて設置、運用されているという現状にあります。
 したがいまして、2番目のマルですが、設置については、法令で現行基準の規定を新たに設ける必要はないのではないかということです。3つ目のマルですが、実際の運用に当たって、更衣室を設ける場合は、性別を問わず安全に利用できることや最低限のプライバシーを確保することは明確にすべきではないかということであろうかと思います。
 続いて論点2です。休憩設備、これは休養室と異なり仕事の合間に一休みするところで、事務所衛生基準規則で努力義務とされていますが、更に規定すべき内容はあるかということです。スペースや付設設備、使用実態などは様々ですが、多くの事務所で設置されて利用されている実態にあり、「設けるよう努める」という趣旨は、総じて達成されていると考えられます。その上で、利用人数に応じて広さが十分であるかとか、どのような設備を備えるべきか、机や椅子のみならず、例えば、食材を温めるための電子レンジ、飲み物の自動販売機などといった話もありました。職場として重要なことではあるものの、法令の基準ではなくて、個々の事務所においてニーズも踏まえながら対応するという整理をしております。
 論点3の休養室・休養所については、その目的に照らし、必要時に確実に利用できるよう、形式よりは取扱いにおける整備をするべきではないかということです。必ずしも部屋として独立していなくてもよいわけですが、1つ目のマルですが、専用のものを男性用、女性用それぞれ設けることが求められているため、事業場や事務所においては設備面での負担が大きい一方で、随時利用可能とは限らない運用がされている場合もあり、労働者にとっては設置目的から見ると、例えば体調が悪いときに横になって休めるかという点からすれば、形骸化している場合もあるということです。
 2番目のマルですが、制定された当初と比べて医療体制が整備され、労務管理も長い間留め置かないといったような方向で議論されている現在では、恒常的な専用のスペースの設置ということではなく、一時的な休養がいつでも可能という機能の確保が重要ではないかということです。
 3つ目のマルですが、現行基準で一定規模の事務所に対し休養室等の設置が義務となっているところ、この基準以上の規定を新たに設けるのではなく、必要なときに確実に、性別を問わず安全に利用できることや、プライバシーの確保を明確にすべきではないかということです。資料の説明は以上です。
○高田座長 ありがとうございます。そうしたら、資料2について論点が3つありますので、1つずつ進めていきたいと思います。まず、論点1)更衣室・シャワー設備についてです。現行の基準以上に規定を新たに設ける必要性はないのではないかということ。それから、運用に当たって、プライバシーの確保の明確化が挙げられておりますが、こちらについて、委員の皆様から追加の御意見、御質問等ありましたらお願いできればと思います。明石委員、お願いします。
○明石委員 更衣室・シャワー室については、前回の検討において、必要とする事務所がよく考えて設置する等を考えたほうがいいと申し上げたところで、その考えは変わりませんが、運用に当たって「性別を問わず安全に利用できること及び最低限のプライバシーを確保することを明示すること」を考えようということについては、安全な利用、プライバシーの確保など事業場が分かっている話について、改めて明示する必要はないと考えます。と言いますのは、最低限のプライバシーと書かれますと、人によって満たすべき基準についての考え方が異なりますので、職場で認められるかどうかの議論で混乱することが心配です。
○高田座長 ありがとうございます。今の点について、何かございますか。では冨高委員、先にどうぞ。
○冨高委員 今の議論にも関係するので発言させていただきます。まず論点1については、もともと連合として、構成組織から、女性の就業継続の拡大に向けた男女別の設置を希望する意見があったということは、前回言ったとおりです。これは資料1の1番目の所に、男女別とは書いてありませんが記載をしていただいたところかと思います。今回の論点1には、性別を問わず安全に利用できることが重要なのだということは書いていただいておりますので、そのことがきちんと守られることが重要だと思っております。
 ただ、今の御発言に関連しますが、書きぶりが変わり、例えば男女別という書きぶりから、性別を問わず安全に利用できる、あるいは最低限のプライバシーを確保するという書き方になったときに、やはり、先ほど明石委員がおっしゃられたように、人により捉え方が様々になると思います。その際には、安全な利用という場合の安全とは何か、最低限のプライバシーの例示など、具体化することにより混乱を回避できるのではないかと思います。事務所則そのものでなくても、何かしらで示すことができるのではないかという点を意見として申し述べます。
○高田座長 ありがとうございます。事務局から何かございましたらお願いします。
○搆主任中央労働衛生専門官 お二方から御意見をいただきました。前回からの議論を踏まえますと、更衣設備については、事務所則上で男女別の規定はありませんので、安全な利用を確保するために、男女別に分けることも1つ、分けられないが施錠できるようにしたり通路で不安がないよう配慮するといった方策もまたあると思うのです。法令の規定でがんじがらめにすることは最善ではなく、今後、5年、10年経ったときに困ることがあるということだと思います。委員の皆様のイメージは概ね共通と思いますが、事務所衛生基準規則を執行する我々行政に対しては、例えば、改正法令の周知に当たり、各事業場に定着するよう周知媒体などでしっかり示すということを期待されているという、そのような考えでよろしいでしょうか。
○高田座長 明石委員、冨高委員、何かございましたらお願いします。明石委員、お願いします。
○明石委員 周知する際に、その点は、パンフレット等に書かれるということですよね。そういう点では、パンフレットに書き込まれることは理解をしますが、何と言いますか、事業者としては、いろいろ千差万別なので、できることとできないことがどうしても出てきますので、余り、これだけはやらないといけないみたいなことではなくて、こういうことも望まれるというか、そういう書き方にしていただいたほうが柔軟性が出ていいのではないかなと思います。
○高田座長 ありがとうございます。事務局からはありますか。
○搆主任中央労働衛生専門官 承知いたしました。基本は、事業場の選択肢を尊重することにあると思うので、本質がしっかり分かるような形で周知媒体等において示していきたいと思います。
○高田座長 ほかにございますでしょうか。事業場内で合意形成していただくことが重要になってくると思いますので、その辺も含めて、是非、よろしくお願いできればと。冨高委員、どうぞお願いします。
○冨高委員 今の回答で結構です。視点として、事業主の裁量に委ねられるところが大きいことを踏まえ、現在女性が全くいない職場においても、事業主の方に意識していただけるよう、行政の周知に当たっては考慮をお願いしたいと思います。
○搆主任中央労働衛生専門官 承知しました。
○高田座長 それでは、論点1はよろしいでしょうか。そうしましたら、論点2)休憩設備について、事務所衛生基準規則で更に規定すべき内容があるかということですが、こちらについて、委員の皆様から御意見はございますでしょうか。こちらは、事務所ごとに対応すべきではないかという方向性でまとめていくことになっておりますが、追加で何か、こういったことは盛り込んだほうがいいとかがありましたら御意見を頂きたいと思います。よろしいでしょうか。ありがとうございます。では論点2については、今、記載されているとおりで、事務局から何か確認しておきたいこととかありますか。
○搆主任中央労働衛生専門官 特にございません。
○高田座長 大丈夫ですか。ありがとうございます。そうしましたら、論点3)休養室・休養所についてということになりますが、この運用面のあり方について、御意見がありましたらお願いします。明石委員、お願いします。
○明石委員 私からは、前回、休養室の書きぶりにつき少し見直していただいたほうがいいのではないかというお願いをしたところです。各委員から御意見をお聞かせいただき、また、別途、参加企業からも話を聞いたところ、やはり女性にとって休養室があることは大事だという意見をたくさんいただきましたので、休養室自体の必要性は理解しました。
 一方で、この男女別に設けるべき休養室について、最低限のプライバシーということで内側から鍵をかけるということになると、内部の様子が見えずかえってよくない場合もあると思いますので、そこまで明確にということではなく、現場に合わせた運用が現実的ではないかと思っています。先般も申し上げたように、休憩設備をパーテーションで区切って休養所として取り扱うなどができないものかと思います。
○高田座長 ありがとうございます。今の点について、事務局からは何かありますか。
○搆主任中央労働衛生専門官 御意見ありがとうございます。最低限のプライバシーという表現につきましては、プライバシーを全面的にではなくとも、ごく基本的な点では配慮するということで、プライバシーを全く蔑ろにしてはいけないという趣旨だと御理解いただければと思います。完璧なプライバシー、つまり独立した部屋を求めるものでないことは、法令の「休養室又は休養所」という規定からも明らかです。
 ただし、パーテーションがあればいつでもよいかというと、いろいろな場合が考えられます。衝立てがあってもそっくり覗けてしまうような用をなさないものもありますから、休憩設備の入り口付近にパーティションを設けただけでは、体調が悪くて休養する人も休めません。一方、休憩設備の奥まったところに、通常の休憩時に立ち入る空間でないことが分かるようになっていれば、その奥にパーティションが設置されて横になって休むということなら、ある程度プライバシーを守れるのではないかと思います。そうした運用のイメージはある程度共有いただけると思いますが、法令で一律に可否を定めることは困難です。
○高田座長 今の点について、明石委員、お願いします。
○明石委員 今の点はよく分かりました。この規則を読むと、人数の問題と男女別の区別と、そして「が床する」と書いてあります。要件としては、この3つが規則には書かれておりますが、が床の意味合いみたいなところは、何か決まっているものがあるのですか。
○高田座長 事務局、お願いします。
○搆主任中央労働衛生専門官 が床は、特に、こういうものがが床だとは書いていませんが、体調が悪くて休むと、この趣旨から考えまして、しっかり横になれるということだろうと思います。横になって休めないようでは、対象にならないということと考えられます。○高田座長 ほかにございますか。住徳委員、お願いします。
○住徳委員 今の明石委員の御意見に関連すると思うのですが、事務所則が改正され、パンフレットなどで周知がなされたときに、現行の条文、つまり労働者50人又は女性30人以上の事務所では、が床することができる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならないという規定は、違和感を抱く事情場も多くあるかもしれません。更衣室についても、実態としては日常に必要な設備という感覚でしょう。事務所則の改正周知の時点で休養室の条文を再認識し、どのような対応が必要かと慌てるところも多いのでは。事業場が混乱しないよう、男女別それぞれの部屋が必要なのか、もっと弾力的に使い分けてもよいとするのか、解説を示していただくことが重要と思います。
○高田座長 貴重な御意見、ありがとうございます。今の点について、追加で何かございますか、事務局からは何かありますか。
○搆主任中央労働衛生専門官 御指摘ありがとうございます。おっしゃるとおりだと思います。これまでの調査を通じ、休養室について、事業者も労働者も共通の認識があまりなかったように思われます。昼の休憩時間に単に一息つくことは、休養室を利用していても法令の本来の目的ではないわけですが、そのために別の体調が悪い人が利用できないということも起こり得ます。したがって、必ずしも専用の施設でなくても、必要なときに利用可能であることのほうが重要ともいえます。もちろん、利用頻度が高ければおのずと専用の施設になるわけですが、そうした弾力的な運用は、法令の施行までに細部を詰めて、混乱を生じないよう準備をしておくようにします。
○高田座長 ありがとうございます。冨高委員、お願いします。
○冨高委員 内容についてはこのような形でいいと思います。今、住徳委員がおっしゃったように、事業主の中には、法令改正を機に必要な事項をあらためて理解される方もいらっしゃるかもしれませんので、細部な所も含めて、丁寧に周知していただければと思います。その過程で、男女別の休養室を性別を問わずという形になったとき、どのような基準で設けるかということなど、丁寧に整理していただければと思います。
○高田座長 ありがとうございます。ほかはよろしいでしょうか。明石委員のほうもよろしいでしょうか。そうしましたら、ほかに御意見がないようでしたら、論点3)休養室・休養所についての議論を終了にしたいと思います。今の御議論で、更衣設備・休養室等について、取り扱いの方向性が整理されてきたと思いますので、今後、事務局において、委員の皆様の御意見を踏まえて取りまとめ作業を進めていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 そうしましたら、次の議題(2)として、本日は、今、議論しました更衣設備・休養室等を除き、これまでの検討の取りまとめについて議論をしたいと思います。まずは、その中でも、事務局からトイレ設備に関する見直しの方向性について説明をお願いします。
○搆主任中央労働衛生専門官 資料3を御覧ください。机上配布資料として御用意していますので、こちらの図も参考にお願いします。トイレ設備については、第2回、第4回の検討会において御審議いただいたところです。これらに基づく取りまとめの方向性を資料として御用意いたしました。書きぶりなども含め、お気づきの点があればお願いいたします。
 まず、(1)法令の衛生基準としての便所の設置の考え方です。法令で、「便所」「便房」という用語が使われていますので、それらを意識して準備しております。まず、便所については、男女別を原則とすること、便所には「仕切り壁型」と「独立個室型」と大きく2つに分かれるのではないかということです。これまで意識せずに運用されていましたが、この2つは違うのではないかということを(1)に書いています。
 このような分類を、なぜ改めて明記しているかといいますと、法令上の位置づけが少し微妙に変わってくるのではないかというのが(2)のところです。仕切り壁型については、2番目のポツにありますが、仕切り壁型の便房からなる便所は通常、個々の扉に施錠機能があり、仕切り板や壁は固定されているものですが、天井や床に近接する部分のどちらか又は両方に隙間がある場合が多い、すなわちプライバシー確保が限定的であるということです。
 一方で、3つ目のポツですが、独立個室型の便房というのは、これ自体が1つの便房であり、かつ便所であるということも言えますが、その場合には全方向が堅牢な壁や扉で囲まれているか、扉に内側から施錠できる構造であるかといったように、その個室単独でプライバシーが確保されるかどうかということが問題となります。その細部の手洗い設備については、法令をよく読むと、個室内におく必要があるように読めますが、個室の外にある場合であっても排他的に近接している必要があると考えられます。独立個室型の便所は独立しているわけですから、個々に採光や換気が可能であるということが前提です。
 4番目のポツは、多機能トイレです。バリアフリー法に規定されている車いす使用者用便房や、オストメイト対応の水洗器具を設けている便所については、構造によって独立個室型の便房の便所又は、一部古いものでは仕切り壁型の便房になるものもありますが、独立個室型の多機能トイレの多くは、男性用と女性用に区別されておらず、現行の事務所衛生基準規則に照らして、便所として取り扱われない現状にあります。
 (3)を御覧ください。こちらは少人数の事務所における男女別の取扱いについてです。少人数の事務所においては、建物の構造上、1つの便所しか設けられていないことがあります。構造上というのは少人数ということと関係がありますが、少人数ですと当然、全体の面積が狭いという中で、便所の面積は一定程度とりますから、この割合を考えると、とても2つ3つの設置は困難であり、事実上、男性用と女性用の区分設置は困難な場合があるということです。少人数の事務所に設けられた便所のうち、独立個室型の便房からなるものについては、ある意味で男性用と女性用の便所の機能を兼ねるとみなすこと、そういった柔軟な運用も可能なのではないか、プライバシーが一定程度確保されるという前提のもとでは例外的に認められ得るのではないかということです。なお、(3)において、その柔軟な対応というのは、男女別の原則という基本的な考え方を否定するわけではなくて、あくまでも例外の運用ということです。
 次に(4)です。多様な労働者のニーズに対応できるトイレの確保についてです。多機能トイレのニーズ、男女別でないトイレに対するニーズというものもあります。バリアフリー法に基づく多機能トイレが設置されることによって、職場においても障害を持つ労働者のニーズへの対応というのが進んでいます。また、性的マイノリティなど多様な労働者も利用可能なようにということも含めますと、便所に対するニーズは多様化していると言えます。
 そういった中で、2つ目のポツですが、事務所衛生基準規則と労働安全衛生法令において、個々の多様なニーズについて、一律に法令での規定ということではなく、基本的には事業場の実情に応じて柔軟な対応をしてもらうということが望ましい。実際には、例えば衛生委員会などの場で、個々の事業場ごとに議論をするといったことが考えられます。
 また一方で、例えば多機能トイレの多くは、その機能上、男性用と女性用を区別していない独立個室型というのが多いわけです。こういったものがニーズとしてありますが、事業場が多機能トイレを含む独立個室型の便所や、例えば多機能トイレでなくても男性用と女性用を区別していない便所を労働者のニーズに対応して入れたいといった場合に、事務所衛生基準規則に基づく便所として位置付けられることが重要であり、これによって事業場の多様な選択肢を確保するということに法令の役割はあるのではないかということです。
 (5)の便房の必要数の考え方についてです。これは現行がありますので現行がどうかということと、先ほどの(4)までの議論において、細部はどうしていくべきかという2種類があります。最初のポツは、現行の事務所衛生基準規則で規定する、同時に就労する労働者数に応じて必要とされる便房数や男性用小便所の箇所数は、全ての事務所に対して一律に求められる最低基準です。この観点からは見直しが必要ではないのではないかということです。第2回の学会からの混雑度等を勘案した算定基準がありましたが、これは大きく乖離していなかったということがあります。基本としてはいいのではないかということです。
 これは、もちろん便所の利用状況は事業場ごとに異なります。当然、便房を増やしたり、洗面設備を増やすことにより労働者の待ち時間の短縮が図れます。また、ニーズを踏まえて様々な機能を付加するといったことも重要であり、事業場が事務所で従事する労働者の利便性向上を図ることは大事なことです。ただし、法令で個々に書いて縛られるということは少し違うのではないかということで、事業場の実情に応じて、例えば衛生委員会などの場を活用して柔軟に対応するといったことが望まれます。
 3番目のポツは、先ほどの議論にありましたが、男性用と女性用を区別しない独立個室型の便所についてです。1つは、少人数の事務所において例外的に設ける場合があります。もう1つは、少人数ではない所では基本的に男女別便所が設置されるわけですが、これに付加して区別しないものを設けるといった場合と、この2つが大きく考えられますが、いずれの場合も事務所衛生基準規則における便所として取り扱われるべきであるということです。具体的には、同時に就業する労働者に応じて必要とされる便房数、男性用小便所の箇所数に算入できるものとして取り扱われるべきものということです。ここの議論、トイレ設備についてですが、これまで事務所衛生基準規則、事務所を想定して議論していましたが、実は労働安全衛生規則に、ほぼ同じ規定が書かれています。ここでの議論は事務作業に特化した議論ではありませんでしたので、当然、労働安全衛生規則、つまり工場や工事現場等においても同じ考え方なのではないかと、事務所に限らず事業場一般ということで当てはまるのではないかと考えられます。説明としては以上です。
○高田座長 ありがとうございます。まず1つずつ議論を進めていきたいと思います。まず(1)法令の衛生基準としての便所の設置の考え方に書かれている内容について、何か抜けている観点とか、何かございましたら御意見を頂きたいと思います。御質問でも構いません。(1)はよろしいでしょうか。
 そうしましたら、(2)便所のタイプによる法令上の位置付けということになりますが、こちらについて、これまでの議論からまとめられている方向性になるかと思いますが、(2)について何か追加するべきことなどはありますでしょうか。
○住徳委員 質問をしたい点は、バリアフリー法に規定されている車いす使用者用便房やオストメイト対応の水洗器具を設けている便所、いわゆる多機能トイレとについてですが、このバリアフリー法に規定されているトイレに定義があるのかということです。なぜ、そういうことをお尋ねしているかというと、後半のほうで便所としてカウントする場合の条件も出てくると思うのですが、独立個室型の便房の中に、バリアフリー法に規定されている独立個室型の便所が含まれるという考え方になっていたり、仕切り型のトイレにもバリアフリー法に規定されているトイレというのが入ってくるのかということと、あとはバリアフリー法に規定されているトイレというと、一般的に障害者等、体調が急変しやすい方が利用されるということが前提なので、外部との連絡機能が付いているトイレが多いと思うのです。それがこのバリアフリー法に規定されているトイレに含まれてくるものなのか。そこがちょっと分からないので、教えていただきたいと思います。
○高田座長 事務局、お願いいたします。
○搆主任中央労働衛生専門官 多機能トイレの定義と、今回の独立個室型トイレ、便所との整理になりますが、多機能トイレについては、バリアフリー法の基準の所に細かい規定があります。それこそ標準的にこのように設けたほうがいいとか、こういう機能が付いているとか、車いす用ですから広さはどのぐらいが標準とか、こういった規定があります。基本的にバリアフリー法の関連の基準がありまして、それを都道府県等で焼き直して個々に施行しているというようなものだと思います。実は、バリアフリー法の前身となる法令にも規定がありまして、現在推奨されるものとして大体の標準型があります。例えば古い時代に設置された多機能トイレは、その当時に示されていた標準形をもとに設置されたわけで、特に公共施設など初期のものが多いようです。
 ですから今の主流は、男女別トイレの近くに設けられた、男女どちらも入れる独立個室型のトイレです。しかし、もともとある男性用トイレ、女性用トイレの一部の区画を設定して作った仕切り壁型のトイレもあり、これは公共施設でかなり早い時期に導入した所が多いです。公共施設、駅などに、便房の仕切り壁を広げて設置したトイレの中には、奥行きとしては十分にとれない中で、苦労して機能を設けているものもみられます。また、第2回の議論のときにも出されましたが、バリアフリー法のトイレも、1つの多機能トイレにすべての機能を集中させても、それが塞がった場合は使えないわけですから、例えば水洗器具のみを設けたオストメイト用と、車いす利用者用とは分けるなどの機能分化も進んでいます。このように、年々発展しているものですから、たとえ今、定義をして整理を仕切ったとしても、3年たち、5年たてば変わってくるわけです。
 前回、住徳委員から多機能トイレの定義をしなくていいのかという話がありましたが、事務所則では、多機能トイレを切り分けて運用しなければ、定義は必要ないということです。様々な機能、連絡用のブザーも重要な機能の1つと思いますが、これらは多様な労働者への配慮ということで、事業場ごとに検討いただくとして、事務所則上は、独立個室型なのか、仕切り壁型なのかという切り分けのみということです。多様な労働者にとって使いやすいトイレを提供するというのは、事業者として必要なことではありますが、労働安全衛生法令では個々の規定まではできません。ただ、様々なタイプのトイレが出てきたときに、この事務所衛生基準規則なり、労働安全衛生規則が対応できず、トイレとみなされないとか、カウントされないとかという状態は、職域でそうしたタイプのトイレを排除してしまう原因になりますので、そうしたことのないよう、法令でも備えをしておくという趣旨です。枝葉をとっていくと、法令上の定義は、プライバシーが限定的な仕切り壁型か、プライバシーがある程度確保される独立個室型かの2つの区別で足りるのではないかということです。
 あえて申しますが、事業場での検討は、実際にはなかなか難しいと思います。多機能トイレでも、連絡用ブザーがないと、危なくて使えないということもありましょうし、車いす用のトイレの設置に当たっては、その近くに段差がないか、通路の幅は十分かなど、利用する身に立ってしっかり考えてもらわないといけません。だから、衛生委員会や労使など当事者の真剣な議論が欠かせないということを本音で申しあげています。
○高田座長 ありがとうございました。ほかに御意見はございますか。明石委員、富高委員、何か追加でございますか。よろしいですか。
 そうしましたら、(2)については今の御質問の内容も踏まえまして、分かりやすくまとめていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 続きまして(3)少人数の事務所における便所の男女別の取扱いということですが、こちらについて御意見ございましたらお願いできればと思います。こちらは明石委員、何かございますか。大丈夫ですか。富高委員のほうはよろしいですか。住徳委員はどうですか。事務局も確認しておきたいことはありますか。(3)の内容はよろしいですか。
○搆主任中央労働衛生専門官 特にございません。
○高田座長 そうしましたら、次に(4)多様な労働者のニーズに対応できるトイレの確保ということで、今もバリアフリー法の話も出てまいりましたが、重複する内容がありますが、ほかに何か付け加えておいたほうがいいような点などございましたら、御議論いただければと思いますが。(4)についてもよろしいでしょうか。
 では、(5)事務所則における便房等の必要数の考え方ということで、4点示されておりますが、こちらについて何か御意見がございましたらお願いできればと思います。明石委員、何かございますか。大丈夫ですか。あとは住徳委員も、富高委員も。
 これは大枠で書かれておりますが、事務局のほうで、もう少し確認しておきたいことがございましたら、女性用便所のこととか、カウントの仕方とか、そういったことについて何か確認しておいたほうがいいようなことはございますか。
○搆主任中央労働衛生専門官 こういう大枠のところから議論していますので、詳細はまだ、何ということは事務局としてございませんが、一応男女別でない場合についても、一定の数え方を事務局のほうで整理して考えておく必要があるということだと思います。また、少人数の所になりますと、必然的に男女別にならないということは、男性用小便所も別個に設けるほどではないということになってくる場合があると思いますが、こういった選択肢は、選択肢としてはそういったものも用意して、例外という考え方で資料を準備をしていけばよろしいでしょうか。
○高田座長 ありがとうございます。
○搆主任中央労働衛生専門官 それでは、多くの選択肢を用意する形で準備しておきたいと思います。
○高田座長 特に付加的に設置する、男女別としない、独立個室型の便所についても、カウントについては、特に皆様方から御意見はありますか。もし今、この場であるようでしたらお伺いしたいと思いますけれども。特によろしいでしょうか。ありがとうございます。
 資料3については、(1)から(5)までの見直しの方向性についての議論が終わりました。ありがとうございます。それでは、こちらの第2回、第4回検討会で進めてきた方向性については、この内容で整理をさせていただくということで、よろしくお願いいたします。
 続きまして、本日は事務局において、報告書骨子案を用意しているということですので、事務局から説明をお願いいたします。
○搆主任中央労働衛生専門官 資料4を御説明いたします。この検討会の報告書の骨子案です。まず大括りの所、1番は事務所衛生基準等の現状、2番の労働衛生上の課題の部分は、項目のみを挙げております。主に第1回目の議論を中心に、資料等を含めて整理することを考えております。衛生基準が定められてきた経緯、見直しの背景、法令の整備状況、これまで検討会で御紹介した実態調査などについても簡潔に触れていくこととしたいと思います。
 2番の課題についてですが、基本的には、女性労働者の増加、高年齢労働者の増加、障害を持つ労働者も働きやすくなっているかどうかは難しいところですが、働きやすくしていこうという流れになっているということ、事務所においても健康リスクは有害業務があるということではないにしても健康リスクはあるということで、こういった具体的なものが考えられます。これを防止するための基準ということです。それから、第1回目に御指摘いただきましたが、余りにも古いような表現が出てきて、さすがに見直しをしておいたほうがいい用語もあるということでした。このようなことをまとめようと考えています。
 3番目は、主な論点と議論のまとめです。これは1番と2番と比べて少し細かくなっていますが、ここの部分は論点ごとに、これまでの議論のまとめを記していきたいと思います。個々の検討においてまとめられたものがありますが、こちらを中心に整理していくことを考えています。(1)のトイレ設備というのは、先ほど確認いただいた資料3を基本的にはそのまま持ってきております。このようなものを骨子として、肉付けをして報告書の論点と議論のまとめということにしたいと思います。内容は資料3と同じですので、この部分の説明は省略させていただきます。
 3ページの(2)に移ります。更衣設備、休養のための設備については、「今後作成」と書いてありますが、本日議論いただいたところですので、そのまとめを含めて、これから記載いたします。
 (3)作業面の照度は、第3回の議論を踏まえて、第4回検討会でまとめております。第4回検討会の資料1から持ってきたものです。簡潔に説明しますと、照度の基準ができた当時、JISを参考に、3つの作業の種類に応じた照度を定めたものであるということです。2つ目として、衛生基準としての照度は眼精疲労であるとか、姿勢が悪くなるために起こる上肢障害などの健康障害を予防するために、全ての事務所に対して例外なく適用するものであるということで定められた衛生基準ではありますが、既に、参考としたJISは見直されて久しいということもあり、年齢構成も大分高いほうに変化しているといった状況がありまして、粗な作業であるといっても、さすがに70ルクスというのは、事務作業など各種の作業には適さないのではないかということで、今回見直しするという方向になっております。
 (4)の作業環境測定について説明します。こちらは、具体的には一酸化炭素・二酸化炭素の濃度についてです。今回の議論は、この濃度基準がどうあるべきかということではなくて、作業環境測定の義務付けが2か月以内ごとということになっています。これについて、どうかということについてです。
 2つ目にあるとおり、建築物衛生法で収集するデータの分析結果も踏まえますと、全体として二酸化炭素の濃度は高い状況にあり、環境としては余りよくない。3つ目ですが、自動制御の方式が導入されている所も多くなっています。確かに、これは換気に有効だというデータはありますが、適切に運転、運用されるかどうかということが正にポイントであるということでした。一酸化炭素については、事務所には発生源がほぼなくなってきているというご指摘がありましたが、何らかの状況で異常な濃度上昇が起こった場合、外部からの排ガスが流入しやすい構造となっていたり、臨時に暖房機具を持ち込むなど、想定外の事態で異常な濃度上昇が起きるという場合に、重篤な健康障害に直結するおそれがあるということです。二酸化炭素・一酸化炭素については、事務室内の空気環境を確認するための作業環境測定は必要だということでした。結論としては、今後も必要ということですが、こうした作業環境測定は電子機器を用いても容易に測定できるということになっていますが、厚生労働省の告示である作業環境測定基準を見る限りにおいては、そういった電子機器による測定が可能というところまでは明記されていないわけですので、何らかの形で、こういったものを使ってもいいということを明らかにしたほうがいいのではないかということがあります。ここまでが3の分類です。
 5ページの見直し方針について御説明いたします。こちらは、3の議論を踏まえて、事務所衛生基準をどのように見直すかを記すことになります。事務所衛生基準は、規則そのものにするか、あるいは規則の解釈として法令の運用を定めるというようなことがあろうかと思いますが、これらを含んだものです。流れに沿って定めたものですが、今回はあくまでポイントのみの記載にとどめております。この方向性がよろしいかどうかということを御審議いただきたいと思います。
 まず、トイレ設備(1)については、男女別での設置を原則、これが基本的な考え方である。仕切り壁型でない独立個室型の便所については、便所がどこからどこまでといったことがあるのではないか。便房数は労働者数に応じて決まっていますが、この基本的な考え方は変えるまでではない。つまり、現状、これらに従って設置している便所の数については、改めて見直すところまでではないのではないかということです。それから、独立個室型の便所については、男女別になっていないものがある。これは事務所衛生基準規則で示す男性用便所、女性用便所の便房の数での取扱いというのがありますが、これをどのように数えるかを示す必要があるということです。それから、トイレ設備の基準は、先ほどの話にもありましたとおり事務所で進めてきましたが、事務作業によりませんので、事業場全てについて同じ基準が適用されるべきであろうということです。(2)更衣設備、休養の設備については、本日の先ほどの議論を踏まえて、今後作成していく予定ですので、空欄です。
 (3)作業面の照度については、特に高年齢者を含めて、事務作業に従事する全ての労働者に対して、健康障害を防止するための視環境の確保という点で定めるものだと。前提として、視力を眼鏡等で矯正しておいた上で、その上で照度を適切に確保するということは、前提条件として述べておきたいと思います。現時点で具体的な指標を表にしております。精密な作業と一般的な作業、付随的な作業という区分は、現行の法令と少し言いぶりは変えていますが、例えば「付随的な作業」は、もともと「粗な作業」とされていて、70ルクスであったものが、今後は150ルクス以上と、1段階上げるということになろうかと思います。
 それから、「一般的な事務作業」は現行法令では「普通の作業」ですが、現行は150ルクスですが、300ルクス以上ということになります。なお、一般的な事務作業は、情報機器作業における労働衛生のためのガイドライン、昔はVDT作業と言っていたもので昭和60年から流れをくむものですが、その中で、「パソコン等を用いた事務作業は300ルクス以上」とありましたので、ここに合流する形になるということだろうと思います。
 また、「精密な作業」については、ここは難しいところですが、製図等の精密な作業についてはJISを参照して、事業場ごとにしっかりと定めるべきものだということが基本です。法令上は難しいので、どういうことになるかと言うと、議論においては、数字を示せないのではないか、示すべきではないかということでした。法令上、空欄になってしまうと難しいので、あえて入れますと、基準は一般的な事務作業と罰則が適用される基準としては、300ルクスを割り込むかどうかということになるのかなと思いまして、ここに記載しております。照度については、基本的に数字が見かけ上、倍になったりして驚かれる方がいるかもしれませんが、基本的にランクが1つアップするような感じのイメージになります。これは、これまでの議論で、実態に照らして現行の事務所で大幅な設備更新が必要になるようなところではないのかなということだと思います。
 (4)の作業環境測定についてです。こちらについては、一酸化炭素・二酸化炭素の濃度、含有率の測定ということですが、現行どおり2か月以内ごとの実施が必要であろうということです。対象は、現行も含めて中央管理方式の空気調和設備を設けている事務室ということです。建築物における衛生的環境の確保に関する法律に基づいて実施する空気環境の測定については、作業環境測定基準でいっている検知管だけではなく、実際の運用として、電子機器を含めた様々な方法が認められているという運用ですので、事務所衛生基準規則に関連する作業環境測定においても、事業場担当者が自主的に測定できるようにということで、作業環境測定基準においても、適合する一酸化炭素・二酸化炭素の濃度測定に使用可能な電子機器を明確化しておく。現行でも使えるものがあるわけですが、これも間違いなく大丈夫ですということは何らかの形で明らかかにすることが妥当であろうということです。
 (5)は環境の変化により、実態に合わない用語が出てきていますので、これらは法令改正のときに適宜見直すという方針になっています。
 1つ申し遅れましたが、作業面の照度については、ここの部分は事務作業に対応して、照度をどのようにということでしたので、事務作業以外のところは、例えば労働安全衛生規則に照度の規定がありますが、こちらは改正されるべきものではないと。個々の作業を調べていませんので、ここでの議論は、あくまでも事務作業について、照度がこのようにという議論であったと思いますので、方向性としては、ここの部分は事務所衛生基準規則関連のみということだろうと思います。説明は以上です。
○高田座長 このように報告書の骨子案ということで、1と2については背景や課題、3については今までの議論のまとめ、4に見直しの方向性について示されております。
 まず、1と2の現状と課題の所には項目だけが挙がっておりますが、何か追加しておいたほうがいいというようなことが、もしございましたら、項目をおっしゃっていただければと思います。吉武委員、お願いいたします。
○吉武委員 2番目の課題の所についてなのですが、ここはいろいろな変化が示されていて非常に分かりやすく、今回の必要性が分かっていいと思います。
 例えば、以前これを設置したときと比べて、大きく変わったものとして、事務所の作業が大きく変わっていますので、作業自体が変わったこととか、作業が変わったときに、その作業を行う上で必要だった機器とか、装置等、その周りにあるものが変わっているということもあると思います。
 もう一つは、特に今年のテレワークですが、働き方が大きく変わっている。昔は、例えばお昼休みは一律だったりするものがシフト制になったりとか、いろいろと変わっていて、それが事務所則にどれぐらい影響するかは分からないので、「必要であれば」でいいと思うのですが、変化したことという意味では、そういったものも大きく変わってきたことですので、もし必要があれば、そういう項目の追加も検討したほうがいいかなということで、コメントさせていただきました。
○高田座長 事務局から何かありますか。
○搆主任中央労働衛生専門官 御指摘ありがとうございました。心当たりがないところでもありますので、少し調べものをして準備をしたいと思います。ありがとうございます。
○高田座長 では、最後の「事務所や事務処理をめぐる環境の変化」というところを、もう少し具体的にということで、お願いできればと思います。
○搆主任中央労働衛生専門官 そのようにします。
○高田座長 明石委員、お願いします。
○明石委員 2番の「課題」の言葉の問題なのですが、一番上に「事務従事者に占める女性の割合が増加している」とありますが、事務従事者に占める女性の割合は増加していないのではないかと思うのですが、もともと事務従事者は女性が多かったので。
 それと、4つ目の2行目に、「事務用機器による傷害」というのがありますが、その下に「事務用機器による騒音障害」とありまして、これはあると思うのですが、「事務用機器による傷害」というのは、けがをしたりするという意味だと思うのですが、これは事務所則に関係ないのではないかと思うのと、この「傷害」の文字が違うのではないかと思います。
○高田座長 事務局からお願いします。
○搆主任中央労働衛生専門官 承知しました。「傷害」の所は、多くの者が安全という点で、手を切ったとか、そういうことだとすれば、そこは衛生基準ではないということですね。そのようにします。
 事務従事者の女性の割合については、得られそうな統計ということで取ってありまして、昭和の時代のものと比較できるものがこれぐらいしかなかったので、その数十年の幅を見ると増えているのですが、ここ10年とか、そういうことではないと思いますので、データを確認した上で、書きぶり等を直させていただきたいと思います。
○明石委員 社会進出が進みましたということですよね。
○搆主任中央労働衛生専門官 はい。統計も古いものを遡っていくと、得られなくなってしまったりして、うまく取れないものですから、このようなものになるのかなと思ったのですが、より良いものを考えてみたいと思います。
○高田座長 ほかにございますか。恐らく2の所は、データが入ってきて、また皆様方に御確認いただきながら、更に取り入れたほうがいいようなものとか、書きぶりなどを御指摘いただくほうがよろしいかと思いますので、そのような形で進めていただければと思います。
 3番については、今までのまとめということで書かれておりますので、この場で、この書きぶりで気になるようなところがありましたら、御指摘いただいて、後からでも気付きましたら事務局にお寄せいただく形でもよろしいでしょうか。この場で何かありますか。量が多いと思いますので、お気付きの点をお寄せいただければと思います。これを肉付けして増やしていくということだと思いますので、今ここに書かれているまとめの所で、抜けているものなどがありましたら、事務局にお知らせいただくような形で進めたいと思います。
 それで、問題になるのが、4番の事務所衛生基準の見直し方針ということで、ポイントが示されております。ここについて議論をしていきたいと思います。まず、(1)トイレ設備については、今までに御議論がありましたが、それを基にポイントとして書き出しているものとなります。こちらについて、何かありましたら御意見を頂戴したいと思います。質問でも構いませんが、何かございますか。
○明石委員 一番下の●の意味が分からないのですが、「トイレ設備の基準は、事務所に限らず事業場全てについて同等であるべき」とありますが、どういう意味なのでしょうか。
○高田座長 事務局、お願いします。
○搆主任中央労働衛生専門官 先ほどはごく簡潔に説明いたしましたが、トイレ設備については、照度などと違い、事務作業に特化して議論してきたものではないので、事務所以外についても同じなのではないかということです。つまり、事務所衛生基準規則をこのような観点で見直す際には、当然、労働安全衛生規則も同じ考え方であるとすれば、一緒に直すことになるのではないかということです。
○高田座長 資料3の最後に書かれている書きぶりは、「事務所に限らず、事業場一般に当てはまるものである」という書きぶりなのですが、そこと「同等であるべき」という書きぶりが気になるのではないかと思います。あくまでもポイントという形で、この用語になっているということなので、明石委員の趣旨を踏まえて書いていただくような形ということでよろしいでしょうか。明石委員から何かございますか。
○明石委員 意味は分かりましたが、そうであれば書き方を工夫していただければと思います。
○高田座長 事務局から何かございますか。ありがとうございます。ほかにございますか。住徳委員、お願いします。
○住徳委員 (5)その他の「環境の変化等により、実態に合わなくなった用語等については、適宜見直す」ということですが、以前、カードせん孔機がというような話が出てきたかと思ったのですが、そのほかにどういった用語があるのかと考えて、ちらっと見ていましたら、12条の騒音伝ぱの防止の所に「カードせん孔機」があって、タイプライターも出てくるのですが、おそらくこの条文というのは、カードせん孔機とタイプライターの騒音に関しての条になってきますと、カードせん孔機を見直したときに、この12条自体が辻褄の合わない条文になってしまうのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。
○搆主任中央労働衛生専門官 御指摘ありがとうございます。現時点で想定しているものは、第1回で委員から御指摘いただいた「カードせん孔機」は、第1条に書いてあるカードせん孔機です。それから、「かや」というのもありまして、蚊帳自体は存在するのでしょうけれども、事務所則にあえて入れても、人によってはインターネットで検索して、これは何だろうと調べるような次元になりますので、事務所衛生基準規則に例示するまでではないのかなということは考えています。
 そのときに留意しないといけないのは、現行の規制を安易にはずすことにならないようにということです。ご指摘の第1条は、法令の出だしで事務用機器の例示として適切なものをということですから、カードせん孔機でなく情報機器端末のほうがよいと思いますが、第12条の具体的な規制のところでは、カードせん孔機やタイプライターがあるところでは、依然として規制が適用される、一般的でないならそれ以外の大多数のところに影響はありませんが、使用実態のあるところでは引き続き規制されないといけません。
○高田座長 先に(5)の用語等のことについて話が出てきましたので、そこについて、ほかに、吉武委員からは何かございますか。
○吉武委員 「カードせん孔機は使っている所もあるので残す」というコメントでしょうか。残ってはいると思うのですが、ほとんど使われていないと思われることと、関連してコメントさせていただきますと、照度に関連するのですが、カードせん孔機というのは、基本的に発光体ではないものが多いので、これは反射物体なのです。ですので、一般にこれでよろしいのですが、一昨年私も関わって「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を更新させていただいたのですが、先ほどおっしゃったとおり、作業面は300ルクス以上で、そことの整合性が取れるようになるというのはいいと思うのですが、その条文の中には、画面上の照度の上限があり、取ろうかという話はあったのですが、「500ルクス以下」という表現があるのです。情報機器作業の場合は明るすぎると困るというような状況もあると申し上げたと思います。
 情報機器が事務作業として使われており、今回のまとめとしては、私はこれで十分にいいと思っているのですが、解説などで、情報機器作業についての考え方を説明することがすごく重要だと思っています。「製図などの作業の場合には、精密な作業においては更に高い照度を」とありまして、それはそのとおりなのです。紙で製図をする場合には高い照度が必要なのですが、今、製図を紙でやっている所はほとんどないのです。CADとか、基本的には画面を見てやっていますので、製図をやっているときに高い照度が必要と言われると、CADを使うときに高い照度が必要なのかと思われると、逆にCADの場合はそうではないのです。画面なので、明るすぎると逆に困るという場合が生じます。
 ここの表現自体には、私は全く異論がないのですが、そこの勘違いと言いますか、事務所での多くの作業が情報機器に移行している中で、実態に合わせた表現とか、理解のできるような表現とかで法令にしていただきたいと思いました。
○高田座長 貴重な御意見、ありがとうございます。事務局、何かございますか。
○搆主任中央労働衛生専門官 御指摘ありがとうございました。「精密な事務作業」について申し上げます。私も、この「製図等」を精密な作業として例示をすると難しい場面があることについては同感です。CADでは作業面は画面そのものですから、机上はペンを置いているぐらいで、文字はほとんど書かず、ペンのある場所が分かればよい程度ということになります。そういった意味で、精密な事務作業は、特に作業ごとに差異が大きく、法令での詳細規定にはなじみません。あらゆる作業を取り込めるよう、法令は簡潔にすべきですから、大鉈をふるってわかりやすくするよう検討します。
○高田座長 吉武委員のほうは、よろしいでしょうか。
○吉武委員 分かりました。まず、例示している部分、第1条のところとかは、多分、外してもいいかなと理解いたしました。最近のオフィスでは、機器がよくなったこともあり、騒音源として気にするものも少なくなっているかもしれませんので、その意味では第12条の規定からも例示を消せないかという気もしますが、もう少し検討してみます。
○高田座長 今回の検討会では、騒音、振動の防止についての議論をしてきませんでしたが、報告書に今後の課題とする旨をどこかに記載することが可能でしたら、そのようにすることでいかがでしょうか。
○搆主任中央労働衛生専門官 承知しました。報告書には、今後の課題であることを明記する方向で調整いたします。
○高田座長 その方向性でよろしくお願いいたします。今、照度のお話も出てきましたけれども、照度のほうについて、ほかに御意見がございましたら。明石委員、お願いいたします。
○明石委員 内容というよりは、表現ぶりで、前のページにもあるのですが、(3)作業面の照度の2番目の●に、「必要に応じて、視力を眼鏡等で矯正した上で」と書いてあるのですが、これは当然、個々の労働者にやってもらわないといけない話なので、これだけを読むと、何か事業者がというような感じを受けるので、「必要に応じて、個々の労働者に視力を眼鏡等での矯正を促した上で」とか、そういう表現にしていただければと思います。
○高田座長 こちらは、主旨としては、そのとおりでよろしいでしょうか。
○搆主任中央労働衛生専門官 はい、承知いたしました。
○高田座長 ほかに、ございますか。作業の区分についても、吉武委員のほうから、このような形でと、あとは、例示については、まだ検討していただく余地があるというところでしたけれども、よろしいでしょうか。
 そうしましたら、(4)作業環境測定になりますが、こちらについて、追加で御意見等はございますでしょうか。こちらについては、本日、御専門でいらっしゃっているのは齋藤委員になりますけれども。齋藤委員、何か、特によろしいでしょうか。欠席の委員の先生からは、何か御指摘等を頂いておりますか。
○搆主任中央労働衛生専門官 特にありませんでした。今後ともよく確認しておくようにします。
○高田座長 そのほか、ございますか。作業環境測定については、明石委員もよろしいでしょうか。これで以上になりますけれども、いままでのところで、何か御指摘漏れ等がありましたら頂ければと思いますけれども、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
 そうしましたら、本日の議論を踏まえまして、次回に向けて、事務局で必要な修正等の準備をお願いいたします。本日、予定している議題は以上ですが、その他、追加で御発言等はございますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、本日の議論はここまでといたします。次回は、本日審議しました報告書骨子案をもとに、事務局にて報告書(案)の作成をお願いいたします。更衣設備・休養室の取扱いについても取扱いの方向性が整理されておりますので、こちらを含めた案文等にしていただけますようお願いいたします。それでは、進行を事務局にお返しいたします。
○矢吹有害作業環境指導係長 次回、第6回の検討会につきましては、改めて日時を御連絡いたします。以上をもちまして、第5回事務所衛生基準のあり方に関する検討会を終了いたします。ありがとうございました。