2021年1月6日 第5回国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループ 議事要旨

政策統括官付参事官付統計企画調整室

日時

令和3年1月6日(水)

場所

書面開催

出席者

構成員(五十音順、敬称略、○:主査)

臼井 恵美子、大久保 一郎、小塩 隆士、○加藤 久和、小山 泰代 、津谷 典子、樋田 勉

構成員以外の関係者

西郷 浩(早稲田大学政治経済学術院教授)
土屋 隆裕(横浜市立大学データサイエンス学部教授)
大岩 洋(千葉県健康福祉部健康福祉指導課企画情報班班長)
川村 七海(埼玉県保健医療部保健医療政策課保健所・衛生研究所・県立大学担当主事)

議題

1.国民生活基礎調査におけるオンライン調査の導入について
2.国民生活基礎調査の推計方法の見直しについて
3.その他

議事

 

議事1:国民生活基礎調査におけるオンライン調査の導入について(資料1)
 
(1)「令和4(2022)年調査を一部の調査地区で実施する」という事務局案について
 
事務局案についてご了承いただいた。意見等は以下のとおり
 
(加藤主査)
 事務局案に賛成である。国勢調査においても当初、東京都を対象にオンライン調査を導入したことから、国民生活基礎調査についてもオンライン実施可能な地域を先行的に選んで試行してみることは必要だと考える。
 
(大久保委員)
 令和4年のオンライン調査を一部の地域にて実施することに関して、賛成である。大規模調査からの実施なので、予期せぬトラブル等に遭遇した時、すべての調査地区で実施した場合、その対応に多くの困難を伴う可能性がある。そのようなリスクを避ける必要がある。
 
(小山委員)
 すでに令和2年は新型コロナ感染症の影響で調査が中止となっており、この間の変化は把握できていない。また、令和2年以降は、新型コロナ感染症による変化もあらわれてくると考えられる。もしも令和3年調査も中止となった場合は特に、トレンド上の変化と、調査・集計方法の変更による変化と、特異な社会情勢による変化を切り分けて検討することがより難しくなると考えられる。こうした点も鑑みると、全国で一斉にではなく、一部地域でオンライン調査を実施することは現実的といえる。
 
(津谷委員)
 オンライン調査を導入するに当たり、令和4年調査では、全調査地区を対象とするのではなく、一部の調査地区から先行実施することに賛成する。理想を言えば、試験調査を行ったうえでオンライン調査の導入を試みるべきであると思うが、そのための予算が確保できず、また時間的制約もあるため試験調査の実施は不可能であることは理解する。令和4年調査を一部の調査地区から本当に先行的に実施することは、ある意味で試験調査を形を変えて実施することであると考えることもでき、いずれにしてもオンライン調査を慎重に導入することは適切であると思う。
 
(土屋横浜市立大学データサイエンス学部教授)
 オンライン調査の導入に当たっては、オンライン調査票の設計や調査の具体的実施方法の検討に資するため、あらかじめ試験調査を実施すべきと思うが、試験調査の実施が困難であれば、全面的に導入するのではなく、一部の地区から先行的に実施するという方法は合理的と考える。
 
(大岩千葉県健康福祉部健康福祉指導課企画情報班班長)
 国民生活基礎調査の特殊性を考慮すると、一部の調査地区からの先行実施に賛成である。
 
(川村埼玉県保健医療部保健医療政策課保健所・衛生研究所・県立大学担当主事)
 事務局案のとおり実施する場合、オンライン調査を導入した地区の調査対象世帯、調査員に対してオンライン調査導入に関するアンケートを実施してはどうか。
 ⇒事務局からのコメント
 オンライン調査における課題発見に資するものと考えられるため、アンケートの実施については検討したい。
 
 
・オンライン調査を導入する調査地区の選定について
 
(大岩千葉県健康福祉部健康福祉指導課企画情報班班長)
 1頁の5~6行目「そこで、令和4(2022)年調査については、全ての調査地区を対象に行うのではなく、一部の調査地区において実施してはどうか。」の文言について、調査地区は国が指定するが、一部の調査地区において実施というのは、オンライン調査がある都道府県とそうでない都道府県があるということか。それとも、各都道府県に最低一つの調査地区にオンライン調査があるということか。
 ⇒事務局からのコメント
 同一県内において、オンライン調査を導入する調査地区と、導入しない調査地区が混在した場合、地方公共団体の事務負担が増大することとなるため、導入する調査地区は都道府県単位にしたいと考えている。例えば、A県は調査対象地区すべてで従来の調査方法に加え、オンライン調査も行い、B県は従来の調査方法のみで調査を実施することを想定している。
 
 
(川村埼玉県保健医療部保健医療政策課保健所・衛生研究所・県立大学担当主事)
 事務局案の場合、オンライン調査を先行導入する調査地区は、誰がどのように選定するのか。また、先行導入する地区の割合はどの程度を予定しているのか。
 ⇒事務局からのコメント
 オンライン調査を先行導入する調査地区の選定方法や、その割合については今後検討したい。
 
 
(2)「調査方法を同時配布方式により実施する」という事務局案について
 
事務局案についてご了承いただいた。意見等は以下のとおり
 
(加藤主査)
 同時配布方式に賛成である。先行方式の課題等については国勢調査の経験等をヒアリングしておくことも有意義かと考える。
 
(臼井委員)
 同時配布方式の方が、調査員による配布、事務負担の軽減につながるなど利点も多いと思う。一方、同一人物が紙媒体とオンラインで回答してしまい、1個人に対して2つの回答が生じる可能性などの問題もある。どのような基準によって、どの回答を有効回答と決めるのか、いずれかの時点において検討することが必要になってくるかと思う。
 ⇒事務局からのコメント
 1個人に対して2つの回答が生じたケースの取扱いについては、他の調査における同様のケースの取扱いなども参考としつつ、今後検討したい。
 
 
(大久保委員)
 同時配布方式に賛成である。過去の国勢調査の経験を踏まえての判断であり適切である。さらに調査する側の負担がオンライン回答先行方式より軽減されるという長所があることも重要な要素である。
 
(小山委員)
 先行事例(国勢調査)での経緯から考えて、同時配布方式とすることでよいと思う。調査員の訪問回数が減る等、回答者の負担軽減にもつながると考えられる。
 
(津谷委員)
 オンライン調査の導入方法として、「同時配布方式」を採ることを了承する。ただ、その理由(論点)として、事務局案では、令和2年国勢調査でも同時配布方式が採用されたことが述べられているが、本調査では世帯票と健康票と介護票がまず6月に調査され、次いで翌7月に所得票と貯蓄票が調査されるというスケジュール(これら2つのグループの調査実施時期が僅か1か月しか離れていないこと)による時間的な余裕のなさ(制約)を第一義的な理由として前面に押し出した方がよいのではないか。国勢調査は(全数調査であるが)その調査の構造は比較的シンプルである一方、国民生活基礎調査は5つの調査票により構成される複雑な調査であり、必ずしも同等に論じられるべきではないのではないか。令和2年国勢調査でも同時配布方式が採られたことに言及してもよいとは思うが、これ(だけ)を前面に押し出すのではなく、国民生活基礎調査独自の理由・事情により重点をおくべきではないかと思う。
 ⇒事務局からのコメント
 ご指摘を踏まえ、同時配布方式を選択する理由については、(1)国民生活基礎調査独自の事情(時間的制約の問題)及び(2)令和2年国勢調査において同時配布方式に変更した経緯(調査員や地方公共団体の事務負担の軽減)のとおりと整理したい。
 
 
(土屋横浜市立大学データサイエンス学部教授)
 実査に当たっての混乱を避けるためには、同時配布方式が現実的と考える。ただし、同時配布方式は回収率が低下するという研究もあることから、回収状況については随時、注意深くモニタリングしていく必要があると思う。
 ⇒事務局からのコメント
 ご指摘のとおり、回収状況についてはモニタリングするとともに、督促や郵送回収などの対策も講じながら回収率の維持・向上を図っていきたい。
 
 
(大岩千葉県健康福祉部健康福祉指導課企画情報班班長)
 国勢調査でのオンライン調査の経緯を考慮すると、同時配布方式での実施に賛成である。
 
(川村埼玉県保健医療部保健医療政策課保健所・衛生研究所・県立大学担当主事)
 オンライン調査の導入に際しては、調査員等の業務負担の軽減を図るべきと考える。よって、比較的負担が少ないと思われる同時配布方式による実施に賛成する。
 
 
議事2:国民生活基礎調査の推計方法の見直しについて(資料2、3、4)
 
(1)第4回WGでの委員からの御質問に対する回答について(資料2)
 
第4回WGでの委員からの御質問に対する回答について、意見等は以下のとおり
 
(小塩委員)
 とても説得的な説明である。詳細な検討に感謝する。
 
(2)ブートストラップ法による1世帯当たり平均所得金額の検証について(資料3)
 
ブートストラップ法による1世帯当たり平均所得金額の検証について、意見等は以下のとおり
 
・検証結果のポイントである継続性について
 
(小塩委員)
 継続性の意味が今一つわかりにくい。真の姿が分からないのだから、平均値が低くなることが悪いとは言えないと思う。
 たしかに、いただいた資料だけでは、新推計の優劣はつけにくいように思う。
 ⇒事務局からのコメント
 継続性の検証結果については、単純に今までに公表した結果と比べる際には現行の推計方法による結果と比較することが最も適切であろうということを意図して記載したものである。新推計2又は3の結果が現行推計の結果より低くなることを問題にしているわけではなく、仮に、新推計2又は3の結果が現行推計の結果より高くなった場合でも同様のことが言えるかと思う。
 
 
・平成21年所得の新推計2におけるかい離について
 
(小塩委員)
 ブートストラップの平均所得は、元の標本の平均に近くなるのが普通だが、平成21年だけ新推計2のかい離率が大きく、少し気になる。データに何か構造的な問題があるのか。あるいは、ブートストラップの回数が少なすぎるのか。
(樋田委員)
 新推計2の平成21年所得の推定値において、ブートストラップ平均所得と元の標本平均所得のかい離が大きい原因はなにか。この部分の補正ができるのであれば、新推計2は有力な候補になり得るのかと思う。
(西郷早稲田大学政治経済学術院教授)
 平成21年所得の新推計2について、ブートストラップ標本の平均値(540.1万円)と、元の標本の平均所得(533.2万円)とに大きな差があるように見える。同じページのほかの推計については、両者の差がほとんどない。推定方法に偏りがなければ、両者は等しくなるはずである。シミュレーションの反復回数が比較的少ない(200回)ことに起因する偶然的なかい離(実際には偏りがない)であるのかどうか、確認が必要と感じる。
 ⇒事務局からのコメント
 平成21年所得の新推計2において、ブートストラップ標本の平均所得と、元の標本の平均所得とでかい離が生じた要因に、200回という反復回数の少なさが影響していることも考えられるため、次回WGにおいて反復回数を増やして再計算した平均所得等の結果をお示ししたい。
 
 
(3)推計方法の見直しに関するまとめ(案)について(資料4)
 
推計方法の見直しに関するまとめ(案)について、意見等は以下のとおり
 
(加藤主査)
 これまで新推計について様々な議論が行われてきたが、現行推計と比べて顕著に望ましい結果が得られるわけではないことから、また過去の実績値の改定等に関して誤解を招きかねないことから、当面、現行推計の方法を継続することはやむを得ないと考える。その場合、改めて統計委員会と今後の方針に関して協議をお願いしていく必要があると考える。
 
(大久保委員)
 基本的に賛成である。令和4年調査を意識すると、オンラインの導入、コロナ禍(心身の健康状態や経済状況等の影響)での調査といった、例年とは異なる結果がでることが予想される。そのような中で、推計方法までも同時に変更することは、どの要因が結果にどのように影響したかを解明することを困難にさせる。また推計方法の変更に関しては、多くの数値が政策判断をする際の指標として活用されているので、継続性の重要性も考慮しつつ、明らかに従前より優る方法でない限り、もう少し時間をかけて検討しても良いのではと思う。
 
(小山委員)
 令和2年以降については、新型コロナウイルスという大きな社会情勢の変化と、令和2年調査の中止という時系列の途切れが生じており、今後の調査結果にあらわれる変化の解釈に注意を要する。推計方法の変更とその時期については、そういった観点からも十分に検討されたい。
 
・新推計の採用について
 
(津谷委員)
 「所得票」と「貯蓄票」については、新推計2と新推計3の2通りの方法を用いた検証結果、さらにブートストラップ法による検証結果からも、2通りの新推計の現行推計に対する優位性を確認することができないため、新たな推計方法を採用するべき根拠は弱いという結論に賛成する。したがって、「所得票」と「貯蓄票」については、当面、現行の推計方式を継続することが妥当であろうと思う。
 (各個票に「調整係数×修正拡大乗数」をウエイトとして付与する)新たな推計方法を用いることにより、「世帯票」については国勢調査とのかい離が縮小することが確認されたこと、そして世帯票と同様の推計方法を用いた推計の結果、「健康票」と「介護票」についても現行の推計結果と大きな差が生じないことが確認されたことから、新たな推計方法を用いてこれら3つの調査票の推計を行うことは必要かつ適切であると思う。ただ時系列の継続性を担保するため、当面、現行の推計も継続して行い、(現行方式と新方式の推計方法それぞれについての具体的な説明を添えて)2種類の推計結果を示してはどうか。
(樋田委員)
 所得票、貯蓄票については、新推計を採用する積極的な根拠がないことについて理解した。所得票、貯蓄票の推計方法の改善については、今後も検討を進めていただきたいと思う。また、次回の調査は感染症の影響後の調査ということもあるので、世帯票等の推計方法の変更は次々回以降の調査で導入するか、参考表にとどめてはどうか。
 ⇒事務局からのコメント
 令和4年調査については、オンライン調査の導入に加え、新型コロナウイルス感染症による社会情勢の変化等が調査結果に影響を与えるものと考えられるため、世帯票、健康票及び介護票の推計方法の見直しについては、採用する時期を慎重に判断する必要があると考えている。公表にあたっては統計ユーザーに混乱をきたさぬよう検討したい。

照会先

政策統括官付参事官付統計企画調整室

電話:03-5253-1111(内線7373)