第11回 解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会(議事録)

日時

令和3年1月20日(水)10:00~11:50

場所

中央合同庁舎第5号館16階 労働基準局第一会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者(五十音順)

(かき)(うち)(しゅう)(すけ) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

鹿()()()()() 慶應義塾大学法務研究科教授

(かん)()()()() 東京大学大学院法学政治学研究科准教授

(なか)(くぼ)(ひろ)() 一橋大学大学院法学研究科教授

(やま)(かわ)(りゅう)(いち) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

議題

解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する議論の整理

議事


○山川座長 では、ただいまより第11回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を開催いたします。
委員の皆様方におかれましては、本日も御多忙のところ御参加いただきまして、大変ありがとうございます。
本日の検討会につきましては、新型コロナウイルス感染症の影響によりまして緊急事態宣言が発令されておりますので、Zoomによるオンライン開催になります。御理解をいただければと思います。
今確認をしたところですけれども、こちらの音声、画像等がもしこの後も届かないというようなことがありましたら、チャット機能等で御連絡をいただければ対応したいと思います。
本日は小西康之委員が御欠席で、ほかの委員の先生方はオンラインで参加いただいております。垣内秀介委員は10時55分頃退席される予定とのことです。
吉永労働基準局長は、別途公務が終了次第、参加される予定です。
法務省からオブザーバーとして法務省民事局の笹井朋昭参事官にもオンラインで参加いただく予定です。11時頃からということです。
それでは、議題に入ります前に、オンライン開催でありますので、操作方法について事務局から説明をお願いします。
○武田労働関係法課課長補佐 本日はZoomによるオンライン会議となっておりまして、座長以外はオンラインでの御参加となっておりますので、簡単に操作方法について御説明させていただきます。
事前にお送りさせていただいております「会議の開催・参加方法について」を御参照ください。現在、画面には、厚生労働省内で対面方式により御参加いただいております会議室の映像及びオンラインでの会議に御参加いただいている皆様が映っているかと思いますが、まずはその下のマイクのアイコンがオフになっていることを御確認ください。本日、検討会の進行中は委員の皆様のマイクをオフとさせていただきますが、御発言をされる際には、サービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックし、座長の許可があった後に、マイクをオンにしてから御発言いただきますようお願いいたします。アイコンの赤い斜線がなくなれば、マイクがオンになっております。
また、本日は会議資料を御用意しております。事務局から資料を御説明する際には、画面上に資料を表示いたします。
そして、会議の進行中、通信トラブルで接続が途切れてしまった場合や音声が聞こえなくなった場合等、トラブルがございましたら、お知らせいたしております担当宛てに電話連絡をいただきますようお願いいたします。
なお、通信遮断等が復旧しない場合であっても、座長の御判断により会議を進めさせていただく場合がございますので、あらかじめ御了承いただくようお願いいたします。
まずは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。いろいろお手数をおかけします。
それでは、事務局から資料の確認をお願いします。
○武田労働関係法課課長補佐 それでは、資料の御確認をお願いいたします。委員の皆様方におかれましては、あらかじめ送付させていただいた資料を御確認いただけますと幸いです。
今回御用意した資料といたしましては資料を4つ組み合わせた1部の資料をお渡ししているかと思います。
資料1といたしまして「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会における主な議論の整理と本日の論点(令和3年1月20日版)」というものをお渡ししております。
資料2としまして「労働契約解消金の性質について(令和3年1月20日版)」をお渡ししております。
資料3として「労働契約解消金の内容・考慮要素等についての整理」という資料をお渡ししております。
最後に資料4としまして「有期労働契約の期間途中の解雇・雇止めについて」という資料をお渡ししております。
以上でございます。
○山川座長 ありがとうございました。
それでは、本日の議題に入ります。議題は「解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する議論の整理」ということです。
それでは、本日の進め方ですけれども、まず事務局から資料1について説明をいただいて、本日議論すべき論点を確認したいと思います。
それでは、資料1につきまして、事務局から説明をお願いします。
○武田労働関係法課課長補佐 お渡ししている資料の1ページ目の資料1を御覧ください。ただいま画面の共有で画面にも表示させていただいております。
資料1は、本検討会における主な議論の整理と本日の論点を記載したものでございます。地の文につきましては基本的には前回までと変わりませんので、読み上げは省略させていただきます。
本日の論点としては、労働契約解消金の定義等についてと有期労働契約の場合の本制度の在り方についての大きく2点について御議論いただきたく思っております。
ページ番号は前後いたしますが、まずは3ページ目を御覧ください。四角囲みの2つ目に、論点1としまして、労働契約解消金に関する論点を記載しております。前回も労働契約解消金の定義等について御議論いただいたところですが、まだ議論が尽くされていない点があったかと思いますので、労働契約解消金の定義、補償の内容及び考慮要素等の関係性について、労働者の意思による辞職との相違、不法行為による損害賠償債権等の他の債権との相違・関係性を踏まえ、どのように考えるかとの論点を掲げております。
次に、1ページ目にお戻りいただきますと、本日の2つ目の論点と関連して「権利(形成権)の行使要件・形成原因」の欄に、論点2-1として、有期労働契約の雇止め・期間途中の解雇の場合はどのような要件とすべきか。具体的には、労働契約解消金の支払時まで労働者としての地位が継続している必要があると解すべきか、地位継続が必要と解する場合、権利の行使要件・形成原因としてどのように定めるべきかという論点を掲げており、それと関連する論点にはなりますが、今度は2ページ目の「権利の消滅要件等」の欄に、論点2-2として、有期労働契約の雇止めや期間途中の解雇は無効であるが、その後の契約が労働契約解消金支払時までに期間満了により終了した場合をどのように考えるかとの論点を掲げております。
さらに3ページ目の2の欄です。「労働契約解消金の性質等」というところに論点2-3として、定義、補償の内容及び考慮要素について、無期労働契約と有期労働契約と同様に考えてよいかという論点を掲げております。
以上の資料1に基づき、本日は御議論いただければと思います。
○山川座長 ありがとうございました。
本日は、労働契約解消金の性質等に関する論点1についての資料と、有期労働契約の場合の論点2-1から2-3に関する資料がそれぞれ分かれているようですし、議論の内容も別のものになるかと思いますので、進め方としては、まず事務局に論点1に関する資料であります資料2と資料3について説明してもらって議論いただいた後、次に論点2-1から2-3に関する資料であります資料4について説明していただいて、この論点2-1から2-3について議論をするという流れで進めさせていただきたいと考えております。
それでは、まず論点1に関する資料の説明を事務局からお願いいたします。
○武田労働関係法課課長補佐 それでは、資料2と資料3の内容について御説明いたします。
まずは資料全体の5ページ目の資料2「労働契約解消金の性質について(1月20日版)」を御覧ください。
前回の同様の資料では、解消金のイメージをパターン1からパターン4という形で作成しておりましたが、前回の御議論では、解消金債権とバックペイ債権は別債権であり、解消金の中にバックペイが入っているという構成は取りづらいのではとのことでしたので、旧パターン3は削除しまして、旧パターン4であった労働契約解消金債権とバックペイ債権はあくまで別債権ではあるが、労働契約解消金だけでなく、バックペイまで支払って初めて労働契約が終了するという法的効果が生じるとのパターンを、パターン3として記載しております。
なお、こちらのバックペイについては、解消金訴訟と併合提起され、判決で支払いを命じられた分とするという御議論でしたので、こちらは引き続き※で記載しておりまして、さらにその下の※では、判決の主文では一般的にバックペイであることが明記されるわけではないが、理由中ではバックペイであることが明示されるため、労働契約終了の効果を有するバックペイの範囲を併合提起されたものに限れば、範囲は明確となるとの注意書きを記載させていただきました。
また、前回からの修正点といたしましては、「パターン3(旧パターン4)」の「デメリット」の欄を修正しております。こちらはもともと、理論的説明が必要である旨を記載していたのですけれども、前回の御議論を踏まえまして、本来労働契約の終了という効果を持たないバックペイまで支払わなければ労働契約が終了しないとするには、政策的な理由づけが必要とまとめさせていただきました。
続きまして、全体の資料の6ページ目、資料3の御説明に移りたいと思います。
こちらは前回の委員の皆様の御議論を踏まえ、前回の資料を大幅に修正したものです。今回の資料でも各定義に補償の考え方や考慮要素が対応するような形で記載しておりますが、御議論の土台として分かりやすいよう、典型的な例や考えやすい例を記載しているものですので、他の考え方を取り得ないとするものではありません。
先回まで解消金を労働者の地位解消の対価とするA案と、労働者の地位をめぐる紛争解決の対価とするB案の2案を掲げておりましたところ、A案を労働者の地位の対価、純粋な金銭評価と考えるという案も出されましたので、A案をA-①とA-②に分け、A-①はより純化した金銭評価として解消金を捉えた場合として記載をしております。
まず「補償の内容」の欄について御説明いたしますと、こちらについては各案共通となっておりまして、①として現在の地位に反映されている解雇前の就労実績等の金銭的補償、②としまして契約終了後の将来得べかりし賃金等の金銭的補償の2つを内容として挙げております。前回は補償の内容として、これらに加えまして、解雇に伴う精神的・名誉的損失といったものも表の中で掲げておりましたが、前回の御議論で解消金については不法行為債権とは別債権と考えるべきである等の御議論がありましたので、そちらの点を踏まえまして、こちらの表中ではなく、表外の注としてそちらの内容を記載させていただくことにいたしました。こちらについては後ほど御説明いたします。
次に「補償の考え方(算定方法)」と「考慮要素」の欄を併せて御説明いたします。A-①案では「補償の考え方」として、現在の地位の価値を反映した「給与額」や「勤続年数」と、地位継続の可能性を反映した「年齢」、こちらは将来の就労期間を示すといった意味での「年齢」や「勤続年数」といった考慮要素により定型的に算定し得るとさせていただいており、その結果、「考慮要素」としては給与額と勤続年数と年齢が出てくるといった表となっております。ここで、勤続年数につきましては、長ければ長いほど補償額が上がるという考え方ではなく、短期の場合とそれ以外とで違いを設けるというのも実態に即しているのではないかとの御議論もありましたので、その旨を※で記載をしております。
次にA-②案では、労働者の地位を解消するという点に着目いたしまして、「補償の考え方」として、地位の金銭的補償だけでなく、「合理的な再就職期間」や再就職の困難性を反映した「年齢」等の考慮要素により地位解消に対する補償を得る必要性を加味し、ある程度定型的に金額を調整可能であると記載をしております。その結果として、「考慮要素」としてA-①案のものに加え、再就職の困難性を図る考慮要素としての年齢や合理的な再就職期間といったものが考慮され得ると考えられます。
最後にB案では、紛争解決の点も「補償の考え方」に入ってまいりますので、地位に関連する要素だけではなく、紛争解決の観点も含めれば「解雇に係る労働者側の事情」や「解雇の不当性」といった考慮要素により紛争に寄与した程度を加味し、個別的に金額調整が可能であるという旨を記載しております。したがって、「考慮要素」としましてはA-①案、A-②案に加えまして、解雇に係る労働者側の事情や解雇の不当性といった要素も考慮できるということになろうかと思います。
そして、A案、B案のメリット・デメリットも前回の議論の中で御議論いただきましたので、今回新たに資料の中に記載をさせていただいております。なお、先ほど御説明いたしましたように、この補償の考え方と考慮要素は、A案を取った場合に必ずこうなる、B案を取ったら必ずこうなるというものではございませんので、こちらのメリット・デメリットは定義自体にひもづいたものというよりは補償の考え方にひもづいたものとして御覧いただければと思います。
まずA案のほう、こちらは客観的な給与額、勤続年数、年齢、また、合理的な再就職期間といった考慮要素でもってある程度定型的に算定した場合のメリットとして記載しておりまして、そのメリットとしましては、定型的な考慮要素で金額が決まるため労使双方にとって金額の予見可能性が高く、早期解決の可能性が高まるという点と、また、解雇に係る事情を考慮しませんので、不法行為による精神的損害についての損害賠償請求権との関係が問題とならないとの点を記載しております。
続いて、デメリットとしましては、当該解雇の個別の事情を評価できず、個別の事案によっては当事者にとって納得が得にくい金額となる可能性があるという点を掲げております。その下ですけれども、こちらは当事者にとって納得が得にくい結果となった場合、解雇をめぐる他の紛争が別途起きる可能性があるのではないかということを括弧書きでデメリットとして書かせていただきました。
そして、B案ですが、メリットとしては、解雇に関する事情を考慮要素としているため、当該解雇の個別の事情を考慮できるという点を挙げております。
他方、デメリットとしましては、解雇に係る労働者側の事情といった評価的な考慮要素が増えるため、労使双方の予見可能性が低く、また、評価的な部分の争いにより紛争の長期化を招くおそれがあるとの点を記載しております。さらに、解雇の不当性を考慮要素とする場合には、労使の公平性は図れるものの、これまでの御議論を踏まえますと、解雇無効の判断と二重評価になるおそれがあることや、解雇の不当性を解消金の増額事由とする場合、つまり、解雇の不当性が高い場合に10だった解消金を11にすることも可能とするという場合には、その解雇が不当であるという評価による増額部分が一体何なのかといった観点から、不法行為による損害賠償についての損害賠償請求権との関係が問題になり得るという点をデメリットとして挙げさせていただいています。
最後に表外の※に関してですが、こちらを読み上げますと「解雇に係る紛争の一回的解決のため、地位の価値と必ずしも関係ない、解雇に伴う精神的・名誉的損失の金銭的補償を補償の内容に含めることや、政策的な観点からその他の事情による調整を行うことも考え得るが、解雇に伴う精神的・名誉的損失の金銭的補償を補償の内容に含める場合、解雇の不当性や解雇に係る労働者側の事情が考慮要素となるため、上記B欄記載のメリット・デメリットがあることに加え、不法行為による精神的損害についての損害賠償請求権との関係が問題になるとのデメリットがある」との記載をさせていただいております。
まず、資料2と資料3の御説明は以上になります。
○山川座長 ありがとうございました。
それでは、論点1の議論に入りたいと思います。御発言される場合には「手を挙げる」ボタンをクリックしていただいて、こちらで指名させていただいた後に御発言をお願いいたします。
論点1に関してはこれまでの議論でかなり詰められてきているかと思いますけれども、資料2のほうはどのような金銭を支払えば契約が終了するのかという論点が主たるものであるかと思います。資料3は表題どおり解消金の内容・考慮要素ということでありますが、まず、資料2につきまして、何か御質問、御意見等はございますでしょうか。
垣内委員、お願いします。
○垣内委員 垣内です。どうもありがとうございます。
資料2ですけれども、前回4つあったパターンを3つに集約されたということで、問題点がより明確に整理されて分かりやすくなったのかなという印象を持っております。
その上で、改めてこうして拝見いたしますと、今、座長からの御紹介でもありましたけれども、基本的な問題点は結局労働契約の終了の効果がどのような金銭の支払いによって生ずるのかというところにあると思われまして、そうなりますと、これは整理の表現の仕方ですので、今のままでも特段問題はないかと思われますけれども、パターン2とパターン3というのはそういう意味では基本的に同一の考え方で、ただ、そういう意味ではパターン3が一番メインとなるのだと思われますけれども、パターン2というのはパターン3と同様の効果を、法技術として別の構成をする可能性を指摘するものということかと思われますので、両者まとめた上でパターン2のような構成も考えられるみたいな整理の仕方ということも、一つの整理としては考えられるかと思いました。別にこだわるものではありませんので、感想のみです。
以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
今の点、今後の資料作成のときに検討していただければと思います。
ほかに何かございますでしょうか。
ございませんようでしたら、私からなのですけれども、パターン3の場合で併合提起をしてというようなことが書いてありますが、併合提起をしない場合にも解消金の支払いを命ずることはできるという資料の理解でよろしいのでしょうか。
○武田労働関係法課課長補佐 そのような理解で間違いありません。
○山川座長 その場合、バックペイ等を別途で請求した場合には、そちらの支払いと併せて契約が終了するということになるのでしょうか。契約終了の効果はどのようなことになりますか。
○武田労働関係法課課長補佐 現状記載している案で行きますと、労働者が解消金の請求とバックペイの請求を一つの裁判の中で行った場合には、その判決で認められた解消金とバックペイをいずれも支払わなければ労働契約は終了しないということになりますけれども、労働者がバックペイについては請求をせずに解消金だけ請求した場合には、その判決で認められた解消金の金額のみを支払えば労働契約は終了するということになるとの案として記載をしております。
○山川座長 分かりました。
併合しない場合の趣旨がどうなるかについてもより明確になったものと思います。
垣内先生、どうぞよろしくお願いします。
○垣内委員 今の点につきまして、大変細かいところですけれども、資料の説明は事務局からいただいたとおりと私も理解をしておりました。資料2のパターン2やパターン3の一番上の枠の第1の※のところが今御説明のあった部分に関わるところかと思いますけれども、ここに記載された内容はそのとおりだと理解しておりますが、今御議論を伺っておりまして、当初から併合提起された場合はもちろん全て支払った場合に終了という規律を想定されているということかと思いますけれども、何か別訴で提起をしたけれども後で併合された場合というものも理屈としては考えられるかと思われまして、その場合でも一つの手続で判決がされるということであればパターン3のような規律を及ぼすことは考えられるのかなとも考えられまして、その辺りも細かい点ですけれども、検討事項と申しますか、問題になり得る点かと感じました。
以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
その辺り、もしこういう案を取る場合には、政策的に言うと、例えば条文の書き方をもし条文化する場合にどうするかとか、そういった点も検討の必要が出てくるかもしれないと思いました。
ほかに御質問、御意見等はありますでしょうか。
よろしいですか。かなりこれまで議論をいただいているところですので、今回かなり修正をいたしましたのが、資料3になります。資料3につきまして、御質問、御意見をお願いいたします。
垣内委員、お願いします。
○垣内委員 ありがとうございます。垣内です。
こちらの資料につきましても、前回から大分また整理が一段階進みまして、問題点等が分かりやすくなったような印象を受けております。
その上で、幾つか感想を申し上げさせていただきたいと思っておりまして、まずA-①とA-②の関係について、先ほど御説明がありましたように、A-①というのは「定義」のところの括弧内の考え方、労働者の地位そのものの対価という考え方に親和的なものとして、また、A-②は、その括弧の上の部分、解消する対価というところまで少し膨らみを持たせた定義と親和的なものとして位置づけられるのかなと思っております。
その上で、そこから出てくる考慮要素の違いといたしまして、ここでも説明されておりますように、A-①とA-②を比べますと、②のほうは合理的な再就職期間等が入っているところが一つ重要な違いと承ったのですけれども、そうした何を考慮するかという問題が一つあるとともに、そういった個々の要素についてどれだけ一律に当てはめるのか、あるいは個別的なその当該労働者に固有の事情をどこまで考慮するのかがもう一つ軸となっているように思われます。
現在、A-①というのは3行目の枠の「補償の考え方(算定方法)」というところの末尾の表現で「定型的に算定」とあって、A-②は「ある程度定型的に」、Bになりますと「個別的に」ということで、だんだん個別性が高まるという形で整理がされていて、これはこれで一つの整理かとは思います。ただ、他方でA-①の例えば「補償の考え方」のところの説明に「地位継続の可能性を反映した」云々というところがあるのですけれども、その地位継続の可能性というのは、まさに労働者の地位を金銭的に評価する際に利いてくる重要な要素なのだろうと思いますけれども、これについてどの程度個別的に考えるのか。地位の継続というのは人によって可能性は異なるのではないかといったことを考えると、これも個別的に調整することは論理としてはあり得る話かと思われます。それぞれの要素について、そうした形で定型的に算定するのか、それとも個別的な事情を加味して算定するのかということが、それぞれに問題になるところがあるのかと思われます。
したがいまして、最終的な整理として、あまり複雑なものになりますとかえって分かりにくいと思いますので、今回の整理はこれはこれで分かりやすいかと感じましたけれども、理屈の問題としては何を要素として考慮するのかということと、どの程度個別的に考慮するのかということがそれぞれの要素、A-①ですと地位継続の可能性といったところについてそれが考えられますし、A-②ですと合理的な再就職期間等々についてそうしたことが考えられると。Bの場合には個別的な問題が大きくなるということは、これは記載のとおりかなと感じました。
それから、A-①とA-②の関係につきまして、A-①が労働者の地位の対価そのものの金銭的評価だと考えたといたしますと、例えば「考慮要素」で給与額というものが挙がっていて、これは重要な要素になるのだろうと思いますけれども、これをどういった形で実際の金額に反映させるのかということを考えました際に、一つの割り切った考え方としましては、まさに地位継続の可能性というのが定年まで継続するのだろうというようなことを、無期の雇用の場合ということですけれども、出発点として、その人が40歳で60歳が定年ということであれば20年ということでこの給与額を掛けていって、中間利息を控除するであるとか、費用を控除するであるといったような、現在逸失利益の関係でやっているような算定方法を導入していくことが一つ考えられると思われます。
他方で、給与額について、残りの勤続年数全部ということではなくて10年を上限とするとか、5年なのか、あるいは半年ということもあり得るのかもしれませんけれども、定型的な係数を掛けて算出するということもあり得るのかなと思われますが、その辺りがどういう具体的な算定方法を考えるのかによって、その上の考え方にも微妙に影響してくるのかという感じがいたします。給与額について比較的小さい係数、例えば半年や1年といったものを考えるときには、それは地位継続の可能性というよりはA-②の合理的な再就職期間を考慮してこの程度が相当だという考え方のほうが説明としてなじみやすい面が出てくるのかなという感じもしまして、そういう意味ではA-②で挙げられている合理的な再就職期間というのは、どちらかといえば金額を限定していく方向に作用する場合が多いような考慮要素になってくるのかなという印象を持ったところです。
それから、Bの内容に関しまして、今回の資料のような整理で基本的によろしいのかと考えておりまして、若干補足的なコメントですけれども、Bの案の特徴として、紛争に寄与した程度という観点からの個別的な事情の考慮ということが挙げられておりまして、「考慮要素」の最後のところで「解雇に係る労働者側の事情」というものが挙げられており、その下に(解雇の不当性)というものが添え書きされているということなのですけれども、これは私は記載のとおりで、紛争に寄与した程度を考慮するという場合に、解雇に至る経過の中で労働者側の事情はどの程度考慮すべきものがあったのかが一方で問題となると思われますけれども、それを減額の割合のような形で考慮しようとする場合には、自然にそれと裏表の関係で、解雇に不当性がどの程度求められるのかも減額をどの程度するかという考慮の中では当然考慮されることになってくるのかとも思われるところですので、そういった形でこの点を減額の事情とする場合には、どの程度の不当性があったのかも裏表の関係で、どの程度の割合で労働者側に原因があり、どの程度の割合で使用者側に原因があるのかという形で考慮されていくことになるのかと考えております。
それとは別にデメリットのところで、最後のポツですけれども、解雇の不当性を解消金の増額の考慮要素とする場合には、不法行為との関係が問題になるという指摘があり、これもそのとおりかと思われまして、減額の中で両者の割合を考えるということではなくて、不当性を独自の増額事由と考える場合には、これは慰謝料等との関係が問題となってくるのかと思われますので、独自の増額の考慮要素とする場合に、このデメリットが妥当することがあるのかと理解をしております。逆に申しますと、そういった独自の増額事由として構成するという考え方は唯一の選択肢ということではありませんで、減額の中で総合的に考慮することもあり得る選択肢なのかと考えているところです。
長くなりまして恐縮ですけれども、以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
おおむね3点ほどの御指摘かと思います。最初はA案についても調整の可能性はあり得るのではないかというお話で、これは恐らく先ほど武田補佐からも説明がありましたけれども、このような考え方を取ればこうなりやすいとか、説明をつけやすいということですので、恐らく調整というのはAからBまで別途考慮の可能なものであると私としては考えております。逆に言えばBのほうでもある程度定型化することは可能だということかと思いますが、武田補佐、そういう理解でよろしいですね。
○武田労働関係法課課長補佐 はい。
○山川座長 ありがとうございます。
2番目はAの特に②を取った場合の給与額等をどう考えるか。その辺りの問題点の御指摘が大きかったかと思います。この点は議論を委員の先生方にしていただきたいと思うところでもありまして、特に「補償の内容」の①、②とこの点は結びついているのかと思います。A-①とA-②に共通する、Bもそうですけれども、これまでの議論の中で出てきたかと思っておりますが、特に①の中身でしょうか。②は恐らく垣内委員もおっしゃったように、不法行為による損害賠償請求をする場合の逸失利益とかなり共通性があるということかと思いますけれども、①を考えて、それが考慮要素としての給与額にどのように関係を持つことになるのかといった点が御指摘されたところかと思います。
3番目はBに関するところでありまして、解雇に係る労働者側の事情、減額事由とした場合には逆に、相殺というのはおかしいかもしれませんけれども、減額を抑制するような方向で解雇の不当性というものは考慮は可能ではないかと、そのような御指摘かと思いましたが、この点も御議論をいただければと思います。
ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。
垣内先生、お願いします。
○垣内委員 私ばかり発言させていただいて申し訳ありませんけれども、もう10分ちょっとで抜けさせていただきますので、先ほど座長から御指摘のあった問題点で「補償の内容」の①、②をどう考えるかという点につきまして、特に①についてどういうものとして理解するのがよいのかというところは大変悩ましいといいますか、難しい問題かと感じております。これは考慮要素の具体的なものとの関係で申しますと、特に勤続年数との関係が①は大きいのかと思っておりまして、過去どれぐらい勤続してきたのかということがこの解消金の額にどういう形で反映されるのかが一つ問題なわけですけれども、それをある程度反映させるとした場合に①のような説明が考えられるのではないかというのが、一つ①の説明の意義の重要な部分かと考えております。
そう考えたとしても、①の場合は何なのかというのはよく分からないところも若干あるのですけれども、全ては説明できていないかもしれませんが、部分的には経済的にはなかなか評価しづらいような、しかし、労働者としての地位が持っている何か非財産的な価値といったものがあって、それは長い間安定してその地位にあったというときには、相対的にはより保護に値するようなものになるのだというようなことが言えるのだとすると、そういったものが①で酌み取られることはあるいはあるのかという感じもいたします。本人の人生設計の一部としてのキャリアというか、そういったものですとか、そこでの様々な必ずしも金銭的な利益という形には解消できないような人間関係とか、そういった利益というのでしょうか。これは必ずしも従来不法行為の損害賠償のような形で保護されてきたものではないのかもしれませんけれども、解消金という制度を新たに設けるに際して、そうしたものも保護すべきであり、理由なく失われてはならないのではないかという観念があり得るとすれば、そうしたものを盛り込む、その受皿という位置づけがあるのかということを考えておりましたところです。
以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
ちょうどその点をお伺いしようかと思っていたところです。
ほかの先生方、いかがでしょうか。
鹿野先生、お願いします。
○鹿野委員 鹿野です。ありがとうございます。
今の点に関しては、私も同じように考えております。②のほうが、逸失利益的な要素で、額としては大きくなるような気がしているのですが、それでは尽くされないような非財産的なものがあるとすると、それもこの①で入れましょうというようなことなのかと思ったところです。
ついでに申しますと、ここでの解消金というのは、損害賠償とは異なるということだとしても、使用者が無効な解雇をしたという場合に、当該労働者が自らの意思によってその解消金を得て労働契約を解消、終了させるというものですよね。ですから、少なくとも労働者の立場から言うと、解消金の意味というか、何でそれをもらって辞めるのかというと、無効な解雇によって生ずるところの損失がある程度補償されるということにあるのではないかと思います。そうしますと、今回のA-①とA-②というこの2つで比べると、補償の必要性を加味するというA-②のほうが、今、私が申した捉え方には即していて、これが定型的に判断されるという限りにおいては②のほうがよいように思います。
Bがどうかということなのですが、Bの場合にこの解雇の不当性を増額事由にすることについては、反対といいましょうか、増額事由でさらに追加するというのはむしろ不法行為による損害賠償請求で別立てでやったほうがいいのではないかという気がしております。一方で、解雇としては確かに無効なのだけれども、労働者側にもかなり帰責性がある、こういう言い方がいいかどうか分かりませんけれども、労働者側にも原因があったというときに、この何らかの算定式で出されたものを全て100%払わせるのかというと、若干その帰責性の分を減額事由としてカウントする可能性はあるのかと思っております。
ただし、これもここにも書いてありますように、あまりにも個別的な事情でもって個別的に判断するということになると、紛争の早期解決ということのメリットが失われてしまうことになりますので、その兼ね合いかと思います。ただ、一般の不法行為などのときでも、損害額の算定においては積み上げ方式で細かくやりますけれども、過失相殺について、それと同様に細かくやっているかというと、そうでもありません。それは置いておくとしても、ある程度の定型性を持って判断され得るのであれば、Bのような形で解雇に係る労働者側の事情も考慮するということも考えられるのではないか。それが両当事者にとって公平になるのではないかという気がしております。
とりあえず、以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
垣内先生も鹿野先生も、いずれも①について具体的な内容が考えられるだろうという御指摘かと思います。私の個人的な感じとしてもそのように思っておりまして、議論をしておりますと、退職和解のときの和解金額の決定のようなお話とちょっと近いのかという感じがありまして、その場合は不法行為に基づく逸失利益の賠償額よりも普通は高くなるものですが、そこは何か地位確認の代わりに解消金を払う場合と不法行為の損害賠償の場合とは違いがあるのかという感じがしたところです。金銭的な点でも恐らくは例えば退職金や昇給、昇格などは、その決定がなされないと通常は権利として具体化しないですけれども、しかし、従前の勤続を考えて、ずっとこれから継続雇用されていった場合には退職金が支払われ、あるいは昇格、昇給もするだろうと。不法行為ではそこまで請求することはできませんので、そういう財産的な損害についても、具体的なものとは金額も含め言えないけれども、解消金の際には考慮するとか、そんなことは言えるのかなと個人的には思ったところです。
ほかは何かございますでしょうか。
神吉先生、お願いします。
○神吉委員 ありがとうございます。
私もまだこれといった考え方が固まっているわけではないのですけれども、①については、キャリアをつなげてきたことによる何らかの非財産的な利益を反映させる入れ物ないし器として必要かと思いつつ、他方で、それまで続いてきた安定雇用と、賃金が払われてきたということで既に尽くされているとも考えられなくはないと思うのです。
①の内容を突き詰めて考えていくときに、ややその外側の位置づけの話にはなるのですけれども、現在のように解消金によって労働契約を解消させるものだと考えていけば、その内容としては、当然この手放す地位の対価であって、その地位との釣合いが問題になるという流れになるでしょう。そうなってくると、鹿野先生も先ほど言われたように損害賠償の逸失利益にもかなり近くなっていって、損害賠償の予定を肯定していくことに近くなるとは思います。
そうなったときに、まず地位を、その価値を定型的に規定する限界はどうしてもあるだろうし、さらに政策的には、定型性があることが予測可能性を高めて紛争解決に資するという側面と同時に、年齢や勤続年数、賃金で定形的に解消金が決まると、それは必然的に一般的な人事管理における事前の考慮要素になってしまいます。いかにそれが労働者側の選択によるといっても、仮に権利濫用的な無効な解雇をしてしまったとしても最大でこれだけ払えばこの人は解雇できるといった相場を形成してしまう可能性もありまます。
それから、本来的に無効な解雇とそれに対する補償を考えたときに、補償さえなされれば起こって望ましい出来事ではないということを考えれば、地位の補償と、地位を解消した場合の解消金が、内在的にどうしても釣合いを追求しなければいけない性質のものでもないと思うのです。本質的には、非対称であってもおかしくない。このことから考えると、対価として地位の中身を突き詰めていくという方法以外に、紛争を予防するような政策的な重みづけをするという考え方もありそうで、私はBの考え方をもうちょっと膨らませるというのもあり得る選択肢だと思っています。そうなっていくと、個別性が高まっていって、紛争解決は複雑になるかもしれません。それは裁判所としても非常に悩ましいし、負荷のかかっていく問題かもしれませんが、そういった問題の解決を考えたときに、司法救済だけではなくて、事前の労使による紛争予防や紛争解決へのインセンティブを持たせる仕組みも同時に考えていってもいいのかと考えています。
①の内容そのものというわけではないのですけれども、私の現在の考えは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
定型化することの言わば問題点への対応という点と、それから、そもそも①、②だけで尽きるのかどうかと。Bだともうちょっと広がる可能性もあるというお話も含まれていたかと思います。
あとは和解のときに、解雇無効であることを前提にして和解をするときのプロセスでは、神吉先生のおっしゃったようなことも考慮した上で金額が決まってくるのかという、実証できるようなことではないのですけれども、経験からするとそんな感じがしたところです。ありがとうございます。
ほかに何かございますでしょうか。
どうぞ。
○中窪委員
この資料3につきましては、前回よりも一層整理されて分かりやすくなったと思います。ただ、私は前回もちょっと言いましたが、「定義」についてはAとBとこのように分けるのがいいのか、むしろ地位を解消することによって紛争を解決する対価というように、共通にまとめることもできると思いますので、その辺がある意味連続ではないかと改めて思ったところです。
というのも、「補償の内容」の欄は、結局、A-①、A-②、B、全て①、②は同じ内容に見えるのですが、理解として、それぞれの中身は同じで、そこにどのような要素が入ってくるのかを考える、ということでよろしいのでしょうか。
○山川座長 では、資料の点はいかがでしょうか。
○武田労働関係法課課長補佐 これまでの御議論を踏まえまして、今回作成いたしました資料では「補償の内容」としてはいずれも共通で、「考慮要素」として考慮できる要素であるとか、その考慮要素がなぜ考慮要素になるのか、どう考えられるのかというところに違いが出てくるという御議論として理解をして資料を作成しております。
○中窪委員 分かりました。ありがとうございます。
そういうことで、結局どういう要素をどこまで入れるかということですが、Bの場合には解雇の不当性といいますか、労働者側の事情まで考慮することが一番大きな違いになると思います。Bであっても、基本の部分は定型的に計算し、その上でいわば調整をするかどうかということですから、Aとの連続性はあると思うのですけれども、そういう個別的な事情の判断が入ってくるという点で、ちょっと違うといえば確かに違うと思います。
その場合、先ほど鹿野委員がおっしゃったように、私もここで増額するというのは若干違和感といいますか、難しいのではないかという気がします。解雇が無効になるわけですから、基本的に一定のところには達していて、その中で、しかし、これはもうどうやったって使用者が100%悪いという場合から、かなり微妙なところまでありますので、そこをどこまで減らすかという調整になるのではないでしょうか。
まあ、試験の採点などをしていますと、どれも合格とするにしても、全て100点にするかというと、そこは違うだろうということで、100、90、80、70、60と、例えば10点単位で段階的につけることが考えられます。裁判官にとって負担にはなるかと思いますけれども、このような形であれば、やってやれないことはないと思います。それをやるかやらないかという点でBはAと違うのだという区別であれば、確かに理解可能だという気がいたします。
A-①とA-②の区別は、要素として年齢と合理的な再就職期間というものを入れるかどうかですが、特に後者はふんわりしていて、どう評価するかは難しいですね。従来的な日本的な雇用であれば年功賃金で、給与額そのものの中にもうそれらがかなりの程度入っていたと思うのですけれども、そうではない雇用関係のところにもこの解消金制度が適用されるとしますと、そういう部分を補うために、この年齢とか再就職期間とかで、いわば少し色をつけるような要素として考えるのかと理解いたしました。
ということで、まとまりがなくて申し訳ありませんが、上のほうの「補償の内容」ぐらいまではある意味共通のところがあって、そこの中で何を具体的に調整するかという点の違いかと私は理解しましたということです。
○山川座長 ありがとうございました。
恐らく私も重要なのは「補償の考え方」と「考慮要素」で、それによって多分2番目の「補償の内容」も違ってきて、定型化できるかどうかという点も含めて考えると、それによってまたAとBも相対的なものになり得る。そこは先ほど武田補佐もおっしゃっていたように、整理の結果として、取りあえずこういう表になっているということかと思います。
ほかにこの資料3についての御意見はいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは、論点1についてはここまでとしまして、これまであまり議論が詰められていなかったと思われます、論点2に移りたいと思います。
事務局から論点2-1から2-3に関する資料の説明をお願いいたします。
○武田労働関係法課課長補佐 それでは、資料の7ページ目と8ページ目の資料4「有期労働契約の期間途中の解雇・雇止めについて」という資料について御説明させていただきます。
資料4の1つ目、7ページ目の資料は、関係法令の定めと裁判例の傾向を御紹介する資料となっております。まずは労働契約法17条(契約期間中の解雇)に関する条文をこちらに挙げております。17条では第1項として「使用者は、期間の定めのある労働契約(括弧内略)について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない」との定めがされております。
2項は省略いたします。
続いて(有期労働契約の更新等)に関する条文として、同法19条を挙げております。こちらは本文の部分で「有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの契約期間が満了する日までの間に労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす」ということが規定されておりまして、その1号として「当該有期労働契約が過去に反復して更新されたことがあるものであって、その契約期間の満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了されることが、期間の定めのない労働契約を締結している労働者に解雇の意思表示をすることにより当該期間の定めのない労働契約を終了させることと社会通念上同視できると認められること」ということで、実質無期契約と呼ばれるような場合ですけれども、それについて規定があります。
また、2号におきましては「当該労働者において当該有期労働契約の契約期間の満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められること」ということで、こちらは合理的な期待がある場合とよく言われますけれども、その内容について定められております。
下段に行きますと、こちらは雇止めに関する裁判例の傾向として、平成12年9月に厚生労働省で作成しました「有期労働契約の反復更新に関する調査研究会報告」を参考に作成をいたしました。裁判例におきましては、業務の客観的内容、契約上の地位の性格、当事者の主観的態様、更新の手続・実態、他の労働者の更新状況、その他有期労働契約を締結した経緯や勤続年数・年齢等の上限の設定等を判断要素として、以下の類型に当たるか否かを判断し、その上で、現在19条になりますけれども、権利濫用法理を適用するかを判断していると分析をされております。
こちら、4つのタイプに分かれると分析されておりまして、まず①としましては「純粋有期契約タイプ」ということで、こちらは単純に有期契約というタイプになりますので、期間満了後も雇用関係が継続するものと期待することに合理性は認められないもの、つまり労働契約法19条の適用はなく、期間満了により終了するタイプということになります。
続きまして、②の「実質無期契約タイプ」ですけれども、こちらは労働契約法19条1号に該当するタイプでして、期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態に至っている契約であると認められたものです。こちらは引き続き更新されるということになります。
次に「期待保護(反復更新)タイプ」と④の「期待保護(継続特約)タイプ」としましては、現在労働契約法19条2号において規定されているタイプになります。③のタイプにつきましては、相当程度の契約の反復継続等の実態により、労働者に雇用継続への合理的な期待が認められるもの、また、④はそのような反復更新の事実がある場合でなくとも、特別の事情がない限り契約を更新する旨の合意の存在を認定できるなど、雇用継続への合理的期待が、当初の契約締結時等から生じていると認められるものとして分類をされておるところです。
そのような条文の在り方やタイプ別などを意識しまして、次のページに行っていただきますと、こちらが「有期労働契約の期間途中の解雇・雇止めが無効になる場合の労働者の地位の状況について」ということで、図を作成させていただきました。こちらは労働者の地位が解雇ないし雇止めが無効もしくは権利濫用に当たるといった場合にどうなっていくのかということを図式的に表したものです。
まず、文章部分を読み上げさせていただきますと、無期労働契約の場合は、解雇が無効であればその後は労働契約が継続することとなりますが、有期労働契約の場合は、期間途中の解雇や雇止めが権利濫用に当たる場合であっても、民法上の原則によれば、その契約または更新後の契約は、期間満了により一旦は終了し、その後はさらに労働契約が更新されなければ引き続いてその先の労働者としての地位がなくなってしまうという相違点があるということを、まず一般的な問題点として指摘させていただいております。
それについて概念的に示したものが下の図となっておりまして、まず一番左上【無期労働契約の解雇の場合】というものを記載しております。労働者の地位を青色の矢印で示しておりまして、時間軸が横につながっているとお考えいただきますと、右側に向かって続いていくという図となっております。こちらで解雇が途中でされた場合に、この解雇が無効になった場合には、無期契約ですので、労働者の地位は引き続き存続するのが原則ということになります。したがって、例えば裁判になっておりました場合には、判決時、さらに今回の制度が導入された場合、解消金の支払時まで労働者としての地位は引き続き存続するということになろうかと思います。
次に、右側に行っていただいて【①有期労働契約の雇止め(労働契約法19条1号)の場合】を御覧ください。こちらは労働者としての地位は雇止めの時点で1回期間満了を迎えまして、雇止めが無効になりますと、その先は一旦更新されるということにはなります。ただ、1つ目の※で記載させていただいているように、有効性が争われている雇止めが権利濫用に当たったとしても、判決までに更新後の契約の契約期間が満了していた場合には、その後も更新を繰り返したと言える状況がなければ判決時や解消金支払時に労働契約が継続しているとは言えないというところが、無期契約とは異なるところです。
ただ、2つ目の※ですけれども、この場合におきましては、実質的に無期労働契約と同視できる場合に当たりますので、更新を繰り返したと言える場合が多く、無期労働契約と同等の継続期間が期待できるケースが多いと考えられるということで、雇止めが一旦権利濫用に当たり更新が認められたという場合には、その後、判決までの期間に期間満了、また解消金支払時までに期間満了を迎えていたとしても、引き続き地位が継続できる可能性が極めて高いと思いますので、実線の矢印で地位が続くという図を作成しております。
次に、その下に行っていただいて【②有期労働契約の雇止め(労働契約法19条2号の場合)】です。こちらにつきましても、1つ目の※の問題状況は①と一緒でして、有効性が争われている雇止めが権利濫用に当たったとしても、判決までに更新後の契約の契約期間が満了していた場合、その後も更新を繰り返したと言える状況がなければ判決時や解消金支払時に労働契約が継続しているとは言えないという点を挙げております。
さらに、ここから先2つ目の※が①と少し異なっておりまして、こちらは更新時に合理的な期待があるためにその更新が認められるという場合になりますので、①に比べますと、実質無期と言うほどの継続性はないというものになるかとは思われます。※の内容としまして、現在の裁判の実務上は、更新が否定されるような特段の事情がない限り、有効性が争われている雇止めの際と同じ更新の合理的期待が、再度の期間満了時においても存在すると判断されることが多いとされております。ただ、その後の個別の事情により合理的期待は減殺され得るとされておりますので、今回の図におきましては、1回目の雇止めが権利濫用に当たるとして更新が認められた先の労働者の地位については実線の矢印で記載をし、その後、一旦期間満了をその後迎えた後の矢印につきましては、合理的な期待が減殺され得る場合もあることを考慮しまして、点線で記載をしております。ただ、矢印の色としましては同じ色で記載をしております。判決後にも解消金支払時までに期間満了を迎える可能性もありますので、そこにおいても点線の矢印で引き続き地位を記載しておるところです。
さらに②の場合ですけれども、これはまた別の問題といたしまして、更新後に通算勤続年数が5年を超える場合には、無期転換ルールの適用の可能性も出てくるということを指摘させていただいております。
最後に、左側に行っていただきまして、下段の左側【③有期労働契約の途中解雇(労働契約法17条)の場合】という図も記載をしております。こちらは期間途中の解雇の場合ですと、期間途中の解雇が無効であったとしても、その後の契約期間満了時に労働契約法19条の要件に該当しない限り、更新は起こらないということになります。さらに、その後も判決時まで更新を繰り返したと言える状況がなければ、判決時や解消金支払時に労働者の地位が続いているとは言えないということになろうかと思います。それを踏まえまして、図といたしましては、途中解雇が無効であった場合には、期間満了までは労働者としての地位が実線で確実に続くという図にしておりますけれども、その後の期間満了におきましては、こちらでさらに労働契約法19条の要件を満たすということがなければ、その後更新が認められて地位が続いていくということにはなりませんので、矢印については点線で、また薄い色で労働者としての地位を記載させていただいております。
括弧内は、令和元年11月7日の最高裁判決ですけれども、こちらについては、有期労働契約を締結していた労働者が解雇の無効を主張して労働契約上の地位の確認等を求める訴訟において、当該解雇が無効であるとの判断をするのみで、当該契約の契約期間が満了した事実をしんしゃくせず、当該契約期間の満了により当該契約の満了の効果が発生するか否かを判断することなく、労働契約上の地位の確認請求等を認容した原審の判断には、判断遺脱の違法があるとして差し戻したという事件がありましたので、関連する判例として御紹介をしております。
資料の説明は以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
それでは、論点2-1から2-3の議論に入りたいと思います。なかなか難しい問題になりますけれども、これまであまり議論が出ておりませんでしたので、特に資料4の2枚目については、いろいろ具体的に検討をしていただいたところです。何か御質問、御意見がありましたら、よろしくお願いいたします。
中窪委員、お願いします。
○中窪委員 なかなか難しいところですが、一つには、雇止めについて、確かに実質無期の場合と合理的な期待の保護という形で、労働契約法上も2つのタイプとして定められて区別があるのですけれども、少なくとも更新に当たって解雇権濫用法理が類推されるという点においては、どちらも同じといえます。それでいいのかという議論はあるにしても、少なくとも現在の判例では、合理的期待だからといって当然にそこが弱くなるとは思えないのです。もしちゃんと客観的に合理的な理由に基づいて雇止めがなされなければ、結局そのままずっと判決まで更新がなされていって、地位確認がなされるという点は同じです。したがいまして、資料4の2ページ目の①と②で、②のほうが点々になっているというのが、イメージとしては分かるのですけれども、そんなに明確に区別していいのかなというのが、若干気になるところです。
例えば最初から最長5年と決めてあったとしますと、これは合理的期待の一番先が止まっているわけですから、その場合の期間満了は、最初は実線であったとしても、その先、これから先には行かないという形の区別として出てくると思います。けれども、このように最初から点々になるのは、まあ、実質無期とは違うタイプですよという趣旨で書かれるのはいいのですが、ちょっと注意が必要かと思いました。ですから、そのときに解消金の制度について、ここで両者を区別するのか、あるいは金額を少し変えるのかとか、そういう政策的な議論は当然あり得ますけれども、今の雇止め法理としてそこがどれだけ明確に違うのかは疑問だというのが、一点です。
それから、③の左下のほうの図、17条に基づいて期間途中の解雇が無効になった場合も、期間が満了した時点では、雇止め法理の問題となり、そこでどちらかの類型に当たって契約終了という効果が否定されれば更新されるけれども、そこをちゃんと確認しないといけないですよ、というのは当然だと思います。そのときの判決として、ここでは令和元年のものが出ておりますが、もう一つ、福原学園事件という最高裁の平成28年12月1日のものがあります。これは1年契約が3年間となった時にちゃんと能力が認められた人については無期にするという制度の下で、原審がそこをがきちんと判断せずにそのまま無期の地位を認めたというのはおかしいとされたものです。そちらも参考になるのではと思いましたというが、もう一点になります。
○山川座長 ありがとうございました。
判決の情報も教えていただきまして、ありがとうございます。
第1点目は、恐らく私も合理的期待のある場合と実質無期の場合でやや相対的な部分はあろうかとは思っております。一応イメージとして2つの類型に合わせるとこのようになるということかと思いますけれども、ほかの委員の方々、いかがでしょうか。
恐らくは解雇と同様に、そもそも解雇の扱いとして解消金というものを・・・。
鹿野委員、お願いします。
○鹿野委員 ありがとうございます。
座長に先に言っていただいたほうがよかったのかもしれませんけれども、質問ないし意見を申し上げたいと思います。まず、論点2のところは有期を問題としていますが、これは有期において、訴えを提起したりしても、途中で期待できる労働期間が終了してしまった場合にどうするのかというのが中心的な問題かと思います。そうであれば、無期の場合でも、例えば定年前に不当な解雇が行われて、だけれども、訴訟等でずっと争っている間に定年年齢を迎えてしまったという場合と整合的に考えなければいけないのではないかという気もしております。もちろん違いはあります。とくに先ほど御説明がありましたように、有期の場合には、どこまでの雇用継続が期待できるのかということがそれぞれ違うことがあり得るということかもしれません。けれども、基本的にはもっと雇ってもらえるはずだったのにその前に不当に解雇されたという場合の問題ですから、整合的に考えなければいけないのではないかと思ったのが一つです。
もう一つ、これは質問になるかもしれませんけれども、もし雇用がいずれにしても途中で終わっていたというときには狭い意味での解消金がどうなるのか、もう終了しているのだから解消金の支払いによって終了するということにはならないのではないかというのが問題意識としてあると思います。ただ、もう一つ、バックペイの支払いについて併合提起していたとすると、バックペイについては、もちろんそのしかるべき雇用が継続していたと思われる時期までについてのバックペイということになりますが、それは請求が認容されるということになるわけですね。これが確認です。
もう一つついでに言いますと、今言ったこととも関連するのですけれども、解消金の支払いによる労働契約の終了ということにはならないとしても、先ほど資料3のA-①、A-②、Bというものが出てきていた表が6ページにありましたが、そこの「補償の内容」の中の①の部分は果たして全く評価されなくていいのかという疑問が生じます。②は言わば逸失利益的なものなので、もう途中であなたの労働契約はいずれにしても終了していたでしょうというときには問題にならないと思うのです。けれども、①については、その中にどういう要素を入れるのかということにも関わるかもしれませんが、中身次第では、それまで否定していいのかということになる可能性もあるかと思いました。解消はもう問題にならないということだけで全て打ち切っていいのかどうかについては気になるところです。
以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
先ほど言いかけた、御議論をお願いしようかと思っていたところとかなりかぶっておりますので、ちょうどよかったと思っておりますけれども、御質問がありまして、バックペイの取扱いで、これは現在の判例等でどうなっているかということも関係があるかと思います。雇止めが許されないとされた場合のバックペイの取扱いを特に変えるものではないということで、何かございますか。
○武田労働関係法課課長補佐 現状、事務局としては現在の有期労働契約の場合の地位の継続性について図にしたという限度でありまして、どのような制度にするかについてはこれから御議論いただいてということにはなりますので、その点について、まだ事務局として意見があるわけではありませんけれども、これまでの無期契約の場合の議論を踏まえますと、バックペイについては特に現状を変えるものではないという御議論だったかと思いますので、有期の場合に特に無期と違って考える必要があるということでなければ、バックペイについては現状を変えるものではないのであろうということで理解をしております。
○山川座長 多少補足しますと、判決などでもちょうど②のところに書いてあることでもあるのですけれども、判決時までどころか判決が確定するときまでバックペイを有期の雇止めの場合であっても普通は認めておりまして、理屈からすると毎回期間が満了するごとに19条を適用しているということになりそうなのですけれども、そこは※にありますように、合理的期待がその後に期間が満了したときも継続しているであろう。そういう処理を、これは裁判官の書かれたものでということでしたか、②の※の2番目ですね。そのような説明を確かしているので、その点は解雇と似たようなものですが、ただ、仕組みからすると更新を毎回しているということを前提にした説明にならざるを得ない。それが現状で、恐らくそれは変わらないのかと思いますけれども、武田補佐、文献等も含めてそういうことでよろしいですか。
○武田労働関係法課課長補佐 文献はいろいろ読ませていただいたので、今これといって御指摘することは難しいのですけれども、実務上は1回目の雇止めが権利濫用に当たるのであれば、その後も合理的期待が続くと判断されていると記載されているものが多かったので、そのように記載をしております。
○山川座長 ありがとうございました。
鹿野先生、御質問の点はよろしいでしょうか。
○鹿野委員 ありがとうございます。
○山川座長 ありがとうございます。
ほかにも定年等による期間満了との関係は私も御議論いただこうかと思った点です。恐らく、もしこの制度を解雇について導入するとしますと、雇止めについても同じように扱うべきかという割と大きな政策的問題と、2番目に、御指摘いただいた期間満了でそもそも契約は終了するのだということとの関係をどう考えるか。これは恐らく技術的な問題で、例えば判決でもし終了の主文も入れるとするとどういうことになるのかというような、法制的な関係も2番目の問題としては含んでいるかと思います。
3番目が補償の内容の問題で、これは定型化をするとすると、期間の定めのある場合というのはどのように変わってくるかという論点になってくるのかと思っております。
補償の内容をどう考えるかという点も別のお話として出てくる。3点ぐらいの御指摘をいただいたかと思います。
ほかの委員の方々、いかがでしょうか。
神吉先生、お願いします。
○神吉委員 私は、本検討会の対象が無効の解雇の場合の救済であるなら、有期の期間途中であっても、解雇であれば論理的にそれに対する救済を排除するのは難しいと思います。また、実質無期の場合も、基本的に期間の定めが利いていないということなので、対象にはなると思います。ただ、条文の定め方によるのでしょうけれども、解消金というものが、手放す地位の対価として支払われるものだということになりますと、救済のときに解消する地位がないと、それは権利根拠事実が欠けるとの構成になるのですかね。そうだとすると、場合によっては棄却されてしまうと思います。その場合に、実質無期だと問題なくて、合理的期待が継続している場合にも大丈夫なのだけれども、期間途中の解雇であって既にその後更新される見込みがなくなっている場合であるとか、合理的期待が更新限度条項ないし不更新の合意などが有効であるとしてなくなってしまう場合には救済されないことになるのか、あるいは解消金に損害賠償的な要素があるのであれば、それは消えてなくなるわけではないので存続することもあり得るという帰結になるのか、考えているところです。それは鹿野先生がおっしゃったように、定年してしまった場合も同じ問題かと思います。
もう一つは、いつまでも争い続けられる仕組みだと、過去の解雇は、雇止めはどうなるのかと、紛争が増えてしまうこともありそうですので、この研究会でも無期の場合に関してもある程度出訴期間的なものを定める、権利行使の期間を定めるという方向で来たと思いますし、有期の場合は特段、より短期の定めを置くなどして取扱いを変えることも一つあり得ると考えます。
以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
第1点目は確かに鹿野先生のおっしゃったところと共通している面もあるかと思いますが、そのほかの理由で契約が終了した場合にどう考えるかという点と関わってきて、特に個人的には③というのはなかなか難しい場合があるのかもしれないと思います。ただ、神吉先生がおっしゃるように制度的にカテゴリカルに外すということになるかどうかはまた別のお話で、例えば使用者が期間の満了によって終了していたという主張をしたときにどう対応するかというような、雇止めについても同じことかもしれません。なかなか難しいとは思いますけれども、第二次的というか、仮定的にこのような雇止めの合理的理由が新たに生じたとか、そのような反証ではないですけれども、ただし書的な主張を許すとか、そういう調整の仕方はあるのではないかと個人的には思っております。ありがとうございました。
2番目についてはかなり別の論点に関わって、解雇と共通するようなお話になるかと思いました。ありがとうございます。
ほかにといいますか、中窪先生はいかがでしょうか。もう3人しか残っておられませんので、こちらから指名してすみません。
○中窪委員 私も、解消金が地位を解消することへの対価というのは基本になりますので、解消すべき地位がないとそれは駄目だということになり、雇止めであっても更新によってほっておけばそのまま続いていくという、ここの確認は不可欠だと思います。そのときに、神吉委員がおっしゃいましたように、②の合理的期待については、場合によってはそれがある別の理由によって消えるということはあり得る。それが実質無期の場合には普通はそのまま残っていくだろうというように、若干差異が出てくる可能性はありますけれども、両者を通じて、解雇権濫用法理が類推されるという状況にないといけないという点は、そのとおりだと思うのです。
ですから、あとはこの解消金の制度を同じように適用するように設計するというのも一つの考え方だと思うのですが、そこをもう少し厳しくすることもありえます。適用の要件としてそこを絞るのか、それともさっきちょっと言いましたけれども、算定の額のところで少し調整をするのかというような、かなり政策判断になってきて、結局、どういう制度を解消金の制度としてつくり、それを有期のときにどう当てはめるのかという問題になりますので、ここの検討会でどういう検討をすべきなのかというところですね。選択肢としてこういうものがあり得ます、それぞれについて考慮した結果、制度化するとしたらこのような論点や注意点があります、ということを示せばいいのか、それともこのように本来考えるべきだという方向性まで示すのかというのは、私はよく分からないところです。
まとまりませんが、すみません。
○山川座長 ありがとうございます。
有益な御指摘をいただきまして、この点についてどのように検討するかという点については、3先生方おおむね同じような点を御指摘いただいたかと思います。つまり、政策的にといいますか、解雇との違いをどのように考えるかという点と、テクニカルにどのような仕組みを考えるかという点と、補償金の内容についてどう反映させるか、あるいはさせないのかという3つの視角がある。最初の点は中窪先生がおっしゃったように政策的なことと絡んできて、それはどのようにしていくか、解雇も含めて先生方の御意見も伺いながらということになるかと思います。ここでのミッションとしては、基本的には法技術的な検討会ということでありますので、どれだけ技術的に整合性を持ち得るかという点は最小限のミッションであろうかと思いますけれども、その先をどうするかについては、また先生方それぞれの御意見も踏まえてからまとめに入っていきたいと思います。ありがとうございました。
ほかは何かございますでしょうか。
ございませんでしたら、前の資料1から資料3まで、全体として何か追加あるいはコメント、御質問等がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
事務局から特にこの点を聞いておきたいという点は、今のところは何かありますか。
○武田労働関係法課課長補佐 現状では大丈夫です。
○山川座長 ありがとうございます。
鹿野先生、お願いします。
○鹿野委員 少し時間があるようですので、一つ質問させてください。今回の資料の2ページの論点の2-2のところでは、雇止めや途中解雇は無効であるが、その後の契約が労働契約解消金の支払時までに終了していたという場合をどう考えるかという表現が使われています。一方、8ページの右上の①の図がありまして、この図の理解が正しいのかどうかは分からないのですが、判決があって、その後、解消金の支払いが来るはずなのですけれども、解消金の支払いの前に、労働契約が終わるべき時期が来たということもあるわけですね。それを問題にされているかどうか、この論点2-2の表現がとられている趣旨が分からないのです。解消金支払いを命ずるところの判決が出て確定したということであれば、解消金は払わなければいけないのではなかろうかという気がするのですが、その場合に使用者がずっと解消金の支払いを怠っていたら、そのうち期間が満了したり、あるいは定年が来たりして、それで解消金の支払義務が消滅するというのは、これは仕組みとして都合が悪いような気がします。もしそうであるとすると、論点2-2は「解消金支払時まで」という表現をとるのがいいのかどうか疑問にもなります。そこで「解消金支払時まで」と書かれたところの意図が何かあれば教えていただきたいと思います。お願いします。
○山川座長 ありがとうございます。
新たな論点になるのかもしれませんけれども、事務局からは何かありますか。そこも考えてこのような表現になったかどうか。
○武田労働関係法課課長補佐 そちら、意図として2点ほどありまして、まず1つ目としましては、現在は裁判上の権利行使を前提とした御議論をいただいているところですけれども、裁判外での利用というものも完全に排除されているわけではなかったと理解をしておりますので、そういった意味で「判決時」と書いてしまった場合には、裁判所での行使のみを前提としたものとなってしまうというところから、資料1におきましては「解消金支払時」ということで問題提起をさせていただきました。
もう一点につきましては、解消金の支払には前提として地位が継続していることが必要と解しますと、判決確定後、解消金支払前に契約が終了した場合というのも問題状況としてはあり得るかと思いましたので、その点を含めた図にしております
○山川座長 ありがとうございました。
鹿野先生、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。
○鹿野委員 意図は分かりました。ただ、その場合をどう考えるかということについては、今の御説明を踏まえて考えてみたいと思います。
○山川座長 ありがとうございます。
恐らくこの点は解雇の場合も含めて判決確定後の事情変更等をどう考えるかという議論をしていただく必要があるかもしれませんが、取りあえず資料の説明としては今おっしゃっていただいたとおりかと思います。ありがとうございます。
ほかに全体として何かございますでしょうか。
それでは、ございませんでしたら、少しだけまだ時間はありますけれども、本日の議論はここまでにさせていただきたいと思います。
今回の検討会は感染対策のため傍聴の人数を制限しておりますので、今後、議事録の確認につきましては迅速な確認への御協力をよろしくお願いいたします。
それでは、次回の日程等について事務局からお願いします。
○武田労働関係法課課長補佐 次回の日程については、現在調整中でございます。確定次第、開催場所と併せて御連絡いたします。
○山川座長 それでは、これで第11回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を終了いたします。
本日は、お忙しい中お集まりといいますか、Zoomで御参加いただきまして、大変ありがとうございました。これで終了いたします。
 

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