技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会(第6回)議事録

政策統括官付政策統括室

日時

令和2年12月4日(火)14:00~16:00

場所

厚生労働省省議室(9階)

出席者

委員(五十音順)
事務局

議題

  1. (1)ヒアリング
    • ボッシュ労働組合 今井様
    • 三井住友海上労働組合 北村様
  2. (2)その他

議事

議事内容
○守島座長 皆さん方、こんにちは。定刻になりましたので、ただいまから「技術革新(AI等)が進展する中での労使コミュニケーションに関する検討会」の第6回を開催いたしたいと思います。
皆様方におかれましては、大変お忙しい中、御出席いただき、誠にありがとうございます。
カメラ撮りはここまでということで、お願いいたしたいと思います。
○守島座長 本日は、井上委員、戎野委員、大竹委員、後藤委員、仁平委員、根橋委員はオンラインで御出席でございます。仁平委員は、所用のため途中で御退出されると伺っております。
また、所用により、鬼丸委員、佐藤委員、冨山委員が御欠席でございます。
また、本日は、委員の皆様方のほかに、ヒアリングのためにボッシュ労働組合の今井様、及び三井住友海上労働組合の北村様にいらしていただいております。お忙しい中、ありがとうございます。ボッシュ労働組合の今井様は、交通トラブルが発生したために、急遽オンラインでの御出席ということになっております。
では、議事に入ります前に、本日の検討会の説明はタブレットで行いますので、事務局より御説明をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官 本日の検討会もペーパーレスで実施いたします。本日の資料は、「プライベートファイル」というフォルダ内に資料1から2として格納しております。併せて、第1回から第5回までの当検討会の資料についても御参考に格納しておりますので、必要に応じて御参照ください。
御不明の点がございましたら、職員にお声がけいただければと思います。
なお、御発言の際にはマスク着用のままにて、また、オンライン参加の皆様方が聞き取りやすいように、なるべくマイクを近づけてはっきりお話しいただきますようにお願いいたします。
○守島座長 ありがとうございました。
それでは、議事に入りたいと思います。
本日の進め方について御説明いたします。AI等のデジタル技術の導入と労使コミュニケーションについて、ボッシュ労働組合の今井様、三井住友海上労働組合の北村様の順にお話をいただきたいと思います。2組合のプレゼンが全て終了した後でまとめて質疑応答と自由討議を行いたいと思います。
それでは、まずボッシュ労働組合の今井様からお願いしたいと思うのですけれども、よろしいでしょうか。
○今井氏 よろしくお願いします。皆さんは、お手元のタブレットで資料を閲覧できているということでよろしいでしょうか。
○守島座長 大丈夫だと思います。
○今井氏 私は、埼玉県東松山市というところに事業所も労働組合もありまして、電車に乗ろうとしたら倒木で電車が止まってしまったということで、いまだに止まっているようですので、急遽オンラインでの参加ということにさせていただいておりますことをまずもって御報告させていただきたいと思います。
それでは、早速ですが、アジェンダということで、前段の部分は我々ボッシュの会社あるいは組合の御紹介という形になります。主に会社が対応しているAIとかIndustry4.0、こういった活用についての御紹介をさせていただきまして、後段のほうでは、ドイツの本社を中心とした世界会議の中身。最後は今あります新型コロナウイルスの状況について御説明させていただければと思います。
3ページは、ボッシュ・グループの概要ということでありますが、本社につきましては、ドイツにございます。我々ボッシュ株式会社は、ボッシュ・ジャパンという言い方をしていますが、Robert Bosch GmbHの100%子会社、日本法人ということであります。その下にある資料等は、我々が手がけている製品群ということになっております。大きくはこの4つのカテゴリーということで、皆さんに御理解をいただければと思います。
4ページは、ボッシュ・ジャパンの主な拠点ということになります。ここに記載のとおり、いろいろな拠点があります。営業拠点からR&A、あるいはテストコース、製造拠点ということで、主に関東を中心としているのがこの日本地図でお読み取りいただけるのではないのかと思います。これについてはお読み取りをいただくという形で、次に行きたいと思います。
5ページは、手前どもの組合の相関図ということになります。我々の上部団体はJAMということで、連合の傘下ということであります。自動車総連さん、電機連合さんほかを含めたJCM、金属労協ということでの登録になるのです。その中で、我々は支部制をしいている中では、上部団体としてはJAM北関東、JAM神奈川、こういったところの地方産別に属しています。その中のボッシュ労働組合、ヴァレオジャパン、クノール関係ということで、この4つの単独の構成組織につきましては、もともとは同じ会社ということで、昔で言いますと、ヂーゼル機器ですとか自動車機器という言い方をしていた企業の分離によりまして、今、それぞれ資本を伴わず、この4つの企業はもう既にタッグを組んでいない。ただし、我々労働組合としては、そういった過去のこともしっかりと継承しながら、連合会ということで今、取り組んでいて、情報共有をしているところであります。我々ボッシュの中でも支部制を持っていまして、北関東支部、埼玉、栃木、神奈川・東京支部ということで、こういった支部制を持って単独の構成組織の運営をしている状況であります。
6ページは、我々の組合員の範囲ということです。ユニオンショップ協定をしっかりと会社と締結をしているということであります。組合員の範囲としては、一番下の例にありますように、管理職の方々や嘱託、臨時雇用者等々につきましては非組合員の範囲ということになっております。
7ページ以降は、我々ボッシュの労使での委員会の関係になります。まず、定例労使委員会というものは、月に1回会社トップと組合のトップが、基本的には前月あるいは前々月の月次決算の確認をしていくということです。それぞれトピックがあれば議題にして、その中で議論をしていく。ボッシュの中では一番上位にある委員会となります。
その次が事業部労使委員会ということで、ボッシュ・ジャパン、ボッシュ・ワールドワイドもそうですが、どちらかというと1つの単独の会社というよりは、製品群の事業部の重きが強いということで、こういった事業部の中でも少し細分化をした労使委員会も年2回やっています。これにつきましては、会社側はゼネラルマネジャー以上、我々組合は担当の執行委員も参加して、詳細について議論をする会ということになっております。
8ページは、職場労使協議会ということで、これがまさに現場力といいますか、一番組合員さん、従業員に近い中での協議会ということです。ここは具体的に休暇の進捗ですとか、あるいは時間外労働、生産数の確認、こういったものを毎月具体的にやりますし、必要があれば臨時職場労使協議会ということで、労使で一番コミュニケーションを取っている協議会ということになります。そこでなかなか解決できない問題ですとか、複数の職場が問題を抱えたときは、その下の支部労使委員会でありますとか中央労使協議会ということで、これは労使双方で随時申入れをして行っているということになります。平均的な数値は取れているのですけれども、月に3~4回はこういったことが労使で議論されているのかなと。コロナ禍ではこれが相当増えてきている状況ということになっています。
9ページです。先ほど申し上げた委員会・協議会のほかに専門委員会というものを多く持っていますNo.1にありますように、労働協約の関係から苦情処理委員会等々、ここに記載の専門的な委員会が労使といわゆる志望者と職場の委員さん、こういった方々を巻き込んで、会社を運営する上での基幹的な内容についてこういった専門委員会を随時やっている状況ということになります。この取組によって今のボッシュの労使関係であるとか、規約ですとか、労働協約がつくられていると御理解いただければと思っております。
10ページからは今日のテーマでありますAIといいますか、いろんな情報網について、会社が取り組んでいる内容ということです。10ページはコミュニケーションについてということになります。1から6ぐらいまではいわゆる対面をしたり、過去から継続して行われているコミュニケーションになります。懇親会であるとか、朝礼ですとか、キックオフミーティング、こういったものは対面式。7番以降がいろいろなAI、情報網を使ったということで、ビデオメッセージをしたり、この後、詳細にお話ししますが、SNS・アプリですとかデジタルサイネージ、あるいは9番にありますように、コミュニケーションゾーンということで、事業所というのは皆さんが落ち着ける場所を工夫しながらつくっているということです。右側にありますThe NESTは、渋谷になります。従業員が少しブレイクするときにこういったところでみんなで会話をしたり、あるいはここでお仕事をされてもいいということです。そういった開放的な場所をセッティングしている渋谷の事例をここに記載させていただきました。
11ページは、Bosch Connectと言いまして、内部のイントラネットを使った情報網ということになります。これは外部からは入れずに、従業員、パソコンのアカウントを持っている方は誰でも入れて、情報をここで取っていく。これは従業員が自ら情報を取りに行く場。それから管理される方、社長も含めて、いろんなトピックや自分のコメントを載せていく場ということになっています。
左側の写真は、コロナウイルス感染症によっていろいろ決めたことを随時可及的速やかに情報を載せて、皆さんに展開をしていくということになっています。
一番右下の写真は、RBJP Exit Modelということで、これはコロナが収まったときの出口戦略をしっかりと皆さんにお伝えする。マスクの着用をしてくれとか、会議の占有率は50%ですよ、そういったものを具体的に見せていくというものを一つ御紹介させていただきます。
12ページは、Bosch Nextアプリということで、製造現場の皆さんはボッシュアカウントを持っていませんが、これは御自身のスマホ等々である一定のセキュリティーをクリアすれば入れる部分と、広く一般に、従業員以外の方にもアクセスできるものとなっています。会議室の予約とか空き状況とか、あるいはアプリを使って従業員同士でレクリエーションをしようとか、そういったものに使っていくというものです。なかなか製造現場の人は使いづらそうで、間接部門のメンバーはこれを有効的に使っているというのが現状になります。
13ページになります。アプリについては、外から見られる情報、従業員のみの情報ということで、こんな切り分けをしているという御紹介になります。
14ページからは、Industry4.0とかSociety5.0とか、世界共通の取組の中で、我々がIndustry4.0の中でまだ全部には展開していないのですが、一部モデルで始まったものと少し横展開できたものを紹介していきたいと思います。
まずはこれを始めたきっかけというのが、物と情報の流れを、今までは物流で見たり、あるいは人が管理をしたりというところがありました。そこについては、デジタルサイネージなども使って、1日でどれだけできたかとか、不良を早く発見するとか、稼働率をタイムリーに上司の方も見られるようにということで、これを一元化情報システムというふうにしています。動機につきましては、なぜかというと、我々のボッシュプロダクションシステムという生産を管理していくシステムを10年ぐらい前から取り入れて、鋭意努力しておりますが、物の流れ方も前から突っ込むのではなくて、お客様、後ろから工程を引き取るということと、小さいロットでつくっていくというところがありました。これのリアルタイムデータがなかなかつかめないというところが一番の動機。それから、皆さんの仕事を分析して、より仕事を楽にしていこうということが動機ということになっています。
15ページ、それの事例を紹介したいと思います。一番下にアワリーシートというテレビ画面があります。これはデジタルサイネージということで、これは誰もが現場でリアルタイムに今の進捗、1時間に何個できて、1時間に不良が幾つあるというのを全部管理できる。これは課長さんとか部長さんのPCからも確認に行けるということです。様々なデータを一元管理しているということになります。
右上のカメラにつきましては、写真に写っている職場の天井にカメラをセットしてあります。これは従業員の動作の分析とか、例えば不良が起こったときに、作業員のどのような行動があったのだろう。要するに、録画をしながら検証できる仕組みということになります。これは防犯カメラですとか、従業員の行動といいますか、変な意味のカメラではないというところで、今言った分析のカメラということで、職場の皆さんと理解を深めながら設置をしていただく。弊社はこのラインだけということで、まだ横展開ができていない状況ということであります。
16ページです。先ほど言いましたように、管理者、LTOというのはLeading Technical Operatorということで、現場の管理者。それを全体管理するのがスーパーバイザー、SVということで、一般的な言い方をすると、SVさんが現場・職場の係長、LTOさんが班長という言い方をしたらいいのかと思いますが、そういった部署です。以降、課長、部長が確認頻度、こういった状況でこういったものを確認していくということです。何か不具合が起これば、LTOから右のフローチャートにあるようにエスカレーションをしていって、問題解決に当たるということが現場での運用ということになっております。
17ページになります。これが先ほど言ったカメラで、いろいろステップがありますけれども、何でここで処理をしたのだということを分析したり、後々不良が見つかったときに、これを戻って、どういった動きに間違いがあったのだろうとか、どういうことがあったのだろうという検証に使うということの御紹介になっています。
18ページからが先ほど言った物と情報の流れをオートメーションにした一つの事例ということで、右上にあるProConとかSAPというのは、我々のワールドワイドで使っている標準ツールということで、この中でRFIDというのは、「かんばん」と言いまして、物には必ずセットされている札がつきます。そこに電子的なデータがあるタグをつけて、物と一緒にその札を動かしていったときに、物がここを通過して今ここにある。最終的には出荷をしたよというのがタイムリーに、一つの製品が必ずどこにあるかというのをつかめるようになっています。当然サプライヤーさんとの関係、あるいはお客さんへの出荷の関係でトラブルがあったときも製品がすぐに見つかる利点があるということで、この開発には相当労力、時間をかけて走り出していて、今、大体の職場でこの仕組みを入れて管理をしているということになっています。入庫から出庫まで一つのプラットフォームで物と動き、情報もコントロールをしていくということになります。
19ページが先ほど言ったRFID。私が申し上げたサプライヤーとお客様までのことを図示したものなので、これについてもお読み取りいただければと思います。
20ページも同様です。これはお客さんへの出荷も含めたものということでお読み取りをいただけます。これが製造現場でIndustry4.0ということでは、今、一番つかまえている情報ということになります。
21ページからがRPA(Robotic Process Automation)ということで、「22人開発ライセンス保有者」とありますが、この方々が先生になって勉強会をしたり、あるいは従業員からのアイデアを実際の製品に結びつけるような大きな流れの中でのプロジェクトということになっています。詳細は22ページからということになります。
22ページは、その一つの事例ということであります。業務の概要として、試作品の注文を受けたときの営業部門と生産部門の間の帳票関係のやり取りとか、足の長い製品についてはこういったものがおろそかになって、どうしても前工程と後工程のスピード違いみたいなものを生んでいたということになります。これを人がやる部分といわゆるデータが求める部分をしっかりとセパレートしたということで、先ほど言ったデータ管理のところは仕組み化をしていこうということになります。カスタマーポータルにログインをしていろいろと情報を入れると、データ照合の部分は、日中でなくて、24時間データをまとめる。これが一番の進化ということで、翌日来たときにはメールを営業担当の人がチェックをする。これだけの作業は人がやるということで、人とデータのすみ分けをして24時間を有効に使う。当然人はいろんな働き方がありますから、日中に働く。データはいつでもできる状況をつくった。これが先ほど言ったRPAの中で検討されて、今、導入に至って、成果を上げている内容ということで、単純な定例業務を月当たり40時間短縮した、成果が出ているという御紹介になります。
23ページが先ほど言った社内勉強会です。写真にあるように、毎週木曜日、参加者が集まればこういったこと。マンツーマン、1対1でもあると聞いていますが、こういったことをしっかり勉強して、多くの人にRPAを浸透させていく活動を継続的にやっていくということであります。これは活動の見学から入れるということになっておりまして、Botをチームでつくる、こういった活動が今、新しいプロジェクトへの入り口ということになっていると御理解をいただければと思います。
24ページがボッシュ従業員代表世界会議の概要ということで、労働組合のワールドワイドの取組ということになります。私は執行委員長になってまだ1年ということで、コロナの関係で、昨年あるいは今年にこの機会が回ってくるはずでしたが、今回は中止ということで、前回前委員長が行かれました。そこで情報を取ったり、資料を読んでのこの視点になっていますので、文言がちょっとおかしいと思いますけれども、これはドイツ語を日本語変換したりして、ちょっと分かりづらいかもしれませんが、説明させていただきます。
一般協定の目標というのは、ボッシュ・ドイツを中心としたヨーロッパ委員会という、ドイツ・ヨーロッパの労使の委員会で締結をした協定ということになりますので、我々から見ると、これは一つの方針ということになります。こういったことを方針として、ボッシュ世界でつながっていこうということになります。
会議のテーマにつきましては、記載のとおりでありますが、基本的にはそれぞれ各国の今の状況、問題提起をボッシュのトップであるG1の方にいろいろと情報をつなげる。最終的には皆さんでそれをどうしていくか議論をする会議ということで、行程につきましては、記載のとおり、3泊4日程度でやります。それぞれ各国から来た人には1人通訳をつけていただいて、全て通訳を介してやる会議ということで、事業所を見学したり、市内観光をしたり、皆さんの心合わせも夕食懇親をしたりということで、3日目には解散する。行かれた各国の労働組合の代表者は、現地に出向されている方とこの後面会をしたり、懇談をするというのが例年のことだと聞き及んでいます。
25ページは、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響ということです。事業への影響ということでは、お客様、カーメーカーの操業度ダウンと比例して、今年の5月が一番底でした。そこから徐々に回復して、現在は逆に休日出勤もしなければいけない。V字回復と言っていいのか分かりませんが、今時点では相当操業度が上がっていて、また、いろんな雇用面も採用している状況ということになります。ただ、その間は、マル2に記載しているように、一時帰休を行ったり、当然残業ゼロということ、あるいは我々の有給休暇取得奨励をするということで、こんなことを4月から先月ぐらいまでやっていた状況ということ。
それから、我々はもともと在宅勤務の制度を持っておりましたが、制度上、使えるのは一般的には月25%、介護をされている方は50%という規約を、8月には一般もテレワークも含めて50%まで労使で協定化をして引き上げました。ただし、新型コロナウイルスの関係でそれも撤廃して、100%選択できる状況をキープしています。途中で少し戻したのですけれども、第三波の関係で11月後半からまた100%在宅を推奨しているという状況になっています。
ソーシャルディスタンスを確保する施策につきましては、ここに記載のとおりであります。この中でも個人個人の状況が違いますから、個人の状況を尊重しながら各部署で行っている状況ということになります。
コロナ禍での労使コミュニケーションということでは、一番多いときは週に一度、会社のトップが必ず木曜日に「コロナ会議」と称しまして、労働組合も手前どもの副委員長が毎回それに参加して、コロナの状況をチェックする会議を行っていました。今は2週間に一度とスパンを少し広くしていますけれども、その中で細かいこと、躊躇なく従業員の命を守ろうということがこの会議のスタートですから、まず安全サイドに行くことを労使間の共有する前段ということで、そんなことを今も継続してやっている。これを従業員に伝える際には、先ほど言ったAIを駆使したり、デジタルサイネージで食堂に画面を映したり、そういったことは定例的に今、行っている状況ということになります。
テーマの中でもう少し踏み込んでということについては、この後の意見交換で御質問いただければと思いますので、ここで一旦私の報告を終了したいと思います。御清聴ありがとうございました。
以上でございます。
○守島座長 今井様、御丁寧な説明、ありがとうございました。
それでは、続いて、三井住友海上労働組合の北村様からお願いしたいと思います。では、よろしくお願いいたします。
○北村氏 三井住友海上労働組合の北村と申します。よろしくお願いします。
このような会に出席させていただくのは初めての経験ですので、ポイントを踏まえた説明がしっかりできないところもあるかと思いますが、不明な点があれば、後ほどの質疑の時間で聞いていただければと思います。よろしくお願いいたします。
それでは、資料に沿って説明します。
3ページは当社の概要です。三井住友海上火災保険株式会社は、主に損害保険を中心とする保険・金融サービス事業を世界で展開している会社です。日本全国の都道府県に営業支店や保険金お支払センターがあるという特徴があります。また、1924年から海外事業も展開し、現在42か国で事業展開しております。特にアジア、ASEANに強みがあります。
4ページは沿革です。2001年に三井海上火災保険と住友海上火災保険が合併してできた会社です。2010年にはあいおい損害保険、ニッセイ同和損害保険と経営統合し、MS&ADインシュアランスグループが発足しております。これにより、損害保険の分野において収入金額で世界第5位のグループになりました。
5ページは主な社員区分、社員の種類です。社員の全数は約2万人です。上から全域社員、地域社員とありますが、この2つがいわゆる総合職で、全域社員は全国に転居転勤する総合職。地域社員は基本的には転居転勤のない総合職です。アジャスター社員は、自動車事故の損害額を査定する専門職です。アソシエイト社員は、一定の基幹業務を担う社員です。ここまでが無期雇用の社員、いわゆる「正社員」で、約1万5000人います。スタッフ社員は時給制の1年更新の社員区分。シニア社員は定年後に移行する社員区分です。当社の場合、60歳定年で、60歳から最長で65歳まで働くことができます。
ここまでの社員区分の方が組合に加入していることは、当労組の特徴といえます。つまり、我々の組合では正社員と非正規労働者が一緒になって活動しているということです。一部組合加入をされていない特別社員という方々もいらっしゃいますが、こちらはごく短期間のアルバイトの方々です。
6ページは労働組合の概要です。組合員数は1万9000人で、先ほどお示しした社員区分の方々が対象です。組織形態としては、組合本部と全国に47の分会と16の地区会がございます。基本的に組合員の活動は分会単位で行っています。上部団体は損害保険労働組合連合会で連合加盟です。ユニオンショップ協定があり、全ての対象者が組合に加入します。
我々は、運動の目的として、全従業員の労働条件の維持・向上とグループの健全な発展を掲げております。この2つを同時に掲げることで、単に従業員の労働条件の維持・向上ばかりを会社に伝えるのではなくて、組合員自身ができることをしっかりやって会社の発展に貢献し、貢献した結果として労働条件の維持・向上を目指しています。
組織運営の姿としては、本部と分会・地区会が情報を共有し合うこと、本部は組合員の意見に根差した活動を進めていくことを掲げています。
労使関係の基本スタンスは、信頼関係に基づく、対等かつ健全な緊張感のある労使関係を維持すること。互いの立場を尊重しながら、何事にも協議を尽くして解決することで、会社とは何事も言い合える関係があります。
7ページは組合の組織体制図です。一番上に「組合大会」とありますが、民主的な組織ですので、全ての重要事項は組合大会で議決をしております。組合大会にはそれぞれの分会から大会代議員が参加します。
このページの一番下に経営協議会について記載しています。中央経営協議会とは、後で詳しく説明しますが、組合本部と会社経営が協議する場です。地方経営協議会とは、それぞれの分会が、分会と相対する地方経営、例えば部支店長と、それぞれの職場課題について協議する場です。この組織体制で会社全体および職場単位の様々な課題について、それぞれの場で会社と協議をしています。
8ページは労使協議の概要です。労使協議の中で、最も位置づけの高い労使協議の場として中央経営協議会があります。年4回実施しており、会社側から社長や役員が出席します。主に春闘協議をこの場で協議します。労働協約の中に「経営協議会で決定した事項は労働協約と同等の効力を持つ」と明記されています。労働協約は全ての規約の上位概念にあるもので、明記されている内容は、経営協議会の決定事項がそれだけ重みのあるものだということを表しています。
9ページはそのほかの主な会議体の概要です。上から人事部折衝、各部折衝、専門協議会、労使委員会とありまして、頻度は記載のとおりです。目的に応じて様々な協議体を使い分けています。
10ページは労使協議での主な議題です。記載している事項がメインの議題ですが、記載以外にも我々が課題と感じている事項については適宜会社と協議しています。
11ページは会社と従業員のコミュニケーションの方法です。まず、会社から従業員に対する情報の発信として、業務連絡があります。社員は基本的にパソコンを使って毎日業務をしておりますが、社内のイントラ上に毎日、本社の各部から連絡事項が発信されており、社員は必ずそれを毎日確認します。
情報番組「MSプラス」とは、週に1回の社内専用のニュース番組です。社長が経営方針を説明したり、本社各部が諸施策を丁寧に説明したり、現場の社員の好事例を紹介したり、様々な情報を発信しています。
WEB社内報とは、毎週記事が更新される社内報で、ポップな内容で、社員に伝えたいものを広報部がつくっております。社内イントラ上だけではなくて、個人の私有スマホからも見ることができます。
12ページは会社が従業員の情報を収集する取組です。社員意識調査では、年1回社員の意識を定点観測しています。組織サーベイとは、職場のエンゲージメントや職場の生産性について、従業員がウェブ上で入力して、モニタリングする取組です。会社全体での数値を把握するだけでなくて、職場課題をあぶり出し、改善する取組にも活用されています。社員向けアンケートは、会社施策の改善に社員の意見を反映させるためのアンケートです。「みんなの知恵の輪」は、会社の業務の課題について、社員がいつでも自由に登録でき、本社各部が検討のうえ回答し、会社の業務改善につなげる仕組みです。
続いて、コミュニケーションツールです。ビジネスLINEや複数のWeb会議システムを活用しています。コロナ禍の中で拡充されたツールも含まれています。
13ページは会社の内部通報・相談窓口の制度です。スピークアップ制度、コンプライアンス相談窓口、ハラスメント相談窓口、社員相談室と、社員が困った時に相談できる窓口があります。スピークアップ制度は、消費者庁の自己適合宣言登録制度に登録されており、通報者保護や秘密保持が担保された、安心して相談できる窓口になっています。
14ページは労働組合と組合員のコミュニケーションです。組合からの情報発信は、基本的に紙ベースの広報紙をそれぞれ記載の頻度で発行していまます。「月刊Message」は、カラーで写真を多く掲載し、ポップに親しみやすくつくっている広報紙です。「速報Message」は、会社協議の内容をタイムリーに組合員に周知するための広報紙です。そのほかには職場会を年3回やっており、そこで使用するための広報紙をつくっております。
15ページは組合本部で実施している情報収集の取組です。職場会は年に3回行っております。人事諸制度改定と春闘がメインの論議テーマです。「各種懇談会」は分会単位で実施しています。例えば女性の組合員だけで集まっていただいて会社の課題について論議しています。例えば非正規労働の方々など、職場メンバー全員が集まって論議をする職場会では意見を言いにくいと感じる方もいるので、階層別に集めることで意見を出しやすくし、論議の中で聴き取っています。
16ページは残業実態調査・意識調査です。年に2回、組合が主体となって従業員の残業実態を調査しています。会社が毎日の勤務時間をPCで管理しておりますが、組合でも残業時間を把握しなければいけないという問題意識から調査しています。また、同じタイミングで組合員の様々な会社の諸施策に対する捉え方等について調査する組合員意識調査を実施し、会社との協議に生かしています。
17ページは会社のデジタライゼーション推進の内容です。三井住友海上がどんな形でデジタル技術、技術革新の導入を推進しているかということを御説明します。
当社は中期経営計画の重点課題の一つとして「デジタライゼーションの推進」を掲げて取り組んでおります。その中で3つの取組として、デジタルトランスフォーメーション、デジタルイノベーション、デジタルグローバリゼーションを進めています。
1点目のデジタルトランスフォーメーションでは、国内の既存の損害保険ビジネスの在り方や業務プロセスをデジタル技術の活用により変革させています。例えば効率化に向けてRPAなどの推進をしています。
2点目のデジタルイノベーションでは、収集・蓄積したデータを活用し、新たな収益基盤となるビジネスを創造しています。保険会社には様々なデータが蓄積されておりますので、このデータを単に保有しておくだけでなくて、新しいビジネスに活用していこうという取組です。
3点目のデジタルグローバリゼーションでは、蓄積したノウハウをグローバルに展開しています。東京とシンガポールにグローバルデジタルハブというデジタル技術を進めるための拠点をつくり、グローバルベースでデジタルトランスフォーメーションやデジタルイノベーションを進めています。
また、新型コロナウイルスの影響で事業環境が大きく変化したことを踏まえ、デジタライゼーションの推進によって収益構造の変化を図っています。
18ページは業務プロセス改革の具体的内容です。AIやRPAの活用によって、契約手続や保険金の支払いのプロセスで生じる一連の事務をデジタル化し、業務の生産性向上を実現しています。当社ではエクセルのマクロ機能を使ってブラウザを制御するツールとノンプログラミングでソフトウェアロボットを開発・運営するRPA製品を併せてRPAと呼び、社員が広く活用しています。社内では200以上のRPAが使われています。
保険金支払プロセスの自動化というのは、ドライブレコーダーの映像から契約車両と相手車両の挙動をAIが分析する仕組みです。これまでは事故の担当者がお客様から事故の内容を聞いて事故状況を作成していましたが、本仕組みにより、AIが自動的に事故の状況を図示したものを作成し、お客様の対応時間が削減されるとともに、早期の解決をお届けできます。
19ページは販売競争力の高度化の内容です。損害保険事業は、当社の社員が直接お客様に保険商品を販売するのではなく、代理店を通じて保険商品を販売しています。MS1 Brainは、代理店に使っていただくためのシステムで、AIによるビッグデータの分析に基づいた代理店サポート機能を有しています。
20ページ、商品・サービスのデジタル対応です。1点目はドライバーに安心を届ける新自動車保険の開発です。テレマティクス技術を活用した新たな自動車保険「GK 見守るクルマの保険(ドラレコ型)」を開発し、万一事故があった場合に、専用のドライブレコーダーが衝撃を検知し、位置情報などを自動的に安否確認デスクに送信し、専用のオペレーターがドライバーに直接ドライブレコーダーから問いかけができます。
2点目の安全運転支援サービス「スマNavi」とは、企業向けの商品で、会社の従業員が危険な運転をした際のドライブレコーダー映像で自動的に映像を作成し、お客さま提供するサービスです。
21ページは、新技術を導入した際の労使協議の工夫です。当社の場合、新技術を導入すること自体に不安を感じたりする従業員は多くなかったと思っております。ただし、新技術を導入することにより、どう変わっていくのか分からないという不安はあったと思います。例えば、AI、RPAの導入により事務の量が大幅に削減されると、これまで事務を担っていた社員は、自分の仕事はどうなるのか、自分の雇用は守られるのか、これからどんな仕事を担うのかと不安になります。そういった中で、工夫した点が3点あります。
1点目は目的の確認です。何のためにその技術を導入したかということが分かれば、組合員の安心感につながります。確認した内容は、会社から社長メッセージとして発信したり、組合の広報紙でその内容を組合員に伝えました。
2点目はめざす姿の確認です。「組合員は、新技術を活用することで、どう変わっていくのかを不安に思っています。」と会社に伝えたことで、会社は、取り巻く環境の変化と会社のめざす姿を説明する動画を作成し、組合員に分かりやすく伝えてもらいました。これにより組合員が安心して新技術の導入を受け入れられるようになったと思います。
3点目は雇用維持の確認です。「新技術の導入によって従業員の首を切ることは考えていない。新技術を導入することで社員には会社の成長に直接寄与できるようなコア業務を担ってほしい」ということを確認した。これにより、新技術の導入を前向きに進めていくべきものとして捉えることができますし、一つ一つの新技術導入には、都度労使協議は必要ないということも確認できました。
22ページは、新技術を活用した業務削減化推進の会社と組合の取組です。まず会社の取組として、デジタルアンバサダーの育成があります。RPAは、職場で一定の事務作業に時間を要している業務を自動化するというのが基本です。本取組は、現場の業務を熟知した社員をデジタルアンバサダーに育成することで、RPA化を推進する取組です。労働組合の取組としては、業務削減・効率化の必要性がありそうな業務について、組合員からアンケートを集め、会社に提言する取組です。
23ページは人材戦略です。会社はこのような環境の中で2つの取組を推進しています。1点目は、「個の力」の強化による社員一人一人の能力を高める取組です。2点目は「組織の力」の強化による職場全体のパフォーマンス向上です。「個の力」の強化と「組織の力」の強化を両輪に取組を進めております。労組としても、新技術の導入によって、これまで担ってきた役割や業務がなくなる社員に対しては丁寧な人財育成が必要だと考えており、労使協議の中で、その必要性を伝えてきました。
例えば、新技術導入によって事務の量が減ったことで、多くの女性社員が新たに営業を担うようになりました。事務から営業に役割が変わるというのは、大きな変化ですので、不慣れな営業をサポートするための体制整備や身だしなみ講座等、様々な人財育成施策を拡充してもらいました。
24ページはデジタル人材の育成に向けた施策です。当社では、全社員のデジタルリテラシーの向上に向けて記載している複数の研修を用意していることに加え、デジタル専門人材の育成もしています。
25ページは新型コロナウイルス感染拡大の影響です。事業面としては、新型コロナウイルスによって経済が停滞し、当社の売上にマイナスの影響が出ています。一方で、経済が停滞した影響で自動車事故が減少し、保険金の支払いが減ったという一時的なプラス効果もありました。
業務面では、感染拡大防止のために、在宅勤務やシフト勤務、フレックス勤務を活用した時差出勤などを積極的に活用するようになりました。また、Web会議の活用が非常に増え、出張が減少しました。これまで在宅勤務の制度はあったものの活用している社員が少なかった状況から、5割から7割ぐらいまで在宅勤務率が増加しました。これによる影響として、ペーパーレスでないと在宅勤務で業務ができないことから、ペーパーレスが進んでいなかった業務において、ペーパーレス化が推進されています。
26ページは、コロナ禍の労使協議、労使コミュニケーションです。出社割合を制限し、在宅勤務の割合が増加したことで発生した課題を組合員から吸い上げて、適宜会社と連携して、様々な問題解決にスピーディーにつなげました。会社が実行した主な対応を記載しています。会社の柔軟かつスピーディーな対応により、組合員からも感謝の声が多く出されました。
27ページは、労使コミュニケーション、従業員の意見集約の方法の変化です。まず、今までのような多くの人数が一堂に会する労使協議は控えています。対面で実施する場合も十分なフィジカルディスタンスがとれるようにし、一部Web会議システムも活用しながら実施をしています。
従業員の意見集約の方法も、Web会議システムやアンケートシステムを活用して組合員の声を集めています。
28ページで最後のまとめを発表します。現状として、デジタライゼーション推進の目的やめざす姿は労使で目線が合っており、労働組合としても前向きに進めていくべきものとして認識をしています。また、業務効率化に向けたRPAの導入やシステム開発を、より効果的なものにするためには、労使共に職場の意見を集めて推進していくことが重要と考えています。また、それを実行していくためには、丁寧な人財育成が欠かせません。
これからの課題ですが、組合員一人一人が取り巻く環境の変化を前向きに捉え、キャリアを着実に形成していくことができる環境を整備していく必要があると考えている点。技術革新が産業や雇用に及ぼす影響を組合としてもしっかり注視し、対応を考えていかなければいけない点と考えております。
長くなりましたが、以上で発表を終了したいと思います。ありがとうございました。
○守島座長 北村様、どうもありがとうございました。
それでは、質疑応答と自由討議に入りたいと思います。ただいまの2組合からの御説明について、御質問、御意見等がある方は挙手をお願いしたいと思います。
仁平委員が途中で御退出ということなので、もし現時点でよければ、仁平委員にお話をいただきたいと思いますが、どうでしょう。
○仁平委員 座長、御配慮いただきまして、どうもありがとうございます。
連合の仁平です。今井さんと北村さん、プレゼンテーション、大変ありがとうございました。両組織とも多様なチャンネルを通じて、建設的な労使関係の下で密接な労使コミュニケーションを行っていますし、労使双方に資する形で新技術の導入も進めている。まさに好事例だと認識している次第です。
両組織では、新技術の導入に当たっても、働く人が雇用に不安を感じることなく、自らの能力向上に努めることができ、また、就労環境の改善を実感できているものと思います。そうしたことが、新技術の有効な導入と活用において極めて重要なやり方、視点なのだと感じた次第です。
その上で、両組織にもう少しお話を伺いたいことがございます。労働者の納得感を醸成していく上では、使用者がやるべきことと労働組合がやるべきことがあるのではないかと考える次第ですが、特に労働組合の立場からどのような点に留意しながら組合としての役割を果たしてきたのかということを補足いただけるとありがたいということ。
また、労使が積極的にコミュニケーションを図りながら技術革新などを進めるようになった背景や理由、その様にしたほうが良いと考えるに至った経緯などもあれば、補足して聞かせていただけると、今後我々が検討していくうえで有効かと思います。
もう一点、今井さんに御質問です。24ページ「ボッシュ従業員代表世界会議の概要」の一般協定につきまして、締結の主体について聞き漏らしているかもしれませんので、もう一回確認させていただきたいということ、また、これに関連して、ボッシュ・グループはドイツに本社がありますが、ドイツにおいては労働4.0というデジタル化時代の労働社会政策の在り方に関する社会対話を実施し、デジタル経済においても社会的パートナーによる共同決定を重視しているとのことですが、こうしたドイツでの動向がボッシュ・グループにおける積極的な労使コミュニケーションの姿勢にも影響を与えているのかということについて、もしお分かりになれば、お考えなども含めてお聞かせいただければと思います。
以上です。
○守島座長 ありがとうございました。
今井さん、質問もありましたので、先に答えていただければと思います。
○今井氏 承知いたしました。
仁平さん、御質問ありがとうございます。労組の立場ですとか労使のコミュニケーションという話ですが、こういったプロジェクトとかAIを含めた会社の革新的な動きというのは、会社主導で起案されるものであります。労働組合から起案するものではない、そんな姿勢でスタートして現状に至っております。我々としては、大前提ですけれども、技術革新の中で必要なのは、人がやりづらいこととか、あるいは長時間労働につながるとか、先ほども申し上げたように、例えば日中ではない、深夜のところで業務をしなければいけないとか、そういうところを補える仕組みを導入するというところが、こういったAIが必要だなと。そんな感覚を労働組合は持っています。
当然会社もそういうスタンスで臨んでおりますので、そこについては、まず会社が従業員に発信したときのいわゆるわだかまりですとか勘違いとか、こういったところが労働組合に質問として上がってきますので、そこのところを我々がしっかりと火消しをしていくということで、人が必要ではなくて、人がやりづらいところを見直していくのが取っかかりの入り口です。このようなコミュニケーションを労働組合としてはしている状況。当然これは労使でも共通認識というふうに皆さんが御理解いただいていいのかなと思っております。
24ページの代表者会議の関係の協定についてということですが、先ほども少し申し上げましたけれども、一般協定の目標というのは、ボッシュ・ヨーロッパでの労使でいわゆる方針を決めたということなので、はっきり言いますと、この影響力が例えば各国の労働組合に影響力があるかといったら、そういうものではなくて、そういった方針を基に世界代表会議を行うのだよという一環だということでありますので、一般協定の目標というと、何か協定を結んだとか、そういうことではないということでの御報告をさせていただければと思います。
以上でしたか。まだありましたか。
○仁平委員 ドイツの国の状況については如何でしょうか。
○今井氏 労働4.0の関係でしたか。
○仁平委員 そうですね。これはドイツの話かもしれませんが、国が旗を振ることで、労使も含めてプラスの面や影響はあるのでしょうかといったことです。
○今井氏 ありがとうございます。
基本的に労使関係はローカルでやっていまして、ドイツが発信する労使関係のものが各国に下りてくるかは、日本も含めてですけれども、そういった影響力は非常に薄いです。ローカルな労使関係というのは歴史も文化も違いますから、ドイツが言っていることを手本にするかしないかも含めて、そこのところはローカルの中でしっかりと労使での定義を持つ。これが基本だと思いますので、先ほどの御質問に対しますと、大きな影響力はないと回答できるのではないのかと思っております。
以上です。
○守島座長 ありがとうございました。
それでは、北村さん、いかがでしょう。
○北村氏 御質問ありがとうございます。
まず、積極的にコミュニケーションを行いながら新技術を導入してきた背景ですが、新技術の導入について、会社は健全な危機感を持ち、積極的に進めていきたいと考える一方で、労働者がどう受け止めているかは会社には分からない。会社側に組合を通じて組合員の受け止めを知りたいという背景があり、積極的なコミュニケーションが生まれたと考えております。
組合が果たしてきた役割について、組合員の不安の声はラインマネジメント経由では経営者に届かないので、労組が経営者に組合員の生の声をしっかり届けることをするだけでも組合の存在意義というのはあるのではないかと考えております。
以上です。
○守島座長 ありがとうございました。
続きまして、後藤委員、いかがでしょう。
○後藤委員 ありがとうございます。
本日は御説明をいただきまして、ありがとうございました。どちらの組織の皆さんも、非常に成熟された労使関係の中で労使コミュニケーションを営まれていることがよく分かりました。
その上で3点お伺いしたいと思います。1点目は新技術の導入と言っていいのでしょうか。例えばボッシュさんであれば、資料の中にありましたSMART-iやRFIDの導入であるとか、RPAの開発をしている。三井住友海上さんでは幾つかの取組を総括して「デジタライゼーションの推進」とまとめていただいておりますが、そういった技術あるいは取組を導入する上での労使間のコミュニケーションや労使協議など、労使の話し合いをどのレベルでされているのかということ。
それから、そういった話し合いを持つに当たり、現場の社員の皆さん、あるいは組合員の皆さんの声はどういう形で拾われているのか。先ほど三井住友海上さんは職場会や、アンケートをやられているということだったのですが、とりわけ新技術等に特化して意見を集めているのか、結果、労使の話し合いは如何に職場へフィードバックされているのかということをまずお伺いしたいと思います。
2点目は、三井住友海上さんの資料の最後のほうで触れられていたのですが、技術の進展はこれから先も急速に広がっていくということを踏まえると、将来的な新技術の導入、あるいは技術の発展と、それに伴う環境の変化ということがあると思います。将来に向けて、如何に取り組んでいくのかということに関する労使間のコミュニケーションは、どういったレベルで話し合いが持たれているのか、ボッシュさんにも三井住友海上さんにもお伺いしたいと思います。
最後に、これは質問というより、それぞれ御紹介いただいた取組が非常に整っているものですから、これから様々な会社、特に中小零細企業などにおいては、新しい技術を入れていくに当たり、労使間でコミュニケーションを取っていかなければならないことも出てくると思いますし、この検討会でもそういったことを促していきたいと考えているところですので、中小零細企業等、労使のコミュニケーションがそれほど整っていないところに対して、今後にむけて何か御助言があるようでしたら、ぜひいただきたいと思います。
以上3点、それぞれからお話をいただけると助かります。よろしくお願いいたします。○守島座長 ありがとうございました。
では、今度は北村さんからお願いいたします。
○北村氏 御質問ありがとうございます。
1点目、新技術の運用に関する労使協議はどのレベルで行っているのかという御質問ですが、会社の経営戦略とか事業戦略を決定する経営企画部や社員の人財育成を決定する人事部等の本社各部と協議をしています。職場会や懇談会等、様々な媒体で職場の意見を集め、本社各部に直接伝えに行く。このような形で協議をしております。
2点目、将来の環境変化への対応をどのように労使でどう検討していくべきかという点ですが、新しい技術が産業とか会社にどういった影響を与えていくかについて、労働組合としてしっかり考えていかなければならないということを我々自身が認識しておくことが大事だと思います。
現状の取組として、上部団体の損保労連が中期の重点取組課題として、技術革新が産業や雇用に及ぼす影響に関する調査研究というのを進めております。また、会社にもこの技術革新を調査・研究している専門部がありますので、情報交換をしながら、労働組合として今後の変化などを注視しています。将来どうなっていくのだろうということを会社とどう協議していくかというのは、今後の課題と考えております。
以上です。
○守島座長 ありがとうございます。
今井さん、お願いします。
○今井氏 後藤さん、御質問ありがとうございます。
まず、SMART-iとかRFIDということで、ロジスティクスの改善ですけれども、うちは生産に関わる部分はボッシュプロダクションシステムというところの専門部署がありまして、全てにおいて生産の仕組みをつくっていく部署が中心になっています。そこで起案したものを組合が確認するというよりは、その流れの中で例えば従業員、我々で言う組合員が関わる部分で何かショートしたときには、資料の8ページにあります職場労使協議会がメインの協議体ということになります。そこで解決しなければ、一段上げて支部労使委員会とか中央労使でいろんな協議、レビューをしていますが、今までこういったものを導入するときに労使で何か協議をしたかというと、職労協の中での報告としてはありますが、そこに疑義が発生しない限り協議をすることはないということで、今回の部分も組合員が楽になる話でしたから、我々としても報告を受けて、進めてくれ、そんな協議をしたというのが現状ということになります。
組合員からの意見収集につきましては、こういったAIに限らず、我々ボッシュ労働組合の専従でやっているメンバーが9人います。その9人で、2年任期の中で必ず1組合さんと会話をしていこうということで、職場懇談会というものを実施しています。2年の中で、一度きりになってしまいますけれども、何かあったら必ずフェース・ツー・フェースでという活動はしていますので、意見の収集という意味では、我々の中ではそこが大きなイベントプロジェクトで、それ以外のところは、職場に組合の委員がいますから、これがフットワークを使って、先ほどのような問題があれば当然収集していって、そこで解決できなければ、我々が支部労使委員会とかに上げて会社とやり取りをする。このような仕組みを持っているというところであります。
将来の関係につきましては、今、自動車産業は100年に一度の大きな変革期ということで、皆さんも御存じのとおり、自動運転とかモビリティーというところの開発に没頭しているのがカーメーカーと我々サプライヤーであると思います。こうした情報は、7ページにある事業部労使委員会で相当時間をかけて会社から情報をもらうことになっています。そういった技術革新に対して、何が起こるか、何をすべきか、従業員・組合員はどうやったらついてこられるかという議論は、事業部労使委員会の中で相当な議論を年に度やっていくということになります。そういった大きな変化について継続的にやる仕組みを持っていますから、そういったものを併用していくというのが今後のテーマかなと思っています。
最後の中小零細については、非常に難しいと思います。我々の産別JAMは、ほとんどの労働組合が中小零細ということであります。地方の中でもそういったテーマを執行委員会等々で議論をしていますが、当事者たちからすると、まだ企業体がそういう状況ではないという意見が大半です。ただし、準備をしていかなければいけないという一方での把握もある中で、我々大手がリードしているとすれば、いつもそこで助言するのは、雇用の確保だよ、オートメーションになって人を削除するような施策は真っ向から断るべきだという言い方をしています。ただし、中小の中でも技術革新、AIを使うというところは非常に難しい現状がありますので、これも我々大手が先陣を切るのであれば、引き続きしっかりとアドバイスもしていきたいと考えているところです。
以上でございます。
○守島座長 ありがとうございます。
では、続いて森戸委員、お願いします。
○森戸委員 森戸です。
お二人、非常に興味深い御発表、ありがとうございました。
新技術ということに限らず、組合と会社とのコミュニケーションの在り方一般について、お二方にお聞きしたいのですが、お話を伺っていて、お二人の事例とも伝統的な日本型の労働組合というか、ほとんどの労働者が加入していて、労使協調を前提に経営情報も共有しというオーソドックスな、昔からの伝統的な日本型の労使関係かなと伺いました。先ほど北村さんの発表にもちょっとあったのですが、組合としては組合員の生の声を吸い上げて、それを会社との交渉の中に織り込んでいくということだと思うのですが、そこでITツール、AIが進展してコミュニケーションツールが昔とは大分違ってきていると思うのです。事例の中にもいろんなツールを使ってコミュニケーションを取ったりしていますというお話があったと思うのです。私のイメージする伝統的な組合の人のお仕事というのは、損保さんなどは典型ですが、全国の支店とかに出張ばかりしていて、その声を吸い上げてきて、交渉でそれを会社にぶつけて、ああ、そういう声があるのかという感じのことをやっているというイメージがあるのですが、経営側が、極端に言えば、ツールの進展で組合を通じなくてもいろんな声を吸い上げられるようになっているのかなという気もいたしまして。いや、それはそんなになっていないのかもしれないのだけれども、IT技術とかAIの進展で労使コミュニケーションなり組合の役割が変わってきているのか、労働組合の意義みたいなものに変化があるのかというのが興味のあるところです。それはこの研究会の根本的なテーマかもしれないのですけれども。
お二人には、今の印象というより、もしかしたら先輩から聞いている話と何が変わったかということを聞いたらいいのかもしれないのですが、印象でも構いませんので少し教えていただけることがあれば聞きたいなと思いまして、お二人に質問をさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。
○守島座長 ありがとうございます。
では、北村さんからお願いできますでしょうか。
○北村氏 御質問ありがとうございます。
鋭い御指摘だなというのが率直に思ったところです。10年、20年前と比べると、今の会社は、社員のやりがい等にすごく気を配るようになってきています。それにより労働組合と会社が似たようなことをやっていることもあると思っていますが、会社に言いにくい意見も忌憚なく述べられる点で、労働組合にしかできないことがあると思っております。
○守島座長 ありがとうございました。
今井さん、いかがでしょう。
○今井氏 森戸さん、御質問ありがとうございます。
私も労働組合の活動が20年以上ということになると思います。その変化を体感してきた中でお話をすると、今のITツールを駆使した情報交換とか意見交換というのは、実は会社もあまり望んではいないです。情報を間違いなく共有していこうというツールであるということです。なぜかといいますと、そういったツールを使うと誹謗中傷なども当然入ってきてしまうのです。ただし、フェース・ツー・フェースでその方とお話をすると、また違った意見があるということで、これはどこにでもある話かもしれませんけれども、そういった意味では、会社も組合もフェース・ツー・フェースを根幹に置いています。その中で皆さんに共有する情報を発信するとか、そういうところにITツールを使うという段階でございます。
ただ、労働組合も組合員さんから御意見をいただいて、紙の配布は無駄ではないのかということはよく言われておりますので、機関紙なども、ボッシュ労働組合としてサーバーを1つ会社からいただいたので、そのサーバーを2年前に開設して、情報とかをそこに入れるようにして、皆さんが自由に閲覧できる仕組みをやっと2年前に入れております。今、ちょうど過渡期で、いわゆるフェース・ツー・フェースを推奨する方と、そういったことは全てデジタルでやってくれという方と二分化しているというところなので、もう少し静観しながら、方向性を変える必要があるのかというのを含めて今後の検討課題と捉えております。
以上です。
○守島座長 ありがとうございます。
続いて、戎野委員、お願いしたいと思います。
○戎野委員 御発表ありがとうございました。
既に多くの委員からも御指摘がありましたが、両労組とも日頃から成熟した労使コミュニケーションというものが形成されており、その上に新技術の導入があり、また、今回のコロナへの対応ということで、より一層濃密な労使の対話、協議が行われていると感じられました。
そこで、質問は2点です。新たな技術導入、新たな仕事の仕方、新たな業務体制というものが進む中で、そのときに労働者が一時的にではあれ、新たな仕事を勉強したり、新たな技術を学んだりということで、労働強化といいますか、勉強する時間をつくらなければいけない。また、そのために今ある仕事とどのように調整していくのか。先ほど社内勉強会であったり、デジタルアンバサダーの育成という形で、まさに人に対する手厚い対応があるということは、一方で、それなりの時間や、それなりの職場の調整が必要であったりもしますので、一人一人にとってはストレスを感じるところもあり得るのではないかと思うのです。そこに対して労組としてどのような対応を取られているのかというのが1つ目です。
もう一つ、いろいろな手厚いサポートをしても、ついていくのに苦労される方。先頭を切って走る方は放っておいてもいいかと思うのですけれども、いわゆる底上げ、しっかり後ろをサポートしていく。ここが労働組合の大変大きな力が期待されているところで、また、一つの役割かと思っているところですが、その辺りのサポートについても何か御指摘いただけたらと思います。
以上2点、よろしくお願いします。
○守島座長 ありがとうございました。
では、今度は今井さんからお願いできますでしょうか。
○今井氏 御質問ありがとうございます。
ただいま御提起いただいたテーマは、我々としても非常に難しいということを過去からずっと判断しています。労使で研修関係の協議については、一般従業員が自由に参加できる教育については、オンラインでできる仕組みを持っていますので、そこについては時間中でも時間外でもいつでも参加できるのですけれども、それは自己啓発の部分なのか、あるいは会社が必要とする研修なのかというところでちゃんと線引きをしていますので、会社が必要である研修は当然時間内。労働強化にならない。ただし、自己啓発で受ける研修については費用が発生することもありますし、時間外での研修というのがもう定義されていますので、先ほどどんどん進む人とあまりそこに参加しない人ということで、その人が自分で選ぶということですから、乗り遅れた人へのフォローアップについては、労働組合としてもどうしていくのだという議論はその都度しています。その中で解決できるもの、できないものがあって、これは非常に難しい課題と捉えている状況であります。
以上です。
○守島座長 ありがとうございます。
では、北村さん、お願いできますか。
○北村氏 御質問ありがとうございます。
まず、役割が変わっていく中で、難しい仕事なども任されることに対する労組のスタンスですが、まず前提として、会社が人件費、コストとして従業員を見るのではなくて、従業員は投資の対象として見てもらわなければならない。そうしないと、我々従業員は使い捨てになってしまう。そして、投資の対象として見てもらうためにも、我々は役割変革を進めていかなければいけない。組合としては一人残らず、しっかりと今の会社が置かれた現状なども理解しながら前向きに進んでいこうというメッセージを発信しています。これが労組としてのスタンスです。
次に、役割変革に前向きになれない方はいます。この人達に対するサポートは我々に期待されているところです。例えば直接対話をするということも一つだと思っていますし、職場のサポートは当然欠かせないので、会社に対しては、手厚いサポートを要請していくこともできることの一つと思います。これについては、現在も、まさに苦労しながら進めている状況で、誰一人取り残さずに前に進んでいけるように取り組んでいる最中です。
以上です。
○守島座長 ありがとうございました。
戎野委員、よろしいですか。
○戎野委員 ありがとうございます。
○守島座長 根橋委員と大竹委員から御質問をいただいていますが、まず根橋委員からお願いをしたいと思います。
○根橋委員 ありがとうございます。根橋でございます。
今井さん、北村さん、御説明ありがとうございました。両組織の取組、まさに労使共にコミュニケーションの重要性を理解し、組織ならではの力を発揮している点で大変参考になりました。その上でお二人に3点、そして北村さんに1点御質問をさせていただきたいと思います。
まず、両組織に対してでありますが、お話にありましたように、人とAI等新技術とは補完的な関係にあり、こうした新技術を有効に、かつ労働者が主体的に活用していくためには、目指すべき人材像の明確化、また、適切な人材育成と人材配置が必要であると考えております。どちらの組織においてもそうした確認を行っているという御説明をいただきましたが、求める人材像の明確化、また、そうした人材像と現状を埋めていくために必要な人材育成、教育体系の整備について、特に新技術の導入に際しては、画一的ではない、それぞれの組織・職場に応じた取組が必要になると思っております。その上で、労使協議や労使コミュニケーションで大切にしている点、工夫をしている点等あれば、お聞かせいただきたいと思っております。
また、求められる能力と個人の持つ能力とのギャップを埋めるミスマッチ解消に向けた人材育成について、労働者に働きかけていく際に労働組合が関与していることがあれば、お聞かせいただきたいと思っております。
3点目であります。実際に導入されている様々な新技術や、ボトムアップで具現化したものの御紹介を幾つかいただきました。日常的な、定期的な労働組合と会社側との協議で、職場を熟知する労働者の声や知恵を踏まえて導入に結びついた新技術があればお聞かせいただきたいと思っております。
最後に北村様への質問ですが、資料の28ページのまとめの課題のところで「組合員一人ひとりが取り巻く環境変化を前向きに捉え、キャリアを着実に形成していくことができる環境を整備していくことが必要である」とあり、これが課題であるという御説明をいただきました。大変重要であり、極めて難しい課題であると思っておりますが、今後労働組合としてどのように進めていくべきか、また、どのように関与していくべきか、お考えがあれば御教示をいただきたいと思っております。
以上です。
○守島座長 ありがとうございました。
では、北村さんからお願いできますか。
○北村氏 御質問ありがとうございました。
1点目、求める人材の明確化とかそのギャップを埋めるための研修の整備、どのような労使コミュニケーションがあったかというご質問について回答します。どういう人材を求めていくのかとか、何をしていく必要があるのかということをしっかりと組合員が分かるようにしていくことが大事だと思っています。会社も様々な媒体で伝えていますが、その認識は簡単には深まらないので、できるだけ分かりやすく組合員に伝えていただくとともに、職場のマネネ―ジャーの理解が特に大事だと思います。職場では上司からと部下に対して育成・指導が行われので、彼らが会社の進むべき方向性や求めていく人材をしっかりと認識し、人材育成を進めていく必要があると思っております。
2点目、人材育成について働きかけていく際に労働組合が関与していることについて回答します。組合で組合員意識調査を年2回やっておりますが、調査では、人材育成に価値観高く取り組んでいるか、自己研さん・自己学習に取り組んでいるか、といった組合員の意識を確認しており、結果を会社と共有しながら、必要な研修等について意見、提言を行っております。
また、労働組合としてできることとして、組合員に対する気づきの機会の提供をしております。例えば組合員の皆さんが前向きになれるようなセミナーを企画したり、組合員同士の交流の中で人材育成について語る場をつくったりということをやっております。
最後に、28ページの検討課題「取り巻く環境変化を前向きに捉え、キャリアを着実に形成していくことができる環境を整備していく必要がある」、これに対して組合がどう関与していくかというところです。一つは、環境変化を前向きに捉えるという点がすごく難しく、大事なポイントだと思います。今の社会とか事業環境を踏まえると、この先どういうふうに変わっていくかというのは誰も予想できませんし、どういうキャリアを歩みたいかということに正解はありません。一人一人が主体的に考えるほかありません。そのためには一人一人がその環境変化を自分なりに解釈していく。その中で自分にはどういう役割が担えるか、将来どういう役割を担ってみたいか、と自分自身が主体的に考えることが大事で、組織から与えられるキャリアではなくて、自分が自ら望んでいくキャリアをしっかりと描ける環境をつくっていく必要があります。上司との対話でのアドバイスを通じて自分のキャリアを考える機会を数多くつくっていくことが大事なので、この辺は会社とも考えを共有しながら、会社で何ができるのか、組合で何ができるのかということを考えながら取り組んでいるところでございます。
漏れがなければ、以上です。今のでよろしかったでしょうか。
○根橋委員 はい。
○守島座長 ありがとうございます。
では、今井さん、お願いします。
○今井氏 御質問ありがとうございます。
人材育成の仕組みと組合の関与ということでは、先ほど御説明した9ページのNo.2、人事制度専門委員会という労使の専門委員会の中で、「主な議題」というのは賃金とか人事制度のフレームがメインですけれども、実はこの中で人材育成というテーマもありまして、会社の起案で、これは多岐にわたるのですが、いろんな人材を育てていく中での研修とかそういったものの提案があります。我々は、組合員さんから上がってきたもの、こういった研修も必要ではないのかということで、その議論をする場が人事制度専門委員会です。一番多いのは階層ごとの人材育成になります。一般職や、例えば現場のリーダーになる前の研修、マネジャーに登用するときの研修、そういったものは全て人事制度専門委員会で労使でいろいろ議論しながら決めていく。過去からのそういった仕組みがあります。
どうしても我々組合の立場で、上がってくる意見は組合員さんから多いものですから、管理職のマネジメントについて育成をしてくれというテーマが非常に多い時期がありました。そこは会社も組合の意見を参考にして、カリキュラムの中に例えば組合のユニオンショップ制ですとか労働法制も入れてもらったりして、管理職のマネジメントも含めたところに組合が少し関与している部分は過去にありました。
それから、労働者が生んだ新技術ということでは、先ほど御紹介したRFIDとかそういうものは全部従業員の改善意欲、意見の中から上がってきた部分がありますし、それ以外の仕組みについても、新製品の開発は、会社が従業員から意見を取るピッチナイト、定期的にそういう意見を取ることをやって、いいものには賞金を出したりという仕組みの中で相当あります。
Plantectという農業管理みたいなものは、従業員のアイデアから製品まで行って、ボッシュ・ワールドワイドの中でも認められていたのですが、これはコロナウイルスの関係で事業を撤退したというのもありますが、このプロジェクトは従業員のアイデアからということで、そこには会社も相当力を入れています。そこには労働組合の関与ということはなかなかできませんけれども、そこでの就業バランスですとか、そういったところでは当然労働組合の役割を果たしている。そのような状況でございます。
以上です。
○守島座長 ありがとうございました。
根橋さん、よろしいですか。
○根橋委員 ありがとうございました。
○守島座長 では、大竹さん、お願いします。
○大竹委員 
2点お伺いします。1点は森戸委員の質問と関わりますけれども、コミュニケーションツールの導入による労使関係に対する影響というのは、総合的に評価してどうだったのかということを教えていただければと思います。ボッシュさんのほうだったら、アプリは現場の製造ラインの人はあまり使わないという話がありました。従業員によって違いがあるというのはそうなのですが、こういうツールそのものの導入によるメリットを感じられているのかどうかという点です。これを導入して例えばビデオメッセージがあったとしても、多くの人は見ない可能性があると思うのですが、それは見るような工夫があるのか、義務づけがあるのか、そういう工夫がかなりされていてコミュニケーションの質が上がっていると感じられているのか、実際にはまだまだだというところなのかというのを教えていただきたいというのが1つ目です。
2つ目は、新技術の導入に当たっての問題点をどう克服するかという点です。ボッシュさんのほうだったら、RPA導入で40時間削減ということが起こってくると、その仕事をしていた人は要らなくなる部分があるわけですね。北村さんの御報告だと、雇用の維持を条件にしているとおっしゃっていましたが、それは職種転換は認めるという条件の下で対応されていると理解していいのか。例えば事務から営業へ多くの人が移転したということもありましたし、デジタル人材も育成しているということなら、例えば事務からデジタル人材に変わるような人も考えているのかということです。
もう一つは、ボッシュさんのほうでカメラの導入が1部署しかないということをおっしゃっていたのですけれども、それについて、労働組合として何らかの反対をしているのか、そうでないところで障害があるのか。例えばテレワークの導入で、管理をしていく上でカメラを入れていくということにもつながっていくので、教えていただければと思います。
以上です。
○守島座長 ありがとうございます。
では、北村さんからお願いできますか。
○北村氏 御質問ありがとうございます。
1点目の質問の趣旨を私がうまく理解できていない状況でして、コミュニケーションツール導入による労使関係の影響とおっしゃっていただいたと思うのですけれども。
○大竹委員 向上したのかどうかという意味です。コミュニケーションのレベルが本当に上がったのかどうかということです。
○北村氏 ここでおっしゃっているコミュニケーションツールというのは、例えばWeb会議システムであるとか、そういうことではなくということですか。どの辺のコミュニケーションツールを指していらっしゃるのでしょうか。
○大竹委員 ウェブを通じて例えば経営者がビデオで方針を毎週のように出すとかということも含めて、様々なコミュニケーションツールを使えるようになっているということをお話しになったと思うのですね。それを入れたとしてもあまり向上しないケースもあるのですが、非常に工夫されて効果があると考えられているのか、いや、まだまだフェース・ツー・フェースでやっていかないと、とてもじゃないけど無理だという評価なのかということです。
○北村氏 ありがとうございます。
社内情報番組であるとか動画みたいなものは随分昔から導入されており、それによりどう変わったかは捉え切れていません。少なくとも言えるのは、経営者が考えていることは従業員には伝わらないものですので、繰り返し丁寧に説明していただく必要があると思います。様々なコミュニケーションツールを通じて会社から従業員に丁寧に説明をしていただく機会をつくっていくことが重要なので、引き続き拡充も含めて取り組んでいく必要があると思います。
2つ目の御質問は、新技術を導入したことによる問題点をどう解決していくかということですが、雇用の話とか職種転換の話でいくと、当社の場合は、社員が雇用される段階で何を担うかということが決まっていない、いわゆるメンバーシップ型雇用ですので、新技術を導入するか否かにかかわらず、職種の転換というのはよくある話であり、問題はありません。ただ、新技術を導入したことによって、多くの方が職種を転換していくことになると、そういった人たちのために丁寧に人財育成など、サポートをしていく必要はあると思います。
以上になります。
○守島座長 ありがとうございます。
今井さん、何かありますか。
○今井氏 御質問ありがとうございます。
コミュニケーションツールのメリットということでは、御指摘のとおり、デメリットの部分も一方であるということです。なぜかというと、情報発信の一方通行ということです。やはりフェース・ツー・フェースで往復をしていくということが重要だと。これは会社も認識しています。ただし、一定の情報をみんなが見やすくしたというところのメリットはあるでしょうが、先ほど言われました見に行かない、要するに、見える工夫まではまだしていないというのが現状ということで、これについてはもう一段、二段踏み込んでいくという経過があるということは会社から聞いています。具体的なものはまだ出ていませんけれども、同じ問題意識、課題を捉えているという状況です。
RPAで40時間削減した、その人のヘッドカウントということですけれども、そういう部署は片や残業とか時間外が多かったり、人員不足という問題があったので、それが解消できたというところはあると思いますが、例えば効率が上がって1人工、ヘッドカウントが要らない状況というのは今ないものですから、今後そうなってくるであろう想定は労使で当然しておりまして、人を削るためのものでなくて、人のやりづらさとかそういうものを直していくツールだというところが今回のAIの導入。そこをどこまで肩肘張って言い切れるかというのは、この先まだ微妙です。そこは1つ課題であります。
カメラの導入の進捗遅れについては、相当な費用がかかるということと、先ほど御紹介したラインは小ぢんまりとして、360度カメラで捉えられるのですが、200メーターのラインもあったり、人の動きが多岐にわたるラインとか、そういったところのカメラ導入のメリットはまだ見つけ切れない。人を追うカメラみたいなものを今、検討しているのですけれども、相当な費用がかかるということで、そこについては定期的なビデオ撮影をやって対応しているという情報は私の耳に入ってきていますが、次の横展開をしていくのはなかなか難しいのかなと。
テレワークへのそういった横展開があるのかということですが、これはありません。会社はそういうところは考えていないと。在宅勤務をできる人は自己管理ができる人という条件がついていますから、上司がしっかり判断をして、在宅勤務をしていくということなので、カメラの導入は今のところは考えておりません。
以上でございます。
○守島座長 ありがとうございました。
これで時間がもう来てしまったので、最後にどなたかありましたら。よろしいですか。
それでは、終了時刻を過ぎてしまいましたので、この辺りで今回の議論は終わりにさせていただければと思います。皆さん、活発な御議論をありがとうございました。北村様、今井様、御丁寧な説明をありがとうございました。御苦労さまでございました。
では、次回の日程について、事務局からお知らせをいただきたいと思います。
○高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官 次回の検討会は1月29日金曜日、10時から12時までの開催を予定しております。詳細については追って事務局から御連絡いたします。
○守島座長 それでは、本日の会議はこれで閉会させていただきたいと思います。皆様方、お忙しい中、大変ありがとうございました。終わりにいたしたいと思います。