第7回 職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和2年7月16日(木) 10:00~12:00

場所

労働委員会会館7階講堂
(東京都港区芝公園1-5-32)

議題

  1. (1)職場における化学物質等の管理のあり方について
  2. (2)その他

議事

○化学物質対策課長補佐 定刻より少し早いのですが皆様おそろいですので、ただいまから「第7回職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」を開催いたします。本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。
前回と同様ですが、感染症予防ということで、皆様、マスク着用で間隔を空けての開催とさせていただきますことを、御理解いただければと思います。以降の進行は、城内先生、よろしくお願いいたします。
○城内座長 おはようございます。東京もだんだん危なくなってきました。御参集いただきまして、誠にありがとうございます。まず、事務局から資料の確認と、本日の議事の進め方について説明をお願いいたします。
○化学物質対策課長補佐 本日、お手元のタブレットに議事次第、資料1から資料3まで、そして参考資料ということで、5種類の資料を御用意させていただいております。それから、前回までの資料も下のほうに、第1回から第6回まで格納させていただいておりますので、御確認いただければと思います。
それから、本日の議論の進め方ですが、議事次第にありますように、議事を3つ御用意させていただいておりまして、一番初めに、「化学物質の危険有害性の情報伝達について」ということで、これは前回からの続きということで、その議論を更に進めていただくということで設定させていただいております。2つ目は、前回は資料の御説明まではさせていただきまして、議論は次回ということで御案内したものですが、そちらの議論について中心的に本日御検討いただければと思っています。3つ目は、事務局から今後の進め方について、最後に御提案がありますので、3つ目の議題として設定させていただいております。
○城内座長 今の御提案、段取りでよろしいでしょうか。
                                (異議なし)
○城内座長 ありがとうございます。それでは、議事の1つ目、「化学物質等の危険有害性等の情報伝達について」です。資料の説明を事務局からお願いいたします。
○化学物質対策課長補佐 資料1を御覧ください。こちらの資料は、前回「方向性の案」ということでお示しさせていただいたものから、前回の御議論を踏まえて修正をしたものとして御用意させていただきました。
まず、1ページから順に御覧ください。1ページ目の行政による取組・支援については、前回、特段の異論はないという形でしたので、前回の方向性のまま、取りまとめの案とさせていただいております。
2ページ目を御覧ください。サプライチェーンを通じた取組・支援、ユーザー側の取組みということです。こちらについては、1点だけ修正をしてございます。前回、事務局から御提案させていただいたラベルSDSをサプライチェーンの中で回していく中で、出荷元であるメーカーが製造した製品をそのまま形を変えずに販売するというような、中間の事業者がいる場合、わざわざ中間の事業者の事業者名とか住所などは書かせなくていいのではないかという論点を提示させていただいたのですが、「そういう中間で取り扱う方についても一定の責任は持たせるべきだ」というような御意見もございましたので、今回の取りまとめ案からは、そちらの論点は落としております。ほかは前回のとおりです。
3ページ目、4ページ目を御覧ください。ラベル・SDSの義務対象物質の拡大の議論です。こちらも前回、国がモデルSDSを作成している約3,000物質まで拡大していくという方向性については御異論ございませんでしたので、その方向性で取りまとめをさせていただいております。優先順位の考え方についても、前回御議論の中で、「今、国がリスク評価をやっているときの考え方を踏襲してはどうか」という御意見もありましたので、それも踏まえて、発がん性の高いものを優先しつつ、その他の有害性についても区分の高いものを優先して対象にしていくのだと。それから、労働災害を発生させた化学物質、生産量、輸入量が多い化学物質を優先させて、拡大をしていくという考え方のまとめをさせていただいています。
それから、1点追加しておりますが、4ページ目の2つ目の○を御覧ください。化学物質による労働災害の事例を分析するに当たって、原因となった化学物質がなかなか特定できないという状況にありますので、今現在、各事業所から御報告いただいている労働者死傷病報告の中で、きちんと何を使っていたかということを書いていただくことによって把握を進める、どういった物質が労働災害の原因になっているかということをきちんと分析できるようにしていくということも必要ではないかということで、論点として書かせていただいております。
5ページ目を御覧ください。こちらは、ラベル・SDSの記載内容をどう充実させるかということです。前回いろいろ御意見を頂きましたが、ラベルのピクトグラムだけでは労働者になかなか意味が分かっていただけないのではないかということで、例えばもう少し日本語で分かるような表記を追加するなどしてはどうかということも御提案させていただいたのですが、こちらも「基本的にはGHSのルールに従って、むしろ教育をきちんとやっていくべきだ」というような御意見もございましたので、その論点は落としております。
それから、SDSに記載する項目として、「推奨用途と使用上の制限」を追加するという1つ目の○ですが、前回もメーカー側の責任がどこまでも広がっていくのではないかという懸念などが示されまして、いろいろな御意見が出されたかと思っております。この点は、下の※にもありますが、GHSの中でも、こういったものは使うに当たっての重要な情報ということで記載項目になっていることもありますので、引き続き本日も議論を深めていただければなということで、論点として残しております。
もう1つ、前回御提案したもので、今回は落としているものがございます。前回、SDSの内容が非常に多岐にわたっていて、枚数も多くて、なかなか中小の事業所で読み解くのは大変ではないかということで、1枚の概要のようなものを付けてはどうかということも御提案させていただいたのですが、こちらも、「余り付加的なものをどんどん増やしていくのはよくないのではないか」というような御意見もございましたので、今回は論点から落としております。
最後の6ページ目については、前回特段の異論はありませんでしたので、前回の内容のまま、取りまとめの案とさせていただいております。以上です。
○城内座長 情報伝達については、皆様からおおむね合意を頂いているということで、できれば本日取りまとめの方向で考えたいと思っていますが、この情報伝達について御意見がありましたらお願いいたします。
○宮腰委員 今ほどの取りまとめの内容については、賛成の立場ですが、2点ほど意見がございます。
まず、1点目。それぞれかなり時間軸を設けてやらなくてはいけないもの、検討しなくてはいけないものというのが、かなりあるなと考えております。これから、その部分についてどういったタイムスケジュールでやっていくのかお聞かせ願いたいと思います。
それと、これまでもいろいろと議論がありましたが、5ページにある「ラベル・SDSの記載内容」の部分です。「推奨用途と使用上の制限」を設けるという考え方について、注意を喚起するという意味で、労働者が化学物質のばく露などによる労働災害への影響を軽減させるという観点からは理解しているつもりではいるのですが、やはり「推奨用途と使用上の制限」というように設けていきますと、特に推奨用途に制限を掛けられるということで、産業のイノベーションそのものを阻害するのではないかという懸念を持っているところでもあります。
そういった部分で、これからの議論かもしれませんが、当面、エンドユーザーの所に行きわたるところだけに限定をするとか、一定の期限を設けて、その中で進めていくとか、そういった対策をお願いできないかと思っているところです。以上です。
○城内座長 この点に関しましては、ほかに御意見はございませんでしょうか。
○中澤委員 情報伝達そのものの関係ではないのですが、全体を捉えて要望を申し上げたいと思います。中小企業、小規模事業者全体が、ワンストップで、こういった伝達も含めた上で相談に乗っていただけるような体制が構築されるべきではないかと思っております。
地域産業保健センター等がございますが、かなり間口が広い組織であるという理解をしております。また、医師会が中心となって運営されているところがかなりあると理解しております。入口の所で、ワンストップで相談ができるような窓口というものがあると、情報伝達だけではないのですが、進んでいくのではないかと思っております。
○城内座長 三柴委員、どうぞ。
○三柴委員 前回お休みをして申し訳ありませんでした。
私も、やや総論的なところから少し意見を申し上げさせていただきますと、制度として完成度の高いものを構築するということは第一の要件なのだけれども、それだけで実際に回るかというところが非常に課題だと思っています。例えば社会調査を厚労科研を頂いてやってみたところで、経営者にとって何が安全衛生対策のモチベーションになっているかということを調べると、痛い目に遭った、災害経験を体験した。逆に言うと、それがないと余り乗り気にならないということが、データ上は窺われます。ヒヤリハットでどのぐらいの説得力を持つかというのはちょっと疑問なのですが、少なくとも、痛い目に遭っているかどうかということが、事業者の意識の上では大きいと。
では、事業者、経営者が一生懸命対策をしようとすると、何をやるかと言うと、人を付ける、あるいは体制を整備するということで、事業場内に組織を作ると。その組織に大事な人を置くほど重視している証であるという傾向も窺われたのです。
これは中小では違うかと思ったら、そうでもなくて、中小でも大事な課題だと思うと人を置くのです。今回頂いているペーパーの中で、「人がいないから対策が打てない」という一言があるのですが、これは多分逆で、重視していないから人を置かないのではないかと思うのです。
更に言うと、中小も、重視しないと外部人材も使わないのです。幾ら外部で体制整備をしても、産保センターに詳しい人を置けば自動的に電話が鳴るか、相談が来るかと言うと、そう甘くもないと。恐らく、中小の方でも外の方をいきなり使うというのは信用できないし、自分らが慣れているやり方を変えられてしまうかもしれないし、怖くてしようがないから手を出せないという本音も、恐らく持っていると思うのです。
では、中小の方が動くとすると、どういう要素が必要かと言うと、これは社労士などに聞いていると明らかで、困っている当面の課題に応える、儲かる、分かりやすい、やらないと処罰を受ける、事業者の個性や考え方に合っている。これらが、中小の方が動く共通した鍵だろうと。
そうすると、どういう対策を打てば回り始めるかといったときに、1つには、特衛の活用というのもあるのだろうと思うのです。今は余り動いていません。なぜかと言うと、行政官でも詳しい方が多くないです。たとえ臨検に行っても、余り気付かない、言えないということになってしまうと。逆説的ですが、それだけに、この制度も1つのドライブではないかと思うのです。だから、行政の中で詳しい方をちゃんと育て、この制度を適正に活用するということも非常に重要で、そういうことがあって初めて、必要な情報が出てくる。情報がほしいから、では、どういうフォーマットがあれば、必要な情報が手に入るかということになってくるわけで、ドライブを設けないで、ツールばかり作っても、なかなか活用され難いのかなと思います。
もう1つは、ゲートキーパーというものも必要かなと思います。胆管がんのときもそうだったと思うのですが、要するに臨床医の方が、こういう疾患が見られるということは、何か事業所に問題があるのではないか、職場の作業環境に何か問題があるのではないかと疑って、通報するとか、あるいは本人に対して、こういう相談先があるから行ってみなさいと案内するとか、自殺対策でもゲートキーパーは1つの鍵だったわけですが、化学物質対策でも似たような面はあるのではないかなということは感じておりました。
○城内座長 永松委員、お願いします。
○永松委員 2点ほど、今後の進め方について意見がございます。まず、情報伝達を受ける側、ユーザーの取組の中で、一般消費者向けの製品であってもということで話が進められてきまして、こういう場合も当然必要であろうかと思いますが、この中で、販売業者、ここで言いますと販売元ですが、販売元は一般消費者向けに販売しているのだけれども、それが知らないうちに事業者で使われているということになりますと、そういう事例がどれぐらい出てくるのかとか、事業者にとって、それがどれぐらいの業務上の対応が必要なのかとか、そこら辺が、今のままでは十分には分からないということがありますので、これは具体的に考えていく必要があろうかと思います。
例えば塗料とか洗剤ですと、私ども一般消費者も使えるわけですが、これを使っている事業者というのはどういう人たちなのかとか。例えば一般の工務店の方なのか、あるいは洗剤であれば食堂なのか。そこら辺についてよく考えてやらないと、なかなか事業者側も実際には対応ができない、負荷が重すぎるようなケースも発生すると思うのです。それを今後のところで是非検討をお願いしたいと思います。
それから、一般消費者向けにということであれば、ある程度一般消費者の方の化学物質に対する知識であっても、安全が保たれる製品であるというのが前提だと思うのですが、それをもって更にSDSを付けるということになると、それはどういう場合に、そういうのが必要なのかというのを、是非ここで検討していくべきだと思うのです。やはり、一般消費者向けのものに書かれているものであっても、まだ事業場では災害が発生する事態というのは、具体的にどのようなことなのかということを踏まえて、具体的なところを進めていかないと、実際の、事業者には実行上大きな問題になろうかなというように思います。
2つ目は、対象物質を今度は3,014物質にまで拡大するという中で幾つかございまして、先ほどもありましたが、この3,000までやっていくとなると、ある程度の移行期間がないと、事業者が付いてこられないということは当然あろうかと思います。
一方、今、国が作成されている3,014物質というものについて、この下にどういうものからやっていくということが書かれていますが、これは実際に3,014物質を一気にこのようにするのか、あるいはここの下に書かれているような観点から優先順位を付けて、ある年数をもって、こうやっていくというのか。そこら辺が1つ、事業者にとっては大きなところになろうかと思います。
それから、一方で、3,014物質の、ここに書かれた毒性等以外のデータというのが最新のものになっているかどうか国として、今どうされているのかということも確認すべきであるという意見も出ております。したがいまして、ここに書かれた有害性を優先順位にするのだけれども、実際に広げるときには、1個ずつの最新の情報になったものから、ある程度一般業者も使っていけるようにしないと、結局、最新の情報を載せましょうという考え方と相反するところも出てこようかと思うのです。その点につきまして、今後のところでしっかりと考えていく必要があろうかと思います。以上です。
○城内座長 そのほかにございますでしょうか。漆原委員、お願いします。
○漆原委員 基本的には取りまとめの方向に賛成したいと思います。細かいところで、例えば6ページ目の所に、「事業場内での取組」の自社の労働者に対する取組の中の2つ目の○が「学校教育」になっています。そうすると、文科省も対応するような話になってくると思うのです。学校教育自体は人材育成としてとても重要だと思います。ただ、事業場内の取組として学校教育が来ることに違和感がありますので、ここに入れるのは適当ではないと思います。
検討会の範疇とは違うのかもしれないのですが、学校段階において、ラベルや化学物質の教育を行うことについては、とても重要なわけで、事業者や労働者以外の者に対するリスク教育、広げるとそういう話になると思うので、既にそういったことは環境省やの省庁もやっていると思うので、省庁を超えて、政府一丸となって、化学物質の基本的な教育というのは進めていく必要があり、それは項目としては、また別途1個講じたほうがいいのかなと感じているところです。
それと同時に、そういったことを通じて、危険性及び有害性が明確に表示されていなければ安全であるというような誤解を生みかねない状況を、回避していく努力も必要なのかなと思っているところです。以上です。
○城内座長 そのほかにございますでしょうか。よろしいでしょうか。では、事務局からお願いします。
○化学物質対策課長補佐 幾つか御意見を頂いたので、事務局から補足できるところは補足したいと思います。
まず、時間軸のお話が宮腰委員、永松委員からございました。ラベルSDSの義務を拡大するというのは、当然、いきなり3,000に増やすというのは現実的にはできなくて、当然ここに整理してあるような優先順位を考えて、まず優先すべき、特に危険有害性が高いものから義務化の対象として、これは政令改正ということが必要になってくるわけですが、そういう手続を進めていくということになると思います。そこは、突然ここで決まったから3,000になりますということではないことは、御理解いただければと思います。
それから、一般消費者向けの御議論もあったのですが、この「一般消費者向けの製品」という表現が、もしかすると適切ではないのかもしれないのですが、今、現状で、一般の家庭用で使うようなものではない、業務用の洗剤とか消毒液といったものが、インターネットとか店舗でも売られているという現実がありまして、今の労働安全衛生法上の整理というのが、誰でも手に入れられるような状態のものというのを「一般消費者向け」という扱いにしてしまっている関係上、明らかに業務用の製品であっても、なかなか対象にできていないという現実がありますので、まず、そこを押えていきたいということです。本当に一般家庭のみで使うような洗濯洗剤のようなものまで初めからターゲットにしようという思いでこの議論をしているのではなくて、昔と違って、販売形態が非常に変わってきているという状況を捉えて、明らかに業務用に使うような製品というのは、きちんと対象にしていくべきなのではないかというのが、まず第一歩かなというように思っております。
具体的に、それを対象にするための手段をどのようにしていくのかというのは、おっしゃるとおり議論を深める必要があるかなと思いますが、方向性としては、そういうことで考えているということで御理解いただければと思います。
それから、国が作成しているモデルSDS、モデルラベルの情報の更新の話もございましたが、一応、今、国のほうで過去に作ったものも含めて、特にGHS分類が変わったもの、危険性及び有害性の中身が変わったものについては、情報をキャッチして更新していますので、基本的に今公開しているものは、全て最新の情報になっているという前提で御理解いただければなと思います。
数が増えていく中で、メンテをどうしていくかという話はあるのですが、そういう最新の情報を公表していることを前提での義務物質への追加をしていくということなのかなと考えております。
それから、もう一点、宮腰委員から御意見がありました「推奨用途と使用上の制限」を項目に追加するという件については、これは正に御意見にもありましたとおり、ユーザー側がこういう使い方をしてはならないということを厳しく制限するというよりは、もともと作ったときには、このように使うことを想定して作っていたという情報をユーザーに伝えることで、ユーザーはそれ以外の使い方を絶対にしてはいけないということではなくて、それ以外の使い方をするのであれば、ユーザー側できちんとリスクアセスメントを行い、リスクを認識した上で、ユーザー側での管理が必要だということだと思います。メーカー側が全てを網羅して用途を示し、それ以外は全て禁止するのだという趣旨ではなくて、メーカー側が作ったときに想定できる範囲内で、そういう情報をサプライチェーンの中に伝えていくということが大事なのではないかと考えています。
○城内座長 情報伝達に関する議論なので、GHSサイドから、コメントしたいと思います。御存じのように、日本では危険有害性に関する情報を分かりやすく伝えましょうというのは、安衛法の57条しかないのです。ところが、日本でGHSを議論するときはいつもそうですが、残念ながら話が対象物質の多いSDSから始まります。これは常にそうです。そうすると、SDSがあって、それでラベルを作るというのは確かにそうなのですが、情報伝達で大事なのはラベルなのだというのは、GHSでも言っているのです。
日本の最大の欠陥は、消費者製品に関する情報伝達について規定した法律がないということです。そうすると、情報伝達を議論するのは安衛法と化管法のところのSDSに関わるところでしか話が出ないので、必ず議論がSDSから始まります。そうすると、先ほど永松委員からもあったように、SDSを全部に付けようという話に、どうしてもいってしまうのです。
だけれども、そうではなくてラベルだけでいい。特に消費者製品はそうなわけですが、ラベルだけでいいということになっていて、しかし、そのラベルをカバーする法律がないので、安衛法の中で話を始めると、やはりSDSから来るという、いつもそこが問題になっているのです。これは20年来そうです。
なので、安衛法の中で考える場合は、それはしようがないのですが、安衛法の57条と57条の2と分かれているので、それは少し分けて考えたほうがいいかなという気もしています。これはほかの法律との関わりもあって簡単ではないですが、ラベルはラベルでちゃんと議論を通す、SDSはSDSの中での議論をする、やはり分けたほうがいいかなという印象は持っています。
そのほか、情報伝達に関して、委員の方々からは御意見はないでしょうか。よろしいでしょうか。
ありがとうございました。それでは、この論点については、また事務局でまとめていただいた案で取りまとめたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
                                  (異議なし)
○城内座長 では、よろしくお願いいたします。
続きまして、議事の2つ目です。「事業場における化学物質等の管理・対策」の議論に進みます。事務局から、御用意いただいた資料2は前回も御説明いただいたものと同じですので、その説明は省かせていただいて、追加の補足説明があればお願いいたします。
○化学物質対策課長補佐 それでは、今、座長の方からもお話いただきましたとおり、資料2の説明は省かせていただき、本日追加で御用意させていただいている参考資料だけ簡単に御紹介をさせていただければと思います。
まず2ページ目、参考資料1の一番初めの資料ですけれども、資料2の一番初めの議題にあります中小企業に対する対応をどうするかという御議論を深めていただくに当たって、一口に中小企業と言っても様々な段階にある事業場があると思います。そもそも、労働安全衛生法を知らないなど、化学物質について全然理解が進んでいない事業場を第一フェーズとしておりますけれども、それからレベルが上がっていくに当たって支援すべき内容も変わってくると思いますし、支援のツールといいますか、体制も変わってくると思いますので、少し丁寧に分けて議論したほうが具体的な対策につながりやすいのではないかということで御用意をさせていただいた資料でございます。
3ページ目の資料は、何度かこの検討会でもお見せしているものですけれども、リスクアセスメントを実施していない理由ということで、先ほど三柴先生からも順番が逆ではないかというお話もありましたが、これは統計調査の結果ということで参考に御用意をさせていただいております。
4ページ目、5ページ目以降のものですが、こちらはリスクアセスメントの議論に当たっての資料ということで、法令上の個別具体的な規制ではないもので、どういう取組をしているかということで衛生基準を参考に資料3として載せさせていただいております。
それから、参考資料4はリスク評価の中でやっているものでございますけれども、「がん原性指針」ということで、法令上の義務という形ではないけれども各事業所のほうにお願いをしている指針ということで御紹介をさせていただいております。
10ページ目のほうに行きまして、これは1ページ目の論点の最後の保護具の関係の資料ですが、この検討会の中でも持田様から御紹介いただいたアメリカでの保護具の考え方を参考に資料として付けさせていただいております。
16ページを御覧ください。こちらは厚生労働省から出しているマスクの選択、使用の考え方の通達ということで、こういったものもお示しをしているということで参考で付けさせていただいております。
少し飛びますが24ページ目、資料2の論点としては2ページ目のほうになりますけれども、管理濃度がかなりこれまでの対応で下がってきているものが多いということで、なかなか管理濃度以下に管理することが難しい事業場も出てきているのではないかという論点に関する資料です。
26ページ目、これも何度かお出ししている資料ですが、年々、管理Ⅲの事業場が増えてきているのが現状であるということをお示しする資料でございます。
27ページ目以降は健康診断に関する資料です。資料2の3ポツ目、特殊健康診断の頻度をどうしていくかということについての議論の参考資料として、今、現状の特殊健診の対象者、それから頻度がどういう規定になっているかの資料でございます。
28ページ目、こちらは長期保存のデータの保存の在り方・管理の在り方をどうするかという論点の関係で、今、法令上30年ないし40年の保存が義務付けられているデータにはどういうものがあるかを整理したものが28ページ目の参考資料10でございます。
29ページ目、30ページ目は既に動いている仕組みでございますけれども、トンネル建設労働者の健康管理情報というもの、これは実際は建災防さんのほうが運用されていますが、第三者機関として管理して運用するという仕組みがあるということで御参考に御用意をさせていただいております。
一番最後の31ページ目ですが、監督署への届出として、資料2の2枚目にあります作業環境測定結果の届出、それから一番最後の論点にある遅発性疾病をどういうように把握していくかという議論の参考として、どういったものが今、監督署の報告として義務付けられているかということを整理したものでございます。以上、御議論の御参考にしていただければと思います。
○城内座長 ありがとうございました。この論点について、資料を三つのテーマに分けていただいているので、それに沿って順番に御議論頂きたいと思います。まず資料2の1枚目、「現行の制度の徹底」についてということで、御意見がありましたらお願いいたします。高橋委員、お願いします。
○高橋委員 ありがとうございます。今回、この検討会の準備といたしまして、加盟いただいている組合の役員の皆様からヒアリングをし、御意見を頂戴しておりますので、その辺をベースに発言させていただければと思います。
まず、現行制度の徹底ということでいきますと、化学物質の管理だけではないのですが、労働者の安全意識の啓発・周知にはまず事業主あるいは管理者の意識、認識を高めていくのが一番重要ではないかと思います。そうしないと作業者まで伝わらないということです。
先ほどの資料の中に、リスクアセスメントがどうしてできないかが出ておりましたけれども、リスクアセスメントのやり方が分からないからやっていないというのは、やはり働く側としてみたら、作業者の健康や安全について軽視しているのではないかというように思わざるを得ません。やはり、これを正していくということが重要と考えます。
先ほど、三柴先生のほうからも御発言がありましたが、やはり事業主の意識が変わらないとなかなかできないのではないかと思います。ですから、現行制度を確実に実施させていくためには、これまで以上に行政による監視・指導を継続して行うよりほかないのではないかということで、御意見を頂きましたので紹介させていただきます。
○城内座長 ありがとうございました。三柴委員、お願いします。
○三柴委員 たびたびの発言で恐縮です。以前、某監督署長の方から、管轄地域での化学物質中毒を含めた災害の提言に有効だった方法の一つとして、情報提供をしたと。とにかくどんどん現場に出ていって、強面の顔も一面では見せるけれども、とにかく親しくなって、どんどん行政が持っているもので出せる情報は、災害情報をどんどん出していった。ファックスで送っていったということでした。
やはり疫学調査等々をして、情報を行政が持っていく、行政管轄の研究所等も持っていく。こういう研究レベル、分析レベルという情報の収集も大事だと思うのですが、今起きている問題の本質の1つは、中枢での意識や情報と現場が乖離してしまっていることです。だから単純に、災害情報を出せるものはどんどん回していく。これだけでも実は結構変わるのではないかと思います。
○城内座長 名古屋委員、お願いします。
○名古屋委員 先ほど、リスクの理由の中で人材がいないとあるのですが。聞き方によってはこういう回答が出るのだけれども、ちょっと分からないのは、もしかしたら中小零細で、そういうことを実施するための人材を育成するだとか、あるいはそういう分野の専門の人を雇うためのお金、要するに金銭的な補助というものがないので結果的には人は育てられないし、実施してくれる人を雇えないとか、そういうことに対して、やはりある程度そういう援助的なものもあることによって少し進むのではないかと思うのです。このアンケートだけ見るとそれが何も見えてこない。アンケートの聞き方だと思うのです。本当は安全やリスクのところをやりたいのだけれども、何か金銭的なことがあってできないのかなという聞き方もあっていいのではないか。もし、そういうことがあったら、少しでも中小・零細の所では人材を育てたり、人を雇う事でそれに力が注げるのではないか。ちょっと分からないのですが。そういう気がしました。
○城内座長 ありがとうございました、ほかにいかがでしょうか。宮腰委員、お願いします。
○宮腰委員 ありがとうございます。保護具の関係ですが、この中の呼吸用の保護具であったりとか手袋の使用の部分、こういった使用や管理の部分について、その支給や教育について安全配慮義務の中であると思っておりますが、それを使う側の我々労働者側としましては、使用義務は労働者にも掛かってきていると思います。
その中で、やはり現場の中から結構不安視されているのは、特にナノ製品に関しての呼吸器で、今使っているものが正しいものなのかどうか、不安ながら作業しているとも伺っています。やはりきちんとした情報等を我々労働組合としても広めていきたいと思っておりますので、前広にそういった情報を出していただきたいと思っております。
○城内座長 ありがとうございました。名古屋委員、お願いします。
○名古屋委員 マスクの件なのですが、意外とナノ粒子は、通常の防じんマスクでもよく採れるのです。私どももナノ粒子の問題が起こったとき、粒子が小さいから通常の防じんマスクでは余り捕集できないのかなと思っていたのですが、研究をしてみると防じんマスクの捕集原理から、0.3μm付近の粒子は捕集し難いですが、ナノ粒子の領域は意外と拡散効果によってかなりよく採れているのです。実験データは幾らでもありますからお見せすることができますので、心配している以上に防じんマスクでナノ粒子は採れています。
○城内座長 その他ございますでしょうか。
○永松委員 2点あります。先ほど災害情報が重要だというお話が出ました。ちょっと教えていただきたいのです。実際に化学物質を扱った上での労働災害、実際にどういうものを扱ったかという情報も十分ではないというお話もありましたけれども、厚生労働省さんのほうで災害事例の事故調査とか、そういうようなものをやられているものがあるのかないのか。申し訳ありません、私も存じ上げないのですが、例えば高圧ガスだとか危険物の事故ですと、事故調査委員会等がございまして、そこで出てきたものが災害情報として、広く一般化されて公表が進みやすいという点があるかと思います。そこら辺についてちょっと教えていただきたいというのが1点です。
今、名古屋先生からも出ましたが保護具の件につきまして、マスクについてはかなり技術的な検討が進んでおりますが、手袋のほうですが、こちらは厚生労働省さんの御協力をいただいて、私どもも何らかの形でやっていこうとはしているのですが、これについては政策的にも強力に進めていただければと思います。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。ここまでで事務局から何かありますか。
○化学物質対策課長補佐 災害事例のお話が幾つか出ておりますけれども、当然化学物質によって、全てではないのですが重大な災害が発生した場合というのは当然労働基準監督署が現地に調査に行って、災害調査という形で原因の調査等をするというのはほかの事故と同様でございます。
災害事例の公表としては、調査そのものを公表するというよりは、我々のほうで、特によく起きているような典型的な災害というものを、個別の事例そのものではなく災害事例として、職場の安全サイトに公表させていただいております。もしかすると、それが見にくいとか使いにくいという御意見もあるかもしれませんが、なるべく災害事例というのは皆様にも身近に分かっていただけるツールだとは思っておりますので、今後も充実させていきたいと思っております。
○城内座長 ありがとうございます、そのほかいかがですか。三柴委員、どうぞ。
○三柴委員 情報の伝達の仕方というのが実はかなり重要だと思っています。要するに、安全サイトに載っている情報というのは詳しくなるほど価値が分かる。安全衛生関係の情報を調べて検索すると、安全サイトの情報はすぐ出てくるから、よくできているなというか、分かりやすくまとめていらっしゃるなと思うのだけれども、日頃忙しい事業場であの情報をわざわざ拾いに行くかといったら普通はしない。
つまり、伝えるときにはレセプターとの相関の問題なので、相手方が興味持ちそうな伝え方・タイミングで伝えないといけない。だから、今起きた生の情報ですよというニュース性も結構重要で、具体的に個別の特定ができる情報にしなくても、実はこういう問題が起きて今調査中であるから、そのギリギリのところ、そこは皆さん注意してくださいねと。安衛研とかが行政権限で調査できるか・できないかくらいの、そういう情報です。そういうものが実は現場サイドからすると知りたい。だから、そこはちょっと社会心理的な配慮というか、広告業的な工夫が必要なのかなと思います。
もう一つだけ、あとは情報を出す側と取る側の信頼関係が要るということだと思います。
○城内座長 ありがとうございました。中澤委員、お願いします。
○中澤委員 リスクアセスメントを実施していない理由ということで、人材がいないというのがかなりウエイトが高いわけですが、中小企業・小規模事業者ではこのことが大きなネックとなっているように思っております。そういう面を踏まえると人材がいない所に対するフォローアップというか支援策、現在もあると思いますが更に進めていただければと思います。
参考資料2のところ、「リスクアセスメントを実施していない理由」の図の中で、リスクアセスメントの対象は化学物質以外のものも入ってくるわけでしょうから、全体でいくと実施率は45.9%、それに対して法定物質である化学物質についてと法定外の実施率が書かれているのですが、化学物質に関してのリスクアセスメントの実施率というのは他も含めた、全般と比較すると、実施率は高いというようにこの図では見えてしまうのですが、その辺はどのようにお考えでしょうか。
○城内座長 事務局、お願いします。
○化学物質対策課長補佐 御存じだと思うのですが、今、リスクアセスメントの義務化がされているというのは化学物質についてのみということなので、結果として化学物質が高めになっているというのはあるかと思います。
折角なので、先ほど、三柴先生からもすごく大事なことを言っていただいたので、我々も考えなければと思っているのですが、災害事例の公表の仕方として、おっしゃるように「安全サイトに載っています、見に来てください」ということでは、なかなか情報が伝わりにくいのではないかということは我々もそう感じていて、例えば今、こういう災害が増えていますとか非常に多く起こっていますというものをピンポイントで、災害事例も一緒に出していくというような出し方の工夫も含めて、我々もどうすれば現場に危機感が伝わるかも含めて、よくやり方を考えていかなければいけないなと思っています。
○城内座長 そのほかに何かございますか。では、私からもう少し発言いたします。現行制度の徹底ということで、今までもいろいろな法律や法令が出てきました。私が一番気になっているのは、49人以下の事業所です。10~49人の所でも届出をしなければいけないという義務が掛かっているものもあります。現状の災害の件数等を考えると、やはり49人以下の事業所を何とかしないと、高止まりと言いますか、減っていかないのではないかという懸念をしています。
日本の労働安全衛生は、多分、労働安全衛生が施行されて、それに意識がいったということもあると思うのですが、私が現場の改善等を見ている限り、生産性の向上や品質管理が日本の労働安全衛生を大分進めて貢献してきたと思います。
現状の中小企業のことを考えても、先ほど、三柴委員や中澤委員からもお話がありましたが、特に中小の人たちが気にしているのは安全衛生だけではないわけです。品質管理をどうするのか、メンタルヘルスをどうするのかなど、いろいろなところで悩んでいらして、その中で、では、安全衛生をどのように考えていけばいいかというところに話がいかないと、多分、進まないのではないかと思っています。そういうことを受け止めた上で、なおかつ、労働安全衛生について、トータルでアドバイスできるような人を送り込まないと頭打ちになるのではないかと思っています。
そういうことで、特に制度として49人以下の所にどのように情報を届けるかということと、そのニーズを拾い上げる。当然、労働安全衛生も含めたニーズを取り上げて、情報はこういう所にあるのだということを伝える人を育てる必要があるかと思っていますので、是非、その辺りを検討していただけるといいかと思っています。これは必ずしも現行制度の徹底、つまり、法令を守らせるということではなくて、発想を少し変えて支援をどのようにしていけばいいのかということが必要なのではないかと思っています。そのほかに何かございますか。
それでは、次の論点にいってもよろしいでしょうか。では、資料2の2枚目の「現行制度の課題への対応」について、御意見がございましたらお願いいたします。
○名古屋委員 1番目の管理濃度が大幅に低下した物質についてです。確かに局所排気装置など技術的に困難な部分があると思います。そのときには、大前先生も検討委員会にいらっしゃいましたが、インジウムの場合です。従来の管理濃度0.1(mg/㎥)を、0.01(mg/㎥)に変更しようと検討していたのですが、変更を検討している途中で、発がん性の動物実験の結果報告があり、その濃度が0.0003でした。0.0003(mg/㎥)の濃度が管理濃度になると、現場では技術的に対応することが出来ないということで、要するに、管理濃度は当面定めないことにし、作業環境測定の結果に応じた呼吸用保護具を使用することによって、対応することになりました。
ある意味では、現場の濃度測定することによって、その現場の濃度に合ったマスクを選定する。最近ではマンガン及びその化合物もそうなのですが、作業現場で個人サンプラーでばく露濃度を測定し、その濃度に合った呼吸用保護具を選定し、作業者にその呼吸用保護具を使用させるという流れができてきていますので、そこで対応できるのかと。ただ、前もお話したのですが、最終的な砦は呼吸用保護具になってくる。今、日本ではフィットテストの制度がないのです。諸外国はそうした制度があるのですが、日本はそれがまだないので、多分、この委員会の中でそういう制度を作るということを約束をしてくれていると思っているので、そこが進めばこことリンクしていくのではないかと思います。
あと、第3管理区分のある事業所が行政に測定結果を報告することの義務は難しいと思うのですが、あったほうがいいと思います。昔は電子媒体がないので、膨大の測定結果の書類が行政に集まるので、保管場所などに苦労しますし、必要なときに必要な書類を探すのも難しいのですが、今は電子媒体で受け取ってハードディスクの中へ入れておけばいいだけで、後で何かに使うときに容易にいろいろなことに使えます。ただ、これは事業者に対しても負担にはなりますが、やはり行政側でこれから現場の状況を見ながら何かを決めたりする時に大いに役立つ資料になると思いますので、できるだけ届出は義務化してほしいと思っているということです。
○城内座長 そのほかに何かございますか。
○漆原委員 今、名古屋委員のお話にあった作業環境測定の報告は、確かに行政に報告をすることは重要であると思っています。加えて、例えば、特殊健診を受けるに当たり、作業環境測定の結果が労働者が受診する健診機関には提供されていないケースがあります。行政もそうなのですが、健診機関の医師の手には、そういう資料は当然にあるべきだと思っております。それも併せて御検討いただければと思います。
また、特殊健康診断の結果の保存についてです。連合として、厚労省の他部局が所管している審議会等でも発言しているのですが、特殊健康診断の結果もPHRのデータとして扱い、長期間デジタルデータとして保存し、それを本人も参照でき、かつ、医師・産業医の先生も参照できる環境を整備するというのが一番重要なのではないかと思っておりますので、それも併せて、よろしくお願いいたします。以上です。
○城内座長 そのほかに何かございますか
○大前委員 先ほどの名古屋委員の御意見の追加のようなものです。どうしても管理濃度が下がると現実的に管理できず、測れば必ず管理区分3みたいなものが出てきてしまうのです。これは工学的な対策を打ってもほとんど不可能に近いものが結構あるので、場の管理も重要ですが、ここにある個人ばく露の管理の観点に考え方を移さないと、もともとそういう考え方にしないとリスクアセスメントは成り立たないと思いますので、次の方向性としては、場の管理もいいのですが、個人ばく露の管理の方向性にどんどん進んでいっていただきたいと思います。
それから、先ほどインジウムの例をおっしゃいましたが、実はインジウムは、最終的には管理濃度を作らなかったのです。検討したのですが現実的に無理だと。ヒアリング等を行い、実現不可能で、この数字を出すとどの会社も管理区分3でお手上げだということが分かったので、あのときは結局作らないという結論になりました。
そういう物質はこれからも出てくると思います。特に有機溶剤系ですと、蒸気圧が高いのは非常に難しいのです。幾ら低くしても無理という状況になってしまいますので、是非、個人ばく露量を管理という方向にいけばいいと思っております。
○城内座長 ほかに何かございますか。
○明石委員 2つ目の○の管理3の報告の所です。これは事業者にとって影響が大きいので、私のほうでヒアリングをしてみました。総括的に申し上げると、法令上、既に取るべき措置は決まっているのでそれを粛々とやっていると。ほとんどの企業では個人の健康確保措置も併せて実施しているというところで、一律に報告義務を課すのは少し過剰ではないかと思っております。
それから、先ほどもこの御意見が出ましたが、特殊健診の所の次の所です。これは健康診断の結果、作業の記録の物質の問題ですが、一度申し上げたことがあるかもしれませんけれども、今は記録自体もPHR並びに兼業、副業等の促進もあるので、できるだけ個人に付けていただいたほうがいいのではないかと考えております。以上です。
○城内座長 ほかに何かございますか。
○永松委員 管理3の事業場の件です。これを課しているということは提言すべきだということはそのとおりだと思います。やはり報告することも1つの手段だとは思うのですが、報告した後にどのようにするのか。それから、今、正に議論されているように設備的な管理だけでは難しいということであれば、その代替手段も示せるような報告の上でやっていかないと、結局、報告だけの対応になり対策の実行が難しいという事業者の受け止め方も多いかと思います。
したがって、管理3での業務を実際に健康な状態とするため、保護具等を使った上でどのようにしていくのかということを示すことも併せた上で、報告する義務も一緒に考えていってはどうかと思います。
○城内座長 そのほかに何かございますか。現状について、事務局から何かありますか。
○化学物質対策課長補佐 補足いたします。管理3の事業場は、多分、2種類あると思っています。1つは、今、御議論に出ていたように、そもそも濃度を下げるのが技術的に難しいという事例と、きちんと設けるべき局排を設けていない、稼働させていないなど実施すべき措置を実施していない事例の両方あると思っております。
前者は、今、御意見を頂いたように、解決策を示さないまま、管理3は問題だと言っても仕方がないというのはおっしゃるとおりだと思います。これは論点1ともつながりますが、今後どういう仕組にしていくのかという御議論はやっていくべきだと。後者は、そういう事業場も一定数ある中で、我々がそういう事業場をどのようにつかまえて改善を求めていくかということも大事なのではないかということもあり、両方を含めての御議論になってしまいますが、そういう問題意識を持っているということは御理解いただければと思います。
○城内座長 ほかに何かございますか。
○三柴委員 現状、作業環境管理と特殊健診の対象項目がそろっていないのはなぜかということを関係の方に聞いて調べてみると、いろいろいきさつはあったみたいです。作業環境管理で取れるデータがあるからといって、それが特殊健診で出てくるとは限らない。逆に、特殊健診で引っ掛かったデータから作業環境管理にフィードバックすることもできるから、ずれていてもいいのだという意見も出てきました。
では、どのようにしたら現場に合った方法を実効的にやれるのかというと、結局は政策も追求してきたように、作業環境管理をきちんと事業場に合ったデザインを組んで、体系的にやっていくことが1つだと。事業場ごとの有効な作業環境管理のデザインを組むためには専門家が要るから、一般知識もあるし事業場にも詳しい人を育成しないといけないのだと。また、人の問題になってきて、人がいないねで、また堂々巡りということになってしまっている。制度にも隙間や齟齬があり、それを埋めるために人が必要、でも、人がいないので千日手ということではいけません。
やはり、どこから手を付けるかというと、背中を震撼させるというか、いろいろな信頼関係を作って情報が渡りやすいようにして、なめてはいけないという情報の渡し方をしていくということが大事なのかと。同じことばかり言ってすみませんが、そういうことです。
○城内座長 ほかに何かございますか。
○大前委員 今の作業環境の測定の結果と特殊健診の間の関連は、一次健診の最初の項目に作業条件の調査がようやく入りました。では、どのように作業条件を書くのかというと、現段階では作業環境測定の結果、管理区分を書くしかないであろうと。そういう形で健診をやるドクターがそれを見ながらやるとようやくなりましたので、そこの関連は少し付いたのですが、今おっしゃったように、作業環境測定の結果を、専属産業医はともかくとして、一般の健診機関の健診医は与えられない状態でやっているのが現実です。そこのつながりはしっかりやっていかなくてはいけないと思います。
それから、報告の義務が大変だというお話もありました。ネット上でできるようになるから大したことはないだろうというのも1つですが、今、実際に特健の報告が求められているわけです。特殊健診で何人ドクターと話をしたかとか有所見者が出たかとかということが求められているので、そこに1行加えるだけで構わないと思うのです。別に新たに作業環境測定報告書を作らなくても、特健報告書の一部に作業環境はどうなのかということを加えればいいだけの話だと思うので、新たにフォームを作ってしまうと大変かもしれませんが、やり方によっては、それほど負担が掛かるという気はしないのです。
○城内座長 ほかに何かございますか。
○高橋委員 3つ目の○の、特殊健康診断は一律になっているという点についてです。中小の加盟組合から、今のまま一律でいいのではないかという意見がありました。背景にあるのは、人がいないからということなのかもしれません。作業者一人一人のばく露の状態を管理するのは逆に難しく、その管理が煩雑になっているのであれば、作業の程度は関係なく一律でやってもらったほうが、確実に実施できることになるのではないかと思います。
○城内座長 ほかに何かございますか。
○大前委員 私は、その御意見に反対です。現場を知っている産業医であればあるほど、この健診は無駄だと分かっているわけです。作業環境管理の関連でいくと、例えば、第1管理区分がずっと続いている所ではやる必要がないのです。というのは、ばく露がなければ影響を受けないわけです。まず、ばく露が大事であり、環境濃度が大事で、健康診断はその次にくるものなので、健康診断が第一優先という考え方は間違っていると思うのです。
私は管理区分、若しくは、ばく露濃度が十分低ければ健康診断は要らないと思っていますが、変動するものなので全然要らないということではまずいですから、除外規定を作って年2回を年1回にするなど、そういう形でやったほうがいいと思うのです。そうでないと無駄なことを全国でやっていると思います。確かに、全員にやれば安心だと思います。でも、やはり無駄だと思います。
○城内座長 ほかに何かございますか。高橋委員に少しお伺いいたします。先ほどの一律というのは、少しでも扱っていたらやりましょうという法律なのですが、その辺りの、今、大前委員がおっしゃったような、バックグラウンドは考えなくても一律のほうがいいという御意見なのでしょうか。
○高橋委員 そういう意見です。
○城内座長 少しでも使っていればやってくださいと。
○高橋委員 扱っていればその時点でリスクがあるので、健康診断を受けたほうがいいのではないかという意見です。
○城内座長 健診と測定は難しいと思います。改善室長から、お願いします
○環境改善室長 今、健康診断と特殊健診について、大変良い御議論をされていると思っております。大前委員がおっしゃいましたが、作業環境測定の結果が健診の先生に必ずしも届いていないということもありますし、あと、健診の結果が作業環境管理にフィードバックされるわけでもないという。要するに、独立していて有機的にリンクしていないという状態があるというのが問題ではないのかと考えております。
大前委員がおっしゃったように、例えば、特殊健診の結果報告の様式はもともとあり、有所見者数が何人なのかなどが分かります。その事業場の中における管理区分ですから、当然、単位作業場所別に出るので、例えば、管理1が幾つ、管理2が幾つ、管理3が幾つという情報があれば、あれは御案内のとおり、産業医がサインをしなければいけないという様式になっておりますので、少なくとも産業医は、作業環境測定結果と健診結果の両方を見ることができて、産業医の責任の下において有機的に対応できるようになるという可能性が出てくるということです。行政になぜ報告するのだという問題もあるのですが、そういう様式を使うことで、事業場の中の管理が向上するという側面が1つあるのではないかと思います。
あと、行政も作業環境測定結果と健康診断結果の両方が一遍に来れば、例えば、作業環境測定結果がすごく高く管理3になっているが健診結果は大丈夫だということであれば、取りあえずは大丈夫かと思うでしょうし、逆に、管理1なのですが有所見者が出ているということになると、作業環境測定がおかしいのではないかという話になります。そういう両方の情報を得た上で、適切な事業場の監督処理ができるというメリットもあります。これは事業場の中や行政にとってすごくいいことではないかと考えております。そういう点について、御議論いただければと思います。
○城内座長 御意見はございますか。とても重要なところであり、難しいところでもありますので、委員の皆さんから御意見をたくさん頂ければいいかと思います。
○永松委員 今の点について、毒性には急性と後から出てくるがんのようなものがあります。その点を踏まえて、後ほどにもありますが、どういう管理の所で働いていたのかというデータをきちんと持っていく。健康診断では、2、3年の間で急性的に出てきたものは分かる可能性が高いと思うのですが、それ以外のものはどうするのかというのも重要な点かと思います。
○城内座長 ほかに何かございますか。
○名古屋委員 私が知っている限り、健康管理である健康診断をやられたのは作業環境管理をし作業管理をしていたとしても、要するに、その人にとって個体差があるために、そんなに作業環境管理や作業管理がよく出来ていても、もしかしたら、その人にとって健康影響があるかも知れない、そうした健康影響を見逃してしまうことを避けるために、健康管理を行っている形になると思います。
ただ、1つ、環境改善室長が言われたように、例えば、健診と測定の結果が出てきて、第1管理区分だったら疾病の量が減ってくるのだとしたら、日本の場合は、作業環境が第1管理区分でも作業環境測定の測定回数を軽減するような御褒美を上げる方法にはないのです。諸外国では、ハイジニストに任せて第1管理区分が続いたら、1年とか2年とか最大3年の間ハイジニストが監視は行いますが、環境測定をしなくていいということになっています。ある程度、成果が出たものに対しては褒美を上げるという制度になっている。
作業環境と健診の報告が2つ来ることによって、ずっと良い状態が続いていたとしたら、健診をやめるというのは難しいです。それを半年に1回ではなくて1年に1回という形で運用する形も考えられる。今行われているように、作業場に局排装置を設置すると、局排装置の性能要件である制御風速や抑制濃度で管理しておりますが、前回のあり方委員会であったように、局排を設置した作業場で性能要件の0.5(m/s)でなく0.3で移動しても第1管理区分になっている作業場があった時に制御風速が0.5ではなく0.3で運用できるとしたら、事業主としてはものすごく電気などのコストが安くなるわけですが、従来はそれが出来なかったです。現在、局所排気装置に変わる発散防止抑制装置が導入され、それが可能ないい制度が出来ていますので、それと同じ形で、第1管理区分になることが継続しているのならば、何かを緩和していき維持することによって、経済的にも作業者にも影響がないシステムが作れるのであり、2つ併用するのはあっていいのかと思います。
○城内座長 ほかに何かございますか。
○明石委員 1点質問です。作業環境測定の結果を産業医が見るのは、産業医の職務ではないですよね。
○環境改善室長 作業環境の遵守という義務がありますので、条文には作業環境測定を見なければいけないとは書いていないのですが、それは当然、把握する情報の1つだと思います。
○明石委員 それは入っているということで理解されるのでしょうか。環境測定の結果を産業医が見るというのは、作業環境の遵守は分かりますが、そこまで含むのでしょうか。
○環境改善室長 もともと、衛生委員会の議題の中に作業環境の状況が入っており、産業医は衛生委員会に出席いたします。産業医の職務について、厳密に条文の中に書いていないのはおっしゃるとおりです。ただ、そういうものを把握した上で産業医の活動をするということが前提になっていると考えております。
○明石委員 ということは、厳密には、測定結果を見るのは産業医の職務ではないということですよね。
○環境改善室長 職務の定義によると思いますが、法令に明確に書いていないという意味ではそうだと思います。先ほど申し上げたように、衛生委員会の審議議題の中に入っており、産業医は衛生委員会に参加いたしますので、広い意味では職務の中に入っていると思います。
○明石委員 衛生委員会にできるだけ産業医が、本当を言うと、産業医は必須にしていただいたほうがいいと思うのですけれども、確か調査では3割ぐらいしか出ていらっしゃらなかったので、そこにも問題があると思います。
もう1つは、今、議論を聞いていると、報告がすごく簡単に行えるみたいなことになっておりますが、事業者から出すデータは非常に機微なものなので、そう簡単には出せませんし、データを出すといろいろな評価が付いてくる可能性があるので、その辺りまでよく気を付けてやらないといけないのではないかと思っております。
○城内座長 ほかに何かございますか。
○大前委員 有害事業場で特殊健診と有害物質に対する健康診断をやっている医者が原因を見ないというのは、医者が悪いですよね。法律に書いていなくても、それは当たり前の話です。
○城内座長 ほかに何かございますか。
○三柴委員 産業医の職務の一環として、作業環境管理の結果を見るのは当然だと理解しております。あえて理屈を言えば、安衛則の産業医の職務の中にも作業の管理に関することは入っており、今回の法令改正でも、事業者から産業医に渡すべき情報の一環としてそれが含まれていると理解しております。これは、一言で言うと、産業医の仕事上必要な情報は渡さなければいけないという趣旨なので、見て当然だと思います。実際に見ているのは3割というのは、なかなかひどいですね。
○城内座長 ほかに何かございますか。事務局から、お願いします。
○化学物質対策課長補佐 先ほどの特殊健診を一律のままにするのか、それとも合理的なものにするのかということについてです。実は、昔から日本では健診はやったほうがいいのではないかという議論が多くて、リスクがどのぐらい高いかということではなく、むしろ念のためにやるという声が結構強かったのです。
先ほど、名古屋委員がおっしゃっていたのですが、作業環境を良くすれば、例えば、健診の頻度を減らすというのは、逆に、事業者に対して作業環境を良くしようというインセンティブが非常に働く仕組みになるのではないかとも思っています。最終的に労働者がばく露しない状況を作っていくということが我々の制度の一番の目的だと思っていますので、そこはうまく組み合わせて相乗効果が出てくるのであれば、むしろ労働者の方々にとってもいい仕組みになっていくのではないかと思いますし、健康診断を受けることが安心材料というわけではないと思いますので、必要に応じて健診をやっていくという制度を考えていくことは、現場を良くしていく意味でも大事なのではないかと思っております。
○城内座長 特殊健康診断には種類がいろいろあり、有機則と特化則では生体影響も違って簡単ではないと思うのですが、有機則については、確か免除規定が出来ていますよね。それは、多分、これこれしかじかでこういうように免除規定を作ったという理屈があったと思います。特化物は発がん物質も含まれるので難しいのですが、そういうデータをちゃんと示すのは可能でしょうか。それができれば説得力があると思います。今の定性的な話だけでは、なかなか納得しないところも出てくるかと思います。そういうデータをそろえていくことができればと思います。ほかに何かございますか。
○高橋委員 今ほど事務局から、環境測定の管理がうまくできれば特殊健康診断を減らすのも企業に対するインセンティブだというお話を頂きました。非常に前向きで、あるべき姿だと思っております。ただ、実際に現場で働いている人たちの意見は、そうではなくて、受けて、その結果を見ることによって、自分の健康が今は害されていないということを確認できる。そうして安心できるのだということのようです。
もちろん、ばく露される濃度が低くなり、それによって健康診断を受けなくてもよくなったということであれば、それは非常にいいことだと思います。ただ、事業主や働いている人の考え方が、そういう意識をちゃんと持ってやっていることが前提になると思いますので、その辺りについて、しっかり事業主に伝えていく必要があるのではないかと思います。
○城内座長 環境改善室長から、お願いいたします。
○環境改善室長 今の御議論で、健康診断についての安心材料だということは、実は放射線の話などでもすごくあり、正にリスクコミュニケーションの話だと思います。作業環境測定結果は労働者には余りきちんと伝えられないので、自分の現場がよく分からない。例えば、個別の個人ばく露測定をしているわけではないと、私がばく露しているかどうか分からないから、健康診断を受けることで安心できるというロジックだと思うのです。
それは非常に真っ当なロジックだと思っております。もし健康診断を減らすのであれば、ちゃんと衛生委員会なり何なりの場でもいいですし、例えば、管理区分がずっと続いているなど、職場に作業環境測定結果をきちんと説明した上でやるとか、それは当然、必要なのだと思っております。
先ほど、座長がおっしゃったのですが、例えば、管理1の有所見者数が少ないというデータがあればいいのですけれども、この問題も先ほどの話に戻ってしまうのですが、管理区分の報告を求めていないので、国にはそういうデータがないので特別に調べない限り分からないという状況もあります。
やはり健康診断の結果と環境測定の結果を結び付けようとするのであれば、客観的に事業場から管理区分の結果を求めた上で、例えば、行政が認めるという制度もあるかもしれませんし、あるいは監督署長が認定してもいいのかもしれませんが、やはり行政に頂いた上で、それが健康診断に跳ねるみたいな、先ほどインセンティブともおっしゃっておりましたが、それが義務の免除であるならば行政の判断になると思います。そういう仕組みを作るのであれば、その仕組みの中には、作業環境測定の結果の報告は絶対にビルトインされなければならないと考えております。
○城内座長 ほかに何かございますか。あと、定期健康診断はやっているわけですよね。そのほかに特殊健康診断があり、先ほど大前委員がおっしゃったように、まともな産業医であれば、例えば、定期健康診断のときに、こういう物質を使っていたらこういう問診が必要だということでやるはずだと思います。ただ、バイオロジカルモニタリングなどいろいろな情報もほかにあるのですが、数がそれほど多くあるわけではないので、制度として特殊健康診断をそのまま残すのかどうかというのは、定期健康診断とも絡めてどのような健診をしていくか一緒に考えて、取捨選択していく必要があるかという印象を受けました。ほかに何かございますか。
○三柴委員 高橋委員がおっしゃった、既に秩序になっているものは安心感のためにも残しておいたほうがいいのではないかというのは、ある意味、制度的発想であり、我々がよく採る考え方かと思います。
一方、現場の実態に合わせて、制度が柔軟に使えるように結果志向でいこうという発想があります。今、事務局で、ある流れから言われたことに通じると思うのです。ここは両方一挙にやろうとすると結果的には規制強化になってしまい、多分、アクセルとブレーキを踏むのに等しいことになって効果を生みにくくなってくる。恐らく、ある種の思想として、どちらに持っていくのかということを決めて臨む必要があり、そうしないと結果が出ない。政策はどうしても思想で引っ張らなければいけないところがあり、価値判断をして、それに制度や運用も合わせていくことになる。そうすると、新しい秩序が出来ていくから、そこは意思決定が必要かと思います、大まかな方向性について。
○城内座長 そのほか御意見はありますか。次の議題に移ってもよろしいですか。事務局、よろしいですか。
では、資料2の3枚目、個別規制と自主的な管理の整理について、御意見をお願いします。
○漆原委員 この自主的な管理について、リスクアセスメントもそうですが、特に中小企業においては、人材の確保などの理由で対応が困難な事業場で出てきてしまうのではないかと思っています。
特化則とか有機則以外の物質で労災が発生していることを考えれば、自主的な管理を促していくということは、労災を減らす上で当然必要です。ただ、中小企業においては、その管理をどう担っていくかが重要になるのではないかと思います。
ここで、例えばという例で米国の例が書いてあるのですが、では欧米など主要国で、中小企業に対してそれを守らせるためにどういう支援とか、援助を行って、それが効果が出ているのか、例えばアメリカやヨーロッパの中小企業でも人材が潤沢でない事業場は当然あるので、そこでどう行政として支援をして、化学物質の管理を担保させているのかという情報もあればお教えいただければと思います。
もちろん、日本においても、外部の専門家などを活用してこういった取組を達成させるための研究は必要ではないかと思うところです。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。そのほか御意見はありますか。
○名古屋委員 自主的な管理のところの中で、前回のあり方委員会のときに、第一管理区分が、ずっと続いているのだとしたら、作業環境管理がうまくいっているのだから、局所排気装置の性能要件である制御風速とか、そういう形のものは外して、自由にされたらいいのではないかと議論されたときに、ある委員が言われたのは、確かに大きな会社ですと、自由に運用させても、第一管理区分で自由に運用させることはメリットあるからやってくれる。でも、中小企業では法律があるからやってくれるのに、それを自由に任せたら、なおやらなくなってしまい、労働者の健康が損なわれないという根拠が保障できないから駄目ですという反対意見があって、結果的には前回のあり方委員会の中では、第一管理区分が続くような環境でも制御風速などの性能要件を外せなかった。
では、何をしたかといったら、先にも述べましたが、それを踏まえて新しい法律ができました。要するに、発散防止抑制装置の導入です。つまり、局所排気装置の性能要件を満たさなくても、そこが第1管理区分であれば、それを良しと認める画期的な制度です。新しい法律では、自主的にきちっと環境管理がやれるところがあったら、柔軟に対応して、制御風速には関係なく、現在禁止されている屋内排気もいいですというように、自由に運用できる制度です。全て自由管理するのではなくて、一定所条件の中で、従来の様な自由管理しない部分と自由管理にしている部分を事業者に選択させるという形なので、何かそれが少し参考になるのではないかと少し思っています。
○城内座長 そのほかありますか。
○永松委員 個別規制と自主的な管理を併せるという点で、実際に化学物質による労災が起こっている業界は、様々なわけですよね。化学産業もあれば、食品とか、いろいろな業界があります。そうしますと、それぞれの業界の現場の状況に基づいて考えていかないと、これは一般的な考え方で全体を考えるのは、なかなか具体的な策に入るのは難しいのではないかと思います。
○城内座長 そのほかありますか。
○高橋委員 この自主管理の件については、余り前向きな意見はなかったのですが、職場の作業者の安全を守るという意味で自主管理をするというシステム、リスクアセスメントをより重要視するという考え方はあって然るべきではないかという御意見でした。
ただ、中小となりますと、先ほど御意見がありましたが、人がいない、あるいは専門の部署がないということもあり、ただ単に自主規制だけを前面に押し出してしまうと、単なる抜け道になってしまう可能性がある、その辺の懸念の意見が非常に多かったです。
大手企業では、ある程度任せてもできるのではないかと思うのですが、例えば中小でこれの自主規制を段階的にやっていこうということになったときには、自主規制の範囲をどこまでにするのか、あるいは、先ほどこれも御意見がありましたが、業界、業種ごとにある程度基準を設けないといけないと思います。中小に関しては、管理を丸投げで、丸投げという言い方はよくないですが、自主管理してくださいと言っても、なかなか人も時間も割けないみたいなことになりかねないので、進め方については慎重に議論をしていかなければならないと思います。
ただ一方で、例えば海外からある化学物質を購入して使いますと、その薬品は国内の規制よりもかなりハイレベルな管理を要求されているもので、そうなってくると、国内の規制だけでは管理しきれませんので、そうすると事業所の中の手続といいますか、管理が非常に繁雑になってきます。その辺を自主規制にすると、ある程度管理の煩雑さが緩和できるかもしれないというお話がありました。それと並行して、国内法で管理できれば国際的な管理も満足できますというふうに将来的にはなっていってほしいということでした。
○城内座長 ありがとうございました。次、御意見はありますか。
○大前委員 常に大企業と中小の差はいつも問題になるのは、これは当然だと思います。これは法的には難しいかもしれませんが、一国二制度みたいな感じで、分けて個別規制をちゃんとやるサイズの会社と、それから自主規制をやってもいい会社と、そういうふうに2つの制度を作る。中で2種類の制度を作る。それは考えられないですかね。これはなかなか難しい話ですかね。
○三柴委員 例えば、アメリカはそれをやっているということです。結局、規制を外してもいいよ、自主的にやりなさいというのは、はっきり言ってレベルの高い話なので、向こうの場合はスター制度とかいうのがあって、よくできているトップランナーについては、そういうのを認める方向で、バックランナーの方法については、大企業でならした安全衛生人材を送り込んだり、また、日本の安全プロジェクトみたいに、プロジェクトに乗っかってさえいれば、臨検を少し減らしてあげるとか、御褒美もあげるのだけれども、とにかく最低基準を守らせるほうに注力をするという、そういうメリハリは付けている。
ただ、メリハリの付け方も国情によって違うことを感じていて、イギリスだったら、HSEメイドシンプルだったか、中小企業にも自主管理を自分でやらせようと。国はきちっと方針を明確に示すのだけれども、どうやるかについては、任せていくというやり方なのです。とにかく自分らでやらせていくということ。
これを日本でそのまま導入したら、うまくいくかというと、少し疑問なのです。日本の場合は、先ほどから申し上げているように、まず為法の執行者側である行政側と事業者側との信頼関係が必要で、信頼関係の中で意識啓発をして、何をやるべきかということも伝えていくと。ネットワークを作るのと電流を通すのとメンテナンスと、ものすごく面倒な作業なのだけれども、かなり手間を掛けてやっていかないと、中小にはなかなか浸透しないのかと思います。いろいろなチャンネルを使って手間を掛けていくことが、かなり重要かと思います。
○城内座長 そのほかありますか。事務局からどうぞ。
○化学物質対策課長補佐 今、いろいろ皆様に御意見を頂いたのを大体聞いていると、自主的な制度を導入していくに当たって、どういう条件付けをしていかなくてはいけないのかを、もっと詰めていく必要があるかと。例えば人材がいるのかとか、体制があるのかとか、そういったこともあるかと思いますが、そういう議論も今後進めていかなくてはいけないのかと思います。
○城内座長 ありがとうございます。リスクアセスメント、自主的な管理というのは、言葉は先行しているのですが、いったい中身は何かというのは、ないままに日本では走ってしまった感がありますので、これは次の議題になるかもしれませんが、その辺からちゃんと話合いをして、要するにリスクアセスメントは幾らやっても終わりがないし、少しやったリスクアセスメントでも良いではないかという場合もあるので、その辺を議論する必要があるかと思っています。
そのほか御意見はありますか。室長、お願いします。
○環境改善室長 少し元に戻ってしまうのですが、管理濃度が低くなっていることで、工学的な対応が難しくなっていることが割と何人かの先生から出てきたのですが、まずインジウムについては、それは管理濃度を定めていないというのがあります。今回、溶接ヒュームについても、管理濃度を定めていない。もともと作業環境測定自体を外しました。あるいは三酸化二アンチモンとか、燻蒸施設とか、そういうものについては、実は特化則の第38条の枝番にそういう特例措置がずらっと並んでいるのです。
そういうことで事実上、御指摘のようなことは、対応してきた実績は実はあった。それでも対応できないような何かものがあるのかどうかというところが、分からないところがあります。第三管理区分は非常に多いというのですが、その第三管理区分の有り様が本当に何か生産性とか、あるいはその生産物の品質に大きな影響があるからできないのか、単にやっていないのかというところが、見えていないところがあります。
本当にそういう生産性なり作業の製品品質、そういったものにすごく関わるので、これはできないみたいな事例があれば、教えていただきたいと思います。
○城内座長 いかがですか。
○名古屋委員 多分、第三管理区分がどういう状況かはなかなか難しいので、たまたま、三酸化アンチモンの場合は、要するに化学物質の健康障害防止措置検討会で三酸化アンチモンの第三管理区分の作業場は、どういった作業をするかという検討をしたとき、その作業の内容を事業場の方が検討会の委員にどんなに説明しても、理解するのが難しいということになり、結果的には、健康措置検討会の委員の先生方がみんな泊り込みで行って、現場を見ていって、これは工学的な対策が絶対にできないということで、現場の作業環境測定することなく、電動ファン付呼吸用保護具を装着することを義務付けることにしました。現場がどういう状況でなっているかは、説明だけでは頭に入ってこないので、難しいと思います。そういう意味では、第三管理区分の状況を把握できるシステムがあったほうが、運用が楽だと思います。
○城内座長 そのほか御意見はありますか。よろしいですか。ありがとうございました。御議論いただきました結果を事務局にまとめていただき、次回、更に具体的な議論につなげていきたいと思います。
最後に御議論いただきたいことに関して、事務局から説明をお願いします。
○化学物質対策課長補佐 資料3を御覧いただければと思います。今、正に自主的な管理と規制をどうしていくのかという御議論を頂いたわけですが、もともとこの検討会の中で、今後の仕組みの在り方、方向性をどうしていくのかという議論をすることにしております。それともう1つ、国の規制の在り方と密接に関係するわけですけれども、国が今実施しているリスク評価は、例えば発がん性のある物質があれば国内での使用状況なども調べて必要に応じて特化則に追加していくようなことをやっているわけですが、このリスク評価の在り方とも関係することになりますので、これは一体的に検討が必要かなと思っております。ここからは事務局からの御提案になりますけれども、この規制の在り方の議論というのはかなりいろいろな御議論があると思っておりまして、専門的な内容も含め、時間を掛けての議論が必要なのではないかということで、検討会の下に別途ワーキンググループを立ち上げて、もう少し個別の専門性を持った専門家の方などにも参加をしていただき、検討する形にしてはどうでしょうかというのが、まず1つ目の御提案です。
仮にそれで皆様に御了解を頂けるのであれば、今後の検討の進め方として、検討スケジジュールの所に書いておりますけれども、今まで議論していただいているこの情報伝達の議論、それから本日いろいろ御意見を頂きましたけれども、事業場における管理の対策。それから本日もお話が出てましたけれども、人材育成の在り方、こういったことについては引き続きこの検討会で御議論を頂き、年内を目途に中間まとめという形でまとめてはどうかと。別途ワーキンググループのほうで検討いただく規制の在り方とか、国のリスク評価の在り方といったことは、ワーキンググループのほうで1年ぐらい掛けて検討していただいて、別途その検討が終わった段階で、本検討会を再開させて最終的に取りまとめをするという進め方で進めてはどうでしょうかというのが御提案です。
次の2枚目を御覧いただきますと、仮にワーキンググループを立ち上げるということになった場合は、ワーキンググループでどういう御議論をしていただくかということを想定して、イメージ案ということで3点挙げさせていただいております。(1)として、今正に御議論いただいておりました今後の化学物質の管理体系の在り方、自主的な取組というのをどのように進めていくのか、今後規制として個別規制を積み重ねるというのを続けていくのか、それともやはり自主的な規制というほうに移行していくのかということも含めての規制体系の在り方。すみません、ちょっと番号が逆になってしまっているのですが、(3)として管理体系を踏まえたリスク評価の在り方ということで、その方向性を踏まえて国がどこまでその化学物質のリスク評価というのをやっていくのか。また、やるとすると今のやり方でいいのかということで、例えばその有害性だけではなくて、国内の流通量なども緩和したリスク評価の仕組みというのは作る必要があるのではないかということ。そもそもリスク評価というのは国がやるのか、それとも事業者がやるのかといった基本的な考え方の整理であります。それからそのリスク評価の手段として、今発がん性試験などをやっているわけですけれども、どういった試験をやっていく必要があるのか。これはこれまでも出ておりますけれども、有害性情報の一元化をどうしていくのか。こういったことについて御議論を深めていただくことが必要ではないかと。
最後に(2)としてありますけれども、新規化学物質の有害性の調査ということで、これはかなりふ古い仕組みでありますけれども、他法令との整合性とかGHSとの整合性も勘案して見直すべき点はないか、こういったことについてワーキングの中で御議論を頂くということでどうでしょうかと、御提案をさせていただきました。よろしくお願いします。
○城内座長 ありがとうございました。今の御説明について、御質問、御意見等ありましたらよろしくお願いいたします。
○中澤委員 ワーキンググループでの検討イメージというのは、労働安全衛生という枠組みを越えて議論をされる形なのでしょうか。
○化学物質対策課長補佐 基本的には厚生労働省の検討会ですので、労働安全衛生法を中心に議論をしていくということになりますけれども、今申し上げたように有害性の情報の一元化とか、他省庁と連携すべき点とかというのが当然出てくると思いますので、そこはそれも含めて御議論いただければと思っております。
○城内座長 何か御意見ありませんでしょうか。永松委員、お願いします。
○永松委員 2点ありまして、1点目はワーキンググループの検討の点で管理体系を踏まえた、評価の在り方についてなのですけれども、先ほどのお話もありましたが、特に国によるリスク評価、事業者によるリスク評価の在り方というのは、これはほかの省庁のほうで管理している所とも、当然密接といいますか、同じような考え方が必要かと思うのです。そうすると、このワーキンググループでどのような次のステップに進むためのものを出してくるのかという点は、どのようにお考えなのかというのが1点。2つ目は、全体のスケジュール感なのですけれども、1つ教えていただきたいことも含むのですが、この検討会で中間とりまとめを行って、それに対する対応というのは特にその時点では取らずに、最終的な取りまとめを行った後に、次の具体的な対応の所にまた進むのかなと考えているのですが、そのようなスケジュール感であるのかという点と、この検討会の後は次はどういう場でこういう議論がなされて、例えば法の対応とか政策的な対応とかがなされていくのか、その辺を教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○城内座長 事務局からお願いします。
○化学物質対策課長補佐 まず、特にこのワーキンググループの課題を議論するに当たっては、当然化学物質のほかの法令、化管法とか化審法とかいろいろあると思いますけれども、そことの連携、もしくは矛盾するような仕組みを作らないということは非常に大事だと思っていますので、この検討会の中でその議論をするというよりは、我々も関係省庁とはよく御相談しながら、この論点の出し方とか、議論の進め方というのは調整していかなければいけないだろうなと思っていますので、そういう形で進めていければなと思っています。
スケジュール感の話なのですけれども、大体年内めどで中間取りまとめを行ったものについて、これは内容によるかと思いますけれども、実行に移していけるようなものについては、最終取りまとめを待たずに実行していくこともあるかなと思っておりまして、こちらも内容次第になるかと思いますけれども、この検討会で取りまとめいただいたものを踏まえて、法令改正に進めていけるようなものがあれば、それは恐らく次の段階として審議会に掛けて、法令改正という形になっていくと思いますし、もう少し専門的に詰める必要があるのではないかなという論点については、いきなり法令改正ではなくて、今の時点で更にどういう場でやるかというのは分かりませんけれども、詰めた議論をやっての制度への反映というのもあるかと思っております。今のところイメージとしてはそういうことで考えております。
○城内座長 よろしいでしょうか。そのほか御意見ありますでしょうか。漆原委員、お願いします。
○漆原委員 法律によって、例えばどのような試験を実施するか、何を組み合わせるかというのは、確かに若干違いはありますが、ここのワーキンググループで検討した結果のその後についてです。例えば、他省との連携と書いてありますが、化審法が改正されたのは直近で2017年だと思いますが、多分今後も時機を見て改が正、他の省庁でもされていくと思います。他の省庁と連携して決めたとすれば、他の省庁の次の法改正のときも、それを加味して改正が検討されるという、そういう広がりのある話という理解でよろしいのでしょうか。確認させていただければと思います。
○化学物質対策課長補佐 ほかの省庁が具体的に法令改正をやるかやらないかというのは、ちょっと我々もコントロールしようがないところもあるのですけれども、おっしゃるように齟齬をきたさないというのが大事だと思うので、そこはよく御相談をしていきたいと思っています。
○城内座長 そのほか御質問、御意見等ありませんでしょうか。よろしいでしょうか。事務局からはよろしいですか。
○化学物質対策課長補佐 はい。
○城内座長 では、皆様御異論がないようですので、御提案のスケジュールで進めていきたいと思います。ワーキンググループのメンバーや具体的な論点については私と事務局で相談して、各委員にも共有させていただきたいと思いますが、それでよろしいでしょうか。はい、ありがとうございます。ではそのように進めさせていただきます。それではそろそろ時間となりました。本日の議論はこれで終了したいと思います。事務局から連絡などありましたらお願いいたします。
○化学物質対策課長補佐 本日は活発な御議論を本当にありがとうございました。次回ですけれども、8月26日14時からを予定しております。また改めて皆様に正式に御連絡をさせていただきたいと思っております。
○城内座長 以上で、第7回職場における化学物質等の管理の在り方に関する検討会を閉会いたします。どうもありがとうございました。