第5回 職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和2年2月5日(水) 13:00~15:00

場所

労働委員会会館7階講堂
(東京都港区芝公園1-5-32)

議題

  1. (1)職場における化学物質等の管理のあり方について
  2. (2)その他

議事

○化学物質対策課長補佐 本日は、大変お忙しい中をお集まりいただきましてありがとうございます。定刻になりましたので、第5回「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」を開催したいと思います。本日は、全委員から御出席の連絡を頂いているのですけれども、名古屋委員の到着が少し遅れているようです。この検討会自体は、一応定刻どおりということで始めさせていただきたいと思います。それでは、議事進行を城内座長にお願いいたします。
○城内座長 皆さん、こんにちは。それでは、本日の議事に移りたいと思います。前回は事務局に整理していただいたヒアリング結果などを基に、どのようなことが課題として浮かび上がってきたのか、今後どのような検討を進めていくべきか、委員の皆様に活発な御議論を頂きました。それを踏まえまして、本日は事務局に資料を御準備いただきました。その資料の確認を事務局にお願いいたします。
○化学物質対策課長補佐 本日は、資料3種類と参考資料2種類を御用意しております。資料1が前回の議論をまとめたものです。それから資料2と資料3は後ほど御説明いたしますが、本日の議論のための資料ということで御用意しております。それから参考資料1と参考資料2のほうも、議論の参考となる資料ということで御用意しておりますので、御確認いただければと思います。
○城内座長 よろしいでしょうか。それでは、議事に移りたいと思います。まずは前回の議論を振り返りながら、事務局に案としてまとめていただきました今後の検討の進め方について、議論したいと思います。まずは事務局から、前回の議論の概要と今後の検討の進め方の案について、御説明をお願いいたします。
○化学物質対策課長補佐 まず、資料1を御覧ください。こちらの資料は前回、委員の皆様方に御議論いただいて出された御意見を簡潔にまとめた資料になっておりますので、振り返りの意味も含めて簡単に御紹介いたします。
まず、一番初めの検討対象・検討方針に関する意見ということで、全体の進め方についての御意見を幾つか頂いております。1つはこれまでも議論に出ておりましたが、中小においての取組ということで、まず既存の取組をどうやってしっかり充実させていくかということも重要なのではないかという御意見。それから2つ目ですが、中小企業の経営者を動かすためのポイントはこういうことではないかといった御意見、対策の要点を絞る必要があるのではないかという御意見。それから3つ目ですが、まず優先で目の前の取組を必要とするものと長期的に取り組むものといった種類の違うものを分けて整理する必要があるのではないかという御意見。それから同じような御意見かと思いますが、優先順位を決めて取り組んでいくべきではないかという御意見を頂いております。それから5つ目の御意見になりますが、もともと検討会のテーマとして設定していた「国によるリスク評価」について、この検討会でどこまで議論していくのかというのは検討が必要だという御意見。それから法的な安全衛生管理体制のない規模の事業場、いわゆる50人未満の事業場で災害が多く発生しているということを踏まえて、法的な枠組みのカバーも検討すべきではないかという御意見。それから、これは業種等の問題だと思いますが、製造業や化学工業以外でも多く災害が発生しているので、どういったターゲットに対策を取っていくかということを決める必要があるのではないかという御意見。それから、一口に中小企業と言っても、いわゆるエンドユーザーとしての中小企業と中間のメーカーとしての中小企業とで、また対応が変わるのではないかということで、分けて考える必要はあるのではないかという御意見を頂いております。
次に、実際の事業場での取組の中身に関する御意見として3つほど頂いております。1つ目は、特に規模が小さくなればなるほど事業者の決定権というのが大きいので、そこの意識改革、教育が必要なのではないかという御意見。2つ目に、そもそも義務になっていることをきちんとやっていない企業に、その実効性の担保という意味では罰を与えるということについても検討が必要なのではないかという御意見。3つ目は、少し個別の具体的な御意見ですが、マスクの管理については、マスクメーカーによる取組というのも必要なのではないかという御意見を頂いております。
それから情報伝達に関する御意見です。まず、それぞれ実際に対策を取るべきユーザーを罰するというようなやり方ではなくて、このサプライチェーンの川上からのSDS交付などの取組から進めるべきではないかという御意見。2つ目は、SDSラベルという方法がありますが、まず危険性に気付く端緒ということではラベル表示が重要であって、その普及・徹底から始めるべきではないかという御意見。3つ目は似たような御意見かと思いますが、ラベル表示は、労働者自身もリスク管理というものを理解して、自分も取り組まなければいけないのだという納得性を持たせるという意味でも重要なのではないかという御意見です。4つ目は何度か出ているかと思いますが、最新情報への更新も含めて、川上からのSDS交付というものをしっかり行うべきではないかという御意見です。5つ目に、このSDSやラベル作成も、特に中小メーカーにとってはなかなか負担だということで、そういうことも含めて、どう充実を図るかということが重要なのではないかという御意見を頂いております。
6つ目は、日本ではSDSやラベルの義務対象物質は今、673物質ということになっておりますが、これが限定されているのが問題ではないかという御意見。7つ目は、SDSの対象を拡大するというのも重要ですが、まずはサプライチェーンを通じてしっかり伝達される仕組みをつくることが重要なのではないかという御意見。8つ目は、少し具体的な御意見になりますが、混合物については、SDSも混合物として1つにするべきではないかという御意見。9つ目、今はラベルでは成分表示が義務となっていないわけですが、ラベルにも成分表示をさせる必要があるのではないかという御意見。最後は、GHSルールでは、SDSに環境有害性も書くということになっておりますが、日本では入っていないし、消費者製品が対象になっていないということについて、GHSに準拠していないという課題があるのではないかという御意見がありました。
それから次は、前回の後半に、かなり議論された内容だと思いますが、制度のあり方についての御意見です。1つ目は、欧米との比較での中での御意見としてですが、労使対立の中でできてきた欧米の仕組みを、そのまま日本に当てはめることができるのかということについては、日本の雇用慣行などとの調整も必要なのではないかという御意見。2つ目は、上から決めて下に落とすというやり方よりも、現場で労働者も意識を持って作り上げるというもののほうがうまくいく例も多いのではないかという御意見。3つ目は現場の実態としてだと思いますが、国が法律などを変えれば、それで事業者が動いて現場に下りるというのが今の実態ではないかという御意見がありましたが、併せて、ただ現場での知識承継がなければ、管理レベルは維持が難しいという御意見を頂いております。4つ目は、リスクアセスメントについて、そもそも自立的な仕組みということなので、国が決めたことを守ればいいということではなく、経営者の理解・覚悟が重要なのではないかという御意見です。5つ目は、リスクベースに政策を進めていくときに、その原則を外すためにいろいろな書類を作って出させるということになってしまうと、かえって煩雑になってしまうのではないか。中小がきちんと付いてこられるような仕組みにするべきではないかという御意見。一方で、中小のリソースが限られているという中では、プライオリティ付けをするためにも自主対応型の仕組みにしていく必要があるのではないかという御意見。6つ目は現状での御意見かと思いますが、自主対応型をいきなり中小でやれと言っても、人材の知識レベルが高くないので難しいのではないかという御意見。次も少し具体的な御意見になりますが、リスクがないにもかかわらず健診が義務付けられているという現実について、作業環境測定の結果で管理1などのリスクが低い場合についても同じような頻度で健診をやらせる必要があるのかという御意見で、その根拠となる作業環境測定については行政に報告して、行政が把握しておくべきではないかという御意見を頂きました。一方で、この御意見に関連する御意見ですが、作業環境測定結果で、行政報告の目的を何にするのかということをきちんと明確にしなければ、単に報告の負担が増えるだけになるのではないかという御意見も頂いております。
次に5番目のテーマになりますが、国による取組に関する意見ということです。1つ目は、これまでも何度か御意見が出ておりますけれども、長期保存するような、発がん性のあるものだと思いますが、健康診断結果などの情報について、今、企業のほうに保存が義務付けられているわけですが、これを国などが一元的に管理・保存して、発がん性との関係を分析していくといった有効活用ができないだろうかという御意見を頂いております。2つ目も、何度か出ておりますが、省庁別にばらばらにやっているリスク評価をもう少し、例えばハザードの情報の評価など共有できるところは統一するべきではないかという御意見。次も少し個別具体的になりますが、新規化学物質の有害性調査で行われている変異原性試験について、きちんと位置付けし直す必要があるのではないかという御意見です。
最後に、専門家の育成・確保・支援についての御意見です。第1回目からいろいろ議論が出ているハイジニストについての御意見ですけれども、ハイジニストを置くということの必要性、確保する動機付けについて、現状でどこまでできるのかという課題があるという御意見がありました。2つ目、自主対応型の仕組みにしていくのであれば、それを支える専門人材が必要であり、育成をするということであれば意味のある仕事を設定することが重要ではないかという御意見。3つ目は、中小企業支援ということですが、産業保健センターなどの行政機関に専門家を置いて、中小企業からの相談に対応できるような体制を作るべきではないかという御意見。最後のマルになりますが、化学物質に関する研究者もかなり数が減ってきている中で、その確保も考えていく必要があるのではないかという御意見を頂いております。
続いて資料2のほうを御覧ください。今、御紹介した前回の御意見も踏まえ、今後の議論をどう進めていくかという整理を少し事務局のほうでいたしました。この検討の進め方の1つ目のマルにありますが、これまでの議論をまとめると、こういうことなのではないかということでまとめました。化学物質を取り扱う事業場において、サプライチェーン等を通じた化学物質の危険有害性等の情報が伝達され、それを基に適切な化学物質の管理(健康障害防止対策)を実施することが必要であるが、知識、人材が不十分な中小企業、製造業以外の業種の事業場などを中心に取組が不十分だということで、当面取り組むべきもの、中長期的に取り組むべきものを検討していくことが、主たるテーマとして設定できるのではないかというのが1つ目のマルです。
このテーマ設定を踏まえ、具体的にこういう順序で検討していってはどうでしょうかというのが、下にある事務局からの提案ですけれども、マル1として、まずは情報伝達ということで、サプライチェーン等を通じた化学物質の危険有害性の情報伝達をどうするべきかという議論を、まずはしてはどうかと。続いてマル2として、その情報に基づいてということになりますが、伝達された情報に基づく事業所における化学物質等の管理・対策、これは管理体制全体をどうするべきか、それから特別規則がどうあるべきか、リスクアセスメントをどうするべきか、こういったことも含まれると思いますが、そういった管理のやり方及び対策と、中小企業がやる場合に、どういう措置や支援のあり方があるのかといったことを、次に議論してはどうか。マル3として、この2つの議論を踏まえてということになるかと思いますが、国がそういった対策につながるように、化学物質のリスク評価、それを担う人材の確保をどうするべきかといったことを議論してはどうか。こういった順序で議論するのが良いのではないかという御提案です。
これは内容の御説明まではしませんが、参考資料1を御覧いただくと、今の3つのものに分けて順番に議論してはどうでしょうかという御提案に沿って、これまでどういう現状についての課題が議論されたか、それに対して各委員からどういう意見が出されているかといったものをそれぞれのテーマごとに整理しましたので、御議論いただくときの御参考にしていただければと思います。以上です。
○城内座長 資料2としてまとめていただいた議論の進め方は、前回までの議論を踏まえて優先順位を付けて議論を進めていく案になっていると思いますが、ここまでで御意見ありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。
それでは、最初のテーマについて検討を進めていきたいと思います。テーマは「サプライチェーン等を通じた化学物質等の危険有害性等の情報伝達」になります。事務局から資料等を御用意いただいておりますので、御説明をお願いします。
○化学物質対策課長補佐 それでは、資料3を御覧ください。今、御提案を受けて御用意したものですが、1つ目のテーマは情報伝達をどうするかということで、この検討会は既に4回開いている中で、たくさんの御意見を出していただいていますので、それを踏まえて、こういう論点が考えられるのではないかということでまとめました。まず1つ目ですが、化学物質のユーザーである中小企業への支援も含め、サプライチェーンを通じて、適切な化学物質等の管理を促すためには、情報伝達の仕組みとして見直すべき点、改善するべき点があるのかどうかという問い掛けをしております。その具体的な中身となると思いますが、このラベル表示、SDS交付による情報伝達を徹底・充実させるために考えられる取組・支援ということで、一応その主体別に分けて論点をまとめております。
1つ目は、行政が何をするべきかという論点ですが、3つ挙げております。1つは、今、関係省庁で連携して、GHS分類をしてモデルラベルとモデルSDSを国のほうで作っております。これまで累計で約3,200物質になるわけですが、より一層の促進を図るべきではないのかという論点。それから2つ目の論点で、これは御意見として出ておりましたが、中小企業のメーカーはラベル表示やSDS作成が負担になっているという御意見もありましたので、そのための支援はどうあるべきかという論点です。それから3つ目は受け取る側のエンドユーザーの話になるかと思いますが、中小企業のユーザーへの情報伝達、これはヒアリングの中でも十分に情報が来ていないというお話もありましたので、こういった観点からの支援はどうあるべきかという論点があるのではないかということです。
それから次に、メーカー・業界団体側からのアプローチということで論点を挙げております。永松委員から御紹介いただいたとおり、日本化学工業協会が中心となって、サプライチェーン全体でリスク管理をするという取組をされておりますので、こういった取組を、より一層促進してはどうかという論点です。
最後に、ユーザー側としての論点ですが、これは後で御紹介させていただきますけれども、化学物質を譲渡提供された場合、SDSが付いていない場合もあるという御意見もありましたけれども、必ずSDSの交付を求めるなど、疑問点があった場合は照会や説明を受けるなど、相互のコミュニケーションというのをもう少し促進する必要があるのではないかという論点を挙げております。
次のページに行きますが、まず1つ目の論点として、ラベル表示・SDS交付の義務措置の対象をどうするべきかという論点を挙げております。御議論の中には、限られているのが課題ではないかという御意見もありましたので、現行は673物質が対象となっているわけですが、これで良いのかということで、仮に対象を拡大するという方向になった場合は、どのような考え方で拡大するべきなのかという論点を挙げております。
その次ですが、ラベル表示、それからSDSの中身についての論点です。労働者に必要な情報を確実に伝達するという観点で、ラベル表示するべき内容について見直すべき点はあるかという論点です。また、SDSのほうも、何度か御意見が出ていたとおり、GHSとの整合性の確保という意味で、今は義務となっていない推奨用途、使用上の制限、環境有害性、混合物の扱い等について、もう一度整理してはどうかということで、整合性の確保を一層図るべきではないかという論点を挙げております。それから、先ほどの再掲ですが、サプライチェーン全体での取組ということを一層、促進するべきではないかということです。また、これも何度か御意見が出ておりますが、SDSの内容が古いまま交付されている場合があるのは問題ではないかという御意見もございましたので、記載の内容を最新のものとする取組も必要なのではないかという論点を挙げております。
最後の論点になります。1点目はサプライチェーンということではなくて、事業所に届いた後の事業所内での情報伝達の課題ということで挙げていただいております。事業所の中で別容器に移し替えたりして何が入っているか分からなくなるという事案もありますので、この事業所内でのラベル表示のあり方をどうするかという論点も挙げております。それから2点目、これはヒアリングでアメリカの例などの御紹介がありましたが、労働者自らが、その危険有害性について理解するためのハザードコミュニケーションのあり方についても議論してはどうでしょうかということで、論点で挙げさせていただいております。
それから最後は、事業所の中ということではなく、外注する場合ですが、化学物質を取り扱う作業を外部に委託する場合、これは施設の改修や清掃といったものを業者に出す場合ですが、そこで使っていた化学物質の情報が伝わらずに災害が起こるということもありますので、この情報伝達をどうするべきかという論点も考えられるのではないかということでまとめました。
続いて参考資料2を御覧ください。今、御説明した論点を議論するときに、参考や補足となる資料としてまとめております。参考資料2の1ページ目から3ページ目は既に第1回でも提出しておりますが、GHSに基づく表示というのはこういうもの、ラベル表示というのはこういうものであるという基礎的な資料となっております。
それから4ページ目に、ヨーロッパで行われている取組を参考として、REACHの概要を付けております。このREACHの概要の「特徴」の上から3つ目にも書いてありますけれども、このポイントの1つとなるのが、サプライチェーンの中でメーカーとユーザーの双方向で情報共有を強化するといった仕組みになっておりますので、こういった海外の仕組みも参考になるのではないかということです。
それから5ページ目は、SDSやラベルの義務対象をどうするかという議論をするときの参考資料として付けておりますけれども、現在、どういう物質を義務の対象にするという考え方でやっているかをまとめたものです。上の6行目辺りに書いてありますが、国若しくは権威ある機関が危険有害性について一定の評価を行っているものということで対象を決めております。具体的には、特化則や有機則などの規則の対象となっている物質、それから米国のACGIH、日本産衛学会が許容濃度を勧告している化学物質、あとは輸送勧告で対象となっている危険物が義務の対象として設定されているのが現状です。
それから7ページ目になりますが、これは第1回のときにも提出した資料で、SDSの交付義務対象をどうするかという議論で、もう1つ参考になるものとして御用意しております。実際に今、現場で起こっている化学物質による労働災害がどういう物質で起こっているかということで、ラベルやSDSの交付義務の対象となっているもの、なっていないもので、どれだけ発生しているかということでまとめております。これを御覧いただくと、全体の45%がSDSラベルの交付義務対象物質による災害となっているということです。
次の8ページ目、9ページ目ですが、特に9ページ目を御覧いただくと、先ほど論点に挙げていたことに関連する災害ということで、ラベルが付いた化学物質を購入したとして、事業所の中で小分けするときに、何の表示もしないまま別の容器に移し替えて、内容が分からずに使用して災害が起きたという事例が3番です。それから4番が、外に発注して清掃などを委託するときに、情報がきちんと伝わらずに起こった災害もあるということで、例示として挙げております。
それから10ページ目は、よく御覧になっているものかと思いますが、現状はラベルやSDSがどれほど交付されているか、表示されているかという基礎データです。
それから11ページ目は、ラベルやSDSをなぜ表示しないのか、なぜ交付しないのかと、交付していない事業所に尋ねた結果になっております。4つのうち、上の2つがラベルについての質問になります。上が義務対象、下が義務以外のものです。義務対象については、そもそもこの表示制度を知らないというものもありますが、提供してほしいという要望がないので表示していないという割合が多かったということです。その下の義務対象となっていないものについては、そもそも義務になっていないから表示をしていないというのが一番多く、次いで、要望がないから表示していないということになっております。その下のSDSの交付も同様の傾向が見られます。
その次の12ページですが、これは労働者にどこまで伝わっているかということの参考となるデータです。有害業務に従事している労働者がSDSラベルをそもそも知っているかということで見ていくと、特に規模の小さい企業では「知らない」という割合が非常に高くなっているのが実態だということで、参考として御用意しております。
次の13ページから14ページ目も、1つ議論の参考になるかということで御用意しました。ラベルは、現状では絵表示になっているのですが、そもそも実際の現場の労働者が絵表示を見て、何を意味しているのか理解しているのかどうかということを調査したものになっております。代表的な4種類のラベルについて調査しておりますが、特に右側の2つについては、知っている方の割合が半数以下になっているということです。この割合を企業規模別に見ていくと、やはり小さい所ほど「知っている」という割合が低くなっています。
次の14ページ目の職種別に見てみると、専門・技術的な仕事をされている方は認知率が高くなるという傾向にあるのですが、実際に現場で作業をやられている方が必ずしも認知率が高くはないという傾向にあるというのが見て取れるかと思います。
それから15ページから19ページにかけては、今、国がラベルやSDSについて、どういう支援を行っているかということで参考に付けております。
16ページを見ていただくと、先ほど御紹介したように、GHS対応モデルラベル・モデルSDSを作って公表して、今は累計として3,200物質ほどになっているといます。
19ページ目以降は、今の日本のGHSに対する取組がどうなっているかということで、国が作っているパンフレットですが、参考として付けております。少し長くなりましたが、私からの説明は以上になります。
○城内座長 ありがとうございました。それではテーマの「サプライチェーン等を通じた化学物質等の危険有害性等の情報伝達」について御意見等よろしくお願いいたします。私から口火を切らせていただきます。これは行政にお願いですが、SDS等の交付を受けたが、内容がちゃんと埋まっていないという下流側からの心配や、不満があって、上流側に聞くと、それは企業秘密だから開示できないという答えがよくあると聞きます。GHS上は、パテント等がある場合は、当然成分情報は要らないのですが、開示していない成分が持つ危険有害性については記載すべきであると書いてあるのです。ところが、日本の法律上というか規則では、そこがしっかりフォローされていないのかなと思っています。なので、そこをちゃんとしないと、SDSを交付しましょうと言っても、中身がすかすかなものが来る可能性がありますので、そこは是非フォローしていただきたいと思います。
多分、日本の企業も欧州に輸出するときはそこはしっかりやっているのではないかと思います。そうでないと受け入れられませんので。ということは、国内はできないが、外国はできるという話になってしまいますので、そこの整合性を取っていただきたいと思います。そのほか、名古屋委員から、何かありますか。
○名古屋委員 SDSをたまたま作ったことがあるのですが、情報を書くのがなかなか難しいのはよく知っているのですが、ただ、それをもらったときに、見る人のレベルによって、どこまで情報が必要かというのは分からないというので、城内座長がおっしゃるように、表の1枚目に、何が危ないのか、何を知っておかないといけないかというものを1枚だけにまとめてもらって、それから先を知りたかったら目的のところを探して見るという記述にする。取りあえず、一番最初のページの部分を見ただけで、ある程度のことが分かる簡略的なものしておいて、そして、それに対して何かをしようとしたり、何かが起こったときに、初めて目的の詳しいところを見るという体裁に今はなっているのかを、城内座長にお聞きしようかと思ったのです。
○城内座長 GHSもJISもそうですが、項目の2番目に、危険有害性はまとめて書きましょうとありますので、それを見れば、ラベルと同じ内容がそこで見られるはずです。そこからめくっていただければ、詳細の所に行くような作りになっています。そのほかにありますか。
○永松委員 参考資料2の7ページの表です。この障害内容が3つに分かれており、吸入・経口、眼障害、皮膚障害ということです。いわゆる眼の障害や皮膚の障害と申しますと、危険有害性をどこまで知っているかということもありますが、基本として化学物質を扱う上では、素手では扱わないとか、あるいは保護眼鏡をするというのが基本ではないかなと思います。それを考えますと、実際にこの障害があった現場では、その辺の保護具の使用はどうだったのであろうかと。そこがSDS等で危険有害性をきちんと伝えることと同時に、やはり化学物質を取り扱う上での基本的な対策が実際にどうなっているのかなというのを把握しておく必要があるのではないかと思いますが。
○漆原委員 今の意見と重なるところがありますが、参考資料2を見ますと、労働者の認知度も、それほど高くないこともあり、議論を3つに分けていただいたのは理解しておりますが、例えば、最初のサプライチェーンについての対策を進めるについても、一定の科学人材が確保できなければ、現場での周知・理解がなかなか進まないのではと危惧しています。育成とは違うのですが、例えば、大企業のプラントなどで業務をされていて、ある程度化学の知見のある方を、定年退職後に本人の希望を聞いたうえで、一定の研修を受講していただき、地域ごとに中小企業のケアをやっていただくような、登録をしていただくという制度も必要なのかもしれません。知見のある高齢者が、今ほどお話があったようなSDSの最初のページの内容を見て、これはこうだよと助言していただくような体制があれば望ましいと思いますので、今回提起いただいたサプライチェーンの対策においても、この枠組みがあれば、ある程度進むのかなと思っております。
同様に、資料3に行政の記載がありますが、これは中小企業に限らないと思いますが、化学物質の管理などに関して、行政に報告するものは安全衛生関係だけではなく、ほかの省庁の所管する範囲のものもあります。各省庁に提出する書類などの作成についても、併せて知見を有する高齢者から助言を受けられることで、スムーズに作業が進むのではないかと考えており、高齢者活用という枠組みは有効ではないかと思うところです。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかはありますか。
○名古屋委員 人材育成というより、各企業によって、例えば衛生管理者とか衛生工学衛生管理者を置かなければいけないようになっている。ただ、その資格を取るための講義及び試験内容を見ますと、そこにはリスクアセスメント、化学物質の取扱いという項目は、著しく少なくて今回議論している内容に絶えられる様な内容にはなっていないのです。試験項目にも20問中1問なのです。ということは、その人を職場に置いたとしても、リスクアセスメントや、化学物質の管理が十分に出来るとは思われないので、化学物質を取り扱う事業所などにそうした資格を持った人たちをうまく使うためには、今の体制ではうまくいかないのではないかと思います。その人たちがまた別の講習会などに行って化学物質の管理に関する教育を受けないとリスク評価とか化学物質の取り扱いはできないのではないかと感じます。
○城内座長 今、過渡期ですので、そういう実態はあると思います。そのほか御意見等ありませんか。
○大前委員 SDSを要望がないから渡さないという項目がありましたが、SDSは交付義務にすべきだと思うのです。それは要望があろうがなかろうが、当然、義務にしなければいけない。それがなければ、下のほうはリスク管理はできないわけです。
もう1つは、先ほどユーザーの中小とメーカーの中小というお話がありましたが、メーカーの中小というのはブレンダーみたいな所が多いと思うのです。自分の所で独自のブレンドをして、それを売ると。そうしますと、そういう所は当然、自分の所の混合物のような形でのSDSを出さなければいけないのですが、一般論として、混合物の生体影響のデータはないですよね。これは当然もしあれば混合物としてのデータを出せばいいのですが、ない場合は、やはり単体のデータを全部入れていただくという形にしないと、混合物の問題は解決しないだろうと思います。
それから、先ほど企業秘密というのがありましたが、いわゆる調味料的に入れてという物質はたくさんあると思うのです。酸化防止剤とか、変性防止剤とか、いろいろ細かいものはたくさんあると思うのですが、そこのところは企業秘密という壁があるので、なかなかSDSに書くのは難しいとは思います。ここのところは仕方がないかなと思います。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかはありますか。
○大前委員 先日リスクコミュニケーションをやったときに、フロアのほうから御意見があって、NITEは4,000何百種類ぐらいのSDSを既に作っているとおっしゃっていました。今、国のほうは3,000物質くらいということで、1,000物質くらいの差があるので、この辺をうまく国のほうにも吸収していただくと言いますか、国の情報をエクスパンドするということは重要だと思います。
新しい情報にという話がありましたが、これはNITEがどのくらいの頻度で情報更新をしているか私も知らないのですが、一応、フロアの方はときどき更新しているとおっしゃっていましたので、私の所の更新頻度で見れば大丈夫だということをおっしゃっていましたので、その辺も情報として皆さんにお伝えすればいいのではないかと思います。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかはいかがですか。
○明石委員 SDSはメーカーからユーザーまでは同じ内容が流れるのです。そうであれば、やはり末端ユーザーが読むと難しすぎて、多分理解ができないのではないかと思います。1次から2次まで提供するという義務があるのですか。
○化学物質対策課長補佐 一応、法令の立て付けとしては、提供するときに提供する人が渡さなければいけないことになっていまして、恐らく、大元のメーカーから来たものをそのまま転売するような形であれば、同じものを渡すということになると思います。
○明石委員 だったら、カバーが結構、長いものは下までいくと多分、本当に分からないのではないかと思いますので、少しずつ加工するなり何なりをしていかないと、同じ対応を求めても多分難しいのではないかと思うのが1つです。
ラベルに関しても、このマークだけでは分からないと思います。「まぜるな危険」と書いていただくと、やはり意味があるのではないかと思います。ちょっと気が付いたのが、ラベルのマークだけだと強さが分からないのです。どれぐらい危ないのか分からないものがあるので、その辺も色を付けるとか、何かそういうのをしないと、多分、これそのものを上から下まで流すから安心ですというわけにはいかないので、そういうように、できる工夫をしていかないと、今、我々は地方を回っているのですが、中小企業は人手不足ですし、とてもではないけれども他のことはできないと思います。それから、何か動機付けをしないと、新たなことをやろうという気にはならないと思いますので、そういう工夫ができる点を事業者に示していただくのが良いかと思います。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかはありませんか。
○中澤委員 この論点の中の1枚目の「ユーザー」の所に、コミュニケーションの促進が重要ではないかと書いてあります。したがって、川下側のほうから見た場合に、使用する側から川上への連絡的な面とか、使用上の相談とか、そういった体制の整備をしていただくことが一番大事ではないかと思います。先ほど外部委託の話も出ておりましたが、外部委託のほうも、ある意味それと同じような感覚で捉えれば、ある程度の事故は防げるのではないかと思います。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかはいかがですか。
○宮腰委員 先ほどからラベルの話が出ていますが、表示だけではなかなか分かりにくい所は非常にあって、先ほども、皮膚をやられるとか、眼がやられるとか、マスクの話も出ていましたが、どういうマスクを使わなければいけないとか、手袋をちゃんと使いなさいとか、眼鏡というよりはゴーグルを使いなさいとか、そういうところまできちんと分かりやすく明記をすることが、直接その作業をする側の安全性が図られるのではないかと、今まで話を聞いていて感じたところです。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかはありますか。また私から。今までも話が大分出ているのですが、現状では、ラベルとかSDSは作成するとか、貼付する、交付するという目的でやっているような気がします。しかし、もともとは、労働者の安全健康を確保するために、使っている人に情報伝達して、そこで活用してもらいましょうという意図で、GHS等ができているのですが、どうもそうではないような気が、現状の日本ではしています。
というのは、義務対象物質についてラベルを貼ればいいでしょう、SDSを交付すればいいでしょうという話だけがどうも聞こえてくるのです。そこのパラダイムというか考え方を行政も変えてもらわないと何も変わらないのではないかと実は思っていますので、それは義務対象物質のお話がありましたが、せっかく規則の24条を作って、その中に全部の危険有害な物を対象にしましょうと言っているわけですが、大体、講習会に行っても、それについて言及する人はいないのです。義務対象物質は何ですかという話しか出て来ないのです。そうではなくて、24条をどう使うかということを、せっかく規則を作ったわけですから、そこも行政がきちんとフォローしていただかないといけないのかなと思っています。よろしくお願いします。そのほかはいかがですか。
○名古屋委員 城内座長も委員でした、10年前のあり方委員会の中で、容器のラベル表示を小分けしたときにはどうしましょうかということを議論しているのです。また、今回ここに出てきているということは、どうしてできなかったのかという原因があるから出てきているのだと思います。その原因は、行政が把握して、そこを直せばいいのですが、また同じことが出てきたということは、原因が分かっていないのか、あるいは制度ができていないのかと、ちょっと思っている部分があります。これは10年前のことが今また出てきている原因は分かっていらっしゃるのですか。
○城内座長 この資料の中にも書いてありますが、小分けしたものについては、安衛法で義務が掛かっていないと書いてあります。ですから、JISとかGHSではそう言っているのですが、法律に入れるときは多分そうなっていなかったという理解でよろしいですか。
○化学物質対策課長 必要性が認識されて、対応としては指針の中に、小分けした容器に表示をしましょうということで対応したと。ただ、その後においても、小分けした容器にラベルが付いていないことによる事故が起こっているということで、更なる対策が必要かどうかを御検討いただきたいと考えております。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかはありませんか。
○永松委員 最初に質問したことにも関連するのですが、例えば、12ページの表で、有害業務に従事する労働者の皆さんの認識・教育等についての分析結果もありますが、一方で、SDSが3,000とか4,000とかありますとか、窓口もありますとあるのですが、この労働者あるいは事業者の皆さんの認識がこういう水準であれば、SDSや窓口について知っている方は、より少ないのではないかと思うのです。例えば、SDSが3,000とか4,000はどこにあるかとか、どこの窓口に相談したらいいかとか、せっかく行政が取り組んでいる、あるいは関係団体が取り組んでいることがありますので、それをもっと活かすということは、迅速にできますし、大切ではないかと思います。
○明石委員 今の話とも共通するのですが、先ほど人材育成の話が出たので、事業者は事業者の責務があって、それをやらなければいけませんが、労働者の使っている現場の皆さんに意識を高めていただいて、リテラシーを持っていただくと、少しずつこの辺も改善されると思います。また、その辺は事業者に言っていただければ、事業者の視線も少しずつ変わってくるのではないかと思いますので、是非、労働者の意識、リテラシー、知見を高めるようなこともやっていただければと思います。
○城内座長 ありがとうございます。そのほかはありませんか。
○高橋委員 12ページの資料で、企業規模が小さいほどSDSやラベルを知っている人が少ないということですが、なぜ知らないかというところをしっかり見ていかないといけないと思います。知らない理由は幾つかあると思います。そもそも情報がない。情報はあるが取りに行かない。情報もあるし取りに行ったのだけれども内容が理解できないと、いろいろなレベルがあると思います。それぞれレベルを上げてかないと、知っている割合は増えていかないと思いますので、それぞれについて対策は必要だと思います。
情報がないということに対しては、先ほどデータベースが既に幾つかあるということでしたので、それをもっと有効活用するような方策が必要と思います。私の昔の経験なので、今はそうなっていないと期待したいのですが、例えば同じ化学物質のSDSをネットから検索を行ったときに、複数箇所にヒットしたのですが、それぞれから情報を引っ張ってきたら書いてあった数字が違っていました。これはどちらが正しいのだということが職場で議論になったことがありました。そういった情報についても一元化するような取組も必要だと思います。
ここに情報があるよという周知をどうやってやるか、ということを考えていただきたいと思います。知らないということに関しては、今、御意見がありましたとおり、事業主の責任の中でしっかりと教育をしていくという施策。その教育の実施を法律の中で規定してしまってもいいのではないかと思います。それぐらいしていかないと、なかなかレベルは上がっていかないのではないかと思います。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかはありませんか。
○大前委員 今のと関連ですが、誤っている情報を意図的に直さないSDSもあるのです。ある意味、SDSを出すほうは意図的に確信を持ってやっているのでしょうが、それを使うほうは非常に迷惑するということが実際にあるので、そういうような意図的に間違った情報を書いて、その結果として労災のようなことが起きた場合の責任は、SDSを出しているほうにも何らかの形で負わせるということも考えないと、常に正しいSDSがあるということにはならないと思いますので、その辺は考慮する必要があるのではないかと思います。
○城内座長 そのほかはありますか。
○名古屋委員 周知徹底のところでちょっと思うところがあります。SDSとは何かを大学で教育する場合は、4年生になる前に化学物質を扱う学生を必ず環境保全センターに呼んで、自身が実験で取り扱う化学物質のSDSカードを見なさいよと、そこを見るためには必ず環境保全センターにアクセスしなさいよと。大学の場合は、研究室に何の薬品があるか。新しい薬品を購入した時、環境保全センターではどの学生が購入したかその情報が分かるようになっています。そのときに、研究室に薬品が入ったにもかかわらず、購入した学生から、薬品のSDSにアクセスしていないときには、そこの研究室の連絡員に電話を掛けて、これは使っているのか、使っていないのか、もし使っているのだったら、なぜSDSにアクセスしないのですかということができるのです。しかし、今の大学ではそれができていない様です。最近、研究室で話を聞いてみると、研究室のLINEの中でSDSや研究のことなど色々な情報を共有しているので、あえて以前のように環境保全センターにアクセスしなくて済むようです。ということは、今の生産現場の中でもLINEというのはそんなに難しくないと思うのです。
例えば、そのグループのトップの人がグループLINEを作り、LINEで、こういう薬品が入ったよ、だから、必ずSDSカードを見て取り扱いなさいとLINEすると、グループの人が見れば既読が付きます。何人の作業者がいて、既読の数から何人の作業者が見たのかが分かります。ただ、LINEで見たよということだけで済ませるのではなくて、そのときにお昼休みとか、どこか作業者のいる作業場に行って、見たよねと。何が書いてあったという確認をすることが必ず必要なのです。確認したときに、「見たよ」だけではなくて、何が書いてあったのかまで確認しますと、小さな所でも、LINEを使うということで、大きな所でも小さな所でも情報共有ができてきて、うまくいくのではないかという意味で、今の時代はLINEが使えるのではないかとちょっと思っていますということです。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかはありますか。
○永松委員 先ほどSDSの正確性の話が出まして、正にそのとおりだと思います。誤植もあれば、それは直ちに直していかなければいけないのですが、一方で見直しを、どの時期にするかということで、当然、そこには見直した事業者のほうでも、1、2年のずれは出てくる可能性はあると思います。そういうことも勘案した上で検討していく必要はあろうかと思います。
○城内座長 ありがとうございます。そのほかはありますか。GHSをやってきた関係もあって、少し分かりにくさということで弁解させていただきます。確かに、絵表示は日本では分かりにくいのですが、何で、これがGHSで使うようになったかというと、国連危険物輸送勧告のほうで使っているシンボルなのです。これは欧米では陸上輸送でも使っているので、皆さんが知っているわけです。ところが日本では、絵表示を導入したとき、誰も分からないものを導入したのです。これはみんなに責任があると思うのですが、GHSを導入したときに、これはこういう意味ですよと教えないでGHSが走ってしまいました。私はこれは実は小中学校で教えればもう、それは一生忘れないと思うのですが、そういうように、教育現場にも入っていません。日本ではこのような特殊事情があって、一番分かりやすいだろうという絵表示さえも分からないという現状がまだ続いています。それは私も導入した1人として責任を感じているのですが、今後更に、ラベル教育から入って裾野を広げないと、皆さんから御意見を頂いたように、情報伝達がうまくいくはずがないと思っていますので、一からやり直す必要があるのだろうと思っています。
前回も言いましたが、米国では「労働者とか、消費者の理解する権利」と置き換えたのです。ということは、理解させる義務が行政とか事業者にはあるということですので、もう一度考えていただきたいと思います。以上です。そのほかにありますか。
○永松委員 今のお話の中で、特に化学品に関してはいろいろな危険有害性がありまして、私どもの事業者の皆さんは、地域の住民や小中学生の皆さんの工場訪問のときに、そういうことを少しお話をしたり、なぜ保護眼鏡や保護ゴーグルをしているのかとか、そういう話もしていただいているのですが、実際に起こっている災害は、化学業界以外でもかなり幅広い業界で起こっているので、やはり、学校教育の中で入れていくのは非常に有効かなと私は思います。私どもの事業者も、工場訪問に来られる小中学生の皆さんに、そういう話をさせていただいているのですが、しっかり聞いていただいていると伺っております。
○城内座長 そのほかは、いかがですか。
○高橋委員 事務局に質問ですが、ここで言っているサプライチェーンというのは、どこまでの範囲を含めて考えたらいいのでしょうか。メーカーがあって、流通があってユーザーがいて、あるいは製造の他に、2次加工、3次加工というのがあるかもしれません。最終的にはエンドユーザーの消費者、さらには廃棄業者なども入ると思うのですが、どこまでを捉えて考えたらいいのでしょうか。
○化学物質対策課長補佐 GHSのあるべき話と、我々がカバーしている範囲というのは少し違うので、その点での御説明になるかと思います。もともとGHSの考え方は、一般消費者までを含めて、全て流通を押さえるという考え方だと思うのですが、我々は労働安全衛生法という体系の中での規制ということになりますので、その目的からすれば、業務として扱う人が危険にさらされないようにするためということが目的になるので、いわゆる一般消費者までをカバーするということは、この中では議論しにくいのかなと思っていまして、ただ、仕事として使う方に、どこまで情報がきちんと伝わるかという意味では、エンドユーザーも含めて、あとはお話に出ましたが、廃棄物を扱うような労働者も含めて、我々が守るべき対象というのは、そういう方という理解の中での議論だと思っていただければと思います。
○城内座長 今の御質問の例で面白い例があるのですが、メーカーは申し上げませんが、トイレ洗浄剤がありますが、あれは200~300cc入りはGHSに準拠していないのです。ところが1L以上のものはGHSに準拠して出している会社があるのです。つまり、それは業務用で使うからということだと思うのです。それなので、そういう対応をなさっている会社もあるので、難しいのですが、いろいろ考えて苦労なさっているのだろうなと思っています。
○大前委員 生体影響の中で、発がん等で、IARCがグループ1、2A、2B等と分類して、それは非常に重要なのですが、ものによっては2Bなのだけれども、これ以上は絶対に情報が出てこないというのはいっぱいあるのです。というのは、このように危ない物質はとても実験できないと、発がん実験などはできないというのが2Bになっているのです。ところが、2Bだからということで、相対的に安全だろうと。あれは定性的な判断であって、定量的な判断ではないのですが、相対的に安全だろうということで使ったり、作るというところがあるので、そこら辺はIARC等の発がん分類は、もうデータがこれ以上は出てこない、更新されることはないというのもあるということは、SDSを作るほうが認識しておいていただきたいと思います。
というのは、つい最近、リスク評価のほうで、1,3-プロパンスルトンという、非常に発がん性が強い物質のリスク評価があったのですが、これが実は2Bなのです。なぜかと言うと、それ以上に実験はやらないからです。
ところが、あるメーカーの偉い研究者の方々が、この1,3-プロパンスルトンというのは、ある製品の中に入って、一般環境に出ても、それは比較的早く分解するから使っていいのだと、心配しないで使えということを論文上でおっしゃっていたのです。とんでもない話で、これは作るほうはどうするのだということで、そういう観点は全然ないので、メーカーでそういう研究をする方、あるいは作る方も、毒性に関してちゃんと考えながらセレクションしてほしいと。特に、その物質を作るほう、それからそれを供給するほうは、その辺を考えてやってほしいと思いました。そこら辺も、是非考慮していただきたいと。これはSDSとは関係ないですが、すみません。
○城内座長 そのほかにありませんでしょうか。では、また私からですが、実はGHSの情報がどうしても届かない業界というのがあって、廃棄物です。環境省の会議の中で、GHSのラベルとかも勉強したいというので出席したことがあるのですが、廃棄物には、GHSのラベルは付かないということで、それは多分労働安全衛生法上でも抜いているのではないかと思うのですが。けれども労働者です。そこにそういう情報が行かないということが歴然としてあって、もちろん、廃棄物はいろいろなものが混ざっているので大変だというのは分かるのですが、御存じのように、硫化水素の中毒というのは毎年あって、人も亡くなっていますが、それは廃棄物です。事業者がちゃんと情報伝達していれば、例えば中和するときにも硫化水素が出なかったりするのですが、ちょっといつもと違うものを出したときに事故が起きているというのは毎年のようにあるわけです。
そういうことで、この中にも出ていますが、外部委託したときの、特に廃棄物等についても、情報がちゃんと伝達されるようにしていただかないと、そこは本当に漏れていますので、何とかしていただきたいと思っています。よろしくお願いします。
○永松委員 今の件ですが、今、正に環境省で、廃棄物の情報伝達をどうするべきかということが検討されていまして、まず基本的に現状でも、いわゆるWDSというものがございまして、そこに則り必要なSDSをベースにコミュニケーションして渡すということになっていますが、今、先生がおっしゃったように、現状では事故もなかなか減らないということで、化学業界でも廃棄物を出す上で、そこのところはしっかりとやっていかなくてはいけない。やっている所も多いわけですが不足があります。
一方で、では、どこまで多くの情報を出せばいいのかは検討が必要な点です。廃棄物の業者の方が非常に難しいのは、いろいろな産業廃棄物が来ますので、その多くの有害性の情報をどのように自分たちが安全を確保するために考えるのかというところも、1つ大きなポイントかなという議論がされております。
○城内座長 そのほかにございませんでしょうか。
○環境改善室長 名古屋先生からもLINEを使うという話があったのですが、現状でも、電子データでSDSを交付することはできます、磁気データとか。そういうのを、ネットに乗せておいて、例えばQRコードを付けておいて、ラベルにもQRコードでしたら付きますから、そういうものを使って簡単にスマホなどで見られるとか、そういうことをするのは企業秘密上問題があるとか、そのような障害があるのでしょうか。
○永松委員 特にないと思います。基本的にSDSそのものは紙でも出るわけですので、同じ内容のものであれば問題ないと思います。ICCAという国際化学工業協会協議会の中でも、先ほども言いましたが一般消費者向けのラベルでは詳しいことは記載できませんので、ラベル表示にQRコードみたいなものを付けてはどうかというような意見も出ております。一般消費者の人はなかなかそこまでは見ませんという話でしたが、事業者であれば、やりやすい方法かなとは思います。
○城内座長 今の点に関しては、GHSの小委員会のほうでも、電子情報化を進めようという議論が2回ぐらい前から始まりました。特に、欧州化学工業協議会(CEFIC)が主体になって、では、どういう形でデータを読み込んで、どう伝えるかという議論が始まっていますので、こうすればいいのではないかという具体例が出てくるのではないかと思っています。あと、個人的にはそれについて、日本でも研究を始めようかと言っている所があります。
それに関して私は、高齢者とか、目の不自由な方に、音声でちゃんと危険有害性情報を伝えるシステムがあってもいいのではないかと思っています。スマホも普及していますし、かなり現実性が高いのではないかと思っていますので、小さなラベルで字が見にくいというようなことがありますので、簡単な情報だけでも、メインの情報だけでも、音声で伝えるとか、そういうことも含めて是非検討していただけると有り難いかなと思っています。そのほかにはいかがでしょうか。
○三柴委員 先生方に伺いたいのですが、現状、化学物質の専門家が余り重用されず、専門家が減ってきているという背景には、どういうものがあるとお考えか、できたら御意見を頂けないでしょうか。
○大前委員 例えば大学などの場合で、特に医学部などの場合ですと、今はトピックが全然違うのです。そういうことで、学生がなかなかこちらに来ないというのはあります。新しい研究者がなかなか新規に出てこないというのはあります。
それから、これは随分前に聞いた話で、今はもう大分、企業の意識も変わってきているのですが、要するに、この分野というのは儲かる分野ではない。どちらかと言うと、企業にネガティブな方向に働くことが多い。我々、許容濃度の委員会なども、どちらかと言うとネガティブに働いていると思うので、それは意識しながらやっていますが、そういう意識は今まであったと思います。
ただ、最近は私たちが付き合っている企業の方は少し変わってきまして、ちゃんと責任を持って、労働者も守らなければいけないと。最近よく言われる言葉で「健康経営」という言葉もあったりして、随分意識は変わってきていると思うので、これから先は、先生がおっしゃったような方々をちゃんと処遇していただきたいと思いますけれども。
○名古屋委員 工学系の大学ですが、早稲田などですと、結果的には労働衛生をやっているのは私一人です。現場はたくさんあるのですが、教授というのは結果的には論文を何本書いているかという評価なのです。ということは、現場の環境改善情報を幾ら頑張って出したとしても、なかなか論文になりきれないという部分があるのと、それは別にしましても、うちの所も労働衛生というのは、4年生になり研究室に入ってきて、1年間研究をした後、修士になると労働衛生というのはものすごく面白いというのは分かってくれるのだけれども、入学時の学生には労働衛生というのはなかなか分からないのです。結局、環境という形のキーワードを使って学生を労働衛生の分野に呼び込んでいる部分があるということです。
もう1つあるのは、基本的に我々が考えているのは、専門分野に特化した人材を作ることも必要なのだけれども、逆に学生をその分野に送ったときに、その分野では良いのですが、途中で他の分野に行く状況になった時に、それに対応できないと困るので、そうした場合でも、それに対応できる人材を作りましょうという考えがあります。昔の大学というのは、私などもそうですが、資格が取れる科目をたくさん作っていて、その資格で就職するという時代であったのです。今はそうではなくて、どの企業のどの分野に行っても活躍できる人材を作ると。要するに、企業が必要としたら、大学で身に着けた知恵を持っていて、仕事にも対応できる人材を作ろうという、要するに専門性が学科によって違っていて、デザインや建築とかは、そういうのがはっきりしています。そうではないところのグレーゾーンの学科というのは、あくまでも、そういう身につけた知恵を応用力に変えられる人材を供給するという形に変わってきているので、特化したものを教えるという形ではないのではないのかと言う部分もあります。
もう1つは、先ほど大前さんが言ったように、華やかな現場だったら多分、学生は来てくれて、そこに行きたいとなるけれども、我々にとって労働衛生の現場は面白さはたくさんあるのですが、現場に行ったときに、これだけ大切な学問なのだなと思ってくれる中高生はなかなかいないのではないかという気はします。答えになっているかどうか分かりませんけれども。申し訳ありません。
○城内座長 永松委員、業界のほうからは。
○永松委員 業界は、当然ながら職場の安全というのはありますし、それから、製品についても安全性を確認した上で、必要な危険有害性の情報等についても出さないといけないということと、また製品だけでなく廃棄物についても同様のことをやっております。
従業員の数が限られた中小は別にしまして、一定以上の規模の会社になりますと、いわゆる化学を知った人間はいろいろな業務の分野で入ってくるわけです。研究者もいれば製造現場の方もおられたりします。そうしますと、そういう方々が、会社の中でいろいろな勉強をして知識を蓄えてくるということから、限られた数の人間が化学物質の安全な管理に関わるスーパーマンにならなくても、組織としてそれぞれ化学物質の安全な管理に必要なことをやって、統合されると社会から必要とされていることができているという状態になっていますので、化学物質に関わる管理そのものを最初から担うという方は、ゼロとは言いませんけれども、多くの会社では少ないのかなと思います。
○城内座長 私も一応、化学系を出たのですが、学校では全く教育していないわけですが、それは業界としてはどういう形で人材が育っていくようになっているのでしょうか。
○永松委員 先ほどもありましたが、SDSとか、例えば有機則とか、そういうことも学校では学ぶ機会がありません。ただ、消防法関係では工業高校を出た方は、在校時に結構資格を取ってこられて、あとは会社で実務をやればその資格で業務ができますよというような形なのですが、こういうことは、労働安全衛生上の点では学校ではほとんどなくて、会社に入ってからの教育になることがほとんどかと思います。
○城内座長 実務で覚えるということですか。
○永松委員 実務でもありますし、当然職場で、例えばベンゼンを安全に扱う上では、業務における有害危険性やリスクはこのようなことになっていて、安全のためにこのようにしなさいという教育はしますし、それに応じた教育修了の報告等をやっていただくというような教育の体系により、その職場で取り扱う有害危険性の物質について学んでいくということになります。
○三柴委員 前にも少し御紹介した、ちょっと前にやった厚労科研の調査で、やはり化学物質問題で困ることがあったら、「社内の人間や部署に聞く」という回答が割と多かったのです。今、先生方に化学物質人材の減少についての背景を伺っていくと、要するに、日本の場合は特定の専門家に頼るというよりも、企業の中のある部門とか、あるいはその企業そのものとか、そういうものが、ある種の専門性をピースごと組み合わせて持っていて、対応力をある程度持ってきたと。だから、中小に対して対策を広げる場合にも、企業の中で専門性が磨き上げられた人や組織が支援をする。特に、大企業で一生懸命やってきたところの部門とか部署が支援をするという形を考えないといけないのかなと。例えば中災防が「緑十字賞」というものを出していますが、あれも部署に対して出したりしているわけで、そういうものの活用というのを考えないといけないのかなと。
例えば、法律論も専門的で難しいわけですが、法律の専門性というのは、日本の社会の場合は弁護士とか特定の専門家だけが独占しているのではなくて、企業の中にプチ法律家がいっぱいいて、そういう方々が企業のコンプライアンスなどを、ある程度保っているという実態もあると。そういう学者の指摘もあります。
アメリカでは、大企業内の化学物質の専門家等が、一時期政府に身を置いて、ほかの会社の様子を巡視なり何なりをしていって、また戻るなりして、見聞を広めて、武者修業をして、そして戻ってきて、また貢献するという制度があります。私なりに、日本に合った方法とは何かというのをかなり考えていたのですが、特定の専門家を育てることも大事だけれども、今あるスタイルを踏まえた対策というのはやはり必要かなとは思いました。
○城内座長 最後は人材育成につながるお話だったと思いますが、ありがとうございました。
サプライチェーンを通じた化学物質の危険有害性等の情報の伝達ということについては、御意見等はございませんでしょうか。
○高橋委員 ラベル表示、SDSの交付もそうですが、メーカー側が責任を持って製品をユーザー側に渡すということは進めるべきだと私も思うのです。ただ、そうは言っても、中小がSDSを作るとなったときにはそれなりの費用がかかるということもありますので、そういったところについては、助成金、補助金のようなものも考えていただけると有り難いと思います。
○城内座長 そのほかにございますでしょうか。
○環境改善室長 今の御発言とも絡むのですが、SDSを中小企業で作るのに何が障害なのかということで、例えば助成金の話がありましたが、多分お金で、けりが付く話ではなくて、それは例えば有害性情報を手に入れるのが難しいのか、全く未知の物質だから分からないのか、どういうところが一番の障害なのでしょうか。
○高橋委員 今申し上げたのは、先ほど名古屋先生のほうから、中小の場合はブレンダーで製品として流通するという話がありましたが、それだけではなくて新規の物質を作っているという中小のメーカーは当然ありますので、そういった場合には、多分そのメーカーが安全性なり何なりを外部に委託か何かをして調べて、それをSDSという形にまとめて提供するということになると思うのですが、試験をするにも、外部委託するためにも費用が掛かるということですので、その辺りの補助をしていただきたいということで発言させていただきました。
○城内座長 そのほかにはいかがでしょうか。
○永松委員 中小の皆さんに情報伝達を行うためには、有害危険性の知識とか、あるいはSDSやラベルの知識にも精通していただくということが重要だということは疑いもないことですが、中小の皆様に対して、どのようなアプローチで、どのようにやっていくことが改善のためにできるのかというのが、私どもの協会からはなかなか見えてきません。私どもの会員や事業者がお客様のほうにSDSを出しているのですが、それが例えば中小の化学業界、あるいは化学業界以外のいろいろな所に行っているわけですが、さらにどのようにアプローチしていくかというところが、大きな点かなと思うのですが。
○三柴委員 先ほど人材の話をさせていただいたのは、実はサプライチェーンの問題等と絡むからで、その意味では漆原委員と同じ見解なのですが。やはり対策を中小まで徹底しようと思ったら、前に高橋委員も言われたように、やらなければいけないことを分かりやすくするということと合わせて規制を強める、つまり違反したら罰則を科すということも1つの方法なのです。
そうすると、情報は川上から川下まで全部流すことを義務付ける、ラジカルにいく。それから、リスクアセスメントも、現行の対象物質だけではなくて、全部に義務付ける。ヨーロッパに近付けるというように極端な方法を取っていったらルールは分かりやすくなるに決まっているわけです。減り張りは必要ですが。イギリスの規制のように、「合理的に可能な限り」とか、現実に合わせるための表現は作るにしても、ラジカルなルールにするほうが分かりやすいに決まっているわけです。
だから、方向性としては、減り張りを付けながら、原則を明確に示すほうに少しずつ持っていくしかないのだけれども、規制を厳しくするのだったら、それを支える人材が要るのです。情報を伝えるにしても、おっしゃるように、それを出す側に規制を掛けて出させることも必要だけれども、受け止め側がちゃんと受け止められなかったらどうしようもないわけです。これまでに行政もかなりやっておられて、中小企業が使えるようなツールも出しておられて、日化協もちゃんとリスクアセスメントの仕組みの普及を図っておられます。それなのに、この数字だということだから、規制はシンプルにするというのは、ある意味では規制強化になるのだけれども実現して、それが実行できるだけの支える人材を準備することが必要だろうと。では、専門家が育つほど、化学物質対策を重視させるにはどうするかということかについて、考えているところです。
○化学物質対策課長補佐 先ほどからの中小への支援に関連する話なのですが、今、国のほうでモデルSDSやラベルを3,200ぐらい作成していると御紹介させていただいて、今後もその数は増やしていく、古いものは情報を更新していくという取組を進めていくことになると思うのですが、よく企業の方とお話をしていると、国が公表しているモデルを使っているとおっしゃる方が非常に多いのです。そういう意味では、意味があることをやっているのかなという受け止めはしているのですが、今後、対象を増やしていくとか、そういうことをするに当たって、現場にとってどういう優先順位についてのニーズがあるのかとか、どういうものを優先して、国として取組をしていくべきかということについて、何か委員の皆様方のお考えがあれば、お聞かせいただければなと思います。
○永松委員 どの化学物質のSDSが優先されるかという観点もあろうかと思いますが、いろいろな多くの化学物質が使われておりますので、優先順位を付けるというのは非常に難しいかなと思います。
SDSを使っている声も大きいということですが、中小に行くと、SDSやラベルのことを知らないという方も多いわけですので、それを踏まえますと、やはりまだまだ国がやっているいろいろな施策を十分に御存じない方も多いし、知ったとしても、それを使いましょうというような、後押しをするような何らかの対策が、人材も含めてですが、必要なのではないかなと思います。
○城内座長 673物質の対象に拡大するかどうかということで書かれていますが、先ほども少し申し上げたのですが、義務対象外の規則でやりなさいと決まっている物質について、例えばSDSを交付しました、ラベルを付けました、リスクアセスをしましたということが分かった時点で、御褒美を上げるとか。つまり、義務は当たり前だけれども、そうではないところで頑張っているのだというところで、何かインセンティブがあったほうが、私は自主管理ということにも結び付くかなと思うのですが、その辺を少し考えていただくと、規則が死なないでというか、生きたものになるかなと思いますが、何かお考えいただければ有り難いかなと思います。皆さんから、そのほかに御意見はいかがでしょうか。
○宮腰委員 質問なのですが、モデルSDSそのものは、行政のほうで、どこか研究機関に出して作成されているという感じになっているのでしょうか。
○化学物質対策課長補佐 今、一応委託事業でやっておりまして、委託先がいろいろな国内外の情報を集めて、それを基に作っているという状況でございます。
○宮腰委員 先ほどもちょっと、SDSを作成するに当たっての助成金の話もあったのですが、折角メーカーのほうでお金を掛けて作っているSDSも、本来はそこが行政のほうと一緒になって、メーカーから出されたSDSを行政のほうで受け取る形で、それを公表する、それが一つのモデルの追加になっていくという形になってくると、もっともっとそれが拡大していったり、スピードもあって、多少お金も中小のほうでも助かるような、今モデルに載っていないものをSDSにメーカーが挙げると、そういうことを強化していくと、もっとモデルとしてのSDSが広がっていくのではないかと思います。
○城内座長 その他、いかがでしょうか。
○漆原委員 すみません、今までの議論とちょっと違うのですが、気になっているので一言発言させていただきます。先ほど廃棄物処理の話がございました。確かに、化学的に中和して安全に廃棄することもありますが、環境省所管の容器包装リサイクルのようなケミカル処理ですと、プラスチックから特定の成分を抽出して、また新たな資源として活用するというように、資源循環という考え方がその一方ではあります。さらに、例えば重金属の入っているものの焼却処分とか、ある特定の元素が入っている化合物についての処理をする、例えば水銀のようなものもあると思います。廃棄物のサプライチェーンを入れると実は結構広がりがあるのではないでしょうか。「資源循環」を考えれば、新たな化学物質に作り替えるような部分もあるので、そうしたところの対応というのは多分、ここでサプライチェーンの提起をされたこととはまた違うエリアが広がってくるように思います。今後それについての検討ということも可能なのかどうかをちょっとお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。
○城内座長 お願いします。
○化学物質対策課長補佐 座長からもありましたが、余り廃棄物対策をこれまで労働安全衛生対策の中でクローズアップして整理して議論したことというのはないと思います。正に今、環境省のほうで、WDSの議論も含めて、廃棄物の処理の中での安全対策も含めてどうすればいいかという議論がされています。
この検討会自体も化学物質による災害をどう防ぐかというテーマですので、例えば廃棄物については対象から排除しましょうということを考えているわけではありません。課題としてあるのであれば、十分、議論の俎上に乗せるということは、ありかなと思っております。
○城内座長 その他、ございますか。
○環境改善室長 今、各企業で作成されているSDSを共有する仕組みがあるという御提案だったのですが、先ほどお話したこともあるのですが、皆様方はネットに載せていただく場合、例えばAIなどを使って公開されているSDSに自動的にリンクを貼るぐらいのシステムは簡単に作れると思うので、要するに著作権を放棄してくれるのかどうか、そういうことはどうでしょうか。
○永松委員 今、もう公表しているというか、誰でも見られるようになっているのでしょうか、随行者にちょっと答えてもらいたいのですが。SDSを外部のほうが自由に見られるかどうか。
○日本化学工業協会梅田様 原料系の単体の化合物に関しては公開されている企業さんも結構あると思いますが、混合物に関しては、私の認識では、顧客へ提供しているSDSを第3者にまだ公開していないと思います。それはやはり製品の品質設計に関わる企業秘密に入るからだということだと思います。
○三柴委員 企業秘密の件は古くて新しい問題で、先生方も御案内の通り、これまでの規制の歴史の中で、第57条の云々を使って、とにかく行政に一旦情報を集めましょうと。新規物質なりが出てきたら取りあえず届け出させて、その前にやれる調査は自分でやって、とにかく情報は行政に集約しましょう。集約した情報は行政なりに分析して、危ないものについては手を打っていきましょうというような仕組みを作ってきたわけです。
だから、直接ユーザーから情報提供依頼があっても出せるもの・出せないものがあるけれども、行政を間に絡ませることで、少なくとも秘密は守られるでしょうという仕組にはなっているはずなのだけれども、その方向性の強化、たとえ新しい規制を作るにしても今の規制を徹底するにしても、その強化という方向性はないのでしょうか。それはやはり難しいのですか、実際には。
○城内座長 いかがでしょうか。
○化学物質対策課長補佐 すみません、この場で、あり得るとか、あり得ないとかは答えにくいのですが、御議論いただいたことを踏まえて、また考えていくことになると思います。
○日本化学工業協会梅田様 追加でよろしいですか。単純な原料系のものに関しては公開されている会社もあると思っています。混合物のSDSに関しては、やはり企業秘密ということで第3者に公開されていないのですけれども、それは主にB to Bの製品が多いからです。次のBに行ったら加工されて、その先には行かないケースが多い。そうすると、次の会社にはSDSを提供しているけれども広く一般には公開しないというケースが見られるというように考えています。
○環境改善室長 今の御質問ですけれども、むしろ私もお聞きしたいことがあるのですが、行政をかませてしまうと結局、公開できない情報が出てくるのは余り変わらなくて、どちらかというと、著作権を放棄してくださいというアプローチをしていかないと行政に回っても公開できないので、情報の共有には余りならないのです。だから、先ほどおっしゃったように企業秘密なのか、B to Bだから必要がないからやっていないのかは大きな違いですけれども、必要がないのでやっていないのだったら積極的にネットに載せてもらえばいいでしょうし、あるいは積極的に載せたくないというのだったら行政に出してもらって、それを行政が出すというのもあるのかもしれません。いずれにしても、企業さんのほうの著作権なり企業秘密というところを解除していただかないと、なかなか難しいのかなと思います。
○三柴委員 比較して何が一番いい方法を議論するしかないと思います。多分、一点突破みたいなことはなかなか難しいとは思います。
行政が生データを取ります、そこから分かったことを踏まえて、どういう作業で、どういう対策を取ったらいいかという、いわゆる情報加工的な対応というのはできるのではないか。結局は、どこまで市場というか自主管理に任せて、どこから公共政策で強制するかという、そこの配合の問題になってくるとは思います。行政は非常に重要な資源だなということをいろいろ調べていて実は改めて認識したところもあって、どういう組合せ、コンビネーションでいくのがいいのかなということを考えている次第です。
○城内座長 ありがとうございました、その他ございますか。
○化学物質対策課長補佐 すみません、今の議論の続きなのですが、SDSの情報を公表するかしないかで、B to Bのように例えば提供先がもうある程度限られているというような場合は、一般公開をするメリットは、提供する側にも余りないのではないかと思います。ものによっては、例えばそのままコンシューマーのほうまで行ってしまうような製品もあるかと思いますし、不特定の方に渡る可能性があるものというのは、一つ一つSDSを渡して、それを例えば中間の業者も通って、どんどんどんどん伝わっていくということになると、どこかで途切れてしまうのではないかという議論が途中でありましたけれども、広く行き渡るような製品については、安井室長からもありましたが、ネットで公表するというようなアプローチもあり得るのかなと、ものの性質で分けて議論するというのもあり得るかなと思いました。
○化学物質対策課長 モデルSDS等の作成の中で、今、やっていたやり方といいますと、一定の論文検索をしていただいて、それを有識者の方がいろいろと判断をし、分類をし、それを基にSDSを作るという流れでやっているかと思います。その中の課題としては企業が独自に試験をされているデータ、これは必ずしも論文等で出されていない限りヒットしない。そういったものがきちんと、既に作られているメーカーが、もう一度試験データを出していただけると非常に質の高い、信頼性があるデータになっていく。先ほど三柴委員が言われた「政府をかませて」という意味でいくならば、例えばそういった試験を独自にやっていらっしゃるものについては、一般にそれを生で公開することは非常に抵抗感がある。だけど国にということならば、頂いて、それをモデルSDS等に反映するというやり方はあるのかなと思ったのですが、その辺はどうなのかなというところをちょっとお聞きしたいのですが。
○三柴委員 モデルSDSの案はいい案だと、私も感じています。先ほど申し上げた公とプライベートとの施策の配合という観点でもいい方法だろうと思います。他にも配合という視点で、今までの仕組みをうまく使いながらできる方法がないかは、要検討だなという程度の趣旨です。
○城内座長 ありがとうございました。その他、ございますでしょうか。
○永松委員 先ほど梅田からもお話しましたけれども、一つは、企業上の営業秘密という点があります。当然、安全の話がありますのでお客様にはSDSはきちんと出すということをやっております。したがいまして、先ほどもお話がございましたが、どういうものが求められているかということによって、事業者としての協力の仕方もいろいろ検討することができようかと思います。
○城内座長 ありがとうございます。そのほかにございますでしょうか、よろしいでしょうか。
大分時間も迫って参りました。それでは一応、ここで議論を打ち切りたいと思います。どうもありがとうございました。たくさん御意見をいただきました。一旦、事務局で、本日の議論も踏まえて方向性についてまとめていただければと思います。
次回の進め方ですが、本テーマについては事務局にまとめていただいて、御確認いただき、より具体的な見直し(案)について御議論いただく形でよろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、引き続き御議論いただけるものと思います。
予定の時刻になりましたので、本日の議論はここまでとしたいと思います。皆様、活発な御意見をありがとうございました。本日の議事はこれで終了となります。事務局から連絡事項がございましたらお願いします。
○化学物質対策課長補佐 今、座長から御指示がありました通り、今回の議論を踏まえて、次回の資料をきちんとまとめて、また御議論いただきたいと思います。
次回は3月27日を予定しておりますけれども、また改めて、委員の皆様には御連絡を差し上げるようにしたいと思います。
○城内座長 「第5回職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会」を閉会いたします。どうもありがとうございました。