第3回 職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 リスク評価ワーキンググループ 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

  令和2年12月23日(火) 10:00~12:00

場所

  労働委員会会館 講堂
  (東京都港区芝公園1-5-32)

議題

  1. 国によるリスク評価のあり方について

議事


○植松化学物質評価室長補佐 本日は、大変お忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。定刻になりましたので、ただいまより、第3回「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 リスク評価ワーキンググループ」を開催いたします。なお、本日は名古屋委員より御欠席の御連絡を頂いております。今回、一般傍聴席を設けさせていただいておりますが、感染予防のため各委員の席は間隔をあけて、マスク着用にて開催させていただきますので、御協力よろしくお願いいたします。
 それでは、以降の議事進行は城内先生にお渡ししたいと思います。城内先生、よろしくお願いいたします。
○城内座長 皆さん、おはようございます。コロナ感染症が大分増えてきまして非常に心配しているところですが、今日も非常に重要な課題がありますので、冷静に大激論したいと思います。御協力のほどよろしくお願いいたします。それでは、議事に入る前に、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○植松化学物質評価室長補佐 本日もペーパーレス開催ということでさせていただきますが、お手元のタブレットの中に資料を格納していますので、御確認いただければと思います。まず議事次第、資料一覧というものと、資料1、国によるGHS分類からばく露限界値の設定までの流れというもの、資料2として、事業者による有害性情報等の収集及び国への提供・協力について、参考資料1として、変異原性の指針、参考資料2として、がん原性の指針に関する資料を添付しています。過不足等がございましたらお知らせください。
○城内座長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。本日の議題に入りたいと思いますが、まず「国によるリスク評価のあり方について」です。事務局から説明をお願いいたします。
○植松化学物質評価室長補佐 それでは早速、資料を説明させていただきます。資料1を御覧ください。テーマは、「国によるリスク評価のあり方について」です。これまでのリスク評価のあり方を見直して、新しい仕組みの方向性の案をお示しするということで資料をまとめています。資料1の2ページを御覧ください。新しい仕組みの中で国が実施すべき事項の基本的な流れというものを整理しています。まず、化学物質の中でセレクションを掛けて対象を絞り込んで、国がGHS分類を行います。それらに関しては、国がモデルラベル、モデルSDSを作成して公表する。それらの物質に関して優先順位をつけながら、ラベル表示・SDS交付を義務化していく。その中で、更に優先順位をつけながら、ばく露限界値を設定していくというのが大きな流れになっています。この基本的な流れに乗らない論点として、「暫定ばく露限界値の設定」というものと、それから、ここまでは経気道に着目した流れでしたが、経気道以外の観点として「経皮吸収のある化学物質」に関する論点ということで、別に論点を整理しています。
 資料の3ページを御覧ください。1.国によるGHS分類と、2.モデルラベル・SDSの作成・公表という項目について、前回のワーキングで示した論点と頂いた御意見をまとめています。特にGHS分類の対象物質の選定条件に関しては、特段の御意見はなかったものと承知しておりますが、今回、方向性の案ということで、事務局としてまとめさせていただきました。
 4ページです。基本方針として整理していますので、紹介させていただきます。まず、重大な労働災害の要因となった物質については、国は優先的にGHS分類を実施していくことが重要であると考えております。次に、有害性及び危険性の観点から健康障害リスクが高いと想定される物質についても、やはり同様に国がGHS分類を優先的に順次実施していくということを考えております。また、モデルの考え方ですが、特に中小企業におけるラベル・SDS作成を支援して、交付義務の履行を確保するために、国はモデルラベル・SDSを作成するということで整理しています。
 具体的に対象物質の優先順位の付け方を2番に整理しています。1つ目は、労働災害の観点ということで、当該物質起因の重大な労働災害が発生しているかどうかというポイント、2つ目として、有害性の観点ですが、着目すべき有害性が相当に高いと判断される有害性情報があるかどうかということをポイントとして挙げています。ここに例示していますが、着目すべき有害性としては、発がん性、急性毒性、生殖毒性、特定標的臓器毒性等を想定しております。具体的な作業は、また後ほど御説明差し上げますが、現在、国でGHS分類を実施しておりますが、その際に政府向けのGHS分類ガイダンスというものの中で、「国際機関、主要各国等で作成され、信頼性が認知されている化学物質評価文書等」というリスト(List1)がまとめられていますので、そういったものを参考に有害性情報を収集してまいりたいと考えております。そして、許容濃度又はTLVが設定されている物質についても優先的に対処してまいりたいということです。3つ目に、製造・輸入量の観点ということですが、有害性が高いと判断されたものに関しては、製造・輸入量を勘案して、一定量以上であればGHS分類の対象にしていくという整理にしています。
 以上の内容を概念図として下にまとめています。事務局の想定としては、左側の「重大な労働災害が発生しているか」というのは、突発的な事態に対処するために設けているラインですが、定常的な作業としては、まず有害性に着目するところから出発することになります。作業量的にもどれぐらいのボリュームになるかということを考えていますが、大体、年間100物質程度を有害性情報からリストアップしてくることを想定しています。
 続いて5ページです。ラベル表示・SDS交付義務化というポイントですが、下の「今後の方向性案」という所を御覧ください。(1)既にモデルラベル・SDSが作成されている3,014物質から優先的に義務化していくことを想定しています。(2)3,014物質の義務化が終了してから、新たにGHS分類された物質を順次義務化していくという整理にしています。(3)ただし、モデル・SDSが作成されていない物質に関しても、重大な労働災害の要因となった場合には、国は新たにGHS分類をした上で、優先的にラベル・SDS交付を義務化していくことを想定しています。
 具体的に対象物質の順位付けを整理いたしました。6ページを御覧ください。基本的な考え方は、先ほどのGHS分類の対象の優先順位付けと同じなのですが、特に有害性の部分でもう少し具体的に書いてあります。有害性情報を収集してGHS分類をした後ですので、「物理化学的危険性」又は「健康有害性」において区分1に該当するような危険有害性があるかどうか、若しくは、区分1がなくても区分2に該当するような危険有害性が複数存在するかどうかというところで、化学物質の有害性の多寡を判断するというように設定しています。それから、先ほどはなかった観点ですが、物理化学性状の観点ということで、こちらは委員からも御意見を頂いておりましたけれども、蒸気圧が高い場合は吸入リスクが高いと考えられるように、物理化学的な性状の観点から吸入リスクが高いと考えられる物質に関しては、優先順位はやはり高いのではないかということで整理しています。今の話をまとめたのが下の概念図です。
 先に進みます。7ページです。ばく露限界値の設定についてです。こちらは定義として初めてまとめておりますので、読み上げさせていただきます。7ページの下の今後の方向性案の1.の定義という箇所ですが、「ばく露限界値」とは、自律管理における判断基準を明確化し、化学物質へのばく露防止対策の適切な実施を促進するために設定する指標値です。「労働者が吸入する有害物の濃度」を当該濃度以下に保つことを義務とするという整理にしています。具体的には、労働者が1日8時間、週40時間程度、肉体的に激しくない労働強度で化学物質にばく露される場合に、当該化学物質の平均ばく露濃度がこの数値以下であれば、ほとんど全ての労働者に健康上の悪影響が見られないと考えられる濃度として設定することを考えております。また、有害性情報に応じて、最大許容濃度として、作業中のどの時間でも、ばく露濃度がこの数値以下であれば、健康上の悪影響を及ぼさないと判断される濃度としてのばく露限界値を示すことも検討しています。
 これらの考え方ですが、対象物質の優先順位付けということで、8ページにまとめています。まず有害性情報の観点ということで、許容濃度やTLV、その他の「設定プロセスが明確であって、かつ化学的根拠により提案がなされているばく露限界値」が設定されている物質に関しては、有害性情報が一定程度集積されているということもありますので、優先的にばく露限界値を設定していきたいと考えております。また、次の観点ですが、有害性情報が不十分ではあるものの、重大な労働災害の要因になっているとか、製造・輸入量が特に多かったり、物理化学的な性状で蒸気圧が特に高いといったような物質に関しては、ばく露リスクが相対的に高いと考えられるので、確実な管理が必要と考えられることから、こちらに関しても優先的に対処していきたいということです。また、GHS分類の結果、高い有害性区分を多く含む等、十分な有害性情報があると考えられる物質に関しても、優先度が高いと考えております。
 以上の3点が基本的な流れですが、これまで国がリスク評価を行ってきたのですけれども、今回新しく仕組みを見直すということで、リスク評価のスキームの途中で終わっている物質が100~200物質程度あります。そういったリスク評価の途中で終わっているような物質に関しては、優先的に対処していきたいと考えております。それが(4)です。
 次に、管理方法ということですが、基本的には実測による管理を推奨したいと考えております。ただ、測定方法等が確立されていない物質も多くありますので、CREATE-SIMPLE等の数理モデルによる推定も可能としたいと思います。ただ、数理モデルは複雑な作業現場等について実態を十分に反映しきれない場合も想定されるということですので、やはり基本的には実測による管理を推奨するということと、マスクを使用されている際には、マスクの防護係数を勘案して、ばく露濃度の管理をしていただくということを考えています。以上が、ばく露限界値の設定に関する説明です。
 次に、暫定ばく露限界値の設定ということで、9ページを御覧ください。こちらも定義は初めてお示ししますので、読み上げさせていただきます。今後の方向性案の定義の部分です。「暫定ばく露限界値」とは、ばく露限界値が設定されていない化学物質を取り扱う事業場において、化学物質の性状に応じてばく露防止対策の目安となる指標値です。労働者が吸入する有害物の濃度を、当該濃度以下に保つことを努力義務とするということを想定しています。また、有害性情報等が十分ではなく、ばく露限界値が設定できない物質に対して、多量の吸入による健康障害を予防する観点から、物質の種類によらず、少なくとも当該濃度以上ばく露させてはならないとする濃度として考えていますので、たとえ、当該濃度以下であっても、未知の毒性による健康障害の可能性があるということに留意していただきたいと考えています。
 具体的に数値を示していますのが、下の2番です。まず、粉じんに関しては、ACGIHと産業衛生学会で参考となる値が示されておりますので、ここから数値を引っ張ってきております。総粉じんに関して、ACGIHではインハラブル粒子として10mg/m3、産衛学会では総粉じんとして8mg/m3ということです。今回は、高いほうの値を採用して提案させていただいております。同様に、肺胞にまで至る吸入性の粒子のレスピラブル粒子としてACGIHでは3mg/m3、産業衛生学会では吸入性粉じんとして2mg/m3ということで値が示されておりますが、こちらも高いほうの値を採用するという整理にして、3mg/m3を提案させていただいております。また、粉じん以外に関しては、直ちに設定することが困難であり、引き続き検討させていただきたいという整理にしています。
 続いて10ページですが、今までお話した内容を1枚の図にまとめていますので、御参照ください。続いて11ページです。経皮吸収のある化学物質ということで、経気道に着目した今までの流れに乗らない経皮吸収のある化学物質に関する対策ということでまとめています。今後の方向性案という所を御覧いただければと思います。まず、適切なばく露防止対策の推進ということです。国が実施していくべき事項ということですが、労働安全衛生総合研究所で現在、実施していただいている経皮吸収に関する研究というものがありますけれども、この研究によって得られる知見等を活用して、化学物質を皮膚の透過性や吸収性、有害性等でグルーピングして、特性に応じた適切な保護具の選定方法等に関する情報発信等を通じて実効性のあるばく露防止対策を推進してまいりたいと考えております。
 他方で、御意見を頂いた生物学的モニタリング手法に関してですが、皮膚吸収勧告があって、かつ生物学的許容値が示されている一部の物質、現在、産衛学会では11物質程度が該当すると承知していますが、これらに関しては自律的管理における生物学的モニタリング手法について検討していただくことを想定しています。
 続きまして、12ページを御覧ください。以上の取組の推進に関するその他の論点として、この流れに関して事業者にどのように関与いただくかという論点に関しては、資料2に整理しています。また、同時に「国が行う有害性情報の収集」に関する論点については、次回以降のワーキングで検討してまいりたいと考えております。
 それから、以降の参考資料を御覧ください。14ページです。こちらは、あり方検討会の本検討会で使っている概念図ですが、「見直し後の化学物質規制の仕組み」ということで、今回、青枠で囲んである自律管理物質に関する論点をまとめています。続いて15ページです。こちらは、最初のGHS分類の対象となる物質を選定する際に、参照とすべき有害性情報の情報源のリストに関する情報ということで、政府向けのGHS分類ガイダンスを参照したいということで御紹介させていただきましたが、その内容についてまとめています。
 16ページです。途中で御説明申し上げましたが、物理化学的性状で、ばく露リスクの多寡を判断するという観点から、SDSに記載すべき物理化学的性質を記載しています。JIS  Z7253の要求項目ということでリストアップしています。これらの中から、特に着目すべき性質があるかどうかということで御意見を頂ければと思います。17ページ以降は、GHSの有害性区分ということで情報をまとめていますので、御参照ください。資料1の説明は以上です。
○城内座長 ありがとうございました。最後のほうにありましたが、経皮吸収については、労働安全衛生総合研究所で研究を行っておりますので、経皮吸収の研究の成果、経過も含めて甲田委員から御説明をお願いいたします。
○甲田委員 おはようございます。甲田と申します。経皮吸収に関しては、経皮吸収する化学物質によって起こってくる癌や健康障害を災害調査の中で確認して、そこから、どのように経皮吸収するのかを明らかにしたいというのが、実は事の発端です。産業衛生学会、ACGIH等も、いわゆるスキン、Sという文字が付いている化学物質がかなりあります。それらの化学物質の特性をよくよく調べていくと、それぞれ異なることが推測されます。経皮吸収した後に内臓臓器に毒性のあるものもあれば皮膚に対する毒性があるものもあるという形で、統一されておりません。それから、もう1つは経皮吸収の度合い、深刻度が分からなかったということです。
 今回のリスク評価の中で、経皮吸収に関して特出しして考えなければいけない事のきっかけは、芳香族アミンのオルト-トルイジンで膀胱がんが起こった事案があります。我々が十数例発生した工場へ災害調査に行き、気中のオルト-トルイジンのばく露濃度を測ったときに検知せず、このことから、ばく露はないのではないかと考えましたが、実際にかなり多くの作業者の尿中の代謝物を測定したところ、尿中の代謝物からオルト-トルイジンが出てきたということで、これはどのようになっているのかというのが発端です。
 経皮吸収のある物質について、全てリスクアセスメントを別立てにするのかどうかということは議論のあるところだと思うのですが、少なくとも、物理化学的な特性として、揮発しづらく、気中で捕まえられない物質の経皮吸収のある化学物質に関しては、別立てのリスクアセスメントを考えたほうがいいのではないかと考えております。
 ですから、災害調査からスタートして、3~4年ぐらい研究しております。研究のスキームは、まず、経皮吸収のある化学物質をなるべく多く集めて、その物質の中で、別立てでリスク評価をしたほうがいい物質は何なのかということを検討しようという情報の検討から始まっております。
 最初に行ったのは、in vitro、ex vivo、そしてin vivoの研究手法で経皮吸収のリスクアセスメントをしようと考えております。in vitroの研究は、基本3次元の培養皮膚を用いて化学物質を塗布することにより、それがどの程度、経皮に入っていくのかということを見ます。ただ、今までの手法でやっていては定量的にできませんので、化学物質に関しては、全て放射性同位元素であるC14でラベルをしたものを用いております。そのラベルをしたものが、どの程度皮膚を通過するのかということを定量的に把握することから始めております。そうすることによって、3次元の培養皮膚の下にどのぐらい通過していくのかということを定量的に見る、しかも時間的に、どのぐらい速く通過するのかを見るという検討をしております。
 先ほど15物質という話をしましたが、主になるのは芳香族アミン類ですけれども、それ以外に、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、これは経皮吸収するものとして非常に有名な物質ですが、もっと一般的な話で言うと、トルエンは経皮吸収をするということも含めて、そういう物質もコントロールというか、対象として使っております。芳香族アミンの物質は、押しなべて、かなり早い段階で入っていきます。これは先ほど申し上げたin vitroの実験ですが、ほぼ8時間たってしまうと、70、80%を吸収してしまうというレベルです。
 この結果を直接人間に当てはめることはできないのですが、かなり速いということが言えます。主に、速い物質を抽出して、第2段階のex vivoの研究、動物から摘出した皮膚を用いてやっております。動物はユカタンピッグを用いており、先ほど申し上げたC14でラベルされたもので、実際に入っていく速度、吸収量を調べております。そういうところから、先ほどお話しましたけれども、リスクアセスメントで捕えられない気中の化学物質の経皮に対する深刻度が、どの程度あるかというふるい分けをしていき、最終的には動物実験を用いて、どういう形で代謝するのかということを調べようというのが今の段階です。
 芳香族アミンを中心にした研究で分かってきたことをお話しします。先ほどオルト-トルイジンのお話をいたしましたけれども、我々が災害調査として経験したMOCAの場合は、先ほどの実験から言うと非常に経皮吸収の速度が遅かったのです。観察時間を長くとって経過を見ていくと、MOCAの場合は皮内にとどまっている量がかなり多かったということです。
 ですから、皮膚を通過して血液や組織に行く速度がそれぞれの芳香族アミンでも違う可能性があります。その理由について化学物質の分子量なのか何なのかということをいろいろ検討していくと、その中で幾つか浮き上がってきたものに、先ほどの資料の16ページにあげておりますが、「n-オクタノール/水分配係数」と比較すると非常によく説明できるということで、これも最終的に、なぜそうなるかということを解明して行きたいと思います。こういうものも、リスク評価の物理化学的性状の情報の中に入れていただければ、新たな化学物質が出たときに、それがどういう形で体内に入っていくのかということが分かってくるのではないかということです。
 なぜそういうことをやったのかというと、現場でMOCAを測定したときに、ある作業者が4日か5日ぐらい前に製造に携わり、それ以降は土日を挟んでお休みだったのですが、その作業者の尿中から、かなり多めのMOCAを検出しております。従来の生物学的モニタリングの知見から見ると伸長に議論する必要があります。今後は、基本的に生物学的代謝を見るときに、例えば、今までは夕方に尿を取る形でやられているのですが、もう少し蓄積的に、生体の中に入った化学物質の動態等を踏まえた上で、タイミングを見計らって尿や血液を採って判断することが非常に重要なのではないかというようなことを、多分、示しているのだと思います。
 ですから、それぞれの化学物質に関して、経皮吸収する、吸収した後は体の中ではどういう形で排泄に至るのか、どの臓器に蓄積するのかということも、併せて検討する必要があります。繰り返しになりますが、最初に申し上げたように物理化学的な性質が、揮発しづらくて非常に毒性を考慮しなければいけない化学物質の場合には、別立てのリスク評価方法を確立しなければいけないと思っています。
 ただ、このやり方は、先ほど申し上げたように放射性同位元素を使ったり、一つ一つの物質にかなりお金や時間が掛かります。とは言え、我々にとっては、非常に重要な情報を提供していると考えておりますので、今は研究の途中なのですが、経皮によって生体影響や健康影響が起こる化学物質のリスク評価方法、ばく露評価方法というのでしょうか、そういうことを確立していきたいと考えております。以上です。
○城内座長 貴重な知見をありがとうございました。それでは、事務局から資料2の説明をお願いします。
○植松化学物質評価室長補佐 資料2「事業者による有害性情報等の収集及び国への提供・協力について」です。1ページです。前回のWGでお示しした論点と御意見をまとめております。頂いた御意見の中から代表的なものを紹介いたします。
 「企業から情報を集めるのはGHS分類のためではないのではないかと思う。」「GHS分類のための新しいデータを取らなくてもいいというのは大前提である。」「有害性情報の収集や提供を行うとしても、新規化学物質なのか、既存化学物質なのか、またその目的を整理した上で議論する必要がある。」「有害性情報を収集するとして、どのような有害性情報を求めるのか、まずは案を示して欲しい。」等の御意見を頂戴いたしました。
 2ページです。「事業者による有害性情報等の収集及び国への提供・協力のあり方(案)」です。現行のスキームと、見直し(案)のスキームの図です。
 【現行】です。国がGHS分類をしてモデルを作成し、SDSの交付を義務化するという流れです。その先に、種々の情報を勘案してリスク評価の対象物質を選定し、実際に国がリスク評価を行います。リスクが高いと判断された物質に関しては、特別規則に追加するというスキームでやっておりました。この中で、事業者に関与していただいていたのは、1つは、新規化学物質の届出、あとは、リスク評価の中のばく露評価に資するための検討材料として、事業者による有害物ばく露作業報告という2点でした。今回、このスキームを新しく見直すに当たり、これらの事業者に関与いただく部分についても見直す必要があると考えております。
 【見直し案】です。大きな流れは、先ほど資料1で説明したとおりです。まず、ポイントとして3点整理しております。1つ目は、新規化学物質の届出の内容を見直す必要があるのではないかということです。2つ目は、既存化学物質に関しては、製造・輸入量の届出制度を新しく整理させていただきたいということです。3つ目は、ばく露限界値の設定等に際して、有害性情報が不足している場合は調査を実施したいと考えており、それに関する協力をしていただきたいということです。
 3ページです。順序が入れ替わってしまいますが、まず、「事業者による既存化学物質の製造・輸入量等の届出について」を説明いたします。【現状】有害物ばく露作業報告(労働衛生安全規則第95条の6)です。リスク評価の途中で活用する情報として、化学物質を年間500kg以上製造又は取り扱った事業場を対象として、製造・取扱い量、用途、物理的性状等の情報について御報告いただいていたところです。ただ、化学物質規制体系の見直しをするということで、国がリスク評価を行わないという整理になると、有害物ばく露作業報告も見直す必要があるということになります。
 【見直し(案)】です。国によるGHS分類の対象物質の選定、ラベル・SDSの義務対象物質や、ばく露限界値の設定の対象物質の選定をする際に、優先順位を付けるための判断材料として、製造・輸入量の情報を頂きたいということを考えております。例えば、化学物質を年間1トン以上製造・輸入した事業者を対象として、名称、製造・輸入量、用途などの情報を届出いただくような仕組みができないかということを考えております。既に、同様の届出制度が化審法にありますので、化審法に基づいて経済産業省に届出があった物質に関しては、届出は不要という整理で、連携を検討していきたいと考えております。
 4ページです。新規化学物質の届出に関する論点です。現状の届出内容の情報を集約しております。有害性の調査ということで、「微生物を用いた変異原性試験」について届出をしていただいているところです。
 また、【有害性試験に関する御意見】としては、前回のWGにおいて、「現在の新規化学物質の有害性調査で実施されている変異原性試験について、GHSの分類判定基準など国際的な整合性から位置付けし直す必要があるのではないか。」「ばく露限界値がない物質については、化審法で持っている反復投与毒性の情報も活用していく可能性もあるのではないか」といった御意見を頂戴しました。
 5ページです。先ほどお示ししましたが、GHSにおける有害性の種類ごとの区分の紹介です。6ページは、「事業者による新規化学物質の有害性の調査結果等の届出」です。ここには、化審法の届出制度の内容をまとめております。対象の切り方もあるのですが、化審法では、丸1細菌を用いる復帰突然変異試験(Ames試験)、丸2哺乳類培養細胞を用いる染色体異常試験、丸3哺乳類を用いる28日間の反復投与毒性試験などの有害性情報が求められております。
 7ページです。「事業者による新規化学物質の有害性の調査結果等の届出丸3」です。【見直しの視点】として整理しています。これまでの安衛法では、特にがん原性に着目して、変異原性試験やがん原性試験などの情報を頂いておりましたが、制度創設以来40年以上安衛法の届出制度は見直されてこなかったこともあり、今次の見直しのタイミングで、化審法で対象としている反復投与毒性試験や、労働災害で多く見られる急性毒性に係る試験など、他の有害性試験にも着目すべきなのではないかということを考えておりますところ、御意見を頂きたいと考えております。
 特に着目された有害性試験が特定されたとして、有害性試験で高い有害性が明らかとなった場合には、一定期間は、毎年、製造・輸入量の届出を行うことを義務付けてはどうかということ、また製造・輸入量が一定量以上となった場合は、国によるGHS分類やラベル・SDS義務対象に追加することとしてはどうかと考えております。その際に、当該届出を行った事業者に対しては、必要に応じてGHS分類に活用できる情報を持っていれば国に提供することを求めることとしてはどうかということも検討しております。
 また、これまで強い変異原性が明らかとなった場合や、がん原性が明らかになった物質に関しては、それぞれ指針をお示しして指導してまいりましたが、今回はその指針の内容を見直す必要があるのかどうかということ、また、別の有害性に着目するということになれば、こういう指針のようなものを有害性ごとに整理する必要があるのかどうかについても御意見を頂きたいと考えております。
 また、物理化学的性状に関するポイントとして、先ほど、既存化学物質の選定の部分でも申し上げましたが、「蒸気圧」等のばく露リスクの多寡を判断するために必要な情報ということで、届出内容の1項目として「蒸気圧」等の項目を追加するのはどうかということと、ほかにも追加すべき項目があるかどうかということについて御意見を頂戴したいと考えております。それから、これまでは事業場単位で数量が100kg以下か否かを確認して、有害性調査の対象の有無を判断してきたところですが、製造・輸入量の届出と同様に、これからは企業単位で一定量以上製造・輸入する場合は対象とすることとしてはどうかということを考えております。8ページは、変異原性指針と、がん原性指針の内容を簡単に紹介しております。
 9ページです。有害性情報が十分ではない物質に関して、「事業者による有害性情報の収集等に関する調査協力」としてまとめております。【見直し(案)】ですが、丸1労働災害が頻発している物質について、原因究明や、ばく露防止対策の検証等が必要な場合、丸2非臨床試験において有害性が高いことが明らかとなった物質や、海外において有害性が高く規制が措置されることとなった物質などに関し、人健康への影響や、ばく露状況などの調査を行う場合を想定しております。こういう場合に、事業者に対して、厚生労働省及び独立行政法人労働者健康安全機構の労働安全衛生総合研究所が行う当該調査への協力を義務として位置付けることを提案させていただいておりますので、御意見を頂戴できればと思います。資料2の説明は以上です。
○城内座長 ありがとうございました。これから皆さんから御意見を頂きたいと思っています。資料1は6項目ありますので、1つずつ進めていきたいと思います。まず資料1の「国によるGHS分類からばく露限界値設定までの流れ」のうち、1番目の「国によるGHS分類、2番目のモデルラベル・SDSの作成・公表」に関して、御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。これまでのラベル・SDSの物質数を増やしていくということについては同意いただいていると思いますけれども、具体的に、このような方向性で良いかどうかということです。大前委員、お願いします。
○大前委員 4ページの概念図ですが、ブルーの菱形の2つ目、製造・輸入量が一定量以上かどうかというところです。許容濃度等があるにもかかわらず、製造・輸入量が少なければ「No」のほうにいくわけです。使っていなくてゼロだったら、もちろん「No」でいいと思うのですけれども、ゼロ以外は、せっかく情報があるわけですから「Yes」のほうにいくような形にしたほうがいいのではないかと思います。一定量以上の一定量が、どういう数字なのかということだと思います。
○城内座長 現状でいくと、許容濃度あるいはTLVがあるものについては、モデルラベル・SDSは作成してもよいという理解でよろしいですね。その後、また増えていった場合には追加していくかということになると思いますけれども。それでよろしいですね。そのほかに御意見はありますか。梅田委員、お願いします。
○梅田委員 モデルSDSの作成の基準ですが、資料6にお示しいただいた基準で今後は作っていくということですけれども、現在ある3,000物質のモデルSDSも、同じような基準でやられているということでよろしいですか。既に作ってあるモデルSDSを見る限り、かなり特殊なものも含まれていると思うので、どういう基準で作られているのかと思った次第です。
○吉澤国際動向分析官 今までは、製造・輸入量を把握していたわけではないので、このスキームで言えば、1段目だけで何か重大な労働災害が発生して、モデルSDSを作る、若しくはリバイスする必要があるのではないかということが、まず1つのきっかけです。また、2つ目はACGIHや産衛学会などから新たな知見が得られて、モデルSDSを作る若しくは更新する必要があるのではないかという観点だけで選定しており、そこに製造・輸入量が新たな尺度として入ったわけです。
○城内座長 よろしいでしょうか。では、意見をお願いします。
○山口委員 確認させていただきたいと思います。この4ページの概念図で、Yes・Noがあります。製造・輸入量が一定量以上かというところは、「許容濃度or TLVがあるか、着目すべき有害性情報があるか」というところから線が出た上で、「製造・輸入量が一定以上か」というように見えるのです。まずは、許容濃度やTLVがあって、着目すべき有害性がある化学物質というのが公表された上で、製造・輸入量を求める、あるいはどこかから取ってくると。この段階では、まだ「求める」とは言っていませんので、そういったイメージでよろしいのですか。
○植松化学物質評価室長補佐 そういったことを想定しています。
○城内座長 そのほかにありますか。山岸委員。
○山岸委員 製造・輸入量というのは、弊社のように、主に化学物質を取り扱う事業者は、義務ではないのですけれども、別に届け出る必要はないのでしょうか。
○植松化学物質評価室長補佐 はい、取り扱う事業場は想定しておりません。製造若しくは輸入をしている事業者を対象として想定しています。
○城内座長 そのほかにありますか。よろしいでしょうか。では、SDS・ラベルの表示の義務化に関しては、一応御承認いただけるというか、これで進めてもよろしいですか。
○内田化学物質評価室長 1点、確認します。大前委員から、製造・輸入量の判断基準はゼロか否かであって、基本的にゼロのもの以外はGHS分類の対象にするという御意見がありましたが、そのような方向でよろしいでしょうか。
○城内座長 それについて、ほかの委員から何か御意見はありますか。植垣委員、お願いします。
○植垣委員 これは大前先生にお伺いするのがいいかもしれません。例えば産衛学会で、実際に許容濃度設定の対象物質を選定されるときには、製造・輸入量など、事業者が特によく使っているとか、そういうところを見て選定されているのでしょうか。そこは余り関係なく、危なそうなものを選定されているのかというのを教えていただければと思います。
○大前委員 実は、今の製造・輸入量等々の情報を使って選定しているわけではありません。どちらかと言うと、任意にやっています。特に最近、障害があることが分かった情報や新しい情報とか、そういうものを優先的にやっているので、取り立てて製造・輸入量は考えておりません。もちろんゼロのものが出てきたら、それはもう作るのをやめようねということにはなります。
○植垣委員 そうしますと今、許容濃度が設定されているものでも、製造・輸入量がほとんどないものもあり得るという認識でよろしいですか。
○大前委員 古いものは、ひょっとしたら今はもう使われてないものもありますので、その可能性はあります。
○植垣委員 分かりました。ありがとうございます。
○平林委員 「一定量以上か」の一定量というのは、物質に関係なく一定のレベルを想定していらっしゃるのですか。それとも、それぞれの剤の性質によって、毒性が出そうな量で切るという対応をされると考えていらっしゃるのですか。多分、大前先生は同じようなことをお考えだろうと思っているのですが。
○植松化学物質評価室長補佐 物質によらず、全ての物質で一定の基準で切ることを想定しております。
○平林委員 そうすると、毒性があることが分かっていたら、やはり製造・輸入量は切れないということにならないのではないかということを懸念しております。
〇植松化学物質評価室長補佐 なるほど。
○梅田委員 国によるGHS分類に関してです。例えば、ヨーロッパの分類とは結構、違ったりすることもあるわけです。そういう場合、参照して考慮していただけるのではないかと思っています。もう1つは、政府によるGHS分類がありますが、環境省と厚生労働省が別々に出す場合があります。これをまとめて出していただけると、事業者としては助かります。それと、前回もお話したと思うのですが、事業者もレビューできるような場を設けていただくと、事業者としても意見が言いやすいというか、意見を言う場ができたほうが好ましいのではないかと考えております。
○城内座長 山口委員、お願いします。
○山口委員 今の議論の中では、製造・輸入量が一定量以上か、ゼロかそうでないかというところで、いろいろな話があったかと思うのです。これは製造・輸入量をどうやって集めるかというところに掛かってくるのではないかと思うのです。ですから、ゼロあるいはゼロでないところのデータの取り方の議論が、多分重要になってくるのではないかと思います。
 また、全てのものを企業に求めること自体、非常に難しいところがあるのではないかという部分もありますので、その辺の議論を十分にする必要があるのではないかと思います。今の化審法などには、ある一定の区切りがありますし、世界的にも普通はそうなっていると思います。ゼロかそうでないかの議論というのは、聞いたことのない議論なので、そこは慎重な議論が必要ではないかと思います。
○城内座長 私の印象ですけれども、3,000物質は国が分類して、それについては許容濃度等もあるので、これから順次義務化していってもいいのではないかという何となくのコンセンサスはあったような気がします。ただ、ここで改めてフローが出てきて、一定量以上で考えましょうというと、現状の3,000にも引っ掛かっているような気がします。
 実は私の中では、これは何十年もずっと続く話ではないかと思っていたのですが、そうではなくて、ここで一定量以上というのが出てくると、今の3,000にも関わる話になりますよね。多分そこを明確にしないと、この先の議論が少し滞るのではないかと思います。その辺について、事務局としての考え方はいかがですか。
○中村化学物質対策課長補佐 本検討会の議論にも関わってくるので、まず考え方を御説明します。本検討会では、これまでGHS分類したものを改めて製造・輸入量を確認し、義務化するかどうかを決めるのではなくて、まず基本的には、そこは義務に持っていきましょうという議論になっています。今回お示ししたのは、これから更に、新しくGHS分類をするときの優先順位を、どう決めていくかという議論で整理したほうが分かりやすいのではないかと思っています。事務局から製造・輸入量を出させていただいたのは、これからの規制は、リスクという考え方でやっていきましょうということで考えています。もちろん許容濃度やTLVというハザードがあることは分かったとなると、国内で使われていないものまで、わざわざ日本でGHS分類をするのかという議論は当然あるのではないかと思います。そういう中で、ゼロか一定量にするかという議論は当然あると思いますけれども、製造・輸入量について、国内での取扱量も考えたほうがいいのではないかということで提案させていただきました。あとは、御議論次第で、その方向性をどうしていくかということかと思います。
○内田化学物質評価室長 補足いたします。資料1の6ページに、義務対象物質の整理の考え方を書いてあります。今、中村補佐が申したとおり、最終的に3,000物質については全て義務化するという考え方です。ただ、優先順位を付けてやらなければならないという中で、リスクという観点からは、ばく露というか、製造・輸入量も考慮した上で優先順位を付けるべきではないかということで、ここの部分でも「製造・輸入量が一定以上か」というのを判断材料として入れています。ただし、一番右に書いてありますように、例えば「製造・輸入量が一定以上か」が「No」であっても、最終的には義務化の対象になるという考え方として整理しているという状況です。
○城内座長 ということで、フローについては、この先の話だという説明があったと思います。そうすると、年間100ぐらいやっていきましょうと言うと、私はもう死んでいると思うのですが、その後についての合意ということで、皆さん、よろしいでしょうか。一応、これで進めさせていただきたいと思います。当然、パブコメ等もあると思うので、けしからんという話があれば、また考えるという理解です。
○植垣委員 現在、NITEのほうで3,000物質のGHS分類の精査を行っていただいたものが公開されていますが、これにGHS分類の許容濃度が全部設定されているかというと、例えばデータ不足で分類できないという形で有害性が設定されていないものもあります。そういうものも全部、今回の義務化の対象とするのか。有害性が非常に高いものから低いものまでバリエーションがあるかと思うのです。有害性が低いものやデータがないものについても、今回は対象とする方向でお考えなのでしょうか。
○中村化学物質対策課長補佐 もしかすると、前回もお伝えしたかもしれないのですけれども、今回は先ほど申し上げたように、3,000を義務化しますという基本的な考え方を持ちつつ、もう一度3,000物質の精査はさせていただこうと思っています。
○植垣委員 分かりました。そういう意味で、有害性がないとか不明なものについて、むやみに義務化の方向に持っていくということはしないのですね。
○中村化学物質対策課長補佐 全く有害性がないものを分類しているかどうかというのは、改めて確認が必要かと思っています。
○植垣委員 ざっと見ると、200物質以上はそういうものがありますので。
○城内座長 漆原委員、お願いします。
○漆原委員 改めて6ページの概念図を拝見すると、仮に有害性の情報がなかったとしても、さらに、製造・輸入量が一定量以上でなかったとしても、優先度が低いだけであって、時間軸は別にして結果としてそのリストの中には載ってくるという理解でよいでしょうか。仮に100物質ずつ実施していくときの優先度が低いだけであって、いずれは実施すると考えて良いのかお聞きしたいです。つまり、6ページのNo、Noで、きたところの優先度が「低」の所に矢印が来ているという意味は、いずれは実施するけれども、今は優先度が低いので、100物質でいけば何年先になるかは分からないけれども、いずれはという理解でよろしいでしょうか。
○内田化学物質評価室長 そのとおりですけれども。今、いわゆるモデルラベルがあるのが3,000で、義務対象になっているのが673なので、残りの2,300辺りが順次、優先順位を付けて義務化していくということです。先ほど100と言ったのは、前のGHS分類のほうの話です。どのぐらいのボリュームで順次やっていくかというのは、よく整理しなければいけないと思っています。いずれにしろ、最終的に残ったものは、No、Noでいくものについても、最終的には義務化の対象になると。ただし、今お話があったように、全く有害性のデータがないものの取扱いについては、よく精査しなければいけないと思っておりますけれども、最終的には、この対象にはなるという考え方です。
○城内座長 よろしいでしょうか。梅田委員、お願いします。
○梅田委員 3,000物質については、一度に規制の対象にはしないということですが、例えば毎年100ずつ増えていくとなると、法改正が毎年行われるということで、現場はかなり混乱するのではないかと思います。ですから、現場が対応できるような改正のスパンを御検討いただければと思います。
○植松化学物質評価室長補佐 正にそういったことを御相談させていただきたいのです。若しくは、3,000物質でいきなりということも、多分、技術的には可能であると思うのです。ただ、それは全く現場を理解していない我々のエゴ的な感じになるので、実際に現場で対応していただきつつ、できるだけスピード感を持ってやっていくためには、毎年どの程度、何百物質程度を対象としていくべきかというのを御相談させていただきたいと考えております。
○城内座長 村田委員、お願いします。
○村田委員 優先順位の付け方ですけれども、例えば化審法では、リスクという考え方で、有害性とばく露との兼ね合いということでやっております。もし、許容濃度等の数値があるということでしたら、あるいはエンドポイントの種類に応じて、ばく露の指標の一定量以上というものとの組合せを考えるというのもあり得るかなと思いました。
○城内座長 そのほかに御意見はありますか。山岸委員、お願いします。
○山岸委員 化学物質のリスクアセスメントが義務になるわけですよね。それで増えてくると思うのです。資料2のほうで聞こうと思ったのですけれども、例えば使用量が、ある一定量以下だったら有害性の評価を免除するというようなことが書かれていたのです。今は化学物質を使用していれば、673物質についてはとにかくリスクアセスメントをしっかりやるということでやっているのですが、そこら辺も何か変わってくる可能性があるということですか。一定の使用量、輸入量とか製造量でいろいろできてきたものに対して、実際に使っている側は、有害性の評価をしますとなったときに、使用量などは影響してくるのでしょうか。
○内田化学物質評価室長 ラベル・SDS義務対象物質について、リスクアセスメントをやっていただくという部分に関しては、特に今までと考え方が変わるわけではないのです。一定の使用量以下であれば免除するという考え方があるわけではないのです。資料2については、別のスキームとして、新規化学物質の有害性調査ということで、変異原性試験というのを今やっていただいております。今までは、1事業場当たり100キロ超を対象にしていたところを、例えば企業単位で基準を見直すとか、そういった変更については資料2の中で提案させていただいいていますけれども、それはリスクアセスメントの話とは別の話です。
○山岸委員 輸入・製造する事業者としては、有害性の評価を100キロとかで少し分けようということですね。いずれにしても使う側は、使う量にかかわらず、今のリスクアセスメントの義務の範囲がどんどんどんどん増えてきて、使っていればやらなければいけないということですね。
○内田化学物質評価室長 はい、そうです。
○山岸委員 分かりました。
○城内座長 そのほかにいかがでしょうか。議論が3番まできています。3番までの間で、何か御意見等はありますか。では、私から確認します。6ページの(2)の「危険有害性情報/GHS分類結果の観点」ですが、これは区分1あるいは、1と2までと書いてあります。これはもっと柔軟に考えてもいいのでしょうか。つまり1までしか考えません、2までしか考えませんということではなくて、もう少し柔軟に考えてもいいということでしょうか。
○植松化学物質評価室長補佐 例示として示しているだけなので、柔軟に考えていただければと思います。
○城内座長 実際に作業をするときは、またいろいろなことを考えるということでよろしいですね。つまり実際の作業、優先物質を決めるときは、もっといろいろなことを考えざるを得ない場合もあると思うので、そういうことも考えておいていいかということです。
○植松化学物質評価室長補佐 ただ、その基準を事前に整理させていただいたほうがいいのではないかと考えています。
○城内座長 例示という理解でよろしいですね。
○植松化学物質評価室長補佐 はい。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかに、3番まではよろしいでしょうか。何かありますか。それでは、次からまた重い課題が続きますので、4番目にいきたいと思います。「ばく露限界値の設定」ということで御議論いただきたいと思います。いかがでしょうか。大前委員、お願いします。
○大前委員 今更の話ですが、「ばく露限界値」という言葉は、いわゆる許容濃度やTLVと混乱する可能性があります。国がやる話なので、管理をするための値という感じですので、この言葉は変えたほうがいいのではないかと思うのです。今日決めるわけにはいかないと思うので、例えば「ばく露限界値(仮称)」というような形で、名称を考えたほうがいいのではないかと思っております。そうでないと将来、混乱すると思います。多分、将来的には英訳もされると思うのです。そのときに、「ばく露限界値」だと「Exposure limit」になってしまって、結構一般的な用語になってしまうと思うので、そこら辺は是非、将来的に考慮していただきたいと思います。
○植松化学物質評価室長補佐 了解しました。
○城内座長 重要な点だと思います。そのほかにありますか。甲田委員、お願いします。
○甲田委員 少し細かい話になるかもしれません。先ほど経皮の話で、研究の中身を少し紹介させていただいたのですけれども、16ページの「物理化学的な性状」のところで悩んでいるのが、(18)の粒子特性の内容です。私が不勉強なのかもしれないのですけれども、実は粒子特性にも、かなりいろいろなものがあります。例えば、粒子の大きさとか形状とかがあるのです。ですから、どこまでを、この中に取り上げるのかというコンセンサスが得られているかどうかというのが、私には分からないので教えていただければ有り難いと思います。
 なぜ、このようなことを言うかというと、前回も話があったのですが、ナノ粒子に関しては、基本的に毒性が違うのではないかという議論があります。実際問題として我々も災害調査で見ていますと、ナノまでいかなくてもサブミクロンレベルのいろいろな物質の毒性が違うということを現場で見たり、結果的に健康障害の出方が違うということがあったりすることを経験しています。もし、そうなると例えばリスク評価をするときに、粉体ですから秤量して評価するという話になるのです。しかし御存じのように、秤量すると大きなものがボーンと入ってしまったら、非常に悪いほうに触れてしまうのです。そうではなくて、非常に細かいところ、いわゆるサブミクロンのレベル又はナノレベルのリスク評価をするときの方法として、やはり今のリスク評価は使えない可能性があるような気がするのです。そこを判断するための粒子特性は、やはりあったほうがいいと思っております。ですから粒子特性の中でもその辺の何を要求していくかというところは、どういうようにコンセンサスを得たらいいかを非常に悩んでおりますので、質問させていただきました。
○城内座長 そのテーマは、資料2のほうで議論したいと思いますので保留にしておいてください。「ばく露限界値の設定」についての御意見はいかがでしょうか。梅田委員、お願いします。
○梅田委員 リスクアセスメントに関してお伺いしたいのです。国連のGHS分類の裾切り値で、2基準あるものが幾つかあります。前回のワーキンググループでも議論になったのですが、例えば特定標的臓器は情報提供をする基準が低いほう、特定臓器で1%以上あれば情報提供を求められています。ただ、有害性の区分を判断する場合は10%が裾切り値になっています。ですから、その間の場合、SDSは交付するけれども危険有害性は評価しないという濃度の範囲があるのです。その場合、危険有害性を評価しないにもかかわらず、リスクアセスメントをする必要があるのかないのか。私の考えでは、もう危険有害性の評価をしないのであれば、リスクアセスメントも、その間の濃度は必要ないのではないかと思っているのですが、その辺りについての御意見があれば伺いたいのです。
○中村化学物質対策課長補佐 基本的に、今の労働安全衛生法上の基本的な立付けを御説明させていただきますと、ラベル表示やSDSを提供することについては、既に物質ごとに裾切り値を決めています。そこからリスクアセスメントは自動的に義務対象ということになるので、例えばGHS分類の有害性の評価をどれぐらいでやるかということにかかわらず、ラベル表示やSDSの交付義務の裾切り値以上のものが含まれているのであれば、そこからの範囲がリスクアセスメントの義務対象になるというのが、今の法律上の立付けになっております。
○城内座長 よろしいでしょうか。
○梅田委員 SDSを交付するところは理解できるのですが、ただ、そうなってしまうと、リスクアセスメントをする上で危険有害性が落ちている場合もあるわけです。それでも、なおかつ、リスクアセスメントをする必要があるのかということです。
○山岸委員 先ほどの質問で、化学物質のリスクアセスメントは変わらないということでしたので、ある数量以下は有害性評価をしないと。SDSのほうに、どういう情報が入った段階で我々の手元に届くかは分からないのですけれども、多分、評価をしていなくて何も情報がないと、それに基づいて我々は化学物質のリスクアセスメントをしなければいけないという御心配のような質問だと理解したのです。例えば、どこにも区分されませんとか、何もありませんというSDSが届いたときに、どうやってやるのかということですかね。
○城内座長 GHSのほうから言うと、おっしゃるように、カットオフ値がいろいろあって、なおかつ行政の裾切り値もあって、そこの整合性が取れてないので、それは整合性を取ったほうがいいのではないかということは、あり方検討会でも発言しています。もう1つは、何も書いてなければリスクアセスメントはしなくてもいいのだろうと思います。しかし、そういうものにはSDSを発行していないと思います。
○山岸委員 何かあったから書いてあるのでしょうね。
○城内座長 今の問題で、1%か10%かというのは、危険有害性が限られています。それは例えば急性毒性などではないわけです。だから何も書いてなければ危険有害性はないという理解で、リスクアセスメントも必要ないと思いますけれども、SDSだから何か書いてあるはずです。つまり危険有害性はあると思うので、その部分については、リスクアセスメントは必要ではないかと私は理解しています。つまり、発がん性について日本ではカットオフ値が高いので、リスクアセスメントは必要ないけれども、ほかの有害性があるから、それについてはしなければいけませんというような理解になると思います。
○山口委員 リスクアセスメントのやり方については、会社によって大分違うのかな、考え方が違うのかなと思う部分があります。要は、SDSを全部配られた化学物質に関しては、リスクがあるかないかを含めて確認することもリスクアセスメントだと私は思うのです。
○城内座長 そうです。
○山口委員 そうすると、SDSが配られる理由というのは。ここで言っている「有害性」という言葉が漠然としているから問題だと思うのです。安衛法上の有害性の話をしているわけであって、SDSの配布は環境への影響のためだけにマークが出てきて配っているものも実際にはあるはずなのです。そうすると、有害性としては、今回のばく露で吸収があるかないかということに対しての情報が仮にSDSが全部あって有害性が何もない、あるいはデータがないということを確認すること自体がリスクアセスメントだと私は思うのです。この辺の考え方でいくならば、配られたものに関しては全てリスクアセスメントを行っていると判断できるのではないかと思うのです。こういう考え方でいくならば、全部やるのですよねというように、私などは思ってしまうのです。これは違うのですか。今、議論があちらこちらに飛んでいるような気がしているのですが。
○吉澤国際動向分析官 制度的なことを言うと、リスクアセスメントは何か措置をしなさいということではなく、措置の内容を決めるために、まず最初にリスクアセスメントをしてリスクを決めましょう、決めたリスクに基づいて措置を考えましょうというのがリスクアセスメントなのです。ですから極端な話、ありとあらゆるものについてリスクアセスメントはすべきですけれども、実際に世の中に7万物質もある化学物質について、全てリスクアセスメントをするのは大変なので、そのうち673物質だけは義務としてやってください、それ以外はできるだけやってくださいという制度になっているわけです。
 ですから、必要最低限の673物質についてはやっていただくのですけれども、それは必ずしも措置してくださいということではなく、濃度あるいは量によって、当然リスクは上がったり下がったりします。低いリスクであれば極端な話、ちょっと気を付けるだけで済むかもしれません。濃度が高くても少しの量であれば、取扱い上、手に触れたり吸ったりしないように気を付ければ、それで済むかもしれません。そのようにリスクというのは、あくまでも自分自身で決めるものなのです。ですから、リスクアセスメントをしなくてはいけないというように身構えることなく、リスクアセスメントを広くやっていただきたいと思います。
○中村化学物質対策課長補佐 ちょっと補足します。先ほどの梅田委員の話ともつながると思うのですけれども、今お話したように、法的に、リスクアセスメントの実施義務というのは掛かるのです。結局、化学物質のリスクアセスメントは、大本になるのは、やはりSDSに書いてある情報ということになると思います。城内先生もおっしゃっていたように、SDSの中に有害性がなければ、それを基に、対応していただくというのが大前提になると思います。そこが混乱しなければ、そんなに難しい話にはならないのではないかと思っています。
○城内座長 よろしいでしょうか。4番の「ばく露限界値の設定」というのは、許容濃度やTLVがあるものについての話なので、ある程度のコンセンサスは得られてきている物質ではないかと思いますが、今後、ここも増えてきますので、その点を踏まえての議論ということで理解したいと思います。大前委員、どうぞ。
○大前委員 7ページの「ばく露限界値の設定」のプロセスについてです。これは「専門家による情報の収集」に入っているのかもしれませんが、許容濃度等が変更された場合を明示しておいたほうが、将来的にはいいのではないかと思います。
○城内座長 よろしいですか。次に移りたいと思います。ここは更に重い話なのですが、5.暫定ばく露限界値の設定ということですが、これに対していかがですか。
○三柴委員 城内先生がおっしゃるように、非常に重く重要な課題だと思います。うまく言えるかどうか分かりませんが、基本的に化学物質というのは危ないものかもしれないという思想が必要なのだろうと思います。10年以上昔ですが、ドイツの制度について調べたときに分かったのは、まず、ベース、大枠としてリスクアセスメントは求めるけれども、ドイツの場合は、先生方も御案内のように、非常に学問的な規制を採用しているので、要するに、学界が支配的な見解として認めているもの、一部の人しか言っていないが、現場では直感的に危ないと思われているものを段階分けにして、それぞれに応じて取るべき対策を区分していくというようなやり方をしています。これは要するに、リスクアセスメントがベースにあるのですが、その運用をどうするかと言ったら、危ないと分かったものについて必要な範囲で規制していくというやり方です。
労災補償の場面では、これは労災ではないかと疑わしいものも申告を認めて個別の判断の下に救済するような仕組みは取っているのですが、予防の規制という面で見ますと、良く言えば科学的過ぎて、疑わしいが危ない所まで予防行動を誘う上で難しい面が多分ある。だから、現にドイツの労災保険組合が出しているデータを見ますと、やはり化学物質被害は多いように思うのです。これに対して日本がどういうふうにアプローチしていくべきかということですが、最終的には、事業場ごとのサイエンスとコンセンサスで決めていく仕組みが恐らく必要ではないかと思うのです。ここで言うサイエンスというのは、かっちりとしたエビデンスベースでなくても、専門家の直感も含めて、専門家の経験則も含めてですが、そういう仕組みを作ることが必要だと。
 ですから、基本的には厳しめの規制を敷いておいて、衛生委員会とか、IHでもいいのですが、専門家が、これは安全だと確認できていれば、暫定ばく露限界値を守らなくても大丈夫というような外し方をしてくのがいいのかなと。なぜかといえば、やはり考慮要素としては、産業利益も守らなければいけない。現実的な評価や管理方法の有無も考えなければいけない。さらに、労働者の場合は、使用者の指揮命令関係の下で働いていますから、これは少し自営業者と違うところもあります。そういうことを多々考慮していったときに、やはり、結論のような話になっていくのかなと思います。
○城内座長 暫定ばく露限界値の議論を始める前に、明確にしておきたいことがあります。まず、暫定ばく露限界値というのは国で出そうとしているのか、そうではないのかということを前提にしないと議論にならないのですが、その辺はいかがですか。
○植松化学物質評価室長補佐 国で出すことを想定しております。
○城内座長 分かりました。そういうことだそうですので、御意見をお願いします。
○甲田委員 議論を混乱させるつもりはないのですが、有機粉じんによる健康障害が起きたときに、事業所のほうから言いますと、これは基本的には害がないですよというような認識で、やはり、粉じんの計測はしていたのですよね。そのときに活用していたのは、産衛学会の第3種粉じんの扱いです。吸入性粉じんでは、3mg/m3になっているのですよね。
 実際に、その中で、ある物質に関して呼吸器障害が出てしまったと。そうなってきますと、この基準値がどうやって現場で、企業で受け入れられるのかなというところで、今の議論になるのですが、国が決めるとなると、国が3mg/m3でいいと言っているのですから、それでいいのではないかという話になっても、あのときは困ったなと。実際に起こった職場では、非常に特殊な有機粉じんの種類で化学構造式とか、先ほどの粉体特性にも関係するのですが、発じんの仕方とか、いろいろな形のものがあって、運悪くという言い方をしていいのかどうか分かりませんが、そこではかなりの呼吸器障害が起きたという話です。そこの企業ではA測定、B測定の環境測定をきちんとやって、それは基準値以下ですからというところでかなりやっていたとかがありました。その運用の仕方に関しても、どうしたらいいのかと慎重にやる、又は今後見直すことも当然あるのだろうと思いますが、先ほどみたいに障害が出てしまった場合、害のない粉じんに切り替えていくという考え方も当然あるのですが、その辺のところをどう考えるのかというところも慎重にやらないといけないと、これは私どもの経験からです。
○中村化学物質対策課長補佐 御議論いただく前に、我々が懸念している点を1点お伝えしておきたかったのですが、前回の議論にもありましたし、今回の粉じん以外も難しいのではないかとお示ししている理由でもあるのです。国が数値を示すと、今、甲田さんがおっしゃったように、そこまではいいのではないかということに、現場はなってしまうのではないかということを、実は非常に懸念しております。例えば、今回粉じん10mgにしていますが、それなら10mgまでは吸わせていいのかとか、粉じん以外の蒸気も含めて、例えば、最大なものに合わせる議論も前回あったと思いますが、そこまでばく露させていいのではないかとか、そういう誤ったメッセージにならないようにしなければいけないなというのは、我々も気にはしているところなので、そういうことも念頭に置きながら御議論いただければと思います。
○城内座長 ありがとうございました。いかがですか。
○甲田委員 それに関して言いますと、例えば、アメリカのACGIHなどが、10分の1という形でアクションレベルを設定して、最終的に自律的管理の中でどのぐらいまで下げたらいいのかというところの事業場の中での取組というか、そういうものの目標になるような数値もどこかにあってもいいのかなという気もするのです。
 先ほどの事業所だと、3mg/m3まではOK。総粉じんだと10mg/m3 、これはかなり粉じんの環境としては悪いわけです。だから、当然そういうようなことも考慮して、マネジメントのほうで、もう少し対応するということもセットで考えたらいかがかなという感じはします。
○城内座長 いかがですか。特に発がん物質等については、相当難しいのではないかと思うのですが、大前先生の御意見はいかがですか。
○大前委員 相当難しい話だとは思います。そのとおりだと思います。今、甲田先生がおっしゃったように、例えばアクションレベルみたいなものは提示してもいいかなという気がします。
 今、有機粉じんのことをおっしゃいましたが、これは比重によっては全然違うのです。今、mgのrequirementという、mgというのは重さの単位なので、本当は重さの単位ではないほうがいいのでしょうが、例えばmolとか、そういう分子の数、有機粉じんは分子でないかもしれませんが、そういう提示の仕方のほうがいいのでしょうが、現実的にはほとんど不可能に近いので、粉じんの場合はmgでやらざるを得ないだろうと。蒸気の場合は、むしろppmのほうがいいので、mg/m3よりもppmがいいと思います。発がん物質に関しては別個の話で、しかも、genotoxicのものに関しては別の話だと思います。おおむねepigeneticな発がん性物質は、ばく露限界値を設定できると思うのです。暫定ではなくて、数字が決まると思うのです。それは暫定ばく露限界値を使わないタイプの物質ではないかと思います。
○城内座長 ありがとうございます。そのほか、いかがですか。
○漆原委員 9ページの定義についてお伺いします。定義の(1)は分かりやすいのですが、(2)の「有害性情報等が十分でなく」というのは、例えば、これまでのフローで言えば、着目すべき有害性情報があるかないかというところはあったのですが、十分でないかという考え方についてです。例えば、有害性情報は十分でないけれど、存在はしている。ただ、許容濃度とかTLVがないので、ということなのか、そこに至るまでの有害性情報が十分でないのかというところの違いを踏まえて、こういう定義になっているのでしょうか。つまり、それ以外の濃度として設定できる情報がないので、ここで言いますと、(1)は設定されていない、(2)は設定できない物質となっています。この違いをもう少し説明いただけると助かります。
○植松化学物質評価室長補佐 ここで言いたかったのは、究極的には、ばく露限界値を順次設定していくということで考えているのですが、ばく露限界値が設定できない、若しくはそこに至っていない物質、全ての物質を対象として考える指標値ということで考えておりましたので、そういった意味で有害性情報がそこに至っていないということをここでお示ししていたところです。
○大前委員 多分、有害性はあることは分かっていると。しかし、用量反応関係が分かっていないので、ばく露限界値は作れない。そういうことだと思います。用量反応性の関係が分かっていないと当然、ばく露限界値は作れないので、そこのところの情報の量の問題だと思います。
○城内座長 そのほかはありますか。皆さんはご存じかもしれませんが、実は、例えばCREATE-SIMPLEだと、管理濃度の目標みたいなものがGHSの区分に応じて決められているわけです。個々の物質について暫定ばく露限界値というのは多分決められたものがないのではないかと。ECETOCのTRAは、日化協からも日本語版は出ていますが、その中でも先ほどお聞きしたら、TLVとかがないと先に進めないようになっているのが現状なわけです。そうしたときに、日本で暫定ばく露限界値を政府で本当に決められるかどうかというのは、正直言って、実は私は結構危ういなという気がしています。CREATE-SIMPLEも現状では問題あると思いますが、そういうような提示の仕方が一方であって、暫定ばく露限界値も決めるという、どちらがいいのか、どうすればいいのかというのは、本当に皆さんから御意見をたくさん頂かないと、ここはなかなか難しいので、ありったけの御意見を頂きたいのですが、いかがですか。
○山岸委員 使用側の目線で申し上げます。例えば、これは何か暫定ばく露とか、ばく露限界値というのが示されたときに、その作業場所とかの環境測定とか、それをやって何かしなければいけないというところにつながってくるのですか。
○植松化学物質評価室長補佐 そういったことを想定します。
○山岸委員 している。
○植松化学物質評価室長補佐 はい。8ページを御覧ください。管理方法というところで、ばく露限界値を設定されたものに関して、特に実測による管理をお願いしたいと考えております。実測が難しいような場合には、先ほどもありましたがCREATE-SIMPLE等のSDSモデルで濃度を推計して、そういった値と、ばく露限界値とを比較して管理していただくということを想定しております。
○山岸委員 それは例えば、現状の区分1、2、3みたいな形で、これについてはここまでやりなさいとか、3は直ちに2にしろとか1にしろとか、そういう管理をするということですか。
○植松化学物質評価室長補佐 作業環境測定ということですか。
○山岸委員 はい。
○植松化学物質評価室長補佐 そうです。
○山岸委員 例えば、ある実測をして、例えば暫定ばく露よりも高かったと。
○植松化学物質評価室長補佐 そうであれば下げていただくと。
○山岸委員 これについては下げる努力をしろとか。
○植松化学物質評価室長補佐 それを義務としたいと。
○山岸委員 そういう方向だということですか。
○植松化学物質評価室長補佐 ばく露限界値に関しては、義務として整理させていただきたいと考えております。片や、暫定ばく露限界値に関しては、努力義務という形で整理を考えております。
○城内座長 いかがですか。今、測定というお話が出ましたが、先ほどのTLV許容濃度等がある物質については義務でやりましょうということで進んでいるわけですが、そこで実測による管理を推奨するとなっています。この673物質についても、みんなが使える分析方法がそろっているかと言いますと、実はそろっていなくて、結構苦労しているのです。その上、なおかつ、暫定ばく露限界値を決めたら、それもできれば実測してくださいというのは本当に可能かなという懸念があります。もちろん、推定でもいいとなっているので、可能だとは思うのですが。
○三柴委員 私個人、努力義務ではいけないというつもりはないのです。ただ、資料1の14ページの図で、図が修正された経緯から明らかなように、要するに、これまでは有害性が不確実なものについては、要は規制が甘かったところが、有害性が未解明なだけだから、なるべく同列に扱っていきましょうという発想が基本となることを踏まえたときに、一律に規制を緩めるという考え方でいいのかなという、そこが疑問なのです。ですから、ドイツのやり方は少々頭が固いように思ってはいますが、ただ、規制対象を領域によって分けるというやり方、つまり、先端科学技術分野とか、環境科学に関わるような所とか、そういう所については直感に近いぐらいのレベルの問題であっても規制をかけていくような方法は参考になる。関係者との調整の問題等もあるから難しいのは分かるのですが、おっしゃるように野放しではいけないのだよということが、メッセージ性として強く出るようにしていただければいいかなとは思います。
○城内座長 測定法にしても、これは暫定ばく露限界値の話というのは、本当に私が死んだ後の話なので分かりませんが、3,000のほうに数十年かかりそうなので。ただ、ここできちんと方向を決めておかないといけないので、何十年後かを見据えて、是非、皆さんの御意見を頂きたいのですが、いかがですか。
○大前委員 この暫定ばく露限界値が出てきた一番のもとは、情報がないものに関して判断基準がなければどうしようもないだろうということだったと思うのです。その判断基準として、取りあえず、これを使ったらどうかという程度の発想で、もともと根拠はない数字です。ですから、先ほど三柴先生がおっしゃったように、エキスパートジャッジみたいな感じで、取りあえずはこのくらいでやったらどうかという話だったと思います。やはり、そういう数字がないと、多分、企業も困るでしょう。取りあえずは使って、これは努力義務ですし、先ほど三柴先生がおっしゃったように、大丈夫であれば、別に暫定ばく露限界値を超えても全然構わないですよ。そこのところは自律管理で、企業のそれぞれが判断されればいいと。もしそこで、甲田先生がおっしゃったように、何か起きれば、そこからはギュッとしっかり数字を決めて、これも後追いで仕方がないのです。労働現場は先取りができないので、後追いになってしまうのはやむを得ないということなので、万が一、そういうことが起きた場合は厳しくしていくというか、数字が決まっていくということになろうかと思います。いずれにしても、そういうような数字がないと、一番困るのは、自律管理をやっている企業だと思います。
 粉じんに関しては、ACGIH等の数字があるので使えるかもしれませんが、蒸気の場合やガスの場合は500ppmという、今はアセトンが管理濃度は一番高いので、これを取りあえず使ったらどうかと。
 ヒュームとミストに関しては、粉じんと違って物質の純粋性、純度が高いのです。例えば粉じんの半分とか、3分の1とか、これは本当に大雑把な話になりますが、そういうような形でジャッジをして、取りあえずを出していくという方向にしないと、いつまでたっても終わらない。
 これは事務局がおっしゃいましたが、maximumで、ここまでいいのだという使われ方をするとか、その可能性は十分あると思います。それはやむを得ないですよね。多分、現場をやっている方から見れば、この数字は出ているのだったら、取りあえずここまではいいだろうという感じになるのは、それはもう仕方がないと思うのです。もちろん、注意書きとして、これは単なる目安であって、これはセーフの数字ではないよというメッセージはもちろん強く出さなければいけないと思いますが。
○城内座長 そのほかに御意見はいかがですか。
○植垣委員 理解が間違っていたら教えていただきたいのですが、粉じんの暫定ばく露限界値について、総粉じん10mg、吸入性が3mgと設定いただいていますが、これを義務化にするというのは現状の管理濃度による規制よりも厳しくなるという認識でよろしいですか。現状の管理濃度では、そこまで求めていないかと思いますが。
○植松化学物質評価室長補佐 努力義務という形で設定しております。
○植垣委員 粉じんのほうも、努力義務ですか。
○植松化学物質評価室長補佐 粉じんも努力義務です。
○植垣委員 粉じんも努力義務で、粉じん以外のものでも、今考えている暫定ばく露限界値のほうも努力義務。
○植松化学物質評価室長補佐 今、御提案させていただいているのは、暫定ばく露限界値の中で、粉じんか、粉じん以外かという形にさせていただいております。
○植垣委員 どちらも努力義務。
○植松化学物質評価室長補佐 今はどちらも努力義務として整理しております。
○城内座長 そのほかは、いかがですか。
○漆原委員 暫定ばく露限界値の設定については、できれば、この方向でお願いしたいと思います。現場で化学物質を扱う労使にとって、仮にばく露限界値が設定されていない物質についても、「事によっては有害性があるかもしれない」という意識付けのために、まず、暫定であっても値を設定することが必要だということです。その際には、この定義にあるように、仮に有害性がまだ分かっていない場合について、当該濃度以下であっても健康障害の可能性が将来ありえることに留意するということを付記していただくことが、重要であると思っております。
 現場で、この化学物質が危険かどうかということは、そもそも分からない物質もそれなりの数があるわけで、そこに一定の努力義務をかける意義はあるとは思います。ただ、これまでの御意見にもあるように、それをどのように発表して、どのようにメッセージとして現場の労使に伝えていくかということが重要ですので、そこの工夫をお願いしたいと思います。以上です。
○中村化学物質対策課長補佐 今お話があったのですが、これは我々もきちんと整理しなければいけないのですが、いわゆる科学的エビデンスがある、ばく露限界値と、暫定ばく露限界値というのは多分、位置付けが全く異なるものだとは思いますので、今、お話がありましたように、外への打ち出し方とか、法令にどういうふうに書くのかということも含めて、よく整理をしなければいけないとは思っています。
○城内座長 ありがとうございます。
○山岸委員 8ページの「ばく露限界値の設定」の4.管理方法のところですが、先ほど聞き忘れてしまいましたが、「マスク使用時には、マスクの防護係数を勘案する」という辺りは、どういうイメージと言いますか、どういうことを想定されているのですか。
○中村化学物質対策課長補佐 最終的に、労働者の方が吸い込む濃度の管理をしてくださいということなので、きちんと防護係数のあるマスクを使っていただければ外側の濃度は限界値を超えていてもいいですよという意味です。
○山岸委員 考え方は分かりました。
○城内座長 時間も押しているのですが、私から1点だけ確認いたします。4番のばく露限界値の設定のところで、現在の管理濃度との関係はどうなるのですか。
○中村化学物質対策課長補佐 基本的に今、特化則とかで定まっている管理濃度は、当面の間はそれを維持するということを考えております。それ以外の自律管理物質について、基本的には個人のばく露の状況を管理するという考え方に持っていこうということですが、測定の仕方をどうするかという議論があると思っています。同じように、作業環境測定をやって、事業場がばく露限界値以下に保たれていればいいというやり方も認めるかどうかというのは、今後の議論は必要だと思います。全部個人で測定するのかどうかということに関しても、です。
○城内座長 それはまた後で議論になるということで理解します。時間が押していまして、6番の経皮吸収のある化学物質については、先ほど甲田委員から、いろいろな知見を教えていただきましたが、ここについて今後の方向性案について、何か御意見がありましたらお願いします。
○漆原委員 直接の関係があるかどうかは微妙ですが、農薬についても、農薬使用者の皮膚ばく露がありうるわけで、農水省においても「農薬使用者への影響評価方法」が検討されてきたと思います。そうした他省との連携や調整は、どのように進めているのか。もしくは今後、他省とも調整していくのかについてお聞きしたいと思います。
○内田化学物質評価室長 そこの部分はあまり検討していなかったのですが、今の御指摘を踏まえて、どう対応すべきか、よく検討して整理したいと思います。
○城内座長 そのほかにございますか。ありがとうございました。資料2のほうへ移りたいと思います。大急ぎで申し訳ありません。2つ目のテーマの事業者による有害性情報等の収集及び国への提供・協力について、御意見を頂ければと思います。これについては先ほど甲田委員のほうからも、ちょっと御意見を頂戴しましたが、そのほかにいかがでしょうか。物性等についての御意見を頂きました。3ページ目ですね。
○大前委員 企業のほうの協力というのは必ず必要です。例えば、我々が経験したインジウムの例ですと、インジウムを扱っていらっしゃる企業は、あれだけ協力してくれたからこそ、高々10年もかからないで、生物学的許容値と許容濃度は決まりましたし、それから国のほうの対策も全部終わってしまったということなので、これは既に企業の協力があったからなのです。最終的にはやはり人の健康の問題ですので、何かそのようなテーマが出てきたときは、是非企業のほうに協力をしていただくという、これは義務を掛けられないかもしれませんけれども最低限、努力義務で具体的にお願いしたいと思います。
 それから、リスクアセスメントの事業を今、国がやっていますけれども、そこでばく露実態調査をやられていますが、このときも協力していただける企業を探すのは大変なのです。「お願いします」と言って全部やってくれるわけではもちろんないので、そういうものも含めて、当然データの企業名は非公開と、これは当然ですけれども、そのようないろいろな条件を付けて、やはり最終的には人のばく露と影響をしっかり見るということに関しては、是非入れていただきたいと思います。それは甲田先生の所の組織だけではなくて、ですけれども。
○甲田委員 私のほうも今の大前先生の意見に非常に賛同するのです。実際に、うちに入ってくるのは、健康障害が起きたときに、その事業所には入れるのですけれども、その工程が今はなくなってしまっただとか、似たようなものを作っているだとか、そういうときには非常に有用な、ばく露に関する情報はあるはずなのです。それが得られるか得られないかによって、その後のマネジメント、対応の仕方、いろいろなものがかなり変わってくるというのを経験しておりますので、やはりその辺は関連するようなところに関しては、是非協力していただきたいと思います。
 協力ですから、嫌だと言われたら入れないのですが、そうなってくると、情報が取れないという話になってきて、対策をとる上では大変だと思います。先ほど言ったように、我々だけではなくて、関連するような、どこにするかといえば大学にするのかどうなのか、環境測定の機関にするのか、その辺も検討しなければいけないのですが、広く入って情報がいっぱいあれば、やはり対応策、またマネジメントの方策も非常に早くできるので、その辺は是非お願いしたいと思います。
○城内座長 三柴委員どうぞ。
○三柴委員 現行の安衛法の96条の2の運用について、以前に別の会議で甲田先生から、これは実際の運用をしようと思うと、法令違反の疑いが濃厚であるとか、結構高い基準が求められてしまうというようなお話を伺った記憶があって、もし新しい制度を作っても、運用が硬直化して、予防的な運用ができないということになってしまうと、結局は有名無実化してしまうということをちょっと恐れているのです。その辺の手当てについてはルールの起案の際に御考慮いただければと思います。
○山口委員 企業の立場からということで話をすると、私たち事業者として協力しない会社がそんなにあるのかというところに、ちょっと同業者として悲しいところがあるかなと思っています。少なくとも当社は毎年のように何かの化学物質に引っ掛かって、調査にいらっしゃって、協力しているはずなのですけれども、そういう意味では疑問もあるところはあるのです。実は、我々の所に、現場から、こういう連絡が来たと。調査したいという連絡が来たが、これを受けていいものかどうかという話が来ます。つまり、何の調査に来たのかというところの説明が不十分なのです。それが分からないので、悪意を持った調査に来ているのだろうという判断を現場がしてしまう。要は、この会社、何かをやっているのではないかと確認しに来たのではないかと、そこの説明を我々がしないと、「そうじゃないんだよ」ということを説明しないと、現場も素直に受け入れないという部分があるのです。その説明の部分というのも重要なのではないかなと感じるのが我々の思うところではあります。事業者の調査協力というのは当然必要だと思いますので、その辺はうまくやっていただいて、増やしていくという方法を、民間と国と力を合わせて考えていったほうがいいのかなと思います。これに関しては、そう思います。
○甲田委員 今、第96条の2の話があったのですけれども、ちなみに安全衛生研究所の安全も含めてなのですが、基本的にこの法律を使って入ったことというのは、私は研究所に入って15年ぐらいですが、実は1回しかないのです。あとは全部、説明と同意の繰り返しで、基本的には資料を送って、最終的に「この現場を改善しますよ」という形で、こうやったらいわゆる「健康障害が出ないでしょう」だとか「ばく露が減りますよ」というようなフォロー付きで入るという形なので、今言われたことは多分、非常に企業に入るときに重要なことだと思っております。
○城内座長 そのほか御意見はございますか。
○山岸委員 立ち入る企業の選定基準ではないですが、何かあるのでしょうか。使用量が多いとか、厚労省さんに出しているようないろいろな書類で、所見がやはり出ているとか。今まででしたら、使用量ばく露量500キロ以上使っていたら「出しなさい」というのを出していると、何か使用量が多い事業所が分かるのだろうなと思っていますけれども、何かあるのでしょうか、信頼することで。
○中村化学物質対策課長補佐 過去の事例からということで申し上げますと、とある場所で労働災害が起きたという場合に、結局発生機序が解明できていないものによる労働災害ということを調べるためには、甲田委員がおっしゃったように、いろいろなケースを集めなければいけないということです。こうした場合、従業員の方に健康への影響は出ているかということを我々の方で調査させていただき、その結果を踏まえて対象の選定ということにおそらくなっていくと思います。仮に、ほかでは特段確認されていませんということになれば、山岸委員がおっしゃったように、どの程度の量使っているかというようなことも、おそらく考えていくことになるのだと思います。
○城内座長 実は、小規模事業場でアンケート調査をやっているのですが、「この情報は監督署に行かないよね」という質問が来て、念書を書かされました。やはり、ある意味、警戒されているというか、そういうところがあるので、やはりもっとフレンドリーにいかなくてはいけないのではないかと反省しています。安衛法が、本当はフレンドリーな法律なはずなのに、事業者さんにとってはそうなっていないというところが一番大きいかなと思っています。ちょっと余計な話で申し訳ありません。そのほか、何かございますか。
○山口委員 ちょっと調査協力ではなくて、既存化学物質とか新規化学物質の届出、あるいは製造・輸入量の届出というところですが、先ほど閾値の話もあったかと思うのですけれども、どれぐらい製造したらという話ですが、3ページ目の「現行」と「見直し案」の矢印が書いてある絵ですけれども、これを見たときに、その矢印の位置というのが、例えば「事業者による既存化学物質の製造・輸入量等の届出」という所に、「約3千物質以下」の所、SDS交付義務というふうに書いた「3千物質」という所の右にも左にも矢印がありますね。先ほど100物質と言っていたのは、この一番左側の物質が100物質ぐらいで、「3千以下」という所は、これは多分、化審法上の製造・輸入量の届出で、ほとんど全てのものが網羅されているというイメージがあるのですけれども。なので、一番右側に仮に書いてあると。化審法からもらってくるから実際には届出がない。そのような考え方というか、イメージで見ればいいのでしょうかという質問なのですが、いかがでしょうか。
○植松化学物質評価室長補佐 はい、そういうイメージです。化審法のほうで届出いただいている情報は適宜頂きたいということで、経済産業省とは今、連携を模索中でございまして、その3千物質に関しては、そちらに届出のある情報を頂くと。新たに安衛法で届出いただく情報として考えているのが、今おっしゃられたように、新たにGHS分類で対象とする100物質程度を想定しているということでございます。
○山口委員 そうすると、その3千物質を超えた所の部分に、通常の化審法の数字で製造・輸入量の届出を出している物質もたくさんあると思うのですけれども、そういうものが、いわゆる100物質の中にかなり入っていた場合には、その残りの数字の部分だけが届出の対象になるのですか。
○植松化学物質評価室長補佐 はい、そういうことを想定しています。
○山口委員 なるほど。
○内田化学物質評価室長 化審法と違って、我々のほうは、中間体とかそういうところもあるので、どのぐらい化審法でカバーされているのかというのは、今の3千物質についても、よく整理してやらなければいけないかと思っていますけれども、おっしゃられたとおり、化審法でデータがあるものについては、できるだけ提供していただく。これは経産省との関係があるので、これから整理しなければいけないと思っていますけれども、可能であれば、そういうこともしつつ、現場の御負担がないような形で、必要なものだけを情報提供していただくことができないかというイメージをしているところです。
○山口委員 すみません、「可能であれば」ではなくて、化審法で出しているのは是非使ってください。製造・輸入量届出というのは民間にとっては非常に負担になるということです。化審法の届出は何人もが、何箇月も掛けてやっているのだというぐらいの労力が掛かっているという事実があります。これがまた増えるのかというところに対しての懸念が非常にありまして、今まで有害性ばく露報告、これは工場でしたよね。事業所ごとだったので、事業所は把握しやすいのです。ですが、今度のものは事業者ごとという、事業所がたくさんあればあるほど、それを集計するとか、一体ここではどれぐらい使っていて、どれぐらい製品に入れたとか、そういったものの計算が非常に複雑になってくるのです。今回はそれを求めているように、これの場合は見えるので、今までの有害性ばく露報告に比べると、非常な負担がかかることが、まず間違いないだろうと思います。
 なので、その辺を十分、なるべく少ない数で、必要な量だけを集めるということをしていただきたいと。数量が分からなければ、その先に進めないということは十分理解するところではありますので、ただ、ゼロかどうかという議論は、まだ今はしていませんけれども、化審法の届出は1トン以上であるというところ等も加味していただいて、皆さんも議論をしていただければと思います。
○城内座長 そのほかにいかがでしょうか。
○山岸委員 企業がまとめて出してくださいとなったら、例えば弊社のような場合は、本社に来るのですかね。
○山口委員 そうでしょうね。
○山岸委員 そうですか、やはり。それは非常に大変ですね。
○山口委員 いや、本社でやっていますよ。
○中村化学物質対策課長補佐 それは、むしろお聞きしたかったところでもあるのですが、全ての事業所から報告させることの負担と、企業としてまとめて報告していただいたほうが負担にならないのかという、その辺の負担感の感覚というのは、我々も余り持っているわけではないので、むしろ今の話だと、事業所ごとのほうが、そこは事業の実態に即してやりやすいというイメージですか。
○山岸委員 企業によってなのでしょうね。
○山口委員 多分、企業によってだと思います。今回の話の違いというのは、今までは利用しているほう、使用している所に対して規制をかけていましたので、その場合だと現場です。ただ今回、新たな見直し案というのは製造・輸入者なのです。製造・輸入者は使用場所とは違いますので、この違いがかなり大きくて、例えば輸入などというのは、ほとんどの場合が輸入を管理している部門は本社にありますので、そこからデータを持ってくれば、できるわけです。事業所に行ったときには、事業所は輸入したものなのか、どこかの会社から買ってきたものなのか分かりませんので、そうすると、こちらでは、いわば「自社の輸入分だけをカウントすればいいんだよね」という話と、国内購入の場合は、国内のどこかの会社が届け出ているわけですから「要らないよね」という話になるのです。何の数字を集めるのかということによって、この辺が変わってくるのです。なので、負担の割合はどちらがというのは非常に難しいところではありますが、今回の場合は、多分やり方にもよると思いますけれども、システム化された会社は多分、本社で、マニュアルの会社は事業所、多分そんな感じだと思います。これが現実だと思います。
○山岸委員 製造・輸入でしたら、我々は使用する部署なので、余り今回の変更・見直し案のほうには、多分直接的には関係ないですが、今までは使用者として500kg以上の届出をしていたのがなくなるだけなので。
○山口委員 そういうことです。
○山岸委員 製造・輸入する側からの情報でやるということであれば、どれだけ使っているかというところは分からないということですよね。
○城内座長 ありがとうございます。そのほか、いかがでしょうか。
○植垣委員 今、山口委員からもお話がありましたけれども、安衛法で新たに化審法以外のデータを集めるということになると、化審法で今は規制されていない、例えば食品衛生法での食品添加物とか、化審法での届出義務がないものについても義務が求められるような形になりますし、安衛法と化審法で規制する対象は、先ほども中間物の話がありましたけれども、そういうところで異なっています。新たな義務を求めたときに、今、山口委員からありましたように、既にシステムがある所は、すぐに対応できるのでしょうけれども、今まで化審法に全く対応していなかったような、そういう化審法以外の対象を作っていた事業者は大きく負荷が上がるので、そこは対応を考えていただいたほうがよいかと思います。
 また、用途なのですけれども、用途が分かると、規制を検討する際にいろいろ使えるから便利だろうというところはあろうかと思うのですが、化審法の場合は、排出係数というところにつながるところで、用途が設定されているわけなのですけれども、安衛法の場合は、労災防止のためにはその労働現場でどう使われるのかという用途が重要になります。用途のイメージは異なる可能性があるので、単純に化審法の用途をそのまま持ってくれば、安衛法の今回の話にうまく使えるのかというのは、私は疑問なところがあります。
 あと、今、お話がありましたけれども、今回、製造・輸入の数量だけに限ってしまう形になると、結局は使用している現場で労災等が多いのに、そういう所での情報が取れなくなると、国として労働現場におけるリスク評価などをどう考えていくのかに関するデータが取れなくなってしまうところについては、対応を考えていただいたほうがいいのではないかなと思っています。以上です。
○城内座長 ありがとうございます。そのほか、いかがでしょうか。
○山口委員 もう1つ、事業者による新規化学物質の届出、対象となる有害性試験等についての見直しというのがあるかと思うのですが、これに関しては、すみません、何ページになるのですか、内容的には。
○植松化学物質評価室長補佐 資料2の7ページです。
○山口委員 多分、御説明の中に指針のそれぞれの、例えば有害性ごとに出す必要があるかどうかという話があったかと思うのですが、是非出してほしいと思いますし、民間がそれぞれの有害性に対して、どういったことをやっていかなければいけないかとかという指針は、やはりあったほうがいいのだろうと思います。内容的には、最終的に労働者がやることは一緒かもしれませんけれども、一緒なら一緒ということで出していただきたいかなと思います。
 あと、今回この中で、どのような有害性に着目するかというところの例として、染色体異常試験、28日間反復投与試験という、化審法の中に入ってくるものとしては、この2つがありますと。それ以外にも何か考えているものがありますかというのが1点です。この新規化学物質の届出を行う際に求めようということを、今ここで議論するのですかという質問をさせていただきます。
○内田化学物質評価室長 今、変異原性試験を求めているという形になっていて、これは40年以上前の制度をそのままという形になっていますけれども、今の労働災害の状況を踏まえると、本当にその変異原性試験だけでいいのか、あるいは他の試験、ここで書いてあるのは化審法と同じ試験であれば、それほど企業としては負担がないのではないかという観点から書いているのですが、今の労働災害の状況をよく踏まえながら、どういう試験が本当に必要なのかというのをよく考えなければいけない。例示として急性毒性等と書いてありますけれども、そういうことも含めて、どういう試験なのかというのは、この場で、よく御検討していただいて、その上でどうしていくのか、現状でいいのか、追加すべきなのかといったことも整理していただきたいと思っています。
 ただ、もう少し我々の提示も非常に部分的な形で整理しているところもあるので、時間を取って、今やっている国の試験の在り方も含めて、全体として、トータルとしてどういう姿でやっていくのかをお示しした上で、よく議論いただくことが必要かなと思っております。この場では余り時間もありませんので、決めてくださいということではなくて、よく整理をしていきたいと思っておりますけれども、今の時点で何か御指摘なり、コメントがあれば頂ければと思っております。
○山口委員 なるべくならば化審法の試験と一緒にしてもらいたい。もし、やるのであればということなのですが、少なくとも28日間反復投与毒性試験というのを1トン以上しか作っていないような会社にやらせるというのは、1,000万円も掛かるような試験を負荷させるなどというのは、やはり非現実的だと思います。新規の化学物質を作って、新しいイノベーションのために提供していくというのを阻害する内容だと思いますので、その辺はよく考えてもらいたいと思いますし、これまでもやはり、お話にもありましたけれども、労災が起きているパターンと、その化学物質の構造と、あるいはそれに必要な試験というような組み合わせで、ある程度絞っていただけると、やるほうも分かりやすいし、納得しやすいのかなと思います。全ての化学物質にと言ったときには、それは何のためにやるのですかというところに対しての御説明が、やはり必要なのではないかと思います。
○城内座長 ありがとうございます。どうぞ。
○梅田委員 私も今の山口委員のように、「一定量以上」に新たな試験を掛けるべきだと思います。100kgで切られてしまうと非常に大変なことになります。もう1つは、世界的な動物試験の削減という方向性と、類推やQSARの活用というのも十分考慮していただきたいと思います。
○漆原委員 今の意見に賛成なのですが、GSRAなどin silicoによる試験も、精度の問題もあるのかもしれませんが、可能な限り活用いただければと思います。また、この見直しの視点の中にありますように、急性毒性だけではないところに目を向けた危険性・有害性の在り様というところが分かるような試験を目指していただければというところです。以上です。
○村田委員 有害性の項目ですけれども、ばく露の指標に応じてということで設定というのもあり得るのでしょうが、事業者さんがお持ちの情報については出してくださいという在り方もあるかなと思いました。TSCAなどはそういう形かと思います。あとは、これは新規に限らない話かもしれませんが、実際に発行されているSDSと、その根拠で使った情報というのを提出いただくということもあり得るのかなと思いました。
 あとはQSARのお話が出ていましたけれども、構造情報をしっかり出していただくということで、今、QSARはOECDのToolboxの中にいろいろな有害性などの構造アラートの情報も入っていますので、構造情報がしっかりしていれば、そういうのを活用する道も開けるのかなと。化審法のほうでも、少量新規の特例制度でMOLファイルという形でお届けいただいていて、分解性、蓄積性に関してのスクリーニングに、そういったツールも活用しておりますので、そういうのもあるかなと思いました。
○城内座長 ありがとうございます。そのほかいかがでしょうか。もう時間も大分なくなりましたけれども、今の点は非常に重要なので、もしあれば受けたいと思いますが。国際整合性とかの御意見も出ましたが、情報は多分、新規で作った事業所しか分からないので、そこを起点に、やはり情報を配信していただかなければいけないと思います。あとはどのような項目について法規制を掛けるかというのも、かなり議論しないと難しいと思います。いろいろ御意見ありがとうございました。そのほか、よろしいでしょうか。
 本日の議論も踏まえて、方向性を整理していただきまして、次回以降の資料は、また事務局で作成していただければと思います。本日もたくさんの御意見をありがとうございました。では、事務局からの御案内をお願いいたします。
○植松化学物質評価室長補佐 本日も長時間にわたりまして活発な御議論いただきましてありがとうございました。本日の議事録につきましては、各委員に御確認いただいた上で公開することとさせていただきます。また、次回のワーキンググループにおいて、今回のテーマに関して改めて方向性を整理しお示しさせていただければと思います。なお、次回は1月14日ということで、日数があまりないのですけれども、14日(木曜日)の午前中の開催を予定しておりますので、後日改めて正式に御案内させていただきます。以上です。
○城内座長 それでは、以上で、第3回「職場における化学物質等の管理の在り方に関する検討会リスク評価ワーキンググループ」を閉会いたします。本当にありがとうございました。