第5回 生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会 議事録

日時

令和2年10月23日(金) 16:00~18:00

場所

AP虎ノ門11階B室(一部オンライン)
(東京都港区西新橋1-6-15NS虎ノ門ビル)

出席者(五十音順)

 

議題

・最低限度の生活に関する検討
・その他

議事

(議事録)

○駒村座長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから、第5回「生活保護基準の新たな検討手法の開発等に関する検討会」を開催します。

 事務局より、本日の委員の出欠状況と資料の確認をお願いいたします。また、本検討会として初めてのオンライン会議となりますので、会議での発言方法等についても御説明をお願いいたします。

○本間保護課長補佐 本日の委員の御出欠の状況でございますが、全ての委員の方にオンラインで御出席をいただいております。

 なお、高橋総務課長は公務のため欠席となっております。

 また、事務局に人事異動がございましたので、紹介させていただきます。

 谷内社会・援護局長の後任といたしまして、橋本局長が着任しておりますが、本日、公務のため遅れて出席の予定でございます。

 長谷川課長補佐の後任といたしまして、森口課長補佐でございます。

 猪狩課長補佐の後任といたしまして、私、本間でございます。よろしくお願いします。

 なお、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、本日は一般の方の傍聴は御遠慮いただいておりまして、報道機関の方のみの傍聴とさせていただいております。

 議事録につきましては、後日、ホームページにて掲載いたしますので、御承知おき願います。

 続きまして、本日の資料でございますが、議事次第に続きまして、

 資料1 最低限度の生活に関する検討

 資料2 MIS手法による最低生活費の試算に関する調査研究事業について

 資料3 主観的最低生活費の試算に関する調査研究事業について

 資料4 「マーケットバスケット」方式による諸外国の最低生活費の算出事例(概要)

 資料5 級地制度の現状と課題・調査研究事業の経過報告

 参考資料1 生活扶助基準における新たな検証手法の開発に向けた年次計画

となっております。資料の不足等がございましたら、事務局までお申し付けください。

 会議の進行に当たっては、お手元の資料を御覧になりながら御参加いただければと思いますが、事務局からの資料説明の際には、Zoomの画面上にも資料を表示するようにいたします。

 また、会議中、発言を希望される際は、カメラに向かって挙手をお願いいたします。

 座長の指名を受けた後、マイクのミュートを解除して御発言いただき、御発言終了後は、再度、マイクのミュートをお願いいたします。

 それでは、これからの議事運営につきましては、駒村座長にお願いしたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○駒村座長 承知しました。それでは、本日の議事に入ります。

 まず、資料1から資料4について議論したいと思います。委員の皆様には、MIS手法や主観的最低生活費、マーケットバスケット方式などの研究成果を、今後の生活保護基準の検証にどう活用していくのかという点で、今日引き続き議論していきたいと思います。

 それでは、事務局から資料説明をよろしくお願いいたします。

○本間保護課長補佐 それではまず、資料1から説明いたします。

 資料1をおめくりいただきまして、「最低限度の生活に関する検討」ということで表題がございますが、新型コロナウイルスの影響により、本検討会も、今年の3月3日に第4回が開催されてから7カ月以上、間が空いているということもございまして、ここでまず、本検討会の目的につきまして改めて説明させていただきます。

 現在、生活保護において保障すべき最低生活の水準は、一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものとして設定されております。

 生活保護基準のうち、生活扶助基準の改定につきましては、昭和59年以降、一般国民の消費実態との均衡を図る「水準均衡方式」の考え方を採るとともに、平成16年以降、一般低所得世帯の消費実態との均衡が適切に図られているか定期的に検証を実施しているところでございます。

 平成29年検証におきましては、モデル世帯(夫婦子一人世帯)について、一般低所得世帯の消費水準と生活扶助基準とがおおむね均衡していることを確認する一方、その報告書におきまして、一般低所得世帯との均衡のみで生活保護基準の水準を捉えていると、比較する消費水準が低下すると絶対的な水準を割ってしまう懸念があることから、これ以上下回ってはならないという水準の設定について考える必要がある。

 また、最低限度の生活を送るために必要な水準とは何か、本質的な議論を行った上で、単に消費の実態に合わせるとの考え方によらず、理論的根拠に基づいた複雑ではない検証手法を開発することが求められる。

 といった指摘がされたところでございます。

 このため、本検討会におきましては、生活保護法の理念に照らして、今日における「最低限度の生活を送るために必要な水準」についてどのようにあるべきか、改めて考える必要があると考えております。

 続きまして、2ページを御覧ください。本日御議論いただくこととしている各検証手法の概要につきまして説明いたします。

 これらの検証手法につきましては、昨年度、調査研究事業を行っておりまして、本日報告いたしますのは、それらの結果の概要についてでございます。それぞれの検証手法を、算出方法、個人の価値判断の影響、予算制約、判断者等の観点から整理いたしました。

 まず、左から説明させていただきますと、マーケットバスケット方式についてですが、算出手法は、専門家が、最低生活に必要なもの(細かな品目)を選定し、それを積み上げて最低生活費を算出する方法。

 MISにつきましては、属性が近い一般市民、これはMIS手法において選定した、仮定したモデルケースとの属性が近い一般市民が最低生活に必要なもの、これも細かな品目を複数回議論して選定し、それを積み上げて最低生活費を算出する方法。

主観的最低生活費につきましては、一般市民を対象に2つの質問、1つ目は、切り詰められるだけ切り詰めて最低限いくら必要か、2つ目が、つつましいながらも人前で恥ずかしくない社会生活を送るためにいくら必要かという2つの質問により、食費等の費目ごとに最低限必要な額に関するアンケート調査を行って、その調査結果をもとに主観的な最低生活費を算出する方法となっております。

 個人の価値判断の影響についてですが、まず、マーケットバスケット方式につきましては、どの品目を採用するか、少人数の専門家が判断するため、その専門家の知見に基づく判断の影響を受ける可能性があるといったことがございます。

 MIS手法につきましても、どの品目を採用するか、少人数、8人程度の議論により判断していくため、その参加者の価値判断の影響を受ける可能性がある。

 主観的最低生活費につきましては、約2万人のインターネット調査による結果を用いることから、特定のものの価値判断の影響を受けにくいといったことがございます。

 予算制約についてですが、マーケットバスケット方式につきましては、予算制約はないものとなっております。MIS手法につきましてもないのですが、最終段階で合計額を見た上での調整が入る余地はあると整理いたしました。主観的最低生活費につきましても、基本的に予算制約はないのですが、回答者が自分自身の生活水準を前提とした回答となる可能性があることに留意が必要と考えております。

 判断者については、マーケットバスケット方式は専門家が判断する、MIS手法につきましては一般市民、主観的最低生活費につきましても一般市民が判断することとなっております。

 あと、その他の事項としてそれぞれどのようなものがあるかというと、マーケットバスケット方式については、品目を選定する専門家によって結果が異なる可能性がある。MIS手法につきましては、地域の選び方、参加者の選び方によって結果が異なる可能性がある。主観的最低生活費につきましては、調査事項が主観的なものであるため、回答者の属性や調査票の設計によって結果が異なる可能性があるといったことを整理いたしました。

 続きまして、資料2を説明させていただきます。資料2は「MIS手法による最低生活費の試算に関する調査研究事業について」でございます。

 おめくりいただいて1ページを御覧いただければと思いますが、MIS手法の最低生活費の試算に関する調査研究事業につきまして、概要を説明いたします。

 MIS手法というのは、Minimum Income Standard法の略称で、一般市民の最低生活費に関する意識を調査し、それに基づき、モデル世帯における最低生活費を推計することによって、現行の生活保護基準に関する基礎資料を得ることを目的として調査研究を行いました。

 この事業の中心となるグループインタビューは、首都大学東京子ども・若者貧困研究センター及び、こちらに記載の有識者の方々により実施されました。

 続きまして、2ページを御覧ください。推計方法について説明しております。モデル世帯について7段階による推計方法を行います。今回モデル世帯としては、若年、32歳の男性単身世帯、同じく、32歳の女性単身世帯、また、高齢、71歳の男性単身世帯、同じく71歳の女性単身世帯、合わせて4モデルを仮定いたしました。インタビューは、一番上にある1と書いてある導入グループと、最終確認グループ、7の段階ですね。それを除いて、モデル世帯の属性に応じた近隣地域に在住、モデル世帯との年齢差は±5歳という方々、6~8名を対象者として実施いたしました。

 また、一番下に書いてありますが、インタビューの時期ですが、2019年8月下旬から2020年2月中旬にかけて行われたものでして、新型コロナ感染症の影響のない時期におおむね実施したことに留意が必要であるということを申し添えます。

 3ページを御覧ください。こちらはまず、導入グループで示された資料でございます。これらの資料を基に、20代から50代の男女7名によって、誰にでも最低必要な生活といったものの定義、また、最低必要な生活に必要な住まい、居住スペースについて議論されました。

 4ページを御覧ください。導入グループでの議論を踏まえて、研究チームによってまとめられた「最低生活」の定義が記載されてございます。左のほうです。また、事例グループにて合意された住居の確保に関しての具体的な必要条件がそれぞれのモデルごとにまとめられております。

 5ページを御覧ください。事例グループの議論を踏まえて、研究チームが4モデルごとの1カ月分の献立リストを作成しました。こちらに記載されている献立リストは、若年単身男性の献立リストです。30日分の献立を作成することは困難であることから、1週間分、7日分を4回繰り返すものとして、28日分と仮定し、さらに2日分の献立を加えることで、1カ月分の献立とみなしました。2日分の献立については、外食やステーキなどのごちそうを月に1~2回程度食べるといった合意があった場合は、その献立を優先して採用することとしました。

 この献立リストをもとに価格調査を行い、食費を算出しております。食費の価格については6ページから7ページ、その他の費目の価格については8ページから10ページにまとめてございます。

 11ページを御覧ください。こちらに記載されておりますのが、その7段階の手順を経て推計された最低生活費になります。4つのモデルに共通する傾向として、食料、住居、交際費が三大支出費目となっておりまして、この資料でいうところの赤いアンダーラインが引かれている箇所でございます。

 これら三大支出費目の額は、総支出額の約7割を占めるものとなっております。また、個別の費目に着目しますと、若年男性の教養娯楽、交際費、若年女性の住居、被服及び履物の費目が高くなっておりまして、この傾向は高齢世帯においても、男女の差として同様に見られるところでございます。

 12ページを御覧ください。こちら、平成26年の全国消費実態調査においてモデル世帯に対応した性別・年代のデータの平均値とMISの推計値を比較した結果となってございます。全消、全国消費実態調査の値を1として比率で表しています。住居を除いた総支出額では、若年男性が全消より高い比率となっておりますが、若年女性はほぼ同程度の比率。高齢世帯においては低い比率となっております。

 費目別に見ると、食料については、高齢女性を除き、全国消費実態調査と近い値となっておりますが、住居は、どの世帯も全国消費実態調査より高い比率となっております。

 一方、交通・通信については、どの世帯も全国消費実態調査より低い比率となっております。

 特に若年世帯の交際費が高くなっておりますが、これはMISの推計において若年男女には交際相手がいると仮定されているのに対して、実際の30歳代の男女においては交際相手がいないなどの理由により交際費がそれほど発生していない人も含まれているということによります。

 13ページを御覧ください。この図表は、MIS推計値を生活保護制度における生活扶助費と比較したものでございます。MIS推計値から被保護世帯の家計に含まれない貯蓄や保険料といった非消費支出を除き、そこからさらに保健医療サービスの自己負担分や貴金属を除いたものが(a)になります。さらにそこから住居費を除いたものが(b)になりまして、それぞれを現行の生活扶助基準額と比較した結果になります。

 (a)(b)とも現行の基準額より高いことが分かりますが、特に若年世帯のほうが、高齢世帯と比較して、より高い倍率となる傾向が見られます。

 以上がMIS手法による最低生活費の試算に関する調査研究事業の結果概要でございます。

 続いて資料3に移ります。資料3は「主観的最低生活費の試算に関する調査研究事業について」でございます。

 1ページを御覧ください。本事業の目的は、インターネットモニター調査により一般国民における最低限度の生活の認識を明らかにするとともに、現時点における主観的な最低限度の生活費の算出を試みるものです。

 本調査は、令和元年 2月中に回答を締め切っており、これも新型コロナ感染症の影響下で実施したものではないことに留意が必要でございます。

 本事業の実施に当たりましては、山田先生を座長としまして、記載の有識者の方々で構成される検討委員会を開催し、調査の全体設計や調査票の内容及び結果の解釈の検討を行うことといたしました。

 2ページを御覧ください。尋ね方の違いによって主観的最低生活費がどの程度影響を受けるかを把握するため、まず1つ目が「切り詰めるだけ切り詰め最低限いくら必要ですか」というK調査、もう一つが、「つつましいながらも人前で恥ずかしくない社会生活をおくるためにいくら必要ですか」というT調査、この2種類の質問文をランダムに表示する仕様として調査を行いました。

 対象年齢、対象世帯、対象地域につきましては、資料に記載のとおりでございます。

 主観的最低生活費に積み上げた費目につきましては、月単位、月ごとに消費するものと、あと年単位で消費するものとの2種類に区分してまとめております。

 3ページを御覧ください。まず、データクリーニングを行いまして、食費や光熱・水道費という支出されるべきものが0円といった、論理的に不整合な回答ですとか、外れ値などをサンプルから除外した上でのサンプルサイズとなっております。

 級地や年齢階級などによってはサンプルサイズが1桁のものも確認されましたため、20代の夫婦子3人世帯、ひとり親子1人世帯、ひとり親子2人世帯につきましては、30代の同世帯類型と統合し、40代の同類型の世帯についても、50代と統合して分析を実施いたしました。

 次ページは、分析対象となるデータの記述統計量についてまとめたものでございます。

 5ページを御覧ください。主観的最低生活費の全費目の中央値についてまとめております。

 次の6ページは月ごとに必要となる費用の中央値、7ページについては年単位で必要となる費用の中央値について、それぞれ試算結果を記載しておりますが、K調査、T調査とも、世帯人員の増加とともに主観的最低生活費の金額は大きくなるといった傾向が見られ、特に年齢階級が上がると顕著になるということが見られます。さらに、K調査、T調査における3050代の夫婦子あり世帯では、級地が高くなるにつれ金額も大きくなるという傾向が見られました。

 8ページを御覧ください。主観的最低生活費の中央値、1級地1について、年齢階級・世帯類型別にグラフ化したものでございます。4050代の夫婦子2人世帯、夫婦子3人世帯では、2030代の同類型の世帯よりも、年単位で必要となる費用が比較的大きくなるといった傾向が見られます。その要因としては、子供の年齢が高くなることによって教育費が多くなっていることが考えられます。

 9ページを御覧ください。各級地において主観的最低生活費の全費目、月ごとに必要となる費用、年単位で必要となる費用のそれぞれについて、T調査の金額の中央値をK調査の金額の中央値で除した、回った結果でございます。月単位で必要となる費用につきましては、T調査はK調査の1.5倍を超えない程度、年単位で必要となる費用につきましては、2倍を超えるものも幾つか確認されました。

 全費目、月ごとに必要な費用、年単位で必要となる費用、いずれにおいてもT/Kという数値が1未満というのも幾つか見られました。

 10ページに続きます。主観的最低生活費の中央値と生活扶助基準を比較したものでございます。まず、K調査についてですが、2040代では、単身世帯、夫婦のみ世帯、夫婦子1人世帯を中心に、また、50代以上ではほぼ全ての世帯類型において、K調査の額が生活扶助基準額より高いという傾向が見られました。T調査では、多くの年齢階級、世帯類型において生活扶助基準額より高いという傾向が見られました。

 このことから、つつましいながらも人前で恥ずかしくない社会生活を送るために必要な金額よりも、生活扶助基準額のほうが総じて小さいことがうかがえます。

 11ページを御覧ください。1級地1における主観的最低生活費の生活扶助相当費目を年齢階級や世帯類型ごとに見たものです。第1類費は、年齢階級が上がるにつれて増加幅が大きくなることが分かります。また、1級地1における主観的最低生活費の生活扶助相当費目について、20代単身世帯を1としたときの各世帯類型の水準を指数化すると、K調査についてはT調査よりも高い指数となりますが、第1類費、第2類費については同じような指数の形状となる傾向が見られました。

 12ページを御覧ください。1級地における3050代の夫婦子1人世帯の主観的最低生活費の平均額ですが、平成26年の全国消費実態調査の第1・五分位、第2・五分位よりも高いという結果になりました。

 費目構成比に着目しますと、1級地1における3050代夫婦子1人世帯の主観的最低生活費は、消費額の第1・五分位と比較して、食料、交通・通信費の構成比が小さくなっておりますが、その他の消費支出につきましては大きくなっているという傾向が見られました。

 続きまして、13ページを御覧ください。貧困線の試算結果につきまして説明いたします。まず、先行研究が多数存在する2種類の貧困線についてアンケート調査をもとに算出いたしました。アンケート調査につきましては左に記載してございますが、1つは、最低限必要な手取り収入の額についての質問、もう一つは、6つの収入状況における具体的な金額についての設問です。この2つの設問から世帯ごとの所得水準と最低限必要であると考える可処分所得の関係を把握し、その関数と45度線、すなわち、最低可処分所得と可処分所得が等しくなる線ですが、その交点を貧困線として算出いたしました。

 それが14ページの図になります。14ページを御覧ください。14ページの左に書いてある図ですが、これが主観的最低生活費の貧困線となります。具体的には、K調査、T調査ごとに得られた主観的最低生活費と世帯可処分所得との関係を回帰分析により推定し、推定結果と45度線との交点を主観的最低生活の貧困線としました。

 生活扶助対象費目の主観的最低生活費と全費目の主観的最低生活費についての貧困線をそれぞれ算出し、生活扶助基準との関係を見てみたところ、15ページのような結果となりました。15ページを御覧ください。

 結果としては、主観的最低生活費の中央値と生活扶助基準との関係を比較したときと同様の傾向が見られました。K調査については、20代から40代の単身世帯、夫婦のみ世帯、夫婦子1人世帯を中心に、また50代以上ではほぼ全世帯類型において生活扶助基準より高くなる傾向、T調査につきましては、多くの年齢階級、世帯類型で生活扶助基準より大きくなる傾向がそれぞれ見られました。

 16ページは、様々な貧困線の試算結果について記載してございます。

 以上が主観的最低生活費の試算に関する調査研究事業についての説明でございます。

 続きまして、資料4に移ります。「マーケットバスケット方式」による諸外国の最低生活費の算出事例についてでございます。

 1ページを御覧ください。生活保護制度において過去採用されていたマーケットバスケット方式について、諸外国の事例を収集し、今後の新たな検証手法についての議論のための基礎資料を得ることを目的として研究調査事業を行いました。調査対象のドイツ、スウェーデン、韓国につきましては、昨年開催された第2回、第3回の検討会でも報告させていただいているところですが、今回はさらに調査を進めたものとなっております。

 チェコにつきましては、新規に調査したものでございます。本来なら、現地にて調査を行う予定でしたが、新型コロナウイルスの影響によって調査ができなかったため、文献及びヒアリングによる調査結果となっております。

 2ページを御覧ください。ドイツの事例でございます。ドイツにおいて低所得者を対象とした給付は、求職者基礎保障と社会扶助から構成されておりまして、就労できる者と、その家族には求職者基礎保障、就労できない者が社会扶助の対象となるように、給付体系は対象者によって異なっております。

 社会扶助におきましては、一時的に就労できない者に生計扶助が、長期的に就労できない者及び65歳以上の高齢者には、高齢・稼得能力減少時基礎保障が適用される仕組みとなっております。

 この生計扶助の基準額が高齢・稼得能力減少時基礎保障及び求職者基礎保障の算出基準になっておりまして、これらの給付水準は事実上同水準となっております。

 生計扶助の給付水準ですが、給付の基礎となる需要は、毎月の基準需要とその他の需要で構成されます。基準需要は食費、被服費、光熱費(暖房と温水を除く)などの日常生活の個人的需要、その他の需要は住居・暖房費、障害者や妊婦など特別な需要がある方の追加需要、社会保険料等がございます。

 基準需要の額は、基準需要適用額として6つの基準需要区分ごとに全国一律で設定されます。5年に1度実施される大規模な消費実態調査である所得消費抽出調査、これは略称EVSというのですが、に基づいた額が基準需要定義法に規定され、新たな調査結果が発表されれば改めて算定することとされております。

 その他の需要は地域によって必要額が異なるため、各地の社会事務所が設定することとなっております。

 3ページを御覧ください。基準需要適用額は、低所得世帯の生活水準に基づくべきという考え方により、EVSの調査結果を参照しておりますが、2017年の基準需要定義法では、2013年に行われたEVSの特別集計において成人単身世帯の下位15%と夫婦子1人世帯の下位20%を参照世帯として、それらの世帯の消費支出額の平均を基準需要額決定の基礎としております。

 基準需要適用額の算出に当たりましては、図表のマル1-3のとおり、12分野の消費支出が基本的には100%需要として認められておりますが、アルコール飲料ですとか外食費など最低限度の生活に無関係と判断される費目は基準需要から除外されております。

 また、2017年の基準需要適用額の算定に当たりましては、物価及び賃金の変動率も用いられております。

 4ページと5ページには、除外費目及びその根拠についてまとめておりますので、御確認いただければと思います。

 続きまして、6ページに移ります。スウェーデンの事例でございます。スウェーデンではマーケットバスケット方式が採用されております。低所得者層を対象とした公的扶助として社会扶助が整備されておりまして、基本的には18歳から64歳の者が対象となっております。利用できる他の全ての支援手段を活用し、積極的に就労することを義務とした上で、収入と資産を評価した後に給付される仕組みとなっております。

 社会扶助の構成は、図表マル2-1のとおり、3種の費用からなっておりまして、まず食費、衣服・履物、遊び・レジャー等の全国標準、全国標準に含まれないものとして、住居費ですとか電気代、通勤交通費が該当します。また、引っ越し費用ですとか葬儀費用など、一時的・臨時的な費用に対応する費用となっております。保健福祉庁の国立福祉委員会が社会サービス規則として全国標準額を示し、1998年以降毎年見直されているものでございます。全国標準額は、消費者庁がマーケットバスケット方式により算出する「合理的生活費」を基礎として、自治体経済や政治的考慮を踏まえて全体的な評価をした上で決定されます。

 基礎自治体であるコミューンが必要に応じて全国標準額より高い水準又は低い水準の給付を行う場合がございます。

 7ページを御覧ください。マーケットバスケット方式により算出される合理的生活費というものは、最低レベルでもぜいたくレベルでもない、スウェーデンの通常の日常生活に必要なものにかかる費用を対象としております。また、箇条書きで記載されていますように、栄養のあるものを食べて満足するとか、天候や状況に応じた服装をするなどのこういった事項が可能でなければならないという考え方が明示されておりまして、図表マル2-3のとおり、費目が定められております。

 消費者庁は、価格調査と費目別の消費調査を行った上で、品目や年齢別の消費リストを作成しております。

 消費リストには、各製品の耐用年数及び消費量、製品の形式や材料、購入場所等の情報も記載されております。

 8ページを御覧ください。食費についてです。食費は、国家食品局の栄養勧告条件を満たす30日間の食糧計画に基づいております。家事に割く時間を考慮し、調理済み食品を食べることを仮定しておりまして、ドイツ同様、外食は食費に含まれておりません。衣服及び靴、衛生用品などは、こちらに例示されているとおり、年齢別に消費リストが作成されております。

 9ページを御覧ください。消費者庁が行う価格調査ですが、エレブルーという自治体で測定されます。エレブルーの価格と製品がスウェーデン国内において平均的であるとの評価がその理由でございます。価格設定に当たりましては、国内のできるだけ多くの地域で入手できる品目を対象とすべきとされておりまして、測定は全国チェーンの小売店で行われます。

 理髪代ですとか靴の修理、水泳、観劇など、店舗で測定できない価格につきましては、スウェーデン国内の異なる規模と地理的特徴を持つ10の地域で、それらの価格に関する情報収集を行います。この調査結果がエレブルーでの測定結果との比較資料として使用されることとなっております。

 価格調査の頻度は、それぞれの製品の市場での価格変化のスピードに応じて品目ごとに異なっております。

 そうして算定された合理的生活費が(4)に示すものとなっております。これは2019年の合理的生活費です。

 10ページを御覧ください。続きましてチェコの事例でございます。チェコにおきましては、生活に困窮した場合、最低生活水準を維持することなどを目的とする物質的ニーズ法を根拠としまして、必要な給付金やカウンセリングが提供される仕組みとなっております。

 図表マル3-1に示されておりますとおり、給付は3種類規定されておりますが、その中の生活扶助について説明いたします。

 生活扶助はさらに最低生活・最低生存基準法を根拠として2つの基準が全国一律に定められております。最低生活水準とは自立した生活やその他の基本的かつ個人的ニーズを満たす最低水準、最低生存水準とは、生存を可能にする最低水準であり、その対象者に対して積極性を促す手段あるいは懲戒的手段として適用されますが、扶養されている子供や68歳以上の者、老齢年金受給者や第3度障害者には適用されません。

 図表マル3-2がチェコの最低生活水準・最低生存水準の基準額表となってございます。

 11ページを御覧ください。最低生活水準・最低生存水準は、チェコの公的機関である労働社会福祉研究所の研究結果、専門家による議論を踏まえて、物質的ニーズ法が制定された2006年に導入されました。2006年の最低生活水準及び最低生存水準の双方につきまして説明いたします。

 基準額の改定時期や手順について法的規定はございませんが、上乗せ設定については規定がございます。これは消費者物価指数が5%以上上昇した場合は基準額を増額する可能性があるとするものでして、これは義務規定ではなく、実施は政府の判断、政府の任意によるものとされております。

 2006年の最低生活基準・最低生存基準は、労働社会福祉研究所が2002年と2003年に出した報告書が基礎となっておりまして、この報告書に栄養摂取及びその他の基本的な個人的ニーズに係る最低支出基準が示されております。

 まず、実際の消費に関する調査について分析が行われます。データは2000年に行われた家計調査でございまして、下位10%の低所得世帯を対象に行った家計特別調査の結果をもとに、チェコ統計局が作成したデータが含まれております。生活水準については、栄養とその他の財・サービスの2つに区分して集計されまして、生活上必須とみなされないものや高級品とみなされるものを除外して集計されます。

 12ページを御覧ください。必要となる栄養所要量、栄養摂取量を満たす食費の算出方法につきまして説明いたします。手順としては、まず医学的に推奨されている栄養量に基づいて、年齢階級別に食事にかかる最小支出額を決定し、そこから世帯構成、人数及び年齢を考慮した世帯人員別の金銭支出額を算出します。

 さらに、栄養量の確保の一部が現物収入によって賄われる実態を踏まえた調整をいたします。そこから低所得世帯の世帯人員数に応じた支出状況を踏まえた調整を行って算出するという手順になっております。

 13ページを御覧ください。生活扶助のもう一つの区分、その他の財・サービスの算出方法について説明いたします。

 その他の基本的かつ個人的需要に係る支出は、チェコ統計局による家計収支統計をもとに、上限値と下限値が決定されます。上限値というのは低所得世帯の支出を線形外挿することによって得た値でございまして、現金収入下位10%の平均に対応するものでございます。下限値とは、上限値の90%を下回らないとする専門家による評価や、栄養所要量を満たす食料品の購入価格と上限値との間の比率、生活収入に相当する財・サービスの長期的な価格上昇率等を基に算出されます。

 図表マル3-7は、このような方法により算出されたその他の財・サービスの世帯人員別の上限値と下限値になります。

 図表マル3-8は、生活扶助の世帯人員別の上限値と下限値になります。

 さらに、世帯人員1人を土台として家計調査の低所得世帯における支出の比率を掛け合わせて個人単位の費用を算出し、図表マル3-8に近づくよう調整を行ったものが最低生活水準として採用されます。それが図表マル3-9となります。

 14ページを御覧ください。最低生存水準の算出方法でございます。最低生活水準同様に、食費とその他の財・サービスの2つの要素で構成し、金額を算出いたします。食費につきましては、成人の栄養摂取量の最低水準を満たす金額、その他の財・サービスにつきましては、最低生活水準の下限値をベースに2通りの方法で算出します。

 まず1つ目の方法ですが、最低生活水準の費目を3費目に絞る方法、図表マル3-10のとおり、9品目のうち衣類、靴、健康維持関連商品、その他商品及びサービスの3費目に絞っています。2つ目の方法は、最低生活水準の下限値の5割とする方法でございます。この2通りの方法で算出された額の中間値をその他の財・サービスに係る最低生存水準としまして、最低生存水準の食費と合算して生活扶助の最低生存水準を算出するという方法となっております。

 続きまして15ページを御覧ください。韓国の事例でございます。韓国におきましては、2014年以降、消費により相対的基準の設定をしているところでございますが、それまでの2013年まではマーケットバスケット方式でございましたので、その当時の算出方法等につきまして説明いたします。

 国民基礎生活保障法という法律に基づいて、「国民基礎生活保障事業」として実施されます。お読みいただくと分かると思いますが、日本の生活保護に似た理念と扶助体系となっております。201010月に施行された国民生活基礎保障法においては、最低生活費の算定方法は全物量方式が採用されております。これがマーケットバスケット方式なのですが、それが1999年、2004年、2007年、2010年、2013年に計測調査が行われております。マーケットバスケット導入以前より、マーケットバスケット方式には計測する研究者の志向する価値と恣意性が介在することが指摘されていたことから、2004年の法改正以降、相対的貧困に基づく基準中位所得と個別給付体系が導入されております。

 現行の基準中位所得に基づく設定方法につきましては、昨年の第2回の検討会で説明しているところでございます。国民基礎生活保障法では、国民の所得、支出水準と受給権者の生活類型等との生活実態、物価上昇率等を考慮して最低生活費を決定することとされておりまして、毎年9月までに中央生活保障委員会の審議・議決を経て保健福祉部長官が次年度の最低生計費を公表することとされておりました。

 最低生計費から他法他施策による支援額を差し引いた額が現金給付基準であり、そこから受給者の所得認定額を除外した額を差し引いた額、収入認定した額を除外して支給されるという仕組みになっております。

 16ページに続きます。算出方法につきまして説明いたします。最低生計費は、韓国保健社会研究院におきまして、肉体的又は文化・精神的に生きていくのに必要な項目を設定し、これを基礎として使用量、耐用年数、価格を決定して計測されます。マーケットバスケット方式の第1段階として、標準世帯と地域区分が検討されますが、2013年の計測では、標準世帯は夫婦子2人の4人世帯、地域区分は大都市、中小都市、農漁村の3区分とされました。

 最低生計費の計測に用いられたデータは3種類の調査結果となっておりまして、まず記載のマル1最低居住費調査ですが、これは地域区分と地域別住居費算出のためのデータでございます。マル2につきましては、2011年国民生活実態調査の一次調査でございます。これは基礎調査と深層実態調査の2種類ございまして、基礎調査とは世帯構成及び世帯員特性等の一般現況、費目別支出と所得、資産、主観的最低生計費の生活実態を調査するものがございまして、2万2000世帯を対象とし、そのうち1万6500世帯について訪問調査を実施するというものでございます。

 もう一つの深層実態調査とは、下位40%の4人世帯から2500世帯を設定して、そのうち、41.2%に当たる1031世帯について、外食頻度や光熱水道費の使用実態、耐久財の消費実態、医療費の実態等について調査を行ったものでございます。

 マル3、3つ目が、2011年国民生活実態調査の二次調査でございます。これはまた2つに分かれまして、市場価格調査と世帯類型別調査の2種類ございます。市場価格調査とは、統計庁で公表される、価格がない、あるいは十分ではない費目に対して二次調査を実施する地域の市場を調査対象とするものでございます。調査品目の質は、中から低のものとされました。

 もう一つは世帯類型別調査です。これは障害の類型や等級別の障害者世帯ですとか高齢者世帯、ひとり親世帯を中心に標本抽出された1500世帯の面接調査でございます。

 こういった調査結果に基づきまして積み上げていくこととしておりますが、各費目の品目ですとか、量、耐用年数等の定め方、価格の根拠については、17ページ以降、20ページまで記載してございます。

 21ページを御覧ください。以上説明いたしました手法による標準世帯の計測結果でございますが、それが図表マル-2のとおりとなります。ただし、この計測した最低生計費と中央生活保障委員会の審議・議決を経て、最終的に政府が公表する最低生計費との間には多少の差異が生じているといった事実がございました。

 韓国の事例については以上でございます。

 以上、昨年度実施した調査研究事業についてですが、これを基に、委員の先生方にはそれぞれの検証手法が抱える課題を踏まえた上で、どのように新たな検証手法の検討に活用できるかといったことも含めて御意見をいただきたいと考えております。

 事務局からは以上です。

○駒村座長 ありがとうございます。

 それでは、今の事務局の説明に基づいて、今日の資料のそれぞれについて議論していきたいと思います。

 まず、資料1でありますけれども、この検討会の基本的な目標というのは、1ページに書いてあるように、赤字の部分であります。事務局は、すみません、資料1を映していただいたほうがいいのではないかと思いますけれども、お願いできますでしょうか。

 ありがとうございます。均衡方式であるけれども、しかし、低経済成長や低下や、そういったことで比較する消費水準が低下を始めてしまうと、それにスライドして一緒に下がっていってしまうという問題が起きるのではないか。経済成長、消費水準が全般的に改善するという前提でこれまで議論ができてきたわけで、水準均衡方式が出てきたわけですけれども、消費水準全般に下がっていくということが起きるとそれに連動して下がっていく。これ以上下がってはいけないという水準に突き当たっていくのではないかということで、そういう状態に対応するためにどのように整理しておくのかということだと思います。

 ただし、これ以上下がってはいけない水準というのは、健康で文化的な水準というわけですので、最低限度の生活を送るための水準というのは、その時代その時代の文化的な水準だということも考えておかなければいけないということだと思います。

 その上で、今日検討した次のページですけれども、3つの手法について少し、こういう角度で整理したらどうかというところで、マーケットバスケット、MIS、主観的最低生活というところで、まず誰が判断しているのかという点について、それぞれの特徴について整理をしてみたということでありますけれども、まず、この事務局の整理の仕方について御意見をいただきたいと思います。この資料1について、委員の皆様から御意見ください。

 まず山田先生から。

○山田委員 膨大な調査研究事業についてまとめていただきましてありがとうございます。まず、資料1ですけれども、これは初めのほうでも議論したことだと思いますけれども、1ページ目に、一番最初のマルで、相対的なものというのと、それから3つ目のマルで、比較する消費水準が低下すると絶対的な水準という、相対的と絶対的な水準ということを、今、座長のほうからも整理がありましたけれども、ここでももう一回、少し間が空いたこともありまして、整理しておく必要があるかなと思います。

 そのときに1つ参考になるのは、ラヴァリオンという経済学者が議論している弱い意味での相対的貧困線と、それから、強い意味での相対的貧困線という、相対的貧困線といっても2種類があるのだということで、その区別は必要だと。その区別をちゃんと考えることによって絶対的な水準というのが何かというのが明らかになろうかと思います。

 ラヴァリオンがいう強い意味での相対貧困線というのは、この1ページに書かれている一般国民生活における消費水準との比較における相対的なものということと近くて、先ほど座長からも問題の指摘がありましたように、平均所得が下がっていくと、場合によってはゼロになるようなこともあり得ると。それが強い意味での相対貧困線ということになります。

 一方で、弱い意味の相対的貧困線というのは何かというと、所得平均値とか中央値といったものがどんどん下がっていっても、ゼロとなることはなく、それ以上下がらない領域というものが弱い相対貧困線にはあるのだよと。それ以上下がらない領域というのは、社会参加に要するプラスの費用というのがある領域であって、それ以上下がらないと。要するに、強い意味での相対貧困というのは、消費水準が下がっていくと使い物にならない可能性があって、社会参加に要するプラスの費用を反映するという部分、弱い意味での相対貧困線で考える必要があるのだろうということがまず指摘できるのではないかと思います。

 あと、同じく2000年代に入ってアトキンソンとブルギニョンが、貧困ではないというのはどういうことかという定式化を行っているのですけれども、そこでは2つのニーズの両方が満たされれば貧困ではないと定義しています。1つは生存ニーズと言われるもので、生きるために絶対に必要とされるものが生存ニーズ。もう一つのニーズとしては社会包摂ニーズと呼ばれるもので、これは社会経済活動に加わるために求められる最低限のニーズがあるということです。

 だから、絶対的な水準とは何かということですけれども、行き着くところ、生存ニーズというのは、我々がもう言うまでもなく、それは誰しもが認めるものですけれども、今回こうした色々な手法で考えなくてはいけない、議論すべき検討課題としては、アトキンソン、ブルギニョンがいう社会包摂ニーズを含めた最低生活費とは何かということと、あとは、強い意味での相対貧困線ではなくて、社会参加ニーズもプラスした上での、弱い意味での相対貧困線を考えていく必要があるのではないかと、そのように整理できるのではないかと思いました。

 あと、資料1の2ページ目になりますけれども、MIS手法については阿部委員のほうがお詳しいと思うので補足していただきたいと思うのですけれども、個人の価値判断の影響ということですけれども、実はこのステップを、先ほど資料2の2ページ目で御紹介いただきましたように、7段階踏んでおります。この7段階で少人数であることによって結果が左右されないように、そうした誰かの価値判断の影響を受けないように非常に慎重に何度も何度もレビューのステップが踏まれているというのが、資料の2ページ目のいわゆる確認グループとか最終確認グループの働きですので、影響を受ける可能性はありますけれども、むしろその可能性をいかに除外しているかというのがこのMIS手法の一つの工夫であるわけです。

 あと、地域の選び方、参加者の選び方によって結果は異なる可能性があるということですけれども、これはむしろ算出方法で最初に設定された世帯類型とか地域に参加者の属性をそろえていることによるものなので、可能性があるというのはこの手法の最初の設定による、ということを補足しておきます。

 あと、マーケットバスケット方式については、後ほど個別の手法に関する議論の際にもまた出てくると思いますけれども、予算制約なしになっていますけれども、ある国の参照世帯を見ますと、例えば下位10%とか15%、20%という形で、ある所得階層を縛っていますので、予算制約がないかというと、マーケットバスケット方式はどのように平均消費額を参照する所得階級を定めるかによって、その制約を受けた、その所得階級の例えば低いほうであれば、所得が低いという制約を受けた結果になっていますので、予算制約が必ずしもないというわけではなくて、多分、マーケットバスケット方式でどこの所得階級を参照するかによっても異なってくるのではないかと思いました。完全に予算制約なしとは言えなくて、方法によってなしとも言えるし、方法によってはありとも言えるということになるかと思います。

 取り急ぎ、この資料1については以上です。

○駒村座長 ありがとうございます。一番目の部分についての議論、なぜこの作業をやるのかというところのお話をいただいたと思います。

 強調しておきたいのは、誤解されてもいけないところでありますけれども、戦後直後で、国民全体が絶対的な水準の周辺にいたころには、恐らく相対貧困で下位10%といった議論はできなかったと思うのですね。それをやってしまうと、恐らくはるかに絶対水準を下回るような人ばかりになってしまうと思いますので、その後、絶対水準に基づく貧困ラインから経済成長の改善を反映するという、まさにその時代その時代の文化的な水準を吸収するために、動態的な成長を生活保護のほうにも反映させるという意味で水準均衡が採用されたということになるわけですけれども、一方で、経済が成熟化して、低成長になり、場合によっては消費水準が下がるということが起き得る社会になったときに、それと連動して下げていっていいのかということを我々考えなければいけないと。

 だから、繰り返して強調しなければいけないのは、先ほど山田先生からもあったと思いますけれども、絶対的な水準というのを戦後直後のマーケットバスケットで積み上げていたようなイメージに戻すという話をしているわけではないのだということですね。上がるときには上げて、そして下げるときには現代的な意味での最低水準というのを意識しておくという意味で考えていこうと、決して、戦後直後の絶対的な意味という先祖返りをするということではないですよ。少しその動きを、動態的な考え方を少し整理しておこうという部分もあるのではないかと思います。

 MISについても、この特定の人たちだけ影響受けるようにしないように、非常に慎重にチェックが行われているということ。

 それから、予算制約という、各手法の特性をどう表現するかというところは、この予算制約という表現がいいかどうかというのも少し悩ましいところではありますので、表示についてはひとつ考えなければいけないのですけれども、分かりやすいために多分この名前をつけたと思いますけれども、マーケットバスケットとて、理念的には積み上げですけれども、レファレンス集団を考えるときには、何らかの経済制約といったものも意識されているのではないかというお話だったと思います。

 ほかの委員からいかがでしょうか。この検討会は繰り返し見られますけれども、MISと主観的最低生活費とマーケットバスケット方式を使って今後の生活扶助基準の考え方を整理するというのを目的にしますので、最初に入り口の問題意識ですので、ぜひとも確認のためにも委員のほうから、この整理についてのコメントは欲しいと思います。いかがでしょうか。

 今のところ手が挙がっていなければ次の資料に入りますけれども、よろしいですか、この整理で。

 では、次の資料に入っていきたいと思います。資料2ですね。MISに関しての議論になりますけれども、この議論について、先ほど山田先生が、慎重な検証手続をとっているのだということで、特定の人たちの先入観が反映されているものでもないのですよということについて強調されたと思います。阿部委員のほうから、この点について、あるいはMISについての読み方とか理解の仕方について、場合によっては誤解されてしまう部分もありかねないと思いますけれども、何か強調することも含めてありますか。

○阿部委員 山田先生のおっしゃるとおりで、特にやはり恣意性を排除するために、そこのところは何遍もグループを課してやっているといったこともありますし、この同じような調査、2010年にもやっておりまして、結果というのはそれほど変わっていないということも考えると、それほど恣意性は強いものではないものとは考えております。

○駒村座長 ありがとうございます。これを個別に読んでいっている方がどう理解するかということも色々あると思うのですね。例えば5ページ辺りにはかなり具体的に、どこで物を買っていると、セブンイレブンで買っているとか、かなり明瞭にイメージが、それぞれの議論の人たちがどういうイメージで、例えば外でデートもしていますと、現代社会においての人とのつき合いというのはこのぐらいまでは許容範囲ではないだろうかというような表示も出ているわけですけれども、これについても、こういう表示でイメージを具体化させている意味というのをちょっと阿部先生からも、これを読まれた方にメッセージとして説明いただいたほうがいいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

○阿部委員 そうですね。MISの利点というのは、次の主観的最低生活費もそうですけれども、一般市民の人がその金額で生活するってどういうことなのだろうと、どういうものが私たちの生活には必要なのだろうということを考えた上で、やはりこれだけは必要だねといったものを挙げているということ。MISの場合は特に一つ一つの費目が一円一円まで全部、これはこれに使ってますよということができるという点で利点があるかなと思います。

 ですので、ちょっと話は飛びますが、やはりこのMIS手法と主観的最低生活費の中で大きく生活保護費と乖離があったというものについてどうするのかという議論をするというのが次のステップなのかなあとは思います。

○駒村座長 ありがとうございます。そうですね。このギャップをどう評価していくのかということだと思いますね。市民の方が、この5ページに見るような形で皆さんで議論して、こういう生活ぐらいが現代社会において保障されるレベルではないかという議論をした、一応合意形成をしたということになるわけですね。

 あと、多少特定費目をマーケットバスケットの中では除外していますよね。例えばアルコールみたいなものは除外しているということになるわけであります。それは生活には必要ないのだということでマーケットバスケットのほうは判断しているわけですけれども、例えばそういう嗜好品みたいなものというのはこのMISの中ではどう処理されているのかというと、どうでしょうか。

○阿部委員 アルコールについても、そのグループの方々に何遍も話し合ってもらっています。結果として、アルコールというのは、つき合いの中でも出てきますし、アルコールだけではなくて、例えば甘いものですとか、栄養摂取カロリーの必要以上のものでの、例えばちょっとスイーツを食べるですとか、仕事しているときにミントを食べるですとか、チューインガムですとか、たまには缶コーヒーを飲むと。コーヒーとかも栄養上ではそれほどプラスになりませんけれども、そういったものも含め、やはり必要だと、それが飲みたいというときに飲めないという状況はいけないのではないかということで合意されております。

 そこで合意されなかったのはたばこですね。たばこについては合意されなかったので、たばこの金額は入っておりません。

○駒村座長 たばこについて合意されなかったのは何かあるのですか。

○阿部委員 それは、そこの方々が、恐らくこれも喫煙者の割合がどれぐらいいたかということにかなり限ってくるかと思いますけれども、私が今までやったMISの中で、たばこというのが認められたことは一度もありませんでした。

○駒村座長 分かりました。そういう意味では、このグループの中のコンセンサスを何度も何度も確認していくという。もちろん、慎重に議論されているということでありますので、この何度も何度も議論した上で、現代社会の中で文化的な人間関係を維持する上で許容できる範囲はどうなのかと。アルコールだからアウトというわけでもないですよと、ある程度の余裕のある生活、人間らしいこの現代社会の意味で必要な食べ物とか好みなんていうのは許容すべきではないのかということが議論されたのだろうと思いますので。

○阿部委員 すみません。1点つけ加えさせていただきますと、そこでアルコールもそうなのですけれども、当然、アルコールとかは飲まない方もいらっしゃるわけですが、そういった中で、これこれと指定するのではなくて、やはり栄養価を満たすというだけ以外の嗜好品ですね。食べ物での嗜好品というものがやはり必要なのではないかというのが合意されたところかなと思います。

 ですので、たばこについても、ほかの嗜好品ではなくて、たばこを買うという選択をする人がいるかもしれませんけれども、それも大体これぐらいの金額の中であれば、やはり嗜好品みたいなものが自分のほっとするために必要だよね、みたいなところはありましたので、たばこが全くだめと言っているわけではないということはちょっと申し上げたいと思います。

○駒村座長 分かりました。それは恐らくそのグループの中での議論がそういう結果になっているだけであって、そういう余裕のある、これはちょっと分からない部分もありますけれども、依存症みたいなところまでは想定しているかどうか分かりませんけれども、社会の中で許容される範囲、交際の範囲ではどうなのかと、余裕のある生活の意味でどうなのかということだったと思いますので、もしこのMISについて、ほかに御意見とか御質問とか確認したいという。

 山田先生、ではお願いいたします。

○山田委員 私も参加させていただいて、阿部委員の御説明の補足というのも僣越ですけれども、このMIS手法の特徴の1つというのは、この資料の3ページ目から4ページ目の、「導入グループで示された最低生活の規定・定義例」というと、何かこっちから押しつけたように見えるかもしれないのですけれども、実は、これも一般市民によって何が最低生活かという定義から始めているという、その最初の段階から一般市民が議論しているというのがポイントで、また、自分がたばこを吸うからというのではなくて、仮想的な、例えば若年男性とか若年女性、町田とか色々な地域がありますけれども、この場合だと町田であったとして、そこに住む仮想的なその人物に対してどのように最低生活、一般市民が定義した最低生活、に基づけばこれが必要というのを、自分が必要だというよりも、こういう仮想的な人物に対して必要と、コモンセンスに基づいて考えられるかどうかと言っているわけで、もちろん本人の嗜好が反映されている部分もありますけれども、あくまでも仮想的な設定に対してどう考えるかという。そこら辺が単純なところではなくて、仮想的な設定に対し、そこの部分を考えていただいているという非常に興味深い調査設計になっています。

 あと細かな点ですけれども、これは阿部委員に説明していただいたほうが正確かと思いますけれども、全消と比べたときの住居費が高いというのは、これは全消が平均なのに対して、MISのほうでは全員家賃全家賃が必要だという、この仮想的な人物は借家に住んでいる、ということを前提にしているからですよね。ちょっとすみません、それは確認です。

○阿部委員 はい、そうです。全消のほうでは、家賃ゼロの方もいますし、それに家賃が非常に低く親戚から借りているとか、そういった方々もいらっしゃいますので、平均値が、全国レベルであるということもあり、こちらの場合は町田市ですとか足立区ですとか、指定した中で、今現在マーケットに出ている家賃だとこれぐらいという形で決めていますので、当然のことながら、これは高くなります。

○駒村座長 ほかにありますか。

 渡辺委員。

○渡辺委員 先ほど資料1のときに発言したらよかったのかもしれないのですけれども、8人だけで決めているから個人の主観的な判断が入るかもしれないという記載がありましたけれども、先ほど山田先生からも御指摘あったとおり、資料2の2ページに記載あるとおり、マル1、マル3、マル5、マル7ってそれぞれメンバーが違うのですね。マル1で最初に、日本における「最低生活」とはどんなものかという定義をつくって、マル2で、それに基づいてどういう財が必要かというのを話すのです。マル3とマル5でまたメンバーが変わって、作成されたリストの内容をそれぞれ検証するということもしますし、マル7でさらにまた検証するということをしているので、そういう意味では、個人の主観が反映されているというのではなく、市民が考える最低生活について調整がなされていった結果がMISに示されているものだと理解しています。

 それから、交際費のところですけれども、先ほど事務局から、パートナーがいることが想定されているというような御説明がありましたけれども、これは社会生活で、円滑な人間関係を結んでいく上で必要な費用としてどれぐらいかみたいなところがあって、ちょっと友達と御飯食べに行くかもしれないし、コーヒー飲みに行くかもしれないという費用が反映されています。社会生活を営む上で、山田先生からも御指摘ありましたけれども、円滑な人間関係を育むというところも踏まえた内容であったかなと思っていますので、その点、ちょっと補足させていただきます。

 以上です。

○駒村座長 この議論、大事な点は、これらの検証方法を生活扶助の基準にどう使っていくのかというのが最大のポイントであって、こういう調査方法を使えばこういう結果が出てきたということで、あとはこれをどう生活扶助のほうに反映させるのかということなので、これで生活扶助基準を決めましょうという議論をしているわけでは決してないと。こういう調査方法をするとこういう結果になりますねということを皆さんでまず共有してくださいということで、聞いている方も一般国民の方もそういう意味では誤解をしていただきたくない、このようにやるとこういう結果になりましたということで。

 岩永さん、ありますか。

○岩永委員 MISについて特出しして言うと、先ほどの御説明の内容で、交通・通信費が低いという御説明が課長補佐の方からあったと思うのですが、私の記憶だと、どこに住んで、どこに通勤するかで交通費が違うとか、通勤する場合は別途職場から交通費が出るのではないかとかいう意見があって、どこに住んでいるかというのは仮想的に決めているのですけれども、それも、駅から近いかバスを使うのかとかでかなり違ってくるので、交通費の金額は決めがたいという話がありました。積み上げるのが難しかったという部分があるかなと思います。

 あと、その点、旅費という意味では、教養・娯楽費の中に入っているので、その教養・娯楽費がちょっと膨らんでいる部分があります。あと、その他の消費支出というのも高いのですけれども、ここは剰余金が入っていて、それは今、渡辺さんがおっしゃったような意味も大きい。そのため、金額の高低を項目別に見るときに、その中身がどうなっているのかというのを、資料で、セットで見ていただかないと理解が違ってきてしまうのかなと思います。

 そうはいっても、家計費目の項目の差をどう理解して生活扶助基準に反映していくのかというのを議論しなければいけないねという阿部先生の御意見についても、そのとおりだなと思って、それを読みながら、ほかの主観的最低生活費の研究の資料3とか資料4とかも読む必要があるのかなと思って説明を伺いました。

 以上です。

○駒村座長 では、こういうMISという手法が一つの材料として使われているということに関して、読んでいただける一般の方を含めても、生活保護の最低基準というのは国民全体に係る大事なことですので、きちんと、誤解のないように理解していただきたいというのが1つ大事な目的だろうと思います。

 この話は、また会議の中で少し必要に応じて、専門家以外からどういうリアクションが来るのかもちゃんと考え、コミュニケーションとらなければいけないと思いますので、もし誤解が何か出てきたならば、ちゃんと我々答えていかなければいけないと思います。

 では、資料3のほうについて議論を進めたいと思います。資料3については、山田先生が主に関わっているので、資料3について、山田先生のほうから、これはこう読んでもらいたいという部分があれば御説明いただきたいと思います。いかがでしょうか。

○山田委員 こちらについても、事務局から資料1で御説明があったように、MISと同様、一般市民が考える最低生活費とは何かということを明らかにするということで、先ほど座長からありましたように、これが出たからといって、即生活扶助基準等に反映してくださいと、反映すべきだと、そういう結果とは読むべきではなくて、あくまでも海外の研究事例等も含め、それを参考にやった場合に、一般市民の考える最低生活費というのはどれほどのものかというのを、MISとは方法は違いますけれども、見たものと位置づけられると思います。

 ただ、そうはいいながらも気になるのは、特に10ページとか15ページ、生活扶助の対象品目について、K調査のほうが切り詰めるだけ切り詰めるということで低い値が出てくると考えられますけれども、そのK調査との比較において、実はこれは、昔、10年ほど前にやったことがあるのですけれども、10年ほど前にやったときには、単身世帯だけはK調査のほうが生活扶助基準よりも高いという結果が出てきました。それ以外については、実際、生活保護基準のほうが高かったわけですけれども、今回やってみて、3級地の2の基準でも、単身以外でもK調査のほうが高い値を示すものがあるということについては、これをどのように解釈するのか。だから、即生活扶助基準を上げるべきだということにはなりませんけれども、そこについてはどうしてこういう変化が10年間であったかということについては注意してみる必要があるのかと考えられます。

 あと、もう一つノートしていただきたいのは、主観とつくと、単なる主観でしょうということが批判あるかと思います。これについては、最初の冒頭の話とも関連しますけれども、絶対貧困と相対貧困とよく対比させられることがあって、絶対貧困は栄養や健康といったところから客観的に把握できる。相対貧困はどう感じるかといった主観の問題であると捉えられることもあると思うのですけれども、実は主観だから、相対貧困は主観だから、要するに心の中の問題でしょうということについては、近年の研究に基づけばちょっとこれについては注意が必要であると。実際に相対的に貧困で、主観的に貧困であっても、ストレスを示すコルチゾールの水準が上がるという研究もありますので、結局、相対貧困、主観の問題だといっても、必ずしもそうではないと、客観的に、生理学的に問題として捉えられているという研究もあるので、主観だからといってあてにならないかというとそうではないということについても補足しておきたいと思います。

 私からは以上です。

○駒村座長 今の点も大変重要で、子供の分野の研究ですけれども、自分以外の子供たちがみんなできることを自分だけはできないという意味での相対的な困窮を感じることによってストレスが増えて、その結果、子供の学力にも影響を与えているという研究も出てきていますので、絶対が健康状態を壊して、相対はそういうものに影響を与えない、メンタル的な、心の問題、主観的なものはどうでもいいんだなんていうことではないのだということも確認されつつあるということなので、絶対さえ守ればいいのではなくて、相対的な、あるいは主観的な貧困の認識というのが人間の生理的な部分やメンタル的な部分に悪影響を与えるという研究は徐々に出てきていますから、今の山田先生の強調の部分は大事かなと思います。ほかにありますか。

 山田先生、では続けてどうぞ。

○山田委員 すみません。あともう一つ、先ほどの座長の問いかけで、こういったものをどう使うかということですけれども、例えばある世帯の70%を基準に定めましょうと。これは岩永委員からも前のほうで議論があったわけですけれども、例えばある世帯の70%を相対的に決めましょうといったところで、例えば乳幼児のミルクが70%と言っていたら当然足りなくなるのと同じように、社会的な包摂のニーズというのを考えた場合に、あるアイテムの費用が70%になったらその用をなさないというアイテムが多分あると思うのですね。そういうアイテムについては、こうした主観的最低生活費とか、MISで出たアイテムを見て、これは70%では用をなさないですねというアイテムがあったら、その項目ごとに見ていく、使っていく、現在の保護基準で果たしていいのかという、そういった検証には少なくとも使えるのではないかと思います。

 以上です。

○駒村座長 今の、剥奪と言うべきなのかどうなのかというところはあるかと思いますけれども、大事な指摘で、その保有自体が決定的な影響をもたらすというものもあるだろうという見方、そういうものの材料にもなるのではないかということだと思います。ほかにいかがでしょう。

 阿部委員、お願いします。

○阿部委員 ありがとうございます。

 私、12ページの、費目別に書いてあるグラフだけがここにあるのですけれども、ここにすごく興味を持ったのです。といいますのも、今回、今までの通常の生活保護の考え方から、このMISですとか主観的最低生活費で考えたときに、1つ新しい方向としてあるのが、生活費の全体を比べるのではなくて、その費目別に比べることが可能になったということかなと思うのですね。ですので、今おっしゃったこともありますけれども、例えば食費だったら7割でいいのかですとか、娯楽費だったら、恐らく、家計を縮小するときに同じ率で全ての費目がシュリンクしていくわけではないのですね。そういったときに、何が、どの費目であれば最低限必要なのか、どの費目が最低限これだけ必要なのかというベンチマークというのは非常に重要かなと思います。

 そういった意味で、この調査では、例えば費目別に見て、特に生活保護のほうはまだ内訳が分からないのですけれども、でも、例えば消費実態と比べてすごく乖離しているですとか、また、この後、生活保護の家計調査がありますので、それを費目別に分けた場合に、どこのところが一番、今実際に多くの分野によって生活保護費のほうが低くなっているという結果が出ているのですけれども、どこが低くなっているのかということを算出することはこのデータからできるのですか。

○駒村座長 山田委員、どうですか。

○山田委員 社会保障生計費との比較ということだと思いますけれども、データがあれば可能かと思います。これについては事務局のほうでも、可能かどうか、念のため御確認いただければと思います。

○駒村座長 事務局、いかがでしょうか。

○本間保護課長補佐 そういったことも含めて確認いたします。

○阿部委員 すみません、続けていいですか。

○駒村座長 どうぞ。

○阿部委員 もしそれが可能であれば、MISのほうも当然ですけれども、費目ごとに価格が出てくるわけですよね。そういった中で、特に今の生活保護体系の中で、どの世帯だけでなくて、どの費目が一番ペナルティを受けているといいますか、というところが分かれば、そういったところを今の生活扶助費の中から取り出すということも可能かなと思うのですね。

 実はそういったことはもう既にやっていまして、それは教育費の部分でやっているわけですね。教育費は、例えばドリル代を買うですとか、そういった価格は、本当であれば全部生活扶助費の中に入っているはずですけれども、でも、そこを取り出してでも、ここは最低限1万円必要だよねみたいな議論をもう既にやっているわけですから、そういった中での、費目別に、生活扶助の中で全体の第3・五分位の70%とかの中にひっくるめない部分、ひっくるめてはいけない部分というのを算出できれば、決めることがこれらの調査を参照することによってできるのではないかと思うのですけれども、そういったことも御検討いただけないでしょうかというお願いです。

○駒村座長 事務局は、一つのアプローチとしてちょっと記録を取っておいていただいて検討してもらいたいと思います。いかがでしょうか。

○本間保護課長補佐 いずれにしましても、持ち帰って確認して検討させていただきたいと考えております。

○駒村座長 ありがとうございます。

 いかがでしょうか。次の資料4も残っていますけれども、もしここで特段なければ、資料4のほうに移りたいと思いますけれども。

 岩永さん。

○岩永委員 簡単なコメントなのですけれども、先ほどのMISといい、この資料3の主観的最低生活といい、全体としては生活保護基準のほうが低い、ということが結果として出ている。この結果から見ると、これ以上保護基準を下げるという選択肢は少ないのかと、この検証結果をそのように私は読みました。

 以上です。

○駒村座長 岩永さんの理解としては既に底打ちしているのではないかという。

○岩永委員 底打ち、とまでは言わないですけれども、この調査を見る限り、全体的に、主観とMISではそちらのほうが高いわけだから、生活保護基準をさらに下げるという選択肢は少ないのではないか、という理解です。

○駒村座長 この資料からということですね。

○岩永委員 はい。

○駒村座長 分かりました。

○阿部委員 今の岩永先生のに続けてですけれども、私の記憶では、今までの消費実態と比べるというやり方でやっていると、どちらかというと高齢者世帯のほうが生活扶助基準が低いという結果が出ていて、若年層ではそうでもなかったと思うのですね。今回、山田先生のやってくださったのでは、高齢者というよりも、50代ですとか、20代から40代の世帯といったところが、K調査と比べても生活保護のほうが低いという結果になっている。これは結構新しいところかなと思うのですね。MISのほうは世帯タイプが4タイプしかなくて、高齢者か若年かの単身しかなくて、MISでも同じように、高齢者よりも単身世帯のほうが乖離が大きかったのです。なので、こういったところで、恐らく消費実態でやると、今の高齢者の方々の消費は比較的高いのですね。なので、すごく乖離が出てしまうのですけれども、そこが今回のこの2つの調査を使うところの違う点かなと思うので、そこはやはり詳しく中身を見ていく必要があるかなあと、特に若年世帯においてというところかなあと思いました。

○駒村座長 乖離分をどう吸収していくのかと、単に水準を下げ比べて比較するのではなくて、その構成要素も含めて考えていったほうがいいのではないかという、この2つの方法はそういう材料も、切り口も含んでいるのだということだと思います。

 ほかにありますか。

○阿部委員 やはり対象者別に見ないといけないかなあというところですね。対象者の年齢のところが、今までの消費実態との比較と違うので、そこはやはりこの2つの調査で見なければいけないところかなと思います。

○駒村座長 ありがとうございます。

 あと20分ですね。資料4のほうに入りましょう。いかがでしょうか。

 岩永委員、お願いします。

○岩永委員 これらから分かったことを全体的に意見として述べたいと思います。どの国も、まず家計調査を参照しているということ、それから、様々なやり方を組み合わせているということ、それから、政策の経路依存性があるということで、それは日本と同じだなと思いました。様々なやり方を組み合わせているという場合に、スウェーデンはグループインタビューをしているというのはMISの手法とある意味似ているなと思いました。韓国の場合はマーケットバスケット方式で、それは日本とは違うのですけれども、1万6500世帯を訪問調査して、かなりの人的資源とかお金を投じているにもかかわらず、恣意性があるという批判があるので、マーバをそのまま活用するというのは難しいということが分かった。いずれにせよ、様々組み合わせするしかないのかなということが分かったかなと思います。

 ただ、ちょっとチェコについては参考にするのが難しいのではないかというのは個人的な意見です。理由は、みずほの報告書を見ますと、この扶助自体が緊急事態とか緊急支援のときにという文言が入っているのがちょっと気になります。どれぐらいの受給、給付されている実態があるのかというのが報告からは不明です。どれだけカバーしているのかということから考えるとチェコと日本はだいぶ違うのか、どうなのだろうなというのとか。あと、最低生活水準は第1・十分位の計算でと書いてあるのですけれども、それにもかかわらず、補正係数を利用してというのが出て、最低と下限と上限というのがつけられていて、根拠がよく分からない。それから、最低生存水準についても、構成要素を、私が見る限り恣意的というか、どうしてその要素を引っ張ってきたのかということが今回の報告では明らかにされていない。これらを踏まえて日本への示唆という意味では、やはりある程度どのように何を選んだのかということを説明できないといけない。いろんな方式を組み合わせるといっても、その説明ができないとならないのだなということが分かりました。

 日本のやり方が、これまでのやり方が、特異でないということを確認できたと思います。それを前提とした上で、今、外国の調査から参考になる点としては、ドイツもスウェーデンも統計局のようなところの協力を得ているので、日本においてももちろん、全消を使ったりしているわけですけれども、そういう別の組織の方の協力を得られる余地というのは日本ではないのかなと素朴に思いました。

 あと、これはちょっと検証という意味からは外れてしまうのですけれども、基準の設定の仕方、今の生活扶助基準等から8つの扶助の体系、それから、生活扶助基準の中身の体系の話をどう議論するのかということも、後の級地の話ともまた不可分になるのですけれども、ちょっとそこも問題かなと思いました。

 ドイツの場合は標準プラス合理的とか、住宅とか光熱費は自治体が決めるとか、基準の設定への自治体の関与度というのも国によって違っているので、基準全体の設計をどう考えるかというのも、この委員会の範疇ではないとは思うのですが、重要な論点だなと思いました。

 以上です。

○駒村座長 チェコの場合は、日本と似ている部分は、生活保護に相当する制度が包括的な制度であって、ほかの国はカテゴリー別にやっている国も多くある中で、日本とそういう部分では似ている。ただ一方違いは、こういう制度を見るときには、日本のように、憲法の生存権に規定してその水準がつくられているかどうかで、恐らく、チェコとか、日本はそういう意味では明瞭なわけですけれども、全ての先進国はそういうわけではない。チェコのように、最低生存水準みたいに2段階になって、2段階目でペナルティを与えているなんていうことは恐らく日本の生存権の考え方ではあり得ない考え方だと思うのですね。

 知っておかなければいけないのは、どこまで透明になっているのか、各国がというのがポイントであって、チェコを参考にしようなんていうことは、日本の法体系から見ると、生存権の最低水準は2段階あるなんていうことはおよそ考えられないと思いますので、国がそれぞれの制度を、どういう最低基準を、どういう哲学というか、思想と法体系でつくっているのか、ちゃんと理解した上でこういうのを見ないといけない。チェコは2段階だから日本も2段階にしましょうとかいうわけにはいかないというのはそのとおりだと思います。

 最低生活のカバレッジは日本と似た部分もあるのかな。ただ、考え方が全然違うということですね。

 ほかの国は、例えばスウェーデンに至っても、7ページに書いてあるように、合理的生活費とはどういうものなのか。1つイメージしやすいわけですよね。市民として生活するのはどういうことを意味しているのかということをイメージ。これは法律ですかね。どういう記述になっているのだろう。事務局、分かりますか。7ページの合理的生活費はどのように定義されて、どのように改定されているのか。これも時代とともに変わっていくと思うのですけれども、事務局のほうから、何か追加情報ありますか。7ページの概要の合理的生活費、この規定自体は法律なのか、それはどのように見直されているのかというのは分かっていますでしょうか。すみません。

○本間保護課長補佐 調査研究ではそこまで何を、法的根拠があるのかといったことについては把握できませんでした。

○駒村座長 ありがとうございます。イメージはしやすいのかなと思いますね。最低限度で健康的で文化的というのがどういうイメージなのかねというのは、こういうのを見ると分かるなあと思いました。ほかの委員はいかがでしょうか。

 山田委員、お願いします。

○山田委員 各国の最低生活の算出事例で私が興味深いなあと思ったのは、ドイツとチェコでは、一応平均消費額を用いるために参照世帯というのを設定していると。例えばドイツだと、3ページにあるように、成人単身世帯の下位15%とか、あと、子1人の家族世帯の下位20%、そして、チェコのほうでは、これは上限値なのですけれども、13ページには現金収入下位10%というのがあるわけですね。

 ですから、参照される世帯がどこかというのが非常に興味深くて、特にドイツですけれども、たしか相対貧困率って大体10%ぐらいだったと記憶しているので、その2倍ぐらいのところを子1人の家族世帯では参照していると。チェコの相対的貧困率はもっと低くて、たしか5~6%だったと記憶していますので、現金収入の下位10%というのはその2倍ぐらいですね。日本の相対的貧困率だと、たしか16%ぐらいですね。ですから、そうすると32%、そこから基準にするとかなり高いところを参照するということなのかなあと、そこまで読んでいいのか分かりませんけれども、日本は10%とか、第1・五分位とかなっていますけれども、参照される世帯が、このようになっているということで関心を持ちました。

 そのような感想めいたことですけれども、私からは以上です。

○駒村座長 ありがとうございます。ほかの委員、いかがでしょうか。

 もう一個資料があるのですね。私、資料4までで終わりだと思っていたのですけれども、資料5についての説明も残っているのですね。資料5について、ちょっと事務局からお願いできますでしょうか。

○本間保護課長補佐 資料5について説明いたします。

 資料5は、「級地制度の現状と課題・調査研究事業の経過報告」でございます。1ページを御覧ください。級地制度の概要につきまして説明いたします。

 級地制度の目的は、生活保護法8条2項に基づきまして、地域における生活水準の差が見られる実態を踏まえて、生活保護基準に差を設け、各地域において同一の生活水準を保障するものです。現行の級地は、1級地-1から3級地-2まで6区分となっております。6区分の較差は、創設当時4.5%でしたが、平成24年の検証、平成29年の検証を踏まえて、区分間の較差を是正しています。

 現行の級地指定につきましては昭和62年度に見直されておりまして、各区分ごとの市町村割合は記載のとおりとなっております。3級地-2が49.1%と半分近くとなっております。

 2ページを御覧ください。昭和62年度の級地指定見直しの手法でございます。地域における生活水準の差は生活様式や物価差等によるものでして、その差は消費に反映されているという考えに基づき、全国消費実態調査を基礎資料として設定しております。

 回帰分析と主成分分析の2つを採用し、それぞれの結果に基づき級地指定を行っております。具体的には、回帰分析及び主成分分析のいずれか1つが上位枝番の範囲内であれば上位枝番とし、回帰分析、主成分分析ともに下位の枝番であれば下位の枝番として見直すという案を策定いたしました。

 また、この級地指定の見直しの激変緩和措置として、それまで3級地3区分でして、級地間較差は9%でしたが、級地内で枝番をつけてさらに2つに分けて、各区分間の較差を4.5%といたしました。

 その級地ごとの差を9%から4.5%ごとの較差に縮小するまでに5カ年かけておりまして、また、各市町村の級地間移動ですね。3級地から2級地にいくとか、2級地から1級地にいくとか、そういう移動は行わないこととしました。級地内で枝番をつけて、そこでの移動ということとしておりました。

 3ページを御覧ください。62年度、級地指定見直しの根拠となった社会福祉審議会の意見具申を抜粋してございます。この社会福祉審議会の意見具申の下から2行目にありますとおり、級地指定につきましては、各都道府県、各指定都市等地方公共団体の意見を十分聴取する必要があるとされていることから、各自治体との調整に約1年をかけております。

 下段は、昭和62年度の級地指定見直しに用いた主な統計調査の概要でございます。

 4ページを御覧ください。級地制度の課題についてです。記載しています資料につきましては、第26回の生活保護基準部会、平成281028日に開催されました資料2より抜粋しております。

 ここで課題として記載されているところは、昭和62年度に見直されて以降、約30年が経過しているということ。平成の大合併により多くの市町村が広域化したことにより、各地域の生活水準の実態と乖離している可能性があるとの指摘がされてございます。

 また、6ページから8ページにかけましても、基準部会ですとか財政制度審議会等における級地に関する指摘を記載してございます。

 11ページには、昭和62年度以降の市町村合併における級地指定区分の変更について記載してございます。

 市町村合併におきましては、合併した市町村のうち最上級の級地に合わせるということを機械的に行っておりますので、級地の指定と実際の消費実態とは乖離しているというおそれがございます。

 こういったことを踏まえますと、各地域において同一の生活水準を保障するためには、次の生活保護基準部会において検証を行い、級地指定について見直す必要があると考えております。

 資料、飛びまして12ページを御覧ください。級地制度に関しましては、これまで平成29年度と平成30年度におきまして調査研究事業を実施してまいりました。

 一番下の青い四角の部分に記載がございますとおり、令和2年度、今年度においても級地に関する調査研究事業を行っているところでございまして、平成30年度調査研究において挙げられた回帰モデルですとかグルーピング手法につきまして、有識者の御意見を踏まえて再検討を行っているところでございます。

 今年度の調査研究事業の結果を基として、次期生活保護基準部会において級地指定について御議論いただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 13ページ以降は、平成30年度に実施した級地制度に関する調査研究事業の概要につきまして記載してございます。

 事務局からは以上でございます。

○駒村座長 ありがとうございます。

 級地のほうは、今日の前半部分とは少し違う性格のものになりますけれども、30年間の社会のこの間の変動や、経済、あるいは生活状況の変動を踏まえて、この級地水準の差とか、あるいは級地間の差とか、その級地のラベル、どの地域がどこに相当するのかというのを見直さなければ、さすがに30年の間の変化を踏まえていかなければいけないし、その間の大合併みたいなものもあって、かなりその辺が乖離出ているのではないかという問題意識だと思います。

 委員のほうから何か確認とか質問とかありますか。

 山田委員、お願いします。

○山田委員 多分、今日の参考資料1に入っていますけれども、平成31年3月18日に出たスケジュールの改定ということで、そのときには、最低限度の生活に関する考え方の整理ということでした。級地に関して、何十年も変更しなかったからということで重たい課題がここで入ってきて、この会議で、非常にこれが重要な課題だということは理解している一方で、またこの級地の問題を取り扱わない限り、次の基準部会に進めないという立てつけにも理解したのですけれども、一方で、会議最初の頃の議論で、生活保護基準改定によって影響を受けたその影響についてもちゃんと検証する方法を考えたほうがいいのではないかという議論をさせていただいたと思うのですね。時間的な制約が厳しいとは思うのですけれども、こうした非常に重い話がここに入ってきて、ちょっとそちらのほうがどのようになったのかということと、この段階で非常に明示的に級地の議論が入ってきたというその経緯についてもう少し御説明いただければと思います。

 以上です。

○駒村座長 改定の効果はどうなっているのかというのはきちんとモニターしなければ、もちろんここは部会ではないですけれども、改定効果の検証をしないと生活保護基準部会としては責任が果たせないという結論が部会のほうで出ていたと思います。今後、部会にシフトしたときに、ちょっと性格の違う2つの話を回していくということになると思うのですけれども、今日この検討会でどこまでその級地の話を詰めなければいけないのかということも、山田先生、意識されての御質問だと思います。事務局、どうですか。

○本間保護課長補佐 まず級地についてですが、級地については、先ほども説明いたしましたとおり、調査研究事業で今年度実施しておりまして、そこでの有識者委員会で先生方から御意見をいただいて検討しているところですので、そこに重点を置きつつ、最終的な取りまとめとして、次期部会においては級地指定の見直しについても議論していく必要があるといった方向で取りまとめていければと考えております。

 具体的に、その級地指定についてこちらの検討会でそこまで深く御検討いただかなくても、それとは別に級地の調査研究事業のほうで御意見をいただければと考えております。

 改定の見直し影響の把握につきましては、昨年度も開催された検討会で、パネル調査の可否等についても御意見をいただいていたというのは認識しておりまして、そういった課題、パネル調査の可否についても、取りまとめに向けて整理していきまして、調査としてどこまでできるものか検討してまいりたいと考えております。

 事務局からは以上です。

○駒村座長 山田先生の御意見というのは、宿題もちゃんとやっていかないと次のステップに入れませんよということだと思いますので、この検討会というのは、今日の資料1でもあるように、水準均衡方式というものがこれ以降もずっとやっていていいのかということをちゃんと整理しなければいけない検討会であるということ、ここは主題なのですよね。だから、ここをちゃんとやりましょうと。その一方で、部会に入った場合は、部会としては、これまでの評価もちゃんとしていかないと次のステップに入れないのではないかという、宿題どうなっていますかという山田先生の御質問と、それから、この検討会がやっている話と級地の話というのは別の話にも思える。もしかしたら一体的に考えなければいけない、つながる部分もあるかもしれないけれども、ここの検討会で級地を主にやるのかということについて確認されたということですけれども、事務局の御説明としては、そういう研究疑義が出ているので、参考までに御披露したと、こういう整理でいいのでしょうか、それとも、級地に関しては本格的に議論を続けろということでしょうか。この辺ちょっと確認です。事務局、どうでしょうか。

○本間保護課長補佐 この検討会におきましては、級地制度の課題と今年度やっている調査研究事業の経過報告という形で今回説明させていただきましたので、この検討会では新たな検証手法に重点を置いて御議論いただければと考えております。

○駒村座長 山田先生、何か、いいですか。この回答で。

○山田委員 生活保護基準の改定によるものについては、今日の資料でも、岩永委員から下限という話が出てきましたけれども、いろいろと、どういう影響が出たかというのは非常に基準部会でも気にしているところですので、検討中というのではなくて、きっちり、どのような方法で検討していくか、もう少し具体化させるところまでここで進めていただければと思います。

 以上です。

○駒村座長 影響分析をしないとなかなか次のステップに進めませんよということを、山田先生、柔らかく言っていますけれども、事務局は宿題についてちゃんと検討をして結論を出して部会に臨みましょうねという話だと思います。

 級地の話は、この水準とどう関わって話していくのかというのは本当に部会に入ったときに入り口で整理しなければいけない話だと思いますので、これはそれについての予習という意味で級地の研究を御紹介いただいているという整理だと思います。ほかの委員、ありますか。

 岩永委員、お願いします。

○岩永委員 山田先生がおっしゃる影響調査というのはもっともなご指摘です。さらに、それ以前の問題があります。前回の基準部会の報告書から、第74次、第75次、第76次、202010月1日で3回基準改定していると思います。最新の基準額表を見ますと、年齢区分を変え、1類費と2類費の比率が変わっています。前回の基準部会を受けてどういう基準額改定をしたのか、というところを確認するところから始めないと、今議論している、先ほど阿部委員がおっしゃったようなこととかも、どう議論すればよいか分からない。1類と2類の配分が変わっているような気がするので、検証の出発点の基準ですね。どこのいつの生活保護基準を検証するのかというところというのですか。本検討会、及び基準部会で、出発地点をどこの基準改定時に求めるのかというのは確認しないと意味が分からなくなるかなと、最近の基準額表を見ていて思います。

○駒村座長 今日はもう時間が来ていますので、これ以上議論を深めるかというところもありますけれども、事務局のほうから、今の岩永委員の意見について、何かお答えありますか。

○本間保護課長補佐 この場ですぐに回答はできませんので、御指摘いただいた点についてはまた検討してまいりたいと考えております。

○駒村座長 分かりました。ちょっと時間も超えてしまっていますので、ちょっと私の仕切りがまずかったと思いますけれども、今日は、時間も来ましたので、このぐらいで終了したいと思います。

 次回の開催について、事務局から連絡をお願いいたします。

○本間保護課長補佐 次回の検討会につきましては、1218日を予定しております。会場等詳細につきましては改めて御案内させていただきますので、よろしくお願いいたします。

○駒村座長 ありがとうございます。

 それでは、本日の議論は以上とさせていただきたいと思います。御多忙な中、大変ありがとうございました。失礼いたします。