第2回職場適応援助者養成研修のあり方に関する研究会(議事録)

日時

令和2年9月28日(月) 15:00~17:00

場所

TKP新橋カンファレンスセンター カンファレンスルーム13B

議事

○秋場地域就労支援室長補佐 ただいまから第2回職場適応援助者養成研修のあり方に関する研究会を開催いたします。参集者の皆様方には、本日御多忙のところ御参集いただきまして、ありがとうございます。
本日も前回に引き続いてペーパーレス開催になりますので、タブレットの使用方法について、簡単に説明いたします。タブレットの画面上に、資料一覧が表示されております。資料のタイトルをタップしていただきますと、本体資料が表示されます。資料は、2本の指を広げたり縮めたりすることで、資料の拡大、縮小が可能となっております。またページをめくる際には、画面に指を置き、上下にスライドしていただければ、1ページずつめくることが可能です。お手元にタブレット操作の説明書をお配りしておりますので、そちらも御覧いただきながら、使用方法に御不明な点や機器の不具合がありましたら、挙手をお願いいたします。会議の途中でも、事務局が個別に御説明に伺わせていただきます。
それでは、以降の議事進行について、朝日座長お願いいたします。
○朝日座長 皆様、こんにちは。第2回の研究会に御参集いただき、ありがとうございます。それでは早速、本日の議事に入ります。
本日は、まずジョブコーチの実態調査の集計結果について、事務局から御説明を頂き、この研究会の本題であるジョブコーチの求められる役割とスキル、及びカリキュラムの見直しについて具体的に議論を進めていきたいと思っております。また、各養成機関から、研修を実施する際に行われている工夫などについて御発表いただき、情報提供を頂く予定にしております。
それでは、議事次第の1点目、職場適応援助者のアンケートの結果概要について、資料に基づいて事務局から御説明をお願いいたします。
○秋場地域就労支援室長補佐 資料1のアンケート調査の結果概要について説明いたします。1ページは、前回御説明したとおり、8月に直近3年間の養成研修修了者に対して、各養成研修機関の御協力を頂きまして、Web調査を実施いたしました。対象者3,758人のうち、未送付や送信エラーの方を除いて、最終的に3,228人に対して調査を行いました。有効回答数は1,321人、回答率は40.9%となりました。
2ページ以降が、今回のアンケート調査の集計結果になります。暫定版として単純集計した結果をお示ししたもので、Ⅰが訪問型ジョブコーチ、Ⅱが企業在籍型ジョブコーチになっております。ボリュームがありますので、本研究会のテーマである研修の見直しに関連した部分について、掻い摘んで説明をさせていただきます。
まず訪問型ですが、有効回答数が499人となりました。(3)の法人の形態を見ますと、社会福祉法人が約4割、株式会社が約3割という結果になっております。(5)の実施している事業を見ますと、「就労移行支援事業」や「委託支援事業」など、就労系福祉サービスを実施している所が多く見られます。(7)御本人が担当している業務ですが、複数回答で聞いたところ、全体的に就職後の支援よりも就職前の支援をしている方が多いという結果になっておりました。
5ページは、業務経験を聞いたものになります。6ページからは、ジョブコーチ支援の関係で、周囲から期待されていることについて聞いております。周囲から期待されていることとしては、⑤障害特性に応じた支援や⑨人間関係、コミュニケーションに関する相談・支援の項目が高くなっておりました。次のページは、助成金を活用した活動経験の有無別で比較したものになります。活動経験有りのほうが、全体的に高くなっており、特に⑩体調・服薬管理の支援や②職場環境のアセスメント、④作業工程の把握・分析といった項目で、差が大きくなっておりました。
8ページの(2)業務を行う機会では、同じく障害特性に応じた支援や障害者御本人に対するアセスメント等、本人支援の項目が高くなっております。9ページですが、助成金を活用した活動経験の有無別で集計をしたところ、活動経験有りのほうが全般的に業務を行う機会も高くなっておりました。特に、④作業工程の把握・分析や②職場環境のアセスメント、⑥支援ツールの作成といった項目で、差が大きくなっています。
10ページの(3)スキル不足を感じることがあるかという項目については、本人のアセスメントや障害特性支援、職場環境のアセスメントの順で、スキル不足を感じるという回答が多く見られました。これを、助成金の有無別で比較しますと、全体的には活動経験有りのほうが高くなっているのですが、特に、⑦新たな仕事の切り出しや職務の再構成、⑩体調・服薬管理の支援、⑥障害や職場に応じた支援ツールの作成で、差が大きくなっていました。
12ページの(5)助成金を活用したジョブコーチとしての活動経験の項目を、今の助成金の有無別で聞いて分けています。約2割の人が、現在又は過去に活動していたという結果になっておりました。13~15ページは、活動状況や、活動していない人に理由を聞いた結果になっております。
16ページは、研修を受講した動機について聞いた結果になります。研修を受講した動機は、職場定着や就職に向けた支援を行うためというのが多く、助成金を活用したいという人は約4割でした。17ページの研修の効果としては、約9割の人が「非常に役立っている」「役立っている」と回答しており、大変高い評価となっております。役立っている理由と役立っていない理由をそれぞれ聞いたところ、「役立っていない」と回答した19人のうち75%は研修で学んだことを活用する機会がないということで、研修を受けたが現場で活躍されていない方も含まれていたという結果になりました。
(4)は、科目別の効果を聞いたものになります。どの科目についても満足度が高く、特に「障害特性と職業的課題」「就労支援のプロセス」で満足度が高くなっておりました。
19ページについて、他の研修の受講の経験を聞いたところ、JEEDでやっています「就業支援基礎研修」は26.1%と最も高くなっており、またサポート研修についても約2割の方が受講していることが分かりました。20ページは、今後受講したい研修科目を聞いたところ、「ジョブコーチ支援に活用できる技法」が最も高く、次に「アセスメントの技法と支援計画の策定」が高くなっていました。
続いて、21ページからのⅡ企業在籍型の結果に入ります。企業在籍型は、822人の方に御回答いただきました。22ページは、特例子会社の有無と所属について聞いたところ、特例子会社に勤務している方は約4割いらっしゃいました。23ページについて、(6)担当している業務を聞いたところ、「障害者への仕事の指示・業務管理」が最も高く、次に「雇用管理」ということで、比較的現場の方、同じ部署で働いている方が多い印象です。24ページでは、業務経験を聞いております。
25ページ、26ページは、周囲から期待されていることを聞いたところ、障害特性に応じた支援や人間関係、コミュニケーション支援、本人のアセスメント支援など、本人支援の項目が高くなっております。これを助成金の有無別で集計したところ、活動経験有りのほうが訪問型と同じく、全般的に高くなっております。特に、企業在籍型の場合は③の支援計画の作成で、差が大きく出ておりました。
次に27ページの業務を行う機会です。こちらも、人間関係、コミュニケーション、障害特性に応じた支援、本人のアセスメントの項目で、業務の機会が多いという回答が多くなっておりました。28ページは、助成金の有無別で集計したところ、こちらも全般的に活動経験有りの者が高くなっており、特に支援計画の作成で差が大きくなっています。また⑥支援ツールの作成や④作業工程の把握・分析も、差が大きくなっていました。
29ページは、スキル不足に感じることについてです。業務を行う機会が多ければスキル不足を感じることも多くなっており、同じ順位になっております。30ページも、助成金の有無別で比較しますと、全般的に助成金有りのものが高くなっています。特に、支援計画の作成で差が大きくなっており、続いて⑫関係機関との連絡調整や⑥支援ツールの作成で、スキル不足を感じることが多いという結果になっております。31ページの助成金を活用したジョブコーチとしての活動経験ですが、訪問型と同じく、2割ぐらいの方が現在又は過去に活動していたという結果になっております。企業在籍型ジョブコーチ支援で、32~34ページは活動の状況や活動していない理由になっています。
35ページは、研修を受講した動機を聞いたところ、障害者の雇用管理を行うためが7割と多く、助成金活用は3割となっておりました。下のグラフが研修の効果で、「大変役立っている」と「役立っている」をあわせて、約9割の方は「役立っている」と回答しています。36ページに、役立っている理由と役立っていない理由が書かれています。
37ページは、研修の科目別の効果を聞いたところ、どの科目でも満足度が高かったのですが、両者とも障害特性と職業的課題や、企業在籍型では、ジョブコーチの役割や職務分析と作業指導という項目で、満足度が高くなっていました。
38ページについて、他の研修の受講経験を聞いたところ、生活相談員資格認定講習は32%と高くなっており、サポート研修についても2割の方が受講しているという結果になっております。39ページの、今後受講したい科目では、訪問型と同じく「ジョブコーチ支援に活用できる技法」が最も高くなっており、次いで「コーチングスキル」となっておりました。駆け足になりましたが、本研究会に関連する部分を中心に御紹介させていただきました。説明は以上です。
○朝日座長 ありがとうございました。アンケートの集計結果について御説明いただきました。御覧いただいての感想やこれから議論を進めていくためのポイントになりそうな事柄、もうちょっとこの辺りは突っ込んで分析を進めるとおもしろいのではないか等、御自由に御発言いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。口火を切って申し訳ないのですが、今後受講したい研修科目の中で、ジョブコーチ支援に活用できる技法のストレス対処、問題解決技法等というのは、もともと回答肢の中に例示されていたということですよね。
○秋場地域就労支援室長補佐 そのとおりです。
○朝日座長 選択項目は、全体を含めてジョブコーチ支援に必要なスキルですが、それを一度到達した人というか、おさえた人は、更に高度なと言っていいかどうか分かりませんけれども、多様なスキルみたいなものにすごく関心があるのだなというところが面白いと思いました。このストレス対処、問題解決技法というのが、対象者の特性を考えたときに、今日的な課題なので、誘導したかなという感じもしないでもないのですが、前提としてある程度の基盤があって、その上で更にスキルアップしてこういうスキルがほしいというのは、非常に熱心だということが分かるのと、例えば、現場や実際の養成研修で他にどういうスキルが必要と感じ取っていらっしゃるのかということについて、もしあれば教えていただきたいと思います。
また、養成研修の科目別の効果について、職業リハビリテーションの理念は、今回の調査による回答では少し抑え気味だなと感じました。
回答肢のほうは分かりましたので、委員の皆様方から何かあればお願いしたいと思います。では、松為委員、お願いいたします。
○松為委員 分析の中で1つだけお伺いしたいのですが、助成金の活用状況について、毎回分析が出ていますが、これはどんな趣旨があるのでしょうか。助成金を活用し、ジョブコーチ活動をしたほうがいいと、そういった考え方で、この分析が出ているのでしょうか。
○秋場地域就労支援室長補佐 事務局です。もともと本研修の成り立ちが、法律上の助成金の要件の1つという位置付けになっておりますので、助成金の有り無しということで分けて分析いたしました。
また、受講の申込みがたくさんあったときに、助成金を活用してジョブコーチとして活動する見込みの人を優先しておりますので、その2点から助成金の活用有無別で分析をいたしました。
○松為委員 分かりました。
○朝日座長 よろしいですか。ほかにどうでしょうか。感想でも結構です。酒井委員お願いします。
○酒井委員 感想ですけれども、訪問型ジョブコーチの2ページの(3)法人の形態について、社会福祉法人が4割で、株式会社が3割弱ということですが、12年前の前回の調査では、社会福祉法人が85.6%で、株式会社は0.5%です。訪問型ジョブコーチの研修内容を考えるときに、会社の中に入って支援をするということで、いかに福祉を担っている方々に企業文化を知ってもらうかということをベースに私たちは研修を進めてきたのですが、今回の調査で、株式会社が3割ぐらいで、社会福祉法人は前回に比べて半分以下になってきていることを考えると、受講者の層も、この10年以上で随分変わってきていますので、研修内容についても若干何か加味する必要があるのかなと改めて思いました。
○朝日座長 では、小川委員お願いします。
○小川委員 カリキュラムに関連するところは微妙な傾向が見られているので、これからのカリキュラムにどのように組立てていったらいいかは、今はコメントが難しいところです。ただ、全体で言うと、やはり企業在籍型ジョブコーチのほうは、まず、アンケートの送付数が圧倒的に多くなっています。「地域の就労支援の在り方に関する研究会」第2次の報告では、ジョブコーチの養成促進として、企業内でのジョブコーチ活用促進について触れられており、企業在籍型の養成研修をたくさん受けていただいていますので、それについては第2次の報告書の方向性がきちんと実績を上げているというデータとして読み取れるのではないかと思います。
一方で、訪問型ジョブコーチが少し弱くなっているなと感じます。これはもっと質的にきちんと見ていかなければならないのですが、訪問型ジョブコーチのほうで、経験年数の豊富なジョブコーチがどんどん増えて、地域でそのニーズが増えているという傾向が見られません。非常に経験年数の浅い人たちがジョブコーチの研修を受けて、助成金も余り活用されずにいるという状況が読み取れるのではないかと思います。
今回、参考資料2として出していただいた都道府県別の訪問型ジョブコーチの支給実績の情報を見ても、訪問型はかなり弱くなっているという気がします。第2次の地域の就労支援の在り方に関する研究会では、ジョブコーチの支援能力の向上ということで、地域のジョブコーチの支援能力を向上させる必要があって、そのためには地域に経験豊富なジョブコーチを配置することが有効と言われているのですが、そこに配置された主任職場定着支援担当者というのが、実際にはジョブコーチの経験年数の豊富な人をなかなか配置できていないという現状があります。主任職場定着支援担当者が助言を行うべき経験豊富な訪問型ジョブコーチの数が減っているという現状が、今回の調査から少し読み取れたかなと思います。この研究会は養成研修のあり方に関する研究会なので、これ以上の意見は言いませんが、やはり制度として検討していかなければならない地域の就労支援に関する問題が、このデータからも浮き彫りになっているのではないかと感じました。
○朝日座長 初回のキックオフの研究会でも意見がありましたが、全体の就労支援人材の底上げの部分と、今回ターゲットとする職場適応援助者のスキル向上や研修の部分と、これは両方を視野に入れて進めなければいけないけれども、限られた期間の中で、どこにフォーカスを当てていくかということにも繋がってくると思います。改めてお話を伺って、小川委員のおっしゃった前提となる状況というのは、アンケートの結果からもだいぶ浮かび上がってくると思いました。
ほかはいかがでしょうか。では、山地委員お願いします。
○山地委員 ジョブコーチ支援等の業務についての周囲から期待されていることに、アセスメントがありますが、人間関係、職場内コミュニケーションに関する相談・支援と関連性があるように思います。前回もお話がありましたが、精神障害・発達障害の人たちの就労がこれだけ増えた中で、心理的なサポートが必要という話があり、アセスメントというのは、ある程度の数をこなすだけではなく、座学でも分かっていくのではないかと思っています。ただ、その人にどう伝えるかというところまでがアセスメントで、伝える技術、人間関係のコミュニケーションの部分や、そこを調整していくという資質が問われるところは最も難しくなると捉えています。精神障害・発達障害の人たちの根本的な理解について、ジョブコーチに聞いてみたら、精神障害・発達障害の人たちがどういう人たちなのかがよく分からないから怖いと感じているジョブコーチがいるという声をありました。そうした声の根底には、その方たちをどう理解するかということと、どう伝えていくかというスキル不足があり、そのスキルアップに、解決のヒントがあるのではないかと思いました。
○朝日座長 アセスメントの知識で、ある程度状況を把握しても、その素材のやり取りをして初めてアセスメントの結果が共有されていくということですね。そして現場ではその辺りのスキルについてスキル不足というか、不安に思っている方が多いのではないかというご意見です。ほかはいかがでしょうか。また、この調査の結果はこのまま踏まえていきますし、さらに今頂いた意見なども踏まえて分析をしていただくということにいたしまして、お気づきの点があれば、また御発言いただければと思います。
では、次の議題に移りたいと思います。議題の2、ジョブコーチに求められる役割・必要なスキルについてです。同様に事務局から、資料に基づいて御説明いただけますでしょうか。
○秋場地域就労支援室長補佐 事務局です。資料2を御覧ください。第1回研究会で頂きました主な御意見と、さらに御議論いただきたい点をまとめたものになります。まず1ページです。現状とともに、先ほど小川委員からもご発言ありましたが、中長期的な課題とも言える御意見を多く頂きました。第1回の主な御意見としまして、ジョブコーチに求められる役割・スキルは、10年前と余り変わってないのではないかという御意見を岡本委員、佐藤委員から頂いています。
2つ目ですが、征矢委員、朝日座長から、合理的配慮の提供の義務化に関する御意見がありました。ジョブコーチ養成研修の受講者の増加と実際に活動している人との乖離については、小川委員から、企業と訪問型でそれぞれ事情が違うのではないかということで、企業においては精神・発達の雇用が進むことで障害への対応により専門性が求められるようになって、特例子会社の社員だけではなく、一般企業の人も受け入れているというお話や、訪問型については、職場に入って作業支援が必要な対象者が減少してきていて、従来のジョブコーチ支援とはイメージが合わなくなってきたことも要因なのではないかという御意見がありました。
続いて、地域の就労支援体系とジョブコーチ支援については、酒井委員から、ジョブコーチ支援だけではなくて、定着支援事業やナカポツセンターとの連携なども考える必要があるという御意見や、地域によってジョブコーチの活動状況に差があるのではないかという御意見があり、参考資料2に都道府県別のジョブコーチの活動状況として助成金を活用した事業所数を付けています。都道府県で差があり、特に訪問型については、残念ながら令和元年度の実績が0といった県もありました。企業在籍型については、平成29年度は0という都道府県が結構あったのですが、徐々に助成金を活用している所が増えてきていることが見てとれます。
資料2に戻りまして、2つ目のマルです。先ほど酒井委員からも御指摘がありましたが、地域の就労支援体系について、営利法人が増えているという点、3つ目のマルは小川委員からは、就労定着支援事業ができたが、雇用して6か月経過後からしか使えないので、その前にジョブコーチ支援が入って就労定着支援事業につなげるといったような使い方もあるのではないかという御意見、鈴木委員からは、訪問型がずっと入り続けるのではなく、訪問型が支援を行って、今度はその会社の企業在籍型に引き継ぐ形もいいのではないかという御意見がありました。また、松為委員からは、主任職場定着支援担当者について御意見がありました。
2ページに移りまして、特定の障害種別を専門とするジョブコーチの養成について、岡本委員からは、視覚・聴覚障害者へのジョブコーチ支援は根強い課題であって、東京障害者職業センターでは、ジョブコーチ支援の中で視覚障害者への支援割合が増えてきているといったお話があった一方で、2つ目のマルですが、静岡で活動されている鈴木委員からは、自分が活動している地域では、特に大きなニーズがあるという実感がないというような御意見がありました。
3つ目のマルで、岡本委員、佐藤委員から、そういった視覚、聴覚障害者に対応できるジョブコーチの養成を考えたときに、ジョブコーチに点字や手話のスキルを教えるのではなく、点字や手話などのスキルがある人に研修を受講してもらうという方法を考えたほうがいいのではないかといった御意見がありました。4つ目は、松為委員から、精神についても同じようなことが言えるのではないかという御意見がありました。
矢印の下ですが、まとめますと、ジョブコーチに求められる役割・スキルは、この10年間で大きく変化をしていない。一方で、支援対象者の変化が受講者層の変化や増減に影響しているのではないか。3つ目は、地域の就労支援体系の中でジョブコーチ支援とナカポツセンターや就労定着支援事業の役割や連携を整理することは、中長期的な課題である。4つ目は、現行の制度下でも、配置型・訪問型ジョブコーチから企業在籍型ジョブコーチへつなぐこと、ジョブコーチ支援から就労定着支援事業につなぐことといった連携が考えられるのではないか。5つ目に、特定の障害種別を専門とするジョブコーチの養成については、専門的なスキルを持った人にジョブコーチのスキルを付与していくほうが効率的であるので、例えば手話とか点字のできる方にジョブコーチのスキルを付与していくほうが効率的である。そのため、そういった専門性を有する人たちの受講が増えてくるように周知を行うことと、特別枠を設ける等のインセンティブを検討していくことが必要ではないかとしました。
3ページは、「就労支援を担う人材の底上げ」として、松為委員と朝日座長から、就労支援を担う人材は、定着支援事業の関係者や、医療関係者など裾野が広がっているので、就労支援の底上げが必要であって、基礎的なスキルを身に付けられる研修の議論は別途必要であるという御意見。高岡委員からは、病院のほうでも就労にやっと目が向くようになってきたという御意見でした。
山地委員からは、現場でも人材育成が課題であり、ジョブコーチ養成研修は、経験の少ない人でも受講できたり、必ずしもジョブコーチ活動が必須ではないという点で気軽に受けられるという点があるという御意見でした。また、井田委員からは、企業在籍型については、生活相談員資格認定講習の受講を要件にして、ジョブコーチ養成研修では基礎的な部分を省略し、専門的な所だけに焦点を当ててはどうかという御意見がありました。
また、朝日座長からは、先ほどの御発言にもありましたが、中長期的なジョブコーチのあり方を念頭におきながら、環境変化に対応するための研修のあり方に焦点を当てて議論していくべきという御意見がありました。小川委員からは、いろいろな層が受講しているけれども、今回はジョブコーチとして活動するつもりの人を念頭において議論をし、カリキュラムを考え、それ以外の対象者については次のステップとして中長期的な視点で議論をするのがよいのではないかという御意見を頂きました。
まとめますと、1つ目は、就労支援を担う人材の底上げのため、就労支援の基礎的な知識・スキルを習得できる研修を様々な就労支援関係者に受講してもらえるような仕組みは別途議論が必要であり、中長期的な課題である。2つ目として、本研究会では、中長期的なジョブコーチのあり方を念頭におきつつも、現行の制度の中でジョブコーチとして活動の意向がある層を対象とした研修のあり方について議論を行うとしております。
4ページ、2番の現在のジョブコーチに求められる役割・必要なスキルに移ります。第1回の主な御意見では、2つ目のマル、小川委員から、ジョブコーチは障害者本人と企業の双方を理解して調整していく役割であるという御意見、鈴木委員から、職場環境に入っていく支援になるので、障害者本人が働く環境をどう理解して、どう見立てるかが重要であるという御意見、岡本委員からは、精神・発達の支援ニーズが増加しているので、「作業支援型」から「相談支援型」のジョブコーチ支援が増えてきているという御意見がありました。一方で、小川委員から、確かにそういった「相談支援型」のジョブコーチは増えてきているが、相談支援といっても、ナカポツセンターの担当者や病院のカウンセラーによる相談支援と何が違うのかを明確にしたほうがいいのではないかという意見がありました。
6つ目は、岡本委員、佐藤委員から、「相談支援型」によるジョブコーチ支援の場合は、情報を収集して分析するスキルが求められる。アセスメントについては、先ほど山地委員からもありましたが、実地でしか学べないこともあるが、座学によって学べることもあるのではないか。また、本人が気づいてない課題を把握・説明するスキルが求められる。課題を抽出して、どういった課題でつまずいているのか、アセスメントとして整理することが重要であるという御意見がありました。
また8つ目は、高岡委員から、精神障害者は抱えている問題が様々なので、経済的な問題や生活支援など、その他の支援との連携が必要であるという御意見。最後に、小川委員から、精神・発達障害者が増えているが、知的障害者を対象にしたような従来型のジョブコーチ支援のニーズはまだ地方中心にあり、作業支援に関するスキルはジョブコーチに欠かせない要素であるという御意見がありました。
5ページです。まとめますと、10年前と求められる役割・スキルは大きく変化しておらず、ジョブコーチは、本人と企業の双方を理解して調整していく役割である。ジョブコーチは雇用の現場に入っているため、障害者本人が働く環境を理解し、何が課題かを分析する力が必要である。3つ目は、精神・発達の支援ニーズの増加に伴い、作業支援型から相談支援型のジョブコーチ支援が増えてきている。相談支援型の場合は、情報を収集し、分析するスキルがより求められる、としました。
4つ目は、精神・発達障害者に対しては、本人も気付いていない課題を抽出し、どういった課題でつまずいているのかをアセスメントとして整理し、説明するスキルが求められる。5つ目は、そのアセスメントは、実地でしか学べないこともあるが、座学によりベースとなる知識を身につけておくことはできる。6つ目は、精神障害者は抱えている問題が様々なので、その他の支援との連携も必要である。最後は、知的障害者を対象とした従来型のジョブコーチ支援のニーズは依然としてあり、そういったことを教える技術はジョブコーチに欠かせない要素であるというように、まとめさせていただきました。
議題2の中で、さらに御議論いただきたい点です。1つ目は、雇用現場に入り、本人や職場環境のアセスメントを行うということが役割ですが、特にどういったスキルが求められるのかということです。また、研修の中で伝えられることは具体的にどのようなものがあるかということ。2つ目は、ナカポツセンターの担当者や病院のカウンセラーも相談をやるという中で、では、ジョブコーチ特有の役割とは何かという点です。3つ目に、相談支援型においては、情報を収集し、課題を抽出し、分析するスキルが必要とされていますが、具体的にどのようなものがあり、研修の中で伝えられるのは何かということ。カリキュラムの見直しをするに当たって、この辺りを特に具体的に御議論いただければと思います。よろしくお願いします。
○朝日座長 ありがとうございます。前回の議論を的確にまとめていただき、更に議論を深めるべき点についても御提示いただけたと思います。ただいま御説明いただいたところで、皆様から何かありましたらお願いをしたいと思います。議題の2点目のジョブコーチに求められる役割・スキルについては、資料2の「さらに御議論いただきたい点」に集約されていますが、これについてでも結構ですし、ほかの観点からのアドバイス、ご発言でも結構です。
先ほど山地委員がおっしゃったアセスメント結果をどのように、どういう状況の中で伝えていくかというところですが、本人や職場環境のアセスメントを行いますが、それを御本人や職場にどうやって伝達していくかという意味合いの心構えや理解も含めた、そういうスキルみたいなものと理解してよろしいでしょうか。
○山地委員 心構えは、とてもいい表現だと思います。アセスメント結果については、本当にこれを分かってもらうためにどう伝えるのかということに細心の注意を払いながらやり取りをします。それがジョブコーチだけが知っているということになっていると、ジョブコーチの独りよがりとなります。働いている御本人が自分のこととして受け取って、自分のことを一番よく分かってくれているという、ジョブコーチに対しての信頼関係を持ってもらうことが必要です。今起こっている職業上の課題をギュッと固められるものと、長期に渡って支援をし続けなければいけないものは、やはり違うと思いますので、議題に当てはめるとすれば短期的に課題を解決するジョブコーチの役割と、継続的に支援していくナカポツセンター若しくは就労支援センターの役割は分けられるのではないかと思いました。
○朝日座長 では、松為委員、お願いします。
○松為委員 資料2を読んでいて、いろいろ考えましたが、いわゆる相談支援型の事例が増えてきています。それと、もう少しアセスメントを大事にしなければいけません。一方では、精神障害・発達障害の人が支援対象者として出てきます。その三者を考えて、すごく思うのは、アセスメントを踏まえて相談するといっても、詳しく見てみると実は、相談の背景には障害に起因したいろいろな問題点が入るはずですよね。例えば統合失調症の人たちにしても、リワークで問題が出てきて、相談を丁寧にやっていくと、そしてアセスメントをしていくと、リワークによって目の前に出てくる課題の後ろにある障害特性といったものをどうしても考えていかざるを得ない面がある気がします。そうしないと、本当の相談支援とは言えない気がします。
そうなってきますと私が思うのは、カリキュラムに、どこまでそれぞれの障害や特性的なものを組み込んでいくのかということです。ただし、それは医学的な診断ではなく、現在の課題を働く上での行動の中でどう捉えていくかや、その背景にある、障害特性的なものをどう捉えていくかということだと思います。やはり、この視点を研修のカリキュラムの中に入れておかないと、相談支援といったときに、今のままではなかなか難しいかもしれません。そして、そういった働く場面における問題を聞くことこそが実はジョブコーチとしての相談の大きな中身ですよね。しかも、アセスメントと絡んできます。そうであればこそ、相談をするときの障害特性を踏まえた上での相談の受入れやコミュニケーションに関するスキルを習得するような科目は研修として必要ではないかという感想を持ちました。以上です。
○朝日座長 では、鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 何点かあります。まず1点目は、ここ何年かは、支援計画の期間が3か月ではなくて、精神・発達の方達は6か月を基本として、更にその後のフォローアップの1年間をセットとして考え、1年6か月ぐらいをスパンとしたジョブコーチ支援を考えることが随分増えてきたなという実感があります。いずれにしてもやはり短期間で障害特性に応じていろいろ考えていくことは同じですが、それが1つ、随分変わってきたなと感じるところです。
2点目は、知的障害者の作業支援の話になりますが、本人の特性をいろいろ説明する機会が増えていると思います。やはり、雇用現場においては仕事が本人に何を求めているかという作業そのもの、仕事そのものを見つめる、見極める力は厳然として、とても重要な要素としてあるような気がしています。
そしてもう1点は、いわゆる相談支援型に対しても、資料2にも書かれていますが、雇用現場で起きている課題をどう解決するかという道筋が本当に重要になってきています。困っていることは千差万別あるわけですが、それに対して、相談でいろいろ対応します。しかし相談に乗るということが中心ではなく、どういう道筋で解決していけば良いのか、そのために地域の支援機関をどう使って等、雇用現場で起きている課題解決の方向性が重要になってくるし、また雇用現場においては、そこで一緒に働いている方たちの労働観や人生観にまで影響を及ぼしているようなことがあったりします。雇用現場でのアセスメントは何だと言われると、うまくまとめられませんが、すごく多岐にわたって深くなっているという実感があります。
○朝日座長 ありがとうございます。では、小川委員、お願いします。
○小川委員 言葉の問題ですが、今回、相談支援型という整理が出てきています。前回の議論のまとめとしては、相談支援型というキーワードはいいと思いますが、やはり福祉の業界で働いていると、相談支援というと相談支援事業ですし、障害のある御本人の話を聞くというイメージが強いと思います。ジョブコーチとして今求められているのは御本人からの聞き取り、職場からの聞き取り、観察と、あとは分析をして要因をはっきりさせて調整していくというプロセスなので、相談支援型という言葉だと、思い浮かぶイメージがやや違ってくると思います。ジョブコーチという言葉も、ジョブのコーチというイメージが強すぎて、実際の現場の役割と、ジョブコーチという言葉のイメージの乖離で、本当のジョブコーチのあり方が浸透していくのに随分苦労しました。今後、ジョブコーチの在り様として、相談支援型という言葉だけが独り歩きすると、また誤解が生じる可能性があるので、今後のまとめの中で、ジョブコーチの在り様の中で、キーワードの使い方を慎重にしていったほうがいいと考えます。
○朝日座長 井田委員、お願いします。
○井田委員 私は最初、ジョブコーチという響きが好きでしたが、自分が企業で障害者の方と一緒に働いて、まさに職場適応援助者だなと思いました。話がそれてしまうかもしれませんが、私は、ジョブコーチは「通訳」のようなものだと思っています。その方が、どういうことで困っていて、それをどうすれば解決できるか。現場で仕事に行き詰まっている時に、「どうしたの」と聞いて、ああ、じゃあこうすればいいと、その場その場で解決しているところは、ナカポツセンターや病院のカウンセラーの方と大きく違うと思います。
主に発達障害の方への支援が中心なものですから、実際に企業在籍型ジョブコーチとして支援している私の個人的な意見になってしまいますが、松為先生がおっしゃったように、行き詰まっている背景にはその方が、誤解されるような言い方をしている場合があります。だから絶対通訳が必要なんですね。悪気がなく言っているのですが、誤解を受けるのです。発達障害の方は、こういうふうに言っているけど実際はこうなんだよと、こういうところで困っているんですよということを具体的に説明する。そして、御本人に難しいことを言ってもなかなか理解してもらえないので、極わかりやすい言葉で、より具体的な言葉で通訳をして聞いて、その方に「こうですよね」というのを復唱する。誤解をすることも結構多いので、そういった形で支援しています。
○朝日座長 ありがとうございます。従来型の作業型(仮称)と比べた場合の相談支援型(仮称)の違いみたいなものが際立ってきてはいますが、本来的な役割は、今お話されているようなところに収れんされるのかなという思いで聞いていました。高岡委員、何かございますか。
○高岡委員 ジョブコーチ支援は、精神障害の場合は延長されて3年弱の間、受けられる形になっています。仕事になじんできて、常勤までステップアップして、もう大丈夫だと思ったときに、実は支援者の方に企業には言えないことを悩みとして伝えていたということがありました。相談支援型の訪問型ジョブコーチという形で、ただただ話を聞く時間ですが、それが本人たちにとってはすごく貴重な時間のようです。常に私は寄り添っているつもりでいましたが、根っこのところは、企業外の方でなければ話せない部分がやはりあったなと、先日また改めて感じたところです。
他職種で支えることが、実際にジョブコーチがいらっしゃることでできたのかなと思いました。もう安心だという決めつけが一番怖いと思いましたので、そこのところを、どのような形で御本人が伝えられるかということも、ジョブコーチの方が中に入って伝えてくださいますが、支援の期限を切れないなということも実感しています。今の制度ではやはり、3か月、6か月、1年、精神障害であればプラスアルファがありますが、そこがゴールではないのではないかとも感じたところです。
○朝日座長 ありがとうございます。松為委員、お願いします。
○松為委員 おっしゃるとおり、確かに用語として適切かどうかと考えます。今お話があったように、本来、ジョブコーチは、いわゆる通訳というような意識的な問題ではなく、企業側と本人側を調整しながら、ずっと伴走し続けていくんですよね。最終的には、本人が人生をきちんと全うしていけるような継続的な支援が必要だと思います。
職業リハビリテーションの世界でいうと、職業リハビリテーションというよりも、職業リハビリテーションカウンセリングだと思います。もともと職業リハビリテーションという学問は、ボケーショナルリハビリテーションでしたよね。それが例えばアメリカなどでは、やがてはボケーショナルリハビリテーションカウンセリングとなり、最近ではボケーショナルを抜いてしまって職業リハビリテーションカウンセリングと言っています。つまり、単純に職業リハビリテーションというのではなくて、カウンセリングを踏まえた上でどうやっていくか、その視点が必要だと思います。
もっと拡大して、現場でやっている相談機能、しかも働きも踏まえた相談機能も含めて考えると、今度は、キャリアカウンセリングとか、キャリアコンサルティング的な視点が必要だと思います。そういった意味では、もっとキャリアカウンセリング、キャリアコンサルティング的な視点を導入したほうがいいかなと個人的には感じています。
○朝日座長 ありがとうございます。佐藤委員、お願いします。
○佐藤委員 相談支援型につきましては、先ほど小川先生がおっしゃったように、実態と今の使われ方が少し乖離しているところがあります。ジョブコーチによる相談支援と病院のカウンセラーなどによる相談支援はどう違うのかとありますが、ジョブコーチの場合、相談といっても、御本人だけではなく事業所との相談も含めて支援をするところに違いがあります。そういった意味でいうと、ここで言う相談支援型であっても、従来の作業支援が中心の場合であっても、平成20年度の障害者の一般就労を支える人材の育成のあり方に関する研究会報告書の8ページにまとめられているジョブコーチの役割と大きくは変わっていないのではないかと思います。
前回も、私どもの機構で実施しているスキルアップ研修で、相談を中心として支援を行うときに特に必要だと思われる知識について、幾つか取り上げていることをお話しました。繰り返しになりますが、スキルアップ研修では、養成研修にも一部含まれていますが、応用行動分析、認知行動療法について、ストレスについてどう捉えるのかということや、職業カウンセリングについての科目を入れています。これからジョブコーチを始める方に養成研修の中で、それらを全部やるのは余り適切ではないと思いますので、一定程度経験を積んだ上で、そういった知識の必要性やどうスキルを使えばいいのかということが、分かるようになった段階で受けていただいて、更に実務で使っていただくのがいいのではないかと思います。
○朝日座長 ありがとうございます。岡本委員、お願いします。
○岡本委員 現場でジョブコーチが育っていく様子を見ている立場としては、教える側には到達点が見えるので、たくさんの知識を伝えてしまいたくなりますが、実務をやってから更に受け止めやすくなる、消化しやすくなる、支援者として育っていく点があるので、分かりやすい階段をきちんと作ってあげて、知識を実務に下ろしていけるようなカリキュラムは必要だなと思います。
現行の養成研修を消化するだけでも、一杯一杯になっている人たちも現に多いので、いろいろな先生がおっしゃったところをいかに、うまくオンする仕組みを作っていくかということが肝になるのではないかと思いました。
○朝日座長 ありがとうございます。「さらに御議論いただきたい点」の2点目のジョブコーチに求められる役割や必要なスキルについては、皆さんから大体御意見を頂いたということでよろしいでしょうか。従来の作業に焦点を当てるタイプのように具体的な作業を通じてというよりは、その背景にある事柄も含めて相談していく必要が、より出てきていると感じました。この辺りをどう整理していくかということだと思います。
ただ、どちらにしてもジョブコーチが他と違うのは、ジョブなるものが仲介をしているということです。そのジョブは、やりたい人だけでなく、やらせたい人もいないと成り立たないので、ジョブを必ず仲介し、そこで調整をしていくことがジョブコーチの役割なのかと改めて感じました。
ではジョブコーチは、コーディネーション機能を果たしたらいいのではないかとか、すぐにいろいろなものを付けたくなりますが、根幹のところがしっかりしていれば、それぞれの個人の経験なり、蓄積によって向上していくスキルもかなりあると思います。余り、これがないと本物のジョブコーチとは言いませんよというのではなく、発展系みたいなものを想定できるのもありかなと、今お話を伺って感じたところです。
この点については一旦整理をさせていただいたということで、次の議題に移ってもよろしいでしょうか。お気付きの点がありましたら、また御発言をいただければと思います。
議題の3点目は、養成研修のカリキュラムの見直しについてです。まず事務局から、論点の説明をお願いします。
○秋場地域就労支援室長補佐 事務局です。資料2にお戻りください。6ページの3番の「ジョブコーチ養成研修のカリキュラムの見直し」の説明をいたします。今の御議論の中でも、この部分にも直結するような御意見を頂きましたので、少し飛ばしてお話させていただきます。第1回の主な意見の中で、3つ目のマルですが、以前のカリキュラムは知的障害者への支援がメインだったので、どういった作業ができるかを考えることが焦点でしたが、現在は精神・発達障害者への支援ニーズが増えてきたため、研修のカリキュラムの中で、様々な工夫をしていただいているという御発言が、小川委員からありました。
また朝日座長からは、研修カリキュラムに、手話や点字などを盛り込んで、オールマイティーに活躍、対応できるようにすることは難しいので、障害への配慮やどう専門家に繋いでいくかといった普遍的な内容の習得が必要ではないかといった御意見がありました。井田委員からは、助成金の申請方法等の実例を示されると、より活用が進むのではないかといった御意見がありました。
スキルアップ研修では、小川委員から、現在でも時間数は42時間以上となっており、時間数を増やすのは難しいのではないか。相談支援に対応した内容も盛り込むとなると、現在の時間数では修められないので、スキルアップの仕組みを作るべきではないかといった御意見がありました。
最後に、佐藤委員からは、先ほども御発言がありましたが、JEEDのスキル向上研修では、認知行動療法等の内容をカリキュラムに入れているという御紹介がありました。
7ページにまとめていますが、「相談支援型」の場合、情報を収集し、分析するスキルがより求められる。アセスメントについては、座学によってもベースとなる知識を身につけておくことはできる。2つ目に、精神障害者への支援ニーズが増えてきたので、研修のカリキュラムの中で、研修内容を様々工夫している。3つ目に、研修カリキュラムに、障害種別に専門的な対応ができるよう盛り込むのは難しいので、障害への配慮や専門家にどう繋ぐかといった普遍的な内容を含めることが必要である。4つ目は、助成金の申請方法等の実例を示すと活用が進むのではないかということ。最後ですが、相談支援に対応した内容の追加は、現在の時間数の中では修められないので、別途にスキルアップができるような仕組みを考えるべきではないかといった形でまとめさせていただきました。
「さらに御議論いただきたい点」ですが、現行の研修カリキュラムの中で変化に対応するため、各養成研修機関でどのような点を工夫されているか。研修カリキュラムを現在のニーズに対応したものにするために、減らしたほうがいい、あるいは増やしたり、充実させたほうが良い点はどういったものがあるか。最後に、スキルアップのお話が先程もありましたが、具体的にどういった仕組みが考えられるかという点を御議論いただきたいと思います。現行の研修カリキュラムを、参考資料3にお付けしています。よろしくお願いいたします。
○朝日座長 ありがとうございました。それでは、委員の皆様方から御発言いただく前に、「さらに御議論いただきたい点」の最初のマルになりますが、各養成研修機関で工夫して取り組んでいる状況などについて、どのような工夫をされているか、あるいは見直しのヒントになる事柄を情報提供いただきたいと思います。佐藤委員、小川委員、酒井委員、鈴木委員からそれぞれ少しお話を頂ければと思います。佐藤委員からよろしいですか。
○佐藤委員 私からは、当機構で行っている養成研修を含む職場適応援助者養成のための研修の全体について説明させていただきます。
養成研修については、モデルカリキュラムが示されていますので、それに沿って行っています。このため、大幅な変更や独自科目の追加などは行っていません。少し変更した点もありますので、そういった変更点、それから当機構の研修の特徴、工夫点の3点からお話させていただきます。
まず当機構の研修の特徴ですが、カリキュラムをジョブコーチに必要な基本的な知識、支援技法に関する講義を中心とした集合研修と、集合研修で学んだ内容をより確実なものとするための演習等を中心とした実技研修に区分し、集合研修は総合センター又は大阪のセンターで、実技研修は所属事業所の所在地である地域センターで実施しています。実技研修を行う地域センターは、配置型ジョブコーチを配置して、ジョブコーチ支援を自ら実践していますので、実技研修ではジョブコーチ支援を行っている場を活用して、実際の支援事例を用いて行っています。また地域センターは、その地域で活動している訪問型ジョブコーチや企業在籍型ジョブコーチと日常的に連携して、お互いに学び合いながら支援を行っていることから、養成研修修了後は、特に経験の浅いジョブコーチの方には、カウンセラーや配置型ジョブコーチと一緒に支援を行いながら、OJTで支援スキルを伝えています。研修の受講者の方は、養成研修修了後はジョブコーチとして活動することになりますので、地域センターは、この実技研修の実施を通して受講者との関係構築を図り、研修修了後に、ジョブコーチ活動を円滑にスタートできるようにサポートをしています。
続いて、工夫点や留意点についてです。いずれも当たり前のことばかりですが、まず養成研修は科目数が大変多いので、集合研修の開始時に、各科目がジョブコーチとして自分が行うことになる支援とどのように関係しているのかということを解説しています。また、訪問型ジョブコーチの研修では、当機構の場合は、就労支援の経験が1年以上ある方に受講していただいていますので、ジョブコーチとしては更に事業主支援の視点を養っていただくというところに重点を置いています。企業在籍型ジョブコーチの研修では、所属企業の状況、特例子会社なのかそうでないのか、あるいはジョブコーチの方が組織内でどのような立場におられるのか、人事などの管理部門にいるのか、障害のある方と一緒の職場で働いているのか、あるいは障害者雇用をしている複数の事業場をサポートしている立場なのか等、様々な立場で活動され、立場によって役割が少し異なるところがありますので、企業在籍型ジョブコーチに講師をお願いしている科目では、可能な限り多様な立場の方に講師をお願いして、必要に応じて機構の職員が補足をしています。
次にカリキュラムの変更点についてです。別紙1に訪問型、別紙2に企業在籍型のカリキュラムを示しました。別紙1、別紙2の表の区分から時間までは現行のカリキュラムで、一番右に当初のカリキュラムからの変更点を記載しています。支援対象者の変化に合わせて変更した点が幾つかありますが、そのほかは受講者にとって、より分かりやすく、より効果的な研修となるように、実技研修から集合研修に移すなど、カリキュラムの再編成を行っています。
続きまして、職場適応援助者養成のための研修体系について御説明させていただきます。当機構では、ジョブコーチ支援の質の維持や向上、地域の支援力の向上に向けて、研修体系を別紙3のとおり作っており、養成研修の上位研修としてジョブコーチの実務経験1年以上の方を対象に支援スキル向上研修を実施しています。これは平成20年度の障害者の一般就労を支える人材の育成のあり方に関する研究会の提言を受け、平成21年度に新設をしたものです。支援スキル向上研修のカリキュラムには特段の縛りがありませんので、当初は平成20年度の研究会で示されていたモデルカリキュラムにほぼ忠実な形で実施していましたが、より実態に合うようにカリキュラムの改編はかなり大幅に行っています。別紙4に示しているのは、現在のカリキュラムになります。先ほども触れましたが、作業支援以外でも、働く・生活全般に係る複合的な課題に対する支援が必要になってきているということと、セキュリティの関係で作業現場に、特に訪問型ジョブコーチがなかなか入れないということもあるため、御本人や会社の方との面談を通じて支援を行うということが大変多くなっています。ジョブコーチには相談を通じて、情報を収集、整理、分析する力が必要になりますので、先ほど申し上げたような科目をカリキュラムの中に入れています。
さらに、平成30年度からは全国の地域センターにおいて、養成研修修了者サポート研修と支援スキル向上研修修了者サポート研修を開始しています。これは継続的な研修の機会が欲しいといった声や、ジョブコーチ同士で意見交換や検討をしたいといったニーズに応えるものとしてスタートしたもので、各地域センターが地域事情や受講者のニーズに応じて、関係専門領域に関する講義やケーススタディなどによって構成しています。それぞれ年3回ずつ開催しています。養成研修と支援スキル向上研修の受講は、それぞれ1回のみになりますが、サポート研修は何回でも受講していただくことができますので、中には毎回参加していただいている方もいらっしゃいます。そうした機会を通じて、ブラッシュアップを図っていただければなと期待しています。なお、支援スキル向上研修とサポート研修は、民間の養成研修を修了した方にも受講していただくことができます。
このように当機構では、ジョブコーチ関係の研修を各種実施しているところです。タイトルにもありますようにジョブコーチの養成のための研修ではあるのですが、養成のためには、こういった研修だけではなかなか難しいところがあり、養成研修修了後に実務に就いていただき、実務経験をしっかり積んでいただいた上で、さらに上位の研修を受けていただくことがとても重要だと思います。このことは、今までの研究会でも言われていましたが、先ほど御紹介いただいたアンケート調査でも、養成研修修了後のスキルアップに有効な活動として、実務経験を積むという回答が多かったので、養成研修を修了した御自身でもそのようにお考えなのだなということが分かりました。ジョブコーチの養成においては、研修と実務の両方がうまくリンクするように、いかにその仕組みを作っていくのかということがポイントになると思います。以上です。
○朝日座長 ありがとうございました。小川委員、よろしくお願いいたします。
○小川委員 背景として、まず平成18年の自立支援法、就労移行支援事業者の誕生、就労移行支援事業が訪問型ジョブコーチを配置して、企業と連携して障害のある人を送り出していく。これが私たちにとって、ジョブコーチ養成の一番のベースというか、出発点でした。それと同時に平成17年の精神障害者のみなし雇用、平成16年の発達障害者支援法の施行により発達障害・精神障害の方たちの雇用が動きはじめて、この法律の効果というか、成果が出はじめたのが、ちょうど4、5年後ぐらいかと思います。雇用市場に精神障害・発達障害の方たちが随分入ってくるようになり、対象者の変化が起こる。その対象者の変化を見ながら、一方で、規制緩和で企業が就労移行支援事業に参入できるようになったことにより、企業は自分たちの持っているノウハウでもサポートできるということで、支援者の状態が随分変わってきました。大企業が障害者雇用に、より積極的になって、どんどん採用しようとするようになり、後で起きてくる問題をどう解決しようかというところに就労支援の施策の重点が置かれてきました。その10数年間の流れの中で、ジョブコーチというものも揉まれて本当にいろいろ変わってきているのではないかと思っています。
次に、支援対象者の変化です。知的障害から、精神障害及び発達障害の方の支援へと対象者が変化し、仕事を一から教えるのではなく、なぜうまくいかないのかという原因を発見して助言するという支援にシフトしています。それから、生活面やストレス対処、自己理解など、支援対象者の支援の範囲が随分広がってきています。また知的障害の方の業務内容も、現業系から事務系、ホワイトカラー系の仕事に変わってきています。さらに、特例子会社でも集中型・グループ型の雇用管理から、分散型の雇用管理に随分変わってきて、支援対象者の変化に応じて、ジョブコーチの在り方も変わってきています。
受講者の変化については、レジュメを読んでいただくと大体分かるのではないかと思いますが、都市型、大企業型の受講者が多くなり、地方の社会福祉法人で就労移行支援事業所をやっている方たちの参加がだんだん減ってきている印象があります。JC-NETでは、地方の社会福祉法人の方たちが参加しても、余りにも全体の雰囲気が都市型すぎて、逆に地方の事情とちょっと違うという感想を持って帰られるということも増えてきているような気がします。
次のスライドですが、こうした変化を踏まえてどのようにプログラムが変わってきているのかということです。私は、ジョブコーチの基本的な役割は、随分変化してきていると思っています。これについては講義科目として、「職場適応援助者の役割」と「就労支援のプロセス」で変化に対応しています。それと合わせて、方法と技術も変化してきていて、これは講義・演習科目の、「アセスメントの支援と支援計画の作成」、「企業へのアプローチと事業所における調整方法」、「職務分析と作業指導」の3つで対応しています。
簡単に、どう変えてきているかを御紹介します。講義科目の職場適応援助者の役割では、直接支援のモデルからどちらかというと職場環境を調整していくモデルに、ジョブコーチの在り様をコンセプトが違うというように伝えています。ジョブコーチというよりも、むしろ言葉としてはジョブのコーチよりもコーディネーターやアドバイザーのほうが近い感じになってきています。下の所に小さな文字で書いていますが、モデルカリキュラムでは、タイトルと教えるべき内容を箇条書きで書いてあるのですが、それをどのように、どこに重点を置いて教えるのかということは余り明確になっていません。自由度が高くていいところではありますが、質の担保という意味では、今後のことを考えると、もう少し具体的に、何をどのように教えるのかという縛りを掛けたほうがいいのかもしれないなとも思います。
次のページです。もう1つの講義は就労支援のプロセスです。ここもジョブコーチの在り様に大きく関わるところなのですが、内容は余り変わりません。基本的な就労支援のプロセスは、やはり就労相談からフォローアップに至るまでの流れだということを、きちんと教えます。就労移行支援事業、あるいは就労定着支援事業など、福祉のほうの制度では、報酬単価で分けられていくことによって、比較的就労支援のプロセスが分断されて、支援のスタッフが自分の担当している部分しか見られない、そこしか知らないという現象も起きてきているように思います。全体のこういった流れの中で、あなたはここを担当している、あなたが今担当している問題の原因は、実はアセスメントのところにあるのです、マッチングのところでミスが起きているからこうなっているのですよ、などといったことをきちんとお伝えして、逆に、プロセスの大切さということを伝える必要がより強く出てきているような気がしています。
続いて、講義・演習のアセスメントの視点と支援計画に関する理解です。これが相談支援型という雰囲気のところなのですが、御本人からきちんと聞き取りでアセスメントをして、その内容をきちんと解釈をして、訪問型の場合には企業側の担当者に、その人の特徴と必要な配慮等を伝えていく。企業在籍型の場合には、採用に関わる立場の方もかなり増えてきているので、採用のところで、面接できちんとその方の特徴を把握するとともに、必要に応じて就労移行支援事業所からこんなことを聞き取る必要がありますというような、支援者との連携によって、採用時にアセスメントをするということについても強調しています。実際に、企業在籍型と訪問型でチームを組んで面接のロールプレイを行うようにしています。その仕事というのは、結局、雇用管理計画、支援計画を作ることにつながって、そこを丁寧にやることによって、ジョブマッチングがきちんとできるということの基本をお伝えするようにしています。ただ、企業在籍型の場合、きちんとお伝えしないと、ロールプレイでも、この人はもう採用できないと、アセスメントと言うよりも採用できるかできないかの見極めをする演習にもなってしまうので、演習の前提・目的をきちんとお伝えすることが重要になっています。
次のページも講義・演習科目ですが、これが仕事に直接関わる部分で、課題分析と作業指導です。これは4~6時間でやっていいとされているところですので、当初は課題分析と作業指導、分かりやすく教える技術、システマティック・インストラクションをかなりの時間をかけて行っていましたが、一から仕事を教えるという機会が随分減ってきています。また、実際の現場ではここまで教えないというフィードバックも随分いただいています。現在はそこをシンプルにする分、作業場面における行動観察についての演習を新しく設けています。実際に作業をしている場面をビデオで見せて、注意の障害や記憶の障害、コミュニケーションの問題などで、いろいろ小さなトラブルが起きている場面を見ていただいて、この場面の中にどんな問題があるのかということを、まず見つけていただく。それは一体どんな障害特性と関連しているのかということについて、講義の知識を基にシートに書いていただく。それを今度は御本人に対して、御本人が拒否的にならないように、うまくフィードバックをして伝えていくという演習を組み立てています。ただ、本人に対して助言して行動を修正する部分については、時間不足で養成研修の中では十分やり切れておらず、発達障害の就労支援セミナーというJC-NETで行っているセミナーで、対応しています。
そのような変化をベースに、修正が必要と思われるポイントについて、全体に時間数は増やせないのですが、加えたい内容は多いなと思います。時間数を減らしてもよいかなと思われる項目については、講義科目の職業リハビリテーションの理念と就労支援のプロセスは統合してもいいのではないか。企業文化の理解と職場における雇用管理なども、もしかしたら統合できるかなと思います。職務分析と作業指導は、かなり時間を頂いていますが、短縮するか、あるいはこの中に先ほど申し上げたような行動観察で、その方の障害特性をきちんと把握して調整していくような演習を入れたらどうかなと思います。
増やしたい内容として、障害者の権利とジョブコーチの職業倫理を入れてみました。やはり今、いろいろなビジネスやコンサルなども入ってきて、とにかく低コストで障害者雇用率を上げればいいという経済合理性の考え方が存在することは否定できない状況になっていると思います。ジョブコーチというのは、決してそれをサポートするものではなく、障害者基本法の障害者の働く権利、それから共生社会の実現、そこを意識しながら雇用率を達成しなくてはならない企業と障害のある人をサポートしていくという基本スタンスを、ジョブコーチ養成研修で押さえないといけない時代にいよいよなってきているなと感じているところです。相談及び面談による問題の解決や、ストレスの把握とストレスマネジメントなどの科目も入れられるかなと思いますが、この辺はスキルアップ研修に入れないとあふれてしまうのではないかと思います。スキルアップ研修の科目として、こういったものを作っていって、民間の養成研修機関もスキルアップ研修を実施できるように、スキルアップ研修を受けたということが、何らかの形で受講生にとってオーソライズされて、メリットがあるように、そのような組立てにしていただけると有り難いかなと思います。以上です。
○朝日座長 ありがとうございました。続いて、酒井委員、お願いいたします。
○酒井委員 私からは大阪障害者雇用支援ネットワークと、全国就業支援ネットワークを中心にお話をさせていただきます。
受講者の変化ですが、先ほど小川委員が冒頭にお話されたこととほぼ同じなのですが、加えて言うと、医療機関の方の受講も増えているかなという印象を持っています。特にOTの資格を持たれている方の受講が増えていると思います。また、定員以上に応募があった場合は、結果としては選考からは漏れるのですが、例えば放課後デイ等で子供の支援をされている方々が、子供たちが数年後に就労に直面するといったときに、就労についてのノウハウを自分でも知っておきたいということで、児童分野で支援をされている方からの応募もあります。ただ、現実としては、なかなか定員の中に入るのが難しい場合が多いです。ここ数年は、生活困窮の方の支援をされている方の応募もあることが、今の応募者の動向かなと思います。
研修内容は、モデルカリキュラムに沿ってやっていますので、大きく変わっている点はないのですが、軸としては、人を知る、仕事を知る、人と仕事をつなぐ、この3本柱でカリキュラムを組んでいます。「人を知る」という前に、支援対象者を知るということと、支援者が自らを知るというか、まず我々はなぜ支援をするのかという根源的なところから入っています。なぜ人は働くのかなどといったところも含めて、人を知るということと、どのような視点でアセスメントをするのかということを最初のほうで時間を割いてやっています。
支援の対象者は、やはり初期は重度の身体障害や知的障害の方が中心でしたので、事例研究についても、身体障害・知的障害の事例を中心にやっていたのですが、現在は、精神障害・発達障害の事例もかなりウエイトを高めています。精神障害については、就労のことをよく分かっている精神科の医師に講義を担当していただくということもやっています。
また、全国就業支援ネットワークは、以前は、都市部ではなく、岩手や島根など、全国のあちこちで、受講機会が少ない所に出向いて研修をしていましたので、地域の産業動向を踏まえた本人の職業能力開発というような科目も設けています。
「仕事を知る」というところでは、社会福祉法人でずっと福祉に軸足を置いてやっていた方々に、仕事や企業というものをどう知ってもらうかというところにエネルギーを注いでいます。例えば、税理士の先生に、賃金はこうして決まるとか、最低賃金を障害のある人たちがもらうためには、こんな仕組みになっているということを学びます。また、実際に教える-教えられる体験をしてもらって、どう分かりやすく伝えるのかということを自ら体験をしてもらうなど、やはり事業所実習での気付きは、すごく大きなものがあります。
事業所実習においては、企業のアセスメントについて、アセスメント用紙をかなり詳しく作ってやってもらいます。特に訪問型の受講者は、支援対象者のアセスメントは経験があるのですが、企業のアセスメントといった場合、どういう切り口でやっていいか分からないという方も多いので、事業所実習ではしっかりと学んでもらっています。企業在籍型の方も、事業所実習については、違う会社に行くといろいろな学びがあるということで、それぞれ事業所実習で気付いたことを全体で共有をするという時間も取っています。大阪で実施する場合、事業所実習は、全国から来られている場合が多いです。地方から受講に来られた方が、事業所実習で特例子会社に行かれても、特例子会社の環境は、地方の小さい会社ではなかなか作れないため、余り参考にならないという意見もいただくこともあります。事業所実習先の割り振りについては、地方の方は、できるだけ中小企業等、特例子会社ではない企業に行っていただくというようにするということが、工夫している点として挙げられるかなと思います。
「人と仕事をつなぐ」というところでは、人、物、仕組みの中で、障害のある人の力をどう最大限に活用して仕事に就いてもらうのかということです。オリジナル科目としては、障害者を取り巻く動向や、最終日にプレゼンテーションを行っています。訪問型にせよ、企業在籍型にせよ、個々の受講生は何らかの課題を抱えて研修に臨まれていますので、ジョブコーチ研修を受けたからといって、その課題が一遍に解決することはあり得ないのですが、課題解決に向けてこの研修で学んだこと、現場に持ち帰ったときにその研修をどう活かすかということについて、プレゼンテーションを行っています。A4用紙1枚でプレゼンをしていただくのですが、今までの受講者の方の分を全部保存しています。任意で行っているアドバンスト研修ではプレゼンのその後の検証ということも行ってもらって、PDCAを回すということもやっています。アドバンスト研修では、制度がどんどん変わっていく中で、制度のアップデートについての知識を得ることや養成研修後に現場に戻って、助成金を活用して支援される方や、助成金と関係なくジョブコーチ的支援をされる方もおられるのですが、その事例を中心に研修を行っています。
最近の受講者の傾向で1つお伝えし忘れましたが、特例子会社などキャリアアップを支援する中で、特例子会社の社員で障害のある当事者の方の受講が大阪では増えてきているかなという傾向があります。車椅子の方の場合は、実習事業所先の配慮や、頚損の方の場合は車で研修会場まで来られるのですが、コインパーキングのチケットを取ることができないというときに、一緒に同行することなどの配慮をしています。以上です。
○朝日座長 ありがとうございました。最後に、鈴木委員からお願いします。
○鈴木委員 くらしえん・しごとえんの鈴木です。研修についてですが、私たちの法人自体がジョブコーチの支援事業を中心にやっているため、雇用現場で日々直面したり、困っているという話がベースになってきます。恐らくそうしたことが、いろいろな人たちがジョブコーチとして活動する際に直面するであろうことだということで、カリキュラムの中に絶えず入れ込んでいるところです。研修は、ジョブコーチとして活動するということを主眼とした中身になっていますから、逆に訪問型ジョブコーチでの加算対象が目的の方には、随分ポイントがずれているのだろうと思っております。そのようなことを前提に、説明させていただきたいと思います。
研修の大まかな流れと工夫点というのが対になっています。現場で困っていることがどこにあるのかということで、申込みの段階でいろいろな事例、困っている課題や受講理由を確認し、2週間前に、講義資料と合わせて、しおりという形で受講生と講師の皆さんに届くようにしています。そして、できる限り、受講生のニーズに近いケースをいろいろな所で取り上げていただくようにしています。
初日と2日目では、理念や基礎的な法規、障害特性の基本的なところをしっかり押さえていきながら、3日目から演習に入るという形を組んでおります。また、演習では可能な限り、受講生のニーズに沿った形で事例を入れています。
実は、以前は6日間連続の研修だったのですが、地域の就労支援の在り方に関する研究会第2次のときに、6日間連続の研修は企業の方たちがしんどいという声があり、それ以降、3日・3日というインターバルを取って開催するようにしました。前半の3日間では、座学や室内の演習が中心になりますが、その中で基本的なところを提起し、その後に1週間から10日ぐらいのインターバルを取るような形にします。後半の初日は、ジョブコーチ支援を実際にやってみます。模擬体験ではないですが、アセスメントをして計画を立てて、記録を書いてナチュラルサポート等の事例を随時、受講生のニーズに応じた形で取り入れていくということでやっています。そして5日目に実習をして、6日目の最終日にケーススタディをします。ケーススタディでは時間数を多めに取っておりますが、そこでも受講生の中から出てきたケースを2、3例ほど挙げて、それに対してどういうように対応していったらいいかという流れでやっております。
工夫点の6でも触れておりますように、ジョブコーチとして直面するであろう事例を研修のベースにおくということで、その都度、行き当たりばったりのような形の事例です。基本的な事例があるわけではなくて、そのときに集まった方たちの中で一番困っているところをやります。後半のほうにケーススタディなどのまとめを持ってくるのも、初日や2日目にやった理念や考え方と、現実に困っていることとの乖離をどう修正していくか、どういう視点でその事例を見ていったらいいかというところを、研修の中で修正していくということです。
養成研修をスタートしてから2007年以降、大阪障害者雇用支援ネットワークなどと同じように、毎年1回、修了生のフォローアップ研修をやっています。最初に申し上げたように、雇用現場で困っていること、その解決手段はどういうことなのかという落としどころについて、先ほど小川委員のほうからもありましたけれども、障害者基本法や職業リハビリテーションなどを基軸にして、この事例をどう見るのかという照らし合わせと、それに基づいた解決方法のアプローチというのが、すごく求められてきているという感じがしています。雇用現場に入っていく、現場で直接的な介入をしていくというのは、このジョブコーチ制度だけだと思っていますので、そういう意味で言うと、ジョブコーチの役割は訪問型にしろ、企業在籍型にしろ、非常に重要なものだと思います。
最後に、私たちが訪問型ジョブコーチのあり方として非常に重要だと思っている点についてです。企業在籍型ジョブコーチの方たちも、職業リハビリテーションの考え方などはすごく重要視されて学んでいくと思いますが、企業在籍型ジョブコーチには、雇用されている従業員でもあり、企業在籍型ジョブコーチでもあるという二面性があるわけです。そうなったときに、例えば訪問型だったら、客観的にいろいろなことを見たり、言いたいことも言ったりできるかもしれません。ところが企業在籍型の方たちは、そうした点は、非常に悩ましいところだと思います。そこをどういうように見ていくかというのは、非常に重要な視点だと思っています。
あと、研修の組立てとしては、研修修了生の更新制度についてです。養成研修の制度ができてもう13年にもなるわけですから、1回受けたらもういいのかとか、スキルアップ研修といったような形で、きちんとした制度化があると、ものすごくいいのだろうと思っております。以上です。
○朝日座長 ありがとうございました。4人の委員から具体的な実践の中で工夫されている点、あるいは少し踏み込んで、そこから見えてきた課題の提起なども含めて御発言いただきました。大変豊富な御発表を頂いたので、どこから議論したらいいかという感じもあるかもしれませんが、どの点でも結構ですので、委員の皆様方から何かお気付きの点があれば、御発言を頂きたいと思います。松為委員、お願いします。
○松為委員 幕張の研修についてお伺いしたいと思います。資料別紙の4です。スキル向上研修が210時間というのは、非常に多いですよね。これは1人の講座についてトータル1,320時間やるのか、それともばらばらになっているのか。それから、例えば精神発達にしても210時間といったら、中身は具体的に何なのか、もう少し詳しく教えていただけるといいと思います。お願いいたします。
○佐藤委員 時間は全部で1,320分です。続けて4日間でやっています。おっしゃるとおり、このカリキュラムはちょっとざっくりし過ぎな感じですけれども、精神障害者のアセスメントと支援技法は、先ほども申しましたようなストレスと認知行動療法などを使って具体的にどのようにアセスメントや支援をしているかというところを取り上げています。発達障害者のアセスメントと支援技法は、職業センターで開発しているアセスメントシートなどを活用し、障害特性や職場での課題のアセスメントのやり方などを取り上げています。330分の職場適応に関連する理論・技法は、今は2つに大きく分けていて、1つが応用行動分析で、もう1つは職業カウンセリングについて取り上げています。
○朝日座長 よろしいですか。
○松為委員 はい。
○朝日座長 それでは、酒井委員お願いします。
○酒井委員 先ほど、大阪障害者雇用支援ネットワークと全国就業支援ネットワークについて発表させていただきましたが、今回はジョブコーチ連絡協議会の立場で参加しております。ほかに「南高愛隣会」と「なよろ地方職親会」という2つの実施機関があります。今回、南高愛隣会の方に研修の工夫等をお聞きしたところ、南高愛隣会は所在地が長崎なのですが、長崎では就労移行支援事業所が支援をして半年以内でジョブコーチ支援を一時使って、その後に就労定着支援事業所につなげるというモデル的な流れができているとおっしゃっていました。
また受講者についてですが、直近の4月からジョブコーチの助成金を使った活動を見込んでいる場合は、JEEDが開催する研修のほうを受けられるということで、受講生の層としてはすぐにジョブコーチ活動をしない方が受けに来られているとのことです。我々民間が実施している研修とJEEDが実施している研修のすみわけというか、違いはどこにあるのかというのがあります。有料と無料という大きな違いはあるのですが、役割としてどのような違いがあるのか、もし厚労省のほうで何かあれば教えていただきたいと思います。
○朝日座長 関連する御発言はありますか。そもそもの役割分担とターゲットの違いのようなものが意図されているのか、そうではないのかという政策的な観点も含めて、何かありますか。
○秋場地域就労支援室長補佐 事務局です。特に役割に差があるという認識はなく担当しております。
○朝日座長 ジョブコーチ養成研修を受けられた方がジョブコーチと見なされるので、JEED系のジョブコーチとか、民間育成系のジョブコーチというのは何も関係ないですよね。
○小野寺障害者雇用対策課長 当初は国が中心となり、セーフティーネットとしてやっていくというところからスタートし、その後、養成数を確保するということで、各機関にジョブコーチの養成をお願いしているという経緯があるのではないかと思います。ただ、全体の研修体系について言うと、例えばスキルアップ研修も含めて措置しているのはJEEDです。民間の養成機関にもいろいろお願いする中で、スキルアップ研修についてもお願いしていくべきかということも含めて、全体の研修体系の再整理のタイミングにきているのではないかと思っております。それはこの研究会の場というより、別途に検討の場が必要だと思いますが、その中で改めて、JEED及び民間の養成機関にお願いする位置付けに、一体どういう意味があるのかということも含めて整理させていただきたいと思います。
○朝日座長 では、問題提起を頂いたということで受け止めさせていただきます。山地委員、お願いします。
○山地委員 私は、当事者にお話を頂くようなものがカリキュラムにあったほうがいいのではないかと思います。私のように精神障害者を長く支援している者は、当事者に学ぶところがとてもあるのです。就労移行や就労支援に乗ってくる方たちというのは一見元気そうで、病気や苦労してきた背景の話などが本当に見えません。そういうところに立っている方たちを支援していくので、土台になるというか、ジョブコーチの資質に関わるようなところに、良い研修があることが望ましいと思っています。
精神障害・発達障害の方たちの障害者雇用というのは、新たに障害者というラベルが貼られることでもあるのです。そこを苦汁で選択している人たちにとって、支援という一方通行のものは、とても受け入れ難いとか、その人を支援するときにどういうイメージを持つのか、想像力を働かせるのかというところがないと、そもそも支援はできないはずです。カリキュラムとしては当事者なり家族が、その方の就職の手前までの背景を伝える等、良い研修、良い人材を育てる意味で、カリキュラムの中に入れたらどうかと思いました。
○朝日座長 小川委員、お願いします。
○小川委員 御意見はもっともです。ただ、限られた時間の中で、当事者に御発言いただくと、そのインパクトというのはやはりすごく大きく、その御発言が典型的なイメージをつくることもあると思います。当事者に御発言いただく機会をこの短い時間の中に入れることのプラス面とマイナス面を考えて、躊躇しているというか、どういった形で入れたらいいかと思っています。
それから、「当事者」と言っても様々な障害をお持ちの方がいらっしゃると思うのです。ジョブコーチというのは一応全部の障害を対象にしなければいけないので、どこにポイントを置いたらいいかというのは悩みどころだと思います。
○山地委員 どんな研修でも、やはりいい講師に会えるというのはとても大事なことなので、当事者は誰でもということではなく、例えば職業準備のようなことを知っている人とか、定着というテーマで話せるような人を厳選して、そういう方たちの声が何とか届かないかということを感じます。
○朝日座長 井田委員、お願いします。
○井田委員 三度、当事者と一緒に発表したことがあります。確かに、インパクトはすごく強くて、非常に教えられることが多いです。私も発達障害の方への支援期間が長く、11年になりますが、当事者から「こうだよ」と教えてもらうことが多いのです。基本の研修か、スキルアップ研修かは別として、30分程度でも、どこかで当事者に話していただくというのは非常にインパクトがあるのではないかと思います。
○朝日座長 高岡委員、お願いします。
○高岡委員 私もその意見はすごく大事だと思います。そして、成功例ではなくて失敗例として出していただくと有り難いのではないかと思います。やはり失敗した経験のある方は、どこで失敗したかというところに、私たちも焦点を当てて支援をしていくところがあります。精神障害の方を支援していく中では、やはりコミュニケーションですごく悩まれる方が多いです。特例子会社のように、皆さんが同じように一緒にやるわけではなく、1つの業務をそれぞれで行うときに、どうしても疎外感を感じるところがあります。普通の世間話をしていてもそこに入れない、自分はそこですごく疎外感を感じるということをおっしゃいます。その都度、私は、「報・連・相」がちゃんとできているかどうかで、コミュニケーションを考えてほしいということで振り返ってもらったりしています。
限られた時間ではあるけれども、失敗して苦労した方のお話を15分でも入れてもらうと、また違うのかなと感じます。
○朝日座長 征矢委員、4人の委員の皆様からの工夫点や今の議論なども含めて、何かお気付きのこと、御感想でも結構なので、一言頂戴してもよろしいでしょうか。
○征矢委員 少し関連しますが、平成24年10月に施行された障害者虐待防止法とか、平成28年4月に施行された雇用の分野での障害者差別禁止とか、合理的配慮の提供義務というのがあります。会社と当事者のコミュニケーションがうまくいかないその根底には、会社がジョブコーチの意見を吸い上げることができず、当事者の不満として、結果的に私どものほうに来てしまうということがあるのではないかと思います。ジョブコーチ支援においても、会社が当事者の思いや苦労を加味して考えていただければ、うまくいくのではないかという気はいたしました。
○朝日座長 先ほど小川委員からも、発言がありましたけれども、ジョブコーチの職業倫理という点では、ジョブコーチは、障害のある当事者と雇用する当事者である企業の方との2者に、間違いなく向き合わなくてはなりません。そういったときに、障害のある方の第一義的な声にも耳を傾け、企業の人の声にも耳を傾ける。実際にはそこでかなり矛盾したり苦労したりするわけですよね。それこそ、そこでどういう立ち位置でそれらの問題に向き合っていくかというところが、おそらくジョブコーチの職業倫理の一部を成すような気がします。例えば、カリキュラムの中に方法論として、あるいは1つの視点として当事者の声を入れてみるということも考えられるのではないかと、今の議論を伺って思ったところです。要素としては、各養成機関が実際にこれまでいろいろ取り組んで、苦労されてきたところの発展型としてある議論なのかと思いました。
4人の委員からの御発言や発表の中にも、この研究会で議論すべき論点があったと受け止めさせていただいて、それを含めて次の議論の素材にしていただければと思います。皆様、よろしいでしょうか。
  ありがとうございました。では、ちょうど時間がまいりました。まだ御意見があるかもしれませんが、本日は、この辺りで終了とさせていただきたいと思います。事務局では御意見を踏まえて整理をしていただき、次回の研究会の準備をお願いできればと思います。それでは次回以降の日程等について、事務局からお願いします。
○秋場地域就労支援室長補佐 次回の開催は11月4日の水曜日、10~12時を予定しております。会場は近隣が会議室になる予定ですが、こちらは追って御連絡させていただきます。
○朝日座長 小川委員、どうぞ。
○小川委員 要望ですが、高等教育機関におけるジョブコーチの養成を本学でさせていただいております。大学における社会福祉士養成の科目から就労支援サービスがなくなるとか、逆行する流れがある中で、大学のような高等教育機関でジョブコーチを養成するということも、やはり非常に重要なテーマです。7分程度で結構ですので、第3回か第4回のどちらかで、論点に含んでいただけると有り難いと思います。
○朝日座長 それでは、今の小川委員からの御発言も踏まえて御準備、御対応をお願いしたいと思います。以上をもちまして、本日の研究会は終了させていただきたいと思います。お忙しい中、長時間ありがとうございました。