第2回 職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 リスク評価ワーキンググループ 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和2年11月17日(火) 14:00~16:00

場所

労働委員会会館 606会議室
(東京都港区芝公園1-5-32)

議題

  1. 国によるリスク評価のあり方について

議事


○植松評価室長補佐 ただいまより、第2回「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 リスク評価ワーキンググループ」を開催いたします。なお、本日は名古屋委員と山岸委員より御欠席の御連絡をいただいております。また、今回も感染予防のために一般傍聴席は設けず、各委員の席の間隔をあけて、マスク着用にて開催させていただきますので、何卒よろしくお願いいたします。それでは、以降の議事進行は城内先生にお渡ししたいと思います。城内先生、よろしくお願いいたします。
○城内座長 皆さん、こんにちは。それでは議事に入る前に、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○植松評価室長補佐 本日もペーパーレスでの開催とさせていただきます。お手元にタブレットを配布しておりますが、その中に資料を格納してございます。まず、議事次第、資料一覧というものと、資料1から資料4、参考資料ということで格納しております。参考として、第1回の検討会資料も格納しております。
 それから、机上配布として、GHSに関する資料をお配りしているのですが、こちらは分析官からフォローをお願いします。
○吉澤国際動向分析官 皆様にGHSに関する資料の一式をお配りさせていただいております。最初に、クリアファイル自身が資料の一部で、裏に、ここに張ってあるポスターと同じGHSのラベル表示についての説明が簡単に書かれております。
 こちらが、厚生労働省と経済産業省が共同で作っているパンフレットで、労働安全衛生法においては、平成12年からSDSの交付を義務付けておりますが、こちらが国際条約であるGHSに準拠して行うこととなっておりますので、このようなパンフレットをお作りしたところです。
 次に、化学物質リスクアセスメント事例集というのがありますが、こちらは労働安全衛生法第57条の3において、化学物質のリスクアセスメントについてはGHSを活用するということになっておりまして、こちらの事例集にも化学物質の危険・有害性であるところのGHSについて、その活用事例が載っているところです。
 続いて、何枚かリーフレットをお付けしておりますが、最初にラベルでアクション運動に関してです。この会場の入った所にもポスターを貼っておりますが、毎年ラベルを見て製品の危険・有害性についてちゃんと把握しておきましょうという運動をしているところです。さらに、そちらを支援する立場から、電話あるいはメールによる相談窓口、事業所への訪問支援を行っています。また、セミナーを毎年行っておりますが、10月に3回行いまして、その状況、昨今の新型コロナの状況を反映しまして、11月以降集合開催はせずに、Web上で動画配信という形で行うということで現在準備中です。
 実はポスターに関しては、私の所に4部ほどございますので、もし欲しいという方がおられましたら、先着4名様ということになりますが、ご提供できますので、よろしくお願いいたします。
○植松評価室長補佐 資料の説明は以上です。
○城内座長 皆様、よろしいでしょうか。それでは本日の議事に入りたいと思います。本日の議題は、「国によるリスク評価の在り方について」です。事務局より説明をお願いいたします。
○内田化学物質評価室長 資料1を御覧ください。本日はリスク評価の今後のあり方ということで、前回、4つほどワーキングでの検討事項をお決めいただきましたが、その1番目ということで、リスク評価について御検討いただきたいと思っております。2枚目にⅠからⅤまで示しておりますが、このうちⅡからⅤについて、4つのテーマについて御議論いただきたいと思っております。
 次のページを御覧ください。Ⅰに書いてあるものは、これまでの規制のあり方に関する検討会も含めた整理とか、あるいはワーキンググループ等での意見について整理したものです。1ページ目は、第1回のワーキングの後に、11月6日に「あり方検討会」を開催いたしました。そこで化学物質規制体系の見直しに関しての議論のまとめということでお出しさせていただいておりますが、中身については、前回のワーキングで御説明した内容とほぼ同様ですので割愛させていただきます。
 2ページ目については、前回のワーキングで大前委員から御提出いただいた資料ですが、そういった内容ですとか、あるいは前回の御意見も踏まえて、3ページ目は規制の仕組みということで、以前に三角形の資料をお出ししており、前回のワーキングでも御意見を頂きましたが、あの資料だと上のほうが危ないというような、逆に下のほうがそれほどリスクは高くないというような印象を受けてしまうといった御指摘も頂きまして、抜本的にこういう形で見直しをしています。上にあったものが一番左のほうにありますが、個別管理物質というものですし、右のほうに自律管理物質として書いていますが、極端に分けておりますが、3つに区分して、左から2つはラベル・SDS、リスクアセスメントの義務対象、今は673ありますが、これを3,000まで増やすという目標を掲げております。
この案については2つに区分されるということで、1つは一番左で、ばく露限界値を指標とした管理ということで、物質ごとにばく露限界値を設定して、それに基づいて管理を行うというものです。2つ目は、ばく露限界値を設定する情報が不十分な物質ということで、中段に書いていますが、十分な安全率を見越した暫定ばく露限界値を指標とした管理ということで、こちらについては物質ごとということではなくて、例えば粉じんとか、そういったまとまりで暫定のばく露限界値を設定して、それを踏まえて管理を行うといった区分です。一番右は「有害性情報がない」と書いていますが、全くないということに限らず、情報が少ないとか、あるいは努力義務に係る物質についてもここの中に入ってくる形にはなります。そういったものについては、矢印に書いていますが、できるだけ国によるGHS分類を進めることをして、そういったものは順次義務対象になって、なおかつばく露限界値の設定につながっていくという形になっております。
 この中で、一番右の四角で囲っておりますが、2つ目の●に書いていますが、「製造・使用主体による有害性情報の収集及び国への提供」ということで、これについてはまた後で御議論いただきたいと思っていますが、ちょっと誤解があると思いますので訂正させていただきます。「製造・使用主体」と書いていて、製造しているメーカーだけではなくて、使用している企業などにも、こういう義務が掛かるのかという御指摘を頂いたところですが、ここのイメージは製造あるいは輸入している業者を対象に、こういう有害性情報の収集などをできないかということで考えているところです。
 4ページ目を御覧ください。こういった今までの整理とか御意見等も踏まえまして、リスク評価については今後このような方向で見直しをしていく必要があるのではないかということで、イメージを整理しております。左のほうは今までの体系ということで、特に黒い枠で囲った所ですが、リスク評価をして、それをもとに特別規則への追加ということで進めてきましたが、今後については、どちらかと言えば、その前のGHSの分類とか、ここに書いている自律管理の取組を行う上での判断材料について、国としてしっかり定めていくという部分を強化・重点化していく必要があるということで、こういった項目について本日は順次御意見を賜りたいと思っております。
 5ページ目、6ページ目についてです。前回のワーキングにおける御意見ということで、このリスク評価に係るものを幾つか整理しております。1つ目は対象物質・着目する有害性ということで、義務対象を3,000に拡大するに当たって、いきなり全部というのはなかなか厳しいので、グルーピングをして、労働災害が起きる可能性が高いものから優先して進めるべきだというご意見、2つ目は、そういうものを検討するに当たって、労働災害についてどのようなものが多いか、どういった所で起きているかなどを参考にすればいいのではないかといったお話、それから、個別管理の追加に関して、重篤な労働災害が多発ということをお示ししましたが、どの程度の人数で線引きするかはなかなか難しいといった御意見がございました。
 2点目のばく露限界値ですが、国が決めるばく露限界値については、産衛学会の許容濃度などを参考に、それプラス実現可能性を加えることが必要ではないかといった御意見とか、海外でもいろいろな研究が行われているので、そういうデータも含めて総合的に判断する必要があるといった御意見、ばく露限界値が設定できない物質についても、衛生基準値を設定すべきではないかといった御意見があったところです。
 6ページ目を御覧ください。経皮吸収に関することで、皮膚吸収がある物質については、基本的に生物学的モニタリングでばく露限界値を考えるべきではないかといった御意見、一方で、芳香族アミンなどは揮発しないので、作業環境測定、個人ばく露測定ではなかなかつかめないので、いろいろ工夫して、違ったツールでつかまえる必要があるのではないかといったお話がございました。
 最後の有害性に係る情報の収集ということで、国の役目はございますが、それ以外に、事業者においても、ばく露限界値策定に必要な有害性情報を創出することを努力義務とすべきではないかといったお話とか、規制外の物質の場合に災害調査が実施できず有用な情報が取れないといったお話、それから、有害性試験にも関わってくる話ですが、ばく露限界値がない物質については、化審法で持っている反復投与毒性の情報も活用していく可能性があるのではないかといったお話がありました。それから、化審法の枠組みでは短期の試験はやっているけれども、私どものような長期試験は行っていないなど、それぞれの目的でそれぞれの試験が組み立てられているということで、1つの物質については総合的に見る仕組みができていないといった点、最後に、化学物質の情報については、NITEで一元的に収集されて、多くの情報が集約されているといったお話があったところです。
 こういった御意見も踏まえて、今日は4つのテーマについて御議論いただきますが、まず1つ目として、ⅡのGHSの分類です。それから、モデルラベル・SDSの作成、ラベル・SDS義務対象の拡大です。一連のつながりがありますが、これらのことについて、今後どう進めていくか御議論をいただきたいと思っております。
 7ページ目を御覧ください。まず、この3つのうち、一番下のラベル・SDSの義務対象に関して、実はこれはあり方検討会のほうで、7月に一定の方向性については整理されている状況です。2の所にございますが、丸1から丸3、高い区分の危険性・有害性がある、これまでに労働災害を発生させた化学物質である、国内で輸入量、生産量が多い化学物質であるといったようなことを中心に優先順位を決めて、順次義務対象物質を拡大していくべきではないかという整理を頂いているところです。
 こういったことも踏まえて、8ページ目を御覧ください。その前段となるGHSの分類、あるいはモデルラベル・モデルSDSについて、どのように今後進めていくべきであるか御意見を頂きたいと思っています。
 8ページ目はGHS分類の現状について整理しております。厚労省、経産省、環境省で連携をして、年間150物質程度、ただし、その多くは再分類ということで、新規のものは20物質程度という形になっております。そういった形で、これまでGHSの分類なり、それを踏まえたモデルラベル・モデルSDSを作ってまいりました。(2)に書いていますが、そうした整理をした結果についてはNITEのホームページで公表しているということで、3,000物質を公表している状況です。また、参考に書いていますが、こうした取組を進めるにあたっては、関係省庁等連絡会議という所でいろいろと検討されながら進めているという状況です。
 次に、9ページ目を御覧ください。海外における状況ということで、EU、米国、中国について記載しております。(1)のEUの所にありますが、調和分類ということで約4,000物質のGHS分類がされていて、この調和分類が設定されている物質の場合については、基本的に各企業が分類などを表示するに当たっては、危険・有害性の分類結果に従う必要があるということで、国内ではあくまでも国のGHS分類は参考という形になります。EU、中国も同じような仕組みですが、その結果に従う必要があるということです。それから、REACH規則で登録の対象となる物質を年間1トン以上製造する場合は、欧州化学品庁に登録を行う際に、分類及び表示の情報も届け出るといった対応になっているというところです。他方、米国については、特に国がGHS分類を実施しているという状況にはありません。
 こういった国内外の状況も踏まえて、3の所にありますが、GHS分類の促進、あるいはモデルラベル・モデルSDSの作成促進に向けた論点ということで、5つほど掲げています。こういった点について御検討いただきたいと思っております。1つ目は、新たな物質を対象とする場合、どのような物質を選定すべきか。例えば危険・有害性の種類、労働災害の発生、製造・輸入量、用途、取扱い方法、物性などを書いておりますが、どういった要素を考慮すべきかといった点です。
 2点目は再分類で、情報の更新ということで、括弧書きで書いていますが、現状では3,000物質ある中で、年間に100数十物質を更新しているということで、全て更新するのに、この計算でいくと20年ぐらいかかるといった状況ですが、今後こういう取組を進めるに当たって、どのような頻度で有害性情報の確認なり更新をしていく必要があるのかといった点です。
 3点目は、今後そういう物質を増やす、あるいは情報の更新をどんどん進めていくという中で、有害性情報の収集、情報発信などをより効率的に実施していくためには、どのように対応すべきかといったようなことです。
 それから、GHSの分類などを進めるに当たって、製造・輸入事業者等による有害性情報の収集とか当該情報の国への提供を求めていくことが考えられるのではないかと思っておりまして、前回もそういう御意見があったところです。こういったことについて、どのようにしていくべきかといった点です。最後に、GHS分類などを進めていく上で、どのような点に留意していくべきかといった点です。このような点について御議論いただければと思っています。
 それから、Ⅲの所です。ばく露限界値の設定及びこれに基づく管理ということです。10ページ目を御覧ください。現行ということで、関連する話として管理濃度ということです。特別規則等に定められている物質のうち、100物質程度は管理濃度というものを定めております。作業環境測定の結果を管理濃度と照らし合わせて区分しているという状況ですが、この管理濃度の設定に関しては、丸1に書いています産衛学会の許容濃度、丸2のACGIHが提言しているばく露限界をもとに、更に加えて、次のパラに書いていますが、設定プロセスが明確であり、かつ科学的根拠により提案がなされているものということで、その下に欧州委員会のものも書いています。こういったものも参考にして、特に、その下に書いていますが、例えば産衛学会の許容濃度などと比較しても提案年が新しいとか、そういった状況も加味して設定されているところですし、なおかつ、そういう値の設定に加えて、試料の採取方法とか分析方法も設定、見直しを実施しているということで、11ページ目、12ページ目には、これまで設定した管理濃度について幾つか掲載しています。特に、1回決めたものをそのままということではなくて、順次、情報の見直しがあれば管理濃度の引下げなどの対応を実施している状況です。
 13ページ目を御覧ください。そういったものも参考にして、今後、ばく露限界値を設定するに当たって、どのように決めていくべきなのかということで論点を書いています。(1)は、個別物質ごとに定めるばく露限界値についてです。丸1許容濃度、ACGIHが提言しているばく露限界、その他、科学的根拠により提案されているものを参考に設定することが考えられますが、このような考え方でよいか。特に、前回、実現可能性という御指摘もございましたが、そういったことも踏まえて、どのように設定していくべきか。なお、参考として、許容濃度などが定められている物質ということで、数百物質あるという状況です。
 丸2が、国が専門家の意見を聞いて決定するということでよいか。丸3、どのような物質を優先していくべきか。丸4として、そういう値を設定した場合に、そのばく露限界値と比較するばく露濃度については、どのような手法で測定なりを行って管理していくべきなのかということです。前回も話があったかもしれませんが、実測でいいのか、あるいは推計でいいのか。それから、マスクを使用する場合とマスクを使用しない場合で区分けしていますが、特にマスクを使用する場合は、実測なり推計の値に、マスクの防護係数などから求めた濃度をばく露限界値と比較する形になるかと思います。特に、実測なのか推計でいいのかといったことについても、御意見を賜れればと思っております。
 14ページ目を御覧ください。もう1つ、暫定ばく露限界値ということで、これは物質のことではなくて、あるまとまりについて、例えば粉じんなどといったものについて、ばく露限界値の設定ができない物質について、そういうものを設定することについて、11月6日の検討会のときに、なかなか難しいのではないかという御意見もあったところですが、そういう十分な安全率を見越した「暫定ばく露限界値」を設定することについてどう考えるか。
 丸2に、その値の決め方について、特に粉じんについては、参考に書いてあるような指標がありますが、蒸気、ガスといったものについてはどのように設定するか。丸3として、そういうものの設定に関してどのような点に留意すべきか。6日のあり方検討会の中では、少しこれについてもお話がありまして、エビデンスの構築を丁寧に行うべき、あるいは最新の知見に基づくべきといった御意見がありました。丸4として、「暫定ばく露限界値」を遵守することを義務とすべきか、努力義務とすべきか。このようなことを論点として掲げております。
 15ページ目を御覧ください。経皮吸収に関する取扱いということです。経皮吸収のある物質に関するリスク評価に係る現状ということで、ここに書いてあるような方針に即していろいろと検討は進めておりますが、まだこういう手法で経皮のリスク評価を行うべきという整理がされている状況にはありません。そういった中で16ページ目ですが、論点を幾つか書いています。
丸1については、体系図をお示しし、ばく露限界値などを設定するというお話をいたしま したが、経皮吸収勧告がある物質についても、そういうばく露限界値の設定とか、これに基づく自律的な管理についてできるのかどうか、どのように対応すべきかといった論点です。
丸2として、特に第1回のワーキングにおいては、皮膚吸収のある物質について、生物モニタリングでばく露限界値を考えるというような御意見もございましたが、尿とか血液中における代謝物等の測定値をもとにした生物学的モニタリングによって自律的な管理を行うことが本当に実行可能であるのかどうか。経気道ばく露と違って、経皮の場合についてはばく露の程度の管理が実態上困難であるため、ハザードによる管理を基本とすることが現実的ではないかといったことを書いております。
 丸3として、そういったものを基本とする場合、ハザードの程度ということで、皮膚吸収の定量的評価などの評価が重要となるのではないかといったことを書いていますが、こうした点について、御検討いただければと思っております。
 17ページ目を御覧ください。最後の論点です。個別管理物質の追加ということです。丸1ですが、これまでワーキングの議論で、基本的に個別管理物質への追加はしないということだけれども、一定の要件を満たした場合には検討するということで、アとイを例として提示させていただきました。ただ、いろいろとこれまでの検討を踏まえると、本当に特別規則に新たに追加して、統一的な管理手法を法令で個別具体的に規定しなければいけないような物質が本当にあるのかどうか。製造とか使用の禁止、許可といったものは場合によってはあるのかもしれませんが、今までのような特化則といった形で、個別具体的な設定をしなければいけないような物質が本当にあるのかどうかというのは、もう一度よく考えなければいけないかなと思っております。
 特に丸2に書いていますが、今回の見直しは、前回もお話いたしましたが、個別管理物質を一旦設定すると、リスク、有害性がよく分からない自主管理の物質に移行して労働災害が起きるという、いたちごっこというようなお話をいたしましたが、個別管理に位置付けると、その物質だけが危ないというような印象を持ってしまう。そういう認識で、余り有害性が分かっていない物質に移行してしまうといったようなところがあるものですから、今後いろいろと自律管理を中心とした見直しを行っていくという方向性になっていますが、そうした中でも、引き続き本当に個別管理を設定する必要があるのかどうかというのは、よく御検討、御議論いただきたいと思っておりますし、私どもとしては、仮にそういうものがあるとしても、この段階でその条件を類型化するというよりは、個別事案ごとに都度判断するということが適当ではないかということで、以前お示ししていた考え方から少し方向性が変わってきておりますが、そのように現在は思い至っているという状況です。ということで、こうした論点について御議論いただきたいと思っております。
 資料2から資料4については、前回のワーキングでも御意見がございましたが、こういうものを検討するに当たって、どういう所で労働災害が起きているのかということで、参考となる資料をお付けしております。資料2については、業ごとに、どういう物質で災害が起きているかを区分したものです。特に多いところとしては、製造業の下から3つ目にある化学工業で、全体として47です。SDSの義務対象、義務対象外、特定できないものというのでも比較的多くございます。それ以外に、その下にある食料品製造業で54、建設業で50。こういったような業種で多く災害が発生しているという状況です。
 今のは急性の毒性などに係るものですが、資料3は遅発性ということで、職業がんの労災の補償状況です。こちらは、どちらかと言えば規制外の物質というよりは、既に個別管理になっているような物質による災害の状況が中心になっています。
 資料4については、化学物質による労働災害の事例です。これは、既に私どもの職場の安全サイトで公表しているものを掲示させていただいております。内容を見ると、爆発なり引火といった事例とか、今回議論をしている規制外の物質の吸入による中毒とか、そういったものが必ずしも十分に書いていないというのが現状です。説明している段階で御指摘を頂いたということも踏まえ公表している資料ではないのですが、タブレットの一番上の参考資料としてありますが、休日4日以上の個別管理物質以外の化学物質による中毒症例というものがあります。労働災害には中毒だけではなくて、眼の傷害とか皮膚の傷害もありますが、時間も限られていたものですから、中毒の症例について、平成29年、平成30年の特別規則以外の物質による症例ということで30事例ほど整理しております。左から順に、業種、対象となる化学物質、それらがSDSの義務対象であるか否か、災害の発生状況を記載しております。必ずしも十分ではないかと思っておりますが、こうしたものも参考に御議論いただければと思っておりますので、よろしくお願いいたします。長くなりましたが以上です
○城内座長 ありがとうございました。それでは、委員の皆さんから御意見を頂きたいと思いますが、今の全体の説明について、何か御意見等がございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、今御説明いただいた個別のテーマについて御議論をお願いしたいと思いますが、まず1つ目のテーマの「GHS分類の促進、モデルラベル・SDSの作成促進、ラベル・SDS義務対象物質の拡大」について御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。
では、私から口火を切るようですが、裾切値の話が出てきましたけれども、実はGHS、JISで定めている裾切値と法令で決めている裾切値がかなり違う所があります。それは今後、統一する方向でいくのか今のままでいくのか御意見を伺いたいと思います。
○吉澤国際動向分析官 GHSの裾切値だと結構1%を超えるような基準があるわけですが、労働安全衛生法令では、裾切値は1%をある意味下限値の上限にしていて、1%から0.1%の間でそれぞれ裾切値が定められております。これについては、特に議論は出てないのですが、皆さんどのような御意見をお持ちでしょうか。
○城内座長 現状を言うと、GHSの裾切値と勧告の裾切値とJISは違います。また法令も違っています。日本のJISは欧州の裾切値を導入したのですが、それはどちらかというと業者に優しいというか、高いレベルで切っています。それが良いかどうかは別として、国内的には法令の裾切値とJISの裾切値は違うので、やはりちょっと困るなという御意見も結構あったりします。この先どんどん増やしていったときにどうするかというのは、少し議論しておかなければいけないかなと思ってテーマとして出させていただいたのですが、どなたかいかがでしょうか。
○山口委員 山口です。
○城内座長 山口委員、お願いいたします。
○山口委員 今のJISと法令の裾切値が違うということを1つにまとめていったほうがいいのか、それとも議論する必要はないのかという、基本的にはそういう観点でよろしいのですよね。
まず1つ思うのは、国連のGHS文書そのものは、もともと幅がありますよね。どちらにするしないという議論ではなく幅があって、裾切値はここからここまでというような書き方にしてあったのではなかったかと思うのです。そういうこともあったと思うのですが、日本導入の際にはEUの裾切値を導入したといった経緯があったかと思うのです。今、我々民間がこの分類を行う際には、ハーモナイズされているとは思わないですが、やはり海外ではCLPというのがかなり主要に用いられているものであるということから、それと統一されているというのはいいのかなというか、国際商品を作っていく上ではやりやすいと思いますし、2種類、3種類の閾値があるということに対して作業がしにくいというのは、現実としてはあります。
なので、今、世の中というか世界全体でどちらのほうに傾いているのかなということを考えたときに、EUと日本のJISが一緒なのだったら、そちらのほうに法令も合わせるべきなのではないかなという意見を民間としては持ちます。
○城内座長 ここでこうしましょうと決められる問題ではないので。
○山口委員 意見ということなので。
○城内座長 皆さんの御意見をお伺いすれば方向性が出せるかなと思って、ちょっと発言させていただきました。そのほか、御意見はございませんか。義務対象物質の拡大ということは、あり方検討会でもそういう方向が良いということで合意されているのですが、どれぐらいずつ増やすかとか、どういうプライオリティで増やしていくかというのは、この場でたくさんの御意見を頂かないと先に進めないところもあるものですから、御意見をお願いしたいのですが。大前委員、お願いいたします。
○大前委員 今の優先順位のお話は、7ページの2の所だと思いますが、丸1丸2丸3で3つのことが書いてあります。これに加えて、実際に作業者がばく露するリスクが大きいという観点からは、液体でしたら蒸気圧が高いもの、粒子でしたら特にリスクの高いナノのようなものという観点も必要ではないかと思います。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。漆原委員、お願いいたします。
○漆原委員 化審法ですと、1社しか製造していない場合など、その製造量が公表されないので、現場で広く使用している物質でも、そうしたケースをどのように今後考えていくのか検討の必要があると思います。それとは関係ないですが、海外のSDSを拝見すると、例えば保護手袋の透過時間とか、もちろん、プラスチックなのかゴムなのかという手袋の素材も含めて記載しているものもあったように記憶していますが、日本のSDSでそこまで時間が記載されているものは見たことがなかったと思っています。
 そうすると、SDSの記載を見直す、あるいはこれから拡大していくときに、皮膚への影響を考え、そういった情報も入れておくべきではないかということと、もちろん経皮のことを考えると、保護手袋ではなくてゴーグルも含めトータルでコーディネートする必要があるので、そういった情報がSDSで欠かせなくなってくるのではないかなということもあります。そういったことを考えながらモデルSDSを設定していただければと思うところです。以上です。
○城内座長 そのほか、ございますか。甲田委員、お願いいたします。
○甲田委員 経皮の問題はかなり重要な問題で、いわゆるGHSとかSDSでどうやって盛り込んでいくのかというのは、経皮の可能性がある化学物質を取り扱う所では非常に重要な話になってくるのだろうと思うのです。これをこうやれば確実にプロテクションできるとかというような科学的な知見はまだなかったりするわけですから、その辺についてはどういう項目が必要なのかというところを使用者側というか、企業とか、あと海外の知見などを集めてやるしかないかなと思っているのです。これはMOCAの話なのですが、昨年ぐらいからOECDの会議にうちの研究員が行っていて、いろいろとヨーロッパで情報交換をしていると、例えばイギリスの場合には、いわゆるばく露濃度ではなくて、ほとんど代謝物で管理をします。だから、工場の作業者の尿中のMOCAが10μを超えない形で管理しましょうということで、端から管理の仕方がかなり違っています。その上でのSDSの情報の提供とかというのは、かなり重要な話になってくるような感じはいたします。
 もう1つ、手袋の話が出たのですが、手袋というのはオルト-トルイジンのときから行政の指導として非常に挙げられておりますし、自律的管理の1つの方法というか、ツールに多分なると思うのですけれども、現場で見ているとトータルにばく露することが実は多くて、手袋だけではないルートというのもやはり考えなければいけない。そうなってくると、先ほど言った代謝物での確認とかということで、環境管理ではなくて本当に作業管理的にうまくいっているのかどうなのか。そういった情報というのを反映させるルートを持っておかないと、後半の自律管理をどうやったらいいかというような、いろいろなアクションとかツールというか、プログラムはできないような感じがいたします。
○城内座長 そのほか、ございますか。今、ナノの話と経皮吸収の話があったのですが、私の印象だとそれとモデルSDSは結び付かないような気がしています。というのは、作る側がこういう新製品を作ったと言っても、多分そこには物質しか書いていないのです。そうすると、国で分類事業をやるときは物質でしかできないので、例えばナノだと言ってもそれは難しいだろうと思います。やはり、EUのようにSDSを作る側が責任を持って、これを使うときは手袋をしないと危ないとか、ナノだからちゃんとマスクをしないと危ないという情報を出さないといけないわけです。そうすると、今の日本でモデルSDSを、作って使ってくださいと言うだけではどうしようもないというか、そういう感じがしているので、最初に室長から説明がありましたが、逆に製品を作る側から情報を提供するというか、SDSを作る責任というか、そういうのも少し加味していかないと今後はとても難しいような気がいたします。皆さん、御意見はいかがでしょうか。梅田委員、お願いいたします。
○梅田委員 SDSに関して言えば、保護手袋に関して経皮吸収の可能性があるものに対しては、保護具を着用するとしか書いていません。GHSの文書にもそういう形の文言しかありません。どのような保護手袋であるとか、どのようなものなら完全にプロテクトできるのかということに対しては、SDSとは分けて考えないと対処し切れないのではないかと思います。
○城内座長 そのほか御意見はいかがでしょうか。大前委員、お願いいたします。
○大前委員 モデルSDSというのは国が責任を持ってということだと思うのですが、実際に企業が配布するSDSというのは、それプラス先ほどの用途とか、サイズとかそういうものも入れるようにという、そういう規定というか、そこの義務付けをしないと本当に役に立つSDSはできてこないということになると思います。
○城内座長 山口委員、お願いいたします。
○山口委員 モデルSDSの配布に企業の人が本当に対応しているのかと言われると、ちょっと実際には疑問があります。というのは、混合物が意外と世の中には多く存在していて、例えばモデルSDSが3種類あるものを3つのモデルSDSを配るのかというと、実を言うとそういうことをやっている企業は見たことがないのです。これはちゃんと混合物分類を行ってやっているので、そういった3つのSDSに書いてあった情報を集めて1つにするという作業に対して、企業は力を入れているというのが現実だと思うのです。
そのときに、ある程度有害性を自分たちで取ることができる、大きな企業ではそれなりにやれるかもしれませんが、中小企業などにとっては3つのSDSで1つのものを作るというこの作業が重要なのであると。そのためには、モデルSDSというのは非常に重要だと思っております。3,000に増やしていく。さらにもっと増やしていくというのは重要だと思います。それが1つです。
 それから、今議論している義務対象物質に関してどう拡大していくかという内容ですが、有害性の話も確かにそうなのですけれども、危険性のほうは、ここでは議論しないのですか。していいのですよね。
○城内座長 はい。
○山口委員 なぜそういうことを聞いたかというと、参考資料を付けていただいたかと思うのですが、これを見ていくとやはり有害性よりも危険性かなと思ってしまう部分があるのです。中毒とは言っているのですが、使い方、ベーパーでやられているとか、そういったことを考えていくと蒸気圧の情報が必要なのではないかと。そういった物化性状というもののほうが情報として非常に重要なのではないかと、それは、ちゃんとそろっているのかなといったところなどにも焦点を当てながら、先に義務化する化学物質を選定していくというのは、必要なのではないかと思います。
○城内座長 そのほか御意見はいかがでしょうか。大前委員、お願いいたします。
○大前委員 以前にも申し上げたと思うのですが、最終的には各企業がSDSを作って配布することになるのですけれども、そのときに、自分の企業に都合がいいSDSを作るという事例が実際にありますから、そこら辺は何らかの形でチェックする機構というか、それを作らないと正確なSDSが渡らない、古いSDSしか渡らないということになると非常にまずいと思いますので、そこら辺のルールは何らかの形で決めていただきたいと思っております。
○城内座長 中村さん、どうぞ。
○中村化学物質対策課長補佐 今の大前先生の議論にちょっと関連するのですが、ヨーロッパでは4,000の調和分類というのは、基本的にGHS分類について、そこに分類されているものを使いましょうというのが基本ルールになっていると思うのですけれども、今、日本の国によるGHS分類というのは、御説明にあったとおり参考でしかなくて、極論を言ってしまうと、大前先生も御懸念されているとおり、自分に都合のいい分類をしてしまって、それを配っても制度上は問題がないという仕組みになっているのです。今回、自律管理を中心にしていくとなると、国によるGHS分類というのは非常に重要な位置付けになっていくだろうと思っていて、現状はGHS分類義務化ということにはなっていないと思いますが、今後ヨーロッパの調和分類のような形に持っていったほうがいいのか、それとも、やはり企業に独自性を残しておくべきなのかということについても御意見を頂ければと思っています。
○植垣委員 先ほど山口委員からもちょっとお話があったのですが、やはり化学工業等で使う製品としては、混合物がかなりあります。提供いただいているモデルSDS、モデルラベルは、基本的には純物質ということですので、そのままでは使えなくて、中小はそれをグッとにらみながら、大企業であればツールを使ったりして混合物のSDSやラベルを作るのでしょうけれども、そういうものがすぐに使えないような状況だと、ある意味、言い方は悪いですが、こんな感じでいいかという形で、GHSの本を見ながら手作業で作っていくという形になります。
 先ほどちょっとお話がありましたが、SDSで提供していた情報が間違っていたりするとどうなるかというと、場合によっては民事訴訟で賠償責任を求められるケースも出てくるので、我々としてはどういう情報を提供するのかというのは、非常に悩ましいところがあります。そういう意味で、NITEで出していただいているGHS分類の結果を使っていれば、我々としては一応義務を果たして、そういう賠償は求められないだろうという前提でやっているのですが、それが後で、実は古かったから、ちゃんと確認していなかった事業者が悪いと言われると、大企業ではなくて中小企業にとっては非常につらいことになってくる可能性があります。
 NITE分類は、ほぼ全部のエンドポイントについて分類を付けていただいているケースが非常に多いのですが、それが全部適切かどうかというのは、中小企業では見切れないのです。先ほどちょっと大前先生からもお話があったとおり、製品の形態によって有害性とか危険性というのは当然変わってくるので、自分の製品に合った分類が適切にできるのかどうかというのをどのように保証するのかは悩ましいです。そこを是非、当局としては支援をしていただいて、我々がそういう不安感を持たなくてもSDS、ラベルが作れる体制を是非作っていただければと思っています。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。今、混合物のお話がちょっと出ましたので、補足というか、ちょっと考えていただきたいことがあります。第57条でラベル・SDSを付けましょうというときの混合物というのは、義務対象物質しか含んでいないのです。つまり、リストアップされていない物質はやらなくてもいい建付けになっているはずなので、そこをちゃんと。
○山口委員 法的にという意味ですか。
○城内座長 以前は。
○山口委員 すみません、山口です。GHS分類は全体を使ってやりますよね。
○城内座長 いや、そうしなければいけないことになっていないのです。
○山口委員 法的になっていないということですよね。
○城内座長 なっていないと思います。
○山口委員 GHSは全体になりますよね。
○吉澤国際動向分析官 実際の運用としては、本来SDSはその製品についてのSDSなのですが、ただ、実際それは企業にとってはかなり負担なので、成分についてのSDSについて、この製品にはこの物質が何%含まれていて、その物質の危険・有害性はこれこれですよというように、ある意味、運用上一覧表形式でもいいことにしているのです。
○山口委員 日本の場合はそうですね。
○吉澤国際動向分析官 その物質というのは実は673物質にだけ掲載義務があるので、いわゆる法定外の物質についてはそれが何十%含まれていようと書く必要はないというのが現在の制度上の問題です。
○山口委員 制度上の問題だとは思いますね。
○城内座長 制度上の問題で、なおかつ当初はラベルでも、そういうものがあったのです。なので、そこのまず法的な整合性も取ってもらわないと多分難しいのですが、義務対象物質以外のものが入ったときに、それは混合物として計算するのですねということになるのです。そうすると、モデルSDSのない物質はどう扱うのかというところまで話がいくので、ちょっと面倒くさいというか、そこをちゃんとやらないといけないと思います。あとは、御意見はいかがでしょうか。山口委員、お願いいたします。
○山口委員 何度も申し訳ございません。先ほどGHS分類の義務化に関しての意見というか、日本の分類を義務化の方向に持っていくべきか否かというような御質問があったかと思うのですが、今、我々民間で非常に問題となっているのは、GHSというのは国ごとに皆ハザードの結果が違うということなのです。GHSの分類結果が違うのです。これ1つでは全くないのです。どこがハーモナイズされているかというと、マークはハーモナイズされていますが、やり方は国それぞれ全部違うわけです。そこにまた更に義務化されたものが1つ増えることになると。よく我々で問題になるのはお隣の国、大きな中国なのですが、中国の分類だとこうなります、これでなかったら通関させない、こういうことが平気で起こっていることです。最初はEUだけだったのですが、中国あるいはマレーシアと世界で義務化する国がどんどん増えていくに従って、そういった事例が増えて通商に非常に問題が発生しているという事実があります。ですので、私は日本までそれをやるのかというイメージが非常に強いです。
 もともとGHSそのものの考え方というのは、国ごとの義務化を言っているわけではなくて、GHS分類、ハザード分類を行う人たちができるだけのデータを集めて、知っている限りでGHS分類を行えというのが、もともとの国連のGHSの考え方だったと思うので、そこに立ち返るならば義務化する必要はないと思います。以上です。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。
○平林委員 今の国際的にいろいろ基準が違うというお話は、国際的にハーモナイズするというような計画なりはないのですか。
○梅田委員 最初の議論にあった裾切値ですが、2基準あって、日本はほとんど高いほうを取っています。低いほうを取っている国もあります。そうすると、要するに分類が変わってきてしまいます。どういう基準を設けるかというのは国ごとに決められていますので、分類は国によって変わってくるということです。それで、各国のSDSを作らなければいけなくなります。どちらにしろ、その国の言語で書かなければいけないというのもGHSにあります。
○平林委員 そうですね。
○梅田委員 それはもう、致し方ないことなのかなとは思っています。
○中村化学物質対策課長補佐 世界で共通の分類結果になるのが恐らく理想的だと思うのですが、GHS分類というのは正に産業とすごく密接に関わり合う分野だと思いますので、国ごとにいろいろな条件で結果を決めているのだと思います。公明正大なルールだけで決まっているわけではないと思うので、そこがなかなか、世界共通でやることの1つのハードルなのかなと思っています。なので、義務化はできないにしても、要は明らかに問題のあるSDSをどう排除するかというのは、ちょっとまた別に考えていかなければいけない問題ではあるかなと考えています。
○平林委員 なるほど、ありがとうございます。
○植垣委員 先ほど山口委員からも御意見がありましたけれども、ハーモナイズされているのはピクトグラムが割とよく目立つところになるわけなのですが、ラベルをそれぞれの国に作るとピクトグラムを入れることになります。言われているとおり強制分類が国ごとに違うと、出来上がってくるラベルが、文字はそれぞれの国で作るとしても、ピクトグラムは強制分類に応じたものになります。これが異なると、同じようにラベルが貼ってあってピクトグラムは共通なのだけれども、こちらには3つピクトグラムがある、こちらには2つピクトグラムがあるというと、多くのケースで、通関で止められて説明せよという話になってきます。どちらも法律的に、強制的に義務で求められているというのを通関で説明してもなかなか受け入れてもらえなかったりして、通関で非常に時間が掛かったりするケースがありました。
 その辺をどのようにしていけばいいのかというので、例えば、ベンゼンはすごく入っているのに発がん性はないとかという感じになっていると、それはすごく問題だと思うのですが、今までにもお話がありましたとおり、世界で同じデータを持ってきても、皆さん最終的に専門家判断というところで、どちらの分類に転がるかというのは国によってやはり変わってきているところがあって、それはGHS分類もそうですし、許容濃度などでも、論文は世界共通で使われているはずなのに、出てくる許容濃度は国によって違うという形になっています。
 逆に、危険物輸送に関しては、基本的に船舶とか航空輸送は、世界共通で行き来していますので、同じものが使われていて、そういう意味でいうと、輸送は非常に話が簡単になるのですが、本来はGHSもそのようになると有り難いところではあるのですけれども、現状としてはいろいろ御意見を頂いたとおり、国ごとに考え方、やり方が違って、ハーモナイズされていないと。もちろん、我々としては何らかの形で統一していただけるとすごく助かるのですが、事業者単体でどうこうできるわけではないので、国としてそこら辺のところを各国とすり合わせをしていただければと切に思います。
○城内座長 そのほか、いかがでしょうか。
○内田化学物質評価室長 9ページにお示しした論点の中で、1つ教えていただきたいのは、4つ目の○に書いてあるのですが、いわゆる製造輸入事業者に有害性情報の収集とか当該情報の国への提供を求めていくということで、前回のワーキングでも御意見があったところですけれども、現状、我々としては新規化学物質について変異原性試験というところだけの情報提供を求めているというところです。今後そういうGHS分類を国として進めるとか、そういった中で、こうした形で試験を課すのか、あるいは持っている情報があれば任意、義務かはあれですけれども、提供いただくとか、そういった形で幅広く企業の方に有害性情報を提供していくことを求めるということに関して、何か御意見等がございましたら頂ければと思います。
○城内座長 いかがでしょうか。
○甲田委員 今の話に関連してなのですが、遅発性の健康障害です。特にこちらが考えているのはがんなのですが、そのようなものというのはどういう物質を使っているからがんになったという形での情報しかないのですが、それ以外でそういう遅発性の健康障害というのは、実際集めている国もあるのですが、そのような情報というのはある意味貴重かなと思います。IARCが、グループ1にしているものに限定してもいいのですが、そういう形でそういう情報が集められないかなということは、ちょっと考えたりするところです。
○城内座長 ここの意味は、新規化学物質について有害性情報をもっと広げるという意味なのか、例えば先ほどナノの問題も出ましたが、形態が違って、ばく露の形態も違って、生体影響も違うかもしれない、強く出るかもしれないということについてなのかで、方向性が結構違うような気がするのですが、その辺はいかがですか。つまり現状では変異原性試験しか新規化学物質について労働安全衛生法上義務化はしていないのだけれども、果たしてそれだけでいいのかという議論なのか。そうするともっと広い急性毒性とこれとこれと、発がん性と、例えば義務にしなくてはいけないという話にもなりうるわけです。
○内田化学物質評価室長 どちらかと言うと、ここで言ったら、新規化学物質というよりは既存のもの、いわゆる国としてGHS分類を進めていくという観点に立つと、特にGHS分類を進めるに当たっては、例えば製造使用量が多いなど、そういったものを中心に今後進めていくと思うのですが、そうした視点で、新規化学物質に限定するのではなく、既存のそういうものについて幅広く情報を集めるにあたって、なかなか国としても独自に試験をするというわけにもいかないものですから、そうした情報を持っていらっしゃる企業の方に情報提供いただくことに関して、そういう方向でいろいろと制度的に検討していってもいいのか、そこが難しいという御判断があるのか、その辺りの情報を頂ければと思います。
○山口委員 城内先生が言われたように新規化学物質なのか既存化学物質なのかによって、かなり違うというのは当然だと思います。新規のときには事前に取っておいて、通すか通さないかという話にもなりますが、既存化学物質の場合は使っている会社が非常に多かったりすると、いろいろな会社がそれぞれにいろいろな情報を仮に持っていたとすれば、それを集めるのかという議論と、もう1つ、集めるというのはその試験をやってもらうということまで考えて、含めて、ここでは提案されているのかということに関してよく見えないので、もし試験までやれということになると、4社ぐらいで使っていたとして、あるいは作っていた、輸入していたとして、この4社でどうやって試験の費用を負担するのか、あるいは4つ同じ試験をやらせるのかなど、そういった議論にまで多分発展するのかなと思います。もうちょっと限定して、どういった有害性を集め、どういう方法で集めるということを先に議論したほうがいいのかなと思います。有害性というと種類が多すぎて、皮膚吸収、甲田先生がおっしゃられたと思いますが、長期毒性の何をターゲットにするのかなど、そういったところも多分あるのだと思います。その辺を先に話をしていかないと、こちらも話をするのがなかなか難しいなと思います。
○城内座長 GHSの立場から言うと、GHS分類のための新しいデータを取らなくていいでしょうというのは大前提なので、それを日本だけ取りなさいというのはやはりハーモナイゼーションにならないので、それでいいと思います。ただ、事業者さんとしては、多分ものすごいデータを集めているはずなのです。それで分類がちょっと国と違うのではないかというときに、それを提供してもらえるかどうか、そういうことではないのかと私はちょっとイメージしているのですが。
○梅田委員 事業者が積極的に安全性試験をしているかと言われると、多分していないと思います。
○山口委員 それは民間側としては、ごめんなさい、していないと思います。
○梅田委員 例えば、ある有害性を外したいから試験をする、そういうことはやるとは思いますが、分からない、分類ができないというものに対して、わざわざ試験はしていないと思います。
 事業者からデータを集めるという話に関しては、化審法に関しては安衛法の番号も書いて届出しますので、その辺り、リンクは取られていると思います。ほかでデータを取るとなると、REACHで登録しているものに関してはREACHのデータがあると思いますが、難しいのは、REACHはそのコンソーシアムを組んで、枠組みの中で使っているのです。片や日本はそういう枠組みがない中で、A社、B社、C社があって、A社、B社はそのデータを持っているけれども、C社は持っていない。C社は丸々試験もせずにデータが使えるとなると、不公平感が出てくるのではないかなと思います。
○中村化学物質対策課長補佐 今回はざっくり論点をお投げしてしまっているので、議論しにくいというところだと思うので、もう少しきめ細やかに論点も設定していかなければならないと思っているのですが、もともとのGHS分類のために試験をする、基本はGHSという、情報がなければ情報はありませんと伝えるということが基本だと思いますので、この議論が出てきた1つの背景としては、1つは新規化学物質からの流れです。安衛法は、変異原性試験の結果だけを出していただいていて、その後、市場にある程度まとまった量で流通するような段階に至ったときに、有害性の情報を追加しないまま流通させていいのかという問題意識はあります。そこでこの論点の中にも、製造輸入量が一定程度を超えたときという論点が実は出てくるのですが、そうなると既存の化学物質で非常に多く流通してしまっているものではなくて、新しく開発していった会社というのが、ある程度有害性を調べて、その情報を提供していくということが必要なのではないかという発想が1つ、この論点のもとにはあります。
 あとは既存で流通しているが、情報がないものをどう集めるか。それはまた別の論点で、なかなか難しい議論だと思うのですが、そういうところを、次回以降になると思いますが、きめ細やかに分けて議論をしていく必要があるかなと思います。
○大前委員 GHSのために情報を集めるのか、あるいはばく露限界値を求めたいがために集めるのかで、全然話が違うと思います。この場合は既存物質の話ですが、そのときに例えば国がこの物質については、ひょっとしたら人間でも何か起きているかもしれないから調査に協力しろと。そこのところの義務化と言いますか、努力義務化と言いますか、それは是非やらなくてはいけないと思います。要するにヒトで何が起きているかということが一番重要なので、それでもしヒトで何も起きていなければ、もう少し様子を見ていいですよと。もし何か起きていれば、やはりちゃんとばく露限界値を定めて、それを守るという形に持っていかないと、結局いかなくなるわけですから。この情報を集めるというのはGHS分類の話ということはないと思います。
○山口委員 GHSのために集めるという発想で聞いてはいないのですが、今、新規だと化審法でいろいろなトンネージバンドによって、集めている有害性情報というのはいろいろあります。それ以外の部分という形のことを考えられているという発想で、多分いいのかなと今思って聞いていたのですが、そうしたときにはこういった有害性の分野において、このトンネージバンドのデータが足りないから出させようというのがある程度想定がつくのであるならば、出してもらったほうが議論はしやすいのかなという部分はあると思っています。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。
○大前委員 ちょっと極端な話をしますと、例えば粒子で肺に沈着して溶けないもの、これはもう危ないことが分かっているので、それが何であろうとそういうタイプのものを使っている所をピックアップして、何が起きているかというイメージで調査の義務化をかける、あるいは努力義務化をかけるということにしないと、何か起きてからでは遅い。もし何か起きているとしても、その段階では多分、非常に軽い影響しか受けていないと思うので、もし何も起きていなければもちろんベストなのですが、その辺りをそういう形で考えていかないといけないと思います。
一番典型的な例が、酸化チタンです。サイズが大きいと何も起きない。昔はイナートの粒子だということで、ネガティブコントロールに使っていた粒子なのです。あれがナノ化してしまったら、サイズが変わってきたら、いろいろなことが起きているということがあるので、しかも水に溶けないというタイプです。
そのような観点で、ものごとをある程度整理して、この物質については今まで人間の報告はないけれども、調査に協力してくれというような形にしていかないと、なかなか予防には至らない。あるいはばく露限界値を作るようなことにはならないと思います。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。先ほど室長からあった、4番目のポツの所で、GHSのための有害性情報を国として枠を広げるということで考えると、今、政府でやっている分類と多分民間の、特に大手さんでやっている分類のバックグラウンドというか、やはり資料数が違うと私は思います。成分分類の少ない資料でしかやっていないので、そうすると当然分類結果も違ってくると思うので、そういう意味で、そこのところについても民間の協力をお願いして、例えばSDSなどをグレードアップさせていって、みんながもっといいSDSを発行できるようにできるかどうかというのも1つのポイントかなと私自身は思っています。そのための仕組みというのが可能かどうか分かりませんが、それも1つの方法かなと思っています。
 そのほかに御意見はよろしいでしょうか。
○中村化学物質対策課長補佐 先生がおっしゃるように、強制するのか任意にするのかは別にしても、国が全ての情報を自ら集めるというだけではなくて、民間で情報があれば、それを提供していただいて、より正確なGHS分類なりSDSにしていくという仕組みが作れれば、より情報の精度は上がっていくのかなとは思っています。それを義務付けるのかどうかというのは、また別の問題だと思うのですが、そういう仕組みは十分考えうるかなと。皆様の御意見も頂きながら、また考えていきたいと思います。
○城内座長 よろしいでしょうか。
○漆原委員 ここで言う国が情報の提供を求め、その情報を事業者が提供した後の流れについて質問です。例えばどこどこの国でこういう研究成果でやって、こういう有害性が確認されましたという情報を国に提供した場合、例えばその情報をもとに物質のばく露限界値の設定など、そういったところに供するために集めるという理解でいいかというところなのですが。集めた情報をどのような判断に使うのかについてもお聞きしたいです。SDSを更新するだけではなく、その情報はほかにも用途として使うという理解でいいかどうかを確認したいのですが。
○中村化学物質対策課長補佐 最終的には、その情報だけでばく露限界値が設定できるわけではないと思うので、いろいろな情報を蓄積していって最終的にばく露限界値まで、定められるものは定めていくということが最終ゴールかなと思っています。
○漆原委員 ばく露限界値を検討するための場に集めて、幾つかの物質についてこういう情報が集まった時点で、そのための検討をするために収集という理解でいいですか。
○中村化学物質対策課長補佐 はい。
○梅田委員 例えば国がGHS分類を進めているわけですが、その際に民間から意見を聞く、多分、一度案を作られると思いますが、それを公開してパブリックコメントのような形で意見を集めるというのは有効ではないかと思います。
○植垣委員 今、政府で実施していただいているGHS分類は、なるべく情報を使用者の方なり事業者に提供しましょうということで、もしかしたら余り引っ掛からないケースかもしれないがということで、分類を付けて情報提供しているケースがあるように感じています。例えば気道刺激性のようなもので、粉になったら気道刺激性が出ます。普通に使っていたら、これは余り粉にしないが、粉にするケースもあったら、GHS分類では気道刺激性を付けておいてという形で、NITE分類のときに付いてしまったということがあります。
自分たちの製品は別に粉ものではないのに、これをそのまま使わないといけないのかというところもあるので、EUのCLPでやっているようなところは非常にクリティカルな。その有害性があると、例えば労災につながるなどというところを基本的にかなりの時間議論をして、付けてという形でやっていただいているので、そういう強制の仕方と、日本で、NITE分類でいろいろ付けたものが、それ全部が強制で使用しないといけないという形になると、ちょっと重みとしては変わってくるのかなというところがあります。もし事業者からいろいろな情報を集めて、この分類で義務化しますというような話になると、そのときのやり方というのは、是非考えていただきたいと思います。
○吉澤国際動向分析官 今、国で公開しているものはモデルのためなので、ある意味、先生のおっしゃるとおり注意喚起の意味を込めて、この物質についてこういう使い方をすると、より危険・有害性が高まりますという話になるので、やはりこの場合にはこの区分になりますというように、ちょっと限定的なものになってしまうこともあります。ただ、結局根本には、これはあくまでも参考情報ですので、それぞれの企業はそれぞれの企業で、うちの製品ではそういう心配はありませんという形で、変更も構いませんというようにしているわけです。将来的にこの区分について、強制力を持たせるなどの話になったときには、恐らくパブコメなり何なりで、このように変えます、各企業さんがこの区分を表示するようにしてくださいという話になると、当然、それはコンセンサスを得たものでなければならないとは思っています。
○植垣委員 ありがとうございます。
○城内座長 時間も押していますので、この議論はここまでにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。今の御発言を参考に、次回までに、またまとめて方向性を出していただきたいと思います。ありがとうございました。
 続きまして、2つ目のテーマ、「ばく露限界値等の設定及びこれに基づく管理」ということで、これは先ほどから大前委員、甲田委員からも御意見を頂きましたが、早期にモニタリングするということも非常に重要だと思いますが、では、実際にばく露限界値等を設定する場合にはどういう考え方があるかということで御意見を頂ければと思いますが、お願いいたします。
○大前委員 すみません、今、おっしゃっているのは暫定ばく露限界値の話ということですね。
○城内座長 はい。
○大前委員 14ページの(2)で暫定ばく露限界値の設定という項目があるのですが、ここの丸3の所、どのような点に留意すべきかという所で、あり方検討会で「エビテンスの構築を丁寧に行うべき」、「最新の知見に基づくべき」などのコメントがありますが、これはあり得ないです。もともと情報がないものに対して、えいやっとやらざるを得ないから暫定のばく露限界値のようなものを作ったらどうかというお話であって、前回の11月6日のあり方検討委員会の意見は、これは趣旨を理解していない意見なので、今度の資料を作るときには削除していただきたいと思います。
 それから、粉じんの場合は前回のこのワーキングでもお話しましたが、ACGIHのPNOS、あるいは産業衛生学会の第3種粉じんというので使えるかもしれない数字はあるのですが、蒸気やガスなどの場合は、今、どうしたらいいかというところ、恐らくどこにも情報はないと思います。例えば今、管理濃度が決まっている中で、一番高い蒸気の管理濃度が500ppm、アセトンです。これが今、一番大きな濃度になります。ですから、これが1つの目安になるかなと。前回も500ぐらいと出しましたが、それが1つ。とは言っても、蒸気圧が低いものは500にもならないので、蒸気圧の低いものをどのように考えるかというアイデアが、私もあるわけではないのですが、そこのところで何らかのルール付けをして、えいやっと始めるしかないのです。もともと情報がないのですから。それで何か起きたら慌ててまた調査をして管理していく、そういうパターンにならざるを得ないと思います。そういうことで、500はひょっとしたら1つの数字になるかもしれません。ちょうど二酸化炭素が350、360ppmぐらいなので、大気中の二酸化炭素ぐらいのレベルなのですが。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。
○甲田委員 13ページに、どうやって推定していくのか、実測なのか数理モデルを使うのかという話も幾つかあると思うのですが、胆管がんのときに、結局、復元しなくてはいけないので、使っている物質を想定してどのくらい使っているという形で、そこで基本的には蒸発させてどのくらいばく露するのかとやったのです。ただ、それも実測値なので1回の実験しかできなかったので、多分、使用量や温度、季節で変わってくるという形で、このとき大分、数理モデルを使ってシミュレーションさせていただきました。ただ、このシミュレーションはかなり難しくて、作業場がかなり複雑なのです。物があったり、例えば空調の吹き出し口がどこにある、人の流れがどういくのか、製品をどうやってどこに移すのかなどによって変数が掛かってきて、かなり違うのです。
ですから、非常にシンプルなところでは、数理モデルは多分使えるのだろうと思いますが、我々が胆管がんのときにやって非常に苦労したのは実はそこで、結果的に言うと、かなり幅が出てしまったという話になります。場所によってはその幅が倍ぐらいになったり、そのような形になったので、数理モデルを提案するというのは多分いいと思うのですが、もうちょっと使いこなしていかないと、実際にそれを使える研究機関なり専門機関、例えばその辺を作業環境測定の機関ができるのかと言われると、多分難しいかなという気もするので、十分に注意しないといけないかなというのは、先ほど聞いていてちょっと思った次第です。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。
○大前委員 もう1つ、胆管がんの場合は非常にシンプルな数理モデルを使って、その人のばく露の推定をしています。これが余りにも簡易すぎて実際は使えない。あの場合は労災の話でしたから、労災を認定するときにどうするかという観点なので、簡単なモデルでやらざるを得なかったというところですから、やはり数理モデルを使うのは非常に難しいとは思います。
○甲田委員 最終的に数理モデルというのは、ばく露限界を推定するところまでいくという話になってくると、やはり使い方は難しいと思います。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。
○梅田委員 ただ、この3,000まで広げるとなると、事業主さんにとっては複雑な数理モデルを使うとなるとかなり重荷だと思っています。多分、使える数理モデルというのは非常に簡単なもの、CREATE-SIMPLEであるとか、ECETOC TRAであるとか、そのレベルまでだと思います。ただ、リスクアセスメントをさせるという意味合いにおいては、そういう簡易な数理モデルでもやらせるべきだとは思います。
 もう1つは、実測を併用するのか、あるいは数理モデルだけでいいのか。この辺りはちょっと議論の分かれるところではあると思いますが、この頂いた資料に書いてある数理モデルというのは、前提が多分CREATE-SIMPLEなのかなと思って見ています。
○平林委員 その簡単な数理モデルであっても、最初のスクリーニングには使えると考えられるものでしょうか。
○梅田委員 安全サイドに判断するものですので、最初のスクリーニングには使えると思っています。
○平林委員 そうすると、そこで絞り込んで実測をするというような二段構えにするなど。
○梅田委員 そこで安全だと出たら、そのままにしておいて、ある程度リスクがあるというものに関しては、より複雑な数理モデルなり実測をやっていくという順番でやっていかれるほうがいいと思います。
○平林委員 多分、2択というよりは、そういうステップを踏まれたほうがいいのかなと、今、伺って思いました。ありがとうございます。
○中村化学物質対策課長補佐 特に作業環境が悪い場合に、どのマスクを使うかという選択に使うとなると、ある程度の正確性は求められていくかなと思うので、ちょっとそこはケース・バイ・ケースのところはあると思いますが、どちらが優先される方法なのかということですね。
○平林委員 多分、最初は防護具なしの条件がどうなっているかということからスタートして、防護具をしたときにはどうなるかということで判断されるのがいいのではないかと思いますが。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。では、私から大胆な提案というか、少なくとも3,000物質についてはGHS分類をしているわけです。ということは、GHSについては区分が決まっているから、特に特定標的臓器のようなものについては、ある区分に入っていたらそこはばく露量も分かっているので、外挿をどう計算するかはありますが、例えば、その区分の100分の1にしましょうとか、そういうことは可能だと思います。そうすると、物質ごとで区分は分かっているから、その物質についてはこれぐらいでいいのではないかという目安は出てくると思います。あとは経皮吸収がある、何があるなどというのは、ほかの、例えば産衛学会、ACGIHなどの情報も全部集めた上で、何を一番注意すればいいかは大体分かってくるような気がします。あとはそこに係数をどれくらい掛けるかで、少し安全側で考えていけば数値としては出てくるかなという気がしています。
○中村化学物質対策課長補佐 若干、行政の立場として悩ましいと思うのは、行政が数値として示すと、恐らく数値が独り歩きするだろうと思うのです。要は、絶対的な基準と捉える方が多いので、それをどういう位置付けにするか。先生がおっしゃるように、例えばCREATE-SIMPLEなどを使えば、区分さえあれば、どのぐらいの濃度で管理すればいいのかというのは出ることは出るのですが、それをどういう位置付けにするのかというのはよく議論したほうがいいかなというのは、こちら側の立場として思います。
○城内座長 それは法律で決めるのではなくて、ガイドラインで例をたくさん示す、計算方法を示すなど。
○中村化学物質対策課長補佐 そういう考え方をお示しして、それぞれやっていただくなど、やり方はいろいろあるかなとは思いますが。
○三柴委員 改めて、制度論的なところからお話しようと思いますが、今、出ている議論でも調査、評価、対応、対策について統一化すべきか、個別化すべきか、それから推計値でいくか、実測でいくか、幾つか二項対立が出てきていて、一律に決められるわけではなく、手順によって決めていくのが良いのではという話になっているかと思いますが、もともとのこの議論の出発点を考えると、要するに、焦点は、有効な自律管理物質対策を中小企業にどう行わせるかということだと思います。その意味では、現時点での事務局案の方向性にはおおむね賛成なのですが、ただ、中小企業相手ですので、その原則を分かりやすくするということと、個別事情に応じた対策のために専門家の活用を促すような制度にする必要があるのではないかと考えます。専門家が質、量ともに増えてくると、情報の収集やリスクの判断ができるプラットホーム作りにつながってくると思うので、そこは制度で促していかなくてはいけないと思います。
 参考までに訴訟の情報にちょっと触れますと、御案内のとおり化学物質被害に遭った労働者が事業者や製造者の過失責任を問う訴訟が起こってきました。それからアスベスト訴訟のように国の規制権限の不行使が問われたということもあります。代表的なものだけ挙げれば、化学物質の有害性について情報を持っている、取扱い経験があったからという理由で、元請の過失責任を認めたという例があります。それから、使用者に対して、行政が公表した有害物質濃度の基準を守るだけではなく、国際的な環境基準等に準拠して、作業環境を整備していないと過失だよといった例もあります。法定の作業環境管理だけではなく、個人サンプラーの活用を含めて、測定から対策までの現場実態に合った管理を総合的にやらないと過失だよといった例もあるということで、割と使用者等に対して厳しめの判断をしてきたという経過があります。
つまり、民事訴訟となると、今の法定の基準より厳しいレベルを求めているということかと思います。そうすると、そこを1つのターゲットとして対策を求めていく必要もあると思うのですが、専門家が集まる会議で出てきた細かな基準をそのまま中小に求めてしまうと、恐らく手足が出なくなってしまうということになるので、やはりやるべきことの原則はすっきり整理して明示して、あとはガイドラインなどで誘導するということが必要なのかと思います。
ただし、原則をはっきりさせるというのは、どうしても実質的には規制強化になる。こういうことを原則やらなければいけない。例えば推計値でもって、これはクリアしなければいけないと示すと、恐らく厳しい基準になると思います。ですから、職場の事情に応じて逸脱する場合には専門家の証明を得る仕組みを作ると、専門家へのニーズが高まると思います。そして、専門家が増えるとやれることが増えてくるだろうと。産業ごとの統一基準というものもできるし、個々の事業場ごとの基準もできてくるのかなと思います。
では、その原則をどのように設定するかということなのですが、やはり法制度にする以上は焦点を絞らないといけないので、自律管理物質についてもリスクの調査を義務付ける方向、ここに焦点をなるべく絞って、そこをしっかり定めてい必要があると思います。中身について、技術者ではないので余り細かいことは言えませんが、やはり試験的な個人ばく露測定と専門家による評価というのは定めるべきかと思います。サプライチェーンの川上からリスク関連情報を獲得させる、獲得するということを事業者に義務付ける必要もあるでしょう。GHS分類等の情報を入手するということも求められるでしょう。衛生委員会などで、労働者にばく露状況がどうなっているのか、体調についてどうなっているのか調査を行わせる、衛生管理者や衛生推進者に行政や関係団体から化学物質のリスクに関する情報を得させるなど。それから現行法上の新規化学物質に関するハザード関連情報の届出とは別に、行政にリスク関係情報を出す、届けさせること。これは先ほど議論がありましたが、何をターゲットにどういう情報を出させるかというところがちょっと議論が必要だと思いますが、こういうことをまず原則として定めていく。
しばらく運用してみて、うちの会社は、ここは大丈夫だから、ここのところは免除してもらっていいというのは専門家の認証によって省いていくようにすると、恐らく専門家へのニーズが高まってくると思います。そうしたアセスメント関係をきちっと定めておくと、恐らくその結果、その作業条件で求められる対応も自ずと定まってくる、あるいは開発されてくるはずなので、結局、それも民事的も、p、衛生基準的にも、事業者にとっては適正な範囲で義務付けらてくれるのではないかと思います。すみません、長くなりました。
○城内座長 ありがとうございました。時間が押しているのですが、今の点に関して、ばく露の評価に関して、何か御意見、どうしても今日中にという方がいらっしゃいましたらお願いします。大前委員、どうぞ。
○大前委員 今の民事なり何なりのときに、時々嘆かれるのは、あの時点では毒性が分かっていなかったから使って、ある時点から毒性が分かったと。発がん性なら発がん性。なのに、なんで一番最初から責任が問われるのというようなことを時々聞くのですが、実際上、そこら辺は、何らかの、何て言いますか、軽減といいますか免責というのか、そういうのはあるのですか。
○三柴委員 結局、裁判所はそういう事件に触れると筋を見るのです。それで、これは事業者であって、情報も取れるし管理責任もあっただろう、つまり、体制面や手続き面でやるべきことを尽くしていなかったということになると、筋読みとしては事業者に厳しい判断をすると。後付けのようにと言ったら怒られるけれども、当時、産業認識でこういう常識があったではないか、こういう情報が共有されていたではないか、あるいは、ペーパーでこういうものが出ていたではないかということを挙げてきて、ここまではやらなければいけなかったという判断をするという感じです。ですので、専門家がそろって、またステークホルダー、利害関係者もそろって調整をした結果、出てくるラインよりも、こういう事件の後片付けのために裁判所が言うことはきつくなりがちです。
○城内座長 では、事務局どうぞ。
○中村化学物質対策課長補佐 14ページに戻ってしまうのですが、大前先生がおっしゃったように、粉じんであれば、ある程度何らかのメルクマールは作れるだろうと。難しいのは蒸気でありガスでありというところについて、自律管理をするにあたって、やはり何か管理の目安とするようなものがあったほうが事業者としては管理しやすいのか、それとも、自律管理なので、もうそこはそれぞれの事業所の判断なり裁量なりに任せるべきなのか。恐らく、先ほど城内先生から、個別に示す方法もあるのではないかというお話もありましたし、もっとすごいざっくりしたものを示すという方法もあると思うのですが、そういうものを示すことの意義を、事業者側から見たときどうお感じになるかなというのを、ちょっと御意見をお伺いしたいと思いました。
○山口委員 事業者としては専門家が多いわけではないので、労働衛生とかの専門家が多いわけではありませんし、有害性に関しての知識がある者もそれほど多いわけではないので。というか、いない会社も幾らでもあります。ですので、ある程度の目安というのは出していただかないと、それこそ中小企業は、まず何もできないと思います。つまり、自律管理イコール何もしなくていいというところに、多分落ち着くと私は思います。
○城内座長 植垣委員、お願いします。
○植垣委員 今、言われたとおり、結局、適正に管理しなさいという抽象的な文言だと、何が適正なのかというのが分からないので、やっているつもりでした、で、労災につながるという話になってしまうのです。その場合、やはり何らかの形で数字なりを出していただくのがいいと思います。特に、化学工業をやっている所は、ある程度溶媒とか溶剤を使っていると何となく危ないなというのに気付く人がいるかもしれないのですが、お客様のほうにそれを出したときに、余り化学に詳しくなくて、狭い部屋で有機溶媒をがんがん使っても、ちょっと臭いけれども大丈夫かなみたいなことで、それがすごい高濃度になっているという認識が全くないような所で使われると、やはりそれがGHSの分類に付いていないから別に健康への有害性は余りないだろうということで、誤解を生んでしまうような形で、代替物質での労災につながるという危惧を、化学物質を提供する側としても持ってしまいますので、そういうところは、今、大前先生から御提案いただいているような、ある程度高いところでのばく露限界値の目安を示していただくということで、ある程度防げるのではないかと私も思います。
○城内座長 よろしいでしょうか。それでは次にまいりたいと思います。3つ目のテーマ、「経皮吸収勧告のある物質に係るリスク評価のあり方」に関して御意見を頂きたいと思いますが、よろしくお願いします。甲田委員、よろしく。
○甲田委員 最初の所で、200物質ぐらいから経皮吸収勧告のある物質88をセレクションしたという形で、第一段階はそういう形であると思うのですが、経皮吸収等の有害性の評価、経皮吸収自身の有害性の評価というのは、実は、今まで余り検討されてこなかったので、それをどうやってやるのか、どの時点で経皮吸収を見ていくのかというところも今回は少し検討して、評価方法というのをやったほうがいいのではないかとは思います。
 その理由として、芳香族アミンでオルト-トルイジン、それからMOCA、この2つで今、経皮吸収の研究をやっているのですが、経皮吸収の仕方、透過の仕方と言ったらいいのですか、皮膚を通過して、平たく言うと、MOCAの場合は皮下にかなり長く留まるという形で、一定の時間で代謝物を見ると、取りこぼしてしまうとかいろいろな形があるので、吸収、それから代謝という、何か別々の評価方法みたいなものを少し、これは学問的になるのかもしれないですが、そういうモデルを作って評価をすることがかなり重要になるのではないかと思います。
 特に、その中で言うと、先ほどから話題になっていますが蒸発しやすいもの、揮発しやすいものというのは、ばく露で、個人ばく露だとかいうところで抑えると8割だったかそのくらい採れるのですが、しないものというのは、逆に言うと99%経皮から入ってくるという事例がある。その辺に関しては、ばく露限界値が一応設定されてはいるのですが、それが本当に有効に機能するのかどうなのかというのは、その辺、88物質の中で厳しく洗う必要があるのではないかと感じております。
○城内座長 そのほか御意見はありますでしょうか。漆原委員、お願いします。
○漆原委員 16ページで提起されています生物学的モニタリングは、是非やっていただきたいです。それは尿と血液ということになると思います。今ほどありましたが、経皮ばく露についても、簡単に気化してしまうものであれば、皮膚に付いてもすぐ飛んでしまいますが、気化しない物質は肌に残るので、僅かな量であってもずっとばく露し続ける、長時間ばく露し続けるので、やはり生物学的モニタリングというのは必要ではないかと考えております。
○城内座長 そのほか御意見いかがですか。大前委員、お願いします。
○大前委員 経皮吸収があるということと、それによって生体影響を受けるということは別に考えなければいけないと思うのです。単に皮膚から吸収されるだけでしたら、それはもう全然問題ない。それが吸収された後に何らかの障害を起こすから問題なのだということなので、この88物質に関しては、多分、これは産業衛生学会か、あるいはACGIHかどちらかだと思うのですが、経皮吸収の勧告があるということは、もう障害を起こすだろうということになります。これ以外の物質は、計算上、経皮吸収しそうだという計算式が幾つかあるので、それをやれば皮膚吸収されやすいかどうかはある程度推測できるのですが、それが健康影響に関係するかどうかというところの推測は、実際はできないので、単純に経皮吸収があるという計算値だけで尿中の代謝物なり何なりを測ることはほとんど意味がないので、そこら辺はちゃんと分けて考えなくてはいけないということになろうかと思います。
 許容濃度なりACGIHの数値があり、ばく露限界値があって、かつ経皮吸収があるのは、これは間違いなく何か起こす可能性があるので、これは意味があると思うのですが、ばく露限界値がなくて皮膚吸収だけあってというのは、これは直ちに抑えるべきものでもない、抑える根拠はないということなので、そこら辺は、やはり判断はきちんとしなくてはいけないと思うのです。
○梅田委員 事務局にお伺いいたします。3,000物質に対してリスクアセスメントをさせる方向で今、検討されていると思うのですが、それは、吸入も皮膚吸収も両方ということですか。
○内田化学物質評価室長 そうですね、経皮勧告があるものにはというか、その中でもう少し吟味しなければいけないかもしれませんが、それらについても、当然リスクがあると思われるものについては、自律管理の中でリスクアセスメントをやっていただく必要があるのではないかと。ただ、ここで書いているのは、そういうことを求めた場合に、どういう手法であればできるのかということ。先ほど、尿とか血液のモニタリングという話もありましたが、そういったことも含めて、そういうものを求めてできるのかどうかということを、ここでは問題提起をさせていただいたということなのです。
○梅田委員 3,000物質に対して全て生物学的モニタリングをするとなると、たくさんの物質を使われている会社さんにとってはかなりの重荷になるかと思います。
○内田化学物質評価室長 そういう意味では、16ページ目の下に参考で書いてありますが、仮にやるとしても、許容値が定まっているようなものという形にはなるのです。現状としては、ここに書いてあるような数十物質ということに限定されるという形になりますが、仮にそういう限定があったとしても、本当にそういうことを求めてできるものかどうかということも含めて、御意見をいただければと思っています。
○城内座長 そのほか御意見いかがですか。
○梅田委員 20物質と80物質ですから、足して100物質、全て使っている会社さんはないと思いますので、このぐらいであればという気はします。心配だったのは、3,000全部やるのかというのが心配だったわけです。
○漆原委員 我々労働者側も、全てをやれというところをもともと求めているわけではなくて、もちろん、SDSの中で、皮膚への刺激性があったりとか、注意すべきものについては、やはりある程度考えるべきというところです。ただ、冒頭で申し上げましたように、そもそもばく露しなくていいように、そういった物性については、保護具を適切に使用することが前提にあるのではないかということがありますので、予防についても、適切に対応していくことが重要かなとも思っています。
○梅田委員 保護具についてですが、通常の材質ですと、時間の問題はありますが、透過してしまいます。その辺り、多分一般の労働者にはそれほど知られていないのではないかと懸念しています。ですから、その辺りに対して、指針なりガイダンスを整備していただくと、大変有り難いということです。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。私の印象だと、昔よくあった、例えばペイントを使って、その後、手袋をシンナーとかガソリンで洗ってという、笑い話みたいなことがありましたが、現在でも同じようなことがあって、経皮吸収の問題ではあるのですが、実はそれ以前の問題ですよね。労働者がそんなこと考えてもいなかったとか、事業者も注意しなかったとか、私は一番そこが問題だと思っています。手袋をしているけれど実は発がん物質を扱っているのだよということと、手袋の使い方とか吸わないようにしようとかという、最初のハザードを伝えるということがやはり欠けているのではないかと思っています。
それは、以前も言いましたが、行政もその点については余り努力してこなかったこともあるので、是非、そういう文化を変えるべきだと思うのです。そうでないと、全てが事業者責任になってしまうので、そうではなくて、物質を扱っている人が責任をもって扱う。責任をもって扱うということは、ちゃんと情報伝達するとか、状況を整えるということがあって初めて成立するので、やはりそこのところを、もう一回、1から考えていただきたいと思っています。そのほかいかがでしょうか。
○大前委員 単なる情報ですが、ガス状、あるいはベーパー状の物質であっても、水溶性があれば汗に溶けて吸収されるので、夏場は危ないというのは知っておかなくてはいけないと思います。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。では、最後の議題に移りたいと思います。御協力ありがとうございます。それでは、続きまして4つ目のテーマ、「個別管理物質の追加」に関して御議論いただければと思います。これは、文章は少ないですが、なかなか困難な問題かもしれません。いかがでしょうか。漆原先生。
○漆原委員 今提示されている新たな管理体制がいつ確立されてどのようなレベルで運用をされるか、それがどのようなタイムスケジュールに実現できるか分からないですが、運用が軌道に乗るまでは、やはり一定程度は、今回のベンジルアルコールのような事例も含めて、この先自律管理をするとはいっても、特別に対応すべき物質が全くゼロになるかと言えば、多分、出てくるかもしれないという気もしております。
前回、海外でいろいろな労災事例があったときに、それをどう扱うのかについて発言しましたが、今回のベンジルアルコールのような、どのようにばく露しているのか自体まだよく分かっていない物質については、個別管理物質などに一時的に入ることはあり得るのかとは思っています。さらに、全く予期しなかった物質が海外の労災などにより、突然IARCでグループ1に分類となったと。そのときに、その物質をどのように扱うのかというところは、個別に条件を定めて、労災の発生数とか、あるいは、どれだけ広く使われているかということは別にして、どこかの場で検討していくことが必要ではないでしょうか。そのための条件を付けて、こういう条件であれば検討するということよりも、個別の事情を踏まえて検討する場があれば対応できるのではないかと思っているところです。以上です。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。
○甲田委員 逆の話になるかもしれないですが、胆管がんだとかオルト-トルイジン、MOCA、それからベンジルアルコールも、今回、作業現場を見せていただいたのですが、極めて使い方はまずい。常識を外れた使い方を実はされているのです。ですから、職業がんの所で、例えば、日本だと実は石綿が一番多いのですが、それ以外は単発的にポッポッポッとあって、その現場を見ると非常にやはり使い方が悪い、使用量が多いというか。例えば、今のベンジルアルコールでも、1m2当たり18キロぐらいのミストを吹き付けて、それで時間を待っているという、ちょっと考えられないようなやり方で、タイベックが入って、中小の事業者でしたら、そのタイベックは次にも使うから乾かして使おうかなとか言って、ちょっと考えられないようなやり方なのです。
 ですから、全てが全て個別法の中に入ってくるのがいいとは思えないので、もう少し、その前にやれることがあるような気はしております。そういったところは、どこかの段階で検討・議論をして運用する。そうしないと、個別法に入ってしまうと、それは多分使わなくなってほかのものに逃げるというのが、いろいろな作業現場で見て取れて、そういう所でいろいろな災害が起きているので、この辺に関してどのようにするのかというのは、慎重にするのと、もっと違ったガイドラインだとかそういうものを使って、それが効くような形、効果的にそれが動くような形にする手法というのも必要なのではないかと思います。
○城内座長 そのほかいかがでしょうか。事務局からお願いします。
○中村化学物質対策課長補佐 事務局の思いとしては、今、甲田先生もおっしゃったのですが、結局、個別管理物質という仕組みを、別に今すぐ廃止するという話ではないのですが、残しておくと、皆さんそちらばかりに注力するというのが現状になっていて、やはり、危ないから個別管理させるのだろうから、ここだけ気を付ければいいという発想になってしまい、これをどう変えていくかというのが今回の検討会のテーマでもあるかと思っています。過渡期をどうするかという問題が当然あると思いますし、仮に自律管理が基本になったとしても、何か問題が起こったときに、それにどう対処していくかという検討の場が必要だというのはおっしゃるとおりだと思うのですが、今の仕組みをこれからも維持し続けるのかどうかというのは、ここは1つの分かれ目かなと事務局としては思っています。
○甲田委員 それともう1つなのですが、個別管理されている既存の化学物質でも、やはり非常に産業の進展だとかいう形、先ほどナノ化するという話、小さくなるという話があったのですが、そういう形で新たな毒性というか、新たなリスク評価をしなければいけない。又は検診の項目などもそれで変わってくると思うのですが、その辺のところも、どこかでやはりブラッシュアップというかチェックして、より現場で使えるような形にするチャンネルを持っておいたほうがいいのではないかというのを改めて痛感しました。
○城内座長 そのほかございますでしょうか。
○梅田委員 先ほど甲田先生もおっしゃったのですが、ベンジルアルコールの件です。今回、通知対象物質に追加されますが、この話を最初に見たときには、毒性から見て通知対象レベルなのかなと個人的には思いました。事故事由を見ると、やはり使い方がまずいのです。通知対象物質であるとか個別管理物質という以前に、化学品を扱うにはどういうことをしなければいけないかというところが、一般の方々に多分、余り知られていないのが問題なのではないかと思います。
○城内座長 そのほかございますでしょうか。よろしいでしょうか。大前先生。
○大前委員 リスク管理という手法を、リスクアセスメントとしては取り入れた時点で、もう自律管理なのですよね。そこのところは大前提だと思うので、個別管理はむしろ例外的な話と皆さん考えなければいけないのではないかと思います。
○城内座長 ありがとうございました。御意見も出そろったようですし、いい時間になりましたので議論はここまでとしたいと思いますが、事務局から連絡事項等ありましたらお願いします。
○植松評価室長補佐 本日も長時間にわたり活発に御議論いただきまして、どうもありがとうございました。本日の議事録につきましては、各委員に御確認いただいた上で公開させていただくこととしております。また、次回のワーキングにおいては、それぞれのテーマに関して、一定の方向性をまとめて示させていただければと思います。次回は、12月23日水曜日、午前中の開催を予定しております。後日改めて正式に御案内いたしますが、また、何卒よろしくお願いします。以上です。
○城内座長 それでは、以上で、第2回「職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 リスク評価ワーキンググループ」を閉会いたします。どうもありがとうございました。