第10回 解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会(議事録)

日時

令和2年11月16日(月)13:00~14:50

場所

中央合同庁舎第5号館16階 労働基準局第一会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者(五十音順)

(かき)(うち)(しゅう)(すけ) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

鹿()()()()() 慶應義塾大学法務研究科教授

(かん)()()()() 立教大学法学部准教授

()西(にし)(やす)(ゆき)() 明治大学法学部教授

(なか)(くぼ)(ひろ)() 一橋大学大学院法学研究科教授

(やま)(かわ)(りゅう)(いち) 東京大学大学院法学政治学研究科教授

議題

解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する議論の整理

議事

議事内容
○山川座長 それでは、ほぼ定刻ですので、ただいまから第10回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、本日も御多忙のところ、お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。
 本検討会につきましては、これまでの議論の整理や残された法的論点の整理等を行っていたことに加えまして、新型コロナウイルス感染症の影響もありましたため、第9回以降、開催を見送っておりまして、本日の開催となりましたことにつき、委員の皆様方には御理解をいただければと思います。
 本日の検討会におきましては、御発言される際にもマスクを着用したままでお願いいたします。
 本日の出欠状況ですが、全員に御出席いただいております。鹿野菜穂子委員はオンラインでの御出席でありまして、14時50分頃退席なさる予定です。
 まず最初に、今日の議題に入ります前に、前回検討会を開催してから事務局に異動があったということでございますので、事務局から御説明いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
○武田労働関係法課課長補佐 それでは、本年8月の人事異動によりまして事務局に異動がございましたので、御紹介させていただきます。
 労働基準局長の吉永でございます。
○吉永労働基準局長 よろしくお願い申し上げます。
○武田労働関係法課課長補佐 大臣官房審議官(労働条件政策、賃金担当)の小林でございます。
○小林審議官 小林でございます。よろしくお願いいたします。
○武田労働関係法課課長補佐 労働関係法課長の田村でございます。
○田村労働関係法課長 田村です。よろしくお願いいたします。
○武田労働関係法課課長補佐 どうぞよろしくお願いいたします。
○山川座長 ありがとうございました。
 また、法務省から、オブザーバーとして、法務省民事局の笹井朋昭参事官にも御参加いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、本日の説明はタブレットで行います。事務局から、その件の説明と資料の確認をお願いいたします。
○武田労働関係法課課長補佐 それでは、資料の御確認をお願いいたします。
 委員の皆様には事前にお伝えしておりますが、厚生労働省では審議会等のペーパーレス化の取組を推進しておりまして、今回の会議より、資料の配付に代わり、資料御参照用のタブレットを御用意しております。
 本日の資料は「マイプライベートファイル」というフォルダ内に格納しております。タブレットでの資料の確認方法及び資料のめくり方につきましては、お手元の資料「タブレット操作説明書」を御覧ください。操作等で御不明点がございましたら、適宜事務局がサポートいたしますので、お申しつけいただければと思います。
 また、説明に当たっては、同じ資料をモニターにも表示いたしますので、こちらも御覧いただけますと幸いです。
 なお、鹿野委員におかれましては、あらかじめ送付させていただいた資料を御確認いただけますと幸いです。
 今回御用意した資料といたしましては、
 資料1 解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会におけるこれまでの主な議論の整理(令和2年11月16日版)
 別紙1 権利の法的性質のイメージ
 資料2 労働契約解消金の性質について
 資料3 労働契約解消金の定義及び趣旨等について
 参考資料 諸外国における仕組みについて(第5回配付資料の一部抜粋)
 以上でございます。
○山川座長 ありがとうございました。
 カメラ撮りにつきましては、もう済まされておられると思いますが、ここまでとさせていただきます。
 それでは、本日の議題に入ります。議題は「解雇無効時の金銭救済制度の検討に関する議論の整理」ということになっております。
 本日の進め方ですが、事務局から提出されている資料を説明していただいて、その後、これら資料を踏まえて議論を進めるという流れとさせていただきたいと考えております。
 それでは、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○武田労働関係法課課長補佐 それでは、資料1から順次御説明したいと思います。
 前回までの検討会で、金銭救済制度の在り方として、形成権構成と形成判決構成の2つの法的性質をイメージし、様々な論点について御議論いただいてきたところです。資料1は、前回お出しした資料1を少し修正したものですが、形成権構成と形成判決構成、それぞれについて、これまで御議論いただいた各論点に対する法律的な帰結等を記載し、引き続き御議論が必要な点について、四角囲みの論点として書かせていただいております。こちらの四角囲みの論点は、今後引き続き御議論いただくべき、残された論点として記載させていただいておりますが、本日の検討会で全て御議論いただくというものではなく、今後の検討会において、順次各論点について御議論いただきたいと思っております。
 それでは、資料1の内容を御説明させていただきますが、基本的には前回の資料と同様の内容となっておりますので、論点と関係するところのみ、詳しく御説明させていただきます。
 順番は少し前後しますが、まずは別紙1を御覧ください。前回もお配りした資料で、各構成の権利変動のイメージを図で表したものです。1ページ目は形成権構成、2ページ目は形成判決構成となっています。いずれの構成においても、使用者による無効な解雇があった場合、最終的には労働者の使用者に対する労働契約解消金債権が発生すると同時に、労働契約解消金を支払えば労働契約が終了するとの、条件付きの労働契約終了という効果が発生するのは共通しております。
 1ページ目の形成権構成は、無効な解雇により労働者に金銭救済請求権という形成権が発生し、労働者が訴え提起という意思表示により、その形成権を行使した段階で、その2つの権利変動が発生するというもので、2ページ目の形成判決構成は、労働者が訴え提起しただけでは権利変動は発生せず、労働者の請求を認容する裁判所の判決が確定した段階で、この2つの権利変動が発生するというものです。
 では、資料1にお戻りください。これら2つの構成について、過去御議論いただいてきた論点としましては、資料1の1ページ目にあります「1.権利の法的性質等」と、3ページにあります「2.労働契約解消金の性質等」と、さらに4ページ目にあります「3.地位確認請求、バックペイ請求、不法行為の損害賠償請求等との関係」の大きく3つに分かれております。現在論点が残っておりますのは、「1.権利の法的性質等」と「2.労働契約解消金の性質等」の部分でございます。
 まず、「1.権利の法的性質等」の部分になりますが、2点目の論点項目、権利(形成権)の行使要件・形成原因の欄を御覧ください。こちらには、①から③の3つ、要件を掲げております。前回の資料では、現在の②、③の要件のみを記載しておりましたが、労働者の権利であるという前提が分かりにくくなっておりましたので、①として、労働者であることを権利行使の主体の要件として追加しておりますが、特にこれまでの資料を実質的に変更するものではありません。
 それ以降は、前回と同じく、②使用者による解雇の意思表示がされたこと、③ ②の解雇が無効であることを要件として書いております。
 ここで、これまでは無期契約の解雇を念頭に各論点について御議論いただいてきたところですが、上の項目、対象となる解雇等で雇止めも対象とする旨、御議論いただいておりました。解雇がなければ、その後、一般的には定年まで雇用関係が継続する無期労働契約と異なり、有期労働契約の場合、契約の終期というものがあり、雇止めが権利濫用に当たることになったとしても、一旦その契約は終了し、契約の更新がなされるにすぎないということになりますので、無期労働契約における解雇とは異なった状況にあります。
 そこで、上のほうの四角囲みは、残された論点として、有期労働契約の雇止め・期間途中の解雇の場合にはどのような要件とすべきか。また、労働契約解消金の支払による契約終了効と期間満了による契約終了効の関係はどう考えるか。その他、各項目において有期労働契約と無期労働契約の場合とで違いを設ける点があるかとの論点を掲げさせていただいています。
 また、こちらの要件との関係では、下のほうの四角囲みの残された論点として、一度御議論いただいたことのある論点ではありますが、形成判決構成が出てきたので、改めて、使用者が解雇の意思表示をした後、事実上解雇の意思表示を撤回して復職を促していた場合でも、労働者が金銭救済を求めることは可能と考えるべきかという点を論点として挙げさせていただいております。
 続いて、権利行使の方法ですが、形成権構成の場合には、実体法上の権利ですので、原則的には裁判外でも行使が可能だが、制度創設時は訴えの提起又は労働審判の申立てに限ることが考えられる。その下の※印で、裁判外での権利行使の可否については制度創設後の状況等を踏まえて検討するとまとめ、形成判決構成の場合には、その性質から、訴えの提起又は労働審判の申立てによるとし、※印で、形成判決構成を採用した上で裁判外での権利行使を可能とする場合には権利の法的性質自体の見直しが必要であるとまとめております。
 ここで四角囲みの残された論点ですが、形成判決は、本来判決という裁判形式を前提としたものなので、労働審判で実現することが可能なのかという論点を掲げさせていただいています。ここでは、形成判決は、判決により権利変動を生じさせるという性質のものであるため、労働審判で判決と同様の効果をもたらすことが法的に可能かという点に加え、3回の期日で解決するという労働審判の原則の中で、解雇無効を前提とした本制度の利用は可能なのかという点も含め、引き続き御議論いただきたいと思っております。
 次に、2ページ目に行っていただいて、2項目め、意思表示の撤回の欄を御覧ください。こちら、形成権構成の場合には、権利行使後は撤回できないのが原則ですが、実体法上に根拠規定を設け、判決又は審判確定時まで撤回できると規定することが考えられるとの御議論だったと思いますので、そのように記載しております。
 ここで四角囲みの残された論点ですが、形成権構成の場合でも、意思表示の方法を訴え提起または労働審判の申立てに限るべきとの議論がありましたので、その場合、労働者が金銭救済請求の意思表示を一旦した後、その請求をやめようと思った場合には、訴えや申立ての取下げの方法によることが一般的になる可能性もあるかと思われます。しかし、法的には、訴え等の取下げによって、自動的に実体法上の意思表示を撤回したとみなされるわけではないのではという御議論もありますので、そうであるとすると、実体法上は金銭救済を求めたままだという状態になってしまいますので、形成権構成の場合、訴えの取下げと意思表示の撤回の関係をどう考えるのかという点を論点として挙げさせていただいています。
 他方、形成判決構成では、判決又は審判確定時まで訴え又は労働審判の申立てを取り下げることは可能ですが、※印として、訴えの場合は、一定の場合以降は訴えの取下げに相手方の同意が必要となる旨、注意書きをしております。
 続いて、2ページ目最後の相殺・差押禁止の項目ですが、形成権構成について、支払日について原則どおりと考えれば、権利行使後は解消金債権が具体的に発生し、支払日も到来しているため、権利行使後の相殺・差押えは可能である。ただ、矢印の下のところで、相殺・差押禁止の措置の要否・範囲は政策的に判断すべきとの御議論だったかと思います。その下の矢印は、さきの論点で、支払日を判決又は審判の確定時に到来すると考える場合には、相殺の要件上、判決又は審判の確定時まで、労働者側から使用者に対して相殺を申立てることはできなくなるはずですので、その点を記載しております。
 形成判決構成では、判決又は審判の確定まで具体的な労働契約解消金債権は発生していないため、判決又は審判確定時まで相殺・差押えすることはできませんが、下の矢印で、判決や審判確定後の相殺・差押禁止の措置の要否・範囲は政策的に判断すべきとの御議論を記載しております。
 ここで四角囲みの残された論点ですが、一部でも労働契約解消金債権の相殺・差押えを認めた場合、例えば労働者に対して債権を有している第三者が、労働者の持つ労働契約解消金債権を差し押さえた後に、労働者が金銭救済を求める旨の意思表示を撤回できるとすると、労働契約解消金債権は発生しないことになってしまいますので、そういった状況で労働者の金銭救済請求の撤回を認めるかどうかの可否について、どう考えるのかという論点を掲げております。
 続いて、3ページ目です。真ん中あたりの「2.労働契約解消金の性質等」に参りたいと思います。この点については、形成権構成や形成判決構成で異なるところはありませんので、両欄同様の記載となっております。
 まず、定義等ですが、以下の2案が考えられるとして、①無効な解雇がなされたものとして確認された労働者としての地位を、労働者の選択により解消することの対価。②無効な解雇により生じた労働者の地位をめぐる紛争について、労働契約の終了によって解決させる対価といった案を記載しております。
 ここで四角囲みの論点として、定義、法的構成及び考慮要素の関係性について、労働者の意思による通常の辞職との相違、バックペイ債権や不法行為による損害賠償債権等の他の債権との相違・関係性、諸外国の制度との比較等も踏まえて、どのように考えるかという論点を掲げさせていただいております。
 本日は、委員の皆様方に、この論点を御議論いただきたく思っております。
 その下の欄にあります解消金の構成及び支払の効果、考慮要素、算定方法等については、別途、資料2と資料3にまとめました。
 さらに、その下にまとめさせていただいております上限・下限について、労働者保護及び予見可能性を図る観点から、上下限を設けることが適当とされているなどの点も踏まえ、解消金の構成及び支払の効果、考慮要素、算定方法等の論点について、資料2、資料3に基づいて御説明いたします。
 まず、資料3を御覧ください。「労働契約解消金の定義及び趣旨について」と題する書面です。これまでの解消金の定義等についての御議論を、改めて資料としてまとめさせていただきました。先ほどお話しした解消金の定義①②をそれぞれA案、B案として、それぞれの定義から考えられる内容を、解消金で補償すべき範囲、解消金の定義と考慮要素の関係(客観的な考慮要素)。2ページ目に行きまして、解消金の定義と考慮要素の関係(評価的な考慮要素)、算定方法と記載しております。
 1ページ目に戻っていただいて、まずは定義の点から御説明いたします。A案、B案と、先ほどお話しした①②のとおりの問題が記載してあります。
 A案については、無効な解雇がなされたものとして確認された労働者としての地位の対価とされておりますところ、論点1としまして、「確認された」との文言が現在の地位確認訴訟における裁判所による地位の確認を念頭に置いているようにも思われますので、「確認された」という文言は、裁判外での権利行使も可能とした場合や、地位確認訴訟が併合提起されなかった場合に、定義上困難が生じないかとの論点を掲げさせていただいております。
 論点の記載としては、文言の話とはなりますけれども、B案を含め、補償すべき範囲等を御議論いただく中で、定義についても再度御議論いただければと思い、論点として掲げさせていただきました。
 次に、解消金で補償すべき範囲ですが、A案、つまり労働者の地位の対価であると考える場合、解消金で補償すべき範囲は、①現在の地位に反映された解雇前の就労実績の喪失と、②契約終了後の将来得べかりし賃金等の経済的損失が考えられると記載しています。
 さらに、その下の※印ですが、補償すべき範囲を考える上では、使用者が負担すべき損失の範囲として、②の範囲を合理的な再就職期間分や当該使用者の下で就労が見込まれる期間等に限定することも考えられるとの御議論だったので、こちらを記載しております。
 論点2の説明は一旦省略いたしまして、この点、B案、つまり紛争解決の対価と見られる定義では、A案と同様、①②が補償すべき範囲となるのに加え、1つ目の※印、B案の定義上は、紛争解決の対価と、やや広い定義を取っておりますので、③として、解雇の有効性をめぐる紛争に伴う精神的・名誉的損失や、④として、バックペイも補償すべき範囲に含むことは、定義上は可能であろうと考えられます。
 ただ、この点につきましては、③は、解雇が不法行為とみなされた場合の慰謝料で補償される損害と連続性があるものになりますし、④のバックペイは、現時点でも別途認められているものなので、四角囲みの論点3として、労働契約解消金は、バックペイ債権や不法行為による損害賠償債権と別債権と位置づけるべきとの議論もあり、③④を補償すべき範囲に含めるべきかとの論点を掲げさせていただいております。
 後で御説明するように、③を補償すべき範囲に含むと考えると、解雇に係る労働者側の事情を考慮するという理屈づけは増えることになりますが、B案の定義が紛争解決の対価であることから、③を補償すべき範囲に含まないと考えたとしても、そこは※印の2つ目の御説明になりますけれども、使用者が負担すべき損失の範囲を、労使が紛争に寄与した程度を考慮して算定するという方法も考えられるのではないかと記載しております。
 ここで補償すべき範囲をどう考えるかという点に関わるので、一旦、資料2を御覧いただけますでしょうか。資料2は「労働契約解消金の性質について」と題する資料です。パターン1からパターン4まで、解消金の性質についての図が記載されております。今回は、パターン3とパターン4のところに、参考論点1、2ということで論点を書かせていただいております。
 パターン3、4は、いずれも労働契約の終了という効果を発生させるために、バックペイの支払が必要とする考え方を示すものです。パターン3は、労働契約解消金というものの中に、教義の労働契約解消補償金に加え、バックペイを含むとするものですので、先ほどの論点と関連しまして、参考論点1を掲げております。解消金債権をバックペイ債権と別の債権と位置づけるべきと考えると、パターン3はもはや取り得ないのではないかということが考えられますので、その点を論点として掲げております。
 また、パターン4はパターン3と違い、労働契約解消金の中にはバックペイを含まないというものでありますけれども、バックペイまで支払ったときに労働契約が終了するとするものですので、この場合でも参考論点2として、解消金債権をバックペイ債権と別の債権と位置づけるべきと考えると、パターン4で労働契約解消金に加えてバックペイまで支払わなければ労働契約が解消されないとする理由を、法的にはどのように考えるべきかということで論点として掲げさせていただいております。
 では、資料3にお戻りください。1ページ目の3つ目の項目です。解消金の定義と考慮要素の関係(客観的な考慮要素)のところを御説明いたします。こちら、○として書いている勤続年数、給与額、企業規模、年齢の4つの考慮要素は、これまでも考慮要素として考え得るとして御議論されていたもので、それぞれ補償すべき範囲との関係で、なぜ考慮要素となり得るのかとの御議論の中で、委員の先生方から御意見があったものをまとめたものでございます。
 まず、A案から御説明いたします。勤続年数については、長いほど就労実績の積み重ねの喪失が大きいと評価できるとして、①に関連して考慮要素になるとともに、長いほど今後も契約継続の可能性が高く経済的損失が大きいと評価できるとして、②に関連する考慮要素となるのではと御議論いただいていたところです。ただし、勤続年数が長ければ、当然年齢も高くなりますので、※印として、定年との関連で年齢との総合考慮を要するとされていたところかと思います。
 次に、給与額については、金額に就労実績が反映され、①の評価の基礎となる額になるとともに、将来得べかりし賃金等の経済的損失の基礎となる額でもありますので、②の評価の基礎となる額でもあると御議論いただいておりました。
 さらに、その下の企業規模ですが、こちらは、企業規模が大きいほど将来における雇用安定の可能性が高く、経済的損失が大きいと評価できるとして、②に関連する考慮要素となるとも考えられるとの御議論があったところです。
 最後の年齢については、年齢が低いほど今後就労する期間が長く、経済的損失が大きいと評価できる一方で、年齢が高いほど再就職が困難となり、経済的損失の補償の必要性が高いと評価できるため、②に関連する考慮要素となり得るといえるものの、それをどのように考慮するかは御議論があるところかと思います。後者については、①②の大きさそのものを評価するものではなく、補償の必要性を評価するものですので、他の考慮要素とは少し色合いが異なるものとも思えるところなので、この辺も議論いただければと思います。
 続いて、B案ですが、①と②に関連するものはA案と共通ですので、そちらは省略いたします。仮に、③④も補償すべき範囲に含むと考えた場合にはということで、括弧した上で、③④との関連の評価を付記しております。
 まず、給与額のところでは、④との関連で、バックペイの基礎となる額として考慮要素となると考えられます。
 さらに、企業規模では、③との関係で、企業規模が大きいほど高い労務管理能力の可能性が高く、無効な解雇の不当性が高いため、精神的・名誉的損失が大きいと評価できるのではとの御議論があったので、そちらを記載しております。
 最後に、年齢の点は、年齢が高いほど再就職が困難となる関係から、③との関係で、解雇に伴う精神的・名誉的損失が大きいと評価できるのではというところを記載しております。
 そして、四角囲みの論点4ですが、現在の記載は、御議論の中で出た意見をほぼ網羅的に記載しただけのものですので、各要素につき、このように評価して考慮要素にすることが妥当かという点を御議論いただければと思っております。
 ここで、四角囲みの論点2に戻っていただきます。先ほど来御説明しておりますように、考慮要素との関係では、①の補償の範囲というものが余り出てこないということになっておりますので、改めて①の具体的な内容は何なのかという点と、また、考慮要素との関係では評価根拠となりにくい①を労働契約解消金で補償すべき範囲に含めるべきかという点。さらに、①②以外に補償すべき金銭的損失や非金銭的損失があり得るかという点も論点として挙げさせていただいております。補償すべき範囲に他のものが含まれるとなった結果、考慮要素として考え得るものが増えるということであれば、御意見いただければと思っております。
 次のページに行っていただいて、解消金の定義と考慮要素の関係(評価的な考慮要素)の項目を御説明いたします。こちらも従来御議論いただいていた解雇の不当性と、解雇に係る労働者側の事情といった2つの要素を○で記載しております。
 A案との関係では、解雇の不当性は、①②の補償の範囲、いずれの評価根拠とならないため、考慮要素とすることは不要ではと記載しております。
 解雇に係る労働者側の事情は、②との関係で、今後の契約継続の可能性を下げるため、経済的損失が少ないと評価できるとして、考慮要素にできるのではとの御議論があったので、そのように記載しております。
 ここで、四角囲みの論点5ですが、特に、解雇に係る労働者側の事情に関してですけれども、このように言えるのかという点を御議論いただき、さらにAの考え方を突き進めて、①②のみを補償すべき範囲であると考え、労働契約解消金を労働者の地位の金銭評価だと考えた場合には、解雇の不当性のみならず、解雇に係る労働者側の事情も考慮しないという考え方もあり得るのではと思われますので、その点も御議論いただければと思っております。
 次に、B案に行きますと、解雇の不当性は、もし③、解雇の有効性をめぐる紛争に伴う精神的・名誉的損失を補償すべき範囲に含めるとすれば、解雇の不当性が高ければ、解雇に伴う精神的・名誉的損失が大きくなると評価できるため、考慮要素とできるのではと記載しておりますが、ここで、四角囲みの論点6になります。解雇が無効であるとの判断において、解雇の不当性は十分に評価されており、増額事由にはならないとの御議論もあったところですので、そことの関係をどう考えるかというところを論点として掲げております。
 その下、解雇に係る労働者側の事情は、②の関連ではA案と同様ですが、2つ目のポツでは、③の解雇の有効性をめぐる紛争に伴う精神的・名誉的損失を補償すべき範囲に含めるとすれば、紛争に対する寄与度により精神的・名誉的損失を甘受すべきと評価できるため、減額方向の考慮要素となるのではと記載しております。
 なお、先ほど述べましたとおり、③を補償すべき範囲に含まないとしても、紛争への寄与度によって使用者が補償すべき範囲を限定するとの考え方はあり得るかと思いますので、その場合、解雇の不当性や解雇に係る労働者側の事情は、補償の範囲を定める要素として考慮することになろうかと思います。
 最後に、算定方法の欄を御説明いたします。2つ、甲案、乙案と書かせていただいておりますが、甲案は従前から御議論いただいていた算定方法で、客観的な考慮要素のみで算定式を構成して基準額を算定した上で、一定の評価を要する考慮要素によって当該基準額を増額・減額する方法として記載しております。下に書いております乙案は、前回の資料でも記載しておりました、イギリスを参考にした算定方法で、違った計算方法もあり得るという参考として記載させていただいております。
 甲案に戻りまして、A案の甲案の下の矢印については、定義や考慮要素での御議論を踏まえ、算定方法を理屈づけるとしたら、こうなるのではというものを記載しております。A案のほうでは、補償すべき損失、①②の評価の基礎となる給与額に対し、①②の大きさを反映した客観的な考慮要素で基準額を算定し、解雇に係る労働者側の事情や合理的な再就職の期間等により基準額を増額・減額するという方法が考えられるのではということで、これまでの御議論をまとめた上で記載しております。
 また、その下の※印では、考慮要素から解雇に係る労働者側の事情を外す場合には、合理的な再就職期間等による基準額の増額・減額のみが可能と考えられると記載しております。
 続いて、B案です。甲案の御説明はA案と同様ですが、その下の矢印の点ですけれども、大変申し訳ありません。脱字がありますので、こちらの修正をお願いいたします。現在の記載が「①②の評価の基礎となる給与額を反映した考慮要素で基準額を算定し」となっているかと思いますけれども、こちら、A案と同様の内容を記載すべき箇所でしたので、A案と同様に、「①②の基礎となる給与額に対し、①②の大きさを反映した客観的な考慮要素で基準額を算定し」というふうに修正をお願いいたします。基本的には、前段はA案と同様の考え方ができるという旨を記載したものです。大変失礼いたしました。
 再度読み上げますと、前段はA案と同様で、「①②の基礎となる給与額に対し、①②の大きさを反映した客観的な考慮要素で基準額を算定し、解雇に係る労働者側の事情や合理的な再就職の期間等により基準額を増額・減額する方法」として記載しております。B案では、さらにその後ろになりますけれども、補償すべき範囲に③を含む場合には、個別事案に応じて③を反映した考慮要素により基準額を増額・減額することが考えられると記載しております。
 下の※印の点は、③解雇の有効性をめぐる紛争に伴う精神的・名誉的損失を補償すべき範囲に含むと考える場合には、算定において、不法行為による損害賠償債権との関係が問題になるので、その旨を記載させていただいております。
 ここで四角囲みの論点7になりますけれども、それぞれの算定方法に関して、このような考え方が可能か。他に補償の範囲を限定・拡張するような事情はあり得るかということで、論点として掲げさせていただいております。
 さて、残りの資料ですけれども、諸外国との比較も重要だという御議論でしたので、参考資料として、諸外国における仕組みを紹介した資料をお出ししております。こちらは、第5回検討会の際にお出しした資料を一部抜粋したものになっております。
 長らくお時間いただきましたが、御説明は以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 それでは、以下、議論に入っていきたいと思います。
 鹿野委員におかれましては、御発言される際は「手を挙げる」というボタンをクリックしていただいて、こちらから指名されたら御発言ということでお願いいたします。
 必要な資料は、モニターにも表示しますので、そちらも御覧いただけますと幸いです。
 資料1につきましては、既にこれまで提示していたものと基本的に同じですけれども、若干の追記等を行ったものです。もし追加の論点等がありましたら、その点について御指摘いただければと思います。本日の中心になりますのは、資料3の「労働契約解消金の定義等について」と、それから、これに関連して資料2ということになろうかと思います。こうした形で本日は御議論いただきたいと思います。
 まず、資料1のこれまでの議論の論点等をまとめたものですけれども、こちらについて、何か御指摘等ありますでしょうか。
 それでは、特にございませんでしたら、資料3の「労働契約解消金の定義等について」を御議論いただければと思います。今回、資料をお出しいただいて、かなり細かな点まで書き込んでいただいていますので。
 鹿野委員、御発言をお願いします。
○鹿野委員 鹿野です。本日は、次の用件との関係でオンラインで参加させていただくことになりました。申し訳ございません。
 それでは、意見として、今回の第1論点でありますところの解消金の定義について、少し意見を述べさせていただきたいと思います。私の声は聞こえていますか。
○山川座長 大丈夫です。
○鹿野委員 ありがとうございます。
 まず、これは確認ですけれども、解消金の定義というのは、あくまでも制度の内容をどのようなものにするかということを決めて、そこから、その内容に即した定義を設けるということになるものと思います。以前にもその趣旨の発言をさせていただいたことがあると思いますが、定義があって、そこから何か結果が出てくるという性質のものではないだろうと思っているところであります。
 その上で、今回、資料3が中心ですが、資料2も関係するところですので、資料2について、少し意見を述べさせていただきますと、狭い意味での解消金、ないし解消補償金という言い方をさせていただきますと、これとバックペイとは性質が異なるということは、既に大方共通の認識があるのではないかと思っているところであります。
 それから、資料2のデメリットという欄に、パターン3と4のところで、なぜ労働契約解消補償金又は労働契約解消金を支払ったにもかかわらず、バックペイまでも支払わなければ労働契約が終了しないのか、理論的説明が必要と書かれています。この点につき、労働法ではない人間からの素朴な疑問ということでもあるのですが、そもそも、これは理論的に導かれるという性質のものなのだろうかということが疑問でありまして、むしろ政策的考慮に基づいて、バックペイまで支払ったときに契約の終了にしようと考えられているのではないかと思います。
 というのは、先ほども言いましたように、そもそもの解消の対価という意味での解消金とバックペイとは、別の性質のものだと、私の頭の中ではそういうふうに捉えてきました。また、バックペイは、あくまでも労働者が併合提起をした限りで、その支払が労働契約終了の要件になるということであって、併合提起しなかった場合にバックペイも消えるのかというと、そういうことにはならないと思います。もし消えるとすると、労働者にとって、従来より改悪の結果となりますので、そういうことにはならないということだと思います。これらに照らせば、このバックペイと労働契約の終了とは、概念上、必然的な結びつきがあるというわけではないのではないか。
 むしろ、パターン3・4の理由は、第1に、紛争の1回的な解決を促しましょうということ[A1] そして第2に、より重要なのは労働者の保護という政策的考慮にあり、それに基づいて、このような併合提起があった場合には、その分のバックペイの支払がなされて初めて、契約が終了するのだと考えられてきたのであるとすれば、それで足りるのではないかと思うのです。もしかしたら私の勘違いもあるかもしれません。
 ついでに、今日のメインの資料であるところの資料3についてですが、AとBのどちらかというのは、内容によって決まるという関係にあるのだろうと思いますが、A案について、無効な解雇がなされたものとして確認されたという表現を使うと、何か判決等を受けたことを前提としているようにも見え、問題じゃないかということが論点の1に書かれています。
 しかし、これについては、単に表現を変えればよい。たとえば、無効なものとして確認されたというのを取ってしまって、無効な解雇がなされた場合において、労働者としての地位を、労働者の選択により解消することの対価ということ。あるいは、ちょっと順番を変えて、無効な解雇がなされた場合において、労働者の地位を、労働者の選択により解消することの対価とすれば、それでいいのではないかという気がいたします。
 要するに、実体法上、この解雇は無効だということを、結局はどこかで認定ないし判断する。労働審判も含めるとすると、そこででしょうし、あるいは裁判でということになると、そこでということになろうかと思いますけれども、そこで認められることが前提になっているということが示されればよいわけです。
 例えば、民法でもいろいろな場合がありますけれども、詐害行為取消権に関する424条の条文などを見ても、詐害行為取消権の前提要件として、詐害行為性の要件が必要とされるわけですが、このような実体要件については、そのまま条文に書き込まれているだけであります。もちろん場面が違うし、要件も違うので、そのままというわけにはいきませんけれども、こういう形の表現を取れば、それでこの論点1の問題は解消するのではないかと考えているところです。[A2] 
 ついでに、長くなって申し訳ありませんが、先ほど言いましたように、A案とB案というのは、どういう要素を中に含むかということによると思います。そして、B案は、もともとバックペイまで払って、それで契約関係が終了するということを念頭に置いて、少し広めの定義がなされているものと思います。ただ、バックペイとの関係だけで言うと、先ほどの資料2のパターン4にありますように、バックペイが終了の要件だということを上手に明確に書き込んでおけば、それで足りるのかなという気もするところであります。
 もっとも、ここでB案の下のほうの③に、例えば精神的・名誉的損失という表現が使われていますけれども、そういうものまでここに含むと考えるのかどうかということは、1つ、中身の上で問題となってくるかもしれません。そこまで含むとすると、A案の先ほど申した定義でもカバーしきれないということになる可能性はあるのかなという気がしました。個人的には、早期に簡単に解決するという制度作りを重視するならば、精神的損失等はここには含めず、A案のような形で絞って、資料2で言うとパターン4のような形で整理するということが考えられるのではないかという気はしておりますが、まだ確定的な意見を持っているというわけではございません。
 以上、すみません、長くなりました。
○山川座長 ありがとうございました。
 大きく5つぐらい御指摘をいただいたかと思います。解消金の定義は、機能的に、その他の論点の内容によって決まるべきものだということ。
 それから、バックペイと解消金の性質が異なるというのは、これまでの議論でおおむね了解が得られているということ。
 それと、資料2のパターン4のように、バックペイの支払まで雇用終了の要件とすることの法的な理論づけというよりは、政策的に決まるべきものではないかという点。
 それから、解消金の定義で、無効な解雇がなされたものとして確認されたという表現ぶりについての御提案もいただきました。
 最後は資料3のB案についてのお話でありまして、これは特に③と④の要素を考慮に入れるとしたら、このB案について、特に考慮する意味が出てくるのではないかという点、御意見としては、シンプルに考えたほうがいいのではないかという点であったかと思います。
 以上につきまして、事務局からは何かございますか。御質問がありましたのは、法的にどのように考えるべきかという資料2の部分は、むしろ政策的なことではないかということでしたけれども、それらも含めて、何か事務局のほうからございますか。
○武田労働関係法課課長補佐 今、鹿野委員から御意見いただきましたように、従前、パターン3、パターン4を議論いただく中では、政策的にバックペイまで支払わなければ、契約は終了しないとすべきではないかという御意見だったと記憶しておりますけれども、もし法的にそういう理屈づけが全くできないということになってしまいますと、政策的に入れるべきだとしても、入れることができないという可能性もあるのではないかというところもありましたので、理論的な説明が可能なのか、おっしゃっているように、あくまで政策的に必要なのだという限度で含めることが可能だということなのかどうかということを確認できればと思っております。
○山川座長 ありがとうございます。
 そこは理論的というか、ある種の制度の趣旨から、帰納的に解決すべきものの他に、演繹的に解決すべき部分が何かあるかどうかという点とも関わるかなという感じもしております。基本的に、表現ぶり等は帰納的に考えてよろしいかと思いますが、制度の趣旨のような、これも大きく分ければ政策なのかもしれませんけれども、そちらで左右されるものもあり、鶏が先か卵が先かみたいな感じがしているところですけれども、そういう趣旨であったということでしょうか。
 ほかの委員の方々。では、中窪委員、お願いします。鹿野先生、こちらの声は聞こえていますか。
○鹿野委員 聞こえています。事務局がおっしゃったときが、少しだけ声が小さかったのですけれども、一応聞こえましたので大丈夫です。
○中窪委員 よろしいですか。いろいろな論点がありますけれども、1つには、こういう新しい制度を作るのですから、そのときに労働契約解消金をどういう内容にするかというのは、こちらで定義して、そういうふうにすればいいわけで、どれが正しいということはないと思います。
 その上で、資料2は、長い間にだんだん内容が追加されてきたのですけれども、もともとはパターン1、2と3までしかなかった気がします。解消金というのは、バックペイ等とは別のものだと理解するのが左のほうの1と2で、我々は本来そういうふうに考えていたと思うのですが、むしろバックペイも一緒に払わせて、そこまで払わないと解消できないという意味で、労働者を保護しようという、パターン3というのが出てきて、そのときに、むしろバックペイまで含めて解消金と呼んだらどうか、というふうに多分なったのだと思うのですね。
 その後でパターン4というのが追加され、同じような趣旨であれば、解消金というのを元のところに限定して、バックペイを外出ししておいて、でも、そこまで払わないと解消できないという形にする、というのはあり得て、それは基本的に中身は同じだから、メリット、デメリットは3と共通だということで、右に追加されたのだと思います。
 今、改めて定義との関係で言うと、解消金の定義としては、パターン1、2と4が共通していて、3はちょっと違う発想になります。むしろパターン4を左側にくっつけて、本当は線を少し空け、もし解消金としてバックペイまで含めるのであれば、もう一つ別の考え方になる、とパターン3を切り離すべきだと思うのです。それがいろいろ長い間やっているうちに、今のような少し分かりにくい形になったのかなと思うのが1つです。
 それから、もう一つは、A案、B案ということで資料3に出ておりますが、確かに従来、労働者の地位を解消することの対価として解消金というのを考えていたのですけれども、そのときにそれだけでは割り切れない、いろいろな要素が入ってくるかもしれないということで、紛争の解決という観点を入れてもいいのではないかという議論になりました。ただ、だからといって、そこにバックペイとか賠償を入れるというのは、ちょっと論理の飛躍があるような気がするのですね。
 関係の解消だけには絞れないということで、金額の算定のために若干の追加的な要素を考慮することはありえると思いますけれども、正面からバックペイも入れろとかとなると、今までの議論とは違う場所にいると考えないといけないのかなと思いました。
 それから、解消金の定義について、無効な解雇が確認されたという部分は、そこまで厳しくすることはないのではという気がします。要するに解雇が無効でなければ地位がないわけですから、そのときに労働者の地位を本人の選択により解消することの対価というだけで、本当は十分だと思うのです。それが発生するのは、解雇が無効な場合にこの制度の下で発生するということだけ言えばいいので、そのときに定義をどこまで含めてやるかというのは、1つ整理の仕方だと思います。そういう意味では、さっき鹿野委員がおっしゃったように、そこは書き方をとりあえず工夫して、軽く書いておけばいいのではないかと思います。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 資料2のパターンが出てきた経緯の御説明、これは私もそのような流れで出てきたものだと理解しております。
 あと、資料3のB案のインプリケーションと、A案の定義の「確認された」ということについて御意見をいただきました。
 鹿野委員は、先ほどの御発言との関係では、何かございますか。
○鹿野委員 それでは、B案について、今、中窪先生がおっしゃられたことに関連して、一言だけ。よろしいですか。
○山川座長 どうぞ。
○鹿野委員 私も、B案にしたら、例えば③が必ず入るとは思っておりませんが、この表現を使うと、これで全て解雇の紛争は終了するような印象の定義になると、別の意味で誤解を招くことにもなりうるかなとは思っております。
 もう一つは、多様な要素を解消金の金額とかに含めるとしても、それは要素の話であって、A案として解消することの対価の考慮要素として示せば、それでも足りるのかなと思っております。ただ、先ほども言いましたけれども、A案がよくて、B案が駄目だというような定見を持っているというわけではございません。
○山川座長 ありがとうございます。
 それでは、ほかの委員の方々、いかがでしょうか。
 では、垣内委員。
○垣内委員 垣内です。ありがとうございます。
 既に発言のある点に関連することですけれども、まず、資料2の関係です。先ほどのデメリットのところの理論的説明というところに関するお話で、確かに法的に何か理論的な説明ができれば、できたほうがいいということはあるのかなと思うのですけれども、恐らくそういう観点を強調すると、例えばパターン2のような説明、つまりバックペイは別債権なのだけれども、先に充当されるので、結局全部払わないと消滅しないということであれば、そういう意味での法的な説明にはなり得ているだろうと。
 ただし、パターン2のデメリットのところでも指摘されておりますように、他に同様の例がない。これも、結局そういう充当の特則を設けるということの実質的根拠が、労働者保護等の政策的な配慮ということになると思いますので、同じような政策判断をしたときに、法的構成として何が取りやすいかということで、例えばパターン2というのも同じような政策判断の下に[A3] り得る考え方でしょうし、別にそういう説明をする必然性はなくて、労働契約解消の要件として、判決で命じられたバックペイの全額の支払も必要であると法律に書けば済むことであるという考え方を取るのであれば、パターン3なり4なりでも特に問題はないということになろうかと思います。
 なので、出発点となるのは、バックペイも払われなければ解消という効果を認めるべきでないかどうかという、その点の実質的な、その意味では政策的な判断ということになるのかなと思います。
 それから、資料3でA案、B案に関してですけれども、まずA案の論点1のところについては、既に御指摘ありましたように、これは表現ぶりの問題かなという感じがいたします。例えば、解雇が無効であることにより、法的には存続している労働者としての地位を、労働者の選択により解消することの対価という言い方をするのであれば、こういう論点をあえて取り上げなくてもいいということにもなるのかなという感じがいたします。
 このA案、B案というのは、最終的には具体的にどういう制度が望ましいのかということを検討した上で、それに見合う定義をすればいいというお話だろうというのは、鹿野先生の御指摘のとおりかなと思いますけれども、大きな考え方の方向としましては、A案の現在の文言が解消することの対価という形になっていますので、やや不明瞭な感じもするのです。基本的に1つの見方として、要するに失われる労働者の地位の対価と申しますか、補償である。労働者の地位の金銭的評価に尽きるのであるというように考える方向というのが、1つはあり得るだろうと思います。
 その場合には、基本的には給与の額と、それが将来にわたって支払が期待できる時間的なスパンというものが基本となって決まるということになるのではないかと思われますけれども、そのあたり、労働者の地位というものを経済学的にどういうものとして評価するのかというのは、いろいろな評価があり得るのかもしれません。
 それに対して、もう一つの考え方としては、単に労働者の地位の経済的な評価ということにとどまらない、様々な具体的な事情を考慮して、使用者と労働者の間の公平が図られるような金額というものを考えるべきであるという考え方がありそうなのかなと思われまして、そちらの考え方に親和的なのは、現在の整理で言えばB案ということになるのかなと思います。ただ、その場合でも、どういう形で両者の間の公平を図っていくのかというのは、様々な段階というものがあると思われますので、バックペイも当然に含めるべきであるといったことになるのかどうかというのは、それはまた別の判断を要するところなのかなと思います。
 その点で、資料3の2ページ目ですけれども、最も問題となる解雇の不当性であるとか、解雇に係る労働者側の事情を考慮するかどうかという点ですけれども、私自身は、先ほどの整理で前者として挙げた経済的対価、あるいは労働者たる地位の経済的評価という点から申しますと、解雇の不当性とか解雇に至る労働者側の事情等については、基本的には考慮しなくてよいというのがすっきりするのかなと考えておりまして、A案に立ったときに、これは論点5に関係するかもしれませんけれども、こうした評価的な要素は基本的には考慮しないという考え方が、1つ選択肢としてあり得るのかなと思います。
 他方、これらを全て考慮していくという考え方も、一番具体的な事情を最も考慮するという場合にはあり得るところだろうと思われますけれども、そうなりますと、損害賠償請求権との関係等の難しい問題も発生してきますし、審理に当たっての裁判所における審理の負担等も生じる、あるいは予測可能性の点で問題が生じるということも出てきますので、余り何でもかんでも考慮すればいいというものでもないだろうというようにも思われます。
 他方、例えばA案に立ってもそうですけれども、B案に立ちましたときに、解雇に係る労働者側の事情については、例えば今後の契約継続の可能性を下げるといった観点から考慮するとしたときに、解雇が不当であったことについては何ら考慮しないということですと、これは私、労働法の専門家ではありませんので、素人考えかもしれませんけれども、両者の公平という観点からすると、やや納得が得られにくいところがあるのではないかという感じもいたします。
 そうしたときに、例えばB案に立ちつつ、解雇に係る労働者側の事情を減額事由として考慮する場合については、その減額に対する障害事由として解雇の不当性をその場合に限って考慮するという考え方も、選択肢としてはあり得るのかなと思われまして、いずれの具体的な規律が最も望ましいのかという点について、確たる考えを持ち得ているわけではありませんけれども、現在のところ、そんな印象を持っているところです。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 ほかの委員の方々から何かございますか。よろしいですか。
 今のお話は、鹿野委員のお話の中にもありましたけれども、それぞれの論点の内容によって、帰納的に出てくる部分が多いというお話は、中窪委員もそういうお話だったかと思いますが、今の垣内委員のお話では、そもそもなぜそういう制度を入れるのか、かなり大きな政策的な選択を前提としているかなという感じも、私としては抱いたところであります。これも帰納的に考えるか、演繹的に考えるかというお話の一環になるかと思いますけれどもね。
 ほかに何かございますか。
 小西委員、どうぞ。
○小西委員 ありがとうございます。
 私は、細かなところですけれども、A案、B案、ともに対価という言葉を使われているのですが、これがどういう意味合いを持っているのかということが若干気になっているところです。例えば、B案だと、労働契約の終了によって解決させる対価ということで、この対価が支払われると労働契約の終了によって解決すると読めそうな感じです。ですので、この場合、バックペイというものをどう位置づけるかというところとも関係してくるかなと。先ほど来議論がありましたけれども、パターン3とかパターン4では、バックペイの支払がされることを前提として労働契約を終了するというところですので、そのあたりをどう考えるのかというのが気になっているところです。
 ですので、A案の対価という言葉の使い方と、B案の対価という言葉の使い方が若干違うような、これは直感的なのですけれども、気がしているところですので、また今後、私自身考えていきたいと思います。
 私からは以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 それから、先ほどの垣内委員のお話ですが、事務局からは特に何か追加することはございますか。よろしいですか。
 垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 すみません、ちょっと先ほど言い落とした点がありまして、今も話題になりました資料3のA案、B案で使われている対価というところの文言ですけれども、現在、A案のほうは解消することの対価、B案は終了によって解決させる対価ということになっていて、その限りでは、両者の違いというのは見えにくいと申しますか。先ほど2つ方向が考えられるのではないかと申し上げた際の、労働者としての地位の金銭評価という考え方を仮に反映する定義をしたといたしますと、解消することの対価ということではなくて、まさに労働者としての地位の対価という言い方をしたほうが、論点は明確になるのかなという感じがいたします。
 他方、解消することという行為の対価という形で考えますと、解消するという行為の対価となり得るのは、失う労働者の地位は当然含まれるでしょうけれども、それに加えてほかのものを含むという考え方も当然には排除されないようにも思われるところで、そうした点からは、鹿野委員もおっしゃったように、A案をベースとして、その不当性等の考慮事情を場合によっては盛り込むということも、絶対あり得なくはないというのは、そうしたところから出てくるのかなと思われますので、A案なのか、Aダッシュ案なのか分かりませんけれども、最も純粋形としては、まさに労働者としての地位の対価と考える考え方があり得るのではないか。
 それに加えて、ほかの要素も何らか解消することの対価に含めていくということで広げていくことがよいのかどうかという形で検討していくということもできるのかなと思っております。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 今の点は、制度の内容に関わるかなり重要な点ではないかという感じがしております。対価の内容として何を含めるかということと、そもそも何の対価であるかというのは、若干具体的にはずれがあるのですけれども、制度の趣旨ということからすると、何の対価かというのが大きな点として出てきそうな感じがいたします。
 すみません、個人的なコメントでしたけれども、ほかに委員の方々から何かございますか。
 では、神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 資料2のパターン3とパターン4は、結局中身は同じ発想で、バックペイの支払を労働契約終了の要件にするということで共通していて、あとは呼び方の問題で、パターン3だけ狭義の労働契約解消補償金という別の概念をとっているのですけれども、この中身について、特に突っ込んだ議論もしてきませんでしたし、言いたいことは、パターン4と同じなので、パターン3は取ってしまってもいいのではないかと思います。具体的に議論する上での分かりにくさを解消する1つの方策なのではと思いました。
 それから、2点目は、資料3の無効な解雇がなされた場合の解消金の定義のところで、資料の冒頭で、この制度の対象となる「全ての解雇・雇止め」です。改めて時間を置いて見たときに、雇止めを入れてしまうことと定義との関係が若干気になりました。これだと、全ての解雇と全ての雇止めということになりそうですが、恐らくその雇止めは、単なる有期労働契約の不更新ではなくて、労基法19条の適用されるような合理的期待ないし実質的同一性によって、解雇権濫用法理が類推適用されるような有期労働契約の不更新を指していると思うのですね。
 それがほかのところで問題になってくるのではないか。例えば、「無効な解雇」にしても、「無効な」というところが、雇止めには出てこない。19条は、更新の申込みの承諾みなしの規定なので、無効かどうかは出てこないので、定義上,雇止めを含めてしまうときに問題になるかなというのがテクニカルにはあります。
 それから、定義から離れて、まさに雇止めを入れるかどうかの問題になるのですけれども、法律上は、期間満了を解雇と並べてしまって大丈夫かを改めて問題提起したいと思います。というのは、今般、世の中に生じている現象としては、正社員の解雇よりも、有期契約の不更新が圧倒的に多いですので、どんな不更新がこの制度の対象になるかが分かりにくいと、紛争が非常に増大するのではないかと考えています。
 とくにこれまでは、有期労働契約の更新の申込と承諾が規定されるという効果だったから余り問題にならなかったことも、金銭補償ができるということになると、それが紛争化、顕在化するという可能性もありますので、改めてそこの関係を問題にする必要があるかなと思った次第です。
 今のところは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 今、まさに神吉委員がおっしゃったようなことが、今回、資料1に雇止め等について追記した趣旨かと思います。事務局からは、今の御発言につきまして、よろしいですか。
○武田労働関係法課課長補佐 神吉委員の御理解のとおりで、その点、御議論いただければと思っております。
 なお、今のことも踏まえて、もし定義もこのままではということであれば、その点も御議論いただければと思います。
○山川座長 ありがとうございます。
 これまで、前の検討会も含めて、解雇と雇止め、特に不当な雇止めを、政策的に見たらほぼ同じようなものだと考えられていたかと思いますけれども、そうでもなかったですか。多分、神吉委員が言われたように、判例の雇止め法理というのは、もともと実質的に無期契約と認められる場合でも、合理的期待[A4] がある場合も、解雇に関する法理を類推すると言っていて、解雇と同じように扱うのは、今で言う19条の1号2号の要件が満たされた場合です。さらに、現在の条文だと法定更新になっているので、仮にこういう制度を導入した場合には、雇止めについては、実質は変わらないとしても、別個の仕組みが必要になるかもしれないという感じがします。
 中窪委員、お願いします。
○中窪委員 資料1の最初のところに全ての解雇・雇止めと書いていますけれども、まずは解雇についてきちんと概念整理をして議論しようということで、今まで雇止めは、そんなに正面から議論していなかった気がするのですね。確かにそれも必要だと思うのですけれども、場所として、いきなり最初に雇止めを入れますと議論が非常に混乱しますので、解雇について一旦全部書いた上で、では、雇止めについてどういうふうに整理しましょうかということで議論したほうがいいのではないかと私は思います。
 それから、ついでに先ほどの資料3の解消金の定義ですけれども、さっき言いましたように、私はバックペイとか賠償を入れるというのは違う発想だと思います。A案、B案と切り離す形で、C案というのがもしあって、そこにバックペイや賠償金も入るような形の、前の表のパターン3みたいなものがもしあるとしたら、それは1つの考え方かもしれません。他方、A案とB案については、先ほど来指摘されていますように、余り違いはないという面もありますので、定義については、例えば無効な解雇により生じた労働者の地位をめぐる紛争について、労働者の選択により労働契約を終了させることによって解決させるとかいう形で、共通にできると思うのです。
 そのときには次にもう1つ欄を設け、解消金の主眼はどこにあるかという点で、A案のほうは労働者の契約上の地位そのものの解消ということにあるのに対し、B案のほうは、それに限らず、紛争の解決ということになるのでしょう。そのことが考慮要素として、どういう具体的な違いをもたらすか、という話だと思います。
 それから、先ほど垣内委員がおっしゃったように、地位そのものに関しては、解雇の不当性とか労働者の帰責要素みたいなものは考慮しないほうが一番すっきりすると思うのです。ただ、実際、労働法の判例を見ていると、解雇権濫用にはなるのだけれども、100対0のケースもあれば、49対51みたいなケースもありますから、そこが同じでいいのかなとついつい思って迷いが生じます。そこをどう考えるかというのは非常に難しい問題だと思います。
 また、裁判所のほうに、自由とは言わないまでも、裁量の余地を余り大きく認めることによって、制度の運用が不安定になる可能性も考えないといけない気がします。微妙な要素ですけれども、そういう問題があるということは申し上げておきたいと思います。
○山川座長 ありがとうございます。
 雇止めについては、別建てにして解雇についてある程度出てきてからにするのはそのとおりだと思います。今回初めて、このお話が出てきたものですから、整理するときは、雇止めの場合はこうだというのを、かなり後のほうでというか、別建てにしていただいてはどうかと思います。
 それから、確かに定義と制度の趣旨の関わりということもありますので、定義のところに説明をちょっとつけたほうがいいのかなと思います。どうつけるかというのは、また別ですけれども、ちょっと検討していただければと思います。結局のところ、余り変わらなくなってしまうのかもしれませんけれども、定義をそれぞれ説明していくと、どういうことになるかということでしょうね。まだ、具体的なイメージがわかないですけれども、中窪委員が言われたのは、そのようなことでしょうか。定義そのものというよりも、それぞれの趣旨といいますか。
○中窪委員 要するに、そこから違いが出るということが表にする場合には重要なことであって、定義をどう定めるのかは、後で考えればいいかなと。
○山川座長 あとは、解雇による精神的・名誉的損失とかバックペイの取扱いをシンプルにするという御意見と、含められる可能性もあるという御意見がありまして、これはB案だとこうなるというよりも、まさに政策ないし、制度の趣旨をどう考えるかによって変わってき得るのかなという御意見が、ほかの委員も含めて多かったのかなという印象を抱いております。どうするかについては、まだいろいろ御意見があると思ったところです。
 ほかに何かございますか。
 A案、B案の定義の仕方は、それぞれ各論点等の内容や趣旨を考えて検討していけばよいと私も思います。言葉の問題かもしれませんが、A案をだんだんとシンプルにしていくと、解雇が無効な場合は労働契約が存続するので、解雇が何もなされなかったのと同じになるとすると、労働者が自分の選択で辞職した場合とどう違うのかという問題が出てきまして、その点が説明の際に必要になるのか。
 B案ですと、紛争が介在しているという表現が出てくるわけですけれども、A案を突き詰めて、解雇が無効だというのはどういうことなのですかと言われたら、通常労働契約が存在している状態と同じにようになり、抽象化するとそうなることをどう考えるかという問題が出てくるのかなという感じはいたします。
 ほかに何かございますでしょうか。様々な考慮要素についても、資料3で提起していただいておりますけれどもね。
 小西委員。
○小西委員 論点1じゃないところでも構わないですか。はい。
 そうしますと、論点4についての各要素のところです。最初の○で勤続年数というのが記載されていて、他の外国では勤続年数というのが1つ大きなファクターになっているところかなと思います。これが今回の制度設計の中で、どういう理由から勤続年数というのが係数として入ってくるのかという説明をしなければいけないということになると、またそれはそれでしんどいかなというのが率直なところでございます。
 まず、勤続年数の1つ目の●ですけれども、長いほど就労実績の積み重ねの喪失が大きいと評価することも可能かなとも思いますけれども、これは実際の労働市場との関係で言うと、どちらかというと○の年齢のところに記載されていますけれども、再就職の困難というところと関係してくるような話なのかなとも思っています。
 ○の勤続年数の2つ目の●ですけれども、長いほど、今後も契約継続の可能性が高いということも、本当にそう言うのかどうかという問題もありますし、というところからすると、その他のところにも関係してくるのかもしれないですが、勤続年数というのをどの程度、実際の解消金の考慮要素として機能させるかというところを説明することについては、なかなか難しいなと感じているのが率直なところです。
 私からは以上です。
○山川座長 ありがとうございました。
 今回は、かなり各考慮要素の説明についても載せていただいていますので、それについての御意見でしたけれども、ほかに何かありますか。
 外国では、今回、参考資料にもありますけれども、勤続年数を考慮している国が多いということも、比較法的には1つの背景になっているかと思いますが、日本でもし制度を設計しようとした場合に、どういう説明をするかは、また別個出てくる論点になろうかなと思います。
○中窪委員 今の勤続年数については、私は10年間そこで勤めていた人と、1年とか2年の人が、同じ解雇無効であっても失うものの大きさが違うというのは、割かし自然に出てくる気がします。それは年齢と重なることも多いでしょうけれども、しかし、別個の要素として考えても悪くないのかなという気がします。
 私がちょっと分からないのが企業規模という点です。これが大きいほど雇用安定の可能性が高いと言われると、確かにそう見えそうな気もするのですけれども、必ずしもそうではないですし、それによって大企業に勤めている人と中小企業に勤めている人がもらう金額に差が出てくるというのは、何か納得し切れないところがありまして、これをどう落ち着ければいいのかなというのが一番気になるところです。
○山川座長 ありがとうございます。
 各要素がそもそも独立しているのかということにも関係しているかもしれないですね。勤続年数と年齢と給与額の関係とか、企業規模の関係とかも出てくるので、それぞれ一つ一つ取り出して考えるのかどうかという点にも関わるかもしれません。そういう形で、個々の要素についても御意見ありましたら、お願いします。
 神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 私も中窪先生と同じく、企業規模を入れるのはどちらかというと反対です。ほかの要素は曲がりなりにも本人の属性だと思うのですけれども、企業規模というのは、そこからは大分離れてしまう。
 それから、統計的にそうであるということと、それに規範性を認めるということとは別問題だと思うのですね。仮に、男性のほうが女性よりも勤続年数が長いから、男性のほうが雇用安定性が一般的に高いと評価すべきかというと、恐らくそうではないと思います。女性のほうが育児や何かで離職の確率が高いという統計的な現実があったとしても、だからそこで差をつけようというふうには直結しないはずなので、結局は企業規模間格差というものをどう位置づけるかが問われる。
 どちらかというと、男女間格差と同じように、日本の規模間格差は、いろいろな労働条件格差の原因にもなっている、是正されるべきものだと思うのですね。とすると、ここで差をつける方向に法制度として持っていくのは、逆行しているのではないかと思います。実際に,安定性が高いところで現実に解雇が起きてからの話ですので、本来的に安定性が高かったでしょうと言われても、なかなか納得しにくい。
 それから、恐らく規模間格差は、労働条件のいろいろな側面、実際の給与額などで差がついているはずですので、二重評価の可能性もあるかなと思っています。そういう意味では企業規模をこの要素とすることは難しいのではないか。いずれにせよ、企業規模何人というところで線引きをするという具体的な制度として考えてみて、一人二人の差でもらえる金額が大分違ってしまう。自分自身の解雇に関する寄与度とかと関係なく、その会社が何人雇っているかで、解消金の額が決まってくるのは、労働者にとって納得が得られにくいと思っています。
○山川座長 ありがとうございます。
 この要素に関する資料の趣旨は、多分、この要素を考えるとしたら、こういう説明が可能であるということで、事務局としてこれを入れるべきだと結論が決まっているとか、そういうことではもちろんないということですね。それを前提として、委員の先生方からいろいろ御意見をいただきたいと思います。
 垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 大変難しい問題なのですけれども、勤続年数に関してです。これも具体的にどういう形で考慮するのかということによっても、その意味合いというのは相当変わってくるところがあるのかなと思われまして、例えば20年の人は10年の人の2倍であり、10年の人は5年の人の2倍でありという形で、リニアに反映していくという形ですと、なかなか説明が難しいところもある。特に、諸外国と違いまして、退職金が一般的に存在しているという日本の状況を前提にすると、少し違うのではないかという議論がありそうな感じがいたします。
 他方、例えば3年未満の人と、10年20年働いている人と考えたらどうかという観点は確かにあり得るように思います。そうしますと、5年なり、3年なり、一定の期間以上勤めている場合と、それ以下の場合を区別するぐらいのことであれば、一定の説明というのはあり得るのかなという感じもいたします。
 それから、今日、出していただいている資料3の1ページ目の一番最後と申しますか、A案の一番下のところで、年齢に関する2つ目のポツですけれども、年齢が高いほど再就職が困難となり、経済的損失の補償の必要性が高いという評価というのが記載されています。これは、これ自体としてはあり得る考慮なのだろうと思うのですけれども、この種の損失の補償の必要性という観点を入れるかどうかということも、1つかなり重要な論点なのかなと思っています。
 単に客観的な対価というだけでなく、その損失の補償の必要性という要素をどこまで盛り込むべきかということで、仮にこれを盛り込むということで考えたといたしますと、例えば次の2ページのA案のところで、解雇に係る労働者側の事情というところで、今後の契約継続の可能性を下げるため、経済的損失が小さいと評価という考え方が記載されておりますけれども、この解雇で労働者の側にもそれなりに解雇されてもやむを得ないと思わせるような事情があったという場合は、再就職との関係で申しますと、再就職がそれほど容易でないだろうということを推認させる事情だという位置づけも可能のように思われます。
 前のページで言われているような観点を入れるとすると、解雇に係る労働者側の事情というのは逆方向に利いてくるという可能性もあるのかなと思われまして、どういう観点から考えるのかということによって、それぞれの要素について様々な意味づけと申しますか、位置づけが可能であるというところが、なかなか複雑で難しいなと思っているところです。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 今の点も、制度の個々の点ということに加えて、制度の趣旨、損失補償、補塡ということをどれだけ詳細に考えていくかという点にも関わる点かなと思います。今回、初めて出てきたものですので、いろいろな御意見をいただいておきたいと思いますけれども、いかがでしょうか。
 あと、先ほどバックペイとか精神的損害の補償のようなお話も、資料の各パターンとの関係とか、制度の定義との関係とか、いろいろ御意見をいただいたところですが、この辺は理論的な問題ではないかもしれませんけれども、フィージビリティーといいますか、例えばバックペイも含める場合、バックペイというのは一体何かという点は、判決からどうやって判断するのか。
 これは、一義的に判断できる、金何十万円を毎月給与の支払日ごとにいつまで払えという場合は、これはバックペイの趣旨であるということは明らかですが、過去の分について一括して払った場合に、バックペイ部分とそうでない部分は、実務的に区別できるものなのでしょうか。これは、どなたか御存じの方がいたら、事務局の皆さんでも結構ですけれども。そういったフィージビリティー的なものも検討していく必要があるのかなという感じもしております。
 どうぞ。
○武田労働関係法課課長補佐 今の点の御趣旨を確認させていただければと思うのですけれども、過去の分を一括して支払った場合というのは、例えば現状、裁判においては、訴え提起時に、まだ支払われていないバックペイについて、解雇の時点から月幾らずつ支払えということで請求するのが一般的かと理解しているのですけれども、そうではなくて、例えば訴え提起のときに、訴え提起までのものについては、まとめて幾らと労働者のほうで計算してしまって、まとめて請求してしまったような場合は、バックペイなのか何なのかということが請求の趣旨上、区別がつかなくなるのではないかという御指摘という理解でよろしいですか。
○山川座長 はい。遅延利息を給与支払日から計算した場合には、過去分についても、何月何日からの利息という形になりますけれども、例えば請求時から遅延利息を支払えという場合には、口頭弁論終結時に金額が確定したら、それを一括して丸めて払え、そういう主文は余りないという理解でよろしいですか。
○武田労働関係法課課長補佐 確認して、次回までに報告させていただきます。
○山川座長 すみません、私が実務を知らないせいかもしれませんが。いずれにしても、バックペイの金額を主文だけで、あるいは主文の書き方で特定できるのかという問題が何となくありそうだなと思って、お伺いした次第です。
 あと、一部請求で期間の一部だけ請求して、それを認容した場合、バックペイは実体法上は裁判で認容された以外にもあるはずですけれども、それも払わないといけないのかとか、いろいろな問題がバックペイについては技術的にはありそうな感じがしております。
 ほかの委員、御意見等ございますでしょうか。
 垣内委員、どうぞ。
○垣内委員 今のバックペイの取扱いに関してですけれども、本日の資料2のところで書かれている説明などを拝見しますと、取扱いについてはいろいろ考え方はあり得るところだろうと思いますけれどもね。
 1つの割り切りとしては、解消金請求と併合提起し、判決で支払を命じられた分とするという考え方が出されていて、これですと、今、座長から御指摘のあった一部請求などにとどめた場合であれば、その請求額が払われればという取扱いということになるのかなと思われますけれども、それも他に例が多いかというと、余り思い当たるわけでもないような、かなり特殊な制度設計ということになるかと思いますので、どこまでそういうものを定めることができるのかといったあたりも検討課題なのかなと思っております。
○山川座長 ありがとうございます。
 確かに、資料2のパターン2のところに「併合提起の場合は」ということなので、制度の仕組み方として、こういうふうにすればそうなるということでしょうか。ありがとうございます。
 資料3を中心に御意見をお伺いしてまいりましたけれども、ほかに資料1、2に遡っても結構ですけれども、全体として何か御質問、御意見がありましたら、お願いいたします。
 小西委員。
○小西委員 資料1の、先ほど少し議論があった有期労働契約のところに関してですけれども、雇止めについては、これはまた別途議論するということだったかと思います。期間途中の解雇というのも、少し考慮が必要かなというふうにも思っているところです。期間途中解雇のとき、期間までというのが1つの考え方として考えられますけれども、その後の契約更新についての継続の期待というのがあるかどうかという話とも関係してくるかなとも思いますので、1つとしては、雇止め、あとは期間途中の解雇も含めて、有期労働契約については、また別途の議論の仕方も考えられるのかなとは感じております。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 確かに雇止めの話と期間途中の解雇はセットで出てくることもありますし、期間途中の解雇が無効にされた場合に、裁判で長期間、ある程度の期間がかかるとすると、多分地位確認というのは意味がなくなってしまうか、あるいは最初から求めない場合が多いと思います。これまでですと、期間中の賃金をある種バックペイ的に求めている事例が多いのではないかと思います。無期契約の場合とは、かなり様相が違う点がありそうですね。その点も別途考慮する点になるような感じがいたします。今の御意見を聞いて、そのように思った次第です。
 資料1も含めまして、何かさらにありましたら、お願いいたします。
 どうぞ、垣内委員。
○垣内委員 資料1の2ページで論点が2つ記載されているところで、1つ目は、意思表示の撤回の関係で、形成権構成の場合に訴え等の取下げがあった場合、どうなのかという問題ですけれども、現在の形成権構成というのは、基本的には裁判上の行使を要件とするという形で想定されているかと思われますので、ここでの形成権行使というのは裁判上でされるという前提だろうと思います。
 そうしますと、現在、既存のその種の拮抗的な制度と申しますか、ものとして、例えば訴訟上の相殺の抗弁といったものと共通する部分も出てくるのかなと思われまして、これは規定でどうこうというよりは、解釈の問題ということになるのかもしれませんけれども、学説上は、訴訟上の相殺の抗弁の場合に、それが実態的な判断の対象にならないで取下げ等になったときには、実体法上の効果は残らないという考え方も有力なのかなと思われます。そういった関連論点との関係で、解釈論上の問題としてどう整理するかということを検討する必要がある論点なのかなと思っております。
 それから、同じページの一番下のところで、相殺や差押えが認められる場合に、実際相殺等の意思表示あるいは差押えがされた後に撤回することができると考えるかどうかという問題で、これもまさに政策的に両論あり得るだろうと思いますけれども、前提として、先ほどの1つ目の論点が掲げられていた意思表示の撤回について、判決または審判確定時まではできるという立場を取ったときに、相殺の期待あるいは債権者が責任財産として、まだ撤回ができるような時期にある金銭救済請求に係る解消金債権を責任財産等として期待できるとすべきなのかどうかという問題。
 あるいは、債権者以上に利害関係を持っている使用者の側では、それは撤回は甘受すべきだとされていることとのバランス。
 また、場合によっては、使用者自身が労働者に対して債権を持っているということも、少なからずあり得ることかと思われまして、その場合、使用者の側で相殺すれば撤回できなくなるということになるのかどうかといったあたりを考えつつ、どう考えるべきかを検討していく必要があるのかなと思っております。
 以上です。
○山川座長 ありがとうございます。
 このあたりになると、労働法の専門だと、ふだん余り考えていないことが多いですけれども、1点だけ、労働者に対して、使用者側が賃金債権で相殺するのはできないのですけれども、ここに解消金というものの性格づけにも関わる論点が入るのかもしれないですね。ありがとうございます。
 ほかに何かございますか。
 神吉委員、どうぞ。
○神吉委員 戻って資料1の1ページ目の最初の行、対象となる解雇等は「全ての解雇・雇止め」というところです。先ほど小西先生がおっしゃった期間途中の解雇をどうするかという問題もあり、中窪先生も、最初の1行から全ての解雇・雇止めと入るところが問題を大きくしているのではないかというのもそのとおりだと思います。
 議論の経緯からすると、ここで「全ての」と言っているのは、法律上禁止されている禁止解雇とか、諸外国で格別の考慮をされている差別的な解雇などを含むかという議論をしたときに、それらを排除せず、解雇であれば全部扱おうということで、「全ての」という表現に落ち着いたのだと思うのです。けれども、改めて立てつけの最初にどんと来てしまうことによるインパクトが大きい。雇止めは、恐らく余り議論されないで来たのですけれども、期間途中の解雇などの問題があることを考えますと、この行、「対象となる解雇等」という欄を取ってしまうぐらいでいいのかなと。
 そして、今回はまさに解雇無効時の話ですので、内在する論点として考えるよりは、解雇に関する制度を作ったあと、有期契約に関して別途考えるほうがすっきりするのかなと思いました。
○山川座長 ありがとうございます。
 では、有期契約周りの問題は、資料で別の角度で、こういう課題もあるという形で整理していただければと思います。
 ほかはいかがでしょうか。
 それでは、まだ定刻よりは若干早いのですけれども、今日の御意見はほぼいただいたということで、ここまでにさせていただきたいと思います。様々な御意見をいただきまして、資料等もかなりの手術が必要ですが、それだけ有益な御議論をいただいているということで、事務局にはそのような形で作業をしていただければと思います。
 では、特段ございませんでしたら、次回の日程等について、事務局から御説明をお願いします。
○武田労働関係法課課長補佐 次回の日程については、現在調整中でございます。確定次第、開催場所と併せて御連絡いたします。
○山川座長 ありがとうございます。
 それでは、これで第10回「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」を終了いたします。
 本日は、お忙しい中、お集まりいただきまして、またウェブでも御参加いただきまして、大変ありがとうございました。
 それでは、これで終了いたします。

 

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