2019年11月19日 第2回 難病に関するゲノム医療の推進に関する検討会 議事録

日時

令和元年11月19日(火)9:00~11:00

場所

TKP新橋カンファレンスセンターホール14A(14階)

議事

議事内容
○南川難病対策課長補佐 それでは、定刻となりましたので、第2回「難病に関するゲノム医療の推進に関する検討会」を開催させていただきます。
 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただき、まことにありがとうございます。
 本日の出席状況ですが、森構成員より御欠席の御連絡をいただいており、参考人として、森構成員と同じ日本難病・疾病団体協議会副代表理事の原田久生様に御出席いただいております。
 カメラの撮影はここまでとさせていただきます。傍聴される皆様におかれましては、傍聴時の注意事項の遵守をよろしくお願いします。
 以降の議事進行につきましては、水澤座長にお願いします。
○水澤座長 おはようございます。
 初めに、本日の検討会では、厚生労働省が取り組んでいる会議のペーパーレス化の一環として、タブレットを使用して議事を進めてまいりますので、お手元のタブレットの使用方法につきまして事務局より御説明をお願いします。
○南川難病対策課長補佐 本日の検討会では、タブレットを使用し、議事を進行させていただきます。簡単ですが、使用方法を御説明いたします。
 タブレットの画面上に資料一覧が表示されております。資料のタイトルをタップしていただきますと本体資料が表示されます。資料は、2本指で広げたり狭めたりすることで資料の拡大、縮小が可能です。ページをめくる際には、画面に指を置き、上下に動かしていただければ、1ページずつめくることが可能です。
 また、資料全体を閲覧した場合には、机上配付の操作説明書2(2)に記してあるとおり、画面の左下のマークをタップしていただき、「ファイル/印刷に注釈をつける」をタップしていただきますと、画面の下部に全ページの画像が小さく表示されますので、こちらで指を左右に動かしていただき、閲覧したいページを選択すると、ページを超えて表示することができます。
 お手元にタブレット操作説明書をお配りしていますので、そちらもごらんいただきながら、使用方法について御不明な点や機器のふぐあい等がありましたら、遠慮なく挙手をお願いします。会議の途中でも事務局が個別に御説明いたします。
 なお、タブレットに関しては、会議終了後、回収いたしますので、持ち帰らず、机の上に置いたままとしていただきますようお願いいたします。
 事務局からの説明は以上です。
○水澤座長 それでは、資料の説明をお願いいたします。
○南川難病対策課長補佐 タブレットのフォルダ内の資料一覧を御確認ください。資料内の本体資料として、議事次第、委員名簿、参考人名簿、資料1から資料5、参考資料1から参考資料4を用意しております。過不足がありましたら、挙手いただければと思います。
 あと、机上配付資料も1部、タブレットの中に入っています。
 以上です。
○水澤座長 ありがとうございました。
 それでは、早速、議事「(1)難病のゲノム医療推進に関する実行計画の策定に向けた検討」に入ります。
 まず、事務局から、資料1「第1回検討会における主な御意見」について御説明をお願いいたします。
○南川難病対策課長補佐 それでは、資料1「第1回検討会における主な御意見」をお開きください。
 1つ目のスライドは、前回御議論いただいたものです。「(1)難病領域における全ゲノム解析等の必要性・目的について」ということで、前回御提示しましたのは、難病のゲノム医療に関して、成長戦略等の中で、「より早期の診断の実現に向けた遺伝学的検査の実施体制の整備や、遺伝子治療を含む全ゲノム情報等を活用した治療法の開発を推進する」とされており、この「難病のゲノム医療に関するこれまでの取組と課題についてどのように考え、また、難病領域における全ゲノム解析等の必要性及び目的について、どのように考えるか」という形の論点でいろいろ御議論いただきました。
 そして、数値目標、対象疾患や症例数の考え方につきましては、指定難病の対象疾病数は333疾病、受給者証所持者数は約89万人ある中で、難病の中で対象疾病に優先順位をつけつつ、全ゲノム解析等を行う検体数について、これまでの研究実績や統計学的な観点も踏まえてはどうかと御提示させていただきまして、「(1)単一遺伝子性疾患」「(2)多因子性疾患」「(3)現時点では疾患概念が確立していない新規疾患」という3つの形に類型化させていただいた上で、それぞれ御議論いただきました。
 2ページ目を御確認ください。「(1)難病領域における全ゲノム解析等の必要性・目的について」ですが、1つ目の○にありますとおり、希少遺伝性難病の未解明の症例の原因究明には、全ゲノム解析は極めて有力であり、将来的には適切な診断、治療、発症予防につながるといった御意見であったり、指定難病の中で患者数が多い孤発性疾患では、疾患との相関がある遺伝子が同定できれば、当該疾病に対する創薬につながるという御意見であったり、患者さんの立場からは、診断基準を確立していない難病は指定難病に指定されないため必要な支援が受けられないという状況にある。また、指定難病であっても、なかなか診断がつかない患者さんも多く、既存の治療薬ですら届かない状況にある。それの解決に全ゲノム解析に期待したいという御意見。4つ目については、海外では全ゲノム情報を活用したGenomic-Medicineの取り組みが進んでいる、日本としても必須の取り組みであるという御意見等をいただきました。
 そして、数値目標の考え方ですが、対象疾病についてです。指定難病の中で患者数が多い孤発性疾患であって、単一遺伝子性疾患と多因子性疾患の混在がある疾病、もしくは遺伝性が高いことが示されている疾病を優先的に対象としてはどうかという御指摘をいただいたり、2つ目の○ですが、超希少疾患については、国際連携等により新たな知見につながる可能性があるため対象とすべきという御意見であったり、既知の遺伝子異常が同定されているものについては新たな発見につながらないのではないかという御指摘であったり、未診断疾患領域の疾病については、我が国初の新規疾患の発見につながる可能性があり、研究的な意義が多いという御意見を疾病についていただきました。
 症例数の考え方についてですが、単一遺伝子性疾患と多因子性疾患では研究のアプローチが異なる。単一遺伝子性疾患では両親の全ゲノム解析が必要で、1例からでも新しい発見が見つかる。他方、多因子性疾患は十分な症例数が必要であり、健常人と比較することが必要という御意見をいただきました。
 孤発性疾患は多因子性疾患と御理解いただければと思いますが、孤発性疾患においてはアレル頻度などから1疾患当たりの検体数を算定し、目標到達まで段階を踏む戦略がいいのではないかという御指摘を参考人の方からいただきました。
 そして最後ですが、数値目標を定めるに当たって現実的に何症例集まるかが重要であって、例えば単一遺伝子性疾患では本当に希少な患者さんを集められるのか。多因子性疾患であれば最終的に万単位の症例が要るけれども、それだけの数を集める体制があるかなどの観点が重要という御意見をいただきました。
 そして、前回の主な論点ではなかったのですけれども、「人材育成・体制整備について」も、全ゲノム配列決定については、規模が大きくなる場合は外注も含め1つの拠点で集中的に行うことが多い。その結果得られる配列データは、人材育成の観点からも、複数の拠点で役割分担を行うことが望ましいだったり、ゲノムデータだけでなく臨床データの質も重要であり、医療現場の負担に配慮しつつ、データの質と量のバランスを図ることが必要という御意見をいただいたところでございます。
 資料の説明は以上です。
○水澤座長 ありがとうございました。
 続きまして、具体的な検討に入りたいと思います。実行計画策定に当たりまして、ただいま御説明していただきましたように、数値目標、体制整備、人材育成について検討することとされております。各項目について1つずつ議論を進めていきたいと思います。
 本日の予定といたしましては、最初に、構成員からのヒアリングをお願いしてございます。鎌谷構成員より、数値目標を考えるに当たっての遺伝統計学的な考え方、三津家構成員より、数値目標、体制整備について創薬の観点からの考え方について、それぞれ御発表をいただく予定でございます。
 進め方といたしましては、各委員からそれぞれ5分程度で御発表いただきまして、その後10分程度の質疑応答を行いたいと思っております。
 それでは、鎌谷先生からよろしくお願いいたします。
○鎌谷構成員 よろしくお願いします。東京大学の鎌谷です。
 前回の議論の中で、この多因子疾患のレアバリアント解析に2万5000人が必要だという数字の目標が辻参考人から提示されておりますけれども、これをもうちょっと柔軟に、2万5000人以外の数字をやったときのこのレアバリアント解析の検出とはどういうものかということを遺伝統計学の立場から今回までに用意してほしいということで、この資料を御用意しております。独自研究にならないように注意しておりまして、前回、辻先生が参照された2万5000人という数字を出したZukさんの論文の中から検討しております。
 今回、全ゲノムシークエンスを用いた多因子疾患の解析ということです。もともとSNPアレイを用いた多因子疾患の解析が行われていて、そちらはコモンバリアントを主に検出する目的ですので、全ゲノムシークエンスをするときの数値目標は、レアバリアントをどのように解析できるかがポイントとなります。
 こちらのもともとの論文は、突然変異と自然選択を考慮して集団遺伝学のモデルをつくって、シミュレーションの結果から実際にどのように検出できるかを検討した論文となっておりまして、この2万5000人という結論を出した主な理由が、この資料にある表から出されております。
 この図はちょっと見づらいのですけれども、縦軸が検出に必要なケース、病気の患者さんの検体数になっております。横軸が遺伝子ごとの累積アレル頻度。これは何かといいますと、レアバリアント、非常にまれなバリアントを検出する目的でおりますので、遺伝子ごとに、まれで、しかも機能的なバリアントを一つでも持っている人という形で行う検定の検出力を見ておりますので、1つでも持っているという人の累積の集団におけるアレル頻度が横軸にブロックされています。難病においてこの累積アレル頻度がどうなるかに従って検体数が決まるというところで、そこを集団遺伝学的に検討したのがこの論文になるのです。
 その結果を見ますと、2万5000人といいますのが、この横に真っすぐ引かれた点線になります。斜めの線が実際の検出に必要な検体数を示しておりまして、この検体数が累積アレル頻度に従って比例の関係で上がっていくといった図です。
 2万5000人という人数のレアバリアント解析を行いますと、例えば累積アレル頻度が1.8×10-3という左から2番目の頻度であったら、遺伝子のリスク効果が2倍、3倍、5倍、10倍、20倍、これらのものを全て検出可能であるというのがこの論文の結論です。
 左から3番目の1.7×10-4という頻度でしたら、5倍、10倍、20倍だったら検出可能であると。糖尿病における累積アレル頻度はこのあたりであろうと。これもこの論文の中から引いてきた数字であります。
 さらに低くなっていくと、必要な検体数がだんだんとふえていくのですけれども、リスク効果が大きいなら検出できるであろうというのがこの論文の結論になっています。
 その論文の同じ図を利用しまして、5000人だったらどうなるかというのを検討したのが緑の横の点線であります。ですので、5000人という人数で、左から3番目、1.7×10-4という累積アレル頻度ですと、10倍または20倍のリスク効果を持つ遺伝子でありましたら検出可能だと考えられます。
 また、1000人というのがこの一番下の青の横の点線でありますけれども、1000人という人数でレアバリアント解析を行いますと、1.7×10-4前後の頻度であれば、20倍ぐらいのリスク効果を持つ遺伝子であれば何とか検出可能でないかといったことをこの論文から読み取ることが可能です。
 実際にどのようなものであるかというところです。この20倍前後のリスク効果を持つ遺伝子というのは実は既に報告がありまして、若年性心筋梗塞についてLDLR遺伝子が18.1倍という報告があります。心筋梗塞でLDLR、割と納得のいくところだと思われます。
 最近ですと、本年度のアメリカ人類遺伝学会の最初のプレナリーセッションにおいて、実はこの2万5000人対10万人というエクソンシークエンス解析がアメリカから報告されておりましたが、そこで統合失調症に対して20倍のリスク効果を持つ遺伝子というのが報告されておりました。ですので、20倍の効果を持つ遺伝子というのは存在すると考えてもおかしくはないだろうとは考えられます。
 あと、少し細かいところを説明させてください。
 2枚目です。今、レアバリアント解析の検出力というお話しましたけれども、実際、何の検出をするのかというお話。これは、実際にこの研究が進んでいくときに問題になってくると思いますので、一応御説明します。
 レアバリアント解析の種類としては、1つ目に、シングルバリアント関連検定。これはコモンバリアントのGWASと呼ばれている解析と同じものです。これは恐らく検出力が低いと思われます。
 2つ目に、機能欠失型バリアント(ロス・オブ・ファンクション・バリアント)の遺伝子ベース検定。遺伝子ごとにまとめ上げた検定。これが、今回、検出力が報告されている種類の検定になります。
 3番目ですけれども、ミスセンスバリアントを用いた遺伝子ベース検定というのが考えられています。ただ、これは検出力に少しばらつきがあるようでした。
 4番目に、遺伝子セット検定。これは、その疾患に関連があると考えられる生物学的パセイに乗った遺伝子のレアバリアントをまとめようという解析です。これは、今後開発していく必要がある種類の解析だと思います。
 最後ですけれども、今回、エクソームシークエンスでなく全ゲノムシークエンスを考えるとするならば、遺伝子だけを考えるべきではなくて、遺伝子以外の非コード領域の解析をする必要が出てきます。これに関しては今回の検討の範囲外であるということを御説明したいと思います。
 2番目は、最初ざっくりと御説明しましたが、この論文のモデルです。突然変異と自然選択についてはあり得るとしておりますけれども、移住と集団混合の影響を無視しているモデルだということに一つ注意が必要です。1つの集団としてずっと長い間いるような集団であればよいということで、日本人は恐らく問題ないとは思います。
 次に、集団遺伝学パラメータです。この遺伝集団学パラメータがこの算出に重要なのですけれども、恐らくそれを個々の難病について確定的に述べることは難しいだろうと私は考えております。表を読み取るに当たっても、このあたりの範囲だとこうなるというふうに把握するということだと考えております。
 そういったところでまとめますと、このZukらの論文は2014年に報告されております。この論文のラストオーサーは、アメリカのオバマ大統領の大統領諮問委員会の委員長だったエリック・ランダーという人ですけれども、恐らくアメリカの方向性を決めた論文になっていて、2万5000例を目安として提唱しておりました。その論文をさらに読み解くことによって、1000例や5000例というレアバリアント解析においても一定の成果を上げることは不可能ではないのかなと考えるに至りました。
 以上です。
○水澤座長 ありがとうございました。
 続きまして、三津家委員から5分程度で御説明をお願いいたします。
○三津家構成員 では、私の資料から御説明させていただきます。「全ゲノム解析推進に向けて 創薬の観点から」というファイルになります。
 あけていただきまして2ページでございます。これは、昨日の厚労省の官民対話で製薬協として使わせていただいた「全ゲノム解析に向けて」という表書きのスライドとなっています。
 上から見ていただきますと、最終的な目標は、全ゲノム解析の推進は患者さんの治療の選択肢の拡大につながるものであるべきであろうということです。
 それから、既に幾つかの国の施策が話題になっておりますけれども、他国の取り組みが先行していることから、そこに比肩し得る、あるいは追い越せるスピード感、あるいは体制を持って対応いただきたいということ。
 3つ目は、後ほど実例も少しお話しいたしますが、Genomics Englandの取り組みに倣い、産業界が参画する体制を検討していただきたい。
 4つ目。1番目とも関係しますけれども、患者さんの治療の選択肢の拡大につながるということを考えると、疾患の幅はある程度広く捉えることが、広く社会還元につながるのではないか。
 このように考えているということでございます。
 そのための必要な取り組みでございます。後ほど少し詳しくお示しいたしますが、まず、患者様の包括的な同意の取得が前提となるであろう。
 それから、いろいろな追加解析とかができるように、検体の適切な処理・管理の実施。
 それから、薬屋というのはどうしてもこういうふうに考えてしまうのですけれども、質の高い時系列の臨床情報の収集。これとのつながりが必須ではなかろうかと考えております。
 4番目でございます。既に国でもいろいろなデータベースの構築が進んでいるわけですけれども、なるべく今回のデータを一元化して、データ管理、解析環境をきちっとしていただきたいということ。
 それから、患者さんへのリコンタクト。特にがんをイメージした話でございます。
 6番目でございます。この辺はまた鎌谷先生の御意見も聞きたいと思うのですけれども、ゲノムだけではなくて、たんぱくの情報とか、ほかのものがいろいろあったときに、この検体数が減らせないかということをきょうはお伺いしたいなと思っておりました。ゲノムだけではなくて、もう少し臨床情報、あるいはオミックスのデータと多層的にやることによって、より効率的にデータを使うことができないかということを考えているということでございます。
 3ページ目をめくっていただきますと、再掲になりますが、幅広い疾患でお願いしたいと。
 次、全ゲノム解析を創薬に結びつけていくためにということで、製薬協の各社の担当者の中でこういう話をしております。特に最初のひげの部分が正しいかどうかというのは、またきょう御議論いただきたいのですけれども、疾患もしくは疾患の一部の患者さんにおいて、病態の原因となる遺伝因子を新たに見出すことが期待される疾患ということで、例えば単一遺伝子性と多因子性が混在した疾患、ある意味で、多因子性と言われながらも家族性の疾患があることが知られているようなものであれば、遺伝性の因子が見つかる可能性が非常に高いのではなかろうかと想像しているということでございます。そこには、ある意味で、時系列を伴った臨床情報とオミックス解析のデータもあわせることで手だてを与えることができるのではないかということです。
 2つ目は、患者さんの視点に立った見方でございますが、現時点において有効な治療手段がない、あるいは少ない疾患というものを、同じサイエンスのレベルの疾患が並んでいるときに、優先させるべきではなかろうかと考えるということでございます。
 大変恐縮ですけれども、ファイルの一覧に戻っていただいて、上から4番目に、例えばということで机上配付資料を準備させていただいております。医療ニーズが高い疾患でどうかということで、実は日本でも包括的な調査というのは余りないのですけれども、唯一ありますのは、ヒューマンサイエンス振興財団で医療ニーズ調査を行っておりまして、社会的に非常に重要な60疾患に関して、5年ごとに、今の治療満足度と薬剤の貢献度がどうかということでやっております。
 その中で、特に難病が多い神経疾患においては、ヒューマンサイエンス振興財団と日本神経治療学会とが共同で13年、18年に調査を終えて、公開したのが2枚目のスライドになります。これは神経疾患に限った資料で恐縮ではございますが、簡単に言いますと、左下の部分です。薬剤貢献度が低く、治療満足度も低い、こういった疾患がもし科学的に対象となり得るならば、こういったものをやはり優先すべきではないだろうかといった一例でございます。
 きょうは、ここで神経変性疾患だけをお出ししておりますけれども、指定難病を我々のほうで見てみますと、数からいきますと、神経疾患、代謝性の疾患、重度の炎症・免疫疾患という順番で並んでいるようでございます。
 それから、患者数が1000名以上おられるようなところで見ますと、神経変性疾患、次に免疫・炎症疾患が並ぶということで、これが大きなターゲットの一つになるのではなかろうかと、我々業界としては想像しているということでございます。
 もとの資料に戻らせていただきます。後ほどの議論になるかと思いますが、体制につきまして、2枚ほど業界のほうで話し合ってつくっております。
 4ページ「体制整備:運営体制について」でございます。これは理想論というところがあるかもしれませんが、海外の事例とかも見まして、運営は基本的には1組織体に集約する姿を目指していただきたいという業界の希望でございます。統一した機器・Protocolで測定を実施し、この検討とともに、がん・難病にかかわらず1カ所で管理する。それから、データを利用する場合でも1カ所にアクセスするということが望ましいと考えております。
 2つ目、企業による研究である場合でも全ゲノムデータにアクセスする仕組みを構築していただきたいということでございます。実は、業界でもGenomics Englandの会員になっていて、これにアクセスしている会社さんがおられます。当社は入っていないのですけれども、そこの方にお聞きしますと、そこのメンバーになりますと、簡単に言いますと、研究者の自分のパソコンからそこに全部アクセスできるということなのです。ある意味で、倫理的なハードルをきちっと越えて、きちっとした管理下に置かれるならば、研究者が最大限利用できるような体制が、少なくともGenomics Englandではとられているということのようでございます。
 3つ目、スピード感のある対応。これは先ほどお話したとおりです。
 4つ目でございますが、あるべき姿としては、システムの構築自身は公的資金で行い、先ほどもお話ししましたように、製薬業界、あるいはほかの業界、いわゆるプライベートのセクターがここを産業応用する場合には、そこにふさわしい使用料をお支払いするという形で、この全体のシステムをサポートするという形が一番自然ではなかろうかと考えているということでございます。
 最後の5ページ「必要な取組み」でございます。先ほどの6つのところを少し細かく書き出しております。
 同意、倫理審査体制のところは、特に個人情報保護法とか倫理指針等の仕組みのしっかりしたところも前提としてあろうかなと思っております。
 それから、生体試料の収集・保管です。
 3つ目、臨床情報の収集と企業からのアクセスの確保ということ。特にこういう難病の場合には、質の高い時系列の臨床情報の収集が必須であろうということ。
 次のところ。ここだけはいわゆる要員のところも書かせていただいているのですけれども、以前、私も、がんの研究のあり方検討会に出させていただいたことがあって、臨床の先生方からすると、お忙しい臨床のお仕事の中で、しっかりとしたデータ入力、あるいはクリーニングをすることがいかに大変なことかということを、いろいろな先生方がお話しになりました。ここはやはり、そのプロジェクトの実効性を上げるために、予算措置も含めてどうしても必要な部分ではなかろうかと、はばかりながら産業界からも考えているということでございます。
 データ解析環境は、先ほど少しお話しさせていただいたとおりでございます。Genomics Englandの場合には、国際的な利用も可能な包括同意が取得されていて、世界的に利用されているということでございます。
 残りのマル5、マル6は既にお話しさせていただいているとおりでございます。
 ちょっとお時間を過ぎましたけれども、よろしくお願いいたします。
○水澤座長 ありがとうございました。
 ただいま鎌谷構成員、三津家構成員から御発表いただきました。この御発表についてのディスカッションということで少しお時間をとってございますので、いかがでしょうか。
 どうぞ。
○鎌谷構成員 意見を求められましたので。
 オミックス解析は、私はやったほうがいいと思っております。多因子疾患についても恐らくいいと思うのですが、希少難病に関して既に大きな進展があったと思っております。2017年の報告で、エクソームシークエンスで診断できなかった希少疾患、筋疾患に、筋組織のRNAシークエンスをやったという論文がありまして、新たに35%診断できたと報告されていました。やはり非常に有効な方法だと思いますし、そのほか、ロングリードシークエンスなどもあわせて、プロテオームなど、今後、オミックス解析をやりやすいような方向性にしていく必要があると私も考えます。
○水澤座長 そうしますと、そういうサンプルと申しましょうか、タンパクならタンパク、RNAならRNAといったものもデータベースとしてそろえておくことが必要になってきますね。
○鎌谷構成員 はい。そのときは恐らく、神経性疾患で脳の組織がとれないなどは問題になってくると思いますので、そういったところも考えていく必要があるだろうと思っています。
○水澤座長 精神疾患などの場合、脳の組織が一番問題になりますけれども、相当集まっていると申しましょうか、今はそういう方向に来ておりますので、日本でも期待はできるかなと思っております。
 どうぞ。
○三津家構成員 鎌谷先生にお伺いしたいのですが、先ほどオッズ比が20倍といっていいのでしょうか、そういうものであれば1000ぐらいのサンプル数で見つかるのではないかというお話があったわけですけれども、そこに、例えばいろいろなオミックス解析でいろいろなもののファクターが動いているみたいなことがあって、いわゆる確定診断みたいな臨床情報ではない、いろいろなバイオマーカーが動いているとき、仮定の話でなかなかお答えしにくいと思うのですが、そうすると、そういうものが、例えば1000が500であってもいろいろな道筋がつけられるかもしれないとか、そういうことはあるのでしょうか。事前に、1000人の患者さんのサンプルを集められる疾患というのはかなり限られるというお話もあったものですからお伺いしているのです。
○鎌谷構成員 コモンバリアントの解析からの経験上のお話で言いますと、この遺伝子がというお話、必要なのは恐らく検体数というところはなかなか動かしづらいと思うのですが、生物学的な解釈というのは恐らく別なところにありまして、生物的解釈を行うときに必ずしも遺伝統計学的優位な遺伝子だけを使う必要はないです。全体として関連の方向にある遺伝子というのを上げていって、それが特定の経路に乗っているということを確認しますと、そこに新たな実験をしていくことで、マウスなどでフェノタイプが出ていくと、創薬などの方向性にはそちらかつながり得ると考えております。ですので、この検出可能な遺伝子数に満たなくても、そのオミックスと組み合わせていくことで新たな病態メカニスティックな解析につながることは十分あり得ると思います。
○水澤座長 どうぞ。
○菅野構成員 今の鎌谷先生の御説明に少し追加したいのですけれども、1つは、どういう事態が考えられるかというと、実は原因であろうと思う変異の候補がたくさん見つかって、どれが本当かわからないというときに、RNAシークエンスなどをやってあると、RNAの発現量が変化している。どうもそういうところと関係していそうなSNPが原因ではないかみたいな言い方で絞り込める。つまり、1つは絞り込みに使える。
 もう一つは、今、お話があったように、RNAのシークエンスのデータのほうからミューテーションが見つかったり、そういう形でゲノムのデータを補完することができる。両方あると思うのです。ただ、レアバリアントのばあいには、患者さんが100%ミューテーションを持っているとは限らない。例えばコントロールの人を3万人やって、そこに5人ぐらいしかいないミューテーションが1000人あると、2人いると大分濃縮がかかっている。それを3万人に掛け算してやると、その3人というのはもっと大きい数になりますから、そこで濃縮がかかっているみたいな話なので、その1000人をやったときに3人が見つからないときはどうしようもない。ですので、この1000人をやるときに500人にしたらいいのかというと、そこら辺が見つかるか見つからないかの限界になるので、かなり微妙なところになる。
 それをオミックスでうまくコンプリメントできるかどうかというのは、先ほど言ったように、RNAのシークエンスなどをして、うまくミューテーションが見つかったとしても、その500人でうまくいくかどうかが確率としてわからない。ここら辺はちょっと賭けみたいなところがある。正直言って、数を減らす努力をするよりは、うまくざーっとやってからやったほうが見つける確率は上がってきます。
○水澤座長 ありがとうございました。
 2つの考え方というか、たくさんやって、もし成果が出れば、それに対してさらに付加価値というか、より多くの情報が得られて、例えば、今、お話の趣旨にあったような患者さんへの還元といったものもよりスピードアップされると思います。ですので、やはり数をちゃんとやって、かつ、多層的にオミックスもやるというのが一番よいような感じでした。
 ほかはどうでしょうか。
 どうぞ。
○神里構成員 三津家構成員に質問したいのです。
 割と統一的なガバナンスでやっていくのが望ましいというお話だったと思うのですけれども、その中の運営主体、一組織体がよいというお話だったのですが、具体的にどういうイメージをお持ちかというのを教えていただけますか。
○三津家構成員 そこまで具体的なイメージは持っておりませんけれども、国主体である組織体をつくる、研究法人みたいな形になるのでしょうか、そういうものをつくるということになろうかと思っているのですけれども。恐らく、複数年動く必要があると思いますので、むしろ皆さんとか課長様のほうから何か。例えば、もしあるとするとこういうものはつくり得るみたいなことを教えていただけるとありがたいです。
○南川難病対策課長補佐 今回の2つ目の論点の部分で、どうあるべきかを先生方にいろいろ御議論いただいた上で、我々、それを踏まえて方向性について考えていきたいと思っております。
○水澤座長 体制整備ですね。
 どうぞ。
○菅野構成員 三津家委員の資料についてちょっと。
 机上配付資料で、いい薬がなくて、それでニーズが非常に高いというところで、下のほうに固まった疾患群がありましたね。「神経疾患における」というところです。
○水澤座長 左下ですね。
○菅野構成員 左下のほう。このあたりがゲノム解析の対象になるのではないかというのは、実は、ここ、具体的な数字を。症例を見てみると、遺伝子がわかっているものが結構多いのですね。実は、同じ症状を示す同じ疾患だとしても、別の遺伝子で同じ症状が出るので、やればやるほど新しい遺伝子が見つかるのですけれども、既にかなりのものが遺伝子が見つかっている。治療がないので満足度が低い。実は、これはゲノム解析の最大の深刻な問題で、遺伝子がわかっているのに治療法がないというのがこれから物すごくたくさん。
 もう既にがんではそうなっています。例えばp53などというのは昔からわかっているけれども、p53の治療薬はない。RASもわかっているけれども、RASの治療薬はない。多分ここに書いてある神経難病の原因遺伝子もわかっているけれども、その治療法はない。実はゲノム解析などしないで治療法の研究をしたほうが満足度は高いのではないかという議論があるぐらい深刻な問題。ここの中というのは、正直いって玉石混交で、本当にゲノム解析が必要な疾患と、今ちょっとお話をしたように、もう遺伝子はわかっているのだ、創薬がだめなのだ、そこに問題点があるという、この会の趣旨とはちょっと違うところに問題がある疾患がまざっているので、これだけでざくっと話をしてしまうと難しい問題があるかなと思いました。
○水澤座長 まず、三津家先生、それから松原先生。
○三津家構成員 おっしゃるとおりだと思います。包括的な調査がないかと調べてみると、こういうものしかないと。ただ、実際に一つ一つの病気に対して今どういう治療法があるかとか何が問題かというのを、代表的な疾患で少し当たってみたら、みたいなことを、私も内部で話をしたのですけれども、業界でそこを横串で意見を統一するところまでは。個社では多分できると思うのですけれども。先生がおっしゃったとおりに、この中で一つ一つ、専門家の先生の見方、御知見をいただきながらつくっていくということ、単にこちらの満足度だけではなくて、そこに攻め切れるかどうかというところを考えていくということかなと思っております。
○水澤座長 ありがとうございました。
 松原先生、どうぞ。
○松原構成員 今、ごらんになっているこの表について、私も少し意見を述べさせていただきます。
 ここの表の中に出ている、調査した主体となる学会との関連もあるのでしょうけれども、いわゆる小児期に亡くなってしまうような非常に重篤な神経疾患というのは全然入っていないのです。小児期に亡くなってしまう疾患というのは指定難病にも入れないのです。ですから、生物学的にはもっともっと重症で、しかも、その家族であるとか本人にとってはもっと治療法が欲しいもの、あるいは原因を見つけてきたいものがこの中では全部落ちてしまっているのです。それは、私たち、常に注意していなければいけないと思うのです。
 例えば患者会もそうなのです。患者さんの年齢がある程度大きくなるまでちゃんと生存されている、そして、実際に生活していていろいろな問題を抱えていらっしゃる方というのは患者会として意見が非常に大きいのです。でも、そこに達するまでに患者さんが亡くなってしまう病気というのは患者会すらないのです。そこのところのバイアスが大きいということは考えておくべきだと思います。
○水澤座長 ちょっと時間が押してきました。
 私、神経内科医で神経治療学会の会員でもあるので、今、ちょっとだけ御説明いたしますと、先生がおっしゃるように、多くの会員は成人を対象にしています。Adult Neurologyをやっている方々への調査なのではないかと思います。
 例えば一番右上を見ていただきますと、ここでも議論があるパーキンソン病という病気が、ほとんどの皆さんが満足しているというところになっていますけれども、実際は、進行してまいりますと非常に大変で、よりよい治療法が求められるという状況があります。個々の疾患で話してくると、そういったことが出てくることは事実だと思います。
 ただ、この点線で囲んである左下のほうは、変性疾患などでも非常に難しい病気がいっぱいありまして、一番下にあるプリオン病では、いわゆる普通の患者会はないです。つくろうと思ってもつくれないくらい厳しい状況にあります。アダルトの疾患ではありますけれども、そういうこともありますので、今、最後におまとめいただいたように、それぞれ個々の疾患等についてまた検討することが重要なのではないかと思います。貴重な資料だと思っております。
 それでは、時間がちょっと押してまいりましたので、個別の御議論はここまでいたしまして、これから数値目標の検討に移りたいと思います。
 まず、事務局から、前回の議論等を踏まえて、対象疾病及び数値目標の考え方について整理をしていただければと思います。よろしくお願いします。
○南川難病対策課長補佐 資料4をお開きください。1枚目に「難病のゲノム医療推進に関する実行計画策定に向けた数値目標に関する検討について」と書いてあるものでございます。
 その2枚目を御確認ください。これは、難病領域における数値目標で、1つ目の○は、先ほどお話ししたとおり、(1)単一遺伝子性疾患、(2)多因子性疾患、(3)現時点で疾患概念が確立していない新規疾患という形で前回は御意見をいただきました。右側にあります図でもう一度おさらいしますと、難病法上の難病というのは「発病機構が不明、治療方法未確立、希少疾病、長期療養が必要」の4つの要件を満たすものであって、この中で客観的な診断基準があるものに対して、一定の手続を経た上で、厚生労働省が指定難病ということで指定しております。これが今、333疾病ございます。
 その中に、単一遺伝子性疾患を含むか含まないかという考え方でやると、含んでいる疾病が234疾病、そして、含んでいないという形、多因子性疾患のみというのが99疾病あります。その234疾病の中でも、単一遺伝子性疾患のみで構成されているのが153疾病、そして単一遺伝子性疾患と多因子性疾患が混在しているものが81疾病となります。それぞれの内訳の数字については、今回、この指定難病333に対応する政策研究班に対するアンケート調査の結果から仕分けしたものでございます。
 下のほうにイメージ図として、単一遺伝子性疾患のみで青だけで構成されているもの、青とピンクで構成されているもの、ピンクだけで構成されているものがございます。先ほどもしくは今の御議論を踏まえて、それぞれ類型ごとにゲノム医療の現状を踏まえた将来の方向性も見据えつつ、実現性や研究実績、そして統計学的な観点も踏まえて数値目標を定めてはどうかというふうにさせていただいております。
 以降、具体的にそれぞれの領域ごとに御説明させていただきます。
 3ページ目を御確認ください。まず、単一遺伝子性疾患でございます。単一遺伝子性疾患の現状としては、単一遺伝子性疾患を含む指定難病は先ほど図でお示ししました約230疾病ございます。この中で診断基準に遺伝学的検査を含むものが100を超えます。その中で、現在、保険診療として収載されているのが60疾病となっております。
 1つ目の○の※1の部分ですが、単一遺伝子性疾病だったとしても、遺伝学的な背景であったり、臨床症状、ほかの検査所見で診断がつく場合については、必ずしも診断基準の中に遺伝学検査を書いていない場合がございますというのが1点目。そして、保険収載については、平成28年度は38疾病、平成30年度は3疾病と順次拡大してきておりますということを事実関係として申し上げさせていただきます。
 2つ目の○ですが、全ゲノム解析等を用いた研究開発を推進するためには、通常の診療の中で単一遺伝子性疾患を的確に診断できる遺伝子診断体制を構築することが課題なのではないかと御提示させていただいております。
 将来の方向性です。1つ目の○ですが、単一遺伝子性疾患については、遺伝学的検査の分析的妥当性・臨床的妥当性・臨床的有用性を確保しながら、通常の診療の中で必要な遺伝子検査が適切に行われるよう、保険診療の対象となる疾病を検討しながら、既存の難病患者をより早期に診断できる体制の構築をまずは目指してはどうかと。その上で、全ゲノム解析等については、遺伝学的な背景や臨床症状から指定難病またはその類縁疾患であることが示唆されるものの、既知の原因遺伝子を認めない症例等を対象として、単一遺伝子性疾患患者のさらなる病態解明、診断、治療等につながる新たな知見を得ることを目的としてはというふうにさせていただいております。
 数値目標の考え方として、対象症例は、今、申し上げたとおりです。
 収集検体につきましては、前回のお話にもありましたとおり、患者本人のほかに、ゲノムデータの比較対象としての家族検体が必要になりますので、1症例当たり3検体と考えてはどうかとなっております。
 そして、具体的に実際に日本中にこれがどれぐらいあるか。数値目標の考え方としての1つとして、事務局からお示しさせていただきますのは、既存の研究事業で集められた検体の実績を参考にしてはどうかとさせてもらっております。
 参考資料に行かせていただきます。まず、参考資料3を御確認ください。これは前回お示しした資料でございまして、これの19枚目を御確認ください。前回も御紹介させていただきました「オミックス解析を通じて希少難治性疾患の医療に貢献する基盤研究」というのを厚生労働省及びAMEDで行っております。これにつきましては、希少の難治性疾患について患者検体の解析を請け負った上で、ゲノム解析に限らず、さまざまな解析を行って、治療法だったり診断の開発法のための基盤情報につないでいく研究事業です。下の日本地図にありますとおり、現在、9班ございまして、この9班がそれぞれの専門領域に対してさまざまな解析をしているという現状にございます。
 続きまして、参考資料1を御確認ください。今回、この会に至るまでに、オミックス解析の9拠点に対してメールにて調査をさせていただきました。具体的には、どの程度の解析・検体をしているかとか、そこら辺の調査なのですが、2枚目のスライドを御確認ください。
 この「オミックス解析9拠点における難病全ゲノム解析等に関する調査結果」ですけれども、検体数と解析数をどの程度やっているかという数字を掲げさせていただいております。いただいた数字を積み上げたものです。まず、過去2.5年間この研究事業をやっていますが、約2万6829の検体数を集めております。その中で、トリオ解析を前提として家族も含めて集めたものは2885検体。年間で平均しますと1154検体がトリオ検体で集まってきているとなります。
 その下、実際に具体的に全ゲノム解析でどれぐらい塩基配列を決定したかというと、2万6829のうちの1万2784を解析しております。その中に全ゲノム解析しているものもあれば、全エクソーム解析しているものもありますが、基本的には全エクソーム解析のほうが多いとなっております。
 この資料についてそのまま御説明させていただきますが、次からはどちらかというと多因子性の話に関係してきますので、多因子性のところでまた適宜御確認いただければと思います。
 シークエンスの外部委託の状況についても御確認しています。外部委託の部分について、9拠点のうちの8拠点で、平成29年度は30%だったのですが、外部委託がだんだんふえてきています。そして、委託当たりの解析費用についても、それぞれのシークエンスの仕方によって各拠点幅があるという結果が出ております。
 続きまして、3枚目を御確認いただきますと、ここの解析9拠点においてどのような指定難病を解析しているか、主なものを挙げてくれとお願いしたところ、このような疾患を現時点で解析しているという形でした。シングル検体で解析しているもの、トリオ検体で解析しているものという形を挙げさせていただいております。
 4ページを御確認いただければと思います。これもどちらかというと多因子性の話の御議論のときにお使いいただければと思いますが、データの利活用の観点で、具体的に当初の研究計画の中でどの程度の方が、生データ、全てのゲノム上にアクセスできるかという観点で、実際に解析している機関は9分の9拠点アクセスできますが、実際に解析していない機関だけれども、同じ研究計画の中で共同研究者になっている部分は9分の6、そして、共同研究者になっていない部分、ほかの大学の研究機関が9分の2、製薬企業の民間の方も使えるとなっているのが9分の1というアンケート結果が返ってきています。
 実際の実績の件数については、今回は2.5年間の事業の中でという話にしていますので、大学研究機関は34機関、そして製薬企業は1件となっています。
 その他のデータ利活用に関する仕組みについてどのような対応をされていますかということをお伺いしました。多くの方がおっしゃっている公的データベースへの登録であったり、共同研究における解析データの提供であったり、研究セミナー、シンポジウムという形になっています。
 もとの資料に戻る前に、次のIRUD解析センターについてもこのまま御説明させていただきます。
 先ほど3つの類型のうちで言うと、「(3)現時点で疾患概念が確立していない新規疾患」のところで御紹介したいと思いますが、IRUDという事業について、先ほどの参考資料3の18、19ページに書いてあるものです。そこの中で年間どれぐらいの検体数を集めているかということでいうと、これについては、診断がつかない、遺伝子異常が疑われる患者さんのものを年間大体3000検体集めており、配列決定をしているということをアンケート調査でいただいております。
 これについての外部委託の割合はかなりふえていまして、IRUDという取り組みをするのは全ゲノムではなくて全エクソームですので、値段についてはこのような形になっております。
 下にIRUDの対象となる患者さんの基準がありまして、基本的には6カ月以上診断がつかなくて、2つ以上の臓器にまたがって、一元的に説明できない他覚的所見を有する場合だったり、何らかの遺伝子異常が疑われる病状であることという形で載せさせていただいております。
 参考資料3の説明は以上でございます。
 それでは、資料4に戻っていただきます。このような調査結果を踏まえて、もう一度3ページ目を御確認いただければと思います。
 3ページ目の数値目標の考え方ですけれども、単一遺伝子性疾患で、指定難病が疑われるけれども、既知の遺伝子異常を認めない症例がどの程度発生するかという観点で考えたときに、先ほど言ったオミックス解析拠点の検体の実績等を参考にしてはどうかというふうにさせていただいているところでございます。
 続きまして、4ページ目を御確認ください。難病領域の中の多因子性疾患についての考え方を御説明させていただきます。
 多因子性疾患については、単一遺伝子性疾患と異なり、原因が多岐にわたるため、診断するに当たって遺伝学的検査を用いることが少ないとなっています。他方、1つの疾患の中に単一遺伝子性疾患と多因子性疾患が混在している疾病については、全ゲノム情報の活用について画期的な治療法の開発につながる可能性が示唆されております。先ほど三津家構成員からも御指摘いただきましたが、「ゲノム医療実現推進協議会中間とりまとめに対する最終報告書」の中でも、遺伝学的検査の実施体制の整備や遺伝子治療を含む全ゲノム情報等を活用した治療法の開発を推進することを目的として、難病はがんと並んで優先的に行うべきとされて、このような観点もあるのかなと理解しております。
 将来の方向性ですけれども、多因子性疾患のみの疾病に対する治療法の開発については、遺伝要因と環境要因の双方の観点からのアプローチが重要なので、当面は、全ゲノム解析を数値目標には含めないで、さまざまな視点での研究開発が必要なのではないかとさせていただいております。
 他方、単一遺伝子性疾患と多因子性疾患が混在している疾病については、遺伝子治療を含む全ゲノム情報等を活用した治療法の開発の推進につながる可能性が高いので、まずはこれらの疾患から全ゲノム解析等を行うことによって、我が国初の難病に対する革新的な創薬等の創出に関する研究開発基盤の構築を目指してはどうかとさせていただいています。
 対象症例につきましては、単一遺伝子性疾患と多因子性疾患が混在している疾病のうち、実現性の観点から、一定数の検体収集が可能なもの。
 検体収集は患者本人のみ。比較対象として、健常人のゲノムデータは別途のところで集める必要はあると考えております。
 数値目標ですけれども、この単一遺伝子性疾患と多因子性疾患が混在している疾病のうち、既存の診療体制などから統計解析の実施に当たって目安となる1000例の質の高い臨床データを収集可能な疾病からまず始めてはどうかと。先ほど鎌谷構成員から御指摘いただいております1000例を集めてみることができる、そして、難病そのものが希少疾病ですので、そもそも既存の医療体制の中で検体を集めるのはかなり難しいのですので、まずは集められる疾患から始めてはどうかという形で御提示させていただいております。
 続きまして、5ページ目を御確認ください。「現時点で疾患概念が確立していない新規疾患」というところでございます。
 難病の中には、まだ世界的にも疾患概念が確立していない場合、また、世界的には疾患概念が一定程度確立しているのですが、日本には患者がいるかどうかすらわからないという場合があり、通常の難病等診療の中では、これらの患者さんについて診断が困難になります。これらの診断が困難な患者さんに対して、研究の一環で今のIRUDという研究事業の中で全エクソーム解析を行った結果、新規疾患の発見であったり、海外ではあるけれども、日本では知られていなかった、指定難病にも入っていなかったという疾患があることはわかってきました。今後、こういうゲノム医療の推進に当たっては、これらの研究成果をいかに素早く、実際の通常の診療に還元していくことが課題であろうと考えております。
 将来の方向性につきましては、遺伝子異常が疑われる診断困難な患者に対し全ゲノム解析等を行うことによって、世界初の新規原因遺伝子の発見だったり、我が国で十分に認識されていない単一遺伝子性疾患の実態把握を引き続き目指してはどうかとさせていただいております。
 実際の対象症例については、今、申し上げたとおりですけれども、この場合の収集検体につきましては、単一遺伝子性疾患が疑われることもありますので、1症例当たり3検体。
 数値目標の考え方については、先ほど御説明した資料のとおり、IRUDで研究開発事業において集めている検体を参考にしてはどうかとさせていただいております。
 6ページ目になりますが、今、申し上げたところを円グラフにした上で全体をまとめたものでございます。円グラフは、基本的には指定難病の患者さんを視点に立ってつくっています。平成29年の報告で全体で89万人ある中で、A類型にある人は、153疾病あるのですけれども、1疾病当たりの患者さんは少ないので、患者さんでいうと5万人程度になります。B類型の人は、81疾病ありますが、患者さんの数でいうと31万人。C類型でいうと、99疾病の中で、患者さんでいうと53万人。それ以外に、いまだ指定難病になっておらず、なるかどうかもわからないという方で、遺伝子異常を疑われて診断困難な方は、周りの点線で囲った円になります。それぞれ、今、申し上げたA類型、B類型。A類型に対しては、先ほど申し上げたとおりの疾病を対象にしていますし、周りの点線については、世界初の新規原因遺伝子の発見及び我が国で十分に認識されていない単一遺伝子性疾患について把握を行ってはどうか。そして、多因子性疾患の中では、B類型とC類型なるものであれば、やはりB類型のものから。B類型でもかなり少なく感じる方もいらっしゃるので、多数の検体を集められることから始めてはどうかという形にさせていただいています。
 最後、7ページ目になります。最終的な数値目標を検討するに当たっての類型ごとの考え方になります。単一遺伝子性疾患の対象疾病は先ほど申し上げたとおりですし、設定の考え方については、既存の研究事業の中で年間平均約1000検体集めていますので、これを参考にしてはどうか。そして、集め方、これからの数値目標の定め方につきましては、先行解析という形で、令和2年度以降行われる新たな研究事業の中で、必要な検体数を先行解析として、1000検体のうち何検体かやってはどうか。
 今は153、合わせると234ある中で、研究者の方が基本的に必要だと思われる疾病に対してトリオ検体を集めて解析しているのですけれども、この先行解析によって、例えばこういうような疾病に絞り込んでやったほうが効果的なのだみたいな御意見があれば、学術的な成果が出るとなれば、ぜひここでも御意見をいただければと思っています。それを踏まえて本格解析に進んではどうかとなっております。
 続きまして、現時点で疾患概念が確立していない疾患についても、対象症例、そして設定の考えについては同じで、先行解析の考え方も同じでございます。この場合も、対象疾患というものではないので、対象疾患を絞り込むというわけではないと思いますけれども、どのような形で全ゲノム解析の対象となる検体を絞り込んで戦略的にやっていくかについても、ぜひ先生方から御意見をいただければと思っています。
 多因子性疾患についての対象症例は申し上げたとおりですし、設定の考え方も申し上げたとおりです。先行解析の部分につきましては、今までの事業の中で既存検体がございますので、その既存検体の中で本格解析が必要な症例数の一部を確保してはどうか。ここの一部の確保の仕方、もしくは本格解析についても、具体的にどのようなやり方をすると、より戦略的に全ゲノム解析に向けたプロジェクトが進むかというのも皆さんから御意見をいただければと事務局としては思っております。
 事務局からの説明は以上です。
○水澤座長 ありがとうございました。
 最後に、参考として数値目標の考え方が出たと思いますが、御議論をいただければと思います。
 では、松原先生、どうぞ。
○松原構成員 ありがとうございます。
 いろいろと調査していただいておまとめいただいてありがとうございます。ただ、私は、この指定難病を中心に考えることには反対です。大反対です。というのは、小児領域の疾患が相当数漏れてしまうのです。例えば、私は成育医療研究センターにおりますけれども、オミックスの拠点でもあって、今回調査を受けました。数字も出していますけれども、その中でこういう病気がありますかと聞かれるのは指定難病なのです。でも、私たち、指定難病でオミックス解析したものなどはないのです。いわゆる小児の非常に重篤な疾患のオミックス解析をやっているのですけれども、そういったものが全部漏れていってしまうのです。
 難病対策課が中心となってまとめられていることなので、指定難病がどうしても表に出てくるのは、政策的にはそうなるかもしれませんけれども、実際の医療の現場、特に小児医療の現場からいうと、むしろ指定難病というのは成人になるまで患者さんが生存している、こう言うとちょっと語弊があるかもしれないけれども、むしろ病気としては軽い疾患が多いとある意味で言えるかもしれないです。そこまで生きることができない疾患が小児領域は非常に多い。そこにまだまだいろいろなゲノム解析が必要になっていくので、そこを最初から排除するような形でまとめられるのはとても困ると思います。
 そして、そういった小児領域の疾患というのは、必ずしもIRUDの未診断疾患ではないのです。例えば性分化異常症というのがあります。要するに、男性か女性かわからないような、そういったものに関する病気というのは物すごくたくさんあるのです。
 あとは、インプリンティング疾患。これもいわゆる指定難病というのが入ってくると、非常に限られたものしか入ってこない。
 ということで、指定難病でまとめていくというのは、私はやはり大反対です。
 もう一つです。今回、厚労関係でまとめられたと思うのですけれども、例えば成育医療研究センターの場合は、インハウスの研究費、それから、文科省の科研費でゲノム解析を行っているものがたくさんあります。今回、オミックス拠点、あるいはIRUD拠点ということで数字を出させていただきましたけれども、実際に成育医療研究センターで解析しているゲノムの数からいうと、それの倍以上あります。そういった文科関係とか、ほかの予算でなされている疾患の全体像がないまま、厚労の難病対策課だけで把握されているもので全てを決めてしまうというのは、私は、とてもバイアスがかかってよくないと思います。ぜひ御考慮いただければと思います。
○水澤座長 何かありますか。
 では、原田参考人。
○原田参考人 原田です。
 松原先生がおっしゃったのは、確かにそう思います。希少疾患、指定難病になっていない小児は気になっています。
 私は第1回目に出ていませんけれども、きょうの意見のところの話、今までの経過を見ていましても、体細胞に傾注している印象を受けているのです。生殖のところが希薄な印象を受けています。それから、数の問題。検体が集まらないから、既存の検体で、しかも多因子性疾患でとりあえず進めていきたいという話が出ています。これは、既存の検体があるからということなのですか。それをお聞かせください。
○南川難病対策課長補佐 ありがとうございます。事務局から御説明させていただきます。
 まず、難病課全体としては、この円グラフだったり、その他、小児慢性特定疾患も含めて、研究開発そのものはいろいろな部分でいろいろな形で進めていきたいとは思っております。なので、どこかの部分をやらないとかやるとかということはないとは思っています。
 その上で、いろいろな資料をつくるに当たって、さまざまな数字だったり疾患の数とかを調査させていただいたので、その中で一定程度、先生方に誤解を与えたところもあるのかなとは思っておりますが、まずそこは前提条件の中で考えております。
 その中で、今回、全ゲノム解析等を行うに当たっての数値目標を定めていくという中で、まずは多因子性疾患、単一遺伝子性疾患と分けた中で、多因子性疾患に関しては、先ほど言った統計的な問題があるので、まずそこから考えてやっていってはどうかという形になっていて、我々の持っている数字そのものは指定難病の数字を使っていますので、そこら辺に関するいろいろな調査をさせていただいたというところです。
 小児の部分であったり、IRUDで漏れている部分についても、これに対して数値目標になかったからやってはいけないというわけではなくて、全ゲノム解析を一定程度国として主体的にやっていく中で、どのような疾患、どのような数値目標を立てていくかという形ですので、あくまでも全体の難病対策、そして小児慢性特定疾患を含めた研究を進めていきたいというのは我々事務局としての立場です。その中の全ゲノム解析の中でこのような形の考え方、もしくはその整理はいかがかという形で御提示させていただいているところでございます。
 以上です。
○水澤座長 どうぞ。
○松原構成員 ただ、この円グラフを見ると、指定難病としか書かれていないのです。指定難病ではないものはどこにも入っていないではないですか。今回、これは一体どういう枠で全ゲノム解析に入るのでしょうか。
○南川難病対策課長補佐 この点線のところは、指定難病ではないところなのですね。少なくとも、現時点で疾患概念が確立していない疾患というのは、指定難病は黒の円なので、少なくとも周りにあるものは指定難病ではないです。2ページ目のスライドの図の中でも、指定難病の外側に難病法上の難病があって、ここに(3)という形で入れさせてもらっていますので、少なくともこの資料の中では必ずしも指定難病だけを対象にしているものではない。
○松原構成員 ただ、現時点で疾患概念は確立しているけれども、いわゆる指定難病に入っていないものというのはいっぱいあるわけですね。そこの部分は、例えば6ページのグラフでいうと、どこにあるのでしょうか。
○南川難病対策課長補佐 1つは、3ページを見ていただきますと、今、指定難病の中でも、先生御承知のとおり、小児からあるもの、小児慢性特定疾患というものと、移行期も含めて、指定難病の研究班の中で類縁疾患も含めて検討していただいていますので、3ページの「将来の方向性」で「指定難病又はその類縁疾患であることが示唆されるものの、既知の原因遺伝子を認めない症例等」の中には一部は入ってくると思います。松原先生が言っている全てが入るかどうかはちょっとわかりません。
○松原構成員 全てというか、ほとんど入らないですね。指定難病の類縁疾患ではないものが小児期には非常に多いのです。要するに、総括的にまとめた6ページのところが最終的にひとり歩きするというふうに私は危惧しているのですけれども、ここで見ると、いわゆる未知の疾患か指定難病しか入っていないです。ここのグラフには少なくとも入っていないのです。これがひとり歩きされたら困るなと私は思います。
○水澤座長 途中でよろしいでしょうか。
 私の理解は、今、事務局からもありましたけれども、この6ページの表は遺伝子異常が疑われる診断困難な患者を分けたものと理解しております。3ページに「指定難病又はその類縁疾患である」と記載されております。この類縁疾患の考え方で、恐らく、厳密にというかサイエンティストのほうから考えると、今、松原先生がおっしゃったようなものが入ってこないのではないかという懸念が示されましたので、その点、またよく擦り合わせていただければと思うのです。
 指定難病だけではなくて、より広く捉えてあるのですけれども、このA類型、B類型という数字を出すために指定難病の資料を使って指定難病を担当している研究班に調査をされて、こういう数字を出してこられたと理解しております。言葉で言うと、類縁疾患というところですね。そういった中に、今、松原先生がおっしゃったような疾患が含まれるような形での整理をしていただければ、少なくともこの会ではそうやって理解していただければと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。
 ほかに御意見はどうでしょうか。
 先ほど三津家先生は手を挙げられませんでしたか。
○三津家構成員 結構です。
○水澤座長 いいですか。
 まだ時間もありますので、ぜひ御意見をいただければと思います。
 鎌谷先生が最初に御説明いただいたヒアリング、それから前回のヒアリング等の方向性というのに一応合っている、段階を踏んでというやり方かと思うのですけれども、鎌谷先生、何かございますでしょうか。
○鎌谷構成員 多因子性疾患のほうで1000、5000、25000という話があります。この数字はちょっと考えなければいけないのは、最終的に2万5000人というのが集まらない疾患というのが当然存在するわけです。あるいは、そもそも1000集まらないものもあります。そういった場合に、これ自体は遺伝統計学的な検討ですので、有意な遺伝子を見つけるのは難しいわけですけれども、特に日本だけで考えなくてもいいわけです。海外と連携して遺伝的バリアント単位で、つまり、遺伝子の配列そのもので考えますと人種差というものがあるのですけれども、遺伝子で考えた場合には、もし同じ疾患概念であるならば同じ遺伝子が検出されるはずだと考えるならば、海外、特にとても進んでいるアメリカやイギリスですとか、今から整備を始めているフランス、カナダとの連携が可能になっていきます。そうしますと、最終的な人数として多くなってきて、病態の解明や薬などにつながったり、診断に必要な遺伝子の検出ができていきますので、当初から国際連携の可能性を強く進めていくべきだと私は考えております。
○水澤座長 ありがとうございます。
 いろいろな領域で研究者の方々は国際連携を進められていると思いますけれども、未診断疾患プロジェクトでも最初からレアディジーズ(rare disease)ということで、日本だけでは難しく世界中で協力し合いましょうといった観点はございますので、それは割としやすいかと思います。
 御意見。
 原田参考人、どうぞ。
○原田参考人 数のことは気にしていましたが、国際連携の中で立ち上げあるいは参考にしながらということはあるのですが、研究者自体が本当にやっていけるのかどうか。日本ではいろいろな意見がありますので、アンタッチャブルな世界ができてしまっている。フォロー体制のところで話が出るのかもしれませんが、数の問題と、実際にそこにかかわる研究者の問題です。数の問題は、国際知見とかでいろいろやっていけば、いいということなのだけれども、研究者も海外になってしまわないように。数も国内で確保しないと、外への依存になってしまう。研究そのもの自体が海外に行ってしまうような気がします。
○鎌谷構成員 海外に持っていかれてしまうということは、まず1つにはそうならないようにするということです。個人的には、私自身は国際脳卒中ゲノムコンソーシアムというものの中で上のほうで活動しているところですので、恐らく、研究者個人個人にとって、ここの分野でしたら自分が世界の中でも引っ張っていけるという分野があると思いますので、そこのところでやっていく。ただ単にデータを出してくれと言われて、データだけ出すというのは恐らく避けたほうがいいというところは確かにあるかもしれません。
 それ以前の問題として、国際連携もするけれども、国内で努力していこうと。これは研究者個人個人が肝に銘じていかなければいけないところだと思っております。確かに、その方向性で最善を尽くすべきだと考えます。
○水澤座長 ありがとうございました。
 恐らく、後で体制とか人材育成のところでまた御議論いただけると思うのですけれども、先ほど三津家構成員もおっしゃったように、日本がリーダーシップをとってやっていける部分というのがかなりあると思います。そういう意味では、ある程度の数というのでしょうか、規模感がないとなかなか難しいかもしれませんので、ここはぜひ頑張ってしっかりやっていく体制ができる、そういうふうにしていきたいと思っております。
 ほかにはありますか。
 どうぞ。
○南川難病対策課長補佐 もしほかの意見がないようであれば、先ほど最後にお願いしました先行解析のやり方について。例えば先ほどいろいろな御議論がありましたが、多因子性疾患で先行的にやっていく中で、もちろん対象として指定難病。こちらは多因子なのであるかもしれないですけれども、ここの部分でどういう形でパイロットスタディー、先行解析をやっていくのが一番戦略的か。例えば臨床情報の集め方があるものからやっていくとか、臨床情報の集め方を先行解析で調べていくことが次につながるのだとか、ここら辺について先生方の専門的な御見解が何かあれば、ちょっと御披露いただければと。
○水澤座長 ということですが、いかがでしょうか。具体的にということなのでしょうか。
○鎌谷構成員 どの疾患。
○南川難病対策課長補佐 7ページでいうと、多因子性疾患の部分で、例えば1000例を将来的に集めるのが目安だったとしても、その前に先行的に、どういう集め方がいいのかだったり、集め方というか、こういう症例について集めてみて、何例ぐらい先行的に解析してみてとかいうものだったり、そのような部分を本格解析の前に我々としてはやっていきたいと思っています。うまく本格解析につなげるに当たって、1000例のものを目安とするのだけれども、例えば500例のものであったとしても、幾つかこういう観点でやってみるべきだとか、そのような御意見とかがあればいただければと思っております。
○水澤座長 どうぞ。
○鎌谷構成員 まず、まず多因子性疾患に関しましては、恐らく、最初に何人かやってみたいといいますのはどういったものが出てくるのか。特に有効なものを発見できればよいという形で進むと思います。そのような場合には、人種特異的なアジア人とか日本人に多いですとか、アジア人や日本人で大きな問題となっているような疾患をやることが大事ではないかと思います。
○水澤座長 松原先生。
○松原構成員 単一遺伝子性疾患の場合は、これはレアなものがたくさん集積していると考えられるので、最初に少し始めるという意味はほとんどないと思います。それよりは、むしろ、きちっとした臨床情報もそろっていて、ある程度既存の解析ができているかどうかという検体がどのくらいあるかということですので、そこで始めるべきだと思います。
 既存の検体はたくさんあります。例えば成育センターからあした5000検体出せと言えば、耳をそろえて全部出します。そのくらいたくさんあります。ですから、その辺のものは、検体を集める心配などというのはまずないです。どれを解析しないか選び出す作業のほうがむしろ大変。そういう現状だということです。
○南川難病対策課長補佐 逆に言うと、そのどれを解析しないかを選び出すときの観点は、例えば、先ほど言った臨床情報なのか。そこら辺の部分について何か見解等があれば。
○松原構成員 どれを選ばないかというよりも、優先順位として、要するにわかっていないものが多い部分、もう一つは、臨床情報とかトリオ検体としてちゃんととれるかどうかというところで優先順位をつけていくことになります。本当なら数千検体全部調べたい、全部重要検体なのですけれども、お金が限られているので出せない。それが何十年来の私たちの悩みなのです。オミックスとか、IRUDとか、いろいろなところで来ますけれども、毎年断っているのです。年度の終わりのほうになると予算がもうありませんと。インハウスの研究費もそうですし、文科から来る研究費もそうです。ともかく、既に抱えているものだけで物すごい数があります。ということをまずわかっていただきたいと思います。
○水澤座長 今のにちょっと追加というかコメントです。
 単一遺伝子性疾患と書かれていますけれども、単一遺伝子に異常があるようなもの、あるいはゲノムに異常があるようなものという広い意味で捉えていいと思いますので、先ほどちょっと議論になったようなものも関係すると思います。指定難病というくくりでは含まれない小児の疾患とか、そういったものは十分こちらのほうに入ってくるのではないかという印象を持っています。
 どうぞ。
○三津家構成員 今あるサンプルからしっかりやっていただくということで基本的によろしいのではないかと思うのですけれども、1つお伺いしたいのは、患者さんに対する同意を、今あるサンプルがどういうふうにとられているのか。あるいは、施設をまたいでとか、場合によっては産業界とか、本当に使えるのかどうか。多分、そこら辺が施設施設で相当違うとは思うのです。むしろ、ある程度のところでそこをきちっと対応して始めないと、いつまでたっても本格的なものが始まらないという危惧がないのかどうかだけ教えていただけたらと思うのです。
○水澤座長 どうぞ。
○松原構成員 これは施設によってさまざまな基準でとっていると思いますけれども、少なくとも成育で近年は全てオーケー。ゲノムの何を調べてもいいし、どこにデータを出しても、検体を出してもいい。産業界も含めて。そういうことを原則に全部承諾をいただいております。
 特に小児期の難病のお子さんを抱えた親御さんというのは、自分の子供の病気を何とか見つけてほしい、治療薬の開発もしてほしいという意欲が非常に強いので、私たちがおずおずお願いするということではなくて、親御さんからも、何でもいいからぜひやってくださいという希望が非常に多い検体が多いというのが、特に小児期における患者さん、あるいは親御さんのスタンスだと思います。
○水澤座長 よろしいでしょうか。
 そのほかどうでしょうか。この数値目標というタイトルの項目ですけれども、よろしいでしょうか。
 原田参考人、どうぞ。
○原田参考人 今、松原先生がおっしゃった内容の関連ですが基礎研究の段階で、合意をえる場合、倫理上の先生からは、第三者をもって、例えば遺伝カウンセラーが同意を得たほうがいいとか、主治医からではいかがなものかとか、いろいろな意見が出ています。定かに決まっていないだけに、その辺のところをどういうふうに捉えていくかということです。厚労省的にはそれは問題ないのかもしれませんが。
○水澤座長 恐らく「厚労省的には」ではなく、今のお話は、いわゆる包括同意という、そういうものをとられている検体をお持ちだということです。最近ですとこれはかなり浸透していると思うのですけれども、先ほどの御質問は、既存検体で、すなわち昔のものについてはどうかという御質問だったと思います。
○原田参考人 基礎研究のところで言われている話になるのかもしれませんが、既存の検体ということであれば、それでもういってしまうという解釈でよろしいのですか。
○水澤座長 どうぞ。
○松原構成員 昔の検体については、私たちはそれぞれ倫理委員会に諮って、いろいろと委員の方の御意見を伺うことになっています。例えば患者さんがもう亡くなっていて、御両親にも連絡がつかないという検体。ただ、とても貴重な病気。日本で何人しかしない。そういった検体を、例えばあるゲノム解析をするとかということになると、これは倫理委員会の判断を仰いでということになりますので、昔の検体に関してはそう簡単には解析には回せないという状況はあります。
○水澤座長 倫理・同意に関しては、最近は非常にうまくというのでしょうか、細かく整備されてきまして、余り問題になるケースはないのかなとは思いますけれども、時々妙なニュースがあるので困ります。
 神里先生、これに何かコメントがありますか。
○神里構成員 過去の検体については、恐らく、その疾患によって来院を頻回にされているような患者さんだったら、再同意ということもあり得るかとは思いますけれども、そうではない、来院がないとか、もうお亡くなりになっているという場合には、別の措置という形で対応を検討することになるかと思います。ただ、今から、最近とっているような同意については、割と最初から将来的にいろいろなことに使うことを見越した同意になっているので、余り問題はないかと思います。
○水澤座長 ありがとうございました。
 それでは、まだほかの項目が残っておりますので、これから体制整備と人材育成についての検討をお願いしたいと思っています。
 まずは、事務局より御説明をお願いします。
○南川難病対策課長補佐 それでは、資料5を御確認ください。「難病領域における体制整備・人材育成に関する論点等について」と位置づけさせてもらっております。
 スライドの3枚目を御確認いただければと思います。まず、体制整備の話ですけれども、全ゲノム解析等の体制整備を検討するに当たっては、英国等の例を参考に、以下の3ステップに分けて取り組みと課題を整理した上で、役割を整理してはどうかとしています。
 下の図を御確認いただければと思います。
 まずは、データ等、この「等」の中に検体も入りますが、これを収集するところでいうと、協力医療機関というところが主体になります。主な役割としては、解析対象となる難病患者さんに全ゲノム解析に関する同意を得るということと、臨床情報及び臨床検体を収集し、シークエンスセンターに検体を送り、データセンターに臨床情報を送るという役割です。
 ステップ2としては「運営主体」と書かせていただいていますが、データ等の管理・運営として、シークエンスセンター、データセンター、バイオバンクのような情報を想定しています。主な役割としては、臨床検体をシークエンスし、得られたゲノム情報をデータセンターに送付。必要に応じて臨床検体は別途保管する。データセンターにおいて、臨床情報及びゲノム情報をひもづけるということが1つと、データ利活用のプラットフォームを提供するというのが、このステップの2の立場だと思っております。
 そして、ステップ3は利活用の部分です。研究機関(研究者)、そして製薬企業が主に利活用するのだとは思いますけれども、蓄積されたデータを難病の原因究明、診断・治療法開発等につなげていくという形になります。
 スライド4枚目を御確認いただきますと、Genomics Englandでも同様の体制をとっています。これは、彼らがよく公開する資料を少し日本語化させてもらったものですけれども、一番左のステップ1の部分でいうと、NHS   Englandというところからゲノム医療センターというのを13カ所選定しています。ここで同意をとった上で、DNAという矢印と臨床情報という矢印がそれぞれ上に延びていますが、DNAはシークエンスセンターとしてIllumina社に委託をされていて、ここでゲノム情報となってデータセンターに入っていきます。臨床情報はそのままデータセンターに入っていまして、データセンターの中には、研究環境支援というプラットフォームと臨床解析サービスというプラットフォームを持っております。この臨床解析サービスのほうについては、そのままゲノム医療センターに戻って、患者さんのところまで戻っていくという形をつくっています。
 他方、ゲノム環境支援の部分については、ステップ3になりますけれども、ここの集められたデータについて、アカデミア、そして産業界がそれぞれ利活用できる体制を彼らは構築しているというふうに我々としては理解しているところでございます。
 そして、この全体のデータ等の運営・管理をマネジメントしているのが、真ん中にあるGenomics Englandというアメリカの保健省がつくった会社となっております。
 続きまして、5ページ目を御確認いただければと思います。「難病のゲノム医療推進に関する実行計画策定に当たり検討すべき事項について」ということですが、体制整備につきましては、難病領域における全ゲノム解析等に関する現在の取り組みとしては、AMEDが実施する研究事業において、研究機関・研究者が主体となった取り組みとして行われてきており、一定の研究成果を出してきていると思っております。
 他方、英国の取り組みと比較した場合、臨床データ、ゲノムデータの質であったり、全ゲノム解析等に必要なコスト・症例集積の規模、そして民間企業・研究機関に幅広いデータの利活用を行うという観点で、少し課題があるのではないかと思っております。
 このような課題を踏まえて、体制整備の検討を行うに当たっては、以下の3つのステップに分けて方向性を議論してはどうかとさせていただいています。例えば、ステップ1の「データ等の収集(主体:協力医療機関)」においては、データ等の収集に協力する医療機関は全国に何拠点程度必要か。また、難病診療連携拠点病院との関係はどう考えるか。そして、収集検体について、ゲノムデータの品質を確保するために、協力医療機関にはどんな体制が必要か。例えば検査室の体制とかが要るのかどうかとか、そこら辺の部分の御議論。そして、臨床データの質を確保するためにはどんな体制が必要か。そして、難病患者から適切なインフォームドコンセントを得るためには協力医療機関にはどんな体制が必要か。また、難病患者に積極的に協力してもらうために取り組むべきことはあるか。
 ステップ2の部分ですが、全ゲノム解析等のデータ等の管理・運営を主体的に推進する主体の役割及びあり方・位置づけをどう考えるか。運営主体については、第1回検討会での議論やこれまでの課題を踏まえて、英国と日本でのこれまでの取り組みを比較してどう考えるか。そして、先ほど三津家構成員からもありましたけれども、集めるのであれば運営主体に費用負担は発生するものですが、その負担についてどう考えるべきか。
 データの利活用については、幅広く、研究機関・民間企業が利活用するために、ルール体制や整備づくりについてどのように考えるかということをさせていただいています。これについては、今回、大きな方向性という御議論で、あした、がんのほうでも同様の議論をされますので、ここで何かを決めるというよりは、皆様方のいろいろな御意見をいただいて、がん等の御意見を踏まえて、新しい方向性について我々としては考えていきたいと思っております。
 続きまして、人材育成の部分でございます。7ページ目を御確認ください。「難病領域における全ゲノム解析等に必要な人材育成について」ということです。
 ゲノム医療の推進には、難病患者に適切な医療を提供するための人材のみならず、臨床検体を用いる遺伝子解析研究を行うために必要な研究人材、膨大なゲノムデータの管理・運営に必要な情報系人材等、多岐にわたる専門的な人材が必要になると思っております。これまでは、難病診療連携拠点病院によるカウンセリング体制を進めるとともに、AMEDとの研究事業において全ゲノム解析等を用いて研究を行うなど、専門性が要求される機会を提供したということで、OJTの中でできるような場を我々としては用意してきたと思っております。
 具体的にステップ1で、必要な人材については、当然、難病領域に専門的な医師であったり、遺伝学的に専門的な知見を持つ医師であったり、遺伝カウンセラー、そして、先ほど三津家構成員が言った研究を支援する者という意味でいうと、同意説明補助者(CRC)とかデータマネージャーというような、現場から、拠点から実際にセンターに送る際のデータの品質管理をするような方も含めて必要ではないかと。
 ステップ2については、バイオインフォマティシャンであったり、生物統計・遺伝統計の専門家、倫理の専門家、知的財産の専門家。
 そしてデータの利活用については、それぞれ難病領域の研究者が必要ではないかと。
 活躍の場については、難病診療連携拠点病院は現時点で35都道府県68カ所ございますが、ここに遺伝カウンセリングできる体制を求めているというのが1点。そして、今の遺伝カウンセリングに対する教育システムに関する研究について今後始めようと思っているのがございます。
 研究の場においては、先ほど来申し上げていますIRUD研究事業、もしくはオミックス拠点研究事業のところで必要な人材が活躍していると考えております。
 8ページを御確認いただければと思います。全ゲノム解析等を推進するに当たって、データ等の収集、管理・運営、データの利活用、それぞれの段階によって複数の専門的人材の協同による取り組みが必要不可欠ではないかと。これまでは、先ほど言ったとおり、診療、そして研究の場において活躍する機会を提供してきたところ。他方、数値目標を設定してゲノム医療を推進するに当たって、必要な専門的な人材の量及び質を確保する観点から、体制整備とあわせて、より計画的に人材育成を進めていくのがいいのではないかと。人材育成に取り組む場合については、それぞれのステップにおいて異なってくると思います。それぞれの段階でどう考えていくかみたいな部分について、これも体制と同じく、がんのほうでも同様の議論がございますので、先生方からいろいろな御意見を賜れればと思っているところです。
 事務局からの説明は以上です。
○水澤座長 ありがとうございました。
 それでは、今、御説明いただいた体制整備と人材育成について御意見をお伺いしたいと思っております。いかがでしょうか。
 では、松原先生、お願いします。
○松原構成員 事務局で、実際に今、必要とされること、あるいは課題等についてまとめていただいてありがとうございます。
 実際にこういったものを動かしてきた者、立場として、現状どういったものがすごく必要かという立場でちょっとお話しさせていただきます。
 これは、先ほどの三津家構成員の話にもありましたけれども、私たち、実際に動かしてみて一番大変なのは、1つはデータ入力、データ収集です。現場のところ。そこのところがなかなか難しいというのを実感しております。現場のドクターというのは忙しくて、カルテを見て細かい情報まで上げてくれるかというと、なかなか時間が見つけられない。別に協力しないということではなくて、具体的に時間がないということがございます。実際にこういったもののデータ収集を本当に行う場合には、私、昔、東北大にいたころにこういったデータ収集をするときは、MDの大学院生をそこの施設に送って、カルテを閲覧させてもらって入力するということを実際にやっておりました。ただ、これは、人材的にもかなり優秀な人を使わなければいけないので、これが大規模に動くとなると、やはりなかなか難しいということがございます。
 特にこういった研究費で動く場合は、テンポラリーにお金を出すだけですので、そこで優秀な人材をリクルートすることはまずできないのです。では、テンポラリーにすぐ来てくれるような方でいいかというと、カルテがちゃんと読めない。もう一つは、カルテ閲覧の秘密保持義務が法的に規制されて、決められていない職種の人にはなかなかそこの病院でデータ閲覧をさせてもらえないという問題があります。
 例えば遺伝カウンセラーもそうなのです。遺伝カウンセラーの人はかなりわかるのですけれども、国家資格ではないので、秘密保持義務が法的に規制されていないのです。ですから、病院としてはその人に見せるわけにはいかないということにもなりかねない。そのあたりのことが非常に苦労するところですので、中央のような施設でそういった人たちの雇用をきちっと確保して派遣するとか、そういうシステムを考えていただきたいというのが1つ。
 もう一つは、解析施設から中央のデータベースにデータを上げるとき。これも三津家構成員から先ほどお話がありましたけれども、現在、幾つかのプラットフォームがあるのです。遺伝子変異のデータベースはこちら、臨床情報も含めたものは例えば何プラとかいっぱいあって、はっきりいって、私たち、データを抱え込んで、オープンにしたくないわけではないのですけれども、そこをアップロードするために物すごい人手と手間が必要なのです。そこの人材も足りないのです。これも、簡単に雇えるような人では能力的になかなか難しいので、ある程度の技量を持った人でないとそういうことはできませんけれども、そういった人たちを不安定な1年、2年の雇用でどこかから雇えるかというと、やはり雇えないのです。
 特に産業界から、ナショセンがデータを抱え込んで出さないとお叱りを受けるのですけれども、私たち、全部出していいのです。例えば、中央から来ていただいてデータを全部アップロードしてくれれば、100%見せます。そこの手間暇です。そこの人材が、今、いないのです。何となく各施設にちょっとお金をつけるだけということではなくて、中央として、データの収集、アップロード、そういったところにきちっとした人材をつけていただいて、中央で動かすようなシステムを何とか考えていただきたいと思います。
○水澤座長 ありがとうございました。
 特にありますか。
 どうぞ。
○南川難病対策課長補佐 ありがとうございます。ほかの先生の御意見もいろいろ賜りたいと思っています。
○水澤座長 非常にもっともな御意見だと思います。
 どうぞ。
○鎌谷構成員 松原先生のすばらしいお話の後にざっくりとした話を下の者がしてしまうのは申しわけないのですけれども。
 カナダがこういったゲノムシークエンスを始めようとしているようなのですけれども、その際にGenomics Englandを招いて大きなシンポジウムを開いて、ノウハウをすごく吸収しようとしていると聞いております。IRUDもそうでしょうし、大きなところで動かしてきたところのノウハウを吸収して、過去のいろいろな、こうやったらうまくいくといったところを集約していけるといいのかなと1つ思っております。
 もう一つは人材育成のほうです。これは、昨年、日本人類遺伝学会で私がパネルディスカッションをやらせていただいて、その際に、AIの研究者のパネラーの方から指摘されたところがあります。日本でこのゲノムやオミックスの解析の人材がなぜなかなか育たないと思うかと言ったときに、そのAIの研究者の方が、AIというのはやろうと思ったら試せるデータがすぐにあって、それで試してみて、おもしろいと思ったらそれをどんどんやっていく、そういうサイクルができていると言っていらっしゃいました。
 それに対して、ゲノムというのはやろうと思ってすぐできるものでは当然ありません。かといって、すぐにゲノムをやれるように用意するわけにもいかないと思うのですけれども、この枠組みの中で、人材育成として、このデータに各アカデミアに、もちろん指導教官の指導のもとに、学生がもうちょっとさわりやすくしていくことによって、このドライ解析をする人材というのをどんどん発掘していく。10人やらせて10人伸びる性質のものではありませんので、中から優秀な学生をどんどん拾っていきますと、日本のゲノム解析人材も大分豊富になっていくのではないかと考えました。要するに、4ページのシステムの中にアカデミアでの学生の教育というのを入れられればいいのかなと考えました。
○水澤座長 ありがとうございました。
 では、菅野先生、お願いします。
○菅野構成員 1つは、がんと難病との大きな差は、がんは疾患が比較的1種類といったら極端ですけれども、大きい範囲。ところが、難病というのは非常に細かい。松原先生からすぐに5000例出せるというお話がありましたけれども、1つの疾患で5000人というわけではなくて、何百という疾患が集まって5000ということですので、多分、そこには100人ぐらいの先生が関係している。そうすると、先ほど松原先生が御指摘になったデータをどこにどうやって上げるとか、カルテからどうやって移すかというコストが、がんとは全く違うレベルでかかってくるだろうと。そこはぜひお考えいただいたほうがいいと思います。
 そう言わせていただいた上で少し思うのは、実は、松原先生が御指摘された問題というのは、長年ゲノム研究をしていて延々と言われている問題なのです。実際、バイオバンクジャパンでも、東北メガバンクでも、実際にそのための人材育成をして、数がかなりある可能性があります。松原先生が御指摘になったように、テンポラリーなお金なので、逆に言うと、そういう方々が行き場を失っている場合もあるので、できたらこのプロジェクトでもそういう方々をうまくチャンネルできるようなことができると少し違うかなという気がいたします。
 そういうのにCRCみたいなところが関係している場合もありますし、ノウハウ等を持っている方もいらっしゃるので、毎回毎回スクラッチからつくって、それで5年たつと行き場がないと言って嘆いている。実はこれをバイオバンクジャパンのときと東北メガバンクで2回やって、3回やると余りにもばっばっばっばっと切っているという感じがしますので、そこは少しお考えいただくといいかと思います。
 3つ目は、コンピュータのことも物すごくお金がかかります。100人の研究者がいるとすると、100人は手元で自分の研究をしたい。一方、データを出すと、その研究をほかの人が先にやってしまうかもしれないみたいな話まであるので、抱え込むことになりかねない。だから、そこのところをどういう仕組みで素早くデータを移すかというところも考えて、そういう細かいところで結構お金がかかるということは、がんとはかなり違うのではないかと思いますので、ぜひ検討してください。
○水澤座長 ありがとうございました。
 では、三津家先生、どうぞ。
○三津家構成員 さらにベタな話で申しわけないのですけれども、企業に勤めている人間からしますと、今、松原先生がおっしゃったようなデータの収集ですとか、クリーニング、あるいは入力みたいなものは、もう変動費化して、いわゆるCRCを業としている会社さんがあるわけなので、臨床治験をやるときにGCP下でそういった方々が非常にきちっとしたデータを扱い、秘匿性を守り、その後、承認に至るまでのデータをつくられるような、それをなりわいとして、そこから派遣される本当のプロの方がいらっしゃる。今回の場合には、ある意味で、シークエンスするのにお金がかかるのと同じように、こういうデータを集めるところも完全に変動費化して、人を雇うという発想ではなくて、そういうプロの方々にお願いする、そういう会社さんにお願いするというのもあるかなと思うのですけれども、いかがでしょうか。
○水澤座長 では、松原先生、どうぞ。
○松原構成員 それができれば理想だと思いますけれども、私から見ると、臨床治験のCRCとか、ああいうところに委託すると、べらぼうなお金がかかるのです。私たち、どちらかというと基礎的な研究をやる者からすると、臨床研究のところで桁が違うお金で人を雇っているのだと思います。ですから、それだけのお金がつけば本当にお願いしたいですけれども、現実にはそれだけのお金がつかないので、とてもとてもそんなところにお願いできるような状態ではない。結局は、例えばアカデミアだと、ただで働いている大学院生を働き方改革を無視する形で何となくやっているというのが現状だと思います。そのようなことができれば本当にすばらしいと私は思います。
○水澤座長 働き方改革を無視できなくなってきましたので、これからなかなか大変だとは思いますが、非常に重要な、本質的なポイントだと思います。この辺はこれを乗り越えないと多分成功しないと思いますので、今の御意見を含めて、これはがんのほうとも一緒にやっていく必要があろうかと思います。
 事務局、ありますか。
○南川難病対策課長補佐 1点だけ。
 先ほど三津家構成員がおっしゃったのですが、松原構成員がおっしゃったことに関連して言うと、おっしゃるとおり、いわゆる治験の場合は、薬機法の中で、製薬企業のほうは最終的には売り上げの形で一定程度収益が見込める中で、しかも薬事法という形の医療法の中で別な法律で担保された制度の中でやっていて、そこの費用そのものも全て製薬企業が持ってやっている。しかも、製薬企業がそれを持つことによって後ほどの利益に一定程度還元されるということが前提になられているものなので、多分そういう仕組みをとり得るのかなと思っています。
 それに対して、松原構成員がこれまでやってきた研究というのは、どちらかというと、論文を書いて新しい知見を得て、患者さん方、社会に広く還元していきたいという形でやったときに、厳密は厳密なのだと思いますけれども、治験だったり製薬ほどの厳密性を求められない中でやっていく中で、そこは公的資金を主体にやってきて、比べると、それこそ2桁だったり3桁違う。その趣旨は同じことをやっているように見えるけれども、やっていることがそれぐらいの金額が変わってくる中で、今回の全ゲノム解析というこのプロジェクトについて、どういう視点でやっていくか。それが、ここで記載している費用負担だったり、そこら辺の議論にもつながっていくのかなと、事務局としては補足、もしくは事務局としての考え方の一つとして御提示させていただければと思います。
○水澤座長 原田参考人、どうぞ。
○原田参考人 先ほど来、菅野構成員からの話がちょっと気になっていたのです。今の話もそうですけれども、解析自体は大体できていて、患者にとっては治療薬がない。もっと直結した動きがあってもいいのではないか。このワーキングのところで議論することではないかもしれませんが、いずれ、厚労省的には、条件が整えることが出来ればどこかで臨床応用の検討会というのがあってもいいのではないかと思うのですけれども、その辺のところはどう考えますか。
○水澤座長 事務局、どうぞ。
○南川難病対策課長補佐 おっしゃっているとおり、最終的に将来の利活用を目指して、今回どのような検体を収集し、活用していくかということなので、そのような視点も含めて、体制はどうあるべきかという部分も含んでこの検討会で一定程度議論して、もし必要があればさらに深掘りして検討するような場があってもいいと思いますけれども、まず、ここの場でもそこも含めて検討なのかなと考えています。
○水澤座長 よろしいですか。
 ほかはいかがでしょう。もう少し時間があるかと思います。
 神里先生、どうぞ。
○神里構成員 ステップ1のデータ収集のところです。そこにおいては、患者さん、そして国民の皆さんへの御理解というのが必要になってきますので、ゲノム医療がなぜ必要なのかという、その推進の必要性、背景についての啓発が重要になってきて、それが恐らく包括的なインフォームドコンセントという話にもつながっていくかと思います。ですので、厚労省としてもぜひともこの啓発活動に力を入れていただきたいと思います。
○水澤座長 ありがとうございました。おっしゃるとおりだと思います。
 ほかにはどうでしょうか。もう少しお時間があろうかと思いますけれども、よろしいでしょうか。
 原田参考人、どうぞ。
○原田参考人 厚労省と文科省ではそのところを分けていると思いますが、基礎研究の前提で動いていると思うので、数の問題とか体制の問題、人材の問題も含めてなのですけれども、やはり環境整備というのは整えていく必要があると思いました。基礎研究をどうしていくか、このワーキングからもどこかで見ていく側面があると思うのですけれども、その辺はどうなのですか。
○水澤座長 では、事務局、どうぞ。
○南川難病対策課長補佐 臨床でも応用する前に必ず基礎のセクションがありますので、当然。厚労省としては、臨床応用だったり、そちらに着眼していますけれども、そこの過程の中にある基礎研究について全く考えないというわけでは全然ない。むしろ全ゲノム解析というのは、そのような基礎的知見を明らかにして、それをつなげていくという前提ですので、そういう保活的な視点で、また関係省庁ともよく連携しながらやっていきたいと思っています。
○水澤座長 菅野先生、どうぞ。
○菅野構成員 がんと難病が厚労省でこういうことを担当でやられるというのは、私は、治療の観点から、遺伝子がわかっても臨床とは遠いというお話をしてしまいましたが、診断という面では直結するわけです。まさに診断がつかない難病というか、いっぱいあるわけで、そういう人たちを片っ端からシークエンスすると診断はつくと。患者さんのお話を聞くと、診断がつかなくて、1年間ぐらいあちこちのお医者さんにかかって、最後にDNAをチェックして診断がついたみたいなお話を聞いて、そこは大分つらかったというお話を聞くことが多い。そういう意味では、この研究は、途中の経過から臨床応用に持っていける可能性があるので、かなり厚労省的かなという気がします。
 糖尿病とか、そういう病気になってくると、それがわかったからどうなのだといっても、もう減量しなさいと言えばそれで済んでしまうみたいな話になるので、意外とインパクトは少ない。それに比べると、ここでは臨床応用のインパクトが非常に高いようなことをしているように思います。
○水澤座長 よろしいでしょうか。
 きょう、それぞれの御専門の立場から非常にたくさん議論をいただいて、多くの気づきも与えていただいたかなと思います。委員長は余り言わないかもしれないのですけれども、幾つかの議論があって、一、二だけ、臨床家として患者さんを診ている者としてちょっとコメントしたいのです。
 今のお話にちょっと関係しますが、診断がつくということが非常に大事だし、それがあって、あるいは原因遺伝子等がわかって初めてそこから研究が進んで、治療法が生まれます。その間は長いのですね。これまで長かったと思います。ただ、これからはぐっと短くなる可能性は十分あると思います。
 先ほどの表の左下のほうにありましたものの1つに、筋ジストロフィーとあったと思います。ディシェンヌ型の筋ジストロフィーです。これは、そういう変性疾患の中では最初に遺伝子がわかったものだと思います。恐らくそのときにみんな考えたことは、これですぐ治ると思ったのだと思うのですけれども、非常に長い道のりがあって、今ようやく、例えばエクソン・スキップという治療薬が生まれようとしています。でも、それはエフェクトとしてはまだ十分ではない。米国では承認されましたけれども、余り十分ではなかったと思います。
 また、例えば脊髄性筋萎縮症は、ヌシネルセンというアンチセンスオリゴができました。これはかなり効果があるということで、皆さん大変喜んでいると思いますけれども、そういう長い道のりがかかるのです。まず、新しい遺伝子、原因遺伝子を見つけないとだめなのではないかと思います。
 だから、遺伝子を見つけてもだめなのではないかということをおっしゃる方もおられるかもしれませんけれども、今、我々は、原因遺伝子をかなり同定してきています。先ほどの資料に米国の機関で9000件という方がいましたが、あれはOMIMだと思うのですけれども、11月の時点で約9000疾患ぐらいが遺伝性疾患で登録されると思います。
 では、どこまで原因遺伝子がわかったかと申しますと、ここにおられる方は御存じかもしれませんけれども、5700くらいです。昨年の9月は約5400です。このデータによるとですけれども、この1年余で300もの新しい遺伝子がわかったわけです。それぐらいのスビードで進んでいます。
 我々の遺伝子は、タンパクをコードするものは2万ちょっとですから、その中で、これは全てでも恐らく1万弱かもしれませんけれども、そういう病的遺伝子の全容がわかることによって、恐らくコモンディジーズにも関係するような病的な代謝経路を構成する重要なモレキュルがわかるわけです。これはぜひ我々日本が率先して進めなければいけない非常に重要なプロジェクトだと私は考えております。
 座長の意見で済みませんけれども、ちょっとだけ述べさせていただきました。
 少し時間はありますけれども、よろしいでしょうか。ほかにはどうでしょうか。大丈夫でしょうか。よろしいですか。
 では、予定の時間を少し過ぎましたけれども、本日はここまでにしたいと思います。
 次回の日程などにつきまして、事務局からお願いをいたします。
○南川難病対策課長補佐 次回の開催日程の詳細については、調整ができ次第、追って構成員の皆様に御連絡させていただきたいと思います。
 なお、次回に至るまでに、座長と相談の上、構成員の先生方には適宜もろもろの御確認等をさせていただくこともございますので、その際にはぜひ御協力のほうをよろしくお願いします。
 事務局からは以上です。
○水澤座長 ありがとうございました。
 本日は以上で終了したいと思います。