第4回 職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和元年12月26日(木) 14:00~16:00

場所

労働委員会会館7階講堂
(東京都港区芝公園1-5-32)

議題

  1. (1)職場における化学物質等の管理のあり方について
  2. (2)その他

議事

○化学物質対策課長補佐 本日はお忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。定刻になりましたので、第4回職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会を始めたいと思います。本日出席予定の明石委員が、急遽、御欠席となっております。それから、部長が本日は公用のため途中で退席させていただきますので、よろしくお願いいたします。
それでは、城内座長、よろしくお願いいたします。
○城内座長 皆さん、こんにちは。お寒い中、御参集ありがとうございます。それでは、本日の議事に移りたいと思います。前回、前々回と様々な関係者からヒアリングをさせていただきました。本日はヒアリングを踏まえての議論に移りたいと思いますが、まず、内容に入る前に事務局から資料の確認をお願いします。
○化学物質対策課長補佐 本日の資料は1点のみとなっております。資料1として、ヒアリング結果のまとめと課題についてということで、お手元のタブレットに御用意させていただいております。前回までの資料も参考にタブレットに入れておりますので、適宜御参照いただければと思います。
○城内座長 それでは、よろしいでしょうか。早速、内容に入りたいと思います。ヒアリングを始めた前々回からかなり時間もたっていますので、これまで行ったヒアリングをもう一度振り返りつつ、化学物質管理のあり方についてどのようなことが課題となっており、どのようなことについて今後議論をしていくべきか委員の皆様と頭の整理をしていきたいと思います。まず、事務局に整理していただきましたので、事務局から御説明をお願いします。
○化学物質対策課長補佐 この検討会で、前回、前々回と2回にわたって7名の方からヒアリングをさせていただきまして、1回振り返りも含めまして、ヒアリングでどういうお話があったのかということを事務局のほうで資料にまとめさせていただきましたので、資料を御覧いただきながら一度振り返っていただければと思います。
資料1枚目、ヒアリングを7名の方からさせていただきまして、テーマによってまとめております。1つ目のテーマとして、事業場における取組状況ということで、これは第2回になりますが東京応化工業株式会社様と、JEC連合の宮腰委員から御発表いただきました。それから、UAゼンセンの髙橋委員から御発表いただきまして、全日本フレキソ製版工業組合様から前回御発表いただきまして、御発表いただいた内容を簡単にまとめさせていただきましたので、ざっと御紹介させていただきたいと思います。
1ページ目の下半分の所ですが、東京応化工業様から自社で取り組んでいるリスクアセスメントについての御発表ですが、このやり方として工夫されているのがリスクですけれども、工学的対策などによってどのぐらいリスクが下がるかといった見える化に取り組んでいらっしゃる事例、それから、実際の担当者の方に順番に担当いただくことで、様々な目で見られるようにしているという工夫をしている事例の御紹介がありました。また、結果をどのように取り扱うかという議論がその後の議論であったわけですが、労使が半々で参加している労働安全衛生委員会で協議をすることできちんと対策の妥当性とか、予算確保についても協議をするという仕組みになっているというお話を頂きました。
これは課題としてだと思いますが、実際このように見える化で取り組んでいたとしても、工学的対策まで実際にできるかというとなかなか難しくて、保護具に頼っているという実情があるというお話と、それから、局排などの工学的対策があったとしても、なかなか現場では使用方法は適切ではないということもあって、保護具がないと完全にリスクを排除するのは難しいといったお話がありました。
次ページ、JEC連合の宮腰委員からお話いただきましたけれども、これは国のリスク評価について御意見ということで、被害が出ていないのに物質が規制の候補リストに上がると現場では混乱を招くことがあるというお話と、化学物質管理・規制の検討プロセスについては柔軟に見直せるような仕組みにする必要があるのではないかというお話を頂きました。
UAゼンセンの髙橋委員からお話いただきましたのは、アンケート調査などもやっていただいた御発表がありましたが、リスクアセスメントは一応ある程度やっているという結果は出ているけれども、十分ではないのではないかということ。一部にはリスクアセスメントというシステム自体が企業にリスクを負わせるための口実になっているのではないかといったお話もありました。それから、実際リスクアセスメントと言っても、リスクの見積りはやるのだけれども、その後の低減のための措置というのが努力義務であるので、実施していないという実情のお話も頂いています。
それと、これは先ほどの東京応化工業様と同じようなお話ですが、実際リスク低減措置をやるといっても、なかなか中小企業では資金的に難しいというお話もあって、保護具の着用で対応することが多いのではないか。ただ、この場合、結局リスクを作業者に負わせることになっているのではないかというお話を頂きました。
それから、実際に化学物質ですけれども、これも中小企業のお話ですが、実効性を担保するという観点ではなかなか中小企業は厳しいということで、現実的に中小企業でもできるような仕組みにしていく必要があるのではないかというお話を頂いています。
これはまた別の視点になるかと思いますが、企業規模の大小で労働者のリスクが変わるというのは、やはりそれは避けるべきことであろうということで、そういう意味では、中小企業に対する支援のようなものが必要なのではないかというお話を頂いています。先ほど保護具に頼らざるを得ないということでしたけれども、保護具の用意というのも中小企業にとっては負担になるというお話と、それから、これも実態の話ということですが、小さな事業場では保護手袋が必要とされるようなものも素手で扱ったりしているという実態もあるというお話を頂いています。
最後、全日本フレキソ製版工業組合様は、前回お話を聞かせていただいたものですが、実際、中小企業の現場がどうなっているかというお話を中心に御発表いただいたと思います。1つ目は取組の話ですが、胆管がん事案が起こってから組合としても研修などはやったのですが、一過性のものに終わってしまっているようなお話もあったかと思います。2つ目は、本当の実態の話だということだと思いますが、小さな所では化学物質にばく露する場面があるとしても化学物質についての知識はないし、対策が必要だという認識もない。ですので、必要な対策を講じていない所も実際は多いというお話を頂いています。
対策の基本となるSDSについては、購入したときにSDSが付いていないということも多いということで、それがなければ中小企業にとっては化学物質が危ないのだという認識すらもてないというお話も頂いています。
これは御提案というか、御要望の話だと思いますが、実際に化学物質を購入するときに中小企業に自分で気付けというのは難しいので、メーカーから取扱い上の注意などの説明があるといいのではないかというお話を頂いています。最後に、中小企業は化学物質について相談できる先がないというお話も頂いています。
前のページに戻っていただくと、今、御紹介したヒアリング結果を大まかにまとめますと、このような課題があるのではないかということで四角囲みの中にまとめておりますが、実態としては、比較的規模が大きいメーカーではリスクアセスメントについての好事例のような取組というものもあります。一方で、中小企業では、以下のような状況が見られるということで、人材不足、知識不足、経済的理由から法令に基づく措置も含めて必要な最低限の措置も取られていない事業場も多いのではないかということ。それから、経営基盤が脆弱な中小企業で対策を講じるためには中小企業でも実行可能な制度や経済的支援が必要なのではないかということ。それから、知識、ノウハウのない中小企業に対して、川上のメーカーなどからの情報提供の強化や相談体制の整備が必要ではないかということと、これは中小企業に限らずというお話ですが、規模の大小にかかわらずリスクアセスメント結果に基づく措置が努力義務などで実施していないという状況や、リスクアセスメント結果に基づく措置については工学的対策は経費負担が大きいため保護具で対応することが多いという状況があるようなことが、4名の方からのヒアリングから言えるのではないかということでまとめさせていただきました。
3、4ページ目は、このテーマを議論するに当たっての参考のデータとなるのではないかということで、事務局のほうで御用意させていただいたものです。3ページ目は、特に中小企業での取組が議論になっておりましたので、企業の規模別に今の労働安全衛生法で義務とされている健康診断、作業環境測定、リスクアセスメントの実施率がどのようになっているかということを国が行っている統計調査からまとめたものです。見やすいように規模の小さい所を黄色くしておりますが、御覧いただければお分かりのように、やはり規模が大きい所では実施率が高くなっていますが、小さい所では、まだまだ法令の義務とされている措置も十分に実施されていない状況ということが統計調査からも分かるのではないかと思います。
下半分の所ですが、これは労働者側に対してもこの統計調査で直接質問など投げ掛けておりまして、実際に危険・有害なものを扱う労働者の方がどういう認識で作業しているかということを調べたものです。そもそも自分がそういったものを扱っているという認識があるのか、会社から教育を受けたことがあるのか、それから、一番基本となるSDS、ラベルというものがどういうものか知っていますかという質問も投げ掛けておりますけれども、規模の大きい所も皆さんが認識しているというデータになっておりませんが、小さい所では特に、ものによっては3分の1にも満たないぐらいの割合になっているのが実情ではないかと思います。
4ページ目を御覧いただきますと、今回の検討会の第1回で示させていただいた化学物質による労働災害の発生状況について企業規模のデータは取っていなかったものですから、事業場規模ごとに分けて集計し直した表になります。この表を御覧いただくと、件数としては、やはり規模の小さい所での労働災害の発生というのが多いのではないかと。実際の規模が小さい所が多いといっても事業場の数自体も多いということなので、右側に御参考として事業場規模別の労働者数も載せておりまして、発生率を一応簡単な計算ですが出したものになります。一番規模の大きい300人以上の所と比べると、300人よりも下回る規模の事業場の発生率が高いというところは見て取れるのかなと。下のほうになって逆転したりしているので、ここら辺をどう読むかというのはまた議論があるところかと思っております。その下の作業環境測定結果を行った事業場における管理3、特に、すぐに改善が必要なかなり濃度の高い状況の事業場になりますが、こちらは規模別に見ても御覧いただくとお分かりのように、余り規模別の差は見えてこないという状況になっています。
5ページ、今、申し上げた企業規模ごとのデータを見るときの参考として、それぞれどのぐらいの労働者数が、それぞれの規模の企業で働いているかということを参考で載せさせていただいております。
続いて、2つ目のテーマです。6ページ目ですが、これは永松委員から前回御発表いただいたものです。業界団体、大手化学メーカーによる取組状況ということで、前回御発表いただいたとおりですけれども、日化協様、そして、ライフサイクル全般にわたるレスポンシブルケアに取り組んでいるということで、基本的な考え方としてサプライチェーン全体でリスク低減を目指していくという取組をされているという御発表でした。そのための具体的な対策として、リスクに関する情報の共有が大事だということで安全性要約書、これは、ばく露情報やリスク管理情報を重点的にSDSに入れ込んだものということですが、こういったものも公表しているという御発表がありまして、2019年6月時点で40社、500件余りの要約書が公表されているというお話がありました。
それに加えまして、支援のためのポータルサイトということで、協会の会員のみならず内外に広くこういった情報を提供しているということで、化学物質の有害性情報、法規制の情報の検索機能とか、リスク評価を支援するためのツールといったことを公表しているという御発表を頂いています。
また、化学物質に関するセミナーなどもやっていらっしゃるということで、上に簡単にまとめさせていただいておりますが、ユーザーも含むサプライチェーン全体に対する化学物質によるリスクを最小化する取組、情報発信をするサイトの運営などを行っていますということ。それから、今、御説明したように安全性要約書について公表してサプライチェーンで共有してリスクを低減する取組が行われているというお話でした。
7ページ、これも事務局から御参考として御用意させていただいたものですが、今、法令で挙げるSDSの表示が一部の物質は義務、その他については努力義務となっておりますが、義務と努力義務を全て含めての状況ということで平成29年に調査したもので、およそ6~7割についてラベル表示なり、SDS交付が行われているというデータがありましたので参考で載せさせていただいております。特に注意すべき点として、下にラベル表示、SDS交付を行っていない理由というデータもありますので載せさせていただいておりましたけれども、これもフレキソの組合からもお話がありましたように、情報提供先から要望がないため交付していないという割合が一番高かったということになっています。こちらも御参考として紹介させていただきます。
続いて、3つ目のテーマです。これは経済産業省から御紹介いただいたものですが、主に化審法の取組ということで御発表いただきました。1つ目として、化審法では環境汚染の防止ということが目的となっておりますが、仕組みとして新規の事前審査、それから、その上市後の継続的な管理の措置、それから、化学物質の性状に応じた規制及び措置というものがあるということで、特に上市後の継続的な管理のところについて中心的に御発表いただきました。2つ目に、化審法では平成21年に改正が行われたということで、従来はハザード、有害性のみに着目して規制をするという考え方であったのが、環境への排出量がどのぐらい環境に経由してばく露するのかといったことを加味したリスクベースの評価を行う体系になったという御発表を頂いております。
そのための具体的なツールになると思いますが、一般化学物質、優先化学物質、これは既存の化学物質ということになりますが、年間1トン以上製造・輸入した事業者に対して製造・輸入量、用途別の出荷量などの届出が義務付けられたということで、その情報、それ以外にもPRTRとか、モニタリングの情報などもありますが、そういったものによる有害性情報を基に実際の推定される排出量、これはばく露のリスクということになると思いますが、それと、有害性の強さによって、これを掛け合わせることでスクリーニング評価、リスク評価をやっているという御発表を頂いています。
その後の委員とのやり取りの中でも、こういった情報を労働災害防止にも活用できるのではないのかというお話もありましたけれども、現状ではそれを活用して労働災害防止にいかすという仕組みにはなっていないということで、まとめとしては、今、お話しましたように化審法ではリスクベースの評価の仕組みが確立されている。ただ、環境汚染防止と労働災害防止の分野での情報の共有化などは現状進んでいないということです。
9ページ目、これも完全に参考情報となりますが、化学物質管理については様々な法令がありまして、それぞれの法令ごとに規制の目的、対象は異なるわけですが、こういった法令による規制があるということで御参考として載せさせていただいております。
10ページ、最後のテーマです。これはJXTGエネルギー株式会社の持田様より御発表いただいた内容です。主にアメリカにおける化学物質管理の仕組みと実態などについてお話を頂いております。1つ目は、アメリカの労働安全衛生法令の考え方ということですが、基本的にはばく露限界値以下の管理を求めているということで、ただ、ばく露限界値が設定されているもの以外であっても、ここに書いてありますように、事業場において認識されているハザードを放置してはならないという一般的な規定がありまして、これによって広く対応が求められているというお話がありました。2つ目は、ここが特徴的なところかと思われますが、アメリカでは、やはりハザード・コミュニケーションというのがかなり重視されているということで、実際に化学物質を取り扱う労働者が自らその危険・有害性をきちんと理解しているかどうか、ここが法令上求められているということで、有害の物質であるにもかかわらず、そのことを労働者に伝えないまま使用させることはできないということ。実際に行政が監督に入ったときに、違反を取るというものについてもハザード・コミュニケーションに関する違反が2番目に多いというお話も頂きました。3つ目は、これもアメリカでは特徴的なものかなと思いますが、マスクについての適切な使用を担保するための仕組みというのは、かなり日本とは違って厳しく設定されているということで、保護具の選定とか、医療従事者による評価、フィットテストといったものが法令で厳しく求められているという御紹介がありまして、これも違反の事項としては4番目に多いというお話も頂いております。4つ目は、これはやり取りの中で出た話かと思いますが、日本でも先ほどお話が出たように、工学的対策が難しくてマスクに頼っているというお話もありましたけれども、場合によっては、別にマスクだからといって、必ずしも長期的に安価な方法というわけでもないこともありますというお話もありました。要は、こういう厳しい管理をすることによってマスクの使用というのもコストが掛かるという観点でのお話かと思います。
最後に、これもアメリカの特徴的なところだと思いますが、インダストリアル・ハイジニストという、かなり高度な専門家が数多く育成されているということで、1.5~2万人ほどいるというお話でしたが、こういった方が、例えば大企業であれば直接雇用している所が多かったり、中小であれば外部コンサルタントとして利用したりということで、化学物質管理を支える仕組みになっているというお話を頂きました。一応、四角の中も、今、御紹介したようなことで、ざっとまとめたものです。
11ページに、今、御紹介したようなヒアリングを踏まえて、共通的に見えてきた課題はこういうものではないかということを案として事務局のほうでまとめさせていただきました。1つ目と2つ目は、中小企業が中心の話になりますが、最低限の措置の実施すら行われていない中小企業が多くある実情を踏まえ、経営基盤が脆弱で、専門的知識、人材の不足する中小企業においても労働者を危険・有害な化学物質へのばく露から守るための取組が行われるようにするためにはどのような仕組み、支援が必要なのかといった視点への検討があるのかと思います。2つ目は、未規制物質による胆管がん問題などが発生したわけですが、依然として中小企業では労働者が化学物質にばく露する場面があっても、必要な対策を講じていない所も多いといったお話がありましたので、胆管がんのような問題が今後、再び起こることがないようにするためにはどういった仕組み、支援が必要なのかという論点もあるかと思います。3つ目は、リスクアセスメントの結果に基づく措置も含めてリスクアセスメントの実効性を高め、有効な化学物質へのばく露防止措置が講じられるようにするためにはどのような取組が必要なのかということ。4つ目は、これはサプライチェーンの話になるかと思いますが、化学物質のユーザーである中小企業への支援も含めてサプライチェーンを通じて適切な化学物質等の管理を促すためにはどのような仕組み、支援が必要なのか。最後は、他法令とか、米国での御紹介も踏まえてですが、米国等の諸外国の制度・取組、他法令の取組なども参考に日本において、より実効性の高い化学物質による労働災害防止のための仕組みを構築するためにはどのような取組が必要か。こういった論点が、一応共通して見えてきた課題としては挙げられるかということでまとめさせていただきました。以上になります。
○城内座長 ありがとうございました。2回に分けて7つのヒアリングを行ったわけですが、内容ごとに事業場における取組状況、業界団体・大手メーカー等による取組状況、また他省庁・大手化学メーカー等による取組状況、他省庁・他法令の取組状況、米国における化学物質管理の取組状況の4つに分けて整理していただきました。ヒアリングを通じて見えてきた課題についてもまとめていただいています。
まずは、委員の皆様から2回のヒアリングを通じて見えてきた課題について、事務局でまとめていただいたものに対する意見、さらに追加すべき課題等コメントがあれば頂きたいと思います。この後で参考資料のほうにもありますけれども、検討事項との関わりで、更に議論していただきたいと思いますが、まずはヒアリングの結果についてのコメント等ございましたらお願いいたします。
○永松委員 日本化学工業協会の永松です。今、御報告があったとおり、いろいろと対策が必要かと思いますが、2点ありまして、1点は先ほどの参考にもありましたように、SDSあるいはラベル、あるいは作業環境の管理、これはもう基本的なものですが、そこがまだ十分にできていないということが1つです。やはりそこをどうやって、しっかりと充実させていくかということが重要かなと思います。
2点目は、今、ありましたように、企業によっては人材を含めた資源にも不足したり苦労している所が見える状況の中で、ここに出されている5つの課題があるわけですけれども、やはり基本的なものをしっかりやるという、そこのところの実効性を高めるようなことを検討することが、大変重要ではないかと思います。また、新たな仕組み等も検討が必要だと思いますけれども、ちょっと言い方が十分ではありませんが、いろいろな仕組みを重ねていっても、結局十分に実行ができなければ効果を出すのは難しい。特に今回は中小企業ということになれば、ある意味やるべきことがどこまでできるのかが懸念と思いますので、既存の取組のところを、まずしっかりとやっていくことが、1つ重要な論点かなと思います。
○城内座長 そのほかございますでしょうか。
○名古屋委員 これでちょっと思うのは、確かに事業者さんとか従業員とかへの教育だとかいろいろなことがあるのですけれども、事業場の全ての事項に対して最終決定権は経営者にあると思うのです。そうするとどこを見ても、経営者の労働衛生管理に対する意識革命という教育的な制度いうのが無いように思うのです。要するに、どのように衛生管理とか安全管理などの、意識改革をしようとしても、そういうことを経営者にサポートする制度がないような気がするのです。例えばアメリカなどは、作業者の労働衛生管理については経営者に対して自主的な管理ですが、経営者は、きちっと労働衛生管理などを行っています。それは、経営者に対する罰則規定が怖いのと、作業者からの訴訟が怖いからだと思うのですよね。自主的管理だけども経営者が労働衛生管理などを行うのは、経営者の意識の他にそうやらなくてはいけないという背景があるからだと思いますけれども、日本の場合は作業者にどういう教育をさせようかとか、どういうシステムで実施しようかというのはあるけれど、では、そうした教育など労働衛生管理を実施する最終決定権を持つ経営者はどうなのだろうかと。やはり経営者に対する安全・衛生管理を意識させる教育を実施することが必要なことだと思うのです。詳しいことはこれからやるのだと思うのですが、やはり何か経営者に対する教育という形のものは、大きな企業での必要性は低いと思いますが、中小企業から零細企業へと下に行けば行くほど、最終決定権を持っている経営者の考えで物事が動くので、経営者に対する意識改革や教育を実施する様な制度というものが必要ではないかなと思っております。
○城内座長 ありがとうございます。そのほかございますか。
○三柴委員 今、お二人方の委員からもお話があったように、最終的にはどうやってこの問題に目を向けさせるかと。その事業者が中心なのか、労働者にも協力してもらうべきかという点は議論すべきでしょうけれども、その際に、理想的には化学物質対策であれば、多分、縦・横・高さと私は考えているのですけれども、その3軸を全部満たすことが必要だと。つまりサプライチェーンの上流から下流まで全部対策し、その間でハザードなりリスクのコミュニケーションを図るということ。それから海外のどこかが持っている情報を共有すると。だからGHS等の情報は、ちゃんと日本でも共有するということ。それから現場でのばく露管理ですよね。これがあえて言えば高さです。この3軸を充実させれば、それは理想的に決まっているわけだけれども、なかなかそうは理想的に運ばないと。
中小の対策が余りにもお粗末であるということが改めて分かってきた中で、どうするかといったときに、例えば労働コンプライアンス全体で考えても、社労士さんなどが把握している中小企業の経営者の方々を動かすポイントというのは大体3つで、1つは、お金の増減、もうかる、あるいは支出が減るということです。2つ目は、目前課題を解決できると。人が辞めていくのだったらそういう問題など、今、困っている問題を解決すると。3つ目は分かりやすさです。情報が分かりにくいと、その時点で耳を貸さなくなってしまうと。
それから、あえてもう1つ加えるのだったら法的制裁なのです。これは努力義務とかではなくて、要するに違反したら即アウトというような強制力です。この4つがあると中小企業の経営者も動くというのが、社労士さんで結構頑張っている方からは、よく聞くわけです。
だから、それを踏まえてどうするかということなのですけれども、考えますに、やはり1つは要点を絞った対策が必要だろうと。真面目に政策サイドが考えると、いろいろ総花的に「ああせい、こうせい」というのが出てくるのですけれども、要するに絞って、これを目立たせようというのを決め打ちしていかないと現場が動かない。
それとの関連で、書類主義というのをなるべくやめる必要があって、要するにリスクベースに政策を進めようとしていったときに、綿密な規制にともするとつながるかもしれない。原則規定を外すために書類を出させるということになっていくと、結果としてその規制がかえって綿密になってしまって、それで現場が付いてこれなくなってしまうと。特に中小が難しくなるということがないかと。
さらに許されたリスクとか優先順位の発想というのが恐らく必要で、いろいろいい加減なところはあるけれども、どこから手を打っていくかということを、100ある違反を一気に解決するのではなくて、要するに手順を踏んで優先順位を付けていくということです。そのためにも、できれば省庁なので、今回されているように出す書類等々についても制度の趣旨が違うのだけれども、なるべく省力化するように、面倒臭くないように持っていってあげると。
さらにもう1つだけ言えば、問題が事業場にあると気付いた労使が相談する先として、前に調べてみたら労基署も入っていたわけです。だから、普通は労基署に行くというのは怖いですよね。それなのに相談しに行ったということは、やはり専門人材がいる所を求めていると。いざ困れば、どこか専門家を当たりたくなるということだと思うので、やはり産業保健センターなり何なり、行政機関に専門の人を置くという努力は必要なのではないかなと。これは余り言わないほうがいいのでしょうが、地方採用の技官制度をなくしてしまったけれども、実は必要もあるのではないかなと。そういうところも含めて、民間人材を登用するということも含めて、いろいろ方法はあると思うので、そこは考えていかれてもいいのかなと感じております。すみません、長くなりました。
○中澤委員 私どものほうで推薦させていただきました、全日本フレキソ製版工業組合のコメントが書かれているのですけれども、このコメントも性悪説的に立って語られているものなのか、性善説的に立って語られているものなのかで、随分評価が違うのだと思いますけれども、理事長さんなどとお話させていただいていると、管理はしたいのだと、だけれどその知識がないのだということが、まず根底にあって、その上でのいわゆる発言だと私は理解しています。そういう観点で申し上げると、先ほど三柴先生が言われましたように、統一的な何か相談窓口というものを、かちっと設けていただくということが、まず最終ユーザーとしての中小企業における対応を促す一番の早道ではないかなと思っております。
その上で、先ほど来話されているように、いわゆるSDSの交付の問題だとか、そういったようなものを川上のほうに周知していっていただくということが必要なのではないかと思っております。即、最終ユーザーに罰則を付けるというのはどうなのかという印象を持っております。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかございますか。
○高橋委員 取りまとめにまとめた内容を見てまず思うのは、非常に課題が多いなということです。労働者側の立場から言わせていただきますと、災害に遭うのは労働者なので、その安全をまず担保すること。現行の制度の運用・仕組みの中で、まずはそれを第一優先にしていただきたい。また、その複線という形で様々な制度にも取り組んでいかなければいけないと思っております。例えばハイジニストの話もありましたけれども、ハイジニストを設けると言っても、今すぐにできるものではないと思うので、これは10年20年、もしかしたらもっと長期で考えなければいけないものですし、目の前の危険をどうやって取り除くのかという、本当に短期ですぐに解決しなければいけない様々な問題と、整理をしていく必要があると思っています。
それと、今日の資料の中に、事業所規模別の取組ができている、できていないという一覧表があったと思います。今回は特殊健康診断ですとか化学物質の取扱いについてということですが、労働安全衛生全般についても同じような傾向があると思います。労働災害のほとんどが50人未満、あるいは30人未満の企業で起こっているということ、しかもそこには法的な管理体制と言いますか、50人未満の事業所は衛生委員会も設けなくていいということになっていますので、そういった法的な縛りのない所で多くの災害が発生していることを考えると、やはり法的な枠組みである程度カバーする必要もあるのではないかなと思いました。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。
○大前委員 ヒアリングの結果から見えた課題の中で、1つ思いますのはSDSの問題で、これはサプライチェーンの中で、どこがSDSを作るのかというのは当然川上だと思うのです。フレキソ工業会ですか、こちらのほうのお話を聞いても、SDSの中身がなかなか理解しにくいということもありますし、実際に経験したことですと古いSDSが回っている、新しい情報が入っていないというようなこともあって、このSDSを見たら特に問題ないと、最近の情報だと、例えば発がん性絡みみたいな、そういう情報が抜けているというようなことも含めて、川上のほうがSDSをしっかり作る、例えば、最新情報はなかなか難しいでしょうけれども、3年とか5年ぐらいには必ず見直すみたいなこともやっていかないと、川下のほうはなかなか適切な対応ができないのではないかと思います。
それから、ヒアリングの結果ではないのですけれども、やはり健康管理というのは非常に重要な問題だと思います。特化則等々特別規則で健康診断を義務付けられていて、おおむね1年に2回義務付けがありますけれども、現実を見ますとほとんどリスクがない所でも健康診断をやらされているという言い方は無理ですが、法律にのっとってやっているのです。だからやはり健康診断というのは、当然リスクがある所ではちゃんとやらなくてはいけないけれども、リスクが小さい所では、やる意味がないのです。だからその辺は考えて、そのリスクの大小、あるいはばく露の大小にほとんどイコールだと思うのですけれども、これで健康診断の回数なり中身なりをしっかり変えるようにしておかないと、本当に無駄な健診をやっているというようなことが、今は現実としてあると思います。
それから、ただ無駄な健診をやっていると、今、言いましたけれども、では健診を省くというような形を将来的に考える場合に、では何を根拠に省くかと言いますと、現在ですと作業環境測定をやって、それがもし十分に低ければ、第1管理区分は例えばずっと続いていれば、それを根拠にして健康診断を省略、あるいは回数を減らすということは可能だと思うのです。そのためには作業環境測定の結果が公的な所に出ていないと、やはりまずいわけです。特に国のほうは、あそこは1回健康診断をキャンセルしたのだけれども、それで良かったのかどうかということになると、バックグラウンドのデータは要るので、せっかく作業環境測定を1年に2回やっていますから、その報告義務をやはり課して、それによって健診の回数等々を変えるということをやったほうがいいのではないかと課題として思います。
それから、もっと大きな課題は、これは労働衛生側の問題で、対策ではないと思うのですけれども、もう十何年も前から健康診断の中身、特健の中身を散々議論してきておりまして、結果は報告書でいっぱい出ているのですね。にもかかわらず変わらないということがあります。それは是非、早めに変えていただきたい。早めに変えることの1つの特徴は、ばく露をちゃんと見るために、生物学的モニタリングなどもしっかり入れるというようなことも入っていますので、これはお金が掛かるということで、なかなかそうは簡単には入らないかもしれませんけれども、それをやると結局はばく露の大小は分からないということがありますので、その辺も課題だと思います。
それから、この検討事項の中に人材育成の問題があるのですが、これは先ほどIHに関してはお話されましたけれども、私たちにとってもっと重要な問題意識は、研究者がいないのです。化学物質に関する研究者がすごく減っているのです。これはもうどうしようもない、今は本当に枯渇している実態で、IHもそうですけれども、と同時に研究者、大学なりあるいは研究所なり、そういう所の研究者の数を増やすための方策もやっていただかないと、結局は科学的な化学物質の情報が出てこないということがあるので、これは是非将来的に、課題として考えていただきたいと思います。
それからもう1つは、今、皆さん健康診断とか作業環境測定をやっても、発がん性がありそうな遅発性の影響のありそうな物質は、30年間の記録の保存義務付けがされているのです。では、30年間の保存は役に立っているのか。単に保存しているだけで何にもなっていないのではないか。もっと言えば健康管理手帳、これも役に立っているのか、もちろん健康診断を受けるという意味では役に立っているのですけれども、それをちゃんと収集して、例えば発がんが増えている減っている等々ということに使われているのかというと、どうもそのような様子もないらしいのです。したがって、特に発がんのような長期のばく露を30年間保存を要するような化学物質に関しては、どこかで一括して、誰がどれぐらいの量を何年間ばく露したのかと。その人は最終的に、例えばがんになったのか、あるいはがん以外のことで亡くなったのかというようなことを、がん登録とリンクできるような形でもっていかないと、結局は30年間保存しっ放し、あるいは例えば会社がなくなるということがありますよね。あるいは会社がどこかに吸収されるということがある。そのときにその情報は、多分なくなってしまうと思うのです。そういうことも含めて、遅発性の化学物質に関しては、そういう情報の一元的な保存といいますか、そういうことも課題としてあると思います。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。そのほか。
○漆原委員 今の大前先生の意見にほぼ近いのですけれども、これは私も以前から発言をさせていただいていますが、健康管理手帳についてはPHRのような形で、ずっと電子的に記録を残しておき、それを基に将来がんなどを発症した際の対応につなげる取組も考えていただきたいと思います。
もう一点、SDSもそうですが、ラベル表示、ピクトグラムはやはり重要です。労使ともに化学物質に対して意識が高くない事業場は、どうしても一定数あるわけで、そうした事業場においても、直感的にわかるピクトグラムによって、「あっ、これは危険なんだな」と理解してもらうことが重要ではないでしょうか。発表の中でフレキソさんの「もともとの事業が活版印刷から始まっており、化学物質を扱っているという認識はなかった」という発言が象徴的だと思うのですが、労使ともに化学物質を扱う意識がなかったとすれば、まずはピクトグラムからスタートしないと、なかなか対応は難しいのではないかなと思っています。
あと、最後のヒアリングから見えてきた課題案の5つですが、これはそれぞれ、かなり重いテーマです。この検討会があと何回あるかは正確には存じませんが、何かしら優先順位を決めて取り組むことが必要なのかなと思っているところです。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかございますでしょうか。
○宮腰委員 すみません、今まで出されたところと、かなり重複するかもしれませんが、中小といわれている化学会社というのは、ほとんどの所はちゃんとリスクの部分も承知の上で対応されていると思うのです。ただ、化学物質を扱っている化学会社以外の所については、そういう認識がされているのかどうか非常に不安な部分があります。教育と言われたとしても、化学物質を扱っているという認識がなければ、それぞれ社員に対する教育もなされないと思いますので、先ほどの話にもありましたが、やはりまずは経営者の方たちが、自分たちが、自分たちの産業が、化学物質を扱っているのだということを認識されることから始めた上で、労働者への教育に結び付けるようなシステムを是非作っていただきたいなと思いました。以上です。
○城内座長 ありがとうございます。そのほかございますでしょうか。
○永松委員 では2点ほど申し上げます。先ほど宮腰さんからお話がありましたが、私は今日もここで少しお話できたらと思っていましたのは、第1回で配られました平成30年度の化学物質の災害状況を見ますと、263件報告されております。製造業は123件、残りは製造業以外なのです。製造業の中で化学工業は30件、したがって 今、議論がありました中小の事業所というのを、どういう所すなわち業界をターゲットにするのかということは、今後のアプローチとしては大変重要かなと思っておりました。
それから、化学物質のマネージメントそのものが中小は難しいという点もあります。SDSやラベルの取り組みも大変重要ですが、これは大手の所ではほとんど100%近くやっていると思うのです。これが日本の化学産業の構造ですと、また次のメーカーさん、次のメーカーさんと行くと、必ずしも大手さんばかりではなくなります。一方、SDSやラベルの作成も相当な人材とコストがかかります、また、ほとんどの大手であればSDSやラベルの作成のシステム開発をしています。したがって大前先生からありましたような情報も、大手であれば3~4年ごとに更新できていくのですけれども、そのようなものがない中小の事業所で、SDSやラベルの作成をどうやって充実していくかというのも大変難しい点ではありますが、重要な点かなと思います。以上です。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかございますでしょうか。
○三柴委員 例えばイギリスのHSEは、中小対策をどうしているかと言えば、お金も人もいないというのは当たり前なので、やはり事業者なり、そこにある人的資源に自分らでやってもらうということを基本にしていて、そのために分かりやすい方法をなるべく行政側は示すと。そのような流れとしても、1つはシステム化というのは、やはりあるのだと思うのです。時々システム化というのはトラブルも起きてしまうけれども、それはもう試行錯誤だからしょうがないと。ただ、システム化してネットに自分でアクセスして打ち込んでくださいとやって動くわけがないので、そこに要するに人の支援が必要になるということです。だから、これはe-Taxと余り変わらない。ちゃんと前に機械があるけれども、横でサポートしてくれる人がいるというのを作らないといけないと、流れとしてはそういうことなのだと思います。もちろんあとは、どこまでそういう情報を管理したときに、それが個人の生き方に踏み込むことにならないかとか、情報管理をどうするかと、もちろんそういう問題は起こるのですけれども、基本的にはそういうことかなと思います。
○城内座長 ありがとうございました。そのほかございますでしょうか。
○大前委員 リスクを見るために、当然リスク評価をしなくてはいけないということで、各事業所のリスク評価ではなくて、もっと大きな所のリスク評価はあちこちでやられているのです。例えば対策課のほうがリスク評価のことを、平成18年ぐらいからでしたか、ずっとやっていらっしゃると。食品安全委員会は食品安全委員会でやっていると。経産省は経産省でやっている、環境省は環境省でやっているということで、ばらばらにやっているのです。それぞれ適用する場所が違うから、ばらばらにやっているのだと思うのですけれども、でも基本的に何が起こるか、有害性の評価のところと、では、それがどれぐらいの濃度で起きるかという、その量反応のところは、同じ文献を使ってやっているだけなのです。
あとは、それをどのように適用するかというのは、それぞれの省庁で違うだけなので、是非適用する所は、それぞれの省庁にあっていいと思うのですが、その前のところまでは、できれば一元化していただかないと、先ほど人材という話をしましたけれども、化学物質の研究者は非常に減っているということもありますし、リスク評価ができるような研究者の数も非常に減っているということもありますので、そういうリスク評価システムの一元化みたいなものが、やはり課題としては残っているのではないかと思います。
○城内座長 ありがとうございます。そのほかございますでしょうか。いろいろ御議論いただきました。これからは課題を踏まえた対応の議論に進んでいきたいと思います。本日の参考資料1を御覧いただいて、本検討会の設置要綱にありますように、主に4つのテーマについて議論を進めていくということになっています。そこで第1回を含めて、前回までに委員の皆様から頂いた御意見を参考資料2として、4つのテーマごとに事務局の方にまとめていただきました。事務局から御説明をお願いいたします。
○化学物質対策課長補佐 参考資料2を御覧ください。本日、各委員からお話いただいた内容とかぶるものもありますが、第1回を中心に全般的な御意見を頂いておりますので、これまで頂いた御意見ということで参考に御紹介させていただいて、これからの議論の土台にしていただければと思います。もともと検討事項を4つほどに分けておりますので、そのテーマに沿って出た意見ということでまとめさせていただいております。
まず(1)国によるリスク評価のあり方に関することということで、大前先生からも御意見がありましたが、化学物質のリスク評価を、各省ばらばらではなくて統一するべきであると。それから、ヒアリングの中でも出ましたが、化審法の届出情報を共有して、労災防止対策に活用できないかということ、1つ目と似たような話ですけれども、他省庁、他法令との連携を促進して、企業の化学物質管理の負担を軽減するべきではないか。それから、これは仕組み全体の話ですが、日本は少数の物質に厳しい規制を掛ける一方で、それ以外の物質には規制がないというところが欧米との大きな違いではないかということ、これも似たような話かもしれませんが、日本は個別規制が基本であって、管理濃度のない物質については放置されているというのが実態ではないか、こういった御意見を頂いております。
2つ目のテーマですが、事業場における対策です。まず1つ目として、アメリカの話も参考になるかと思いますが、マスクの適切な選定、労働者教育、適切な使用を事業者に行わせる仕組み、法制化が必要なのではないかということ、ばく露防止として重要となってきている手袋についての科学的知見の収集が必要なのではないかということ、それから、これも本日大前先生からお話がありましたけれども、第1管理区分が継続してばく露がないような場合は、特殊健康診断の回数を減らすなど労使双方にとって合理的なものとするべきではないかと。これも本日お話がありましたが、発がん性物質については、健診データや作業記録を30年保存させる仕組みがあるが、それをきちんと追いかける。職業がんの発生原因が本当にその物質だったのかを追跡する仕組みを作るべきではないかということ、発がん性物質を扱ったようなハイリスクグループの情報を、生涯にわたって保存していけるような仕組みが必要なのではないかという御意見を頂いております。
ちょっとまたテーマが変わりますが、リスクアセスメントの結果に基づく措置は、努力義務のため実施していないという声もある。これはヒアリングの中でも出たと思います。それから、リスクアセスメントをやっても、局排等の工学的対策は経済的負担が重く、呼吸用保護具に頼っているのが実態ではないかという御意見、これも本日出ましたけれども、作業環境測定結果の報告を義務付け、行政が管理1~管理3の分布を把握できるようにするべきではないかという御意見を頂いております。
3ページです。3つ目のテーマになりますが、ラベル表示、SDS交付の危険有害性情報の伝達のあり方に関することということです。これはGHSルールの徹底ということだと思いますが、ラベル、SDSの対象を限定しないという考え方から取り入れるべきではないかということ、川上から川下まで、できるだけ分かりやすく簡潔なルール付けが必要なのではないかということ、それから本日テーマになっていますけれども、中小企業が知らないうちに危険有害な物質を扱っているということもあるので、川上からの適切な情報伝達の仕組みが必要なのではないかということ。それから、これは逆になりますが、化学物質の使用方法はユーザー側にしか分からない面もあり、川上のみの努力だけでできないこともあるということで、国による支援も必要なのではないか。これも今日話題に出ましたが、SDSを最新の情報にしておく仕組みが必要なのではないか、これもGHSの話だと思いますけれども、SDS記載事項を環境有害性が義務でないなど世界標準のものとなっていないということで、他省庁と連携して見直すべきではないかという御意見を頂いております。
4つ目は、人材育成のあり方に関することです。これも本日いろいろお話が出ておりますが、まず基本的なこととして、世代交代などの影響もあって、化学物質管理を担える人材が不足しているということで、しっかりと人材育成を行うべきであるということ。それから、リスクベースの規制に移行するのであれば、人材をしっかりと育成する必要があるという御意見です。これは、インダストリアル・ハイジニストの意見が3つほどありますが、インダストリアル・ハイジニストのような人材をしっかりと育成して、企業側でも受け入れられ、社会的に活躍できる仕組みを構築するべきではないか。
それから、インダストリアル・ハイジニストが高い専門教育を受けて、社会でもキャリア形成の道があり、高い報酬を得ている諸外国、これは主に米国だと思いますけれども、諸外国の状況に倣うべきではないか、インダストリアル・ハイジニストのようなルールができ、そういう方々が各企業で責任を持って、例えば許容濃度を管理する仕事をメインでやるようなスタイルにならないと、いつまでたっても今と同じ状態、労災を防止できないような状態が継続するのではないかという御意見です。これはまた別の視点になるかと思いますが、人材を社内人材として育成するべきか、外部サポート機能として育成するべきか検討する必要があるのではないかということで、中小では社内で専門性のある人材を育成することは困難だということです。第1回の議論が中心になりますので、またその後の議論も踏まえてどういうことを優先で検討していくかということを御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。
○城内座長 先ほど御意見をたくさん頂きました各テーマについて、更に補足の御意見や追加の御意見等がありましたら、よろしくお願いいたします。皆さんが考えている間に、ちょっと発言させていただきたいと思います。各論になるのですが、先ほど漆原委員からラベル、ピクトグラムの重要性についても御意見を頂いたのですけれども、危険有害性情報の伝達ということに関して言うと、日本は非常に遅れていました。1990年代に情報が大事なのだということがいろいろな分野で言われたのですが、残念ながら日本では、化学物質の危険有害性ということについては全く触れられていなくて、欧州では1970年代に、既に危険有害性をちゃんと伝えましょうと。米国では1980年代に、危険有害性情報をちゃんと労働者に伝えるべきだという法令を発していますが、日本ではそういうことがなくて、どちらかというと違反はしていないけれども危険だという物質がいっぱい売られていたという状況があると思います。それは今でも変わらないわけです。
ただ、ラッキーだったと思うのは、労働安全衛生法の第57条、これは日本でただ1つの条文なのですが、危険有害性を包括的に分かりやすくラベルで伝えなさいというのがあります。これは、ほかのどの法律も書いていません。なので、そのお陰でGHSが日本に導入できたと思っています。それで、2008年に法改正があって、GHSに基づいたラベルとSDSを作ってもいいとして、GHSが日本に導入されたわけです。
実はこの法の第57条の2、第57条の3でそれぞれラベルとSDSとリスクアセスメントが改正後に規定されているわけですが、当初から問題点がありました。その問題点は今も続いているのですが、参考資料2にも挙げられていますけれども、物質数が義務の掛かるものは限定されているということです。2000年前後は100物質、ラベルだったら100物質でした。SDSが640です。それが今は673物質になって、リスクアセスメントも同様に義務が掛かっているという状況です。その物質数が限定されているというのが1つ目です。
2つ目は、参考資料2にもありますが、環境有害性が除外されています。それから、欧州との一番大きな違いなのですが、消費者製品は当然、労働安全衛生法は適用されていないという、諸外国のGHSの常識から見てこの3つが根本的に日本は違う所だと思っています。あと運用上の問題もあって、実は大体の製品は混合物なのですが、日本のラベル、SDSは、成分ごとに出してもいいとなっています。これはGHSを導入するときに、いろいろな大変さがあってそのように運用したのだと思うのですが、現状でそれが続いていて、例えば10物質の義務が掛かっている成分が入っていたとすると、成分ごとに10個のSDSが付いてくるということもあるらしいのです。そういうことは、やはりまずいので、GHSが落ち着いた段階なので、是非そこは是正してほしいなと思っています。
それから、これも当時決めたことなのですが、ラベルでの成分表示はしなくてもいいことになっているわけです。だけれども、中小の方々からも意見を伺ったときに、やはり成分表示はある程度あったほうがいいのではないかという意見も講習会等で聞きました。それは、いろいろな立場の方がおられると思うので、今後の検討の課題になるかなと思います。
もう1つ、裾切り値というのがあります。労働安全衛生法でSDS、ラベルに対してはそれぞれ裾切り値というのが決められていますが、実は日本はちょっと複雑になっていて、GHSでいうと各国もそれぞれ別々の所はあるのですけれども、0.1%、0.2%、0.3%、1%で裾切り値を決めたというサイエンティフィックなベースというか、それも余りはっきりしませんので、その辺ももう一度整理し直す必要があって、できれば諸外国との整合性が取れたほうが事業者としてもいいのかなと思っております。
それから、2008年にGHSが法に導入されて、先ほども申し上げましたが、その時点で物質が限定されていた。だけれども、義務が掛かっていないものについても情報伝達が必要だということで、平成24年に規則の改正をして、そちらでGHSに基づいた表示、SDSを発行してください、交付してくださいということが決められましたが、義務が掛かっているものと掛かっていないものというものの考え方、いわゆる義務と努力義務との違いが特に外国人には分からないというか、一体何なのだと聞かれたことがあるのですけれども、そういう状況もあります。事業者も多分、義務が掛かっているものはやるけれども、義務が掛かっていないものはやらなくてもいいのではないかということで、先ほど漆原委員からも御発言があったように、それが末端まで届かない1つの理由になっているのではないかなと思っています。全部義務にしようということではなくて、できる限りそういう方向に進めるという施策というか、そういうものも必要かなと思っています。
最後に、法の第57条の4で、新規化学物質の有害性調査というのがあります。これは変異原性試験を規定していると思います。当初は発がん性のスクリーニングとしてやられたと思うのですが、今普及しているGHSの分類判定基準から見ると、どこにも位置付けができないのです。発がん性試験はちゃんと哺乳類の動物を使ってやりましょうとか、変異原性試験というのは生殖細胞の変異原性、つまり、子孫に異常が起こるかどうかということで評価することになっています。なので、日本でやられた変異原性試験はもちろん無駄ではないのですが、国際的な整合性で考えると、ちょっと検討し直したほうがいいかもしれません。やめろという意味ではなくて、検討して位置付けをしっかりする必要があるのではないかなと思っています。ラベルとSDSと、最初の国によるリスク評価のあり方に関することで、現状、第57条でそういうことがあるということで発言させていただきました。よろしくお願いいたします。
ちょっと長くなりましたが、ほかの委員の皆様から御意見はございますか。
○永松委員 (1)から(4)まで今回の指定がされているわけなのですが、1つ目の国によるリスク評価のあり方に関することは、ここに記載されているような課題があろうかと思います。ただ、この検討会でここの点においてどこまでやるのかというのは、これまでのヒアリングの状況とか、今回の目的から見てよく検討すべきではないかなと思いました。
2つ目については、正にこういう具体的な取組あるいは課題があろうかと思うのですが、1つ目のマスクについては、正にこのとおりかと思いますけれども、大きな会社においても有害物に係るマスクあるいは吸収缶の管理とか、かなりしっかりやらないと抜けが出てくるのです。したがって、中小企業の事業者だけではなくて、ここら辺はマスクなどを提供されている会社も含めて何か取り組んだほうがよろしいのかなと思っております。
最後の作業環境測定結果の報告を義務付けということですが、測っていれば記録が残されていますので、新たに報告することは報告の書類を作るだけになるわけです。一方で実際に労基署の方が立入りされたときは、記録についてどうなっているかということは聴かれるわけでして、基本的には多くの事業所で記録と保管はされているはずだと思うのです。したがって、今後義務付けることで、事業所から見てそれによってどうなるのだというところが具体的にないと、報告がまた増えたというような形にならないように考えるべきかなと思っております。
3つ目の所ですが、ラベル、SDSの対象を限定しないということにおいては、今後危険性についてどこまで見ていくかということが非常に重要なことかと思います。すなわち、今回の報告にもありましたように、やはりSDSやラベルをしっかりと作っていくということと対象物をどの時点でどうするかというのは分けて考えたほうが、実効の面でいいのかなと思っております。また、特に3つ目のマルにありますように、川上の企業からその次、その次の企業まで含めて適切な情報の伝達の仕組みを作った上で検討していくという形も大変重要なのではないかなと思っております。
4番目の人材育成ですが、これは今日もいろいろあって、先ほど委員の先生方からも相談窓口等が大変重要だというお話がありました。一方で、日化協の会員のような大手の企業ではどうかというと、ハイジニストを持たれている方はとても少ないと思うのですが、ハイジニストが持たれている知見なり技術を組織としてカバーしていると思います。そういう方たちを持たれて安全に関わる対策を取っていると思います。したがって、今後大きな会社でもハイジニストのような者を社内でどうするか、あるいは社外でどうするかという議論は、将来的には当然あろうかと思いますが、やはり足元から見ていくと、こういう方を中小でも人材として持つ余裕がない所、大きな企業においてもそこに対する動機付けがどこまでできるかなというのは、難しい点があろうかと思います。以上です。
○城内座長 そのほかは、ありませんか。三柴委員、お願いいたします。
○三柴委員 例の大阪の胆管がんのケースを想定したときに、大阪市大のエンドウ先生の本によれば、要するにどういう経路であの問題が浮き上がったかというと、もともと規制はIARCの分類上は緩かったというか、発がん性は十分に確証を持てないという中で、最初は労働者自身がそれはおかしいとなって、それで医療機関に行って、医療機関の人が幾つか似たようなケースがあるのではないかとなって研究者に行って、クマガイ先生ですね、それで行政にという確かこういうルートだったと思うのです。そうすると、こういう問題を防ぐといったときに、今のパスウェイを逆回しを考えたときにどこに手を打てばいいのかということですが、やはり労働者に協力してもらうというのは前線でリスクに触れているわけだから、これは避けられないと思うのです。
もちろん事業者への規制も必要なのだけれども、規制というのはどうしても抜けてしまうから、では労働者に対して誰が意識付けを最もできるかといったときに、大企業だったら機密保持の必要もあるから自前で専門家を雇用して、その問題で困れば内製化された専門家に聞けるのだけれども、そうではない所では、飛ぶようなのですが行政を中心とした陣容の充実化というのはやはり必要なのだろうなと思います。日本の安衛法全体がそうなのですが、化学物質対策というのはどう見ても行政がイニシアチブを取る、情報を取ってリスク評価もして意識付けをしていくという恰好になっていると思います。諸外国との比較でも、制度上は少なくても行政のイニシアチブというのは色濃く出ていると思います。最終的には関係者の意識を高めなければいけないのですが、どこがそれをリードするかといったときに、やはり行政なのかなと。行政と労働者とをより意識その他資源の面で充実化していくということが必要なのかなというのが、文系的な弦理論としてあります。
あと、スリーステップアプローチでどういうシステム的な論理構造を取るかというのは、また考えて発言したいと思います。
○城内座長 今の三柴委員からのお話で、意見というか補足したいのですが、あの事例は確か、事業者が労働安全衛生法を守ろうとしていなかったと私は勝手に理解しています。そうすると、健診も作業環境測定も局排も付けられるわけがないと思うのです。だけれども、労働者が自分で自分を守ろうとしたら、どういうことが手段としてあるかというと、労働者自身が危険有害性を知るしかないわけです。そうすると、例えばラベルに危険有害性があれば、それは経営者等の意思とは関わりなく剥がさないと思うので、付いているはずだと思うのです。
先ほどの漆原委員の話ともつながるのですが、労働者にまず危険有害性を伝えることが一番大事だと思っています。それは確かに行政が義務を掛けるのですが、そこから先は自由に回っていくというか、ヨーロッパの法律がそうなっていて、欧州のGHSを導入した法律は流通に係っているのです。ですから、労働現場だけではなくて、消費者製品にも労働現場にも行くような法体系になっているので、そこは誰かが恣意的に剥がすとかしなければ付いているはずのものなので、そういうシステムになれば労働者が自分で情報を得て、それから行動をどうするかというところにつながるのではないかなと期待しています。御意見はございませんか。大前委員、お願いいたします。
○大前委員 リスクアセスメントのシステムというのは、非常に自由主義的で自立的なはずなのです。そういうシステムをちゃんと取り入れる覚悟というか、それがあるかどうかというのは、特に経営のほうだと思うのですが、重要なファクターだと思います。今おっしゃったように、今までの労働行政というのはどちらかというとお国が中心で、企業はそれを守っていればいいと。私が経験した端的な例は、このゴム揮、有機溶剤ですね、ゴム揮は有機則に掛からないゴム揮を作ったと、いいだろうということをおっしゃった会社がありました。そういうのは昔からの話なのですが、そこら辺の思想的なところを特に経営のほうはしっかり理解していただく、覚悟していただく、これはやはり非常に重要だと思います。
○城内座長 そのほか御意見はございませんか。よろしいでしょうか。
○高橋委員 参考資料2について、現状の中小企業における化学物質の管理ができていないというデータも含めて、先ほど示していただいたことを頭に置きながら、例えば(2)や(3)をすれば、果たして職場で管理ができるようになるのかなという観点で見ていたのですが、多分、これだけではないと思うのです。例えばマスクの選定は当然重要だと思います。手袋も全てではないと思いますが、例えば、本当に薬品用の手袋を使っているかというと、多分そうではない中小さんはたくさんあると思います。
それぞれの項目は非常に重要ですが、こういう仕組みを作りましたと方向を決めたとき、今現状できていない所にその仕組みを持って行って、果たして現場がそれをやれるのかどうか。負担が増えたと感じるところもあるのではないかと思うのです。仕組みは大事だと思います。何らかの形で罰則を与えるということも、実効性を上げるという意味では必要なことだと思います。なかなか難しいのですが、どうやったら今の労働者の安全や衛生を確保できるかということを現場の作業をイメージしながら、この議論はしていかないといけないだろうなと思いました。そういった意味では、これはこれで非常に重要なことだと思います。
ヒアリングをして一番感じたのは、中小の担当者、働いている方の負担感が大きいということです。管理をしていくことに対する負担、それが負担だからやらない、あるいは抜け道を作り出すということにもつながっていくと思いますので、少なくとも、行う作業は同じだとしても、負担感をなくしてあげることは必要だと思います。例えば先ほど出されたように、有害性の情報をまず労働者に知らせることによって、作業している本人の作業は同じだとしても、これをやらなければいけないという意識が高まれば負担感は減ると思います。やはり、そういったことをやっていかないと、現場での実効性は上がっていかないのではないかと思いました。
○城内座長 ありがとうございます。私はGHSをやってきたのですが、GHSの最初のほうに書いてあるというか、そういう配列になっていますが、実はラベルが最初に書いてあるのです。MSDSが書いてあって、それで分類方法が書いてあります。つまり、それはラベルが一番大事だから、ラベルが最初にわざわざ書いてあります。それはSDSを作ればラベルは自動的にできるわけですが、あえてGHSの中ではラベルが最初に書いてあります。また、リスクコミュニケーションという言葉はGHSの中ではほとんど出てきません。ハザード・コミュニケーションという言葉で出てきます。なぜかと言いますと、労働者はリスクマネジメントの中に含まれているからなのです。つまり、労働者も一緒になってリスク管理をしていくという、今、高橋委員がおっしゃった方向で考えているので、そういう書き方になっています。
ですから、日本でも先ほどから委員の皆さんがおっしゃっているように、行政と事業者が主体でやってきたということから少し発想を変える必要があります。前回お話したかもしれませんが、アメリカでは労働者の知る権利から労働者が理解する権利に変えたということは、そういうことでもあるわけです。労働者が理解して、自分たちの行動に結び付ける。それで、なおかつリスクの低減も図るという論理的な背景があると思いますので、日本でもそういう方向に少しずつでも舵を切れればいいかなと個人的に思っています。そのほかにありませんか。事務局から何かありませんか。よろしいですか。
○環境改善室長 大変示唆に富んだ御議論を頂いていて、いろいろ対立軸が実はありまして、例えば三柴先生はやはり日本は伝統的に行政がというお話がある中で、正に城内先生がおっしゃるように労働者が危険を理解するというのがあって、それは多分、文化的にも個人の権利をやるのか、お上意識が強いのか、そういったこともあると思うのですが。そういう欧米に合わせていったほうがいいのか、三柴先生がおっしゃるように日本の文化はこういうものなので、それを考えてみるべきなのか、そういった点についても御議論いただけると助かります。
○三柴委員 例えば前に厚労科研でした調査でも、結論から言いますと、日本の文化は結構根強い。例えば安全運動全体にKY運動とリスク管理で見た場合に、KY運動のほうが有効ではないかというデータが出てくるのです。私の分析ですが、結局、安全問題を含めて日本的雇用慣行というのはやはり意識せざるを得ないなというのは、日本の場合はどうしても労使間の階層が割と相対的なのです。意識の面でも、その他の面でも。例えば新入社員の給与と社長の給与はせいぜいサラリーマン社長だったら10倍ぐらいしか違わないと。これは欧米へ行くと全然違うわけです。やはり労使間というのは、非常にキーンな対立関係が歴史的にあって、そういう中で労働者も自分の身は自分で守らないといけないという意識が育つ。組織階層の上に頼っていれば自分たちの安全を保てるという安心感は余りなくて、逆に言いますと、労働モチベーションもある種の開き直りがあると。
そういう中で育ってきた法制度と、日本のような法文化の中での制度は違っているわけです。そこを一緒くたに。安全思想は似ています。安全技術とか、そういうものももちろん共有できます。しかし、具体的な方法においては、それは日本の常識世界の非常識でもいいかもしれないわけです。そうでないと、法律論というのは絶対の正義はないので。基本的にはドメスティックなものですから。そうでないと、要するに人の命は救えないのではないかということなのです。そこは文系の人間として常々考えているところです。
○城内座長 私は違う考え方で、今、日本で多く自然災害もありますし、いろいろな災害があったり、私はまちづくり工学科という所にいるのですが、まちづくりで成功している事例は上から言ったものではないほうが多いのです。みんなで困ったね、どうしようかと言って始まったもののほうがどうも成功している確率が高いような気がしています。私が生まれたのは宮古で津波が多い所だったのですが、それはやはり日々訓練をしていたりするわけです。働いている人がそこでどういう意識を持つかということと、経営者が何かインセンティブを与えるか分かりませんが、労働災害が少ない企業というのはどちらかの力が働いて、多分、安全活動みたいなことが活発化しているのではないかと思うところがあります。
ただそれは三柴先生がおっしゃるように、全国的にそれがパッとうまくいくとは思わないのですが、やはり少しずつでもそういうことが広がっていくのではないかと思っています。どうしても何かが起きるまでは日本人はやらないというか、外圧があったり、何かがないとやらないというのはとてもよく分かるのですが、それを待っていると日本が終わってしまうかもしれないので、その前に何かそういう動きに火を付けるというか、最初は行政主導でもいいと思いますが、少しずつでも広げるような活動ができればと思います。
○三柴委員 少しだけ追加させていただきます。本当にラジカルな方法を取ろうと思ったら、例えば、銀行が中小企業にお金を貸すときに、安全性コンプライアンスを果たしていない所には貸さないというくらいにやれば、それは実効性は上がるかもしれないです。それと似たようなことをやろうとした都道府県労働局もあるのですが、ただ、緩やかな連帯とか、そういうレベルの話にとどまるわけです。業界との調整とかいろいろありますので、そこまではなかなかやれないわけです。
そういう中ででも日本の労働者というのは結構お行儀の良い面もあって、自分たちで考えているというより、その流れを重視したり、居場所を重視したりする中で、自然と安全も守っていくと。別に自分たちの安全を人に投げていると言いたいのではなくて、極論、使用者がいなくなっても自分たち労働者集団がまあまあ事業を運んでいけるぐらい、安全もある程度果たしていけるぐらいの力があるということが言いたいのです。労使間の格差が相対的というのはそういうことなので、実を言いますと、城内先生がおっしゃっていることは、結論的には私が言っていることと余り変わらないと思います。ただ、ラジカルな方法をどんと取るかと、あと行政の役割をどう見るかということとの関係では、ある程度文化を重視したほうがいいのではないかということです。
○城内座長 今の点に関して、ほかの委員の皆さん何かありませんか。どうすれば動くかということに関して。
○高橋委員 今の意見をお聞きして、自分の働いていた職場を思い出したのですが、一番のドライビングフォースは法律の改正でした。法律が改正されるとやはり守らなければいけないので、どんと作業が増えるという感じでした。もちろん、独自活動として安全衛生について日々やっているのは間違いないのですが、法律が変わって新たにやらなければいけないことというのは、事業者は当然守らなければいけない。作業者はどうかと言いますと、事業者から法律が変わったからやらなければいけないよと言われれば、しようがないね、ということになります。自分たちの認識が変わり、必要だということで自ら動き出すところまでいけばいいのですが、やはり一番最初は大きな何か世の中の流れが変わることによって動き出すというのが職場の実態だと思います。
東京応化さんのお話の中で、ローテーションで担当者を替えてやっているという話がありました。それは非常に理想的だと思いますが、それができない中小は特定の個人に全ての作業が偏ってしまっているのです。弊害はほかの人はやらないから何も知らないということなのです。あの人が全てやってくれるから、自分たちは知らなくても大丈夫なんだ、あの人に言われたとおりにやればいいのだとなっていると思うのです。
現場力というお話をよく三柴先生がされますが、そういった意味でいきますと、現場力というのは下がっているのではないかと思います。特定の人だけに作業が偏ってしまっているので、個人個人のレベルという意味でいきますと、昔に比べるとやはり落ちていると思います。SDSを知らない、ラベルを知らないという人がいたときに、果たしてその人が先輩になったときに、自分の後輩や部下に教えられるかと言ったら、多分教えられないのです。これが続いていくと、更に現場力の低下につながっていくと思いますので、やはり、現場における知識レベルというのはある程度保っておかないと、現場力はキープできないと思います。
○城内座長 先ほど大前委員からお話があったのですが、私もやはりどちらかと言いますと、自主対応型に行かざるを得ないだろうと。つまり、会社で労働安全衛生法もそうですが、いろいろなことをやらなければいけない、しかし、リソースは限られているという中でどうするかと言いますと、やはりプライオリティを付けないといけないと思います。そうしますと自主対応型に行かなければいけないというか、細かい法律をたくさん作っても、逆に余り役に立たないということもありますので、それは何十年も前にイギリスで経験していることですが、そうした中で、何が一番キーになるかということで考えていかなければいけないと思いますが、委員の皆さんはいかがですか。
○永松委員 化学物質のリスクマネジメントとは少し違う視点ですが、化学工場の保安・防災、あるいは労働安全では、今、安全文化という1つの考え方がかなり浸透しております。その中で8つの視点があります。1番の視点は動機付けです。今までの話にも出ていたように、安全文化の動機付けは労働者だけではなくて、経営者に対しても位置付けられております。特に中小の場合では、先ほどお話がありましたように、知識や経験は幹部の方に偏ってしまっているケースも多いと思いますので、動機付けを労働者のほうにも比率を上げていくというのは非常に重要なことかと思います。
それと日化協の会員会社で優良な安全成績を上げておられる所は、やはりトップダウンとボトムアップの融合が非常にうまくいっている所が安全成績も非常に優秀なものを残されております。そこで、ただ、労働者の方の動機付けを経営者だけにお願いし伝えていけばいいのかと言いますとそうではなくて、そこはもう少し行政も含めて経営者への動機づけをやっていく必要があろうかとは思います。
○城内座長 そのほかに御意見はありますか。
○中澤委員 中小企業での対応が遅れているというお話が縷々いろいろな方から出ているわけですが、最終ユーザーとしての中小企業の対応と、日化協様が言われるように、いわゆる一番川上から下りてくると、その途上は中小のメーカーになると思いますが、そこの対応と切り離した上でどういう対応をしていくべきかということを議論すべきではないかと思います。金銭的、財政的なもので国の支援が必要ではないかとか、最終ユーザーと中間に立つ中小メーカーと分けながら中小企業の負担への配慮を考えていくべきではないかと思いました。
それから、大上段に構えて、他省庁とか他法令と連携して企業の化学物質管理の負担を軽減するべきだという御意見がありますが、全くそうだと思いますが、ただここに入り込んでしまったときに果たして到達点が見えるのかどうかという問題があります。
一方で、今日の資料の中にもありますが、農薬などは所管の省庁によってみんな規制が違うという中で、横串で同じ物質で管理の程度が違うものがひょっとしてあれば、そこは安全衛生がすり寄るのか、ほかの法令がすり寄るのか分かりませんが、どちらかが過度の管理をしているのではないかという見方もある程度できるのではないかと思いますので、その辺の検討もできるのではないかなと思います。
○城内座長 その他はありませんか。
○環境改善室長 質問ですが、三柴先生は書類が多いとか、例えば原則規定を解除するために書類を増やすとかえって書類が増えるとか、そういったお話もありました。リスクベースということになりますと、どうしても実は書類が増えるのです。城内先生がおっしゃったように、ラベルを作るとか、SDSを作る、書類がどんどん増えていくと。開き直って考えますと、確実的な規定にしてしまえばシンプルですよね。そういう柔軟さを追い求めるほうがいいのか、簡便な規制がいいのか、そういう観点は何かありますか。
○城内座長 いかがですか。
○三柴委員 私の発言が増えて恐縮ですが、私はイギリスモデルが良いとは思っていませんが、イギリスモデルだったらルールはなるべく簡潔に、ガイドラインで複雑なことは書いておいて、自分たちで事業者がどのやり方がいいか選択してくださいというのが、一応モデルとしては基本になっているということですが、リスクベースにしていくことで、自社に合わない、ある意味不条理なルールで首を締められないようにしていこうと。要するにメリハリの付いた規制に変えていこうと思ったら、それは構造的に、改善室長がおっしゃるように、どうしても書類が増えてしまう。
結局、これに対する私の私案というか、考えは、あくまで私見ですが、やはり、その問題に詳しい人をサポーターとして加えていくしかない。それは行政側がそこを監視や管理する上でも同じことで、行政側に専門家がいなかったら現場に合った監視ができないわけです。そうしますと、人が今いなくなっているという所に行ってしまうわけですが、人を育てるにはどうしたらいいかと言いますと、そこは原理で、意味のある仕事がある所には人が育ってくれる。意味がある仕事のある所に人が育ってくるわけです。それは理科学系の原因分析も重要です。真面目にこういう災害が起きた理由は何だったか、世論を喚起するのは大事ですが、例えば、受動喫煙は労災認定はほぼないはずです。胆管がんの問題というのは分かっているだけでも50数人が亡くなっているわけです。新聞記事の掲載回数はどちらが多いかという問題は社会学的にあるわけです。意味のある仕事と言いましたが、意味のあるというのも捉え方というのがあって、これは理科学と少し違った発想が必要なのです。
そういう意味で、ちゃんと化学物質対応の必要性を説くある種の世論喚起の方法も一緒に考えないといけないのかなと思っています。そのリーダーはまず地盤作り、基盤作りというところでやはり行政なのではないかと。行政にちゃんと専門家を置いて、産保センターを通じてちゃんと情宣していくなり、そういう地道な活動や長期の戦略が必要だと思いますが、もう少し花火を上げる作業も必要かなとは思っていて、方法を悩んでいるという次第です。
○城内座長 今の改善室長の御質問について、業界からありませんか。
○高橋委員 柔軟がいいか、簡便がいいかということですが、柔軟にするためにはその取り扱う人のレベルを上げておく必要があると思います。そうでないと、柔軟な対応はできないというか、それは逃げ道になってしまうので、化学物質に対する知識や教育をしっかり行って、レベルを上げた上で柔軟な対応はあると思いますが、今現在、柔軟な対応は中小では多分難しいのではないかと思います。
○城内座長 その他はありますか。
○大前委員 柔軟な対応をもし採用するとした場合には、化学物質における健康障害の話ですから、どの健康障害を防ぐかということもマネージャーが決めるというところまでいかないと柔軟な対応にはならないですよね。今みたいに規制値というスタイルでやりますと、これはもともと柔軟ではないと思うのです。そこをまた許容してやるのだったら、柔軟なほうが簡単ですからいいと思いますが、そういうような文化は日本にはないかなという気がしております。
○城内座長 他にありませんか。簡単な問題ではないと思います。そろそろ時間になってきました。活発な御意見をありがとうございました。今日は本当に多岐にわたって様々な意見を頂きましたが、これをまた事務局のほうでまとめていただいて、更に議論をしていただきたいと思います。それで方向性が見えてくるかなと思います。それで事務局の皆さんに頑張っていただくことで、今日の議論はこれで終了したいと思いますが、事務局から連絡があったらお願いします。
○化学物質対策課長補佐 非常に内容の濃い議論をありがとうございました。共通するテーマは現場をいかにして変えていけるということかなと思っておりますので、何をどう重点的に今後議論していくかということも含めて、事務局のほうでしっかり整理をしたいと思います。次回は来年の2月5日を予定しております。また改めて正式には御連絡を差し上げたいと思います。
○城内座長 以上で、第4回職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会を閉会いたします。今日はありがとうございました。