令和2年度第3回化学物質のリスク評価検討会(有害性評価小検討会)議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

令和2年11月11日(水)13:30~14:49

場所

オンライン開催(事務局:TKP新橋カンファレンスセンター カンファレンスルーム12F)

議題

(1)リスク評価対象物質の有害性評価について
 (初期リスク評価)  
  1.  ジエタノールアミン
  2.  りん酸トリ(オルト-トリル)
  3.  2-クロロニトロベンゼン
 (詳細リスク評価)
  1.  オルト-フェニレンジアミン
              
(2)その他

議事

議事内容

○神田有害性調査機関査察官 それでは、定刻でございますので始めさせていただきたいと思います。
本日は、大変お忙しい中御参集いただきまして、誠にありがとうございます。これから令和2年度第3回有害性評価小検討会を開催させていただきたいと思います。
本日はリモート開催との併用という形で開催させていただいております。リモートでは西川先生、平林先生、吉成先生が御参加となっております。
そのため、御発言の際しましては、会場にいらっしゃいます先生もリモート参加の先生も、挙手いただいて、座長の指名を受けてから御発言いただきますようよろしくお願いしたいと思います。
また、カメラがない先生方については、もし御発言があるときはチャットで発言ありと書いていただくか、または声で呼びかけていただくかしていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
また、会場にお越しの先生方におかれましては、御発言の際にはお手元のハンドマイクを使って御発言いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
また、本日から若干名ではございますが一般傍聴の方にも入っていただいておりますので、参考に御紹介させていただきます。
では、本日の委員の出席状況につきましては、高田先生から所用のため御欠席との連絡を頂いております。
それでは、以降の進行につきましては座長の大前先生にお願いしたいと思います。
○大前座長 それでは、座長を務めさせていただきます。
今日は3つのリスク評価、それから1物質の詳細リスク評価のテーマでございます。よろしくお願いいたします。最初の3つは、端的な言い方をしますと、二次評価値をどうするかというのが課題、それから、最後の詳細リスク評価の物質に関しては、詳細リスクに行くかどうかというような課題でございますので、よろしくお願いします。
それでは、まず事務局から資料の確認をお願いいたします。
○神田有害性調査機関査察官 では、資料の確認をさせていただきます。
今画面に出させていただきましたホームページ上の今回の資料の議事次第及び資料一覧になっております。資料は1~4、先ほど大前先生から御紹介いただきましたとおり、初期リスク評価としてのリスク評価書が資料1~3、詳細リスク評価書が資料4のオルト-フェニレンジアミンということで、資料1~4。あとは参考資料として1と2をつけさせていただいております。また、会場の先生方にはお手元にタブレットを配らせていただいておりますので、そちらに間違いなく資料が入っているかどうかを御確認いただければと思います。
以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
それでは、本日の議題、最初の物質でございますけれども、ジエタノールアミンの初期評価につきまして、事務局から説明をよろしくお願いいたします。
○神田有害性調査機関査察官 それでは、ジエタノールアミンです。資料1となります。ジエタノールアミンのリスク評価書(案)(有害性評価書部分)でございます。
こちらがリスク評価の対象となりましたのは2014年からということで、ばく露作業報告につきましては、対象が2014年度(平成26年度)、報告が2015年度ということで、当時の報告数としては238上がってきているところでございます。
こちらの物質が選ばれた理由としましては、2012年にIARCで2Bと評価されたことをきっかけとしてリスク評価対象となっているといった状況でございます。
では、リスク評価書(案)の内容を見ていきたいと思います。かいつまんで説明させていただきます。
まず物理化学的性質でございます。
(1)の化学物質の基本情報につきましては以上のとおりで、労働安全衛生法上は名称を通知すべき有害物ということで、別表9に該当している状況でございます。
(2)、物理的化学的性状でございます。外観につきましては、特徴的な臭気のある白色の結晶あるいは無色の粘調な吸湿性液体ということでございます。蒸気圧につきましては、20℃で1 Pa未満ということでございます。融点としては28℃ということになっております。また、オクタノール/水分配係数は-1.43という数値が出ているといった状況でございます。
次に行きまして、(3)の物理的化学的危険性でございます。火災危険性として可燃性となっております。物理的危険性としては、蒸気は空気より重いとなっています。化学的危険性といたしましては、燃焼すると分解して有毒なフュームを生じるとなってございます。水溶液は中程度の強さの塩基であって、強酸化剤や強酸と激しく反応するとなっております。
次が製造・輸入量でございます。製造・輸入量は、経産省のデータによりますと、平成30年、2018年度で1万4,385 tとなっております。用途といたしまして、こちらは確認した文献は化学工業日報社さんの『16615の化学商品』の2020年版ですけれども、そちらではエタノールアミンとしての記述になっております。ですので、用途としてはジエタノールアミン単体ではなくて、モノ、ジ、トリを合わせたエタノールアミンとしての用途と見ていただければと思いますが、主には合成洗剤であったり、乳化剤、化粧品、靴墨、艶出し、ワックス、農薬など、また切削油、潤滑油とかの添加剤などに使われているといった状況でございます。製造業者・輸入業者は以上のとおりとなっております。
次に有害性評価の結果に行きたいと思います。
まず発がん性でございますが、発がん性は、ヒトに対する発がん性が疑われるとなってございます。こちらは、まずヒトの発がん性に関して評価できる疫学調査結果は得られていないという状況でございます。動物実験ですが、マウスの経皮の投与試験におきまして、雌雄に肝細胞がんと肝細胞腺腫、また雄に動物実験ではまれな腫瘍である肝芽腫と尿細管腺腫の発生増加が見られたということになっておりまして、こちらはヒトに対する発がん性が疑われるという形で評価しております。
各評価区分でございますが、最初に申し上げたとおり、IARCが2B、産衛学会も2B、そのほかACGIHでA3、DFGで3Bということで各評価区分がついているという状況でございます。
閾値の有無でございますが、遺伝毒性がなしということになっていますので、ありとなっております。
LOAELですが、先ほど言ったマウスを使った2年間の経皮投与試験の結果になっております。少し長いのでかいつまんでいきますと、ジエタノールアミンを0、4、18、160 mg/kg/体重を皮膚投与した結果、雄マウスの生存は対照群と同程度だが、雌マウスの生存は有意に減少したとなっております。また、62行目、先ほど申し上げましたとおり、雄の全ての投与群において肝細胞腺腫、肝細胞がん、肝細胞腺腫と肝細胞がんの合計の発生率は対照群より有意に高かったということになっております。このことから、LOAELとして40 mg/kgという値が得られているといった状況でございます。次のページに参りまして、83行目のところからですが、今得られたLOAELから不確実係数を利用してNOAELに変換し得られた評価レベルが、85行目ですが、0.06 ppm(0.24 mg/m3)ということで評価レベルが得られているといった状況でございます。
また、発がんの定量的リスク評価に関して、ユニットリスクに関する情報はなしとなっております。
次に参りまして、発がん性以外の有害性でございます。
急性毒性は以上のとおりでございます。
次のページに参りまして、111行目、皮膚刺激性/腐食性のところですが、ありとなっております。
次に眼に対する重篤な損傷性/刺激性もあり。
また、皮膚感作性/腐食性についてもありとしております。
次に呼吸器感作性ですが、こちらは判断できないとしております。
次に反復投与毒性でございます。138行目です。NOAELとして1.5 mg/m3という数値が得られています。こちらはラットを用いた3ヶ月の吸入ばく露試験、ラットにジエタノールアミンを0、1.5、3、8 mg/m3を1日当たり6時間で3ヶ月吸入したばく露試験の結果ですが、少し飛ばしまして144行目、3 mg/m3群では雄ラット3匹に咽頭上皮に限局した扁平上皮化生が見られたが炎症は見られなかったということで、3 mg/m3群から病変が見られたということでございまして、よってNOAELとしては1.5 mg/m3という形になっております。この結果から、SIDSでは3 mg/m3をNOAELとしているそうですけれども、環境省はNOAELとして1.5 mg/m3ということもありますので、こちらを取りまして、NOAELを1.5 mg/m3として採用しました。そこから不確実係数を使いまして評価レベルを計算したのが155行目で、0.03 ppmということになっています。0.11 mg/m3ですね。ということで評価レベルが得られている状況でございます。
参考に13週の飲水投与の結果を載せておりますが、割愛させていただきます。
進みまして、178行目でございます。生殖毒性でございます。生殖毒性はありとなっております。ヒトでの報告はございません。動物の吸入ばく露、経口投与による胎児の骨格変異が増加した報告があるというところで生殖毒性はありということになっております。
参考といたしまして、NOAELとして50 mg/m3という数が得られております。こちらはラットを用いた吸入試験で、鼻部吸入を1日6時間、妊娠6日から15日まで行わせたというものの結果が出ておりまして、186行目ですが、200 mg/m3の群の21匹中8匹で交配後14日に膣出血が見られた。また、189行目ですが、胎児では200 mg/m3群で骨格変異が有意に増加したということで、200 mg/m3群から異常が発生しているということで、NOAELとして50 mg/m3という数が得られているといった状況でございます。評価レベルといたしましては、197行目ですが、0.87 ppm、3.75 mg/m3という数値が得られているという状況です。
次に200行目ですが、遺伝毒性に参りまして、遺伝毒性はなしということで、いずれの試験も陰性であったということです。
生殖細胞変異原性ですが、こちらは判断できないとしております。体細胞によるin vivoin vitro試験結果はいずれも陰性でございますが、生殖細胞についての情報がないため判断できないとしております。
210行目、神経毒性については情報なしということになっております。
許容濃度でございます。ACGIHはTWA 1 mg/m3(0.2 ppm)という数を出しております。また、Skin、経皮吸収の勧告も出しているといった状況でございます。そのほか、次のページに参りまして、232行目、日本産衛学会は設定なし、DFG MAKで1 mg/m3、NIOSHで3 ppm(15 mg/m3)というような数が出ているといった状況でございます。
以上から、一次評価値、二次評価値に関してでございます。
まず二次評価値からいきますと、二次評価値につきましてはACGIHが提案している許容濃度1 mg/m3を採用いたしました。
一次評価値につきましては、動物実験から導き出された無毒性量が二次評価値の1/10となりまして、先ほど見ていただいた反復投与毒性の評価値として0.11 mg/m3という数があったかと思います。それを持ってきますと二次評価値の1/10を少し超えるといった状況でございますので、一次評価値はなしとさせていただいております。
以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
この物質は、飽和蒸気圧が1 Paよりも低く、それから発がん実験を経皮でやっているという点で今までにあまり例がなかったものになります。それから、吸入実験は、これは蒸気にはなかなかならないと思うので、多分粒子でやっているのではないかと思うのですけれども、そういう今までにあまり例がなかったことになりますが、御意見はいかがでしょうか。経皮の場合は直接血液の中に入るという意味では経肺と考え方としてはあまり変わらなくてもいいだろうと思いますけれども、非常に経皮吸収が大きい物質らしいですね。Log Powが-1.幾つですから、水溶性は十分ある、それから脂溶性も当然あるということだと思います。
○江馬委員 生殖毒性のところですが、根拠として胎児の骨格変異が増加した報告があるというのは適切ではないと思います。母体毒性で述べられた量でしか変異の増加はないので、その代わりに、21ページの252行目から254行目のところのNTPの仕事で、精巣毒性、精巣上体の重量の減少、精細管の変性という病理学的変化が出ています。そして精子数も影響が出ているので、これを根拠として挙げたほうがいいのではないかと思います。
○大前座長 ありがとうございました。
今の根拠は母動物に影響のあるときに出ている根拠だということで、それよりも先ほどの精子の影響、これはNOAELが48 mg/kg/体重という数字になっておりますけれども、こちらを使ったほうがいいのではないかという御意見ですが。
○宮川委員 生殖毒性に関して、この評価書の本体部分では今の先生の御指摘のところのみが根拠として書かれていますけれども、別添の有害性評価表を見ると、江馬先生がおっしゃったのに加えてもう一つ、参考として、着床後胚損失率の増加とか、生後4日での生存率の低下とか、こういうものも書いてありまして、多分これをつくったときは、原則としてこれはリスク評価の基にするための有害性評価なので、吸入毒性を優先するということで、それを表に出した。ただ、生殖毒性があるかどうかという判断は、また別の証拠のほうがそのためにはいいということもあるので、最終的にある・なしの判断に係る記載としては、江馬先生が御指摘の精巣毒性プラス着床後胚損失とか胎児への影響と、総合的判断でということにしていただくのがよろしいかと思います。
○大前座長 そうしますと、この評価表のほうにも今の精巣のことを参考として入れたほうがいいですか。
○宮川委員 世の中に出回るときに、見る人がこちらの表だけ見るということがあるとすると、参考として両方入れておいていただいて、そのことについて本文の評価書の記載もそれに合わせていただくのがよろしいかと思います。
○大前座長 そのほかはいかがでしょうか。今のような形で少し変更すると。最終的な数字は影響ない話ですけれども。
リモートの先生方、いかがでしょうか。
○西川委員 本体の219行目に「肝臓の障害と肝臓の成長遅延を認めた」とあって、「肝臓の成長遅延」は何か変なので別添を確認しましたら、どうも対応するのが軽度の体重の減少ということですので、多分この部分は「肝臓の」を取ればつながるのかなと思いました。細かいことですけれども、以上です。
○大前座長 ありがとうございました。
そのほかはいかがでしょうか。
吉成先生、平林先生、よろしゅうございますか。
○平林委員 結構です。
○大前座長 ありがとうございます。
では、特にないようでしたら、先ほどの2点、今の西川先生の御指摘と生殖毒性のところの御指摘を追記するということで、二次評価値としてはACGIHの数字でよろしゅうございますか。―どうもありがとうございました。
それでは、第2物質目、りん酸トリ(オルト-トリル)につきまして、説明をよろしくお願いします。
○神田有害性調査機関査察官 では、2物質目でございます。りん酸トリ(オルト-トリル)でございます。
こちらは、ばく露作業報告の対象年が2014年(平成26年)で、報告が2015年(平成27年)ということでした。報告数は3件と少なくなっております。
こちらの物質がリスク評価の対象に選ばれた理由としましては、GHS分類で神経毒性が区分1ということで、神経毒性の部分で選ばれている物質となります。
では、内容に参りたいと思います。
物理化学的性質でございます。
化学物質の基本情報は以上のとおりでございます。こちらは安衛法の別表9、名称を通知すべき有害物となっております。
物理的化学的性状でございます。外観は無色または淡黄色の液体となっています。蒸気圧は25℃で1.9×10-6 torrとなっています。融点は11℃となっております。オクタノール/水分配係数としてはlog Powが6.3という数になっております。
3番目、物理的化学的危険性でございます。火災危険性としましては、可燃性、また火災時に刺激性のある有毒なフュームやガスを放出するとなっております。また、化学的危険性としまして、加熱すると分解する、リン酸化物などの有害なフュームを生じる、酸化剤と反応するといったところが出ております。
次のページに参りまして、製造・輸入量でございます。製造・輸入量に関しましては、りん酸トリ(オルト-トリル)単体では不明で、りん酸トリトリルとして1,953 tということで経産省では平成30年度の実績が出ているという状況でございます。用途としましては、可塑剤、難燃剤、不燃性作動液、潤滑油添加剤といった用途になっているということです。製造業者としまして、これもTCPとして化工日で名前が挙がっている企業としてはこういった企業があるといった状況でございます。
2番目の有害性評価の結果でございます。
発がん性につきましては判断できないとしております。ラット及びマウスを用いたトリクレジルりん酸の混餌投与による発がん性試験では発がん性は認められませんでしたが、りん酸トリ(オルト-トリル)そのものとしての報告はないので発がんは判断できないとしております。
各評価区分ですが、IARC、産衛学会ともに情報はありませんでした。そのほかも情報はなしということで、DFGだけ3Bという評価区分がつけられている状況でございます。
閾値の有無は、遺伝毒性も判断できないということで、判断できないとなっております。
発がんの定量的リスク評価についても、ユニットリスクに関する情報はありませんでした。
2番目、発がん性以外の有害性でございます。
急性毒性。致死性については以上のとおりでございます。
健康影響でございますが、工業用原体、精製品及び高純度のりん酸トリ(オルト-トリル)を雄マウスに単回投与したところ、数時間後に下痢、立毛、筋力低下、けいれんを呈し、半数が死亡したといったエピソードが出ている状況です。
皮膚刺激性/腐食性はなし。
眼に対する重篤な損傷性/刺激性は調査した範囲で情報なし。
皮膚感作性もなし。
呼吸器感作性も情報なしとなっております。
反復投与毒性ですが、NOAELとして0.5 mg/kg/日(3 mg/m3)というのが出ております。根拠は、これも神経毒性に関する試験結果になっております。ネコに対する頚部皮膚に90日間反復ばく露したところ、5 mg/kg/日以上の投与群で用量依存的な急性神経症状が示されたということになっております。また、少し飛びまして87行目の最後のところからですけれども、0.5 mg/kg/日の投与群では投与に起因する異常は認められなかったということで、0.5 mg/kg/日をNOAELとしているという状況でございます。こちらから不確実係数を用いて計算された評価レベルとして0.3 mg/m3という数値が得られている状況でございます。
生殖毒性については判断できないとなっております。こちらも繁殖能を検査した実験はなく、発生毒性試験では母動物が死亡する用量でも胎児に対する異常は見られていないということになっております。
こちらに参考として、NOAELとして10 mg/kg/体重/日の試験の結果、14日間の反復経口投与の試験結果が出ております。こちらは、少し飛びまして107行目からですが、ラット雄にりん酸トリ(オルト-トリル)を0、10、25、75及び100 mg/kg/日の用量で精上皮の周期49日と精巣上体移動時間14日の和に相当する63日間連日反復経口投与をしたところ、少し飛びまして112行目ですが、25 mg/kg以上で精子形態の異常、10 mg/kg以上でNSE活性の低下が認められたということで、NOAELとして10mg/kgという数値が得られているといった状況でございます。こちらも評価レベルを計算しまして、8.4 mg/m3という数値が参考として得られているという状況です。
次に参りまして、121行目、遺伝毒性ですが、判断できないということになっております。
また、生殖細胞変異原性についても調査した範囲で情報はありませんでした。
神経毒性ですが、こちらはありということで、LOAELとして0.55 mg/m3、根拠といたしまして、当該物質の製造現場における3件の多発性神経症例における測定濃度、これは非常に簡単に書き過ぎていて分かりにくいのですけれども、少し飛びまして、21ページの348行目がその症例になります。りん酸トリ(オルト-トリル)を60%含有するトリクレジルりん酸の製造現場における3件の上下肢遠位筋の弛緩性を伴う多発性神経炎症例における気中測定濃度、再現試験における気中測定濃度は、洗浄槽開口部中心の9インチ上で2.5 mg/m3以下、洗浄槽から2フィート離れた肩の高さで1 mg/m3以下、洗浄槽の3回の測定で0.55~1.7 mg/m3であった。つまり、実際に症状が出た作業を再現実験して測ったところ、一番低い数値が0.55 mg/m3ということでしたので、この数がLOAELという形で出されたということでございます。リスク評価書本体の根拠のところは簡単に書き過ぎているかと思ったので紹介させていただきました。
戻ります。このLOAELからNOAELに変換して得られた評価レベルとして0.055 mg/m3という数値が得られているといった状況です。
進みまして138行目ですが、許容濃度です。ACGIHで0.02 mg/m3が出ております。また、こちらはスキン、経皮勧告が出ております。日本産衛学会は設定なし、DFG MAKで0.001 ppmということで低い数値が出ていますけれども、まだドラフトの段階ということで、その根拠等が不明になっているといった状況でございます。NIOSHで0.1 mg/m3、またOSHA等でも0.1 mg/m3といった許容濃度が出ているといった状況でございます。
以上から評価値でございます。
まず二次評価値でございますが、低い数値としてDFG MAKがありますけれども、これはまだ根拠が明らかになっていないということですので、ACGIHの0.02 mg/m3のほうを採用してみました。
また、一次評価値でございます。先ほど見ていただきました症例におけるLOAELから算定した評価レベル0.055 mg/m3となりましたけれども、あちらが二次評価値の1/10以上ということですので、なしとしております。
以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
この物質も神経毒性がメインで、ネコを使う実験で経皮投与という今までになかったタイプのやり方ですけれども、神経毒性のときにネコを使う、あるいはニワトリを使うということはままありますので、動物種としてはいいだろうと思います。
それから、DFGの数字が少し低いのですが、これはまだドラフトの段階で物が入手できないので、これがもし入手できて、そのDFGの根拠がそれなりに妥当性があれば、また再検討ということになろうかと思いますけれども、現段階では使えないという状況です。
それから、これはヒトのデータを使っていますけれども、原則としてヒト優先ということでヒトのデータを優先しております。これは1944年のデータだというのも若干問題があるのですが、この1944年のデータの妥当性を我々は今評価できないということで、この数字を使ったということになります。
御意見、御質問はいかがでしょうか。
○江馬委員 4ページの96行目で生殖毒性は判断できないとなっているのですが、17ページの199行目以下に精巣毒性に関する論文が出てきていまして、総合的に見れば生殖毒性があるのではないかと思いますので、生殖毒性ありでいいのではないかと思います。
○大前座長 17ページの何行目になりますか。
○江馬委員 17ページの199行目からLong-Evans系妊娠雌ラットで、その下の実験から、204行目から231行目まで精巣毒性の論文がずらっと出ているのです。なしとするには報告が多過ぎて同じような結果になっている。精巣の病理学的変化も出ていますので、精巣毒性はありでいいのではないかと思います。
○大前座長 いかがでしょうか。精子に対する影響が出ていると。
○江馬委員 はい。精巣毒性ですね。確かに繁殖能を調べた実験はなさそうなのですが。
○大前座長 なかなか微妙かなと思いますけれども。
○宮川委員 結論としては江馬先生の御提案に賛成したいと思います。
ただ、いろいろなところで生殖毒性の判断をするときに、生殖器官に影響があっても、実際の繁殖試験をやってそのパラメータに影響がないと生殖毒性なしとしている場合も多いようなので、ここではそうではない考え方を取ったということをはっきり書いて、精巣に対する影響は単に精子数の減少とかいうことではなくて、病理学的な判断もした上で、生殖器官に対してこういう毒性があるので、ここでは生殖毒性ありと判断していますというように書いていただければ誤解がないと思いますので、その辺が分かるような修正を入れていただければ、今の先生の御意見に賛成したいと思います。
○大前座長 今おっしゃったように、精巣の毒性だけれどもそれが実際に胎児を産むときに影響があるかどうかといういわゆる生殖毒性の情報がないのでなかなかということですけれども、宮川先生がおっしゃったようなことを入れていただいて、生殖毒性は一応ありと書いたらどうかということですが。いつも生殖毒性のところは迷うのです。
○江馬委員 精子数の減少だけでは生殖毒性にとらないということもあるかと思います。ラットで精子数が減少しても実際に子供の数が減るとかそういう影響が出るかというとなかなか難しい問題で、というのは、ラットは精子数に余剰があるので、減ってもヒトには大して影響が出ないだろうと言う人もいるし、ヒトではそれほど余裕がないところでこのような精子への影響が出たら重大な影響が出るかもしれないと言う人もあって、なかなか難しいところだとは思います。
○大前座長 ということですので、先ほど宮川先生がおっしゃったように、生殖毒性に関する情報はないが精巣に対する影響があるので一応ここでは生殖毒性ありとするというような注意書きを書いて、ありということでよろしいですか。
そうしますと、数字が計算できるかもしれませんけれども、これは多分参考として載せるということにはなろうかと思います。
リモートの先生方、御意見、御質問はいかがでしょう。―よろしいですか。
そうしましたら、先ほどありましたように、DFGが0.001 ppmと少し低い数字を出していますけれども、これに関しましては現在判断できないので、ACGIHのとっておりますTLVを二次評価値にするということでよろしゅうございますか。
○平林委員 了承いたします。
○大前座長 ありがとうございます。
それでは、3つ目の物質です。2-クロロニトロベンゼンにつきまして御説明をお願いします。
○神田有害性調査機関査察官 それでは、3つ目の物質であります2-クロロニトロベンゼンでございます。
こちらは、ばく露作業報告の対象は2016年(平成28年)、報告は2017年(平成29年)ということで、報告数としては3つとこちらも少ない状況でございます。
選定理由としては、バイオで行った長期発がん性試験の結果陽性であったということで平成24年にがん原性指針に加えられ、それを受けてリスク評価対象物質となったという経緯でございます。
では、物理化学的性質でございます。
(1)の化学物質の基本情報ですが、御覧のとおりで、こちらはがん原性指針の対象物質になっている、また、強い変異原性が認められた化学物質として位置付けられております。
(2)の物理的化学的性状でございます。外観といたしましては、特徴的な臭気のある黄色から緑色の結晶となっております。蒸気圧は20℃で0.6 kPaとなっております。融点は33℃。オクタノール/水分配係数はlog Powが2.24という数になっております。
物理的化学的危険性でございます。火災の危険性として、可燃性です。火災時には刺激性のある有毒なフュームやガスを放出するとなっております。爆発危険性です。空気中で粒子が細かく拡散して、爆発性の混合気体を生じることがある。物理的危険性ですが、粉末や顆粒状で空気と混合すると粉塵爆発の可能性がある。また、化学的危険性ですが、燃焼すると分解して、有毒で腐食性のフュームとか塩化水素やホスゲンを生じる。本物質は強酸化剤で、可燃性物質や還元性物質と反応するとなっております。
(4)の製造・輸入量、用途でございます。すみません、こちらは間違っておりまして、製造・輸入量は非公開となっておりますが、正確にはデータなしです。今、最新のデータがなく、最も新しい製造・輸入量のデータは2012年度で1,000 t未満となっております。ここは修正いたしまして、2012年度で1,000 t未満とさせていただければと思います。用途としてはアゾ染料の中間体ということになっております。製造業者については今のところ情報を得られていないということでございます。
次に参りまして、34行目の有害性評価の結果になります。
発がん性ですが、発がん性については、ヒトに対して恐らく発がん性があるとなっております。ヒトに対する報告はございませんけれども、バイオが行ったマウス及びラットの2年間の混餌投与で肝臓腫瘍の発生に有意な増加が見られたとなっております。
各評価区分でございます。IARCは、最近でございますが、2Bとしています。産衛学会も2Bとなっています。そのほかは情報なしですが、DFG MAKが3Bとなっている状況でございます。
閾値の有無ですが、なしとしております。遺伝毒性がありということなので、閾値がなしとなっております。
発がんの定量的リスク評価に関しては、ユニットリスクに関する情報はなしとなっています。
参考としてNOAELとしての数値を出しております。これはバイオの試験ですけれども、ラットの2年間の混餌試験で、用量として0、80、400、2,000 ppmを含む飼料を2年間与えた試験におきまして、腫瘍の発生増加は雌雄の肝臓(肝細胞がん、肝細胞腺腫)と雄の腎臓(腎細胞腺腫)に見られたとなっておりまして、これらの腫瘍の発生増加が見られた濃度としては、雄の400 ppm、雌の2,000 ppmであったということですので、NOAELとしてはその下の用量に対応した4 mg/kg/体重/日という数値が得られているといった状況です。ちなみに、こちらを不確実係数を利用して計算した評価レベルとしては0.05 ppm(0.34 mg/m3)といった数値が得られているといった状況です。
75行目です。発がん性以外の有害性でございます。
急性毒性としては以上のとおりでございます。
健康影響でございますが、吸入ばく露、皮膚、経口の報告でそれぞれ影響が見られているといった状況でございます。また、ヒトに対する症例も報告されているといった状況です。
102行目に参りまして、皮膚刺激性/腐食性ですが、判断できないとしております。こちらは、ウサギの皮膚に塗布する刺激性試験で24時間で軽度の紅斑が見られたが、48時間後には観察されなかったということで、判断できないといった形にしております。
眼に対する重篤な損傷性/刺激性ですが、軽度刺激性とさせていただいております。ウサギを使った眼の刺激性試験において、1時間後にはウサギ6匹中6匹に軽度の結膜充血があったのですが、7時間後には2匹に、24時間後には何の刺激も確認されなかったということで、軽度の刺激性という形にさせていただいています。
皮膚感作性ですが、こちらも判断できないとしております。これは、モルモットを利用した試験、剃毛した皮膚に感作性誘導を行った試験において、何かいろいろやっていて内容がよく分からないのですがこの結果が出ていまして、121行目のところで、SIDSが試験方法が現在使われていないことや記述が不十分であることから判断できないとしているということなので、リスク評価書においても判断できないとしています。
呼吸器感作性に関しても判断できないとしております。こちらは、ラットに5ヶ月間の吸入ばく露をした試験で感作性が陽性との報告はありますが、これもSIDSは試験の詳細が不明であるとして判断できないとしているということなので、判断できないとしております。
130行目に参りまして、反復投与毒性でございます。LOAELとして1.1 ppm(7 mg/m3)という数が出ております。ラットを用いた1日6時間、週5日の13週間の吸入ばく露試験で雌雄に明確な毒性兆候、死亡動物は見られず、体重増加量は対照群と比べて差がなかったということでございますが、雄で、少し飛びますが136行目、肝臓には絶対重量の増加が1.1 ppmから、また飛びまして138行目でございますけれども、病理組織検査の結果、4.5 ppmから腎尿細管に色素沈着、また1.1 ppmから再生腎尿細管が観察されたということになっておりますので、LOAELとして1.1 ppmという数を採用しているという状況です。進みまして、今得られたLOAELから不確実係数等を掛けて得られました評価レベルが0.0083 ppm(0.053 mg/m3)―すみません、ここは「3」が大きくなっていますけれども、こちらは修正しておきます―という評価レベルが得られているといった状況でございます。
次に162行目の生殖毒性ですが、判断できないとしております。根拠といたしましては、13週間の吸入ばく露試験で雄の生殖器に対する影響が見られたが、一般毒性影響が見られる濃度であったということ、また、妊娠動物への経口投与では母体毒性が見られない用量ではあったけれども骨格変異の増加が見られただけであったから判断できないということにしております。
次に遺伝毒性ですが、ありということで、in vitroにおいて細菌を用いた突然変異試験については複数の結果が陽性、またin vivoにおいては単鎖DNA切断試験において陽性が見られたということから、ありとしております。
一方、生殖細胞変異原性でございますが、判断できないとなっております。ヒトでの報告や動物の生殖細胞を用いたin vivo試験の報告はないということです。マウスの肝及び腎を用いた単鎖DNA試験は陽性。in vitroでは、復帰突然変異試験で一部に陰性がある陽性。それぞれ試験の結果が出ているのですが、陰性だったり陽性だったりいろいろあって、十分な試験データがそろっていないということで、判断できないとしております。
進みまして、183ページの神経毒性ですが、情報なしということになっております。
許容濃度でございますが、設定はないという状況です。ACGIHも日本産衛学会そのほかの団体でも設定はないという状況でございました。
評価値でございます。
まず二次評価値ですが、今見ていただいたとおり、ACGIHのばく露限界値も日本産衛学会の許容濃度も出ていないという状況で、RELやドイツのMAK等の外国機関でも濃度基準が定められていない、また一般環境に関する基準も設定されていないということでございましたので、発がん性以外の毒性試験、これは反復投与毒性試験の結果が出ていましたが、こちらから得られたLOAELから出した評価レベルを外挿する形で0.0083 ppmを二次評価値にいたしました。
一次評価値ですけれども、今回は発がん性を示す物質ですが、遺伝毒性があって閾値がない場合ということでございまして、その場合の生涯過剰がん発生率1×10-4レベルに相当するばく露濃度の設定ができていないことと、先ほどの反復投与毒性で出された評価レベルを二次評価値に使っていますので、それをそのまま採用しても1/10以上となることから、一次評価値はないという形にしてみました。
あと、参考として、二次評価値のばく露限界値等の設定がない場合、全然情報がなければ酷似した物質でというような方法もリスク評価のルールブックには載っておりますので、有害性の酷似していると思われるパラ-ニトロクロロベンゼンの許容濃度も一応ここに載せております。これは検討会が終われば削除する予定でございます。
以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
この物質は、産衛あるいはACGIHで数字がない物質でございます。したがって今回やったリスク評価の中の数字を持ってきたと。こういう事例は過去に1例か2例あったと思いますので、今回が初めてではございません。
御意見、御質問はいかがでしょうか。反復投与のメトヘモグロビンと肝臓の重量が1.1 ppmでLOAELだからということで、それを根拠にして数字が計算してありますけれども。
○津田委員 確認しますが、発がん性のところで、JBRC、バイオアッセイセンターさんで発がん性あり、IARC、産衛で2B、ACGIHでA3、DFGで3Bということで、「おそらく」と書いてあるのですけれども、最終的な判断は発がん性の可能性ありだと。この辺はよろしいでしょうか。
○大前座長 この委員会というか、上の委員会も下の委員会もこのような表現にしましょうということにしていますので、IARCの表現とは若干違います。
○津田委員 IARCだけ言っているわけではなしに、産衛とかその他を全部含めてということでよろしいですか。そうしますと前のエタノールアミンのところがほとんど一緒ですね。IARCが2B、産衛が2B、DFGが3B、ACGIHがなしということで、最終的に発がん性のところは「疑われる」になっています。こちらはほぼ一緒で、JBRCがあるせいか、それだけかと思うのですけれども、言葉遣いが違っているのですけれども、それでよろしいのでしょうか。
○神田有害性調査機関査察官 この委員会でも見ていただいて、こういう明確なというか、動物実験でクリアなものがあればそこを重視してということでの結果になっていると思います。
○津田委員 そうすると、JBRCさんのを重視して、1つ上の「おそらく」という言葉は可能性が高いという意味ですね。
○神田有害性調査機関査察官 そうです。
○津田委員 同じような国外の諸施設の評価は同じでも、データがないために「疑われる」としたと、このように理解してよろしいですか。
○神田有害性調査機関査察官 そんな感じです。
○大前座長 そのほかはいかがでしょうか。
○西川委員 細かいことになりますけれども、61行目を出していただけますでしょうか。その前の文章には、肝臓及び腎臓に腫瘍の発生増加が見られたと記載があり、それに続く61行目には、「これらの腫瘍の発生増加」云々と書いてあるのですが、肝臓、腎臓のどちらかなと思って確認したら、やはりこれは「肝臓の腫瘍の発生増加」であり、それが見られたのは雄の400 ppmだけではなくて、「400 ppm以上」でした。2か所修正をお願いしたいと思います。
○神田有害性調査機関査察官 ありがとうございます。修正いたします。
○大前座長 ありがとうございました。
そのほかはいかがでしょうか。
特にないようでしたら、今回は反復投与で計算した数字を二次評価値にするということでよろしゅうございますか。こういうスタイルで二次評価値を決めたのはこれで2物質目か3物質目だと思いますけれども、将来的に産衛なりACGIHあたりが数字を出してくれば、またそのときに検討ということになろうかと思います。
ありがとうございました。
それでは、3物質につきましては、数字としては事務局の提案どおりということになりました。
それでは、次の議題です。オルト-フェニレンジアミンに関しまして、御説明をよろしくお願いします。
○神田有害性調査機関査察官 ありがとうございます。4物質目、詳細リスク評価に進んでおりますオルト-フェニレンジアミンでございます。
これ自体は、ばく露作業報告の対象は2011年、報告は2012年ということで、少し古くなります。報告数は6つとなっております。
こちらも長期発がん性試験の結果陽性であったということで、がん原性指針の対象物質になったことをきっかけにリスク評価対象となっている物質でございます。一旦初期評価書としてまとめたものを、今回、新しい情報を加えてアップデートしたという形になっております。少し年代もたっておりまして、書き方とか項目なども、以前はなかった項目が今は増えていたりしますので、全体をもう一回一から見ていただくような形で説明させていただこうかと思います。
物理化学的性質の化学物質の基本情報は御覧のとおりでございます。
物理的化学的性状につきましては、外観としましては、茶から黄色の結晶、光にばく露すると暗色になるといった特徴のある物質です。蒸気圧としましては20℃で0.0013 kPaとなっております。融点としましては103~104℃ということになっております。オクタノール/水分配係数につきましては0.15という数値が出ております。
物理的化学的危険性につきましては御覧のとおりで、可燃性です。また、空気中で粒子が細かく拡散して爆発性の混合気体。粉末が粉塵爆発の可能性がある。また、燃焼すると分解して窒素酸化物などの有毒なフュームを生じるといった状況になっています。
製造・輸入量、用途のところです。製造・輸入量ですが、すみません、こちらも誤りでございます。こちらでは1,000 t未満となっておりますが、改めて調べますと、2018年度で1,925 tという数値が経産省から発表されております。ここは誤りでございます。失礼いたしました。そういうことで、製造・輸入量は1,925 tとしていただければと思います。用途は防錆剤やゴム薬、医薬、顔料、アゾ染料、白毛染料等々になっているという状況でございます。
2番目の有害性評価の結果でございます。
発がん性については、ヒトに対する発がん性が疑われるということでございます。こちらもバイオさんの長期試験の結果、2年間の飲水投与の結果でございますが、ラットでは雌雄とも肝細胞腺腫及び肝細胞がんの発生増加、雄の膀胱に移行上皮乳頭腫及び移行上皮がんの発生増加が認められたということ。また、マウスでは雄に肝細胞腺腫の発生増加、雌に肝細胞腺腫及び肝細胞がんの発生増加、雌雄の胆嚢に乳頭状腺腫の発生増加が認められたということになっております。
各評価区分でございますが、こちらも最近ですとIARCが2B、産衛学会が2Bとなっております。あとはACGIHでA3、DFGで3Bといった区分がついているところでございます。
閾値の有無ですが、なしということで、遺伝毒性ありと考えられるためとなっております。
発がん性の定量的リスク評価は、ユニットリスクに関する情報はなしとなっておりますが、リスクレベルの算出ということで、当該物質ががん原性指針の対象になるかどうかの検討を行った、平成22年に行われた「化学物質による健康障害防止措置に係る検討会」で、生涯過剰発がんリスク10-4レベルに相当するばく露濃度を9.6×10-3 mg/m3と算定しております。
59行目に行きまして、発がん性以外の有害性でございます。
致死性については、すみません、ここは抜けていますが、以上のとおりとなっております。
次のページに参りまして、76行目の健康影響でございますが、胃への刺激性や鼻への刺激性といったものが経口投与試験で見られていたり、あるいは腹腔内投与の実験でメトヘモグロビンの形成が見られているといった健康影響が確認されている状況です。
進みまして、84行目の皮膚刺激性/腐食性についてはあり。
眼に対する重篤な損傷性/刺激性についてはあり。
92行目ですが、皮膚感作性についてはありとなっております。
97行目、呼吸器感作性については情報がありませんでした。
反復投与毒性でございますが、NOAELとして18 mg/kg/体重/日ということで数値が得られているところです。こちらはラットを用いた2年間の飲水投与試験の結果でございます。細かく書いてありますけれども、進みまして112行目で、雄の250 ppm群で見られた肝臓の好塩基性細胞巣と腎臓の腎盂上皮過形成の増加を所見としてLOAELが250 ppmで、これをオルト-フェニレンジアミン換算して18 mg/kg/体重/日と考えられたということで、これもバイオの試験結果から得られた数値ということになっています。ここからNOAELに変換して得られました評価レベルとして0.11 mg/m3という数が出ているという状況でございます。
生殖毒性としては判断できない。
遺伝毒性としてはありということになっております。
生殖細胞変異原性ですけれども、こちらは誘発する可能性があるとしております。根拠といたしましては、マウスを用いました腹腔内投与試験の結果、14時間後に細胞を採取してDNA量の分布を測定した実験において200 mg/kg以上の群で2倍体の精子が有意に増加したという試験結果がある。また、in vivo試験では小核試験で陽性であり、in vitroでは哺乳類培養細胞の染色体異常試験及び細菌の復帰突然変異試験の多くで陽性があるといったことから、誘発する可能性があるという評価にしております。
また、142行目は神経毒性ですが、こちらは判断できないという形にしております。
進みまして、151行目の許容濃度等のところでございますが、ACGIHで0.1 mg/m3、日本産衛学会で0.1 mg/m3、ほかは特に許容濃度が出ていない状況でございます。
一次評価値、二次評価値につきましては今回変わっておりません。前回のままでございます。一次評価値としましては、先ほどの厚生労働省の検討会で算出した生涯過剰発がんリスク10-4レベルに相当するばく露濃度として9.6×10-3、0.0096 mg/m3を一次評価値として、二次評価値としてはACGIHの勧告する数値ということで、0.1 mg/m3としております。
ばく露実態評価については初期リスクの段階のままで、特に変更していない状況でございます。
以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
この赤字の「※ばく露評価小検討会での議論を踏まえて修正予定」というのは、今書いてあるのが初期評価のときの数字がそのまま書いてあるということで、これは変更される可能性があるということですね。
○神田有害性調査機関査察官 はい。今度の30日にばく露評価小検討会がありますので、そこでは新しい詳細の調査を加えた形でこれを修正して出させていただこうかと思います。
○大前座長 ということなので、ばく露評価の前のところまで、生体響のところまでがこの委員会のとりあえずの今日のミッションでございますので、何か御意見あるいは御質問がありましたら。
○津田委員 先ほどの質問に関連しますけれども、発がん性の試験で、これはJBRCさんでやったものですね。
○神田有害性調査機関査察官 はい。
○津田委員 文言で「発生増加」と書いてあるのですけれども、前のでは「有意の」と書いてあって、どう違うのですか。同じことで、有意ですね。
○神田有害性調査機関査察官 そうです。
○津田委員 それともう一件。先ほどのお答えですと、前のものとほとんど同じ条件ですね。それでこちらは「疑われる」、前のものは「おそらく」になっているのですけれども、その辺の違いはどうつけているのでしょうか。
○神田有害性調査機関査察官 すみません、ここは細かくはあれなのですけれども、前の有害性評価書をつくっていただいている委員会でこの形で出していただいたので。
○津田委員 これは直さないと誤解が生じると思います。一致性という意味で。
○宮川委員 私もここは先生のおっしゃるとおり、1つ上げて「おそらく」にしたほうがよろしいかと思います。バイオアッセイ研究センターの結果で、きれいに出ているものについては基本的にその扱いをするのが重要かなと以前の経験も踏まえて思いますので。
○神田有害性調査機関査察官 かしこまりました。ここは修正させていただきます。
○津田委員 すごいお金を使ってきちんとやってデータが出ているわけですから、そういう意味の配慮はあっていいと思います。
○神田有害性調査機関査察官 ありがとうございます。
○大前座長 務局のルールブックではまだそこまで行っていないのでしたっけ。
○事務局 まだ行っていないです。
○大前座長 では、今度改正しなくてはいけないかもしれませんね。
○事務局 そうですね。特に発がん性のほうはそこまでシビアにやっていないということがありまして。
○大前座長 生殖毒性のところももう少しルールブックではっきりしたほうがいいかもしれませんね。本当に生殖に影響するのか、あるいは単純に精子が減るとかいうことだけなのか、どのように表現するかということはやったほうがいいですよね、江馬先生。そのほうがいいですよね。
○江馬委員 そうですね。すごく混乱しますので。
○大前座長 では、これは後日の課題ということになります。
○神田有害性調査機関査察官 はい。ありがとうございます。
○大前座長 そのほかに御意見、御質問はいかがでしょうか。
○宮川委員 生殖細胞変異原性のところで精子に異常が出ているということが書いてあって、その結果はいいのですけれども、参考のほうの表を見ると、それに該当するのが分かりにくいのです。
○大前座長 評価表ですね。
○宮川委員 評価表のもっと後です。有害性評価書です。遺伝毒性試験の一覧の表が出ているところは何ページですか。18ページですか。
○大前座長 170行目のところですね。
○宮川委員 はい。精子への毒性が出ているのはこの表でどこに出ているのかが分かりにくいので、確認していただければと思います。
○清水委員 今までの経験からこういった精子数に関するものは表には入れていないのです。文章で書いてあるだけで。だから、その辺も今後ルールブックでどのようにするか検討したほうがいいかもしれませんね。
○大前座長 ありがとうございました。
○西川委員 すみません、もう議論が終わったかもしれませんけれども、本体の100行目のところに「NOAEL」とあります。これは実は「LOAEL」ですよね。修正をお願いしたいと思います。
○神田有害性調査機関査察官 はい。失礼いたしました。
○大前座長 そのほかはよろしゅうございますか。
今の点は大きな間違いなので、しっかり直してください。
○神田有害性調査機関査察官 はい。
○大前座長 一次評価値が先ほどの9.6×10-3 mg/m3、二次評価値がACGIHの0.1 mg/m3ということでよろしゅうございますか。
あと、14行目の物化性状で換算係数が書いていないのですけれども、これは多分書けると思うのです。というのは、ACGIHはppmと両方で表しているので、換算係数を使って計算しているはずで、これは後ほど足しておいてください。
○神田有害性調査機関査察官 はい。足しておきます。
○大前座長 それでは、数字に関しましては事務局の提案どおりでよろしゅうございますか。―どうもありがとうございました。
それでは、今日の3物質プラス1物質の議題は終了いたしました。
その他に関しまして事務局から何かありますれば、よろしくお願いいたします。
○神田有害性調査機関査察官 ありがとうございます。
本日お伺いしたい事項は以上でございます。
次回ですけれども、次回はまた合同検討会になるかと思います。今のところ1月中の開催を考えております。またテクノヒルからスケジュール調整をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
以上でございます。
○大前座長 ありがとうございました。
それでは、以上で本日の有害性評価小検討会を終了いたします。どうもありがとうございました。