第1回 国立感染症研究所BSL-4施設の今後に関する検討会 議事録

日時

令和2年11月2日(月) 13:00~15:00

場所

厚生労働省 省議室

議題

  1. (1)国立感染症研究所 BSL-4 施設に関するこれまでの経緯と検討の進め方について
  2. (2)関係者からのヒアリング
  3. (3)意見交換等
  4. (4)その他

議事

○課長補佐 ただいまより、第1回「国立感染症研究所BSL-4施設の今後に関する検討会」を開催いたします。
皆様にはお忙しい中、御出席いただきありがとうございます。
議事に入るまでの間、進行を務めさせていただきます、大臣官房厚生科学課の齋藤と申します。よろしくお願いいたします。
まず初めに、本日の資料の御確認をさせていただきます。
座席表、議事次第、資料1から資料4、参考資料を御用意しておりますので、落丁等がございましたら事務局までお申しつけください。
まず初めに、佐原総括審議官から御挨拶を申し上げます。
○危機管理・医務技術総括審議官 総括審議官をしております佐原と申します。
このたびは大変お忙しい中、本検討会の構成員を引き受けていただきまして誠にありがとうございます。また、本日は第1回検討会に御参集いただきまして、心からお礼を申し上げます。
この国立感染症研究所のBSL-4施設におきましては、日本の感染症対策の重要な施設でありまして、これまで地域住民の皆様方の安全、安心を最優先として施設運営に努めてまいりました。また、建設から既に40年になろうとしております。
昨年7月、武蔵村山市から厚生労働大臣宛てにいただいた御要望がございまして、この中で厚生労働省としてはBSL-4施設の移転に関して、厚生労働科学研究班による報告書が出された後、速やかに具体的な検討を行うことを確認させていただきました。これに基づき、本検討会を本日開催することとしたところでございます。
後ほど改めて御説明いたしますけれども、本検討会ではBSL-4施設の移転先の要件等を整理していただくことを目的としております。
構成員の皆様方からの忌憚のない御意見をいただければと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
○課長補佐 本検討会につきましては、資料1の「国立感染症研究所BSL-4施設の今後に関する検討会開催要綱」に基づき開催させていただいておりますので、詳細については資料を御確認ください。
構成員及び、事務局の紹介をさせていただきます。
資料1の開催要綱(別紙)、または座席表を御覧ください。五十音順に御紹介させていただきます。
まず初めに、東京大学医科学研究所教授の河岡構成員でございます。河岡構成員につきましては、本検討会の座長に就任いただいております。
続きまして、慶應義塾大学教授、吉川構成員です。本日は、リモートで参加いただいております。
武蔵村山市企画財政部長の神山構成員です。
国立保健医療科学院部長の齋藤構成員です。
一般財団法人日本生物科学研究所所長、千葉大学真菌医学研究センター長の笹川構成員です。
北海道大学教授の髙田構成員です。
長崎大学教授の中嶋構成員です。
ありがとうございました。
また、本日は国立感染症研究所所長の脇田先生、厚生労働科学研究「我が国の感染症対策のセンター機能の強化に向けた具体的方策についての研究」の分担研究者である西條先生にもお越しいただいております。
よろしくお願いいたします。
続いて、事務局の紹介をいたします。
大臣官房危機管理・医務技術総括審議官の佐原でございます。
大臣官房厚生科学課長の佐々木でございます。
健康危機管理・災害対策総括調整官の鷹合でございます。
健康局結核感染症課感染症情報管理室長の梅田でございます。
最後に私、大臣官房厚生科学課の齋藤でございます。
よろしくお願いいたします。
なお、佐原総括審議官は所用により14時めどで途中退席させていただきます。
撮影はここまでといたしますので、御協力よろしくお願いいたします。
(カメラ退室)
○課長補佐 以降の議事進行は、河岡座長にお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
○河岡座長 座長を仰せつかりました河岡でございます。よろしくお願いいたします。
まず、議事に入る前に開催要綱3の4に基づき、本検討会の運営に関し必要な事項は座長が定めるものとしておりますので、本検討会の円滑な運営のために座長代理を決めたいと思います。
座長代理は、笹川構成員にお願いしたいと考えていますけれども、いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。
(委員首肯)
○河岡座長 ありがとうございます。
それでは、議題に入らせていただきます。
最初に議題「(1)国立感染症研究所BSL-4施設に関するこれまでの経緯と検討の進め方について」、事務局から資料の説明をお願いいたします。
○健康危機管理・災害対策総括調整官 総括調整官の鷹合です。着席して説明させていただきます。
私から、BSL-4施設の概要及びこれまでの経緯等について御説明させていただきます。
なお、先ほど佐原医務技術総括審議官からお話がありましたように、この検討会はBSL-4施設の移転先の要件等を整理していただきたいと考えており、具体的な移転先の議論というよりも移転先に必要な要件等について議論いただければと考えております。
それでは、資料2の1ページ目を御覧ください。
「感染症検査体制の強化に向けたエボラ出血熱等の一種病原体の輸入について」ですが、背景としてグローバル化が進み訪日客が増加する中、最近は新型コロナウイルス感染症の影響により訪日客は減っておりますが、感染症発生リスクに対応することが喫緊の課題となっております。特に、東京オリンピック・パラリンピック競技大会は、様々な国から観客等が集まり、感染症が持ち込まれる危険性、国際テロの発生の危険性も懸念されております。
「2.具体的な取組」ですが、このため国立感染症研究所村山庁舎には、一種病原体を取り扱うことができるBio Safety Level-4施設があり、感染症の検査体制の強化のため昨年9月に海外から一種病原体を輸入しました。
一種病原体の分与を受けたことにより、患者の中の病原体や抗体の有無等を調べる検査、中和抗体法と言いますが、それの実施。また、遺伝子が変異した病原体に対しても正確で迅速な診断が可能となり、さらに最近ではセキュリティーの観点、安全保障の観点から、日本の研究者が海外の研究機関で一種病原体を取り扱う機会が少なくなる中で、国内での検査に携わる人材の技能向上にも資することになると考えられます。
次に、2ページ目を御覧ください。
「国立感染症研究所村山庁舎BSL-4に関するこれまでの経緯」ですが、施設の設置自体は古く、1981年に村山庁舎にBSL-4施設が設置されております。
しかしながら、長い期間使用されず、2015年に村山庁舎のBSL-4施設を感染症法に基づくBSL-4施設として指定しました。
その際、武蔵村山市長と厚生労働大臣との間で確認事項を合意し、その中に施設の老朽化も踏まえ、日本学術会議の提言等も参考にして、武蔵村山市以外の適地におけるBSL-4施設の確保について検討し、結論を得ると確認しました。
その後、昨年7月に、特定一種病原体の輸入に関する厚生労働大臣指定を行いました。その際、武蔵村山市長と厚生労働大臣との間で再度確認事項を合意し、その中に施設の老朽化も踏まえ、武蔵村山市以外の適地におけるBSL-4施設の確保について検討し、結論を得る。このため、今年度の厚生科学研究班による報告書が提出された後、速やかにBSL-4施設の移転について具体的な検討を行うとともに、武蔵村山市職員を検討組織に参画させると確認し、今回、神山武蔵村山市企画財政部長に構成員となっていただいております。
その後、昨年9月に特定一種病原体の輸入をしました。本年7月に、先ほど述べました厚生科学研究班による報告書、「我が国の感染症対策のセンター機能の強化に向けた具体的方策についての研究」報告書がまとまりました。そして本日の検討会の開催に至ります。
続きまして、3ページ目を御覧ください。「新しいBSL-4施設の着工から稼働までの一般的なスケジュール」です。
長崎大学の例を見ると、2018年12月の着工から2021年7月末予定の完成まで約2年8か月かかることになっております。予算編成から施設建設計画まで含めると、3年程度かかる見込みです。
また、完成してもすぐに稼働はできません。書面審査、現場検査などを経て、感染症法に基づくBSL-4施設としての大臣指定が行われます。さらに、研究者の実地訓練、病原体搬送のための委託会社との契約、警察当局との調整にも時間を要します。
感染研村山庁舎BSL-4施設の場合、施設の大臣指定から病原体所持までに約4年を要しております。
一般論として、着工から稼働までに5年から7年要すると考えられます。また、一般的に鉄筋コンクリート建造物の耐用年数は50年と言われており、既に約40年たっていることから、時間はあまりないというのが実情です。
最後のページになります。
現在、BSL-4施設があります国立感染症研究所の村山庁舎の航空写真です。御参考までに添付いたしました。
私からの説明は以上です。
○河岡座長 ありがとうございます。
ただいまの説明について、御質問ございますでしょうか。
ないようでしたら、それでは議題「(2)関係者からのヒアリング」に移ります。本日は厚生労働科学研究「我が国の感染症対策のセンター機能の強化に向けた具体的方策についての研究」の分担研究者の西條先生と、今回のBSL-4施設がある国立感染症研究所の脇田所長にお越しいただいております。
まずは、西條先生から研究報告書の内容について、その次に脇田所長からは感染研の現状、課題、BSL-4の必要性についてヒアリングをさせていただき、論点をお示しいただいた上で、その後、各委員からそれぞれ御意見を頂戴できればと思います。
それでは西條先生、よろしくお願いします。
○国立感染症研究所西條部長 国立感染症研究所ウイルス第一部の西條です。
今日は、厚生労働行政推進調査事業費補助金にて行われた本研究班の報告の内容、特にBSL-4の設置の条件等について説明させていただきます。
この研究班の研究代表者は倉根一郎、感染研の前所長でありますけれども、今日は代わりに研究分担者である西條から説明させていただきます。
また、時間が限られていることもありますので、大切な重要なポイントから説明させていただきたいと思います。
まず、3ページ目の「4.国立感染症研究所のBSL-4施設のあり方(提言)」、この部分について説明させていただきます。
まず、感染研のBSL-4の立地条件としまして、感染研は現在、戸山庁舎と村山庁舎、それから東村山市のハンセン病研究センターと3庁舎に分かれておりますが、現在の3庁舎の敷地のいずれかで統合ができない場合、1つの施設に統合することができない場合といったことを想定したわけですけれども、国立感染症研究所としての新たなBSL-4施設の立地の検討は喫緊の課題です。
内閣府科学技術振興調整費によって行われました研究班「高度安全実験(BSL-4)施設を必要とする新興感染症対策に関する調査研究」は、平成18年度から平成20年度、当時ウイルス第一部長の倉根一郎先生が代表でありましたが、それには「新たなBSL-4施設の建設地として、基盤研究の遂行を考慮すれば地域は必ずしも大都市部に限定される必要はないが、ほかの研究施設、機関との連携が可能な地域であるべきである。すなわち、大学等の研究施設が周辺にあるなど、科学的基盤が十分に整備されている地域を考慮すべきである」と提言されておりました。
感染研は、都内で3庁舎に分散して設置されていることから、同様に研究機関が分散して存在している英国のPublic Health Englandの例が参考になります。Public Health Englandには2つの研究所、コリンデール研究所とポートンダウン研究所があり、さらに本部オフィスがロンドン市内にあります。Public Health Englandでは2024年から2025年にかけてロンドン市郊外に統合・移転することが計画されております。庁舎が分散していることによる業務の非効率を解消するとともに、老朽化した施設を更新し、BSL-4施設についてもグローブボックス型からスーツ型に変更をする計画がなされております。また、近隣には大学、研究所が存在し共同研究やイノベーションの推進を目指している。これがPublic Health Englandに関する調査結果であります。
具体的にまず1つ目、BSL-4施設だけを感染研本体と位置的に離れたところに設置してはならないということが、まず第1点目の提言であります。
BSL-4施設における業務が安全に、また適切に実施されるためには、研究者、専門家だけではなく、事務部門、バイオセーフティー部門、機械・機器を適切に行うための専門家が総合的に協力して行うことが求められます。また、BSL-4施設での作業は、BSL-4施設内だけで行われるわけではなく、BSL-3、BSL-2の施設での作業・研究と密接に関わっているからであります。
2つ目、厚生労働省と近距離であることが必要であるということです。感染研は、厚生労働省関係部門と密接に連携を取りながら、厚生労働行政に対し、科学的視点から政策の立案に貢献してきました。行政担当者と研究者が日頃から緊密に連携し、意見交換や情報共有を行い、顔の見える関係を構築することで有効に感染症対策が機能するからであります。
3つ目、国立国際医療研究センターと病原体の確定診断を行うBSL-4施設との距離が現在よりも遠距離にならないようにすることが望ましいということです。1類感染症患者、疑い例を含みますが、その患者さんが発生した場合には、国立国際医療研究センターに患者さんが収容されることが予想されます。また、特定一種病原体、エボラウイルス等にBSL-4施設で作業する者が感染性ウイルスに暴露された場合に、当該作業者は国立国際医療研究センターにて治療を受けることとなっています。そのためにも、感染研BSL-4施設が国立国際医療研究センターから遠い位置に設置されることは望ましいとは考えられません。
4つ目、国立感染症研究所単独の研究だけではなく、大学や研究機関、企業などとの共同研究を推進していく必要性が高まっており、近隣に科学的基盤が整備されていることが望ましいということです。感染症研究に限らず、科学研究の目的は多用化し、方法も手技も高度化しています。学術的な、また、イノベーションの視点に立った研究を行う際には、感染研だけで研究を行うということは現実的ではありません。BSL-4施設に限らず、感染研は大学や研究機関、企業などが近い位置に存在する環境にあることが望ましいと考えます。英国Public Health Englandでも研究施設の移転作業が今現在行われておりますが、その移転・設置位置の選定に同様の考え方が導入されております。
5つ目、新幹線や空港からのアクセスも良好であることが望ましいということです。感染研には国内外の大学や研究機関から多くの研究者が訪問します。そのため、感染研へのアクセスは公共交通手段があることが求められます。全国規模での研究会や海外からの訪問者も多いことから、新幹線や空港からのアクセスも良好であることが望まれます。
6つ目、自然災害による被害を少なくすることが求められます。疫学調査や病原体診断、ワクチン・血液製剤等の国家検定など、公衆衛生上重要な業務を継続できるよう、地盤や海抜、治水など自然災害による被害を少なくできる立地が望ましいです。
7つ目、新たなBSL-4施設はスーツ型が適切と考えられるということです。グローブボックス型のBSL-4施設は安全性、利便性、操作性において問題があるわけではありません。しかし、研究・作業の実施において、近年では高額機器、大型機器が用いられるようになってきています。これらの機器をBSL-4内に設置し、故障時に適切かつタイムリーに修理するためには、施設内にこれらの機器を開放的に設置可能となるスーツ型であることが必要です。スーツ型BSL-4施設が国際的主流でもあります。
8つ目、BSL-4施設で感染研職員が作業を行う上で重要なことの1つに、地域の方々の理解を得ることが大切であるということです。それには感染研と地域(住民、学校等の施設関係者、自治体)との継続した双方向的なコミュニケーションの上にBSL-4施設で感染研職員が作業を行うことに対して理解を得ることが重要です。BSL-4施設を備える感染研がどこに設置されるかはこれからの課題ですが、地元の方々との十分なリスクコミュニケーションに基づく理解を得る必要があります。
9つ目、新たなBSL-4施設の計画から建設、承認、地元住民の方々の理解を得た稼働には非常に長い期間、最低でも7年以上の年月が必要であると予想されることも考慮すべきです。BSL-4施設を建設して稼働させるまでには、設置箇所の選定、設計、建設、建設完了後の試運転等のプロセスが必要です。また、厚生労働大臣から稼働や病原体所持の指定を受ける必要があり、それには最低でも7年を必要とすると考えられます。
10番目、厚生労働省において、BSL-4施設を保有し、国の感染症対策の基盤を担う感染研に、そのために使用し得るBSL-4施設が存在しないという事態は短期間であったとしても絶対に避けなければなりません。現在の世界における感染症対策には、BSL-4施設が必須であると考えております。大規模エボラウイルス病流行が繰り返しアフリカで発生しています。また、ラッサ熱患者の報告も増加していると報告されています。輸入感染症対策には感染研が重要な役割を果たすためには、BSL-4施設が感染研に存在しないということのないようにすることが必要です。
11番目、感染研は厚生労働省の機関としての国の感染症対策に資する機関であることから、検査業務だけでなく、新たな病原体の検査診断法の開発や、精度向上等の検査診断に関連する研究、ワクチンや治療法の開発などの基盤・応用研究が可能であるための規模を有する施設であることが求められます。近年、世界各国で建設されている施設は、病原体の検査診断のみに特化した施設はなく、新たな病原体の検査診断法の開発や精度の向上等の検査診断関連の研究とともに、さらにワクチンや治療法の開発などの基盤・応用研究にも取り組む施設となっています。また、多くの施設においては動物実験を行い得る機能も備えています。G7を含む各国のいわゆる感染研様研究所に設置されているBSL-4施設が検査目的だけをその機能・目的としているところは皆無であります。
新たに感染研に設置されるBSL-4施設の主たる目的が、感染研は厚生労働省の機関としての国の感染症対策に資する機関であることから、そのための作業・研究が可能である規模、施設であるべきです。
以上が、この研究班でBSL-4施設のあるべき提言であります。
そのほか、感染研のミッションであったり、これまでの経緯等はもう既に説明していただきました。またはこれから脇田所長のほうから説明がありますので、私からの説明は以上とさせていただきます。 ありがとうございました。
○河岡座長 西條先生、ありがとうございました。
続いて、脇田所長の御説明をお願いします。
○国立感染症研究所脇田所長 私のほうからは、資料4で「国立感染症研究所の現状、課題、BSL-4施設の必要性」ということで御説明申し上げます。
ただ、BSL-4の条件等につきましては今、西條先生のほうから説明があったとおりということになります。
めくっていただきまして、3枚目のスライドを御覧ください。
感染症研究所は昭和22年に設置をされています。役割は、そこに書かれていますとおり、感染症に関する厚労省の行政施策に関して科学的根拠を提供するということで、感染症健康危機の予防・防止と発生時の対応・対策ということが目的でございます。
現在、常勤職員は362名の定員です。非常勤職員は約150名ということでございます。
現状3庁舎に分かれているところが、一つの課題となっております。左側は戸山庁舎、平成4年設置。真ん中は村山庁舎、昭和36年。そして、右側はハンセン病研究センター、平成9年に設置ですけれども、3つの庁舎に分散しているということは様々な障害も弊害もあるわけです。業務が効率的でないというようなこと。
ただ、歴史的な経緯がございまして、それぞれの庁舎に長所と短所があるということになります。その下を見ていただきますと、最も分かりやすい障害としては距離的な障害、物理的な距離というものがございます。
戸山庁舎、ハンセン病研究センター、村山庁舎を俯瞰的に見ますとこのような位置関係になっております。戸山庁舎はNCGMに隣接をしておりまして、厚生労働省からも比較的近いということでございます。戸山庁舎から村山庁舎は、電車バスを利用しまして1時間半ぐらいかかる。戸山庁舎からハンセン病研究センターは1時間15分程度かかる。意外なのが、村山庁舎とハンセン病研究センターは距離的には近いのですけれども、移動には1時間15分ぐらいかかってしまうということがあります。
BSL-4が設置されているのが村山庁舎でございますので、NCGMとの距離をこれ以上広げるべきではないと思います。
次を御覧ください。感染研の現在の組織図でございます。
一番上に首脳部門として、所長、副所長、総務部、企画調整主幹というのがありますが、研究部門は、特徴的なのは左側の赤線で囲った特定の病原体を対象とした研究部門が比較的多いということ。それから、右側の上の横断的な研究部門も病原体を主に解析をしていくということで、感染研は歴史的に病原体の研究・検査、それからワクチンの検定を担ってきたということがあり、その機能は比較的充実をしています。
ただ、今回の新型コロナウイルス感染症流行対策で非常に活躍をしている感染症の疫学調査部門、主に担っているのが感染症疫学センターであり、今年の4月から感染症危機管理センターを疫学センターと分離して設置しましたが、まだそこは組織的に十分ではないと思います。疫学部が設立されたのが平成4年ですので、感染症の疫学調査機能、危機管理機能というものをこれから充実させていく必要があります。
ただ、この10年で言えばインフルエンザウイルス研究センター、薬剤耐性研究センター、感染症危機管理センター、品質保証・管理部、安全実験管理部といった部門を必要に応じて設立をしてきました。いずれもこれまで存在している研究部門をスクラップ・アンド・ビルドしてきたということで、いろいろなところを削って継ぎはぎをしながら機能を拡充しているということですので、どうしても人材的な不足がある。
その足りない部分は、右上の各種委員会機能ということで、自主的な委員会活動でカバーをするという形で、必要な様々な感染研の機能を職員が担っているということがあります。
その下です。感染研の主な機能といたしましては、下のほうの3つの機能に分けられると思います。
一番左のワクチン等の品質保証、品質管理は、いわば米国のFDAの機能がある。それから、真ん中の感染症の発生機能の機序の解明、基盤的な研究機能は、NIHの機能。そして一番右の感染症の実態把握ということで、感染症の情報収集、解析・検査、国際機関との連携はCDC機能で、こういった感染症に特化した調査研究機能を集約して、米国等に比べますと少ない職員の人数で機能を担っているわけですが、それは職員の科学的な研究基盤というものに負っているということになります。
次を御覧ください。感染症が発生したときに、真ん中のところに「アウトブレイク」とあり、どうやって対応していくかということです。感染研は厚生労働省と連携をしながら現地の疫学調査、情報収集をやり、さらに病原体部で病原体の確認をします。診断法の開発・普及を行って、さらに予防法の開発ですけれども、ここで国際医療研究センター、基盤研、大学等と連携をしていくわけです。
検査のほうは地衛研、検疫所との連携が非常に重要になりますし、当然、感染研単体では対応できませんので、国内外の連携は非常に重要です。また、先ほど立地の条件等にありましたが、国内の研究基盤と比較的密接に行っていくことが重要であるということで、右側の四角の中、国内、国際的な協力、そして人材育成も感染研単独ではできませんので、大学等からの人材を容易に派遣できるような場所。そして、インフラ整備が重要であるということでございます。
その下のスライドで、「国立感染症研究所の業務」で、主な分野を6つ挙げさせていただいています。
1番が感染症にかかる基礎・応用研究です。これは、診断法とかワクチンの開発、治療法の開発といったことになります。
それから、感染症のレファレンスは感染症に関する検査システムの確立とか確保。例えば標準品をつくるとか、分与するといったこともありますし、検査・診断法の標準化ということを行っています。
3番目、サーベイランス。地方衛生研究所あるいは定点の病院、様々なところから感染症の情報を集める。主には、感染症法で決められている100以上の疾患の情報を集めるということになります。
4番目は、ワクチンの国家検定、あるいは行政検査。ワクチンの有効性と安全性を保証するための国家検定を行っていること。こちらは特にヨーロッパ、アメリカとの協調を図るということで、国際協調の下で行っているということになります。
国際協力は、今回の新型コロナウイルスでもありましたけれども、WHOとか各国のCDCと連携をしています。
最後に研修のところですけれども、感染研だけでは業務を遂行できませんので、地衛研、保健所、検疫所の皆さんの検査法であったりサーベイランスに関する研修機能を担っているということになります。
次に、9ページ、10ページを御覧ください。予算の推移が上にあります。裁量的経費というのが実際に実行できる経費で、非裁量的経費というのは主に人件費となります。
見ていただきますと、平成27年、平成28年ぐらいまでずっと減ってきたのですけれども、最近は少しずつ増加してきている傾向があります。
定員のほうは下ですけれども、総員は左側の黄色いバーを見ていただきますと平成23年度には381名だったところが平成28年度に361名となり、それが続いていましたが、今年度362名の定員となっています。右側は定員削減と増員ということで差引きをしながら、何とか最近は1名プラスに持ち込んだということになります。
次を御覧ください。最後に「組織・業務の課題」についてまとめています。
3庁舎の物理的距離、施設の老朽化、業務の非効率性というのがありますけれども、ただ一方で3庁舎のそれぞれの個性があります。
参考資料の16ページを見ていただきますと、このBSL-4の移転というのが感染研の3庁舎を将来どうするかということに関わってきます。研究班では、その3庁舎の将来構想として、16ページの右側の1)のところで、ベストシナリオとしては同一地域に統合すること。2番目としては、統合は可能だけれども、BSL-4が併設することが問題となれば別の地域につくるということ。3番目、3庁舎が困難であってもBSL-4を建設するということ。それから、全く3庁舎は別のところにつくる。5番目として、3庁舎のそれぞれ特徴を生かして機能を集約していくということで、BSL-4に関しては安全性の確保、十分なコミュニケーションの説明、透明性の確保ということで、現地で新しいBSL-4の建設を行う必要がある。そういった提言がされています。ここをどのようにするかということが、3庁舎問題とBSL-4の方針ということが関わってくるということでございます。
2つ目のポツですけれども、歴史的に病原体研究・国家検定機能が主流で、比較的充実していますが、3番目のポツで疫学部門・危機管理部門が比較的脆弱であるということ。
4つ目のポツ、多くの管理業務・広報機能を本来業務に加えて委員会活動でカバーをしています。
最後のポツで、幅広い業務に対応するために研究部門を新設してきたため、組織全体の定員・予算が不十分ということを挙げさせていただきました。
次に、「BSL4施設の必要性」ということで、先ほど西條先生のほうから話がありましたので、ここはざっと行きたいと思います。
下の14ページ、BSL-4施設で何を行うかということですけれども、ここは特定一種病原体を安全に取り扱う施設ということでございます。特にお約束をしているのは、感染者の生命を守るために必要な診断や治療等に関する業務を実施するということで、特に病原体及び抗体の検査ということなのですけれども、最初の診断だけではなくて、患者さんの経過、感染性ウイルスの排出状況を調べる。つまり、治療の経過を見たり、あるいは退院をしてもらうために必要な検査を行うということです。
そういった検査を行うために必要な検査法の整備をしたり、専門家を育成するという業務を行います。
次のページを御覧ください。15ページ、16ページです。
一種病原体というのは一番左のところに、これは感染症法で分類されている病原体分類ですけれども、≪一種病原体等≫のところには、エボラ、クリミア・コンゴ、痘瘡ウイルス、南米出血熱、マールブルグ、ラッサとあります。このうちの痘瘡ウイルスを除いた5種類が特定一種病原体ということになり、所持等の禁止ということですから、厚生労働大臣が指定する法人だけが所持できるということになっております。
その下に一種病原体、5種類ありますけれども、症状はどの疾患も類似をしていますが、致命率がやや違うということ。それから、流行地域が違っているということになります。出血熱の症状を特徴としますが、致死率が高いですけれども、伝播性はそれほど高くなくて、いわゆる接触をしないと感染の成立はほぼしないということかと思います。
次のページを御覧ください。17ページ、18ページですけれども、BSL-4施設というのは、その下のピラミッドを見ていただきますと、だんだん病原体のリスクの高いものが上に積み上がっていくわけですけれども、逆にそれに対応する実験室、左側では最も封じ込めの厳しい実験室がBSL-4であり、最も安全に病原体を取り扱うことができるという考えでレベル分類がされていて、そのような実験室の設計になっています。
現在、世界には24か国、59施設以上があり、国内で今稼働しているのは感染研村山庁舎のみで、先ほど御紹介ありましたが、長崎大学に新規BSL-4施設が建築中になっております。
下のところで、BSL-4実験室でできる一種病原体の検査ということですけれども、もちろん遺伝子検査、抗原検査、抗体検査となりますが、昨年の9月に病原体を輸入して所持をし、ウイルスがないとできないという実験が中和活性を調べる。中和をできるかどうか、抗体ができているかを調べます。それから、感染性のウイルスを用いて検査法の精度検証・管理を行います。
最後のページを御覧ください。現在の村山庁舎の建物の写真が左上にありまして、右側にはグローブボックスの状況がございます。昭和56年に整備をされておりまして、BSL-4としては使われてきませんでしたけれども、BSL-3として施設を運用し、整備をしてきました。ですので、常に使えるという状況になっております。
平成27年8月には、感染症法に基づいてBSL-4施設に指定をされました。それ以来、さらに周りの警備状況だとか運用状況を整備してきております。
昨年の9月には特定一種病原体を輸入・所持をしました。
最後のスライド、20ページですけれども、このBSL-4施設というのは、輸入感染症対応など感染症危機管理のため、国として必要な施設でございます。
ただ、39年を経過していますので、移転・新設は早急に検討する必要があると思います。
立地条件は、先ほど西條先生の報告のあったとおり、感染研の3庁舎の機能を統合可能な場所が望ましい。ただ、それが容易にできない場合には、別のプランも検討する必要があるということは報告書にもまとめられております。
4つ目のポツです。新規BSL-4施設を危機管理のための機能を備え、設備・規模はそれを満たす必要があると思います。また、建設後の維持管理も考慮すべきです。やはり、建設だけではなくて、長期間にわたって機能を維持する必要がありますから、きちんと見通して建設をすべきと考えます。
地域住民の皆様にはその必要性を十分に説明して、地元に受け入れられるように設置前から設置後を含めた情報提供、地域交流等の活動を行う必要がございます。
あくまで、こういった施設は地域の住民の皆様、地域の自治体の皆様、あるいは周辺の施設の皆様に十分に理解をしていただく必要があると考えております。
私からは以上です。
○河岡座長 脇田所長、ありがとうございました。
それでは、議題の「(3)意見交換等」に移ります。
先ほど、西條部長、脇田所長からの御説明を踏まえ、意見交換をさせていただきます。意見交換に当たっては、論点を絞った議論をしたいと思います。
構成員の皆様には事務局より事前にお願いしていると思いますが、西條先生から資料3の4ページ以降にあるとおり御説明のあった研究報告書の12の論点について、それぞれの委員から5分から10分程度の御意見を頂戴できればと思います。
それでは、ウェブのほうから、吉川構成員、よろしくお願いします。
○吉川構成員 吉川です。
西條先生の資料で言うと8番目になるかなと思うのですけれども、リスクコミュニケーションが大事ということで、それは多分一生懸命されるのではないかなと思うのですが、理解を得るためには上手にコミュニケーションをするということ以外にも、それなりに時間がかかるということも予定に入れてやっていただければいいかなということを考えました。
お互いに話をして、そして理解を得るためにはそれなりにやり取りをして時間もかかりますので、設置後にコミュニケーションを重ねていくということも大事なのですけれども、設置前に地域の方々とコミュニケーションをしていくということも考えていただければと思います。
以上です。
○河岡座長 ありがとうございました。
それでは、神山構成員、よろしくお願いします。
○神山構成員 西條先生の12の論点への意見ということでございますけれども、資料3の6ページの「特記事項」の1点目にございます本市と厚生労働大臣の確認事項について、武蔵村山市ということでこれまでの経過を含めて説明をさせていただきたいと思っております。
先ほどの資料2でも説明がございましたが、平成27年に感染研のBSL-4施設が特定一種病原体等所持施設として指定された際、それから令和元年に一種病原体の分与を受ける際に、本市と厚生労働大臣との間で確認した項目の一つに、施設の老朽化を踏まえ日本学術会議の提言等も参考にし、武蔵村山市以外への適地におけるBSL-4施設の確保について検討し結論を得るという内容が含まれているものでございます。
BSL-4施設の必要性を理解し、稼働を容認したにも関わらず施設の移転を求めるということについて違和感を覚える方もいらっしゃるのではないかと思いますけれども、その点について少し説明をさせていただきたいと思います。
資料3の2ページ、3の1)のところの推移の関係にございますとおり、昭和56年に当時の国立予防衛生研究所村山分室にBSL-4施設が完成しておりますが、当時市に対してはその前年の昭和54年9月に厚生労働省の課長や予防衛生研究所の所長等が本市を訪れておりますけれども、その際は挨拶程度の話だったようなことで聞いております。
その翌年の昭和55年4月に、当時の村山分室内に昭和56年3月にBSL-4施設が完成予定との情報が新聞に掲載される形で、市民も当局も初めてそこで当該施設が危険な病原体を扱う施設だということの認識に至りました。このことは市議会でも取り上げられまして、昭和56年12月の市議会では、国立予防衛生研究所村山分室内高度安全実験室の実験開始差止めに関する請願というものが採択されてございます。
このような状況から、本市といたしましても当時の厚生労働大臣に、当時P4と呼んでおりましたけれども、P4施設の実験開始に当たっては安全性について市民の合意が得られるまで差止めされるべく強く要望するといった要望書を提出するに至りまして、その後も厚生労働大臣が替わるたびに、BSL-4施設での実験停止状態の継続と実験室の移転を要望してきた経過がございます。
一方、西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行により、平成26年10月及び11月にエボラ出血熱の疑い事例3例が発生したこともございまして、厚生労働大臣と市長との会談や、感染研への施設運営連絡協議会の設置、それから当該協議会での議論を経て、平成27年8月にBSL-4施設の稼働もやむなしとの判断に至ったところではございますけれども、その際、実験室の移転という三十数年来の本市のスタンスについては維持をさせていただいたという経過でございます。
新型コロナウイルス感染症の拡大によりまして、感染研の重要性というのはかなり認識されてきていると思いますけれども、東日本大震災以降、やはり100%の安全はないとの意識もありまして、身近な場所にはあってほしくないという漠然とした不安を拭うのはなかなか難しい面があるものと思っております。
先ほどもございましたが、資料3の5ページの8にもございますとおり、新たなBSL-4施設がどこに新設されるかが今後の課題ではございますけれども、本市に施設が建設されて以降、30年以上にわたり使用ができなかったことを教訓としていただきまして、新施設を建設する場合には、先ほど脇田所長からもございましたとおり、地域住民にその必要性を十分に説明し、地元に受け入れられるよう、設置前から設置後を含めた情報提供や地域交流等の活動が不可欠というふうに考えてございます。
実際に、村山庁舎におきましては、脇田所長をはじめ感染研の方々が地元自治会等への説明や地域との交流を行ってきていただきましたけれども、そうした取り組みをしていただいたことが施設の稼働容認の決断に結びついたものとして理解しております。
それから、西條先生のBSL-4施設の立地条件に関する提言につきましては、専門的な見地から検討されたものと理解しておりますので、この内容そのものについて武蔵村山市として意見を申し上げることはございません。
ただ、先日も厚生労働大臣に感染研村山庁舎の運営等に関する要望書を提出させていただいておりまして、施設の移転の要望もさせていただいておりますけれども、その理由の一つに施設が市街地にあることに対する不安ということも挙げさせていただいております。
感染研の前身でございます国立予防衛生研究所は、本市内にございました広大な旧軍用地の一角に建設され、当時、周囲には何もなかったところですけれども、現在は周辺の開発も進んだほか、周辺の国有地も売却されまして、多くの戸建て住宅が感染研に迫っている状況でございます。これにつきましては、先ほどの資料2の4ページの写真を御覧いただければ分かるかと思います。
海外ではBSL-4施設が市街地にある例もあると聞いておりますけれども、市街地であったとしてもやはり一定の面積を確保していただいて、緩衝帯となるような空間を確保していただく必要があるのではないかと考えてございます。
私からは以上でございます。
○河岡座長 ありがとうございました。
それでは、次に齋藤構成員、よろしくお願いします。
○齋藤構成員 国立保健医療科学院の齋藤です。
今回、論点としてまとめていただいたものにつきまして、私としては全くどれも異論はございません。
私から特に強調して申し上げたいことといたしましては、この新興感染症、それから輸入感染症対策として、感染症危機管理上必要不可欠な施設と考えています。
特に、患者さんへの医療対応です。診断あるいは治療に結びつけるという点で、まずきちんとした体制が整備されていること。いわゆる空白期間などがなく、維持されて、そして新しい施設に移管されていくということが重要だと考えております。また、病院それから感染研本体と適切な距離にあるということは非常に大事だと考えておりますし、あとは危機管理上の要ということで、厚労省、本省本体とも積極的に、今、Zoomなどもこのように使われている時代ではありますけれども、密に意見交換をする、情報交換をする機会というのが非常に大事だと考えております。
そのような観点で、機能として、特に患者さんの治療、それから公衆衛生上必要な検査への対応がきちんと維持されるということが特に重要な点だと考えております。
私からは以上です。
○河岡座長 ありがとうございました。
次に、髙田構成員、よろしくお願いします。
○髙田構成員 北海道大学の髙田です。
私は2001年ぐらいから、その後20年ほどカナダとアメリカのBSL-4施設に毎年通って、一種病原体の研究を実際にレベル4の実験室で行っている者として、研究者側というか、実際の研究サイドからの意見としてまず述べたいと思います。
ここに書かれている規模感とアクセスの重要性というのは、非常によく理解します。
規模感のほうですが、例えばこの1ですけれども、まさにそのとおりで、BSL-4施設をどこかの場所に移設する、新しく造るとなった場合には、1に従うとすると、感染研の一部の機能が一緒にそこに行くという理解で構わないのですよね。そうすると、そこでは検査だけではなくて、ワクチンとか治療薬、診断法の開発研究、場合によっては基礎研究、そういう両方を行っていくような大きなものが想定されると思います。
感染研の場合は特に、例えば私が行っているNIHのBSL-4はモンタナ州にありまして、すごい田舎、ロッキー山脈の麓にあるのですけれども、そこは検査、診断はやっていないです。基礎研究だけのところです。そういうところであれば、基礎研究として成り立つのですけれども、感染研の場合は診断、検査というものが必ず入ってきますから、そんな山奥にあったのでは全然機能しないわけなのですね。そういう点で、アクセスの問題は非常に大事だと思います。
アクセスの問題の中では、例えばここには書かれていませんけれども、エボラ出血熱なり、ラッサ熱なり1例目が発生するのは日本国内のどこだか分からないわけですよね。そういうところの1例目の検体というものは、いつどういうルートで入ってくるのか分からないというか、どこで発生するか分からないので、そういうものがすんなり受け入れられてすぐに検査できるということのためにも、そういうものが届く経路がちゃんとしているアクセスが大事になろうかと思います。
これを読んでいて、こちらの報告書も読んで、この問題は実は感染研全体の移設と関係しているのだなということが読んでいて分かったのですけれども、今、この報告書の中でベストシナリオは、恐らくどこかのところにまとめて全部一つのところにつくるということなのですよね。それがありなのであれば、例えば3か所プラスBSL-41か所ではなくて、どこかとBSL-4が1か所で、ですから2か所で全部というものも案としてはありなのかなと、それはちょっと書かれていなかったので、あるかなと思いました。
規模感とかアクセスのことは、感染研だけではなくて大学につくろうが同じことが言えることだとは思うのですけれども、感染研ならではだなと思ったのは、これで言うと2番とか3番ですね。厚労省と近くなければいけないとか、国際医療協力センターと近い関係、これもとても重要なことかと思いました。
それから、立地条件とは違うのですけれども、ほかの大学との連携ということも書かれていて、人材育成が大事で、ハード的なことではないのですけれども、できた暁にはBSL-4施設を動かせる人材の交流なども進めていって、将来像みたいな感じで言っていますけれども、例えばエボラがどこかで起きたときに日本のチームとして診断チームを派遣できるような体制も整えていったらよろしいのではないかなと思いました。
以上です。
○河岡座長 ありがとうございました。
それでは次に、中嶋構成員、よろしくお願いします。
○中嶋構成員 私は今、長崎大学でスーツ型のBSL-4施設の建築、それからその維持管理に向けていろいろと作業をしておりますけれども、これまで国立感染症研究所の中にいて武蔵村山市さん、地域といろいろとお話をさせていただいたり、厚生労働省の行政、危機管理で感染研さんといろいろと作業を共同で行ったという経験から、1から12、求められる施設の立地条件のところはいずれももっともだなと感じました。
その上で、ちょっとずつ補足だけをさせていただこうかなと今日は思いました。
1のところは極めて重要なところで、BSL-4施設だけを置いておいてもどうしようもなくて、物品のサプライとかメーカーサービスというのが常時入ることになります。それをハンドリングできる人間がいない限り、絶対に施設というのは維持管理できないと考えております。
それから、村山のところで随分経験したのですが、東大和警察署さんとか消防署さんが近くにあって、いつも話を進められるというのがどれだけ心強かったかというところがありますので、そういったところも離れたところから、極端の話、山の中にぽつんととか離れ小島になどと話が以前ありましたけれども、絶対にあり得ないなと考えております。
2の厚生労働省と近距離、顔の見える関係というところは、やはり行政のサイドからしますと、疑い患者さんが出たときに100%を求めてしまいます。絶対に間違えない検査というのを求めます。そのためには、お互いの信頼性というのでしょうか、お互いがよく分かっていないと頼れないといったところから言うと、絶対に遠距離というのは僕はあり得ないと思います。今、いろいろとネットでつながるということができると思うのですが、やはり信頼を高めてお互いのことを知っておくというのが危機管理の要の一つではないかなと考えております。
あと距離感のところで、5の新幹線とかいろいろと位置関係が書いてあるのですが、交通手段があるところが絶対に必要だと思います。できれば近くに最寄り駅があったり、そういった利便性があるところが必要ではないかなとは考えております。
それから、7のスーツのところはまさにそのとおりで、これからつくるのであれば、いかに維持管理しやすいからと言って、グローブボックスではいろいろなニーズに耐えられないのではないかなと思います。
ただ、7のところと11のところにも関係してくるのですけれども、では具体的にどういう施設が必要かというところが一番、何しろ最初にやらなくてはいけないのがそこではないかなと考えます。
えてして、いろいろなことを話し合っていくと、総花的というか、総合デパートのような形になってしまって何でもできる施設にはなる。ただ何でもできるものにどれだけ維持管理費が必要なのか、維持管理ができる専門のスタッフが本当にそれだけそろえられるのかという話になってきます。ここのところは細かい話で言うと細胞系のin vitroのところは本当にどのぐらいの大きさで何部屋必要なのか。それから、in vitroの齧歯類までなのか、猿までなのか、猿は何匹必要なのか、何部屋必要なのか、何人でそれを使うつもりなのかというところを予算の面、人員の面から、本当に具体的なアイデアを持つということがこの移転のところに加えて極めて重要ではないかと思います。
どのぐらいの大きさの建物になるのか、どういう形で建物を配置するのか、単独の建物でいくのか、免震の建築基準では難しいかもしれないのですが、組合せの建物にするのかとか、そういったところで予算的な面も決まってきて、おおむね将来の維持管理費、困難度合いというのが見えてくると思うので、そこを何よりも早くされたほうがいいのではないかなと考えました。
先ほど、コンクリの建物の耐用年数が大体50年と言われていますけれども、最高レベルの安全性を求める建物であれば、コンクリはもったとしても、配管だとか設備とかが相当いろいろな面で先にへたって来てしまうのは避けられないことです。今すぐにでも具体的な次の施設を求め始めても逆に遅いぐらいなところではないかなと個人的には感じています。私の研究分担報告書のほうではそんなようなことを書かせていただきました。
ここが最後でございますけれども、先ほど吉川先生もお話になりましたけれども、リスクコミュニケーション、9の1行目の「地元住民の理解を得た稼働には」と、ここは計画から建設承認、そういったところでは最低7年だと思うのですが、地元の理解というのには期限はないのではないかなと思います。どんなところにでも間違いなく反対をされる方がいらっしゃると思います。そういったことを考えると、裁判などになってしまうなど、いろいろなことがあると思います。地元の関係をまずどうやっていくのか、本当にそこの場所で建設に向けた話ができるのかなど、いろいろ考えて進めないといけないのではないかなと考えた次第です。
以上でございます。
○河岡座長 ありがとうございました。
それでは、次に笹川座長代理、よろしくお願いいたします。
○笹川構成員 これまでほとんど必要なことは各委員がおっしゃっていただいたと思います。
私は学術会議の22期、23期に、BSL-4施設の必要性に関する提言を出させていただきました、その関係で長崎大学のBSL-4の管理委員会の主査をさせていただいています。また、村山庁舎では、付近の住民の皆様との運営協議会にも参加させていただいています。そして今年の2月には、脇田先生を前に感染研の外部評価委員の委員長としてこれまでの活動・成果に関する議論させて頂きましたが、新型コロナのパンデミックが危惧され、今までの感染研とBSL-4の在り方も含めて、抜本的に検討しなければならない時期に来ていると感じました。私が東大医科研におりましたときに、SARS、MERSの問題が起こりました。あのとき文科省を含めてかなりの大型予算が組まれたわけですけれども、日本では幸い感染者が出なかったということで、その後インフルエンザ流行などの問題は幾つかございましたが、SARSに関連した基礎研究は立ち消えになってしまいました。一方で、中国、台湾が今回非常に迅速な対応ができたというのは、まさにその経験を踏まえて日頃よりいろいろな体制を組み直してきた結果であろうと思っております。
そういう意味で日本もあのときにもう少しきちんとした対応を組むべきではなかったかと今も残念に思っております。
BSL-4施設は、高度病原体の保存・取扱施設の頂点にあり、その下にBSL-3、BSL-2があり、そこで基礎研究、開発研究が行われますので、やはり施設の将来の質的・量的在り方を含めてかなりきちんとした検討をして、次の世代に現在のコロナのような問題が起きたとき迅速に対応できる仕組みを検討しておくのが私たちの責任ではないかと思います。 具体的なことは本日の委員会で委員の方々から述べられたので繰り返しませんが、西條先生がまとられた報告書を読ませていただき、課題を全て解決するのはかなり難しいのではないかと感じました。
本省にも近く、国際医療センターにも近く、さらに大学も、そして交通の便のいいところというのがもしあればそこに集約することが理想ではありますが、一方で本省や中核的感染症医療機関と直接な機能分担をせずに活動できる適地があれば少し離れたところでもいいのかなと思います。この問題は、今後BSL-4委員会の議論を通じて、厚労省や政府の関係者で、将来に対するきちんとしたストラテジーを持って立案していただければと思っております。1から12まで読ませていただきましたがどれもなかなか難しい問題で、一つ一つ課題を解決していくことが一番大事かと思います。
BSL-4の設置だけに限って申し上げますと、先ほど吉川先生もおっしゃったように付近の住民の理解を得なければならないという問題がありますが、今回のコロナ禍により近隣住民のBSL-4施設に対する考え方も少し変わるのではないかと思っています。しかしそういう課題もあることも十分承知していただきながら、各候補地については最適な条件を見出し、それに向かって検討を進めていただければと思っております。
以上でございます。
○河岡座長 ありがとうございました。
私は座長ですが、私も少し意見を述べさせていただきます。この12のポイントというのは、とてもよくまとまっていると思います。今日の会議は場所の要件ですが、やはりできるだけ早く進めることは重要かなと思います。中嶋先生も言われましたが、候補場所が決まった後に、周辺住民との対話をする必要があります。ボストンのBSL-4のようにできてから何年も裁判のために稼働できないという状況がある可能性もなくはないので、候補地の選定はできるだけ早くやった方がいいと思います。
あとは規模ですが、予算等の問題はありますが、それなりの規模がないと駄目かなと思っています。
それはなぜかというと、BSL-3でもそうですし、BSL-4でもそうなのですが、メンテナンスが必要で、メンテナンスをしている間、最低1か月、多くの場合は2か月以上、シャットダウンするのですね。そうすると、部分的にシャットダウンをしながら、常にBSL-4が稼働している状況をつくることが重要で、そのためにはそれなりの規模がないとできないのです。
私は幾つかBSL-4施設に行ったことがあり、その中で一番すごかったのが中国のハルビンにあるBSL-4です。そこは動物の病原体を扱っているBSL-4なのですが、牛をそのまま放り込んで溶かせる装置があるような規模のBSL-4なのです。牛を使って実験出来る部屋が4つあるのです。それぐらいの規模感を維持するというのは大変ではあるのですけれども、そこそこの規模がないと駄目だと思います。
人の問題、中嶋先生からお話しがありましたが、感染研でトレーニングされているBSL-4経験者、髙田先生がトレーニングされた人、私の研究室から出た人など、日本人のBSL-4経験者はもう既にそれなりの人数がいます。そういう人たちは日本にもいますし、海外でも活躍しているので、そういう人たちを連れてくれば、人材という意味ではBSL-4は問題なく動かせると思います。
ただ、それだけの規模感のあるものを維持していく予算がちゃんと確保できるかどうかということかなと思います。
場所はここに書いてあるとおりで、結局離れ小島などでは駄目という話だと思います。国際医療センターとの連携を考えると、当然一定の距離でないといけないですし、そうすると当然、本省とも近い距離になるということで、そのくらいの距離感というのがイメージされます。
私からは以上です。
今日の会議は、構成員の先生方から御意見を出していただいてということですが何か、追加で御意見はございますでしょうか。
吉川先生も大丈夫ですか。
○吉川構成員 ございません。
○河岡座長 それでは、事務局におかれましては、委員の皆様からいただいた御意見を踏まえて取りまとめの案を作成していただいて、次回の検討会で議論させていただきたいと思います。
以上で本日の議論は終了になります。
事務局からは何かございますでしょうか。
○課長補佐 既に先生方に御予定を確認させておりますが、第2回の検討会の日程につきまして、来月12月11日金曜日を予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
○河岡座長 よろしいでしょうか。
それでは本日の検討会を終了します。
長時間にわたり、ありがとうございました。