第2回 事務所衛生基準のあり方に関する検討会 議事録

労働基準局安全衛生部労働衛生課

日時

令和2年10月12日(月)10:00~12:00

場所

中央労働委員会 講堂
(東京都港区芝公園1-5-32 労働委員会会館)

議題

  1. (1)論点案と今後の進め方の確認
  2. (2)トイレ設備の基準
  3. (3)その他

議事

○高田座長 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第2回事務所衛生基準のあり方に関する検討会を始めます。前回の8月25日から1か月半たちましたけれども、その間、事務局でいろいろ取りまとめていただいているところです。早速議事に入りたいと思いますので、円滑な進行に御協力いただきますよう、お願い申し上げます。また、傍聴の皆様におかれましては、カメラ撮影等をここまでとさせていただきます。御協力をお願いいたします。最初に、事務局から参加者の御紹介と配布資料の確認をお願いいたします。
○矢吹有害作業環境指導係長 本日、柴田委員につきましては欠席の御連絡を頂いております。また、本日の議題に関連して、説明員として東洋大学総合情報学部総合情報学科の小瀬博之教授に御参加いただいております。小瀬教授には後ほど、空気調和・衛生工学会が策定した衛生器具の適正箇所数に関する規格などにつき御説明いただきます。
 事務局から本日の資料の確認をさせていただきます。資料1-1「第1回検討会における主な意見」、資料1-2「今後の検討の進め方」、資料2「衛生器具の設置個数の決定法と事務所衛生基準との比較及び今後の課題」、資料3「トイレ設備の分類」。また、参考資料1として「参集者名簿」、参考資料2として「事務所衛生基準規則ほか関係条文等」、参考資料3として「建築基準法施行令、高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律施行令」を御用意しております。お手元の資料に不足等ありましたら、事務局までお申し付けください。
○高田座長 ありがとうございます。それでは、議題(1)論点案と今後の進め方の確認につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○搆主任中央労働衛生専門官 では、資料1-1を御覧ください。第1回検討会において論点案について頂いた主な意見を、資料1-1に整理してあります。まず、定義に関しては、事務機器の定義など用語が古いものについて、適宜見直しをすべきとの御指摘を頂きました。具体的には、事務所衛生基準規則第1条定義がありますが、この中にカードせん孔機、タイプライターなどがあります。今や事務機器の大半は、パソコン、タブレットというようなものになっているのではという御指摘でありました。次の空気環境については、換気が悪い中で二酸化炭素濃度が上昇しがちである、さらに冬場では相対湿度が低くなりがちであるということについて御指摘がありました。なお、相対湿度については、平成16年の改正において測定頻度の見直しがされています。
 照明に関しては、定義の所にあります事務所と事務作業の概念ということとも関連します。現在の事務作業の実態に照らして、照度の設定をすべきということと、照度以外の要因についても視野に入れておきましょうという御指摘でした。
 トイレ設備については、第1回の検討会では実態に関する議論が中心でしたが、あるべき姿、考え方、衛生基準についての議論をすべきとの御指摘がありました。また、多機能トイレやそれ以外の独立個室のタイプのトイレについては、事務所基準としてどのように取り扱うべきか。「事業場規模に」というのは、具体的には小規模事業場でのトイレ個数の実態。それから性的マイノリティへの配慮という話です。男女別の規定原則とした上で、運用面などでは可能な配慮をという御意見をいただきました。
 次の休養設備についてです。休養室を男女別で常設することについては、特に小規模事業場にとって負担が大きいという御指摘。それから、休養室の機能が静かに休める環境の確保という前提で、現場感覚としては、カフェテリア、休憩設備との共通点もあるのではないかという御意見。さらに、トイレ設備と同様に、性的マイノリティへの配慮などの御指摘もありました。
 次の清掃についてです。最近の事務所は衛生基準も高く、ねずみ、昆虫等の一律防除は必要かという御意見を頂きました。事務局で確認したところ、平成16年の法令改正、事務所衛生基準規則の改正において既に対応していることが分かりました。すなわち、まず害虫等の調査を行うこと、その結果に応じて、必要があれば防除を行うという2段階に改められています。
 その他ですが、多様化している事務作業にも柔軟な対応をという御指摘をいただいております。この立業の椅子の規定自体が問題ということではなくて、立ったまま等の長時間の拘束姿勢がよくないという趣旨であることを、よく周知していく必要があるということです。特に、最近増えている様々なタイプの事務作業とも関連します。
 これらの意見を踏まえて、第1回目に事務局で提示した論点案を、資料1-2のとおり整理しましたので、簡単に御説明します。法令の順番に並べ替えております。
 1空気環境については、気温、相対湿度の測定頻度を見直した平成16年改正において触れていない二酸化炭素の含有率などの管理が適切な換気確保であることを念頭に、次回、検討いただくことを考えております。
 それから、2 事務所における照明についてですが、事務作業ごとに定められている照度の基準について、具体的にはJISなどをよく参照する必要があるということ、それから、これらが事務所衛生基準規則として妥当かどうかといった点を御検討いただきたいと思います。
 3 トイレ設備の要件についてです。事務所衛生基準として定める衛生基準のあるべき姿と、そのために必要な基本的事項について整理をすべきこと、それから、多機能トイレその他独立個室のタイプのトイレについて、これらのうち男女共用のものについては、事務所衛生基準規則上のトイレとして取り扱われない現状にあり、この問題をどのようにすべきかといった点の検討が必要と思われます。その際、小規模事務所におけるトイレ設備の要件、それから障害者、トランスジェンダーなどに対する配慮として考えられることも視野に入れる必要があります。
 その他、4 更衣設備、シャワー設備については、現在の法令、それから快適職場指針等で考慮すべき点がないかどうか、5 休養室については、その設置についてどのように考えるべきかといった点についても検討いただくこととして、この資料1-2は書きぶりなどを前回から少し修正しました。説明は以上です。
○高田座長 御説明ありがとうございました。ただいまの説明について、御質問、御意見ございますでしょうか。まず、資料1-1の第1回検討会における主な意見については、これは皆様方の御意見を取りまとめておりますので、ここに不足、訂正等はよろしいでしょうか。ここは、何かございますか。林委員は前回御欠席でしたので、もし何か追加で御意見等がございましたら。特にございませんか。
 ありがとうございます。資料1-1の意見については、事務局にまとめていただいたものでよろしいということですね。
 そうしましたら、今日問題になってきますのは、この今後の検討の進め方についてという資料1-2になります。こちらについては、今、事務局の説明がありましたが、いかがでしょうか。まず、空気環境はまた次回以降という形になりますが、こちらについては追加の御意見、進め方についてはいかがでしょうか。林委員はよろしいでしょうか。次は、事務所における照明になります。こちらの進め方については、吉武委員、いかがでしょうか。
○吉武委員 吉武です。先ほど御説明がありましたように、JIS等、現在ある規格等を基に検討するということで、今、進めております。次回のこの検討会にて議論させていただくということで、今、取りまとめをしておりますので、JIS等をお示しした上で、次回以降の検討会で御検討いただければと考えております。
○高田座長 ありがとうございます。3番目のトイレ設備の要件は、この後の議論にも影響しますが、こちらについて今、事務所衛生基準として定める衛生水準、それから衛生水準を達成するために満たすべき基本的事項、独立個室型トイレ、多機能トイレを含めてどのように取り扱うか、それから、小規模事業所での要件、障害者、性的マイノリティ等に対しどのような配慮が考えられるかというところで出ております。そのほか、いかがでしょうか。住徳委員、何かございますか。よろしいですか。明石委員は、よろしいですか。冨高委員は、よろしいですか。ありがとうございます。そうしましたら、こちらはまた後で議論させていただきます。更衣設備等についてですが、こちらについては前回、明石委員が御発言されていたと思いますが、何かございますか。特に皆様、よろしいでしょうか。休養室等ですが、こちらも明石委員、住徳委員、冨高委員、何か。よろしいですか。ほかの委員の先生方もよろしいでしょうか。今は大まかな項目立てになっていますので、進めていくうちにまた少し御意見が出てくるのかもしれませんが、現状、今後の検討の進め方についてという、こちらの資料1-2で示されている案に基づいて進めていくということで、委員の皆様に御同意を頂けたということで、よろしいでしょうか。ありがとうございます。事務局のほうで、ここには書かれていませんが、こういうことも確認しておきたいということは何かございますでしょうか。
○搆主任中央労働衛生専門官 現時点では特にありません。
○高田座長 ありがとうございます。それでは、資料1-1、1-2については、こちらで終了いたします。
 次の議題に移ります。議題(2)トイレ設備の基準について進めていきます。第1回の議論におきまして、トイレの設備については、実態だけではなく、あるべき基準とのバランスが重要との御指摘も頂いております。そこで、まずは事務所におけるトイレ衛生器具の箇所数の考え方を中心に、本日は東洋大学総合情報学部総合情報学科の小瀬教授に御説明をお願いしたいと思います。お忙しいところ、ありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○小瀬教授 おはようございます。資料2ということで、用意いたしました。衛生器具の設置個数の決定法と事務所衛生基準との比較及び今後の課題ということで、20分ほどお話をさせていただきます。目次に書かれていますように、まず、こちらの私が持っているものが、空気調和・衛生工学会で規格として出している、去年改定されたSHASE-S206-2019給排水衛生設備規準・同解説です。この中に、技術要項・同解説ということで、1番目に「衛生器具と設置個数の決定」が書いておりますので、そちらの説明と、よく問題になっています事務所衛生基準規則との比較、それから、今後の課題ということで、これは私見ですが述べさせていただきます。
 次のページです。この空気調和・衛生工学会の衛生器具の設置個数の決定についての考え方をまとめております。こちらの調査等の元になっている委員会等は、1980年代、昭和50年代に行われているものがベースとなっておりますので、そもそも新しい考え方ではないことを頭に入れておいていただきたいと思います。4番目のスライドに書いていますように、基本的にはこの衛生器具の設置個数の決定は、利用形態、利用人員と男女の割合、サービスレベル、器具利用に関わる2つの要素と書いておりますが、この辺が大きく決定の要素になっています。
 どれぐらいの個数を設置するという中で、この衛生器具というのは、利用形態として、任意利用形態と集中利用形態があると分類されています。任意利用形態は、好きなときに使える。要するに、自分がトイレに行きたくなったときに、基本的に自由に使える所ということで、事務所もこれに該当します。一方で、拘束時間があるもの、例えばここに書いてあるように劇場、それから小・中・高校などは、普通は授業時間等にトイレに行くということがないと思いますので、拘束時間があって休み時間などに集中して利用する。そういう2つの形態があるとされています。任意利用形態については特定の時間帯や利用者の想定がなく、集中利用形態のほうは、特定の利用者が休み時間等に集中することを想定した器具数を設置することになります。
 設置する器具数の算定に当たっては利用人員の設定が重要ですが、この技術要項には「実在の人員が望ましい」と書いています。これが、実は一番難しいところで、そもそもその衛生器具は何人の人が使う可能性があるかというのは、これは建築の設計によるところになります。例えば定員が定まっているようなもの、5番目のスライドの一番左の特性区分のbの所に、人員がある程度決まっていると書いてあります。寄宿舎・療養所・老人ホームなどでは、利用者は大体決まっており、大学も比較的決まっています。事務所もある程度は決まっていると言えるものの、来客がある場所については、来客を考慮しなければなりません。
 もう1つ問題になるのが、男女の割合です。基本的には男女別に衛生器具を設置することになりますので、器具数も男女別に定められるということです。実は、2009年版の技術要項から、男女の割合を80対20から50対50すなわち男女同数の設定に変えています。以前は事務所にいる人の割合は男性が中心だったと推測されますが、実際には女性のほうが使用時間が長いため、女性用トイレの数が不足しているのではないかというのが、私の意見であります。
 6番目のスライドにサービスレベルについての記載がありますが、これは、待つ確率と待ち時間により3段階に分けられるということです。トイレに人がたくさん来るようであれば多くの人をさばかなければいけないのですが、十分ニーズを満たすだけのサービスレベル、この場合では待ち時間になりますが、待ち時間と待つ確率を十分満たされる所は、相当ゆとりのある値ということで、これがレベル1。標準値として定められているのが、レベル2。最低限これは必要でしょうというのが、レベル3になります。負荷が大きいほど設置すべき個数が多くなるわけですが、許容できる待ち時間を想定して最低値が定められているということです。この技術要項では、3つを値として示しているということです。最終的に器具利用に関わる2つの要素というのは、どちらも大きいほど混雑するのですが、1つ目は到着率です。これは、単位時間当たりの到着人員ということですが、要するに平均到着時間間隔ということで、どれぐらいの人が時間当たりに来るか又はどれぐらいの間隔で人が来るかというので大体決まってくる。2つ目は、サービス時間すなわち占有時間です。どれだけトイレや器具を利用するかで、どれぐらい器具を用意しなければいけないかというのが決まるという前提です。
 7番目のスライドを説明します。器具数の算定手順にもあるとおりまず、建物の用途による使用上の特性や利用パターンを予測する、定員や床面積から男女別利用人員の予測する、その結果、単位時間当たりの到着人員を算定する。それから、器具占有時間を設定した上で、この技術要項では、任意利用形態は待ち行列理論という数値の理論を用いて計算結果をまとめております。集中利用形態については、実際にシミュレーションでどれぐらいの人が来るということをモデル化して、その上で衛生器具の算定をこの学会の技術要項としては定めたということになっています。これは設置器具数の算定ですが、あくまでも設計者がこの単位時間当たりの到着人員や器具占有時間を想定して定めるということで、備えるべき基準ということではありません。
 実際に、事務所の適正器具数として定めているのが8ページです。これについては、あくまでも9ページの基準に基づいて計算した結果を8ページの図に置き換えたという形になっております。到着率や占有時間はトイレごとに異なりますので、本来はこの計算方法に従ってそれぞれの事務所に適したものを定めるためのもので、これは、この個数があればよいという法律的な基準ではありません。到着率が一定の下で占有時間が長くなれば、利用人数当たりの適正器具数は増加し、このグラフで言うと、もう少し利用人員が少ない所に階段上の線図が狭まってくることになります。
 右の9ページの説明に吹き出しを作っています。例えば到着率が0.600ということで、男子小便器や女子便器は定められていますが、私がこの基準の2009年版を作った後に、小委員会でこれに関してもう少しマニュアルを作ろうということで、レポートをまとめています。そのときに、改めて再計算したところで言うと、これは、100人の利用人員が1分で0.6人到着という意味なのです。そうすると、166分で100人利用。ほかの調査等で大体3時間に1回はトイレを使用するというのが平均的なところなので、仮に180分で100人が到着する、要するに3時間に1回は全員利用するということであれば、到着率は0.56ということなので、この0.60というのは大体妥当なところと私は見ておりました。一方で、占有時間は男子小便器は30、女子便器は90、男子大便器は300秒と定められています。この男子の小便器は、男性の方は分かると思いますが、オープンで見えていますので、大体どれぐらい使用しているかなというのは、私も巷で秒数等を数えたりしていたこともあるのですが、大体この30秒というのはそんなに大きく変わりません。女子便器の場合は、90秒ということであります。これは平均すると90秒ですが、各人の使用時間にはばらつきがありますので、計算モデルでは、そのばらつきを考慮して、占有時間の平均を90秒と定めています。ただし、実際の占有時間については、実態調査など、最近の学会の発表事例などを見る限り、120秒、150秒など長くなっている例も増えているようです。
 右側の待ち時間の評価尺度ということがあるのですが、これについては、この学会の技術要項を定めたときに、いろいろな調査等でこれぐらいだったら待てるというような時間を想定して作っています。この見方ですが、括弧内が待ち時間ですね、確率的なものが、一番右側の所の数値になります。つまり、例えば女子便器のレベル1であれば、10秒より待たされる確率が0.01なので1%未満というような見方です。よく見ると、男子小便器と女子便器を比較すると、レベル3における待ち時間は3倍になっています。要するに、待ち時間が長く設定されているために器具数がある程度抑えられているという見方ができます。それでも女子便器のほうが多いですが、本来でしたら単純に3倍にもなるはずだということです。
 次に、事務所衛生基準規則との比較をしてみます。事務所衛生基準規則における便所の規定は、11ページに書いてありますように、男性用と女性用に区別すること。それから、男子大便所の便房数は、同時に就業する男性労働者60人以内ごとに1個以上です。男性用小便所の箇所数は、同時に就業する男性労働者30人以内ごとに1個ずつ。女性用便所の便房の数は、同時に就業する女性労働者20人以内ごとに1個ずつということです。わかりやすく言うと、男性用小便所と女性用便所は人数比として1.5倍に定められているということと、人数に対して比例になっているということが学会の算出方法とはちょっと違うことになります。
 実際に、先ほど言いましたように、私は2014年に委員会を作って報告書を出していますが、そのときに12ページの図を作ってみました。男子大便器の基準で見ますと、事務所衛生基準規則の基準は、レベル3と同じかちょっと少ない程度になります。これは、私の実感では、男子大便器はやや少ないです。それから、男子小便器については、利用人数が100人以上になった場合に、事務所衛生基準規則の規定に対し、学会のほうは少なくなっており、法令順守上問題がないですかという問合せが学会にあります。学会で示しているのは、あくまでも算定方法ですので、適正な器具数としては事務所衛生基準規則に従ってくださいという回答であり、それは技術要項にも書いてあります。利用人数が多くなると、混雑が分散するため、結果的に器具数が多過ぎる状態になることは確かですし、少ない利用人数ですと、器具数が少ないという場合もあります。
 待ち行列理論というのは、結局待つ時間の尺度で定められるものですから、1個だと大体埋まってしまう可能性があるのですね。男女別にして1個ですと、1個が埋まってしまうと単純に30秒、90秒待たされることになりますので、その確率から言うと、適正器具数が1個の場合はすぐ足りなくなってしまうという算定結果になります。しかし、実態調査の結果を見たところ、少人数の事務所で器具数が足りないという回答はあまりなく、むしろ大規模な事務所のほうで器具数が足りないようにも見えますから、算定結果どおりとは言えないかもしれません。
 最後に、今後の課題についてお話します。学会調査当時は昭和50年代ということですので、公共トイレ、事務所のトイレともに大きく変化しています。快適性は向上していますし、便器は和式から洋式化され、便器が抗菌化されるなど、衛生環境も向上していますし、温水洗浄便座も普及しています。場合によっては擬音装置もあるし、洗浄・手洗いのセンサー・自動化もある。あとは、利用に直結はしませんが、節水化や床の湿式から乾式化への変化ということもあります、つまり衛生性が向上している。もともとの待ち行列理論での算定においては、1つ1つの器具に並ぶことを前提としていましたが、今は一連の便器に対して1列で並ぶのが普通になっていますから、待ち時間の考え方も変わってきたりします。それから、障害者トイレ等の多目的化、多機能化により、衛生性や快適性が向上して、多目的利用が容易になってきている。多目的利用ということになると、やはり占有時間が増加する要因になってきます。
 私見として述べますが、SDGsの目標の中でもトイレに関することは、例えば資料の3、4、5、6、8、10などに含まれています。こうした意見は、障害者や性的マイノリティなど当事者が少ないためにアンケート調査などでは出てきにくいのですが、そういう方々が職場で働く上では、トイレに関する問題は切実なものであり、対応しなければいけないだろうということになります。
 やはり安全・安心・衛生的な労働環境という意味では、今の設置個数でいいのかどうかというのは、改めて考えなければいけない。あとは、ジェンダー平等ということがありますが、これは男性と女性の比較です。やはり、女性の器具数のほうが一般的には不足するのではないかということです。さらに高齢者や障害者、外国人、性的マイノリティなどに対しては、基準には入れないまでも何らかの配慮も必要だということです。
 なお、多機能トイレについては、最近、あらゆる負担を持たせることの課題が言われています。例えば性的マイノリティや障害者に加え、写真にありますように妊婦、小さい子供、お年寄りが使うということになると、利用者数が増えるので、到着率が上がります。19ページの写真にあるサービスエリアのトイレのように、子供用、障害者用、お年寄り用、おむつ換えもあってとなりますと、当然ながら多機能トイレが混雑します。
 22ページはアンケート調査をしたものです。大便器ブースを使うときによく行うことや、ときどき行うことということで、着替え、通話・メール、瞑想・仮眠、学生に至っては、もういろいろ荷物整理をしたり、ほかのことをしているという需要が増えておりまして、単純に占有時間が増えているからトイレの器具数を増やすべきかは難しいところです。個室のトイレが休憩室の役割を請け負っているところがあるとすれば、休憩室の整備が本来の答えかも知れません。
 このほか、男子用トイレとして、大便器と小便器を必ず分ける必要があるのかということです。男子用大便器の不足は、事務所においては上下階が使えるなどの事情もあり、余り大きな問題でないのかもしれませんが、商業施設や駅を見ると大体埋まってといういることがあります。大便器は小便器としても使えますし、今座って小便をするという人も少なからずいるということも聞いておりますので、器具数としてはある程度ミックスして考えるという考え方が外国の基準にもありますので、そういう考え方もあるかなということです。
 また、利用者が少数の場合においても、例外なく男女別である必要があるかということです。個人的な考えですが、要するに、各人にとって利用できる個室が少ないよりは多いほうがいいので、少人数の事務所においては、男女別トイレ個室が1個ずつあるよりは、その2個を共用にしたほうが、利用機会としては増えるわけです。コンビニエンスストアなどではそうですね。女性用が2つで、男女兼用が1個あるという形ですと、男性はその1個が空いていないと使えないことになります。ただし、心理的な影響もありますから簡単には結論を出せない問題です。
 最後に、外国の事例を紹介します。23、24の写真でありますように、これは子供向けの施設ですが、男女別のトイレはなく、2か所設置して使っている施設がありました。下は大学の事例ですが、やはり「ALL GENDER」ということで、どなたでも利用いただけますということです。ただし、このような利用方法においては、器具数はもっと必要になってしまうことにはなります。
○高田座長 御説明ありがとうございます。今の御説明について御意見、御質問等ございましたら発言をお願いいたします。何かございますでしょうか。
○林委員 小瀬先生、ありがとうございました。最後に出てきました「ALL GENDER」、誰でも使えるトイレなのですが、私も昨年ヘルシンキの新しい図書館に行ったらこれがありまして、男性も女性も自由に入って、隣にどんな人がいようが安心して使えるという、そういう感じになっていて、いろいろな意味で進んでいるのかなと思ったのですが、こういったトイレは効率的にはどうなのかというところが出てくるかと思うのです。女性は大変待たなければいけないということは解消できるかもしれないのですが、小便器に比べれば男性も多少時間が掛かったりとか、いろいろなことがあるとは思うのです。その効率という観点で何かそういった研究が行われているかどうかというのは少し興味があって、教えていただければと思います。
○小瀬教授 法律の問題で言うと、ALL GENDERのトイレ、日本の事務所衛生基準規則に照らすと、この規則には沿っていないという形になるのではないかと思いますね。一方で、多機能トイレの中には男女別ではなくて、性別が異なる介助者や親子が入ることを想定しているものも多いですから、逆に男女別では不都合な場合もあります。したがって、男女共用が必要な場面はあるはずですが、この事務所衛生基準規則では沿っていないというのが課題ではないかと思います。
○林委員 ありがとうございます。現状では基準には沿っていないということだと思うのですが、もし男女共用のものを作ったときに、それが効率的にどうなのかという、ある意味では先を見越した研究があるのかどうかというのを、ちょっとお伺いしたいと思います。
○小瀬教授 研究ではしていないのですが、単純に言うと、男女が仮に区別がないのであれば、人数としては例えば女子の基準をそのまま使ってもいいということです。男性がトイレを90秒使うかどうか分かりませんが、男女で動作に違いがないと仮定すれば、女子便器の器具数と同じとして人数も男女別にしないということで、算定はできます。
○林委員 ありがとうございます。
○高田座長 ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。
○明石委員 すみません。資料2の22枚目のスライドに、使用用途以外のこと、着替えとか、通話・メール、瞑想・仮眠がありますが、これは本来の使い方をした上でやるのか、それともこれだけやるために個室に入るのか、その辺りは何か分け方はあるのでしょうか。
○小瀬教授 調査のときにはそのように聞いてなかったので、当然ながら用を足しながらやっているのではないかと思うのです、少なくとも通話・メールは、それだけのためではないとは思っているのですが、それはちょっと調査だけでは分からないところです。ついでにやっているのではないかとも思いますし、着替えはちょっと違うかもしれませんけど、そこまでは把握できていません。
○高田座長 よろしいでしょうか。
○住徳委員 スライド9枚目の事務所の各便器の占有時間とか、レベルの部分でちょっとお尋ねします。3時間に1回利用するという前提ですが、先ほど女子便器のほうは90秒よりも長く120秒以上ぐらいになるのではないかというお話がありましたし、例えば年齢層によっては、月経の関係もあると更に利用頻度も3時間に1回というわけにはいかなくなりますし、時間も増えるということになると、この計算でもやはりレベル1とかにするには、かなりまた各便房の個数が増えるのかなという印象をちょっと持ちました。
 それともう1つなのですが、17枚目のスライドですが、「男子は大便器と小便器を必ず分ける必要があるか」ということで、私も非常に疑問に思っていたことです。最近の若い男性は、家庭で座って用を足すように教育されているという感じを受けます。将来的にということですが、小便器という概念をなくすということもあり得るのではないでしょうか。少し大便器を増やすというこが、大便器を使いたいという男性が増えてくるということを想定してもいいのかなというように感想として思いました。
○高田座長 ありがとうございます。ほかにございますでしょうか。
 私から質問させていただいてよろしいでしょうか。今お話も出てきました、男子の大便器と小便器ですね、そこの基準を何か合わせて考えている国があるというお話だったのですが、どちらの国かとかいう情報はございますでしょうか。
○小瀬教授 ちょっと最近の事例を持ち合わせてなかったのですが、以前この小委員会等で調査をしたときに、用途としては学校だったりするのですが、例えばアメリカの基準にIPC、UPCというのがありまして、どちらかのところで大便器に小便器の半分ぐらい役割を持たせるような感じで算定しているというのがあるのです。その数で満たすようにということと、あと確か小便器と大便器の割合がまず2対1、小が2で大が1になるようにするというような基準が確か定められていた記憶があります。ちょっと事前に詳しい資料を調べてこなかったのですが、学校の場合でそういう算定の仕方があるようです。
○高田座長 ありがとうございます。あともう一点、多機能トイレですね、先ほど、もし個数を算定する場合は女子の便器の基準をということでお話があったのですが、多機能トイレの占有時間について、何か調べている調査というのはございますか。
○小瀬教授 今の事例でも、多機能トイレは多数設置されることはあまりないため調査事例がなかったと思いますが、一般のトイレについて言えば、男子で20分以上使っている事例もあり、ずっと埋まっている状態があるというところです。そこから推測すると、多機能トイレも時間としては長いとは思うのですが、20分ぐらい使っている可能性はあります。
○高田座長 そうすると、結構まちまちの長さということで、幅が大きいというところになってくるのですね。
○小瀬教授 結局、器具数が1個だと、そういう形で1つ埋まってしまうとその時間ずっと使えないということになりますので、そのままの待ち時間になってしまいます。ただ、平均にすれば短い人もいますので、排泄という目的であれば占有時間30秒とか90秒というのは、妥当かなという印象はあります。中で何をしているところまでは測れませんので、そこがこの器具数の選定においては大きな課題です。
○高田座長 ありがとうございました。ほかに御質問ございますでしょうか。よろしゅうございますか。小瀬先生、御説明ありがとうございました。
 続きまして、第1回の議論において、多機能トイレの整備状況、事業場規模との関係、男女別や性的マイノリティへの配慮など、様々な意見が出ましたが、それらにつきまして、トイレ設備の様々な設置状況について、資料3を基に事務局から説明をお願いいたします。
○搆主任中央労働衛生専門官 それでは資料3を御覧ください。トイレ設備としてどのようなものが用いられているか、法令との関係も含めて御説明いたします。事務所衛生基準規則の第17条が該当しますが、ここで「便所」、「便房」といった用語が使われています。「便所」は一般にも使われている用語ですので、紛らわしくないように、この検討会の資料は、一般的な名称としては「トイレ設備」と書いております。法令でいうところの「便所」という用語に対しては解釈が示されており、簡潔に言いますと、用を足す場所、その周辺設備も含めた場所的な一連の場所だという概念を指します。一方で、「便房」という用語は、余り一般に使われないと思いますが、男子用の小便器以外の普通の便器がある1人分の場所、区画のことを指します。
 便房に着目して分類しておりますのが、資料3です。1番目の仕切り壁方式、あえて「仕切り壁」と書いてありますが、事務所衛生基準規則は、当初、労働基準法の下に昭和46年に制定されましたが、この当時に事務所で一般的だったトイレ設備は、1番の仕切り壁方式だと思われます。仕切り壁方式は、今も事務所、工場、商業施設、建設工事事務所など、様々な所で設置されています。右のほうを見ていただきたいのですが、仕切り壁の特徴としては、天井付近と床面付近がほぼ例外なく開放されているということです。例えば仕切り壁が高さ190cmぐらいまででそれより上は空いている、床も下から10cmぐらい空いているものが多いと思われます。外国には床から数十センチ、膝ぐらいまで空いているものもあります。現在は大半が水洗式ですが、以前はくみ取式で暗くて臭気が漂うようなものも多くあったということの関係だと思いますが、建築基準法施行令で、建物を建てるときに便所の採光や通風窓が義務付けられていまして、そのために天井付近や床のほうの仕切り壁が空いていると思われます。床面は、先ほど小瀬教授からの御説明にあった湿式洗浄であれば、床付近が空いている必要があるかもしれません。このような仕切り壁方式の便房というのは、目隠しにはなるけれども、プライバシーの確保は限定的だということが言えます。
 もう1つ、2番目の独立個室型について御説明します。天井から床まで強固な壁で四方を囲まれている独立個室型の便房は、事務所、工場のほか飲食店や小売店、病院/診療所、社会福祉施設などでも見られるものです。仕切り壁の方式と比較すると、プライバシーは比較的確保されていると言えます。また、設置場所によっては従業員専用でなく、顧客や来客などと共用とされていることも多くあります。この独立個室型の便房については、事務所衛生基準規則に適用する場合、便房と便所という、先ほど少し申しました用語に留意する必要があります。
 机上配布しています参考資料を御覧ください。本日プロジェクターが用意できないため紙でお配りしていますが、あくまで説明のための参考です。仕切り壁方式の便房が5つ並んでいる場合、その1つ1つが便房ですが、便房の外側に男子用小便器が設置されていると、入り口から入った内部全体が1つの便所となります。その場合は男性便所ということになりますので、その中にある2つの女性用便房は、衛生基準に照らして認められないということになります。仕切り壁の隣に異性がいる状態は、プライバシーの点で問題ありということです。
 別の事例をご覧ください。比較のために配置は同じまま維持していますので、やや不自然なものもありますが、配置は気にせず、あくまで場合分けとしてご覧ください。1つ1つの便房が独立個室型の場合であっても、外に男子用小便器が設置されていると、その全体の区画が1つの男性便所ということになります。そうしますと、その中に女性便房があることは、先ほどと同様に衛生基準に照らして認められないことになります。個々の便房については、強固な壁でプライバシーが確保されていても、例えば女子便房から出たすぐ外側で男性が立って用を足す配置となっており、その後ろを通り抜けることになりますので、プライバシーは確保されているとは言えません。
 一方、便房の外に男性用小便器がない場合については、1つ1つが便房であると同時に1つ1つが便所でもあると言えます。便房の外側は、単なる通路であって便所ではありません。したがって、男子用便所と女子用便所が混在していても、そのプライバシーは確保されている状況にあります。お示しした図では配置上、不自然かもしれませんが、外側の空間は実際は通路ですので、個々の独立個室も5つ隣り合わせというのは余りなく、距離を置いて通路に配置されていることが多いと思います。
 資料3に戻りますと、独立個室型は、事務所衛生基準規則が制定された後に普及してきたものと思われますが、法令に照らして適用をそのように整理しています。
 3番目の車いす使用者用の便房については、多機能トイレ、多目的トイレとして、公共施設等で多く配置されるようになってきました。当初は車いすが十分回転できる空間、手すりが配置されているということから始まり、バリアフリー法の施行に伴い、広く商業施設、飲食店、病院、社会福祉施設や公共の施設などに設置されるようになりました。こうしたこともあって、前回の調査結果では、3割程度の職場で多機能トイレが整備されているということでした。多機能トイレについては、先ほど小瀬教授の御説明にもありましたとおり、男女別のトイレ設備とは別に設置され、結果的に独立個室の一形態というものが多いと思います。介助者の関係で、男女の別なく使われるようになっているということですが、御指摘のとおり、現在の事務所衛生基準規則では、こうしたタイプの多機能トイレは男女別トイレに該当しませんので、事務所で備えるべき便所として数えられないということになります。
 このほか、最近増えてきている水洗器具付き、オストメイト対応の便所です。番の車いす使用者用に付加されているものが典型的ですが、最近では、バリアフリー法の運用においても、車いす使用者用でない一般便所に付加をするタイプも進められているようです。多機能トイレの混雑を解消するためのものと思いますが、水洗器具付きのものは、車いす使用者用ほどは場所を取りませんので、2番の独立個室型や1番の仕切り壁のトイレにも付加される場合があると聞いています。
 したがって、トイレの分類としては、以前からあった1番の仕切り壁、その後に普及してきた2番の独立個室型の2種類に大きく分けられますが、3番の車いす使用者用が、大半は独立個室形としてあり、4番のオストメイト対応の水洗器具付きが、1番から3番のいずれかに付加されるという状況です。説明は以上です。
○高田座長 御説明ありがとうございました。今の説明について御意見、御質問等ありましたら、発言をお願いいたします。明石委員、お願いします。
○明石委員 先ほどの机上配布資料のところで、男性用小便器の後ろにパーテーションを立てるとかすれば、その場合は男女別になるのでしょうか。
○高田座長 では、事務局からお願いいたします。
○搆主任中央労働衛生専門官 図の場合は区画全体が男子便所という扱いになりますので、男子便所を通らずに女性が出入りできるような配置になるかどうかが判断基準となります。衝立でよいかどうかは一概に申し上げられませんが、衝立が仕切り壁の域を出ないのであれば、プライバシーの観点から難しいと思います。
 個別の話は難しいですが、改善が必要となれば、現実的には、入口に近い場所を女性の便房とし、女性の便房と男性の便房の仕切りは強固な壁とし、入口の動線も分けるという解決策をとることになると思います。設計するときに考えるのであれば、このような形の便所は不適切といえます。
○高田座長 ありがとうございます。明石委員、今の御説明で何か追加はありますか。お願いいたします。
○明石委員 今のは分かりました。もう一点、この2)のマル2ですが、これは御説明にあったように、外が通路なら、多分、何も問題がないと思いますが、たまたま、このような室であるときに、これは動線を分けたりする必要があるのか、そこはいかがでしょうか。
○高田座長 事務局、お願いいたします。
○搆主任中央労働衛生専門官 その図については、最初に申しましたとおり配置についての議論は難しいですが、考え方としては、便房の前の広い場所がトイレのスペースなのか一般通路なのかということです。その場所に男性用小便器があれば論外ですが、一般の通路であったり書棚があったりといろいろな人が出入りする状況であれば、便所ではなく通路でしょう。
○高田座長 ありがとうございます。では、冨高委員、お願いします。
○冨高委員 今の明石委員の質問にもつながるのですが、今のご回答の中で、男子便所の区画を通らずに安心して通れるかどうかがポイントになるとおっしゃっていましたが、それはどこかに規定、法律ではないにしろ、何か記載されていたりするのでしょうか。確認です。
○高田座長 事務局、お願いいたします。
○搆主任中央労働衛生専門官 調べた限りでは、そのような判断基準は見たことがありません。通達解釈はないのだと思いますが、法令施行時に用意した周知文書や説明会などで示したことがあるかもしれませんが、何分、古い時代の話ですので残ってはいません。労働安全衛生法に規定する「風紀」という用語に一括りにされるものと思います。
○高田座長 冨高委員、お願いします。
○冨高委員 ありがとうございました。今後、このトイレの基準を考えていく上で、見直しをするのであれば、いろいろ整備などもしなければいけないと思います。その中で、やはり基準を明確にすることが事業者の方にも必要だと思います。それは意見として述べさせていただきます。
○高田座長 ありがとうございます。ほかにありますか。住徳委員、お願いします。
○住徳委員 今のにも関連してというか、この配布資料が意図して女性のトイレを部屋の奥に設置するようにされているのかというところで、どこで聞いたかはっきり覚えていないのですが、最近の公共の新しいトイレは、女性トイレには男性トイレの前を通って行けるけど、男性トイレは女性トイレの前を通っては行けないような構造になっていると。なぜかと言うと、奥が女性トイレであれば、奥に入る理由が男性にはないわけです。女性トイレを手前にしておくと、女性トイレに入る理由が、防犯上の話ですが、そのような理屈付けで、女性トイレは男性トイレの前を通っていけるけど、逆はないというようなお話を聞いたことがあります。それを意図して、このような並びにされているのかなと、1つ質問というか、小瀬先生でもいいのですが、そのような考え方が、今、一般的なのかどうかが分からなかったので教えていただきたいです。
 もう1つは、洗面設備がトイレの中には、大体、付けてあると思いますが、このマル2の場合、洗面設備をこの中に作ることが、利用者側として利用しやすいものになるのかどうか、少し疑問があるので、特に、女性の場合はそうなると思いますが、そういった場合、洗面設備を必ず室の中に設置しなければいけないのか、それとも、別に外に出していいのか。その辺りをどうお考えなのか、教えていただければと思います。
○高田座長 ありがとうございます。では、事務局からお願いします。
○搆主任中央労働衛生専門官 事務局から回答いたします。お示しした図を作成する段階では、住徳委員の言われたような配慮をしてはおりませんが、女性トイレを奥に配置するという考え方は、設計段階では一般的かもしれません。職場については不明ですが、公共施設、百貨店やショッピングモールなどでそのようなものが多いようです。トイレを利用する際に、女性が不愉快な思いをしないように、怖い思いをしないようにという配慮であるかもしれません。
 事務所衛生基準規則ではそのような明示はしておりませんが、職場においてもトイレを安心して利用できるための配慮が必要なことは確かです。現代の日本ではあまり聞きませんが、国によってはトイレ利用時の安全確保が重要なところもありますので、こうしたトイレの男女別規定が出てくる背景事情を踏まえ、日本においても男女別をしっかり分けるということで整備されてきたものと思います。
 2つ目ご指摘の洗面設備についてですが、飲食店などでは、男性用便房と女性用便房の間に一区画分のスペースがあり、そこに洗面所があるようなものがあります。便所の範囲の考え方によっては、独立個室型であっても便房と便所が一致せず、洗面所が便房の外にあるケースもあると思います。水洗タンクに付設した手洗設備が便房内にある場合もあります。以上です。
○高田座長 大丈夫ですか。事務局の説明はよろしいですか。小瀬教授は、何かここまでのお話でありましたら、よろしくお願いいたします。
○小瀬教授 先ほどの図で見ますと、確かに女性トイレが奥にあるということですが、このようなケースは私は余り見ていないです。事務所などでは設備的な関係で設置場所が決まってくる中で、割と男性と女性のトイレの場所というのは離れて、建物のコアの部分に、特に高層ビル等では設置されていることが多いので、並びでというのは余りないのではないかと思います。ただ、手前奥といった場合には、個人的に見たところでは、やはり奥に女性トイレがあることが多いと思います。
 洗面の件は、先ほどの資料の11ページ、この衛生基準規則の第17条の6番に、「流出する清浄な水を十分に供給する手洗い設備を設けること」とあるので、便所の中には何かしら設けなければいけないということではありますが、この調和委員会の調査をしたときに、よく言われていたのは、例えば女性だと鏡は使いたいけど洗面は使う必要がないという場合、横から、手洗いで借り洗いと出ていましたが、要するに、手洗いだけ使いたいけど鏡はほかの人が使っているという例が結構あるみたいなのです。別にパウダーコーナー的なものは、多分、この手洗い設備にくっ付けなくてもいいような感じもしますので、何かそのような建築的な配慮はいろいろあってもいいのかなと思います。手洗いは、やはり衛生の関係もあるし、特に今のこの世の中ですと、何かしらないといけないとは思いますが。この図は洗面器がないと思って見ていましたが、ただ、独立している便房の中に、多機能トイレ等はあるので、そのようなケースもあるかなとは思っています。以上です。
○高田座長 ありがとうございました。ほかに何かありますでしょうか。特によろしいでしょうか。そうしましたら、ここから、もう既に少しトイレの意見等も出ておりますが、トイレの設置基準のあり方について議論を進めてまいりたいと思います。先ほどの資料1-2、今後の検討の進め方についてで項目を5つ挙げております。まず、事務所衛生基準として定める衛生水準のところで、どのようにあるべきかという御意見はありますか。事務局は何かありますか。
○搆主任中央労働衛生専門官 事務局として、特に答えを用意しているわけではありません。資料を提示した意図としては、事務所の衛生基準、特にトイレの設備についてはいろいろな考え方ありましょうが、重要なのは、事務所衛生基準規則で定めるべきものか、個々の事業場で判断すべきものかを見分けることだと思います。つまり、法令で一律に適用され、それを満たさないと法令違反となるような基準と、個々の会社で、従業員それぞれ男性何人、女性何人といて、このような業務形態であることを考慮に入れて導き出した、自分の会社、事業場で求められる水準とは、同じではないはずです。個々の事例の議論も重要ですが、最終的には、法令で書くべき衛生基準として、どのようにあるべきか、それを具体化するとどうなのかということを御議論いただきたいと思った次第です。
○高田座長 そうすると、今、事務所衛生基準規則の第17条に書かれている中で、特に個数など以外の部分ですね。
○搆主任中央労働衛生専門官 そうですね。まずはそもそも男女別に定めるということの原則と例外、これは安心してトイレを使えること。それから、個数については小瀬教授からも学会規格の考え方につき御説明をいただきましたが、基本的な考え方は事務所衛生基準規則でも同じだと思います。職場において混雑せず使えること、これが衛生基準として大事だと思います。そういった内容をどこまで法令として明記すべきかということになります。
○高田座長 ありがとうございます。まず、男性用と女性用に区別するということは、これは大前提としてよろしいでしょうか。明石委員、お願いします。
○明石委員 すみません、男性用と女性用に区別することの大原則は、安全性の担保ですか。
○高田座長 事務局、お願いします。男性用と女性用に区別する、その理由ですね。安全性ということなのかということですが。
○搆主任中央労働衛生専門官 先ほどの議論のとおり法令で明記はされていませんが、安心して使えるということです。強いて言えば、「労働者誰もが」ということでしょうか、誰もが安心して不安なくトイレを使えること。トイレというのは職場にいる以上使わざるを得ないものですから、それを誰もが安心して使えるような状況にあるということが重要で、その中の1つに男女別の原則があるのかと思います。
○高田座長 今のところで何かありますか。では、住徳委員、お願いします。
○住徳委員 今、性的マイノリティなどが非常に話題になっています、障害者の方もそうですが。ただ、多くの企業、中小企業であれ大企業であれ、生物学的な男女差というもので生理現象というものはあり、皆さん、当然のような形で利用される場所ですので、そこはやはり生物学的性差ということで、まず、男女の人数であり、個性に応じたトイレの状況をまず設定することが大原則なのかなと私も考えます。それにプラスして、今の労働者のあり方の変化に対して、どこまで男女差で分けない多目的トイレのようなものを法律の中で認めていくかということが、今回の検討会の1つの目的ではないかと思います。ですので、まず、大原則は男女別としておいて、次に、個室型のトイレをどのように定義していくかと、2段階で検討されてはどうかと思います。
○高田座長 貴重な御意見をありがとうございます。ほかにありますか。個数のほうは何かありますか。先ほどからのお話ですと、女性用が少ないだろうというお話が小瀬教授の御説明の中でもありましたし、男性用の大便器が少ないというお話もありました。あとは、大便器、小便器の個数を合わせるような考え方をしている国もあるということですので、この辺は、少し事務局に情報を調べていただくなどしたほうがよろしいでしょうか。吉武委員、お願いします。
○吉武委員 吉武です。個数については、目安はあったほうがいいと私は思っているのですが、個数の議論よりも、今お話があったように、例えば1番も男女と女性を区別する理由、なぜ区別するのか、個数を設定する理由、そこが重要だと思っております。例えば、個数を設定するのは、先ほどありましたように、混雑しないようにするということなので、そこが明確に分かるようにすることが必要だと思います。
 気になっているのは、6番の洗面ブースの話があったのですが、今、洗面ブースのほうが混雑することもあり、女性のところではパウダーブースと呼ばれていますが、また、今年は特に手洗いの時間が長くなって洗面が混雑などということもあり、特にこのトイレに関してはそこが重要かなと。混雑したり、人が待ったりという不快な状況が起きない、安心・安全というようなことが何か分かるようになっていて、個数は、多分、なくなってしまうと、目安がなくなりますので、小瀬先生方の研究を基に、あったほうがいいとは思いますが、必ずそこがないといけないかどうかは、この後の護論になるかと思います。この法令の中に、理由があれば。
 私も実はトイレプランニング系のことに関わったことがあるのですが、今、作っているトイレに関しては、非常に新しく、すごく配慮されている、先ほどの質問にもありましたが、ゾーニングをすごくやっていますので、余り心配はないのです。ただ、共同の所やまだ古い所、そういった所には、どうしてもまだ法令に合わない所があるかもしれないので、そういった所が、どういった考えに基づいてこのような法令が決まっているかということが分かれば、それに対する配慮もしやすくなるのかなと。法令を守る、数を守ることよりも、趣旨が分かるようにしていただけるといいなということでコメントいたしました。以上です。
○高田座長 ありがとうございます。事務所衛生基準規則により義務付けで守らなければいけないところと、快適職場という観点から配慮していく指針でカバーする部分とがあるかと思うのです。まず最低基準として守らなければいけないところがどこかということを定めた上で、更に盛り込んでいくべきところと分けていかないと、混乱するのではないかと思うのですが、事務局、何かありますか。
○搆主任中央労働衛生専門官 座長が御指摘のとおりです。皆様に御議論いただきながら、その結果を事務所衛生基準規則にどのように反映していくべきかということは、私どもでも考えておきます。先ほどの議論の中で、男女別のトイレが足りない場合があるという点について申しますと、法令基準が少ないために法令を満たしても足りないのか、あるいは個々の事務所において、作業なり人数、仕事の状況によっては足りない場合が生ずる場合があるので、会社の中でしっかり考えないといけないのか、そういう整理をしたほうがいいのかということです。それから、小瀬教授の御指摘の中で、男性用小便器は、場合によっては大便器の中で吸収できること、国外でそういう事例があるというお話がありました。確かに、小規模な事務所において、男性用便房をもって小便器に代えられる事例があると思いますので、法令があまり制約してはいけない部分かも知れません。事務所衛生基準規則が合理的な現場の運用を妨げないようにすることが重要です。一方で、衛生基準の考え方の整理に照らすことも必要で、男性用小便器は、混雑緩和のためですから、100人、200人の事務所でそのような代替をすれば効率が悪くなり混雑してしまうということも考えなければなりません。
 それから、洗面ブースについてですが、事務所衛生基準規則で洗面所についても規定があります。ただし、事務所衛生基準規則として定めるべきは、衛生上必要な手洗い設備を設けるということであって、化粧用の設備や、今年の状況下で言われているように手洗いを念入りにできるための充実した設備までを、法令で義務付けるということはやりすぎではないかと思います。これらが不要ということではなく、個々の事業場で、衛生委員会などで議論して、例えば感染症を出さないために事業場として必要な設備を決めればいいわけです。
○高田座長 洗面設備のことでほかにはありますか。よろしいでしょうか。恐らく感染症対策で重要になってくると思いますので、洗面設備をしっかり付けるということは、守っていかなければならないことだとは思いますので、そこはしっかり残した上で、上乗せ部分をどうしていくかというところ、また別な形でどのように出すかというところになってくるのかと思いますので、よろしくお願いします。
 今、事務所衛生基準規則として定めるべき基準と、あと、それ以外のところの話も併せて、基本的に含むべきところということでもお話を頂いていますが、ほかにこれは基本的に議論しておかなければならないということがありましたら、お願いできればと思います。
○林委員 衛生基準として確認しておくべき事項としては、1つは、換気の話と温度の話も結構重要かと思います。高齢者がだんだん働くようになってきていますので、検討対象としては、そういったことがあるかと思います。
 もう1つは、男女別の件ですが、私はトイレの専門ではないですが、先ほどお話しましたように、誰でも使えるトイレで構成するトイレが新しい姿の可能性はあると思います。独立個室型で、プライバシーとか機能が満たせるのであれば、分ける必要があるのかと、そういう議論は確認する重要なポイントかと思います。
 現在の日本の文化からすると、分けることが必要であるのでしょうが、建物を一度建ててトイレを造ると、相当長期間使うことになりますので、長期的な視点からは、今後男女別について柔軟な考え方が出てきた場合への備えをしておくという考え方はあるかもしれません。
○高田座長 貴重な御指摘ありがとうございます。ほかはありますか。
○明石委員 1点質問と、その後意見を言わせていただきます。先ほどの手洗い設備の件ですが、これは規則を読むと、「流出する清浄な水を十分に供給する手洗い設備」と書いているのですが、備える要件みたいなものは、ただ水が流れる水道を付ければいいのか。これからの議論になったと思いますが、少し感染症予防みたいなところもあるのですけれども。あと、事務所則なので、余りいろいろなものが女性トイレに必要なのかという疑問も少しあります。そこの質問です。
 もう1つは、多機能トイレですが、ハートビル法とかバリアフリー法では、車いすが入ることになっていると思うのですが、今、事業場で問題になっているというか課題の1つは、治療と仕事の両立支援ということです。病気を持った方、治療をしながら仕事をしていただく人の対応として、車いすではないけれども、少し病気を抱えている方がいらっしゃると思うのですが、その辺りについては、バリアフリー法の多機能トイレとの関連性みたいなことは、どの辺りまで考えられているのでしょうか。
○高田座長 事務局から回答をお願いします。
○搆主任中央労働衛生専門官 お答えいたします。まず、手洗い設備の要件については、事務所衛生基準規則の第17条に書かれているとおりで、これ以上の要件はありません。したがって、書かれている「清浄な水」とは、ため水のような不潔な水でなく流れる水道水が準備されていれば、要件は満たします。個々の事業場で感染症対策に対応した設備にするなどの判断は当然あると思います。建設現場の仮設トイレであっても、別の省令で同様の基準が必要ですので、何らかの配管をして、清浄な水が流れるようにしているということです。最近では、建設現場の快適トイレは、発注者側がしっかり資金、条件も整備をして、素晴らしいものを整備しているようですが、あくまで個々の事業場で整備すべき事項であり、法令で義務付けるということとは違います。
 バリアフリー法で普及しつつある多機能トイレを、事務所衛生基準規則ではどのように位置付けるかということについては、現行の事務所衛生基準規則では、男女別でない多機能トイレは便所として取り扱われないということが課題です。通常、当初の法令で想定していないタイプのトイレが出てきたときは、現行の法令に照らして読み込む整理をするのだと思います。車いす使用者用のトイレは、車いすを使用する人をはじめ一定の労働者にとって必須の設備であるわけですから、事務所衛生基準規則における取扱いを明確に整理をする必要があると思います。
 では多機能トイレを増やすべきかということになると、対象が職場であってもその推進は何も労働安全衛生法令に限りません。多機能トイレが治療と仕事の両立にとって役立つことではあっても、法令上義務付けるという議論ではなく、多機能トイレが必要な労働者がいる以上、まずは法令上の便所として位置付けることが先決かと。
 トイレの利用法については、個々の会社で定めるべきものでしょうし、考え方はいろいろあると思います。設備要件として必要不可欠なところの法令整備を最優先にしてということだと思います。
○高田座長 ありがとうございます。多機能トイレの位置付けについて考えなければいけないということでしたが、ほかに、多機能トイレとか、独立個室型のトイレを含めて、事務所衛生基準規則の取扱いについて、御意見は追加でありますか。よろしいですか。
 あと、小規模事務所での設備をどのような要件とすべきかについては、委員から御意見はありますか。小瀬先生、事務所則との兼ね合いも含めて、小規模のところで何か御意見がありましたら、お願いします。
○小瀬教授 事務所衛生基準規則は、全ての事務所に適用になるということになるのですかね。どんなに規模の小さい事務所にも適用になるということであれば、今の解釈で言うと、事業場に男性と女性が居るとすれば、トイレ設備としては最低限、男性の大便所の便房数が1個で、小便所が1個で、女性用が1個あればいいということになるわけですよね。要するに、最低3個あればいいということですが、先ほどの男女別というのは守らなければいけないところではあるのですが、1個1個1個というのは、個人的に言うと何か少しあれですよね。規模の小さい事務所では、実際問題、1個ずつしか設置できないことがあるので、どう書けばいいか分からないけれども、何かしら基準をもう少し上げたいところではありますが、負担も大きく実際には難しいと思うのです。男性は、仮に大便器が小便器を兼ねるという議論とすれば、女性の基準と同じになって、1個だけということもありうるのでしょうか。学会の規格に照らして待ち時間を基準とすると、もう少し多くあったほうがいいという考え方も示せるといいですね。
○高田座長 ありがとうございます。ほかに御意見はありますか。事務局として、これは皆さんに聞いておきたいというところはありますか。お願いします。
○搆主任中央労働衛生専門官 先ほどの小瀬先生の御指摘は、小人数の事務所でもトイレは複数あったほうがいいということなのですかね。
○小瀬教授 この基準に照らせば、そうかとは思うのですが。
○搆主任中央労働衛生専門官 小規模な事務所では、トイレ設備の充実は困難を伴うように思いますが、1つで必ずしも困っているかどうかは、事務所という状況に限定して考えることも重要です。仮に公共の場所ですと、例えば駅のトイレとかだと、これは1個しかないということになれば、塞がっていたら非常に困ることになるのですね。一方で、事務所の場合は、不特定多数ではなくお互いの動きが分かる場合もありますので、労働者数人の事務所があって、トイレが1個の場合だと、トイレは塞がっていることが分かりますし、どういう時間帯にどのように塞がりいつ空くか、大体予想がつく場合もあるのかと。
 学会の規格は、事務所、工場、学校、劇場などさまざまなものがありますが、図の考え方、元の型紙は共通で、横の物差しすなわち利用者数をアレンジしているのだと思います。公共の一般的なトイレの物差しと事務所の物差しは、到達率、到達人数が違いますが、元の型紙が同じだとすると、小規模な事務所における実際の運用はやや異なってきませんか。お互いにトイレを使う関係が分かっていれば譲り合う場合もあるでしょうし、実際はそれほど混雑が問題にならない場合もあるのかとは思っています。一方で、小規模な事務所などで、独立個室の場合には、男女別の原則の例外があれば現実的で効率的な場合もあるかもしれません。男女別でないトイレを原則とすることはないとしても、ごく少人数の場合に例外的な運用ができないものかというのは、我々事務局としても関心事ではあります。
○高田座長 林委員、お願いします。
○林委員 小規模は結構重要なポイントだと思うのです。小規模事務所では、独立個室型のトイレを柔軟に使うという形が成立すれば、ゆくゆくは、男女別でなくてもよいトイレが広まる可能性はあります。もちろん、そうでない形もあると思いますが。そういう意味では、誰でも使えるトイレの機能を明確にすることは有意義ではないかと思います。
○高田座長 事務局、お願いします。
○搆主任中央労働衛生専門官 林委員に確認したいのですが、そうしますと、男女別の原則があって、今の基本的な基準、骨格は現行どおりとしても、オプションとして、それ以外のトイレという考え方も設けられ、それはどう位置付けかを明確にすることで、小規模な事務所では弾力的な運用も可能だという、このような整理をすればよろしいでしょうか。
○林委員 そうですね、男女別の原則のもとではそういう形になると思います。場合によっては、これは多くの方の意見を伺わないといけないですが、独立個室の機能がある場合は、男女別であることを条件から外すということもなくはないと思います。結果として、LGBTの方が抵抗なくトイレを使えるようなことになればという思いもあります。慎重な議論が必要ではありますが、将来に向けては少しずつ議論をしてもよいかと。。
○高田座長 今、林委員から御提案がありましたが、ほかの委員からいかがですか。よろしいですか。結局、小規模事業場ということで何らかの別の配慮をするといっても、やはり、そこにも根拠が必要になってくるのではないかと思います。その辺り、ほかに何かデータとかがあるようでしたら少し見ていただくとか、そういうことが必要なのではないかと思います。何もデータがない、根拠がないまま、小規模だからということでこれを変えることは難しいのではないかと思いますので、その点を御検討いただきたいと思います。ほかにありますか。では、住徳委員、お願いします。
○住徳委員 今のことにも関連して、前回のときにILOの基準があってというお話があったかと思うのですが、こういったトイレの数の規定とか、そういったものも影響を受けることがあるのでしょうか。
○高田座長 事務局、お願いします。
○搆主任中央労働衛生専門官 御指摘の件は、ILOの商業及び事務所の基準で第120号条約と勧告のことだと思いますが、これは古いもので1964年のものです。男女別の原則であるとか、不潔にしないこととか、手洗い場所を設けるようなことは入っていたと思います。基本事項は定められていて、今の事務所衛生基準規則、労働安全衛生規則は、これに適合しています。
 したがって、先ほどの全体の議論で、男女別の原則の下に、それ以外の例外的な運用を、少なくとも事業場単位で取り組もうとしたときに、この法令で排除しない方法はないのかというところであれば、それは可能と思います。アメリカ合衆国の労働関係の法令では、男女別などの原則に従った上で、様々なタイプのトイレを示して弾力的に対応できる事例を、ベストプラクティスとして示していると聞いています。
 だから、全体を引っくり返す議論は難しいでしょうが、少なくとも先ほど言われていた議論で、男女別はこういう趣旨で、なぜ必要か、あるいは人数配分はどういうことで、どういう理由で必要か、これらを明示することによって、逆にその趣旨に従えば、例外としてはこういうことはできるのではないかというのも、おのずと出てくるのかと思っております。
○高田座長 ありがとうございます。あと、性的マイノリティのことに関して、冨高委員、何か追加とかはありますか。
○冨高委員 いろいろなものを複合的に検討する必要を考えると、次回以降、関連する調査データを出していただいて、それに基づいて検討するのが望ましいのかと考えております。
○高田座長 大体、便所関係は御意見が出尽くしたかと思いますが、事務局もこれでよろしいでしょうか。それで、あと数分ほど時間がありますので、考え方を皆様に確認をしておきたいというところがあります。男女別の考え方とか、性的マイノリティの方への配慮は、休養室にも該当する点が出てくると思いますが、それもトイレ設備と同じような考え方を基本としていってよろしいかどうかというところで、何か御意見がありましたらお願いしたいと思います。よろしいですか。また、次回以降、お話が出てくると思いますが、事務局、何か追加はありますか。よろしいですか。
 本日、予定している議題は以上ですが、最後にその他、御発言がありましたらお願いできればと思います。よろしいですか。そうしましたら、本日の議論はここまでとします。次回は、トイレ設備の基準について本日の議論を踏まえて整理したものを事務局に準備していただくとともに、他の論点についても議論していきたいと思います。それでは、進行を事務局にお返しします。
○矢吹有害作業環境指導係長 次回、第3回検討会については、後日、日程を調整させていただき、改めて日時を御連絡いたします。以上をもちまして、第2回事務所衛生基準のあり方に関する検討会を終了いたします。ありがとうございました。