第90回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会議事録

 

 
第90回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会(議事録)
 
1.日時 令和2年10月19日(月) 13:00~13:55
 
2.場所 AP新橋 会議室Dルーム(一部オンライン会議会場)
(東京都港区新橋1-12-9 A-PLACE 4階)

3.出席委員
(公益代表委員)
○東京大学大学院法学政治学研究科教授 荒木 尚志
○名古屋大学大学院法学研究科教授  中野 妙子
○大阪大学大学院高等司法研究科教授  水島 郁子
○慶應義塾大学大学院法務研究科教授    森戸英幸

(労働者代表委員)
○全日本海員組合奨学金制度運営管理部長代理  楠 博志
○日本化学エネルギー産業労働組合連合会副会長 安原 三紀子
○全国建設労働組合総連合労働対策部長  田久 悟
○UAゼンセン政策・労働条件局部長  髙橋 義和
○日本労働組合総連合会総合政策推進局長 仁平 章
  
(使用者代表委員)
○日本通運株式会社 人財戦略部専任部長 北 隆司
○セコム株式会社人事部主務 久保田 祥子
○一般社団法人 日本経済団体連合会労働法制本部長 鈴木 重也
○東京海上ホールディングス株式会社人事部ウエルネス推進チーム専門部長 砂原 和仁
○鹿島建設株式会社安全環境部部長 本多 敦郎
○日本製鉄株式会社人事労政部部長  山内 幸治


4.議題
(1)  特別加入制度の見直しに係る関係団体からのヒアリング
(2)  賃金構造基本調査に係る省令案要綱

 
5.議 事

○荒木部会長 定刻ですので、第90回労災保険部会を開催いたします。本日の部会は会場からの参加及びオンラインでの参加と併せて実施いたします。なお、委員の出欠状況ですが、大前委員、黒島委員、宮智委員が欠席と承っております。出席者は現在15名ですが、公益代表、労働者代表、使用者代表、それぞれ3分の1以上の出席がございますので定足数は満たされていることを御報告いたします。では、カメラ撮りはここまでということでお願いいたします。

 第1の議題は、「特別加入制度の見直しに係る関係団体からのヒアリクング」になります。本日は、日本アニメーター・演出協会の代表理事の入江泰浩様、それから事務局長の大坪英之様にご足労いただいております。御協力ありがとうございます。それでは早速ですが、日本アニメーター・演出協会の入江代表理事より御説明をお願いいたします。

○入江代表理事 ただいま御紹介に与りました日本アニメーター・演出協会(JAniCA)の代表理事を務めております入江泰浩です。本日は労災保険の特別加入に関して、アニメーターをそれに含めていただけるという、要望を聞いていただける場を設けていただいて、とても感謝しております。今回の件に関して提出しております資料がありますので、それに関して御質問等々いただければと考えております。お手元の資料「アニメーター・演出協会提出資料」というものです。こちらのJAniCAの活動内容であるとか、あとは今回行いました調査等の資料です。こちらのほうをもとに、どういった状況がアニメーターの中に起きているのか、けが等が起こっているのかということを御説明できればと思っております。こちらの資料の何枚かをめくっていただくと、「ケガや事故」に関する調査報告書というものがあります。アニメ制作者の「ケガや事故」に関する調査報告書は、今回の調査のグラフ等です。めくっていただきますと、3ページ目に、私自身もアニメーターをしておりますが、そこで起きているけが等の実態と大きく差のない肌感覚として、大体周りでも、こういう形で、目や腕、腰等という部分のけが等が多く、身体的な仕事にかかわる問題が起きているものと齟齬のない結果が出ていると感じております。

 早速ですが、こちらの資料の中で、何か疑問点や御質問等がございましたら御質問いただければと思っております。よろしくお願いします。

○荒木部会長 御説明は以上でよろしゅうございますか。

○入江代表理事 事務局長の大坪のほうから、若干、詳細にお伝えできればと思っております。

○大坪事務局長 事務局長の大坪と申します。よろしくお願いします。まず我々、日本アニメーター・演出協会ですが、約1,000名強ぐらいのアニメーターが加入している団体となります。アニメーターの方々の約7割強ぐらいの方がフリーランス、あるいは自由業という形で仕事をされています。その中で、基本的にはスタジオに詰めてとか、自宅でお仕事をされていますので肉体的に危険という仕事ではないのですが、先ほど入江から話がありましたが、腕や目、腰あるいは精神というところで、ストレスの大きい仕事というのは御理解いただけるかと思います。細かい話に関しては、お手元の資料を見ていただいたほうが分かるかと思いますので、割愛させていただきます。私からは以上です。

○荒木部会長 ありがとうございました。それでは、各委員から何か御質問があれば、お伺いしたいと思いますがいかがでしょうか。田久委員お願いいたします。

○田久委員 少し資料を見まして、民間保険に加入をされている方が一番多くなっていると思いますが、民間保険といっても様々あると思います。その部分でどの辺が金額的など、傷害保険が意外と少なくて、生命保険、終身保険が多くなっていますが、これ自体だと仕事のけがや事故に関しては、生命保険というのは補償されないのが普通だと思いますが、やはり、そういった認識というのは、アニメーターの方々の中にはないのかどうか、認識が薄いのかなというのがあるのですが、その辺は実態として、感じ方としてでよろしいのですが、どのような感じかを教えていただければと思います。

○入江代表理事 御質問ありがとうございます。保険の加入に関して、アニメーターはデスクワークであり、屋内で絵を描くという仕事がほぼ100%になりますので、何か事故であるとか、そういったものに巻き込まれる、若しくは仕事中に何か命に関わる事故やけがに巻き込まれることは、ほぼないと認識して仕事をしております。

 そのような形で、ただ、家族がいたりするときに生命保険であるとか、風邪などは引きますので、そういったときの保険は加入していると、そのような感覚で保険を選んでいることは多くあると思います。ですが、腱鞘炎や目というのは、アニメーターであれば仕方ない、そのようになるという感覚がここ20年、30年、昔は当然のことと感じていたのですが、でも、それは、昨今の考え方として腱鞘炎になったら仕事ができなくなるから、それはまずいのではないかという意識が、若干、変わりつつあるのが現状だと把握しております。

○大坪事務局長 すみません。もう一点、補足してよろしいですか。先ほど、仕事の業務中ということに関しては、今のようなお話かと思います。他方で、4ページ目に、発生した結果があり、デスクワークの方でもよく発生するとは思いますが、通勤途中、退勤のタイミングですよね。そういったことに関しては、けがや事故が発生する可能性があるのですが、そういったことに関しては、正直、無頓着といっていいかと思います。通勤途中の災害というものは、雇用されている方に関しては認識されているとは思いますが、フリーランスの方の場合は、移動のときに関して仕事という認識はとても薄いというのが、アニメ業界の特殊な点だと思います。

○荒木部会長 ありがとうございました。ほかにはいかがでしょうか。鈴木委員。

○鈴木委員 本日はどうもありがとうございました。2点ほど質問です。9ページの資料の棒グラフの②に「自分の働き方に合ういい保険がないから」という回答が、数は少ないのですが、あります。これはどのようなことで合わないという回答になっているのか、お分かりのところがあれば、お聞かせいただきたいと思います。

 もう一点は、1314ページの調査報告書に「多次元尺度構成表」とありますが、これはどのような結果を示しているものか御説明いただけると有り難いと思います。

○入江代表理事 御質問ありがとうございます。まず、1点目の資料9ページの「自分の働き方に合ういい保険がないから」という、その部分に関しての疑問です。働き方に合ういい保険というのは、主に保険料に関することかと思っております。いろいろな保険があり、いろいろな金額がありますが、やはり、特にフリーランスのアニメーターにとって、保険料を毎月支払っていく、そして何か、けががあったときの、補償がより手厚い保険は、保険料自体も高くなってくると思いますので、この金額は払えないけれども、でも、このぐらいのカバーができる、カバーしてもらえる保険はどこかにないか、その調べる手段はどのようなものなのかというところで止まっているのが現状だと感じております。

○大坪事務局長 引き続き大坪から御説明いたします。1314ページの「共起ネットワーク」や「多次元尺度構成表」の説明ですが、自由記述で書かれている項目から同一の文の中で出てくる頻度の高い言葉をグループ化しているものが13ページになります。色があって、小さい輪があったり、大きい輪があったりすると思いますが、大きい輪が出現頻度です。同じ色は比較的近い言葉の中に出てきますので、文の中で関連性が高いと考えていただければと思います。

 こうやって見たときに、13ページの図を見ていただくと、上のオレンジだと仕事の人数や状況に着目して話題を展開する人がいる。真ん中だとスタジオや仕事内容、今回の件は事故という形で聞いていますのでそういったところになります。また、スケジュールが影響してきますので、スケジュールや仕事内容というのが、保険や事故などにつながってくるというものを見るものになります。ですので、左下にいくと、やはり長時間労働が影響してくるというような語句の集まりを見ていただきます。このように見ていただくと、何となく関連性と言っては変ですが、話題がどのように展開されているのか、人間形成の意識としてどうなのかというのは分かるかと思います。

 他方で、14ページを見ていただくと、これは出現頻度に関して線でつないでいます。言葉の問題だと思いますが、「思う」という言葉をどうしても自然言語で使ってしまいますので、「思う」という言葉がとても多く出てくるのですが、実際に、文章の展開上のつながりを見たときに、実は今回、回答していただいた内容を見ると、やはり、予算や減る・減らすという仕事の負荷だとは思いますが、そういったことが事故や災害に関して中心の話題であるのがここから見てとれます。ですので、13ページのものは、人間形成の感覚・感触を意識するもので、14ページのものは、実際にその数値で話題の中心を見たものと認識していただければ良いかなと思います。

 すみません。もう一点よろしいですか。一番最初の説明の中で少し外れてしまったのですが、アニメ業界の皆さんの状況のところで、アニメ業界に関わる方々、あるいは、我々ですとアニメーターと呼んでいる方々の全体像というのは、お恥ずかしい話なのですが、未だに分かりません。ほかの団体もないものですから、日本国内でアニメ業界、皆さんも、多分、ニュースなどで拝見するとは思いますが、どの程度の産業規模があり、どれぐらいの方がお仕事をされてというのは、皆さんの近くでは、産業単位の中では分かるかと思いますが、アニメ業界は分かりません。

 ただ、分からないと言っても、漠然と5,000人以上10,000人以下ぐらいだろうと考えております。その中で我々JAniCAという団体は、大体、1,000名強ぐらいが加盟しており、人数は増やしたいと思っております。今回の調査に関しては、1週間という時間の中で行いましたので、どこまでできたかは難しく、保険に関して、このような事故に関して興味のある方に回答していただいたというのが全体的な話だと思います。

 それとは別に、我々の産業として約5年ごとに調査を行っており、追加資料になってしまいますが「アニメーション製作者実態調査2019」という表裏1枚のものがあると思います。まず、縦のグラフを見ていただきますと、皆さんの場合は、余り収入に興味がないとは思いますが、下のほうの平均年齢や勤続年数を見ていただきたいのですが、横軸が職種に分かれています。皆さんには馴染のない言葉かもしれませんが、多種な業種に分かれており、このような人たちに、今回、回答していただきました。それぞれの業種の人たちの年齢がその下に書いてあります。例えば、働き盛りの40歳ぐらいの方もいらっしゃれば、20歳代の方もいらっしゃるという形です。

 やはり若い方は年収も低くなる。もちろん、勤続年数も低くなるのは当たり前かと思います。では、実際、どれぐらいの人数がいるかは分からないと思いますが、その裏側を見ていただくと、これは、それぞれの職種で、どれぐらいの契約形態の方がいらっしゃるかという内訳ではありますが、右側を見ていただくと、大体の人数が出てくる合計欄がありますので、大体、これぐらいの割合で分布しているのだろうというように見ていただければと思います。そうやって見ていただくと、原画さんが73名、監督・演出が多いという形で数が分かってきます。大体、400件ぐらいの回答を頂いていますので、これぐらいの人数比率だというのは分かるかと思います。

 またお戻りいただき、そうやって見たときに、フリーランスの方たちの動画や、あるいは第二原画といわれる方々が27歳や39歳ということで若く、監督というと年齢が高いイメージがあると思いますが、監督でも平均年齢が44歳ということで、多少、若めな業界なのかなと思います。全体像の話をしなくて申し訳ありませんが補足させていただきました。以上です。

○荒木部会長 ありがとうございました。仁平委員どうぞ。

○仁平委員 御説明ありがとうございました。何点か質問いたします。1つは、団体の構成員についてです。資料の2ページでの会員等々のところで、正会員1,160人とありますが、これは無料正会員も合わせて1,160人という理解でよろしいのでしょうか。

○大坪事務局長 はい、そのとおりです。

○仁平委員 ありがとうございます。あと、先ほど7割ぐらいがフリーランスや自営業とおっしゃっていたと思いますが、JAniCAの正会員の中では、労災適用となる労働者の方とフリーランスや自営の方はどれぐらいの比率でいるのでしょうか。先のご説明同様に、フリーランス・自営の方が7割程度という理解で良いのでしょうか。

○大坪事務局長 まず、JAniCAの正会員と無料正会員の比率からですが、無料正会員が約800名程度、有料正会員が200強程度と御理解いただければと思います。

○仁平委員 その中には、正社員、契約社員の方もいるし、フリーランス、自営の方も含まれているということですか。

○大坪事務局長 ほぼ、そのような形になるかと思います。

○仁平委員 分かりました。あと、定義についてですが、「フリーランス」と「自営業」の違いを教えて下さい。基本的なことで申し訳ありませんが。

○大坪事務局長 それに関しては、実態調査の調査票に書いてあるものですから分かりにくくて申し訳ありません。まず、フリーランスというのが、自分で部屋を持たないというと変ですが、仕事場に出向いてお仕事をする。勤務先に机があって、そこでお仕事をする人をフリーランスという定義にしています。

 他方で、自営業とは何かというと、自分の家や共同のスタジオ、作画の部屋みたいなものを借りて一緒にお仕事をしている人です。どちらかというと、人に来てもらうか、自分がそこに居ついているみたいな形で、わざと分けています。雇用条件上であれば、フリーランスというのは自営業者、事業者の開業届を出している人ということで分かりやすいとは思いますが、それに馴染がないものですから、フリーランスと自営業者という形で分けていますというのが前提にあります。その上で合算すると、7割ぐらいだと。皆さんに分かりやすい言葉で言うと、自営業の方が7割ぐらいというような表現をしています。

○仁平委員 理解が進みます。

○大坪事務局長 申し訳ないです。

○仁平委員 その後に、「ケガや事故に関する調査」の対象は、特に、フリーランスや自営の方に対しての調査という理解で良いでしょうか。正社員や契約社員は、たぶん労災保険に入られていると思うので、それ以外の方を対象として、このアンケート調査を取ったのだということでしょうか。

○大坪事務局長 そういった意味では、実は、そこは区分けをしておりません。なぜかというと、「ケガ」に関しては、正社員であっても発生するものです。それが補償されるかどうかは別の話だと思います。だから、発生するかどうかを調べるというのが今回の調査になりますので、御質問の件に関していうと、前段で分けていますかという話ですね。回答者としてフリーランスの方に絞ったというわけではないということは御理解いただければと思います。

○仁平委員 では、この調査は労働者も含まれていると見たらいいということですね。

○大坪事務局長 アニメ産業で起こっているものと御理解いただければと思います。

○仁平委員 分かりました。その上で、あと2点です。現場の御希望をお聞きしたいと思っておりますけれども、特別加入の制度が用意されれば、アニメーターの方にも加入を希望するニーズがあるのだという理解でいいのかということが質問の1つ目です。

 もう1つは、特別加入をする場合、特別加入団体が必要ですが、御協会が受皿になるという想定で良いのかどうかの2点を質問させてください。

○入江代表理事 御質問ありがとうございます。まず、ニーズに関しては、これは10年以上前、若しくは2030年前のところから、けがとして腱鞘炎とか目に関することというのがアニメーターの中で面々と続き、発生し続けていて、それに対して、何か補償というようなものがあればいいという声はずっとありました。ただ、それはないものだろうなという感覚でずっときていたのが現状ですけれども、ただ、やはり必要である、何かあったときに、例えば腱鞘炎になったら、そもそも絵を描けなくなりますから、その時点で収入が翌月から請求するものが何もなくなるというところで必要だと、何か欲しいというニーズは、ここ数年で、ものすごく高まってきております。あるのであれば、是非、加入したい、使いたいという声は多く聞いております。

 加入団体に関しては、加入の受皿になる団体としては、JAniCAが受皿として、いろいろな人から、例えば腱鞘炎になったとして、では、診断書を基にそのような手続といった何かパターンがあると思いますので、それに準じて、その受皿として運営していければと考えております。

○仁平委員 もう一点追加で質問させていただきます。先ほどの9ページの資料を見ると、「保険料の負担をしたくない」あるいは「保険をかける余裕がない」という御意見もあります。特別加入制度の場合も、基本は御本人負担ということだと思いますが、負担があることも含めてニーズはある、ということで受け止めてよろしいでしょうか。

○入江代表理事 あくまで個人のお金で、その保険料を支払うというもので、受け止めていただいて大丈夫だと思います。

○仁平委員 ありがとうございます。

○荒木部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

○楠委員 質問をしたいと思います。アニメ制作者の「ケガや事故」という調査報告書について、けがや事故以外に、病気に対する調査はされているのでしょうか。例えば6ページを見ますと、内的要因というか、疲労や過労、睡眠不足、長時間労働といったものが、かなり多いことがわかります。こういったものを原因として発生する疾病、最近言われております脳・心臓疾患あるいは精神疾患につながる要因というか、病因ではないかと思いますが、これらが業務による病気としての「直接的な因果関係」か否かといったところまでは調査はされていないのでしょうか。

○大坪事務局長 今の御質問については、「していません」というのが答えになります。業界側のほうの構造的なものもあるかと思いますが、アニメ業界の中でお仕事をしなくなるとか、あるいは体調が悪くなったときに仕事ができなくなるというのは、御本人は分かるのですが、他からは観測できない状況になっています。例えば、体調が不良です、お仕事を受けなくなったら、上がりがない。クレジットが見当たらない。クレジットに記載の名前がないということは、間接的には分かるのですが、本人が能動的に仕事を絞っているのか、ほかの仕事をしていて仕事を絞っているのか、疾病などにより仕事ができなくなってしまったのかが判別できないということもありまして、調査の方法が非常に難しいというのがあります。

 一方で、これは、皆さんというか、我々全員そうだと思いますが、健康に対しての意識が薄弱というか、その意識が薄いのですね。そういった意味で、我々JAniCAとして行っているもので、前段のほうの健康診断を推進しているぐらいなので、こういった業務上の災害あるいは疾病に関しての調査というのは、未踏領域だというように御理解いただければいいかと思います。

○入江代表理事 若干補足しますと、例えば、けがや腱鞘炎だと、まだその後もアニメーターとしての仕事を続けたい、腱鞘炎が治ったら続けたいという意思があるので、このアンケートの調査に応じてくれるというのがあるのですが、ただ、病気なので完全に仕事を廃業するというようになると、もう自分はアニメーターではないということで、なかなか調査の手の届かない、自分は対象外ではないというような意識になってしまって、あとは病気になって実家に帰ってしまったというようになると、ほかのアニメーターの仲間からも、こういう調査をやっていることの声を掛けにくくもなりますし、そういう情報が伝わりにくくなってしまうということがあるので、病気やけがなどで、過去にアニメーターだった人に遡って、どのような実態があったのかということの調査は少し難しいと感じております。今現在は入院しているとか、病気になっているけれども病気が治ったらという人たちには届くのですが、そのような部分で難しい調査になりそうだなということもあって、現状は、まだ行えていないということです。ただ、けがに関しては、今回、労災の特別加入という機会がありましたので、それに伴って調査をしたところ、こういう結果が出たという、まだ調査としては、けがにせよ、病気にせよ、第一歩目であるということが業界の実情です。

○楠委員 重ねてお聞きしますが、これは労働者災害補償保険です。もし、災害があった場合、病気になった場合、どう自分の生活を保障していくのか、勤め人であれば会社がどう補償するのかになります。特別加入ですので、自分自身がどう備えるかという保険だと思います。ですから、現役で働かれている者で、そういう御心配があるとすれば、そのために掛けておくべきものではないかと私は思っております。以上です。

○入江代表理事 ありがとうございます。会社の補償、個人の保障に関して、会社側が何かそういうのを補償するというのがアニメ業界においては、ほぼないと個人的に感じております。個人の保障に関しても、何かそのような問題があった場合は仕事を続けられなくなるけれども、そういうことが自分の身に起こらなければいいなという、とても大人としてはどうなのか、社会人としてはどうなのかと、恥ずかしながらそのような意識というのがずっと続いてきたというのが現状です。その意識というものが、やはり駄目なのではないか、まずいのではないかというのが、ここ数年でアニメーターの中で問題意識として、意識を変えていかなければいけないという機運が高まってきているという段階かと思っております。

○楠委員 労働者災害補償保険ですので、基本的には会社がそこで働く労働者に対する補償として行う保険制度だと思っております。大変失礼かもしれませんけれども、その枠の外にある個人経営者等、そういった方を特別に加入させるという制度が、この制度では特別加入制度だと思っていますし、そういった位置付けからすると、自ら加入を申し出て、掛金を納め、被災した場合に補償を受けるというのが、この特別加入制度だと思っております。その点については、現役で働かれている者が、そういったほうに向けてより前向きに検討していくべきではないかと思っております。以上です。

○入江代表理事 おっしゃることは、正にそのとおりだと思います。自分の身は自分で守る。自分の補償をするためにちゃんと自分でお金を支払って、何かあったときのために備えておくという意識というのは、JAniCAとしても業界内のアニメーターに対してどんどん啓発していければと思っております。そして、そういうような思いを抱いているアニメーターが、近年増えているということは感じております。ありがとうございます。

○荒木部会長 ほかにいかがでしょうか。

○田久委員 いろいろな他の人の質問を聞きながら、少し感じている点と質問ですが、1つは、フリーランス、自営業の中でちょっと気になるのは、フリーランスと言われて思っている人たちの中に労働者性が高い人が多いという認識はあります。ですから、やはりその辺も業界の所で一つ認識は変えるような取組というのは是非してもらったほうが、先ほど言った「会社が負担するのは当たり前」というのはそのとおりだと思いますので、自己負担ではなく、まず労働者であればそういったところをきちんとするものも必要ですし、実際、この掛金が払えるかなという疑問も含めて、第二原画の人とか、動画の人で言うと、年収120万台というと生活保護者レベルだという認識でありますから、ダブルワークをしない限りは無理だという認識も含めて持っていますので、やはり、ここの全体も含めて、業界を挙げてやっていくという必要性もあって、その1つに、保障はしっかりできるから、一緒にやろうよと、こういうことはできるのかなと、是非そういうところは進めていただきたいと思います。

 私自身は建設なので、建設で言うと、「けがと弁当は手前持ち」というのは、もう、何十年も前に言われてきたことが、実際アニメーション業界は、今、そうではないのかなと、かなり劣悪な状況だということを改めて認識させていただきました。打開するには労災保険だけでは無理だということも含めて、ここでは。でも、その部分で、1つでも救済ができるような、先ほど言われたように腱鞘炎などで、今後、仕事ができなくなるというような保障の関係でいくと、民間の保障には全くそういうのはないのです。年金という形になると、やはり公的年金のこういった保険制度になりますから、そこを導入していって、やはり働いていく以上、続けていける体制、何かあっても大丈夫な体制づくりというのが重要だというのは認識しましたので、是非、そこのところでは業界を挙げて、先ほど仁平委員も言われたように、加入団体としてアニメーション団体が中心になって、今後はそういった安全対策の部分というものも含め、働き方も含めて、ストレスがたまる、寝不足というのは、これは完全に、今で言う働き方改革に直結するので、そういったことも含めた安全対策が求められて、それを広げていくことが必要になってきますので、そういったことを是非と思いながら、私自身は、そういった感想というか、何十年前の建設を見ているような状況かなというのが分かりました。ありがとうございました。

○入江代表理事 ありがとうございます。今、お話いただいたフリーランスの中に労働性の高い者がいる。その比率というのは実際、とても高いと思います。そういう人たちは本来であれば、会社の正規社員として雇用されて働くべきである。ただ、実際はそうなっていないという問題が多くあり、現在でもそれが続いています。ただ、近年のところで、そういう状況ではアニメーターを集めることが難しくなっているということになっていて、会社の中には、そういった社会保障の部分も会社が面倒を見ますということを、人を集めるときの募集要項の中にきちんと含めているという会社が、ここ近年増えていると感じています。会社側も人を集めないことにはアニメーションを作ることができませんので、1020年前と同じ作り方では作れないと会社側も気付き始めている。ただ、そういうようなのではなく、といっても作れているので、今までどおりということを続けようとしている所も多くある。ですので、ちゃんと人を集めるためにはそのような保障ということをやり、社員として正規に雇用するというほうに舵を取っていかないといけないということは、JAniCAとしてもどんどんアピールしていければと思っております。

 また、先ほどありました第二原画及び動画マンの年収が100万円ちょっとであるという部分で、この部分の問題として、先ほどダブルワークをしなければ暮らせないのではというのがあるのですが、第二原画や動画の大きな致命的な問題として、ダブルワークをする時間がまずないということがあります。年収はとても低く、1か月に書ける枚数というのも少なくなっていて、単価でやっているということがあるのですが、そこに掛かる時間、例えば、1か月に500枚の絵を描くのに掛かる時間というのは、毎日8時間以上働いて、ようやくたどりつけるかなというところなので、アニメーター以外の仕事をやりながらやる時間がそもそもないのが、動画マンとか、第二原画とかという形になっているので、それは実家の仕送りとかに支えられていないと、20代前半のそういった動画の人たちが仕事を続けるということが難しいというのは、この部分は全く改善されていないまま、30年前からずっと問題として続いていることがあって、30年前とかであれば、まだアニメーションの絵自体の線の数はとても少なくて、1枚を描くのにそれほど時間が掛からなかったというのがありますが、近年はとても線が多く、密度の高い絵を描かないといけない。1枚描くのに1時間掛かっても、1200円であれば、時給にすると200円という形になって、もっと掛かる場合もあったりすることもありますので、動画の人が国内でちゃんと暮らせる状況というのは、会社のほうから、月々の枚数ではなく固定として、このくらいの金額でということをやっている会社に関わっている人は、ある程度暮らすことは可能だけれども、それでも余裕のあるところではない。

 そういうような所ではなく、仕事を受けている人は、かなり他の仕事を並行でやることが難しい状況になっています。そのような状況になっておりますので、動画や二原の人たちが、ちゃんと安定して暮らせるような業界にしていかないと、そもそも社会保障が幾らあっても足りないという形になるので、社会保障というのは、万が一のときのためにということであって、もう、体がぶっ壊れることを前提の業界みたいなのであれば、それは社会保障ではとても賄いきれない。先ほどおっしゃられました社会保障以外のところでも解決していかないといけないというのは正にそのとおりです。それはアニメーションを今後も作り続けていくために、これではもう駄目なのだと、変えないといけないのだというのは、これまでもJAniCAとしてアピールしてきましたし、いろいろな人、会社に対して、会うごとに訴えてきておりましたので、今後も更に切実な問題として、そうしないと、あなたの会社は作れなくなってしまいますよということをアピールしていかないといけないし、していきたいと思っております。長くなりまして、申し訳ありません。よろしくお願いします。

○荒木部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。オンラインで参加の委員から何かありましたら承りますけれども、よろしいでしょうか。ほかに特に御質問、御意見等はよろしいでしょうか。それでは、ヒアリングは以上としたいと思います。入江代表理事、大坪事務局長には、大変お忙しい中、御協力いただきまして、誠にありがとうございました。

○入江代表理事 こちらこそ、こういった場を設けていただき、とても感謝しております。社会保障というのは、これまでアニメーターの中にそういう発想、思考自体がなかったというようなことを経て、今、業界内に必要だと感じ始めております。その第一歩目になっていると思っておりますので、良い方向、良い形に進んでいければと思いますし、業界自体もそういう方向に進めていくよう、これからも頑張っていきたいと思います。本日は、どうもありがとうございました。

○荒木部会長 貴重な御意見、どうもありがとうございました。

(入江代表理事退室)

○荒木部会長 それでは、次の議題に移ります。「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱」についてです。事務局より説明をお願いします。

○労災管理課長 資料2になります。1枚めくっていただき、A4の横紙が入っているかと思います。こちらで御説明させていただきます。労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案ということを御提案させていただきたいと思います。

 改正の趣旨ですが、令和2331日に公表されました「令和元年賃金構造基本統計調査」について、同一事業所からの回答を重複して集計していたということがありまして、今般、数値の訂正が行われたところです。これについては、前回の審議会で御報告させていただきました。

 これによりまして、今年8月から来年731日までの間に支給すべき事由が生じた労災保険法の規定による労災保険給付額に用いる給付日額の最低・最高限度額について、最低限度額が3539歳、5559歳の年齢階層で3円引き下がり、逆に、最高限度額については、3539歳、5559歳の年齢階層で3円引き上がることになっております。これについては、今年930日に告示をし、101日に適用しております。

 これを踏まえて、今年8月以降に支給すべき事由が生じた労災保険給付について、年齢階層別の最高限度額が低くなっていたということがありますので、過少給付等になっていた方に対して、差額に相当する分等を追加給付として支給することとしております。

 今般、この支給額の算定方法を記載いたしますとともに、当該追加給付を、仮に追加給付があったとしても、それ自体がメリット収支率の算定に反映するということがないようにするために、施行規則の改正ということを提案させていただくものです。

 具体的には、2番の「改正の内容」にありますとおり、追加給付の支給に関して、労災保険法施行規則の省令の附則の2条の規定を準用するとともに、徴収則18条などの規定による特例について、第12条第3項又は第20条第1項のメリット収支率の算定に、反映させないという改正をお願いしたいと考えております。施行期日は、下にありますとおり、令和211月上旬を予定しており、施行期日は公布の日とさせていただければと考えております。説明は以上でございます。

○荒木部会長 ただいま説明がありました件は諮問案件ということになります。今の説明について、何か御質問、御意見があればお願いいたします。特に何か御意見等はありませんか。

 統計の過誤について支給額が引き上がる部分をメリット収支率に反映させないという、穏当な提案ではないかと思いますが、特段の御意見、御異論がないと承ってよろしいでしょうか。それでは、諮問のあった件については、当部会としては妥当と認め、労働条件分科会長宛てに報告をすることとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

○荒木部会長 ありがとうございました。それでは、そのように進めさせていただきます。労働政策審議会例第7条第7項により部会の議決をもって分科会の議決とすることができ、同例第6条第7項により、分科会の議決をもって審議会の議決とすることができると定められております。また、労働条件分科会運営規程第7条におきまして、当部会の議決をもって分科会の議決とするということになっており、労働政策審議会運営規程第9条におきまして、分科会の議決をもって審議会の議決とすることとなっております。したがって、当部会の議決が審議会の議決ということになります。

 それでは、事務局に答申案を用意してもらっておりますので、会場の委員にはお配りし、オンライン参加の皆様には読み上げということで、御確認いただきたいと思います。それでは、事務局より読み上げをお願いします。

○労災管理課長 今、お手元にお配りさせていただきました3枚紙の一番後ろのものを読み上げさせていただきます。

 令和21019日、労働条件分科会分科会長荒木尚志殿 労災保険部会部会長荒木尚志 「労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令案要綱」について 令和21019日付け厚生労働省発基10191号をもって労働政策審議会に諮問のあった標記については、本部会は審議の結果、下記のとおり結論を得たので報告する。「記 厚生労働省案は妥当と認める。」以上でございます。

○荒木部会長 それでは、ただいま読み上げられた内容で、部会長から分科会長、分科会長から労働政策審議会長宛てに報告し、この報告のとおり厚生労働大臣宛てに答申を行うということとさせていただきます。なお、この答申は、後ほど委員の皆様には御送付させていただきます。

 本日予定した議題は以上ということになりますが、何かこの際、御発言があれば承りますけれども、特にありませんでしょうか。それでは、本日は以上ということになります。次回の日程については、事務局より追って連絡をさせていただきます。

 本日の議事録の署名委員は、労働者代表の楠委員、使用者代表の北委員にお願いいたします。

 それでは、以上で終了といたします。どうもありがとうございました。