2020年9月16日 独立行政法人評価に関する有識者会議 労働WG(第37回) 議事録

日時

令和2年9月16日(水)10:00~11:31

場所

TKP新橋カンファレンスセンター ホール14E(14階)

出席者

今村主査、酒井構成員、志藤構成員、中村構成員、宮崎構成員、坂爪構成員、関口構成員、高田構成員、三宅構成員

議事

 

○事務局
 定刻になりましたので、ただいまより「第37回独立行政法人評価に関する有識者会議労働WG」を開催いたします。事務局の政策立案・評価担当参事官室長補佐の戸高でございます。よろしくお願いいたします。
 構成員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただき、ありがとうございます。現在、厚生労働省では新型コロナウイルス感染症対策に省を挙げて取り組んでいるところです。本日は可能な限り座席の間隔を取っております。また、マスクを着用したままで御発言いただくようお願いいたします。なお、本日は一般傍聴席を設けておりません。また、報道関係者のみの傍聴とさせていただいておりますが、本日は報道関係者の傍聴はございません。委員、法人の皆様におかれましては、咳エチケットを含め、感染症拡大防止策について御協力いただきますよう、お願い申し上げます。
 次に本日の出席状況について報告いたします。本日は坂爪構成員、関口構成員、高田構成員、三宅構成員がオンラインでの御参加、土井構成員が御欠席となっております。
 続きまして本日の議事について説明いたします。本日の資料に関しては、お手元のタブレットに収納してありますので、そちらを御覧ください。
 本日は、「労働者健康安全機構」につきまして、「令和元年度業務実績評価」に係る意見聴取を行うこととなっております。具体的には、重点化の対象とする項目を中心に御意見を伺えればと考えております。また、例えばAという評定が適切かというだけでなく、法人の取組の中で、中期目標の達成に向けて優良と思われている点、逆に課題があると思われる点については、評定に直接影響しないような場合であっても、積極的に御指摘を頂ければ幸いです。
 また、本日、オンラインで御参加の先生方にお願いいたします。御発言がある場合は、適宜お声掛けいただくようお願いいたします。また、主査である今村先生からも、オンラインでの御参加について御意見があるか適宜お伺いすることとなっておりますので、よろしくお願いいたします。
説明をされる皆様にお願いがございます。オンラインで御出席の構成員の皆様もおりますので、資料等を参照する場合はページ番号、項目番号等を明示していただき、比較的はっきり、ゆっくりお話いただけますようお願いいたします。それでは今村先生、よろしくお願いいたします。
 
○今村主査
 おはようございます。どうぞよろしくお願いいたします。ただいま事務局から説明がございましたが、それについて皆様、何か御質問等がありましたらお願いいたします。いかがでしょうか。オンラインの先生方もいかがでしょうか、大丈夫ですか。
 それでは議事に入りたいと思います。今日は、「労働者健康安全機構」の「令和元年度業務実績評価」について御議論を頂きます。初めに、法人所管課から「重点化対象項目選定の考え方」について御説明いただき、その後、法人から「法人の業務概要」及び「重点化対象項目」の業務実績及び自己評価について御説明を頂きます。このところ重要度「高」、難易度「高」という重点化対象項目についてのみの議論ということになっております。とりわけ、今日はこの重要度、難易度についての議論がいろいろ出てくるのではないかと思いますので、どうぞ、入口のほうからよく説明を頂ければと思います。その説明が終わってから質疑応答という形の流れで進めていきたいと思います。それでは、法人所管課室から「重点化対象項目選定の考え方」について御説明をお願いいたします。
 
○労働基準局安全衛生部計画課長
 厚生労働省労働基準局安全衛生部計画課長の小宅でございます。よろしくお願いいたします。
 資料1を御覧ください。中期目標として重点化項目が7項目ございます。まず、1つ目が第3・Ⅰ・1(1)の「労働安全衛生施策の企画・立案に貢献する研究の推進」です。重点化の理由は、労働安全衛生行政の課題に対応した研究を実施し、当該研究結果を踏まえて労働安全衛生関係法令、国内基準、国際基準の制定、改定に積極的に貢献することは、労働安全衛生行政の推進に当たって極めて重要であるため、労働者健康安全機構で行う業績評価委員会労働安全衛生研究評価部会の外部評価において高評価を得るということは、労働安全衛生行政の重要課題に対応した研究を的確に実施し、当該研究が労働安全衛生施策の企画・立案に貢献できているか及び質の高い研究を公表できているかを客観的に判断するために、極めて重要であるということでございます。また、労働安全衛生施策の企画・立案に貢献する研究を推進する観点からは、政策部門による評価が重要であるということでございます。さらに、労働安全衛生行政上の課題に対応した研究の成果が、周知広報を通じて作業現場へ導入されるなど、広く普及されることによって労働災害の減少に結び付くということから、重要度を「高」としております。
 次に第3・Ⅰ・3の「化学物質等の有害性調査事業」でございます。重点化理由は、国が化学物質の規制などを行うためには、その有害性についてのエビデンスが必要であることから、重要度を「高」としております。
 次に第3・Ⅰ・4の「勤労者医療及び地域医療における役割の推進」でございます。重点化理由でございますが、労災病院が労災認定に係る意見書の作成などに関して国に協力しており、特にアスベストについては、アスベスト使用建築物の解体工事が今後更に増加することが見込まれており、「アスベスト問題に係る総合対策」において、労災病院に設置された「アスベスト疾患センター」で、アスベスト関連疾患に係る健康相談、診療・治療、症例の収集及び他の診療機関に対する支援を行うことが求められております。一層の協力が求められていることから、重要度を「高」としております。
 次に第3・Ⅰ・5の「事業場における産業保健活動への積極的な支援と充実したサービスの提供」です。重点化の理由ですが、「独立行政法人改革に関する基本的な方針」において、産業保健活動への効果的な支援を図るために、産業保健三事業を一元化して、労働者健康安全機構が実施することが求められています。当該事業の実施状況が国の今後の施策に影響を与えることから、重要度を「高」としております。
 また、小規模事業者を含む地域の事業者ニーズを的確に把握し、多様な働き方をする全ての労働者の健康やメンタルヘルスが確保されるよう、産業保健活動総合支援事業の充実・強化などの見直しを行うことが必要です。その際、当該事業を推進する上で不可欠である地域の医師会等の関係機関からの必要な協力が得られるよう、連携を強化していくことが求められていることから、難易度を「高」としております。また、疾病を有する労働者に係る治療と仕事の両立支援につきましては、社会における取組への理解が不十分であることに加え、病院などの医療機関の主治医、メディカルソーシャルワーカー、産業保健スタッフ、人事労務管理担当者及び労働者御本人などの多くの関係者の連携が必要となることから、難易度を「高」としております。
 次に第3・Ⅰ・6の「治療と仕事の両立支援の推進」でございます。重点化の理由は、政府が推進する「働き方改革実行計画」の実現に当たって、会社の意識改革と受入体制の整備、それから主治医、会社、産業医及び患者に寄り添う両立支援コーディネーターのトライアングル型のサポート体制構築の推進を図り、労働者の健康確保、継続的な人材の確保及び生産性の向上を実現することが重要であることから、重要度を「高」としております。また、治療と仕事の両立を支援するため、経営責任者、管理職などの意識改革や両立を可能とする社内制度の整備を促すことに加え、トライアングル型のサポート体制を構築するために企業、医療機関、労働者などの多くの関係者による連携を強化していく必要があります。このような中で、中小企業での両立支援の困難性、企業と医療従事者との情報共有不足等の課題が存在するため、難易度を「高」としております。
 次に第3・Ⅱ・1の「未払賃金の立替払業務の着実な実施」でございます。この事業は、労働者とその家族の生活の安定を図るための重要なセーフティネットであることから、重要度を「高」としております。
 次に第3・Ⅱ・2の「納骨堂の運営業務」でございます。霊堂を維持管理するとともに、慰霊式を行うことは、労働災害により尊い生命を失われた方々の慰霊と被災労働者の遺族の援護を行うことから、重要度を「高」としております。以上でございます。
 
○今村主査
 従来から独立行政法人評価の有識者会議においては、単なるアウトプットだけではなく、政策のアウトカム、インパクトについて深く検討いたしましょうということ、数値目標については100%でB、120%で達成度A、それ以上であればSという、そういう大体の基準で厳密に行ってきたところですが、重要度・難易度が高いものについてはワンランクアップしてもよいという考え方でずっと行ってきております。そういう意味で、この重要度・難易度の理解は非常に重要で、本日の会議においても重要であると思いますので、以下、法人から「法人業務概要」及び「重点化対象項目」の業務実績及び自己評価についての説明を、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○労働者健康安全機構総務部長
 それでは御説明させていただきます。私は労働者健康安全機構総務部長をしております村松と申します。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
 資料2-1-①、令和元事業年度業務実績説明資料というタイトルでございます。1ページ目に機構の概要というページがございます。左上に「設立」と書いてございますが、当機構は平成28年4月に、もともと独立行政法人でありました労働者健康福祉機構と労働安全衛生総合研究所が統合し、同時にバイオアッセイ研究センターの事業を追加して設立されたというものでございます。
 設立目的については右上部分にまとめて記載をしております。私ども、当機構のミッションとして考えておりますのは臨床研究、医療提供の機能、また高度な基礎研究及び応用研究といった機能を有する施設がございますが、様々な施設の共働による予防・治療及び職場復帰支援の総合的な実施、さらには労働安全衛生関係法令の改正等への科学技術的貢献を行う観点からの調査研究の実施という2本が大きな柱であるというように考えております。
 こうしたミッションを受けて、中段以降に主な役割として9つの事業を記載しております。先ほど重要度「高」、難易度「高」という御説明がございましたけれども、これらの事業について青字で書いておりますような機関を中心として実施をしているというのが、大まかな概要でございます。
次ページは、今般の中期目標の下での評価項目一覧でございます。令和元年度より評価項目は合わせて13項目となっておりまして、このうち赤字で重要度若しくは難易度「高」とされたものが記載をされておりますが、これらの事業が合わせて7項目ございます。これらについて本日は御説明をさせていただきたいと思っております。
 右側に実績評価(自己評価)の記載がございますが、こちらは、私ども機構で外部有識者の先生方に評価を頂きまして、その外部有識者の先生方に業績評価委員会で御審議いただいた結果として、評価を頂いているものを記載しているところです。本日、順次御説明申し上げますが、別途、資料2-1-②でコロナ関係の我が機構の対応状況という資料がございます。こちらについては後ほど、影響が大きい労災病院事業の御説明の中で触れさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。
 それでは順次、1-1-1から御説明申し上げます。まず、佐々木理事からお願いいたします。
 
○労働者健康安全機構理事(佐々木)
 労働者健康安全機構理事の佐々木でございます。よろしくお願いいたします。
 まず資料1-1-1、労働安全衛生施策の企画・立案に貢献する研究の推進でございます。資料の3ページを御覧ください。まずⅠの中期目標の概要ですが、機構の研究は、労働安全衛生の総合機関として労働安全衛生施策の企画・立案に貢献するものに重点化するとなっております。具体的には、重点的に研究資金や研究要員を配置して行う「プロジェクト研究」、それから機構内の複数の施設が有する機能を連携させて行う「協働研究」等々を行うこととされております。あと、2に書いてありますような研究・試験等が機動的かつ機能的に実施できるような体制の強化、3の第三者による厳格な評価、4の研究成果の普及・活用、そういったところが求められているところでございます。
 Ⅱの自己評価の要約でございます。この中の下の主要なアウトプット(アウトカム)指標の達成状況を御覧いただきたいと思います。指標として4つ掲げております。①として法令等への貢献、②として外部評価の結果、③として研究報告書に対する厚生労働省の評価、④としてホームページアクセス数と、4つございます。いずれも目標を大きく上回る実績を上げているということでございますので、自己評価としてはAとしております。
 4ページを御覧ください。こちらには、令和元年度に実施したプロジェクト研究と協働研究の例を書かせていただいております。上段には協働研究の例として、高分子ポリマー作業労働者における呼吸器疾患予防のための健康管理の手法に関する研究等がございます。
 この内容を簡単に御説明しますと、3つの機関が協働研究をしています。1つ目は、「アス研」と書いてありますが、アスベスト疾患研究・研修センターの医師が行うCT検査等による病変の解明といった、医学的・臨床的なアプローチです。2つ目は、「安衛研」とありますが、労働安全衛生総合研究所が行う作業環境測定によるばく露実態調査といった、労働衛生工学的なアプローチがあります。3つ目は、「バイオ」と書いてありますが、日本バイオアッセイ研究センターが行う、動物試験を用いたどの程度のばく露量でどのぐらいの毒性を示すかといったような毒性学的なアプローチです。こういった3つの視点で研究を進め、得られた知見を統合するという形で、高分子ポリマーに関わる健康管理手法の開発、あるいは現場でのばく露評価指標の開発、そういったものに網羅的に取り組んでいるという、当機構ならではの研究であるというように考えております。下段の方には、労働安全衛生研究所単独で行っているプロジェクト研究の例を挙げさせていただいております。
 5ページ目を御覧ください。こちらのほうには、令和2年度の研究開始に向けて準備を行った研究課題ということで挙げております。その中でも、協働研究として挙げさせていただいているのが、せき損等の職業性外傷の予防と生活支援に関する総合的研究でございます。こちらは、安衛研と吉備高原医療リハビリテーションセンターと労災病院の3者での協働研究となっております。
 内容を簡単に申し上げますと、まずは発生件数の多い転倒災害に注目をし、労災病院での医療データを基に分析をして、考えられる再発防止対策を検討するといったことで、労災病院の医師と安衛研の研究者が協働で研究をするというものです。もう1つのテーマとして、せき損患者の生活支援に関しまして、患者のリハビリという整形外科的なアプローチ、生活支援に必要な歩行支援器具の安全対策といった工学的アプローチ、こういったものを組み合わせた研究、これを令和2年度から行うということで準備を行っています。
 その下半分には、プロジェクト研究あるいは協働研究のほかの例を掲げております。今申し上げましたせき損の研究、それから右下にあります高純度結晶性シリカのばく露に関する研究、それからこちらに例としては掲げていないのですが、ベリリウムの化合物に関する研究、この3本を令和2年度は協働研究として立ち上げることにしております。
 次のページを御覧ください。6ページでございます。こちらには、ただいま御説明した協働研究あるいはプロジェクト研究をしっかり行うために取り組んだことを、幾つか掲げております。第4期中期目標期間では、この図にありますように、安衛研や労災病院だけでなく、日本バイオアッセイ研究センター、産業保健総合支援センター、治療就労両立支援センターといった施設を含めて、様々な施設が協働で行う研究を積極的に進めることとしております。そのために、基本のルールとして協働研究規程を令和元年度は整備して、体制を整えたところでございます。また、研究の成果が労働安全衛生施策の企画・立案に十分貢献できるように、研究の各段階で厚生労働省と密接な意思疎通を図っているところでございます。
 下半分に書いてございますが、もう1つ、調査・研究発表会ということで、機構内の各施設間の相互理解を深めるための取組も行っています。令和元年度は、より多くの職員に活発に意見交換を行ってもらうために、対面で意見交換を行えるようなポスターセッションを新たに実施し、各施設から110名の参加を得るというようなことで実施しております。
 7ページ目を御覧ください。その他の研究について御紹介しています。まず行政要請研究、これは厚生労働省からの要請に基づく研究でございます。令和元年度は10課題を実施しまして、ガイドライン等に活用されております。それから、下のほうの左側ですが、過労死等防止法に基づく過労死等防止に関する調査研究、右の囲みですが、令和元年度から新たに実施することになった、福島第一原発の緊急作業従事者を対象とした放射線業務従事者の健康影響に関する疫学研究、こういった国の施策に密接に関わるような研究についても、着実に実施をしているところでございます。
 8ページを御覧ください。研究評価につきましては、「国の研究開発評価に関する大綱的指針」に基づいて、評価対象となる研究に精通した第三者の委員からなる労働安全衛生研究評価部会による評価を受けているところです。令和元年度は、目標、平均3.25点のところが3.80点という評価を頂いているところでございます。さらに、下のほうに幾つか書かれておりますが、研究成果の積極的な普及・活用ということで、例えば労働安全衛生に関する法令、通達等の制定・改定等に貢献したケースが、厚生労働省のみならず、経済産業省や国土交通省のガイドラインも含めまして、目標10件のところ18件ということで実績が出ているところでございます。1-1-1につきましては以上です。
 続きまして、1-3の御説明に移ります。14ページでございます。化学物質等の有害性調査事業です。Ⅰの中期目標の概要を御覧ください。こちらの事業は、1に書いてありますように、発がん性等の有害性が疑われる化学物質として国が指定する物質につきまして、国際的な基準に従って各種試験を実施する。これが、この事業の最も中心的な内容です。さらに、2にありますように、試験の質の維持、試験手法の的確な選定、試験の迅速化・効率化、3にありますように海外に対する情報発信、4にありますように民間事業場からの試験の受託、そういったことについても求められているところです。
 Ⅱの自己評価の要約を御覧ください。令和元年度におきましては、国が指定した5物質の長期吸入試験、その他の試験を、GLP基準に基づいて実施しております。このうち、2-ブロモプロパン、酸化チタンの2つの長期吸入試験の結果及び幾つかの遺伝子改変動物を用いたがん原性試験の結果を、厚生労働省へ報告しているところです。さらに、一番下の○ですが、日本バイオアッセイ研究センターで行った長期吸入試験の結果については、国内外の化学物質の有害性評価の進展に資するという観点から、厚生労働省を通じてIARCに提供され、国際的にも情報発信されているところです。令和元年度におきましては、過去に実施したアクリル酸メチルほか、8物質の試験の結果の詳細について、「IARC monographs」に掲載されました。このように、年度計画に定める目標を着実に実施して達成しているということで、自己評価Bとしているところです。
 次の15ページの資料は、日本バイオアッセイ研究センターで、①から⑤までの試験につきまして、国からの指定を受けて実施している試験対象物質のリストでございます。16ページには、この中の長期吸入試験の実施スケジュールを掲げさせていただいています。2-ブロモプロパン、酸化チタンについては、ちょうど令和元年度が試験結果を取りまとめて報告する年に当たっています。本項目は以上です。
 
○労働者健康安全機構総務部長
 続いて労災病院事業ですが、その前に冒頭に申し上げましたとおり、新型コロナウイルス感染症への対応ということで、別の資料にあります資料2-1-②を表示いただけますでしょうか。今般の新型コロナウイルス感染症については、労災病院事業をはじめ、機構業務全般が大きな影響を受けているところで、機構としてその対応を今しっかりと行っているところです。上のほうに書いてありますが、令和2年2月、機構本部に理事長を本部長とした「新型コロナウイルス感染症対策本部」を設置いたしました。当初は月に2回程度開催し、最近は月1回程度になっておりますが、その中で、機構としての対応方針の決定、また各施設に対する取組の指示、その取組状況の確認等、連携した対応を継続して行っています。
 その間、下のほうの労災病院事業という所に書いていますが、労災病院においては、横浜港に停泊していたクルーズ船へのDMAT派遣といった初期対応から、ウイルスの感染力、治療法が全く未知であった時点から、公的病院として、また地域の中核病院としての使命を果たすべく、新型コロナ患者用の病床を確保し、感染対策に細心の注意を払いながら診療に当たってきたところです。当初、新型コロナ患者対応を優先せざるを得ないという状況でありましたが、現時点、昨今は通常診療との両立ができるように、職員のメンタルヘルスのケアに注意しながら、地域の行政機関、また地域の医療機関と連携をして、病院機能の維持に努めております。
 次のページがその他の事業ですけれども、他の各種事業においても研修等々の事業を行っておりますけれども、感染拡大を防ぐべく、2月以降に計画していた集合研修等を中止せざるを得なかったということで、順次WEB研修に切り替えるなど、withコロナを前提に業務の継続を図っております。各事業の令和元年度における影響については、後ほど個々の事業の説明の中で必要に応じて触れさせていただきたいと思います。
 それでは元の資料にお戻りいただき、資料2-1-①、17ページを御覧いただきたいと思います。17ページは労災病院事業についてです。中期目標の概要の1にありますように、高度・専門的な医療を提供するとともに、勤労者医療について得られた知見を他の医療機関に普及させ、その推進を図ること、また、4にありますように、患者の意向を尊重し、良質かつ適切な医療を提供することなどが求められているところです。自己評価の要約の所ですが、年度計画に定める目標を達成したということで、B評価と考えております。
 数値目標については、次の18ページですけれども、ここに掲げる6つの指標について全て達成しております。取組の状況については、その下に幾つかありますけれども、急性期医療への対応としてICU(集中治療室)の増床などを実施しておりますし、高度医療機器についても計画的に増設、更新を進めております。また一番下、メディカルソーシャルワーカーが患者、家族に寄り添い様々な相談に対応することで、社会復帰の促進を図っております。
 次に、19ページは地域医療への貢献ということで、下段の左側のグラフにありますように、紹介率・逆紹介率ともに順調、右肩上がりに伸びております。右側の救急搬送患者数については、元年度は△1.7%の微減ということでありますが、高い水準を維持していると考えています。
 次の20ページは、大規模労働災害等への対応です。左側が令和元年9月、10月に発生した台風による非常災害への対応です。DMATの派遣、また下のほうにあります健康相談ダイヤル等の設置といったことも実施しております。右側のコロナ対応ですけれども、冒頭に申し上げましたが、DMATの派遣や感染症指定医療機関への医師、医療従事者の派遣、帰国者・接触者外来の設置等に対応しております。ここに掲げた実績は昨年度末までのものであり、冒頭に申し上げたとおり、患者の受入れ、外来窓口の設置など、地域医療を守りつつ、できる限りの対応を行っております。
 21ページ目です。患者の意向の尊重と医療安全の充実については、医療安全チェックシートを用いた自己チェックを、全ての病院で2回実施しております。患者満足度については、右のほうに赤で囲んでおりますが、入院、外来、平均とも目標を達成しております。次に、22ページの下のほうの行政機関等への貢献ですが、国が設置する審議会等への貢献については、ここに書いてありますように、総数で251人が委員等を受任しているところでありますし、またアスベスト関連疾患への対応としては、厚生労働省から「石綿関連疾患診断技術普及事業」、「石綿確定診断等事業」を受託し、それぞれ着実な取組を実施しております。
 続いて1-5、産業保健活動総合支援事業です。中期目標の概要としては、1にありますように、労働者の健康管理に関する業務に携わる者に研修、情報提供、その他の援助を行う中核的な機関として、機能充実強化を図ること、2ですが、関係機関等と連携し、産業保健関係者のニーズ把握、産業保健サービスの提供、事業場の自主的な産業保健活動の促進を支援することが求められていて、自己評価については難易度が高くコロナ禍の影響の中でも所期の目標を上回る成果を上げたということで、A評価としております。具体的な数値目標については、下のほうに①から⑤までありますけれども、その全てについて目標を上回る実績を上げています。
 24ページですが、事業の具体的な取組です。まず、①の産業医の資質向上の関係の研修でありますが、産業医による産業保健活動の適切な実施のために、職場巡視など実地研修を積極的に実施するなど、手法の見直し、また、市場ニーズを踏まえたメンタルヘルス対応のための面接指導の研修など、アンケート結果や地域の特性を踏まえたテーマの研修を設定しております。②の産業医の活動に対するサポートですが、下段に具体的な例を書いていますけれども、地域の産業医のネットワークを構築するためのモデル事業として、例えば熊本の事例においては、地元の医師会と連携して、開業医などの産業医経験が浅い医師に対して実務的な研修会を実施するなどしております。
 次に25ページですが、ニーズを踏まえた研修テーマの設定と計画的な実施であります。コロナの影響で2月以降、研修を中止しておりましたが、そうした中でも目標を大きく上回る5,781回の研修を実施しております。なお、コロナの影響を受けていない1月末までの研修回数は目標値の120%を超える実績となっていて、本来であれば更に大きな成果を見込めていたのではないかと考えております。また、研修テーマの設定に当たりましては、国が掲げる過重労働防止等の施策、さらに地域のニーズを踏まえたものにします。そのために、ニーズの把握に当たっては、研修終了時や各種の相談の対応の際にアンケートを実施して、その中から事業場のニーズの把握に努めております。例えば、改定された「過重労働による健康障害防止のための総合対策」に基づく研修や、中小企業事業者向けの産業医活用テキストを利用した研修などを設定しました。また、事業場において衛生委員会の形骸化が従前から指摘されていることから、「衛生委員会活性化テキスト」を私どもで作成し、実効性のある産業保健活動の推進を図っております。
 ②の相談対応ですが、対面による相談業務は2月以降自粛をしていて、その中でも目標を大きく上回る13万6,000余の相談件数を実施いたしました。特に小規模事業場に対する支援を拡大するために、地域の医師会等の協力を仰ぎながら登録産業医を拡充、登録産業医の先生方に小規模事業場の相談に対応していただく取組を進めてきました。また下のほうのメンタルヘルスの関係ですが、メンタルヘルス対策促進員を14人増員して、472人体制で対応をしました。ストレスチェック活用について「何から始めたらよいか分からない」という声に対応するために、右にありますような「これからはじめる職場環境改善」といったテキストに基づいて研修会を実施しました。
 26ページ目は、産業保健総合支援センター事業について、インターネット等を用いた積極的な情報提供です。芸能人の「のん」さんに、産業保健総合支援センターや地域産業保健センターの紹介動画に出演していただき、YouTubeや駅構内の電子掲示板等で放送して周知を図りました。右側のマンガですけれども、両立支援については、中小企業の社長になったサラリーマン金太郎を広告塔としてマンガを作成し、医療機関、各種イベント等で配布して好評を得ております。研修等の評価については、研修利用者、相談利用者からの評価が93.6、95.5ということで、共に目標を上回る高い評価を頂いております。
 以上、難易度が高で、コロナ禍の影響がある中でも、一部地域の事業者ニーズの把握に努め、医師会等幅広い地域のネットワークの構築を図ってきたということで、所期の目標を上回る成果を上げたと考えていて、自己評価をAとしております。
 次に、27ページ目、1-6、治療就労両立支援事業です。中期目標の概要としては、1にありますように、労災病院及び両立支援センターにおいて、仕事を有する患者に対して、退院に至るまで就労継続や職場への復帰を念頭に置きながら対応するとともに、医療ソーシャルワーカー等を活用し、患者へのきめ細やかな支援を行うことなどが求められております。自己評価の要約ですが、この事業については難易度が高いことに加えて、コロナ禍の影響のある中でも所期の目標を上回る顕著な成果を上げ、また、国の政策にも大きく貢献したということから、S評価とさせていただいております。
 28ページですが、具体的には両立支援マニュアルを更新し、これまで疾病ごとに4冊に分かれていたものを1冊にまとめて、非常に使いやすいものにしたということ。また、研修の開催地域、開催回数を拡大して、政府目標は累計で2,000人ですが、これの2倍を上回る4,129人の両立支援コーディネーターを養成しています。
 28ページ右側、支援チームによる支援についても、これまでの4疾病の限定から全ての疾病を対象として職場復帰や両立支援を行った結果、両立支援事例件数は1,131件、前年度比138.7%と大きく増加させることができました。また、支援が終了した方から有用度90.6%と高い評価を得ております。下の企業に対する支援としては、労災病院以外の67医療機関に新たに両立支援相談窓口を設置し、事業者からの相談対応を行いました。これらの取組の結果、両立支援に係る相談件数は6,688件、前年度比140.5%と大きく増加させることができました。
 29ページですが、人材育成については、基礎研修について開催地の拡大、回数の増加ということで、過去最大の1,813人を養成し、累計で政府目標の2倍以上を達成しました。また、右の円グラフにあるように、受講者の職種は多様となっており、勤務先についても全国各地から受講をしていただきました。応用研修については神奈川と大阪で開催をしています。加えまして、右下にありますが、令和2年度の診療報酬改定においては、療養・就労両立支援指導料に係る相談支援加算の施設基準として、コーディネーター養成研修の修了が必須要件となるなど、当研修の有用性が国に認められていると理解しています。
 30ページですが、コーディネーター基礎研修修了者へのアンケート調査を実施し、その結果、現在の勤務先は多岐にわたっており、回答者の約7割が両立支援業務に関与しております。具体的な業務としては、右側のグラフにあるように相談業務全般、働き方に関する継続的な支援、啓発活動などの業務を行っています。こうした結果については、関係学会等で発表しております。
 以上、様々な課題もある中で難易度が高い両立支援事業ですけれども、コーディネーターの量的倍増のみならず、支援マニュアルの改良、収集事例の拡充、相談体制の強化など、質的な充実を図り、コロナ禍の影響がある中で所期の目標を上回る顕著な成果を上げ、また同時に国の政策にも大きく貢献したことから、自己評価はSとさせていただいています。
 次に少し飛びまして、1-8、未払賃金立替払事業です。33ページになります。こちらの中期目標については、審査の適正化・効率化を通して、請求書の受付から支払までを20日以内に維持することが求められています。自己評価の要約を記載していますが、年度目標を達成しているので、B評価としています。具体的な取組については34ページですが、原則週1回の立替払の実施を堅持し、併せて制度に対する関係者の理解を深めていただくために、全国の弁護士会での研修会、また地裁での説明会等を行ったところです。なお、新型コロナ対応として、3月の弁護士会等における研修は取りやめざるを得なかったということです。下の立替払金の求償についても、適切な債権管理及び求償を実施したところです。
最後に35ページですが、納骨堂の運営事業です。中期目標としては、産業災害殉職者の慰霊にふさわしい環境整備を行い、来堂者、遺族等から、慰霊の場としてふさわしいとの評価を毎年90%以上得ることとされています。自己評価としては、目標を達成していることから、B評価としています。具体的な取組としては、ここに記載がありますけれども、天皇、皇后両陛下におかれては、御退位前の平成31年4月23日にみころも霊堂を行幸啓されて、拝殿において供花をされたところです。令和元年度の慰霊式については、参列者からの御意見も踏まえ、開催月を10月から11月に変更する等の取組を行い、満足度調査では前年度を上回る高い評価を頂いております。以上、雑駁ですが業務説明を終了いたします。ありがとうございました。
 
○今村主査
 どうもありがとうございました。それでは、ただいま御説明がありました事項について、御意見、御質問等がありましたら、どうぞ御自由にお願いいたします。オンラインで参加の方も、お手を挙げた御様子はここから見えますので、どうぞ御自由に御発言いただければと思います。いかがでしょうか。
 
○三宅構成員
 三宅です、よろしいでしょうか。
 
○今村主査
 どうぞお願いします。
 
○三宅構成員
 WEBから失礼します。4つほど質問とコメントがありますので、よろしくお願いします。まず1つ、最初の研究に関する話なのですけれども、プロジェクト研究、協働研究、こういったところでシナジーが現れていて、非常に良い成果が出ていると感じました。ますます進めていただきたいと思います。一方、特に若手や中堅の研究者が、研究能力を向上させていくことに関して、例えば新しい課題を見つける、発掘する能力ですとか、あるいは成果が見通せないものに対してチャレンジしていくような課題設定というのができるかどうかというところ。恐らく基盤研究の中で、研究者の素養をアップさせるというようなことがあると思いますが、特に新しいチャレンジングな研究がどういう所で行われているかというのを聞きたいのが1つです。
 2つ目としては、こういった研究者の研究に対する実績、いろいろな評価がされているわけですけれども、この評価というのはどのように活用されているのかというのを伺いたい。それが2番目です。
 3つ目は、各国の機関と連携を非常に活発に進めていることが理解できたのですけれども、海外連携というものの成果として、いろいろ調査研究や情報交換をしたものがどう活かされているのかを伺いたいです。単に協定を結んだとか、講演をしたとか交流をしたということから、さらにその実績の効果がどういうふうに現れているのか。例えば、海外に進出する日系企業に対していろいろなアドバイスをするとか、あるいはお互いの法規制を比べて足りないところをうまく補完していくとか、そういうことができたかどうかということなのですが、それが3点目です。
それから最後の4つ目は、両立支援に関するところ、S評価のところですけれども、これも非常に予定を大幅に上回る実績を上げていて、素晴らしいことだと感じている一方、今度は人材はたくさん育成されるわけですけれども、その研修を終えた人たちの質の担保をどうしていくのかということ。クオリティを高めていく、あるいは少なくとも継続的に行っていくことなのかどうか、その人がまた次のステップとして、よりレベルの高い研修会とか、あるいは今度は教える側に回るのかとか、そういう制度設計がなされているのかどうかを伺いたいです。以上、4点お願いいたします。
 
○今村主査
 幅広くかつ的確な質問をありがとうございます。どうぞ各担当の方、御回答をお願いします。
 
○労働者健康安全機構理事(佐々木)
 理事の佐々木です。私から最初の3点についてお答えいたします。1点目ですが、特に研究者の能力向上、若手の方の能力向上というところですが、今、先生の御指摘がありましたけれども、研究の中に基盤的な研究がありまして、これにつきましては比較的少額の研究費で1年間とか、割と若手の人を中心に取り組んでみたいという、研究にチャレンジできるような仕組みがあります。そこの基盤的研究で今後につながるというようなことが出てきたときに、それは更にプロジェクト研究に上げるという形で、それを深掘りしていくという流れができるようになっているので、そうしたものを通じて、特に若手の人がいろいろチャレンジできるような仕組みになっていると考えています。
 2点目は、評価の活用という御質問と思いますが、研究の評価につきまして安全衛生研究評価部会から意見等頂きましたら、それについては、その後の研究の充実に反映することを心掛けております。
 3点目の海外との連携ですが、安衛研の研究成果に基づいて、海外の研究機関との意見交換等は行っております。海外の進出企業などに対して情報提供するという仕組み自体はないのですが、そういったものも適宜活用されているのではないかと思っております。補足をお願いいたします。
 
○労働者健康安全機構研究試験企画調整部長
 少し補足させていただきます。研究試験企画調整部の高橋と申します。評価に関しましては、外部の評価委員会から評価を受けておりまして、各委員から書面で御意見を頂いていて、それについては今後の研究の軌道修正といったところで活用しております。また、中期目標から厚生労働省との意見交換で、厚生労働省からもアンケート調査などをしていろいろな御意見を頂いておりますので、その評価結果を基に今後の研究の在り方等についても検討をしているところです。
 外部の進出企業に対する指導は、そこまでは安衛研ではまだできていないかと思います。以上です。
 
○今村主査
 4つ目の質問はどなたがお答えになりますか。
 
○労働者健康安全機構理事(大西)
 両立支援につきまして、機構担当理事大西がお答えします。人材育成とその質の担保という御質問だったと思います。先ほどもプレゼンテーションでありましたように、現在、両立支援コーディネーターの育成を当機構で行っておりますが、コロナ禍で集合研修という形を取っていたものが本年3月からできなくなっていました。そこで、WEBによる研修方式を緊急に構築しまして、この9月からWEB化した両立支援コーディネーター研修の募集を開始しました。現在まずは年5回、今年度少なくとも2,500人以上の養成を目標として、WEB化研修を開始しました。
 質の担保及び質の向上ですが、これについては先ほどのプレゼンテーションにありましたように、コーディネーター研修を終えて実地で、医療機関や事業所で実際にコーディネーション、つまり両立支援を行っている方々を集めて、困ったこと又は有益だったことの情報共有と実際の事例検討を年2回の応用研修で行ってきました。しかし、これまででも4,000人以上の養成を行ってきましたが、これからもっと養成しなければいけないので、応用研修はこれでは足りていません。そこで、全国の都道府県に産業保健総合支援センターが我々の組織としてございますが、その各都道府県の産業保健総合支援センターには両立支援コーディネーターの基礎研修を終えた方の名簿がありますので、各産業保健総合支援センターがその都道府県にいらっしゃる両立支援コーディネーターに声を掛けて、各産保センター独自に事例検討会を去年から今年にかけて始めています。つまり既に活躍している方に、各都道府県において産保センター、また時によっては労働局の両立支援推進チームの参加も頂いて、都道府県でのコーディネーターの質の向上、事例検討そして情報共有というのを図っています。
 現在それを全国津々浦々に進めるべく、全産保センターそれぞれに前年度の事例検討会などの研修の実態調査をかけています。それを鑑みて、これまで年2回だった応用研修を全国で、産保センター及び労災病院が参加して、またできましたら労働局の推進チームにも参加していただいて、更に応用研修に準じるような事例検討会などを各都道府県単位で細やかに進めていきたいと思っています。以上です。
 
○今村主査
 ありがとうございます。いかがですか。
 
○三宅構成員
 どうもありがとうございました。両立支援事業のほうは良い制度設計にどんどんつながっていくように理解しましたので、是非進めていただきたいと思います。一方、前半の研究に関する話ですけれども、やはり研究者自身はいろいろな評価というのが気になるところだと思うのです。ですから、いろいろ頑張って研究をして評価をされていくことに対しての納得感が得られるようなスキームを、是非構築していただければと思います。研究者としては行政からの要請ですとか協働研究というものがあると思うのですけれども、個人の資質というか素養が上がっていくということが全体の研究レベルの向上につながると思いますので、そういう意味では、与えられた課題だとか自分自身が今できることを更に進めるということからもう一歩進んで、成果がどうなるか分からないけれどもチャレンジできるような雰囲気というか、そういうエンカレッジできるようなシステムが良いなとも思っています。ますます御発展を期待しています。以上です、どうもありがとうございました。
 
○今村主査
 ありがとうございました。少し付け加えますと、4番目の研修の質というのは教材と人材の両方だと思うのですが、実はシンガポールの南洋大学に行ったときに、テクノプレナーという教育をしているのだと。つまり、エンジニアであっても、自分の人生を豊かにするためには、アントレプレナーシップを身に付けなければいけないという発想で行っているのです。
 何を言いたいかというと、1、2、3の研究者のモチベーションのためには、自分たちの研究が現場でどういう風に活かされているかという、幅広い視野を持たせる、そのことによってモチベーションが広く引き出せるのではないかと、話を聞いていて少し思いました。1、2、3と4がちょっと関係ないように思いますけれども、機構というシナジーをより多く発するには、そういった発想ももしかしたら役に立つかなと、ちょっと気が付いたところです。もしかしたらピントがずれているかもしれません。どうぞよろしくお願いいたします。これはあくまでもコメントだけなので。どうぞ。
 
○中村構成員
 中村です。先ほど丁寧に説明してくださった両立支援について、別の視点でちょっと質問したいと思います。これは非常に大事な問題でして、それに対して実績においても自己評価Sということで、すばらしいと思うのです。しかし、ここが重要度「高」、それから難易度「高」という元になっているものとして、私なりに理解しているのは、いわゆるトライアングル型のサポート体制の構築が必要である、それには、主治医、会社、両立支援コーディネーターのトライアングル型だと。特に会社の意識改革、社内制度の整備、ここが難しいのだというところで、難易度「高」になっていると理解しています。
 しかし、頂いた報告を見ますと、両立支援コーディネーターについては非常によく取り組んでいるし、そこの努力は認めますが、「経営者の意識改革」とか、「社内制度の整備」、ここら辺に対してどのように切り込んでいくのか、それから、何が障害になっていてどうなのだとか、あるいは、それがどのような状況になっているのかというところの分析が見られません。やはり重要度「高」、難易度「高」のもともとのところに立ち返った説明が欲しかったなという気がするのですが、補足があればお願いいたします。
 
○労働者健康安全機構理事(大西)
 大西です。補足させていただきます。まず今、最後にお話いただいた実態、特に企業側の実態で何がネックなのかとか、どうなのだということについては、先ほどのグラフにあった両立支援コーディネーターのアンケート調査を毎年行っています。今おっしゃっていただいた両立支援コーディネーターは、病院でも活躍していますが、現在、約半数は事業所所属の方が養成研修を受けていらっしゃいますので、事業所所属の方も活躍しています。その方たちからの生の声も聞いております。それによりますと、70%以上のネックは「上司の無理解」というのが実際に出てきています。かつ「同僚の理解をいかに得るか」というのも事業所においてのネックだということは、両立支援コーディネーターのアンケート調査で我々も把握しております。
 そこで、我々は3つ対策をしておりますが、当然、大企業に対するものと中小企業に対するものは違います。大企業においては、厚生労働省や我々などが開催している多くのいろいろなフォーラムにて両立支援に関する理解を深めて頂いています。大企業の場合、企業に余裕があるから、ある程度御理解を得やすいのです。
 やはり、一番大切なのは中小企業です。特に、50人未満というのが日本の多くの企業の実態です。これに関しての企業へのアプローチは2つあって、まずは産業保健総合支援センターの中に地域産業保健センターというのがあります。同センターは、各労働基準監督署とほぼ同じエリアにあります。そこが50人未満の企業の方々に関して実際に事業場を訪れて、経営者に対して、「あなたたちの職場の人間が病気になったら切り捨てるのではなくて、知的財産なのだから、うまく働ける環境を整備すれば、お宅の財産を守れますよ」というような相談対応などを、個別訪問にて行っているのが1つの方策です。もう1つは、実際に地域産業保健センターにドクターがいらっしゃいます。そのドクターたちが、中小企業で両立支援ができないで困っていらっしゃる勤労者である患者さんに対しての相談を受け付けて、相談に乗るというのが2つ目です。
 3つ目はモデル事業として、これは理事長の肝入りなのですが、大田区においては、かかりつけ医の患者さんイコール中小企業の勤労者ですが、そのかかりつけ医がダイレクトに患者さんであり勤労者の相談に乗って、それを中小企業の事業主に対して、こういうことをすればもっと生産性が上がるとか、をお話しする。そのようにアプローチをしている。これが現状です。
 
○中村構成員
 厄介なというか、大変なところもきちんと取り組んでいるということですね。
 
○労働者健康安全機構理事(大西)
 厄介というか、一番手の掛かる、でも日本で一番大切なところですので、まだまだこれから頑張らねばと思っております。
 
○中村構成員
 経営責任者等の意識改革は、実際に足を運んで取り組んでいるという話で、非常に安心しました。評価もするわけですが、具体的にどのように変わってきているかというところも注視して欲しいです。コーディネーターに対してはいろいろなアンケートを取っていますけれども、経営層に対してどのように意識が変わってきたかとか、そういったことがもしあれば、これからいろいろと評価する上でも取り組んでいただければ有り難いと思っております。
 
○労働者健康安全機構理事(大西)
 残念ながら経営層に対してそれがどうかということは、いろいろな意味でアプローチが難しいというのは御理解いただけると思うのですが、ただ、もっと実際の評価として、両立支援をしたら患者さんであり勤労者がどう復職できたのだ、働き続けられたのだというデータを最近出しました。がん患者ですと一般的に、特に大企業で何十人と産業医がいて従業員管理ができるような何万人規模の大企業だと、一度がんになっても復職できる率が7割なのに対して、中小企業は大体5割以下と言われていますが、我々労災病院群が行ったがん患者さん三百数十例では、復職率が7割を超えました。つまり、産業医のいない中小企業の患者さんに対しても、我々のメソッドをやると、がん患者は7割が復職できるというデータを出しました。結果としては相当なデータだと思います。
 もう1つ、脳卒中に関しては、一度脳卒中になると、復職できる可能性は全世界で大体4割から5割なのです。ただ、前年度までの我々の両立支援のデータですと、両立支援コーディネーターが関与すると、これは中小企業も大企業も含めていますが、患者さんが一度脳卒中になっても復職率が7割を超えました。ということで、両立支援を実際に行って、患者さんがどれだけ復職できるか、復職率が向上しているかという実際のデータが出てきておりますので、それを今後、経営者に示していきたいと思っております。
 
○中村構成員
 非常にいいデータだと思いますので、引き続き頑張っていただければと思います。ありがとうございます。
 
○今村主査
 いかがですか。手を挙げていらっしゃるのですが、オンラインの方、ありましたらどうぞ。大丈夫ですか。
 
○関口構成員
 関口ですが、よろしいでしょうか。
 
○今村主査
 どうぞ、お願いいたします。
 
○関口構成員
 1-8に関してです。未払賃金の立替払事業ということで、非常に重要な事業かと思います。先ほど御説明があったと思うのですけれども、ちょっと聞き漏らしてしまったこともあると思いますので、2つ確認をさせていただければと思います。1つ目は発生件数なのですが、これまでどの程度発生していて、また今回のコロナ禍もありますので、今後の推移も含めて制度の発生当初からどういう推移になっているかということを、ちょっとお聞かせいただければと思います。
 2つ目です。債権回収率が25.6%ということなのですけれども、なかなか回収は非常に難しいのかなと思うのですが、機構としてはこの率が適正なのか、適正という言葉自体も余り適正ではないと思うのですけれども、これに対してどういう御判断をされているのかということと、やはりもう少し回収率を上げなければいけないということであれば、どういったことをお考えなのかという2つをお聞かせいただければと思います。
 
○労働者健康安全機構理事(佐々木)
 お答えいたします。1つ目ですが、これまでもリーマンショックの後とか、そういうところでかなり件数が増えるといったように経済情勢によって増えたりということで波が出てきていたのですが、コロナ禍において、今年度に入ってからも増加傾向があります。8月末時点で支払の件数で申し上げると、前年度比累計146.4%ということで、5割増しぐらいになっているところです。これについては今後の倒産の状況等によって予断を許さないところと思っているところですが、これまでのところは、こちらの処理体制の整備等によって、いわゆる賃金の立替払の業務については、特に支障なく進んでいるところかと思っております。
 2つ目の求償についてですが、おっしゃったようにコロナ禍ということで、例えば破産事件を担当する破産管財人弁護士の方についても、なかなか業務が通常どおりにできないということもあり、例年よりはなかなか進みにくいという状況です。緊急事態宣言が解除されて、その後そういったところは徐々に回復しているところですが、これも今後の状況次第でどういった形になるかというところは予断を許さないところですので、状況を踏まえて、しっかり体制整備等が必要なところは取り組んでいきたいと考えております。
 
○今村主査
 時間と進行の関係がありますが、もうちょっとだけ時間があるので、あと1つか2つ御質問がありましたらどうぞ、お願いいたします。
 
○坂爪構成員
 そうしましたら、坂爪です。よろしいでしょうか。
 
○今村主査
 どうぞ。
 
○坂爪構成員
 両立支援コーディネーターのところで、2つコメントと質問をさせてください。まず1つ目なのですが、両立支援コーディネーターマニュアルを先ほどちょっと拝見させていただいて、基本的にはいわゆる4つの疾病というものを中心に作られているかと思うのですけれども、その疾病を広げていくということを考えられているのか、それとも、基本的にはこの4つをベースでやれば、大体どんな疾病にも対応可能だと考えられているのかというところが1つ質問です。
 2つ目です。先ほどのやり取りを聞いていて、やはり機構では非常にいろいろな人に役立つ情報を収集されているということが分かったのです。そうなっていくと、情報発信というのが今までより重要になっていくのではないかと。つまり、コーディネーターが行って全部やるのではなくて、情報を見れば自分でも少し解決できるということをしていかないと、恐らく非常にニーズが高い分野なのかなと思っていますので、情報発信というものをどう考えていらっしゃるのか。例えば、厚生労働省でも治療と仕事の両立支援のサイトを持っていますよね。そこにいろいろな企業事例が載っていたりするのですが、そういった所との情報発信における連携というものは、どうなっているのかなというのが質問です。
 ごめんなさい、3つありました。これはコメントです。多分、両立支援コーディネーターが治療と就労の両立を全部見切るということは無理で、やはり両立しながら働いていくということは、その人のキャリアにつながっていくということでもあるのです。そうすると、例えば厚生労働省だとキャリアコンサルタントという資格を出していますよね。そういう方とどう連動していって、どう引き渡していくかということがあると、個人の就労というのはキャリアでもあるので、そういう観点からも非常に働く側からは今以上に役立つのかなと感じました。最後はコメントです。以上、よろしくお願いいたします。
 
○労働者健康安全機構理事(大西)
 担当の大西が答えさせていただきます。まず、マニュアルを御覧いただき、ありがとうございます。今回、4つの疾病を束ねて1冊にまとめました。もともとの束ねた目的ですが、一番始めのほうを見ていただくと、疾病ごとではなくて、疾病共通にコーディネーターがどうやって患者さんであり勤労者に対してのアプローチをしていくか、両立支援の仕方のハウトゥーというものをまとめています。そして、これまで取り組んでいる4つの疾病、糖尿病、脳卒中、がん、メンタルに関しては、もっと具体的な対応の仕方を記載しております。もちろんこれはベーシックであって、これだけでOKとしているものではありません。今後これを1冊にまとめた上で、厚生労働省では新たに肝疾患、難病なども診療報酬になりましたし、現在、糖尿病や心疾患などについても検討中で、我々も一緒にオブザーバーとして検討会を拝聴させていただいておりますので、適宜、随時今後このマニュアルについては、各種疾患のディテール、我々の治験を基に両立支援の仕方の知識をアドオンして、どんどん改訂していく予定です。これが1つ目です。
 2つ目の情報発信ですが、おっしゃるとおりで情報発信しないと何もできません。実は、最近は先ほど申しましたYouTubeでの芸能人が出演しているものや、いろいろな冊子、「サラリーマン金太郎」などで周知をしているのですが、やはり、もう1つはSNSだと思います。まずは、我々も厚生労働省と相談しながら、両立支援のポータルサイトというのを立ち上げております。また、もう1つ、構成委員におかれましては是非見ていただきたいものがありまして、今日お帰りになってからインターネットで検索してください。「東京労災病院両立支援センター」というものをインターネットで検索しますと、現在そこの両立支援センターが行った予防医療モデルで、交代勤務者とかタクシードライバーが夜間のコンビニでの食事で、どうすればそういう勤労者の疾病が予防できるか、両立支援につながるか、というパンフレットがありますが、それまでは毎日5件、10件のアクセスだったのが、3日で5万件ぐらいのダウンロード、13万件以上のアクセスになっています。これは、そういう産業医学において、いかに予防医療かつ両立支援というものが重要かということです。現在、東京両立支援センターがそういう資料の宝庫だということで、SNSで注目を集めている状態です。
 現在、我々本部においても、こういうSNSを利用した広報戦略のプロジェクトを立ち上げようということでやり始めていますし、今後これについては、厚生労働省の方々とも相談しながら、どんどん進めていきたいと思っております。是非とも先生方、「東京労災病院両立支援センター」、また「交代勤務」とか、インターネットで検索してください。これらは今、相当上のほうに出てきます。
 3つ目です。コメントを頂きましたが、おっしゃるとおりです。両立支援コーディネーターは、1人では何もできません。ですので、両立支援コーディネーターは、あくまで両立支援チームの一員です。医療機関においては、主治医や薬剤師も同様です。まず両立支援コーディネーターの行うことは、全部を自分ではできないので、おっしゃってくださったように産業カウンセラー又は社会保険労務士、各種行政の社会支援に通じている方、社会支援の窓口等につなげるということです。これも両立支援コーディネーターの仕事ですので、1人で全てを解決するのではなくて、あくまでチームです。また、社会保険労務士やキャリアコンサルタントの方々とタッグを組むということを、両立支援コーディネーター研修ではイロハのイとして受講者に教えているところです。おっしゃっていただいたとおり、そのような多職種のチームとして患者さんである勤労者を支えていくというのは、今後とも続けていきたいと願っているところです。どうもありがとうございます。
 
○今村主査
 かなり白熱した意見が出ておりますが、時間と進行の関係がありますので、もし構成員の方々、個別に御意見、貴重な御提案がありましたら厚生労働省の担当課等に、あるいは機構に直接御意見を頂ければと思います。孤独な産業医あるいは両立支援コーディネーターをいかに戦力化していくかというのは、以前から言われている機構の持っているシナジー効果です。本当にこの機構は無限大の資源を持っていると思うのですが、それをどう活用していくかというのは正にアントレプレナーシップ、あるいはチームプレナーなどという言葉もありますけれども、そのようにして結び付けていくという御努力を、今までもすばらしいことを取り組んでいらっしゃいますが、更に発展させていただければと思います。
 それでは、最後に法人からの御説明を頂ければと思います。監事と理事長からの御発言であります。年度・中期目標期間における目標の達成状況等を踏まえて、今後の法人の業務運営等についてのコメントを頂ければと思います。最初に法人の監事から、続いて法人の理事長よりお願い申し上げます。
 
○労働者健康安全機構監事(遠藤)
 常勤監事の遠藤です。資料2-5にあります監査報告を御覧願います。スクロールしていただきたいと思います。この監査報告については、令和2年7月27日付けで当機構の理事長宛てに提出したものです。Ⅰには、監査の具体的な方法と内容について記載しております。例年どおり、全国に展開する労災病院等への施設往査を含めて監査を行いました。ちなみに令和元年度は28施設となっております。
 Ⅱは、監査の結果について記載したものです。法人の業務執行の適法性、有効性、効率性をはじめ、1から5まで個別に意見を述べておりますが、いずれも監査報告において指摘すべき事項は見受けられなかったという結論です。
 簡単ではありますが、監査報告についての説明は、以上とさせていただきます。お時間を若干頂きまして、意見を述べさせていただければと存じます。まずは、中期目標や年度計画についてです。重点化対象項目はもちろんのこと、その他項目や課題についても、当機構においては真摯に取り組み、概ね期待に応える成果を上げてきているという印象を持っております。特に、今日も幾つか御議論がございましたが、治療と就労の両立支援については、期間を通じて機構に課せられた重要な課題であり、国からの要請に応えて社会に働き掛けるといった果たすべき役割を発揮してきたものと、大いに評価しております。今後の展開についても期待が大きいのですが、やはりコロナ禍という制約もあります、また、質的な向上を継続的に担保していくという御指摘、あるいは好事例をどう展開していくのかといった御指摘など、幾つもの課題を頂いているところですが、いずれも当機構では対応していけると監事としては見ています。
 また、未払賃金立替払事業への御指摘もありました。当機構の感染症対策本部が立ち上がって以降、理事長からは、「この事業は滞らせてはならない」という指示が、繰り返しなされております。なお、リーマンショック時の対応について若干申し上げると、2009年度の実績では、請求件数が前年の約2割強の増加になっております。当時の中期目標は、処理日数が20日以内ではなくて30日以内ということでしたが、請求件数が約2割強になったにもかかわらず、支払日までの期間短縮など前年度の支払実績を更に上回るほどの対応を、人員を確保しながら行ってきたという実績がありますので、監事としては今後、どのような状況が展開していったとしても対応できると見ています。
 一方で、機構にとって喫緊の課題は何かと問われれば、労災病院の経営状況の改善です。毎回コメントさせていただいているとおりです。産業構造の変化はもとより、超高齢社会の到来や、人口減少の急速な進行、さらには労災病院を見てまいりますと、地域住民、人口の偏在が進んでいるといった状況があります。求められる医療ニーズは地域ごとに異なっており、病院を取り巻く環境は大きく変わってきております。また、令和元年度だけを見ても、具体的には2月、3月ということになりますが、新型コロナ対応に伴う多大な影響も出てきています。このような厳しい環境のもとで、具体的には病棟、病床のダウンサイジングや機能の見直し等、様々な取組を行ってきておりますが、残念ながら収支や損益の赤字から抜け出せない労災病院も少なくない現状があります。そのような中で、職員全体の意識改革を図りながら、働き方改革を進めております。その一環として、退職一時金の見直しが実現しております。財政上の影響は大きく評価しています。
 勤労者の人生を支える大きな役割を担う本機構にとって、病院事業は根幹です。引き続き、機構本部と各施設はもちろんのことですが、厚生労働省を含め労災病院全体の健全経営、あるいは将来展望について、より一層の危機感とスピード感を持って尽力されることを期待しております。以上です。
 
○今村主査
 では、理事長からどうぞよろしくお願いいたします。
 
○労働者健康安全機構理事長
 理事長の有賀から発言させていただきます。私たち労働者健康安全機構は、平成28年度において、労働者健康福祉機構と労働安全衛生総合研究所が統合して発足したところです。勤労者医療の充実、勤労者の安全の向上、産業保健の強化という3つの柱の下に、傘下の多くの諸施設をもって我が国の産業や経済の礎を維持・発展させる、そして、勤労者一人一人の人生を支える、そういう大きな役割を担っているところです。先ほどらいも出ていますが、新型コロナウイルス感染症への対応という大変難しい問題、社会・経済へのインパクトが生じる中で、我々に課せられた業務をしっかりと進めてきたところです。
 第4期中期目標期間においても、政府が推奨するところの一億総活躍社会の実現に向けて、働き方改革においても治療と就労の両立は、先ほどらいの白熱した議論にありましたとおり、重要な位置付けとなっております。それを支える協働研究も大変重要な位置付けという認識です。したがって、そのような観点から、従前にも増して労働者の健康、安全に意を払いながら、病にあっても働き続けることができるように支援する、そういうことが私たちの最重要課題です。そして、働く人々の職業生活を医療の側面から支えるという、そういう理念もありますので、そのフロントランナーとしての役割を充実させながら、治療就労両立支援事業についても質の充実を図っていくという覚悟です。
 主治医や、先ほどらいからあります会社、産業医と、患者に寄り添う両立支援チームの中の一員としてのコーディネーターが、絵で見るとトライアングル型になりますので、そういうトライアングル型のサポート体制の実現に向けては、両立支援コーディネーターの養成を更に量、質ともに継続するということで、取組を着実に進めていきたいと思っております。事業場における両立支援の促進についても、先ほどらい、質疑応答がありましたが、理解を進めていくことが誠に必要なことでありますので、そのような観点でも進めていきたいと思います。
 病院で勤務する勤務医がたくさんおられますが、そのたくさんおられる方たちも、診療報酬に収載されたということにプラスして、自らが主治医である患者さんが、必ずしも治癒しない状況にあっても仕事に戻れると、そういう労働者でもある患者さんのキャリアパスを支援する、そういう観点での主治医のパフォーマンスも必要なので、各学会への啓発活動も引き続き続けていきたいと思っています。そのようなことですので、先ほど来出ていますように、中小企業に関しては産業保健活動が低調なものにとどまっている状況において、私たちが頑張れば頑張るほど、そういう意味では日本が元気であり続けるためにそのようなことが必要だという認識です。第4期中期目標期間においては、傘下の諸施設における協働研究が極めて重要であると、そういう認識の下に労働災害の減少、社会復帰の促進に結び付くように様々な活動を展開して行きたいと思っています。
 コロナの蔓延というかパンデミックに見るように、社会状況は様々に変化しています。労災病院もそのような中で、長期的に人口が減少していくという中にあっても、その地域で大事な仕事をしていることは全くそのとおりでありますので、やはり安定的な運営や安定的な経営基盤の確立ということも大事だという認識を持っています。そのためのことを細かに丁寧にしながら中長期的、戦略的な検討を進めていく必要があると考えて、現在も着々と進めている次第です。当機構は独立行政法人として、今のお話のような高いレベルの社会的要請にしっかり応えていく必要があるので、コンプライアンスの徹底ということも含めて法人としてのガバナンスを強化し、頑張っていきたいと思っております。
 本日は、有識者の皆々様から大変貴重な御意見を賜りました。心より感謝申し上げます。働く人たちの健康と安全を守り続ける、この大きな目的に向かって本日皆々様から貴重な御意見、御指摘、御助言を賜りましたので、今後の私たちの事業の運営にしっかりと反映させていきたいと存じます。本日は誠にありがとうございました。
 
○今村主査
 ありがとうございました。ただいまの監事、理事長の御発言内容について、御意見、御質問等がございましたら、どうぞお願いいたします。オンラインの先生方、いかがでしょうか。大丈夫ですか。ありがとうございます。それでは、以上で本日の議事を終了いたします。最後に事務局からお願いいたします。
 
○事務局
 事務局です。今後の流れについて御説明いたします。本日御議論いただいた労働者健康安全機構の「令和元年度業務実績評価」については、この後、本ワーキンググループにおける御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえ、厚生労働大臣による評価を決定し、法人及び独立行政法人評価制度委員会に通知するとともに公表いたします。決定したそれぞれの内容については、後日、構成員の皆様にもお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
 
○今村主査
それでは、本日はこれで終了とさせていただきます。気温も大分下がってきて、快適な日々が来ることを歓迎したいと思います。長時間にわたり、今日は熱心な御議論をありがとうございました。