2020年9月15日 独立行政法人評価に関する有識者会議 国立病院WG(第7回) 議事録

日時

令和2年9月15日(火) 9:55~11:40

場所

AP虎ノ門 Aルーム(11階)

出席者

松尾主査、富田主査代理、亀岡構成員、河村構成員、齋藤構成員、高瀬構成員、田極構成員、山口構成員

議事

議事内容
○事務局
 それでは定刻となりましたので、ただいまから「第7回独立行政法人評価に関する有識者会議国立病院WG」を開催いたします。事務局の政策立案・評価担当参事官室室長補佐の戸高でございます。よろしくお願いいたします。構成員の皆様におかれましては、お忙しい中をお集まりいただき、ありがとうございます。現在、厚生労働省では、新型コロナウイルス感染症対策に省を挙げて取り組んでいるところです。本日は、可能な限り座席の間隔を取っております。また、マスクを着用したままで御発言いただくようお願いいたします。なお、本日は一般傍聴席を設けず、報道関係者のみの傍聴とさせていただいております。委員、法人、傍聴等の皆様におかれましては、咳エチケットを含め、感染拡大防止対策について御協力いただきますようお願い申し上げます。
 次に、本日の出席状況について御報告いたします。本日は、松尾主査、高瀬構成員がオンラインでの御参加、大西構成員が御欠席です。松尾主査がオンラインでの御参加のため、本日の会議では、富田先生に主査代理として進行をお願いしております。よろしくお願いいたします。
 
○松尾主査
 よろしくお願いします。
 
○事務局
 続きまして御説明の前に、事務局の組織変更と人事異動がありましたので、御報告させていただきます。これまでの政策評価官室で事務局を行っておりましたが、新たに政策立案・評価担当参事官室に組織替えとなり、参事官として生田が着任いたしました。
 
○政策立案・評価担当参事官室参事官
 生田でございます。よろしくお願いいたします。
 
○事務局
 また、政策立案・評価推進官の飯島も出席しております。
 
○政策立案・評価推進官
 飯島です。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○事務局
 続きまして、本日の議事について説明いたします。本日の資料に関しては、お手元のタブレットに収納しておりますので、そちらを御覧ください。また、お手元に、「職員の懲戒処分について」というプレスリリース資料、それから「令和元年度業務実績に係る評価書参考資料」という冊子を配付しております。本日は「国立病院機構」について、「令和元年度業務実績評価」に係る意見聴取を行うこととしております。具体的には、重点化の対象とする項目を中心に御意見を伺えればと考えております。また、例えば「A」という認定が適切かというだけでなく、法人の取組の中で、中期目標の達成に向けて、優良と思われる点や、逆に課題があると思われる点については、評定に直接影響しないような場合であっても、積極的に御指摘をいただければ幸いです。
 また、説明をされる皆様にお願いがございます。本日はオンラインでの御参加の先生もいらっしゃいますので、資料等を引用する場合は、ページ番号、項番等を明確に示していただき、比較的ゆっくりと、はっきりと御説明いただければ幸いです。それでは富田先生、よろしくお願いいたします。
 
○富田主査代理
 ただいま事務局から御説明がありましたが、皆様、何か御質問がありましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは議事に入りたいと思います。
 それでは、国立病院機構の令和元年度業務実績評価について、御議論いただきたいと思います。はじめに、法人所管課室から「重点化対象項目選定の考え方」について御説明いただき、その後、法人から「法人の業務概要」及び「重点化対象項目」の業務実績及び自己評価について御説明いただきます。この2つの説明が終わってから、質疑応答という流れで進めていきたいと思います。それでは法人所管課室から、重点化対象項目選定の考え方について説明をお願いいたします。
 
○医政局医療経営支援課医療独立行政法人支援室長
 医療独立行政法人支援室の樋山でございます。それでは、私より国立病院機構の重点化対象項目の選定の考え方について御説明させていただきます。
 資料1の国立病院機構評価項目一覧を御覧ください。国立病院機構の評価項目は全部で8項目ございます。そのうち5項目が、中期目標で重要度または難易度が高く設定されているため重点化対象項目となります。
 一覧表の上から順に説明させていただきます。まず、診療事業(医療の提供)についてです。医療の質や患者満足度の向上に努めることにより、厚生労働省の政策目標であります「安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりの推進」に寄与するものであるため、重要度が高く設定されております。
 続きまして、診療事業(地域医療への貢献)です。国として、地域医療構想の実現や地域包括ケアシステムの構築を推進しており、機構の個々の病院が、それぞれの地域で求められる医療需要の変化に対応することや、在宅医療支援を含め、ほかの医療機関などと連携を進めることとしており、重要度が高く設定されております。
 また、機構の各病院が地域の実情に応じて、それぞれの地域で異なった連携デザインを構築していく必要があり、その上で地域における将来の医療提供体制を検討しながら医療を提供していくことは難しいところであります。特に、紹介率・逆紹介率といった指標は既に高い水準にある中で、これを維持・向上させていくことは難しいことから難易度が高く設定されております。
 続きまして、診療事業(国の医療政策への貢献)です。南海トラフ地震等の大規模災害が予想される中、人材育成を含め災害発生に備えた機能の充実・強化は重要であり、また、ほかの設置主体では必ずしも実施されないおそれのあるセーフティーネット分野の医療についても、中心的な役割を果たしていく必要があるため重要度が高く設定されております。
 また、必要な医療を確実に提供しながら、災害発生時など国の危機管理に際して求められる医療についても迅速かつ確実に提供できるよう、災害対応体制を整備し、維持することは難しいところであります。また、後発医薬品の使用割合に係る目標達成には、機構では既に政府目標である80%を超える高い水準にある中、更にこれを上回る目標を達成することは難しいことから難易度が高く設定されております。
 続きまして、臨床研究事業です。効率的な臨床研究及び治験を実施するため、各種データの標準化や、医学的根拠を確立する研究事業などは、国が推進する医療分野の研究開発に貢献するものであるため重要度が高く設定されております。また、機構における英語論文掲載数については、これまでに、我が国全体の臨床医学系論文数の増加割合を大幅に超える伸び率で増加してきており、今後、更に増加させることは難しいことから難易度が高く設定されております。
 最後に、業務運営の効率化に関する事項についてです。病院経営を巡る環境が我が国全体として厳しい状況にある中で、結核などの不採算医療の提供や働き方改革に対応しながら、機構全体として経常収支率100%以上を達成することは難しいことから難易度が高く設定されております。説明は以上です。よろしくお願いいたします。
 
○富田主査代理
 続いて法人から「法人の業務概要」及び「重点化対象項目」の業務実績、及び自己評価について説明をお願いいたします。
 
○国立病院機構企画経営部長
 それでは、こちらから失礼いたします。国立病院機構企画経営部長でございます。資料2-1に基づきまして、御説明させていただきます。まず、私のほうから概要についてですが、資料2-1の1ページです。内容については、既に先生方も御承知のところだと思いますが、何点かコメントさせていただきます。3.組織の規模ですが、令和2年4月1日現在、病院数は141病院となっておりますが、これは今年8月いっぱいで北海道の八雲病院が廃止されましたので、今、現状では140病院です。さらに、運営病床数についても昨年度、これまで病棟集約などを進める中で、運営病床数は少しずつ減少してきている状況です。その他、セーフティーネット分野の医療については、左下の所にありますが、引き続きそれぞれの分野において高いシェアを占めているところです。右のほうを御覧いただきますと、4番、5番は、基本的に傾向は同じですが、6番の財務について、令和元年度については2期連続の黒字となっているところです。詳細については、また後ほど御説明をさせていただきます。
 2ページ目ですが、事業体系図について、これまでと引き続き診療事業、臨床研究事業、そして教育研修事業の3本柱で事業を進めているところで、それに基づきまして、3ページ目の評価項目、令和元年度の業務実績ということで、御覧のとおり診療事業及び臨床研究事業については、自己評価Aとさせていただいており、教育研修事業以降についてはB評価とさせていただいております。総合評価については、あらかじめ定められた計算方法に基づき計算した上で、A評価とさせていただいているところです。以下、診療事業以降については、それぞれ担当部長のほうから御説明をさせていただきます。
 
○国立病院機構医療部長
 では、診療事業について御説明いたします。6ページをお開きください。「患者の目線に立った医療の提供」として、国立病院機構全体のサービス向上を図ることを目的として、平成15年から患者満足度調査を実施しております。令和元年度の調査においても、入院、外来ともに高い水準を維持しております。これまでの有識者会議において、こうした満足度調査は、他の設置団体とも比較しやすいようにという御指摘も頂いておりますので、今後、この満足度調査は新しい調査票を用いることとして継続したいと考えております。
 6ページの右側ですが、「複数職種が協働して患者・家族の目線に立った支援を行う取組」として、写真でも御紹介しておりますように、例えば「ゆめ水族館」というものを企画し、水族館に行くことのできない長期療養の患者さんたちに癒しのスペースを提供したり、単調になりがちな入院療養生活の中で、七夕やクリスマス会など、季節のイベントを取り入れたりしております。また、その下ですが、「疾病に関する理解を促すための取組」として、適切な情報発信に努めております。
 こうした取組を進める中では、ボランティアの方々にも多く御協力いただいております。141の病院がありますが、慢性期系では92病院の中で約90%、急性期系49病院の中で92%の施設においてボランティアの方々に御支援いただいており、合計で3万人近くにのぼり、地域の方々と一緒に求められる医療を提供できるよう努めております。
 7ページをお願いいたします。「安心・安全な医療の提供」ですが、医療安全の第一歩は、報告すべきことを報告するという文化を組織に根付かせることが重要だと承知しております。国の報告制度であります「医療事故調査制度」並びに「医療事故情報収集等事業」に対して、国立病院機構の病院においては適切に報告することを基本としております。患者影響度が大きいものについては、病院でその事案を検証したり、再発防止を進めると同時に、全国6つのグループがあり、そのグループにおいてもグループ管内の病院で発生した事例について第三者の視点から病院に助言したり、本部においても、そうした事案を検証するという仕組みを構築しており、こうしたことは国立病院機構の特徴の1つであると言えると考えております。
 7ページ左下です。「病院間相互チェック体制の拡充」についても、私ども国立病院機構で開始し、国の診療報酬の中でも評価されるようになりました。病院間で医療安全活動をチェックし合うことで医療安全の向上を図ろうとするものです。今後は、提供する医療が似ている病院同士、発生頻度が高い事案、例えば「転倒転落」などにテーマを絞って相互チェックすることを予定しております。
 7ページの右側から8ページにかけて、「院内感染防止体制の強化」について説明させていただきます。141全ての病院において、感染症対策チーム(ICT)を組織することができております。こうしたICTを組織できていたことが、今般の新型コロナウイルス感染症対応においても、それぞれの病院や地域において中心的な役割を果たしているところです。
 委員の先生方から事前にいただいた御質問の中で、8ページの左側にも書いておりますが、ICDのドクターに関しては、117病院に配置していることを記載させていただいております。つまり、ICDのいない病院が24病院ありますが、こちらは近隣のNHO病院と連携を図ることで対応に当たっているところです。
 8ページの右側、「③質の高い医療の提供」に移ります。複数の医療従事者が、それぞれの専門性を前提に、目的と情報を共有し、連携を図りながら患者の状況に的確に対応したチーム医療を実施するに当たり、その下の表にお示ししておりますように、多くの病院において複数の職種による協働チームが設置されております。こちらも事前の委員からの御質問の中で、どの病院にどのようなチームを設置するのかということでしたが、本部では具体的な目標を定めて指示しているものではありません。当該病院が、その地域で求められる医療を鑑み、どういうチームが必要かを検討していただくとともに、本部としては、そうした医療が実践できるように必要な研修を企画することとし、今後もこうした研修を継続して実施してまいりたいと考えております。
 チーム医療の推進に必要とされます専門性の高い医療従事者の育成や配置については、9、10ページに、病棟薬剤師、診療看護師、特定行為ができる看護師の実績を記載しております。
 11ページをお願いいたします。「チーム医療の推進」に当たっては、こうした医療人材の育成・配置が重要であると同時に、11ページ右側に書いておりますが、安全で精度が高く効率的な医療の提供も重要であると考えております。私ども国立病院機構では、積極的にクリティカルパスの導入・活用を進めることとしています。11ページ右下の棒グラフにありますように、クリティカルパスの実施割合が49.4%となっており、新規入院患者の2人に1人は、こうしたパスを活用して質が高く効率的な医療提供、適正な在院日数、地域での役割分担を進めることになっております。ここまでが医療の提供となります。
 続いて、15ページの「地域医療への貢献」に移ります。「①医療計画等で求められる機能の発揮」として、15ページの左側の表にありますように、多くの病院が各都道府県の医療計画における5疾病5事業の実施医療機関として位置付けられており、積極的に地域のニーズに応えていくこととしております。
 その右側、「地域医療構想への対応」においても、病院が実施したい医療から、病院の機能に応じて地域から求められる医療への転換を図ることとしています。また、「治す医療」から「治し支える医療」への転換という見方もありますように、地域から求められる医療を、他の医療機関と一緒に連携しながら、厳しい先行きの中でも安定的かつ継続的に提供する体制を確保することを目標に、組織一丸となって取り組むこととしております。
 具体的な成果は、16ページに2つ例示させていただいております。1つ目は、「盛岡医療センター」への「もりおかこども病院」の医療機能の移転です。こちらは既に移転が完了しており、盛岡医療センターでは小児病床の運用を開始し、一方、もりおかこども病院は、クリニックとして外来診療を続けていただき、地域のニーズに応じた機能分化、医療提供体制の再構築の先行事例となっております。
 右側、「弘前病院への弘前市立病院の医療機能の移転」についても、当国立病院機構、弘前市、青森県、弘前大学の連携により整備することとしており、4者間で基本協定書を締結し、その方針に従い、令和4年の医療機能移転を目指し、一つ一つの課題、協議事項について丁寧に進めているところです。
 17ページをお願いいたします。「地域完結型医療を実現するための取組」ですが、クリティカルパスについては、先ほどの再掲となっております。「紹介率及び逆紹介率の向上」については、この図でお示ししておりますように、対前年度比100%を超える実績となっております。
 こちらも事前に委員の先生から御質問をいただきましたが、141ある病院の中で医療内容ごとに、クリティカルパスの実施割合と、紹介率・逆紹介率の違いを整理し、更に深掘りできないかということでした。パスの実施割合は、急性期中心の病院では53.6%となり、先ほどの49%と比較しますと若干高い傾向が見て取れます。セーフティーネット系においては、患者さん一人一人の個別具体的な対応を求められるため、型どおりとはいかずに、パスの実施割合も40%台となっておりました。また、紹介率・逆紹介率についても同様で、一般病床では紹介率が82.4%、逆紹介率が71.8%です。複合型の病院、障害、精神の順で、徐々に紹介・逆紹介率が低くなる傾向がありました。
 18ページの右側、「地域の救急医療体制への取組」についてです。こちらに記載していますように、これまで同様、地域での貢献に努めてまいりましたが、時間の都合上、省略させていただきます。
 19ページは、地域完結型医療、いわゆる地域で治し支える医療を実現するに当たり、地域医療構想の議論を踏まえ、医療機能の分化、地域連携を推進し、地域包括ケアの構築が求められております。その際、在宅療養支援も課題となってまいります。国立病院機構では後方支援という形で在宅医療の推進に貢献することが多うございますが、19ページの右下に書いておりますように、36病院で訪問診療に、68病院で訪問看護にも取り組んでおります。
 20ページです。このように地域包括ケア推進という観点から、これまで以上に、介護施設や福祉施設も含めた入退院時における連携及び退院時の在宅支援の強化を図る必要があると考えており、令和元年度には、右側に書いていますように、宮城病院において国立病院機構で初めて地域包括支援センターの運営に関わることになりました。ここまでで地域医療への貢献の説明を終わりたいと思います。
 続いて、「国の医療政策への貢献」として、23ページです。国の危機管理に際して求められる医療の提供ですが、新型コロナウイルス感染症への対応については、令和2年1月の中国武漢からの帰国者対応に始まり、ダイヤモンド・プリンセス号から現在も続いております市中発生の患者さんの対応まで、多くの職員を派遣したり、患者受入れ病床の確保、患者さんの対応、検査体制の充実など、組織全体で連携を図りながら迅速かつ積極的な対応を進めてまいりました。
 25ページですが、ダイヤモンド・プリンセス号の対応や、厚生労働省のコロナ対策本部の活動においても、DMAT、災害派遣医療チームも大いに活躍してくれております。令和2年4月からはDMAT事務局が本部の一組織となり、これまで常勤8名で対応していた事務局体制が常勤18名と強化されたことで求められる役割を着実に果たすことができたと考えております。
 25ページ右側以降に記載しておりますが、他の設置主体では必ずしも優先的に取り組まれることのない重症心身障害、神経・筋難病、精神疾患、結核といった「セーフティーネット分野の医療の確実な提供」、そして「エイズへの取組推進」においても、これまでと同様に適切な対応に努めてまいりました。こうした分野での貢献こそが、機構の存在意義につながるものと考えております。
 最後に、27ページの「がんゲノム医療」、28ページの「後発医薬品の利用促進」においても、国の医療政策を踏まえた取組を確実に進めていることに触れまして、診療事業の説明を終えたいと思います。ありがとうございました。
 
○国立病院機構総合研究センター長
 引き続き、臨床研究事業についての説明をさせていただきます。32ページの診療情報の収集・分析についてです。平成22年度からレセプトデータとDPCデータの「MIA」というデータベースを作っておりますが、平成27年度から検査値などを含めたSS-MIX2のデータをNCDAとして収集しております。こういったデータに基づき、診療機能分析レポートと臨床評価指標を令和元年度も引き続き作成しており、地域医療構想の調整会議などで、NHOの役割を説明する際に活用する資料となっております。
 NCDAについてですが、令和元年度に新たに3病院が加わり、66病院のデータが蓄積されております。令和元年度までのNCDAの保有患者数は260万人となっており、平成30年度より70万人増加しています。
 33ページに移ります。令和元年度より厚生労働省からの補助事業として、PMDAが保有するMID-NETを活用した医薬品などの安全対策の高度化を図ることを目的として、NCDAのデータをMID-NET側で解析できるように変換する事業が進んでおります。令和元年度は、事業開始初年度として、NCDA側のデータをMID-NETの分析用データセットと同様の形式に変換する変換ツールの作成をしております。こういった試みにより、「リアルワールドデータ」の実用化に貢献できるものと考えています。外部機関へのデータ提供については、民間企業など3件を含む5件の利活用申請がありました。
 34ページ、大規模臨床研究です。私どもの臨床研究事業の定量的な指標として英語の論文掲載数が設定されております。これは文部科学省の科学技術指標における研究開発のアウトプットが、英文論文と特許であることを根拠にしています。集計に当たっては、英語論文であれば何でもよいということではなく、パブメドあるいはウェブ・オブ・サイエンスに掲載されて一定の価置が担保される論文のみをカウントしております。令和元年度の実績は2,747本で、昨年度比で7%増と目標値を多少上回っているところです。これには職員が頑張ってくれたのだと理解をしておりますが、これを維持すべく努力していきたいと思います。EBM推進のための大規模臨床研究については、令和元年度は9課題について進めております。外部競争的資金について、金額は平成30年度に比べて若干少なくなっておりますが、件数では増えています。
 35ページです。臨床研究法に基づき設置された認定臨床研究審査委員会については、本部、名古屋医療センターなど、5か所に設置されております。名古屋医療センターを中心に令和元年度は191件の審査を行っています。治験についても、本部に設置された中央治験審査委員会で審査をしていますが、治験環境については年々厳しくなっておりますので、今後も営業活動など努力していきたいと思っています。
 37ページ、先進医療技術です。今年度、NKT細胞の研究については最終年度を迎えており、来月、再来月ぐらいには先進医療の終了届を出す状況で、今年度中の報告を目指していきたいと思っています。国立病院機構ならではの筋ジストロフィー心筋障害に対するTRPV2阻害薬、これはリザベンですが、ドラッグリポジショニングと言われている古い薬を、新たな効能を見出す試験を先進医療で実施しています。これについては国立病院機構を中心に、15施設で症例登録を進めています。
 38ページです。昨今の電子カルテの活用という意味で、「退院時サマリーの自動生成支援」についても取り組んでいます。
 最後に、臨床研究を実施する人材の育成については、eAPRIN教育研修プログラムの受講状況をお示ししました。令和元年度に受講した人数は約1万8,000人です。これは延べ数ではなく、昨年度、実際に受講した人の数です。臨床研究に携わる多くの職員が受講できる環境が出来上がってきている結果です。臨床研究事業の説明は以上です。
 
○国立病院機構企画経営部長
 続いて、私から48ページ以降の業務運営等の効率化について、ポイントを絞って御説明させていただきます。48ページの左下からですが、理事長が一層リーダーシップを発揮できるマネジメント体制の一環として、今後の国立病院機構の進むべき方向について議論を進めているところです。昨年の10月には、国立病院機構におけるあらゆる取組を貫く理念を定めました。48ページの右上に、3点あります。1つ目が、地域等の患者、住民が必要とする医療の提供、2つ目が、職員が安全、安心に働ける職場、3つ目が、災害時等の危機管理です。これらの理念について、病院長会議などを通じて全職員との共有を図っているところです。
 また、その下ですが、各病院等と本部の間で迅速な意思疎通ができるように、テレビ会議システムの導入を行っております。昨日までで全ての病院に導入済みとなり、今後、活用を図っていきたいと考えております。
 さらに、48ページの右下にありますが、柔軟な給与制度の構築に向けた取組です。がんゲノム医療に取り組む病院においては、遺伝カウンセラーの資格を持つ者を常勤職員として採用できる道を開き、令和2年度から2病院で合計2名を採用しております。また、新型コロナウイルスに対応する職員への手当について、いち早く検討を進め、6月に手当についての制度を施行し、1月のコロナ対応の始まった時点まで遡って手当を支給しているところです。
 49ページの働き方改革の関係です。平成30年度の労働基準法違反事例に対する深い反省を踏まえ、これまで国立病院機構においても、働き方改革について各般の対策を進めてまいりました。基本的な考え方としては、49ページの左側にありますように、医師については、診療などに直接関わらない業務を20%削減するという方向性にする。また、新たな勤務時間管理方法を導入することとした上で、具体策としては、49ページ右側にありますように、長時間労働職員及びその上司に対するヒアリングや指導、ICTソリューションの積極的な活用の検討、更には必要性を十分に吟味した上での定数増による直接的な長時間労働の是正などを行ってきているところです。
 続いて、資料とは別に、本日、机上配布させていただいております令和2年6月26日のプレスリリース資料に基づき、少し追加の説明をさせていただきます。これについては、業務執行体制の在り方との関係ですが、令和2年度に入ってから発覚し、かつ、6月下旬に懲戒解雇処分が行われた本部職員の不祥事についての説明です。これは処分が行われた時期などとの関係上、今回の自己評価書には記載はしておりませんが、処分を受けた職員の行為自体が令和元年度に行われていたことなどを踏まえ、事案の概要と再発防止策について、本日、御説明させていただくものです。
 事案の概要としては、配布資料のとおり、当時の機構本部の経理担当職員が、法人資金の着服などを行っていたものです。既に懲戒処分としており、刑事告訴も行っておりますが、個人の犯罪というだけではなく、それを本部の体制として見抜けなかったことなどについて極めて深刻に捉えており、再発防止の取組を速やかに講じ、その取組を徹底しているところです。
 具体的に申し上げますと、1点目、例えば金庫の鍵の管理などについては、課長職以上の管理職が責任を持って行うこと、また、これまで現金の管理は本部内で行い、銀行への振込は月2回としていたものについて、今後は手数料の徴収は銀行振込を原則とした上で、やむを得ず現金を受領した場合には、遅くとも翌日までには銀行への振込を徹底すること、さらに、これまで本部に対する内部監査は、3年に1回実施されていたものについて毎年実施することとし、各種取組や進捗などについても確認することとしております。そのような形で、今後これらの再発防止策などを進めることにより、信頼の回復を図っていきたいと考えているところです。
 また資料に戻っていただき、50ページです。経常収支などの状況について申し上げます。50ページの左側が令和元年度の状況です。その前に足元の状況で申し上げますと、既に先生方も御承知のとおり、コロナの影響もあります中で、本年4~6月までの累計で、経常赤字が、これは国などからの財政資金が入っていない時点ではありますが、200億円を超える状況になっております。
 一方、このような収入の減少の大きな原因である患者数の減などが顕著になったのが今年の3月からで、令和元年度で区切ると、年度内に行いました各種取組の効果もあり、何とか23億円の黒字を確保し、経常収支率は100%を超える状況となっているところです。
 また、50ページの右側にありますように、特に経営状況の悪い病院を「重点改善病院」と定め、個別の指導を重点的に行ってきております。この中で、令和元年度の取組の結果として、それらの病院における経常収支についてはかなりの改善が見られており、右下のグラフの右のほうに書いておりますが、平成30年度の取組では、前年度からの改善額が約1.8億円にとどまっておりましたが、令和元年度の取組では12.8億円まで向上しているところです。このように令和元年度全体としては、先ほど申しましたように、少し平成30年度よりも状況が悪化している部分はありますが、特に経営状況が悪い病院の底上げについては、ある程度できているものと考えております。
 その他、51、52ページにありますように、例えば51ページの左側にありますが、一部の病院において地域のニーズ等に対応した病棟の整理・集約など、人材の効率的な配置などを通じて効率的な病棟運営を実現しております。
 また、令和元年度も引き続き、投資については、医療機能の維持のための投資は着実に行うこととした上で、地域医療構想のために必要な投資や、短期間での投資回収により更なる資金獲得が期待できる投資を進めております。
 そのほか、51ページ右下の医薬品の共同購入や、あと52ページの大型医療機器等の共同入札の実施、医療材料費の適正化、各種契約の見直しなどの費用削減策を重点的に進めており、これらの効果もあり、令和元年度の経常黒字が達成できたものと考えております。令和2年度においては、コロナの中ですので、現時点で先が見えない状況が続いておりますが、これらの取組に加えて更なる取組を進めることにより、中期計画に定める経常収支率100%以上という目標に近づけていければと考えております。説明は以上です。ありがとうございます。
 
○富田主査代理
 ありがとうございます。ただいま御説明がありました事項について、御意見、御質問がありましたら、お願いいたします。
 
○山口構成員
 御説明ありがとうございました。全体で141という病院数にもかかわらず、年々いろいろなことに前向きに取り組んでいらっしゃることに敬意を表したいと思います。その上で、幾つか意見と質問をさせていただきます。まず意見ですけれども、8ページの右の所にチーム医療の実施ということで、NSTや呼吸ケアチームといった、いろいろなチームがあります。その中で、特に褥瘡とかICTと同じように、NSTというのは、国立病院機構の中でも、どの機能を持った病院でも栄養はとても大事なところかと思いますので、褥瘡とICTが全ての病院でチームができているということからすると、栄養サポートチームも、あと10病院を是非、頑張って設置していただきたいというのが、1つ目の意見です。
 2つ目は17ページです。事前の説明で、クリティカルパスと紹介率・逆紹介率について、急性期の病院とそうではない所とでは違いがあるのではないかというお話をしましたら、今の御説明の中で急性期や一般病院の数をそれぞれ口頭でお示しいただきました。今後は、この表の中に、是非そういったことも分かりやすく記載していただかないと、今、140になるとおっしゃいましたけれども、全体で見ると紛れてしまって見えなくなっている部分があると思うのです。急性期に特徴的な内容であれば、そこだけ取り出すようなことをしていただくと、私たちが見たときに分かりやすい資料になるのではないかということで、次回以降お願いしたいと思います。
 3つ目は、後発医薬品のことが28ページにあります。140病院の平均で88.7%というのは、すごいことだなと思いました。この評価でいいますと、前の年よりも向上しないと評価されないということからすると、ここまで天井に近づいてしまうと翌年が不安になるなと思うぐらいに、驚くべき数字だと思います。1病院でも80%を達成するのはほぼ難しいと思われる中で90%近くになっているということは、どれだけの努力をされているのかなと思いましたので、これは高く評価していいことではないかと思いました。
 そこで、幾つか質問があります。まず6ページの患者満足度調査で、今後、ほかの病院と比較するために変更していかれると。国立病院機構の満足度調査で特徴的だったのが、ネガティブクエスチョンだと思うのですけれども、そういったことも変更されるのかどうか。それによって、見えなくなることはないのだろうかということを感じました。
 2つ目の質問は、7ページで病院間の相互チェックをされており、これはいつも本当にすばらしいなと思うのです。例えば、相互チェックをしたときに好事例が出てくることがあると思うのです。それが相互間チェックをした病院だけでとどまってしまっているのか、機構全体の病院に好事例を紹介するような取組が、さらに発展形としてあるのか、ないのかをお聞きしたいです。
 3つ目として、8~11ページにチーム医療ということで、いろいろな職種の研修のことが書いてあります。専門職の研修のことがいろいろと挙げられているのですけれども、事務職についての研修というのがどうなのかと。病院経営の中で、やはり事務職の方は、ものすごく大事な役割です。なおかつ、マネジメント能力というものは、なかなか教えて育つものでもないだけに、そういう能力を基本的に持った人を選んで育てるということが、とても大事なことではないかなと思うのです。その辺りの取組みがあれば、何か教えていただきたいと思います。
 4つ目の質問は、35ページの認定臨床研究審査委員会です。機構の中で5つの委員会を持っていらっしゃるということですが、私はもっと集約してもいいのではないかと思います。いわゆる倫理審査委員会のようなものが日本にゴマンと散らばっている中で、特にこの認定臨床研究審査委員会は、もう少し集約してもいいのではないかと思うのですけれども、その辺りのお考えを聞かせていただきたいと思います。
 最後に細かいことですが、38ページに、キーボードで自動言語処理技術を進めていると書いてあります。長文で入力しても、適切な漢字に変換できるように、学んでいくのだと思うのですけれども、通常、私たちはキーボードで書いているときに、こんなに長文を書いた後で変換キーを押さないと思うので、意味があるのかなと。大体、文節ごとに変換をして打っていくのが一般的なキーボードの操作ではないかと思うのですけれども、実用性があるのかどうかが気になりました。以上です。
 
○富田主査代理
 5つの質問が出ましたが、御回答をお願いいたします。
 
○国立病院機構医療部長
 御意見ありがとうございました。いただいた御質問について回答させていただきます。まず患者満足度調査ですけれども、現在、新しい様式に変更することとしております。項目自体も、これまで外来と入院、それぞれ100項目以上の項目に回答いただいていたものを、項目も絞ります。それから、ネガティブクエスチョンになっていたということは御指摘のとおりで、答え方についても少し見直すことにしています。ただ、今年はコロナのこともありまして、次年度以降どのような様式でアンケートをやっていこうかということも併せて、検討しておりますので、御質問いただいた内容も踏まえて、より良い調査にしていきたいと考えております。
 それから、病院間の相互チェックについては、それぞれの相互チェックから得られた好事例について、本部から140の病院に横展開しており、例えば、転倒しやすい薬剤に関するアラートの方式などを展開してきたというのがあります。
 8~11ページの事務職の研修については、企画経営部長から回答させていただきます。
 
○国立病院機構企画経営部長
 事務職の研修ですが、特に病院経営のノウハウなどに関する研修については、個別の病院経営研修という形で毎年実施しております。具体的な中身については、経営を分析するツールを使えるような形のシステムを作っておりますので、例えば、その使い方の研修をするとか、その後にそれを使いながら具体的な個別の病院の経営のあり方などについて、ケーススタディー的なものを含めたいろいろなディスカッションなどの研修を実施しているところです。さらに、それについては事務職だけではなくて、例えば看護職の方も一緒にいろいろと議論してもらうとか、それぞれの職種の横のつながりについても考えながら研修を行っているところです。
 
○国立病院機構総合研究センター長
 35ページの認定審査委員会の集約の件ですが、厚生労働省医政局研究開発振興課とも相談させていただいております。来年度の再認定の際には、多分1つ、ないしは2つという形になるのではないかと認識しています。言語の認識についてですが、文字入力の認識というよりは、音声入力の自動変換には有効と考えますので、こういったことだと理解をしていただければと思います。以上です。
 
○富田主査代理
 山口構成員、よろしいでしょうか。
 
○山口構成員
 はい、御回答ありがとうございました。よく分かりました。好事例の横展開もそうですけれども、やはり140あるということを前向きに活かしていただくと、より向上していくのではないかということを、今の回答をお聞きして改めて思いましたので、今後も是非よろしくお願いいたします。
 
○国立病院機構理事長
 認定臨床研究委員会の点ですけれども、もともと厚生労働省の医政局が、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針に基づく倫理審査委員会の認定制度というものを開始して、約4年間でしたけれども、全国で80程度の委員会が認定され、国立病院機構では、5つ認定を受けました。臨床研究法が施行されたときに認定臨床研究委員会に移行してほしいという厚生労働省の意向もあって、5つを移行させました。現状においては、研究のハンドリングの数などに関して、総合研究センター長が申し上げたように、少し絞り込みを考えております。
 AIに関しては、退院時サマリーをカルテから生成するということのために開発しているもので、事例として簡単に示せるものがなかったので、このような事例を出しているわけです。例えば、コンピュータに入っているカルテを順番に読み込んでいって、前後の関係を判断して、ここにあるように胃切除という概念なのか、前後の言葉の一部なのかなどを判断しながら、その中のキーワードを拾っていくというようなシステムを構築しようとしている中の最初の段階です。実は事例を挙げるときも、なかなかいい事例がなくて、少しディスカッションをした上で最終的にこのような形になったのです。なかなか分かりにくいところは申し訳ありませんが、これが本来の目的では決してないというところでございます。
 
○富田主査代理
 それでは松尾主査から御質問があるということです。
 
○松尾主査
 今日は遠い所からで申し訳ありません。私からも幾つか。まず、今の自動翻訳の件ですが、事前の打合せのときにも申し上げたのですが、自然言語処理技術については、日本で幾つか既に先行してやられている事例があります。例えば内閣府のSIPという事業のスマートホスピタル、これは相当先行してやられていると認識しています。ですから、これを余りあちこちで並行してやるのは研究費の無駄遣いということがあるので、是非これは連携していただいて、統合してやっていただくといいのかなと思います。
 特に、そこではサマリーを作るだけではなくて、例えば患者と医者が対話している内容を自動的にカルテに落とし込むのですが、そのときに、例えば痛いという表現も北海道から沖縄まで全然表現が違うのです。この語彙は全部NTTが持っていて、そういった所と協力すると、非常に全国標準の共通したものができるということで、ここのところは是非、余りサイロ的にやらないで、横と協力してやっていただくといいのではないかなと。早くいいものができてくるのではないかと思います。是非検討していただきたいと思います。
 それから、今の御発言と同様、毎回毎回、非常にNHOはよくやっていただいていると思っていて、私も昔は医療畑にいて、今はやっていないのですが、非常に感心しています。すばらしいガバナンスでやっておられると思います。
 その上でお聞きするのですが、最初の6ページの患者満足度調査で、先ほどベンチマークで横比較があったのですが、これについても、例えば医療機能の評価機構とか、国際的にはJCIという組織があって、患者の満足度調査をやっていると思うのです。それで、これを横比較しようと思ったら、ベンチマークをしようと思ったら、標準的な指標をお持ちでないといけないということで、もちろん医療機関とか、機構によって、特殊な項目があるとは思うのですが、これについては、共通するものと特殊なものと、そうでないとなかなか横比較はできないのではないかということで、是非、今後工夫をしていただければというように思っています。
 それから、7ページですが、これは医療安全、医療事故等への対応ですが、大変しっかりやっていただいていて、ありがとうございます。その上でお聞きするのですが、この医療事故とかヒヤリハットの報告がいろいろな職種から挙がってきますが、医師から挙がってくるものは大体少ないです。ただし、医師から挙がってきたものは非常に重篤事例が多いということで、医師からの報告というのは非常に重要なのです。ですから、ここの挙がってくる報告件数というか、まず院内で、ヒヤリハットで挙がってくると思うのですが、そのときに、どのような職種から、重篤度はどのようなものが挙がってきたかということを、多分これはもう分析されていると思うのですが、そういうことも是非教えていただければいいかと思います。ひとつの重要なメルクマールは医師からの報告ではないかなと私は思っていますので、よろしくお願いいたします。
 それから、34ページまで飛びます。前からこれもお願いしていることなのですが、英語の論文数が非常に増えているということで、これも物事を深めながら医療をやるということは非常に大事なことで、これは大変重要であると思うのですが、今、論文数とともに、前から言っていますように、この出た論文というものがどれぐらい読まれるかという被引用回数と言うのでしょうか、これが非常に重要だと言われています。日本は、論文の数自体はちょっとずつ増えているのですが、被引用回数が国際的に見ると非常に低下しているということがあるので、是非こちらのほうも。これは多分、論文の質とか、ニーズにどれぐらい応えた論文であるかということの指標になるので、それも今後、また期が変わって新しい段階になったときに、こういう指標も入れていただければいいのかなと思います。私からは以上です。
 
○富田主査代理
 松尾主査、今のお話は全て要望ということでよろしいでしょうか。
 
○松尾主査
 そうですね。
 
○富田主査代理
 機構のほうは、それでよろしいですか。
 
○国立病院機構理事長
 患者満足度調査に関しては、新しいバージョンでは、日本医療機能評価機構が実施している患者満足度調査の一部を取り入れて、医療機能評価機構が出すベンチマークと照らし合わせができるようなシステムを今、導入するようにしております。
 臨床研究の論文に関しましては、平均のインパクトファクターは出しておりますし、サイテーションに関してはデータの提供元が非公表ということでここでお示しできないのですが、論文当たりのサイテーションは全国平均をやや上回る程度のところを維持しているような状況でございます。
 
○松尾主査
 ありがとうございました。
 
○富田主査代理
 それでは、次に高瀬構成員から御質問です。
 
○高瀬構成員
 3点ほど意見を述べたいと思います。1つは、6ページの待ち時間のところです。毎回、私はこれを言っているのですが、今のコロナ禍の中で、オンライン診療とか、病院に滞在するのはなるべく短くしたいということもありますので、クレジットによる会計処理をもっと増やしたらどうかと思います。4病院ということですが、これは平成30年度と比べて全く増えていないのですが、これはもうちょっと力を入れたらどうかと思っています。
 2点目は、49ページですが、医師の働き方改革です。時間外労働の規制が始まるのは令和5年度からですが、それに対して現在の業務の20%程度削減すれば、それは実現できるのではないかという方針が示されています。これを確実に進めるために、何らかの年度ごとの削減指標のようなものを設けて、それに沿ってやっていったらどうかというのが、1つの提案です。
 もう一つは、50ページの経常収支率ですが、経常収支率は平成30年度の前回の評価では、予算、収支計画及び資金計画のほうに、評価項目としては3-1のほうに入っていたと思うのですが、今回は業務運営の効率化のほうに入っているのですが、これはどうしてかということです。さらに、その評価なのですが、B評価になっています。平成30年度は収支率の達成度が100.8%で自己評価がAになっていたのですが、今回も100.2%と、そんなに変わらないのですがB評価になっているのはどうしてだろうかと。つまり、難易度も高くなっていますし、コロナの影響もあります、更には病院機構がOBの公的年金を負担しているという特別な事情もある中で、100%以上を達成しているのは、A評価でもいいのではないかと思うのですが、どうでしょうか。
 
○富田主査代理
 御回答をお願いいたします。
 
○国立病院機構医療部長
 まず、6ページの所の待ち時間対策につきまして、クレジットカードが使える取組をもう少し進めたらいいのではないかという御意見、御要望を頂きました。コロナの中でオンライン診療が臨時的措置として取り入れられることとなっておりまして、できるだけ病院の滞在時間を短くするような取組というのは、本部からも発信しながら、かつ、どうやって医療の質を担保していくのかという課題にも取り組まなければならないという状況ですので、国のほうの動きも見ながら、ウィズコロナ時代の外来診療の在り方というのを考えていきたいと思います。
 それから、先ほど松尾先生から御質問を頂きました医療安全の観点ですが、どれぐらいの報告が挙がっているのか、医師の報告がどれぐらいの割合を占めるのか、そのものが病院の安全文化を測る目安になるのではないかということでしたが、正に、名古屋大学の医療安全部門とも相談しながら報告文化の見える化に係る取組を始めたところです。データが整理できましたら御報告したいと考えております。
 
○国立病院機構企画経営部長
 私から2点、時間外労働の関係の話、経常収支率の関係についてお答えいたします。まず、時間外労働の話については、先ほど2割削減というところについて、数値目標的なものを設定すべきではないかという御質問だと理解をいたしました。基本的な考え方としましては、我々として20%削減できるという前提で今後、例えばタスクシフトを進めるとか、あとはICTソリューションの活用、スマートフォンの活用などによる業務効率化に取り組む中で、20%減を目指していきたいと考えておりますが、なかなか具体的に数値目標として落とし込むところまで中身の検証と言いますか、それができているというわけでは必ずしもない状況でもございますので、まずは具体的に今後、20%減に向けた検討を進めていく中で、具体的な数値目標にできるかどうかというところも含めて、少し検討させていただければと思います。
 次に経常収支率の関係です。この具体的な指標については、平成30年度までは第3期の中期計画期間、そして令和元年度からは第4期の中期計画期間ということで、第4期の中期計画期間において、評価指標は高瀬構成員から先ほど御指摘されたような形になっているところです。基本的には、単なる金目だけの話ではなくて、経常収支率100%というのを業務効率化全体の中で捉えていこうという形で、第4期からは今のような指標になったと考えておりますが、その中で、平成30年度の業務実績評価においては、基本的には予算や収支計画という評価項目の中で、経常収支率100%を達成したかどうかという、ある意味ではそれだけを、かなり重点的に見る形での評価の内容でしたので、自己評価はAとさせていただいております。
 しかし、今回は正に業務運営の効率化という中で、例えば働き方改革への取組ですとか、その他ガバナンスの問題など、いろいろなところも全て含めた上で評価を行うということになっておりますので、そういう前提で、我々としては自己評価を行った結果、総合的な判断として自己評価はBとさせていただいているところです。
 いずれにしても、そういう中で、いろいろ経営状況が苦しい中で「経常収支率100%を超えているところについてA判定でいいのではないか」というコメントを頂いた点につきましては、誠にありがとうございます。
 
○富田主査代理
 それでは、ほかの構成員からお願いいたします。まず、最初に河村構成員からお願いいたします。
 
○河村構成員
 御説明ありがとうございます。本当に141病院、今は140病院の中でも本当に多岐にわたるミッションを国から与えられている中で、本当に頭が下がると言うか、大変な状況の中でやっていらっしゃると思っております。5疾病や5事業だけではなく、地域医療もあり、在宅の後方支援をなさっている所もあり、それから災害医療があったり、感染症のことも元からやっていらっしゃいますが、ここでコロナのことも出てきて一段と大変でいらして、臨床研究もなさって教育研修もあり、本当にありとあらゆることをやっていらっしゃるのではないかと思い、本当に頭が下がると思っています。
 ただ、然は然りながら、それと併せて働き方改革を達成しないといけないなど、それから、財務運営も厳しく、毎年、経常収支率を黒字にして、今日はお話がありませんでしたが、特別会計時代の借金の返済の話まであり、本当に厳しいミッションが国から課せられている中で、そういうことを達成するということは、二律背反どころか三律背反か四律背反ぐらいではないかと思います。ただ、それを実際にどのように達成していくのかというのは、だんだん独法化されてから、どんどん中期目標が先に進んでいく中で課題になっていらっしゃるのではないかと思います。その関係で、最初に組織運営の関係で少し質問させていただき、あと、全体の組織運営についてお尋ねできればと思います。
 先ほども少しお話がありました、勤務管理の所です。資料の49ページで、いろいろお取り組みされているというお話がありました。こういうところがスタートラインではないかと思います。少しお尋ねしたいのは、新しい勤務時間管理方法の導入は左下に書いてありますが、モデル病院での試行を踏まえて、新しいやり方を導入することとしたということで、これは141病院全ての方、医師、看護師、職員になさっているという理解でよろしいでしょうか。その上で、このページの右上に長時間労働職員へのヒアリング及び指導などと書いてありますが、これは141病院で働かれている全ての方が対象になっているのでしょうか。最初に、そこをお尋ねできればと思います。
 
○富田主査代理
 回答をお願いいたします。
 
 
○国立病院機構職員厚生部長
 新たな勤務時間管理については、今までは人が確認していたアナログの方法から、機械を使って客観的に確認できるという方法に見直すということで、これは順次、各病院に進めていくということで、現在は141病院全てには導入されておりませんが、順次進めていくこととしております。
 
○河村構成員
 141病院の中の幾つぐらいですか。
 
○国立病院機構職員厚生部長
 現在でしょうか。
 
○河村構成員
 はい。
 
○国立病院機構職員厚生部長
 モデル病院でやった7病院については、既に導入されております。
 
○河村構成員
 残りの134病院は、まだということですか。
 
○国立病院機構職員厚生部長
 順次、進めていくということです。
 
○河村構成員
 では、まだ取組は全然ですよね。そういうことから見ると、例えば、長時間労働職員へのヒアリング及び指導をしたといっても客観的に、勤務時間を付けるのは、民間でもそうですが、自己申告だったら絶対に実態とずれるのです。私たちの業界でもそうです。医師の方はもっと全然違うお仕事ですよね。目の前に患者がいらして、先生方はすごく使命感が強く、看護師の方などもみんなそうだと思います。どうしても長時間労働になってしまうというのに、客観的なチェックをしないで自己申告だったら完全にずれてしまうと言うか、その下でヒアリング及び指導をしたとしても、これは全然、実効性が低いと言うか、もう少しスピードを上げてやっていただいたほうがいいのではないかと思います。
 あと、時間がないので、これは同じ組織運営について意見として申し上げます。先ほど少し御説明のあった例の処分の事案についてです。あのように良くないことがあったというのは、やはり組織の運営にも問題があったのではないかと思います。いろいろ御対応は考えられているということで、内部監査を毎年にするというお話もありましたが、それだけでは全然駄目で、国の組織としての運営よりは民間の組織のやり方なども取り入れるような形で、内部監査は抜き打ちでやらなければ駄目です。来ると分かっていたら隠してしまいます。それから、内部通報制度を入れるなど、そういう取組も是非やっていただければと思います。これは意見です。
 あと、最後に質問として、組織運営全体についてお尋ねいたします。これだけたくさんのミッションを与えられてやっていらして、それで、不断の組織の見直しをいろいろされていると、最初に北海道の1病院が閉鎖されたとか、それから、51ページで病床機能の見直しなどを一部の病院やセンターでやっていらっしゃるというのも伺ったのですが、医療関係以外の業界で、民間の企業であればたくさんミッションがある中でどれをやるかというのは選べるのです。ある意味、民間は楽な話ですよね。やりたいことだけやればいいのだから楽ですけれども。そこに重点的に予算を付けて人を付けてという感じでやるのですが、機構の場合はそういうことはとてもできないではないですか。たくさんのミッションがあり、これは国からそれぞれ重要だ、高い目標をたくさん掲げられて、B評価、A評価ということで毎年本当に大変なことではないかと思います。それと先ほどの勤務管理や財務運営のミッションを両立するのはすごく大変だと思います。ここは組織運営として、どのようにやっていこうとお考えですか。これだけ目標がたくさん降ってきてやれやれとなったら、こういう勤務状況になるのはある意味必然かという気もするのです。医師の方、看護師の方、職員の方はすごく使命感が強くて、国からたくさんやれと言われ、目の前に患者がいるということになると、やはり、そこで無理をしてということになるのは当然かと思うのですが、そこをどのように両立してやっていこうと考えていらっしゃるのか、お考えをお答えいただけたらと思います。
 
○富田主査代理
 これは理事長に、よろしいでしょうか。副理事長、どうぞ。
 
○国立病院機構副理事長
 お答え申し上げます。正に御指摘いただきましたとおり、多くの業務について、余り優先順位を付けることができず、それぞれをミッションとして順序立てて実施しなければいけない。同時に働き方改革等も法令に基づいてやらなければいけない。どれかを選ぶというわけにもまいりませんので、例えば、今、御議論いただいたように、働き方改革の取組としてICTの活用をするとか、先ほど20%という話がありましたが、そもそも業務を効率化する。そうした取組をすることによって両立を図るということ。
 また、地域包括ケアの議論などもありますが、全部を自分たちでやるのではなく、地域の方と連携を取りながらいろいろな工夫をする等、様々な取組をあらゆる知恵を絞りながら両立を目指すということをしております。
 
○国立病院機構理事長
 御指摘のミッションの整理に関しては、我々も一番悩んでいるところです。例えば、働き方改革に関して、御指摘のように客観性をどのように入れるかということで、今、申し上げたようにICTを入れるなどしているわけですが、タイムスケジュールが新型コロナ感染症の影響で全部壊れてしまい、しかも結構資金が要るので、その資金繰りに関してもいろいろ考えていたものが全部壊れてしまったので、今、組替えざるを得ず、今それをやっている状況です。ですから、当初の予定より遅れているのは今のような事情があります。今、コロナ関係でもいろいろなミッションも来ておりますので、その中で、やり繰りをしている状況です。
 
○富田主査代理
 では、亀岡構成員、どうぞ。
 
○亀岡構成員
 ありがとうございました。私からは余り難しくないので聞いてください。5ページに質の高い医療の提供があり、ここに定量的指標があります。この中に認定看護師と専門看護師が書いてあります。9ページの特定行為ができる看護師を配置するという所を見ると、診療看護師が中心として出ております。あとは認定看護師が出ています。業務実績評価書の25ページを見ると、特定行為研修修了者の中に専門看護師が入っていますが、9ページには専門看護師は入っていない。さらに、先ほどの5ページの定量的指標の所には診療看護師が入っておらず、急にこちらで出てきているという関係を教えていただきたいというのが1つです。
 あと、これは簡単なので、多分、間違いだと思うのですが、業務実績評価書の189ページです。2番目に、会計監査による監査の実施とあります。これに全ての病院が受けているというようなことを書いています。右側の自己評価にはどのように書いているかというと、「年度計画の目標を達成したい」と希望みたいな感じで書いており、ほかは全部「達成した」と書いているのですが、ここは「達成したい」と、達成できていないのかということがあり、これが少し気になったので教えていただければと思います。
 あと、これも簡単なところですが、6ページの複数職種が協働して患者・家族の目線に立った支援を行う取組は、9割のボランティアが関係されているということになっています。この評価についても目標を達成していると書かれております。私は目標自体がよく見えないのですが、どういう目標を持っておられて達成したのかということです。
 あと、最後は意見です。先ほどお話のあった職員の懲戒についてです。これは灯台下暗しみたいな感じ、つまり、足元で起こったのかな。これは一般的にあり得ることなのですが、例えば、通常、社会福祉法人を見ても、行政の方が指導に行くと、必ずほとんどの取引は全て通帳を通しなさいという指導をしているのです。今お話を聞くと、月に2回ぐらいしかやっていなかったとか、余りにも自分の所を見る、行政の人だからやっていないことは全くなくて、本来やるのでしょうが。足元で、なおかつ、これは内部統制といっても日頃少し気を付ければ防げる話なのです。それを、まさかやっていないだろうと思ったところに問題があるのでしょうが、通常の行政の中でも皆さんはきちんとされていますので、この辺りは是非きちんとやっていただきたいという要望です。よろしくお願いします。以上です。
 
○富田主査代理
 あと、構成員のお二人に御質問いただかないといけないので、今の御質問について簡潔に答えてください。
 
○国立病院機構医療部長
 看護師については、10ページに専門・認定看護師の配置数について記載しています。診療看護師(JNP)と特定行為の看護師については、38行為21区分の全ての特定行為を実施できる者がJNP、38行為21区分のそれぞれの領域ごとに履修した者が特定行為を実施する看護師としております。専門看護師と認定看護師については、簡潔にご説明すれば、専門看護師は教育や研究に従事していただく方が多く、認定看護師は感染、救急、褥瘡といった臨床現場で活躍することが期待されています。
 複数職種が協働して患者・家族の目線に立った支援を行う取組において多くのボランティアの方々に御協力いただいていることをご説明しましたが、何人のボランティアの方々に御協力いただくかということを目標にしているのではなく、地域に溶け込み、地域の方のご支援のもとで医療を提供していることを御説明しております。以上です。
 
○富田主査代理
 それでは、齋藤構成員から、お願いいたします。
 
○齋藤構成員
 コメントです。細かなところではまだ改善することはもちろんあるのかと思いますが、これだけの組織をマネジメントしていらっしゃる成果に対して高く評価したいと思います。医療というミッションがあると、それにこだわり過ぎて組織のマネジメントがおろそかになることがあるのかと思います。大きな組織を運営し、たくさんの人を動かし、ボランティアも3万人を動員し、看護師の能力を活性化して、医師の補強をしている。人の力を上手にいかして組織を運営していらっしゃるということは、なかなか病院経営では見られないことだと思っております。今年はまたまた大変な時期に遭遇してしまいましたが、是非、マネジメント能力を更にいかして、これからも経営していただきたいと思います。以上です。
 
○田極構成員
 丁寧な資料の作成と御説明ありがとうございます。意見と要望を述べさせていただきます。まず、6ページにありましたが、待ち時間を減らす取組、検査の説明窓口を1つにする取組もされていて、こういう積み重ねが患者満足度にもつながっているということ、また、医師の御負担やそれ以外の職種の方々の御負担を減らす取組の1つだと見えます。また、全ての病院において医療相談窓口を設置していて、しかも、137病院でMSWが551名もいらっしゃるというところも非常に評価できる点だと思います。
 また、6ページに、長期療養の患者に対して、ゆめ水族館の例などを御紹介していただいております。私も一度施設を見学させていただいたことがあるのですが、その当時は非常に暗いイメージだったのですけれども、今はこういう取組までされるようになり、かなり革新的に変わってきたというのが見てとれるところです。是非こういう取組については今後も進めていただきたいと思っております。
 また、国立病院機構のよいところは、1つの病院が自分たちで考えて工夫した事例を、好事例についてはグループの中で共有するというところにとどまらず、日本の医療全体についても貢献しているところがある。例えば、7ページで、医療安全について、病院間相互チェック体制という取組を国立病院機構でされて、それが評価されて診療報酬につながったという仕組みが出来たということもありますし、7ページの右にもありますが、「転倒・転落を起こす可能性が高い」薬剤一覧表を作成して注意を呼び掛ける。こういう好事例についても国立病院機構の中で共有しているということがありますが、これについても是非、国と共有していただけたらと思います。
 また、それ以外についても、かなり専門職の方々の研修を熱心にされていて、スキルアップに努めていらっしゃるということもあります。先ほど後半の所で、医師の勤務時間等のお話がありましたが、49ページですけれども、まずはタイムスタディでどういうところが節約できる部分かというのを明らかにしたというところが一歩進んだところです。さらに、この中について、例えば、医師でなくてもできる業務、診療記録の記載等については医師事務作業補助者などにタスクシフティングしていくという取組をされていると見てとれます。また、病棟薬剤師の配置の人数なども途中に書かれていたかと思います。病棟薬剤師も、医師や看護師の勤務負担の軽減につながっているというのは国の調査でも出ているところですので、是非、こういうところを進めていただきたいと思います。
 また、18ページなどにも書いておりますが、入退院支援センターにおける介護福祉施設との連携及び在宅支援がありますけれども、今、入院期間は非常に短くなっています。こういう中で、患者側からすると、すぐに退院しなければいけないというのがかなりプレッシャーにもなり、その後どうなってしまうのだろうという不安感もあると思います。今、治療と仕事の両立支援などが国の施策としても言われているところですので、こういうところについては是非、これからも積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 また、23ページの新型コロナに対する対応です。1月から早速に体制を整えていろいろな取組や活動を実際に行ったというところについては、非常に心強い取組をされたということで、私はこの点についても高く評価したいと思います。こういうところについては、なくてはならない医療機関として、政策医療の部分は経営上苦しいということもありますので民間がなかなか手を出せないところですが、国立病院機構としてこういう政策に関わる部分については、これからもなくてはならないセーフティーネットとして力を入れていただきたいと思います。その意味では、25ページのNICUの後方支援病床の取組なども、今、NICUが長期入院になりがちなので、こういう後方支援病床として受入れを進めるというのは非常に大事なことだと思いますので、こういうところについても是非これからも進めていただきたいと思います。
 また、先ほど山口構成員からもお話がございましたが、後発医薬品の使用率については非常に驚異的な数字と評価してもいいかと思います。こういう内容については、ほかの病院にとっても参考になると思いますので、都道府県全体でも後発医薬品の数量割合については引き上げていかなければいけない中で、率先してモデルを示していただけたらと思います。私からは以上です。
 
○富田主査代理
 御意見を頂きましたので、よろしいでしょうか。あと4分で半になりますが、松尾主査と高瀬構成員は、お時間は大丈夫ですか。このまま行くと45分ぐらいになりそうですが、大丈夫でしょうか。
 
○松尾主査
 松尾です。私は11時半ぐらいに、また別の会議があるものですから、すみません。早めに失礼いたします。
 
○高瀬構成員
 高瀬です。私は別に構いません。
 
○富田主査代理
 では、申し訳ないのですが、松尾主査はお時間になったら。なるべく終わるようにしますが、あと4分では難しいかもしれません。
 
○松尾主査
 大変申し訳ございません。
 
○富田主査代理
 続いて、年度評価について、今回説明がなかった評価項目について御意見がございましたらお願いいたします。よろしいでしょうか。続いて、法人の監事及び理事長から、年度・中期目標期間における目標の達成状況等を踏まえて、今後の法人の業務運営等について、コメントを頂ければと存じます。最初に法人の監事から、続いて法人の理事長よりお願いいたします。
 
○国立病院機構監事
 監事でございます。どうぞよろしくお願いいたします。令和元年度の監査結果については、お手元の監査報告のとおり、全て適正で特に問題はございません。次に、法人の業務運営の状況や今後の課題についてです。令和元年度においては、理事長のリーダーシップの下、SUREプロジェクトを推進し、本部、病院職員の皆さんが一体となって業務運営改善のため日々努力を重ね、また、経営面においても給与、賞与の改定見送りに加え、期末賞与も支給を見送るなどの懸命な経費圧縮努力をし、経常収支の黒字を達成したことは大いに評価すべきものと思っております。
 また、新型コロナウイルス感染症についても、国からの要請を受けて、初動期段階から国関連施設やダイヤモンド・プリンセス号への医療スタッフの派遣並びに機構病院での患者受入れを行い、その後についても、自治体と協力しながら率先してその対応に多くの経営資源を注いでいることは、国の政策を担う当機構として役割を十分に果たしているものと思っております。また、昨年度、御指摘いただいた労働環境改善に係る取組については、法人を挙げて着実に取り組んでいる状況について、適宜、報告を受けております。
 加えて、先ほど先生方から御指摘を受けた4月の本部経理職員の非違行為事案については、誠に遺憾な事案であり、監事としても重く受け止めております。これについては既に監事監査を実施して、再発防止策の取組や担当者と管理者の職務の分離の徹底など、高い緊張感を持って適切に運営しているということについては確認しております。今後についても先生方の御指摘のとおり、適宜、確認をしてまいりたいと考えております。
 次に、今後の課題です。長らく当機構の重荷になっておりました長期公経済負担が令和3年度からなくなることが決まりました。これについては大変有り難いことなのですが、一方で、国からの運営費交付金も皆減になると伺っております。また、足元の新型コロナウイルス感染症の終息が見通せない状況下で、医療現場では、職員の皆さんが自らの感染リスクと風評リスクを背負いながらも懸命に診療に当たっており、本当に頭が下がる思いです。しかしながら、巷間言われておりますように、経営面への影響が極めて甚大であり、特に長期運転資金を調達する術を持っていない当機構にとっては、資金繰りに対する不安が極めて大きく、もう一段踏み込んだ国からの支援がなければ法人の存続に関わりかねないダメージを受ける危機感を強く持っております。
 かかる中、公的病院として地域医療構想の中で、国及び地域から求められる医療の提供をしっかり継続していくこと、職員が安全・安心に働くことができるよう労働環境改善にしっかり取り組むことなど、克服すべき課題は多いものと認識しております。これらの課題を乗り越え中期目標を達成していくためにも、業務運営改善に係る不断の努力を継続し、安定的な法人経営を行っていくことが重要だと考えております。以上です。
 
○国立病院機構理事長
 理事長から発言させていただきます。本日は令和元年度における当機構の業務実績について説明させていただく時間を頂戴し、また、説明に対して御質問、御意見を頂きましてありがとうございます。国立病院機構では、令和元年度が初年度となる第4期中期計画期間を変革期と位置付け、地域の医療需要の変化に自主的に対応することで、病院が実施したい医療から病院の機能に応じて地域から求められる医療への転換を図り、また、拡大する介護福祉ニーズに対応するために在宅医療との連携を強め、「治す医療」から「治し生活を支える医療」への転換を図ることとしています。
 その上で、2040年を視野に入れつつ地域において必要とされる医療の安定的、かつ、継続的な提供、全ての職員にとって安全・安心に働ける環境づくり、災害時等の危機管理の3点を大きな柱として取組を進めております。特に最近では危機管理の一環として、本年1月以降、国や自治体からの要請を受けつつ新型コロナウイルス感染症への対応も積極的に取り組んでおり、国の医療政策及び地域における医療の提供等に大きく貢献してきているものと考えております。
 経営面では、昨今の病院経営をめぐる極めて厳しい環境に加えて、コロナ対応を進める中、患者数の著しい減少等となっており、先を見通すことが極めて困難な状況ですが、令和元年度においては、先ほど報告したとおり、診療の制限や患者の受診控えによる経営への影響が顕著となったのが3月に入ってからであったことから、それまで経営改善や費用削減を引き続き進めていたことも相まって、何とか平成30年度に引き続き2期連続の黒字とし、経常収支率100%以上の目標を達成することができました。しかしながら、4~6月の累積での経常収支は200億円を超える赤字となり、今後の見通しとしては、他の医療機関と同様に深刻な状況となっております。
 こうした厳しい状況ですが、コロナ感染症を念頭に置いた診療体制の整備に加え、国や都道府県等から措置された関連の補助金の最大限の活用や、更なる費用削減等に向けた努力を通してコロナの流行が終息した後も見据えた経営改善に引き続き取り組んでまいります。また、これまで当機構では、他の法人のほとんどが義務付けられていない、基礎年金の国庫負担分に相当する公経済負担を毎年度負担してきておりましたが、これまでの長年の要望が実を結び、先の通常国会における関係法律の改正案の可決・成立により、令和3年度からは負担義務が廃止されております。しかし、それに併せて、国からの運営交付金がなくされる予定であり、短期的には収支構造の変更に対応した見直しが必要となりますが、長期的には医療機器や人材への投資能力を踏まえた資金活用の重要度が高まるものと考えております。
 設備投資については、医療の質の向上や患者の療養環境改善と健全な経営とのバランスを図りながら老朽建物の更新等を行いつつ、中長期的に安定した投資を継続するために引き続き法人全体の経営状況を踏まえた投資枠を設定し、その下で各病院の財務状況に応じ、法人として適切な規模で積極的な投資を行っております。このため、現在、新規投資は金額ベースで大幅に縮減する形となっておりますが、今後の経営状況を踏まえつつ財務体力を取り戻した暁には、医療の高度化を図るための機器整備についても積極的に取り組みたいと考えております。
 我が国は2040年に向けて高齢者が増え医療のニーズが高まりますが、人口減少のため働き手が大幅に減少し、さらに、求められる医療の形も大きく変化していくことになります。それら厳しい状況の中、当機構の各病院が引き続き地域の関係者や患者から必要と評価されるためには、自らの足元を固めた上で、地域から求められる医療を安定的、かつ、継続的に提供していくことが重要となります。将来を見据え、職員一同努力を重ね、厚生労働大臣から示されている中期目標の内容を達成していきたいと考えております。
 また、現在、国において進められている地域医療構想の議論に対しても当法人として積極的に参画し、地域の医療需要の変化に自主的に対応するなど地域医療に一層貢献してまいります。さらに、働き方改革を進めることを通じて、職員が安全・安心に働ける職場環境の改善を図っていくことが、より良い医療を提供することに結び付くものと考えております。そのために、新たな勤務時間管理の方法の導入や業務効率化のための医療サービスの生産性向上に向けたテクノロジーの実用化推進、医師のタスクシフティングを担う人材育成などに取り組み、労働環境の改善について、より一層重点的に推し進めてまいります。
 終わりに、今般のコロナ禍が及ぼす法人経営への影響は予断を許さない状況ですが、我々は今後とも、国立病院機構の使命である医療の提供、臨床研究、教育研修などを継続的に的確に果たし、我が国の医療の向上に貢献していきます。その中で、患者をはじめとする地域の方々に信頼され、職員の一人一人が誇りを持って働ける国立病院機構を引き続き発展させていくため、質の高い医療の提供とその基盤となる経営改善に取り組んでまいります。引き続き、本有識者会議の皆様の御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げます。
 
○富田主査代理
 ありがとうございました。ただいまの御発言の内容について、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。
 
○河村構成員
 御説明ありがとうございます。監事の方からお話があった国との財務運営の関係のところで、理事長も少しお話してくださったのですが、大事なところだと思うので質問いたします。長期債務の負担がなくなったことはよかったと思います。一方で、運営費交付金がなくなったとすると、機構は基本的に医業収支のところは収支相償でずっとやっていらして運営費交付金が入っていなくて、確か特別会計時代から長くお勤めになられている職員の方々の退職債務の運営費交付金が出ていたのではないでしょうか。それは独法化されて相当な年数がたったから、そういう退職の方がなくなってきたということではなくて、そこの部分は自分で出してくださいということなのでしょうか。
 
○国立病院機構監事
 というように伺っております。
 
○河村構成員
 では、単純に長期債務負担がなくなってよかったという感じではないのですね。本当に厳しくて大変でいらっしゃると思います。
 
○国立病院機構副理事長
 補足させていただきます。今までは、いわゆる基礎年金の2分の1相当分を自前でということになっておりました。それが今回、御理解いただけて解消されたということです。同時に、今までは別途、運営費交付金を頂いておりましたが、その部分も偶々ですが、令和元年度段階でほぼ同額ということがあり、それも一旦なくなると伺っているところです。
 現時点では、その分について我々が自主的に収益の中から確保しなければならないという意味では特段変わりはないのですが、先ほど理事長から申し上げたように、将来的には国時代分の退職手当については持ち出し分が減っていくということで、その分は余力が出るということ。それから高齢化していく中で、今までであれば義務的に年金支出が増えていきますので、更に負担すべき額が20年間で2,000億円以上が想定されておりましたが、その増えていくであろうと想定されていた部分の負担がなくなっていくという意味では、リスクというか、将来の極めて厳しい経営状況に追い込まれることから回避されたということであり、有り難い見直しだったと理解しております。
 
○齋藤構成員
 一言だけ、どうしても申し上げたかったのですが、これだけ大変な状況にありながら、いち早くコロナ手当をお出しになったということは、働く人たちのことを本当に心から思っていらっしゃるのだと思っておりました。先ほど申し上げるのを忘れたのですが、そうやって働く人のことを支えながら厳しい状況を乗り越えようということは、私には不可能に聞こえますので、淡々とやるだけではなくて国に対して働き掛けて何か援助資金をもらうとか、政治への働きかけにも是非、力を注いでいただけたらと思います。以上です。
 
○富田主査代理
 高瀬構成員、よろしいでしょうか。
 
○高瀬構成員
 特にありません。
 
○富田主査代理
 では、ほかの構成員から御意見がなければ。それでは、以上で本日の議事を終了いたします。最後に事務局から、お願いします。
 
○事務局
 今後の流れについて説明いたします。本日、御議論いただいた国立病院機構の「令和元年度業務実績評価」については、この後、本WGにおける御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえ、厚生労働大臣による評価を決定し、法人及び総務省の独立行政法人評価制度委員会に通知するとともに公表いたします。決定したそれぞれの内容については、後日、構成員の皆様にもお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。事務局からは、以上です。
 
○富田主査代理
 長時間にわたり熱心な御議論をいただき、ありがとうございました。主査代理の不手際で遅くなったことをお詫び申し上げます。今日は本当にありがとうございました。御苦労さまでした。独立行政法人評価に関する有識者会議国立病院WG(第7回)を終了いたします。
 
(了)