第1回職場適応援助者養成研修のあり方に関する研究会(議事録)

日時

令和2年8月27日(木) 15:00~17:00

場所

厚生労働省 省議室(9階)

議事

○秋場地域就労支援室長補佐 ただいまから第1回職場適応援助者養成研修のあり方に関する研究会を開催いたします。参集者の皆様方には、本日御多忙のところ御参集いただきましてありがとうございます。座長が選出されるまでの間、事務局で司会を務めさせていただきますので、よろしくお願いいたします。まず研究会の開催に当たり、障害者雇用対策課長より御挨拶申し上げます。
○小野寺障害者雇用対策課長 障害者雇用対策課長の小野寺です。本日は、よろしくお願いいたします。大変暑さの厳しい中、御足労いただきましてありがとうございます。今回新たに設置いたしましたこの研究会でありますが、いわゆるジョブコーチの養成については、平成18年度に現行制度がスタートし、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構、それから厚生労働大臣指定の研修機関に研修を行っていただいているところです。この研修自体のカリキュラムは、平成20年度に開催されました障害者の一般就労を支える人材の育成のあり方に関する研究会の中で検討が行われて見直しが行われたということですが、そこから既に10年以上が経過し、障害者雇用自体を取り巻く環境、社会のニーズや状況に変化があった中でも、カリキュラム自体は手付かずになってしまっています。また、ジョブコーチ自体のあり方も求められるスキルも変わっていると思っているところです。
少し中期的に先の話に目を向けますと、今年度中に引き上げを予定しておりました障害者雇用率については、コロナ渦の経済危機だけではなく、障害者雇用を維持する上での障害者の働き方や働く体制等、様々な見直しを迫られているような状況下で、時間的猶予も必要であると、使用者側からのご意見等を踏まえ、最終的には3月1日施行ということで議論は収束しております。
この障害者雇用率については次の段階の引き上げが令和5年4月を予定しておりますので、小刻みに考えなければいけない状況になっております。障害者雇用率の議論が一旦収束すると、公務部門の不適切計上事案で先送りになっておりました、我が国の障害者雇用について、障害者雇用納付金制度、障害者雇用率制度両輪の中で量の確保という意味では、すごくキャッチアップしてきているが、一方で質の部分はどうかという問いに民間部門含め、答える時期になってきております。
障害者雇用率制度、あるいは障害者雇用納付金制度、さらには障害者の福祉から雇用、福祉から就労という流れの中で各地域において様々な役割を担っている機関があります。そして、ジョブコーチを含めて、それらの機関等に障害者を支援している人材があります。本当の障害者雇用を効果的に進めていく上で、それぞれどういうあり方がいいのか、あるいは人材像としてどういう人材が求められるのか、横の広がりと、垂直的で階層的な人材像ということもあり得ると思います。そういった人材像も含めて、改めて考え直す時期にきております。中期的には、少しそういった議論をこれから審議会でしていくことになるわけです。
本日も、障害福祉部の就労支援専門官にもオブザーバーで来ていただいていますが、福祉と雇用の連携は非常に大きなテーマになりますし、それらを含めて真摯に議論をしていく非常に重要な局面に差しかかっていると思っております。それも見据えながら、足下で見ると冒頭に申し上げたようなジョブコーチの育成について、社会的ニーズ等に合っているかというところをしっかりと踏まえた上で、この研究会でまずはカリキュラムや研修のあり方、コロナの影響で様々な議論もあった研修方法について直近で見直せるものはどんどん見直していこうということですので、どういったあり方がいいのかを御検討いただきたいと思っております。
いずれにしても、中期的な検討の視点も視野に入れつつ、直近でできることを最大限にやっていくということで、今日お集まりいただきました委員の皆様は、様々な実践経験があり知識をお持ちでいらっしゃいますので、忌憚のない御意見を頂きながら、年度末までに時間的にはかなりスピード感を持ってやらないといけませんので、御協力を賜りながら進めていければと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○秋場地域就労支援室長補佐 本研究会は、ペーパーレスになっており、タブレットを使用して行いますので、使用方法について簡単に御説明いたします。お手元にペーパーレス審議会タブレット操作説明書もありますので、そちらも参照していただければと思います。
まず、タブレットの画面上に資料一覧が表示されております。資料のタイトルをタップしていただきますと、本体資料が表示されます。資料は2本の指を広げたり縮めたりすることで、資料の拡大、縮小が可能となっております。また、ページをめくる際には画面に指を置いて上下にスライドしていただければ、1ページずつめくることが可能となっております。操作説明書を御参照ください。使用方法に御不明な点や機器の不具合等がありましたら、遠慮なく挙手をお願いいたします。会議の途中でも、事務局が個別に御説明に伺います。
続きまして、本日は第1回ですので、まず本研究会の設置要綱について御説明いたします。資料1-1を御覧ください。本研究会の趣旨につきましては、今、課長からも御挨拶の中で申し上げたとおりですが、ジョブコーチの養成研修カリキュラムにつきましては、平成21年度に見直して以降、大幅な見直しを行っていない状況になっております。この10年の間にジョブコーチを取り巻く状況、障害者雇用を取り巻く状況が変化しており、求められる役割やスキルが変わっていることも想定されます。現在のニーズに合ったカリキュラムの見直し及び研修方法について御議論いただくことを趣旨として、お集まりいただいた次第です。
3の研究会の運営ですが、この研究会は障害者雇用対策課長からお願い申し上げてお集まりいただいております。研究会の座長は、参集者の互選により選出することとなっております。研究会の議事については、原則公開とし、議事録及び資料を公開いたしますが、厚生労働省が定める審議会等会合の公開に関する指針における審議会等会合の公開に関する考え方に準拠し、座長が非公開とすることが妥当であると判断した場合には、非公開とさせていただきます。公開のルールにつきましては、参考資料1にお付けしております。研究会の庶務は、私ども障害者雇用対策課地域就労支援室で担当します。参集者については、別紙に名簿が付いておりますので御覧ください。開催の時期についてですが、今日が第1回ということで令和2年8月からとしております。
次に、資料1-2を御覧ください。今後のスケジュール(案)をお示ししております。御議論いただく内容は、今、課長からもありましたが、できれば来年度から反映させていきたいと思っている関係で、ハイペースになりますが、1か月から1か月半に一度ぐらいのペースで開催させていただき、来年1月頃に取りまとめるというスケジュールで進めていきたいと思っております。開催要綱の説明は以上になります。
次に、お集まりいただきました委員の皆様方の紹介をいたします。名簿は、別紙を御覧ください。恐縮ですが、御紹介した際に皆様方から、一言ずつ御挨拶を頂ければと思います。名簿は五十音順になっておりますので、朝日委員からお願いいたします。
○朝日委員 埼玉県立大学の朝日雅也です。御説明がありましたように、この状況下の中で、しかしこの状況下だからこそ、ここで御議論できることを大変嬉しく思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○井田委員 ANAエアポートサービス株式会社の井田泰正と申します。民間でジョブコーチということで今回選出いただき、ありがとうございます。
○岡本委員 東京障害者職業センターの岡本と申します。この4月から着任しました。今担当しているのは、ジョブコーチ支援、事業主支援の担当です。現状を踏まえて、何かいい意見が言えればと思っております。よろしくお願いします。
○小川委員 大妻女子大学の小川です。よろしくお願いいたします。ジョブコーチの養成をしているジョブコーチネットワークの理事長という立場と、大妻女子大学では高等教育機関としてジョブコーチの養成もしておりますので、そうした観点も少し入れながら、この会議に参加したいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
○酒井委員 酒井と申します。今回はジョブコーチ連絡協議会の所属でこの研究会には参加をさせていただいていますが、普段は大阪市職業リハビリテーションセンターという職業訓練をする施設に在籍しております。ジョブコーチ連絡協議会は、民間の養成研修機関が主に構成団体となっており、3つの部会があります。1つが養成研修を考える養成研修の部会、2つ目が訪問型の認定法人で、ジョブコーチの活動そのものを考える部会、3つ目がナカポツセンターに配置されている主任職場定着支援担当のあり方等について考える部会で構成されています。どうぞよろしくお願いいたします。
○佐藤委員 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構職業リハビリテーション部研修課の佐藤と申します。私どもの所でも訪問型ジョブコーチ、企業在籍型ジョブコーチの研修を行っていますが、今年度はなかなか実施が難しく、やっと今週、今年度初めての研修を実施しているところです。その辺も、いろいろ議論をさせていただければと思います。
○鈴木委員 特定非営利活動法人くらしえん・しごとえんの鈴木と申します。私自身、個人としては実際2006年から第1号、そしていまだに訪問型ということで、ずっとジョブコーチをしてきております。もう1つは先ほど酒井委員、小川委員からもありましたが、ジョブコーチ連絡協議会にも構成団体として一緒に活動しております。本当に雇用現場はいろいろな問題があると思いますので、是非いい会になっていけばと思っております。よろしくお願いいたします。
○征矢委員 渋谷公共職業安定所専門援助第二部門統括職業指導官の征矢と申します。今年4月から着任し、障害者の職業相談、紹介を担当しております。よろしくお願いいたします。
○高岡委員 職場で精神障害者の雇用を始めるに当たり、訪問型のジョブコーチの支援を頂き、4年目に入りました。また、病院としては精神科の病院ということで、就労支援というような形で、ハローワークと連携もしている状況です。
○松為委員 松為です。よろしくお願いいたします。今回のジョブコーチのディスカッションが中心になってくる歴史を見ますと、人材育成の委員会、その後あり方検討会1次、2次と、その辺りをずっと関わってきたものですから、正に時代の流れの中で、新しくこういった人材のあり方を皆様と一緒に検討することは非常に嬉しく思いますので、よろしくお願いいたします。
○山地委員 多摩棕櫚亭協会から参りました、ナカポツのオープナーの山地と申します。精神障害がある方の支援だけをやりたくて、ここまで来ました。よろしくお願いいたします。
○秋場地域就労支援室長補佐 ありがとうございました。続きまして、事務局メンバーを御紹介いたします。先ほど御挨拶いたしました小野寺障害者雇用対策課長、秋場地域就労支援室長補佐、西村地域就労支援室職場適応援助係長です。またオブザーバーとして、障害保健福祉部障害福祉課から、井上就労支援専門官に御参加いただいております。よろしくお願いいたします。
続きまして、要綱に従い、座長の選任に入らせていただきます。先ほど御説明しました要綱3の(2)により、この研究会の座長は、参集者の皆様方の互選により選出することとしております。事務局としては、朝日委員にお願いしたいと考えておりますが、皆様いかがでしょうか。
                                            (異議なし)
○秋場地域就労支援室長補佐 ありがとうございます。異論がありませんでしたので、本研究会の座長を朝日委員にお願い申し上げたいと思います。それでは朝日委員、これからの議事進行についてよろしくお願いいたします。
○朝日座長 それでは、ただいま互選により座長に選出いただきました朝日でございます。改めてよろしくお願いしたいと思います。今は教育研究の場におりますので、非常に実践力の養成に関わる今回の研究会のテーマについては、御参集の皆様方のお力添えを頂いて、是非成果を上げていきたいと思いますので、くれぐれも御協力のほど、よろしくお願いいたしたいと思います。
それでは早速ですが、本日の議題に入りたいと思います。本日は議論の第1回ですので、キックオフということで最初に制度や現状について御説明を頂いた後、論点について議論をしていきたいと思っております。まず、次第の議題2になりますけれども、「職場適応援助者(ジョブコーチ制度)等養成研修の現状等について」ということで、事務局から御説明をお願いいたします。よろしくお願いいたします。
○秋場地域就労支援室長補佐 事務局から資料2-1を御説明させていただきます。今後の議論のベースとして、改めて制度と現状について御説明いたします。1ページをおめくりください。ジョブコーチ支援は障害者の職場適応を容易にするため、職場を訪問して、具体的な課題について本人と事業主の双方に支援を行うことを特徴とする支援方法です。事前にアセスメントを行って、課題を把握し、支援計画を立てた後に実際の支援に入っていくものです。
標準的には、最初は集中的に支援に入り、課題が解決した後は徐々にフェードアウトしながら改善のポイントの定着を図っていき、最終的にはジョブコーチがいなくても、事業主と本人だけで職場適応できる状態、ナチュラルサポートと言っておりますが、事業主と本人だけで職場適応できる状態にしていくというのが支援の流れになっております。
ジョブコーチは3種類あり、地域障害者職業センターの配置型ジョブコーチのほか、社会福祉法人等の訪問型ジョブコーチ、そして企業内で共に働く障害者を支援する企業在籍型ジョブコーチの3種類になっております。資料の右下にありますが、養成の実績としては、令和元年度併せて約1,400人の養成をしております。
2ページです。今申し上げた3種類のジョブコーチについて、配置型ジョブコーチは313人、訪問型ジョブコーチは568人、企業在籍型ジョブコーチは232人の方が現在活動している状況です。この活動ですが、ジョブコーチの活動を支援する助成制度がありまして、その助成金を活用して実際に活動している方の人数になります。3ページにまいります。配置型ジョブコーチは独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)が運営する地域障害者職業センターに配置されています。地域障害者職業センターは都道府県ごとに1か所以上設置されていて、数人ずつジョブコーチが配置されており、ジョブコーチ支援を行っています。
4ページは、こちらが先ほど申し上げた助成金になります。助成金名は何度か変わっていますが、現在の名称は、障害者雇用安定助成金の障害者職場適応援助コースと言います。社会福祉法人等の訪問型ジョブコーチや企業内の企業在籍型ジョブコーチについては、その活動について助成金を支給しています。平成18年度~26年度までは納付金の助成金でしたが、平成27年度以降は雇用勘定の助成金として助成をしております。
下に具体的な助成額が書いてありますが、例えば訪問型であれば、1日活動していただくと、1万6,000円が助成される形になっております。また2つ目の助成として、大臣指定の養成研修を受講した場合、受講料の2分の1を助成するというものもあります。
次のページを御覧ください。ジョブコーチの養成研修の概要です。JEEDで行っているほか、現在は7機関になりますが、厚生労働大臣が指定する研修機関に実施していただいております。JEEDでは千葉と大阪で4日間の集合研修を行った後、各都道府県の地域障害者職業センターで4日間の実技研修を行っております。下の四角ですが、大臣指定の養成研修については、42時間以上のモデルカリキュラムとなっており、6、7日程度の日程で各機関により行っていただいています。6ページが今年度の養成研修の概要になります。このように各機関が各地で研修を行っている状況です。
次に7ページにまいります。ここから実績を少し御紹介させていただきます。養成研修の実績としては、この10年で訪問型については余り変動がなく、やや増ぐらいの状況です。企業在籍型の養成研修は、右肩上がりでどんどん伸びている状況です。一方で実際に活動している方の人数は横ばいになっています。平成27年度に助成制度が変わっておりますため、連続性がないグラフになっておりますが、配置型はずっと横ばいで、訪問型は波がありますがやや減少傾向、企業在籍型は増加傾向にありますが、養成数が増加しているほどは、実際に活動している人は増えておらず、乖離が広がっている状況になっております。
次の9ページからは、10年ぶりに研修内容を見直すに当たって、取り巻く状況の変化について御説明をしたいと思います。3つ申し上げます。まず1つ目は障害者雇用の進展です。障害者雇用状況は、こちらのグラフにありますとおり、ずっと右肩上がりに上がっております。前回見直した平成21年は法定雇用率1.8、実雇用率が1.63の頃でしたが、令和元年度については法定雇用率2.2、実雇用率2.11と、1.63から2.11と大きく実雇用率が伸びております。実際の雇用者数についても33.3万人から56.1万人と、1.7倍に大きく伸びています。
次に取り巻く状況の変化の2つ目として、精神障害や発達障害者の求職者、就職者数の増加について御説明をいたします。ハローワークにおける求職者数、紹介件数はこの10年の間、右肩上がりで伸びております。これを障害別に見ると、身体障害者については横ばい、知的障害者について順調に伸びているところなのですが、次の12ページの精神障害者については、特に伸び率が大きくなっております。
ここで身体、知的、精神というカテゴリーですが、ハローワークの統計では、障害者雇用促進法上の障害の定義と同じく、精神障害者については、精神障害者の手帳の所持者とうつ病、統合失調症、てんかんの方が精神のカテゴリーに入っております。身体、知的、精神の手帳をお持ちでない方については、「その他」に入ります。ですので、発達障害で精神や知的の手帳をお持ちの場合は各カテゴリーにカウントされますが、手帳を所持しない場合は「その他」に分類されております。
13ページは、就職件数の障害別の構成比を10年前と比較したものになります。平成21年度は身体障害が約5割だったところ、令和元年度については精神障害が約5割となっていて、労働市場の変化が分かります。
続いて14ページですが、ほかの支援機関でも同様の傾向が見られます。障害者就業・生活支援センターは地域の就労支援を担う中心的な機関として現在は335センターが設置されており、就業面・生活面の支援を一体的に行っているセンターになります。 15ページにまいりまして、登録者の障害別を見ますと、障害者就業・生活支援センターでは特別支援学校の卒業生の登録も多いため、知的障害者が多い傾向はずっと続いていますが、経年比較をしてみると、徐々に精神障害者の割合が多くなっていることが分かります。
次に16ページにまいります。ここからジョブコーチの活動の実績のデータになりますが、配置型ジョブコーチについては、以前は知的障害の割合が高かったところ、徐々に精神障害、発達障害の割合が高くなっていることが分かります。なお、先ほどハローワークの統計の分類についてご説明しましたが、地域センターの実績に関しては、主な障害別で集計しており、手帳の種類や所持に関わらない分類となっておりますので、データの比較などをする際には御注意いただきたいと思います。
次に17ページにまいります。最後にジョブコーチを取り巻く状況の3つ目として、就労系福祉サービス事業所の増加、多様化、また福祉・教育から一般就労への移行の促進についてご説明したいと思います。平成18年度に障害者自立支援法が施行され、就労系サービスとして就労移行支援事業、就労継続支援A型、B型というサービスができました。平成25年に障害者総合支援法となりましたが、引き続きこの3サービスが継続されています。また表の一番右側ですが、平成30年度からは新たに就労定着支援事業が創設されたところです。
18ページの一般就労の移行状況を見ますと、移行支援事業を中心に福祉から一般就労の移行は年々増加しています。
19ページにまいります。就労移行支援事業について、オレンジで丸を付けている所ですが、就労移行支援事業ではジョブコーチ養成研修修了者を人員配置した場合、研修修了加算があります。次に20ページですが、就労移行支援の現状ですが、事業所数は約3,000か所で、約3万3,000人の方が利用しています。平成29年度をピークに事業所数はやや減少していますが、利用者は横ばいという状況になっています。
21ページにまいりまして、設置主体別で見ますと、営利法人が設置する事業所が増加している状況になっております。22ページにまいりまして、利用者の障害別を見ますと、ハローワークや障害者就業・生活支援センターの傾向と同様に精神障害者の割合が増加傾向にあることが分かります。
続いて23ページ、就労定着支援事業は、平成30年度に創設されました。就労移行支援等の利用を経て一般就労へ移行した障害者に対して定着支援を行うサービスになります。こちらのオレンジで丸を付けている所ですが、こちらもジョブコーチ養成研修修了者を人員配置した場合、研修修了加算があります。24ページにまいりまして、定着支援事業の状況ですが、平成30年度に創設された事業のため、まだ導入期とも言える段階であり、全国的に見ると事業所数はまだ少ない地域も見られます。
25ページにまいりまして、最後に教育から一般就労への移行状況ですが、少子化の一方で、現在特別支援学校の生徒数が徐々に増えている状況です。26ページにまいりまして、高等部の卒業生の状況を見ますと、就職者数は32.3%となっており、10年前と比べますと、徐々に就職率は伸びて10%ほど上がっており。教育から就労への移行が進んでいることが分かります。
ここまで、ジョブコーチ支援制度と養成研修の現状と取り巻く状況の変化について御説明いたしました。
最後の27ページですが、障害者雇用が促進され、職場定着がますます大事になってきています。ハローワークで就職した障害者の職場定着率を調べた2017年の調査では、精神障害者の1年後の定着率が49.3%と低い結果となりました。一方、右のグラフですが、支援の活用がある場合とない場合では、大きく定着率が異なっており、特に紫と水色のグラフですが、ジョブコーチ支援を受けた方は8割、9割と高い定着率になっていることが分かります。ジョブコーチ支援は職場定着に効果のある支援手法であることが分かるもので、今後も支援が必要な人に効果的な支援ができるよう、ジョブコーチを養成して活動していってもらうことが重要だと言えます。
資料2-1の説明はここまでになりますが、今後御議論いただく参考資料として参考資料2に現行の養成研修カリキュラム、それから参考資料3-1は現行のモデルカリキュラムについて議論を行った平成20年度の研究会報告書のジョブコーチ部分の抜粋、参考資料3-2は報告書別添の実態調査結果の抜粋、ジョブコーチ支援制度と養成研修に関する研究会、分科会等での議論の抜粋については参考資料4として載せておりますので、適宜御参照いただければと思います。
前回の研究会について少しだけポイントを説明させていただきます。参考資料3-1になりますが、平成20年度当時、障害者自立支援法ができて、就労支援制度が充実し始めた時期で、就労支援人材をどう育成していくかという課題がありました。そのため、就労移行支援事業の就労支援員と障害者就業・生活支援センターの担当者、ジョブコーチそれぞれの役割やスキルを整理して、研修のモデルカリキュラムを作成したものになります。後で時間があるときにご一読いただければと思いますが、参考資料の8ページに専門人材の役割を整理した表があります。専門人材は、階層的に育成を進めていく必要があり、地域の就労支援を支える人材は多様であるけれども、共通して身に付ける必要がある基本的知識やスキルがあるということで、就労支援の共通基盤を示しております。それが10、11ページ辺りになります。その上で各人材がどのような役割、スキルが必要で、何を学んでほしいかということについて、就労支援員、障害者就業・生活支援センターの担当者、ジョブコーチ別に19ページ以降に示しています。
参考資料3-2を御覧ください。こちらは実態調査の結果になりますがジョブコーチ部分を抜粋しています。まず第1号、現在は訪問型と呼んでいる社会福祉法人等で活動するジョブコーチのことですが、35ページに飛びまして、ジョブコーチと他の業務との兼務状況を調査したところ、ジョブコーチを専任でやっている人は約16%で、多くは他の業務と兼務していらっしゃることが分かりました。また37ページの行っている業務ですが、集中的支援や事業所調整などは自ら行っているという方が多かった一方で、アセスメントや支援計画の策定を自ら行っているという方は3割、4割にとどまっていました。39~41ページが知識・スキルの状況になります。障害特性や職業的課題に関する知識や関係機関との調整スキルについてはよく活用しているし、習得しているという回答であった一方で、各種制度であったり、職域開拓に関する知識・スキルは余り活用する機会がなく、かつ不足しているという結果になっておりました。全般的に本人支援よりも事業主支援に関する知識・スキルが不足しているという回答が、訪問型については多く見られました。
次に第2号、企業在籍型ですが、この当時はまだ活動している人が少ない状況でしたが、助成金を使って活動している人のうち7.7%の方が専任で活動しているということでした。51ページの業務量については、第2号はアセスメントや支援計画の策定を含め、全般的に自分で行っているという回答が多く見られました。
52~53ページが知識・スキルの状況ですが、障害特性や職業的課題に関する知識・スキルの活用の機会が多い一方で、習得状況としては不足しているとの回答が多く見られるなど、訪問型との違いが見られました。ここまでが参考資料3の御紹介になります。
なお、今回も議論の参考にしていただくために、ジョブコーチの現状と課題についてアンケート調査を実施しています。資料2-2にお戻りください。こちらが現在行っているアンケート調査の概要になります。直近3年間の研修修了者に対してWebアンケートを実施していまして、約3,700人の方を対象にし、研修機関の御協力により、1,300件ほど回答をいただいています。結果は集計中で、次回の研究会で結果概要をお示ししたいと考えています。少し説明が長くなりましたが、以上になります。
○朝日座長 朝日です。どうもありがとうございました。議題2、制度と現状について、丁寧にポイントを絞って御説明いただけたと思います。今日の研究会の進行の都合上、次の議題3まで通して御説明いただいた上で、委員の皆様方の御意見を頂戴したいと思っていますが、今の説明の範囲の中で御質問がありますでしょうか。またお気付きのことがありましたら、御発言のときに織り交ぜていただければと思います。それでは続いて、議題3、研究会における論点について、引き続き御説明を頂きたいと思います。では、事務局からお願いします。
○秋場地域就労支援室長補佐 事務局です。資料3を御覧ください。研究会における論点について、事務局として提示させていただくものになります。
3つのカテゴリーの1つ目が、求められる役割・スキルについてです。1つ目の○ですが、先ほどの参考資料3でも御説明しましたが、平成20年度の人材育成あり方研で一定程度の整理はしたところですが、10年以上たっておりますので、改めて変わったところ、変わらないところ、新しく求められること、また、より重点が置かれるようになったことなどは何かということについて御意見を頂きたいと思います。
また、2つ目の○です。そういった変化したこと、新しく求められることなどを担うためにはどのようなスキルが必要か。また、それはどのような方法で習得可能なものなのか、実践をただ積めばいいのか、研修を受講して学ぶものなのか、例えば、経験者等から助言をもらえばよいのかなど、いろいろ方法があると思いますので、そういった御意見をお願いしたいと思います。
2つ目は、ジョブコーチ養成研修のカリキュラムの見直しです。1つ目の○は、1を踏まえて、具体的な研修カリキュラムに落とし込んだときに、どういったカリキュラムがよいのかという点です。2つ目の○ですが、現在は42時間以上で6日間から8日間のカリキュラムで行っております。演習や実習を多く含む内容となっておりまして、実習は丸1日、カリキュラムの半分ぐらいは演習をやっている状況です。こういった状況の中、日数とか時間数のボリュームは適当かということです。
3つ目の○、スキルアップについてです。平成20年度の研究会において、研修は階層的に行うべきというお話もあり、現在の研修体系としまして、JEEDの養成研修では、養成研修の次の段階としてスキル向上研修を行っております。また、平成30年度から養成研修、スキル向上研修の後に、サポート研修を新設したところです。一方、大臣指定研修の方はフォローについて規程がなく、特にこちらからフォローアップ研修、スキルアップ研修をやってくださいというお願いははしておりませんので、各機関が独自にやられている場合もあるという状況になっております。なお、JEEDのスキル向上研修については、JEED以外の修了者も受講可能となっております。こういった状況の中、JEEDや大臣指定研修において、スキルアップ研修をどういった位置付けにするのがよいのか、また、もし行うならばどういった内容にしていくのがよいのかということを御議論いただきたいと思います。
3つ目は、研修方法等の見直しです。1つ目の○です。養成研修は、先ほども申し上げましたが、演習や実習を多く含んでおり、実践的な研修となっております。これまで集合形式でやってきましたが、今般、コロナウイルス感染拡大防止の観点から、特例的に講義や一部の演習についてオンライン形式で行うことができることとしたところです。今後について、研修の質を担保することが一番大事だと思っているのですが、それを確保しつつ、どのような研修方法が考えられるかについて御意見を頂きたいと思っております。
2つ目の○です。また、研修の質を担保するために、科目ごとに講師の要件などを定めているところです。現在の要件は適当なものとなっているか、見直すべき点はあるのかということについても御議論を頂きたいと思います。
最後にその他として、1つ目の○について、資料の中でも御説明しましたが、受講ニーズから、養成研修の回数や開催場所を拡充してきたところなのですが、一方で、実際に活動する人は横ばいとなっており、その乖離が年々広がっているところです。もちろん、より活動してもらうためにはどうしたらいいのかという支援制度自体の見直しは必要になりますが、今回は、研修のあり方として、どういった方を対象にすることが適当かということについて御議論を頂ければと思います。
2つ目です。養成研修機関数については、ゆっくりですが徐々には増えてはきています。各機関には、最大限の養成をしていただいている状況でして、実習や演習を多く含むため、これ以上のキャパシティの増加はなかなか見込めない状況になっております。現在のニーズに合った養成数になっているのかという点や、仮に不足している場合は養成機関を増やしていく必要があります。指定要件は定めておりますが、研修機関に求められることは何かについて御意見を頂きたいと思っております。以上、事務局からの論点として挙げさせていただきました。説明は以上です。
○朝日座長 ありがとうございました。議題2では、正にこの10年間の変化、対象者の変化、そして支援者の変化、更には企業の取組の変化、このようなものを背景に具体的な数値をデータでお示しいただけたものだと理解しております。加えて、正にコロナ禍という社会を取り巻く状況の変化とともに、もしかするとそれは研修の新しい様式を求めることにも繋がってくる、このような観点でお話いただけたと思っています。
論点のほうですが、今、3つ、それからその他を入れますと4つの柱ということでお示しいただきました。今日はキックオフの最初の研究会ですので、これまでの説明を踏まえて、どの部分でも結構です。この全てに、1は2はとコメントいただく必要はありませんので、どのような観点からでも事務局でまた受け止めていただいて、キーワードとして整理をしていく、キーポイントとして次に掲げていくということで進めていただければと思っております。特に、このお示しいただいた論点に更に加えたいことや、そもそもこういう視点が落ちているのではないかという御指摘もいただきたいと思いますし、直接それに関係しなくても、今後の議論をしていくためにこんなデータがあるといいのではないかとか、もしあれば明示してほしいとか、そのような御要望でも結構ですので、併せて御意見を頂戴したいと思っております。
是非、忌憚のない御意見、御発言をお願いしたいと思います。どこからでも、どなた様からでも結構です。では、酒井委員、お願いします。
○酒井委員 たくさんの資料の御説明ありがとうございました。データの追加をお願いしたいと思います。ジョブコーチが職場定着に当たって非常に重要な役割を示していることは誰もが認めるところであると思います。一方で、やはり障害福祉サービスの、特に就労定着支援事業との連動とか絡みもすごく大きく、障害福祉サービス、あるいは、ナカポツとの役割との連携、すみ分けというところも観点としては必要なのかなと思うのです。
障害福祉サービスでは、都道府県ごとの事業者、事業所数が公表されているかと思います。ジョブコーチについても、都道府県ごとのジョブコーチの人数、活動数というのは把握できる状況にあるのではないかと思いますので、データをもしお示しいただけるのであればお願いしたいと思います。
私は地域によってかなり格差があるのではないかと思っています。今回、この研究会に参加している研修機関は、東京や大阪が中心で、静岡の鈴木委員もおられますが、その辺の地域差みたいなのがどの程度あって、例えば、ないとは思うのですが、ジョブコーチがゼロの地域があるのであれば、そこはジョブコーチが必要ではないということではないと思いますので、そういった所にジョブコーチ支援を厚く入れていくにはどうしたらいいのかということも併せて考えていく必要があるかと思います。
○朝日座長 ありがとうございます。それがどのようになるかについては、事務局に必要に応じて説明していただければと思いますので、まずは、いろいろな観点から御意見でもデータ、資料の要請でも結構ですので、お気付きの点からお願いしたいと思います。松為委員、お願いします。
○松為委員 論点の最後のその他について、どう考えればいいか分からないので、皆さんの御意見を伺いたいです。ジョブコーチの養成研修修了者数は増えてきていますが、実際には助成金を活用しているジョブコーチ数はそれほど増えていません。正にここで問題になっている乖離についてどう考えればいいのだろうかということについて、皆さんに御意見を伺いたいです。言い換えますと、修了者数が増えているということは、就労支援に関する知識なり技術のニーズが社会的に高まってきているのではないかと思います。お金の面があるから限界があるにしても、そういった社会的ニーズ、就労支援に関わる技術や知識のニーズが関わるのでしたら、ジョブコーチ養成研修とは別かもしれませんが、それに伴う研修体制を作らなければいけないという気がします。そういう点で、乖離というのは、どういう現象で何が背景にあるのかというのを、経験のある人たちの御意見を伺いたいのですが、どうでしょうか。
○朝日座長 ありがとうございました。先ほど事務局の説明でも、養成者数は増えているけれども、実際にその資格を用いて実践している数になると限界があるという説明がありました。一方で、障害福祉サービスとの連動の中では、就労定着支援事業において、研修修了者の配置が加算対象の要件にもなっているという繋がりがあるわけですが、松為委員からお話があった乖離というところについて、これから回を重ねて検討していくかもしれませんが、それぞれの委員の皆様方の御体験の中で、乖離を感じたり、やや感じないという意見でも結構ですし、あるいは、どのような背景があるのかといったようなところで是非、御経験を御披露いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。鈴木委員、よろしくお願いします。
○鈴木委員 くらしえん・しごとえんの鈴木です。私たちも、養成研修を実施していますが、やはり訪問型ジョブコーチより企業在籍型ジョブコーチの方たちの数がどんどん増えています。養成研修を実施していて一番思うのは、訪問型ジョブコーチ養成研修を受講する方たちは6日間の研修がゴールであって終着点なのです。企業在籍型ジョブコーチ養成研修を受講する方たちは6日間がスタートと言いますか、初歩的ないろいろな知識や難しい言葉がたくさんあって訳が分からないという方も大勢いますが、でもそれがスタートで、やはりその後のジョブコーチとしてのスキルの伸びは、本当に比較になりません。ジョブコーチの話ができるのは、やはり企業在籍型ジョブコーチの方たちです。私自身、訪問型ジョブコーチとして活動もしていますが、特に新しい所とか、支援がなかなか難しい所は、最初は訪問型ジョブコーチが入っていきます。そして訪問型ジョブコーチが1年間とか支援し、その後フォローアップを行い、次のスキルアップのときには企業在籍型ジョブコーチに引き継ぐという形です。そうすると企業在籍型ジョブコーチに助言だとかそういうこともできていきます。流れとしては訪問型ジョブコーチが先に入り、その中で企業在籍型の方たちが活動していきやすいような環境を作っていくという形でやって定着しているケースは、やはり多いと思います。ですから、訪問型ジョブコーチは最初から何年も何年もやるべきものではないと私自身は思ってはいます。簡単ですが、以上、よろしいでしょうか。
○朝日座長 ありがとうございます。井田委員、お願いします。
○井田委員 発言させていただきます。私は20年前ぐらいに人事と掛け持ちでやっていたのですが、1週間近くの研修が受けられなかったので、定年でジョブコーチ専任になったときに研修を受けました。実は助成金を使うためにジョブコーチを取ったので、この乖離に驚きました。ただ、行政系の方や支援機関の方は、文章とか資料を作るプロのような方ですが、民間の機関ですと、非常に手続きが大変だと聞きます。私が研修を受講した際も「作るの大変だよ、だからやめた」という方がいたぐらいです。私の場合は親会社が先に助成金を申請していたこともあり、多少のアドバイスを頂いたくらいで、資料を見たら、余り文章や資料作成が得意ではない私でもちゃんと作れたので問題はないとは思います。
研修を受講したのがもう5、6年前なので、既に現在の研修の中に入っていたら申し訳ないのですが、民間の余り手続きに慣れていない人間としては、助成金の雛型を活用した実例の講義等、ちょっとした触りがあると、この乖離は多少防げるのではないかと思います。それと、松為委員がおっしゃったように、助成金が活用したいのではなく、企業在籍型ジョブコーチの知識が欲しいのだということで乖離が出ているのでしたら、また違うかもしれません。
○朝日座長 ありがとうございます。乖離の背景を分析する1つの視点というか、御経験をお話いただきました。この点について更にいかがでしょうか。では小川委員、お願いします。
○小川委員 やはり企業在籍型ジョブコーチと訪問型ジョブコーチで事情が違うと思います。企業在籍型ジョブコーチのほうは、支援対象として精神障害や発達障害の方が多くなり、これまでの知的障害の方を対象にした、業務集約型で根気強く業務について指導していく指導員配置というスタイルから、もう少し専門性、特に障害特性理解とか環境調整に関する専門性が必要だという認識が広がっています。対象者の変化と雇用管理の方法の変化で、より高い専門性が必要ということで、特例子会社の指導員だけではなく、一般企業の障害者雇用担当の方、場合によっては人事の方、そういった方たちが企業在籍型ジョブコーチを受講されるようになったので、受講者数は増えています。それに伴って助成金についても、先ほど井田委員がおっしゃったように、使いにくさというのは当初はかなりあったと思うのですが、それでも、これだけ受講したら助成金を使おうという方たちも増えていると考えられ、全体的に乖離は大きくなく、伸びているということだと思います。
訪問型ジョブコーチに関しては、対象者の変化の影響が大きくて、知的障害から精神障害、発達障害の方に対象が変化するにつれて、やはりジョブコーチが必要とされる支援ではないという考え方が1つはあるのでしょう。丁寧に支援者が付いて、その方に必ずしもべったり付き添うわけではないのですが、やはり職場に支援者が入るスタイルを望まない発達障害、精神障害の方がかなり就労移行支援事業所の対象になっているということもあり、ジョブコーチ支援ということのイメージがフィットしないということがあると思います。それから、そういったシフトの中で、先ほどの説明にありましたが、営利法人の就労移行支援事業所がぐっと増えて非営利法人が減っていったというのは、やはり、コスト的にちゃんと賄える事業の所しかやらないという、ある意味当然と言えば当然なのですが、そこで助成金を活用してわざわざジョブコーチ支援をやろうという事業所も減っていったこともあると思います。
それに合わせて、これまで法人の中で何とかコストに合わなくてもジョブコーチ的な支援を行おうとしている所、それは、ジョブコーチの助成金を活用してコストが合わなくても助成金制度の下で活動していたわけですが、就労定着支援事業ができたことによって、就労定着支援事業のほうが手続的にも、またコストを賄う上でも、とりあえず6か月間繋げばそこから就労定着支援事業が使えるということで、本来であれば、6か月の間ジョブコーチの助成金を使って、初期に職場適応支援を行った上で定着支援にスライドしていけばいいのだと思うのですが、恐らく非営利法人より営利法人が多いというところもあり、そのモデルが就労移行支援事業の中で、なかなか定着していっていないということがあるのではないかと思うのです。
○朝日座長 ありがとうございます。ここまで、委員の皆さんから御意見を頂きましたが、最初に投げ掛けていただいた松為委員、この段階で更に、お願いします。
○松為委員 最初の頃の委員会のときには、いわゆるジョブコーチ的なものをベースにしない、もっと汎用的な障害者に関する知識を持つような、人材が必要だという議論が確かにありました。皆さんのお話を伺っていますと、どちらかというとジョブコーチ支援を実施している企業へのお金の出し方等、いろいろな問題があるようですが、必ずしもそういった就労に関わらないような、ジョブコーチ的なことまでやらないような人材というのはあまり考えなくていいのかなという気がするのですが、そこはどうなのでしょうか。幅広い、そこを拡大していくような人材に関しては必ずしもニーズとして求められていないのかなという感じもします。カリキュラムの作り方もまたかなり違ってくると思います。
○朝日座長 では小川委員、お願いします。
○小川委員 論点の4の所で、その他に、就労支援の底上げをするために幅広い目的の受講者を受け入れていくのがよいかという基本的な位置付けのところが論点に入っていて、これはとても重要だし、小野寺課長がおっしゃったように、中長期的な議論のところで非常に重要になってくると思います。ただ、この論点を含めてしまうと、もともとどういった対象の方に何を身に付けていただくかということが曖昧になってしまうので、カリキュラムについての具体的な議論ができないのではないかと思います。ジョブコーチと言った場合には、ジョブコーチ養成研修を修了した方、それから助成金を活用するため、取りあえず活動の登録をしている方、実際、登録をしていてなおかつちゃんと支援をする方の3つの層があると思うのですが、これについては、少なくとも助成金を活用したジョブコーチとして活動する準備がある人、制度の下で活動する準備が整っている人を対象にまずは議論をし、その後、中長期的なことについては次のステップの段階で議論をしたほうがいいのかと思って、事務局のお考えをもう一回確認した上でスタートしたいと思っていたところです。
○朝日座長 では小野寺課長、お願いします。
○小野寺障害者雇用対策課長 冒頭で中長期的な議論の話をしたので逆に混乱してしまった部分もあるかと思うのですが、小川先生がおっしゃるとおりで、中期的には、恐らく福祉と就労両方の横断的なスキルを兼ね備えた、もう少し汎用的な人材育成というのは、別途の議論としてあり得る話かなと思います。ジョブコーチに対する社会のニーズ、要請を踏まえた上でのあり方についての議論というのは勿論必要かと思うのですが、あくまで今回の議論の前提としては、現行のジョブコーチ制度の枠の中において、まず来年度のカリキュラムをどうするかというところでの各論で押さえていただきたいと思います。
○朝日座長 小川委員、松為委員、よろしいですか。
○松為委員 はい。
○小川委員 了解です。今、決まるわけですか。
○朝日座長 今日でこの論点を完結させるというわけではありませんが、目指すところは、就労支援全体の底上げというよりは、現行の障害者雇用促進制度の中の雇用や定着を促進していくためのジョブコーチのマーケットというか、そういうものに1つ焦点化をして、それらが制度的にはいろいろな所で就労支援の底上げに繋がっていることは認識しながらも、ここでの議論において、そこまで全部議論すると、かえって焦点がぼけてしまいますので、この10年間の変化と、今のジョブコーチをめぐるマーケットのあり方をきちっと理解した上で、研修やスキルのあり方、こういったものを焦点化してやっていくということかと思います。場合によっては、独立して論点の1つとして掲げるのかもしれませんし、論点を進めていくための前提として最初に確認することかもしれないと思います。では、山地委員、お願いします。
○山地委員 今の論議の焦点というのはよく分かったのですが、これだけ就労支援機関が急増して、障害者を支える支援が雨後の筍のように出てくる中、就労支援に携わる方たちの育成の問題というのがあります。現場とジョブコーチというやはり切っても切れない関係の中に、育成の問題とジョブコーチの関係は、今後も出てくるのではないかと思っています。ジョブコーチのカリキュラムが基礎的な就労支援のことを押さえてくれているということと、制度的に、研修としてだけ受講することができ、その後、ジョブコーチとして実践しなくてもよくなっているところが、私たち現場の者としては随分気軽に受講できるところがあります。まずは初心者でもこの研修を受ければ何とかなるということを耳にしたことがあったので、この問題は、また出てきてしまうかもと思いました。
○朝日座長 松為委員がおっしゃったように、全体を俯瞰したときのジョブコーチを取り巻く、就労支援人材やそのスキルのあり方に必ず連動してくるという視野は踏まえた上で、焦点を当てていくことが大事なのかなと思いました。
○小野寺障害者雇用対策課長 御指摘いただいている内容は全て重要でありまして、中長期的な議論につなげるためにも、この研究会自体の最終目的は来年度のカリキュラムや手法をどうするかという具体的な話になりますが、報告書の中には、中長期の視点をある程度入れたような問題提起は是非したいと思っております。成果物をしっかり出すことを最優先にしたいと思いますが、いろいろな問題提起としての今後の検討課題等の提示というのは非常に重要かと思っております。
○朝日座長 では、この点も是非、押さえておくべきことということで確認を頂きました。それでは、ほかのテーマでも結構ですので、是非、まだ御発言いただいていない委員からどうぞ。では、お願いします。
○岡本委員 現場で、今、目の前でこの10年、特に目立ってきているところを中心に、東京障害者職業センターから意見が言えればと思います。論点の1点目の、ジョブコーチに求められる役割や必要なスキルという所で、障害者の一般就労を支える人材の育成のあり方に関する研究会のことが述べられていますが、議論の中には、今もジョブコーチに求められている重要な点が全部含まれていると思います。ただ、やはり圧倒的に10年前より増えているのが精神障害と発達障害の方への支援です。作業場面での支援に力を入れてやっていた当初のカリキュラムから、我々は相談支援型と整理していますが、相談支援を中心としてやらなくてはいけないというジョブコーチ支援が本当に増えています。精神障害や発達障害、高次脳障害の人の一部、非常に回復のいい方などは、仕事が専門的すぎることから、仕事の現場が情報セキュリティ上、外部の人は絶対入れないという場所にあり、かつメンタルの面や、その他生活の部分など、仕事場そのもの以外の所については、やはり会社の人以外の意見が欲しい、支援が欲しいということで、相談支援中心型は本当に増えています。ジョブコーチが情報収集、分析していくというスキルが、前よりもずっと必要な場面が増えているのではないかと思っています。このスキルについては座学で学べる部分ではない所が恐らくありそうな感じで、実地で覚えていくところが一部残ってしまうのではないかと思っています。
あと、大きな問題ではないにせよ、ずっと続いている議論の中に、視覚障害の人のジョブコーチ支援と聴覚障害の人のジョブコーチ支援があります。ジョブコーチにその手のスキルをオンするのか、詳しい人をジョブコーチにするのかという話がずっと細々と続いているのです。実は、視覚障害者の方のネットワークは本当にすごくて、あそこでジョブコーチをやっているよというのがじわじわ話題になって、平成29年度は東京センターのジョブコーチ支援の全体の6%が視覚障害者の支援だったのですが、昨年度は全体の18%まで増えています。この数は、何人というレベルからすれば小さいかもしれませんが、ITの支援機器がどんどん進んでいますので、全国的にはやはり後から出てくる課題なのではないかと思っています。実践的な経験からいくと、今のジョブコーチにそういうスキルをオンすることはコストが高すぎて、難しいだろうと思いますので、視覚の支援にたけた方をジョブコーチとして活動していただけるような養成を考えてほしいです。
聴覚についてもそうです。かつて、手話が非常に達者なジョブコーチが東京センターにいましたが、御退職なさって、その後はうちの障害者雇用支援人材ネットワーク事業の一部、謝金を払ってやってもらえるサポーターとして活動してもらって、一緒にジョブコーチ支援で動いてもらっているのです。そういう人がいることは非常に力となるので、手話にたけた方をジョブコーチとして養成するという方向性も是非、作っていただいて、そういう方はやはり絶対兼業になりますから、受けたらお得になりますよという何かインセンティブを差し上げたいと思いますし、我々のほうから是非、受けてくださいと受講勧奨をしないと、なかなか育っていかないのではないかと思いますので、来年からということであれば、是非、その辺りを若干、乗せていただければ助かるなと思います。
これは議論としてはまた別になると思うのですが、養成研修で今、企業実習をやっていますが、コロナウイルスの関係で実習先を確保するのが本当に綱渡り状態です。企業実習を養成研修そのものに盛り込む形でいくのか、何か別の方法があるのかというのを考えていただければと思います。切実な問題です。以上です。
○朝日座長 岡本委員、ありがとうございました。関連しなくても結構です。
○松為委員 関連です。実は今の話と非常に似ているのは精神障害の人たちです。今、私が別のNPO法人でやっているのがエンプロイメント・スペシャリストの研修で、ジョブコーチにおけるカリキュラムと似たようなことをやっています。研修内容はほとんど同じですが、ただし、対象者は精神科のデイケアのスタッフです。つまり、精神科ということに関して十分にベースを持っている人たちが、プラスアルファとして就労支援をやっていると鬼に金棒です。しかも現場のデイケアに行ったときに、現場では精神障害当事者の人たちの働きたいという要望がすごく強いのです。問題は、精神科のデイケアのスタッフたちは精神障害に関しての要求はよく分かっていますが、就労支援に関するノウハウがないことです。ですから、そういう人に関して、ESでもって精神科のデイケアスタッフ、理学療法士、作業療法士、精神保健福祉士、臨床心理士のうち希望者を対象に実施しています。
つまり、今回の大きな目的からすると、先ほども言いましたように汎用的なものでなく、より具体的なものを目指していくとするならば、ジョブコーチに関して精神障害や視覚障害、聴覚障害のことをプラスアルファさせていくくらいだったら、逆だと思います。精神障害の専門家の人たち、視覚障害を分かっている人たち、聴覚障害を分かっている人たち、そういった人たちに対してプラスアルファとして就労支援をやっていったほうが、基盤としていいかなという気がします。そういう点で、もし具体的にそういうのを進めていくのだったら、別枠か特別枠の対象者の枠を設けてしまって、これは精神障害の方を支援対象とする人たちが対象ですから、デイケアスタッフの人たちに対象者を限定しますとか、そういう形で持って行ったほうが効率的かという気もします。正に今の視覚障害と同じ関係でどうするかです。
○朝日座長 酒井委員、お願いします。
○酒井委員 若干関連して、大阪でも9月にジョブコーチ研修を実施するのですが、今回、特例子会社で御自身が聴覚障害の方が3名、申込みをされる予定です。あと、大阪の聴覚障害者団体からも2名の申込みがあります。聴覚障害の方が受講されるときのいわゆる合理的配慮として、手話通訳を保障したり情報保障をどうするかというところで、通常の研修とはまた別の準備が、必要になってきているような状況というのを情報提供としてお伝えいたします。
○朝日座長 高岡委員、どうぞ。
○高岡委員 うちの病院は、精神障害者の雇用を始めるときに訪問型ジョブコーチによる支援の依頼をさせていただいています。実際にいろいろな仕事に対しての密着というような形での訪問ではなく、月一回、訪問していただいて、雇用している障害者の方たちと話をする時間をそれぞれ30分から1時間取っていただき、本当に相談支援というような形です。そこにおいては生活の生きづらさだったり、現場に伝えることのできない弱みだったりというのを訪問型ジョブコーチに聞いていただいて、どうにか生活を成り立たせているところがあります。
そのときに、経済的な問題というのがどうしてもあり、そこに関しては両方弱かったなという失敗例もありましたし、どこまで広げていくのかなというところはあります。ただ、これだけ精神障害者の雇用が増えてきているときには、先ほど松為委員がおっしゃったように、特化したような形のカリキュラムというのも確かに必要ですが、個人的にそれぞれが抱えている問題は統一的でないというのもあります。そこは現場と訪問型ジョブコーチとがタイアップしながら、課題に向かっていくべきところかなと思っています。
先ほど松為先生がおっしゃっていたデイケアスタッフのジョブコーチ支援、勉強会というところも、おっしゃるとおりスタッフは精神障害に関して知識があります。ただ、就労支援については、医療機関とハローワークの連携によるモデル事業が始まり、やっと病院としても就労というところに視点が向くようになりましたので、まだまだ知識不足なところを、そういった研修会で補っていただけると有り難いなと思います。
○朝日座長 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 鈴木です。皆さんの意見の中で、私自身の感覚とちょっと違うなと思ってしまったところが正直あります。なぜかというと、私自身は訪問型ジョブコーチとして活動していますけれども、聴覚障害の方の支援は今まで2、3件しかないのです。視覚障害の方の支援は、静岡県の場合、視覚の特別支援学校の一般就労している人たちで、昨年は1人もおりません。大体が鍼灸といった方向性ということで、聴覚障害にしろ視覚障害にしろ、ジョブコーチ支援のニーズがどのぐらいあって、そういう養成をしたにしても果たしてその方たちが訪問型ジョブコーチとして、コストの問題が最初にも出ましたけれども、ジョブコーチ支援をやろうというニーズは東京と地方でどうなのだろうかというのは、正直、実感として思っています。
そして、それこそ論点の1点目になりますが、変わらないところと変わったところで先ほど小川委員もおっしゃっていましたが、職場環境をどう分析して、手話通訳の方とかそういう専門家の方をどううまく活用するかとか、いろいろな所を分析するスキルというのか、支援機関との関わり方や労働法規に関する知識もそうですが、それぞれの所で、本当に雇用現場で何が必要なのか分析する力を身につけることです。そして先ほどの精神障害、発達障害の方、支援は嫌だと言っている人も中にはいますが、私たちは研修とかで強調していますが、地域の就労移行支援事業所などに対してそこをまず何とかしてもらえるようにお願いします。支えてもらうこと、必要なところを、自己理解もそうですが、それをやって、その先に取りあえず訪問型ジョブコーチによる支援はするけれども、その先は会社の中でいろいろな人たちが支え合っていくでしょうという視点を持っていきます。そのような観点ということで、特化したと言うとそれしかできなくなるような、逆に本当のオールマイティさが必要な所がすごく増えています。だから、非常に複雑化しているし輻輳化しており、そういうところに雇用現場が置かれています。そこの中でどう整理していくのかという分析能力として本当にありとあらゆるスキルが必要になってきていると私自身は感じています。以上です。
○朝日座長 ありがとうございます。私も思うところが今の議論から響いてきましたので、一言だけ発言をお許しいただきたいと思います。ある支援者に障害理解についてオールマイティさを求めるというのは無理があります。聴覚障害の方が来ても精神障害の方が来ても、視覚障害の方が来ても対応できますというのは難しい。むしろ障害によって何らかの配慮が必要で、それをどういうふうに評価し、準備して繋いでいけばいいのかという力が求められると思います。そういう意味での普遍性です。
一方で、聴覚障害、視覚障害の問題というのは解決していないと思います。しかし、全体像からすると鈴木委員がおっしゃるように、多分、ニーズは少ないと思います。でも、それを必要としている人はいます。そうなったら、そこをうまく繋いでいけるような、例えば先ほどお話がありましたように、手話ができるジョブコーチがここにいますとか、精神障害に強いジョブコーチがここにいますとか、こういう情報は大いに展開していく必要があると思います。ただ、養成研修のプログラムの中に全てを盛り込んで、手話もやってください、点字もちゃんと覚えてください、発達障害への対応もしてくださいというのは難しいので、そこはある程度普遍的な力になってくるのかと思います。そのことと、実際に展開していくときの情報提供であったり、利用したい方への繋ぎという点では、全体に量が増えてきたときにジョブコーチの確保ができてくると、今度はその中でリストアップというか、もしかするといろいろな工夫があるのかなと、このようなことを感じたところです。座長ですが少し発言させていただきました。佐藤委員、松為委員の順番でお願いします。
○佐藤委員 基本的にジョブコーチの役割や求められることというのは、10年前に議論したものと大きくは変わっていないし、報告書に記載されている内容はとても重要な部分だと思います。ただ、精神障害、発達障害の支援対象の方が増えたこともあり、実際に作業現場に入ってその場で寄り添って支援をするというスタイルから、物理的にもなかなか現場に入れない場合が多くなっており、その中で、いろいろな情報をうまく取ってきて整理し、何が問題になっているのかをしっかり分析する力が強く求められてきているなと思います。
そういった力を付けるためには、先ほど岡本委員が実務の中でやっていくとおっしゃっていて、そういった部分もすごくあるのですが、ベースになる知識も必要です。その関係で言うと、今、養成研修の中には入っていないですが、JEEDで行っている支援スキル向上研修では、例えばストレスのこととか認知行動療法のこと、応用行動分析のことなどをカリキュラムの中に入れています。一定程度の実務経験を経た上で、支援のベースとなる新たな知識を身に付けていただき、さらにまた実務の中でスキルアップを図っていくことが、とても大事かなと思います。
あと、先ほどの視覚障害や聴覚障害の方の支援については、JEEDでも当事者団体の方たちに、訪問型ジョブコーチになっていただきたいという働きかけはしています。その中で手を挙げていただく所もあるのですが、忙しかったり、定款の関係なのか、なかなかなりにくいという声も聞くので、やりたいけれども活動まで結び付かない、何かネックになっている部分があるのかと思います。そういったところは、私たちも努力はしていきたいと思いますけれども、是非、国のほうでも対応していただければ有り難いと思います。
○朝日座長 佐藤委員、ありがとうございました。松為委員、よろしくお願いします。
○松為委員 精神障害にこだわって申し訳ありません。視覚障害、聴覚障害と比べて圧倒的にニーズが多いのは精神障害の人たちの就労支援です。先ほど言いましたように、実は今、医療機関に対して精神障害の当事者からは、単なるデイケアでぶらぶらするという感じではなく、社会にどう出たいかというニーズがすごく高いのです。でも、それに対してデイケアスタッフの人たち自身は、十分応え切れるだけの能力を持っていません。ただ医療的な面からするとベテランです。そういったニーズの高い中で言うと、私はジョブコーチがうんぬんということよりも、デイケアスタッフの人たちに、こういったジョブコーチ的な技能をどう付与させていくかということのほうが現実的なような気がします。
○朝日座長 小川委員、お願いします。
○小川委員 報告書の紹介が先ほど秋場さんからありましたけれども、前回の障害者の一般就労を支える人材の研究会の議論をもう一回振り返ってみたのですが、すごく充実していて、その9ページを開いていただけるといいかなと思います。
○朝日座長 参考資料3-1です。
○小川委員 9ページに専門人材の研修体系、資料2というのがないでしょうか。あえてこれを出したのは、就労支援員研修、就業支援担当者研修、第1号ジョブコーチ、第2号ジョブコーチとありますけれども、ここに医療関係者、就労定着支援事業の担当者といった対象者が新たに乗っているのだと思います。それで就労支援の共通基盤の所をどこまでカバーするかという話で、私は中長期的な議論のところで共通基盤の部分をどういうふうにしていくか、それこそデイケアの人たちが学ぶべきことが何かということを含めて整理していくべきだと思います。
今、私たちが考えているジョブコーチというのは、ここの第1号、第2号ジョブコーチの所です。ここが他と違うのは、本人の状況をよく分かって、企業の状況もよく分かり、企業の担当者と非常に密接に連携していることです。訪問型ジョブコーチと企業在籍型ジョブコーチは若干違いますが、基本的には同じだと思います。企業のことをちゃんと理解して、その調整をしていく。オン・ザ・ジョブで企業ときっちり調整して、障害のある人が働きやすい環境を整えていく。その役割がジョブコーチだと思いますので、まずそこに焦点を当てたほうがいいと思います。
それから、精神障害の場合に何を変えていくのかが非常に重要で、最近、現場のジョブコーチから話を聞くと、精神障害や発達障害の人たちの場合、昔のように職場で仕事を教えないと聞きます。ナカポツの就業支援担当者とか、あるいは企業によっては臨床心理士にアウトソーシングで相談してもらったりします。それとジョブコーチとは一体どこが違うのかの整理が重要です。相談支援タイプのジョブコーチというのは確かに重視されてきているけれども、いわゆる福祉や心理の相談支援やカウンセリングとどこが違うのかを明確にしながら、オン・ザ・ジョブの要素を持って、雇用制度の下で障害者を雇わなければならない非常に難しい状況にある企業と、ぎりぎりの調整をして、どうやって障害のある人が働きやすい職場を作っていくのかというのがジョブコーチしかできない仕事です。そこに必要な知識・スキルにフォーカスを置いたほうが今回はいいのではないかと思います。
○朝日座長 ありがとうございました。井田委員、お願いします。
○井田委員 このジョブコーチの研修は、例えば登竜門である障害者職業生活相談員資格認定講習を受講した人でなければ受けられないとか、そういう縛りはありましたか。
○朝日座長 ないです。
○井田委員 私は是非、最低でも、障害者職業生活相談員資格認定講習を必ず受講した人でなければ受けられないということを入れてほしいです。私の場合、10年経過してようやく受講できたと思ったのですが、そういう福祉のことを何も分からない民間の人間にはレベルが高いです。何も知らない人が受けていいというのは非常に受けやすくていいのですが、障害者職業生活相談員資格認定講習で習得できるところはこの研修からは省くか復習程度で、それ以外の所に時間を使ったほうがいいのではないかというのが意見です。
○朝日座長 ありがとうございます。更にいかがでしょうか。松為委員、お願いします。
○松為委員 先ほど小川委員がおっしゃった平成20年度のときの議論もそうでしたが、ベテランのジョブコーチ、スーパーバイザーができるジョブコーチの体制をどう作っていくかということを、今回の研究会の論点にもあったかと思いますが、ちゃんと議論しておいてもらいたいです。前回の研究会の場合にはそういった議論があって、ナカポツセンターでベテランのジョブコーチを置くということをやっていますが、今のベテランの人たちというのは、スーパーバイザー的な機能をどこまで持っているのかよく見えてきません。ですから、本格的にそれを考えるのだったら、ナカポツセンターの中に本当のスーパーバイザーのジョブコーチがいて、それは直接支援することよりも、地域内のジョブコーチがスーパーバイズできるような、そういった体制づくりが是非とも必要だと思っています。そのためには、ジョブコーチ自身の資格をもう一回、いろんなことでレベルを上げなければいけないような気がします。
先ほど、小川委員が指摘された参考資料3-1の専門人材の研修体系の図もそうですが、この中で議論したのは就労支援、つまりヒエラルキーを作っていったのです。そういったことを改めて議論しておかないと、本当にスーパーバイズとして地域のジョブコーチの掘り起こし、底上げが、うまくシステムとして機能しないというのが意見としてあります。以上です。
○朝日座長 ありがとうございます。ジョブコーチのあり方という観点と、現行のジョブコーチのスキルアップなり環境変化に対応する研修のあり方、ここをいつも認識しながら議論していかないといけないと思います。今の御指摘の上級ジョブコーチとかスーパービジョンができるジョブコーチのスキルといった部分は、中長期あるいは俯瞰するときに絶対に押さえておかなければいけない、キーワードとして当然、挙がってくると思います。それらをプロットしながらも、どこに集約していくかというところで、この研究会としてのミッションが明確になってくると感じました。今日はキックオフですので、あらゆる考えられるものを出していただき、それを整理していただくということでよろしいと思います。征矢委員、これまでのやり取りを聞いた感想でも結構ですので、何かございますか。
○征矢委員 現場からは、就職した方が、合理的配慮の部分で会社は配慮が足りないのではないかということで訴えてくるケースがあります。この場合、いきなり行政に訴えないで就労支援機関、この場合はジョブコーチの定着支援になるのかもしれませんが、合理的配慮についてはそこで調整していただけばいいのかなと思うことが、ここ何日かの間にありましたので、それを申し上げたいという感じがします。
○朝日座長 征矢委員、ありがとうございます。確かにこの10年間の変化の中で、合理的配慮の提供の義務というのが法律でも明示されて、そのときにジョブコーチが障害のある方と職場との間に立って、どういう役割を担っていくかという点では、確かにこれまでとは違った背景という中でのテーマかもしれません。山地委員、お願いします。
○山地委員 精神障害、発達障害の方の定着の問題の中に、自分の課題とか問題点が何かを御自身も気付いていないということがあります。そのことを、実際に現場に行ったジョブコーチなどがきちんと見極めることが今、佐藤委員からもあったように、ほぼ相談支援というところで求められています。ただ、職業上の課題が生活の課題、特に病気とか障害の課題と非常にグラデーションのようになっていて、生活の課題だけを解決すればうまくいくわけでもなく、両方が必要になっているから相談支援が必要になっているという考え方を私はします。
一見、働けそうな人がなかなか働けないというのは、御自身も自分の障害特性について、どこからどこまでが障害で、どこが自分の健康な部分なのか、そもそも認識することが難しいので、周りの人も認識が難しくなっているわけです。そうすると、先ほど資料にあったようにアセスメントをして、その方の課題は何なのかを抽出する力と、それを全体に考えていく力、仕事ができるかどうか、マッチングがどうかだけでなく、その方が仕事をしていく上で、つまずくところはどこにあるのかをきちんと見極めていくような力が必要です。実際にうちにもジョブコーチがいますけれども、何が足りないかは、その人が言っていることや、その人の課題として出ていることは言えるのですが、支援者としての見立てが言えません。その人をどうやったら就職に結び付けられるかとか、定着させていけるのかとか、病気がその人の全ての障害になっているわけではなくて、部分的なものでもあるのに、それを全て病気のせいにしてしまったり、そういうバランスと言ったらいいのか、働ける力と御本人にまだ足りない、若しくは力を付けていかなければいけない、成長していってもらわなければいけないものを整理して、きちんと統合して関わることができないなと感じます。それができないと精神障害、発達障害の人たちは潰れてしまうというか、自力でやってもなかなかうまくいきません。支援者としての見立てができる人は本当に少なくなっているので、求められているジョブコーチの力は、コーディネートみたいなところまで必要になってきている感じが私はします。
○朝日座長 ありがとうございます。目の前の現象のアセスメントだけでなく、その背景にあること、あるいは将来の変化もある程度予測できるアセスメント能力みたいな感じでしょうか。そういうふうに受け止めました。小川委員、お願いします。
○小川委員 今のお話はすごくよく分かります。例えばアセスメントのカリキュラムの中でどういった内容を行うのかというのも、初期の頃は知的障害の人がどんな仕事ができるかとか、そういったことに焦点を当てていたのが、現在では、かなり精神障害、発達障害の方を対象に生活面の課題であるとか、医療面のヒストリーであるとか、自己認識がどうであるとか、そういったことをアセスメントの守備範囲に含めるようにカリキュラムを組み直したり、それから相談支援というキーワードについても、そういったことを御本人と話し合っていく研修も入れますし、職場で周りの人からクレームを受けて本人もストレスがある状況の下で、本人の話をちゃんと聞き取って職場の評価も伝え、どうやってその人の行動を修正していくか、職務上の修正をどういうふうに面談で変えていったらいいのかということも、カリキュラムの中に入れ込んでやっています。
そういったことを、多分、それぞれの養成研修機関が工夫をして、現行のカリキュラムの中でいろいろな演習を組んでいると思いますが、それを披露し合って、実際にはこういったやり方がいいのだという検討を行うことが、そこまでまだこの業界というか、職場適応援助者養成研修が行き着いていないと思います。
ただ、例えば社会福祉士や精神保健福祉士の演習で言うと、そのためにどんな演習のやり方があるのかというテキストがいっぱい出ていると思います。そこに向けてもう少し時間をかけながら私たちは処理をしていく必要があり、そういった必要性を共有して、少しそんなことをやるきっかけづくりというのを、この研究会の中で少し芽出しができたらなというふうに思います。
もう一点だけ言わせていただきたいのが、今、精神障害、発達障害の問題にすごく焦点が当たっていて、東京ではそこが中心になっていますけれども、地方ではまだ社会福祉法人が知的障害の方に、かなりオーソドックスなジョブコーチ支援で成果を上げている所もありますので、オーソドックスなジョブコーチ支援というのをゼロにしていいかというと、そうではなく、きちんと仕事を教える技術というのも欠かせない要素ではあると思います。そういうふうに考えると、現行のこの養成研修のカリキュラムの時間数の中では到底収まらないということが想像されます。今回のこの研究会の中で、私は時間数を増やすということは現実的に難しいという前提に立ってしまっていますけれども、この中で収めるべきことと、溢れていくけれども当然やるべきことは共有できると思いますので、私はそこをスキルアップ研修とか、そういった形で各養成研修機関もできるようにさせていただき、そこではいろいろなアイディアで、いろいろなものが生まれてくると思いますが、それは養成研修の上級バージョンの一環として、スキルアップ研修ということでオーソライズしていただく仕組みも考えられるといいと思います。
○朝日座長 鈴木委員、お願いします。
○鈴木委員 くらしえん・しごとえんの鈴木です。ジョブコーチ支援の中で一番思うのは、雇用現場の中でどういうふうにしていくのかです。雇用現場の状況を理解することだと思います。雇用現場の環境とか、先ほど山地委員もおっしゃいましたが、本当にそこでどう見立てていくかというところです。ですから、特に精神障害、発達障害だけでなく、実際、私たちは知的障害であろうが何の障害であろうが、2週間ぐらいの日内変動とか週内変動を丁寧に見ていき、仕事のやり方だけでなく、仕事をやっていく上で精神障害の人たちはこんなところが環境としては非常に大変なのだろうなとか、登場人物でもパートさんとか、最近の雇用現場で「えっ」と思いますが、実際は派遣の方が障害者のそばにいて面倒を見てやらせている場合もあります。そういうところは初期の状況では分からなくて、中に入っていくことで見えてくるものです。そういうふうに考えると、カリキュラムについて、今、小川委員もおっしゃいましたが、私たちも中身ではいろいろなことをやっていて、今のやり方とか視点の違いがあります。養成研修はあくまで基礎で、その上にどうするのかという個別のいろいろなことが出てくると思いますから、そういう形が必要なのだろうと私自身は現場でもそうですが、そんなふうに感じています。
○朝日座長 ありがとうございました。まだ御意見があるかもしれませんが、そろそろ予定の時間が迫ってきましたので、今日のところはこの辺りで終了させていただきたいと思います。事務局からは論点で4つの柱を出していただきましたが、本日の御意見なども踏まえて再整理をしていただき、場合によっては論点の前提となる認識について書き込んでいただくことと、場合によっては論点の重みを1、2、3、4、その他みたいな形で再構成していただくことも含めて、作業をお願いできればと思います。時間の関係もありますので、今日の限られた中では御発言できなかった部分については、また事務局のほうにお知らせしていただき、必要に応じて次回の素材にしていただくことで、よろしいですか。先ほど、こういうデータが欲しいという要請もありましたが、逆にこういうデータがありますよという御提供も歓迎したいと思いますので、委員の皆様方の御協力をお願いしたいと思います。それでは、次回以降の日程等について、事務局から御説明をお願いしたいと思います。
○秋場地域就労支援室長補佐 ありがとうございました。事務局です。次回の開催は9月28日を予定しております。会場は近隣の会議室になる予定ですが、まだ決まっていないので決まり次第、御連絡をさせていただきます。また、第3回以降の日程につきましては追って日程調整の御連絡をさせていただきたいと思います。以上です。
○朝日座長 ありがとうございました。小川委員、お願いします。
○小川委員 スケジュールで、大体、スケジュールごとに論点、そのときのテーマというのが整理されていますけれども、ジョブコーチ連絡協議会のほうで養成研修修了者の方たちを対象に、ジョブコーチ連絡協議会として調査をさせていただいていて、必要な知識・スキルについてアンケート調査をします。ただ、厚労省の調査よりも準備が遅れまして、これからスタートするところですので、第2回のときにそのデータが間に合わないと思います。それで、第3回のところでそれを紹介させていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
○朝日座長 ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか。以上をもちまして、今日の研究会は終了とさせていただきたいと思います。座長の役割を終えさせていただきます。御協力ありがとうございました。