第303回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 議事録

日時

2020年(令和2年)7月14日(火)16:00~

場所

東京都港区芝公園1-5-32 労働委員会会館 612会議室(6階)

出席者

(公益代表委員)
  • 小野 晶紀子
  • 鎌田 耕一(部会長)
(労働者代表委員)
  • 木住野 徹
  • 永井 幸子
  • 奈良 統一
  • 仁平 章
(使用者代表委員)
  • 佐久間 一浩
  • 中西 志保美
  • 平田 充

議題

(1)労働者派遣制度について(公開)
 

議事

議事内容
○鎌田部会長 皆さん、悪天候の中どうもありがとうございます。ただいまから、第303回労働力需給制度部会を開催いたします。本日は公益代表の藤本委員、松浦委員、使用者代表の森川委員が所用により御欠席されております。本日は労働者派遣制度について、公開で御審議いただきます。それでは議事に入りますので、カメラ等の頭撮りはここまでとさせていただきます。
部会長としては、前回までの審議会で公益も含め各側の、平成24年及び平成27年改正に係るフォローアップの御意見は出そろったと考えております。私から事務局に中間整理をお願いいたしました。事前に各委員と調整いただいており、お手元に中間整理の案としてお配りしております。それでは、事務局から中間整理(案)の説明をお願いいたします。
 
○米岡補佐 それでは御説明申し上げます。お手元の中間整理案の読み上げをさせていただいて、御説明させていただきます。
労働者派遣制度に関する議論の中間整理(案)。基本的な考え方。労働者派遣制度については、平成27年改正労働者派遣法の附則において、施行後3年を目途とした検討が求められているとともに、平成24年改正労働者派遣法についても、平成26年の労働政策審議会建議において、施行状況についての情報の蓄積を図りつつ、引き続き検討を行うことが適当とされたところである。労働力需給制度部会においては、両改正法についての施行状況の調査を実施するとともに、関係者からのヒアリングを行うなど、今後の労働者派遣制度の在り方について、13回にわたる検討を行った。その結果、全体としては、おおむね制度の定着が図られていると評価できたが、派遣労働者に対する制度の周知や更なるキャリアアップの推進が必要であるとともに、法令を遵守している派遣元事業主等がある一方で、一部には不適切な事案が見られるなど、改善を図るべき点も明らかとなった。こうした現状を踏まえ、当部会としては、以下のような具体的措置を講じ、引き続き必要な制度及び運用の改善に着実に取り組んでいくことが適当と考える。また、労働者派遣事業が適正に行われるためには、派遣元事業主への厳正な指導監督を中心として、当該事業に関わる関係者に対する制度周知や指導監督の徹底を図ることが必要である。その上で、本年4月に施行された平成30年改正労働者派遣法による派遣労働者の処遇改善の状況を把握しつつ、同法の円滑な施行に取り組んでいくことが必要である。また、現下の新型コロナウイルス感染症が派遣労働者の雇用に与える影響も重要な課題であり、厚生労働省は、派遣労働者の雇用の安定等のための対策に引き続き全力を挙げて取り組むべきである。具体的措置について。1.労働者派遣事業の健全な育成について。(1)特定労働者派遣事業が廃止され、許可制に一本化されたことで、派遣元事業所数はおおむね半減し、約4万事業所となったところである。こうした状況を踏まえ、引き続き、基本的に全ての労働者派遣事業について許可制とし、初回許可の有効期間を3年としている現行制度を維持することが適当である。(2)派遣元事業主による事業運営に関する情報の関係者への提供については、マージン率のインターネットでの情報提供の実施率は向上しているものの約2割に止まっている。一方、派遣労働者や派遣先が派遣会社を選択する上では、マージン率よりも、賃金や派遣料金の水準、業務の内容等が重視されている。こうした状況を踏まえ、派遣元事業主による情報提供の法的義務がある全ての情報について、原則として、常時インターネットの利用により広く関係者に提供することが適当である。その際、厚生労働省としても、人材サービス総合サイトの活用により、派遣元事業主による情報提供を支援することが適当である。また、有料派遣事業者認定制度の活用や派遣元事業主による法令遵守に係る自主点検を進めることで、派遣労働者や派遣先が良質な派遣元事業主を選択できる環境を整備し、有料な事業者を育成する取組を一層進めていくことが適当である。2.派遣労働者のキャリア形成支援について。(1)派遣元事業主における教育訓練の実施体制は整備されていると見られる一方で、派遣労働者の実際の受講状況は低い水準に止まっている。また、キャリアコンサルティングを受けた派遣労働者は少ないが、受けた場合は効果を感じられたとの意見が多く見られた。こうした状況を踏まえ、派遣労働者が自身の希望に沿ったキャリアパスを歩むことができるよう、キャリア形成支援の充実を図ることが重要であり、以下の措置を講じることが適当である。1.派遣元事業主が実施する教育訓練や希望者に対して実施するキャリアコンサルティングの内容について、派遣労働者に対する雇入れ時の説明を義務付ける。2.厚生労働省において、派遣労働者のキャリアアップにつながるような教育訓練やキャリアコンサルティングの好事例を調査収集し、派遣元事業主等に周知する。(2)雇用安定措置については、派遣労働者の雇用の安定には一定程度つながっていると評価できる一方で、雇用安定措置について派遣元事業主から相談を受けていないと回答した派遣労働者が約半数おり、希望に応じた措置を講じるという点では、課題が見られた。こうした状況を踏まえ、引き続き必要な指導監督により適切な制度の運用を図っていくとともに、派遣労働者の希望を踏まえた措置が講じられることの前提として、派遣元事業主による希望の聴取が確実に行われるようにするとともに、希望の聴取結果を派遣元管理台帳の記載事項に追加することが適当である。3.労働力需給調整機能の在り方について。(1)事業所単位の期間制限については、意見聴取の対象者への不利益取扱いが行われている実態はほとんど見られなかった一方で、期間延長手続を適切に実施していない事例が一部に見られた。こうした状況を踏まえ、現行制度を維持しつつ、制度周知や指導監督の徹底により、適切な制度の運用を図っていくことが適当である。個人単位の期間制限については、派遣労働者自身に「期間制限は不要」や「職場が変わることでキャリア形成にマイナスの影響がある」との意見が見られた。また、労使からも以下の意見があった。1.労働者代表委員からは、有期雇用派遣労働者に関する個人単位の期間制限については、期間制限を延長するのではなく、制度の内容及び趣旨を周知するとともに、教育訓練によるキャリアアップの仕組みを示し、雇用安定措置と合わせて直接雇用につなげていくべきとの意見があった。2.使用者代表委員からは、派遣労働者の意見として、個人単位の期間制限がキャリア形成にマイナスの影響があるとの意見があったことに留意し、将来的には見直しの検討が必要ではないかとの意見があった。当面、現行制度を維持することが適当であるが、常用代替防止という制度趣旨を踏まえつつ、これらの意見も踏まえ、必要な情報の収集を図りながら、今後改めて制度の在り方について検討することが適当である。(2)グループ企業派遣規制については、関係派遣先への派遣割合が8割を超えている違反事業所の割合は低下が続いているものの、いまだ違反事業所が一定程度ある。こうした状況を踏まえ、現行制度を維持しつつ、引き続き必要な指導監督等により、適切な制度の運用を図っていくことが適当である。なお、使用者代表委員からは、グループ企業派遣は、派遣元事業主が派遣先を熟知しているため、適切なマッチングが可能であることや、派遣労働者の能力開発が容易であるといったメリットがあるため、将来的には見直しの検討が必要との意見があった。(3)離職後1年以内の派遣禁止については、当該規制の該当者は少ないものの、その離職前の状況は、雇用形態は正社員以外が多く、勤続年数は雇用期間3年未満が多く、離職理由は自己都合又は雇用期間満了による離職が多かった。こうした状況を踏まえ、当面、現行制度を維持することが適当であるが、労使からの以下の意見も踏まえ、必要な情報の収集を図りながら、今後改めて制度の在り方について検討することが適当である。1.労働者代表委員からは、例えば、出産・育児等による自己都合退職については、育児・介護休業法等を活用して直接雇用での雇用の継続を図るべきであるなど、離職後1年以内の労働者の労働者派遣による復職を進めることは不適切であるとの意見があった。2.使用者代表委員からは、離職前の雇用形態や離職理由を考慮し、常用代替のおそれがないと認められる場合については、離職後1年以内の派遣禁止の例外とすることを検討すべきとの意見があった。(4)日雇派遣については、現行制度上、派遣元事業主が実施すべき年収要件の確認や就業場所の巡回、労働契約締結後に就業場所が確保できなくなった場合の対応等の雇用管理の取組が適切に行われていない実態が見られた。また、日雇派遣の実績は、倉庫・運搬・流通加工、物の製造、一般事務、販売、イベント運営、接客・給仕などで多く、短期の人材確保や就労のニーズも同様の業務で多く見られた。こうした状況を踏まえ、日雇派遣の原則禁止は引き続き維持し、年収要件の確認を含め、必要な雇用管理の取組が適切に行われるよう、日雇派遣を行っている派遣元事業主等に対し、厳正な指導監督を行うことが必要である。また、年収要件については、当面、現行制度を維持することが適当であるが、必要な情報の収集を図りながら、副業等の場合の雇用機会の拡大という観点と派遣労働者の保護という観点の双方に留意しつつ、今後改めて年収要件を含めた日雇派遣の例外の在り方について検討することが適当である。一方、日雇派遣が可能な例外業務については、施行状況調査の結果や規制改革推進に関する答申(令和2年7月2日規制改革推進会議)も踏まえ、「適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務」に該当するかどうかについて、引き続き個別に検討を進めることが適当である。また、上記の検討を進める上では、現行制度上、日雇派遣は原則禁止とされている一方で、日雇紹介は可能となっており、こうした実態も踏まえ、労働者保護等の観点から、短期の労働力需給調整に係る検証を行っていくことが適当である。なお、労働者代表委員からは、日雇派遣は不安定雇用の最たるものであり、原則禁止を維持すべきであるとともに、日雇派遣が原則禁止となった趣旨を踏まえ、基本的に、禁止の例外は現行業務に限るべきであり、例外となる場合の拡大等も認められない、との意見があった。4.法令違反に対処するための措置について。(1)労働契約申込みみなし制度の実効性を担保するためには、派遣労働者が当該制度を理解していることが不可欠であるが、派遣労働者の多くが当該制度を知らないとの実態が明らかとなった。こうした状況を踏まえ、現行制度を維持することが適当であるが、派遣労働者への周知については、派遣元事業主による雇入れ時の説明の際に、当該現行制度の内容についての説明を徹底することが適当である。また、厚生労働省としても、リーフレットの活用等により、派遣労働者をはじめとする関係者に対する当該現行制度の内容の周知に努めることが適当である。また、労働契約申込みみなし制度の対象となる違反の範囲については、「法違反の是正方法として派遣先で雇用させることが、派遣先の法違反の関与実態等からしても妥当であるものとすべき」という制度創設時の考え方を踏まえることが適当である。(2)法令違反を犯した派遣元事業主に対しては、違反の内容等に応じ、改善命令、許可取消し等の行政処分やそれに伴う企業名の公表等厳正な指導監督を実施していくことが適当である。また、上記1(2)の派遣元事業主による情報開示の推進等により、優良な事業者を育成する取組を進めることで、結果的に悪質な事業者の退出を促していくことが適当である。5.その他の課題について。(1)特定目的行為の禁止については、派遣労働者に対する調査や都道府県労働局における指導状況からは、派遣先からの事前面接や履歴書送付等が行われている事例が一部に見られた。こうした状況を踏まえ、現行制度を維持しつつ、引き続き必要な指導監督等により、適切な制度の運用を図っていくことが適当である。(2)派遣労働者の苦情の相談先としては、派遣元事業主が大半であり、次いで派遣先が多いとの状況であった。こうした状況にも留意し、まずは、派遣先における派遣労働者からの苦情の処理に当たって、派遣先の労働組合法上の使用者性に関する既存の裁判例や中央労働委員会命令の内容に留意し、特に派遣先に課されている労働関係法令上の義務に関する苦情については誠実かつ主体的に対応すべきことを派遣先指針に明記するとともに、その旨を派遣先等に周知徹底することが適当である。また、派遣先の団体交渉応諾義務の在り方については、裁判例の蓄積等の状況を見据えつつ、引き続き検討することが適当である。(3)労働者派遣契約については、省令上、「書面に記載しておかなければならない」こととされているが、書面保存に係る事業者負担が大きいことから、電磁的方法による保存を認めることが適当である。(4)派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳の保存期間については、労働基準法の一部を改正する法律(令和2年法律第13号)により、賃金台帳等の保存期間が5年に延長されるとともに、当分の間は3年とされたことを踏まえ、この経過措置に係る今後の検討状況を見据えつつ、派遣元管理台帳等の保存期間についても延長の検討を行うことが適当である。6.今後の検討について。今後の労働者派遣制度の検討については、上記の検討結果を踏まえた対応や、いわゆる同一労働同一賃金に関する平成30年改正労働者派遣法の施行状況、今後の経済・雇用情勢の動向等を踏まえ、更なる検討を行うことが適当である。また、現下の新型コロナウイルス感染症による派遣労働者の雇用への影響等については、専門的見地からの検証を行うことが適当である。
事務局からの説明は以上です。よろしくお願いいたします。
 
○鎌田部会長 ありがとうございました。ただいまの派遣制度に関する中間整理(案)につきまして、御質問、御意見がございましたらお願いいたします。まず、使用者側から御発言いただければと思います。お願いいたします。中西委員、どうぞ。
 
○中西委員 ありがとうございます。この度の労働者派遣制度に関する議論の中間整理につきまして、意見と要望を申し述べさせていただきたいと思います。総論といたしまして、派遣事業者に対する事業継続が困難になるような過度の規制は、翻って雇用の維持を妨げる結果となると考えています。これを念頭に置き、これから大きく3点のテーマにつきまして、これまでの部会での主張と重複するところがあるかもしれませんが、意見並びに要望を述べさせていただきたいと思います。
まず、労働契約申込みみなし制度についてです。これまでの部会では、本制度の対象となる違法行為は派遣元企業に起因するものが多く、本制度の認知度が不十分な派遣先企業にとって過度な負担であり、違法行為の関与実態から、本制度の対象となる違反行為については再検討が必要ということを申し上げてまいりました。中間整理には、派遣労働者をはじめとする関係者に対して本制度の周知に努めることが記載されているため、派遣先企業をはじめとする関係者に対し、様々な手法を通して幅広に周知していいただきたいと思います。また、本制度の対象となる違法行為の範囲につきましては、派遣先企業による派遣元企業の違法行為への関与実態の観点から再検討が必要な面もありますので、その旨についても記載していただきたいと考えます。
2点目です。特定目的行為の禁止につきまして意見を申し上げたいと思います。派遣労働者と派遣先企業双方の業務内容等の確認のための事前の会社訪問や顔合わせについては、企業が求める業務スキル・能力や特性の把握と、派遣労働者が活用したいスキル・能力や職場環境について、それぞれの視点で双方が確認し合うことができ、ミスマッチの防止や派遣労働者本人のキャリアアップに寄与する効果もあることを記載いただきたい。したがいまして、本規制の緩和を含めた議論を行う旨を記載していただきたいとも考えております。
3点目です。派遣期間制限についてです。本制度のうち、個人単位の期間制限については、派遣という働き方を望む派遣労働者本人の意思や希望、または派遣労働者が直面するそのときどきの事情等により、派遣労働者が希望するキャリアを妨げることがあると考えております。このような点を踏まえて、期間延長を視野に今後も本制度の見直しについて検討していただきたいと考えます。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。ほかの使用者側委員、御意見はありますか。佐久間委員、どうぞ。
 
○佐久間委員 ありがとうございます。今回、おまとめいただいた中間整理の案ですけれども、労使間では、いろいろ議論があったと思います。それをお互いの主張、意見を取り入れながらまとめていただきまして、今回の議論の整理としては、これでよろしいのではないかと私は思います。
その中で1点だけ申し上げたいのは、2ページ、3.の労働力需給調整機能の在り方について、事業所単位、個人単位の在り方の所です。文面はこのままでよろしいと思いますが、3ページの2.で使用者代表委員からは、個人単位の期間制限がキャリア形成にマイナスの影響があるというところです。実際、今回、ヒアリングとか調査結果を伺っていると、この部分というのは常用代替防止という前提から成り立っているわけですが、事業所単位の期間制限、そして個人単位の期間制限が出てきたことは理解できるわけです。と言いながらも、今後の派遣というのが、これからの働き方の有用性ということを考えると、また、働きやすさとか、今回のヒアリングでは副業で派遣を選択された方もいらっしゃいましたし、そういう正社員にはなりたくないという思いの強い方もいらっしゃいました。派遣の利用の仕方、選択も多様化していると思っております。今、期間が3年もあるのだからその間で「正社員化する」という意見も分かるのですが、個人が会社ではなく職場というか、自分が働いている部署なら留まっていたい、他の部署には異動したくないという思いがあることも事実だと思います。そのため、キャリア形成の意識も重要ですが、例えば1年延長とか、年数は今後の検討でありますが、柔軟な対応も求められているのではないかと考えるところです。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。平田委員、どうぞ。
 
○平田委員 ありがとうございます。これまで労働者派遣制度に関して真摯に議論を重ねてまいりましが、労使それぞれの意見がある中で、今回、中間整理という形で取りまとめていただきましたことを、部会長をはじめ、事務局の方々に感謝申し上げます。
中間整理の中では、幾つか個別の論点において引き続き検討することが適当として課題が残っており、全体としても、6.において、同一労働同一賃金に関する平成30年改正労働者派遣法の施行状況や、今後の経済・雇用情勢の動向等を踏まえ、更なる検討を続けていくとまとめられております。経済界としても、次回の検討の際には、残された課題について更に議論を深めていくべきと考えております。
その上で1点、意見です。今般の中間整理にある、教育訓練、キャリアコンサルティングに関する雇入れ時の説明の義務化や、雇用安定措置の希望聴取結果の派遣元管理台帳への記入などは、派遣元にとっては管理する項目が増えるため、システム等の改修が不可欠になると考えております。中間整理の基本的な考え方の最後に、新型コロナウイルス感染症の雇用への影響は大きいと書いてありますが、経済活動への影響も大きく、経済活動が停滞し企業経営の悪化が散見されている状況を鑑みれば、システム改修に必要なコストや期間が確保できるように、施行日については御配慮をお願いしたいと考えております。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。引き続き、労働側からも御意見を頂きたいと思います。仁平委員、どうぞ。
 
○仁平委員 これまでの議論を踏まえて中間整理いただいた内容について、労側としても了解したいと思っております。その上で4点ほど意見、質問させていただきたいと思っております。1つは、この部会でも最大の課題となりました日雇派遣の原則禁止の所です。今後、改めて検討という記載がございますが、労働側としては意見も付させていただいています。日雇派遣については、繰り返しになりますが不安定雇用の最たるものであって、原則禁止を維持すべきであると考えます。日雇派遣が原則禁止となった趣旨を踏まえて、基本的に、禁止の例外というのは現行業務に限るべきであって、例外の拡大は認められないということを改めて申し上げておきたいと思っております。
2点目ですが、離職後1年以内の労働者派遣の禁止と個人単位の期間制限についても、今後、在り方について検討とされているところです。これにつきましても、労働側としましてこれまで言ってきたとおりでございますが、雇用の原則というのは期間の定めのない直接雇用であるべきと考えております。グループ派遣の規制も含めて、これらの規制を安易に緩和すべきではないと考えております。
3点目ですが、団体交渉の所の記載です。これも団体交渉の応諾義務の在り方については引き続き検討と記載されているところですが、2015年の改正の附帯決議において具体的に示された労働時間の管理や安全衛生等については、正に派遣先の労働現場で起きている課題でございまして、問題解決の実効性を高めるためには派遣先に団体交渉の応諾の義務を課すことが必要だと考えております。今回、派遣先指針において、派遣先の労働関係法令上の義務に関して主体的に対応すべきことを明記いただいておりますが、そもそも派遣先の使用者性について、労組法との関係も含めて検討する必要があるのではないかと考えておりますので、厚労省としての考え方をお伺いしたい。これは質問です。
4点目ですが、新型コロナウイルスの影響によって派遣労働者の雇用は不安定化しております。そして働く環境も含めて正社員との差も浮き彫りになっているところでございます。連合にも例年以上にこうした労働相談が寄せられております。今の社会の状況を踏まえれば、今、我々がやるべきことは何なのかと言えば規制を緩和することではなくて、正に派遣労働者の雇用の安定と処遇の改善に向けた法令の遵守ということを徹底すべきだと考えております。これは労働行政に対する要望でございますが、今回の施行状況の調査で法令違反が認められたり、周知が十分でないと判明した部分も多々あるかと思います。制度の適正な運営のために、法の周知の徹底と適正な指導監督ということについても改めてお願いをしていきたいと思います。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。労働側委員でほかに何か御意見はありますか。よろしいですか。それでは、今、使用者側委員と労働側委員からそれぞれ御意見を伺ったところですけれども、事務局のほうでコメントがありましたらお願いしたいと思います。
 
○松原課長 ありがとうございます。順番に、委員の皆様からの御質問、御意見について、事務局としての考え方をお話したいと思います。
まず、中西委員からお話がございました2点です。派遣先のみなしの規定の部分ですけれども、事務局といたしましては、現行の法第40条の6の規定の中に、いわゆる派遣先が基本的にその行った行為が法違反の行為に該当することを知らず、かつ、知らなかったことにつき過失がなかった場合には、当該条文は適用されないと明記されていること、また、もう1つ、このみなし雇用規定が施行された段階で職業安定局長通達を出しておりまして、その中でも善意無過失の場合については裁判上疎明できることを明確にさせていただいております。このような形で、中西委員の御意見につきましては、既に踏まえられているのではないかと考えている次第でございます。その上で、今回のこのような記載にさせていただいているということです。
中西委員からの2つ目の御意見、特定目的行為の部分です。前回、部会長からも御発言がございましたように、特定目的行為につきましては、派遣元と派遣先のどちらが雇用主としての責任を持つのかという派遣制度の根幹に関わるものであるということで、私どもとしましては慎重な検討が必要な課題であると考えております。これまでの本部会での御議論からは、本件について引き続き検討すべきという公労使の合意が得られたとまでは言えないと、このように考えておりまして、私どもとしましては原案には記載させていただいていないという状況です。
一方で、御懸念がございますように、派遣先と労働者の円滑なマッチングという御指摘につきましては、現在でも指針上、派遣労働者自らの判断で事業所訪問等をすることは、特定目的行為に該当しないと、こういう場合もあるということが明記されているわけです。このような形で、現場におきましてしっかりと法令違反が起こらないような形で対応することは可能であろうと考えている次第です。
次に、佐久間委員から御発言がありました件ですが、御発言を踏まえましてしっかりとした検討、対応をしてまいりたいと考えております。
平田委員から御発言がございました、この中間整理が御了承いただいた後の話になると思いますけれども、この報告書で求められた内容につきましては、当然、必要な対応を行っていくこととしたいと考えております。一般論で申し上げますと、今後、省令改正ですとか指針の改正等というものが必要になってきますけれども、この中では、基本的にパブリックコメントをまず実施させていただき、その上で労政審への諮問も必要になるものと考えております。施行時期につきましては、当部会にお諮りする段階でどのような形になるかということをまた考えてまいりたいと思いますが、私どもとしましては、当然のことではございますが、関係者への改正内容の周知期間とか、適切に施行するために必要になる準備期間も十分考慮して、施行時期というものをお諮りしたいと考えている次第です。
続きまして、仁平委員の御質問、御意見です。団体交渉の応諾義務の在り方に関する今後の検討の進め方という部分です。現時点におきましては、派遣先の指針の苦情処理の箇所で言及しているとおりですけれども、派遣先の団体応諾交渉義務につきましては、代表的な裁判例と中央労働委員会命令におきまして、一定の考え方が示されている状況です。今回はこれを苦情処理に当たって留意すべき事項という項目の中で更に明確化することが、本部会でのコンセンサスになったのではないかと事務局としては考えています。労働者派遣制度におきます派遣先の団体交渉応諾義務の在り方につきましては、記載にありますとおり、更なる裁判例等の蓄積状況も注視しつつ、検討してまいりたいと考えております。
また、仁平委員から御指摘がございました労組法における使用者性の考え方についてですが、労働者派遣法上の論点にとどまるものではない部分もございますので、厚生労働省内の関係部局に本日の仁平委員からの御意見を伝えさせていただき、よく連携していきたいと考えている次第です。
もう1点、仁平委員からお話がありました法令違反の派遣元等に対する指導監督ですが、私ども法令を施行する立場としましては、法令を遵守していただくということを第一に考えておりますので、これまでも行ってまいりましたが、今後とも法令違反に対する派遣会社、派遣先などに対しまして厳正な指導監督を行うことにより、法令の遵守を徹底してまいりたいと考えております。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。今、事務局からコメントを頂きましたが、さらに使用者側あるいは労働側で御意見、御質問があったらお願いします。よろしいですか。それでは、今、コメントをもらったということで、次に公益委員のほうから質問、意見があればお願いします。まず私のほうから、この平成24年改正法、平成27年改正法の施行状況に係る議論をフォローアップしていて、これで一旦は終わったのかなと思っていますが、中間整理という趣旨についてどういうものかお尋ねしたいと思います。これが私の質問です。公益委員として、引き続き質問があればお願いします。
 
○小野委員 5ページの所に書かれている今後の検討についてですが、具体的に今後、どういうふうに進めていかれるのか、あるいはスケジュール感など、もしお考えがあればお聞かせ願いたいと思います。
 
○鎌田部会長 では、事務局、コメントをお願いいたします。
 
○松原課長 ありがとうございます。部会長と小野委員からの御質問にお答え申し上げます。まず、部会長からお話がございました、議論の中間整理としている趣旨です。私どもとしまして、平成24年及び平成27年改正の労働者派遣法に係るフォローアップの議論については、昨年6月以降、施行状況調査等による詳細な実態把握を行った上で、労働力需給制度部会、本部会での御議論も経まして、現段階で可能な議論は尽くされたものと受け止めております。一方で、議論を開始した当初には予期されていなかった新型コロナウイルス感染症による派遣労働者の雇用への影響というものは、極めて重要な課題と認識しております。こちらについては、今後、改めて検証することが必要と考えておりまして、現段階では中間整理という形で記載させていただいている次第です。
2点目です。小野委員からの御質問です。新型コロナウイルス感染症の感染状況や、これに伴う派遣労働者の雇用への影響につきまして、厚生労働省といたしましては、引き続き状況の把握に努めつつ、派遣労働者の雇用の安定などのために対策に万全を上げて取り組んでいくこととしております。一方で、この感染症の影響についての検証につきましては、まずは必要な情報の収集に努めた上で、然るべき時期に専門的見地から検証を行うことを想定しております。また、平成30年改正派遣法、これは同一労働同一賃金に関係する改正ですけれども、令和2年4月1日に施行しております。こちらにつきましては、附則において5年後見直し規定が盛り込まれております。私どもとしましては、この改正法につきましても円滑な制度の運用と施行状況の把握に、しっかり努めていきたいと考えております。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。公益委員のほうで何か更にありますか。大丈夫ですか。一通り御意見と御質問、それに対するコメントを頂きましたが、さらに最終的に何か御意見、御質問はございますか。よろしいですか。今、使用者側委員、労働側委員から御質問、御意見を伺ったところです。その後に事務局からのコメントで、この中間整理の中で、検討すべき課題については検討すると書かれておりますし、今までの皆さんの御意見を私としては集約したものと捉えていますので、この中間整理(案)で皆さんの意見を集約したと捉えて取りまとめたいと思っていますが、いかがでしょうか。よろしいですか。ありがとうございます。それでは、そのようにさせていただきます。そのほかのことで御発言を希望される方はいらっしゃいますか。仁平委員、どうぞ。
 
○仁平委員 取りまとめの内容とは別な話になりますが、新型コロナウイルス感染症により、派遣労働者からの労働相談ということでテレワークに関する相談が来ております。正社員はテレワークできるけれども派遣労働者はテレワークができないとか、休業の取扱いが異なっているなど種々の問題が発生しております。派遣労働者についても、業務の内容によると思いますが、テレワークが可能な方については、これを推進していくことになるのだろうと思っています。これまで厚労省としても必要な対応は取られてきたということも認識しておりますが、これまでの対応も含め、その現状と留意点などを、次回で結構ですから、可能な範囲で取りまとめて報告いただけたらと思いますので、お願いしておきたいと思います。
 
○鎌田部会長 これについて、事務局から何かコメントはありますか。お願いします。
 
○松原課長 ありがとうございます。仁平委員の御意見につきまして、厚労省としましては新型コロナウイルス感染症の感染拡大を防止するためには、テレワークが非常に有効な対策の1つであると考えております。派遣労働者をはじめとした非正規雇用労働者につきましても、正社員同様に積極的なテレワークの活用を図っていただくように、経済団体や派遣業界団体等に対しまして要請を行い、ホームページにもQ&Aなどを掲載し、テレワークの活用の周知をこれまでも行ってきていると認識しております。ただ、今、仁平委員からお話がありましたように、どのような対応を取ってきたかについては、まとめて御説明申し上げていないと思っておりますので、次回の本部会におきまして、これまでの対応を含めた内容につきまして御報告申し上げたいと思っております。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。ほかに何か皆さんから御意見、御質問はございますか。よろしいですか。それでは、本日の議題はここまでとさせていただきます。事務局から何か連絡事項はございますか。
 
○清水補佐 次回の部会の日程につきましては、追って事務局から御連絡いたします。よろしくお願いいたします。以上です。
 
○鎌田部会長 それでは、以上をもちまして、第303回労働力需給制度部会を終了いたします。議事録の署名は奈良委員、中西委員にお願いいたします。本日はありがとうございました。