第302回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 議事録

日時

2020年(令和2年)6月26日(金)16:00~

場所

東京都港区芝公園1-5-32  労働委員会会館講堂(7階)

出席者

(公益代表委員)
  • 小野 晶紀子
  • 鎌田 耕一(部会長)
(労働者代表委員)
  • 木住野 徹
  • 永井 幸子
  • 奈良 統一
  • 仁平 章
(使用者代表委員)
  • 佐久間 一浩
  • 中西 志保美
  • 平田 充
  • 森川 誠

議題

  1. (1)労働者派遣制度について(公開)
  2. (2)労働者派遣事業の許可等について(非公開)
  3. (3)有料職業紹介事業及び無料職業紹介事業の許可について(非公開)

議事

議事内容
○鎌田部会長 定刻となりましたので、ただいまから第302回労働力需給制度部会を開催いたします。本日は公益代表の藤本委員、松浦委員が、所用により御欠席されています。
本日は労働者派遣制度について公開で御審議いただき、その後、許可の諮問に係る審査を行います。このうち、許可の諮問に係る審査については、資産の状況等の個別の事業主に関する事項を扱うことから、「公開することにより、特定の者に不当な利益を与え又は不利益を及ぼすおそれがある」場合に該当するため、非公開とさせていただきます。その際、傍聴されている方々には退席をお願いいたしますので、あらかじめ御承知おきいただければと思います。
それでは、事務局から、これまでの部会で質問があった事項について説明をお願いいたします。
 
○米岡補佐 それでは、御説明申し上げます。一部、口頭だけでの御報告となってしまいますが、よろしくお願いいたします。
まず、6月9日の需給部会で御指摘いただいたものです。「労働契約申込みみなし制度の認知度が低い。労働契約法上の無期転換ルールの周知状況を参考に教えてほしい」という御指摘がございました。
これについては、2018年に労働政策研究・研修機構が実施した調査によりまして、有期契約で働く労働者に対して、無期転換ルールについて、その内容を知っているかという質問をしています。これに対して、具体的な内容の5つのうち、「何らかの内容を知っている」とお答えになった方が35.5%といった調査結果になっています。
次に、6月17日の部会での御質問に対する回答になります。まず、1点目については、「日雇派遣の原則禁止について」という資料を御覧ください。こちらの1ページ目の「労働者派遣における労災事故発生状況」を基に、御説明申し上げます。
前回、この資料に対して、「全労働者と派遣労働者を比較すると、第三次産業の傷病者数の割合が派遣労働者で低く、また製造業で高いといった結果になっているが、この差の背景には何があるのか」といった御質問を頂いております。
業種別の就業者の割合を比較すると、下の囲みにあるとおり、製造業については、全労働者の18.3%が製造業に就業されています。一方で派遣労働者の場合には、33.8%が製造業に就業されているといった実態になります。また、資料に記載はありませんが、第三次産業については、全労働者の就業割合が62.6%、派遣労働者の就業割合が48.5%と、こちらは全労働者のほうが就業割合が高くなっています。こういったことが労災の発生状況の一因になっているものと考えております。なお、この資料の囲みの製造業の就業者の割合の数値については、大変申し訳ございませんが、前回お示しした資料から精査したところ、数値の訂正をいたしまして、今、お手元にある数字になっておりますことを御了承いただければと思います。
次に、もう1つの御質問です。これは資料はありませんが、「フリーランスとして看護師が介護施設等で業務に当たることができるのか」といった御質問を頂きました。
これにつきましては、医療機関、介護施設など、医療提供が可能な施設における看護を含む医療行為の業務委託というものは、医療法上の規制の下で認められないとなっております。具体的には、医療機関の管理者の指揮監督が及ばなくなることで、医療法上で定められた医療安全の確保による管理者の義務が適切に果たされないといった考え方で、看護等の業務の委託は認められていないという仕組みになっています。
次の御質問です。前回の資料の中で、派遣労働者の方に御質問をして、日雇派遣について、年収要件の確認をされたかどうか、されなかった方について、その理由を問うた資料がございました。この中で「確認をされておらず、また、その理由も分からない」と回答した方について、学生であったり、60歳以上の方、これらは日雇派遣が可能なわけですが、「こういった方がどの程度含まれているのか」との御質問を頂きました。
「分からない」と回答された方は114名いらっしゃいましたが、その中で学生は1人もいらっしゃらず、60歳以上の方が8名いらっしゃいました。このような状況でした。
次に、お手元の資料の「グループ企業内派遣の8割規制について」を御覧ください。この中で、関係派遣先派遣割合が8割を超えている事案の指導状況について御説明させていただいたものに対して、「グループ派遣規制について再指導を受けた事業所の事業規模、大企業、中小企業の別を教えてほしい」との御質問を頂きました。
これにつきましても、大変申し訳ないながら、数値を精査したところ、前回資料から数値の変更がございましたが、その結果、再指導を受けた事業所数が、お手元にありますとおり78事業所ございます。この78事業所のうち、事業規模を確認できた41事業所について内訳を見ましたところ、大企業が5事業所、中小企業が36事業所ということで、中小企業が占める割合が88%となっておりました。一方で参考ですが、派遣元事業所全体で見た事業規模の内訳については、大企業が18%、中小企業が82%となっておりますので、先ほど申し上げた違反事業所に占める割合も、派遣事業者全体の中小企業の割合と、それほど大きな差はないといった結果になっております。
次に、日雇派遣に関連して、これまでの部会でお示ししていなかったデータになりますが、松浦委員からの御指摘で、2点ほどデータについての御質問がございました。1つ目が、「日雇派遣に従事している方のうち、本業で日雇派遣に従事しているのか、副業で従事しているのかといった調査結果があれば示してほしい」というものです。
こちらについては、今回の施行状況調査の中で回答を頂いた方、474人の中で見てみますと、本業として日雇派遣に従事していた方が74.7%、副業として日雇派遣に従事していた方が25.3%といった結果になっておりました。
2点目の指摘ですが、これも施行状況調査の中で、日雇派遣の原則禁止という現行制度に対して、個人の方がどのような御意見をお持ちかといった調査結果について、これまでの部会の資料の中では調査対象者全員、これは日雇派遣で働いている方も一般の派遣労働者の方も、また、その他正社員やパート・アルバイトで働いている方等も含めた全ての属性の方々からの回答を集計したものをお示ししておりました。これに対して、「今の制度下で日雇派遣の経験がある方と、平成24年の日雇派遣の原則禁止前の日雇派遣の経験者について、クロス集計をしてはどうか」との御指摘を頂いたものです。
こちらについては、調査対象者全員からの回答では、「日雇派遣は全て可とするべき」という方が13.9%でしたが、現行制度下で日雇派遣の経験がある方の回答については、同じく「日雇派遣を全て可とするべき」との回答が28%、また、日雇派遣の原則禁止前に日雇派遣で働いた経験がある方については、32%となっておりました。また、「日雇派遣は例外なく禁止すべき」との回答が、調査対象者全員では5.6%でしたが、現行制度下での日雇派遣経験者については、同じ回答が5%、また日雇派遣原則禁止前の日雇派遣経験者の回答も5%と、同程度の回答割合となっております。これまでの部会での御質問に対する回答は以上になります。よろしくお願いいたします。
 
○鎌田部会長 今の説明について、更に御質問はございますでしょうか。よろしいですか。ありがとうございました。
それでは、続けて、事務局から本日の資料の説明をお願いいたします。
 
○米岡補佐 資料1-1を御覧ください。「法令違反の派遣元事業主に対する対応について」です。1ページを御覧ください。現行制度の概要をまとめております。厚生労働大臣は、派遣元事業主に法違反等が認められた場合は、指導・助言、改善命令、事業停止命令、許可の取消し等を行うことができることとされております。具体的な実務のイメージを、下にフローチャートでお示ししていますが、派遣法違反が発覚した場合には、一般的には、まず指導・助言、いわゆる行政指導ですが、これにより自主的な改善を促すといった対応を取ることが通常です。一方で、重大な法令違反であったり、行政指導に従われないようなケースについては、改善命令、事業停止命令、許可の取消しといった行政処分を行うこととしております。また、行政処分を行った場合には、その企業名を公表するといった運用をしております。また、一番下ですが、特に悪質な法令違反の場合には、罰則の適用について告発をするといったこともございます。
2ページを御覧ください。労働者派遣事業に係る指導監督実施件数についてです。指導監督実施件数については、左側の棒グラフにあるとおり、ここ数年、おおむね横ばいで推移しております。また、そのうちの文書指導実施件数についても、おおむね横ばいで推移しております。なお、令和元年度については、指導監督実施件数が前年と比べて増加しておりますが、これについては特定労働者派遣事業が廃止されたことに伴い、廃止事業所の実態を集中的に確認するための指導監督を行ったため、件数が増えているといったものになります。
次に、3ページを御覧ください。法令内容別の違反状況をお示ししています。上の段は、法条項別の違反の多いものの上位5つをお示ししています。派遣労働者に対する就業条件等の明示、派遣元管理台帳、労働者派遣契約締結の際の記載事項、派遣先への通知、マージン率等の提供といったものが、違反の数として多くなっております。下の段は、罰則の重い法条項等別の違反状況です。禁止業務への派遣、無許可派遣、名義貸しの禁止、事業所単位又は個人単位の期間制限への違反といったものが、御覧の資料のとおりの違反状況となっています。
次に、4ページを御覧ください。行政処分の件数の推移をお示ししております。届出事業主については、これは旧特定労働者派遣事業のことですが、令和元年7月1日の許可において、許可事業者への移行が完全に完了しておりますので、最新の令和元年度の数値は0件となっております。許可事業主の処分件数の推移を御覧いただきますと、6件、19件、9件と、おおむね10件前後から20件以内といった件数で、近年は推移しているところです。
5ページを御覧ください。都道府県労働局における複数回指導実施派遣元事業所の状況をお示ししています。平成26年度から平成30年度までの間に、2回以上の文書指導を受けている派遣元207事業所を抽出し、その中で、同一の法律条項違反で2回以上文書指導を受けているものについて調査したところ、70%の145事業所が同一の法律条項違反で2回以上指導を受けているといった実態になっておりました。また、その内容については、右側の表のとおり、派遣労働者に対する就業条件等の明示、派遣元管理台帳、派遣契約締結の際の記載事項等といった手続面に関するものが多い実態になっております。
6ページを御覧ください。過去の主な指摘として、平成27年の法改正の際の附帯決議をお示ししております。「法令違反を繰り返す派遣元事業主に対しては、厳正なる指導監督の強化、許可の取消しを含めた処分の徹底を行うとともに、企業名の公表についても検討すること」といった御指摘を頂いております。
7ページを御覧ください。論点です。今、御覧いただきましたとおり、法令内容別の違反件数としては、就業条件明示や派遣元・派遣先管理台帳関連など、手続面に関する違反が多く、同一の法律条項違反を繰り返す派遣元事業所も一定割合で存在する。また、行政処分に至る事案については企業名を公表するといったことをしておりまして、年間10件前後から20件程度ございます。こうした状況を踏まえ、法令違反の派遣元事業主に対する指導監督や企業名公表の在り方について、どのようにお考えいただくか。このようにまとめさせていただいております。説明については以上です。よろしくお願いいたします。
 
○鎌田部会長 それでは、ただいまの説明について、御質問、御意見がございましたら、どうぞお願いいたします。
 
○永井委員 まず、意見を申し上げます。3ページにございます法令内容別違反状況の内訳について、最後のまとめの所に違反内容は手続的な違反が多いとあります。法条項別の違反を見ますと、就業条件等の明示や、派遣元管理台帳は、派遣労働者の労働条件や派遣法に係る措置がきちんと実施されているかなどに関する重要な書類であり、派遣労働者の権利を保護するためにも、法令の遵守は徹底されなければならないと考えております。
また、5ページになりますが、複数回指導を受けている事業所のうち、同一の法条項違反で指導を受けている割合が約7割にのぼります。例えば就業条件明示書は、労働者にとっては派遣先での業務内容や就業時間、指揮命令者などが記載された重要な文書であり、繰り返し法違反を行っている事業主については、労働者への注意喚起という意味でも、複数回指導を行っている旨の事実を公表するなどを検討するべきではないかと考えます。
なお、前々回の審議会でも発言しておりますが、派遣会社の質の向上を図るためには、優良派遣事業者認定制度を周知し、労働者が優良な派遣会社を選べるようにしていくことも必要と考えています。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにございますか。
 
○中西委員 意見を述べさせていただきます。法令違反の派遣元事業主で、悪意をもって重大な違反行為を行った場合については、それ相応の罰則があることは当然であります。また一方で、書類上の不備など軽微な違反の場合については、派遣元事業主に対して、再犯防止につながるような指導を実施していただきたいと思います。
いずれにしても、派遣元事業主が法令違反に至った経緯、事情を十分に把握し、きめ細やかな指導監督を実施していただきたいと考える次第です。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにございますか。
 
○平田委員 御説明いただきまして、手続面での違反が多いと理解しました。こうした状況においては、闇雲に公表するよりも、派遣元事業主がきちんと法規制や制度に対して理解を深め、納得して改善してもらうことが重要だと思われます。そのためにどういう手段が適切か、という観点から検討を深めていくべきだと思っています。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにございますか。よろしいですか。それでは、次の議題に移ります。事務局から説明をお願いいたします。
 
○米岡補佐 資料1-2を御覧ください。「派遣先の団体交渉応諾義務等について」です。1ページを御覧ください。派遣労働者に関する派遣元・派遣先の主な責任分担について、まとめております。労働者保護法規の労働者派遣事業への適用に当たっては、原則、雇用主である派遣元事業主が責任を負う立場ではありますが、派遣先における具体的な就業に伴う事項であり、派遣先に責任を負わせることが適当な事項については、派遣先に責任を負わせることで、労働者保護を図っております。
具体的には、例えば下の表にある労働基準法については、労働契約の締結や賃金の支払、時間外・休日労働の協定等の締結届出、いわゆる36協定ですが、こういったものに関しては派遣元に義務が課されている一方で、労働時間や休憩、休日といった就業現場での実際の労働時間管理に関わるものについては、派遣先にその義務が課されております。また、労働安全衛生法については、雇入れ時の安全衛生教育、一般健康診断等といったものに関しては派遣元に義務が課されている一方で、安全管理者の選任、労働者の危険又は健康被害を防止するための措置等といった就業現場での実際の安全管理に関するものは、派遣先に義務が課されているといった分担になっています。また、男女雇用機会均等法については、職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の措置が派遣元に課されている一方で、同様の内容に関する雇用管理上及び指揮命令上の措置に関する責務が、派遣先に課されているといった形になっております。育児・介護休業法、労働施策推進総合法についても、育児・介護やパワーハラスメント等に関して、同様の分担規定が置かれているといった現行制度になっております。
次に、2ページを御覧ください。派遣労働者からの苦情の処理について、現行制度をまとめております。労働者派遣法においては、派遣先・派遣元事業主の双方に対して、派遣労働者から申出を受けた苦情の処理についての各種義務を課しております。具体的には、適正な派遣就業の確保のため、派遣元には、派遣就業が適正に行われるように必要な措置を講ずる等、適切な配慮をしなければならないという義務が課されております。冒頭に申し上げましたとおり、派遣元があくまで雇用主ですので、各種の雇用管理の責任は、基本的に派遣元が負っているといった上で、苦情の処理も当然実施していただくことになりますが、派遣先に関しましても、苦情の申出を受けたときには、当該苦情の内容を当該派遣元に通知するとともに、派遣元との密接な連携の下に、適切かつ迅速に苦情の処理を図らなければならないといった義務が、法律上課されております。
また、苦情の処理のための体制についても、その下にありますが、派遣元、派遣先、それぞれの責任者の設置の義務が課されており、派遣元と派遣先のそれぞれの責任者が、派遣労働者から申出を受けた苦情の処理に当たるべきことが定められています。
また、派遣契約の内容として、派遣契約の締結に際しては、派遣労働者の苦情の申出を受ける者、苦情の処理を行う方法、派遣元事業主と派遣先との連携のための体制等を定めなければならないこととされております。また、派遣労働者への明示として、雇入れ時と労働者派遣をしようとするときには、先ほど申し上げました契約に定めた苦情の申出を受ける者等の内容について説明をしなければならないということになっております。
また、不利益取扱いの禁止として、派遣労働者から苦情の申出を受けたことを理由として、派遣労働者に対して不利益な取扱いをしてはならないこととされております。最後に、管理台帳への記録として、派遣元、派遣先それぞれの台帳に、苦情の内容等を、苦情の申出を受け、苦情の処理に当たった都度記載しなければならないという義務が課されております。
次に、3ページを御覧ください。派遣先の団体交渉応諾義務についてです。まず、労働組合法は、「使用者は、次の各号に掲げる行為をしてはならない」としまして、「使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを正当な理由がなくて拒むこと」を不当労働行為として禁じております。また、派遣先が講ずべき措置に関する指針の中では、「派遣先は、派遣労働者の苦情の処理を行うに際しては、派遣先の労働組合法上の使用者性に関する代表的な裁判例や中央労働委員会の命令に留意すること」とされております。この、具体的な代表的な裁判例等の内容を、次のページで御紹介しております。
全部で4つ御紹介しておりますが、下から2番目の中労委命令について、簡潔に考え方がまとまっておりますので、御紹介いたします。「労働者派遣法上の派遣先事業主は、派遣労働者の所属する組合との関係では原則として労組法第7条の使用者には該当しないが、例えば、労働者派遣法の枠組み又は労働者派遣契約で定められた基本的事項を逸脱して労働者派遣が行われている場合や、労働者派遣法上、派遣先事業主に一定の責任や義務が課されている部分等については、労組法7条の使用者に該当する場合があり得る」といった考え方が示されております。
次に、5ページを御覧ください。派遣就労をする中での「悩みや困ったこと、トラブル・問題」の相談状況について、派遣労働者の方に調査をした結果です。左側を御覧ください。相談をした経験の有無について、24.5%の方が「はい」とお答えいただいており、その方々について、どこに御相談されたかをお尋ねしたところ、「派遣会社」が最も多く86.8%、「派遣先企業」が次に多く27.2%といった回答になっております。
次に、6ページを御覧ください。相談に対して最も支援してくれた相談先と相談内容の解決状況について、派遣労働者の方にお尋ねした結果です。最も支援してくれた相談先については、「派遣会社」が75.4%と最も多く、「派遣先企業」が16.1%となっています。相談内容の解決状況については、50.8%の方から「解決した」とのお答えを頂いております。
次に、7ページを御覧ください。労働組合から団体交渉を求められたことの有無等について、これは派遣先企業に調査をした結果です。左側を御覧ください。派遣労働者が加入している労働組合から団体交渉を求められたことの有無ですが、「求められたことがない」との回答が94.8%と最も多く、「対応している」が3.1%、「対応していない」が2.1%という結果になっております。また、右側を御覧ください。今後、団体交渉を求められた場合には対応しますかとの質問に対する回答としては、「わからない」との回答が57.4%と最も多くなっておりますが、「対応する」との回答が39.7%と次に多くなっております。
次に、8ページを御覧ください。過去の主な指摘です。平成27年の派遣法改正の附帯決議において、「派遣先の団体交渉応諾義務の在り方について、法制化も含めた検討を行うこととし、その際、労働時間管理、安全衛生、福利厚生、職場におけるハラスメント、労働契約申込みみなし制度の適用等に関する事項に係る団体交渉における派遣先の応諾義務についても検討すること」といった御指摘を頂いております。
次に、9ページを御覧ください。論点です。今御覧いただきましたとおり、派遣労働者調査からは、派遣就労する中での悩みや困ったこと等の相談先としては、大半が派遣会社であり、次いで派遣先が多くなっております。また、相談内容について、「解決した」と回答した方が約半数となっております。また、派遣先調査からは、派遣労働者が加入している労働組合から団体交渉を求められた事例はほとんど見られませんでした。また、裁判例等では、派遣先事業主は、派遣労働者の所属する組合との関係では、原則として労働組合法第7条の使用者には該当しないが、例えば、労働者派遣法上、派遣先事業主に一定の責任や義務が課されている部分等については、同条の使用者に該当する場合があり得るとの考え方が示されております。
こうした状況を踏まえて、派遣先の団体交渉応諾義務の在り方を含め、派遣労働者からの苦情の適切な処理の在り方について、どのようにお考えいただくか。このようにお示しさせていただいております。以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。それでは、この件について御質問、御意見がありましたらお願いします。
 
○仁平委員 3ページの所を事務局から説明いただきましたが、派遣先が講ずべき措置に関する指針は、一般的な派遣先の事業主が読んでも難しいのではないかと思います。ですので、例えば7ページの問いにあるような「今後、団体交渉を求められた場合の対応」とは何に対応すればよいのか「わからない」と答えるのは想定できる話です。
附帯決議を8ページに載せていただいていますが、正にここに指摘されているような労働時間の管理、安全衛生、福利厚生、職場におけるハラスメント、労働契約申込みみなし制度の適用などは、やはり派遣先として責任があるものですので、附帯決議にあるように派遣先の応諾義務ということで明確にしていくということが、現場のトラブルも含めて解決していくために大事なことなのではないかと思っています。
個々の派遣労働者に聞いた派遣先で起きた問題の解決の有無について、6ページですが、「解決しなかった」という回答が半分ぐらいあります。ここをどう高めていくかということが1つです。そもそも、これは母数が378ですが、派遣先への相談の有無で「はい」の内容が重要だと思っています。「いいえ」という回答についても、相談することがない「いいえ」なのではなく、どこに相談すればいいのか、解決できるのかどうかということも含めて、相談していないという問題もあるのだろうと思っています。そういう事例も含めて、今後、いかに働く人の問題を解決していくのかということを考えるべきではないかと思っています。
派遣先における団体交渉の応諾義務を明確にして、派遣労働者の権利の保護と派遣先における問題解決の実効性を高めていくという観点が必要ではないかと考えています。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにはありませんか。
 
○中西委員 意見を申し上げたいと思います。派遣先の団体交渉応諾義務については、これまでの裁判例を見ますと、個々の事案における具体的諸事情を踏まえて判決が出されており、その明確な基準が示されているわけではないことから、一律に派遣先企業に対して団体交渉応諾義務を課すことについては現実的ではないと考えています。そうした紛争事態に至る前に、派遣元と派遣先とが連携し、派遣労働者の苦情を処理することはもちろん重要です。派遣元企業、派遣先企業は、派遣労働者と面談する機会等を通して、職場環境や業務内容等についてヒアリングを行うよう留意しながら、対応が必要の場合については、両者が連携して迅速に対処し、派遣労働者にとって働きやすい環境整備につなげることが重要であると考えます。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにはありませんか。
 
○奈良委員 1つだけ意見を述べさせていただきます。仁平委員からもありましたが、相談の有無の所でトラブルや問題、悩みや困難を抱えた派遣労働者のうち、4人に1人しか相談に足を踏み出せていない。このことは非常に大きな問題だと思っています。結局、トラブルを抱えたまま泣き寝入りをして我慢するか、若しくは職場を離れるか、そういったところに追い込まれているわけです。しかも、勇気を持って相談をしてみたところが解決できたのが半数、半分はそのまま未解決で残されてしまっています。これが、いわゆる苦情処理を義務として課されている派遣元、派遣先の今の在り方になっているのだと思います。やはり、ここのところを、法的にも苦情、相談にきちんと対応するということが求められているわけですから、まず第一義的には派遣元がきちんと労働者からの相談に応じて、派遣先と連携をして、職場の問題の是正につなげていく。そのことを実効あるものにしていくということが、まず第一だろうと思っています。加えて、残念ながら派遣元がそうした対応が取れないときに、これは重大な労働紛争に発展する可能性もあるわけですから、その折にはきちんと派遣先が団体交渉を受ける、応諾義務を課すということが、やはり必要なのだろうと思っています。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにはありませんか。
 
○平田委員 派遣先の団体交渉応諾義務につきましては、決定権限のない派遣先が団体交渉に応じても、結局、何の問題解決にも至らないのではないかと考えています。資料でも御説明がありましたが、現行の判例等で派遣先に責任や義務が課されている事項については、派遣先が使用者に該当すると整理されており、現時点で取り立てて何かを見直す必要はないと思われます。
また、派遣先企業においてはパワハラ・セクハラやコンプライアンス違反に対する相談窓口が通常はあり、この窓口を派遣労働者も活用できるケースが多いと聞いています。団体交渉という枠組みよりも、まずは窓口等を活用し、初期段階での問題解決を図っていくことが望ましいと考えています。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにはありませんか。
 
○仁平委員 ヒアリングでの話ですが、連合東京からハラスメントについての話がありました。そういうトラブルは今後も増えてくるのだろうと思っています。ヒアリングでは、ハラスメントは派遣元に相談しても解決できない話であり、派遣先として具体的に組合が間に入って解決をする、そういう営みこそが大事なのだが、なかなか席に着いていただけなかったという話でした。そういう意味では、先ほどの書きぶりだけでは、派遣先の事業主がどこまでそれを受けていいのか、個々の事例によって違いますと言われたら、これを受けていいのかどうかは本当に専門家でないと分からないと思います。そういうこれから増えてくるであろう事案なども具体的に見据えながら、本当に実効性を高めるような工夫がどうできるかということを、是非、取りまとめていただきたいと思います。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにはありませんか。
 
○小野委員 労使からいろいろ御意見が出ていて、両方ともそれなりに納得いくお話だと思って聞いていました。まず相談の有無のパーセンテージについてですが、相談したのが24.5%で、この数字についてはなかなか判断することは難しいのですが、これまでの私の研究であったり、調査の中で感じたことで言うと、派遣労働者の方はやはりパワーバランスの中で低い位置にいらっしゃるということもあって、なかなか相談しづらいとおっしゃる方が結構いらっしゃいます。これは事実です。恐らく、なるべく面倒くさいことを言わないほうがいいのではないかと、要はそういうことを言ったときに契約を更新されなかったり、面倒くさい労働者だなと思われたりするのが嫌だなどという理由で、ちょっと我慢してしまうということがあるようです。やはりその割合は、正社員、直接雇用されている方に比べれば小さい、雇用が不安定ということもあって、なるべく言わないようにしようというほうにベクトルが向いてしまうということは、私はあり得ることだと思います。
一方でで、すごく交渉されている方もいらっしゃいます。いろいろなことについて派遣会社にお話をされて、嫌なことがあったり、自分がこういうキャリアを積みたいということを派遣先にもお話されたり、やはりそういった労働者自身の交渉が強くなるということも、非常に重要なことです。それを受け止めてあげるという派遣会社や派遣先の土壌というものも、私は絶対的に必要なものだと思っています。ですので、必ずしも派遣労働者が我慢しなくてもいいと、もうちょっと発言して、自分の言いたいことを言ったら、それを受け止めるからというような、派遣先と派遣会社の両方が、派遣労働者に対して相談窓口がある、キャリアのことについてもうちょっと相談してくださいなどというようなことを、もう少し事前に言ってあげたり、周りの人が誘導してあげるというようなことができる労働になった場合には、もうちょっとこの相談の24.5が増えていくのではないだろうかと思います。
解決した、解決していないという半々の数字というものも非常に微妙で、解決してなかったとしても、言ったことによって何か気持ちが楽になった、次の解決策や自分の道が見えたということもありますので、この数字だけでは何とも言えない部分もありますが、まず1つ重要なことは、気軽に相談できること。誰にも相談できないというのではなくて、どこかに相談できるという所を設けて、それを周知して推進していくということが、やはり重要ではないかと思います。意見でございました。
 
○鎌田部会長 ほかにはありませんか。よろしいですか。それでは、次の議題に移ります。
事務局から説明をお願いいたします。
 
○米岡補佐 それでは、資料1-3を御覧ください。「その他の検討課題について」です。まず、1つ目のテーマが1ページ目、派遣元管理台帳等の保存期間についてです。現行の制度の中では、派遣元事業主及び派遣先は、派遣元管理台帳又は派遣先管理台帳を3年間保存しなければならないこととされています。一方で、最近の動きとして、労働基準法の一部を改正する法律により、賃金台帳等の保存期間が5年に延長され、ただ経過措置として当分の間は3年とされました。
この背景ですが、民法の一部を改正する法律により、使用人の給料に係る短期消滅時効が廃止されることなどを踏まえて、労働基準法を改正し、賃金請求権の消滅時効期間を5年に延長するとともに、賃金台帳等の記録の保存期間について、賃金請求権の消滅時効期間と同様に5年に延長とされたものですが、当分の間は経過措置として3年とされているものです。また、この法律の附則の中で検討規定として、労働基準法の一部を改正する法律施行後5年経過後の状況を勘案して検討し、必要があるときは措置を講じることとされています。
今後の労働基準法の経過措置に係る検討状況も見据えつつ、派遣元管理台帳及び派遣先管理台帳の保存期間の5年への延長についても、検討が将来的に必要になってくるのではないかということで、論点を提示させていただいています。
続きまして、2ページを御覧ください。労働者派遣契約に係る保存の電子化についてです。労働者派遣契約の当事者は、これは派遣元と派遣先の双方ですが、労働者派遣契約の締結に際し定めた事項、例えば派遣労働者が従事する業務の内容や派遣先事業所の名称、所在地等ですが、これを「書面に記載しておかなければならない」とされています。ただ、これについては、書面による保存に係る事業者の負担が大きいという声も現場から上がってきているとともに、真ん中の辺りに囲みがありますが、政府全体の動向としても、規制改革推進会議での議論として、書面規制等についてオンラインによる手続を可能とするよう、規制の見直しに係る方針の取りまとめに向けた議論が開始されているといった動きがあります。こういったことも踏まえまして、この労働者派遣契約の内容についての保存については、必ずしも書面だけではなく電磁的記録による保存も認めることとしてはどうかということで、提案をさせていただくものです。事務局からの説明は以上です。よろしくお願いいたします。
 
○鎌田部会長 それでは、この件について御質問、御意見がありましたらお願いいたします。
 
○木住野委員 労基法が、時効消滅期間について5年、当面は3年の経過措置に改正されたことを踏まえるべきだと考えます。労働側としては、労基法の時効消滅期間については原則の5年とすべきと考えており、派遣法においても5年ということで検討するべきだと考えています。ただ、その際に記録に関する電子化という御提案があるわけですが、これは1つの負担軽減策として考えてもよいと思っています。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。
 
○佐久間委員 まずこの保存期間ですが、この4月1日から施行になりました「賃金債権の請求権」の関係で、当面3年間とすることとなり、それが終わった後にまた検討をして5年になるということが記録されていますので、やはりここは取りあえず3年で、現状のままでよろしいのではないかと。また、もし5年になった場合は、そのときには改正ということをできればよろしいのではないかと考えています。
それから、書類の保存の電子化ですが、この賃金債権の請求権の関係でも、私どもからは、コスト負担の増大、電子化するには、システムを作らなければいけないなどを訴えてきました。しかし、このような際にも対象となる助成金制度なども厚生労働省のほうでも用意をしていただいているということがありますので、この書面自体は例えば残したとして、そしてそれをPDFや、契約書の電子化ファイルということが載っていますので、差し支えないのかと考えています。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにはありませんか。
 
○平田委員 手続の簡素化に関連して、2点申し上げます。
1つ目は、現行法の35条で、社会保険の加入証明等を派遣元から派遣先に提示することが義務付けられていますが、個人情報のやり取りには一定のリスクがあります。事務負担も大きいという意見も聞いており、労働者保護が疎かにならない範囲で、手続の緩和について御検討いただきたいと考えています。
もう1つは、法26条により、事業所の抵触日についてあらかじめ通知する際、契約更新の都度、通知が必要となっています。例えば「最初の通知のときに、抵触日が変更になった場合には遅滞なく通知する。それ以外は、契約の都度、同じ抵触日であることを本書をもって通知する」という趣旨のやり取りで、通知を簡素化できないかと考えています。もちろんこれも労働者の保護が疎かにならない範囲で、現行制度の枠組みにおいて手続の簡素化ができないかと考えています。以上です。
 
○仁平委員 平田委員がおっしゃられたことは、多分、今、法的に課せられていることだと思うので、現行制度においてそもそも守られているのか、手続を簡略化した場合に懸念されることがないのかなど、一度、事務局で整理いただくことが必要だと考えます。
 
○鎌田部会長 そのほかにありませんか。
 
○平田委員 誤解のないように申し上げておきますが、先ほどの発言は手続面の簡素化に関連した問題提起です。すぐに検討ということではなく、まずは実務の状況をお伝えしたものと御理解ください。
 
○鎌田部会長 ほかにありませんか。よろしいですか。
それでは、今回の検討課題となっている各論点については、一通り皆さんの御意見を伺ってきたところです。そこで、皆様から全体を振り返って、これから再度御意見を頂きたいと思っています。今までの検討課題、あるいは全体に関わる基本的な考え方でも結構ですが、全体を振り返って総論的な御意見がもしあれば頂きたいと思います。いかがでしょうか。
 
○仁平委員 全体的なことということで部会長からありましたので、まず1つは、今回の調査はコロナ前の調査であり、今、正に足下で起こりつつあるもの、あるいはこの1か月、2か月先に起こることを含めて、派遣労働者にどのような影響があるのかということは、しっかり検証をして進めていかないといけないと考えます。例えば調査の中でも雇用安定措置など、経済状況の良いときには一定の効果があったわけですが、本当にそれがこの1か月、2か月の中で機能しているのかといったことについては、まだ確証が持てないのではないでしょうか。そういう意味では、派遣元あるいは派遣先の事業主の行動によっては、リーマンショックのときに派遣村ができたようなことも含めて、懸念があるのではないかと思っています。制度の見直しに当たっても、そういった観点を持つ必要があると考えます。
もう1つは、4月から始まった同一労働同一賃金によって派遣労働者の賃金や処遇がしっかり改善されているのかということも含めて検証することが大事なことなのではないかと思っています。こういったものも合わせて、しっかりと考えた上で進めるべきではないか、データの見方そのものも含めて意見としたいと思います。
 
○鎌田部会長 ほかにありませんか。全体を振り返ってということで。
 
○佐久間委員 数回にわたりまして1つずつを検討させていただきまして、私もこういうことがあるのだなと、理解させていただいたつもりです。今回テーマに上がっている点については、基本的には現状どおりで進めていくということも一つなのではないかなと考えています。現状のままでいいのではないかなと思うのですが、その中で、例えば2つ目の教育訓練、キャリアコンサルティングの関係ですが、派遣元が実施したと思っても派遣労働者は実際には受けたかどうかはよく分からない、また、派遣先の業種や企業によっても違うのですが、その教育訓練の項目というものがきちんと当てはまっているのかどうか。このキャリアコンサルティングというか、将来を見据えた教育訓練というステップが、うまく図れるような仕組みを考えていかなくてはいけないと感じたところです。
派遣の期間制限の関係ですが、事業所関係、そしてまた個人の年数として、3年となっていますが、同じ職場、同じ業務などに派遣労働者自身がなじんでいるということであれば、違う部署に行って全然知らない環境に配置されると、その個人の負担をかえって強いるのではないかと思います。個人の選択を重要視していただいて、職場が変わるというより、同じ部署にいられるようなことを検討していくのもいいのではないかと考えています。
もう一点ですが、日雇派遣の関係です。これも現状どおりでいいと考えるのですが、実際、この対象となっている業務、日雇派遣禁止の例外の業務の追加というものも、要望があったときには、1つずつ検討していく必要があると思います。今回の場合、例では、福祉・介護施設の看護業務というものがありました。先ほど、前回の質問で調べていただいて、医療関係のフリーランスはない、できないというお答えもいただいたわけですので、こういう環境にある、どうしても日雇いがしたいということであれば、今後も引き続き検討していくことが必要だと思います。しかし、前回も申し上げましたが、例えば労働組合側、そして日本医師会や看護協会の関係、こちらがどういう意見を持っているかということにも十分留意していただいて、もっと他に異なる要望があれば、それをまた検討していくということが必要なのではないかと考えています。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにはありませんか。
 
○中西委員 私からは意見と、それから今後の課題につきまして積極的に検討していただきたいという内容で意見を申し上げたいと思います。4月から派遣労働者の同一労働同一賃金の実現に向けた改正労働者派遣法が施行されまして、多様な働き方も出現し労働者の働き方も変化する中で、企業、労働者双方のニーズに沿った制度であるべきという視点から、個々の論点に対して意見を申し上げてまいりました。今後、さらに労働者が希望する働き方やキャリアアップを実現することができ、また、企業側にとっても一時的な人手不足の解消や専門業務の対応に、より有効な制度となるべく、検討すべきであると考えます。
今回の報告書をまとめるに当たり、離職後1年以内の労働者派遣の禁止や、特定目的行為の禁止、グループ企業内派遣の8割規制については、派遣労働者本人の意思や希望にかなうキャリアを妨げる側面もあり、廃止を含めた検討をすべきであると考えております。また、労働契約申込みみなし制度につきましては、派遣先企業に過大な責任を負わせる制度であることから、違法行為の関与実態に基づき、本制度の対象となる違法行為についての再検討を行うべきと考えます。今後は同一労働同一賃金の施行後の実態、コロナ後の雇用就業環境、新たな働き方の動向等を踏まえ、今回の報告書によって議論を終了するべきではなく、次年度以降も議論を継続していくべきものと考えております。
最後になりますが、その中におきまして日雇派遣につきましても、例外業務、年収要件について継続して議論をしていくべきだと考えます。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。ほかにございますか。木住野委員、どうぞ。
 
○木住野委員 今回提起された課題については、引き続き状況を見定めつつ、議論を継続していくべきだという今の中西委員の発言に私も同感です。
いろいろな就労形態というものが、今、出てきていて、「こちらには規制があってこちらには規制がない。派遣には規制があってこちらにはない。それはちょっと制度間にアンバランスがあるのではないか。だから派遣も規制緩和をしてもいいのではないか」という意見を聞きます。しかし、派遣においては法的枠組みがあり、状況を注視していかなければいけないと考えています。

○鎌田部会長 ありがとうございます。ほかにございますか。平田委員、どうぞ。
 
○平田委員 4点申し上げます。これまでの繰り返しになりますが、1点目は個人単位の期間制限についてです。優秀な派遣労働者に対して高度な仕事の依頼を検討した場合、3年という限られた期間では、結局、中途半端で限定的な仕事しか任せられないケースも少なくありません。派遣労働者の能力向上やキャリア形成の観点からも、個人単位の期間制限の見直しを図っていくべきだと考えております。
2点目は日雇派遣の禁止についてです。以前の部会資料にもあったとおり、一定程度のニーズはある中で、派遣元・派遣先の双方から労務管理等のチェック機能が働くことを考えれば、日雇派遣は派遣労働者にとってもメリットの大きい制度だと考えます。さらに、派遣先にとっては短期間で信頼性のある労働者を一定数確保できるため、緊急時の突発的な労働力不足に対する需給調整機能として、日雇派遣は有効な選択肢の1つだと考えております。改めて17.5業務が禁止の例外として認められている趣旨を精査し、追加できる業務や業種がないか検討を深めていくべきだと考えております。年収要件についても、政府は副業・兼業の推進を検討していることから、例外規定の見直しを検討すべきと考えております。
3点目はグループ内企業派遣の8割規制です。グループ内の派遣元のほうが、派遣先の経営実態、組織事情を熟知しており、就労の際のマッチングや就労後の就労状況の詳細な把握など、労使双方にとって有益だと考えます。8割規制につきましては、廃止に向けた検討を深めていくべきと考えております。
4点目は離職後1年以内の労働者派遣の禁止についてです。介護、育児、家庭の事情など退職に至る理由は様々であり、また、一度退職した後に復職する際、必ずしもフルタイムで働けない、短時間で働きたい、週2~3回で働きたい、といった就業ニーズがあることから、自己都合での退職や本人が就労を希望している場合は、禁止の例外として派遣就業を認めてもよいと考えます。また、パートやアルバイトからの派遣労働者への転換については、常用代替のおそれはないので、禁止の例外として認めてよいと考えております。以上です。
 
○鎌田部会長 仁平委員、どうそ。
 
○仁平委員 私も5点ほどございます。順番に申し上げますと、1点目は個人単位の期間制限の話です。これは雇用安定措置と併せて考えていくべきではないかと思っております。派遣先でのキャリアアップということを目指すのであれば、キャリアコンサルティング制度、教育訓練の制度も併せて総合的にキャリアを考え、それで3年の間にそういうキャリアを積みつつ、期間制限に到達する際には1号措置による直接雇用を検討するべきではないかと思っております。単に期間制限を撤廃して、そこで長く働ければそれでいいということでは、キャリアアップも含めて本当にプラスになるのだろうかという思いがございます。それが1点目です。
2点目は、これは正にこの間も一番時間を費やしてきた日雇派遣の問題です。まずもってこれは制度をどうこう言う前に、今の違法な実態を一掃し、制度について更に改善すべきことがあるのではないかと思っております。調査からは、労働安全衛生の対応などについても不十分だということも明らかになっていますし、年収要件も確認されていないことがままあるという実態も明らかになっています。さらに、就業の場所への巡回というのも、十分にできていないということです。
あと、この間、何回かヒアリングでも問題になりましたが、直前に仕事がなくなった場合の対応などについてもどうするのかという話についても、制度の見直し以前の話ではないかと思っている次第です。そもそも日雇派遣の原則禁止については、労働者がその日暮らしに陥ることがないように労働者保護の観点から設定されたわけであり、改めて今のこの局面も含めて法の趣旨を徹底することが、大事なことなのではないかと思っております。
それと、前回、ちょっとお話がありました雇用類似の働き方の話ですが、そういうのも広がっているのだから、あまりこちらの規制を強化すべきではないという御意見もあったかと思います。しかし、昨日の政府の全世代型社会保障会議などでも、現行法において雇用に該当する場合は労働法を適用すると明確に書いていて、そういう意味では、むしろ雇用類似の働き方のルールを整備していく中での対応こそが求められるのではないかと思っております。
3点目ですが、グループ8割規制の話です。わざわざ8割の規制を外して、9割、10割というところまで持って行き、それで労務管理も含めて一体何がしたいのか疑念を持たれるのではないかと思っております。これもグループで8割以上派遣するのであれば、グループ採用で直接雇用すればいいということなのではないかと思います。
4点目ですが、離職1年後の労働者派遣の禁止についてです。これも、離職1年以内の労働者について、その同一の事業主に派遣を禁止しているという趣旨は、労働者の直接雇用による雇用安定を大事にしようという趣旨だと考えております。出産や育児や介護と仕事との両立の観点から、そもそも辞められずに働き続けられる制度は今もあるわけであり、有期の労働者も、こうした制度を利用して職場において働き続けられるような環境を整備することが、まず先決なのではないかと思っています。それと、有期であった者だけを例外として認めるということになると、無期雇用の労働者を有期に変更させた上で次は派遣に切り替えるといった制度の悪用も考えられ、例外というのは認めるべきではない、と思っております。
5点目ですが、労働契約申込みみなし制度です。事業主にとって厳しいのではないかという御意見も出されましたが、そもそもそういう違法な状態というのが一掃されれば、こういう制度は実は機能しなくてもいいわけですから、この間、縷々、お話したとおり、きちっと今の制度を遵守徹底することが必要ではないでしょうか。これは行政も含めてお願いしたいところですが、その徹底ということをしっかりやっていただく。その上での話だと思っております。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。ほかにございますか。小野さん、お願いします。
 
○小野委員 私のほうからは、まず今回の議論のベースになった調査です。始まったときにあまりにも急な話で、調査をそんなに急いでやって議論できるのかという話をしたかと思います。けれども、意外にも調査が上手くいきました。年末年始に私と松浦委員も入って一生懸命やりましたし、委託先であった調査会社の方にも年末年始返上で頑張っていただきました。事務局のほうもかなりやって総力戦で良いデータが得られたというふうには思っております。
ただ、予想していませんでしたけれども、コロナのことがあって、あまりにも調査を打った時期と今後が変わってくるのではないかということもあり、まだ先が読めない状況だなと私自身思っております。同一労働同一賃金の関係の施行についても始まっているわけで、そこも私のほうはまた調査しようと思っているのですが、いつの段階で調査を打てばいいのかというのも、ちょっとまだ考えあぐねているような状況で、今、早急に答えを出して何もいいことが起こらないのではないかと思っているのが、私の正直な感想でございます。とは言うものの、大変短い時間ではありましたけれども、何とかここまでの整理ができるところに至っているわけですし、多分、皆さんも同じような気持ちで、多くのものを引き続き議論していかなければいけないところではないかと思います。
私のほうからは、各論題の中で日雇派遣が中心のことでしたので、ここについて少しだけ意見を述べさせていただきます。派遣労働というのは、労働市場全体の需給調整機能の役割を担う制度として認められるものでございます。一時的、臨時的な労働ということで、日雇派遣はその範疇に入るわけですから、それが否定されるものではないと私は思っております。ただし、あまりにも短期であるということで責任の所在が曖昧になったり、安全衛生面であったり、労働者保護の観点から見てどうなのかということがあり、自由に行われていたものが原則禁止になったという経緯は、重く受け止めなければならないものであると私のほうは思っております。今後は適正な雇用管理をどういうふうにしていくべきか。本当に例外業務というものを設ける方向性でいいのか。あと、労働者保護という観点をもう少し考えることも必要です。そして何より副業を必要としている人、収入補填を必要としている人もいるわけで、そういった雇用機会の拡大というものも、両方を見つめながら、引き続き検討していくことが不可欠ではないかと思っております。
今回の委員会の最初のほうで、私も松浦委員も申し上げましたけれども、日雇労働というものは派遣に限ったものではなく、紹介を介するものであったり直接雇用であったりということで、日雇労働という1つの超短期労働の中で含有する諸問題というものは、かなり根深いものがあります。かなりポーションの少ない一端の派遣労働ですし、そこだけを議論するというのはどうしても違和感がありますので、短期の労働者の需給調整機能、紹介も含めて、今後、調査していき、全体的な結論に至るというところが必要ではないかと思っております。
年収要件について、これも妥当かどうかという検討が、そもそも労働者保護の制度趣旨の中で出てきたこともありますけれども、本当にこの基準でいいのか。それに代替するものは考えられないのかといったことも含めて、日雇派遣の在り方を再度検討していく必要があるのではないかと思いました。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。ほかにございますか。それでは、私からも少し意見を述べたいと思います。この議論は、平成24年改正、平成27年改正の施行状況を踏まえたフォローアップということで、昨年の6月から様々な論点を議論してまいりました。中長期的な検討が必要な課題も提示され、そして労使において立場の違う御意見も述べられたところであると思います。私は平成24年改正と平成27年改正は共に関わっておりまして、この議論をするときに私の基本的なスタンスというのは、24年改正、27年改正を新たにまたここで見直すだけの事情の変更があるかどうか、そういった大きな問題点があるのかどうかというような形で見てまいりました。
労働者側の御意見、使用者側の御意見、いろいろお聞きしたところで私の率直な意見としては、以前からこのテーマについて議論すると出てくる議論ということで、派遣期間制限においても日雇派遣についても、これを導入するときに、ほぼ出尽くしている議論を改めてまたお聞きしているのかなと思って聞いておりました。さらに、施行状況を踏まえて、大きくそういった議論を見直すだけのものがあるのかなという形で聞いておりました。確かに派遣労働者の目線から言うと、いろいろ要望というものはあると思いますが、同時に、改正に関わってきた者としては、派遣労働者の保護、派遣労働者にとってのメリットという観点も、もちろん大切なことですけれども、一方で、この派遣法については派遣制度をどういうふうに位置付けるのか、全体の雇用の中で。いわゆる常用代替防止というふうに言われることですけれども、派遣制度というものを通常の雇用形態の中でどう位置付けて見るのか。それを法の理念としては常用代替防止ということで制度の中に組み込んでいるのです。そういう観点は必ずしも派遣労働者のメリットと一致するわけではない。そこはちょっと違ってくるところがある。
もう1つ、派遣という働き方だけでなく、派遣という言わば仲介的な機能、需給調整機能というものを、どのように活性化させて更に労働市場において有意義な機能を働かせるか。こういう視点が非常に重要なのです。
いろいろなデータが出されていて、私、非常に参考になったのですが、ただ、派遣元、派遣先、派遣労働者の個々の御意見だけにとどまらず、今言った制度的な根幹にある発想も、改正に関わった者としては重要視せざるを得ない。ゼロから何か作るというのだったらそれは別ですが、しかし、今申しましたような派遣という制度を考える場合に3つの視点がある。つまり需給調整機能としてちゃんと働いているかどうか。日本の雇用社会の中で派遣というのはどう位置付けるべきか。常用代替防止という視点を見直すべきなのか。これは見直すべきと言う人もいますし、だけど、1985年に派遣法ができてからずっと維持してきて、言ってみれば様々な意見の中で今まで続いてきたものを、この段階でどういうふうに変えなければいけないのかというと、そこは、それを変えるだけのものが、今、私のところでは実感として得られていないという感じです。
もう1つ、派遣労働者の保護ですが、これは特に平成24年改正で派遣労働者の保護という観点が非常に強く出ましたので、今、非常に注目もされていますし、こういった観点からいろいろな御意見を伺うことは大切だと思います。そういう意味では、今後、議論していくべき論点もあるなと派遣労働者保護については感じました。
ただ、今なのか。それはどういうことかと言うと、今年4月から同一労働同一賃金原則が入りました。そこの効果をちょっと見てみたいなということ。それから、もう1つは新型コロナウイルス感染の影響下に今はある。ここの帰趨を少し見ないと、派遣労働者保護についての様々な御提案も、ここで何か変化させるのは時期尚早かなという感じが私はしていて、その辺は、今言いました同一労働同一賃金の処遇改善と、新型コロナ感染症による派遣労働者雇用への影響ということも見ながら、考えていかなければならない。ただし、先ほど冒頭に私が言いましたように、平成24年改正と平成27年改正についてのフォローアップという観点では、一旦はここで整理をして、今言いましたような新たな状況については、更に専門的な調査を含めてやっていくべきなのかなと思っております。それが私の基本的な立場というか、考え方であります。
先ほど日雇派遣については、小野委員からお話がありましたので、私は派遣期間制限と離職後1年以内の派遣禁止についてのお話、その辺についてお話したいと思います。特に個人単位の期間制限ですが、これは調査で派遣労働者の方からも使用者側の方からも、個人単位の期間制限の見直しという議論は出されていて、それは使用者の皆さんも、将来的に見直しの検討が必要だという意見を出されておりました。
先ほど言いましたように、派遣期間制限というのは正に常用代替防止という観点の根幹に関わることなのです。これは私もこの審議会の答申などに参加していたのでよく覚えているのですが、国会にも私は参考人として呼ばれて、どちらかと言えば非常に厳しい指摘を受けた立場ですし、ちょっと困惑したというのが率直なところです。それはなぜかと言うと、一方では個人の期間制限に対して非常にネガティブなことを言われる。つまり、その人が希望するのだったら、ずっと働かせて何で駄目なのですか、何で派遣労働者の視点がないのですかと言われる。ところが、他方で期間制限というものに対しては従前の考え方で、特に無期雇用派遣に関して人生において全て派遣労働者ということをあなたは認めるのかという形で言われる。気持ちは分かるのですが非常に戸惑うと言いますか、それは多分、制度の視点に立ったときには終生派遣というのはおかしいと言う、でも個人の立場に立てば、派遣労働者の希望を何とか叶えるべきだと、それはそのとおりです。だけど、そこをうまく何とか調整するということで、雇用安定措置を導入し、派遣労働者の方のキャリアを3年の中で直用・常用につながるようなキャリアアップを、何とかここで考えていってほしいと。そういうふうに当時は考えたのです。
今回、どういうふうに見るかということで、雇用安定措置についての今の新型コロナの影響というのはまだ分からないですけれども、雇用に対する一定程度の安定につながってきているのかなとデータで私は見ていたのです。だとすれば、去年のデータですけれども、ある程度改正の意図というのは実現できているのかなと思っております。なので、個人の期間制限については、恐らく多くの方がまだままだ議論されると思いますが、今言いましたように常用代替防止という視点も踏まえて、更に必要な情報の収集を図る必要があるのではないかと思っております。
離職後1年以内の労働者派遣の禁止、これも確かに退職される方の様々な身分や立場を考えて対応すべきだということですが、そもそもの発想の根本が、雇用調整のために直接雇用の労働者に退職してもらって、労働条件を引き下げて派遣労働者として受け入れることは許さないと。そういう発想で出来上がったものですから、そういうものに当たらない者の例外というのを、どう捉えていくかというのは大きな課題だろうと思っていましたので、今、ここですぐに何か一歩踏み出すことには、ちゅうちょを感じるというふうに思っております。
長くなって申し訳ありません。もう1点だけ、特定目的行為の制限ですけれども、事前面接を含めて、これも恐らくミスマッチを防ぐという点で、むしろあってもいいのではないか、派先との交流というのがあってもいいのではないかと。それも分からないではない。ただ、一方で、これは何度も繰り返していうことですが、そうすると派遣先とは一体何だろうと。例えばAさん、Bさん、Cさんと面接して、派遣先がAさんがいいですと言ったとき、これって派遣というものとうまくマッチできるのだろうかということです。つまり、Aさんと決めたにもかかわらず、派遣先がユーザーでしかない、雇用責任は負いませんよと言ったときに、果たして何が起きるのかということです。そういうふうに考えますと、この問題は、確かにミスマッチを防ぐという点でいろいろな工夫があるかと思いますが、なお議論を進めていかなければいけない問題かなと思っております。
長くなりましたが、率直に私の今の考え方を述べさせていただきました。何か言いたいことがありましたら、どうぞ、自由に御発言いただければと思います。よろしいですか。事務局、この後、どういう感じになりますか。今後のフォローアップの。
 
○松原課長 今後の運びにつきましては、部会長をはじめとした公益委員、労使各委員の皆様方と今後の進め方について調整した上で、またお諮りしたいと考えております。以上です。
 
○鎌田部会長 そういうようなことでお願いしたいと思います。それでは、本日の公開の議題はここまでとさせていただきます。議事録の署名は木住野委員、平田委員にお願いいたします。冒頭申し上げましたとおり、傍聴の方々につきましては、ここで御退席いただくようお願いいたします。
 
(傍聴者退席)