薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会(2020年8月25日)

日時

令和2年8月25日(火)
13時00分~16時00分

場所

オンライン会議
事務局設置場所:AP虎ノ門 会議室J

出席者

委員

佐藤部会長 工藤委員 桒形委員 笹本委員
杉本委員 瀧本委員 戸塚委員 中島委員
原委員 二村委員 三浦委員 吉成委員
       

事務局

中山食品基準審査課長 田中補佐 松浦専門官
小泉技官 重田技官  

議題

(1)L-酒石酸カリウム及びメタ酒石酸の新規指定の可否等について
(2)炭酸カルシウムの規格基準の改正について
(3)その他

議事

 
○事務局 定刻となりましたので、「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会添加物部会」を開催させていただきます。本日は御多忙のところ御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。まず初めに、オンライン会議での皆様に御注意をいただきたい点について申し上げます。御発言のとき以外には基本的にマイクをミュートにしていただくようにお願いいたします。発言時以外にオンになっていますと、事務局のほうからミュートとさせていただく場合がございますので御了承ください。また、御発言がある場合には、あらかじめチャット機能のほうで意思表示をお願いいたします。部会長又は事務局が御指名をさせていただきますので、その後に御発言をお願いいたします。御発言の際には、最初にお名前をおっしゃっていただくようにお願いいたします。御発言を終了しましたら、「以上です」ということを添えていただきますようお願いいたします。
 また、部会長から委員の皆様方に、審議事項について承認することでよいかといった確認をするタイミングがございますが、御意見がある場合にはチャット機能でその旨を意思表示していただいて、部会長が指名をした後に御発言をお願いいたします。
 本日の委員の皆様の出席状況を報告いたします。石見委員から御欠席との連絡を受けております。現時点で添加物部会委員13名中12名の委員の皆様に御出席をいただいておりますので、本日の部会が成立していることを御報告申し上げます。
 議題に入る前に、本年1月1日付けで事務局に人事異動がございまして、吉田に代わりまして、食品基準審査課長に中山が着任いたしました。中山より一言御挨拶をさせていただきたいと思います。
○中山食品基準審査課長 中山でございます。どうぞよろしくお願いします。この食品分野につきましては約25年ぶりに戻ってきたという感じでありまして、当時食品添加物の担当もしていましたので、今回の添加物部会、ある意味楽しみにしているという感じでございます。どうぞよろしくお願いいたします。
○事務局 また、6月の部会から新たに1名の委員に御就任をいただいております。私から御紹介をさせていただきますので、一言御挨拶をいただければと思います。国立医薬品食品衛生研究所安全性生物試験研究センター毒性部第二室長の桒形委員です。お願いいたします。
○桒形委員 御紹介いただき、ありがとうございます。国立医薬品食品衛生研究所毒性部の桒形と申します。不慣れな点があると存じますが、どうぞよろしくお願いいたします。毒性部門を担当いたします。以上です。
○事務局 ありがとうございます。それでは、本日の資料の確認をさせていただきます。事前に送付させていただいた資料と、あと一部プリントをお願いした資料があるかと思いますが、それらのほうを御覧いただく形になります。改めて確認をいたしますと、議事次第、委員名簿、資料1-1から資料1-3、続いて、資料2-1から資料2-5まで。あと参考資料の1枚紙が入っています。資料に不足等がありましたら申し出いただけますでしょうか。できれば、その資料を使う際に画面表示をするようにいたします。
 それでは議事進行を佐藤部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○佐藤部会長 よろしくお願いします。佐藤です。本日はお忙しいところ添加物部会に御参加いただきありがとうございます。新型コロナウイルスの影響で前回の持ち回り審議に続き、今回は初のオンライン会議となりました。ちょっと不慣れなオンライン会議ですけれども、皆様御活発な御議論をお願いいたします。 それでは、事務局から、本日の部会の審議品目に関する利益相反の確認結果について報告をお願いします。
○事務局 本日の審議品目に関しては、利益相反の確認対象はございません。以上でございます。
○佐藤部会長 ありがとうございます。
 それでは審議に入りたいと思います。議題の1、「L-酒石酸カリウム及びメタ酒石酸の新規指定の可否等」に関して審議を行いたいと思います。事務局から説明をお願いいたします。
○事務局 では、事務局より御説明させていただきます。資料1のシリーズが、L-酒石酸カリウム及びメタ酒石酸の食品添加物の指定に関する審議資料となります。資料1-1は諮問書、資料1-2は部会報告書(案)、資料1-3は食品安全委員会より通知された食品健康影響評価結果になります。
 御説明は資料1-2に沿って行いますが、その前にまず、資料の最後にございます参考資料1を御覧いただけますでしょうか。本日の審議対象添加物はいずれもワインに関連するものでございますので、まずはワインの製造工程と添加物を使用する工程について御説明したいと思います。参考資料1には、ぶどうから始まりまして、白ワイン及び赤ワインに至るまでの製造工程がそれぞれ記載されております。後ほど使用基準に係る御説明の中等で、ぶどう酒、あるいはぶどう酒の製造に用いる果汁といった用語が出てまいりますが、図の上部及び左右に示しております工程部分にそれぞれ該当いたします。
 続きまして、真ん中辺りの四角で囲まれた部分を御覧ください。本日御審議いただく3品目のうち、<1>のL-酒石酸カリウム及び炭酸カルシウム(複塩)につきましては、いずれもワイン中の過剰な酸を除く除酸剤でありまして、図中に示しております<1>とマーキングされた工程で主に使用されるものとなります。一方で、<2>のメタ酒石酸につきましては、結晶の析出によりワインの品質が不安定化するのを防止する結晶化防止剤でありまして、先の除酸剤とは異なり、瓶詰の直前で主に利用されるものとなります。以上の点を踏まえまして以降の御説明をお聞きいただければと存じます。
 では、資料1-2にお戻りいただいてもよろしいでしょうか。「L-酒石酸カリウム及びメタ酒石酸の食品添加物の指定に関する部会報告書(案)」につきまして、御説明させていただきます。品目名及びL-酒石酸カリウムの分子式及び分子量につきましては記載のとおりとなっております。メタ酒石酸につきましては、L-酒石酸がカルボキシル基とヒドロキシ基のエステル結合を介して重合した長さや分岐が異なる分子の混合物となっております。具体的には、L-酒石酸はカルボキシル基とヒドロキシ基を2つずつ有しておりますので、1分子につき1~4個のエステル結合を生じ得ますけれども、それらが様々な長さや分岐を形成するように結合した分子の混合物となっております。用途につきましては、L-酒石酸がぶどう酒の除酸、メタ酒石酸がぶどう酒の酒質安定となります。詳細はまた後ほど御説明させていただきます。
 2ページに移っていただきまして、概要の部分を御覧ください。L-酒石酸カリウムは最終製品となる前のワインに添加することで、ワイン中の過剰な酒石酸と結合して、強制的にL-酒石酸水素カリウムからなる酒石を生じさせ、その酒石をろ過で除去することで、ワインの除酸を行う除酸剤となっております。一方のメタ酒石酸は、ワイン中で自然に生じる酒石酸塩の生成・析出によってワインの品質が不安定化するのを防止する結晶化防止剤となります。
 続きまして、(2)諸外国での使用状況等について御説明いたします。L-酒石酸カリウムにつきましては、欧州連合(EU)ではブドウ果汁とワインについて、最大で総酸の減少分として1g/Lを上回らない範囲での使用が認められております。米国やオーストラリアでは、添加物としてL-酒石酸カリウムは収載されておりませんが、L-酒石酸カリウムで処理されたワインをEU域内から輸入し、国内で流通させることができるとされています。メタ酒石酸につきましては、EUではワイン醸造中の添加につきまして、100mg/Lを超えない範囲で使用されております。米国での使用状況については確認できておりませんが、オーストラリア及びニュージーランドではワイン等への使用がGMPの下で認められております。
 3ページを御覧ください。ここでは各添加物の有効性を検証したデータ等についてお示ししております。L-酒石酸カリウムは、ワイン中での溶解性が非常に高いので、水溶液中で2個のカリウムイオンと1個の酒石酸イオンに解離いたしますが、これらがワイン中の酒石酸と反応し、難溶性のL-酒石酸水素カリウムを生成させるとされております。9行目以降には、L-酒石酸カリウムをブドウ果汁に使用した際の除酸効果を調べた結果をお示ししております。表1は除酸処理したブドウ果汁の分析結果を、表2は除酸処理したブドウ果汁を仕込んで製造したぶどう酒を一定期間貯蔵し分析した結果を示しております。いずれにつきましても未処理区と比較して除酸剤処理により総酸と酒石酸が減少しているのが分かるかと思います。
 続きまして、3ページ25行目のメタ酒石酸について御説明させていただきます。ワイン中の酒石酸はカリウムやカルシウム等と反応することで、酒石酸水素カリウムや酒石酸カルシウムといった難溶性の酒石酸塩を生成・析出し、濁りを生じることがございます。メタ酒石酸は、そのコロイドが結晶を形成するための酒石酸の微少な核を包摂することによって、酒石酸塩の析出を抑制し、お酒の質を保持・安定化する働きがあるとされております。
 4ページ7行目にございます表3の部分を御覧ください。こちらの実験では、17.2mgの酒石酸カリウムを含む飽和酒石酸カリウム溶液にエタノールを添加し、0度で一晩放置すると、酒石酸カリウムが析出し、溶液中の酒石酸カリウムの残存量が5mgとなります。そのような系に対して、様々なエステル化率の7種のメタ酒石酸を添加したところ、例えばエステル化率が37.3のメタ酒石酸を1.6mg添加することにより、あるいはエステル化率が26.6のメタ酒石酸を4.0mg添加することにより、析出が完全に抑制されるなど、メタ酒石酸の添加により酒石酸カリウムの析出が抑制されていることが分かります。
 続きまして、4ページ19~22行目を御覧ください。後ほど述べる使用基準における最大使用量である0.1g/Lのメタ酒石酸の添加によって、こちらは白及び赤ワイン中の酒石酸につきましても安定化される旨言及をしております。
 続きまして、食品中での安定性についてです。L-酒石酸カリウムはワイン中等の酒石酸と反応し、難溶性の沈澱を生じ取り除かれるため、最終製品では添加されたL-酒石酸カリウムはほぼ取り除かれると考えられます。一方、メタ酒石酸につきましては最終製品に残りますが、時間経過とともに分解され酒石酸が生じます。その分解の程度は温度等に依存することが知られております。食品中の栄養成分に及ぼす影響につきましては、記載のとおりとなっております。
 続きまして、5ページ26行目からは食品安全委員会の評価結果についてお示ししております。評価書全体は資料1-3としてお配りしておりますけれども、本部会報告書(案)では、特に重要と思われる箇所のみを抜粋して掲載しております。なお、本文と異なる明朝系のフォントとなっている部分が食品安全委員会の評価書の抜粋箇所となっております。
 それでは評価の概要について御説明させていただきます。5ページ34行目からを御覧ください。まず食品安全委員会では、L-酒石酸カリウム及びメタ酒石酸がいずれもL-酒石酸イオンとして吸収されると考えられることから、グループとして総合的に添加物である「L-酒石酸カリウム」及び添加物「メタ酒石酸」の評価を行っております。
 L-酒石酸としての評価結果につきましては、6ページ22行目に要点がまとめられております。ラットを用いた2年間反復投与・発がん性併合試験から得られたL-酒石酸としてのNOAEL(2,440mg/kg 体重/日)を根拠としまして、安全係数100で除した24mg/kg 体重/日を「添加物L-酒石酸カリウム」及び「メタ酒石酸」のグループとしてのADIというように設定をしております。
 一方で、L-酒石酸に係る摂取量推定の結果につきましては、6ページ27行目より記載しておりますけれども、少し飛びまして、8ページ17行目を御覧ください。本評価では、添加物の使用基準策定後のL-酒石酸としての1日の摂取量を4.3mg/kg 体重/日と推定しております。この数値の内訳ですけれども、同ページの13行目からを御覧いただきたいのですが、まず、マーケットバスケット調査に基づいて推定された現在のL-酒石酸としての1日摂取量1.18mg/kg 体重/日。続きまして、過小評価にならないように最大量添加した添加物たるL-酒石酸カリウムが全て残存したぶどう酒を、飲酒習慣のある者が摂取すると仮定して推定した1日摂取量3.1mg/kg 体重/日。同じように使用基準案にある最大使用量を添加した添加物たるメタ酒石酸が全て残存し、かつ全量L-酒石酸に加水分解されるぶどう酒を、こちらも飲酒習慣のある者が摂取すると仮定して推定した1日摂取量0.0874mg/kg 体重/日を合計した数値が、先ほど言及しました添加物の使用基準策定後のL-酒石酸としての1日摂取量4.3mg/kg 体重/日となっております。
 以上が酒石酸に係る評価結果の概要になりますけれども、L-酒石酸カリウム由来のカリウムの評価につきましては、ページが前後して申し訳ございませんけれども、6ページ12行目より記載がございます。添加物由来の推定1日摂取量が現在のカリウムの推定1日摂取量の約4%と非常に少ないことなどを総合的に評価し、添加物として適切に使用される場合、添加物「L-酒石酸カリウム」に由来するカリウムは安全性に懸念がないとしております。
 以上を踏まえまして、8ページ8.新規指定についての所に記載のとおり、L-酒石酸カリウム及びメタ酒石酸につきましては、添加物として指定することは差し支えないとしております。
 また、使用基準につきましては9ページ2行目より記載しておりますけれども、冒頭御紹介させていただいた参考資料1も併せて御確認いただきながらお聞きいただければと存じます。まず、L-酒石酸カリウムの使用基準につきましては、L-酒石酸カリウムはぶどう酒の製造に用いる果汁及びぶどう酒以外の食品に使用してはならないとしております。メタ酒石酸の使用基準につきましては、メタ酒石酸はぶどう酒以外の食品に使用してはならない。メタ酒石酸の使用量は、ぶどう酒1kgにつき0.10g以下でなければならないとしております。
 成分規格等につきましては、11ページ以降を御覧ください。11ページ別紙1-1に、L-酒石酸カリウムの成分規格案を、別紙2-1にはEU規格、それから国際ブドウ・ワイン機構であるOIVの規格、それからL-酒石酸ナトリウム及びL-酒石酸に関する公定書の規格を参照し、L-酒石酸カリウムの成分規格案を設定した旨の説明を、続きまして、別紙3-1には本規格(案)と、先ほど言及させていただいた参照した規格の対比表を掲載しております。
 続きまして、19ページ別紙1-2にメタ酒石酸の成分規格案及び保存基準案を、めくっていただいて、別紙2-2にはJECFA規格、EU規格、国際ブドウ・ワイン機構であるOIVの規格を参照し、メタ酒石酸の成分規格を設定した旨の説明を、続いて別紙3-2には本規格案と参照した規格の対比表を掲載しております。L-酒石酸カリウム及びメタ酒石酸の添加物指定に関する御説明は以上となります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○佐藤部会長 ありがとうございます。では審議に入る前に、今回のL-酒石酸カリウム及びメタ酒石酸の食品安全委員会での評価結果について、委員からコメントがあればお願いしたいと思います。体内動態について、吉成委員、いかがでしょうか。
○吉成委員 吉成です。簡単に資料を御説明させていただきたいと思いますが、聞こえていますか。お手元の資料の1-3の16ページから体内動態についてまとめられていますので、かいつまんで御説明させていただきます。最初に申しますと、酒石酸カリウムとメタ酒石酸については、特段問題となる体内動態はないということですので、先に申し上げておきます。
 酒石酸カリウムとメタ酒石酸については、先ほども少し説明がありましたが、そのもの自身の体内動態の知見はないということと、酒石酸イオンとして吸収されるということから酒石酸についての体内動態の知見がまとめられています。
 16ページの下の(3)にL-酒石酸及びL-酒石酸塩の吸収についてまとめられていますが、長いのでページをめくっていただいて、上から6行目辺りに「Chadwickら」の次の行です。「酒石酸は受動輸送により吸収され」、その3行ぐらい下にあるのですが、吸収率が非常に低いと。経口摂取をした場合も20%弱が吸収されるということが述べられています。また、その一番下の文章にもありますが、「速やかに体内より消失する」ということがヒトにおいては述べられています。
 代謝に関しては、18ページの<3>代謝という所です。ラットの実験ですが、酒石酸の吸収は少ないのですが、取り込まれたものは二酸化炭素に代謝されるということが述べられています。
 19ページから排泄について記載がありますが、真ん中辺りのbのちょっと上に「Charlesらは」という所があります。そこに書かれているように、酒石酸は吸収された場合は尿中に主として未変化体として排泄されるが、排泄率は非常に少ないということです。
 次のbの「Chadwickら」の所でまとめられて、19ページの下から2行目辺りの所に、「これらの結果より」という文章がありますが、ヒトにおいては摂取された酒石酸塩の多くが吸収されず、腸内において炭酸水素イオンに分解されると考察されています。
 今、触れましたように、腸内細菌の代謝ということが述べられています。20ページの真ん中辺りにd.排泄というヒトの知見がありますが、そこの下から3行目の終わりぐらいに記載があります。酒石酸の8割が吸収前に腸内細菌の作用により分解され、残りの2割程度が吸収された後に尿中に排泄される。今まで述べたことのまとめのような文章が記載されています。
 以上のことを踏まえまして、ページが飛びますが、23、24ページにかけて体内動態についてまとめられています。23ページの上の数行の所ですが、最初に申しましたように酒石酸カリウムとメタ酒石酸自身のデータがなく、また実際の吸収は酒石酸イオンとして吸収されることから、酒石酸と酒石酸塩を含む被験物質について検討されています。
 その結果として、24ページの最後から2つ目の段落の「Chadwickら」の所にありますが、その段落の3行目辺りから、ヒトにおいては、摂取された酒石酸塩の多くが腸において分解され、酒石酸として吸収される量は少ないということが記載されています。また、その次の段落にあるように、経口摂取された酒石酸カリウムについては、その多くは腸内細菌によって分解されるものの、一部がL-酒石酸イオンとして吸収された後、主として尿中に排泄されるとされています。
 安全性試験ではラットを用いますが、下から6行目ぐらいですが、吸収率に関してはラットよりもヒトのほうが低いということが述べられています。以上のことを踏まえますと、ヒトにおいて酒石酸カリウム、あるいはメタ酒石酸に関しては、特段問題となるような体内動態を示す物性はないということで、食品安全委員会でもそのように考えていますし、私自身もそのように思います。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。続いて、各毒性の委員からコメントがあればお願いしたいと思います。戸塚委員、いかがでしょうか。
○戸塚委員 まず、遺伝毒性について、食品安全委員会の評価書をもとに簡単に御説明させていただきたいと思います。
 先ほどの資料1-3の24ページからが、遺伝毒性になります。まず24ページは、L-酒石酸カリウムに関する遺伝毒性の試験成績が表8にまとめられています。バクテリアを用いた復帰突然変異、1試験のみですが陰性の結果が得られています。
 25ページの表9にメタ酒石酸に関する、こちらも1試験のみですが、バクテリアを用いた復帰突然変異試験で陰性の結果となっています。
 27ページ以降の表12、表13では、酒石酸及び酒石酸塩の遺伝毒性試験の結果が出ています。こちらに関しては、バクテリアを用いた復帰突然変異試験はいずれも陰性という結果になっていますが、28ページの表の真ん中辺りのチャイニーズ・ハムスターを用いた染色体異常試験で1つだけ陽性の結果が出ています。しかしながら、この場合は同じL-酒石酸ナトリウムを用いた、その表の1つ下のin vivo小核試験は、いずれも陰性という結果になっていますので、Ames試験の結果とこちらの結果を受けまして、特段問題ないだろうと食品安全委員会では結論付けています。
 29ページに、参考資料として示されているものが表14にあります。こちらは、酒石酸及び酒石酸塩そのものの遺伝毒性を評価したものではなく、550℃で1分間加熱した後の変異原性を見ているものなので、こちらは評価に用いない参考資料とされています。
 遺伝毒性のまとめとしては、29~30ページにまたがって書かれていますが、いずれもこれまでの結果を踏まえてL-酒石酸塩の遺伝毒性は陰性であると判断し、生体にとって特段問題となるものではないとまとめられています。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。それでは、遺伝毒性以外、発がん性、毒性、in vivo試験の部分を桒形委員よりお願いできますか。
○桒形委員 桒形です。では同じ資料を用いて、そのまま30ページの中ほど<2>以降を説明します。
 L-酒石酸・酒石酸塩を用いた急性毒性試験は提出されていませんが、旋光性が不明の剤による急性毒性試験の結果が表15にまとめられています。ラットを用いた急性毒性試験ですが、いずれも高い数字、すなわち毒性が低いことが考えられます。
 31ページ、参考資料でLD50以外の値を用いた単回経口毒性試験の結果、マウス、ウサギ、イヌの報告がありますが、こちらも5,000mg/kg付近の数値が得られていますので、非常に毒性が低いことが考えられます。
<3>反復投与毒性試験に続きますが、慢性・発がん性毒性試験が報告されています。反復投与毒性として、32ページに、認められた変化として体重増加の抑制、あるいは心臓、腎臓の器官重量の増加が認められていますが、これを示唆するような血液生化学、病理組織所見がないということで、食品安全委員会としては体重の減少に伴った高用量のL-酒石酸水素ナトリウムの摂取により栄養バランスが損なわれた結果の変化であるとして、この反復投与毒性のNOAELとしては、最高用量群をNOAELとして決定しています。
 33ページ、発がん性試験ですが、同じ試験の結果になります。いずれの投与群においても、発がん性を示唆する所見は認められていません。ただ、食品安全委員会としては、こちらの報告書をL-酒石酸水素ナトリウムは1水和物であると判断されて、換算された値が記載されています。
 続きまして、<5>生殖発生毒性試験ですが、ECHAからの報告で、マウスとラットの報告があります。いずれも最高用量まで母動物、胎児への影響はなく、催奇形性も認められていません。
 35ページ、参考資料として、混合物を用いた発生毒性試験がラットで認められていますが、こちらについても最高用量の1,000mg/kg 体重/日まで、母動物及び胎児に対する影響は認められていません。動物を用いた毒性試験の結果はここまでですが、御報告したとおり余り毒性は高くないことが考えられます。
 続きまして、<6>ヒトの疫学研究ですが、こちらも何本かあります。38ページのfの所に、この疫学調査の知見があります。酒石酸30g以上の1回摂取で死亡例が認められ、10g程度の1回摂取で吐き気等が認められていますが、L-酒石酸カリウム、メタ酒石酸が添加物として適切に使われた場合の摂取量範囲よりも高用量で認められているということで、食品安全委員会としては提出された疫学調査の知見に基づくNOAELを得ることはできないと判断されています。
 また、38ページの一番下(4)に毒性のまとめとありますが、今まで説明したことの繰り返しになりますが、39ページの中ほどです。遺伝毒性以外の毒性の試験、2年間反復投与・発がん性試験においては、最高用量群まで毒性、発がん性は認められておらず、マウス、ラットの発生毒性試験においても、毒性は認められていません。また、ヒトからの知見についてはNOAELを得ることができないと評価されています。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。それでは、L-酒石酸カリウム及びメタ酒石酸の新規指定等の可否について、御意見等をお願いいたします。御意見がある場合は、チャットでお申し出ください。
○事務局 三浦委員、チャットありがとうございます。御発言、お願いいたします。
○三浦委員 ありがとうございます。大きな問題は多分ないと思うのですが、1点確認させてください。TA98の復帰突然変異試験の所で、試料を加熱した際には毒性が変化するというような結果が示されていましたが、ワインは料理酒として使う場合があり、加熱される場合がありますが、ドーズが多分低いので問題ないと思いますが、その辺は大丈夫でしょうか。以上です。
○佐藤部会長 事務局からお答えいただけますか。
○事務局 食安委の報告書29ページの記載にもありますように、550℃というかなりの高温で実施されているものであること、試験結果に関してTA98のみで出ていて、ほかの試験結果では認められていないといったことが、御評価の際には参考としていただけるかと思います。こういった状況なのですが、委員から御意見いただければ幸いです。
○事務局 戸塚委員、コメントを頂いてもよろしいでしょうか。
○戸塚委員 コメントさせていただきます。今、事務局から説明がありましたように、29ページの脚注の所に記載があります。この加熱したときのTA98の陽性は、加熱分解によって出てくる、酒石酸ではなくアンモニウムとタンパク質中のアミノ酸が反応することによって生成する、いわゆる変異原性物質のようなものができる影響ではないかということが、この参考文献の中に書かれています。今回、対象としているのが酒石酸カリウム、塩がカリウム塩ですので恐らく問題はないだろうと考えられます。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。それでは、そのほかの部会報告書(案)で何か御意見等はありませんか。特に御異議がないようなので、一通り御審議を頂いたということでL-酒石酸カリウム及びメタ酒石酸の新規指定等の可否については認めるということでよろしいでしょうか。御意見がある場合は、チャットでお申し出ください。
○事務局 吉成委員、御発言をお願いいたします。
○吉成委員 吉成ですが、メタ酒石酸の使用基準案についてです。メタ酒石酸は様々な分子量のものの混合物だと思いますが、1gにつき0.1g以下というのは実際には使用する際の混合物の重量で規制を掛けるのでしょうか。入っているものを測ろうとすると、どのような分子サイズのものが入っているか分からないので、測定しようがない、できないような気もするのですが、基準が守られているかをどのように調べるのか、もし分かれば教えてください。お願いいたします。
○事務局 事務局より回答させていただきます。資料1-2の19ページ、別紙1-2にメタ酒石酸の成分規格があります。基本的に使用するメタ酒石酸は、ここに挙げられている成分規格を満たす必要があります。例えば、純度試験でエステル化度32%以上などがありますが、そちらを満たす32%以上のエステル化度を持つメタ酒石酸を用いることになります。その上で、先ほど使用基準案に記載があったように、1kgにつき0.1g以下でなければならないという使用基準案を満たす必要があると認識をしています。以上です。
○佐藤部会長 吉成委員、よろしいでしょうか。
○吉成委員 そうしますと、使うときの基準であって、何かこれは中のものを検出する必要はないということでよろしいですか。ちょっと私の理解が不十分なところもありますが。
○事務局 はい、使うときの基準になります。すみません、お答えになっているでしょうか。
○吉成委員 分かりました。測定する必要があるのかなと思ったのですが、これはあくまでも使用基準であるので、測定方法がなくても問題はないということでよろしいですか。確認です。
○事務局 測定方法と言いますか、先ほど申し上げた別紙1-2に記載のメタ酒石酸の成分規格は満たしていることを確認する必要がありますので、そういった意味では測定が必要になります。それを踏まえた上で、使用基準については使用する量と御理解いただければと思います。
○吉成委員 純度としては、使用するものの基準を満たすことは分かりました。例えば、ワインなり、そういうものの中に入っているものを測る必要は現時点ではないということでよろしいですか。そこの確認をしたかったということです。
○事務局 ワイン中のメタ酒石酸量を測る必要はありません。
○吉成委員 分かりました。ありがとうございます。
○佐藤部会長 ほかにどなたかありますか。よろしいですか。それでは、部会報告書を取りまとめ、分科会へ報告する手続を取りたいと思います。
 事務局から、そのほか何かありますか。
○事務局 細かい文言の変更等、軽微な修正が必要となった場合については、修正内容を部会長に御確認いただき、特に問題がなければ手続を進めてもよろしいでしょうか。
○佐藤部会長 事務局からの提案ですが、そのように進めてよろしいでしょうか。御意見がある場合は、またチャットでお申し出ください。
○事務局 本品目については新規添加物の指定ですので、分科会では審議事項とされています。審議事項として進めさせていただくこととしています。
○佐藤部会長 こちらもよろしいでしょうか。御意見がある場合は、またチャットでお願いいたします。異議なしという御意見をいただいています。
 それでは、今後のスケジュールについてはどのようになりますか。
○事務局 今回の審議結果については食品衛生分科会の審議のほか、所定の事務手続を開始したいと思っています。
○佐藤部会長 では、適切に手続を進めてください。
 それでは、議題2に移ります。次は、「炭酸カルシウムの規格基準の改正」に関して、審議を行いたいと思います。資料の御準備をお願いいたします。では、事務局から説明をよろしくお願いいたします。
○事務局 それでは、事務局より御説明いたします。資料2のシリーズが、炭酸カルシウムの規格基準の改正に関する審議資料となっております。資料2-1は諮問書、資料2-2は部会報告書(案)、資料2-3から2-5は、食品安全委員会より通知された食品健康影響評価結果等になっております。御説明につきましては、先ほどと同様、資料2-2の部会報告書(案)に沿って行いますので、資料2-2を御覧ください。
 まず、6行目からを御覧ください。今般の改正につきましては、添加物として既に指定されている炭酸カルシウムの含量規格に該当する「炭酸カルシウム(複塩)」につきまして、「炭酸カルシウム」の規格とは別に、新たに成分規格及び使用基準を設定するものとなっております。品目名につきましては記載のとおりです。分子式及び分子量等についてですが、炭酸カルシウム(複塩)は、98%以上の炭酸カルシウムに、2%以下のL-酒石酸・L-リンゴ酸カルシウム複塩を含み得るものとなっております。なお、以降L-酒石酸・L-リンゴ酸カルシウム複塩を単に複塩と呼ばせていただきます。用途につきましては、先のL-酒石酸、カリウムと同様に、ぶどう酒の除酸となります。
 続きまして、概要に関して、2ページ1行目を御覧ください。炭酸カルシウム(複塩)につきましては、先に述べたとおり、98%以上の炭酸カルシウムに少量の複塩を含み得るものであり、ぶどう酒の製造に用いる果汁及びぶどう酒に対して使用した場合に、複塩を結晶の種である種晶としてリンゴ酸等の有機酸を結晶化して沈殿除去するとされております。
 続きまして、(2)諸外国での使用状況等を御覧ください。炭酸カルシウムにつきましては、我が国において昭和32年に添加物指定されており、その際使用基準も設定されておりましたが、平成29年の規格基準改正において使用基準が削除されたため、現在は使用基準が設定されておりません。複塩の使用状況等につきましては、30行目からを御覧ください。米国におきましては、連邦規則において炭酸カルシウム単独又は複塩を含有する炭酸カルシウムにつきまして、ワイン類に含まれる過剰な総酸量を減らす目的で、総酸の含量が5g/Lを下回らない範囲での使用が認められています。EUでは、複塩の記載はないものの、複塩含有炭酸カルシウムも該当する炭酸カルシウムというものが、添加物として記載されております。
 続きまして「5.添加物としての有効性(1)除酸剤としての機能」を御覧ください。炭酸カルシウム(複塩)は、ぶどう酒の製造に用いる果汁やぶどう酒におきまして、酒石酸やリンゴ酸等の有機酸を結晶化して沈殿除去する除酸効果を有しているとされております。その有効性を検証した結果を表1~3に示しております。表1につきましては、果汁に対して除酸剤を処理した場合の果汁に含まれる総酸やリンゴ酸等への影響や、除酸処理した果汁を発酵させたワインに含まれる総酸やリンゴ酸等への影響を調べた結果になっております。いずれのサンプルにつきましても、炭酸カルシウム(複塩)を処理することによって総酸、酒石酸、リンゴ酸が無処理の場合と比較して減少しているのが分かるかと思います。
 表2及び表3は、異なるブドウ品種に由来する白ワイン、あるいは赤ワインに対して除酸剤を処理した場合の効果を調べた結果となっております。こちらの場合にも、炭酸カルシウム(複塩)の処理により総酸度、酒石酸やリンゴ酸含量が、無処理の場合と比較して減少しているのが分かるかと思います。
 続きまして、食品中での安定性についてです。複塩は、固相ではろ過で容易に除かれる結晶として存在し、ワイン中等で結晶の種として働き、ろ過等により除去されますが、仮にワイン中等に残存、溶解したとしても、ワインに多量に含有されているL-酒石酸、L-リンゴ酸、カルシウムイオンに解離すると考えられます。食品中の栄養成分に及ぼす影響につきましては、記載のとおりとなっております。
 続きまして、5ページ19行目からの6.食品安全委員会における評価結果、及び次の7ページ7.摂取量の推計では、食品安全委員会の評価結果をお示ししております。こちらにつきましても、評価書の全体につきましては資料2-3としてお配りしておりますが、本部会報告書(案)では、特に重要と思われる箇所のみを抜粋して掲載しております。先ほどと同様に、本文と異なる明朝系のフォントの部分が、健康影響評価書を抜粋した箇所となっております。
 それでは、評価の概要を御説明いたします。炭酸カルシウム(複塩)の、まずカルシウム部分の評価ですが、通常の食事以外からのカルシウムの摂取量の上限値につきましては、2016年9月に炭酸カルシウムについて取りまとめた食品健康影響評価の結果と同様に、1人当たり2,000mg/人/日とすることが適当とされております。また、添加物に係る規格基準が設定された場合のカルシウムとしての推定摂取量は、添加物由来として1人当たり最大711.37mg/人/日となるとされました。
 続きまして、炭酸カルシウムに少量含まれる複塩の評価については、7ページ19行目を御覧ください。安全性に関する判断につきまして言及する前に、まず、摂取量推計の結果について御説明いたします。複塩が水中で溶解した場合は、L-酒石酸、L-リンゴ酸、カルシウムイオンに解離することを踏まえ、各解離成分について推計を行っております。その結果、添加物として使用した複塩に由来するL-酒石酸の推定1日摂取量は、ぶどう酒に由来するL-酒石酸の推定1日摂取量の1.99%、L-リンゴ酸につきましては1.78%であったとしております。添加物由来の摂取量の推計値につきましては、過小評価とならないように、成分規格案における含量の最大量を添加した炭酸カルシウム(複塩)が全て残存した状態のぶどう酒を、飲酒習慣のある者のみが摂取すると仮定して算出した結果となっております。
 このように、添加した複塩が全てぶどう酒中に残存したと仮定しても、添加物に由来するL-酒石酸及びL-リンゴ酸の量は、ぶどう酒から摂取する量と比較して十分に少ないと考えられること、及び6ページ30行目から35行目に記載の理由等を総合的に判断し、L-酒石酸、及びL-リンゴ酸の安全性に関する検討は必要ないとしております。
 以上を踏まえて、8.規格基準の改正についての所に記載のとおり、炭酸カルシウム(複塩)の使用基準につきましては、炭酸カルシウム(複塩)は、ぶどう酒の製造に用いる果汁及びぶどう酒以外の食品に使用してはならないとすることが適当としております。
 成分規格案につきましては、11ページ以降を御覧ください。11ページ、別紙1に従前の炭酸カルシウムの成分規格とは別に、新たに設定する定義を、炭酸カルシウムを主成分としてL-酒石酸・L-リンゴ酸カルシウム複塩を含み得る方法で製造されたものである、とする炭酸カルシウム(複塩)の成分規格案をまとめております。
 13ページ別紙2には、EU規格、それから国際ブドウ・ワイン機構であるOIVの規格、JECFA規格、及び炭酸カルシウムに関する公定書規格を参照し、炭酸カルシウム(複塩)の成分規格案を設定した旨の根拠説明を、別紙3には本規格案と参照した規格の対比表を掲載しております。炭酸カルシウムの規格基準の改正に関する御説明は以上となります。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
○佐藤部会長 ありがとうございます。では、審議に入る前に今回の炭酸カルシウムの食品安全委員会での評価結果について、委員からコメントがあればお願いしたいと思います。まず体内動態について、吉成委員、いかがでしょうか。
○吉成委員 それでは、資料2-3の食品安全委員会の評価書で簡単に御説明させていただきたいと思います。25ページを御覧ください。先ほども少し御説明がありましたが、酒石酸とリンゴ酸に関する検討は必要ないということで、体内動態についてもカルシウムと炭酸カルシウムについてまとめられています。
 委員もよく御存じのカルシウムのホメオスタシスについてまとめられていますので、あまり説明は必要ないかと思うのですが、26ページの上のc.カルシウムのホメオスタシスにカルシウムの体内動態について多少説明がありますので、簡単にそこを読ませていただくと、上から5行目ぐらいです。健康な成人は、大体800~1,000mg/日のカルシウムを摂取する必要があって、食事として摂取したカルシウム1,000mg/日のうち約400mg/日が腸管で吸収され、200mg/日が腸管へ分泌されることになる。よって、正味のカルシウム吸収は200mg/日ということです。糸球体ろ過で10g/日程度がろ過されて、そのうち99%が尿細管で再吸収されますので、最終的には尿中に100~200mg/日が排泄されるというような体内動態を示します。
 吸収は、その下のa、26ページ下の部分と27ページに図が載っていますが、細胞を通過する吸収経路と細胞間隙から吸収する経路で、自動的に吸収されるようなものです。
 体内の分布ですが、29ページです。臓器の分布というより、カルシウムは細胞質と細胞外液で約10,000倍の濃度差で保たれて存在するというのは御存じのところかと思います。また、中段にあるb.分布(ヒト)ですが、遊離型のカルシウムイオン、あるいはタンパク結合型として約半々で存在して、残りが様々な陰イオンとの複合体として存在するということです。
 30ページから排泄について述べられていますが、31ページの真ん中辺りにe.排泄があります。先ほど申しましたように、成人では約150~200mgと、かなりの量が排泄されることが書かれています。
 32ページに炭酸カルシウムについての記載がありますが、情報が少ないのですが、摂取した量の30%ぐらいが吸収されるということが記載されています。
 最後に、33ページ、(4)体内動態のまとめです。簡単に申します。繰り返しになりますが、炭酸カルシウムは、胃内において炭酸イオンとカルシウムイオンに解離して、カルシウムイオンが腸管において吸収されて、腎臓において再吸収などもあって、骨等を含めてカルシウムが生体内でホメオスタシスを示して調節されていることになっています。したがって、このようなホメオスタシス経路の結果、血中、体内中のカルシウム濃度は、生理学的な範囲に維持されるということですので、食品安全委員会としては、炭酸カルシウムの評価を行うに当たっては、カルシウムが高いホメオスタシスによって調節されていることに注目して評価を行う必要があるということです。炭酸カルシウムとしては何ら問題となるような物質ではありませんので、体内動態として何か問題があるかというと、そういうことはないというような結論になっているかと思います。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。続いて各毒性の委員からコメントをお願いしたいと思います。戸塚委員、いかがですか。
○戸塚委員 同じ資料の33ページから、遺伝毒性に関する試験成績が記載されています。こちらは炭酸カルシウムそのものの遺伝毒性試験の報告はなかったのですが、その他のカルシウム塩としての成績が表にまとめられています。いずれもin vitroの試験になっており、バクテリアを使った復帰突然変異や染色体異常試験なども結果がここに記載されており、そのほとんどが陰性という結果になっています。最後の染色体異常試験、チャイニーズ・ハムスターの肺細胞を使った染色体異常試験が、1つだけ擬陽性という結果が出ています。これに関しては、その用量が非常に高い高用量のみで擬陽性になっていることと、後は、同じ試験をした場合の48時間連続処理では陰性という結果になっていますので、これを受けて特段問題がないと結論しています。
 34~35ページにわたり、そのまとめが記載されていますが、炭酸カルシウムは生体にとって特段問題となる遺伝毒性はないものと考えたと記載がされています。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。それでは、遺伝毒性以外の部分を桒形委員よりお願いできますか。
○桒形委員 桒形です。よろしくお願いします。同じ資料を用いて、35ページから、(2)急性毒性試験が続きます。表8に炭酸カルシウム及びその他のカルシウム塩の単回投与毒性試験の結果がまとめられています。マウス、ラットの結果ですが、LD50の値はいずれも高く、毒性が低いと考えられます。
 36ページから反復投与毒性試験の記載があります。炭酸カルシウムとそれ以外の塩に分かれて記載がありますが、炭酸カルシウムは、aのマウス12週間、bのラット14日間、あるいはcのラット4週間、38ページ、dのラット91日間、39ページ、eのラット31週間、あるいはfのラット1年間、最後が40ページ、gのイヌ91日間の反復経口毒性試験の報告がありますが、適切な対照群の設定がない、あるいは1用量でしか群設定がないということで、食品安全委員会はNOAELを得ることができないと判断しています。ただ、後ほど述べますが、共通して体重減少あるいは摂餌量の減少があったり、腎臓に所見が見られたりしております。
 41ページの<2>その他のカルシウム塩ですが、ラットを用いた塩化カルシウム、ブタを用いた酢酸カルシウム及び酸化カルシウム、次ページのイヌを用いたグルコン酸カルシウムの反復投与毒性試験の報告があります。こちらに関しても、1用量のみである、あるいは観察項目が少ないということでNOAELは求められていません。
 43ページの<3>に反復投与毒性のまとめがありますが、真ん中辺りの「本委員会としては」という所から御覧いただきたいのですが、参照した反復投与試験は、カルシウムの摂取が生体内のカルシウム又はその他のミネラルに与える影響を観察することを目的とした栄養学的な試験であり、毒性試験ではないということで、これらの試験からNOAELを求めることはできなかったと食品安全委員会は結論付けています。
 しかしながら、必要量を多く上回る量の炭酸カルシウムを投与した際に、体重増加の抑制、摂餌量の減少、飼料効率の低下及び各種ミネラルの体内レベルへの影響が複数の知見で認められており、NOAELは設定できませんでしたが、大量の炭酸カルシウムは、生体に対して体重、摂餌及びミネラルの恒常性等に影響を与えるものと反復投与毒性試験はまとめられています。
 (4)の発がん性試験ですが、発がん性については炭酸カルシウムの報告はありませんでした。
 参考資料ですが、44ページにラットの二段階発がん、あるいはハムスターの頬袋塗布発がん性試験の報告がありますが、こちらの試験からは発がん性を示唆する結果は得られていません。
 45ページの(5)から生殖発生毒性試験の報告があります。こちらも炭酸カルシウムとそれ以外の塩について分かれて記載がありますが、炭酸カルシウムはaからずっと続くのですが、マウス、ラットを用いた生殖発生毒性試験がhまで、gまでがラットでhがヒツジですが、報告されています。ただ、こちらもNOAELが取られていない。その理由としては、カルシウムの摂餌量のデータがないであるとか、あと、動物数が少ないという試験もありましたが、幾つかはNOAELが得られています。NOAELが得られた生殖発生毒性試験は、いずれも最高用量まで母動物、胎児の影響はなく、催奇形性はないと結論付けられています。また、51ページのhのヒツジの発生毒性試験ですが、こちらはヒトと異なる反芻動物の試験の結果ということで、NOAELは得ることができないと結論付けられています。
 52ページの<2>、その他のカルシウム塩の発生毒性試験ですが、マウス、ラットを用いた酸化カルシウム、あるいはラットを用いた硫酸カルシウム、また、マウス、ラットを用いた塩化カルシウムの発生毒性の試験の結果がありますが、いずれも最高用量まで母動物、胎児に影響はなく、催奇形性はないと判断されています。ウサギの結果もありますが、ウサギにおいては一部試験の不備があってNOAELは求められていません。
 56ページの<3>に生殖発生毒性試験のまとめがあります。「本委員会としても」とありますが、NOAELの判断が可能と考えられる試験に基づくと、被験物質投与に関連した生殖発生毒性試験の懸念を示唆する知見は認められないと判断されています。動物を用いた毒性試験の結果がここまでです。
 (6)からヒトにおける知見に移ります。56~76ページまで、多数記載がありますが、77ページまで飛んでいただいて、77ページの「本委員会としては、次のように考えた」辺りから御説明をします。今飛ばした間には、カルシウムの過剰摂取との関連が報告されている疾患として、ミルクアルカリ症候群、腎結石、前立腺がん及び循環器疾患に分けて疫学調査の結果が報告されていました。これらのカルシウム摂取と因果関係があると考えられたものは、ミルクアルカリ症候群と腎結石の疫学調査であると記載されています。しかしながら腎結石については、そもそも被験者が腎結石の患者であり、ビタミンD等を併用していることから、NOAEL又はLOAELを設定するのは困難だと判断されています。ミルクアルカリ症候群については、幾つか疫学調査の報告がありますが、病歴がない調査として、77ページの一番下の2行目から記載がありますが、妊婦の報告は、妊婦という以外病歴がなく、食事以外に約3,000mg/人/日のカルシウムを1か月間摂取した結果、ミルクアルカリ症候群と診断されたということで、食品安全委員会は、LOAELを3,000mg/人/日と決定しています。
 78ページの(7)他のミネラルとの相互作用ですが、こちらには鉄、亜鉛、マグネシウム、リンの記載がありますが、いずれも相互作用はないと報告されていました。以上です。
○佐藤部会長 ありがとうございます。それでは、炭酸カルシウムの規格基準の改正について、御意見等をお願いします。御意見のある方は、またチャットでお知らせください。
○事務局 原委員、御発言お願いいたします。
○原委員 原ですが、少し細かいのですが、これは和名で炭酸カルシウム(複塩)と、この言い方が比較的一般なのでしょうか。
○事務局 事務局より回答させていただきます。一般ではありませんが、法令上、提示する名前、名称としてこのような炭酸カルシウム(複塩)とさせていただいております。
○原委員 炭酸カルシウムと区別するために、わざわざこういう名前にして、こういう規定ですとしたわけですね。
○事務局 はい、御指摘のとおりです。
○原委員 分かりました。
○事務局 少し補足させていただきます。あくまで指定されている添加物の名称としては炭酸カルシウムであるのですが、炭酸カルシウムの成分規格とは別に炭酸カルシウム(複塩)という成分規格を今回新たに設定していることになります。以上です。
○佐藤部会長 原委員、よろしいですか。ほかにどなたかありますか。よろしいですか。それでは、一通り審議を頂いたということで、炭酸カルシウムの規格基準の改正については認めるということでよろしいですか。こちらについて御意見がある場合にはチャットでお申し出ください。
 ありがとうございます。異議がないということで、部会報告書を取りまとめ、分科会へ報告する手続を取りたいと思います。事務局から、そのほかありますか。
○事務局 細かい文言の変更等の軽微な修正が必要となった場合については、修正内容を部会長に御確認いただき、特に問題なければ手続を進めてもよろしいでしょうか。
○佐藤部会長 事務局からの提案ですが、そのように進めてもよろしいでしょうか。御意見がある場合には、チャットでお申し出ください。
○事務局 本品目については、添加物の規格基準の改正ですので、「その基原、製法、用途等から見て慎重に審議する必要があるとの部会の意見に基づき、分科会長が決定するもの」を除き、規格基準については分科会では審議事項ではなく報告事項とされていることを踏まえ、報告事項として進めさせていただくこととしております。
○佐藤部会長 こちらもよろしいでしょうか。御意見がありましたら、チャットでお申し出ください。よろしいですね。それでは、今後のスケジュールはどのようになっていますか。
○事務局 今回の審議結果については食品衛生分科会での報告のほか、所定の事務手続を開始したいと思っております。
○佐藤部会長 それでは、適切に手続を進めてください。部会委員の皆様から、そのほかに何か御発言はありますか。御発言がないようでしたら、次回の予定について事務局より御説明をお願いします。
○事務局 次回の添加物部会に関しては、10月の開催に向けて現在日程調整をさせていただいているところです。日時や場所など、決まりましたら御連絡をさせていただきます。以上です。
○佐藤部会長 それでは、本日の添加物部会は、これで終了させていただきます。皆様、不慣れな所でいろいろあり、申し訳ございませんでした。ありがとうございました。