第300回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会 議事録

日時

2020年(令和2年)6月9日(火)10:00~

場所

東京都千代田区九段南2-1-5 三番町共用会議所 大会議室(本館2階)

出席者

(公益代表委員)
  • 小野 晶子
  • 鎌田 耕一(部会長)
  • 松浦 民恵
(労働者代表委員)
  • 木住野 徹
  • 永井 幸子
  • 奈良 統一
  • 仁平 章
(使用者代表委員)
  • 佐久間 一浩
  • 中西 志保美
  • 平田 充
  • 森川 誠

議題

(1)労働者派遣制度について(公開)

議事

議事内容
○鎌田部会長 皆さまありがとうございます。労働力需給制度部会、前回はオンライン会議をせっかく皆さん経験していただいたのですが、またリアルな会議に戻りました。暑い中マスク着用で大変かと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
  それでは、ただいまから「第300回労働力需給制度部会」を開催いたします。本日は、公益代表の藤本委員が所用により御欠席されております。
本日は労働者派遣制度について、公開で御審議を頂きます。それでは議事に入ります。事務局から説明をお願いいたします。
 
○米岡補佐 資料1を御説明いたします。お手元の資料の1ページを御覧ください。「雇用安定措置について」です。まずは1ページで現行制度の概要をまとめています。派遣元事業主は、派遣就業見込みが3年であり、継続就業を希望する有期雇用派遣労働者について、以下のいずれかの措置を実施することが義務付けられております。また、就業見込みが1年以上3年未満の場合などには、いずれかの措置を講じる努力義務が課されております。具体的な措置の内容としては、(1)派遣先への直接雇用の依頼、(2)新たな派遣先の提供、(3)派遣元での無期雇用、(4)その他安定した雇用の継続を図るために必要な措置、例えば有給の教育訓練、紹介予定派遣などといった制度となっています。
右下の点線囲みで留意事項を記載しています。いずれも派遣元指針に規定をしているものですが、1つ目は雇用安定措置の義務を回避することを目的として、派遣労働者が同一の組織単位の業務に継続して就業する期間を3年未満とすることは、脱法行為であり、義務違反と同視されるということを指針に規定しております。
また、2つ目ですが、派遣元事業主は、派遣労働者が希望する措置を講ずるよう努めること。特に、派遣労働者が直接雇用の申込みを希望する場合には、それが実現するよう努めることが指針に定められております。
2ページ以降は、施行状況調査のデータを示しているものです。まず2ページは派遣元に対する調査の結果です。雇用安定措置の説明や周知について派遣労働者に対してどのような方法で説明・周知をしているかですが、最も多いものが「派遣会社の担当者との面談で説明する」、次に「書面を配布している」が多い回答となっています。
次に3ページを御覧ください。「雇用安定措置の希望者数の割合」を示しています。こちらも派遣元に対する調査の結果です。最も多いものが2号措置、「新たな派遣先の提供」で67.7%、次に1号措置の「派遣先への直接雇用の依頼」で15.0%となっています。
4ページを御覧ください。こちらは「雇用安定措置の実施者数の割合」をお示しをしたものになります。「全体」と書いておりますのは、雇用安定措置の義務の対象者と努力義務の対象者双方を含む実績をお示ししたものという意味です。上の棒グラフにありますとおり、「新たな派遣先の提供」、2号措置の実施割合が66.9%と最も多くなっており、次に「派遣先への直接雇用の依頼」、1号措置が19.3%となっております。この1号措置が講じられた方のうち、派遣先に直接雇用された人の割合を左下の円グラフにお示ししておりますが、「直接雇用された」方が48.2%となっています。
次に5ページを御覧ください。こちらは今御覧いただきました「雇用安定措置の実施者数」の全体の内訳として、3年見込みの方、雇用安定措置の義務の対象となっている方の実績をお示ししたものになります。「新たな派遣先の提供」が50.7%で最も多く、次に「派遣先への直接雇用の依頼」が26.7%で続いているという結果になっております。また、1号措置のうち、派遣先に直接雇用された人の割合は46.5%となっております。
次に6ページを御覧ください。1号措置で「直接雇用の依頼を講じたにもかかわらず、派遣先の直接雇用に至らなかった理由」について、こちらも派遣元のほうに調査をしたものになりますが、最も多いものが「派遣先に新規の採用枠がなかったから」で49%、次に「派遣先の基準に比べて派遣労働者の能力が不足しているから」が39.7%と多くなっております。
次に7ページを御覧ください。ここでは「雇用安定措置の措置別の月給額・年収額の変化」について調査をした結果になります。棒グラフが5本並んでおりますが、一番上が1号措置で、実際に派遣先に直接雇用された方の結果、2本目から5本目に関しては、全て2号措置、新たな派遣先の提供について、有期のままだったのか無期雇用に転換されたのか、はたまた新しい派遣先に派遣されたのか、又は同じ派遣先企業の別の部署に派遣されたのかということで、4パターンに場合分けをし調査をしたものになります。全体的な傾向としては、1号措置の方に関しては比較的月給額、年収額とも上がる場合が多いという答えが多くなっております。2号措置の場合には、全体として月給額、年収額ともほぼ変わらないというお答えが多くはなっておりますが、中でも無期雇用に転換された方については、月給額、年収額ともに上がる場合が多いというお答えが比較的多い傾向になっております。
次に8ページを御覧ください。こちらは派遣先に調査をしたものになります。雇用安定措置の1号措置、直接雇用への切替えをしたことがあるかどうかをお聞きしたのが左側の円グラフです。ここでは「切り替えたことがある」というお答えが27.4%となっております。この27.4%の場合について、切替え後の雇用形態と賃金の変化について調査をしたものが右側の棒グラフです。雇用形態については「無期雇用」が60.6%、「有期雇用」が34.3%。賃金の変化については、「上がった」が58.8%、「ほぼ変わらなかった」が28.8%となっております。なお、こちらの答えはいずれも、ある派遣先で複数のケースがあった場合には最も多いケースについてお答えを頂いたものになります。
次に9ページを御覧ください。「派遣労働者を直接雇用に切り替えることの難しさ」について、こちらも派遣先に調査をしたものになります。多い回答としましては、「派遣労働者の能力が、自社の求める能力基準に足りない」、「自社が提示した労働条件と派遣労働者の希望する労働条件が合わない」、「直接雇用が成立した場合の手数料の条件が、派遣会社と折り合わない」といった回答が多くなっています。
次に10ページを御覧ください。「雇用安定措置に関する派遣会社からの相談の有無/方法/希望の聴取状況」について、ここからは派遣労働者の方、御本人に調査をした結果になります。まず、左側の円グラフですが、雇用安定措置について派遣会社から相談を受けたかどうかについては、「相談された」が38.6%、「相談されていない」が51.8%となっております。また、相談をされた方について相談の方法をお聴きしたところ、「対面で相談された」が88.2%、また、雇用安定措置に関する希望を聴取されたかどうかについては、「尋ねられた」が87.7%となっております。
次に11ページを御覧ください。「雇用安定措置に関する希望」について、派遣労働者御本人に調査をしたものになります。ここでは1号措置と、2号措置がおおむね同程度の希望状況となっております。一方で特徴的なのが、「特に希望はなかった」とのお答えが36%となっております。
次に12ページを御覧ください。「雇用安定措置の実施状況」について、こちらも労働者に対する調査ですが、全体的な傾向としては、2号措置が最も多く合計で31%程度、1号措置が次に多く合計して22%程度となっております。
次に13ページを御覧ください。「派遣先に直接雇用された場合の賃金の変化」について派遣労働者に対する調査の結果ですが、「ほぼ変わらなかった」が53.5%、「上がった」が27.9%となっております。
次に14ページを御覧ください。「派遣先での直接雇用を希望したが実施されなかった理由」について、派遣会社から派遣労働者がどのような説明を受けたかについてお答えを頂いたものになります。「派遣先に新規の採用枠がない」が29.4%と特に多くなっております。
次に15ページを御覧ください。「新たな派遣先を提示されたが就業しなかった理由」について派遣労働者に対する調査ですが、「遠方だったから」が41.9%、次に「賃金が下がるから」が28.0%と多くなっております。
次に16ページを御覧ください。こちらは「雇用安定措置の実績」につきまして、毎年労働局に報告をされます労働者派遣事業報告ベースで集計をしたものになります。左側、「対象派遣労働者数」としては、義務対象の方と努力義務対象の方を合計した人数が123万4,778人、うち、3年見込み、義務対象の方が11万891人となっております。これらについてそれぞれ講じられた措置の実績を御覧いただきますと、先ほどの調査結果と同様、2号措置が最も多く、次に1号措置が続くという傾向となっております。また、1号措置が講じられた方のうち、派遣先で直接雇用された方の割合につきましては、全体で56.4%、義務対象の方で47.9%となっております。
最後に17ページを御覧ください。以上、御覧いただきました施行状況調査等のデータを踏まえ「論点」を整理させていただいております。1つ目、派遣元調査による派遣労働者の希望状況については、新たな派遣先の提供(2号措置)が最も多く、次に派遣先への直接雇用の依頼(1号措置)が多い。また、派遣労働者調査では、1号措置と2号措置の希望が同程度である一方、特に希望がないとの回答も多いという結果になっております。
一方で、実施状況を見ますと、派遣元調査及び派遣労働者調査双方において、2号措置が最も多く、次に1号措置が多くなっております。また、1号措置が講じられたもののうち、約半数が派遣先に直接雇用されているなど、一定の雇用の安定にはつながっていると評価できる。
一方で、派遣労働者調査では、雇用安定措置について派遣元事業主から相談を受けていないと回答した派遣労働者が約半数おり、希望に応じた措置を講じるという点では課題が見られる。こうした状況を踏まえ、雇用安定措置の在り方について、どのようにお考えを頂くかということでまとめさせていただいております。事務局からの資料の説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。それでは、ただいまの説明に関して御質問、御意見がありましたら、どうぞ自由に発言をお願いしたいと思います。
 
○永井委員 2つほど意見ということで発言させていただきます。資料で言いますと、まず10ページの派遣労働者調査の、「雇用安定措置に関する派遣会社からの相談の有無」というところですが、派遣労働者の半数が相談されていないと回答しています。相談があっても希望を聴かれなかったという人も12.3%ということですので、ここについては早急な改善が必要だと考えています。雇用安定措置は派遣労働者の希望を踏まえて行うものであり、1号から4号の措置を何かすればいいというものではないということも、再度周知すべきだと考えています。
また、次の11ページでは、一方で相談を受けた派遣労働者の方の36%、約4割が特に希望はなかったと回答しています。なぜそうなるのかなと思うところでもありますが、雇用安定措置に関する相談を実施する際には、前回の範囲になるかもしれませんが、専門的なキャリアコンサルタントによる相談も併せて行い、教育訓練やキャリアコンサルティング、そしてこの雇用安定措置を一体として考えて実施していくということが、この措置の実効性を高めることになると考えているところです。
2つ目は派遣先、派遣元調査になるのですが、4ページで雇用安定措置の実施者数が出ています。1号措置により約半数が派遣先に直接雇用されているということですので、論点にもありましたが、派遣労働者の雇用の安定という点からは一定の評価ができるのではないかと考えています。またその上で、6ページに、1号措置により派遣先に直接雇用の依頼を講じたが直接雇用に至らなかった理由がありますが、派遣元調査では「派遣先の基準に比べて派遣労働者の能力が不足しているから」と回答された所が39.7%、約4割。そして9ページにあります派遣先調査でも24.5%ということで3割近くになっているところです。前回の教育訓練の所でも述べさせていただきましたが、派遣元として派遣労働者の意向を確認し、派遣先での直接雇用を希望しているということであれば、教育訓練の機会において派遣先での直接雇用に結び付くような能力の育成に努めていくべきではないかと考えています。
なお2号措置の新たな派遣先の提供については、そもそも派遣会社本来の業務ということでありますし、単に新規の派遣先を提供するということだけではなく、より派遣労働者の希望や能力をいかせてキャリアアップにかなうような派遣先を提供するということが、雇用安定措置として求められていくのではないかと思っています。以上、2点、意見でした。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。それではほかにいかがですか。
 
○佐久間委員 今、永井委員から発言がありましたように、私もこの雇用安定措置の1号から4号まである中で、やはり実効性を確保するためには円滑な運営が必要であると思います。全体としては、この4つの措置が定型的になっていますので、これをスムーズに移行していくのがよろしいのではないか。つまり、措置としては、4つとした現状でいいのではないかなと思っています。調査結果を見ると、直接雇用をされる方々が大体半分ぐらいになってくる。そこの中でやはり試験制度と言いますか、実際に無期雇用又は正社員となるときに、試験などを実施していると思うのですが、そこでもし、半数ぐらいしか実際に採用されるわけではないので、2号、3号、又は4号措置をいかに速やかに、派遣元が移行手続を速やかに行うことが必要なのではないかなと考えます。ですから、現状この雇用安定措置の1号から4号までをやはりスムーズに、派遣労働者に合ったような形で持っていくのが一番いいのかなと考えています。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。それではほかに御意見はありますか。
 
○中西委員 雇用安定措置について、派遣労働者の希望に沿った措置が実施されているのであれば、効果があると考えてよいのではないかと、そのように思います。
もう1つですが、永井委員も意見を述べられました資料10ページにありますように、派遣労働者の約半数が派遣会社からの相談がなされていないと回答しています。このことから、本措置についての周知を派遣元、企業、派遣労働者に加え、派遣先企業に対しても徹底することが肝要かと思われます。より効果的な措置となることを期待します。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。ほかにありますか。
 
○平田委員 雇用安定措置について、3点意見を申し上げたいと思います。1点目は、2015年の改正で強調されていた派遣労働者の正社員化の促進という点についてです。雇用安定措置について御説明いただいた調査等を見ると、派遣労働者の雇用安定措置に対する希望や実施状況等が必ずしも派遣労働者が正社員化を希望していないように思われます。もちろん正社員やキャリアアップを目指す派遣労働者もいるでしょうし、それ以外にワークライフバランスや多様な働き方を重視する労働者がいますので、まずはこの点を念頭に置くべきと思っています。
こうしたことを踏まえて、2点目です。派遣労働者の雇用安定措置に関する希望を見ると、1号措置と2号措置が拮抗する結果が出ていますので、制度の設計や見直しに際しては、全ての派遣労働者が直接雇用を求めていないということへの留意が必要であると思っています。
最後に3点目です。何人かの委員からも意見が出ていますが、派遣会社の対応について、「相談されていない」や「希望を聴取されていない」という点は残念な結果だと思っています。ただ、先ほど申し上げたように、正社員へのキャリアアップを目指している方たちもいらっしゃると思いますので、一定数が直接雇用につながったこと、また、賃金も現状維持または上昇していることから、制度そのものは雇用の安定に寄与しているのではないかと評価をしています。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。ほかにありませんか。
 
○小野委員 直接雇用を希望していたが実施されなかった理由について、元と先と労働者の3つで同じような設問で聞いているのを今拝見していまして、端的に言うと、誰のせいで直接雇用にならないのかということをお互いなすり付けあっているように見えました。6ページは派遣元、9ページは派遣先、14ページは派遣労働者で、これを見ると派遣元は派遣先の採用枠がない、派遣労働者の能力が足りないと言っています。派遣先については手数料が折り合わない、そして派遣労働者の能力が足りないと言っている。派遣労働者は、採用枠がない、つまり派遣先のせいと言っているのです。要は、お互いがお互いに対する不満があって、それによって前に進まない状況があるということが、これでよく分かるということです。ですので、お互いがお互いに何を考えているのかということを、やはり我々は伝えなくてはいけないという気がします。
例えば、採用枠がないということに関して言うと、ここの設問がちょっと作り方がよくなかったのかもしれないのですが、新規の採用枠として派遣労働者や非正規雇用からの登用枠をやはり積極的に作らなければいけないのではないだろうかということを派遣先に示すということです。手数料に関しては、派遣元企業に対して、もうちょっと向き合って折り合いがつくような形でやる方法を検討しなければいけないという指摘です。派遣労働者に関しては、やはり自分自身の能力に関して、それがネックになっているということに、このパーセンテージからは気付いていない。ですので、やはり自分の能力をもうちょっと高めなければいけない、キャリアに関しての形成をしっかりやらなければいけないという、その気付きを与えるような施策が必要になってくるのではないかなと思いました。この3点で同じ設問を作っている調査ですので、そこをうまくいかして分析を進めていくと良い課題というものが見えてくるのではないかと、今回のこれを見て思いました。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。何か感想を今聞いて、面白いと言うか、私自身も非常に参考になりました。
 
○松浦委員 派遣先の直接雇用に至らなかった理由が三者三様だという御指摘は非常に重要な論点だと思います。特に気になるのは、14ページの派遣労働者があげる理由としては「派遣先に新規の採用枠がなかったから」が一番多くなっています。一方で6ページの派遣元調査を見ると、確かに「派遣先に新規の採用枠がなかったから」も高いのですが、「派遣先の基準に比べて派遣労働者の能力が不足しているから」の回答率も高くなっています。
調査票を作るときにも、派遣労働者の能力が基準に達していないから派遣先で直接雇用に至らなかった場合、その事実を派遣元が派遣労働者にしっかり伝えているのだろうかという議論がありました。派遣元が、事実を伝えることで派遣労働者の気持ちを傷つけるのではないかと考えて、むしろ採用枠がなかったからごめんねという話になってしまっているのではないかということです。本来、派遣労働者が直接雇用なり自分の希望するキャリアを実現するために、能力の向上も含めて改善すべき点を派遣元が伝えて、教育やキャリアコンサルティングをやっていかなくてはいけないのですが、結果を見る限りお互い本音で向き合えていないという課題があるのではないかと、私も先ほどの小野委員の御発言を聞いて思いました。
 
○鎌田部会長 どうもありがとうございます。今分析をお聞きして、私も1つの課題として認識したところです。ほかにはありませんか。よろしいですか。
それでは、ほかに質問がないということですので、次の資料の説明に移りたいと思います。お願いいたします。
 
○米岡補佐 それでは資料の2を御覧ください。資料2の1ページに、「派遣期間制限について」、現行制度の概要をまとめています。まず1つ目、事業所単位の期間制限ですが、派遣先の同一の事業所において、継続的に派遣を受け入れることができる期間は、原則、3年とされています。一方で、派遣先が3年を超えて派遣を受け入れようとする場合は、派遣先の事業所の過半数労働組合、又は過半数労働組合がない場合は、過半数代表者からの意見を聴くことが必要とされています。
もう1つが、個人単位の期間制限です。派遣元事業主が同一の派遣労働者を派遣先の事業所における同一の組織単位、いわゆる「課」に派遣できる期間は3年とされています。右下に期間制限が適用されない場合を5つ挙げています。派遣労働者が無期雇用の労働者である場合、派遣労働者が60歳以上である場合、有期のプロジェクト業務に従事をする場合、「日数限定業務」に従事する場合、産前産後休業、育児休業・介護休業等で休業する労働者の業務に派遣労働者が従事する場合。こういった場合には期間制限が適用されない形になっています。
2ページを御覧ください。ここからは事業所単位の期間制限について、期間延長の手続の実施状況について派遣先に対して調査をした結果になります。左側、3年を超えての有期雇用派遣労働者の受入れ状況ですが、「受け入れている」が20.7%。その中で期間延長手続の実施状況として、「行った」と回答を頂いている所が77.8%となっています。
3ページを御覧ください。意見聴取の対象者として、組合か過半数代表かどちらに意見を聴いたのかというところが左側の円グラフですが、「過半数労働組合の代表」が28.4%、「過半数労働者代表」が71.6%となっています。この過半数労働者代表については、その方をどのように選出したかというところが右側の棒グラフになりますが、「投票」によるもの、紙、メール、WEB・アプリ等を合計して35%程度、また「挙手」が38%程度と、この投票と挙手が特に多くなっています。
4ページを御覧ください。「期間延長が必要な理由」ですが、「一時的・季節的な業務量の変動に対処するため」、「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」というものが特に多くなっており、次に、「専門性を活かした人材を活用するため」、「軽作業、補助的業務等を行うため」といったものが続いています。
5ページを御覧ください。意見聴取の際に反対意見があったかどうかが左側の円グラフですが、「あった」という回答が0.9%となっています。右側は事業所単位の期間制限に対する意見について派遣先に聴いたものですが、「制限は不要」が37.9%、「今のままでよい」が23.2%、「制限は必要で、3年より延長すべき」が18.2%となっています。
6ページを御覧ください。ここからは過半数労働組合と過半数代表者の方に調査をしたものになります。まず調査対象の属性ですが、「過半数労働組合の代表」が23.7%、「過半数の労働者代表」が76.3%となっています。
7ページを御覧ください。「期間延長が必要な理由」について、派遣先の事業主から過半数組合等がどのように説明を受けたかというところを回答いただいたものです。先ほどの派遣先の調査と同様の傾向となっています。
8ページを御覧ください。意見聴取の際の反対意見の有無についてが左側の円グラフですが、「反対した」との回答が0.8%となっています。また、その具体的な反対意見の内容ですが、「固定的な労働力の確保に対し、一時的な対応では技能の流出を含め会社としても補完できないため」、「派遣社員の正社員化の検討を打診したため」といった回答を記載していただいています。右側は不利益取扱いを受けた経験の有無ですが、「ある」という回答が0.3%となっています。
9ページを御覧ください。ここからは個人単位の期間制限に関するものです。まず9ページは派遣元に対する調査として、期間制限に対する意見を伺ったものです。「制限は不要」が41%、「今のままでよい」が24.3%、「制限は必要で、3年より延長すべき」が15.9%となっています。
10ページを御覧ください。こちらは、個人単位の期間制限によるキャリアアップ効果について、個人の方に御回答を頂いたものになります。左側の円グラフは、派遣労働者のほか正社員の方や契約社員、パート・アルバイト等の方も含む調査対象者全体からの回答を集計したもの。右側は、そのうち派遣労働者からの回答を集計したものになります。回答の内容としては、「どちらともいえない」との回答がそれぞれ48.4%と47.2%と最も多くなっていますが、御意見をお持ちの方の回答としては、「職場が変わることで、キャリア形成にマイナスの影響がある」というお答えが、「いろいろな職場を経験できるなど、キャリア形成にプラスの影響がある」というお答えに比べて多い結果になっています。
11ページを御覧ください。「個人単位の期間制限に対する意見」について、こちらも個人の方からの回答です。最も多いものが「制限は不要」で、左側の調査対象者全体が37.3%、右側の派遣労働者が44.9%。次に「わからない」が左側の全体で34.4%、右側の派遣労働者が28.2%となっています。また、「今のままでよい」や「制限は必要で3年より短縮すべき」、「制限は必要で3年より延長すべき」との回答を合計しますと、左側の調査対象者全体で28%程度、右側の派遣労働者は同様に27%程度と同程度の結果となっています。
12ページを御覧ください。平成27年の派遣法改正の際の附帯決議を記載しています。2つ指摘をされています。まず1つ目が、国として過半数労働組合のある事業所の割合、意見聴取において過半数労働組合等から反対意見が出された割合及びその内容等の実態を把握するための調査及び分析を行うこと。それから、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをしてはならないことを省令で定め、その違反に対しては厳正に対処すること等といった指摘を頂いています。
13ページを御覧ください。「論点」ですが、事業所単位の期間制限については、期間延長手続を適切に実施していない事例が一部に見られた一方で、過半数組合等からの反対意見はほとんどなく、不利益取扱いが行われている実態もほとんど見られないという調査結果でした。こうした状況を踏まえて、事業所単位の期間制限の在り方について、どのようにお考えいただくか。
また、個人単位の期間制限については、派遣労働者御自身に「期間制限は不要」や「職場が変わることでキャリア形成にマイナスの影響がある」との意見があること、また、先ほど御説明しました雇用安定措置の施行状況を見ましても、一定程度雇用の安定につながっていると考えられることなどを踏まえまして、個人単位の期間制限の在り方についてどのようにお考えいただくか、とまとめさせていただいています。
資料の説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。それでは、派遣期間制限について、御意見がありましたら、どうぞ自由に御発言をお願いします。
 
○木住野委員 事業者単位の期間制限と個人単位の期間制限について論点が提示されておりますので、それぞれについて意見を述べたいと思います。事業所単位の期間制限について、資料の2ページに、延長手続を行っていないとか、分からないという回答が2割を超えていますが、きちんと手続きが取られるよう、是正していく必要があると思います。
もう1つ、3ページにある過半数代表者の選出方法についてです。これは別に派遣に限ったことではなくて、労基法などにおいても該当しますが、本来であれば、投票によって決めることが原則であり、挙手もあまり望ましくはないということになっているかと思います。しかし、現状は事業主からの指名によるものも1割強あるということが調査により分かったわけなので、法違反をなくすよう取り組むことが先決です。
あと、期間延長の理由として一番多いものとして、欠員補充が挙がっています。期間制限の3年という年限で考えれば、3年を延長して欠員補充が必要というのは、常態として人員が必要ではないのではないかというのが、1つ意見です。
次に、個人単位の期間制限についてです。まず、派遣元調査では「制限は不要」というのが4割以上あり、個人調査でも、2割近くがキャリア形成にとってマイナスだと否定的な意見が出ています。特に「マイナスの影響がある」と派遣労働者本人が答えていることについては、なぜ期間制限があるのかという法の趣旨が十分周知されていないのではないでしょうか。また、キャリア形成にとって不利だというのは、3年という年限がたったら、直接雇用に促していくことを前提に、教育訓練と併せて何らかの手当てが必要なのではないかということです。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにありますか。
 
○松浦委員 御意見ありがとうございます。1つだけ、調査票の設計の所で補足させていただきたます。スライドの4ページの「期間延長が必要な理由」の期間は派遣受入れ期間であり、この内容はその事業所に派遣労働者を受け入れ続ける理由になりますので、選択肢として「一時的・季節的な業務量の変動に対処するため」とか、「欠員補充等必要な人員を迅速に確保できるため」といった理由に入れざるを得ないということです。
 
○中西委員 意見を少々述べさせていただきたいと思います。まず、事業所単位の期間制限の在り方に関して、派遣元企業、派遣労働者、派遣先企業、3者それぞれの実態調査から再検討が必要な面もあるのではないかと考えます。また、個人単位の期間制限の在り方についても同様であると考えます。
今般、4月1日に施行されています派遣労働者の同一労働同一賃金の実現に向けた改正労働者派遣法、派遣労働者の待遇等の見直しが検討されていること。それから、私たちが本当に想像もしていませんでした今般の新型コロナウイルスの影響などにより、企業や派遣労働者を取り巻く環境は今後大きく変化するであろうということが予測されるところです。
以上のことから、中長期的な派遣先企業、派遣労働者のニーズや実態を改めて把握した上で、期間制限の在り方を期間の延長も視野に入れて再検討する必要があるのではないかと、そのように考えます。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。平田委員、どうぞ。
 
○平田委員 個人単位の期間制限について申し上げたいと思います。この個人単位の期間制限は派遣労働者保護という規定にもかかわらず、この規定によってキャリアアップにマイナスの影響があるという回答が、プラスの影響があるという回答を上回っています。それから、「制限は不要」との回答が44.9%にも及んでいて、この規定にが派遣労働者のキャリア形成や習熟に悪影響を及ぼしている可能性があることを踏まえれば、実態を見極めつつ、将来的には期間制限の在り方について見直すことを検討してもよいのではないかと思っています。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。ほかにございますか。
 
○佐久間委員 ありがとうございます。私からもその個人単位の期間制限についてですが、従前、派遣という、ある程度不安定と言ってしまっていいのか分かりませんが、常用労働者、つまり正社員になるということを促進し、進めてきているわけです。しかし、今までのヒアリング、状況などをお伺いしている個人の派遣労働者の御意見等では、派遣は派遣の良さというか、自分の働き方によって選択をされているという意向が強いのではないかと思います。
そこの中で「事業所単位」というのは、3年として、人によっては切替えというか、意向を聴くためには必要なのかなと思います。あと個人単位については、ずっとその部署にいて、いろいろなその部署の人間関係とか、居やすいなという形で判断されて、そのとき、もし嫌であれば個人で拒否はできるのですから、ここの3年、つまり、個人単位の3年たったらほかの部署に移るというのは、少し考えていく余地があるのではないかと思います。
あと、調査の中で、過半数代表者の選出方法等についてですが、「事業主からの指名」が少なくなく、この回答は、大企業より中小企業のほうが多いのでは、ということを思うところです。これを正確に、例えば「挙手」なり「投票」のやり方については、それほど難しいものではないので、周知をしていって、公平に代表として選ばれていることを明確にしていくことが、周知の面でも必要があるのではないかと感じます。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。ほかにございますか。
 
○奈良委員 ありがとうございます。意見ですが、派遣労働者自らの回答でも、この期間制限についてはキャリア形成に否定的な見解が多数出ているということですが、一方で、ちゃんと制度の枠組みとか派遣労働者保護のための仕組みとか、あるいは自らの権利であるとか、そういったことが労働者にきちんと教育されていない、周知されていないという実態があるのだと思います。先ほどの雇用安定措置についてもありましたが、半数以上が相談を受けていないという実態の中で、このアンケートの結果だけを見て労働者側も期間制限に反対の意識を持っていると。そのように捉えることが果たして妥当なのかどうかを今一度考えるべきだと。
もう1つは、中西委員もおっしゃいましたが、今回のコロナ禍の中で社会的な意識の大きな変化があると思うのです。例えば、雇用安定措置についても、前回の経済危機の下で派遣労働者の大変悲惨な実態が明らかになって、これをどう是正していくかということに法改正がされてきた経過もあります。そういう点で言えば、今回大きな経済危機にならないことをもちろん私も願うわけですが、そうした現状の中で改めて派遣労働者、あるいは派遣事業所の意識の変化などについても、あるいは実態の変化についても、きちんと捉えて議論していくことは、今まさに必要なのではないかと思っています。以上です。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。ほかにございますか。
 
○森川委員 個人単位の期間制限ですが、3年たって慣れてきて、もう少し勤めたいというのが率直な思いとして、多分派遣労働者にあって、それでこういう回答になっているのではないかという感じがしますので、期間制限の見直しについては前向きに考えていただければと思います。以上です。
 
○仁平委員 私は法改正の趣旨も含めてコメントさせていただきたいと思っています。派遣法を何度も改正したことにより、内容が非常に分かりにくいというのがあって、個人単位と事業所単位の3年の見直しが入ったというのが、1つの趣旨と理解しています。もう1つ、常用代替の防止という点も含めて、今の法の立て付けになっていると思っていますので、派遣労働者の意識については、これはこれできちっと把握しなくてはいけないとは思っていますが、今の法の立て付けの中でどうかという視点も持っておく必要があるのではないかということで、コメントさせていただきたいと思います。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにございますか。
 
○小野委員 個人単位の期間制限に対する意見というところで皆さん議論になっていますが、個人調査のほうから見ると、キャリア形成に「プラスの影響がある」という割合が、「マイナスの影響がある」に比べて数値が低くなっているということが、明らかです。
ただ、先ほど意見がありましたように、どういったキャリア形成をしているのかというようなバックグラウンドが分からないというところもありますので、早急にこの数値を鵜呑みにするべきではないとは思います。
それを踏まえても、この3年という数字の根拠、そこについては、今後いま一度検討をする必要もあるのではないかと思います。おっしゃっているように、この3年の間に、直接雇用にするかであったりとか、どういうふうな次のキャリアステップを踏んでいただくかという検討を派遣元と派遣先でやるわけですが、それが十分に足る、この3年という期間の中でできることなのか、あるいは、もう少し延長して5年というような形にしてキャリアの身長を見守っていくことも検討の余地があるのではないかと思ったりもしています。
ただ、直接雇用に乗り入れさせていこうとする施策の大きな方向性があるのであれば、何らかのリミットは必要だろうと私は考えていますので、この件については、引き続きどういった期間が妥当であるのかをもう少し検討していかなければならない問題なのかと考えています。

○鎌田部会長 ありがとうございます。ほかにございますか。
 
○松浦委員 派遣労働者のキャリアについて小野委員からも御意見がありましたが、キャリア形成については、ご本人が長期的なタームで初めて気付くという面もあります。例えば同じ派遣先で居心地がいいからそこでキャリアを積んでいきたいと思われている場合も、経済危機などでそこに居られなくなったときに、別に移れるだけのキャリア形成ができるのかという観点から、キャリア形成について考え直すということもあります。つまり、派遣労働者個人のキャリア形成をどう支援していくかという点については、派遣労働者の一時点の意見だけではなく、長期的・慎重な観点から見ていく必要があるのではないかと考えております。
ただ、次のキャリアにつながるようなマッチング・教育・キャリアコンサルティングができているのか、という点も一方では課題としてあるので、そういうことも併せて、どうやって派遣労働者のキャリア形成を支援していくかが、一番重要な論点だと思っています。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。ほかに御意見はありますか。ないようでしたら、この議題はこれまでといたします。それでは次の議題について、事務局から説明をお願いいたします。
 
○米岡補佐 資料3を御覧ください。「労働契約申込みみなし制度について」、1ページに現行制度の概要をお示ししています。派遣先が、違法派遣を受け入れた時点で、派遣先が派遣労働者に対して労働契約の申込みをしたものと見なされるというものです。またその際の労働条件については、当該派遣労働者の派遣元事業主における労働条件と同一の労働条件を内容とするという仕組みとなっております。
具体的に、この対象となる違法派遣ですけれども、真ん中の囲みにありますとおり5つの類型があります。(1)派遣労働者を港湾運送業務、建設、警備といった派遣禁止業務に従事をさせること。(2)無許可事業主から労働者派遣の役務の提供を受けること。(3)事業所単位の期間制限に違反して労働者派遣を受けること。(4)個人単位の期間制限に違反して労働者派遣を受けること。(5)いわゆる偽装請負です。
一番下にイメージを書いております。こういった違法派遣を受け入れていたという場合には、右下にありますとおり、派遣先から労働者に対して労働契約の申込みがなされたとみなされるわけですが、この後、派遣労働者が承諾をした場合に労働契約が成立をするといった流れとなります。
2ページを御覧ください。「労働契約申込みみなしの対象条項に係る指導状況」をまとめているものです。「無許可派遣」がもっとも多く、「偽装請負」、「禁止業務派遣」と指導の件数が続いております。また、事業所単位と個人単位の期間制限については、平成27年の法改正で期間制限の仕組みが大きく変わり、そこから3年を経過した平成30年の10月以降に実質的に違反状態が生じ得るということで、平成28、29年の指導実績は0件となっております。
次に3ページを御覧ください。「都道府県労働局における労働契約申込みみなしに関する相談・指導事例」についてまとめたものになります。平成27年10月以降令和元年9月20日までのものを集計しております。相談指導件数としては、禁止業務派遣は全体で2件です。うち直接雇用に至った件数は0件です。無許可派遣では37件、うち直接雇用に至ったものが16件です。事業所単位の期間制限超過については、2件中1件が直接雇用に至っています。個人単位の期間制限については、2件中1件が直接雇用に至っています。偽装請負については、22件中4件が直接雇用に至っているといった状態になっております。
下に指導例として、2つほど例を挙げさせていただいております。1つ目は、A社がB社と締結していた業務委託契約において、B社の労働者が、A社の指揮命令を受けて業務を行っていたということで、適正な請負とは判断されず、いわゆる偽装請負に該当する事案です。また、厚生労働大臣の許可を受けずに労働者派遣事業を行っているということで無許可派遣にも該当するというものになり、結果的に該当労働者2名をA社が直接雇用するということになっております。下の例は、C社において事業所単位の期間制限に係る抵触日以降も、労働者派遣の役務の提供を継続して受け入れており、期間制限違反の事例になります。こちらについては計46名のみなし制度対象者のうち、承諾した38名をC社が直接雇用したといった結果になっております。
4ページを御覧ください。「労働契約申込みみなし制度の周知状況」について、派遣労働者に対する調査の結果です。「知っている」との回答が8.9%、「知らない」が91.1%となっております。
5ページを御覧ください。下の段は平成27年の法改正の附帯決議において大きく2つの指摘を頂いております。1つ目が、労働契約申込みみなし制度の実効性を担保するため、派遣労働者に対してみなし制度の周知を図るとともに、派遣労働者がみなし制度を利用できる状態にあることを認識できる仕組みを設けること。もう1つが、さらに、離職した労働者を離職後一年以内に派遣労働者として受け入れてはならないとの禁止規定に違反した場合、事前面接を始めとする派遣労働者を特定することを目的とする行為を行った場合、グループ企業内派遣の八割規制に違反した場合等の派遣先の責任を強化するため、みなし制度の対象を拡大することについて検討することといった指摘を頂いています。
最後に6ページを御覧ください。以上を踏まえての「論点」です。1つ目は、派遣労働者の多くは、労働契約申込みみなし制度を知らない状況にあるということ。2つ目が、対象とすべき違反の範囲については、制度検討時の議論、平成20年の労働者派遣制度の在り方に関する研究会の報告書ですが、この中で、みなし制度については、「その是正方法として派遣先で雇用させることが、派遣先の法違反への関与実態等からしても妥当であるものとすべき」との考え方で整理されております。こうした状況や制度の趣旨を踏まえて、労働契約申込みみなし制度の在り方についてどのように考えるかというように整理をさせていただいております。説明は以上です。御審議のほど、よろしくお願いいたします。
 
○鎌田部会長 ありがとうございます。それでは「労働契約申込みみなし制度について」、御意見を伺いたいと思います。
 
○仁平委員 4ページに労働者が知っているかどうかというのがありますが、9割の労働者が「知らない」という回答になっており、そもそも労働契約申込みみなし制度の効果以前の話として、労働者がこうした制度を利用できるように周知をしていくというのが、国会の附帯決議もありますけれども、まずやるべきことではないかと思っている次第です。
それからみなし制度適用の対象についてです。特定目的行為について罰則は定められていませんが、派遣先による派遣労働者の選考という雇用行為であり、本来であればこういったものも対象の検討の中に加えてはどうかと思います。特定目的行為の禁止について、派遣元の調査を見ても半数がわからないと回答していることもあり、他の制度も含めて法の趣旨を理解していただく必要があるのではないでしょうか。こういう制度があるのだということを派遣元も派遣先も、そして労働者も知っているということを前提に制度を運用していかないと、うまくいかないのだろうと思っております。このみなし制度については、まずは周知を図っていくということが今やるべきことなのではないかと考えております。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにありますか。
 
○平田委員 違法派遣が行われた場合ですが、基本的に業として人材派遣を行っている派遣会社に、罰則が科されるべきだと考えております。対象となる禁止業務への従事や無許可派遣、派遣期間の把握、偽装請負は、基本的に派遣会社の責任領域なのではないかと思っております。
かねてから我々が主張しておりますけれども、派遣先が派遣元と共謀するなど、著しく悪質な場合を除いて、違法派遣を受け入れただけで派遣労働者と派遣先の間で労働契約が成立してしまうということは、派遣先にとって余りに厳しいと考えておりますので、制度の見直しを検討することが望ましいのではないかと思っております。以上です。
 
○鎌田部会長 ほかにありますか。よろしいですか。私から1点だけ質問します。4ページの周知状況ですが、いわゆる有期雇用の無期転換制度の周知状況と比較して、どうなのでしょうか。「知らない」の割合が極めて多いので、意外な感じがしております。もし事務局のほうで、無期転換制度の周知状況について何かデータがありましたら、後日で結構ですので少し教えていただければと思います。私の肌感覚というか、無期転換は結構知っておられる方が多くて、何でみなしがこんなに低いのかというのは少し意外なものですから、もしデータがあれば教えていただきたいと思います。
ほかにありますか。よろしいですか。それでは本日の議題はここまでといたします。議事録の署名は、平田委員、木住野委員にお願いいたします。事務局から何か連絡事項はありますか。
 
○清水補佐 次回の部会については、6月17日(水)、労働委員会会館612会議室を予定しておりますので、追って正式に御連絡を差し上げます。以上です。
 
○鎌田部会長 それでは以上をもちまして、第300回労働力需給制度部会を終了いたします。300回で、特に記念でも何でもないのですけれども、ああそうなんだなと、私は思いました。どうもお疲れさまでした。ありがとうございます。