第15回 社会保障審議会企業年金・個人年金部会 議事録

日時

令和2年9月30日(水)12:58~15:02

場所

TKP新橋カンファレンスセンター 15階ホールE

出席者

(オブザーバー)

議題

  1. (1)DCの拠出限度額について
  2. (2)DBの掛金設定の弾力化について

議事

議事内容
○神野部会長
 それでは、定刻少し前ではございますけれども、委員の皆様方、お揃いでございますので、ただいまから第15回「社会保障審議会企業年金・個人年金部会」を開催したいと存じます。
 皆々様には、お忙しいところ、万障繰り合わせて御参集くださいまして、ありがとうございます。伏して御礼を申し上げます。
 本日の委員の出欠状況ですが、渡邊委員から御欠席との御連絡を頂戴いたしております。
 また、臼杵委員、小林委員、白波瀬委員におかれましては、オンラインにて御参加を頂戴いたしております。
 御出席をいただきました委員の方々が3分の1を超えておりますので、会議は成立しておりますことを、まず、御報告申し上げたいと思います。
 早速ではございますが、議事に入らせていただきたいと思います。見渡したところいらっしゃらないと思いますが、カメラの方は、ここにて御退室いただければと思います。
 それでは、議事の方に移らせていただきますが、お手元の議事次第を御覧いただければと思います。
 本日は、議題を大きく2つ用意してございます。「DCの拠出限度額」について、2番目は「DBの掛金設定の弾力化」について、この2つでございます。
 まず、資料の確認をお願いします。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 企業年金・個人年金課長です。本日もどうぞよろしくお願いします。
 資料の確認をさせていただきます。
 本日の資料ですが、資料1、ヒアリング等における主な意見。
 資料2、ヒアリング等を踏まえて特に検討を要する事項。
 資料3、DBの掛金設定の弾力化について。
 参考資料1、2として、7月の部会の資料を、参考資料3として委員名簿を用意しています。
 事務局からは、以上です。
 
○神野部会長
 どうもありがとうございました。
 それでは、議事に入らせていただきますけれども、議題でございます「DCの拠出限度額」と「DBの掛金設定の弾力化」については、当面検討を急ぐべき事項として、委員の皆様に議論をいただくとともに、関係団体からヒアリングを実施してまいりましたことは、御案内のとおりでございます。
 事務局において「ヒアリング等における主な意見」と、ヒアリング等を踏まえて「特に検討を要する事項」を整理していただいております。御確認いただきましたお手元の資料のとおりでございます。また「DBの掛金設定の弾力化」については、今後のスケジュールを考えますと、今回、方向性を決めるために、委員の皆様方に御意見をいただきたいと準備をいたしております。
 議事の進め方でございますが、まず、事務局から資料1から資料3までを通しで御説明いただいて、それから、委員の皆様方から御質問・御意見を頂戴したいと考えておりますので、事務局の方から資料の一括の説明をお願いしたいと思います。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 それでは、資料1から資料3までを通しで説明させていただきます。
 資料1はヒアリングを踏まえてこれまでいただいた意見をまとめたものです。
 資料2はヒアリング等を踏まえて特に検討を要する事項を整理したものになります。
 資料3はDBの掛金設定の弾力化ですが、先ほど部会長からございましたように、今後のスケジュールを考えますと、本日方向性を得ておきたいと考えておりまして、案を示させていただいております。
 まず、資料1をお開きください。1ページ目、2019年12月に「議論の整理」を取りまとめましたが、積み残った課題のうち、まず検討を急ぐべき事項として「DCの拠出限度額」と「DBの掛金設定の弾力化」について、議論を再開しました。
 第13回部会・第14回部会においては、こうした議題を中心に、令和3年度税制改正要望やその後の議論に役立てるため、関係団体のヒアリングを実施しました。
 本資料は、再開後の部会における部会委員の御意見とヒアリングにおける関係団体からの御意見を分類の上で、事務局の責任において整理したものになります。
 2ページを御覧ください。「DCの拠出限度額」ですが、「(1)企業型DCの拠出限度額の水準」です。最初の4つ目のマルまでは引上げを求める意見です。
 4つ目のマルの後段、「企業型DC(マッチング拠出)、DB、iDeCoの制度をトータルに考えて、拠出限度額の引上げを含め、諸施策を検討いただきたい」といった意見や、その次のマル、「5.5万円の枠は、厚生年金と併せて考えていく必要がある」といった意見がありました。
 次のマル、「計算基礎数値については、直近の数値を用いての見直しなど、設定根拠及び望ましい水準について、十分な議論が必要」といった意見があった一方で、その次のマル、「計算根拠が厚生年金基金に基づいたものとなっており、今後は新しい根拠を考えていくべき」といった意見がありました。
 3ページにある2つの意見は拠出限度額の引上げに慎重な意見です。特に2つ目のマル、「企業年金のカバレッジを高めていく取組こそが優先的に議論すべき課題である。カバレッジが低いまま拠出限度額の引上げ等の様々な要件緩和を行うことは、企業年金がある労働者と企業年金がない労働者の間の格差を助長することにもなりかねない」といった意見がありました。
 4ページの「(2)DBを併せて実施する場合の企業型DCの拠出限度額」です。
 まず「見直しの背景・趣旨」について、
・公平な扱いに向けて改善
・制度創設からの課題。国民の老後所得確保を支援するためにも見直しが必要
・今まで一律で定めていた方が不公平。そこを直していくことは合理的でまた公平
・多くのDBの掛金が2.75万円を下回っており、これまでの一律半分とする評価が過大
・制度間の公平性も重要な論点。まず、公平性の確保が必要ということであれば、そのための対応について議論は必要
・どこでの公平性を重視するかといった優先順位を設定すべき
 5ページに進んでいただきまして、関係団体からは
・制度利用を促進する観点から賛同。ただし、DC拠出不可となる加入者が一部発生する点については、配慮が必要
・公平な制度とするための仕組みを確保する観点から賛成する。ただし、経過的な措置など、柔軟な対応が必要
・各課題に丁寧に対応した上での検討が必要。特にコスト・事務負担・時期
・拠出可能額の有効活用につながる可能性。一方、DC拠出限度額が縮小・消滅する企業やDBの給付減額を選択する企業が想定されるため、慎重な議論をお願いする
・現行の枠組みの範囲内で非課税枠を有効に、より公平な利用を可能とする考え方に賛同。今後、拠出・運用・給付の各段階での仕組み及び課税のあり方が総合的に検討され、その見直し実施が中長期的な議論として予想されることから、その時期まで現行制度体系が維持できるよう経過措置をお願いしたい
といった意見がありました。
 6ページ、見直しに当たっての検討課題ですが、
・既存制度への影響
・制度普及の観点というものも考えて、十分に配慮
・労働条件の変更に関わってくること
・既に企業型DCに加入していて、DB掛金額が2.75万円を超えて評価される場合には、当該企業のDC加入者に配慮
・これまでの労使合意で構築・運営されてきた企業年金制度を維持できるよう配慮
・退職金制度の見直しが必要となる企業への対応
・経過措置の検討
などの意見がありました。
 7ページは、同様に経過措置の意見が続いていますが、4つ目のマル、
・賃金・退職金・企業年金全体の総額が減らないよう、労使で協議
・私的年金に限らず、職場の皆でNISAや財形などをやることを推奨するような雰囲気の醸成が欲しい
といった意見がありました。
 その次のマルから3つは、DCができなくなる場合、DC加入者の資産、既に拠出した分の取扱いの検討を求める意見です。
 最後のマル、「本件の検討に当たっては、割合ではなく、具体的に影響を受ける加入者数等を共有し、影響度合いを認識しながら検討すべき」といった意見がありました。
 8ページ、その影響度合いにも関係しますが「DBの掛金相当額(仮想掛金額)」です。
 7月の部会で、DB単位で評価する方法と、非継続基準を応用して個人単位で評価する方法を紹介し、御議論をいただきました。
 9ページに飛んでいただきまして、仮想掛金額について関係団体の皆様からは、異口同音に分かりやすい仕組みとすることと事務への負担が過度に大きくならないように求める意見がありました。
 一番下で「見直しの施行時期」については、「改正時期は適切なタイミングを検討いただきたい。また、段階的な導入など事務負荷を平準化できるような導入方法も検討いただきたい」といった意見がありました。
 10ページ、「(3)個人型DCの拠出限度額」です。
 まず、企業年金(企業型DC・DB)の加入者の個人型DCの拠出限度額ですが、
・公平な支援という観点から上限2万円に設定することを評価
・第一弾の見直しとして前向きに受け止め
・DBの実態を反映するという意味で合理的
・拠出限度額が現行より増額されることに賛同
・統一することについて賛成するが、月額2.3万円に統一することを希望
・1.2万円を超える加入者掛金を拠出しているのが全体の約10%にすぎないという現状
・企業型DC・DBの掛金の変更となる場合、iDeCoの掛金限度が変更となるため、年1回の掛金額変更の制限を撤廃
といった意見がありました。
 11ページ、
・拠出可能額のPRが大事
・DBだけやっている企業でもiDeCoの枠が幾らになるかということを通知する。あるいは簡単に分かるようにすべき
・企業年金のない職場に勤めている者へのiDeCoの枠の通知も重要
などの意見がありました。
 ページの下の方で「既存制度への影響」として、
・iDeCoについてもDCができなくなる場合、DC加入者の資産はどうなるのか
・積立金に占める各種手数料等の割合が相対的に大きいままとなるなど、資産が目減りする可能性が高まる。一方で、その場合でも途中解約は原則としてできない
といった意見がありました。
 12ページ、「DB加入者に関する国民年金基金連合会とのデータ連携」です。
・個人情報保護の観点をクリアした連携の仕組みが必要
・データ連携方法は、簡素な仕組み・頻度の検討が必要
・基礎年金番号の整備
への意見がありました。
 ページ後半部分で「マル2個人型DCの拠出限度額の水準等」については、最初の1つ目のマルは、企業年金制度の第2号被保険者の限度額の引上げを求める意見です。
 2つ目のマル、3つ目のマルは、拠出限度額を5.5万円とした上で、「できるだけ早期に拠出限度額から事業主が拠出した掛金額を差し引いた金額を個人がiDeCoへ拠出可能な金額とすべき」といった、いわゆる穴埋め型の実現を求める意見があった一方で、次のマルになりますが、穴埋め型については、「個人型DCが企業の退職給付制度の延長上にある制度か、個人の高齢期における所得確保に係る自主的な努力での制度か、十分な議論が必要」といった意見がありました。
 13ページ、「(4)第2号被保険者の個人型DC加入時の事業主証明等」ですが、皆様から、1つ目のマルに代表されるよう、「事業主の負荷を最小化するという観点で情報連携の仕組みを構築することで、ぜひ廃止していただきたい。2022年10月には企業型DC加入者のiDeCo加入要件緩和が施行されることから、それに間に合うよう実現いただきたい」といった意見がありました。
 その一方で、14ページを御覧いただいて、2つ目のマルに代表されるように、「対応のためのインフラ整備に係るコストが、加入者や事業主など関係者にとって過度な負担とならないよう配慮いただきたい」といった意見が関係団体からありました。
 15、16ページは「DBの掛金設定の弾力化」です。
 委員や関係団体から、金融危機当時と同様の措置を講じる等の対応の検討をすべきといった意見があった一方で、15ページの一番下、「2008年のリーマンショック時の弾力化措置の活用件数がどの程度あったのか、また、特例期間終了後に猶予等部分が補填されたのか、あるいは給付減額が行われたということはないのか、そういった実態について確認しておきたい」といった意見がありました。
 17ページに飛んでいただきまして、ここからは当面の対応を超えた制度見直しの御意見です。
 まず「総論」として、「よりフェアにするためにはどうしたらいいのか、是非、ここで止まらないで、より全体として公平な制度、より税制としてどういうのがいいのかという議論につなげていくべき」といった意見がありました。
 「拠出の仕組み」については、マッチング拠出の制約の撤廃を求める意見があった一方で、それへの反対意見がありました。
 DCの拠出限度額については、キャッチアップ拠出、生涯拠出枠、年をまたいだ非課税枠の繰り越しを検討すべきといった意見、国民年金第3号被保険者の個人型DC掛金を社会保険料控除の対象とすべきといった意見、DBについて限度額の設定は行うべきではないといった意見がありました。
 18ページ、DCの中途脱退要件を緩和すべきといった意見、指定運用方法の活用等を求める意見、「給付・受給の仕組み」について様々な御意見をいただくとともに、給付時の課税の見直しを求める意見がありました。
 19ページ、「特別法人税」については、
・撤廃
・撤廃、少なくとも課税の停止を延長
・特別法人税の在り方については、中途引き出しとか選択一時金のあり方にも絡む
・税制・拠出減額・中途引き出し等の多様な課題。拠出限度額の設定や中途引き出しの制約は行わず、現行制度のまま自由な設計を可能とすることが望ましい
・税率があまりにも今の金利の状況と合致していない
といった意見がありました。
 「他制度との関係」としては、中退共、退職一時金の税制を含めて検討が必要といった意見、最終ページを御覧いただき、ペーパーレス化・押印省略、支払保証、国民年金基金の見直しなどの御意見をいただきました。
 続きまして、資料2をお開きください。「ヒアリング等を踏まえて特に検討を要する事項」を整理しています。
 1ページ、これまでの積み残しの課題、部会委員の御意見、ヒアリングにおける関係団体からの御意見等を踏まえると、令和3年度税制改正やその後の議論に向けて、以下のとおり、特に検討を要する事項を整理できるのではないか。
 まず「現状と課題」を整理しています。
 国民の老後生活については、多様なニーズがある中で、公的年金を基本としながら、様々な方法で老後の備えを行っていただくことが必要となっている。老後の備えに対する支援には様々なものがあるが、その一つに企業年金・個人年金制度がある。
 我が国の企業年金は、退職金(退職一時金)からの移行という形で創設された。
 ページ後半の下から2つ目のマル、退職金は、賃金・休暇等と同じく、労働条件の一つとして企業が任意で実施するものであるが、その中で一定の要件を具備したものについて、企業年金制度として税制上の措置が認められている。
 我が国では、中小企業を含めて広く退職一時金が普及しているが、企業年金については、中小企業の実施率は低く、従業員規模が大きくなるほど実施率が高く退職一時金と併用されている実態にある。
 2ページ、「企業年金の税制」ですが、我が国の課税はTTE型が原則、すなわち、貯蓄は課税済みの所得から行われ、その運用益はそれが取得されたときに課税の対象となり、元利についてそれを実際に得る(引き出す)ときには課税がなされないという形です。
 公的年金はEET型。公的年金の代替としての性格を持つ厚生年金基金については、公的年金に準じた税制上の措置。DB・企業型DCについては、かつての適格退職年金と同様の特別法人課税体系で、ETT型ですが、※の部分、特別法人税の課税が凍結されていて、実質的にEET型となっています。
 3ページ、「企業年金の拠出・給付の仕組み」です。
 DBは、厚生年金基金や適格退職年金の移行の受け皿として創設、拠出・給付の仕組みや税制の基本的枠組みについては両制度の特徴を承継。企業型DCは、貯蓄との違いを考慮した拠出建ての新たな制度として創設、DBとは異なり拠出限度額が設定、中途引き出しを原則禁止としています。
 次のマル、拠出限度額は、貯蓄と区分するための方策の一環であるとともに、DC制度は税制と密接不可分であることから、掛金額を税制上の措置が講じられる範囲と一致させるために設けられたものである。
 企業型DCの拠出限度額は、現行は月額5.5万円、DBを併せて実施する場合は月額2.75万円となっています。
 企業型DCの拠出限度額の範囲内で、かつ、事業主掛金の範囲内で、従業員による拠出(マッチング拠出)を認めています。
 4ページ、「個人年金の変遷・位置付け等」ですが、2017年1月、加入可能範囲が拡大されました。2つ目のマル、企業年金(企業型DC・DB)の加入者の個人型DCの拠出限度額は、同じく個人拠出である企業型DCのマッチング拠出における拠出額の実態を踏まえて設定しています。
 「企業年金制度の検討課題」ですが、日本型雇用慣行に適合しているとされるDBについては、創設後、厚生年金基金や適格退職年金の移行の受け皿として機能。拠出建ての新たな制度として導入された企業型DCについては、創設後、雇用の流動化への対応、退職給付会計への対応等の観点から、既に厚生年金基金やDBを実施していた企業を含めて導入が進んだ。
 このように、それぞれ役割を果たし、実施事業主数・加入者数が増加してきたDB・企業型DCであるが、多くは退職一時金との併用であり、企業の退職金制度の枠内に企業年金を位置づける内枠方式に代表されるように、退職金の一部として企業年金を割り当てて活用するなど、退職金としての性格が強いとの指摘がかねてよりある。
 5ページ、DCは貯蓄との違いを考慮し、資産が老後所得となるよう明確な目的意識を反映した制度。DBは50歳以上の退職時から支給を開始することができ、支給開始年齢到達前の中途引き出しも認められ、まさに退職金そのものであるとの指摘がある。
 本来、企業年金(DB・企業型DC)の制度目的は、確定給付企業年金法・確定拠出年金法に明記されているとおり、公的年金の給付と相まって国民の老後の所得確保を図ることにあり、現行の税制上の措置を超えて、公的年金と同様又は公的年金に準じた税制上の措置が認められるためには、拠出限度額・中途引き出し・受給の形態等の在り方について、DB・企業型DC制度全体を通じた検討を進めていく必要があるのではないか。
 こうした検討課題については、前身の企業年金部会からの積み残しの課題であり、検討を深めていく必要があるのではないか。
 「個人年金制度の検討課題」ですが、2つ目のマルです。企業年金のある者も個人型DCに加入可能となった中、自助努力に対する支援の公平、企業年金のある者とない者の公平、企業年金の普及等の観点から、企業年金・個人年金制度全体を通じた検討を進めていく必要があるのではないか。
 6ページ、こうした中、令和3年度税制改正に向けては、先の法改正の施行に併せて「DCの拠出限度額」について検討を進めることとしてはどうか。
 ※の部分ですが、先の法改正で企業型DC加入者の個人型DC加入の要件緩和が図られ、企業型DCの拠出限度額から事業主掛金を控除した残余の一部を活用することで個人型DCに加入可能となったことから、DBを併せて実施する場合を含めてDCの拠出限度額の在り方について改めて検討する必要があるとともに、制度間の情報連携・情報提供の仕組みについて構築する必要が現在生じています。
 その後、特別法人税の課税停止措置の2022年度末に向けて、企業年金・個人年金制度全体を通じた拠出時・給付時の仕組みについて、検討を進めていくこととしてはどうか。
 7ページ、「2.企業型DCの拠出限度額の見直し」ですが、企業型DCの拠出限度額は、現行月額5.5万円となっている。
 拠出限度額の引上げを求める意見がある一方で、企業型DCの普及が不十分なまま拠出限度額を引き上げることは、企業型DCがある従業員とない従業員との間で格差が広がることにもなりかねないといった意見がある。
 こうした意見があることに加えて、事業主掛金の拠出の実態を踏まえれば、月額5.5万円を直ちに引き上げる状況にはなく、引き続きの検討課題とすべきではないか。
 企業型DCの拠出限度額の水準を新たに設定し直す際には、新たな設定方法を検討していく必要があるのではないか。
 DBを併せて実施する場合の企業型DCの拠出限度額は、現行月額2.75万円となっている。
 企業型DCのみを実施する場合の拠出限度額(現行月額5.5万円)から、DBに事業主が拠出する掛金相当額を控除する必要があるという基本的考え方に立ち、現行は全てのDBの掛金相当額を月額2.75万円と一律評価。
 DBの掛金相当額を一律評価しているため、DBごとの掛金相当額の実態によって、企業型DCの拠出限度額に不公平が生じ得る。
 8ページ、DBの掛金相当額(2.75万円)は、DB・DC2法の創設を検討していた当時の厚生年金基金(1583基金)の上乗せ部分の給付水準の平均から評価したものであるが、現在のDBの掛金額(加入者1人当たりの標準掛金)の実態は、月額2.75万円より低いDBが多く、DB間で大きな差もある。
 現在、DBの件数は1万件を超えているが、多くの中小企業が実施していた適格退職年金から移行したものが圧倒的多数。厚生年金基金を基に評価したDBの掛金相当額(現行月額2.75万円)は、現在のDBの実態に合っていない。
 DBの掛金相当額を一律評価している現行の仕組みは、企業型DCのみならず個人型DCの拠出限度額の公平性の問題とも関連する課題。
 このような中、より公平できめ細かな制度とするためには、どのような仕組みが考えられるか。例えば、企業型DCの拠出限度額は、月額5.5万円からDBの掛金相当額を控除した額とすることが考えられるがどうか。
 9ページ、多くのDBにとっては、現在控除しているDBの掛金相当額が過大に評価され、一部のDBにとっては、現在控除しているDBの掛金相当額が過小に評価されており、見直しによって多くの企業にとっては企業型DCの拠出限度額が拡大することになる。
 拠出限度額が現行より拡大する企業では、退職一時金から企業型DCへ移行するなど、退職金・賃金体系の見直しが可能となるが、その際には新たな労使合意が必要となる。拡大する拠出限度額を十分活用するよう、労使の取組が求められる。
 拠出限度額が現行より縮小する企業では、企業型DCの事業主掛金の一部を退職一時金へ移行するなど、退職金・賃金体系の見直しを要することとなるが、その際には新たな労使合意が必要となる。拠出限度額の見直しを契機に退職金・賃金の総額が縮小することのないよう、労使の取組が求められる。
 他方、より公平な企業型DCの拠出限度額の算定方法へ改善を図るための見直しではあるものの、制度の見直しに当たっては、移行期間を確保し、DBの掛金相当額を控除した企業型DCの拠出限度額が月額2.75万円を下回った場合も、一定期間は引き続き月額2.75万円までの事業主掛金の拠出ができるようにすべきという意見についてどう考えるか。
 また、DBの掛金相当額でDCの拠出限度額を使い切ってしまう場合、既に企業型DCに積み上がった資産の取扱いについて検討が必要という意見についてどう考えるか。
 10ページ、続きまして「3.個人型DCの拠出限度額の見直し」です。
 現在、企業年金加入者の個人型DCの拠出限度額は、DBの掛金相当額を一律月額2.75万円と評価していることと連動して、3区分に分かれている。3つの具体的な設定方法は次のマルから3つにあるとおりですが、一番下のマル、このような中、老後の所得確保に向けた個人の取組に対する支援をより公平にするためには、どのような仕組みが考えられるか。例えば、個人型DCの拠出限度額の設定に当たっても、DBの掛金相当額の実態を反映することで、企業年金(企業型DC・DB)の加入者の個人型DCの拠出限度額について公平を図り、限度額区分を簡素にできるのではないか。
 11ページ、具体的には企業年金(企業型DC・DB)の加入者の個人型DCの拠出限度額は、企業型DCのみに加入する者のマッチング拠出における拠出額の実態を勘案して設定した月額2万円とし、企業型DC・DBの事業主掛金との合計が月額5.5万円以内で統一できるのではないか。
 ページ下の方、多くの者にとっては、個人型DCの拠出限度額が拡大する。
 DBの掛金相当額と企業型DCの事業主掛金額でDCの拠出限度額を使い切ってしまう場合、既に個人型DCに積み上がった資産の取扱いについて検討が必要という意見(資産が目減りする可能性が高まるが、現行は中途引き出しが原則できない点)についてどう考えるか。
 12ページ、「個人型DCの拠出限度額の水準」については、様々な意見がありましたが、2つ目のマル、企業年金(企業型DC・DB)のある者も個人型DCの加入可能となったことを踏まえ、個人型DCの拠出限度額について、自助努力に対する支援の公平、企業年金のある者とない者の公平、企業年金の普及等の観点から、引き続き、新たな設定方法を検討していく必要があるのではないか。
 13ページ、「実務面の対応」ですが、企業型DC・個人型DCの拠出限度額の算定に当たって、DBの掛金相当額の実態を反映するためには、給付建てのDBの掛金相当額について、DCと比較可能な形で評価する必要がある。また、拠出限度額の管理のため、事業主から企業型RKと国基連に対して、そのDBの掛金相当額に関する情報を提供する必要がある。
 DB・DC2法の施行後5年の見直しの際にも、DBの掛金相当額の評価を含む実務面の対応が課題となった。
 「(1)DB掛金相当額の評価方法」ですが、14ページ、これまでDB単位で評価する方法と個人単位で評価する2つの方法を議論、今後の部会で、日本年金数理人会からDBの年金数理の専門家としての考えを聴取した上で、DCの税制上の措置に関わる問題であることから、厚生労働省において改めて評価方法を提示したい。
 15ページ、「(2)事業主からのDB掛金相当額の情報提供」ですが、15ページ後半部分「情報提供に当たっての法令上の規定の整備等」を図るとともに、16ページまで飛んでいただきまして、最後のマル、情報提供の実務については、事務処理の負担やシステム整備のコストが過大にならないようにする必要がある。多くの関係機関が関わり技術的な検討を要することから、厚生労働省と関係機関との間で議論を深めていく。
 このように記載させていただいていますが、既に事務的な議論は関係者と開始をさせていただいていることを御紹介します。
 17ページ、最後に、中期的に引き続き議論を要すべき事項について、事項名だけですが列挙させていただいています。
・制度全体を通じたより公平な仕組み
 拠出時・給付時の仕組みとして、
・望ましい給付と掛金の水準
・個人型DCのあり方。企業型と個人型の拠出限度額を統一し、拠出限度額から事業主掛金を控除した残余の範囲内で個人拠出を可能とする、いわゆる「穴埋め型」を含む。ただし、その際には、退職給付制度である企業年金の事業主掛金と個人の自助努力である個人拠出の関係を整理
・マッチング拠出の在り方
・中途引き出しの在り方
・受給の形態等
・特別法人税を含めた拠出、運用、給付時の課税の在り方
・他制度との関係
・その他、これまでの部会での議論の中で積み残っている課題
 最後に、資料3について御説明します。
 1ページを御覧いただいて、今般の新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって、DBの財政状況や企業の経営状況の悪化が見込まれます。
 このため、2008年の金融危機(リーマンショック)当時の弾力化措置と同様の措置を講ずることとしてはどうか。
 ただし、財政の健全性の確保や受給権保護の観点から、規約変更を必要とするなど手続面を改めて整理してはどうか。
 弾力化措置としては、金融危機当時に講じた措置と同様ですが(1)の掛金の引上げを要する特例については、今回は1年としております。
 手続面について、2ページを御覧ください。弾力化措置の適用に当たっては、財政の健全性の確保や受給権保護に留意する必要があることから、以下のとおり取り扱うこととしてはどうか。
 マル1 規約変更を求めることとする。
 規約では、掛金について適用を受ける特例の内容や適用期間などを記載。
 「(1)追加掛金の拠出に係る特例」を適用する場合は、規約変更の際に、経営状況の悪化を示す根拠として、実施事業所の事業に係る収入の減少率など客観的なデータの提供を求める。
 マル2 事後的な評価が可能となるよう、適用実績の管理・公表を行うこととする。
 各DBにおける規約変更の準備期間を考慮すれば、早期に省令改正を行う必要があるのではないか。
 長くなりましたが、私からの説明は以上です。
 
○神野部会長
 どうもありがとうございました。
 このたびのヒアリング等々を整理していただきながら、それを勘案して、令和3年度の税制改正やその後の議論に向けて、考え方、進め方、特に検討を要する事項などについて整理をいただいております。
 さらに「DBの掛金設定の弾力化」については、今回、リーマンショックのときと同様の措置を講じてはどうかという具体的な提案をいただいておりますので、この点も御勘案いただければと思います。
 それでは、ただいま御説明を頂戴いたしました資料につきまして、委員の皆様方から、御意見、御議論を頂戴したいと思います。
 内田委員、どうぞ。
 
○内田委員
 労働側の内田です。丁寧な御説明をありがとうございました。
 私からは、DCの拠出限度額について要望を2点と、DBの掛金設定の弾力化について要望を1点述べさせていただきます。
 まず、DCの拠出限度額についてですが、資料2のスライドの9にありますが、4つ目以降のマルにつきましては、関係団体のヒアリングで各団体から多くの課題が指摘された部分であり、いずれも仮に制度改正がなされた場合における実際の影響を丁寧に検証していく必要があるとの意見だと考えます。
 その上で、今後の検討に当たって十分留意いただきたい点などについて、2点申し上げます。
 まず、労働側としましては、DBは労使合意に基づいて実施してきたものであり、これまで企業年金の充実に尽力してきた労使の取組を反故にするような制度見直しとなってはならないと考えております。そのため、経過措置にとどまることなく、これまでの労使合意を最大限尊重できるような仕組みを検討いただきたいと思っております。
 2点目ですが、DBは私たち労働者に確実な給付を基本的には約束するものであり、本来企業年金の普及の中心に位置づけるものであるべきと考えます。その意味で、今回の見直しによって、DBの普及・充実に負のインパクトを与えることがないようにすべきと考えております。そのため、関係団体からの指摘がありましたが、DBに与える影響については、より丁寧な検証をお願いしたいと思っております。
 また、DBの掛金設定の弾力化についてですが、受給者の利益を考えますと、DB制度を維持することが重要な意味を持つと考えますので、厚労省の提案については了と考えております。ただし、リーマンショック時と同様の措置について、その後のDB制度の状況についてはどうなったのかとか、追加拠出が行われたのかというような状況を御質問させていただきましたが、結局は分からないという御回答でした。規約変更の承認手続を経ることなく、このような措置をとったということで、フォローができなかったのではないかと考えます。受給権保護の観点で課題がなかったかという検討もお願いしたいと思います。
 また、ヒアリングで中小企業について掛金拠出相当分についての受給減額等の検討を要望するとの意見がありましたが、猶予措置の検討段階でこのように給付減額の意向を示されることは2022年4月以降も継続するというようなことを暗示しているような感じを受け取っておりまして、非常に不安を感じております。厚生労働省が弾力化措置の対象となるDBの健全性保護と受給権保護に厳しく目を光らせていただくよう、強く要望いたします。
 以上です。
 
○神野部会長
 議題の2点につきまして要望をいただきました。コメントをお願いします。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 要望をいただきましたので、コメントをさせていただきます。
 今回のDCの拠出限度額の見直しに当たって、DBもDCも含めてですが、これまで現行制度下で認められてきたものを労使合意で実施していた既存制度があるのだからそれへの最大限配慮をしなければいけないという指摘は、関係団体の皆様からいただいています。どういう経過措置が考え得るか、見直しによる公平性の確保と制度の安定性の確保、この両立をどう図るべきかをしっかり検討して、次回又は次々回になるかもしれませんが、必要な資料を出して御議論いただきたいと思っています。
 また、DBの掛金の弾力化措置につきましては、内田委員からリーマンショック時の実績がどうなのかという御指摘をいただいて、このリーマンショック時のときの対応というのが、企業年金部会もない時代に、厚生労働省が省令改正をして対応したものですが、規約変更を必ずしも要しない取扱いにしたこともあって、実績の件数も分からない、その後のフォローもできないといった状況に陥っていましたので、今回、規約変更を必ず求めることとしました。
 その後、どのような状況になるのか我々目を光らせてという御指摘をいただきましたが、DBの受給権保護というのは大事な視点ですので、そういう観点から、特例の適用件数の把握のほか、またこの部会でもフォローアップをしていただきたいと思っていますので、この資料3にあるような手続面の改善を今回盛り込ませていただいた次第です。
 以上です。
 
○神野部会長
 ほかはいかがでございましょうか。
 金子委員、どうぞ。
 
○金子委員
 金子でございます。私の方から意見なのか感想なのか、その中間ぐらいのものを3点と、最後に質問を1つさせていただきたいと思います。
 最初の方に、感想ないし意見を申し上げます。資料2の4ページ目の4つ目のマルぐらいの箇所なのですけれども、退職金、賃金の総額を縮小することがないようとの話が記載されています。その先の話として、仮に前払い退職金として給与に加算して支給するようになっても、職場のみんなでNISAや財形などをやるということを推奨するような雰囲気の醸成が必要かなと、これは何度も申し上げていますけれども、もう一回申し上げたいと思っております。
 それから、同じく資料2の15ページ目、説明ではちょっと飛ばされた部分なのですけれども、一言申し上げたいと思うのですが、最後のマルの部分です。厚生労働省から事業主に対して基礎年金番号の正確な管理、DB加入者原簿への記載等についての周知徹底を図るということが記載されておりますけれども、これは関連団体のヒアリングで受託会社からの情報提供を行う上で大きな懸念が示された部分でもあります。もともと事業主に求められたものでもありますので、受託会社だけに負担が集中しないよう、事業主に対してもしっかりとしたメッセージを出すべきだと感じております。
 それから、同じく資料2の16ページ目の4つ目と5つ目ぐらいのマルのところでしょうか。個人型DCの拠出可能見込み額の周知の部分です。4つ目と5つ目の記載というのは、全体をくくりますと私的年金の掛金の増額を促すといったものを方策として挙げられているのだと思いますけれども、一方で、私的年金のカバー率の方の観点で見てみますと、実は職場に企業年金のない人に対しても周知は非常に重要だと思っています。これも何度かこの場で申し上げておりますけれども、もう一度繰り返して申し上げますと、企業の職場にないことですとか、iDeCoの拠出額を通知する実現可能な方法はないものだろうかと思っております。時間軸という観点で言うと、決して優先するものではないのかもしれませんが、検討していくべきことは必要なのだろうなと思っております。
 最後に質問なのですが、資料2の9ページ目に戻っていただいて、5つ目ないし4つ目ぐらいのマルに相当する部分です。今回、平等ですとか公平の観点での重要性というのは多くの人に共有されまして、方向性を否定する意見はなかったと思うのですけれども、一方で、これまでの制度の下で進められてきたDCの拠出枠が縮小することへの配慮が必要ではないかというような意見等が多かったと思います。この点について、どうお考えになっているのかという見解をお聞かせいただけたらなと思っている次第でございます。
 
○神野部会長
 質問と感想でしたけれども、いただきましたコメント3点についてお願いいたします。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 まず、質問についてお答えいたします。先ほどの内田委員とも関係しますが、経過措置の話です。
 給付建てで拠出限度額のないDBに対して、拠出建てのDCは拠出段階で加入者の資産となり、加入者自身が資産運用しますので、通常の貯蓄・資産と区別し、税制上の措置の範囲と一致させるために拠出限度額があることは、今回の資料の中でも書かせていただいています。
 問題は、このDBとDCを併せて実施する場合のDCの拠出限度額で、DBでも税制優遇を受けていることを考慮し、DBに加入している者と加入していない者との間で不公平が生じないよう、企業型DCのみを実施する場合の拠出限度額、現行月額5.5万円、これから、DBに事業主が拠出する掛金相当額を控除する必要がある。こういう考え方に立って制度発足時から進めてきたわけですが、現行は全てのDBの掛金相当額を月額2.75万円と一律評価して、企業型DCの併用時の拠出限度額は残りの2.75万円となっています。
 このDBの掛金相当額は、DB・DC2法の創設を検討していた当時の厚生年金基金の給付水準の平均から評価したものでして、制度の創設当時の方法としては、一つのやり方だったと思いますが、法の施行後、DBの実態というものが分かるわけですから、それを反映することが一つの方法ではないかと考えています。この点については、法施行後5年の見直しの検討会のときにも議論になって、積み残しの課題となって今に至っているというところです。
 これを改善したいというのが今回の提案でありますが、もちろん制度の見直しに当たっては、現に現行制度下で承認を受けた規約に基づいて、企業型DCを実施している企業があり、さらにそこには従業員の皆様がいるということを重く受け止めまして、必要な経過措置はちゃんと置きたいと考えているところでして、ヒアリングにおいても各関係団体の皆様から異口同音に、温度差はあったとはいえ、その点、多くの指摘があったところです。
 また、先ほどの内田委員からの御指摘も重く受け止めたいと思っていますが、今まさに検討をしているところです。
 その他、感想という形で述べられた部分ですが、拡大する企業型DCの拠出限度額を十分活用していただくために、労使でよく御議論いただきたいところですし、それは資料2の9ページにもその旨を書かせていただいています。また、金子委員が従来から述べられているとおり、私的年金に限らず職場みんなでNISAとか財形とか、その他の資産形成があるのだから、そういう意識の醸成が必要だという点や、企業年金がない事業主こそ従業員にiDeCoの2.3万円の活用を促す、こういう取組が重要ではないかと、御指摘いただいていまして、経団連、日商もいらっしゃいますが、ぜひ事業主の皆様に期待をしたい部分であると思っています。
 基礎年金番号の御指摘をいただきました。ヒアリングのときに受託機関の皆様から懸念を示されたわけですが、企業型DC・DBを実施する事業主から関係機関に対して情報を提供する際に、本人を識別するための番号が大事になりまして、そのときに基礎年金番号を用いることを想定しています。基礎年金番号は年金制度を通じた加入者の固有の番号ですので、企業年金において適切な記録管理を徹底する観点から、平成22年に法令改正をしまして、22年4月1日以降は、当時厚生年金基金については基礎年金番号管理をお願いしていたのですが、それに加えてDCもDBも全てにおいて基礎年金番号の管理の法令改正をしたところです。
 受託機関から、まだ事業主の取組が遅れているという御指摘をいただきました。法令上の義務は事業主で、受託機関はあくまで委託を受けて、データの管理をしているにすぎないので、もちろん資料に厚生労働省が周知徹底を図ると書かせていただいた名宛て人は事業主になります。その通知を受けて受託機関から原簿への登載をしっかりやって欲しいというのを事業主に依頼する、こういう段取りかと思っています。
 以上です。
 
○神野部会長
 ほかはいかでしょうか。
 小川委員、その後、伊藤委員といきます。
 
○小川委員
 日本年金数理人会の小川でございます。よろしくお願いします。
 2回にわたるヒアリングで非常にたくさんの意見が出て、なかなかこれをまとめていただくのは大変だったと思うのですけれども、非常に分かりやすいまとめをいただいて、どうもありがとうございました。
 私からは、資料2と資料3、それぞれ1点ずつコメント的なものをさせていただきます。
 その前に、資料2の14ページのところに、手前どもの名称が出ているので、これについてちょっとだけお話ししますと、ここに書いてございますように、DBとDCを併設している場合について、その前の13ページにもゴシック体になってしまっていますけれども、できるかぎり簡素で分かりやすいものということになっていますので、前回も申し上げましたけれども、今、まさに検討の最後の段階、内部的には特別委員会というものを立ち上げて検討している状況です。DB制度の普及の観点から見ても、過度に負荷をかけるといわゆる人気がなくなって、もうやめてしまうということにもつながりかねませんので、適正な範囲内で、かつ分かりやすいものということを心がけて、何とか提案をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、コメントの方に入りますが、実は2点思っていたうちの1点は既に吉田課長からも御回答いただいてしまったのですが、同じ資料2の9ページの4点目です。先ほどの話に続くのですが、併設している場合の2.75万円を評価額が超えてしまったときの対応です。毎回のように同じことを申し上げていて、ほかの委員の方からお話が出ているように、やはりそうはいっても公平性というのは非常に重要な観点でもあります。非常に達成するのは難しいところであるかもしれませんけれども、ぜひ今一度普及の観点から粘り強く交渉をいただければありがたいかなと存じております。
 この点については以上です。
 それから、最後に資料3ですけれども、これも御説明があったのですが掛金です。いわゆるリーマンと同じような対応をするということで書いていただいているように、今回、規約変更ということが求められていまして、御案内かと思いますが、掛金に関する規約変更をすると、年金数理人がそれを確認するというのが一般的には生じてきますので、年金数理人としてもそこをきっちり見て、規約の変更、あるいは正当性というところも前回とは違ってしっかり見ることができるようになる仕組みだと思いますので、そういった観点でこれに協力していきたいと思ってございます。
 以上です。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 経過措置の話は重なりますので、私からのコメントはもう避けたいと思いますが、資料3のコロナ対応の関係で、DBの掛金弾力化について規約変更手続を絡ませますのは、労使での十分な議論と数理人の皆様の適切なチェックを期待してのものですので、何とぞよろしくお願いします。
 
○神野部会長
 それでは、伊藤委員、お待たせしました。
 
○伊藤委員
 連合です。資料2について意見、考え方を述べたいと思います。
 まず現状と課題ということで、1ページからまとめていただいていますけれども、もう一つの資料1の方で、検討を急ぐ事項ということでDCの限度額とDB掛金の弾力化の2つの論点について急ぐべきという設定がされているわけです。
 後半のDB掛金の弾力化の方を急ぐべきというのはコロナ禍の話ですから分かるのですが、DC掛金の限度額について、なぜ急ぐということの問題意識なのかが、やはりこの間、議論をしてヒアリングをしてきていますけれども、多くのこの場にいない人を含めて、世の中の企業年金がない人も含めて、なぜそういう問題設定がされていて、そういう議論をしてきているのかというのが、納得してもらえるような説明というか、そういう議論が必要なのだと思います。
 EET型にして特法税を廃止するということ自体が第一目的になっているような感じがしますが、これは厚労省が悲願のように取り組んでこられていますし、周りを取り巻く金融界と併せてそういう方向、それはもちろん受給者にもメリットがあるところではありますけれども、それが第一義なのか、多くの人の納得を得られるのか、広い視野を持ってまとめていくようにしていただきたいと思います。
 やはり第一義というのは、企業年金のない人を減らすこと、普及促進なのだと思いますから、その点についてきちんと忘れないようにしなければならないと思います。仮に今回問題設定を提案のように絞り込むとしても、それが全体の話の中でどういう意味を持つのかというところは、きちんと整理しないといけないのだと思います。
 5ページの現状と課題の中の最後の方には投げかけが2つ出てきますが、まず一番下のところです。企業年金のある者も個人型DCに加入可能となった中、自助努力に対する支援の公平、企業年金のある者とない者との公平、企業年金の普及等の観点から、全体を通じた検討が必要だというような問題設定をされています。この点について2つの問題意識を持っています。
 一つは、やはり企業年金と個人型年金の掛金の性格を曖昧にすべきではないということ。ここについては労働条件である企業年金の掛金と個人型、自助努力の掛金がトレードオフの関係になっているということで、労働条件である企業年金が置き換えられかねないということ。ここについては、とにかく強い問題意識を持っております。だから企業年金のある者とない者との公平というような考え方というのは、今言ったような問題を内在したままで個人年金の制度の見直しになるということを大変危惧しております。
 もう一つの問題意識は、自助努力に対する支援の公平という方です。こちらの方は今年の年金法改正で入った国民が自助努力を行うための支援を公平に受けられるようにする観点から拠出限度額を検討するのだという部分を意味しているのだと思います。ここは与野党合意で修正が入って、全会一致で修正議決された大変重い規定なのだと思いますけれども、今回提起のような企業年金のある者の公平とは書いていないわけで、国民と書いてあるわけだから、そういう考え方は重要だと思います。ただ、やはり老後の生活の安心を考えると、結果の平等という点も考える必要もやはりあるという点で、iDeCoの枠の考え方ということを考えなくてはいけないのだと思っております。
 2の企業型DCの拠出限度額なのですけれども、ここは一律に2.75万円とDB掛金の評価をするのを見直すという点については、理解できる点もあります。しかし、労働組合としては、DBは労働条件だから法制度や税制の改正で労働条件変更を余儀なくされるというのは、適当ではないという考え方を本当に強く持っています。特に9ページのところに労使の取組が求められるということが2つぐらい出てきますが、この現下の経済環境を踏まえて、この制度改正がもたらす影響というのは非常に懸念しております。労働組合が労働条件の維持・改善、経済的地位の向上を図ることが目的である以上、この点について強調、重視するということは理解していただきたいと思います。
 9ページのところでは、一定期間は配慮する、一定期間は拠出を超えても拠出できるようにすべきという意見があると書いてありますが、今申し上げたような考え方からいって、一定期間後には労働条件変更を強要されるようなことは適当ではないと考えております。
 それから、3の方のiDeCoの拠出限度額の方です。こちらについては、企業年金がある人のiDeCo枠を2万円にそろえるということについては、それが公平なのかということをもっと詰めていかないといけないと思っています。
 10ページの下の方のマルに企業年金加入者の個人型DC拠出限度額について公平を図りと書いてありますが、それが目指すべき最終形なのか、それとも企業年金がある人、ない人、全て含めて国内居住者、これは国籍条項はありませんから、国内居住者全体の納得感が得られるような考え方をちゃんと示していかないといけないのだと思っております。拠出限度額を見直す場合には、2万円ということであれば、その設定根拠を含めて税務当局との協議の結果とか、単に簡素にするとか、少しでも高くなればいいな、2.3万円の方がいいとか、そういうようなことだけでなく、きちんと説明していただくことが重要だと思っております。
 以上です。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 まず議論を急ぐべきという表現は不適切だったかもしれないのですが、DBの掛金の弾力化は御指摘のとおりコロナ禍の対応として、まさに議論を急ぐべき話だったかと思います。
 なぜDCの拠出限度額を今議論しているかですが、資料2の6ページを御覧いただきたいと思います。※の先の改正で云々という部分ですが、事業主拠出を3.5万円に引き下げる規約を定めることで5.5万円の枠に入ることを担保として、企業型DC加入者がiDeCoに加入可能だったのを、法改正をして参考資料2の1ページに新たな限度額表のようになっています。
 法改正の結果、左から2つ目、マル1の企業型DCのみを実施する場合で、企業型DCの事業主掛金の水色の部分と、iDeCoの自助努力のピンク色の部分が、ハイブリッド型になっていて、事業主掛金が3.5万円を超えると、iDeCoの限度額である原則2万円が逓減する、こういう形に先の法改正でなったわけです。
 ここまでは法改正で決まっていまして、具体的に今、2022年10月の施行に向けて、政令で具体的な金額を書く段取りになっています。この際、DBの今濃い水色で書かせていただいていますが、かねてより課題になっていたDBの一律2分の1の評価、月額2.75万円に今評価している部分について、これは従来から説明していますように、DB法・DC法ができて5年後の検討課題のときも、DBの実態が分かっていて、厚生年金基金の水準をそのまま引用していいのか、一律であると、簡素なやり方になるのですが、不公平を生じかねないわけでして、この部分をどうするかというのが引き続きの課題になっていたものです。
 今、改めて限度額を規定する際に、このDBの2分の1評価を含めて考えるべき環境下ですので、議論をしてはどうかという問題設定・アジェンダ設定をさせていただいている次第です。
 また、企業型DCとiDeCoの限度額の管理が必要になりますので、企業型RKと国民年金基金連合会との間で情報の連携・提供の具体的な仕組みも今回作り上げるわけです。その際に、DBの個別評価というものもできれば、併せて情報提供の仕組みに乗せられるという意味で、制度の改善を図ることができる機会ではないかということで、これまた議論をいただいている。こういう経緯でして、「急ぐべき」という表現で良かったかどうかはありますが、法の施行に当たって、かねてより課題だった部分について議論をすべきです。昔と異なって今、デジタル化社会になっています。1万2000あるDBも掛金の評価というものをすることがきると思っていますし、それを国民年金基金連合会が参照できるような情報プラットフォームを作ることで、iDeCoの限度額管理というものももちろんできるのではないかという問題意識で御議論をいただいてきたというところです。
 このハイブリッドの形が、確かに伊藤委員がおっしゃられるように、退職給付である事業主掛金と自助努力の関係が代替関係になっていて、事業主掛金が引っ込むとiDeCoの枠が広がる。こういう形が引き続き良いのかというのも含めて、もちろんこれが最終形であるとは思っていませんし、十分議論が必要と、最終ページの引き続きの検討課題にも書かせていただいているとおりでして、まずは法の施行ということで、国権の最高機関である国会で法律が通りましたので、その施行に向けて委任を受けている範囲で政令を作り、省令を作り施行をしていく必要があるわけでして、そこに当たっては忠実にやっていきますが、次に向けての議論もしていくべきではないかと思っています。
 議論のやり方としては、かねてより言われているのは、このピンク色の枠がさらに下に行けば、いわゆる穴埋め型という形になっていくわけですが、それが果たしていいかどうか、ヒアリングの中でも御議論がありました。退職給付である事業主掛金の問題と、個人の自助努力の関係性を整理する必要があると、企業年金連絡協議会のプレゼンでもありましたし、その旨、資料2の最終ページに、引き続き議論すべき課題のところに明記をさせていただいています。
 いわゆる穴埋め型を含めて個人型DCの在り方というのは今後考えていくべきだと思うのですが、退職給付制度である企業年金の事業主掛金と個人の自助努力である個人拠出の関係は、しっかり整理をした上での議論だと思っています。
 ただし、今までこの個人型DCの拠出限度額をどう設定してきたかを御説明をさせていただくと、この参考資料2の1ページを御覧いただいて、昔、DB・DCがなかった時代は、まず国民年金基金の6.8万円という水準が設定されたわけですが、この6.8万円はどのように設定したかと言うと、受けることができる税制優遇の範囲を公平にするという観点で設定をしてきた歴史がありまして、1号被保険者の拠出限度額というのは、厚生年金と、当時は厚生年金基金でしたが、企業年金のある2号被保険者の社会保険料控除のバランス、税制優遇のバランスというので6.8万円が設定されました。
 2号被保険者についてマル1、2、3の部分は昔はなく、平成28年改正でこれらが導入されたわけですが、制度発足時はマル4の企業年金のない方のiDeCoだったわけでして、この2.3万円はどうやって設定されたかと言うと、企業年金のある人が受けられる税制優遇と同じレベルを受けられるようにするということで、企業年金の事業主拠出の実績はそう高くなく、DBの仮想掛金額を見ても分かるように、非常に薄く、2.3万円で事業主拠出の大層を占めているので、そういうことを踏まえて2.3万円というものが設定されました。
 伊藤委員がおっしゃられる個人型の2万円と1.2万円のところですが、これは企業型DCにはマッチング拠出が認められていて、そのマッチング拠出と個人型DCが選択関係にあります。マッチング拠出の実態として累積9割水準が2万円なので、個人型DCが2万円と設定された次第です。今度、資料を用意しますが、いろいろな経緯の中で今このような限度額になっています。これが最終形であるとは思っていませんが、将来的にどうあるべきかは十二分に議論していくべきだと思っています。
 お答えになっているかどうかはありますが、議論は続きますので、御指摘を踏まえた資料も用意をして御説明をしたいと思います。
 
○神野部会長
 よろしいですか。
 細田委員、お願いいたします。
 
○細田委員
 商工会議所の細田でございます。これまでの議論をいろいろとまとめていただきまして、本当にありがとうございました。これまでの繰り返しになってしまうのですけれども、御容赦いただきたいと思います。
 まず、今盛んに議論されていた部分ではあるのですが、資料2の12ページの2つ目のマルのところに「引き続き検討」というような文言がございますが、商工会議所としては個人型DCの拠出限度額である月額2.3万円を引き上げてほしいと以前から申しあげておりました。これは税制改正にも絡む問題だと聞いているのですけれども、ぜひ要望をしていただきたいと考えておりますので、よろしくお願いします。
 また、企業型DCの拠出限度額である月額5.5万円の引上げについても、再三申しあげてまいりました。これも引き続きお願いしたいと思いますけれども、新たな計算根拠の設定ということも申しあげておりましたので、こちらの方も明確にして引上げに向けた検討をしていただきたいと思います。
 それから、資料2の12ページに穴埋め型の話が出ているのですけれども、こちらも商工会議所としてはぜひお願いしたいと思います。特に商工会議所の会員には中小企業が多いものですから、分かりやすさという観点から進めていただきたいと思います。
 それと最後の方に、事業主の負担という話が出てまいりました。こちらもデジタル化ですとか簡素化ですとか、今回、河野大臣になられて押印の廃止を盛んにおっしゃっておられますけれども、事業主の事務負担というのはやはりついて回ることでございますので、簡素化については引き続きぜひ進めていっていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 それから最後に、これはこの部会とは違う話になってしまうのかもしれないのですけれども、コロナにより企業体力が低下している中で、企業型の年金制度を維持していくためにも、税制の改正等によって企業に対するサポートもしていただければありがたいかなと思います。
 以上です。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 細田委員から幾つか御指摘いただきましたが、若干先ほどと繰り返し部分がありますが、参考資料2の1ページにあるこの限度額表の個人型DC月額2.3万円、まずこれの引上げというお話であったわけですが、先ほど伊藤委員に答えたとおり、企業型DCとDBの事業主掛金で受けられる税制上のメリットと同じ規模の税制優遇という意味で2.3万円になっています。
 また、仮に穴埋め型にするというのは、先ほど伊藤委員からの御指摘があったとおり、退職給付という関係と個人拠出という関係をどう整理するのかがあります。
 諸外国では穴埋め型を導入している国もありますが、企業年金と個人DCが代替的関係にならないように、個人型DCを外付けするような仕組みの国もあります。アメリカはそのようにやっているのですが、アメリカのIRA、これが個人型DCですが、個人型DCを外付けにすると、高所得者の方々だけが税制優遇を活用できる、こういう環境になってしまってはいけないので、高所得者の人はIRAの拠出限度額が逓減し、最終的には消滅するような形になっています。
 つまり、共通枠を作って穴埋め型にするやり方もあれば、企業年金と個人年金を独立な関係にしつつ、今私が述べたような調整方法を取り入れるやり方もあるので、予断を持つことなく、どういう仕組みがあるかということを税制を含めて考えていくべき課題と思っています。
 事務の簡素化の話をいただきました。デジタル化の話もありますが、これは企業年金の普及にも資する部分でありますので、積極的に取り組んでいきたいと思っています。
 5.5万円の話については、厚生年金・国民年金の水準とも絡む部分でして、これらを併せてどういう水準・設定方法があるかというのを考えていかなければいけないと思っています。今回、公的年金の財政検証の年でもありませんので、時期も含めて考えていくべき課題かとは思っています。
 以上です。
 
○神野部会長
 よろしいですか。
 それでは、井戸委員、お待たせいたしました。どうぞ。
 
○井戸委員
 井戸でございます。御説明ありがとうございました。
 ヒアリングなどにおける主な意見と、それを受けた検討課題を整理いただき、論点は非常に明らかになってきていると思います。ヒアリングのとき にも申し上げましたけれども、皆様の主張の方向性というのがほぼ一致しているのではないかと思います。
 3点あるかと思います。企業型DCとかiDeCoの確定拠出限度額について、DBごとの掛金額を反映することで公平になるということが一つ。
 2つ目は、その一方で、これまでの制度下で進めてきたDCの拠出枠が縮小することについての配慮はとても必要であるということ。
 3つ目は、見直しに当たってはシステム整備を要するわけですけれども、それによって事業主の廃止ができるといったところではなかったかと思います。
 あと、金子委員がおっしゃっていたように、資料2の16ページにありますように、DCが職場にない人こそ拠出可能見込み額を徹底的に周知するとか、あと、加入者が本当に分かりやすく実行しやすいプラットフォームみたいなウェブサイトというのが非常に重要になってくるというのを私も思っております。制度の移行に当たりまして、いろいろ様々な配慮が必要なのですけれども、それを検討いただくとともに、2022年10月にぜひ間に合うようにシステムと実務の整理をしていただきたいと思っております。
 以上でございます。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 2022年10月には、企業型DC加入者の個人型DC加入の要件緩和の施行があります。法律で施行期日が決まっていますので、ぜひこれに間に合うように、DBごとの掛金額の実態を反映した企業型DC・個人型DCの拠出限度額の見直しや、情報提供の仕組みをつくることによって、お手を煩わせている事業主証明書の廃止ができますので、実現できたらと思っています。
 ただ、一方で、DBの受託機関からは、システム整備の話もあるので、改正時期は適切なタイミングを検討すべき、事務負担を平準化できるようなことも考えて欲しいという御意見もいただきました。2022年10月施行を目指しつつ、システム整備にも一定の期間を要することを考えて、期日に間に合うように努力はしたいと思っていますし、間に合わせるべく、関係者間で実務的・技術的な検討の場というものも設置して、受託機関、RK、企年連、国基連にも御協力をいただいて検討しています。
 
○神野部会長
 白波瀬委員、大江委員、小林委員という順番で進めさせていただきますので、白波瀬委員、どうぞ。
 
○白波瀬委員
 よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 具体的に新しい指摘というよりも、どちらかというと繰り返し感と感想に近いのですけれども、企業型DC5.5万円の限度額につきまして、その根拠となるそもそも論についての確認はよいのかという点です。伊藤委員からも似た指摘がありました。実態から言うと、企業で企業年金を持っているというところは4分の1程度で、4分の3についてどうかという話はここでやらなくてもいいのかという、カバレッジについての議論です。
 あと、実態として、この限度額を超えている人たちは実際に今どれぐらいいるのかというと、たしか参考資料2でも出していただいているように、現在15.6%ぐらいの人は実際に限度額を超えているのだけれども、それは違う形で調整しているという、これが実態。この具体的な数値で出てるニーズの規模を考慮し、利用する側のニーズとうまく連携させて説明してもらった方がありがたいです。法的に準備をしなくてはいけないという現実的な問題もあり、もちろん社会保障法の裏付けは求められ、そのことは基礎の基礎なのでそこを議論してもあまり意味がないかもしれないという見方もあります。ただ、実態としての現状と、その現状に十分対応できない現状についての前置きがないと、実際に活用する側と、新たな制度の運用というところにちょっと距離感がありますと、何でそんなに急ぐのという、あまり生産的ではない議論にも集中してしまうリスクがあります。
 ですから、もちろんカバレッジ、何を優先するかということもありますけれども、カバレッジと限度額を上げることによって、制度そのものの柔軟性を上げる。これは最終的には両立していることだと思うのですけれども、やはりちょっと説明が、もちろん何で5.5万円か、今の説明を聞いても数字自体の根拠がやはりつぎはぎ型ということもございますので、そこはちょっと分かりやすく説明していただけると、私みたいに専門家でないものにとってはとてもありがたいなと考えました。
 あと、これも論理的なところで事業主負担と自己負担、自助ということなのですけれども、もちろん自助の概念そのものは、私はこれからもっと変わっていくべきと考えます。ただ、そこの中で少し、別立てで個人自己負担、自助を明確にするというのは、私はありではないかとずっと考えているところであります。もちろん富裕層のみを優遇することになりはしないかという問題も若干あるので、さらなる議論が求められると思うのですけれども。
 あと、コロナ禍にあっての対応についての弾力的対応ということについてです。リーマンショックのときは、もう待ったなしでとにかくやりましたという実績をベースにしたとのことなので、データそのものが残っていない可能性もあるようですが、それでも分かる範囲で経験を検討し失敗学というか、そこでの課題から学ぶことも必要なのではないかと思います。そのためにも、しっかり評価と事実としてのデータを残していただきたいと考えます。
 以上です。ありがとうございます。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 何度か見てもらっている参考資料2の1ページ目にDCの拠出限度額があるのですが、これを分かりやすく説明するのがなかなか難しいぐらい、企業年金・個人年金はつぎはぎを重ねています。先ほど伊藤委員にも答えたように、これがもちろん最終形ではありません。大きく持って行き方は2つあると思っていて、若干繰り返しになる部分はありますが、このピンク色の枠を下に下げていって「穴埋め型」にする方法があります。これはカナダ、イギリスがそのような形を採っていて、企業年金と個人年金の拠出限度額を一緒にして、その限度額から事業主拠出を控除した部分を個人が拠出できるようにするという税制上の公平性を確保するやり方が一つです。
 白波瀬委員もおっしゃられたように、自助努力の枠は別建てにしていくというやり方もあるのかもしれません。それはアメリカのIRAがそのような形になっているのですが、自助努力といっても、その部分、税制優遇を用意してのことになりますので、高所得者優遇にならないような一定の配慮をしながら、自助の役割、共助の役割、公助の役割ということを考えていくやり方もあるのだろうと思っています。
 カバレッジの問題も含めて、特にこのマル4の2.3万円にいる人たちを極力少なくしていく取組も企業年金の普及という観点で非常に大事になってきます。事務の簡素化の話もありましたし、5.5万円を引き上げることが企業年金の推進にも役立つという点もあるかもしれませんが、これらを含めて中長期的に考えていかなければいかない課題かと思っています。
 コロナ禍のDBの掛金弾力化の話は、リーマンのときにどういう成果があり、どういう反省点があったかというのがしっかり整理し切れないので、今回、規約変更という形で一手間絡ませていただきますが、これによって、事後検証を可能にしたいと思っての対応ですので、御理解いただければと思います。
 以上です。
 
○神野部会長
 大江委員、お待たせいたしました。申し訳ありませんでした。
 
○大江委員
 大江でございます。DCの拠出限度額の関連で、計算式であるとか、経過措置については次回以降ということで、なかなか難しいところではありますが、よい形の案が出てくることを期待しております。
 ちょっと細かい話なのですが、iDeCoの掛金の変更の件で質問をさせていただきたいと思います。現在、年1回変更が可能なのですけれども、転職等によって限度額が変わった場合は、この年1回にはカウントしないというルールかと思います。2022年10月からの企業型DCとiDeCoの同時加入ができるようになると、企業型DCの掛金の変更がiDeCoの限度額に影響を与えますし、DBの仮想掛金の方も財政再計算を5年に一度すると、iDeCoの限度額に影響を与えるようになるかと思います。これらの限度額変更に伴うiDeCoの掛金の増減というのは、年1回というところにカウントしないというような理解でいいのかというのが一つです。
 もう一つ、今回の議題にとどまるところではないのですが、何人かの方からデジタル化という話が出ていたかと思います。政府もデジタル庁をつくるというような形でデジタル化を一気に加速させるという流れがある中で、企業年金・個人年金の分野も乗り遅れることなく、紙の帳票とか紙の報告書、これを極力なくしていただきたいと思っております。積極的にというレベルではなくできれば極力なくしていただいて、制度運営の負担軽減、効率化というところに官民を挙げてこの機会に取り組まないといけないのではないかというように思うのですが、この辺りはいかがでしょうか。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 2点、御質問をいただきましたが、まず1点目の掛金変更の関係です。資料1の10ページ、関係団体の皆様からも要望があった部分でありますが、お答えすると、個人型DCは貯蓄との差別化を図るために計画的な掛金拠出を求めています。掛金の変更は年1回、つまりお金があるから今拠出をし、来月は止めて、またお金があるので翌月増やす、こういうようなことは認められていないわけです。
 ただし、現行も拠出限度額が違う区分、つまり何度も見ていただいている参考資料2の1ページにあるように、この拠出区分が今いろいろありますので、違う拠出区分に異動をされる、転職をするなどして異動された方、例えば今企業年金がなく2.3万円の拠出をしていた方がDB企業に転職をして掛金が1.2万円に変更する必要があります。
 また、その逆のケースがあって、拠出額を増やせるケースも出てきますが、こういう拠出区分の変更に伴って掛金を変更する場合は、今、年1回の掛金変更にはカウントしていません。今後、企業型DCの事業主掛金が昇給によって変わったりしたり、DBの仮想掛金額がそんなに変動しないようにしたいと思っていますが、仮に変わったときに、個人型DCの拠出限度額を変更する必要が生じます。そのときにも同じく年1回の掛金変更にはカウントをしない、こういう方向で考えています。
 今、iDeCo+が事業主拠出を増やしてくれると、自分のiDeCo枠が縮むケースがありますが、そのときもノーカウントでやっておりまして、事業主掛金と個人掛金がこういう代替関係になっているというのが伊藤委員の問題点であったわけですが、そういうところを是正する措置は入れているという部分です。
 デジタル化の推進の御質問もいただきました。今、行政手続における書面原則、押印原則、対面原則というものの見直しに向けて、政府を挙げて取り組んでいます。
 年間の届出件数が1万件以上となっている手続が、企業年金・個人年金課で20件ほどありまして、さらに1万件以下のものもカウントすると、今、全部洗い出して見直しを検討することを求められているので、洗いざらいやっているわけですが、法令上の手続だけで100は超えていて、かつ通知で求めている手続もあります。通知集はすごく厚いのですけれども、物すごい量の手続があって、その手続に印を押すことというものが多くあります。これを今一個一個洗いざらい、見直せるかどうかというものを考えています。また、企業年金・個人年金制度の場合は、行政との関係だけでなくて、ポータビリティーなどがそうですが、民民間の手続というものもたくさんあります。
 行政手続の対応は民民間にも波及する大事な問題でありまして、今、政府を挙げて、まず行政手続の電子化をという話になっていますので、政府の方針に従って、企業年金・個人年金の電子化の推進、押印の見直しもしっかり検討していきたいと思っています。
 以上です。
 
○神野部会長
 小林委員、お待たせしました。どうぞ。
 
○小林委員
 ありがとうございます。私からは資料2と資料3について幾つかコメントさせていただきたいと思います。
 まず、資料2について、今回まとめていただいた内容は、直近の関係団体からのヒアリング結果と、これまでの議論を踏まえた将来に向けた課題が整理され、様々な論点を含んでいると思いますが、6ページに記載いただきましたように、まずは来年度の税制改正に向けてDCの拠出限度額の見直しの具体化を進めていただきたいと考えます。
 その上で、次のステップとして老後の所得確保に向けた自助に対する支援の拡大や私的年金の普及拡大に向けて、特別法人税の撤廃やDC拠出限度額のさらなる引上げにつなげていくことが重要と考えております。
 当面の論点であるDC拠出限度額の見直しについては、公平性の観点を踏まえて、DBごとの掛金相当額の実態を反映するという対応方法については異論はありませんが、幾つか意見が出ていますように、今回の見直しに伴ってDCの拠出可能額が縮小する会社においては、退職金や賃金体系の見直しについて労使合意が必要になりますので、十分な移行期間が確保されるよう、配慮いただきたいと思います。
 併せて、DB掛金の評価の方法や事業主からの情報提供の方法に関しては、これも多くの意見要望が出ているように、専門家や関係機関の知見に基づいて、デジタル化を含めて実務面で簡素で分かりやすいものになるように工夫をいただきたいと思います。
 続いて、資料3の掛金の弾力化についてです。19年度の決算を既に終えていて、企業によっては既に来年度の掛金水準の決定プロセスが進んでいるところもあると認識をしています。規約変更手続にはもともと一定の時間がかかりますし、コロナの影響で実務的な負荷も増しておりますので、可能な限り早急に制度の周知、省令改正を行って、併せてQA等も公表していただくことで、特例措置を活用できる環境を整えていただきたいと思います。
 私からは以上です。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 御指摘のとおり対応したいと思います。
 
○神野部会長
 藤澤委員、どうぞ。
 
○藤澤委員
 藤澤でございます。関係団体からのヒアリングや部会での議論を踏まえて論点がかなり明確になってきたと思っています。
 今回、少し俯瞰的な視点でコメントをしたいと考えています。
 参考資料1の11ページに、これまで何度か見ている企業年金の加入者の推移が載っています。第1回の部会でも同じグラフがあって、そのときは2017年度末までのグラフだったので気づかなかったのですが、この11ページのグラフを改めて見ると、加入者数が2016年度末で底を打って少しずつ増えていると見ることもできると思っています。この間、生産年齢人口は減っていることを考えると、このグラフで見るよりも加入率、カバレッジは増えているのだと思います。iDeCoの加入者も着実に増加していることを考えると、老後所得を準備する裾野が少しずつ広がっていると見ることができると思っています。
 企業年金の普及という課題をマクロ的な視点で考えるときに、この増加のトレンドは今のペースでいいのかとか、もっと加速させる必要があるのかなどを検討したり、なぜ増加しているのかを調査することに意義があるのではないのかと思っています。恐らく底を打った理由は、厚年基金の移行や解散が一段落したという点があると思いますが、その後なぜ少しずつですが増加しているのか。これは例えば就業者数が増えているので、それでどの程度説明ができるのかという感じで、トレンドの理由を把握できるようになるとよいと考えています。仮に就業者数と企業年金の加入者に一定の相関があると考えた場合、新型コロナの影響もあって、4月以降は前年同月比で就業者数が減少しているという状況にあります。キャッシュに困っているという人や企業もあると思っています。
 資料3でDBの掛金設定の弾力化について説明がございましたが、米国やカナダでもDBの掛金を弾力化するという措置を講じています。これまではDCについて議論にはなっていませんでしたが、DCについても弾力化措置を考えることはできないかと思って少し調べたら、アメリカだと401kやIRAに関する弾力化措置を導入しておりました。具体的には今年新型コロナウイルスに罹患した人などに対して、キャッシュに困っているということがあって、中途引き出しを特例的に認めるというような措置を講じていました。
 公的医療制度やコロナ禍での生活支援策というのは、日本とアメリカでは異なるので、同様のニーズが日本にもあるかどうかまでは把握していませんが、こういった措置の必要性を検討するためにも、企業年金の普及を阻害する要因は何かを検討したり、今、世の中で起きていることが企業年金にどのような影響を与えるのかということを、タイムリーにモニタリングできる体制をつくっていただきたいと考えています。
 今、大江委員からの質問にお答えいただいたところですが、今後、デジタル化を推進する流れになると思いますので、企業年金の状況をタイムリーに把握して施策に移せる体制を整えてほしいと考えています。
 以上です。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 コロナ禍でどのような対応を諸外国がしたかという点は、OECDの企業年金担当者がこれまでは年1回集まっていたのですけれども今回は集まる機会はなかったのですが、ウェブで対策会議をやって、かつ引き続きメールで情報交換をしました。米国、カナダがDBの弾力化措置をしたとか、米国の方では中途引き出しを認めたという点も、我々は承知をしながら進めてきていたわけです。国際会議も集まらなくてもやれると、だんだん慣行が変わってきているところですが、デジタル化社会で新しい生活様式になり、我々は仕事のやり方も変わってきていると思いますので、リアルタイムでデータを集積し、タイムリーな検討ができるようにしたいと思っています。
 昔はデジタル化社会でもなかったので、DBの掛金相当額について全部一つの2.75万円の評価としてきた時代だったわけですが、掛金相当額というものを1万2000分割して評価することもできる時代になってきているのだろうと思います。そのためにはシステム整備も必要になるわけですが、社会が変わった中で、どう効率的で公平・安定的な制度にしていけるかというのをしっかり検討していきたいと思います。
 
○神野部会長
 それでは、鮫島オブザーバー、お願いできますか。
 
○鮫島企業年金連合会理事長(オブザーバー)
 ありがとうございます。企業年金連合会から、重なる点も多いのですが、気がついた点を幾つか申し上げたいと思います。
 まず、企業型DCの拠出限度額5.5万の引上げの件、お話は既に出ておりますが、資料の中で、今回はその状況にはないという記述がありましたが、これにつきましては、今後改めて検討の対象にしていただくことを強く希望しておきたいと思います。その際に、従来の厚生年金基金をモデルとした設定方法ではなくて、新たな設定方法を検討するということには賛成であります。先行き、公的年金の所得代替率の低下が予想されておりますので、老後十分な年金給付が可能となるように、新たな枠組みによる水準の設定をすることが必要だと考えております。
 次に、DBと企業型DCを併せて実施する場合のDCの拠出限度額の問題に関してですけれども、今回、より公平できめ細かい制度を実現するためのものということではあるのですが、いろいろお話が出ておりますように、やはり移行を円滑に進めるという観点で配慮が必要だと思います。拠出限度額が減少ないし拠出不可となる加入者にも、これまでの制度の下で一種の期待が生じていると思われますので、何らかの経過措置を設けることが必要だと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それから、拠出不可のケースが生じる場合、既にDCに積み上がった資産の取扱いはどうかという問題でありますが、これはヒアリングの際にもそういった話が一部出ておりましたけれども、やはり何らかの形で制度内にとどまることを可能にするような工夫ができないかと考えております。例えば現在の運用指図者のような立場かもしれませんが、そういったことについても御検討いただければと思います。
 3点目、先々DB、企業型DC、iDeCo全体を視野に入れてさらに検討を進めていくという記述がありましたが、この点については賛同いたします。ただ、これは連合会としてたびたび申し上げてきたことですが、その際には単純にDBとDCの整合性を取ること自体を目的とするのではなくて、制度創設の経緯や期待されている役割が異なることを踏まえて、制度を普及発展させていくという観点から検討することが必要だと考えております。今後の検討に当たっては、ぜひDB・DCをともに普及発展させる方向で御議論をいただきたいと、先ほどからお話を伺っておりますと、そういう道もあり得るかなと思いますので、ぜひよろしくお願いいたします。
 最後に、DBの掛金設定の弾力化措置でありますけれども、昨年度のDBの財政状況、現在の景気情勢に鑑みますと、弾力化措置をぜひ早期に講じていただくようにお願いいたします。また、先々の状況によっては、対象期間の延長も御検討いただければと思います。
 以上です。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 重なっている御質問に対してはお答えは繰り返しませんが、新たな御質問に対して御回答をさせていただくと、今回の見直しで何らかの経過措置を設ける必要があると考えていますが、仮にDBの給付水準、つまり掛金相当額・仮想掛金額が高くて、DBの掛金相当額だけでDCの拠出限度額、月額5.5万円を使い切ってしまう場合、その後、DCの拠出ができなくなるので、積み上がった資産をどうするかという検討課題は関係団体からも指摘をいただいているわけです。
 現在、DBは、加入者について、休職期間中の者のほか、合理的な理由がある場合は、加入者でとどめさせた上で掛金の拠出をしないというのを認めているのですが、企業型DCはそれがなくて、休職期間中の者についてDB同様に手当てをしているのですが、掛金なし加入者という概念を認めていません。この点を手当てする必要があるのではないかという御指摘と思っています。引き続き、拠出はないのだけれども、加入者に引きとどまって運用指図を企業型DC内でできるようにしていく。こういう形は必要になるものと思っています。
 DBの掛金弾力化につきましては、DBの財政状況、または企業の経営状況の悪化が見込まれることを踏まえて、あくまで特例的に導入するものです。財政の健全化、受給権の保護にも我々は十二分に配慮しなければいけないと思っていますので、今回コロナを受けた税や厚生年金保険料の納付猶予の特例というのが1年でしたので、そういう観点で今回DBの掛金特例も1年限りにしたわけです。
 これから冬の状況でどうなるかはもちろん誰も分かりませんので、今後の状況を踏まえて、必要に応じて対象期間の延長はあり得べしというのは資料にも書かせていただいているところです。リーマンのときも1回導入したものを1年延長したというところでありまして、状況をしっかり見極めて対応したいと思います。
 以上です。
 
○神野部会長
 臼杵委員、御発言ありますか。それから、松下オブザーバー、ありますか。
 まず、部会長代理、お願いします。
 
○森戸部会長代理
 森戸です。1つだけ質問で、あとはコメントです。
 質問は資料3の掛金弾力化のコロナの話です。方向性については何も異論はありませんが、1点、リーマンのときは規約変更が要らなかったという、この資料3の1ページにあるようなことは、規約変更なしでできてしまったという、そこがちょっと分からないというか、何か規約を変えないと大きなことだからできないのではないかと思ったのですけれども、当時できてしまったというのはどういうこと、今回はもちろん規約変更だからちゃんとさせるのだというのは、それはそれで異論はないのですけれども、逆に何で当時はできたのかというのが、ちょっと理解が足りないのかもしれないのですけれども、教えていただければというのが1点です。
 あとはコメントです。例の一番問題になっているDB・DCの限度額の調整ですが、今も考えてみれば、要するに制度があるなしだけの2つしかありませんけれども、2.75でざっくり調整しているという意味では、DBとDCの限度額は調整していると。これをもうちょっとよりフェアな精緻な制度にした方がいいのではないですかということだと思うので、その方向自体はもちろんそれはそうでしょうねと、もちろんDB・DCの加入者の実態も考えてもうちょっとフェアな制度にしていきましょうと、それは穴埋め型なるものにつながるかどうかは別として、今の段階でもそれが言えると思います。
 そのときに、何で急ぐのだという話もありましたけれども、突き詰めると、やはりその先には特法税の話なり、退職金の税制など全部含んだより大きな話があるのかなと思っていまして、つまり制度全体の税制の仕組みを含めた作りを考える議論が今後あり得るのではないか。つまりこの企業年金・個人年金だけの話ではなくて、税の枠組みの中で今後こういう議論をしていかなければいけないのかもしれない。そのときに、やはり理論的に整理をしておかなければいけない制度をちゃんとしておかなければいけないというのも、より大きな方向としては考えなければいけないのではないかなと、個人的な意見ですけれども思いました。
 実際、制度の変更をすればいろいろ影響があり得るので、もちろん経過措置を含めいろいろな検討をしていかなければいけませんが、結局そうすると、要はDBをどのように換算するのか、DCの掛金、5.5から引くときにどのように換算していくのかというのが重要な話で、それは今後数理人会の方からも考えていただいて御説明があるということなので、それを待ちたいとは思いますけれども、非常にその計算というか、枠組みが重要、実際に制度にも重要だし、理屈上も重要だと思います。
 ぜひあんまり数学ができない人でも分かるような説明をしていただいて、できれば足し算引き算ぐらいまでがいいのですけれども、分かりやすく説明していただければ、もちろん制度がどういうものかということも大事ですけれども、ぜひみんなが分かるように説明していただく、何かあまり言うと、みんなが分かる説明をしない人たちだと言っていると思われるかもしれませんが、そうではないのですけれども、ぜひ分かりやすく説明していただきたいというのを改めてお願いしたいと思います。
 そのときに、標準的なモデルみたいなのを使うのかどうか分かりませんが、転職した人はどうなるのか、ずっと会社にいる人はどうなるのかとか、制度ごと、会社ごとの特徴とか、よく転職する会社とか、みんな大体定年までいますよとか、いろいろな会社があると思うのですけれども、そういうのがどのように反映するのかしないのか、その辺はあまり関係ないのか。それから、個人でイレギュラーというのですか、転職をいっぱいするような人についてどうなるのかとか、今思いつきでばっと言っていますけれども、そういうことが何かできれば、分かるとありがたいなと思います。それは事務局というか数理人会への要望かもしれませんが、ぜひ分かりやすい説明をお願いできればと思います。
 それから、もう伊藤委員がいらっしゃらないのであれですけれども、企業年金のない人の問題、カバレッジの問題が大事だというのを伊藤委員も何度もおっしゃっていて、それはそうだと思いますけれども、ただ、それは企業年金がない人が問題なのではなくて、私は何度も言っていると思うのですけれども、老後所得保障の枠組みがないことが問題なので、それが企業年金でなければいけないかどうかという視点は忘れてはいけないのだと思います。そういうことも含めて、企業年金をやれればやってもらった方がいいけれども、しかし、企業がやれない、やらないかもしれないときに、それでも老後所得保障の枠があるべきなのではないかという視点も入れて議論をしていかないといけないのだろうと、これは前から申し上げていることではございます。
 ちょうど藤澤委員から参考資料の11ページの指摘があって、企業年金の加入者も底を打って、どちらかというと少し上がってきていると、確かにそれはそうで、でも、あれを見ると、他方で、やはり伸びているのは企業型DCのところなのです。DBはいわば厚生年金基金が終わって移行して、平行に推移している感じかなと思います。
 ですから、企業年金にもちろん期待もしなければいけないし、カバレッジの問題を考えなければいけないですけれども、企業型DCが順調に伸びてきているという実態はある。そうすると、先ほどの話に戻りますけれども、DBとDCの拠出限度額を考えるときも、せっかく企業型DCの加入者が伸びているのに、それを何かくじくようなことはしてはいけないというのは、当然視点として出てくるのだろうと思います。
 ちょっと最後は感想みたいにあっちこっちに行きましたけれども、私からは以上です。ありがとうございます。
 
○神野部会長
 事務局、何かコメントがあれば。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 1点御質問がありました。DBの掛金弾力化措置ですが、規約変更なしでなぜ行けたかというところですが、資料3の1ページ、弾力化措置(1)の部分、掛金の引上げの猶予については、引き上げるのをやめるということですので、規約に書いてある掛金額のままスライドができるわけです。このため、規約変更をしないで、1年財政再計算を先送ったり、財政検証で継続・非継続基準に抵触したのに拠出をしない、こういうことが可能だった。つまり何もしないということが、この引上げの猶予につながるという意味で規約変更がなかったわけです。
 今回は、基準に該当するのだけれども、特例を活用することで引き上げないというのを規約に明記していただくことを考えている次第です。
 あと、DBの掛金相当額については、今は、2分の1と非常に簡単、分かりやすく評価をしているのですが、なぜ2分の1なのか、理屈が非常に分かりにくい。2分の1と数字は分かりやすすぎるのですけれども、昔の設定のままであって、どうにかしないといけないという問題意識で今回やっているわけです。DBは集団単位で財政運営している、こういう特徴を踏まえてどう仮想掛金額を算出するか、これが知恵の絞りどころですので、数理人会のプレゼンを受けて、我々としての考え方もしっかり提示をしたいと思っています。
 以上です。
 
○神野部会長
 ありがとうございます。
 臼杵委員、どうぞ。
 
○臼杵委員
 特に事務局からのリプライは要らないコメントということで、3点申し上げます。
 1点目は、今ちょうど森戸先生もおっしゃったのですけれども、確かに企業年金・個人年金という違いはかなりあって、それが代替になってはいけないのでしょう。伊藤委員がもういらっしゃらないそうですが考え方としては、先ほどの公助、共助、自助ではないのですが、ある意味で公的年金の保険料も含めて、働いた対価ということでいけば全部自助というか、同じ性質を持っているのかなと、考え方として、穴埋め型をイギリスとかカナダでやられているのは、稼いだ中で企業が老後準備の掛金にしてくれなければ、それは自分で掛金にして税の優遇を受ければいいのではないかという考え方だと思うのです。
 だから、労使交渉で一つ一つ年金はどうだ、ほかのフリンジはどうだとか考えていくという考え方ももちろん大事だとは思うのですが、トータルで働いた対価が幾らあって、それを事業主が年金に回してくれなければ自分で回すというような考え方もあるのかなというのが1点です。
 2点目は、デジタル化というお話で、今回拠出限度額の計算を本人、事業主が基礎年金番号を通じて情報を提供して、それを最終的には本人が分かるようにする。国基連さん等を通じて分かるようにするということなのですが、今の話とも関係するのですが、いずれ自分の老後をある意味で一覧できるように、自分の老後の準備、公的年金、企業年金、個人年金の状況を見られるようにしていけば、逆にそれが普及にもつながるのかなという気がしていますので、そういうことも今後考えていきたいということ。
 3点目は、コロナの影響で、DBの話はずっと出ているのですけれども、DCがコロナでどういう影響を受けたかということ、特に実際の運用です。加入者が3月、4月辺りにどういう行動を取ったのかということも、きちんとこれから検証をしていきたい課題ではないかと思っています。
 以上です。どうもありがとうございました。
 
○神野部会長
 松下オブザーバー、どうぞ。
 
○松下国民年金基金連合会理事長(オブザーバー)
 国基連です。iDeCoの実施機関として簡単にコメントをさせていただきます。
 DB加入者のiDeCo拠出限度額の見直しにつきましては、見直しを実施するための実務面の課題、対応ということで、今回、改めて整理をいただいております。当連合会としましても、実務を担う関係機関の一つということで、制度の詳細を踏まえて、これも随分御意見が出ておりましたけれども、コスト削減に留意しながら、さらに今お話が幾つか出ておりましたように、穴埋め方式というような将来課題への対応ということもありますので、可能な限りこういう目線でも、視野を広げながら、一定の拡張性に留意した対応を厚労省、それから、関係機関と連携してやっていきたいと考えております。
 以上です。
 
○神野部会長
 ありがとうございました。
 ほかはいかがでございますか。よろしいですか。ちょうど終わりの時間になっておりますので、本日はここまでとさせていただきます。
 まだまだ御意見・御質問はあるかと思いますが、次回も引き続きこのテーマで議論を頂戴いたしますので、御承知おきいただければと思います。
 第1の議題の「DCの拠出限度額」につきましては、検討課題等々、今日の御議論でもありますので、次回も引き続き御議論をさせていただくということにさせていただきます。
 「DBの掛金設定の弾力化」につきましては、本日御提案いただいたものについて、反対というよりも、むしろ積極的に様々な形で進めるに当たってのアドバイスとか注意事項とか、そういうことをいただいたと思いますので、そうした本日の意見を咀嚼して、事務局におかれて省令改正などに推進していっていただければと思います。
 それでは、特に御発言がなければ予定の時間が過ぎましたので、本日の議事をこれにて終了させていただきたいと思います。
 事務局の方から連絡事項をお願いいたします。
 
○吉田企業年金・個人年金課長
 次回の部会の開催日時ですが、事務局から各委員の御都合をお伺いした上で、正式な案内をお送りいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 以上です。
 
○神野部会長
 それでは、最後まで熱心に御議論を頂戴いたしましたことを深く感謝いたします。
 これにて、第15回の「企業年金・個人年金部会」を終了させていただきます。
 どうもありがとうございました。