第133回労働政策審議会安全衛生分科会 議事録

労働基準局安全衛生部計画課

日時

 令和2年8月26日(水)10:00~12:00

場所

三田共用会議所 講堂(1階)

出席者

【公益代表委員】
    砂金伸治、熊﨑美枝子、城内博(分科会長)、髙田礼子、三柴丈典、水島郁子
【労働者代表委員】
    漆原肇、勝野圭司、袈裟丸暢子、佐々木弘臣、佐藤和幸、中村恭士
【使用者代表委員】
    鈴木重也、砂原和仁、中澤善美、中村節雄、増田将史、最川隆由
(※五十音順、敬称略)
【事務局】
    田中佐智子(安全衛生部長)、小宅栄作(計画課長)、安達栄(安全課長)、髙倉俊二(労働衛生課長)、
    木口昌子(化学物質対策課長)、和田訓(産業保健支援室長)、黒澤朗(労働条件政策課長)

議題

副業・兼業を行う場合の健康確保措置について

 

議事

 

○城内分科会長 定刻になりましたので、ただいまから第133回労働政策審議会安全衛生分科会を開催いたします。本日は公益代表委員の山口委員、労働者代表委員の門崎委員、及び使用者代表委員の矢内委員が御欠席です。本日は感染症対策のため、一般傍聴は傍聴せず、報道関係者のみの傍聴としておりますので御承知おきください。次に傍聴の方へのお願いですが、カメラ撮影等はここまでとさせていただきますので御協力をお願いします。
それでは議事に入ります。議題の「副業・兼業を行う場合の健康確保措置について」に関し、事務局から説明をお願いします。

○小宅計画課長 では、資料1、2と続けて御説明させていただきます。前回、労働者の方へのアンケート調査について御報告した中で、更にこういう点についてというような御質問がありましたので、それを集計したものです。
資料1の3ページです。ストレスチェックの受診の状況(副業の有無別)ですが、本業が50人以上の規模の事業所の方について、「受けた」と回答した割合は、副業している方が51.4%、していない方が65%でした。本業が50人未満の事業所につきまして、「受けた」と回答した割合は、副業している方が12.8%、していない方が17.8%でした。副業している方で本業が非雇用の場合ですと、本業が雇用の場合と比べて「受けた」という回答の割合は総じて低いということです。
4ページ、ストレスチェックにおける高ストレスの判定の状況です。副業の有無の別ですが、本業が50人以上の事業所では、高ストレスと判定された割合は、副業している場合が21.5%、していない場合が19%でした。本業が50人未満の事業所では、高ストレスと判定された割合は、副業している方が18.3%、していない方が18.5%でした。副業している方で本業が非雇用の場合、本業が雇用の方と比べて高ストレスと判定された方の割合が低い傾向にありました。
5ページ目、高ストレスと判定された方への面接指導の状況です。副業の有無別ですが、本業が50人以上の規模の事業所では、ストレスチェックの結果、高ストレスと判定された方の面接指導の受診状況について、「受けた」と回答した割合は、副業している方が18.8%、していない方が15.2%でした。また「面接指導を受けることを希望したが実施されなかった」と回答した割合は、副業している方が10.9%、していない方が10.8%でした。本業が50人未満の事業所では、高ストレスと判定された方で、面接指導を「受けた」と回答した割合は、副業している方が14.3%、していない方が14.7%でした。また、「面接指導を受けることを希望したが実施されなかった」という回答の割合は、副業している方が14.8%、していない方が11.6%でした。
6ページは、副業している人の割合(労働時間別)です。全体で9.7%、1か月あたりの本業・副業を含めた総実労働時間別では、「280時間~320時間未満」が19%と最も高く、「160時間~200時間未満」が5.3%と最も低くなっております。
7ページです。副業している理由(労働時間別)ですが、全ての層で「1つの仕事だけでは収入が少なすぎて生活ができない」、「収入を増やしたい」との回答が3割を超えています。
8ページは、副業している方の強い不安、悩み、ストレスの状況(労働時間別)です。本業について見てみると、「収入が低い」、「仕事の量・質」、「対人関係(パワハラを含む)」という回答の割合が高かったです。黄色の所が30%超えのところです。副業につきましては、「収入が低い」と「副業にはない」という割合が高くなっています。
9ページは、悩み、不安、ストレスを相談できる人がいるか(労働時間別)ですが、相談できる人が「いる」という方の割合は、副業している方では「320時間~360時間未満」の方が49.5%と最も低く、副業していない場合では、「280時間~320時間未満」が49.3%と最も低くなっています。
10ページです。相談環境の整備の希望の有無についてですが、労働時間別で、相談できる人が「いない」と回答された方のうち、相談環境の整備を「希望する」と回答した割合は、副業している方では「280時間~320時間未満」の方が20.1%と最も高く、副業していない方では「240時間~280時間未満」の方が21.3%と最も高いとなっております。それから、相談できる人が「いない」と回答された方のうち、相談環境の整備(勤務先とは関係のない場所で相談)を「希望する」と回答した方の割合は、副業している方では「160時間~200時間未満」の方が36.5%と最も高く、副業していない方では「200時間~240時間未満」が35.7%と最も高かったということです。
11ページ、睡眠時間について労働時間別ですが、「5時間未満」との回答について見ますと、副業している方では「360時間以上」の方が29.7%と最も高く、副業していない方では「280時間~320時間未満」の方が22%と最も高くなっています。また、睡眠時間が「5時間~6時間未満」との回答について見ますと、副業している方では「280時間~320時間未満」の方が39.3%、副業していない方では「240時間~280時間未満」の方が42.4%と最も高くなっています。
12ページ、病気による休みの状況(労働時間別)ですが、過去1年間に病気のために仕事を「休んだことがある」という回答の割合は、副業している方では「200時間~240時間未満」の方が27.2%と最も高く、副業していない方では「160時間~200時間未満」の方が25.6%と最も高くなっています。
次に、健康診断の受診状況(労働時間別)ですが、一般健康診断を「受診した」という割合は、副業している方では「200時間~240時間未満」が73%と最も高く、「80時間~120時間未満」が39.1%と最も低く、副業していない方で「160時間~200時間未満」が84.8%と最も高く、「80時間~120時間未満」の方が48.7%と最も低くなっています。
14ページは、健康診断の有所見の状況(労働時間別)です。「所見あり」という回答は、副業している方では「240時間~280時間未満」が41.9%と最も高く、副業していない方では「280時間~320時間未満」の方が44.3%と最も高くなっています。
15ページ、健康診断後の就業上の措置の状況(労働時間別)です。有所見となった方への措置の状況は、副業の有無や労働時間に関わらず、「何も対応を受けていない」という回答の割合が最も高く、「保健師等による保健指導」という回答の割合が次に高かったということです。
16ページは、ストレスチェックの受診の状況(労働時間別)です。「受けた」という回答の割合は、副業している方では「160時間~200時間未満」の方が38.8%と最も高く、「80時間~120時間未満」が18.5%と最も低くなっています。また、副業していない方については「160時間~200時間未満」が56%と最も高く、「80時間~120時間未満」の方が24.7%と最も低くなっています。
高ストレス判定の状況です。労働時間別に見ますと、「高ストレスと判定された」と回答した割合は、副業している方では「280時間~320時間未満」が30.1%と高く、副業していない方では「280時間~320時間未満」の方が34.2%と最も高くなっています。
18ページ、高ストレスと判定された方への面接指導の状況(労働時間別)ですが、高ストレスと判定された方の面接指導の受診状況について、「受けた」という回答割合は、副業している方では「40時間未満」が24.3%と最も高く、「280時間~320時間未満」の方が12.2%と最も低くなっています。副業していない方では「40時間未満」の方が20.6%と最も高く、「240時間~280時間未満」の方が12.3%と最も低くなっています。それから、「希望したが実施されなかった」という回答割合は、副業している方では「360時間以上」が21.4%と最も高く、していない方でも「360時間以上」の方が15.6%と最も高くなっています。
19ページです。副業している方の健康診断の受診者数(就業形態別)で掛け合わせております。これについては、細かく区分しますと回答数が2とか3とか小さい所もありますので、ここは参考としていただければと思います。
それから、収入の平均というようなお話もあったのですが、調べましたところ、極端に高額のお答えをされているような方がおられて、そのために数字が引き上がってしまっているようなところがありますので、それが間違いの回答なのかどうかが分からず、いずれにしても少し数字的にかなり跳ね上がってしまうので、今回は収入の平均値で出しておりません。資料1については以上です。
資料2です。副業・兼業の促進に対するガイドラインをこのようにしてはどうかということを、前回、御議論いただいたわけですが、その中でこういった御意見があったということをまとめています。
1つ目は、実質的に雇用労働である場合について、具体例を記載してはどうか。2つ目は、相談しやすい環境の整備について、記載を充実すべきではないか。3つ目は、副業・兼業が使用者の指示による場合の記述が分かりにくい。4つ目は、労働時間の把握の方法については、申告以外の方法も考えられるのではないか。5つ目は、使用者の指示による副業・兼業は、関連企業だけではなく、学校法人等での兼業もある。複数の兼業先がある場合、それらの労働時間を本業の企業が全て把握することは難しく、実態としては自己申告にならざるを得ないのではないか。6つ目は、副業・兼業先が偽装請負であったということがないように、ハローワークにおいて適法性等の確認作業を経て公開されている求人の中から副業・兼業先を選択するということができるようにする必要があるということです。
今後の議論すべきことについて、以下の御指摘がありました。3ページですが、一般定期健診及びストレスチェックの対象となる労働者について、本業と副業・兼業先の労働時間を通算するという考え方のほかに、事業場において同種の業務に従事する労働者の1週間の所定労働時間のおおむね2分の1以上の方に対象を拡大することも検討対象になるのではないか。それから2つ目は、副業・兼業の際の健康確保については、自社の影響力がおよぶ範囲について実施すべきであって、本業と副業・兼業先の労働時間を通算するというようにするべきではないのではないか。3つ目、有償ボランティア等も、議論の対象とするのか。4つ目は、生活のために副業・兼業をせざるを得ない方の中には、雇用でない形で就労している場合もあって、このような方の安全衛生の確保が新しい課題になってくるのではないかという問題です。5つ目が、事業所にハザードの除去を求める従来の安全衛生規則には限界があり、今後は他法令の事例も参考にして、働いている方にハザードがあることを伝えていくことも必要になってくるのではないかという御指摘がありました。
次のページですが、ガイドラインについて、先ほど御紹介しました御意見を踏まえて、赤字の部分で修正の案をお示ししております。まず1つ目ですが、実質的に雇用労働である場合には、形式的な就労形態に関わらず、労働安全衛生法等が適用されること。違法な偽装請負の場合ですとか、請負であるかのような契約としているが実態は雇用契約だと認められる場合等においては、就労の実態に応じて、労働基準法、労働安全衛生法等における使用者責任が問われるということです。
2つ目ですが、労働者が労働時間等を申告しやすい環境を整備する観点から、副業・兼業に係る相談、自己申告等を行ったことにより、当該労働者について不利益な取扱いをすることはできないこと。自己申告ということですと、やっている途中というようなイメージになるのかもしれないのですが、相談ということで、始まる前も含めてという趣旨です。
6ページです。使用者の指示により副業・兼業を開始した場合は、当該使用者は、原則として、副業・兼業先の使用者との情報交換により、それが難しい場合は、労働者からの申告により把握し、自らの事業場における労働時間と通算した労働時間に基づいて、健康確保措置を実施することが適当である。
次に7ページです。求人の関係の御指摘を踏まえたものですが、労働者が副業・兼業先の求職活動をする場合には、特に時間外労働の有無等の副業・兼業先の情報を集めて適切な就職先を選択することが重要であること。なお、適切な副業・兼業先を選択する観点からは、ハローワークにおいて求人内容の適法性等の確認を経て受理され、公開されている求人について求職活動を行うこと等も有効であるということを盛り込んだらどうかということです。以上です。

○城内分科会長 ありがとうございました。本件について質問等、発言のある方は挙手をお願いいたします。いかがでしょうか。中村委員、お願いいたします。

○中村(節)委員 資料2の6ページ、1つ目の黒ポツについての意見を述べたいと思います。使用者の指示については、副業・兼業を実施することのみの指示と、副業・兼業先の事業者までを指定して副業・兼業を実施する指示とでは、使用者が副業・兼業先に関与可能な範囲や程度が異なると考えます。副業・兼業先の使用者との情報交換を原則として考える場合は、使用者が事業者を指定した上で副業・兼業を指示する場合に限定すべきと考えます。以上です。

○城内分科会長 ありがとうございました。そのほか御意見等ありますか。勝野委員、お願いいたします。

○勝野委員 資料2の3ページの下から2番目のポツの中で、今後の検討課題になるかと思いますが、雇用でない形での就労者の問題、また、5ページの赤字の部分では、偽装請負等の場合での安全衛生の確保についての記述があろうかと思います。前回の分科会の際に分科会長からも、今後の課題ということで、雇用類似の方たちの安全、健康、衛生をどう守っていくのかという点についての問題提起を頂いたと考えております。この点については、非常に大切な点だと私自身は理解しております。例えば、建設業の場合で申しますと、2017年に建設工事従事者の安全健康確保推進法が施行されました。その中で、現場に従事する者を雇用された労働者だけでなく、いわゆる一人親方の方も含め、建設工事従事者という概念を新しく法律の中で規定し、法律やその法律に基づいて制定された基本計画の中で、安全衛生法に基づく最低基準の遵守徹底等が求められている、このような法律ができております。
これにより、建設業の中では、現場ごとに安全と健康の確保を進めるという意味からも一定の成果が出てきていると思っております。こうしたことについて、産業別の対処だけでなく、今後、こうした雇用類似の方たちがこれまで以上に増加していくことを考えますと、労安法の中でも、しっかりと雇用類似の方たちの安全と健康を守ることが何らかの形でできないかという視点での論議を今後の検討課題として進めていくべきではないかと思っております。以上です。

○城内分科会長 ありがとうございました。鈴木委員、お願いいたします。

○鈴木委員 今、勝野委員から大変重要な御指摘があったと思っております。資料2の8ページでフリーランス等の新しい働き方への対応、すなわち雇用類似の問題が今後の検討課題として、引き続き検討を行う必要性については十分に理解をするところです。
フリーランスあるいは雇用類似の方は相当多種多様なタイプがあると思っております。今、御指摘のありました建設工事の非雇用の従事者に対する安全対策については、これまでの歴史の中で、公労使が協力をしながら努めてきました。その御努力について関係者の皆様には改めて敬意を表したいと思います。ただ、建設工事の場合、下請業者の方々は、同じ現場で働き、見える形での安全上のリスクが分かるので、その中で予防策を比較的とりやすい面があるのではないかと思っております。
一方で、場所も離れた中で様々な請負を受けるケースでは、労働時間の問題や様々な負荷の話など、それ以外の要素が多種多様にあるのではないかと考えているところです。前回、中澤委員から非雇用の方を副業・兼業の議論の中に入れることについて違和感を覚えるという趣旨の発言があり、私も思いを同じくしているところです。
仮に、非雇用者の健康診断の受診率が低い場合であっても、健康保険組合以外の、例えば、国民健康保険などの様々な保険者が健康診断を実施してると思います。その受診率が低いということであれば、まずは、実施者がそれぞれ受診勧奨する、周知を行うことが考えられるべきではないかと思います。
また、雇用類似者、フリーランスの方が健康を確保していく上で、時間把握が必要だという議論もあるかと思いますが、では、果たしてそういったフリーランスの方々が自身の時間把握をされたいかということも、よく分からないところもありますし、発注者が実際に時間把握を、請負をお願いしている方に行うことが果たして現実的なのかということも、併せて検討していかなければいけない課題だと思っているところです。
敷衍して申し上げますと、パートの方の健康確保措置の話もこれまでの議論の中で出てきたかと思います。繰り返しの話になって大変恐縮ですが、雇用の世界では、事業者も然ることながら、産業医の先生が深く関わって対応していくというスキームになっています。前回の法改正において、産業医の先生の役割が広くなり、一方で、産業医の先生方の人数が、決して十分でないことも考えないといけないと思っております。
このパートの問題やフリーランスの問題は、何か事業者の新たな措置を考えるというよりは、例えば、地域産業保健センターを活用してもらえるような方策を考えたり、あるいは国全体で労働者の安全、健康に対する意識を高める方策も考えていくことが大切ではないかと思っております。雑駁なコメントで申し訳ありませんが、以上です。

○城内分科会長 ありがとうございました。中澤委員お願いいたします。

○中澤委員 資料1のデータの関係で感想を申し上げたいと思います。前回の調査結果の御説明と同様に、ストレスチェックや、健康診断との関係などを含めて、健康確保措置に関しては副業している、していないに関わらず、傾向は余り変わらないのではないかという印象を持っております。
その上で1つ質問をしたいのですが、ストレスチェックあるいは健康診断の受診状況は、そのような機会が提供されているということではなく、当事者が受診されているか否かの回答と受け止めてよろしいのでしょうか。

○城内分科会長 事務局から回答はありますか。

○和田産業保健支援室長 健康診断については、労働者への聞き方としては「あなたは、会社が実施する一般健康診断(人間ドック等を含む)を受診しましたか」ということでお聞きしていますので、会社がそういった健診の受診機会を提供していることを前提に質問しております。
ストレスチェックも同様で、聞き方としては「あなたは、会社が実施するストレスチェックを受けましたか」と聞いておりますので、一般健診、ストレスチェック両者とも、一応、会社が実施するものを想定しております。以上です。

○城内分科会長 よろしいでしょうか。

○中澤委員 ありがとうございます。そうすると健康診断は、全ての事業場に義務づけられているわけですが、ストレスチェックの場合は、小規模の事業場については努力義務という状況になっているかと思いますので、ストレスチェックの機会の提供のない事業場に雇用されている方の回答は違った意味合いの回答も入っていると理解してよろしいでしょうか。

○和田産業保健支援室長 基本的には会社が実施するものですが、そのようなものも入っている可能性、答える労働者の方がそのような理解をすれば、そういったものも入っている可能性はあります。

○城内分科会長 順序が逆になりましたが、中澤委員の前の委員の皆様からの御発言に対して事務局からありますか。よろしくお願いします。

○小宅計画課長 今後の検討課題やガイドラインに盛り込む内容の御意見については、そういった点も踏まえて、今後、議論していただければと思っております。それから、内容確認的なものが最初にあったかと思いますが、会社の指示により始めた場合は、そういった御指摘のあったような形であり、開始した後に会社に通知があって、そのようなことを把握したことを指しているものではないと考えております。

○城内分科会長 漆原委員、お願いいたします。

○漆原委員 資料2の8ページの最後のフリーランスについてです。公益の先生からも御発言がありましたが、今の安全衛生法の規定では対処できないところを今後どうするのかということだと思います。フリーランスについては安全衛生分科会だけではなく、ほかの部局においても検討が行われると聞いており、各局での検討を総合的に見ながら、改めて今後の安全衛生に関する新たな検討課題となるのだと理解しております。
また、鈴木委員から、地域産業保健センターを活用するなど、地域のリソース活用した健診について御意見がありました。我々としても、そういった既存のリソースを活用すること自体を否定するものではないですし、副業が非雇用であったとしても本業が雇用であれば、健診の結果に不安があった場合、本業の産業医に健康相談できるといった、今の制度の範囲内で対応できる部分もあります。また、新たにほかの部局においても議論される内容が積み重ねられ、その結果、フリーランスの保護に関する提起があれば、それを受けて安衛法上どうするかという対応ももちろん必要なのではないかと思っております。それでよろしいかどうかを事務局に確認いただければと思います。

○城内分科会長 事務局からお願いします。

○小宅計画課長 このような検討課題について議論すべきだという点については、皆様が一致している御意見かと思います。そういった中で幅広く御議論していただければと思っております。

○田中安全衛生部長 フリーランスをはじめとした新しい働き方への対応については、今後の議論の課題として挙げておりますが、今、委員の皆様からお話がありましたように、安全衛生の問題だけでなく、厚生労働省の中でもそのほかの問題と含めて全体的に、また政府の中でも全体的に、縦割りになることなく議論をしていこうという流れになっておりますので、ここでの議論についても当然のことながら、そのような動きがどうなのかを見ながら議論をしていただくことになると思います。
目的はこのような新しい働き方をしている人の健康や安全をどのようにしたら一番守られていくのかということですので、それは、どのような範囲の人にどのような仕組みを、かつ、どのようなやり方でやっていくのか、義務なのか、いろいろな形を奨励していくのか、様々な選択肢があろうかと思いますが、そのようなことも含めて、今後、御議論していただければということで挙げております。

○城内分科会長 そのほか御意見等ありますか。砂金委員、お願いいたします。

○砂金委員 前回、今回と、この実態把握等の内容についてのデータ等を拝見しているところですが、今、おっしゃられたように、いろいろな働き方の種類が出てきたり、例えば、健康確保やストレスチェックなど、バックネットとして、国としてどのような考え方で進めるのかを議論するときに、この分析結果を拝見すると、先ほど委員の皆様が、マクロに見るとそれほど違いはないけれどもということもおっしゃっていたのかと思います。
ただ、これが、例えば、年齢層によってどうなっているのかと、少しお年を召した年代の方と若手の方では、健康に関する考え方やストレスに関する考え方、働き方に関する考え方が、やはり若干違うのかなという印象を受けています。分析をこれから続けるのかどうかもあるのですが、そういったところの発想をもって、今後の検討課題に取り組んでいただくと、より良い政策提案・提言ができるのではないかという感じはいたします。以上です。

○城内分科会長 ありがとうございました。そのほか御意見等ありますか。熊﨑委員お願いいたします。

○熊﨑委員 御説明ありがとうございます。これまでの様々な委員からの御意見と被るところもあるかと思いますが、資料の直ちに取り組む事項として、労働者が使用者に対して他の使用者の事業場の業務量、健康状態を報告することは有効であると書いてありますが、安全配慮義務の点から考えたときに、労働者から報告を受けると、危険の予見義務、予見可能性が出てくるのではないかと考える事業者もいるかと思います。そうしたときに、むしろ、言ってくれるなという事業者も出てくる可能性があるのではないかと、少しうがった見方ですが、思われます。
このガイドラインの見直しでは、申告した労働者に不利益が被らないような規定が検討されるとのことですが、申告できない状況にあった方々にも健康で、かつ安全に仕事をしてもらえるような仕組みを考えていただけたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○城内分科会長 ありがとうございました。そのほか御意見はありますか。髙田委員、お願いいたします。

○髙田委員 今までの御説明と少し被るところがあるのですが、資料1の14ページに健康診断の有所見の状況と出ており、これは労働時間別に分かれておりますが、有所見の状況は年齢によって健診の省略項目等がありますので、この労働時間別に年代構成で差がなかったのか、副業等の有無で比較するのであれば、その辺のデータがないと、なかなか判断しづらいところがあります。先ほど、委員からも御意見が出ていたと思いますが、その辺の基礎情報を付けた形でお示しいただけると有り難いと思います。それが1点です。
あと、もう一点は、先ほどからの議論にも少し被るところがあるかもしれませんが、資料2の6ページの2ポツ目です。使用者が労働者の副業・兼業を認めている場合に、「心身の不調があれば都度相談を受けることを伝えること」と書いてありますが、これを実施するに当たっては、やはり、相談を受けやすい体制づくりが必要になってくると思います。これは企業内の産業保健スタッフ等でできるようにするのか、若しくは、先ほど出てきましたが、産保センターなども含めて活用していくのか、きちんと相談できるような体制づくりは必要だというところが気になっております。この辺をどのようにお考えなのかを聞かせていただければと思います。私からは以上です。

○城内分科会長 この辺のところで、事務局からありますか。

○和田産業保健支援室長 まず、年齢別の集計については、労働者調査においては年齢を取っておりますので、そういったことを踏まえて、どういった集計ができるかどうか、委員の先生方からの御指摘を踏まえて検討したいと思っております。

○小宅計画課長 若干の補足ですが、前回の資料で、この調査項目とのクロスで取っているわけではありませんが、どのような年齢構成別に回答があったかということについては、前回の資料に付けており、男女計では60歳以上の方が11.4%、50歳代が27.5%、40歳代が29.5%、30歳代が20%、20歳代が10%、20歳未満が0.7%というような年齢構成で、御回答を頂いておりました。クロスではありませんが、全体としてはそのような形でした。
2点目については、もちろん、ガイドラインでこのように書くことになれば、それは実行していただくように行政サイドとしても、産保センターでのサービス提供をしていますという周知や、あるいはガイドラインがこのようになりましたという周知などをして、労働者の方にも企業の方にも取り組んでいただけるように努めてまいりたいと思っております。

○城内分科会長 そのほか御意見ありますか。三柴委員、お願いいたします。

○三柴委員 事務局におかれましては、丁寧な御準備に敬意を表したいと思います。前にも申し上げたのですが、労働安全衛生の政策というのは、基本的には職域のリスク管理をどう果たすかということだと思います。その際、健康という問題が新たな課題になってきているけれども、これは一律にリスクと捉えていいかが微妙な課題でもあります。したがって、組織と個人の自己決定という考え方も基礎に置かなければいけないのではないかと申し上げました。
他方で、今、将来を見据えて副業・兼業・フリーランスの推進を図ろうという方針が内閣として出ており、労働側から以前、そのようなことを公的に推進するのかどうか、という御意見があり、私も悩んではいましたが、将来を考えると、準備はしておかないといけないと思われます。そうすると、安全衛生政策は安全衛生政策でやっておくべきことが出てくるわけですが、使用者側には、やはり副業・兼業・フリーランスを指示した場合に加え、その支配管理の可能性や情報を持っているか、そのような観点でやるべきことが出てくるのだろうと思います。
もちろん、労働者側もきちんと自己決定する、情報をとっていく、労働能力を高めていくなど、いろいろ課題はありますが、使用者側も指示した場合、プラスアルファの管理可能性等に伴う責任は考えなければいけないと思います。そうすると最終的には、個々の事業者が、労働者に対して自己申告なら自己申告の機会を提供するところまでは、恐らく、使用者側に求めていかざるを得ないのではと思っております。以上です。

○城内分科会長 ありがとうございました。そのほか御意見等ありますか。水島委員、お願いいたします。

○水島委員 内容については、事務局の御提案並びに各委員からの御意見に付け加えることはありませんが、実務的な確認をしたいと思います。資料2によりますと「ガイドラインの見直しが改正労働者災害補償保険法の施行に合わせ」ということです。これは来週施行ですから、具体的に参考資料でお示しいただいているガイドラインに加える形で御準備いただいていると推察いたします。
これらの項目が、どの辺りに、恐らく、3.企業の対応、あるいは4.労働者の対応のところになるかと思いますが、これらの追加や改正が現行のガイドラインのどの辺りでなされるのか、現在の御準備状況を、お聞かせいただければと思います。以上です。

○城内分科会長 事務局からお願いいたします。

○小宅計画課長 今、御指摘がありましたように、参考資料でお付けしておりますガイドラインの中に追加する、一部書き換えるということで考えております。お話がありましたように、このガイドラインには、「企業の対応」と「労働者の対応」とがあります。労働者の方に取り組んでいただく事項としては、7ページにある2つの点に留意していただきたいということです。ほかの項目については、企業の対応に関連するところに入れ込んでいこうと思っております。それから、実質的に雇用である場合については、総論の部分に関連する記述がありますので、そこを拡大するような形で盛り込むことを考えております。

○城内分科会長 ありがとうございました。そのほか御意見等ありますか。よろしいでしょうか。増田委員、お願いいたします。

○増田委員 先ほどまでの議論の中で、産業医の役割についてのお話がありましたので、少し申し上げたいと思います。副業・兼業、ひいてはフリーランスの方の健康確保措置における産業医の果たすべき役割について、期待されているのは有り難いことだと思いますが、一方で、御承知のとおり、産業医が活動できる対象範囲には人数制限があります。50人以上は選任する、1,000人を超えたら専属の者を置く、3,000人を超えたら2名を置くことになっています。先ほど、どなたかからフリーランスの方は労働者に準じて対応をとるというご発言がありましたが、それをするとなりますと、産業医をもっとたくさん雇わなければいけなくなります。
私は産業医ですが、産業医として留意している点として、自分の活動対象範囲はどこまでかということがあります。そこを明確にすることは法令遵守の観点と、自分自身の活動範囲、会社から給料をもらって仕事をしていますので、業務の活動範囲を明確にしなければいけない。ですので、求められるがまま、言われるがまま仕事をするのはなかなかできないという事情があります。今後、そちらの方向に議論が進んでいってもいいと思うのですが、是非、産業保健スタッフ、特に産業医は選任の要件が厳しく課せられておりますので、そこを併せて御検討いただければと思います。
もう一点、お伺いしたいのですが、結局、副業・兼業者の健康確保措置は、いわゆる本業なのか、副業・兼業側でやるのかがどうしても見えてこないので、これは今後、ガイドラインで具体的に例示等で示されるものなのかをお伺いできればと思います。それが決まらないことには、どちら側の産業医が担当するのかが明確になってこない。ある程度、連動するものだと思っておりますので、確認させていただけたらと思います。

○城内分科会長 事務局からお願いします。

○小宅計画課長 今回のガイドラインの中ではどちらがやるかという御質問だと思いますが、今回のガイドラインは、まず、現行の法的枠組みの中でやるに当たっての留意点などを拡充したものであり、例えば、今後の検討課題として、資料2の8ページにありますように、健康確保措置の対象労働者をどう考えるか、本業・副業の定義をどう考えるかといったところについては、今後、議論していくということですので、このガイドラインにおいては現行の仕組み、すなわち、一定の要件、例えば、健診ですと同種の労働者の4分の3以上の労働時間の方についてやっていただくという仕組みになっておりますので、その現行の仕組みを前提としたものとして取り組んでいただければと思っております。

○城内分科会長 よろしいでしょうか。そのほか御意見等ありますか。よろしいでしょうか。それでは、特に赤字の部分で、このようなことを入れていきたいということについては、皆様の合意を頂いたということで理解したいと思います。これで全ての議題を終了いたしました。本日も長時間にわたり熱心に御議論いただき、ありがとうございました。最後に事務局から連絡事項をお願いします。

○小宅計画課長 次回については、別途、御連絡をさせていただきたいと思います。

○城内分科会長 それでは、本日の分科会はこれで終了いたします。なお、議事録の署名については、労働者代表は佐藤委員、使用者代表は最川委員にお願いしたいと思います。本日はお忙しい中、ありがとうございました。