第19回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

令和2年7月29日(水) 13:28~17:57

場所

オンライン開催(航空会館7F大ホール(701+702+703会議室))

出席者

委員

議題

  1. 開会
  2. 議事
    1. (1)国立研究開発法人国立国際医療研究センターの令和元年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価について
    2. (2)国立研究開発法人国立がん研究センターの令和元年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価について
    3. (3)その他
  3. 閉会

配布資料

国立研究開発法人国立国際医療研究センター

資料1-1 令和元事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 令和元事業年度 業務実績概要説明資料
資料1-3 令和元事業年度 財務諸表等
資料1-4 令和元事業年度 監査報告書
資料1-5 第2期中長期目標期間 見込評価書(案)
資料1-6 第2期中長期目標期間 見込評価説明資

国立研究開発法人国立がん研究センター

資料2-1 令和元事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 令和元事業年度 業務実績概要説明資料
資料2-3 令和元事業年度 財務諸表等
資料2-4 令和元事業年度 監査報告書
資料2-5 第2期中長期目標期間 見込評価書(案)
資料2-6 第2期中長期目標期間 見込評価説明資料

議事

第19回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室十鳥企画調整官
 定刻となりましたので、ただいまから第19回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会を開催いたします。今回は新型コロナウイルス感染症対策の観点からWeb会議とさせていただいております。
 委員の皆様には、大変お忙しい中、お集まりいただき誠にありがとうございます。議題に入るまでの間、議事進行役を務めさせていただきます医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室企画調整官の十鳥と申します。よろしくお願いいたします。本日は福井委員が15時30分頃に御退席される予定、中野委員が14時頃から御出席される予定である旨の御連絡を頂いております。また、前村委員からは御欠席の御連絡を頂いております。出席の委員に関しましては、過半数を超えておりますので、会議は成立することを御報告いたします。それでは本部会の開催にあたり、医政局研究開発振興課長の伯野より御挨拶いたします。

○医政局研究開発振興課伯野課長
 医政局研究開発振興課長の伯野です。本日は大変御多忙の中、本会議に御出席、御参加いただきまして誠にありがとうございます。また、3週にわたりまして大変長い時間熱心に御議論いただきまして心より感謝を申し上げる次第です。本日はがん研究センターと国際医療研究センター、この2つのNCについて御意見を頂きたいところです。是非御専門のお立場からそれぞれ忌憚のない御意見を頂きますようお願い申し上げまして、簡単ではありますが私の冒頭の挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。

○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室十鳥企画調整官
 ありがとうございました。マスコミ関係者におかれましては、これ以降のパネル撮りは御遠慮いただきますようお願いいたします。なお、国立高度専門医療研究センター担当審議官の大坪は公務の都合により欠席であることを御連絡いたします。
 本日のオンライン会議の進め方について説明いたします。マイクの設定についてですが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。御発言の際はZoomサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックいただき、座長の指名を受けたあとにマイクのミュートを解除し御発言をお願いいたします。また、御発言の際には必ず冒頭にお名前を、また資料を用いて御説明される場合には資料番号と該当ページを明言いただきますようお願いします。さらに御発言終了後はマイクをミュートにしてくださいますようお願いいたします。なお、進捗管理のため、事務局よりZoomサービス内のチャット機能を利用して、経過時間等を画面に表示させていただきますので、御承知おきいただけますようお願いします。
 続いて本日の議題を御説明いたします。本日は国立国際医療研究センター及び国立がん研究センターにつきまして、「令和元年度業務実績評価」及び「中長期目標期間見込評価」に係る意見聴取を行います。議事の流れとしては、評価項目ごとに年度評価及び見込評価の順に法人から続けて説明を頂いた後、委員の皆様から御意見、御質問を頂きたいと存じます。
 それでは本日の会議資料の御確認をお願いします。委員の皆様のお手元に議事次第、資料1-2、1-4、1-6、2-2、2-4、2-6、委員限りの非公開資料として参考資料5を配布しております。その他の資料に関しましては、事前にお知らせいたしましたURLより閲覧していただくようお願いします。評定記入用紙につきましては、様式の電子媒体を送付しておりますので、こちらに御記入いただき、8月5日までに事務局に御提出をお願いいたします。
 資料の閲覧方法について御不明な点がございましたらチャット機能で事務局までお申し付けください。事務局からの説明は以上ですが、何か御質問等ありますでしょうか。それでは以降の進行は祖父江部会長よろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。本日は大変お忙しいところ、また、このようなコロナの蔓延の状況でお集まりいただきまして大変ありがとうございます。それでは早速、今御案内がございましたように、国立国際医療研究センターの令和元年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価について、御議論をお願いしたいと思います。最初に国立国際医療研究センターの法人理事長から、まずは全体の御挨拶を頂きたいと思いますので、國土先生よろしくお願いします。

○国立国際医療研究センター國土理事長
 祖父江先生ありがとうございます。一言御挨拶申し上げます。本日はお忙しい中、我々、国立国際医療研究センター(NCGM)の業績評価を頂きありがとうございます。昨年度は第2期中長期目標期間6年の5年目、そして私が理事長に就任して3年目にあたります。この間、私どもはNCGMに課されたミッションを常に忘れず、総合医療を目指す総合病院と研究所、国際医療協力局、ACC、看護大学校が協力して研究開発、人材育成、そして国際協力を目指してきました。また、昨年度は独法化後初めて経常収支が3.3億円の黒字となり、100億円を超える累積欠損金を少しずつではありますが、返済できる体制を構築することができました。
 本年1月末に始まりました新型コロナウイルス感染症流行については、感染症危機に対応するナショナルセンターとして、日本への帰国者のPCR検査やクルーズ船のクラスター対策、中等症・重症患者の高度医療、新宿区と協力した地域の医療提供モデルの立ち上げ、新型コロナ感染症患者のレジストリの拠点、既存薬、新薬の開発、回復者血漿療法など新型コロナウイルス感染症に関わる全方向業務と研究開発に関わってまいりました。この後、業務実績につきまして、各担当より詳しく御説明申し上げます。本日はよろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に分かりやすく御説明いただいたと思います。それでは、評価項目の1-1及び1-2の「研究開発の成果の最大化に関する事項」に関する業務実績及び自己評価について議論したいと思います。まず、法人のほうから年度評価及び見込評価の順に御説明いただきまして、その後に質疑応答という流れで進めていきたいと思います。法人からの説明時間は20分、質疑応答時間は18分となっております。できるだけ簡潔に御説明いただけると有り難いと思います。終了時間の1分前と終了時間に事務局のほうからチャット機能でその時間をお知らせいたしますので、御説明は時間内でお願いします。それではまず法人のほうから御説明お願いできますでしょうか。よろしくお願いします。

○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 満屋でございます。研究所長を務めております。まず、6ページの令和元年度の取組状況です。評価項目1-1を御覧いただきたいと存じます。自己評価は平成29年度、30年度と同様Sです。中長期目標の内容は、疾病に着目した研究、均てん化に着目した研究、国際保健医療協力に関する研究の3点でございます。目標と実績との比較を御覧いただきますと、感染症その他の疾患の解明と医療推進、それから原著論文数それぞれ達成度200%、141%となっておりまして、定量的指標で見る限り、まずまずではないかと自己評価しているところです。
 次に7ページを御覧ください。評価項目1-1の研究・開発に関する事項です。今回はB型肝炎、そしてHIV/エイズ、そして新型コロナウイルスに対する対応の3点を重点的な研究開発の推進の結果として御報告させていただきます。まず、7ページを御覧いただきますと、新規B型肝炎治療薬候補薬のE-CFCPの開発で、これは前年度も御報告いたしましたが、さらにこのE-CFCPという新たな核酸系逆転写酵素阻害剤で、右に2つ図がありますが、上のほうに構造を示しております。このE-CFCPは現在ありますB型肝炎ウイルスに対する高度の耐性を獲得している耐性B型肝炎ウイルスの全てに対して、強力な活性を発揮いたします。この化合物は我々が独自で、NCGM内で、デザイン・合成・同定をしたものであり、特に1週に1回の服薬レジメンが可能で、感染者のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を大いに改善すると期待しているところです。具体的なデータですが、上の図はB型肝炎に感染しましたヒト肝キメラマウスに0.2mg/kgを1日1回内服投与した時の血漿中ウイルス数の変化を示しておりますが、現在ゴールドスタンダードとして用いられておりますエンテカビルに比して、統計学的に有意の差で、強力な抗ウイルス活性を発揮いたします。下の図はエンテカビルを1日1回、それから3日に1度、更に1週間に1度の投与(QW)で、ウイルス量の変化を見たものです。エンテカビルではウイルス量は途中で下げ止まりとなっておりますが、E-CFCPはなおも低下傾向が見て取られ、E-CFCPが統計学的に有意の差でエンテカビルよりも強力な活性を1週間に1回の服薬レジメンでも発揮する事を示しております。NCGMの単独での日本と国際特許の申請完了・PCT各国の移行手続きが終了しているところで、提示しましたデータは既に投稿しておりまして、リバイズをしているところです。
 第2の大きな柱、EFdAについて、8ページを御覧ください。NCGMで開発を続けておりますEFdAは、アメリカのFDAに関連した部署からIslatravirというジェネリックネームが付与され、今年の2月には日・米・英・仏等の国際共同第Ⅲ相の臨床試験が開始されており、試験は極めて順調に推移しているところでございます。本臨床試験ではNCGMは、日本での旗艦(フラッグシップ)グループとして最大数の臨床試験症例を担当しております。このIslatravirは1回の内服投与で、1か月以上細胞内有効濃度が維持できることが示されています。蓄積毒性はほぼ皆無ということが明らかにされており、月に1回だけ内服するだけで、後は投与しなくてもよいという、いわば驚くべきそのようなレジメンが、国際共同臨床試験として展開されると期待しております。
現段階で行われている国際共同治験では、全世界で578症例、うち43症例をNCGMが担当しておりまして、パーセントで言いますと7.44%ですから、これもNCGMが直接開発に関与したということで、このような努力が可能となったと解しているところです。さらに右下を見ていただきますと、写真がなかったものですから、アメリカの1セントを大きさの比較として出しております、ここにありますプラスチックのように見えますのが、Islatravirのインプラントでございまして、これを上腕の内側に埋設いたしますと、最低1年、有効な細胞内の活性化されたIslatravir濃度が維持されることが分かっており、既に患者さん12人に12週間留置いたしまして、ほとんど副作用がなく、十分な治療効果、そして予防効果が確認されているところです。よく見て頂きますと、このIslatravirの知見から先ほど申し上げましたB型肝炎と構造が似ているのですが、Islatravirと先ほど申し上げましたE-CFCPはいわば同じ路線で、NCGMで開発を続けた成果でございます。
 第3の大きな柱について、9ページを御覧ください。私の研究部でも、緊急事態ということで、HIVとB型肝炎に対する研究の一部を新型コロナウイルスに対する対応に向けております。NCGMセンター病院への発熱患者等の感染の有無の迅速診断などをサポートするとともに、さらにセンター病院の感染患者からウイルスを分離するなどいたしまして、cell-based assay、この新型コロナウイルスに対する抗ウイルス活性を定量するシステムを確立して、既存の治療薬、そして新規の治療薬の活性を定量するシステムを確立しているところです。
 既に少なくとも2つ、GRL-2420等の小分子化合物、分子量は300から400という小分子化合物ですが、特異的にウイルスのプロテアーゼでありますメインプロテアーゼに結合することで、高い抗ウイルス活性を発揮する化合物を同定しておりまして、さらに最適化を続けているところです。
 9ページ中段にあります健康な標的細胞と感染標的細胞という箇所をご覧いただきますと、左側の健康な標的細胞はウイルスがおりません。アクチンと言いますのは健康な細胞の骨格で、赤く染まっているのが分かります。青い丸は細胞の核です。細胞のアクチンは破壊され、新型コロナウイルスの抗原が緑色に染まっております。このような方法、免疫染色と申しますが、これを確立いたしまして、それと同時に定量的PCRで、ウイルスの数を数えることで、掲げております様に、remdesivir、GRL-0920、GRL-2420の3者に強力な抗ウイルス活性があることがおわかりになると存じます。しかし、残念ながら既存の化合物にはどれも十分な効果がない。
 結論だけ申し上げますと、下段にありますファビピラビル、アビガン、ナファモスタットは細胞毒性は強くありませんが、抗ウイルス活性はほとんど確認できません。これらのデータはごく最近国際科学雑誌に論文として発表したものでございます。ネルフィナビルやクロロキン、あるいはロピナビル等も、注目したのですが、残念ながら抗ウイルス活性と考えられていたものは、細胞毒性を抗ウイルス活性と間違えたものと結論に至ったところでございます。他方、私達はCOVID-19の回復患者血漿からIgG分画を得て、ウイルスに対する中和活性の定量評価系を確立しております。私達は、そうした血漿の中和活性は高いものから低いものまで症例によって大きなバラつきがあり、しかも回復後の早期(1か月から2か月)に消失する例が少なくないことを明らかにしたところです。こうした知見も国際科学雑誌に投稿中でございます。同時に既に25例の高い中和活性を有する回復血漿を、回復患者さんから採取いたしまして、特に第2波襲来で心配されます重症者あるいはハイリスクの患者さんの治療に使えるように、準備を整えたところです。同時に、東大医科研の河岡グループとハムスターのコロナ肺炎モデルで、そうした中和抗体と、先ほど申し上げました、小分子化合物の抗ウイルス活性を検討する準備を整えているところでございます。
 それでは10ページを御覧ください。既に申し上げましたように、3つの課題を主要な業績として御報告いたしました。1つは、エンテカビル等の耐性、B型肝炎に対して効果を発揮する、長時間作用型の治療薬の開発です。2つ目が、これも既に述べましたIslatravir、EFdAというのが旧名ですが、全ての耐性変異株、HIV変異株に強力な活性を発揮して、今、月に1回の内服、あるいは1年に1回のインプラントの埋設で十分な治療と予防ができると期待されていることを御報告いたしました。それと同時に、COVID-19新型コロナウイルス感染症に対する治療開発と回復患者血漿を用いた受動免疫療法の実施の基礎を築いたというこの3つが御報告した内容です。以上です。
 次に、評価項目1-2で、実用化を目ざした研究開発の推進及び基盤整備について御報告申し上げます。臨床研究センター長の杉浦が報告いたします。

○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
 臨床研究センター長をしております杉浦です。早速御説明したいと思います。まず、11ページを御覧ください。資料1-2の11ページです。令和元年度の自己評価はSとさせていただいております。その理由です。ここにⅠとして、中長期目標の内容、これは読んでいただくとしまして、Ⅱのほうの目標と実績との比較という所で、この数値を見ていただくと分かるように、立てた目標を大きく上回る成果を上げている、これがSとさせていただいた根拠になります。続きまして、その中で特に令和元年度、非常に進展したものについて3つほど御説明いたします。まずは1番目、これは12ページ目の1番です。COVID-19に対するremdesivirの有効性の検証が書いてありますけれど、これは今年の1月から始まりましたパンデミックの初期から、NCGMとしましては治療法の開発に非常に積極的に取り組んでおりまして、その中で特にremdesivir、これはRNA阻害剤になるのですが、この開発を優先的に進めてまいりました。まず行ったのがcompassionate usageで、人道的な使用としてremdesivirの使用を始めまして、その後、米国のNIHが立案した国際共同治験に、日本からは唯一の参加施設として参加をいたしまして、全部で15例ほどの患者を登録しております。そういった我々の貢献があった上で、このremdesivirは5月7日に初めてのCOVID-19の治療薬として承認を受けることになったわけであります。それと右側の図ですが、compassionate usageのほうにもNCGMは大きく貢献しておりまして、私どものDCCの大曲医師がこの2番目の著者として評価をされていることが分かるかと思います。
 2番目には、AMR、要するに薬剤耐性菌です、今はCOVID-19のほうに皆さんの関心が行ってなかなか話題になりませんが、薬剤耐性菌というものも我々の健康に重大な影響を及ぼすグローバルな問題としてきたわけでありますが、それに対してもNCGMとしては積極的に取り組んでおります。ここで紹介しているのはベトナムで行われた10施設の医療機関との多施設の共同研究調査であります。2019年度に行われたのですが、全部で1,262例の耐性菌の株の収集に成功しております。またこの図に書いてあるのは情報収集のためのクラウドの構築を示したものなのですが、この10施設の機関とは今後も臨床情報を加えた研究を計画しておりまして、その際にこの10施設の医療機関が情報交換できるような基盤整備を行ったということであります。
 次に、3つ目は生活習慣病として非常に重要な糖尿病に関しての研究になります。NCGMは10万人規模の職域多施設研究(J-ECOHスタディ)を長年進めておりまして、これは何かというと、定期健康診断で得られた経年データを用いた分析研究なのですが、その中で3年間のデータを使い、糖尿病発症リスク、予防システムを作っております。システム自体を作ったのは昨年より前なのですが、そのときには性・年齢・身長・体重・血圧・既往歴といった、非侵襲的データのみで行ったのですが、昨年度はこれらに加えまして、ヘモグロビンA1c、あるいは血液データといった実際の臨床データを追加した予測システムを使っております。下の部分にその絵が出ておりますが、必要な情報を入れてクリックしますと、そこに新たな糖尿病発症リスクが現れる。これをやることによって、糖尿病のリスクのある方の行動変容を促すことができると、こういったツールをつくっております。これが令和元年度の成果になります。
 続きまして中長期です。資料1-6、11ページを御覧ください。こちら、中長期の評価も自己評価としてはSを付けさせていただきました。それは先ほどと同じでありまして、目標と実績との比較を見た場合に、全ての項目において目標を上回る成果を上げているからであります。特に上から2番目、外部機関と共同研究数、これは420%を達成しておりますが、2年前に重点研究という項目を新たに作りまして、研究所、病院、そして外部の研究機関との連携を推進した結果であります。
 12ページです。中長期のほうの紹介したいものが少し加わっております。まず、[1]NCGMの国際感染症フォーラムを立ち上げたことを上げたいと思います。2016年3月にこのフォーラムを設立しまして、シンポジウム形式で開催しているのですが、ここでは様々な国際的な感染症、健康問題を集まって議論するということで、2019年度末までに9回開催しております。72の企業・公的機関・アカデミアが登録しており、延べ640名が参加して、非常に積極的な議論が行われております。
 続きまして、[2]クリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)の推進です。これは何かと申しますと、厚生労働省の事業でありますCIN構想を大きく推進するために他のナショナルセンター5施設と医薬基盤・健康・栄養研究所が参加する事業団を構成しまして、私どもNCGMはその推進拠点として活動をしております。この中で一番注目すべきことが、レジストリをカタログ化したところでありまして、いろいろな先生方が研究成果で作られたレジストリをカタログ化して、2019年6月に一般公開しております。全部で679のレジストリが登録されておりまして、そのうち公開の同意が得られた526のレジストリの情報が、右の写真に示しておりますホームページから検索をすることが可能になっております。これをやることによって、よりデータベースを使った創薬等の研究が進むことを期待しております。
 続きまして[3]、13ページをお願いします。こちらでは医工連携の推進を上げさせていただきました。NCGMでは医工連携を推進するということで、特に日立製作所とは包括連携協定を結びまして、連携ラボを設置しております。いろいろなことを、臨床現場におけるニーズを社会的に実装することを進めているわけでありますが、その中でこの右の写真は何をやっているかというと、日立が持っている得意なロボット技術を用いて入退院時の看護師さんの業務負担を改善するということで、このロボットが看護師さんのために対応する。このような試みを行っております。
 またこの医工連携の推進の中では、いかにそういった企業と連携するかということで、医工連携クラスター研究会というものを12回ほど開催しております。さらに東京都との連携事業として活動しており、これまでに我々の臨床ニーズを224件発表しまして、延べ67の診療科、それからこれらのニーズに対して、310件の企業の面談申込み等をやっております。要するにつないでいるということです。そのうち26件に秘密保持契約が結ばれまして、実際に共同研究に至ったものが12件であります。そのうちの成果が、右の真ん中の写真に「べんけいガード」と書いているものがありますが、これは何かというと、車椅子のステップのカバーをすることによって足を保護するというものです。これは実際に販売されているものです。
 それから医工連携の中では、海外展開に資する人材の育成を目的に、東京都と連携をしまして、そういった覚書を締結しております。「医療機器開発海外展開人材育成プログラム」といった活動をしています。それからNCGMと一般社団法人日本医工ものづくりコモンズの医工連携に関する協議を締結しまして、MINCという会を発足しております。その中で生まれてきたのが、右下の写真の呼吸器能測定装置という、リハビリテーションに使う用具ですが、そういったものを開発しております。大体このような成果を上げてまいりました。私の発表は以上になります。

○祖父江部会長
 それでは、今の御説明に対しまして、御意見、御質問等がございましたら、「手を挙げる」というのが右側にありますので、そこを押していただけると御発言できると思いますので、よろしくお願いします。何かございますか。

○深見委員
 まず、資料1-2の7ページです。新しくB型肝炎治療薬にE-CFCPを開発したということで、特許までつなげてきたということでよろしいと思うのですが、これは服薬上のメリット、また既存薬の耐性に対する使用というメリットもあるわけなのですが、既にある既存薬に比べて、第1選択薬にはならないという理解ですか。既存薬が使えない場合に、使えるであろうという位置付けであるかと。
 既存薬はウイルスをフリーにすることができると思うのですが、このお薬も患者からウイルスを除くことができるのか、そこのところを教えてください。
 それから、資料1-6で、年度の成果と中長期の図が同じものが使われているのですが、つまり資料1-2では10ページ、資料1-6でも10ページ、同じ資料が使われているのですが、中長期では年度評価に加えて、何かほかの項目はなかったかという点についても教えてください。

○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 まず、7ページのデータで御報告致しましたのは、現在使われている治療薬は、全て1日1回の内服投与が必要です。慢性感染症と定義されておりますエイズという疾患のコントロールについては1日1回の内服というのではQuality of Lifeの維持には不十分とされておりますし、毎日1回の内服で飲み忘れ等があると耐性発現が加速されるなどの問題がございます。ですから、十分な細胞内濃度を達成することができれば、1週間に1度、つまり日曜日に1回服用すれば、あとは忘れてもいいという意味で、コンプライアンスあるいはアドヒアランスが向上し、QOLの維持や耐性発現の抑止などの問題点を、かなりの確率で克服できるのではないかというのが、新規性です。
 しかし、そのときに副作用があったり、あるいは蓄積毒性があると困りますから、その点は留意が必要です。しかし、少なくともヒトの肝細胞を移植したマウスでの安全性試験では、ヒトの肝細胞に対しての副作用はほとんど見られておりません。これから更に小動物での安全性試験、そして臨床試験へと移行させたいと考えているところです。そうした点がこのE-CFCPの特徴と言えます。
 E-CFCPの研究・開発は、先行するHIV・AIDSの治療の実際で既に、1週間に1度、1か月に1度、3か月に1度という、言わば長時間作用型が主力となっておりますから、恐らくB型肝炎でも、このような形になると考えておりまして、そうした意味ではB型肝炎ウイルス感染症治療領域で先駆的なものとなると考えております。
 電気や水道施設がない所でしかも政情不安な低所得・開発途上国等では1日1回の服用は達成できないことが多く、良好なアドヒアランスは得られないことが多い。そうした環境では、長時間作用型HBV感染症治療薬の価値は高いと考えられるところです。E-CFCPが臨床で試用されることになった場合に第一選択薬になり得るかとのご質問ですが、考え得ることはまず、E-CFCPについては耐性HBV感染症例や既存薬に対する不耐症例へのサルベージ薬としての使用が進んで、更に既存薬に比して、効果や安全性に係る優位性のデータが蓄積されて、それが明らかになってから、第一選択薬として使用されることになるというのが、通例と存じます。そうした事から、E-CFCPが直ちに第一選択薬になるかどうかについての判断は難しいところです。
 10ページで、これ以外にはなかったのかという御質問だったと思います。2019年になって、かなりの進展が見られたわけですが、本日ご提示致しましたそうした進展は、連綿と続けて参りました努力の結果であります。更にもっとよい化合物があるかどうかについて、再デザイン・合成・試験をずっと続けているところです。それでよろしいでしょうか。

○深見委員
 後半の質問に対してはよく分かりました。

○祖父江部会長
 花井先生どうぞ。

○花井委員
 御説明ありがとうございました。抗ウイルスというのがエイズから始まったパラダイムシフトだということを感じられる説明でよく分かったのですが、2つだけ教えてください。1つはHIVのほうで、抗ウイルスは、今までの言い方をすればバックボーンなので、例えばこれが1月に1回とか1年に1回、1週間に1回になると、QOLは向上するのですが、一方でキードラッグがないと、そうならないのかなと思うのですが、その辺の関係というのは、どうお考えなのでしょうか。
 それから、SARSなどは、もし開発が成功すれば、もしかしたら大化けすれば、ブロックバスター的なものになる可能性もあるわけですね。もしそういうことができると、例えばセンターの経営に大きく寄与するということになるのでしょうか。製薬企業に渡してしまったら、利益は製薬企業に全部行ってしまうのかとか、そういうところを教えてもらえますでしょうか。

○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 満屋が御説明申し上げます。確かにおっしゃるように、islatravir/EFdAと、もう一つの薬剤を加えた多剤併用を進めるのがベストと考えております。幸い、このislatravir/EFdAは単独で、現存する全ての耐性ウイルスに対して、強力な活性を発揮して、しかも耐性が発現しにくいということで、今のところは単剤で長期投与ができるだろうと期待しているところでございます。パートナードラッグとして考え得る化合物としまして、非ヌクレオシド系逆転酵素阻害剤が開発されておりまして、islatravir/EfdAと同じように3か月に1度の投与が可能というようなフォーミュレーションがありますので、万が一、EFdA単独ではよくないということになりますと、そのような非ヌクレオシド系の逆転酵素阻害剤との併用療法が行われることになる可能性があります。申し上げましたような事が実現しますと、飲み忘れなどの不安がなくなりますので、抗ウイルス効果が減弱することもありませんし、耐性発現はますます抑制できるということで、全世界で期待されていると存じます。
 islatravir/EFdAはB型肝炎にも一定程度、効果がありますので、B型肝炎対策としても、1週間に1度、あるいは3か月に1度ということになりましても、単剤での投与が可能になるのではないかと期待しているところです。
 もちろん、これをライセンシングアウトしたメルク社も、そのようなパートナードラッグを探索しているところですが、これよりもいいものは、今のところなかなかありません。
 2つ目のご質問へのお答えですが、我々は既にremdesivirとほぼ同等、あるいはそれよりも強力な小分子化合物を既に同定しておりまして、そうした小分子化合物はHIV・AIDSの治療薬開発領域と同じように、SARS-CoV-2のプロテアーゼ阻害剤、メインプロテアーゼといいますが、これを標的として、特異的に結合して、高い抗ウイルス活性を発揮いたします。私達は既にメインプロテアーゼを強制発現、精製いたしまして、先程申し上げた小分子化合物との複合体の結晶を作成しまして、その結晶構造も解いているところです。そうしたデータの一部は既に国際科学雑誌に論文として発表しておりますし、又、そうした国際誌への投稿の準備を進めているところでございます。私共はそのような構造学的なデータを用いて、再デザインを図り、新規化合物を自身で合成・同定して、仰いますように、日本でブロックバスターができればという勢いで、努力を傾注しているところでございます。
 我々としては、もう既にremdesivirと今申し上げたGRL-2420を、まだ試験管内ですが、併用しますと、約160万分の1にウイルスの増植を減らすことができます。
 候補化合物を早期に同定して、ライセンシングアウトし、実際の臨床実用化へ進めたいと思っているところです。しかし、そのためには先ほど申し上げた動物実験、小動物の実験が必要となってきますので、そうした実験をできるだけ早いうちに始めたいと考えております。
 しかし、この小分子化合物、GRL-2420を1g作るのに、現段階では250万円から300万円ぐらい掛かりますし、時間も2か月ぐらい掛かって参ります。大量合成ということになりますと、これはライセンシングアウトして、製薬企業に加担してもらうことが必要だと思っていますので、そのような導出へ向けた努力も進めているところでございます。
 COVID-19に対する治療薬開発に成功する様な事があれば、それがブロックバスターとなる可能性は非常に高いと思います。本日ご報告した化合物が治療薬になるかどうかはまだ不明ですが、今後私共が開発する化合物などが治療薬として認可されるようなことになれば、特許の権利は共同研究者が属する大学などの団体と共に、NCGMにもありますので、そういう幸運に恵まれれば、無論NCGMの経営に大きく寄与することになります。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。時間が大分超過したのですが、中野先生、お願いします。

○中野委員
 素晴らしい紹介をありがとうございます。手短に1点だけ教えてください。資料の9ページについてお話をお伺いしたいと思います。SARS-CoV-2の定量的評価システムは、とても興味深く拝聴させていただきました。同時に、remdesivirの大曲先生たちの論文も、何度も拝読させていただいております。このSARSCoV-2の定量的評価システムが、治療効果の判定とか、予後の予想、評価などに、何か役立てられるような目安、見込みというのがあるのであれば、お教えください。

○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 私どもは、治療薬は重症化する前に投与すべきであると考えております。ハイリスクの患者等で、肺に陰影があれば、重症化する前段で直ちに投与して、それ以上の肺実質の損傷をブロックすることが一番重要だと思っております。
 中和活性を有する抗体を含む回復後血漿投与でも同様でして、重症化する前に投与を開始するのが理に叶っていると考えております。実際に私共は重症の患者で血中の中和活性が高い患者が多いという知見を得ております。これは、大量のSARS-CoV-2に長い時間暴露されることで、中和抗体が産生されるのは間違いないと判断しております。しかし、その症例では肺の損傷が過度に進んでおり、体内で産生された中和抗体には抗ウイルス効果発揮の余地がないと考えております。肺はかなり損傷を受けていて、恐らくパーマネントに近い損傷が起こるのではないかと危惧しているところです。
 頂きましたご質問ですが、その様な事から、治療は早期に開始するというのが肝要だろうと存じます。本日ご提示いたしました中和抗体を含む回復患者血漿を用いた受動免疫療法も、特にハイリスクの患者で、CT所見でもし陰影が軽度であれば直ちに投与を開始するという方法を取ることとしております。
 本日ご提示いたしましたSARS-CoV-2活性の定量的評価システムが治療効果の判定や予後の予想・評価に有用かどうかとのご質問ですが、治療効果判定や予後への影響因子となる何らかの生理学的物質が同定される様な事があれば、そうした物質の抗ウイルス活性の定量的評価には使用可能と存じます。

○祖父江部会長
 それでは、福井先生、よろしくお願いいたします。

○福井部会長代理
 簡単に、1つはコメントで、深見先生がおっしゃったように、私も満屋先生の所については、中長期計画の所に、これまでの5、6年間の全体像が分かるような書き方をしていただいたほうがいいのではないかと思います。
 2つ目が、8ページの図の一番下に、インプラントで最低1年という資料ですが、これは、薬が血液中に出ていくのをコントロールする機材の開発によって1年間という長期間が可能になったのか。つまり、薬そのものなのか、機材の問題なのかを簡単に教えていただければと思います。
 最後ですが、13ページの糖尿病発症予測でパーセンテージを出していますが、これが実際に行動変容を促すという期待感を書かれています。心臓病のほうでは、こういう数値を出しても余り効果がないということを我々は散々経験してきているのですが、糖尿病の分野では、こういう数値を出すと行動変容が起こるというデータは出ているのでしょうか。

○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 満屋が簡単にお返事いたします。このインプラントからは徐放効果でislatravir/EFdAが血中に供給されるというものでございまして、インプラント自体はメルク社が開発したものでございます。
 蓄積毒性がないというのは、我々も当初から注目しておりましたが、そうした特性が、メルク社との共同で成果が出たものと考えているところです。

○国立国際医療研究センター杉浦臨床研究センター長
 それでは、13ページの糖尿病の予測ですが、現時点では開発したばかりですので、そこまでのエビデンスまでは出ていませんが、期待としては意識付いていくのではないかと。特に、3年以内に発症するリスクが7.7%だと余りショッキングではありませんが、これがもう少し高い数字ですと、それなりの行動変容が期待できるのではないかということで、今後1つの課題として、攻めていきたいと考えております。御指摘ありがとうございます。

○祖父江部会長
 最後に私から、1つお伺いします。GRL-2420あるいは0920の開発の今後の見通しです。つまり、上市まで持っていくまでの見通しが、どの辺にあるのでしょうか。例えば2番目のメルクなどは非常に早い展開があったように思うのですが、1番目のものは、まだ製薬企業への導出を考えておられるということですので、3番目、特にこれは非常にクイックモーションが期待されるところなのですが、その辺はいかがでしょうか。一言でお願いします。

○国立国際医療研究センター満屋研究所長
 GRL-0920とGRL-2420の開発の今後の見通しについてのお尋ねですが、いずれの化合物についても薬理動態や化学的安定性、安全性などの評価がまだ進んでおりませんし、これらを直ちに治療薬として臨床開発へ進め得るかは現段階では不明です。しかし、GRL-2420については、既にSARS-CoV-2のメインプロテアーゼと共に結晶化して、先ほど申し上げましたように、その構造科学的な挙動についての理解が進んで、どのような結合様式を有しているか等が明らかとなって来ておりますので、今後は種々の側鎖を付加するなどして、あるいはEFdAやE-CFCPと同じように、フッ素化などを進めまして、できれば今年以内にライセンシングアウトできるようなものを開発したいと考えております。

○祖父江部会長
 時間がなくて申し訳ございませんでした。ありがとうございました。
 それでは、次の評価項目である1-3から1-7に移りたいと思います。これは医療の提供とその他の業務の質の向上に関する事項ということで、先ほどと同様の流れですが、これは少し長くなっておりまして、説明が30分、質疑が28分ということです。それでは、法人から説明をよろしくお願いいたします。

○国立国際医療研究センター杉山センター病院長
 センター病院長の杉山が説明いたします。まず、資料1-2の評価項目1-3、14ページです。自己評価はAといたしました。早速ですが、次の15ページをお願いします。医療政策の一環として、センターで実施すべき高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療の提供ですが、HIV/エイズや輸入感染症に対する対応です。2019年度のACCにおける通院患者のウイルス量50コピー以下の抑制率は94.9%と、国連合同エイズ計画の目標の90%を超えております。後でも述べますが、この直近5年間はずっとこの目標値を超えております。
 2019年度は、包括外来の利用も定着しまして、93%以上の血友病HIV感染者が利用しました。昨年の10月にはリハビリテーション科、循環器内科、ACCが合同で行った多職種によるリハビリ検診会に、院内外のスタッフや血友病HIV患者を含めて、118人が参加して、包括HIV検診を行いました。
 また、昨年12月に発生したCOVID-19のパンデミックに関してですが、我々の持つ特定感染症病棟及び集中治療室での集中治療機能を活用し、重症のCOVID-19診療に積極的に取り組みました。また、厚労省の研究であるCOVID-19のレジストリであるCOVIREGIを立ち上げまして、治療薬候補であるremdesivirについても、米国のNIHの国際共同研究による医師主導治験を実施いたしました。これは先ほど報告があったものです。
 16ページです。救急医療の提供です。センター病院の救急搬送応需率は95.7%と高い水準を保っており、三次の救急搬送件数については1,116件を受けるなど、国内トップクラスの救急診療を行っています。
 また、COVID-19の患者の受入れも積極的に行い、疑い患者を含めて、5月末の時点で約500名に対して治療を行いました。ブルーの所がCOVID-19の確定例で、赤は疑い例です。確定例に関しては、ほかの施設で多く受け入れた所がありますが、我々の所は疑い例も積極的に救急も含めて受け入れておりますので、合わせた数では、国内随一の数を受け入れていると自負しております。
 3番目の1型糖尿病への先進的対応です。センター病院では、2015年から「先進1型糖尿病外来」を開始しております。持続血液測定機搭載型インスリンポンプを導入しております。こういう治療をすることによって、かなり良好なQOLの改善が得られています。さらに最近では、1型糖尿病の進行を抑制して、根治に向けた取組として、免疫修飾療法及び膵島移植の臨床試験を行っています。膵β細胞の破壊を阻止するために抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリンとペグ化顆粒球コロニー刺激因子製剤を併用した免疫修飾療法の臨床試験も実施しております。現在、治療群が10例、対象群10例の登録を終了して、試験は予定どおり進行中です。
 また、膵島移植プロジェクトでは、臓器提供者の膵臓から膵島を単離して、患者の肝臓内に点滴で細胞を移植する臨床試験を実施しています。これまで1例で施行し、7例が登録されて膵島移植を待っている状況です。これが、単年度の目標と実績です。
 次は、資料1-6を御覧ください。15ページです。これも、医療の提供に関する事項ですが、自己評価はAです。HIV/エイズ、輸入感染症への対応ですが、ACCに関しては、先ほども申し上げましたように、HIVの検出限界以下の抑制率と包括外来受診率は、ずっとこの5年間目標を超えております。特筆すべきこととしては、センター病院において感染症内科外来・トラベルクリニックを開設しまして、海外渡航前健診とワクチン接種などの渡航相談及び帰国後の疾患治療を行っています。ワクチンの接種件数も増加しておりまして、レジストリも構築しております。
 2010年8月からは、検疫所の巡回診療実施施設として、アフリカや南米へ渡航する際に、黄熱ワクチン予防接種の実施、2016年4月より、厚労省から黄熱予防接種実施機関として指定を受け、黄熱接種を直接実施しております。2018年度には、黄熱ワクチン供給不足の問題から、特定臨床研究を主導して、全国約20か所の研究参加機関で、約1万人に対する黄熱予防接種を実施いたしました。右のトラベルクリニックの初診患者数は右肩上がりに増加しております。
 16ページを御覧ください。救急医療の提供も、先ほど御覧になったものと同様に、2015年度以降、毎年1万1,000人を超える救急搬送を受け入れておりまして、全国トップクラスの受入件数を維持しております。2018年度には、厚労省の全国救命救急センターの充実度評価でS評価を獲得しており、2019年度においてもS評価を継続しております。
 1型糖尿病に関しては、先ほど言いましたように「先進1型糖尿病外来」を開始しておりまして、積極的に治療を行っております。また、カルテ直結型全国糖尿病データベース、略してJ-DREAMSを活用しておりまして、今まで余り日の当てられてこなかった成人1型糖尿病のデータベースの構築に取り組み、1型糖尿病の診療と治療の質の向上を目指しております。私からは以上です。

○国立国際医療研究センター梅田国際医療協力局長
 それでは、続きまして、資料1-4から1-6について、国際医療協力局長梅田から御説明いたします。お手元の資料1-2の2019年度の実績、18ページを御覧ください。1-4、人材育成に関する事項で、[1]リーダーとして活躍できる人材の育成、国際協力人材で、国際協力を目指す若手人材育成のための研修を医師向けに2種類、それから職種を問わない研修コースとして2種類、合計4コース、2019年は参加者が213名でした。また、1年間かけて国際保健の基礎を学ぶ国際保健基礎講座を8回、参加者236名で開催しております。右横の写真は、これは国際保健医療協力研修の1コマですが、14日間の研修のうち、フィールド、ベトナムでの研修が10日間で、現地のスタッフと共にワークショップなどを開催しております。
 [2]の国際機関で活躍できる人材の発掘です。NCGMグローバルヘルス人材戦略センターにおきまして、国際機関で働きたい人と、国際機関の求人情報、これをマッチングする人材登録検索システムを設けておりますが、この登録人数が536名に増えました。登録者には、毎週マッチング・メールによって、個々の希望条件に応じたポジションの公募状況を提供しております。2019年度は、ワークショップや個別進路相談を拡充し、また国際機関の第一線で働く職員を招いて、右横の写真はUNRWAの清田保健局長の講演会ポスターですが、ロールモデルとして若い人の参考になるような意見交換、講演会の場を提供しております。
 また、WHO等に勤務する邦人職員の実態調査や国際機関の人事政策の動向を調査し、国際機関就職希望者に対して、その実態を踏まえた進路指導や面接の受け方などを実施しました。その結果、2019年度にはWHO等合計12名の常勤職員と、1名のコンサルタントが採用されたほか、5名の専門家がWHOの規範設定に関わる委員会、世界的なガイドライン作成などの委員会のメンバーに就任しております。この12名+5名+1名で18名、これは前年度の7名に比べますと大きく増えているものです。
 次に、19ページを御覧ください。[3]国際的な感染症分野でのモデル的研修・講習の実施です。NCGM国際感染症センターでは、2019年度において右の写真にあるような動物由来感染症、輸入感染症、一類感染症ワークショップなどの研修会を開催し、参加者は合計431名でした。また、AMR臨床リファレンスセンターにおいて、幅広い医療関係者や医師、そして公衆衛生関係者に対するセミナーを、全国で開催しております。
 また、思春期精神保健対策につきましても、医療従事者の専門研修を行っておりますが、2019年度は新たにインターネット依存・ゲーム障害の講義を加えるなどの充実を図っております。また、児童精神科の専門医を育成しているところです。引きこもり対策研修では引きこもり支援に関わる各地の専門機関スタッフの研修なども行っております。さらにエイズ、肝炎、糖尿病診療の高度化、均てん化のための研修や、国際共同臨床試験を担う人材、外国人患者の診療を支援する医療通訳の養成も着実に実施しております。以上のとおり、幅広い分野で国内外のリーダーとして活躍できる人材を育て、かつNCGMの高度かつ専門的な技術の各種モデルとなる研修を企画・実施したことに加えて、定量的指標についてもセンター外の医療従事者向けの研修会の開催件数が、目標の3倍となっております。そのため、自己評価をAとしているところです。
 続きまして1-5、21ページを御覧ください。医療政策の推進等に関する事項です。国等への政策提言に関する事項です。COVID-19の発生を受けまして、国の新型コロナの感染症対策専門家会議、そして東京都の新型コロナ審議会メンバーとして、国や自治体の対策について専門的、臨床的な立場から助言を行っております。また2019年度は、日本が国際社会に向け、中心となって提唱してきたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)という、全ての人が適切な保健・医療サービスを支払い可能な費用で受けられるというコンセプトについて、G20の首脳会合等、日本で行われた大きな会議で議論されております。また、国連、UHCハイレベル会合でも、政治宣言が承認されておりますが、その基礎となるようなコメントをJICAと協力して外務省に提出するという活動を行っております。また、右の図にあるように、セネガル等、4か国において長期滞在職員を出しており、保健省アドバイザーとして各国の政策立案に参画しているとともに、WHOなどの理事会、あるいは総会等の議論に必要なコメントを、厚生労働省をサポートして提供しているところです。
 [2]の医療の均てん化並びに情報収集及び発信では、2019年に新たに英文ジャーナル、「Global Health & Medicine(GHM)」を創刊しました。右の写真のとおり、グローバルヘルス、臨床・基礎医学など、幅広い内容のオンラインジャーナルを年度内に3号発刊しております。
 臨床研究センターにおいて、2019年度より新たにWeb上で、国際臨床研究に対するコンサルタントサービスを開始しております。また、NCGM国際感染症フォーラムで、企業等も含めたステークホルダーとの意見交換も行っているとともに、肝炎情報センターにおいて、疾患情報に加え、検査や治療の医療機関に関する情報もホームページで発信するなど、患者や家族の方々への最新情報を届けております。
 次に22ページです。[3]公衆衛生上の重大な危害への対応です。今年は、御案内のように、1月に中国の武漢で新型コロナの問題があり、中国政府は武漢周辺の都市封鎖を行いました。多くの邦人と、その家族が帰国できない事態が発生したことから、日本政府はチャーター便を5回出し、邦人を帰国させたわけですが、その際に新型コロナのPCR検査の検診を、私どもNCGMで実施しました。計5回にわたり、821人と、このオペレーションに関わった関係者の方々55人が受診されました。
 そして、この検診に引き続いて、診断された患者さんの診療や、検査結果が陰性で宿泊施設にて健康観察となった方の健康管理に対しての国への助言ということも行っております。右の写真は、大型バス数台に分乗して、帰国された邦人の方々がNCGMに着いたところの写真です。バスの中で検温や問診票を記入した後、下の写真にあります会議室を検診会場として、検診を行いました。子供さんや、日本語が不自由で中国語が必要な方もあり、通訳の配置も含め、非常にきめ細かな対応を行いました。また、こちらに来られた方々は、症状がない方だったのですが、無症状者の中で、数名陽性の結果が出て、無症状でも感染している事実が我が国で初めて確認されたという事案でもありました。
 それから、NCGMのホームページに新型コロナウイルス感染症の特設ページを設けて、臨床情報、症例経験や、院内感染対策の情報をいち早く掲載し、これらは国内のほかの医療機関にとっても非常に参考になったと聞いております。また、メディア勉強会も開催しており、これは引き続きオンラインで実施しております。また、クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号につきましても、感染症対策の専門の職員を派遣し、船内の対策本部の支援をし、また各職種の派遣をいました。さらに、研究開発が各部門の連携において戦略的に推進される体制や、研究成果を論文として発信することを加速する、そういう委員会なども設置しているところです。
 このように、政策提言、医療の均てん化と情報収集・発信、公衆衛生危機管理のいずれにおきましても成果を上げており、定量的指標であるセンターのホームページへのアクセス数、新感染症の訓練回数も目標以上です。特に2019年度は、COVID-19に対して、迅速に、かつ多面的に取り組んだということから、自己評価をAとさせていただきます。
 続きまして、資料24ページを御覧ください。国際協力に関することです。2019年度の専門家派遣は、右のグラフのように、延べ400人となり、過去5年間で最多となりました。後で述べます国際展開推進事業を除くと168人で、これは当初設定した100人の年間目標を上回っております。JICAを通した技術協力として、9か国、9つの技術協力プロジェクトを動かしております。その内容は、右の真ん中の表のとおりです。母子保健から、保健システム強化までの9件です。そして、保健省にアドバイザーとして4件、4か国に長期派遣の専門家を派遣しております。
 このうち、セネガルとカンボジアのJICAプロジェクトは、2019年度に新たに開始したものです。また、JICA以外にもWHOや民間企業からの委託で専門家を派遣するというケースも増えてきております。WHOの本部にはがん対策チームに、WHO西太平洋地域事務局には、薬剤耐性担当官として、職員を派遣しております。また、Global Fundの技術評価委員として、新たに職員2名が選任されていますが、これは公募によって決められるもので、世界中から1,000人以上の応募がある中から、専門家80名が選ばれた中の2名が私どもの職員で、各国が提出するプロポーザルの審査に当たっております。また、途上国から研修員として受け入れた医師、看護師、保健行政官等は、52か国から204人と目標を上回っております。幅広い内容、これは従来から実施している母子保健や感染症対策のみならず、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジや、医療安全、院内感染症対策などについても、研修員の受入れが増加しているところです。
 25ページは、医療技術等国際展開推進事業です。厚生労働省からの委託で、この国際展開推進事業を実施しております。これは、日本の医療技術や制度を海外に普及させて、その国の医療や公衆衛生水準を高めるとともに、日本の関連産業の振興を図ることを目的としております。2019年度は、アジア、アフリカ12か国を対象に、過去最大の38事業を実施しております。そして、国内研修の研修員受入れ人数ですが、グラフの左側を御覧ください。この事業はNCGMが公募によって案件を選定しており、大学や病院、学会などNCGM以外の案件で149名、NCGMの中から応募し採択された案件で105名、合計254名の研修員を受け入れました。文中242とあるのは、254の間違いですので、おわびの上、修正させていただきます。専門家の派遣数、国内外のセミナーの開催件数、いずれも、過去の目標を上回ったほか、相手国における研修参加者数は、前年の4,137名から、一番右のグラフの7,509名に増加しております。
 また、この事業を通じて、2019年度に相手国の国家計画やガイドラインに採択されて、その国のスタンダードになったというような技術案件は4事業あります。また、対象国で日本の医療機器購入につながった案件は、新たに23種類、ミャンマーにおける輸血安全性向上事業などを含めありました。日本及び相手国双方にとっての成果につながったものと考えております。日本の製品の国際展開に当たっては、相手国の薬事許認可などの法規制についても、相互理解が不可欠であることから人材育成の研修を行っています。
 さらに厚生労働省「WHO事前認証取得及び途上国向けWHO推奨機器要覧掲載推進事業」の一環として、薬とワクチンのWHO事前認証のセミナーを開催しております。この写真にありますように、医薬品関連企業、国内企業39社110名が参加しており、例えば開発途上国等で、自国で許認可というような仕組みが、未発達なところなど、WHOが事前の認証制度としてお墨付きを与えるものです。そのための基準を満たすにはどうしたらいいかなど、意見交換を行い、安全で質が高く、優先度の高い医薬品が途上国でも入手可能になることが、低・中所得国、日本、WHO、いずれにとっても共通のメリットだと認識される機会となりました。
 26ページを御覧ください。[3]国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態対応です。2019年度に、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態宣言」を出したのは、2回ありました。1つは新型コロナで、もう1つは、コンゴ民主共和国のエボラウイルス病のアウトブレイクでした。エボラについては国際緊急援助隊の感染症対策チームとして職員を派遣し、写真で小屋のようなものが見えますが、臨時検疫所を交通の要所となる主要幹線道路の途中に設置しました。エボラウイルス感染症の蔓延が、例えば首都のキンシャサや、チョポ州の州都のキサンガニに拡大しないように検疫所を設置し、その活用方法について伝授し、また個人用防護具の着脱訓練や、感染管理の指導などの活動を行いました。この活動の後、エボラのアウトブレイクは拡大せず収束しております。
 またCOVID-19に関しては、WHOが危機管理チームの派遣をする国際的なネットワークを持っております。WHOからの職員派遣要請があり、職員がフィリピン事務所に派遣されて、フィリピンでの医療機関の感染管理能力評価や、感染管理の行動計画作成や医療従事者向けのトレーニングを行いました。また、WHO西太平洋地域事務局に派遣中の職員も、各国のガイドライン策定支援などに取り組んだほか、国内の活動ですが、ダイヤモンド・プリンセス号、これは57か国の乗員・乗客が乗船し、乗船者の6割以上が外国人という状況でした。その中での国際的な危機管理対応に当たりました。
 以上、日本の経験・知見の移転、保健医療に関する国際協力につきましては、数値目標を大きく上回る研修受入れや派遣を行ったとともに、従来からの低・中所得国への技術協力に加え、それらの長年にわたる知見・経験を踏まえて国内外の関係機関、民間企業、NPOなどとも連携をして、各国の実情を踏まえつつ、双方互恵的な事業を推進するという新しいアプローチを普及させたことから、また国際的な感染症危機管理に積極的に取り組んだことから、初期の目標を大きく上回る成果として、自己評価Sを提示させていただいております。
 続きまして、資料1-6です。お手元の資料18ページですが、リーダーとして活躍できる人材の育成、[1]は先ほども申しましたが、前中期目標期間は年間200~300名程度の日本人の人材研修参加者であったところ、この5年間は平均して612名と、飛躍的に増加しております。また、その研修内容も更新をして新しい内容を取り込んでおります。NCGMグローバルヘルス人材戦略センターの人材登録・検索システムによって、国際機関の就職希望者への支援が進んでおります。右下のグラフにありますように、2019年で合計18人の人たちを国際機関に送り込んでおりますが、これまでの累計で28名となっております。
19ページを御覧ください。モデル的な研修・講習の実施で、[3]国際感染症センター(DCC)では、新興・再興感染症や顧みられない熱帯病などの感染症分野の人材育成ということで、これまで5年間の累計で2,524名の受講生が参加しております。また、エイズ治療・研究開発センターではHIVについてモデル的な研修を行い、累計2,660人、糖尿病情報センターも医療従事者向けの研修会を継続的に年3回、更には研修機会の少ない地域でも開催して、ベトナムに行って研修もしています。国府台病院は、思春期精神保健対策のモデル的な研修を行っているほか、肝炎情報 センターにおきましても拠点病院や自治体を対象に情報発信や、研修を行っております。
 資料1-5、21ページですが、これは先ほどお話しましたように、様々な国の審議会や自治体の審議会で専門的な助言を行っています。
 22ページです。2019年度に新たに英文ジャーナル「Global Health & Medicine(GHM)」を創刊したこと、糖尿病情報センターのホームページで、ページビュー数が大きく増加したこと、J-DREAMSというデータベース事業を行っていることがあり、肝炎情報センターについても先ほど申しましたが、医療関係者、自治体、患者家族の方に、アップデートされた利便性の高い情報をホームページで提供しています。
 [3]COVID-19等への対応です。これは1つ目のポツにありますように、新感染症の発生を想定した院内合同訓練を毎年2回実施し、政府主催の新型インフルエンザの対策訓練や、新宿区保健所や管内医療機関との合同訓練を毎年実施しております。このような平時からの積み重ねがあればこそ、今回COVID-19の発生に対しても、円滑に診療や様々な対策に取り組めたということがあります。NCGMの総合力を生かして、部門の連携を通じて研究開発推進を行っております。
 24ページです。国際協力につきましては、途上国における母子保健、疾病対策、保健システム強化という従来型のJICAを中心としたプロジェクトに加え、WHOや国連機関、そして様々なパートナーと広がる活動を行っております。一番下にありますように、2019年WHO総会で、国際保健の分野で優れた活動に対して与えられる「アラブ首長国連邦保健基金賞」を受賞しました。右の一番下の写真で、左から2人目、國土理事長が記念トロフィーを授与されております。二国間の保健医療協力につきましても、2018年ベトナム政府から「勲一等労働勲章」、2019年モンゴル保健省より「名誉勲章」が授与されるに至っております。
 25ページです。保健医療人材育成と医療技術の国際展開ですが、2015年からスタートした厚生労働省「医療技術等国際展開推進事業」はNCGMが実施主体となって公募を実施し、NCGM内、NCGM外、それぞれ様々な提案に対して採否を決定して、支援をしているところです。下の真ん中のグラフを御覧ください。実施主体ですが、この事業が始まった2015年度から5年たったところで、例えば大学や学会、こういうところが主体として参画する事業も順調に伸びてきているような状況があります。そして、これが相手国において、特に学会や職能団体と連携すると、相手国のカウンターパートとの関係が始まりますので、この事業が終わった後でも、人材育成が相手国で継続的に実施される仕組みに発展しております。
 最後の26ページを御覧ください。国際的な感染症対策につきましては、先ほどお話しましたエボラと、COVID-19に加え、2016年は黄熱病も流行し、その際に現地に対策チームの隊員として派遣し、その収束に貢献しました。以上です。

○国立国際医療研究センター井上看護大学校長
 それでは、続きまして評価項目1-7、医療政策の推進等に関する事項、看護に関する教育及び研究につきまして、国立看護大学校長の井上が御説明申し上げます。資料1-2、27ページ、28ページを御覧ください。自己評価をAといたしました。中長期目標ですが、ナショナルセンターの職員の養成及び研修を目的として、看護に関する学理及び技術の教授、また研修並びに研究を行うという下に、[1]~[5]までの具体的な目標を掲げております。その目標と実績の比較ですが、定量的指標として、まずナショナルセンターへの就職率90%としたところ、2019年度は86.3%と下回ってしまいました。あと、オープンキャンパス等、公開講座などは、全て目標値を上回っております。なお、定量的指標とはしておりませんが、看護師・助産師国家試験のそれぞれ合格率は100%となっております。
 28ページを御覧ください。2019年度ですが、[1]学部・研究課程部とも、学部は4.3倍、前年度が5.6倍でしたが、4倍~6倍の倍率を確保し、優秀な学生を確保しております。また、研究課程部、これは大学院相当ですが、特に博士後期課程は3倍の応募があり、全国多くの大学院が定員割れを起こしている中で、大変入学を希望する学生が多くなっております。
 [2]国際的視点を養うことでは、右側の上の写真にありますように、ベトナム社会主義共和国で、先方のハイズオン大学の教員、学生と交流しながらの国際看護学実習を継続しております。
 [3]COVID-19によって様々な学事が停滞している中、本学は、感染管理専門看護師の課程を持っており、専任教員がおります。なるべく様々な学事を実施したいということで、1つの例といたしまして、ソーシャルディスタンスに配慮して、また学生の希望等を鑑み、事前調査の下に2020年3月に卒業式、修了式を無事催行することができました。
 続きまして、資料1-6の27ページを御覧ください。目標等は同様ですので、資料1-6の28ページで御説明いたします。まず、ナショナルセンターへの90%以上の就職実績ということで、5年間で見てまいりますと、91.9%と目標は達成しております。また、研究課程部(大学院相当)は2015年に研究課程、後期課程(博士課程相当)を設置し、既に3名の修了者を出しております。また、2019年度からこれまでの感染看護師に加え、がん、精神、小児の3つの専門看護師課程を開講し、2019年度(2020年3月)に完成年度を迎えておりますが、その修了生のうち6名が専門看護師の試験に合格しております。そのほか、大学校からの情報発信、そして[3]が研修部における現任者教育ですが、全て目標は達成しております。青の折れ線グラフは、累計の受講者数となっており、年々増加しております。看護大学校についてのご報告は以上です

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。大変広い範囲の話を短時間にまとめていただいたと思います。
 それでは、ただいまの御説明に対して御意見、御質問等がありましたら「手を挙げる」というボタンを押していただけると有り難いのですが、いかがでしょうか。ありませんか。
 では、私からまず口火を切らせていただきますが、医療の提供に関する事項でCOVID-19のことをかなり説明していただいて、非常にたくさんの重要なことを果たしていただいているという感じが非常に強くしたのですが、全国的に見ても疑い例を含めて500例以上診ているというのは、断トツの施設ではないかと思います。そういうことから考えると、いろいろマスコミ、あるいは行政にも参加していただいて、発信をされていると思いますが、臨床面からのいろいろな発信を、例えばどういう特徴があるのか、どういう症状が出ているのか、後遺症はどうなっているのか、あるいは防止にはどうしていったらいいのかというような臨床的な側面での発信を、もう少し積極的にやっていただけると有り難いかなとちょっと感じていないことはないのです。特に国立感染症研究所とタイアップ、カウンターパートのようになっていて、こちらは感染の非常に重要なコメントを幾つかやっておられるのですが、臨床のほうは先生方の所ではないかと思っています。その辺はいかがでしょうか。ちょっとそういう感じもしないではないのですが。恐らく非常に頑張っておられて、非常に多くの経験例を持っておられると思いますので、その辺の発信ということをもう少しやっていただいてもいいのかなとちょっと思ったりしますが、いかがでしょうか。

○国立国際医療研究センター杉山センター病院長
 私ども、最初にそういう指摘を受けましたので、最初13例の症例を報告する前にホームページに載せました。どういう症状だとか、どのような治療をしたかなど全部開示しました。それがかなり役に立ったと私には御連絡いただきました。
 それから、やはり感染症対策は非常に重要なので、各部門で防護服の着方、それもYouTubeで防護服をどうやって着るかなども出しました。各オペ室、あるいはリハビリ室、全ての所でどのような対策をしているかホームページに載せています。ですからいつでも見ていただくことができるようになっています。

○祖父江部会長
 分かりました。そうすると十分、そういう発信の努力はしていただいているということですね。

○国立国際医療研究センター杉山センター病院長
 はい。一般にももっとアピールしようということで、最近はTwitterも始めました。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。是非、今後も一般、それからドクター、医療関係者問わず、やはり拠点として発信していただけると有り難いと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○国立国際医療研究センター杉山センター病院長
 私どもの立場で言いますと、やはり論文化するとかなりはっきりとものが言えることができますので、今後、そういう論文化がどんどん進みますので、どんどん発信していくつもりです。

○祖父江部会長
 分かりました。ありがとうございます。是非、よろしくお願いいたします。
 中野先生が挙手されています。中野先生、よろしくお願いいたします。

○中野委員
 中野です。ありがとうございます。NCGMは、国内のみならず途上国における保健システムの強化や課題の解決に取り組んできていただいていることも非常に評価されるべきことであると私は思っています。先ほど来からのCOVID-19のことで、他の事業、例えばビジネストラックの所にしても、いろいろなことにしても、結構、海外とやり取りをすることに制限が出てきていることが現状だと思います。その辺りの研修員の受入れや日本からの専門家の派遣など、きっと御苦労があるかと思うのですが、今後の業務の遂行に支障がないことはないだろうと思いますが、どのような工夫をされておられるのか、見込みがどうであるかなどお聞かせいただいてもよろしいですか。

○国立国際医療研究センター梅田国際医療協力局長
 御質問ありがとうございます。おっしゃるとおり、研修員の受入れ、そして専門家の派遣は、なかなか今は厳しい状況です。ですので、できるだけオンラインでできることはできるようにしているということで、毎日のように私どもの局では、Webで会議をやっています。これまでやってきた研修も、オンラインのWebセミナー、ウェビナー、あるいはあらかじめ収録をして、今、撮り溜めをしているところなのですが、これまでは研修医をお迎えしてやっていた研修を、こちらで講師陣がモジュールを作って、それを録画して、いつでもオンデマンドで見ていただきながら、チャットなどで質問を頂くというような新しいやり方を今、開発中です。今年度後半、これからどうなるか分からないのですが、JICAも専門家は徐々に帰していこうということもあり、それについて万全の対応を取っていきたいと思っています。また、これを逆にチャンスにいろいろなデジタルを駆使したような新しい研修や、相互のコミュニケーション、そういうノウハウを蓄積するという機会にもしたいと思っています。

○中野委員
 ありがとうございます。是非、本分野でも引き続き指導的なお立場を担っていただきたいと思います。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは福井委員、よろしくお願いいたします。

○福井部会長代理
 人材育成も国際保健協力も、本当にすばらしい働きをされていると思います。正直なところ、外部から期待している以上のアウトカムを出されているのではないかなと思っています。
 質問は、若い方々が国際医療保健の分野で海外に行った後、帰国後のキャリアは国立国際医療研究センターとして、お世話ができているのでしょうか。ほとんどが任期付きになっていると思いますので、その後のことについて心配している人もいるように聞きますが、いかがでしょうか。

○国立国際医療研究センター梅田国際医療協力局長
 御質問ありがとうございます。キャリアパスということに関連して、やはり若い方々が国際機関に出ていこうという関心がある、帰ってきたときにどうなるかという不安を抱えておられることかあります。1つには送り出すほうはNCGMのグローバルヘルス人材戦略センターがサポートするわけですが、日本に帰ってきたときに次の新しい活躍の場を探す間の、「止まり木」と呼んでいるのですが、私どもNCGM国際医療協力局の中にiGHPグローバルヘルス政策研究センターが、この中長期目標期間中に設置されました。今、研究員は徐々に充実しているところなのですが、基本的には海外での経験あるいは国際保健外交をもとに研究論文を書いて、次のステップに、それは国際のフィールドなのか、国連機関なのか、アカデミアなのか選択肢は様々ですが、研究をしながら次の道を探していただく、それをサポートする場も設けているという状況です。もちろん、センター内のスタッフ、医師、看護師ほかNCGMの職員がそのキャリアパスの中で国際的な経験をするような機会も推奨しているところです。

○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。ありがとうございました。それでは、大西委員、よろしくお願いいたします。

○大西委員
 大西です。先ほどの御説明の中に、大変すばらしい成果を上げておられること感銘しました。その中の1つとして、地域の協力体制といいますか、新宿区では普段から、平時のときからいろいろな訓練をされていると聞きましたが、最近では新宿モデルという言葉もあります。どういう訓練をされていたのか、もう少し説明いただけますか。

○国立国際医療研究センター杉山センター病院長
 新感染症病床は一種感染症に対応するのですが、4床を持っています。それを常時、いつでも動かせるように半年に1回シミュレーションをやっています。その訓練はもちろん内部の人間だけですが、外部からの人間を呼ぶこともあります。そういうことによって、いつでも動かせるような状況にしていることは、今回も役に立っています。
 それから新宿モデルに関してですが、これは経緯を申し上げれば、我々の所の帰国者、発熱外来が1日に120件を超えるという、非常にオーバーロードになってしまったので、これ以上はできないということで、PCR検査だけを外出ししようとしました。その際、行政にお声掛けをするとともに、新宿区内ではほかに余り発熱外来をやっていらっしゃらなかったので、PCRを全てそこに集約するように、ほかの病院にも協力を求めました。日頃から割と密接な連携を取っていますので、大学病院3つを含む、8病院が合わせて連携を組むことができました。もちろん医師会のバックアップも受けました。そういう意味で、新宿モデルというのは構想を打ち上げてから、設立して実際にオープンするまで約3週間という短い間で立ち上げることができたと思っています。

○大西委員
 どうもありがとうございました。素晴らしいやり方だと思います。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。それでは続いて、斎藤委員が挙手をされています。よろしくお願いします。

○斎藤委員
 ありがとうございました。COVID-19、エボラ、感染力が非常に強いものを対象にしていらっしゃるのですが、感染をした方というのは出たのでしょうか。これだけの数をこなして感染者がいなかったというのは、やはり大変なノウハウをお持ちだと思うのですが、それをほかの病院にシェアするというようなことはなさったのでしょうか。それが1つです。
 それから、もう1つはマスクや防護服など大変不足して皆さん御苦労なさっていましたが、そのようなことはあったのでしょうか。この2点を伺いたいと思います。

○国立国際医療研究センター杉山センター病院長
 職員に関しては、職員の発生は確かにありました。しかし、孤発例です。院内発生ではなく、外でもらった。感染が分かった時点で、直ちに濃厚接触者全てにPCR検査を行いまして陰性を確認しています。ですので病棟を止める、外来を止めることはありませんでした。それは普段からマスクをきちんとする、手指衛生をきちんとする、それから何らかの異常があったら速やかに申し出る、そのままにしておかないということを徹底させていますので、今のところはそういう院内発生を起こすことはなかったと自負しています。
 それからマスクの不足の件です。これは確かに我々の所も、ほかの病院に比べるとマスクや防護服の在庫はあったのですが、かなり厳しい状況でした。特に高機能のN95の在庫が2週間という状況もありました。そうではありますが、意外と内外から支援を頂きまして、もちろん国内だけではなく中国やベトナムからも支援を受け、潤沢に防護服やマスクを頂きました。そういうことは、やはり普段から国際協力をやっていた賜ではないかと考えています。集まったものに関しては、先ほど新宿モデルで協力してくれましたほかの病院に全て分配しました。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。私も先ほどちょっと質問させていただいたのは、今、斎藤委員が質問された内容とよく似ていまして、感染防御のノウハウを非常に蓄えておられるというか、いろいろ持っておられるので、例えばそういうときにどういう対応をされたのか、職員に感染者が出たとき、あるいは行動指針と言いますか、職員の普段の行動指針のようなものを作っておられるのかどうか。そういうノウハウ、特に病院の院内感染を予防するというところが、非常に今、全国的に問題になっていますので、そのようなことについても是非シェアしていただけると、発信していただけると有り難いなと思っています。これは、ちょっと希望ですので、どうぞよろしくお願いいたします。

○国立国際医療研究センター杉山センター病院長
 ホームページに早速、上げるようにします。

○祖父江部会長
 よろしくお願いいたします。ありがとうございます、非常に参考になると思いますので、また見させていただきます。
 もう1つだけ、ちょっと質問してよろしいでしょうか。看護に関する教育及び研究の所でお聞きしたいと思った点は、先ほどもちょっと触れられましたが、皆様方の所にある看護学校、これはNCへの看護師さんの供給を旨とするということが第一ですね。ですから、90%がNCに入っていただくということが目標になっていたということだと思うのですが、そうしますといわゆる一般の通常の急性期病院や市中病院などの看護教育、あるいは看護実習などとはちょっと違う側面も、教育上ありというような流れになっているのでしょうか。ナショナルセンターというと、やはりちょっと違う病院が結構多い、あるいは普通の市中病院や急性期病院などと比べて少し異なる環境になっていると思いますので、その辺りの教育内容についてちょっと興味がありますが、いかがでしょうか。どういう流れになっているのでしょうか。

○国立国際医療研究センター井上看護大学校長
 御質問ありがとうございます。看護師国家試験を受験するためには、指定規則というものを満たさなければならず、それはどのような看護系大学でも同様です。私どもは設置法において、ナショナルセンターの看護職員を養成するということで、90%というのは第2期の中長期計画で掲げたものですが、ほぼずっと開学以来20年達成できていると思います。
 教育の特徴としては、NCへの人材教育としていますのでいわゆる臨地実習も、NCを中心にということで、高機能病院での実習が中心となっていますが、それがある意味、受験生にとっては憧れと言いますか、全国のナショナルセンターで全ての実習ができるというところが魅力となっていますので、それはある意味、私どもの特徴でもあり独自性でもある。逆に言うならば、地域包括というところはもちろん在宅看護も学んでいますが、市中病院ではそうたくさん実習はありません。それは私どもの特徴だと思っています。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。よく理解できました。ほかにはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。挙手がないようですので、丁度いい時間になりましたので、また後で全体を振り返って質問をするというコーナーを用意しています。もしそこで御質問があれば、またしていただくということにして、少し先を急ぎたいと思います。どうもありがとうございました。
 次は、質問項目の2-1から4-1の業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項です。流れとしては先ほどと同じ流れになっていますが、時間がちょっと短くて説明時間は8分、質問が6分ということですので、要領よく御説明いただけると有り難いと存じます。それでは、法人から御説明をよろしくお願いいたします。

○国立国際医療研究センター山田統括事務部長
 よろしくお願いいたします。項目の2-1、3-1、4-1、業務運営の効率化、財務内容の改善、その他業務運営に関する重要事項について、統括事務部長山田です、よろしくお願いを申し上げます。
 まず2-1の資料を御覧ください。29ページです。中長期目標の内容については、3点掲げています。効果的な業務運営の体制です。ここについては、弾力的な組織の再編成及び構築を行うことを掲げています。令和元年度については去年も御説明しましたが、結核病棟と一般病棟のユニット化の計画を実行に移しました。そのほかにも精神科病棟の集約等を行っており、医療ニーズに沿った病棟再編を積極的に行っているところです。なお、結核病棟と一般病棟のユニット病棟においては、今般の新型コロナウイルス感染症の受入病棟として活用しているところです。そのほか脳卒中センター、あるいはがん総合診療センターを設置したところです。
 次に2つ目の項目の効率化による収支改善について、経常収支率100%以上となるよう経営改善に取り組むということです。冒頭、國土理事長からの挨拶にもありましたように、令和元年度初めて黒字計上させていただきました。前年度△9.9億円に対して令和元年度についてはプラス3.3億円。経常収支率100.7%で、初めて100%を超えたという状況です。幾つか要因があり、前回も御説明しましたが、その1つ目の要因としては、センター病院、国府台病院、大学校、協力局、研究所、それぞれの収支を明確化し、それぞれの責任において経営改善に取り組んだことが、まず大きな要因かと思います。それから地域医療連携を強化したことにより、大幅に患者数が増加しています。特にセンター病院においては、1日平均入院患者数は前年度607名だったものに対して、633名ということで大幅にアップしています。
 32ページを御覧ください。この右側上の段に、手術件数の推移が出ています。2015年から2019年までの推移です。若干、センター病院は凸凹していますが、ここ2年については大幅に右肩上がりになっています。国府台についても、右肩上がりの状態になっています。センター病院においては、前年度5,934件だったものに対して6,543件、国府台病院については1,752件だったものに対して2,307件、それぞれ伸び率110%、131%ということで、大幅に手術件数は増加しています。前回、福井委員からセンター病院の病床規模に対して、5,000件台はちょっと少ないのではないのかという御指摘もありましたが、昨年度においては6,000件台を大幅に上回り、6,543件ということで相当手術件数は伸びている状況です。
 恐縮ですが、また29ページを御覧ください。以上が、今回プラスに転じた大きな要因かと思っています。ただ、今年度についてはコロナの影響を大変大きく受けています。この7月までの4か月の医業収益は、20%の減ということで大変厳しい状況になっていますが、引き続き経営改善に努めていきたいと思っています。
 それから次に、後発医薬品の使用については、数量シェアで80%以上とするという目標に対し、センター病院においては91.1%、国府台病院については94%ということで大きく目標を上回っています。
 次の項目になります。電子化の推進です。令和元年度においては、1つ目としてがんゲノムパネルの検査の保険適用に伴いまして、検体検査システム、病理検査システムと連動したゲノム検査のオーダーシステムを構築しました。また、給与管理システムと情報連動しまして、給与明細のペーパーレス化を実現しました。一方で、情報セキュリティ対策については、職員に対する講習会の開催、あるいはeラーニングの研修の実施により、職員の知識向上を図ったということです。またシステム的には、不審メールのブロックは前年度10万件弱だったものが、35万件ということで大きく向上しています。
 それらを捕まえまして、前年度までの評価はBでしたが、今回特に経営改善が大きく見られたということで、今年度については自己評価Aを付けさせていただいています。
 続きまして、30ページをご覧下さい。財務内容の改善に関する事項です。これについては、2つ事項を掲げています。まず自己収入の増加についてです。病院の本業である医業収益については、前年度321億円に対して341億円、約20億円の増となっています。先ほど御説明しましたが、経常収益の増にこれが直結しているのではないかと思っています。
 外部資金の獲得状況については、32ページを御覧ください。中段に受託研究と治験の表があります。青色の棒グラフが受託研究、赤色が治験です。受託研究については、2億1,300万から2億9,900万、治験については2億9,700万から3億800万ということで、受託研究、治験いずれについても大きく伸びている状況です。
 また30ページに戻っていただきまして、[2]の資産及び負債の管理の事項についてです。繰越欠損金を26年度に比し3.5%削減するということについては、令和元年度については先ほど申し上げたとおり経常収益で3.3億円プラスになりましたので削減できましたが、現在まだ108億円の繰越欠損金があり、26年度末の53億円に対してほぼ倍増している状況です。引き続き経営改善に取り組んでいきたいと思っています。
 なお、財投の借入金については、前年度△10億円ということで確実に減らしているところです。
 続きまして、31ページをご覧下さい。その他業務運営に関する重要事項についてです。評価はBとさせていただいています。目標事項は2つ掲げており、1つ目は、エイズ裁判の和解に関する対応です。目標と実績の所に記載してありますとおりHIV感染症、C型肝炎、血友病、心のケアなど、様々な問題に対し包括的なケアを同じ場所で受けることができる包括外来を設置しており、93.1%の患者が使用しており、目標値の80%以上を大きく上回っているところです。
 そのほか個別救済医療として、ACCの関与が必要な患者をリストアップして、地元医療機関との連携を図っています。この活動により、地方施設の患者に関して長崎大学において肝移植2例、そして群馬大学においては重粒子線治療で肝臓がんの治療2例を行ったところです。このようにHIV患者さんが質の高い医療が受けられるよう努力をしているところです。
 そのほか薬害HIV感染者に関する治療法の評価会議を、はばたき福祉事業団と合同で2回実施をしました。以上が令和元年度の評価です。
 続きまして資料1-6です。こちらの見込評価についても、事項は元年度と同じ事項を挙げさせていただいています。重複する所がありますので、簡単に御説明させていただきます。
 まず1つ目の2-1の事項ですが、効果的な業務運営に体制については、組織の再編については先ほどご説明した病棟再編を積極的に行っているほかに、人間ドックセンターを中長期目標期間中に開設し、特にインバウンドを中心とした受入れを展開しています。
 そのほかは、国際診療部を設置しまして増加する外国人患者への適切で質の高い医療を提供しているところです。
 経常収支については、記載しましたとおり第2期中長期目標期間中の目標値100%以上に関して、期間中の平均97.5%となっていますので、令和元年度については達成できていますが、通年を通して見ますとまだ達成していません。
 具体的には32ページを御覧ください。一番上の段落です。2015年から2019年まで確実に経営状況はよくなってきています。当初2015年は△18.7億円に対して、現在直近の令和元年度プラス3.3億円ということで、これも急激な右肩上がりで向上していることを御理解いただければと思います。
 また29ページに戻っていただきまして、後発医薬品の状況です。これも通年を通しましてセンター病院で91.1%、国府台で94%ということで、ともに目標値を大きく上回っているところです。
 一般管理費を15%、前中期期間中の最終年度に対して削減するということにおいては、現時点においては目標に至っておりませんので、あと1年、引き続き15%以上の削減が図れるよう努力してまいりたいと思っています。
 電子化の推進については、様々取り組んでいます。特にクラウドの情報共有ソフトウェアの導入により、情報セキュリティの強化、利便性を同時に実現し情報共有の推進を図りました。またセンター共通のクラウドを活用しペーパーレス化等、業務改善を図ったところです。
 続きまして、30ページをご覧下さい。まず1つ目の自己収入の増加については、下段の参考指標を見ていただければと思います。診療収入は27年度実績316.5億円に対して、令和元年度341.4億円ということで、24.9億円増加しています。
 それから外部資金に関しては、再度32ページを御覧ください。受託研究数、競争的研究費、治験、ほぼ右肩上がりで上昇している状況です。外部資金の獲得に引き続いて努力していきたいと思っています。このほか寄付金等、皆さんからの御厚意によるものもいただいています。本年度については、このコロナに影響を受けまして多くの皆さんから多大な御援助を頂いている状況です。
 また30ページに戻って頂き、資産及び負債の管理については、繰越欠損金の事項ですが3.5%削減するということについては、先ほど御説明したとおり、まだまだ未達成ですので、引き続き努力していきたいと思っています。
 続きまして31ページをご覧下さい。ここの事項についても、先ほどの説明と同様にエイズに関することを記載しています。がんスクリーニングの一環として、チェックリストを用いた肝検診を実施し、うち1例で肝臓がんが早期に発見され、無事切除できました。血友病専門医による整形外科の診察やエイズ治療・研究開発センターの若手医師による関節治療を実施しているほか、2015年度からは血友病感染者の精神科受診を行い、認知症検査を実施、薬害エイズ原告団のC型肝炎患者のうち治癒した患者について、C型肝炎後のフォローを実施しているということで、2015年度90.9%、2016年度以降100%と着実に実施しているところです。中間評価については、全てB評価とさせていただいています。以上です。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に詳しく御説明いただいたと思います。それでは、ただ今の御説明について御意見や御質問等がありましたら、よろしくお願いいたします。藤川委員に挙手いただいております。藤川先生よろしくお願いします。

○藤川委員
 いろいろな研究や国際的な活動も含めて、何だかセンター全体が非常にいい方向へ向かっているなと言うことを、まずは感じました。そういうこともあって業績も良かった、財務面あるいはPLなどの業績も良かったのかなと思えますが、例えば減価償却費が減ってきたとかコストカットを一所懸命やったことではなくて、基本的に業績がマイナス9.9億から3.3億の黒字化したことに関しては、ほぼ収入の増によることが大きいというようなことを、先ほどおっしゃっていました。今までそういう改革を、どこの病院も大体やっていることかなと思うので、悪く言うと、本気を出していなかったのかなと言うか、ポテンシャリティを十分に活用できていなかったようなことなのでしょうか、その辺り。例えばユニットというか、各センターとの責任明確化というようなことで言えば、今まではある種、大雑把な部分もあったのでしょうか。

○祖父江部会長
 いかがでしょうか、法人側は何かありますか。

○国立国際医療研究センター山田統括事務部長
 収入は先ほど御説明したとおり、各診療科で目標設定をしていただいて、積極的に患者を受け入れることにより非常に収入増に繋がりましたが、今、御指摘がありましたコストカットにつきましては、ちょっと細かい話ですが、どこの病院でもやっているように、節電や様々な節減を行ったり、あるいはペーパーレス化を図ったり、そういったことで細かいことの積み上げもやっております。決してコストカットを全然やっていないということではありませんので、御理解いただければと思います。
 また、先ほど御説明しましたように、特に非効率な病床運営だった結核病棟を東京都との調整によりユニット化を図ったりし、そうした取組みについても費用削減につながっているかと思います。

○藤川委員
 後はほかのセンターから働き方改革への対応の話が結構出てくるのですが、その辺りの御説明がほとんどなかったので、少し補足していただけないでしょうか。

○国立国際医療研究センター山田統括事務部長
 ドクターを含めて全てでしょうか。

○藤川委員
 ドクターを含めてというか、ドクターの負担軽減の問題があるので、ほかの取組をした事例が多かったかなと思います。

○国立国際医療研究センター山田統括事務部長
 ほかのセンターと同様に、医師事務作業補助を増強して、ドクターの負担軽減を図っておりますし、いろいろと各職種でできることは取り組んでおりますが、具体的にどうしたというのはちょっと思い浮かばないです。

○国立国際医療研究センター國土理事長
 タスクシフトについては、特に外科系医師の負担軽減のために特定行為看護師の研修指定病院になりましたし、いろんな意味でナースを増やすように努力しております。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。深見委員が挙手されております。深見委員、お願いします。

○深見委員
 経常収支が黒字化したのは大変よかったと思います。診療報酬が非常に増えたということで、連休中も手術をしたりと大変努力をされていると思うのですが、昨年度はコロナの影響を余り受けなかったという理解でよろしいのですか。2月、3月ぐらいだったと思うのですが、通常だと非常に受診者の減少など、特に国際診療をたくさんやっていらっしゃったので、3月でもかなりの影響を受けたのではないかと想像していたのですが、手術数等も非常に増えていますし、そういう意味では、私の感覚と少しずれがあるのですが。昨年度はまだ受けていないという理解なのですか。

○国立国際医療研究センター杉山センター病院長
 これは昨年度ですので、2020年1月は順調だったのです。2月から影響を受けまして、4月、5月は予定の手術を全部取りやめましたので、手術件数は半分から6割です。インバウンドは3月末から一切ゼロになっています。

○国立国際医療研究センター國土理事長
 コロナがなければ多分、経常収支は5億以上の黒字だったと思います。

○国立国際医療研究センター杉山センター病院長
 そうです。

○深見委員
 分かりました。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。そろそろ時間が押していますが、1つだけ今の、私からちょっとお聞きしたいなと思って、お聞きというよりも、ちょっと要望みたいな感じですが。今おっしゃったように、2018年度の経常収支がマイナス9.9億ですよね、それが2019年度に3.3億、もしコロナがなくて、インバウンドなんかを制限していなければ、差し引きが15億以上の経常収支の黒字、アップになっているということですので、これは今まで他のナショナルセンターでは余り見ない非常に高いアップ率だと思います。今まではマイナスでずっときたのが、ここへきて一気に回復して黒に転じているのは、これももし、いろんな要素が絡み合っているような答えを頂いているのですが、何が影響してここまできたのかというところがほかのナショナルセンターにも共有化できると、非常にインパクトのある内容になってくると思いますので、どこをどうなったらこうなったかを、ちょっと詳しく教えていただけると、ほかのナショナルセンターも非常に参考になるのではないかなという気がします。今のように、医師事務はかなりお金なしで作れると思いますから、そういうものや、看護師さんをかなり増やしたなど、働き方改革もやりながらこの黒が出ている点は、非常に評価したいと思います。またちょっと詳しい話を教えていただけるといいかなと思っておりますが、今日はちょっと時間が、何か一言もしあったら教えていただけるといいかもしれません。いかがでしょうか。

○国立国際医療研究センター國土理事長
 ありがとうございました。昨年度は差引き15億のプラスになるわけですが、前の年度辺りからいろんな手を打ってきた複合的な努力の結果だろうと思っておりますが、一番大きかったのはやはり昨年度、院長が代わり、ベッド管理を毎日やるようにした事ではないかと思います。結局、振り返ってみるとベッド稼動率を上げたのが一番、直接収支改善に響いてきたのではないかなと思っております。

○祖父江部会長
 なるほど。

○国立国際医療研究センター國土理事長
 それ以外にも、病棟再編や不採算部門をできるだけ小さくする努力をしてまいりました。ありがとうございました。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。ちょっと時間を過ぎましたので、ほかに何かありますか。もし御質問がなければ、次に進みたいと思います。何か全体を通じて御質問等ございますか。今までの流れ、先ほどの少し前に遡ってもいいと思いますが、よろしいですか。
 もしなければ、まとめに入りたいと思います。長時間にわたり御活発な御議論をありがとうございました。非常にいい会になったと思います。それでは、最終で法人の監事より、まとめていただいた監査報告書に基づいて御説明をいただきたいと思います。法人の監事の先生、よろしくお願いいたします。

○国立国際医療研究センター水嶋監事
 監事の水嶋です。石井監事も同席しておりますが、私のほうから簡単に報告をさせていただきます。

○祖父江部会長
 よろしくお願いします。

○国立国際医療研究センター水嶋監事
 私ども監事の令和元年度の監査報告は、資料1-4として添付をしているところです。この報告書は6月22日付けで直接、國土理事長宛てに提出をしてあります。報告書の内容全般は昨年とほぼ同じですが、今年度は独法会計基準の改正等があり、監事の監査対象書類の追加・変更がありました。また、監査対象書類に、新たに純資産変動計算書が加わりました。また、行政サービス実施コスト計算書は計算内容の見直しが行われ、行政コスト計算書に改訂されました。監事監査の結果は報告書に記載のとおり、特に重大な指摘事項等はありません。大変簡単ですが、監事からの報告とします。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。何か今の監事からの御発言に関してはよろしいでしょうか。それでは最後に、法人の國土理事長から、今後の課題等を少し含めながら、最終的なおまとめをいただけると有り難いと思います。國土先生、よろしくお願いいたします。

○国立国際医療研究センター國土理事長
 本日は長時間にわたり詳細に御評価いただきましてありがとうございました。御報告いたしましたように、昨年度は経営的には初めて経常収支がプラスになりました。本当は5億プラスになってもおかしくなかったということを言いたかったのですが、評価委員の先生からそれを指摘頂きましてありがとうございました。
 それからCOVID-19ですが、正に我々のセンターが対応すべき疾患であったということで、国難ではありますが、センターの総力を上げて年度末から取り組んでいるところです。先ほど満屋所長をはじめ御説明をしましたように、これからまだまだ芽が出そうなシーズがいっぱいありますので、それを何とか発展させて、人類がコロナと共存できる、あるいは克服できることを目指して研究開発に邁進したいと思っております。
 ただ、経営的には既に4月、5月の2か月で10億円の大きなマイナスになっておりますので、できるところを実際に何とか節約をして経営改善を図りたいと思っております。これからこのパンデミックがどうなって行くのか分かりませんが、経営を考えながら粛々と新型コロナやコロナ以外の患者さんに対応することで病院運営をやりたいと思っています。
 中長期的なことを言いますと、次期をどうするかと今、いろいろ検討をしているところですが、やはり我々のミッションである総合病院があって、研究所があって、人材育成の看護大学校もあっての中で、総合的な高度医療をやりながら、しかも感染症対応を行う必要があります。これまでの日本の対応が良かったのかどうかといろいろ問われているわけですが、私どもナショナルセンターとして、次の中長期にどう社会に貢献できるかを考え、今までの学びを生かす形でのいろいろな新しいプロジェクトや組織の再編などを検討しているところです。今後ともよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

○祖父江部会長
 どうも、大変ありがとうございました。非常にいいおまとめを頂いたと思います。今後とも、いろいろ頑張っていただけると有り難いなと思います。本日はどうもありがとうございました。
 では一応、事務局、評価者のほうは10分の休憩でいいですか。

○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室十鳥企画調整官
 はい、事務局です。10分程度の休憩を取り、16時5分に再開でお願いしたいと思います。

○祖父江部会長
 では、よろしくお願いいたします。また16時5分に。

(国立研究開発法人国立国際医療研究センター退室)
―休憩―
(国立研究開発法人国立がん研究センター入室)

○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室十鳥企画調整官
 事務局です。それでは、定刻になりましたので評価部会を再開します。国立がん研究センターの令和元年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価についての議論に入る前に、改めて注意事項を御案内します。マイクの設定についてです。御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いします。御発言の際は、ZOOMサービス内の「手を挙げる」ボタンをクリックいただき、座長の指名を受けた後、マイクのミュートを解除し御発言をお願いします。また、御発言の際には、必ず冒頭にお名前、資料を用いて御説明される際には資料番号と該当ページを明言いただき、御発言終了後はマイクをミュートにしてくださるようお願いします。なお、進捗管理のため、事務局よりZOOMサービス内のチャット機能を利用して経過時間等を画面に表示しますので、御承知おきいただけますようお願いします。
 それでは、以降の進行を祖父江部会長、よろしくお願いします。

○祖父江部会長
 今日は、大変お忙しい中、このような新型コロナの蔓延の中、お集まりいただきましてありがとうございます。今から1時間40分ぐらいかと思いますが、お付き合いください。この評価部会の始まる前に、はじめに、理事長の先生から御挨拶をお願いします。中釜先生、よろしくお願いします。

○国立がん研究センター中釜理事長
 理事長の中釜です。本日は、当センターの業務実績及び中長期目標の実績見込みについて説明の機会を頂き、誠にありがとうございます。最初に私から、センターの活動の概要について簡単に説明します。当センターは、国立研究開発法人として世界をリードする研究成果の創出と研究開発成果の最大化が求められており、センター一丸となってこのミッションに取り組んでいるところです。近年、がん領域においては、がん医療技術の高度化・精細化とともに、患者の層別化による最適な医療の提供が求められています。当センターとしては、これらの高度医療の実現を可能とする基礎研究、開発研究の強化に精力的に取り組んでいるところです。また、健康長寿社会の実現という観点からは、予防疫学研究やサバイバーシップ研究等の公衆衛生研究の充実や、また、正しい情報の発信と、がん医療の均てん化への貢献・支援を行っているところです。
 センター全体として目指すべき将来展望としては、世界をリードするキャンサーセンターを標榜しています。NCCの持つ強みと特徴をいかしながら、集中と選択を行い、大きな柱の1つとしては、持続可能ながん医療システムを構築し、国内のがん医療ネットワークのハブ機能を果たし、新しい診断治療法を開発・導入・展開することで日本のがん医療を牽引すること。また、もう1つの柱としては、世界をリードする創薬、医療機器、医療技術開発を推進し、グローバルに通じる独創的ながん医療を創出し、アジア地域に多いがん腫の予防、診断、治療で世界を牽引することにより、世界トップテンの開発力を持つセンターを目指して一丸となって取り組んでいるところです。
 中でもセンターが特に注力する課題としては、ゲノム及び免疫医療の最適化、さらには希少がん、難治がんの解決、患者本位の医療モデルの提示、医療情報基盤の構築、加えて、政策提言や国民への正しいがん情報の提供が挙げられます。本日は、これらの行動計画の下で、各部門からの成果の一端を御紹介したいと思います。本日はよろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 どうぞよろしくお願いします。ありがとうございました。非常に簡潔におまとめいただいたと思います。それでは、最初の項目です。評価項目1-1及び評価項目1-2です。「研究開発の成果の最大化に関する事項」に係る業務実績及び自己評価について議論したいと思います。先ほども少しお話がありましたが、まずは法人から年度評価を頂き、その後、見込評価に触れていただくという順番で御説明いただきたいと思います。説明時間は、この項目については20分、質疑時間は18分となっておりますので、できるだけ簡潔に御説明ください。それから、終了の時間の1分前と終了時間に、先ほども少し説明がありましたが、事務局からチャット機能でその時間をお知らせいたしますので、何とぞよろしくお願いします。それでは法人から、まずこの項目の御説明をお願いします。よろしくお願いします。

○国立がん研究センター間野理事
 それでは、研究開発に関する事項について研究所の間野から説明します。資料2-2の4ページ、評価項目1-1、担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進です。本項目については、これから述べます事項に基づいて自己評価をSとしました。以下、具体的に御説明します。4ページの右側を御覧ください。1.がんの本態解明に関する研究です。[1]世界規模の国際NWによる最大のがん種横断的ゲノム解析です。当センター研究所は、がんのゲノム解析について世界をリードしてまいりました。これまでやられている研究は、主にヒトゲノムの中でタンパクをコードするエクソームの領域のシーケンス解析が多かったのですが、今回、国際共同研究に参画して、2,658例のがんの全ゲノムシーケンスを行いました。非常に大規模な研究事業で、その成果は計23本の英語論文として発表されましたが、そのうち6本が「Nature」誌に出版されて、そのうち3本については当センター研究所が著明な貢献をいたしました。
 中でも、1本については当センター研究所の研究員がファーストオーサーとして論文発表をしています。彼の論文成果は、特に、がんのゲノムの構造異常と遺伝子の発現異常との相関を調べたものです。例えば、彼のデータによりますと、遺伝子のプロモーター領域に突然変異が起きた結果、遺伝子発現が著明に変化する例が700か所もがんゲノム中に存在することを明らかにして、今後のがんの原因解明における重要な基盤情報になると思います。
 時間の関係で少し端折らせて頂きますが、7ページの左側[2]、がんの予防法や早期発見手法に関する研究。[1]メタゲノム・メタボローム解析により大腸がん発症関連細菌を特定です。これまでも、大腸がんの発見に糞便中の細菌を調べることによって早期発見できるという研究が数例報告がされていましたが、この問題に決定的な答えを得たいということで、計616例の様々なステージの大腸がん患者さん、あるいは良性の大腸ポリープ、あるいは何もない健常な人の糞便中に存在する細菌を、次世代シーケンサーを用いて網羅的に解析を行いました。また、その616例については、糞便の中に存在する代謝産物の測定、さらには、生活習慣の細かいアンケートによってその情報を得て総合的に解析をしました。その結果、前がん病変や早期がんに特異的に存在する糞便内細菌を特定することに成功しました。このような大規模解析によって糞便による大腸がんの早期スクリーニングが現実のものとなったと考えます。この成果は「Nature Medicine」に発表されました。
 8ページの右側の[3]、アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発に関する研究です。[1]ARID1A欠損がんに対する治療薬を同定。ARID1Aというのは様々ながんで異常になっているがん抑制遺伝子ですが、ARID1A欠損がんに対する薬剤はこれまで存在しませんでした。しかし、当研究所では、ARID1Aが壊れると、その結果、細胞の外にあるシステインというアミノ酸を細胞内に取りこむSLC7A11トランスポーターの発現が低下することを発見し、その結果、細胞内の還元酵素活性が落ちることを明らかにしました。
 そのような細胞には、細胞外から酸化剤を加えますと細胞内が過酸化状態になって細胞死が誘導されます。ARID1Aが壊れていないと、細胞内の還元活性が十分にあるために、外から酸化剤を加えても細胞死は誘導されません。つまり、ARID1A欠損がんに特異的に効く薬ができることになります。実際、右側のグラフのAPR-246は酸化剤ですが、それを様々ながんの細胞株に投与しますと、赤線で囲むように、ARID1A欠損型のみに細胞死が誘導されることが明らかになりました。これで、ARID1A欠損がんに対するがん種横断的な治療薬の候補ができたことになります。
  9ページの右側の[3]、国内初の造血器腫瘍を対象とする遺伝子パネル検査の開発を御紹介したいと思います。昨年6月に、2種類のがん遺伝子パネル検査が日本で保険収載されましたが、いずれも固形腫瘍に対するものでした。白血病や悪性リンパ腫といった造血器腫瘍に対する遺伝子パネル検査というのは世界的にも開発が遅れています。そこで、我々がんセンターが中心となって、日本初のオールジャパンの造血器腫瘍がん遺伝子パネル検査法を開発しようと考えました。下に書いてありますように、京都大学、名古屋医療センター、九州大学、それからJALSG、JALSGというのは、日本成人白血病の臨床試験の一番大きな機構ですが、それらと連携して遺伝子パネルを開発しました。図の右下にありますように、大塚製薬にライセンスアウトして、現在、臨床試験が始まっています。こうして、日本初のオールジャパンの造血器腫瘍のパネル検査が今、臨床試験に入っていて、成功すれば、これも保険収載を目指したいと思います。
 10ページの右側の[4]、患者に優しい新規医療技術開発に関する研究。[1]全く新しい非侵襲治療BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)の開発です。幾つかのがんは、特異的にホウ素を取り込む能力が高いことが知られています。そのようながんの患者さんに対して、末梢血からホウ素の化合物を静脈注射しますと、がん細胞にホウ素が集積されます。そこに、細胞外から放射線で中性子を当ててやりますと、ホウ素が核分解を起こしてγ線とかα粒子を出して細胞死を誘導することになります。これは、ホウ素を取り込まない正常細胞に全く影響を与えませんので、正常組織に影響を与えにくい放射線療法ということになります。この条件検討を研究所で行い、その機器の開発や設定を中央病院で行って、昨年の11月から臨床試験がスタートしました。これも成功すれば日本での保険収載を目指したいと思います。
 11ページ右側の[5]、新たな標準治療を創るための研究を御紹介したいと思います。これは、日本で立ち遅れている支持療法、緩和療法に対する強固なエビデンスを日本から発進したものになります。抗がん剤の種類によっては患者さんに強い吐き気をもよおすことがあり、患者さんのQOLを下げることになります。そのような患者さんにどのような治療が本当に有効なのかを調べるために、標準制吐療法+オランザピン、これは抗精神薬ですが、その5mgの眠前投与の療法が一般的な制吐療法に比べて有効であることを、二重盲検のランダム化第Ⅲ相試験を行いその効果を証明しました。これなども、がんセンターから支持療法に関する新しいエビデンスを創出したことになると思います。
 次に14ページを御覧ください。これは国立がん研究センターの論文数と被引用数のグラフをまとめたものです。真ん中のグラフは、医学領域の論文数は青で、腫瘍学の論文数は赤で示していますが、医学領域ですと日本で第9位、しかし、腫瘍学となりますと第1位の論文数になります。また、右側のグラフは、論文の中でも特に他の論文からたくさん引用されたHighly Cited Paperだけをまとめたものですが、それを見ますと、医学領域の論文数でも腫瘍学の論文数でも日本1位を国立がんセンターが取っています。このことからも、論文業績も十分達成したのではないかと考えています。
 15ページ、評価項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備です。これは、日本でもがんのゲノム医療が問題なくこれまで開始されて進捗してきましたので、自己評価をSとさせていただきました。15ページにありますように、1番、がんゲノム医療の基盤整備、[1]がんゲノム情報管理センター(C-CAT)が順調に稼働、全国のがんゲノム医療の支援を開始しています。現在は、206の日本中の施設でがんゲノム医療が保険で行われていますが、患者さんがゲノム検査を受けますと、その患者さんのゲノムの情報に基づいて、その患者さんにマッチした薬あるいは臨床試験の情報をまとめたものをC-CAT調査結果として各病院にお返ししています。今まで、昨年6月1日に保険収載されて以降、6,000例近い患者さん一人一人のC-CAT調査結果を返却していて、C-CATのデータを受け取ってから調査結果を返すまでのターンアラウンドタイムは1.3日と極めて短く、これまで大過なくがんゲノム医療は成功裡に進んでいると考えます。
 16ページの左側の[2]「Onco Guide NCCオンコパネルシステム」の保険収載決定です。NCCオンコパネルというのは当センターで開発したがん遺伝子パネル検査でして、まずトップギアプロジェクトという形で臨床研究としてスタートしましたが、ついに昨年6月1日に日本初の保険収載を受け、日本のがんの患者さんの臨床に直接役立つこととなりました。また、右側の[3]、NCCオンコパネルの結果に基づく治療へのアクセスを拡大する「受け皿試験」開始ですが、日本での保険収載というのは、基本的には抗がん剤の承認は臓器別ですが、がんの発生臓器が保険対象から外れている場合に適応外となります。そのような患者さんは自費診療になるのですが、これを法的にサポートするような受け皿試験というのが昨年の10月にスタートしました。こういう形で、正式に適応外治療を受ける仕組みができたことになります。
 17ページの左を御覧ください。[2]産学官の連携ネットワークの構築です。SCRUM-Japan/アジアでのリキッドバイオプシーによる世界最大規模の新薬開発プラットフォーム構築、アジア展開・グローバルエビデンスの創出です。これまで、日本では、当センターの東病院が中心となってSCRUM-Japanという最大の全国がんゲノムスクリーニングプラットフォームを構築して臨床試験を行ってきました。特に、当SCRUM-Japanのプラットフォームでは薬剤の承認に重点を置いておりまして、この上に書いてありますように、これまでに新薬5剤、6適応と遺伝子パネル6件の薬事承認を取得しております。さらに、2018年からは、リキッドバイオプシーによる遺伝子スクリーニングを導入しておりまして、これまで、SCRUM-Japanで1万2,000例、リキッドバイオプシーで3,500例という世界最大規模のゲノムデータベースを確立しております。さらに、昨年からは、SCRUM-Asiaとして、アジア地域に本プラットフォームを拡大する試みも行っております。既に、台湾が参加しておりまして、今後、韓国等、アジアの他の国も加えていきたいと考えております。
 18ページの左の[4]、国際連携・国際貢献です。[1]として、アジア主導の開発に向けて、ネットワーク構築と新薬開発です。当センターの理事長のリーダーシップの下、アジアの薬剤開発を日本が主導権を握って行うことをこれまで積極的に行ってきました。先ほど申し上げましたSCRUM-Asiaもそうですが、新たにAsiaONEコンソーシアムというネットワークを作りました。これは日本、韓国、香港、シンガポール、台湾における、特に早期の、Firs-in-Humanを含む第Ⅰ相臨床試験を行うネットワークです。既に11治験が行われていて、各国での薬剤承認を目指しております。アジアの地域との人材交流が盛んに行われている姿を右側に表しております。さらに、その下に国際協定とありますが、アジア地域での国際協定(MOU)を結ぶとともに、もちろんこれまでどおり、欧州あるいは米国とのMOUの更新、共同研究の拡大に心掛けております。
 19ページの[3]国際機関プロジェクトへの参画と協力です。先ほど申し上げましたように、特にアジア地域の国際協力を強力に推し進めておりまして、その結果もあり、左のグラフにありますように、国際共同治験件数は、平成27年度の259件から令和元年度には470件まで、ほぼ2倍に順調に増加しております。その下[4]として、我々は、アカデミアだけではなくて、さらに企業とも積極的なパートナーシップを結んで、日本への薬剤の導入を試みています。ここでは、GSK(グラクソ・スミスクライン社)との戦略的パートナーシップ契約締結を上げております。GSK社は、世界の各地域での薬剤開発を行うために、Oncology Clinical and Translational Consortiumという枠組みでハブ病院を各領域に作ろうとしていますが、アジアでは、日本の国立がん研究センターがハブ病院としてアジア地域で初めて認定されて、現在、薬剤開発を連携して行っている所です。
 資料2-2はこれで終わりますが、次に、資料2-6を使って、これまでの経緯について簡単に御紹介いたします。例えば、資料2-6の5ページに、様々ながんゲノム解析の結果が表されております。
 6ページの左側、これは、当センター研究所で発見したRET融合遺伝子、肺がんの融合遺伝子に対して、薬剤耐性変異を発見したものです。そのアミノ酸置換でなぜ薬が効かなくなるのかを、スーパーコンピュータの「京」を使ったモデルシミュレーションを行って明らかにし、更に、その耐性変異があっても有効な薬剤などをスクリーニングしております。
 8ページの右側の[2]、悪性脳腫瘍等の増殖を抑制する変異型IDH-1阻害剤の開発です。IDH-1という酵素のがん化変異が脳腫瘍に高頻度に存在することが知られていますが、当センター研究所と第一三共株式会社と共同で変異型IDH-1に特異的に効く阻害剤を開発して、臨床試験まで進めてきました。下のCTの画像にありますように、膠芽腫だと思いますが、完全寛解が生じるという目覚ましい有効性を示しております。
 9ページの左側[3]、血中のマイクロRNAを用いた卵巣がんの早期診断法の開発を示しております。ここにありますように、高い特異度と感度で卵巣がんを早期に発見することができております。
 13ページは、幾つかの主要なテーマにおける年度ごとの業績を表しております。最初はがんのゲノム解析で、例えば肝臓がんや胆道がん、AYA世代のがんなどの成果を表しており、令和元年度は、先ほど申し上げたように、がんの全ゲノム解析を行いました。下側は、がんのゲノム医療に関する当センターの寄与です。平成27年度にトップギアプロジェクトとして「NCCオンコパネル」の開発をスタートして、平成30年度はC-CATの設立、令和元年度はNCCオンコパネルの保険収載、更には造血器腫瘍の遺伝子パネル検査の開発を挙げました。
 14ページの上は、がんのアキレス腱を標的とした新たな治療の幾つかの成果を表しております。下は、マイクロRNAによるがんの早期診断モデル開発を年度ごとに、例えば平成27年-28年度では乳がん、平成29年度では卵巣がん、そして令和元年度では食道がん、あるいは脳腫瘍に関してデータを出してきております。
 15ページでは、当センターの論文の数と被引用数の推移を表しております。赤色が当センターです。論文の医学領域での論文数として、Highly Cited Paperの数として、がんセンターが2018年から日本で第1位になっております。右側は医学領域の総論文数です。がんセンターはまだ赤色で9位ですが、論文数が急増していることがお分かりいただけるかと思います。私の説明は以上です。ありがとうございました。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常にすばらしい御説明をいただいたと思いますが、今の御説明に対して御意見、御質問はありますでしょうか。いつものように「手を挙げる」というボタンが右にありますので、それを押していただいて、御発言いただけると有り難いと思います。いかがですか。ありませんでしょうか。
 私から細かい質問をいたしますがよろしいでしょうか。先ほど構造異常という、全ゲノム解析をずっと、すごいゲノムの発見が、次々行われているというのが率直な印象で、大変すばらしいと思いました。全ゲノム解析をどんどん、今、押し進められているということで、その中に構造遺伝子という言葉を少し使われたと思いますが、例えば、私は神経のほうなので、神経のほうではノンコーディングリージョンの繰り返し配列みたいなものが、神経変性疾患の原因になるということがだんだん分かってきたのですが、がんの領域ではいかがでしょうか。ノンコーディング、先ほど構造異常ということで、どういうものをおっしゃっているのかちょっと分からなかったのですが、細かい質問で申し訳ありませんが、ノンコーディングのもの、変異などもかなりあるというように考えていいのでしょうか。

○国立がん研究センター間野理事
 御質問ありがとうございます。正にそのとおりでして、幾つかのメカニズムでノンコーディング領域の変異が、発がんに関与していると考えられています。例えば、ロングノンコーディングRNAというのが、ヒトのゲノムは大体7割以上の領域が転写されていると考えられていまして、その多くはタンパクを作らないノンコーディングRNA、特に長いものをロングノンコーディングRNAないしはリンクRNAといいます。その中には、HOTAIRなど発がんに寄与するものがわかっていますし、ノンコーディング領域の変異がタンパクを作る遺伝子の高発現の原因となり、発がんに直接寄与することもわかってきました。

○祖父江部会長
 そうですか。

○国立がん研究センター間野理事
 それから、これも当センターの研究所の成果なのですが、一部の腫瘍ではPD-L1遺伝子の3’ノンコーディング領域が構造異常を起こしてPD-L1タンパクが極端に高発現をして、生体の免疫危機から逃れるということも分かってきました。そのように非コード領域が発がんにダイレクトに関与してくるということが幾つか分かってきていますし、そのような発見は更にますます増えるだろうと考えられます。特に、今までの次世代シークエンサーのような150塩基長ぐらいしか読めないようなシークエンサーと違って、今は30キロ塩基長とか、長い領域を読めるものが出てきましたので、繰り返し配列が多いヒトゲノムでも、構造異常が正確に分かるようになってきましたので、そこがこれから明らかになると思います。

○祖父江部会長
 そうですか。そうすると、がんでもあるのかなと思って考えていたのですが、どうも、どんどん出てきそうだということでよろしいですか。

○国立がん研究センター間野理事
 はい。

○祖父江部会長
 そうすると、今までの全ゲノムをショートリードで読む形でずっと蓄積してきたことについては、今後そういうロングリードのもやっていかれようとされているのか、その関係をどうしようとされておられるのですか。

○国立がん研究センター間野理事
 テクニカルなことですが、ロングリードのシークエンサーは正確性に劣るのです。ですので、理想的には両方やって、ショートリードで塩基の配列の正確性は担保して、長い大きな構造異常はロングリードで読むというのは、これからは必須になってくると思います。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。すみません、ちょっと細かい話で、申し訳ございませんでした。藤川委員が挙手されておられますが、藤川先生、よろしいですか。

○藤川委員
 藤川です。素人ながらにも、非常に戦略的に研究開発を進めておられるという気がしました。オールジャパン体制にして、いろいろなものを日本企業にライセンスアウトしてみたり、アジアで連携を組んで、その中でイニシアチブを取っていくのだという姿勢が非常によく分かりました。
 その中で、ほとんど出てこなかったのは、中国が出てこなかったということで、今、いろいろな局面で中国とどういう関係を結ぶかというのは、大きな話なのかなと思いますが、例えばCOVID-19の論文なども、中国は倫理の面で余り制約がないので、どんどん出してくるという話を聞くと、どうやって戦っていくのかというか、どのような付き合い方をしていくのかというところを教えていただけないかと思いました。

○国立がん研究センター間野理事
 とても大事な問題で、センター内でも少し人によっては違った意見になるかと思いますが、がんのゲノム解析でも、今ではアメリカと中国が両巨頭になっています。ですので、それを日本でどうやって乗り越えていくのかというのはすごく大きな問題で、彼らにない強みを持って解析しないといけないというように思っています。
 日本には、非常に詳細な臨床情報を集めることができますので、それを利用することが重要なポイントです。ゲノムはゲノムだけ調べても、余り有意義なことが分からなくて、患者の臨床情報ですね、例えば高血圧があるとか、糖尿病とか、あるいは抗がん剤を使うとすごく副作用が出てしまうとか、そういうことで一緒に合わせて解析すると、薬の反応性とか副作用の原因となるゲノム変異を同定することができます。したがって、詳細な臨床情報と一緒に解析することで中国に対抗することが一つと考えています。
 また、もちろん中国とは戦略的な握手も必要ですが、アジア地域でこれから薬を開発していくのは、最終的には中国と日本との戦いになると思っています。それは臨床試験だけではなくて、今は中国には国際的に製薬会社がないですが、彼らは必ず作ろうと思っていますし、今、既にそういう製剤の化合物なども論文発表が次々と出されていますので、やはり日本対中国の戦いになると思っています。それを、いかに乗り越えていくかというのは大きな問題で、1つの日本の手段は、例えば、保険のがんゲノム医療で作り上げたC-CATの大きなデータベースがありまして、ああいうデータベースは国として持っているのは日本だけですので、それはやはり、すごく大きな日本のアドバンテージになると思います。
 一方、そのデータを中国がお金を出すから買いたいと言ったときに、どうするかがやがて問題にはなるのですが、それでも、こういうことができるのは日本の最大の強みであると考えています。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。それでは、いいですか。大西委員、いかがでしょうか。

○大西委員
 どうもありがとうございました。大変な成果を上げられたことがよく分かりました。その中の1つの問題というか、テーマとして、オンコパネルは保険収載されたことは大変めでたいものです。令和元年資料16ページで、遺伝子パネル検査をした後、患者申出療養のほうに移っていく、それは適応外薬又は未承認薬物治験に参加すると答えているのですが、この場合は患者申出医療というのは、先進医療みたいなものなのでしょうか。

○国立がん研究センター間野理事
 先進医療とは違って患者申出療養というのは、基本的にはがんに限らず、他の疾患で承認されている薬を自費で適応外で使うシステムです。普通は自由診療は保険診療と同時にはできませんが、この制度に入ることによって、一緒に使えるようにするのが患者申出療養制度です。でも現実的には、申し込んでから、実際に承認されるまで大体半年ぐらい掛かるので、残念ながらがんの領域では役に立たないことが多いです。ですので、この受皿試験は、それを逆に利用して、一番最初に申請するときに、使える分子標的薬をみんなまとめて申請して、それで一遍に承認してもらう。そうすると、今度その病院のネットワークの中で1人でもそれに適合する人が出れば、すぐにお薬が使われるという枠組みになります。あくまで自費で保険適用外のものを使えるという枠組みなのですが、我々はさらに企業に申し出て、コンパッショネートユースという形で、企業がお薬を無償で提供してくれる可能性を検討してもらい、既に小野薬品、中外製薬、ノバルティス社の3社がお薬を無償で提供してくださいました。その3社の薬に関しては、少なくとも薬の費用は自分で払わずに、しかも、公的な形でその薬が病院で使えるという形になっています。

○大西委員
 ありがとうございました。そうすると、患者さんの負担は、場合によっては大きくなるかもしれないが、皆さん方の努力によりまして、製薬会社から提供いただける場合も増えていると。

○国立がん研究センター間野理事
 はい、そうです。

○大西委員
 ありがとうございました。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、花井委員、よろしくお願いいたします。

○花井委員
 よろしくお願いします。がんの医療が本当に細分化、高度化しているということで、このセンターの歩みを見ていると、正にそれを反映していると思いました。
 説明スライド10のホウ素中性子捕捉療法が治験に入ったというのも、これも患者の負担が少ない新しい治療法と思って、専門的なことは難しくて分かりませんが、何かすごい期待ができるのですが、これ、元年度に治験に入って、こういったものはシングルアームで開発は進めていくのですか。いつ頃、例えば保険収載はどのぐらいでできるような感じの開発スピードになるのでしょうか、教えていただけますでしょうか。

○国立がん研究センター島田中央病院長
 昨年、10月に始まりまして、シングルアームでやっていくわけですが、効果を見ながら5例、10例と見て、その効果によって保険につなげていくということで、今のところ始まったばかりなので、余り強いことは申し上げられないということが正直なところです。

○花井委員
 早期承認制度とか、先駆けとかそういう、いわゆる早期承認を求めるようなところには掛かっていくのですか。

○国立がん研究センター島田中央病院長
 いや、そうではなくて、地道にデータを出して承認を取っていくということになると思います。

○花井委員
 分かりました。ありがとうございます。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。それでは、深見委員、お願いできますでしょうか。よろしくお願いいたします。

○深見委員
 深見です。非常に個々の研究ですばらしいデータをたくさん出されていて、包括的にやっているとか、多角的にやっているとか、いろいろなところでやっているというのは、とてもインパクトはあるのですが、がんセンターのよいところということを考えたときに、何なのだろうというところが分からなくて。例えば、ほかの所ではなくて、独自のがんセンターでなくてはならないという、そこのところは何があるのでしょうか。

○国立がん研究センター間野理事
 1つには、例えばC-CAT、がんゲノム管理センターというのは、がんセンターならではのことだと思います。日本中のがんの患者さんのゲノム情報・臨床情報を集約して、データベースを作り、それを利活用していくというのは、やはりこれは、がんセンターではないとできないことだと思います。
 それから、個別になりますが、全般的には、がんセンターは研究所と病院が非常に近い。それは単に距離も近いですし、一体化しているということがあって、これぐらい研究・ベンチの発見が臨床にすぐ結び付くような施設は、日本では多分ほかにないと思います。それが、がん領域に関して研究者・医師みんなが集まってきているというのが、がんセンターの最大の特徴だと思います。
 あと、私個人的には、やはりがんセンターは国のセンターですから、新しい薬を作るのももちろんそうですが、世界の新しい薬を一刻も速く日本のがん患者に届けるというのも、すごく大きな使命だと思います。多分、放っておくと臨床試験が、みんな中国にいってしまうということになると思いますので、それをブロックして、日本の患者さんに少しでも早期の薬を速く届けるというのがセンターとしての個人的には使命ではないかと考えて、先ほどのC-CATなどもそうですし、やはり企業に、アジアでうちを選んでくださいという働き掛けなどもその表れと考えていいと思います。

○深見委員
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 まだありますか。

○深見委員
 いえ、データの活用のところで、いろいろ頑張っていらっしゃるのはよく知っていますので。是非、集めたデータを活用することをお願いしたいと思います。以上です。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。私は、がんセンターは今後こういうオールジャパン、あるいは世界を相手に少なくともオールジャパンのいろいろながんに関連するものを一手に集めて、オールジャパンの体制を取っているという点で、ほかのナショナルセンターもこうあるべきだというようにいつも思っているところですので、今、間野先生がおっしゃったがんセンターの役割というのは、非常に、これ、法律にも支えられているところがあると思いますが、非常にうまく、今、走っていただいているなという感じはしているところです。
 私からの質問は、あと2つ、少し時間があるようですので、出してよろしいでしょうか。2つありまして、これ、クイッククエスチョンですので、すぐ答えていただければいいと思いますが、1つは、先ほど院長からもトップ10、世界のベンチマークに対してどの位置にいるのかということをおっしゃられましたし、今、間野先生からも中国との、あるいはアメリカとの関係で日本がどの辺にいるのかというお話が出ましたが、その辺は世界のベンチマークに比べてどういう点が優れていてトップ10に入っているのかどうかというところを、1つ教えていただきたい。
 もう1つは、これはちょっとファンシーな質問なので、どういうお答えをされるか分からないのですが、予防です。つまり、がんというのはどこからできてくるのかよく分からないのですが、恐らくがんになる前に相当早くからがんのなりやすさとか、がん前状態というのがあるのだと思いますが、そういうものを予測的に評価するという指標、何かたくさんの指標の塊みたいなものでもいいのですが、今はどちらかというと、がんになったときにできるだけ早く、先ほどの腸のものはがん前の状態も少し反映しているような感じがしましたが、もっと早く、そろそろがんになりそうですというような、そういう指標を何か指標コンプレックスみたいなもので見ていくというのは、将来的には可能かどうか。非常に小さい状況ですよね。ですから、そういう状態になれるのかどうかということを教えていただく、この2つです。後のほうの質問は、ちょっとファンシーなのでどちらでも結構ですが、まず、トップ10との話で、ベンチマークでどうかということを教えていただければと思います。

○国立がん研究センター間野理事
 トップ10かどうかということは、私だけではなくて、両病院長の御意見もあると思いますが、製薬会社が当センターをどのように見ているかというように考えますと、やはり彼らはMD Andersonとか、Sloan-Ketteringとか、そういう所と一緒に薬を開発していきたいという気持ちはすごく強いです。

○祖父江部会長
 なるほど。

○国立がん研究センター間野理事
 それは、がんセンターに来てみて、企業の海外本社の人たちと付き合ってみて、すごく感じます。彼らは、アジアでは、本格的にどことやっていくのかというのはまだ決めかねているというのが現状だと思います。韓国などでは、割と病院は結構大きな病院が多いですし、もちろん中国は更に大きいですが、今の状態では臨床情報の質などにおいて中国はまだ雑だというところで、アジアでどこを見ていくのかということは、彼らは決めかねているというのが現状ではないかと思います。しかし、アジア人というのは、恐らく10年か、そこらでは医薬品の最大のマーケットになるかもしれませんので、それは肩を組まないといけない。このままだと、放っとけば中国になるのは間違いないですから、それを何とか止めたいと思っています。
 2番目の御質問はすごくいい御質問で、恐らくこれから10年で一番変わるところはがんの予防だと思います。我々も、多分、祖父江先生も私も皮膚の中にはRASの変異が入っている前がん病変があるのですが、黄色人種はそれがそのままがんになることはほとんどなく、ほかのことで天寿を全うします。例えば皮膚ならばRASの変異細胞があるとか、血液ならばDNMT3A変異細胞とかがクローナルに増えていて、それが白血病にならないまま過ぎている。でも、例えば大規模に解析をすると、血液の中にそういうクローナルに増えている細胞、クローン性造血と呼ばれているのですが、それがあると、白血病の発症リスクが10倍ほど上がるのです。

○祖父江部会長
 そうですか。

○国立がん研究センター間野理事
 これから全ゲノム解析がされていって、その人の持って生まれた生殖細胞系列ゲノムの多型に後天的変異が組合わされていくと、それぞれの臓器の発がんリスクが何倍になるかということが、割とゲノムの言葉で定量的に語られる時代になると思います。
がんの予防法というのは大きく変わると思います。

○祖父江部会長
 ありがとうございます。ほかに何か御発言はありますでしょうか。

○国立がん研究センター大津東病院長
 今のトップ10ということに関して言うと、行き着くところは世界共通の評価ということになると、論文のところに、あるいは実用化の薬事承認の取得ということが、やはり競争力として開発力の指標になると思います。
 今、間野理事がおっしゃったように、日本の大手もみんな今グローバルですので、その中でやはり米国等のSloan-Ketteringであるとか、MD Andersonというのは、パワーを持っています。ただ、非常に今、我々の所でも日本のフェーズⅠの9割は両病院で実施しています。数的に言うと、アジアの中では両病院はどちらもトップクラスです。今、SCRUM-Japanでも2万例近いゲノムと臨床データ、それからリキッド、それから、免疫のほうもかなり詳細なデータで、数千例のデータを持っています。まだ、Sloan-Ketteringよりはちょっと少ないですが、かなり近いデータを持っている。今の臨床試験、TRにおいて今年度は、我々の所だけでもFirst-authorで、「New England Journal」「The Lancet Oncology」「The Nature Medicine」等々のトップのジャーナルに次々と出していますので、まだトップ10かどうかということは分かりませんが、ようやくワールドカップに参加できたかなぐらいで、ベスト8をどうやって目指そうかというレベルにあるというように理解しています。

○祖父江部会長
 かなりいいところにいっているという感じを受けました。ありがとうございます。ちょっと時間が過ぎましたので、このセッションはこれで終わりにしたいと思います。
 次に移ります。評価項目1-3から1-5の所で、医療の提供等その他業務の質の向上に関する事項についての議論をしたいと思います。時間は先ほどと同じです。同じようにやりますので、まず、法人のほうから御説明いただけますでしょうか。よろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター島田中央病院長
 ありがとうございます。まず、評価項目1-3、医療の提供に関する事項です。こちらは、中央病院の島田と、東病院の大津院長から御説明させていただきます。資料2-2の20ページを御覧ください。自己評価は、僭越ながらSとさせていただきました。中長期目標の内容ですが、二本柱となっています。医療政策の一環として、センターで実施すべき高度かつ専門的な医療、標準化に資する医療の提供です。もう1つは、患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供です。この二本柱を中長期目標として毎年度更新してまいりました。
 左下が今年度の実績です。やはり、ハイボリュームセンターとして、[5]の外来化学療法、あるいは手術の件数に関しても両病院ともに実績をきちんと上げています。やはり国立の病院であり、広く多くの患者さんに医療を提供したいということで、病床稼働率も、平均在院日数も、これを見ていただいても急性期病院としてはかなり良い成績を上げているものと考えております。
 右のほうを御覧ください。Ⅰに関することです。中長期としては、がんセンターでしかできない高難度の手術を行うという柱と、先端的な医療技術を開発して取り組んでいくという2つのことを、両輪として、中長期として行ってきました。特に今年度のポイントとして、ゲノム医療、医薬品の開発、希少がんに対する開発、医療機器の開発、この4点に関して順次御説明させていただきます。
 21ページで、塗りつぶしの1に関しては、2つのことを提示させていただきます。まず高度・専門的な医療の提供です。[1]は、先進医療と治験の推進です。大津先生からもお話がありましたが、両キャンパス合わせて、医療治験690件、医師主導治験100件、国際共同治験470件、First in Human(FIH)は76件と実績を積んでいますので、やはりハイボリュームセンターとしての役割を果たしてきていると思います。
 右側の[2]は、先ほど大西先生の御質問にあった件です。がん遺伝子パネル検査後の新たな治療選択肢ということで、患者申出療養制度を活用しています。特に申し上げたいのは、遺伝子パネル検査による遺伝子プロファイリングに基づく複数の分子標的剤治療による患者申出療養ということを御報告いたします。詳細はこれを見ていただければよろしいと思います。このように、パネル検査がどのような治療につながっていくかということを、順次解析し発表していきたいと思います。
 塗りつぶしの2は、低侵襲性治療の開発・提供です。これに関しても、両キャンパスを通じて内視鏡治療・IVR治療、放射線治療等低侵襲な治療を、実績を上げて行ってまいりました。
 [2]の塗りつぶしでは、5つの点に関して具体的に御報告いたします。[1]は、我が国のIVRをリードしているということです。例えば、この画像写真によると、大静脈ステント、これはIVROSGの試験によって有用性が証明されて、機器承認と保険収載になりました。
 [2]は、東病院の大津病院長から説明をお願いします。

○国立がん研究センター大津東病院長
 22ページの[2]は、光免疫療法です。これは、NCIと楽天メディカル社との共同研究として、内視鏡を用いた新しい光免疫療法の開発を行っている医師主導治験です。具体的には、食道がんと胃がんでの医師主導治験を開始しています。この光免疫療法は新しい治療法であって、抗体薬と光感受性物質、そこに近赤外線を当てることによって、特異的に腫瘍を細胞死に落とし、そこから免疫原性の細胞死になりますので、免疫の機能も働いて、非常に効果が増強する。近いうちに、再発頭頸部がんで承認が取れる予定です。我々は、その新しい内視鏡の機器と、新しい抗体を用いた薬の開発も同時に行っていて、次の治療法の開発に進めております。
 [3]は、外科手術のデジタルトランスフォーメーションです。昨年度東病院のほうで、AMEDの次世代医療機器の開発拠点に選定されました。それに基づいた産官学連携のプロジェクトです。具体的には、日本で一般的に手術が上手と言われる外科医の技術を、画像を用いて解析をし、その中で熟練の医者がやっている技術はどこが優れ、どういうことをすればより技術の高い手術ができるかそのサポート、それから、血管とか神経を同定して、そこを避けるような操作。そういうことでの新しい手術のシステムを作る研究を今進めているところです。

○国立がん研究センター島田中央病院長
 引き続き[4]です。AIを用いた皮膚腫瘍判定システムの開発です。これは、AIの技術を用いて、深層学習技術と言うのでしょうか、このような解析を行い、専門医ではない、普通の非専門医にも高い精度をもって診断をするという業績を出したところです。
 次のページで[5]です。S-access Japanも一緒にお願いいたします。

○国立がん研究センター大津東病院長
 これは、内視鏡外科学会と企業とを結んで、AMEDの新しい事業として、全体で3,000例の手術の画像を集め、そのデータをいろいろな企業等の共同で前向きに集めて、いろいろなデータベースをオールジャパンで集め、そのデータを基に企業とともに新しいAIでの手術を開発する。特に、内視鏡手術、ロボット手術に応用ということで、3,000例のプロジェクトになります。

○国立がん研究センター島田中央病院長
 塗りつぶしの3に入ります。希少がん、難治がんの診療、治療開発です。この項目は4つの御報告をさせていただきます。[1]は、希少がんの研究開発・ゲノム医療を推進する「MASTER KEYプロジェクト」です。これは、従来から行っておりますが、これを引き続き推進しております。内容としては、2つの大きな目的があります。大規模データベースを構築するレジストリ研究という意味合いがあります。これは、国内5施設で行っております。バスケット型デザインという新しい手法の臨床試験、つまり、遺伝子治療に関して、がん種にとらわれず、そういう効果がありそうな治験を行っていく、という治験を考えております。13の製薬企業から共同研究費を提供されています。
 [2]は、希少がんの中央機関としての役割を持っています。平成30年4月から、中央病院が希少がんの中央機関に指定されています。この中に、「希少がん診療WG」「病理診断」「患者支援」の3つのプロジェクトチームを上げて活動しています。
 [3]は、希少がんホットラインの相談数の増加、体制を強化するということです。やはり、希少がんに関しては地方の方から相談をたくさん受ける体制を取っていて、今後も強化していきたいと思っております。
 [4]です。小児がんも希少がんですが、医師主導治験、国内の小児がんに対する薬剤開発を牽引するということで、小児がんに対する薬剤の開発にも尽力しているところです。以上でⅠは終わります。
 Ⅱは、患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供という項目に入ります。塗りつぶしの4になります。4つの御報告をしなければならない項目があります。[1]は支持療法の開発です。先ほど間野先生にも触れられましたが、J-SUPPORTを中心にして、がん診療の、特に支持療法に関する化学的なエビデンスを構築していくということと、その研究の初期段階から、患者・市民参画によって開発戦略を立てるという点が、大きな点になっています。
 次はCHEERの話になりますので、大津先生からお願いいたします。

○国立がん研究センター大津東病院長
 これは、東病院のほうで10年以上も続けています。定期的にがんの患者さんおよびその家族の方を対象として料理教室を開催しています。既にレシピが1,300を超えています。その中から「CHEER」という形で構築して、検索サイトをホームページ上に公開しています。非常に好評で、毎回多数の方に御参加いただいています。いろいろな手術をした患者さんや、抗がん剤治療中の患者さん等に、どういう料理が最適かということを、非常に細かく説明して好評を得ております。

○国立がん研究センター島田中央病院長
 [3]です。患者さん、それから地元に開かれた病院ということも重要な点と思っております。両病院においては市民講座とか、オープンキャンパス、あるいはいろいろなセミナー等を施行して、患者さんへのサービスの向上に努めております。
 [4]で、当院の中央病院には、「アピアランス支援センター」というものがあります。本年は、男性のアピアランスガイドブックという「NO HOW TO」というものを公開し、男性にもこのようなことを行っているということを宣伝していきました。
 以上で今年度の報告は終わるのですが、第2期の中長期期間目標見込評価の中で、特に継続性があるものとして一言申し上げます。資料2-6の26ページを御覧ください。総合的な患者支援ということで、平成28年度から、「患者サポート研究開発センター」を開設しております。これは、毎年継続しながら、いろいろなポイントで患者さんのサポートに尽力してまいりました。今後はピンポイントではなくて、患者さんの診断から、あるいは緩和ケアに至るまでの連続した患者サポートができるように、尽力していきたいと考えております。

○国立がん研究センター大津東病院長
 今の26ページの隣ですが、東病院でも2年前から「レディースセンター」を開設しています。女性のがん患者さん、特に乳がん、婦人科がん等の患者さんを対象として、女性特有のアピアランス、それから妊孕性の相談であるとか、HBOC等の遺伝性の腫瘍も多いので、遺伝関係も含めた、総合的なサポート体制を構築し、既に5,000件以上の相談を受けております。以上です。

○国立がん研究センター武井理事長特任補佐
 資料2-2の27ページを御覧ください。理事長特任補佐の武井から説明させていただきます。私は、人材育成管理事務局長も拝命しておりますので、その立場からもお話させていただきます。指導的立場にある医療従事者への研修プログラムですが、昨年度の達成率は88.9%ございましたが、これはコロナの影響を受けて、当初111%達成のところまで行っておりました。やむなく減じていったという数字が出ております。昨年度のポイントを御説明いたします。
 [1]として、リーダーとして国内外で活躍できる人材を継続して育成する。昨年度、キャリアラダーを作成し、公表しました。これは、法人として初めて人材育成のキャリアラダーを作成し、キャリアを見える化いたしました。図1、図2にあるように、例えばその卒業年、10年後、15年後、20年後それぞれのタイミングにおける自主的目標、自主研修、それから専門資格などの認定を見える化して、それぞれの目標を明確にしたものです。
 それから、レジデント制度の構築も行っております。連携大学院生で、海外招聘講師の増加など、実績創出を目指しているところです。併せて、フィジシャン・サイエンティストというコースも昨年度から始めました。これは、研究志向を持った臨床医ということで、臨床と研究の両面から優れたリーダーを育成することを目指しております。
 連携大学院は過去最高となる166名の大学院生の受入れを行っております。図3を見ると、平成26年が78名であったものが年々増加し、令和元年度は166名まで上がっています。
 [2]全国の医療技術者を代表とした専門研修を見ていただくと、医療水準の向上を目指して、33種類の専門研修を実施するほか、6,785名の医療従事者に対する研修を行っております。併せて、「地域緩和ケアの連携調整員」の認定も行っています。
 特徴的なポイントとして[3]を御覧ください。海外からの医療従事者の研修も受けております。具体的には内視鏡科を中心とした長期研修者が、この5年間を通じて上達するなど、我が国の強みとする分野での研修受入れが増加しているところです。
 [4]は、臨床研究するためのICRwebの運営となっています。これは、ICTを作成した研修です。いわゆるe-ラーニングを行って研修を進めるものです。令和元年度においては、新たに1万6,000名の登録があり、累計で11万人の登録者になりました。その内容については感染症の時代ですので、Webを活用した研修を実施してきたところです。
 以上、昨年度の実績をまとめると、初めてキャリアラダーを作成した。フィジシャン・サイエンティストの養成を開始した。過去最高となる大学院生の受入れ、計画を上回る実績を収めましたので、自己評価はA評価とさせていただきました。
 併せて見込評価について簡単に触れさせていただきます。全国の医療従事者の専門研修が3万2,000人です。目標と実績を見ていただくと、目標は7に対して、平成27年度から8、9、10、10となっておりますので、これも目標を上回る数字ということで、見込評価もA評価とさせていただきました。以上です。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長
 続いて、調査項目1-5について、がん対策情報センターの若尾が御説明いたします。資料2-2の28ページを御覧ください。この項目の自己評価はSを付けさせていただいております。中期目標としては、病理診断コンサルテーションは165%を達成しております。
 [2]で医療の均てん化ということでは、地方自治体の支援として、41都道府県301市町村に対して検診の受診勧奨用資材を開発し、これも90万人という、かなりメディアミックスという形で、NHKと組んで、テレビで見た自治体から届くという展開をさせていただいております。昨年度行ったものについては、80%以上の自治体で受診率が向上したことを確認しております。
 それから[2]です。がん診療連携拠点病院等への支援強化ということで、日本地図の上に細かい図があります。がんセンター中央病院、東病院が核になりまして、都道府県にある都道府県がん診療連携拠点病院51と連携して共通目標の共有などを行っております。これが、各都道府県にある地域がん診療連携拠点病院及び地域がん診療病院などに広げて、全部で447病院のネットワークを構築しております。
 29ページを御覧ください。情報の収集・発信です。こちらは、当初の目標としては全国がん登録、これは平成28年から始まったものです。こちらにより、我が国でのがん罹患数、がんと診断される方の数の実測値を初めて公表させていただいております。
 29ページ右側の[4]を御覧ください。がん情報ギフトプロジェクトというのは、ホームページで情報を発信しておりますが、まだ、ホームページに届かない方もいますので、各地域の公共図書館などに一般の方から頂いた寄付で、がん情報の冊子を届けさせていただいております。
 資料2-6を御覧ください。こちらで若干補足させていただきます。資料2-6の29ページの[3]です。患者体験調査・遺族調査・QI調査です。がん対策の評価をするために、やはり患者さんのアウトカムを探らなければいけないということで、2015年に1回目の患者体験調査、更に2018年には2回目の患者体験調査を行っています。更に、そのときに対象とならなかった、小児がんの患者体験調査も2019年に行っております。更にこちらは診断されて2年目の患者さんを対象としているのですが、やはりエンドステージ(終末期)の患者さんの状況も把握する必要があるということで、2018年にこれも我が国初となる、がん患者さんの遺族調査を実施しました。まず、パイロットを行い、2019年には5万人を対象とした本調査を行っております。
 30ページの[1]情報の収集・発信のところの、院内がん登録はがん登録推進法に基づき、拠点病院を中心とした病院の登録を行っています。こちらも年々対象の集計を広げております。一番下で、5年生存率については、2015年に初めて全国集計を出して、更にそれを2017年には施設別、更に2018年には施設別・病期別という形で公表を行っております。
 右のページで、[3]のがん情報サービスです。このグラフを御覧ください。こちらは2017年12月に大きくアクセス数がジャンプアップしました。これは、Googleで評価されたということと、Yahooとの連携により、広告より上位にランキングを出していただくということで、5年間で2億4,000万のページビューを頂いております。1-5については以上となります。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。膨大な量を短時間で御説明いただいて申し訳ありませんでした。非常によくまとめていただいたのではないかと思います。それでは、ただいまの御説明について、御意見、御質問等はありますか。手を挙げていただけると有り難いと思いますが、いかがでしょうか。中野委員が挙手されていますので、どうぞ。

○中野委員
 中野です。素晴らしいプレゼンテーションをどうもありがとうございました。資料2-2の24ページで、希少がんの研究開発・ゲノム医療の推進ということで項目を挙げていただいています。是非推進していただきたいと私も考えます。私は、がんの治療は全く自分の専門外です。教えていただきたいことは、希少がんの中で、以前から既に病名が確立しているようなクラシカルな希少がんでも、まだ保険適用を取った治療薬が1つもないような疾患がたくさんあるかと思います。恐らく各医療機関で、医療倫理委員会の承認を受けるなどして、効くと思われる薬剤をなるべくベストの方法で使っておられるというのが実情ではないかと考えます。がんセンターとして、希少がんに対する、これは均てん化にも関係することかもしれませんが、各地域、各地域での身近な医療の今後の方向性というか、より良い方向性について何かお考えがあれば御教授いただきたいと思います。

○国立がん研究センター島田中央病院長
 ありがとうございます。先生のおっしゃることは、とても答えにくいところもあります。実は、希少がんにはどういう薬が効くか、適応外で何を使うかということは、非常にエビデンスも少なくて大変なことです。ですから、マスターキー・プロジェクトのようなデータをたくさん蓄積していって、その中でバスケット型の治療をやっていくとか、少し視点を変えていかないと、今までのようなコンバット的な戦略しかできないようなことになります。希少がんというのは、個々は少ないですが、それを大きく広げていくことが、これからのゲノムのそういう方向性が、一つ活路を見いだすのではないかと私は思っております。

○中野委員
 よく理解できました。ありがとうございます。

○祖父江部会長
 他に何かありますか。よろしいようでしたら、私のほうから。これは、前からも時々言われていることです。本院と東病院、今は院長先生がお二人並んでお答えになりましたが、これをどうマネージされていこうとされているのか。前はもうちょっと差があったような感じがするのですが、本日のお話を聞いていると、一緒にやっておられると。スケールメリットで全体のレベルを上げていくという感じも、ちょっとしました。その辺の方針は何かマスター的にありますか。それとも、全体のスケールで一緒にやっていこうというようになっているのでしょうか。

○国立がん研究センター中釜理事長
 まず私のほうから説明させていただきます。確かに祖父江先生が御指摘のように、以前はもう少しお互いの違いがあったかと思います。ただ、依然として東病院のほうは、より開発的なところ、あるいはその機器開発のセンターとしての特徴を活かしています。AIを活用した技術開発のためのデータを集積して、新しい医療技術開発を行うというような開発的なところにかなり軸足を置いていると思います。中央病院は高度医療を提供する、あるいはIVRのような新しい支持療法の開発を進めているわけです。そこに多少の違いがあります。
 一方で、センターとして世界のトップ10を目指すときに、両病院ともに開発研究にかなり重きを置いて、戦略的に取り組んでいかないと、グローバルな視点からの競争力という点では、一つ一つが個別に動いていても、なかなか強みは発揮できない。そういう意味で、一定のオーバーラップによる相乗効果を発揮しながら、お互いの特色を活かしてより開発的な部分、より高度医療を提供する部分というところを、お互いに共有しながら進めていく。これが大きなビジョンだと理解しています。追加でありましたらお願いいたします。

○国立がん研究センター島田中央病院長
 確かに理事長が申し上げたとおりだと思います。日本では、中央病院と東病院を合わせると1,000以上の病床数になりますので、これはすごいハイボリュームセンターということができます。研究所と密接に関連した場合に、非常に大きなデータを提供できるものと思います。しかしながら同じことをやっていても、私個人的には面白くないと思っています。中央病院では、今後何を目指していこうかということを考えると、やはり希少がんは1つ重要な問題だと思っています。それから、先ほどありました外に出ていく場合、アジアに対して出ていくということに関しては、その知見あるいはファーストインヒューマン等を目指してやっていきたいというのは心の中には思っています。
 両病院とも診療能力は非常に高いと考えています。手術も上手な先生がたくさんそろっています。そういう基盤的なところは絶対に守っていきたいと考えております。

○国立がん研究センター大津東病院長
 理事長と島田先生がおっしゃったようなお話と重複しますが、東病院の特徴は先端的なところです。先ほどお話をさせていただいたように、それほどSloan Ketteringとか、MD Andersonが持っているデータに遜色ないデータを、個別化に関して、もう大体作れてきています。もちろんアジアのほうでも、SCRUM-Asiaでやっています。先ほど出ましたが、中国ともやっています。ただ、中国の場合は規制の問題があります。規制上一緒にはできないので、中国は中国のデータとして構築しています。こちらのフォーマットから何から全部使っていますので、統合したデータベースは既に日本のデータと合わせると1万例のゲノムと臨床のデータをすでに作っています。
 我々の所はアジアもやっていますが、もう1つは欧米のトップセンターとどれだけ競争力を持ってやれるかということです。企業もそうですが、皆さん早朝・深夜にテレカンをしながら、欧米の企業と直接交渉し、とにかく最先端の所と交渉しながら、うまく日本のベンチャーなど企業とタイアップして進めています。データ的には、もう基盤がかなりできてきましたので、恐らくトップジャーナルは今後publicationも続けることがある程度できるだろうと。そこは、少しずつ自信を持ち始めました。ただ、トップ10までに入るかどうかということは、少し経過を見ないと分かりません。もちろん中央病院とやっている部分は、一緒に共通で選べるところは共通でやり、コンペティティブにやれるところはそれぞれでリードしながらフォローしていくという形かと考えています。

○祖父江部会長
 ありがとうございました。時間が迫ってきましたが、3人の方が挙手していますので、順番に簡単にお願いいたします。藤川先生からお願いいたします。

○藤川委員
 資料2-2の28ページです。医療の均てん化の所で、黒抜きの[2]の[1]行動科学やナッジという言葉が出てきます。せっかく非常に専門的で高度な研究や開発をした成果が、実際に国民にどう染みるというか、反映されるかということに関して言うと、医療経済とか医療政策といった観点も必要なのだろうと思うのです。そうした人材が、がんセンターの中にいるのかどうか、その辺りはがんセンターですので、力を入れていただきたいという気がしています。その辺りはどうでしょうか。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長
 幾らエビデンスを作っても、それをプラクティスに繋げないと、本当に何も役に立ちません。そのエビデンスとプラクティスのギャップを埋めるということで、今お話のありました行動経済学などの手法を使って、それを広げるということで、行動変容を起こすような研究の研究者も少しずつ増えてきております。それらが実装科学です。エビデンスを実際に繋げるという部分の研究者はまだ十分とは言えません。今までは、社会と健康研究センターとがん対策情報センターがここに取り組んでおりましたが、今後、そういうところも十分強化するということで、研究部門を主体として今検討されております。まだまだ、これは強化しなければいけないと考えています。

○祖父江部会長
 次は深見先生、お願いいたします。

○深見委員
 深見です。AIを使った成果も見えてきています。診断であったり、内視鏡の手術であったり、アウトプットとしてきれいに出てきています。今後のAIの使い方はどのように進めていこうと考えていらっしゃるかを簡単に教えていただけますか。

○国立がん研究センター島田中央病院長
 非常に使い勝手がよい反面、医療にどう使っていいかというのはまだ迷っている部分があります。本当に役に立つと言えるかどうかはまだ不明です。ただ、個人的には、今は車も自動運転していますので、手術も将来は自動運転かなと。それは、AIで情報を集めて、手術をした外科医の知識をそこで遠隔的に運転させるような、そのようなAIの方向性というのも1つは面白いものかと思っております。

○国立がん研究センター大津東病院長
 我々の所でやっている、先ほどお話したS-accessとか、デジタルトランスフォーメーションというのは、正に究極の目標は手術の自動化です。これは、要するに日本全国どこの病院で外科医が手術をしても、熟練した外科医と同じような手術ができるようにするための研究をスタートしています。少しずつ近づきつつあるということです。

○深見委員
 将来的には手術とか、まだ限定されたところでやっていくということでしょうか。

○国立がん研究センター大津東病院長
 いろいろな用途があります。手術、内視鏡診断、画像診断、それから今我々の所は敷地内にホテルの建築をスタートしています。患者さんがホテルに泊まって、そこでいろいろ患者さんの状況をチェックしながら診ていく。いろいろなAIの用途、これは看護の面でも非常によいものです。患者さんの待ち時間をなくすとか、そういうところでもいろいろな応用をしています。街全体で今スマートシティという構想で、柏市でやっています。その中で、公共機関から企業を巻き込んだ形で、AIというか、AIやITの取り込みを街全体で進めているところで、いろいろな用途があります。

○深見委員
 ありがとうございました。

○祖父江部会長
 それでは、最後に花井先生、ちょっと短めでお願いいたします。

○花井委員
 がん基本法ができてから13年たちます。がん難民という言葉は本当に死語になったのかとずっと考えていました。例えば、診断や治療にアクセスする時間というのは難病などでよくありますが、本当に縮まったのだろうか、この均てん化の意味で。データがあればそれがいいのですが、ないにしても国がんとしてそれはどのような所感を持っているか。データがあればデータをお示しいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○国立がん研究センター島田中央病院長
 あいにくきれいなデータを持っておりません。ただ、先生がおっしゃったように、がん難民に対する考え方というのは、先ほどの患者サポートを全体的に見ていくことが重要だと考えております。今まではピンポイントで、場面場面に対応していたので、こぼれて難民になってしまう方がいたわけです。診断からある程度フォローアップして、再発した場合とか、緩和ケアに行った場合、それを一連の流れとして見ていくことが、結局はがんの方を変な所に押し込まないようなことになるのではないか。やはり、患者サポートセンターというのは、そういうことを中心にやっていくものだと考えております。

○国立がん研究センター大津東病院長
 サポーティブケアセンターで、初診のときからそういう他職種のサポートチームが付いてやっています。あとは、地域の在宅医療もかなり力を入れて推進しています。

○国立がん研究センター若尾がん対策情報センター長
 実際の数値は今お示しできないのですが、資料2-6の29ページにある患者体験調査というのは、正に患者さんの体験のデータを集めたものです。1万4,000人の患者さんに対して、診断されてから実際に診療までどのぐらいの時間がたったかということで、2015年のものと2018年のものを比べると改善が進んでいるということは認められます。

○花井委員
 ありがとうございました。

○祖父江部会長
 事務局、まだ時間はありますか。

○研究開発振興課国立高度専門医療センター支援室十鳥企画調整官
 全体的に、このコンテンツはもう時間を過ぎております。

○祖父江部会長
 分かりました。そうしたら、これが最後のセッションです。評価項目の2-1から4-1の業務運営の効率化、財務内容の改善及び業務運営に関する事項について議論したいと思います。これは、説明が8分、質疑が6分ということで非常に短くなっておりますので、効率的に御説明いただけると有り難いと思います。それでは、法人のほうからよろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター北波理事長特任補佐
 承知いたしました。理事長特任補佐と企画経営部長をしております北波と申します。どうぞよろしくお願いいたします。資料2-2、30ページから、評価項目の2-1、業務運営の効率化に関する事項です。全般的な法人の収支を御覧いただければと考えております。経常収支につきまして、中長期の目標期間中6年間で100%を超えるようなことを目標にしております。今回については、平成27年から黒字に転換しまして、連続5年で黒字化が達成されています。30ページの左下ですが、財務ガバナンスの強化で各部門ごとに予算の執行の管理を毎月やっていただいて、適切な予算執行に努めておりますし、またQC活動についても毎年、昨年は20チームですが、参加のもとにQC活動を奨励をしております。こういうところでもいわゆるリスクとしての事故の防止とか、また診療報酬の請求漏れの防止のアイディア、こういうようなものについても務めていただいているという、こういうような活動をしております。
 次は31ページです。ここは外部資金の獲得です。研究費等、競争的資金を含めて全体では令和元年度は135億円という多額の獲得をさせていただき、その中でも公的な競争的資金については70.8億円ということで前年度から10%の増となっております。また知的財産戦略、塗りつぶし[2]ですが、これについても費用との関係をしっかり見させていただいて黒字で進めております。また給付金についてもさまざまな手段、特に遺贈の寄付とか、定期的な継続の寄付、こういうものをお願いしつつ額の獲得に努めております。また資産及び負債の管理についても、独法化を考えましても、令和元年度では経常収支額に占める借入金の残高の割合は低下させているということです。
 32ページです。その他、業務運営に関する重要事項で32ページの下の[1]ですが、障害者雇用についても法定雇用率を上回る雇用をさせていただいている。
また常日頃からの発信も重要ですので、塗りつぶし[2]ですが、積極的な広報ということでさまざまな場面でプレスリリース、また記者会見等も行いまして、このNCC、国立がん研究センターの取組を外に発信をする努力をしております。メディアの掲載件数についても、年々増加をしているところを見ていただけたらと考えております。
 またホームページについても、月間のビュウー数が約200万、更新も月260件ということで常に新しい情報を発信する形で努めさせていただいております。
 資料2-6を御覧ください。31ページからです。今、申し上げましたような業務運営の効率化については、レンジ推移を申し上げましたので、ここで書いてあることは重ねてということですが、NCCについては中央病院、東病院を代表としまして、築地キャンパス、そして柏キャンパスと2つ大きく敷地が分かれております。このように敷地が分かれていてそれぞれの部門が建っている所でいかに統一的に物を調達し、またシステムを運用していくかが非常に大事だと考えておりまして、この31ページの左の下にありますような、情報統括センターを平成29年には設置させていただいて、ネットワークシステムの統一的運用に努めております。当然ながら調達等においても共同調達、両キャンパスをまたがるものについては、なるべく共同で調達をするような取組も進めております。
 33ページに飛びまして、その他の業務運営に関する事項です。新しい部署または施設・整備についての実績も掲げておりますので、御覧いただければと思います。平成28年度は、NEXT棟、次世代外科・内視鏡治療開発センターを柏キャンパスに設置をさせていただき、予定どおり平成28年度に完成をしました。また最初の研究所長からの御説明の中にもありましたように、平成30年6月にはC-CAT、「がんゲノム情報管理センター」を研究棟の中に設置をし、整備を進めております。それぞれ運営につきましても黒字というところですので、評価項目については自己評価Aということでお願いをしたいと考えております。説明については以上です。よろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に分かりやすく御説明いただいたと思います。それではただいまの御説明につきまして、御意見、御質問等ございましたら、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。では私から、これは年度評価の31ページだったと思いますが、外部資金、黄色、共同研究費が平成27年からずっと右肩上がりで平成30年までぐっと増えてきたのです。ところが令和元年にはそれが、この黄色の所が急に下がっているのですが、これは何か特異な原因があるのか、変動の一部なのか、その辺はいかがでしょうか。これは結構大きいなと思ったのですが。

○国立がん研究センター北波理事長特任補佐
 これは全体の収支にも響いており、大きな影響となっています。令和元年度では経常収支はプラスで維持はできていたのですが、比較的大きな研究事業が終了したことによる影響です。これは令和元年の評価をいただくところですので、令和2年度のことを申し上げるのは過ぎた話ですが、令和2年度の研究については、見込みとしては大体平成30年度のベースまで戻せそうかなというところで、研究部門にも努力をいただいているところです。

○祖父江部会長
 経常収支がずっと6年間非常に高いレベルで黒であるというのは、これは本当にがんセンターだけで、本当に素晴らしいなと思っております。ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。

○斎藤委員
 人件費についてお伺いしたいと思います。資料2-6の31ページ、販管費に関して書いてありますが、人件費は除くということになっております。また2-2では給与費の増というのが33ページに書いてあります。これを拝見すると、人件費は上がっている。それはいい先生方を集めるにはいた仕方ないことだとは思うのですが、あるいは違う要因があるという可能性はありますか。つまりターンオーバーが非常に激しくて、人件費が上がってしまうとか、そういうようなネガティブな要因はあるのでしょうか。それを確認させていただきたいと思います。

○国立がん研究センター北波理事長特任補佐
 基本的には離職率等に伴って過剰な経費が出ていることはございません。少なくとも患者さんが増えてきていることで診療部門を中心にして、事業の規模が大きくなってきていることに伴う増援が基本的には人件費が減っていかない。若干増加傾向にあると考えております。一般管理費も含めて、私たちは人件費についてもなるべく事務部門を中心にですが、効率化とか、それから委託と内製化を組み合わせることによって、そういう管理コストもしくは人件費コストを、適正な形に維持していきたいということの取組はしております。

○斎藤委員
 ありがとうございます。

○祖父江部会長
 ほかにはよろしいでしょうか。非常に好調に維持していることは間違いないと思いますので、よろしくお願いします。もしよろしければ先に進みますが、全体で今まででこれはどうしても聞いておきたいというようなことがございましたら、手を挙げてください。藤川先生、よろしくお願いします。

○藤川委員
 それほど大きなことでもないのですが、先ほど外部資金の獲得のところで大きな研究が終了したことが、今期の黒字幅、いつもほど伸びなかったことの一番大きな理由ではないかというようなことを御説明いただいたのですが、資料2-6の一番最後の34ページに、ほかのセンターですと、コロナがコロナがということを結構いろいろおっしゃるのですが、今まで余りそういうお話がなかった。ところがここに入ってありまして、4月中旬からコロナウイルス患者を受け入れていたことで、いろいろ影響があるというようなことが書いてあります。今期、令和元年度の2月3月辺りからは例えば、特に内視鏡の検査や治療は、がんセンターにおいて非常に大きなウエイトを占めていたりするのではないかと思うのですが、内視鏡のそうしたことは非常にコロナによって大きな影響を受けているというようなことをお聞きしますし、また手術抑制のようなことも世の中では結構あるということなので、そういった影響はどうなっているのか少し気になったので、御説明いただきたいと思いました。

○国立がん研究センター北波理事長特任補佐
 御質問ありがとうございます。事業の関係では内視鏡関係等で例えば、中央病院等も見ましても、若干昨年を下回るようなペースでの件数は見られますが、直接的にコロナの関係で件数自体が減っているところは見られないです。むしろ私どもから言いますと、やはり今年度に入って4月、5月にかけての大きな流行の影響、また中央病院においては患者を都の要請に従って受け入れる、そのようなものも含めての収支の悪化というものが、今年度に出てきているというのが状況です。

○祖父江部会長
 よろしいでしょうか。いいですか。ではどうもありがとうございました。さらに御質問がなければ、そろそろまとめに入りますが、よろしいですか。何か御質問はありますか。どうもありがとうございました。最後のまとめに入りたいと存じます。まず法人の監事の先生から業務の監査結果等を取りまとめた監査報告書について御説明をいただきたいと思います。法人の監事の先生からよろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター増田監事
 監事の増田と申します。私から御説明申し上げます。令和元年度の監事監査ですが、今までお話にありましたように、当センターは規模の大きな医療機関2箇所と研究機関を持っておりますので、理事会、それから執行役員会をはじめとした主要な委員会に可能な限り陪席をしまして、業務の執行状況を聴取しております。また主要な管理職の方とは適宜意見交換をしまして、業務の執行状況についてもそこで伺っております。また会計面についてですが、会計監査人と密に意見交換を行い、特に期末においては、期末の決算整理について詳細な意見交換も行っております。そういったことで監事の監査として検証の結果ですが、資料2-4にありますように適正適応と意見を表明させていただいております。令和元年度の監査につきましては、以上のとおりです。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常にスムーズに行っているということです。どうもありがとうございます。それでは最後に法人の理事長、中釜先生から御挨拶をいただければと思います。今日の議論も踏まえていただきながら、今後の課題なども触れていただけると、有り難いなと思います。よろしくお願いいたします。

○国立がん研究センター中釜理事長
 本日は我々の業務実績についてお聞きいただき感謝いたします。今日の話は主に開発的な意味での高度医療の提供、あるいはそれを支える基礎研究の進化をお話させていただきましたが、御質問にありましたように今後はやはりがんの予防のための技術開発とその普及・実装という観点からの高リスクなグループの捕捉であるとか、早期診断バイオマーカーの開発とか、そういったところにも力を入れながら、がんの予防といったところが今後の大きなテーマの1つになってくると思います。更に加えて先ほど御質問にありましたが、新型コロナウイルス感染症によって、医療全体への影響とその解決が、世界中で問われていて、これはがん医療も例外ではないと思います。
 そういった意味で医療提供の観点から、例えば遠隔診療システムの開発やAIを使った新しいシステムへの取組、それから様々な医療技術の開発においても、電子カルテ等の診療情報をうまく使って、オミックス情報と組み合わせたようなデータドリブンな開発研究のさらなる強化、更にはそれを通して希少疾患、希少がんへの対策を日本だけではなくてアジア地域にも広げていき、アジアに固有な希少がん、希少フラクションへの対応というものが、既に一部は取り組んでいますが、今後の方向性として重要かなと改めて感じた次第です。私からは以上です。どうもありがとうございました。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に素晴しいまとめをいただいたと思います。本当に長時間ありがとうございました。大変いい議論になったと思っております。それではこれで国立がん研究センターの令和元年度の業務実績及び中長期目標の見込評価について、これで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。最後に事務局から、今後の流れなどについて連絡事項をお願いします。

○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室十鳥企画調整官
 事務局です。今後の流れについて御連絡いたします。本日、御議論いただきました令和元年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価につきましては、この後、本部会における御意見や法人の監事、理事長のコメント等を踏まえ、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について法人に通知するとともに公表いたします。決定した内容については、後日委員の皆さまにお送りいたします。各委員におかれましては、事前に電子媒体でお配りしている評価記入用紙に必要事項を御記入いただき、8月5日(水)中に事務局あてメールで御送付くださりますようお願いいたします。
 次回は9月4日(金)14時からの開催を予定しております。内容はこれまでの評価部会で御議論いただきました見込評価等を踏まえて、厚生労働省が作成した法人の業務・組織全般の見直し案について、委員の皆さまの御意見をいただきたいと考えております。会場は調整中でありますが、現在の新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえまして、本日と同様にWeb会議での実施をさせていただきたいと考えております。事務局からは以上となります。

○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。本当に長時間にわたって皆さま、活発な形での御参加、本当にありがとうございました。それでは本日は以上とさせていただきます。長時間にわたりどうもありがとうございました。