第18回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

令和2年7月21日(火) 14:00~17:58

場所

オンライン開催(航空会館7F大ホール((701+702+703会議室))

出席者

委員

議題

 
1 開会
2 議事
(1)国立研究開発法人国立循環器病研究センターの令和元年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価について
(2)国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センターの令和元年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価について
(3)その他
3 閉会

配布資料

【国立研究開発法人国立循環器病研究センター】

資料1-1 令和元事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 令和元事業年度 業務実績概要説明資料
資料1-3 令和元事業年度 財務諸表等
資料1-4 令和元事業年度 監査報告書
資料1-5 第2期中長期目標期間 見込評価書(案)
資料1-6 第2期中長期目標期間 見込評価説明資料

【国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター】

資料2-1 令和元事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 令和元事業年度 業務実績概要説明資料
資料2-3 令和元事業年度 財務諸表等
資料2-4 令和元事業年度 監査報告書
資料2-5 第2期中長期目標期間 見込評価書(案)
資料2-6 第2期中長期目標期間 見込評価説明資料

議事

第18回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会

○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室星野室長補佐
 事務局です。定刻となりましたので、ただいまから第18回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会を開催いたします。今回は、新型コロナウイルス感染症対策の観点から、Web会議とさせていただいております。委員の皆様には、大変お忙しい中をお集まりいただき、誠にありがとうございます。議題に入るまでの間、議事進行役を務めさせていただきます、医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室の星野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、深見委員が17時頃から御出席される予定である旨の御連絡を頂いております。また、中野委員は16時から17時の間、退席される予定である旨の御連絡を頂いております。出席委員に関しては過半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告いたします。
 本部会の開催に当たり、医政局研究開発振興課長の伯野より御挨拶をいたします。
 
○医政局研究開発振興課伯野課長
 医政局研究開発新興課長の伯野です。本日は、大変な天候の中を、先週に引き続き御出席いただきまして誠にありがとうございます。御案内のとおり、今年度の評価ですが、令和元年度の業績評価に加え、中長期目標期間終了時に見込まれる業績評価についても御意見を頂くものです。ですから、普段より大変多くの御議論を頂くことになり大変恐縮です。
 本日は、国立循環器病研究センター及び国立精神・神経医療研究センターからまずプレゼン等をしていただいて、御意見を頂きたいと思っております。委員の皆様方におかれましては、御専門の立場から、是非忌憚のない御意見を頂きますようお願い申し上げまして、簡単ではございますが、私の冒頭の挨拶とさせていただきます。本日は、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室星野室長補佐
 マスコミ関係者におかれましては、これ以降のカメラ撮りは御遠慮いただきますようお願いいたします。なお、NC担当審議官の大坪については、公務の都合により16時頃から出席予定であることを御連絡いたします。
 本日のオンライン会議の進め方について御説明いたします。マイクの設定についてですが、御発言のとき以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。御発言の際は、Zoomサービス内の手を挙げるボタンをクリックしていただき、座長の指名を受けた後に御発言をお願いいたします。御発言の際には、マイクのミュートを解除してください。また、御発言の際には必ず冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御説明、御発言される場合には、資料番号と該当ページを明言いただきますようお願いいたします。御発言終了後は、再度マイクをミュートにしてください。なお、進捗管理のため、事務局よりZoomサービス内のチャット機能を利用し、経過時間等を画面に表示させていただきますので御承知おきください。
 続いて、本日の議題を御説明いたします。本日は、国立循環器病研究センター及び国立精神・神経医療研究センターについて、「令和元年度業務実績評価」及び「中長期目標期間見込評価」に係る意見聴取を行います。
 議事の流れとしては、評価項目ごとに年度評価及び見込評価の順に、法人から続けて説明をしていただいた後、委員の皆様からの御意見、御質問を頂きたいと思います。見込評価について御留意いただきたい内容としては、事前にメールにて御案内したとおりです。まず見込評価ですが、中長期目標期間の最後の事業年度に実施するもので、評価の結果は法人の業務及び組織全般の見直しと、新中長期目標の策定に活用されます。見込評価の方法は、中長期目標期間終了時の直前の年度までの業務実績及び中長期目標期間終了時に見込まれる業務実績等に係る自己評価の結果等を踏まえ、中長期目標の達成状況等について、総合的に評価していただきます。最後に、評定記入用紙には、SからDの評定に合わせ、次期中長期目標期間の業務実施に当たっての留意すべき点等について御意見を記述していただくようお願いいたします。見込評価の説明は以上です。
 本日の会議資料の御確認をお願いいたします。委員の皆様のお手元には、議事次第、資料1-2、資料1-4、資料1-6、資料2-2、資料2-4、資料2-6、それと委員限りの非公開資料として参考資料5を配布しております。その他の資料に関しては事前にお知らせいたしましたURLより閲覧していただくようお願いいたします。
 評定記入用紙については、様式の電子媒体を送付しておりますので、そちらに御記入いただき、7月28日(火)までに事務局宛に御提出をお願いいたします。
 資料の閲覧方法について御不明な点がありましたら、事務局までお申し出ください。事務局からの説明は以上です。何か御質問等はございますか。よろしいでしょうか。それでは、以降の進行は祖父江部会長にお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 本日は、大変暑い所もあろうかと思いますが、皆さん時間をつくっていただきましてありがとうございます。ただいま御案内いただいたように、まずは国立循環器病研究センターの、令和元年度業務実績評価と、中長期目標期間見込評価について議論をお願いいたします。まず、これに先立って国立循環器病研究センター理事長から御挨拶を頂きます。
 
○国立循環器病研究センター小川理事長
 理事長の小川です。本日は、私ども国立循環器病研究センターの業績評価のヒアリングの機会を頂きまして誠にありがとうございます。まず、最初に私のほうから3点申し上げます。
 昨年7月1日に吹田市、JR岸辺駅前の北大阪健康医療都市(健都)に操作場跡地において新センターがオープンし、順調に稼働しております。新センターでは、病院、研究所及びオープンイノベーションセンターが一つ屋根の下に集結しており、これまで以上に連携を踏まえながら、循環器疾患の予防と治療に取り組んでいきたいと思っております。
 2点目は、新型コロナウイルス感染症に対する対応です。当センター病院は、他院では治療が困難な循環器重症患者を受け入れ、治療することを使命とする高度専門医療機関です。このような患者が感染した場合でも、責任を持って対応しなければなりません。このために、必要な診療体制を整えるとともに、院内感染を防ぐ観点から、全入院患者に対するPCR検査を、研究所職員の努力の下に行うことで整備してまいりました。5月、7月の連休も、研究所職員から自発的に出勤すると申出があり、非常にうれしく思ったところです。建物だけでなく、職員の意識も一体化してきていると感じています。
 また、新型コロナウイルス感染症の治療に関して、人工心肺システムECMOが非常に有名になりましたけれども、昨年度は当センターが34年かけて開発した、世界最小・最軽量の次世代型ECMOについて治験をスタートするところまで漕ぎ着けました。このECMOは血栓が非常にできにくく、2週間連続で装着することが可能であり、性能面でも世界最高程度のものであります。今後の治験の中で、重症の新型コロナウイルス感染症患者の治療にも貢献できるのではないかと思っております。
 3点目は、当センターの研究成果が、世界最高水準のトップジャーナルに掲載されたことです。具体的には、医学系のトップジャーナルである「The New England Journal of Medicine」、また同誌と並んで世界最高と言われている「The Lancet」に論文が掲載されるなど、卓越した研究成果を残すことができました。
 以上、昨年度の業績について御紹介させていただきました。本日は、御審議よろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に骨格になる重要な御発言を頂いたと思います。最初に、評価項目の1-1及び1-2です。研究開発成果の最大化に関する事項ということです。今、理事長先生からも御発言がありましたけれども、法人のほうから年度評価及び見込評価の順に御説明いただき、その後に質疑応答といたします。説明の時間は20分でお願いいたします。質疑応答は18分となっております。見込評価においては既に年度評価で説明された、あるいは触れられた内容は極簡単に御説明を頂けたらと思います。終了時間の1分前と終了時間に、事務方からチャット機能で時間が出るようになっておりますので、よろしくお願いいたします。それでは、法人のほうから1-1、1-2について御説明をお願いいたします。
 
○国立循環器病研究センター望月研究所長
 研究所所長の望月です。1-1循環器領域の特性を踏まえた重点的な研究開発について、今年度はS評価として申請させていただいております。3ページ目の中長期計画の概要です。これまでどおり医薬品の開発、新規治療法の開発、革新的な治療機器の開発、多施設共同研究を展開するべきことを主軸にして研究をしてまいりました。
 その評価のSとした根拠は左下に書いてあるように、ECMO、多施設共同研究による臨床研究の成果等を後ほど説明させていただきます。右下に書いてあるように、定量的指標は、目標を200%、英語論文数は174%なのですけれども、先ほど理事長が申し上げましたように、非常に質の高い論文を発表することができましたのでS評価とさせていただいております。
 4ページを御覧ください。先ほど理事長が御説明申し上げましたECMOは、世界最小・最軽量のECMOです。左下に御覧いただけますように、右手一本で持ち運ぶことができるECMOです。総重量は6kgで、これを完成させたことを昨年報告させていただきました。治験としては、14日間に及ぶ長期の使用が可能であるということ。それから、患者の救急車若しくは病院間の搬送に使えるということで治験が開始になっております。この点を強調させていただきます。
 5ページを御覧ください。これが「The Lancet」に報告させていただきました成果です。心停止時におけるAEDの有効性を発表することができました。
 左下を御覧ください。AEDを使わない場合がブルーなのですけれども、AEDを使うと死亡率と回復率が非常に高いということをオレンジ色で示しています。これは、右上に示すように、朝日新聞の第1面で取り上げていただきました。右下で説明しているように、このシステムを用いて、近隣のAEDを使えるファーストレスポンダーに対して、循環器病センターの周囲に置いてある装置から、ファーストレスポンダーにお願いをして、AEDを動かすというシステムを、循環器病センターの周囲で行うという実地の患者さんに対する、若しくは近隣住民に対するトライアルを行うことができました。
 6ページを御覧ください。多施設共同研究をテーマとして行っておりますけれども、まず脳梗塞について説明させていただきます。左側に書いてあるように、本成果は「The Lancet Neurology」に発表することができました。血小板の治療薬アスピリンとクロピドグレルに対してシロスタゾールを添加した場合に、どれだけ有効かというものを調べたものがこの治験CSPSという臨床試験になります。これは、国内の300弱の病院が参加して行った多施設共同研究試験になります。脳梗塞を半分に減らすことができました。
 右側に示しているのが、脳卒中の中でも、脳梗塞と脳出血に分けた場合、中段に示すようにTASTE-IA-JAPANという、脳梗塞に対してはワンショットのtPAが有効であるということ。それから、FASTEST試験では、出血に対して活性型の第Ⅶ因子を考慮することによって止血が可能であるということ。これは、アメリカも含めた多施設共同研究試験となっております。
 7ページを御覧ください。先ほど理事長からも御紹介いたしましたが、「The New England Journal of Medicine」に報告させていただきました冠動脈疾患で心房細動を合併する弁膜症性の患者さんに対してどのような治療が選択されるかということを検討した臨床研究です。これも、300施設に及ぶ多施設共同研究試験です。通常のリバローキサバンを抗血小板薬、リバロを投与した場合と、リバロ単独で見たものが右側の図になります。1剤リバロを投与するだけで、十分なイベントの抑制効果があるということと、合併症も少なくなるという両方の効果があるということで、本研究成果が日本循環器学会の推奨薬を決める、それからエビデンスレベルが非常に高いということで、本学会のガイドラインを決める大きな契機となったことを御報告させていただきます。
 8ページを御覧ください。8ページにまとめてあるのは、今まで紹介した5項目について、5年前から中長期計画を策定する時点から始まった計画です。最終年度になって、現在のような質の高い臨床研究を創出することができたことを改めて御報告させていただきます。
 資料1-6を御覧ください。横置きのパワーポイントのブルーの資料です。中長期の見込評価について説明させていただきます。本年度の実績については、今まで御説明してまいりましたが、3枚目を御覧ください。左下に書いてあるECMO等の細かいこと以外に、いかにしてECMOの開発につながったかということを説明させていただきます。2の定量的指標については右下に書いてあるように、繰り返しになりますが論文数に関しては予想を上回る量と、質の向上ということが認められましたので、Sというようにお願いしております。
 4ページの左下を御覧ください。BR16010という、この駆動型のポンプが、今回ECMOを小型化できることになりました。それから抗血栓性を有するという、肝となるポンプの開発になりました。これを中長期計画に掲げることによって、ECMOを作り上げることができました。
 6ページを御覧ください。この血管のデバイスに関しては、カバードステントといって側枝、枝があるところの血流を邪魔しない。それから動脈瘤、脳動脈瘤のところの血栓の器質化を目指したデバイスを使う、作るということで、多孔化カバードステントというものを中長期計画で作っていくことを計画いたしました。
 8ページを御覧ください。8ページも血管の治療についてです。左の図に書いてあるように、ダチョウの首から取った非常に長い血管、ヒミズという小口径の血管を人工血管として使うことができる、というふうにこれまで工夫してまいりました。その点に関しても、内皮化を促進するような工夫、若しくは十分な強度を保つような生体工学の知識を反映した人工血管を作ることができました。
 繰り返しになりますが、9ページと10ページは世界多施設共同研究試験、それから住民コホートを十分に活用して予防医学に関して循環器領域で貢献できたことを改めて強調させていただきます。
 以上、今年度の業績評価と、中長期の1-1に関して説明させていただきました。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 オープンイノベーションセンター長の宮本から、評価項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進及び基盤整備について説明させていただきます。資料1-2の10ページを御覧ください。産官学との連携強化、臨床研究の基盤整備、循環器疾患情報の収集・登録体制の整備ということを、中長期計画の内容とさせていただきました。
 下にあるように、国循型オープンイノベーションシステムの構築、地域住民・企業・行政が一体となった健都における循環器予防の取組、医療の質指標のフィードバックによるガイドライン推奨薬処方率の改善といった内容をもとに定量的指標も全て目標を上回っていることから、自己評価をSとさせていただきました。
 11ページを御覧ください。国循型オープンイノベーションシステムについて御説明させていただきます。研究成果を産業や社会につなぐためには、様々なリソースを活用するオープンイノベーションというものが必要だと考えられております。欧米では、それらの知識を持った人が組織を移動することにより、イノベーションを起こしております。日本では、その人材の流動性が極めて低いことから、欧米型は困難と考えられております。そこで、知識を持った人が、組織を移動するのではなく、1つの屋根の下に集まることによって、新たなイノベーションをするという考え方での国循型のオープンイノベーションを進めております。
 右の上にあるように、2,000㎡、20ユニットからなるオープンイノベーションラボを作成し、その中に既にこれまで多くの共同研究からつながっている研究機関・企業・大学の12機関が参加してくれています。入居予定を入れると17機関、92%の入居が決まっています。オープンイノベーションラボの共同研究費は、令和元年度は5億円であり、令和2年度は8.7億円を予定しております。
 また、サイエンスカフェにおいて、情報の提供や、ミーティングなどの場の提供、そして医療従事者と研究者との意見交換の場を提供することを行うためのサイエンスカフェクラブを創設しました。
 続いて12ページを御覧ください。健都という新しくセンターが移転した地を中心として、地域住民・企業・行政が一体となった循環器病予防の取組を進めております。これまで循環器病研究センターが進めてきた「かるしおレシピ」を体験するための提供するレストランを協力して作ったり、サービス付き高齢者住宅で早期の認知障害早期発見の介入を考えた研究モデルをスタートさせたりしています。
 次のページを御覧ください。2013年から国立循環器病研究センターは、日本循環器学会との共同で、全国の循環器研修施設、研修関連施設の100%の回答率の調査を行っており、これをJROADと呼んでいます。そのJROADのデータの中から、令和元年度は、急性心筋梗塞のガイドラインで推奨されている治療薬の処方率の高い医療機関では入院時の死亡率が低いということを明らかにいたしました。これらの情報を学会等で啓発するとともに、右上にあるように、Business Intelligenceのアプリケーションを使い、自施設の情報を各施設にフィードバックするというシステムを構築してイベントを開始しています。このような行為を通じて、右下にあるように、各施設におけるガイドライン推奨薬剤の推奨率が徐々に増加してきています。
 14ページを御覧ください。ここにあるのは、国内で行われている最大級の脳出血と脳梗塞のレジストリです。この研究を世界での多施設共同研究と併せて、世界的な研究として展開してきております。
 15ページを御覧ください。オープンイノベーションラボを通じて、国循型のオープンイノベーションを今後展開していきたいと考えております。また、健都における循環器病予防の取組が全国の予防のモデルとなるようにしていきたいと考えております。更に、下にあるようにデータを基に医療の質の均てん化を進めるということを進めるプロジェクトを今後進めていきたいと考えております。
 資料1-6の14ページを御覧ください。平成27年度から大型の共同研究を進め、オープンイノベーションラボへの入居の準備を進めてまいりました。その中には、右にあるCerossEffect社との共同研究での心臓レプリカなど、様々な研究があります。今後はこのようなものを実際に製品化し、市場に出していくことを進めます。
 15ページを御覧ください。マンションにおける生活習慣指導のシステム、国循健康管理システムを示しています。これは、国循健都のマンションに入居された方に、Personal Health RecordとIoTを活用した健康管理システムを提供し、そのノウハウを今後モデル化して全国に広げていくものです。
 一昨年までに840戸の大規模マンションで事業が開始されていましたが、令和元年度になって、新たなマンションの参加も決まり、合計で1,000戸にわたるマンション群がこのプロジェクトに参加していただくことになりました。今後このノウハウ、そしてデータを活用した開発に取り組んでいく計画にしております。
 17ページでは、日本脳卒中データバンクの概要を示しております。先ほど示したJROADと同じように、全国から脳卒中に関するデータの登録を行っている研究です。これは、1999年に開始された登録研究でありますけれども、2015年に事務局、データセンターが国循に移転し、現在も登録を進めており、20万件を超える登録がされております。そして、5年ごとにこのデータをまとめた書籍を出版し、一般の方から、臨床医にかけて脳卒中の臨床現状の情報を提供しております。これは、今後進んでいく全国循環器病登録のモデルとなるだろうと考えております。
 18ページは、先ほど健都でも提供しているとお話しした、かるしおレシピの基になっている、かるしおについての全体像を示しているものです。かるしおのレシピは448商品にわたり、2019年度の売上高は21億円に達しました。これはS-1g(エスワングランプリ)や、様々なスーパー、薬局、コンビニなどでかるしおの棚を設置していただくなどの活動が続いているということもあります。そして、この取組は日本の和食の良さを展開するということでもあり、右にあるようにG20で各国の保健大臣に御紹介しました。また、ロシアやポーランドから来日された医療関係者にもかるしおを紹介しています。その成果としてロシア国立予防医療科学センターとの共同編集で、かるしおのロシア語でのレシピ集を出版しました。また、今後のことになりますが、ロシア国立栄養研究所病院でのかるしおの病院食を現在計画して進めているところです。
 19ページは、バイオバンク事業を示しております。バイオバンクは、現在同意数で2万件、採血数1万7,000件になっております。様々な研究に提供しており、延べ40研究以上に試料を提供し、使用されております。
 下に最近の代表的な研究を示します。脳梗塞の新たな遺伝子の発見、あるいは胎児の心不全の診断法の開発など、様々な研究にこれは使われております。以上です。
 
○祖父江部会長
 大変ありがとうございました。非常に素晴らしい内容を含んだ御発表だったと思います。ただいまの御説明に対し、御意見、御質問を頂けたらと思いますが、いかがでしょうか。「手を挙げる」というのが右のほうにありますので、そこを押していただけると発言される合図になりますので、是非そこを押していただけると有り難いと思います。ないようですので、手始めに私のほうから1つ質問させていただいて、それから皆様から御質問をお願いできると有り難いと思います。
 大変素晴らしい御発表だったと思います。今まで今年を入れて6年の期間、昨年まではどちらかというと、ちょっとアウトプットというか、アウトカムがはっきりしなかった部分もありました。本日は、先ほど理事長先生からもお話がありましたように、いわゆる大規模臨床研究、あるいは治験で見事な結果を、世界をリードする雑誌に幾つか御発表いただいて、正に日本の代表的な成果を挙げていただいたと感じました。これは心臓のほう、循環器のほう、それから脳卒中のほう、更にはオープンイノベーションというところでも非常に重要な成果を出していただけそうな感じがしております。
 1つ、2つ質問です。1つは、例えばシロスタゾールの脳梗塞が半減するとか、それから脳卒中のほうでリバーロキサパンの効果とか、抗血小板薬の併用の効果とか、非常にいろいろ見事な効果を出していただいています。最近は、このように長生きされる人が増えてきておりますので、この治療をやりながら非常にロングサバイバルをされることになります。例えば、脳卒中から、だんだん認知症に移行するとか、あるいは心筋梗塞から心不全に移行するとか、非常にロングタームのアウトカムというものが非常に問われる時代になってきていると思います。前から、そういうことについても是非やっていきたいというお話をお聞きしています。今期のまとめをしていただいて、次回のタームに移っていただくことになると思いますが、この辺のことについてはいかがでしょうか。その辺で何かお考えがあればお聞かせいただけると有り難いと思います。
 
○国立循環器病研究センター小川理事長
 非常に重要な問題です。今までのスタディが大体3年から5年ぐらいで終わっています。2002年から私が奈良医大の斉藤先生と一緒に始めたJPADというのがあります。それは、2002年から今まで18年続いています。本日の発表では除いたのですけれども、18年続くと、これはちょっと機序がなかなか正確には分からないのですけれども、女性については認知症の予防がアスピリンでできたというデータがあります。
 
○祖父江部会長
 ああ、そうですか。素晴らしいですね。
 
○国立循環器病研究センター小川理事長
 その論文は去年発表いたしました。ですから、10年20年続かないと、先生がおっしゃるような認知症に対する効果とかそういうのは出にくいのではないかと思っております。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。福井先生が挙手されていると思います。よろしくお願いいたします。
 
○福井部会長代理
 福井です。素晴らしいプレゼンテーションをありがとうございます。2点伺います。1つは、英語の論文をたくさん出されていて、「The New England Journal of Medicine」とか「The Lancet」に掲載されたということです。実際に「The New England Journal of Medicine」、「The Lancet」又は「JAMA」、「BMJ」などに掲載されたのは何編ぐらいあるのでしょうか。
 2つ目は、素晴らしい研究成果を出されていますけれども、研究の動向として、例えば循環器病研究センターで開発された研究成果や機器により、日本中の、又は世界中の何人ぐらいの命を救ったのか。あるいは、1人の命を救うのにどれぐらいのお金がかかるのか、費用対効果分析とか、といった研究はいかがでしょうか。このようなテーマに興味を持っているグループはあるのでしょうか。この2点を聞かせていただければと思います。
 
○国立循環器病研究センター小川理事長
 論文の件ですけれども、5年間に国循が中心となった研究での「The New England Journal of Medicine」は1本と、「The Lancet」も1本です。「The LancetNeurology」はありますけれども、本当の「The Lancet」は1本です。
 2点目は、どのぐらい救われているかということですけれども、これは山本先生から補足してもらいます。体外式人工心臓が、今年ぐらいにそろそろ製品になると思います。これに関しては、素晴らしい人工心臓で、今までの人工心臓に比べて非常にアウトプット、心拍出量が多いということ、それと血栓ができにくいということで、恐らく発売になれば、植込み型ではない体外式の人工心臓は世界のほとんどがこれに代わるのではないかと思っています。私は、実際に患者さんを見てきましたけれども、体の大きな方は心拍出量が足りないと苦しいのです。この患者さんが説明してくれたのですけれども、6L、5Lあると私は楽なのだと言われました。そういう効果で、ほとんどがこの人工心臓に変わっていくのではないかと思っています。補足があればお願いいたします。
 
○国立循環器病研究センター山本理事長特任補佐
 理事長特任補佐の山本です。2年ぐらい前から非常に小さい体外式の補助循環装置の医師主導治験を御紹介していたと思います。今年の6月に無事に共同開発企業から承認申請をしていただいております。恐らく今年度中には承認される見込みです。
 それから、ECMOのほうは、現在医師主導治験を継続しております。3例まで登録が進んでおりますので、こちらも順調に進めば数年後には承認申請というふうに考えております。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。分かりましたか。
 
○福井部会長代理
 今のお答えに一言。素晴らしい成果のアピールの仕方の1つとして、例えばかるしおにしても、先ほどのECMOにしても、それで何人ぐらいの命が救われたのかを予測する計算の仕方がありますので、そういう数値を出せればアピールすると思いますので、考えていただければと思います。
 
○国立循環器病研究センター小川理事長
 1つだけよろしいでしょうか。
 
○祖父江部会長
 手短にお願いいたします。
 
○国立循環器病研究センター小川理事長
 ECMOに関しましては、日本のCOVID-19、新型コロナウイルス感染症の患者の75%が救われています。そして、今のECMOは御存じのように、3日で回路を変えなければいけない。今度の私どものECMOは14日間続けられるわけです。COVID-19の場合ECMOの離脱期間が平均12日なのです。ですから、これができると医師側も患者側も非常に楽になり、生存率が上がると確信しています。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。次に花井先生よろしくお願いいたします。
 
○花井委員
 花井です。資料の5ページにある、いわゆるAEDを使って後遺症を減らすという「The Lancet」に載った論文があります。これは病院だけではなくて、社会的モデルとしてこういう形をすることによってたくさんの命が救われるというのはすごいと思って見ていました。実質この研究において、一体どのぐらいの症例でやられたのか、実数を私が見損なっているかもしれないのですけれども、この「The Lancet」のグラフのN数というか、実数は何症例ぐらいやってこういう結果になっているのでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 オープンイノベーションセンターの宮本です。私のほうから説明させていただきます。このデータは、全国の救急搬送のデータです。その中でAEDを使用した記録がありますので、そのデータを用いたものとなっています。その右の★印にあるように、年間11万件発症しているということで、そういうデータに基づくことになるかと思います。
 
○花井委員
 そうすると、これはエビデンスとしてはかなり高いエビデンスだと思います。
  今は公衆衛生という観点でみんなの意識が高くて、結局市民もその疾病予防で何かするという気運があります。正に市民がAEDの使用ということで、みんなでみんなの命を守るというチャンスなので、是非こういうことの社会的実装について、今後もいろいろアプローチをしていただけたらと思います。ありがとうございました。
 
○国立循環器病研究センター小川理事長
 今、12万例と言いましたが、実際にこの研究で使ったデータは2万7,000例ということでした。失礼しました。
 
○花井委員
 なるほど。
 
○祖父江部会長
 時間がなくなってきましたが、中野委員お願いいたします。
 
○中野委員
 中野です。14日間の持続使用が可能で、患者さんの搬送に使えるというECMOのお話は大変興味深く拝聴しました。ありがとうございます。分かりやすいお話で、COVID-19との関係で教えていただきたいのですが、もしかすると令和元年度の実績ではないかもしれませんが、今回、実際に国立循環器病センターで何例のCOVID-19の患者さんにECMOで対応できたかということ。それから、この新しいECMOが実用化できた場合、その人数がどれぐらい増えるかという見込みがあれば教えてください。
 
○国立循環器病研究センター小川理事長
 この治験が始まってから、心臓病には付けましたけれども、COVID-19には付けておりません。そして、どのぐらいかというのは分からないのですけれども、今治験が始まっています。ただ、今は対象患者さんが少し減っていますので、今後第2波が来た場合でないとまだ分からないと思います。
 
○中野委員
 ありがとうございます。感染症に対する集中治療、先進医療ということですごく課題が大きいけれども、解決していただければうれしいお話なので、是非よろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 前村委員が手を挙げておられますので、よろしくお願いいたします。
 
○前村委員
 長崎大学の前村です。大変レベルの高い研究が順調に進んでいるということを拝聴しました。レジストリ研究として、循環器領域ではJROAD、脳卒中領域で脳卒中データバンクを、国循中心にされているかと思います。それぞれの研究で、現在どれぐらいの論文が出ているかをまずお聞きします。
 
 あとは昨年、脳卒中と循環器病対策基本法が施行されて、今後登録法ができることが期待されているわけです。その中で国立循環器病センターがどのような役割を果たしていくかということについてお伺いします。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 オープンイノベーションセンターの宮本からお答えさせていただきます。資料1-6の16ページに記載があります。JROADに関してはそこに記載がありますように、25論文となっております。ただ、正確に言うとその後アクセプトしたものもありますので、現在は27論文アクセプトされた状態になっています。これは、2016年に最初の論文が出てから、現在までに27論文ということになります。
 脳卒中データバンクについては17ページにありますが、日本脳卒中バンクについては22編が出版されていることになります。
 
○祖父江部会長
 それでは、藤川委員お願いいたします。
 
○藤川委員
 藤川です。ECMOの件で御質問させていただきます。軽量化されたりすることによって、非常に使い勝手が良くなったという御説明がありました。新型コロナウイルスの時期に、専門的な病院でないとそういうものはなかなか使えないとか、どの病院でも使えるわけではないというような、設置するのはなかなか難しいのだというようなことを聞いて、ちょっとがっかりしたようなところが一般国民としてはあったのではないかと思います。こういう改良の過程で、そういう使い勝手の良さみたいなものもアップしたのかどうかを教えていただけますか。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 おっしゃるとおり、今のECMOはものすごく大きいものです。ですから、病院に設置するしかないのです。でも、このECMOは小型ですから救急車にも乗せられます。また、間に合うか間に合わないかは別にして、その近くの病院までECMOを持っていくということは可能です。
 さらに、ECMOを組み立てるのに時間が結構かかるのですけれども、これは非常に早く立ち上がります。もう、センターの技術者がいろいろな所に置いていて、それの教育をしてもらっていますから、その教育が行き届けばかなり立ち上がりが早いという特徴があります。
 
○国立循環器病研究センター山本理事長特任補佐
 すみません。医師主導治験の中で、他の病院に患者さんを連れに行って、そこでその治験の小さい機器を付けて、それでドクターカーに乗せて、こちらの病院に搬送することが可能になっていますので、治験の中でそういうECMOを付けたまま搬送するということも実施できるということです。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。時間が来てしまいました。時間が足りなかった感じがします。また戻ることもできますので、そのときにまた御発言いただければと思います。ありがとうございました。次の議論に移ります。続いては、評価項目1-3から1-5の、医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項についてです。先ほどと同じ流れで、時間も先ほどと同じです。20分御説明いただいて、質疑が18分というところです。それでは、法人のほうから御説明いただけますか。
 
○国立循環器研究センター飯原病院長
 病院長の飯原弘二と申します。よろしくお願いいたします。説明資料の16ページを御覧ください。医療の提供に関する事項です。自己評価はSとさせていただきました。
 中長期計画の内容ですが、チーム医療の推進、高度専門的な医療の提供、新たな診療体制モデルの構築と提供、循環器終末期医療モデルの確立の4つです。皆様御存じのとおり、私たちは昨年の7月に新しく岸辺の地に移転いたしまして、診療をする環境は劇的に改善しております。
今回の評価としては、左下の部分で、5点について簡単に御説明させていただきます。1番目は、植込みデバイスで遠隔モニタリング診療、2番目はヘリコプター搬送による患者並びにドナー心の搬送、3番はハイブリッド手術、4番は胎児の頻脈性不整脈の治療プロトコールの確立、5番目が循環器緩和ケアの普及についてです。手順的な指標は200%を超える指標もございまして、私たちは、これに基づいて自己評価をSとさせていただきました。
 特に、1番目心房細動根治治療の件数は、現在は786件ということで、昨年の移転の前後の時期を考えますと、新しい地で、このように倍増するような治療件数をしています。この新しい医療の環境を最大限に使えているということです。具体的には、引き続き説明させていただきたいと思います。
 18ページを御覧ください。左側です。植込みデバイス遠隔モニタリング診療です。2019年の遠隔モニタリングの導入は、新規で330件ということで、特に重要な植込型の除細動器の患者は新規で123名ということです。これによって、デバイスの不具合を早期発見や、致死的な心室頻脈/心室細動の発見などが容易になるということです。
 私たちは、新たな地に移転したわけですが、病診連携の推進のために、遠隔モニタリングのシステムを用いた大阪ネットワークの構築ということをしています。このグラフにありますように、1,953名で、これは国循が中心となって先生方と連携をして、多職種による遠隔モニタリングチームを結成して対応しているということでして、先進的な取組です。
 2番目はヘリコプターの搬送です。新病院になりまして、右の写真にありますが、屋上に巨大なヘリポートが設置されています。非常に使いやすくて降りやすいという評判ですが、これによって私たちの病院で、様々な医療機器を装着した患者が、短時間かつ安全に移送できるということです。昨年の7月に移転した後、現在もう20数件を超える搬送ができるようになったということです。心臓提供があった場合も、ヘリでドナーを搬送できるようになったということで、経費の節減につながっているということです。
 19ページを御覧ください。ハイブリッド手術です。これも新病院で、手術と血管内治療が同時に、シームレスにできる環境が極めていい形で整備されています。心臓手術、脳神経外科の手術が4室でできるということで、私たちの病院で非常にたくさん搬送される急性大動脈解離とか、心臓のロボット手術などで威力を発揮しています。現在、年間859件という治療件数でして、不整脈、血管外科、心臓外科、脳外科をはじめ、この4室は非常に高い頻度で稼働しているところで、低侵襲で安全な治療、また在院日数も短縮できるということで、最大限のメリットを発揮していると考えております。
 次は、胎児の頻脈性不整脈の治療プロトコールの確立です。胎児の死因の主要な原因である頻脈性不整脈に関して、今までは各施設がばらばらでやっていたわけなのですが、これは世界初の明確な治療プロトコールを確立して、臨床試験も既に終了しています。現在、ここに在籍していた参加の医師が事務局を引っ張って、JACという非常に素晴らしい雑誌に掲載されたプロトコールでして、それによって臨床試験はもう終了しているということです。これは新しい臨床試験の在り方として、世界的にも注目されているわけです。
 右側です。循環器緩和ケアの普及です。超高齢社会の到来に伴って、心不全の患者が激増しています。特に重症の方で、最終段階における意思決定支援ということが、最近非常に注目されております。
 私たちは、平成27年から、この問題に対して取り組んでまいりまして、多職種のチームを組んで、こういう緩和ケアと、ACPの運用について検討を進めています。現在は精神科医、心理師も加わって、チーム力は非常に向上しているということで、御家族や患者の意思を尊重して、その支援に一定以上の質を担保することをやっているところです。このようなことを、心不全の予後予測を用いたACPの導入時期に関する介入なども含めて、日本における循環器の緩和医療の均てん化に寄与しているところです。
これに関して、資料1-6で、中長期の見込みについて御説明いたします。青の資料の23ページを御覧ください。心臓移植の5年間の歩みでは、当院では平成27年度から心原性ショックの患者も積極的に受け入れて、体外式のVADを装着件数が増加しておりますし、結果的に植込型のVADの装着件数が増加しております。先ほどもお話がありました遠心ポンプを用いた心原性ショックの患者で、治療方針を決めるためのVAD治療の医師主導治験をしているということです。心臓移植、補助人工心臓の装着件数とも、年々増加しているというところでして、もう一つの特徴は、23ページの左下ですが、心臓移植にある、平成27年度から医学的な理由で他の施設が辞退したドナー心でも、積極的に当院で心臓移植を行って、当院の心臓移植件数が増加して、なおかつ成績は良好であるということです。これはマージナルドナーからの心臓移植を開始し、心臓移植は年々増加しているということで、私たちのミッションである移植医療の推進に、重要な働きができているものだと考えています。
 24ページは心筋症の日本最大のセンターであるということで、現在、希少疾患を含めた心筋症の診断が可能であると。生検を行って、マルチモダリティイメージングとかバイオマーカーなどを用いて、多角的な診断を行っているということです。
 25ページは脳梗塞の血栓溶解療法で、発症時刻不明の症例に対する適用、治療推奨を行っているということです。26ページは、治療の緊急体制の連携です。以前、私たちはモバイルテレメディシンを行っておりましたが、それを12誘動の心電図電送に置き換わっております。それによって、病院の適切な選択と、例えば急性心筋梗塞患者の治療時間の短縮が、効率的に図られているというところです。この辺りは、27ページにも書いています。
 それでは、また単年度に戻りまして、資料1-4人材育成に関する事項です。22ページを御覧ください。この自己評価はAとさせていただきました。項目の内容は、リーダーとして活躍できる人材の育成、モデル的研修・講習の実施、最先端の医療技術の研修です。この評価は、教育臨床プログラム数などを考慮して、私たちは自己評価をAとさせていただきました。今回は、その評価項目の1から5について簡単に御説明させていただきます。
 22ページです。教育体制の確立で、前年度の令和元年度の一番の大きな成果は、「看護師による特定行為研修」の開講でした。ナショナルセンターには初めて特定行為研修制度を導入して、昨年の10月1日より研修を開講、初年度は5名が研修を修了して、循環器領域を含む8つの特定行為区分21行為の研修ということで、これは最も多いらしいのですが、それを実施するということです。
 私たちは、重症集中治療コースという命名をさせていただきました。特定行為というのは、皆さん御存じだと思いますが、医師に代わって、一定の研修を受けた看護師が高度な判断力の下に、医師に代わって行う、「診療の補助行為」です。現在、国循の各集中治療病棟で、研修を終えた看護師が活躍しているところです。今年度も、6名の看護師がこのコースに参入して、今、研修を進めているところです。右側はトレーニングセンターでして、これは新病院で、日本で唯一の循環器に特化したトレーニングセンターです。最先端の医療機器から、高度なトレーニング機器やシミュレータ装置を多数そろえているということで、最新の機器を使った侵襲的検査や手術手技のシミュレーションが可能であり、なおかつそれを非常に経験豊富な国循の専門医が指導するというところが、大きな特徴です。右下は臓器摘出講習会を実施している写真がございますが、真ん中の臓器摘出講習会は、ドクターは当院の心臓外科の医師です。
 次は、救急隊への研修、これは私たちの医療というのは時間との戦いですので、脳卒中、循環器病とも、プレホスピタルの研修というのは極めて大事で、地域社会に根差して、多くの症例検討会を開講しています。令和元年は9回で、399名の救急隊員が参加しているということで、疾患のトリアージを、事後も含めて検証するということです。
 右側は、肺のバルーン形成術です。これは、肺高血症の中でも予後である、慢性血栓塞栓性の肺高血症に対して、新しく画期的治療である肺動脈バルーン形成術です。これを海外からも研修を受け入れているということで、国際貢献及び医療の均てん化に貢献しております。世界で13か国、25施設が研修を受けていて、もともと患者は従来の外科手術の適応はないということで予後不良でした。そこで、私たちがこれを先駆けて、本格的に開始して、現在、日本から世界に発信して、世界中が注目している治療方法です。海外医師の見学研修や海外施設での指導も行っているということです。
 次が、重症心不全治療で・心臓移植治療を専門とする医療者の研修です。ここに書いてあるVADを装着した患者を医学的に管理するわけなのですが、そういう専門職です。様々な資格があるわけなのですが、これを私たちの施設の患者は非常に多いので、短期間にこういう資格を取得できるということで、研修を受け入れているところです。私たちのこの補助人工心臓の成績は右に書いてありますが、極めて良好で、Abbot社に表彰されたというところです。
 人材育成に関する資料は、資料1-6の中では28ページ以降に記載しております。この中では、先ほど御紹介した内容と重複する内容が多いわけですが、例えば30ページですと、臓器移植のコーディネーターや、心臓弁・血管採取医研修コース、重症心不全に関与する医療者の研修ということで、私たちは中長期の期間にわたって、地道にこういう活動を展開しているということです。
 31ページは産婦人科の研修で、胎児診断です。私たちは、心疾患合併妊娠は年間100例で、我が国最多です。胎児心疾患の診断も年間80例で、これも我が国最多です。そういうことで、胎児心疾患の診断・管理に関する研修を受け入れているということです。
 32ページに示すのは、これは私たちが長年取り組んでいる統計家の育成でして、大学を使って、このような研究をやっているというところで、こうした統計家育成を続けているところです。33ページは術中経食道心エコーに熟達した麻酔医をということで、こういう特殊な技能を持った麻酔科医の育成にも努めているわけです。
 引き続いて、また赤の資料に戻りまして、資料1-2の次のページを御覧ください。1-5医療政策の推進等に関する事項です。これは自己評価はAです。先ほど、こちらはOICのほうで説明がありましたので、簡単に述べさせていただきます。国への政策提言に関する事項です。医療の均てん化、情報の収集並びに発信に関する事項、情報の収集、発信です。26ページを御覧ください。これは、先ほど御紹介がございました。社会実装の取組としては、かるしおに関してです。これは、プロジェクトや、新しい補助人工心臓の紹介です。これを海外の国際会議でナショナルセンターとして、その成果を御紹介させていただいたところです。
 27ページを御覧ください。先ほど、かるしおの取組の話は御紹介がありましたが、令和元年度ではロシアでの海外展開ということで、ロシアの国際会議で、このかるしおの取組を紹介しています。ブックレットもロシア語に訳されて、国循の病院食もロシアの医療機関に導入されたということで、いよいよ国際親善あるいは国際協力という点で、和食のよさを国循が中心となって発信できているというところです。
 次のページを御覧ください。これは核酸医薬の社会実装です。1つは、国の大きな方向性はベンチャーの支援に関して、私たち国立循環器病研究センターが認定制度を創設しました。それの第1号として、ベンチャーが設置されたわけでして、2020年1月にライセンス契約を締結して、国循の知的財産権を活用すると。ベンチャーの悩みは資金の獲得があります。最初はAMEDの支援を受けてスタートアップして、それから国循が認定したという形で、これから設立した後、成長を続けていくのを見守っているところです。アカデミアの研究成果を画期的な医薬として社会へ還元するという取組で、原発性高カイロミクロン血症に対して、有効な核酸医薬の特徴、これをこれからベンチャーでやっていくというところです。
 最後は、循環器病対策推進協議会の話でして、国循からは3名が委員として参加しています。現在、基本計画がおおむね制定されて、今はパブコメを取るところです。簡単でございますが、以上です。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。非常に広範にわたって御説明いただいたと思います。非常に素晴らしい御発表だったと思います。それでは、今の御説明に対して、御意見、御質問等がございましたらお願いしたいと思います。
 
○斎藤委員
 2つ簡単に教えてください。まず、ヘリポートを作って、時間が短縮し、経費も削減されたというのは素晴らしいことだと思うのですが、これは固定資産としては、結構作るのにお金が掛かったのではないかと思うのですが、それを入れても経費削減になっているのでしょうか。それを1つ教えてください。
 それから、先ほどのパートで質問しそびれてしまったので、戻って申し訳ないのですが、ページ数は覚えていないのですが、AEDについてです。これはサポーターのような人が近所にいて、何か発信されると、その人たちが駆けつけてAEDを使ってということを伺ったと思うのですが、これはIoTのテクノロジーを利用しているのでしょうか。もしそうであるならば、ITに対しての取組を新たにしているのかどうか。この2つを教えてください。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 最初のヘリポートに関しては、それ単独の建築費用というのは、今、手元にありませんので、なかなか費用対効果というのを算出するのは難しいように思います。申し訳ございません。また情報が分かりましたら、後日したいと思いますが。
 また、閑散期とヘリの搬送の費用も、算出が可能だと思いますので、この比較のデータは、また後日お知らせできると思います。ありがとうございました。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 もう一点ですが、資料1-2の5ページのグラフの右下に記載がありますが、そういった方を発見された方がスマホを介して、ボタンを押すことで、近くにいる方に連絡を飛ばすというものです。
 今、お話がありましたように、ITを活用したものということになると思います。これは、いわゆるバイスタンダード、たまたま外におられる方がその処置ができる場合であればいいのですが、そうでない場合でも、そういった方をできるだけ早くそこに駆けつけてもらうというものです。これは、ある意味での予防ということになるかと思いますが、こういった取組は、今後循環器病の予防においては、非常に重要だと考えております。
 
○斎藤委員
 ありがとうございます。
 
○大西委員
 資料の18ページに、植込み型除細動器のリモートモニタリングのネットワークということがありますが、これを活用した治験などは検討されているのでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター山本理事長特任補佐
 これは、どちらかと言いますと、かなり広範囲から患者がこちらに来られて、これらの植込みの除細動器等を入れておりますので、その方々が地域に帰った後に、基本的にはかかりつけ医にかかりながら、遠隔で機器が作動しているかどうかを遠隔でモニタリングをして、かかりつけの先生がすぐには発見できないことについては、こちらですぐに発見できるようにするという、地域と基幹病院の二重で患者をよく見ていくというネットワークでして、ここで治験をやるというところまではネットワークが十分に成長はしていないと思っていますが、おっしゃるとおり、将来的にはこういう中で治験をやっていくということも十分に検討できるものだと思っております。
 
○大西委員
 そうですね。できれば遠隔モニタリングのシステムそのものが、どのぐらいの価値があるのかということについて、是非御検討いただくといいかなと思います。
 
○福井部会長代理
 心不全の患者が大変増えてきていて、緩和ケアをチームで対応されていると思いますが、精神科医の介入など、プロセスとか身体的苦痛に対応したというようなデータはございますが、実際に何らかのアウトカムが、よくなっているというようなデータ、感触はあるのでしょうか。
 
○国立循環器病研究センター小川理事長
 一応症例を積み重ねておりまして、症例によっては、精神的には非常に患者がよくなったというのはあるのですが、予後が完全によくなったというデータはまだ持っておりません。
 
○祖父江部会長
 1つ、私からお聞きしてもよろしいでしょうか。非常に広範な情報を頂いてよく分かりましたが、1つ、資料1-3で、いろいろな医療の提供あるいは均てん化というところなのですが、今、福井先生から御質問のあったことともちょっと絡むのですが、国循に行かないとなかなか治療がいかないというのもありますが、全国津々浦々で均てん化して、最終的にはアウトカムがいいように向かうように仕向けていくというのも、国循の非常に重要なミッションだと思います。例えばがんセンターなどですと、5年生存率とか10年生存率などで、それぞれのがんのアウトカムがどれだけよくなったかということを均てん化の1つの重要な指標として、毎年出しております。5年前に比べたら非常によくなったというような指標を出しておられるのですが、先ほど来出ている、循環器の関係の法律なども出てきましたので、この辺のオールジャパンの循環器病そのもののアウトカムが、どうよくなるのかということが、非常に国民が知りたいところだということで、それには循環器病研究センターが中心的な役割を果たす必要があるのではないかと思っているのです。その辺の均てん化に関する今後の方針のようなことは、何かお考えでしょうか。もしあればお願いしたいと思います。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 1つは、私たちは心臓移植とか臓器移植を推進しているわけなのですが、今、お話したように、VADを装着している患者は年々増えております。マージナルドナーなど、一般的には移植医療のリスクの高い患者さんにも医療を提供しており、そういうものを患者が着けた後、管理できる施設が、現在日本中に少しずつ広がってきています。
 そういう高度な医療を、移植医療というのは、その典型的なものだと思うのですが、それを管理できる施設が増えていることが、1つの進歩かなと思っています。
 どんどん患者は増えてくるので、私たちの病院の中でも、こういうVADを着けている患者はどんどん増えてきておりますが、そういう患者が、地元の病院でしっかりと衛生の管理ができるということであれば、患者の身体的な負担、精神的な負担も減るのではないかなと思っています。
 
○祖父江部会長
 先ほど福井先生がおっしゃった心不全のアウトカムは、例えば何かマーカーがあって、こういうインターベンションをやったら、非常に全国的によくなったとか、そういうものが見える形で出てくると、非常に有り難いという感じはしているのですが、まだそういうデータはないと思うのですが、何かコメントがあったらお願いいたします。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 今、日本全体で心不全患者がどのぐらいいるかというのが、まだ分からない状況なのですが、先ほど言いましたJROADで循環器専門病院は1,300あり、現在27万件ぐらい登録されています。
 その予後というのは、将来的には出ると思いますし、それから循環器病対策基本法で、まもなく登録事業を始めるところです。これが始まりますと、循環器疾患の予後も出てくるのではないかと思っています。
 それと均てん化ですが、先ほど説明がありましたBPAですが、かつては日本で3か所か4か所ぐらいでしかできなかったのですが、国循に研修に来て、50例経験しますと治療の資格をもらえるというようなことを決めています。この人がだんだん全国に散らばっていきまして、高度な循環器医療の均てん化が進んでいるところです。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございます。是非、今後よろしくお願いしたいと思います。
 
○福井部会長代理
 正に祖父江先生がおっしゃったことで、私も心筋梗塞とか、心不全とか、高血圧の患者数がどうなるかとか、日本全国で高血圧の患者の血圧が140/90以下とか、120/80以下にちゃんとコントロールされている割合はどうなのかとか、祖父江先生は「オールジャパン」とおっしゃいましたが、そういう循環器疾患についての医療の質を循環器病研究センターのほうで常にモニターされて、発信されるといいのではないかなと思います。
 悉回調査は無理ですので、何らかの形の予測値になると思うのですが、是非やっていただけるといいなと思っています。コメントです。
 
○祖父江部会長
 循環器病研究センターから御発言はありますか。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 脳卒中のほうは、均てん化のことで、私たちは5か年計画の最初に作ったときに、日本循環器学会と日本脳卒中学会をはじめ、関連学会は達成目標を作ったのですが、例えばtPA静注療法の施行率の10%とか、5年間で脳卒中の死亡率の5%低減などを策定しました。
 私自身は、研究代表者として脳卒中患者のDPC情報を活用したJ-ASPECT Studyを10年前から続けています。tPA静注療法の施行率は、2016年でも、まだ約6%しかなくて、血栓回収療法の均てん化も含め、目標達成にはまだまだということです。
 ただ、脳卒中の死亡率は、この間少しずつ低減しており、超高齢社会でありながらも、自然に低減している実態は分かっています。
 ただ、今後の学会、日本脳卒中学会と日本循環器学会が主となって死亡率を更に低減させていくという計画を策定する場合、ベースラインの死亡率の値が分かることは必須ですので、協力して、そういう信頼できる数字を出していくというのは大切かと考えています。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。是非お願いしたいと思います。がんなどは、先ほど申し上げましたように、5年生存率、10年生存率を毎年全国に発信しておりますので、我々としては目に見える形で、どれぐらい進歩しているのかが分かりますので、そういうような指標、がんとは違うデザインを考えないと難しいのだろうと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。ほかにはよろしいでしょうか。
 前のセッションで、1つだけ追加で質問したいのですが、オープンイノベーションのシステムの構築を立ち上げられて、非常に好調の予感があるとおっしゃっていますが、これは私は前から非常に期待しておりまして、将来に向けて、ナショナルセンターの1つの在り方を御提示されているのではないかと思っております。
 実際には、これはどういうことを行おうとしているのか。ここに4社の創薬とかデバイスということが書かれていますが、実際にどういうことが行われようとしているのかという中身がちょっと分かると有り難いと思います。
 もう一つは、これはどこも非常に困っているのですが、全国的な集計データとか、バイオサンプルのようなものを企業は非常に使いたいということを言っているのですが、そういったものについても、今後どうやっていかれようとしているのか。法律的な問題とか、倫理、個人情報保護法の問題とか、いろいろあると思うのですが、この2点について、関連でお教えいただけると有り難いと思います。
 
○国立循環器病研究センター宮本オープンイノベーションセンター長
 私は、この4月にオープンイノベーションセンター長になりまして、これからということですが、今、祖父江先生がおっしゃっていただいたように、その責任は大きいと考えておりますので、先生がおっしゃるように進めていきたいと思っております。
 少し例を述べさせていただきますと、先ほど申しましたCerossEffect社との共同研究は、元々3Dの心臓モデルを開発するところから始まったものですが、そこに別の企業がこういったこともできるというようなことでアイデアを出して新たなイノベーションをおこすというようなことが行われました。
 それにより、単なる心臓モデルとしての販売だけではなくて、これを用いたシミュレーションや、あるいは治療法の開発といったことにも、それが使えるのではないかということで、今、いくつかの企業が進めております。このように様々なアイデア、ノウハウといったものが、ここでミックスされ、また熟成されて新たなものが生まれるというようなことが、今後起こるのではないかというように考えております。
 また、OILには創薬や在宅ヘルスケア、デバイス、イメージングというように、いわゆる医療関連の企業が入っていますが、現在これ以外にも様々な業種の方にも入ってこられています。例えばソフトウェア開発や情報関係の会社も入ってきております。
 今後、社会を担い、良い社会に変えていくパワーを持っているような業界、産業界が、循環器の予防や治療に参画していただくことで、新たな方法が生まれるのではないかと考えております。製薬企業も、国立循環器病研究センターの様々なデータを用いて、新たな薬の活用方法について検討されています。
 先生がおっしゃったように、企業にそのままデータや試料を差し上げるわけにはいきません。あくまでもアカデミアが試料やデータの倫理的な問題やプライバシーといったことについて、責任を持った形で行っていく必要がございます。
 そのため、このOILに入っていただく企業には、全て共同研究という形で入っていただきデータや試料を扱う場合でも、必ず共同研究という形で行うということで、国循の研究者が責任を持って、問題があった場合にその責任を取らなければいけないということで、しっかりと研究を進めていくということになっています。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。時間がなくなってしまいましたが、ほかの委員からは何かございますか。よろしいですか。どうもありがとうございました。時間を若干過ぎました。もし後で戻って議論する時間があれば、そこでまたお願いいたします。
 それでは、引き続きまして評価項目の2-1から4-1の業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項について議論したいと思います。先ほどと同様の流れですが、ここはちょっと短めでして、説明が8分、質疑時間が6分となりますので、よろしくお願いいたします。それでは、法人のほうから御説明をお願いいたします。
 
○国立循環器病研究センター稲川企画戦略局長
 企画戦略局長をしております稲川と申します。よろしくお願いします。私から御説明をします。まず、資料1-2の29ページからになります。業務運営の効率化に関する事項と財務内容の改善に関する事項を示しております。業務運営の効率化に関する事項についての指標としましては、経常収支率、それから後発医薬品のシェア等があります。それから、予算の1の項については自己収入の増加です。資料30ページを御覧ください。令和元年度の財務状況で、ここに貸借対照表と損益計算書を載せております。損益計算書を見ていただきますと、経常利益の部分が昨年度は27億円の赤字、それから、当期総利益につきましても40億円の赤字と言いますか損失が出ている状況です。
 その要因を詳しく御説明します。31ページをご覧ください。まず、左側に経常収支、右側に医業収支があります。医業収支から御説明します。一昨年度と比較して、令和元年度は、こちらにありますように、医業収入益のほうが7億円増加しております。内訳ですが、入院の診療収益が約4億円減少しております。これは、実は昨年7月に移転をした際に、一時的、に、移送する患者数を減らすため、重症患者に絞って入院を継続する形にしまして、患者数を通常の5分の1ぐらいまでに一旦落としている影響があります。そのため、それを立ち上げるのに若干時間が掛かったということで、その部分の影響がありました。それから、2月以降の、いわゆる新型コロナウイルスの流行に伴いまして、やはり手術の先送りや受診抑制等の影響で年度末の収益が伸び悩んだという状況です。一方、外来については昨年度より増加、それから室料差額についても、新病院に移って差額を頂く機会が増加しました。それから、業務のほうですが、給与費が7億円増えておりますが、これは移転に伴う診療体制の強化により新しいスタッフが増えた関係で費用増となっています。あと、一番大きいのが、新しい建物を建てたことや、新しい医療機器や備品を購入したことで減価償却費が昨年に比べて27億円増えている。これが一番効いているところかと思います。
 それ以外にも、消耗品の関係も、移転に伴いまして買い換えた物も結構ありますので、その費用が増えているということ。それから、水道光熱費については、移転して建物の規模が大きくなった影響もあるのですが、昨年7月に移転した後、本年3月いっぱいは古いセンターも若干機能を残して残務のためにやっておりましたので、二重に負担をしていることもありまして、そういうところに費用が膨らんだ結果、医業収益、医業収支については、昨年度に比べて43億円悪化しまして15億円の赤字となっています。それから経常収支は毎年、左側になりますが、医療以外の部分についても、同様に減価償却費が3億円ほど増えていることや、先ほどの水道光熱費の事情などがありまして、一応、トータルでは経常収益27億円という形の赤字になったという状況です。
 かなり移転やコロナの影響などが効いております。今年度に入りましても、4月、5月は大変厳しい状況でしたが、6月以降は病院長のリーダーシップの下、かなり今、回復をしてきている状況ですので、今年度はしっかり財政改善のところもやっていきたいと思っております。昨年度は経常収支率が、100%に対して92.3%という数字になっておりますが、これは移転の影響があったということを御考慮いただければと思っております。
 32ページに移ります。それ以外の関係で言いますと、もう1つ、後発医薬品の採用による費用削減ということです。昨年度は89.4%ということで、対中長期目標の目標との関係では120%の達成率ということです。それから、右側に行き自己収入の部分です。治験の研究費は昨年度より8%減少しておりますが、いわゆる科研費やAMED等の委託費の獲得は昨年度より31.3%も増加しております。寄附金はちょっと減っているのですが、これは実を言うと、平成30年度はかなり移転の関係で大々的に寄附を頂いたということ。あるいは、2年前の大阪北部震災で被災された方に対する寄附金があったので、昨年度よりは減りましたが、平成27年度に比べればかなり多い状況です。それから、言い忘れました。29ページに戻っていただき、一般歳入費の項です。昨年度はいろいろなものを買ったことがありまして、大幅に費用が増えているということで、単年で見ますと経常収支率は目標値よりも低いのですが、令和2年度は通常に戻ると思いますので、何とか目標を達成できるように努力をしていきたいと思っております。
 33ページ、評価項目4-1です。今年度はBということにさせていただいております。これについては、一昨年度、平成30年度に倫理指針不適合の問題等がありましてCを頂きましたが、昨年度、その再発防止に取り組んだということです。具体的には34ページになります。一昨年発生しました倫理指針不適合の事案については、理事長はじめ大変重く受け止めておりまして、昨年度もいろいろ厳しい御意見を頂いたと承知しております。それを踏まえて、厚労省等の御指導も頂きながら、ここにありますガバナンスの強化、あるいは、倫理審査やオプトアウトの確実な実施、それから職員の意識改革、教育研修の強化、患者への対応に取り組みました。関係者に対する処分というものを示しております。それから併せて、その関係でのコンプライアンス実現のための対応の強化であるとか、調達の合理化、それから、移転以降のセンターを取り巻く状況を踏まえた災害対策マニュアルの作成ということも取り組んできたということです。
 35ページが移転の関係の取組です。重症患者の搬送の模様が写っております。93名の方の搬送を6時間半かけて行いまして、事故もなく搬送したということです。それから、ダイバーシティの関係やクロスアポイント制度の関係についての取組も書かせていただいております。
 それから、資料1-6の年度実績です。中期目標期間ですが、資料の40ページ以降にあります。評価は、2-1がB、3-1がB、4-1がBということにさせていただいております。経常収支の関係につきましては、ここに書いてありますとおり、評価は一応、Bということにしております。あと、41ページの各種寄附等の実績、それから、43ページ、44ページで、ライセンス収入の増加については取組をしているということです。駆け足になりますが、以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に分かりやすく御説明いただいたと思います。いかがでしょうか。今の御説明に対しまして、御意見、御質問等ありましたら挙手をお願いしたいと思いますが、藤川先生、どうぞ。
 
○藤川委員
 単年度の31ページで、医療収支を中心に赤字の原因を教えていただいたと思うのですが、その中で、赤字になった原因というのはいろいろありまして、移転時の一時的な縮小とコロナによる縮小と、あとは移転による費用の増加という3つに分けられるのかと思うのです。二重に水道光熱費を使うとか、一時的に消耗品等、装備品等を買うというのは当年度限りとしても、減価償却費は非常に大きくなるので、今後は、それも見込んで経常収支黒ということで考えていらっしゃるのかどうかということが1点。
 あともう1点なのです。確か、3月の割と早い頃に、職員の方がコロナに感染して外来を1週間ぐらい閉められたという報道を拝見したのですが、循環器に関連する高度医療を提供することが非常に重要な役割であることからすると、コロナに関しては、地域においてすみ分けのようなことがあって別の病院が受入れをして、高度医療はあくまで循環器はやっていくのだということが非常に重要だと思うのですが、その辺りのすみ分けがきちんとできていたりするのか、あるいは、救急搬送された患者さんに関して、先ほど全患者さんにPCR検査をされると伺ったのですが、搬送された方に対して、すぐ検査をしてうまく受けられるのかということの対応が、どのぐらい進んでいるのかを教えていただけますでしょうか。その2点をお願いします。
 
○国立循環器病研究センター稲川企画戦略局長
 稲川から前半について御説明します。今、先生がおっしゃったように、減価償却はこれからずっとしばらく続く話になります。一応、今回の移転で減価償却を、ちょうど1年前で7億円だったのですが、研究所全体合わせて、今回は30億円増えていますので、37億円ぐらいの減価償却が発生することになります。特に、減価償却も建物と設備等があります。設備については5年や7年になりますので、特にこの5、6年が非常に厳しい状況になるのは認識しております。そういう中で、やはり、この5、6年が正念場で、その5、6年でこれを必ず黒にしますとまで宣言するのはなかなか難しいのですが、ただ、やはり安定した財政基盤の確保という意味では、その収入をしっかり増やしていくということで取り組んでいきたいと思っておりますので、今、病院長の下で新しい収入を増やしていく方策で取り組んでおります。あと、研究費なども、もう少し外部資金を獲得していこうということで新しい取組も始めますので、何とかこの5年間は非常に厳しい状況ではありますが、少しでも黒に近づくように取り組んでいきたいと思います。
 なお、赤字の部分としても、一応、減価償却の範囲内であれば、直ちに資金繰りに困るわけではないのですが、そう言うとやはり甘えが生じてしまうのでしっかりやっていきたいと思っております。
 
○国立循環器病研究センター飯原病院長
 後半は病院長の飯原からお答えしたいと思います。私は4月1日に就任したのですが、同日に大阪府からのコロナ受入病床の要請の会議が招集されまして、着任当日から行ってまいりました。5月の連休明けから、私たちも、研究所の望月研究所長に全面的にバックアップしていただいて、PCR検査を検査所の届出をした上で研究所で常時できるようになりました。ときには、休日まで出勤していただいて検査しております。今まで、もう2,000名弱ぐらいのPCRをやっておりますが、今のところ陽性率0%です。私たちは、当初から、先ほど御指摘がありましたように、私たちの病院の本来のミッションを守るべく、重症の循環器疾患の患者さんを常時受け入れる最後の砦として機能すべく、職員にも定期的に通達をして感染防御をしてきました。4月にはICUも改装しました。当初、私たちは重症のECMOを用いた治療が必要な患者さんが恐らく多く当院に転送、搬送されるのではないかと考え、循環器疾患を合併した患者さんでそのような治療が必要な患者さんを私たちは受け入れるという方針を、大阪府に表明しておりました。ただ、大阪府の会議でも、府下の病院を求められる機能に応じて分割するとの意見もあったことから、新型コロナ肺炎単独の患者さんではなく、むしろ重症の循環器疾患を合併し、私たちの病院での治療が必要な患者さんを優先的に受け入れる準備を着々と進めております。事実、病院の中枢であるICUの7床をそのために用意しましたし、その後にも、一般病床も改装して準備を急ぎましたが、先ほどお話したとおりPCR検査の結果は全て陰性で、今のところ大きな問題には至っていないところです。
 ただ、やはりその間、私たちの医業収入も大きな打撃を受けました。病床の稼働率で言いますと、私たちの目標は92%という数字を出していたわけですが、5月は、それが約70%ぐらいまで落ちました。幸い6月から稼働率は順調に回復しており、7月になってからは目標を超えて96%ぐらいまで上がっていくところでありますが、現在も全く予断を許さない状況が続いているところです。引き続き、職員には定期的に感染防御対策を徹底しており、また大阪府の新型コロナ感染症の患者さんが増えてきている現状を考慮し、昨日感染対策のレベルを一段階引き上げ、業者の立入制限を含めて、もう一度職員に対して一層の注意喚起を図っているところです。以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。ちょっと時間がきてしまいましたが、一番最初におっしゃって、今も御発言がありましたが、新型コロナのPCR検査を、入院患者さん、あるいは手術予定の患者さんも含めて全員にやっておられるというのは、最近、無症状の方が増えておりますので、これは非常に重要だと思います。ただ残念ながら、まだ唾液のあれがうまく保険適用になっておりませんので、そこはなかなか大変かと思いますが、よろしくお願いしたいと思います。ちょっと時間が過ぎてしまいましたので、一応、何かありますでしょうか。もしなければ、ここのセッションはこれで終わりにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。引き続き、全体を振り返って、今のセッションの御質問を頂いても結構ですが、余り時間はないのですが、何か1つ、2つ、もしありましたら御質問いただけるといいかと思いますが、よろしいでしょうか。
そうしましたら、これで大体終わりですが、全体のまとめに入りたいと思います。それでは、法人の監事の先生から監査報告書に基づいて御説明を頂くとともに、最後に、理事長先生から御挨拶を頂きたいと思います。まず、法人の監事から御説明をお願いできますか。
 
○国立循環器病研究センター竹山監事
 監事の竹山です。監査報告につきましては、資料1-4の監査報告書の通り、すべて適正に行われています。これまで、局長や病院長から説明させていただきましたように、国循には非常にすばらしい研究・医療設備が整いましたが、その資金の殆どが財政融資資金約450億円の借入れによっています。昨年も御説明しましたように、この借入金の返済を確実に行うためのアクションプランというのを作りましたが、移転して1年が経過した今、移転後の国循の経営実績をもとに、より精度の高いアクションプランの策定を行っています。病院長から説明させていただいたように、幹部の方には厳しい経営環境に関する意識が深く浸透し、下部層まで広がってきていますから、私は、財政融資資金による借入金の返済が滞ることなく行われると思っています。中長期目標を達成する過程で発生する課題については、きっちりとした課題解決施策を立てて、それを確実に実行することが重要であるということを監事の立場から常に申し上げています。以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。簡潔にまとめていただいたと思います。それでは、最後に、理事長先生から、全体のおまとめを含めて御挨拶をお願いできると有り難いと思います。よろしくお願いします。
 
○国立循環器病研究センター小川理事長
 本日はどうもありがとうございました。監事、局長から御指摘がありましたように、やはり非常に大きな建物で、確かに、減価償却等非常にかさんではくるのですが、設備がそれにも増して非常にすばらしい設備です。恐らく、世界的に見てもこれだけすばらしい設備を持っている循環器センターはないと思います。それを励みに、今、飯原病院長の御努力で患者数もかなり増えてきておりますので、新型コロナの動向が気になるのですが、しっかりその役目を果たしていきたいと思っております。そして、研究所も含めて、研究所の研究業績もまた上昇していくでしょうし、病院の研究業績、それからOICの活動も今後ますます活発にやっていきたいと思っております。以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常にいいおまとめを頂いたと思います。長時間にわたりまして、活発な御議論を本当にありがとうございました。改めてお礼申し上げます。ではこれで、令和元年度の実務評価と中長期目標期間見込評価という2点についてのディスカッションを終了したいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、ここで15分ほど休憩をこちらサイドは取りたいと思います。事務局、何か付け加えることがありましたらどうぞ。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究室支援室星野室長補佐
 事務局です。16時5分から再開させていただければと思います。
 
○祖父江部会長
 どうぞよろしくお願いします。
 
 
(国立研究開発法人国立循環器病研究センター退室)
-休憩-
(国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター入室)
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室星野室長補佐
 事務局です。それでは定刻になりましたので、再開させていただきます。次は、国立精神・神経医療研究センターの令和元年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価についての議論に入ります。議論に入る前に、改めて注意事項を御案内いたします。マイクの設定についてですが、御発言時以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。御発言の際は、Zoomサービス内の手を挙げるボタンをクリックいただき、座長の指名を受けた後に御発言をお願いいたします。その際は、マイクのミュートを解除してくださいますようお願いいたします。また、御発言の際には必ず冒頭にお名前を述べていただき、資料を用いて御説明、御発言をされる際には、資料番号と該当ページを明言いただきますようお願いいたします。発言終了後には、再度マイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。なお、進捗管理のため、事務局よりZoomサービス内のチャット機能を利用して経過時間等を画面に表示させていただきますので、御承知おきいただきますようお願いいたします。それでは祖父江先生、よろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 暑い中お集まりいただきまして、本当にありがとうございます。それでは、今から2時間弱になると思いますが、議論を、あるいは評価を進めたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。まずは、先ほど御案内がありましたが、議論を始める前に理事長から御挨拶を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 理事長の水澤です。私からまず概略を御説明申し上げて、それから本格的な説明に移りたいと思いますのでよろしくお願いいたします。資料2-2、令和元年度業務実績評価説明資料をお開きください。表紙を開いていただくと目次があり、次に1ページが出てまいります。右下を見ていただくと私どもの沿革ですが、昭和15年に傷痍軍人の療養所として始まっております。戦後、昭和53年に研究部門、神経センターが併設され、昭和61年に国立精神衛生研究所を統合し、我が国で3番目のナショナルセンターとして国立精神・神経センターができました。その後、平成22年に独立行政法人となり、国立精神・神経医療研究センターという現在の名前になっております。平成27年には、国立研究開発法人に体制が変わっております。
 左側を見ていただくと我々のミッションですが、我々は精神疾患と神経疾患の克服というミッションを達成するために、病院と2つの研究所が一体となって活動するということを特徴としております。それを支えるものとして、4つのセンター内センターと1つの動物実験施設を有しております。上から申し上げると脳病態統合イメージングセンター(IBIC)、メディカル・ゲノムセンター(MGC)、トランスレーショナル・メディカルセンター(TMC)、認知行動療法センター(CBT)、そして動物実験施設です。その下のほうを見ていただくと、専門疾病センターというのが書いてあります。これは、病院と研究所、両方の職員から成る研究センターであり、研究や診療を行っているところです。現在、多発性硬化症から薬物依存症まで11のセンターがあります。
 2ページは、今御説明した所に時間軸を加えたものでして、左側の基礎研究から右側の臨床応用、T0からT4まで一気通貫した研究体制を構築しています。基礎研究は2つの研究所、臨床応用は病院が担当する。それをつなぐものとして、4つのセンター内センターと動物実験施設があります。動物実験施設には、マウス、ラット以外にも、筋ジストロフィー犬あるいは霊長類であるマーモセット等の非常に貴重な動物を有しており、研究者の方々に供給しております。
 3ページを御覧ください。医療について一言触れたいと思います。486床の小さな病院ですが、括弧の中の内訳を見ていただくと一般、すなわち神経疾患と精神疾患のみですので、アカデミックホスピタルの神経内科、精神科の病床としては日本で断トツに最大です。右側の病棟の図を見ていただくと、中央辺りに脳とこころの総合ケア病棟というのがあります。これは、かつて精神疾患のためだけのものでしたが、精神疾患と神経疾患、両方患う方々あるいはその疾患というものに対応するものとして、一般病床として運営しております。左下を見ていただくと、そういう努力で昨年度の経常収支率が100%と、何とかではありますが、黒字を維持することができました。一昨年度の独法化以来初めての黒字化に引き続き、2期連続です。
 4ページです。2、3点特徴をお示ししたいと思います。私どもはNC、ナショナルセンターとして様々な研究基盤を構築するようにという御要望を頂いております。右下にたくさん書いてありますように、多くの臨床研究ネットワーク、レジストリあるいはバイオバンクを運営しております。そして、日本全国はもとより、海外からも利用していただいているという現実があります。中でも、5ページを見ていただきたいのですが、これは大規模精神疾患レジストリと名付けることができると思いますけれども、単なる研究基盤の構築ではなく、原因や発症機序が不明である精神疾患の本体を解明するために、大規模なレジストリを行い、それを用いた分析を行うというオールジャパンの体制です。左下にあるように、学会はもとより患者さんの団体からも支援を得て研究を行っております。
 6ページは、先ほど申し上げたシーズからお薬までと、一気通貫した研究体制の成果の一例です。右側の筋ジストロフィーの核酸治療薬、ビルトラルセンが5月20日、ようやく市販されて患者さんの手元に届きました。これは、ジストロフィン蛋白の回復率が世界最高でして、筋力の改善も見られるということで、大変期待されているお薬です。左側のOCHという多発性硬化症の治療薬についても、随分前に当研究所で発見されましたが、その研究を地道に続けて昨年度、ようやく企業治験を開始することができました。
 以上のようなことから、7ページにあるように、研究の自己評価はSとさせていただきました。これから各担当が詳しく説明をしてまいりますので、是非よろしくお願い申し上げます。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常によく分かるオーバービューをしていただいたと思っています。それでは、評価項目1-1及び1-2の「研究開発の成果の最大化に関する事項」に係る業務実績及び自己評価について、議論したいと思います。まず法人から、「年度評価」及び「見込評価」の順で御説明いただき、その後に質疑応答という流れで進めたいと思います。説明時間は20分、質疑時間は18分となっておりますので、簡潔に御説明いただけると有り難いです。それから、終了時間の1分前と終了時間について、事務局から右横にありますチャットのコーナーに大体の時間が出ることになっております。それも御覧いただければと思います。それでは、法人から御説明をよろしくお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 それでは、研究・開発に関して、神経研究所の岩坪から御説明いたします。研究に関しては、主に令和元年度の業績評価資料に沿って御説明を差し上げ、必要に応じて第2期中長期の見込評価資料を御参照いただくようにしたいと思います。まず8ページを御覧ください。担当領域の特性を踏まえた戦略的かつ重点的な研究・開発の推進については、Sと自己評価させていただいております。この高い自己評価の理由ですが、当センターが筋ジストロフィーや免疫性神経疾患などの難治性疾患の世界的なレベルの研究を進めてまいりまして、病態機序に基づく革新的な2つの治療薬の開発に成功し、いずれも昨年度から今年度にかけて上市して、患者様のもとに届けることに成功したということが大きな理由です。また、後で数字をお目に掛けますが、全体的な研究の発展を反映して、論文の発表数も5年前、2014年に比べて10%以上増加しております。
 9ページを御覧ください。まず、画期的治療法開発の最初の例として、視神経脊髄炎(Neuromyelitis Optica)、NMOと略しますが、この疾患の抗IL-6受容体抗体による治療法開発を挙げさせていただきます。視神経脊髄炎(NMO)は、失明や脊髄性の麻痺を来し、非常に難治性の免疫疾患でして、多発性硬化症の類縁疾患としても重要なものです。当研究書の免疫研究部の山村らは、抗IL-6受容体抗体の再発予防における有効性を国際治験によって実施し、昨年末に世界でも最高峰の臨床学術誌「The New England Journal of Medicine」にその成果を発表することができました。9ページの右のグラフを見ていただくと、再発のリスクが62%も低下するという顕著な効果が上げられております。
 10ページを御覧ください。ここにもあるように、山村のグループはIL-6のNMOにおける重要性を2010年前後から研究してまいりまして、国内の医師主導治験を経て、今回の国際治験の成功に至ったものです。この医薬は、サトラリズマブという抗体薬ですが、日、米、欧州で承認申請済みであり、本邦でも今年度から患者様のもとに届けられております。また、先ほど理事長も触れておりましたが、並行して当センター初の新規の多発性硬化症の根本治療薬であるTh2免疫細胞刺激治療薬(OCH)の治験も順調に進んでおります。これは下段に示していますが、製薬企業のEAファーマ社へのライセンス契約も達成し、現在、第Ⅱ相試験が順調に進んでいるところです。
 11ページを御覧ください。第2の例として、デュシェンヌ型筋ジストロフィーに対する治療薬、ビルトラルセンの製造販売承認の取得を挙げさせていただきます。デュシェンヌ型筋ジストロフィーは、小児期に発症する代表的な筋ジストロフィー症であり、この疾患はジストロフィンと呼ばれる病因遺伝子の変異により、その産物であるジストロフィン蛋白質が正常に産生されずに筋肉の細胞が障害されて、重度な運動麻痺から死に至る難病として知られております。当センターでは、この変異のある遺伝子部分を言わば核酸医薬を用いて蓋をして読み飛ばすエクソンスキップ療法の実用化を進めてまいりました。そして、エクソン53の障害タイプのものに関して、ジストロフィン蛋白質の回復を達成したものです。世界的にも類似の治療薬が複数開発されて競争状態もありますが、NCNPのビルトラルセンは筋力に対しても効果を示した唯一の治療薬として優れており、本年3月に薬事承認、5月には発売にこぎ着けたものです。
 12ページを御覧ください。こちらにありますように、本薬剤の開発の当センターにおける筋ジストロフィー症に関する長年の基礎研究の成果に基づいて、国内での医師主導治験、米国を含む国内企業による治験として進めてまいりまして、今年度に入り薬価収載を果たしたものです。
 13ページです。精神疾患についても、病態の解明に基づく画期的な治療薬開発を最近達成したものがあります。これは、外傷後ストレス障害(PTSD)という病態の治療です。PTSDは、災害や犯罪被害等による高度の心的ダメージを続発して、恐怖感などが残存する難治性の病態として知られております。精神保健研究所の金所長らのグループは、従来アルツハイマー病等で用いられてまいりました神経伝達治療薬、メマンチンが人のPTSDに著しい効果を示すことを実証して、これは画期的なPTSDの個別最適化治療薬として期待、注目されております。
 14ページを御覧ください。こちらにあるように、この成果もヒト臨床での問題意識と、マウス等のモデル動物実験の成果に基づいて、ヒトでの治療研究を展開したものでして、当センターならではの基礎臨床研究によるこころと分子の統合解析の好例と言うことができると思います。
 15ページを御覧ください。こちらに学術論文の発表数をまとめております。まず、左上[1]の表にありますように、研究の成果というのを最も直接に表す指標は、原著論文数ですが、最上段の原著論文の総数、また括弧内には英文の国際論文数があります。主に過去5年間で50%以上増加しております。また、[2]と右上[3]には、インパクトファクターの付された雑誌の合計が出ております。インパクトファクターという評価が付いている雑誌は、国際的にも重要性が高いということですが、こちらに掲載された論文数も左下にありますように、平成26年の251から令和元年は327まで30%増加しております。また、右下の表を御覧いただくと、引用回数が特に高いハイインパクト論文を挙げたものです。当センター発のハイインパクト論文の比率は、6%台とほかのメジャーな学術機関に比しても非常に高くて、世界的に反響の大きな論文が多数出版されていることを裏付ける数字と考えております。
 16ページより項目1-2、実用化を目指した研究・開発の推進と基盤整備について御説明を差し上げます。こちらも令和元年度の自己評価をSとさせていただいております。その理由ですが、1-1で申し述べたように、画期的な治療薬の実用化を可能とした当センターの誇るトランスレーショナル医学支援体制並びに研究インフラとしてのバイオバンク、厚労省と共に進めておりますクリニカルイノベーションネットワーク(CIN)に関する整備にこの間、格段の進捗があったことがその理由です。
 17ページを御覧いただくと、この1つの成果としての臨床試験の実施状況を示しております。定量的指標(ア)(イ)(ウ)とありますが、First in human、医師主導治験、先進医療承認件数ともに当初目標の2倍以上の数値を達成しております。また、下段には診療ガイドラインの達成を書いております。診療ガイドラインとしては、プリオン病の診療や予防に関するもの、チック症に関するもの等を十数件発表し、当初目標の4倍を超える件数を達成したものです。
 18ページに治験、臨床研究の実施について更に詳しくまとめております。右の表を御覧いただくと、当センターでは難治性の精神神経疾患のうちほぼ全てのメジャーな疾患群を網羅する治験を実施しておりますが、左ページに戻って御覧いただくと、数値的にも直近5年間には企業治験、医師主導治験、臨床研究ともに、コンスタントに実施件数を上げております。また、最下段にある国際共同治験の数も近年、増加しているところです。
 19、20ページを合わせて御覧ください。こちらにバイオバンク、ブレインバンク事業についてまとめております。当センターのバイオバンクは、様々な種類のものを集めております。骨格筋、脳脊髄液などの体液サンプル、てんかん手術脳、ブレインバンク等がありますが、まず最初に、非常に伝統がある筋肉については、既に総数2万を超えて世界最大級を誇り、本邦での筋疾患の臨床診断の8割以上を担っているとともに、このリソースをいかして新規疾患概念の確立、遺伝子の発見、また治療薬の開発等の基盤をなしております。
 次の脳脊髄液サンプルですが、これは従来、神経疾患ではよく集められてきたものですが、精神疾患でも積極的に集積を進めて、現在のところ総数は5,500に達しております。うち精神疾患病者のみでも1,300検体に達し、その他パーキンソン病、認知症、鬱病等の研究・開発にも活用されているところです。非常に特徴のあるサンプルとして、てんかん手術脳があります。これは、難治性の小児てんかんの手術で得られた脳組織ですが、既に100例を超えて集積されて、研究所との合同で新たな病因遺伝子を発見するなどの大きな成果につながっております。そしてブレインバンクは、亡くなった方の剖検脳のバンクですが、日本のブレインバンクネットワークの中核として貢献し、特記すべきこととして340名に上る生前篤志の同意を得ている方がおられます。
 これらのリソースの外部提供実績が20ページの右下にありますが、この間、延べ122件の実績があります。特に、企業にも25件、海外に対しても5件と広く貴重なサンプルのシェアリングを達成しております。この背景にあるのは、ナショナルセンターバイオバンク同士の連携、またCINの基盤が後押しとなっているところです。
 21ページにCINの取組をまとめております。CINは、申し上げるでもなく6ナショナルセンターが中心となって、各疾患分野の患者登録、すなわちレジストリの構築を基盤に、臨床研究や治療薬の開発に資する医療研究開発の環境整備を図る体制づくりです。ここで、当センターでの貢献の概要、見込評価資料をお開きいただいて、19ページを御覧いただければと思います。1-2のクリニカル・イノベーションネットワークの構築としてまとめております。この中に幾つかの当センターが主導した事業がありますが、まずコア事業の中でも神経系疾患の中村班、CINの構築推進と横断的課題の解決を図る武田班、この2つが事業化に貢献するとともに、企業とのワーキンググループの形成、また薬剤開発のための情報提供体制を整備いたしました。
 そして、我々NCNPの活動に帰って21ページを見ていただくと、元の資料の所です。右のほうにレジストリがまとめてあります。筋疾患レジストリのRemudyをはじめとして、精神疾患、運動失調、プリオン病、認知症早期のIROOPやパーキンソン病など幅広いレジストリを構築し、企業を巻き込んだ研究展開によって治療法の開発に貢献している、そういうリソースになっております。
 最後に、22ページを御覧ください。こちらに人事交流について示しております。NCNPの研究者は、多くの機関と幅広い人事交流、人材輩出を行ってきております。そして、当センターの職員、研究者が大学の教員あるいはPMDA、AMEDなどの専門職に幅広く人材を輩出しているところです。特出すべきこととしては、非常に広汎な学術機関との連携を進めて、大学からは学生、大学院生等も受入れ、教育にも注力している点です。また、現時点で外国人研究者も20数名受け入れており、国際的な人材育成にも貢献しております。私からの評価項目1-1、1-2の説明を終わらせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○祖父江委員
 どうもありがとうございました。非常に素晴らしい成果が出てきていると感じました。それでは、早速ただいまの御説明に関して御意見、御質問等がございましたら、御発言いただけたらと思います。いかがでしょうか。挙手の所を押していただくと、発言ということになりますので、よろしくお願いします。特にございませんか。前村先生、御発言お願いいたします。
 
○前村委員
 前村です。大変プロダクティブな研究が出ていると感心いたしました。18ページについて、少し質問させていただきたいと思います。多くの企業治験、医師主導治験、臨床研究をされているのですが、その中で神経・精神センターが代表施設としてやられた場合と、分担で参加した場合とあると思うのですが、その中で代表としてやった治験はどれぐらいあるのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 ありがとうございます。全てが代表ではないと思いますが、多くが中心となってやったものと聞いております。
 
○前村委員
 はい、分かりました。ありがとうございます。
 
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 多分、詳細な数字が、参考資料2に各6つのナショナルセンターの比較がございまして、その中に臨床研究、治験等、様々なものが載っております。新規のもの、継続のもの等です。ただここでもおっしゃるような代表か分担かといったところは、必ずしも分かれていないようですので、そこは確認したいと思いますが。研究段階では難しいと思われます。
 
○前村委員
 どうもありがとうございました。
 
○祖父江委員
 どなたかほかにはございますか。
 
○藤川委員
 いいですか。単年度の11ページで御質問したいのですが、一番下の行に、「特許対価交渉は難航したが、新薬を一刻も早く提供することを最優先に対応」と書いてあるのですが、これを読むと、新薬を一刻も早く提供することを最優先にしたので、特許対価の交渉はいくらか納得がいかない部分もあったけれども、しょうがないというような部分があったように読めるのですが、実際にはどういうことなのか。ちょっと聞き漏らしたのかもしれませんが、教えていただけますか。
 
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 私、水澤のほうからお答えさせていただきます。今先生がおっしゃるとおりでありまして、非常に不満を持っているというわけではないのですが、なかなか我々が行った部分の評価ですね、それに対する、どれぐらいのパーセンテージで、我々がコミットしたかということに対して、企業側と我々のほうの側とで、数字が大きく違いまして、それをすり合わせるのに、かなり時間が掛かったというのが現実です。したがいまして教訓としては、できるだけ早くから、決めておくことが大事だなということは学んだような気がいたします。後からではなかなか難しいというところでございます。以上です。
 
○藤川委員
 やはりそれなりに税金が投入されているということからすれば、あと、相手方の企業が特に海外であった場合などで言えば、日本の治験やお金が流出してしまうということになるので、そこは是非ともせっかくのいい成果が出ているのであれば、そういうことを守るのも非常に重要な業務であると思いますので、お願いしたいと強く思っています。
 
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 非常に安くなったわけではないので、その点は御理解ください。ありがとうございます。
 
○祖父江委員
 よろしいですか。それでは、深見委員が挙手をされておりますから、どうぞよろしくお願いいたします。
 
○深見委員
 視神経の脊髄炎に対するもの、また脊髄液筋ジストロフィーそしてPTSDなど、非常に医師主導系、医師主導治験、又は治療薬の開発など、たくさんの成果が出ていると思います。臨床治験だけではなく、その基になる論文としてもとても評価されるということで、被引用数が非常に上がっていると、15ページに書かれています。ここに高被引用論文数12と書いてあるのですが、この12件というのは、臨床治験と違って、被引用治験論文なので、もう少し前の段階の論文報告になるのではないかと思うのですが、同じ分野の論文なのか、同じ研究者の論文なのか、それとも幾つかの分野、筋ジストロフィーや、ほかの神経疾患の分野なのか、その偏りというのでしょうか、層の厚さというものはどのように理解したらよろしいかということについて、御説明お願いできますでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 ありがとうございます。正に御指摘のとおりでありまして、高被引用論文は、やはり数年から10年ぐらい前に出た成果の評価が関わってまいります。これは12ありまして、ある程度バラエティーがありますけれども、この中で複数入っておりますのは、かつて神経研究所の部長でおられました木村英雄先生が、硫化水素の脳神経系に対する働きに関して、国際的に注目される論文を多数出されています。その引用数がある程度毎年まとまっていたということが1つの理由です。
 
○深見委員
 そうしますと、ある一部の研究者による所も大きいと、そういう理解になるのですか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 これらに限るものばかりではございません。先ほど申しましたように、今日御紹介しました、筋ジストロフィー、それから免疫性の神経疾患など、十数年来の基礎の研究からの進展がありまして、この中にはかなりの数、3桁の引用数を得ている論文が複数含まれておりますので、ある程度広い範囲で引用されていると御理解いただければ有り難いです。
 
○深見委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江委員
 次は大西先生、よろしくお願いします。
 
○大西委員
 大西でございます。年度資料の20ページでございますが、バイオバンク事業、提供実績の所、122件のプロジェクトと書いてありますが、これらの企業はお渡しになられた、御提供されていると理解しましたが、これ、国内と海外の企業と対象が違った場合も、何ていいますか、提供の対価といいましょうか、そういうものは大分違うのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 今の御質問は、外国企業と国内の企業に対して対価の取り方について違うかというご質問でよろしいでしょうか。
 
○大西委員
 国外の企業になかなかバイオバンクから提供するというのは、難しいと伺っていたものですから。
 
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 基本的には差を付けていないと思います。
 
○大西委員
 そうですか。
 
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 それで内容のほうもかなり吟味して、研究の進展、発展のために是非必要だと思われるものに提供するということでございまして、金額的なもので差を付けていることはないと思います。もちろん掛かる費用等、そういう実質的なものをお支払いいただくことはあるとしても、いわゆる単純な価格での差を付けるということはしてはなかったと思います。
 
○大西委員
 これ、研究実績がどんどん伸びていますよね。
 
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 そうですね。海外はさほど多くはなくて5社ほどだと思いますが、少しずつ海外にも伸びていると思います。
 
○大西委員
 これは収益的にはどうなのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 多分まだまだ収益には大きな影響はないと思います。今はまだモデル的にスタートして、そのいろいろなやり方を、我々も学んでいる途中だろうというように、まだ理解しています。今後、収益も考えられるような大きな事業に育っていくのではないかと期待しています。
 
○大西委員
 分かりました。ありがとうございます。
 
○祖父江委員
 よろしいですか。私のほうから2つほど御質問します。1つは、1-1の所で非常に素晴らしい成果が上がっていて、しかも非常にトップジャーナルにアウトカムが出ていて、最近にない素晴らしい成果だというように思いますが、こういう神経難病とか、神経変成疾患というのは、もちろん非常に良いインターベーションがあれば、病態を変えることによって治療ができるという形になると思いますが、同時に、非常にゆっくり進行してくる経過をどう変えたかという、そのリアルワールド型のデータが非常に重要になってくるのではないかと思います。ですから、恐らく今後のフォローアップ体制といいますか、そこを構築されていると拝察をしますが、それが実際どういう構築を、例えば具体的な例として、どの程度のフォローアップ体制でやられているのか、ちょっと教えていただきたいのが1点です。
 もう1つは今の大西先生の御質問と一致してくるのですが、海外でのブレインバンクの、どういう形でお出しになったのかちょっと教えていただきたいと思っているのですが、海外の企業に日本国内でのバイオリソースを渡す、あるいは臨床リソースを渡すというのは、なかなか海外ほどフリーではないので、そこは共同研究のような格好で、正にアカデミアの中の枠組みの中に、海外の企業も入れて一緒にやるというスタイルはあり得ると思うのですが、海外のように売り買いは、とんでもないとなってしまうわけでして、その辺の今後のあり様というのは、是非ナショナルセンターの中でこういうものを持っている所で、そういうルール化といいますか、将来に向けてのデザインを作っていただくと有り難いと思っているのですが、その2点についてちょっとお教えいただけると有り難いのですが。
 
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 まず私、水澤のほうからお答えして、もし補足があったら岩坪所長からも答えていただきます。
 最初のリアルワールドデータの活用につきましては、まず一般的なものとして、先ほどの説明ありました、クリニカル・イノベーションネットワーク、祖父江先生も活躍されていると思いますが、こちらのほうの事業化に目処が立ったと思っております。そこではリアルワールドデータの活用が非常に大きな課題になっておりまして、国全体として進めていくという方向にあって、それをやはり我々が中心となって担っていくというように理解しております。
 先ほどのサトラリズマブ等の免疫性疾患は、先生が最初におっしゃったように、いわゆる変性疾患と違って、徐々に進行するというタイプのものでは幸いないものですから、そちらのほうで今、第Ⅳ相、市販後調査がどの程度かという具体的なところは知らないのですが、変性疾患についてはおっしゃるようにリアルワールドでデータを確認しないといけないということは、多くの領域で認識されていると思いますので、先生がおっしゃる方向で、CIN等を活用して進んでいくというように理解しています。それが第1点です。
 第2点の海外へのバイオバンク試料の提供でありますけれども、海外へサンプルの提供というのは、多分、髄液のレベルだったと思います。まだブレインバンクは、そういう実績がないと思っております。したがいまして、先ほどもちょっと申し上げましたが、今はこれが始まったばかりですので、これから我々自身が、今モデル事業的なものを、非常に大きなものに発展させていくということが必要でありまして、正に今祖父江先生がおっしゃったような方向で努力をしていきたいと思います。何か先生ありますか。
 
○国立精神・神経医療研究センター岩坪神経研究所長
 今の理事長が申したとおりでございますが、特に多発性硬化症、これは理事長が最初にプレゼンされましたように、専門疾病センターの中で、多発性硬化症に関わる部分、研究所と病院のほうから相当数の専門医師が出て、今600名近い患者さんをフォローしています。そちらがその後のフォローアップ体制、また市販後の調査等にも大きな力になると聞いております。
 
○祖父江委員
 最近の、例えばSMAに対するゾルゲンスマという薬がございますが、あれも15年間できるかどうか分かりませんが、フォローアップするという形になっておりますので、例えば先ほどの、ビルトラルセンなんかも、どうなっているのかというのは、非常に楽しみな薬だと思いますので、是非、フォローアップをお願いできると有り難いなと思います。どうもありがとうございました。
ほかには何か御質問ございますか。何かございませんか。ちょうど時間も近づいておりますので、もしなければ、次の所へ行って、それでまた戻ったりして、御質問いただければと思いますが、まずこの1-1及び1-2については、ここまでとさせていただきます。
続きまして、評価項目1-3から1-5の医療の提供とその他の業務の質の向上に関する事項について、議論いたしたいと思います。先ほど同様の流れでございまして、法人から20分、その後質疑応答に18分と、時間も全く同じようになっております。案内は1分前に、先ほどもそうでしたが、終了時間前に、チャットに事務局から出ますので、御覧いただけたらと思います。それではまず、法人のほうから御説明いただきますでしょうか。よろしくお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター中込理事・病院長
 よろしくお願いいたします。病院長を務めております中込と申します。私のほうからは評価項目1-3、医療の提供に関する事項について御報告申し上げます。当センターとしては、評価Aを付けさせていただいております。まず、中長期目標の概要です。[1]医療政策の一環として、センターで実施すべき高度かつ専門的なものです。申し忘れましたが、私のプレゼンテーションも令和元年度の説明資料を中心にいたします。一部こちらの中長期と、参考資料4、5に触れるところがありますので、よろしくお願いいたします。
中長期目標の[2]は、患者の視点に立った良質かつ安心な医療の提供です。
 まず、目標と実績との比較です。[1]に関しては後ほど詳しく述べますけれど未診断疾患イニシアチブ、いわゆるIRUDでのネットワークにおいて中心的な役割を果たしたこと、そして未診断疾患の診断・治療の開発に寄与したこと。続いて24ページを御覧ください。[2]については、いわゆる触法患者さんの医療観察法医療の分野で全国の指定入院医療機関のネットワークシステムを構築し、その医療の標準化に大きく寄与したこと、また、専門疾病センターを介して患者さんを全人的に捉え、診療科横断的、多職種協働による質の高い医療を提供していること、不安やうつに対して効果が実証されている認知行動療法を臨床実践してきたことに加えて、我が国における普及に寄与してきたこと、さらに下のほうにあります多くの定量的な指標において、ほぼ目標を達成しているといったことから、Aを付けさせていただいております。
 次に、25ページを御覧ください。当院では、通常の薬物療法等では効果が不十分な治療抵抗性の患者さんを多く診ており、そういった患者さんに対してニューロモデュレーション療法を推進してきました。ニューロモデュレーション療法とは神経可塑性という性質を生かし、脳神経に対する刺激を介して神経活動を調整する治療法の総称です。こちらにある修正型ECT、電気けいれん療法は、当センターの初代総長の島薗が1958年に本邦で初めて報告した治療法です。治療抵抗性うつ病や幻覚妄想、特に自殺リスクに対して顕著な効果を示し、当院では年間、約60~80件実施しております。そのうちの半数がうつ病で、更にその80%が重症です。その重症うつ病のうち、87.5%において改善を認めております。
 当センターは日本精神神経学会、日本精神科病院協会と連携し、標準化のための講習会やガイドラインの作成・発行に寄与してきました。近年では更に治療抵抗性うつ病に対して保険収載された反復経頭蓋磁気刺激療法においても、まずは保険収載に至る過程で当センターは貢献しております。また、最近は治療抵抗性の双極性うつ病に対して、新たな刺激モダリティーを用いた治療法について、代表施設として4施設による多施設共同研究を主導しております。精神疾患以外でも、難治性てんかんや様々な運動障害に対して、深部脳刺激、定位的凝固術、迷走神経刺激にも力を入れており、深部脳刺激の件数は年々増えているところです。
 では、26ページを御覧ください。当院は希少神経難病の拠点病院であり、その集積性は極めて高いものであります。ほかの医療機関ではなかなか対応困難な患者さんに対し、高度専門的な医療を提供するとともに、他機関に対して診断治療の支援を行っております。二次医療圏外から受療する患者さんの率は相変わらず高いのですが、一方で一番下のセカンドオピニオン外来の件数の減少を見ますと、その治療の均てん化が徐々に進んでいる現れではないかと思っております。
 27ページを御覧ください。冒頭で触れましたけれども、当センターは未診断疾患イニシアチブ、IRUD体制の中核を担っています。IRUDとは未診断患者さんの遺伝子解析を通じて、診断の確定あるいは新規原因遺伝子を同定し、新たな疾患概念を確立する試みで、現在は全国14ブロック、37の診断拠点、453の関連病院、解析センター5つ、データセンター、コーディネーティングセンターがそれぞれ1つからなる組織です。当センターはコーディネーティングセンターとして診断連携・解析連携・データシェアリング・レポジトリー・中央倫理審査の体制を確立し、この研究を推進しているところです。令和2年3月時点で5,369家系、1万5,608人が参加し、4,205家系の解析が終了し、その43%で診断を確定しているところです。さらに37疾患では新規原因遺伝子が同定され、新規の疾患概念が確立しました。新しい治療薬につながる発見も8件ありました。
 28ページを御覧ください。上のグラフは、IRUDの解析実績の年次的推移を示したものです。年々順調に増加していることがおわかりになるかと思います。下の図は、先行する米国の同様のネットワークであるUDNと比較したものです。御覧のように、IRUDはUDNの約5分の1の予算で、短期間により大きな成果を上げているということが見て取れるかと思います。
 29ページを御覧ください。当院は全国てんかん診療拠点として、我が国のてんかん医療を牽引しております。全国てんかんセンター連絡協議会を開催し、てんかん地域診療拠点機関の拡充に努め、その数も順調に増えているところです。日本てんかん診療ネットワークを構築し、全国規模の疫学調査も行っております。当院はてんかん専門医が複数の診療科にまたがって10名所属しており、診療に当たっております。ここで参考資料5-4の2枚目、新聞記事の切抜きを御覧いただきたいと思います。こちらの新聞記事の左側に、一覧表が掲載されています。そちらを御覧いただきますと、2番目に当センターが載っております。当院は他の医療機関と比べ、圧倒的に紹介・逆紹介の件数が多いというのが見て取れると思います。これは当センターにおいて、高度な検査や手術を目的に紹介されて来る患者さんが非常に多いことを表しています。
 令和元年度のこちらの説明資料に戻ってください。今のことと関連して特筆すべきは、てんかん外科の治療実績です。2018年の実績においては、国内1位の件数を誇っております。こうしたてんかん臨床の下支えとして、研究所ではてんかんの発症病態に関する基礎研究が盛んに行われ、また病院やIBICではてんかんの神経回路異常、遺伝子、病理の関連性に関する臨床研究も行われております。
 30ページを御覧ください。こちらはてんかん診療実績の年次的推移を示したものです。患者数は増加傾向にあります。また、手術数はコンスタントに年間80~100件を推移しているところです。通常の医療機関ではなかなか難しいビデオ脳波モニタリングの件数も増加傾向にあります。
 31ページを御覧ください。当センターのもう一つの特徴は、認知行動療法センターであります。認知行動療法は、不安状態に対する心理療法として、最もエビデンスレベルの高い治療の1つですが、近年は精神疾患に限らず、神経疾患や周産期など、広い領域で生じる不安・うつに対して効果を示しており、強いてはそれが身体症状の改善にもつながることが分かってきております。
 中長期目標の27ページを御覧ください。競争的研究資金においても、研修の数や受講者数を見ても、ほかでは見られない高い活動レベルを誇っております。本年度からは右に示したような専用のラボを構築し、生体センサーを用いて生体反応を評価し、オンライン化を進める等、先進的な取組みと同時にコロナ対策と言えるような取組も始める予定としております。
 最後に、また令和元年度の資料に戻って、32ページを御覧ください。そのほかにも患者さんの安全な医療を支える医療安全管理体制、地域ケアを重視する医療体制にも力を入れております。効率的な病院運営という視点に関しても、病床利用率のみ僅かに目標に達しませんでしたが、右側にある平成30年度の全国平均と比べますと、病床利用率は決して低いものではなく、平均在院日数も短いことが分かるかと思います。高度、先進的医療を患者さんの視点に立ちながら、効率的に提供するということを心がけ、日々の診療に当たっているところです。以上、1-3でした。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 続いて1-4、人材育成について御説明いたします。精神保健研究所の金と申します。よろしくお願いいたします。
 単年度資料の33ページを御覧ください。精神・神経センターでは中期目標に書かれていますように、次世代の精神・神経医療研究のリーダーの育成、先端的な研究・医療の成果を職員はもとより、日本全国に普及させるための研修を推進しております。Ⅱ-[1]の下段に示していますように、リーダー育成のために研究の方法論としての統計学講座、倫理に関する集中的な研究・研修を、トランスレーショナル・メディカルセンター(TMC)が企画して継続して実施しております。
 単年度資料の34ページを御覧ください。また、医療成果、研究成果の普及のためにモデルとなる医療について、薬物依存、精神保健、認知行動療法等々、様々な研修を行っております。詳しくは後ほどお示しいたします。その結果として、当センターから大学教授等の指導者を輩出してまいりました。
 35ページを御覧ください。令和元年度の研修事業全般の見取図を示しております。研究支援では、地域での地域保健医療支援、検査技術、治療方法について多様な研修を、多くの人材に提供してまいりました。見込資料の31ページにありますように、毎年、様々なテーマに対してこのような研修を継続しております。
 36ページを御覧ください。それらのうち、特に重要なものである精神保健についての技術研修では、多彩なテーマで地域での患者の生活支援に即した研修を提供しております。また、行政課題であるPTSDについては、池田小学校事件の際に当センターと厚労省とで協議をして研修事業が発足し、これまで1万人以上が受講され、毎年続いております。認知行動療法についても僅か4人のスタッフによって、多彩な精神疾患に対する研修が精力的に行われております。これらの内容は、年ごとにレベルアップをしております。このように多彩なテーマについて、包括的な研修事業を1つの施設が行っている例は、精神医療の分野では日本にはありません。
 37ページを御覧ください。一般市民に対しても研究成果の還元のために、積極的に市民講座を開催しております。人材育成については、数年間にわたって極めて多彩な多くの研修を実施し、その内容を向上させてきました。先ほどのIRUDについても、実施する人間の人材育成を行っております。これらの結果として英文論文数、治験数が上昇し、少ない人員でありながら、先ほど述べたような研究・医療の成果に結び付いております。また、大学教授になった者の人数は、平成22年からの5年間が14人、平成27年からの5年間が22人となり、着実に成果を上げております。こうしたことを踏まえ、人材育成の評価を昨年度のBから、今回はAに上げさせていただきました。
 資料38ページを御覧ください。評価項目1-5、医療政策の推進等に関する事項を御説明いたします。中期目標に示されているように、国への政策提言、医療の均てん化への貢献、公衆衛生上の重大な危害への対応に取り組んでおり、自己評価Aを付けさせていただきました。実績として令和元年度は、後ほど示すような3件の提言を行い、危険ドラッグ対策に貢献し、自殺対策を推進しております。また、見込資料の32ページの2-1に示しましたように、政策提言は毎年、その時々の緊急の課題に対して常に行ってきました。
 単年度資料の39ページにお戻りください。医療の均てん化については、様々なテーマが並んでおりますが、これらについて情報収集・発信を行っております。特に真ん中のほうにある摂食障害全国基幹センター、依存症治療全国拠点機関、重大犯罪を犯した重度精神障害者の医療観察法ネットワークなどは、国の重要な政策課題と連携し、私ども精神・神経センターが唯一の拠点となっております。また、公衆衛生上の課題としては、3.11震災後の現地の復興センターとの連携を継続し、WHOとの締約によって、心のケアについての心理的応急処置の普及を行い、1万人以上が受講されております。
 40ページを御覧ください。政策提言として令和元年度に行ったことは、地域精神保健医療のケースマネジメントの診療報酬化への貢献、そしてカフェイン多量服薬に対する政策提言、コロナウイルスで通院が困難になった統合失調症患者で、クロザビンを服用している方の血液検査の間隔を延ばすことを提言しております。自殺対策につきましては、自殺総合対策推進センターによって国の自殺総合対策大綱に基づき、WHOと連携した多彩な活動を行い、多くの関係者の協力を得て、人口当たりの自殺率はこの数年間は低下傾向にあります。なお、同自殺センターは令和2年度から、発展的に外部に移行いたしました。
 41ページと見込書の35ページの両方を御覧ください。重要な政策貢献である薬物依存対策を御紹介します。なお、この項目については別添資料3の3ページに報道資料のまとめがあります。まず、一次予防のための実態調査として、1995年以降2年に一度、医療機関のハイリスク者、一般人口を対象とした定点調査を実施し、一般住民での大麻使用者の増加など、重要な知見を得ております。
 次に基礎研究として、危険ドラッグの認定のための基礎研究を行っております。危険ドラッグといいますのは、既にある違法薬物の化学構造を一部変更したものです。これらが出てくる度に1つずつ指定するのではなく、化学構造を変化させますと、このようなドラッグが製造可能であることを予見し、数百種類をまだ使われる前に包括的に指定するという対策を行っております。これはNCNPが唯一単独で行った貢献であります。左下に書かれておりますように、違法薬物使用の受刑者の再発防止のためには、早期の社会支援が効果的であるという研究結果に基づき、刑期を一部執行猶予とし、早期に地域支援を開始するという施策を提言して実行させ、その効果の検証を継続しております。右下の薬物依存の研修プログラム、治療プログラムの普及も順調に普及しております。
 42枚目のスライドと、見込書の36枚目を御覧ください。同じく重要な政策課題である地域精神医療の取組であります。後遺症や障害を抱えた方たちが自由意思に基づいて地域で生活できる支援を提供するとともに、犯罪に結び付くような重度の精神障害の方は、本人の意思によらない措置入院制度を適用し、不幸な事態を未然に防ぐという施策がございます。こうした施策を科学的エビデンスに基づいて、合理的にバランス良く行うことが求められております。見込資料の36ページにありますように、相模原のやまゆり園での殺傷事件を受け、措置入院制度が再検討されました。この際のデータの調査を当センターの研究部長が担当し、その成果に基づいて精神保健福祉部長通知が発出されております。
 年度資料の42ページをご覧下さい。地域での支援を強化するために、精神障害にも対応した地域包括ケアシステムが、政策として推進されております。多様な連携が求められており、この中でケアプランの設計と実施を別々の人間が行うブローカリングタイプから、この両者を同一人物が行うインテンシグ・ケースマネジメント(ICM)への移行が進んでおります。特にICMを必要とする人々や提供される支援の特徴の研究結果は、表にお示ししたとおりです。左下のグラフは、退院された重度精神疾患の患者様にICMを1年、2年、3年と行った場合に、いずれもそれ以前の1年間と比べて再入院率が半減、あるいはそれ以下になるという研究結果を示しております。このような研究結果に基づきながら、厚労省と密接に連携しつつ、患者たちの地域生活支援に取り組んでおります。以上です。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に多方面のことをよくまとめていただいたと存じます。ただいまの御説明に対して御意見、御質問等がありましたら、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。では、私から1つ。これは去年も聞いたかもしれませんが、認知行動療法を非常に多種類の病態に対しておやりになっておられますね。それで結構よく効いているものもあるように見受けられたのです。何がどう効いたのかというそのバッググラウンドとして脳内の回路の変化とか、いろいろな客観的な指標を探しておられるとか、チャレンジしておられるというお話を去年もお聞きしたと思います。個別の疾患に対してでも結構ですけれども、こういう点なども変わるという何か見通し的なものはありますか。認知行動療法というのは、あるとき悟りを開いたようにカチッと変わる例もあるので、大きな脳内の変化が起こっているのではないかといつも思うのです。それはありますか。
 
○国立精神・神経医療研究センター中込理事・病院長
 昨年も同じような御指摘を頂きまして、認知行動療法センターのセンター長にも伝えました。先生のおっしゃるとおり、脳画像における神経回路の変化についての研究を今進めているところで、結果が出るにはもう少しお待ちいただければと思います。
 
○祖父江部会長
 是非そういうエビデンスを作っていただけるといいなと思っておりますので、期待しております。よろしくお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 はい。一言補足いたしますと、認知行動療法の研究は、お薬の研究と全く同じようなデザインに基づいて、臨床治験項目として診断基準を症状に当てはめて行っております。ですから、まずは臨床的な症状を軽減し、診断が消失するということで効果を確定しています。
 
○祖父江部会長
 なるほど。そういうように治験型でやっていただくのは非常に重要だと思います。ありがとうございました。ほかに何かありますか。花井委員、よろしくお願いします。
 
○花井委員
 花井です。昨年も同じようなことを伺ったのですが、例えばアディクションに対する認知行動療法という、いわゆるメディカルモデルにおけるアディクション治療という方向性が、1つあると思うのです。世界的に見ると、アディクションモデル以外の薬物への政策的な取組というのは、いろいろあるわけですよね。我が国では触法、違法でアディクションという、割とカッチリとした今までのモデルを押し切っているような感じですが、世界的な流れから言うとそれだけではないということで、かなり変化が生じています。かといって、世界と日本とでは違うところもあります。そういう標準的なハームリダクションというモデルは、なかなか日本では実現しにくいという点があると思うのです。この辺についてセンターとしてはどのようにお考えですか。今後、グローバルなハームリダクションモデルなどを、ここではどのように進めていくかというお考えがあるのかを教えてもらえますか。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 私からお答えいたします。委員も御指摘のように、薬物依存の対策の1つには供給を断つ、薬物を流通させない、使うことを処罰するという面と、そもそも欲しいと思わなくなるようにするということがあります。それには治療をするとか、あるいは欲しいと思うような社会的ストレスを軽減するという、大きくこの2つが組み合わされておりますけれども、諸外国は処罰よりは、やはり使いたいと思わなくなるような支援・治療のほうに行っております。日本ではまだまだ治療と供給を断つ懲罰的な対応との矛盾があり、どういうようにするのが一番いいかということを模索しているところであります。
 私どものセンターでは、まず治療あるいは支援ありきで、メディカルモデルの治療だけではなく、実は認知行動療法を担当している者はケースワーカーで、家族会とかお母さんのストレスの軽減のために、しょっちゅう地域に出かけておりますので、サイコソーシャル的な支援という広い立場で関わっています。ただ、最適なソリューションがなかなか見つからず、まだ苦労しているところでございます。
 
○国立精神・神経医療研究センター中込理事・病院長
 病院長の中込です。私は前に精神保健研究所におり、依存部の部長ともよく話をしておりました。今、金先生がおっしゃったことはそのとおりですけれども、センターとしては司法よりも医療のほうに持ってくるというのは一貫しております。ハームリダクションまでいけるかどうかというのは、かなり大きな壁がいろいろあろうかと思いますけれども、方向としてはそちらを向いているというように理解しております。

○花井委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 次は福井委員、よろしくお願いいたします。
 
○福井部会長代理
 全般的に素晴らしい実績を残されていると思います。私は医師の卒後臨床研修に関わっているため、1点だけ伺います。国立精神・神経医療研究センターでは、研修医のローテーションをどの程度受け入れておられるのですか。依存症が、今年から新たに研修項目に入り、センターにローテーションして来る人だけではなくて、日本全国の研修医に向かって、特に依存症について何か教育的なアプローチをしていただけると有り難いと思っています。非常に曖昧な質問で申し訳ないのですけれども、何か御意見がありましたら伺えればと思います。
 
○国立精神・神経医療研究センター中込理事・病院長
 病院としてはSMARPPといって、薬物依存に関する治療法に関しても、均てん化を進めております。どちらかと言うと、あちらこちらに出張してやっているぐらいです。先生がおっしゃるように、研修医に来ていただいて勉強していただくのは、我々にとっても非常に有り難いと思っております。ただ、このコロナが収まればというところですが。
 
○祖父江部会長
 深見委員が手を挙げておられます。よろしくお願いいたします。
 
○深見委員
 単年度の40ページです。自殺総合対策推進センターが令和2年以降、別法人に発展的に移行というように書いてありますね。これはどういう意図でこういうようになったのか、そのプロセスというか、どうしてこうなったかというところを簡単に教えていただけますか。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 これは国の施策としてこうなりました。今まではNCNPの中の1部門として活動しておりましたが、その成果を踏まえ、独立して専門の自殺対策センターとして、それ自体が1つの法人として活動しようということになりました。場所もより霞ヶ関、国会に近い所に移転し、より有機的に政策立案の方々とも連携しようということで移転が決まったと聞いております。これは私どもの決定ではなく、国の政策としてそのようになった次第です。
 
○深見委員
 分かりました。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 ほかにはよろしいでしょうか。もしなければ、もう1つ私のほうからよろしいですか。オールジャパン体制を組みたいという理事長からのお話が何回かありましたし、現在IRUDにおいてオールジャパン、あるいは国際的な活動が、非常にいいところにきているのではないかと思いますが、オールジャパンということを考えていくときに、この領域はがんや循環器などに比べると、そういう形を取るのがまだ難しいと思うのです。ある種のがんは、例えば5年生存率が50%だったのが、最近は80%になったというように、非常に見える形で国民にアピールしていただけるのです。そうすると日本全体でこういう成果が出ているということが非常に分かりやすく、国民も納得する形になるのです。
 これには恐らく法制化というバッググラウンドがないと、なかなかできないのではないかと思うのです。これは次の時代の話になってしまうかもしれませんけれども、神経疾患については先ほども幾つかお話がありましたように、病態抑止治療のようなものが今後、非常に出てくると思います。例えばある幾つかの疾患について、予後が非常に良くなってきているという見える形、アウトカムメジャーを設定して見せていただくと、ナショナルセンターらしい感じがするのです。特にその辺の法制化については何かありますか。もし流れがありましたら、教えていただきたいのです。
 
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 今、祖父江部会長がおっしゃったことに私も全く賛成ですけれども、神経疾患のための法制化というのは、残念ながら今のところ、具体的な動きはないように感じております。是非あって欲しいという気もしますし、何でも法制化しないとうまくできないというのも、困るのではないかという気もちょっとあります。しかしながら今先生がおっしゃったように、神経疾患の場合、神経疾患全てをまとめるということではなくて、個別の疾患で多くのレジストリ等が発展しておりますので、それらがうまく動いている間はよろしいのではないかと思っております。
 例えば、先ほど申し上げたプリオン病とか運動失調症といった幾つかのものについては、ちょうどCINの動きや発展と連動して、このナショナルセンターがそれを担うことというナショナルセンターの在り方検討会等の御要望にも、応える形ができたというように思っています。
 もう1つ、精神疾患については個々の疾患とは別に、精神疾患そのものがなかなか原因が分からないという状況があります。精神疾患全体の大規模レジストリを始めることができましたので、場合によっては法制化等も含めてサポートしていただければと思います。御存じのように神経疾患の中では脳卒中が、国立循環器病研究センターのほうで日本全国のレジストリをやっておられますので法制化もされましたけれども、うまくいっていると思います。認知症等も、全国的なレジストリが進みつつあると思っています。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。いかがでしょうか。ほかにどなたか御質問はありますか。よろしいでしょうか。最後にもう1回戻って、全体をディスカッションして御質問いただく場面もあると思いますので、時間があればそこで改めて御質問を頂ければと思います。
 次は評価項目の2-1から4-1の業務運営の効率化、財政内容の改善及びその他業務運営に関する事項について議論をしたいと思います。流れとしては先ほどと同様ですが、説明の時間が8分、質疑の時間が6分と非常に短くなっておりますので、要領よく進めたいと思います。それでは法人のほうから御説明をよろしくお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター富澤企画戦略室長
 企画戦略室の冨澤と申します。よろしくお願いいたします。それでは令和元年度の資料に沿って説明させていただきたいと思います。
 43ページを御覧ください。項目の2-1の業務運営の効率化に関する事項です。Ⅰ中長期目標の内容が書いてありますので、この点は口頭で申し上げますので、Ⅱの目標と実績の比較を御覧いただきながら、説明をお聞きいただきたいと存じます。
 まず[1]です。こちらは給与体系ですが、人事院勧告があり、人件費増による経常収支への影響等を考慮しつつ、検討しております。このため、令和元年度ですが、人事院は賞与の0.05か月分のアップを勧告しましたが、当センターでは実施しませんでした。また、月例給のアップについて、国は、令和元年度の4月に遡って行ったわけですが、当センターでは、令和2年の4月から行うということで、財政面での努力をしてまいりました。賞与の引上げについて、改定を見送ったということを、これまで過去数回の評価部会で申し上げたところです。
 [2]医薬品等の購入については、共同調達を実施してコストダウン削減に努めています。
 [3]の後発医薬品ですが、これは平成27年の68.3%から毎年増加して、後発医薬品は令和元年度には90.0%に増えています。
 [4]一般管理費については、平成27年度の8,740万円から毎年減少して令和元年度には6,960万円で、36.9%の削減になっています。経常収支ですが、平成27年まで経常収支が相当悪かったわけですが、それを踏まえまして28年度より収益の増と費用の減について、複数のワーキングチームを立ち上げ、検討及び実施をいたしました。その結果、それまで毎年度数億円の赤字だったものが、平成28年度には7,300万円のマイナスとなったわけです。先ほど理事長の発言にもございましたように、脳とこころの総合ケア病棟、すなわち脳神経内科医と精神科医の先生方が専門性を生かし、協力して診療に取り組むという一般病棟を作るということで、この改修のために平成29年度には1億5,700万円の赤字となりましたが、この改修の結果、平成30年度には収支差が1億5百万円のプラスということで、経常収支が改善しました。
 令和元年度には、平成30年度に比べて収支差が約1億円下がりましたが、その内容について簡単に御説明させていただきます。44ページを御覧ください。まず入院ですが、1.6人の減。その下、外来ですが、22人の増です。44ページの真ん中の表ですが、1日平均入院患者数は一番左の精神科で3.6人の増、外来については一般精神科で20.8人の増、その他のところでも増えている科がございます。
 また入院診療収益については、特に脳神経内科については1億円の増というようなところもあり、また外来については一般精神科、脳神経内科の増がありました。特に高額な注射を行ったり、あるいはリハビリを積極的に行って増えているということによるものです。
 45ページを御覧ください。その結果、45ページの左側の青で書いているいわゆる医業収益が増え95億700万円となりました。これは平成30年度より6,800万円増えています。また、平成27年からは毎年増えています。
 同じように研究等収益についても平成27年から毎年増えていて、令和元年度には36億5,600万円ということで、事業収益については、131億円に増えています。この結果、右下に書いてあるように経常収益については、その他の経常収益も含めて約5億円増えているところです。
 一方、費用ですが、右に書いている常勤職員数の推移とありますが、平成30年度には785人、令和元年度には814人で約30人増えるといった状況があり、これに伴いまして給与費が1億7,500万円増となっています。それから委託費、主に研究費ですが、委託費が増えているということで、経常費用については右下に書いてあるように171億から177億へ大体6億1,500万円の増ということです。結局、差し引きしますと1億円が昨年度より少なくなった。要するに収支差が少なくなり、昨年度と比べて、約1億円少なくなりました。
 46ページを御覧ください。こちらは財務内容の改善に関する事項です。Ⅱの競争的資金、それから治験の外部資金の獲得状況です。これも平成27年から増えています。令和元年度には36億2,900万円で、平成30年度より少なくなりましたが、30億円を超える多額の資金を頂いているところです。46ページの下のほうには、繰越欠損金の解消計画について記載していますので御覧ください。
 47ページを御覧ください。まず[2]の所から説明させていただきます。施設の整備ですが、この施設がかなり老朽化していますので、特に配管についての大規模な修理を行うための契約を実施しています。また、人事の最適化については、AMEDやPMDAと定期的な人材交流を行っております。
 法令遵守等内部統制の適切な構築ですが、これについては最後の48ページを御覧ください。まず、NDBデータ、ナショナルデータベースですが、これは、「高齢者の医療の確保に関する法律」を根拠として、特定健診及び特定保健指導情報、並びにレセプト情報を保険者より集め、厚生労働省において管理されているデータベースです。当センターでは、厚生労働省の承諾により、精神保健福祉資料作成の目的のためにNDBデータを活用してきました。その結果、左側の下のような例えば精神疾患によって入院している方は、かつては入院期間が1年を長いというような状態であったわけですが、入院している方の約70%が、入院後100日までに退院するといったようなことが分かってきました。あるいは抵抗性の抗精神病薬の使用が急増してきている。その他、いろいろな知見が分かってきたということです。これについて、精神医療政策研究部長が目的以外でデータ利用を行ってしまったということがありました。このため、この部長の解任や懲戒処分を行いました。今後の対策としては、こちらに書いてあるように研修を十分に行い、再発防止を行うといったような対策を考えています。以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明に対して御意見、御質問等よろしくお願いしたいと思います。どなたかありますか。
 
○藤川委員
 藤川です。平成30年において、黒字転換するに当たり数々の改革をされ、病床の移動などに取り組まれたことに関して、非常に敬意を表するところです。それを今期においても、黒字を継続しているということで、努力がうかがわれるところだと思います。
 その中で1つですが、先ほど30名ほど人を増加させたと、これは適正な人員配置を検討した結果ということなのかなと思うのですが、内訳としては看護師さんを増やしたということなのでしょうか。もうちょっと具体的な中身がよく分からないので、その辺りを教えていただきたいということと、それから働き方改革という点で、例えば医師や看護師さんではなくほかの助けてくれるようなスタッフを増やしたりなど、そういうことは行われているNCもあるのですが、その辺りの取組についても教えていただけますか。よろしくお願いします。
 
○国立精神・神経医療研究センター富澤企画戦略室長
 看護師の数ですが、平成31年末3月31日に308人。令和2年3月31日に330人ということで、1年間で22人増えています。その理由については、看護部部長から説明させていただきたいと思います。
 
○国立精神・神経医療研究センター樋口看護部長
 まず、44ページを見ていただくと入院の患者さんが非常に一度に増えました。そのために、当院は、障害の7対1と急性期の7対1をとっているのですが、直近1年間の入院患者数で見たとき、この増大が平成30年度の後半に夜勤時間も勤務時間も足りない状況になりました。そのために、増員をしていただいたというのが1つあります。
 2点目が、夜勤免除の方が非常に今多いです。昨今の状況では、育休復帰者は1年ぐらいで戻ってきますが、夜勤免除する看護師が非常に増えています。実は夜勤時間が足りないということが生じていまして、そのために人数が増えています。以上です。
 
○藤川委員
 働き方改革のほうはどうなっていますか。

○国立精神・神経医療研究センター富澤企画戦略室長
 働き方改革の具体的には、どういう内容でしょうか。
 
○藤川委員
 看護師さんのというか、もともと先ほどの30人増加というのは内訳はほぼ看護師さんと考えてよろしいということですか。
 
○国立精神・神経医療研究センター富澤企画戦略室長
 おっしゃるとおりです。その他は、職種によって、それぞれ若干の増減があります。
 
○藤川委員
 主は看護師だということですね。
 
○国立精神・精神医療研究センター富澤企画戦略室長
 おっしゃるとおりです。
 
○藤川委員
 その理由は先ほどお聞きしたとおり、入院患者数が異常なほど増えてしまったので、それに対応するということが理由ということで、他のNCでは例えば働き方改革への対応という中で、医師がやれることを看護師に、看護師さんがやれることは、ほかの資格はないけれどもスタッフにというようなことを、工夫されているようなところもあるかと思いますが、そういうような看護師さんの増員以外のことで人事の対応として、そういう働き方改革のような取組というのは何かあるのでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター中込理事・病院長
 病院長の中込です。おっしゃるとおり、働き方改革を進める上で、医療事務作業補助者の増員を充実させなければならない。これはほかのナショナルセンターでは、かなり多くの補助者を雇っています。うちはちょっとそこが遅れている部分がありますので、本年度はそれに取り組みたいと考えているところです。
 
○祖父江部会長
 よろしいですか。斎藤先生、よろしいですか。
 
○斎藤委員
 一番最後の所を教えてください。不祥事があったということはよく分かったのですが、何が不正だったのか、どのくらい重いものだったのかということが余りよく分かりません。差し支えのない範囲でもう少し何が起きたのか、具体的にお話いただけると有り難いのですが。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 精神保健研究所の金より御説明いたします。NDBというのは、もちろん国民の財産としてのレセプトデータです。その使用については細心の注意を払うように、厳格なルールが定められております。どのような目的に使うかを、あらかじめ厚労省に申請して許可が下りてはじめて使えるということなのですが、当該部長は精神保健福祉資料作成のためにデータの提供を受け、提供されたデータを用いて、申請時には届けていなかった製薬企業との共同研究のために、それを使ってしまったということが問題視されました。彼としては、よい研究をしたいという気持ちが空回りしたのかもしれませんが、それで許されるような問題ではなく、やはり大変デリケートな、管理が厳しいデータですので、厳しい処罰になったということです。当該部長は、懲戒処分を受けた後、退職しております。今は在籍しておりません。
 
○斎藤委員
 ありがとうございます。そうしますと、ガバナンスの問題なのだろうと思います。特に悪意があった、自分のために何かを使ったといよりも、ここに書いてあるように熱心さが過ぎてということなのでしょうけれども、そうしますとそういう教育のところや、組織のガバナンスを強化しなければいけないというところが重要なのかと思います。それがここに書いてある対策ということなのだと思いますが、いろいろな面でそういうルールなどあると思いますので、本当にそれを全部研修で賄えるのだろうか、それよりももう少し本人の自覚を促すようなことを、何かしたほうがいいのではないかというような印象を持ちましたが、いかがでしょうか。
 
○国立精神・神経医療研究センター金精神保健研究所長
 ありがとうございます。枠組みとしましては、倫理に関するガバナンスに、似ていることではないかと思っております。意識を高めるということと、手続を厳格にする、そして複数の人間の決済を経て進めるという形で対応していきたいと思っておりますが、またこの実態を見まして必要な修正を適宜行っていきたいと思います。
 
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 斎藤先生のおっしゃるとおりだと思います。ちょっと一言だけ補足させていただきますが、この対策にも書いていますように、表面的な適、不適ではなく、もっと内容的な意味での適切さというものを研究者各位には、感じてほしいと思っています。そういう形のものを教育にも入れていきたいと思っています。この部長は、もともと厚労技官であった方でこの道の専門家でした。したがいまして、非常に御自身も自信があったということだと思います。我々も御本人が大丈夫とおっしゃると、それが正しいのかなと思ってしまったところがあります。そういった点を、今後改善していきたいと思っています。御指摘ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 福井委員、よろしくお願いします。
 
○福井部会長代理
 先ほどの議論の所で看護師さんの退職率はどれぐらいなのでしょうか。もし、分かれば。全国平均で大体11%、12%と言われていますが。

○国立精神・神経医療研究センター樋口看護部長
 平成30年度は14%でした。それが昨年度は7.7%まで下げることができました。以上です。
 
○福井部会長代理
 すばらしいですね。結構です。
 
○祖父江部会長
 先ほどの30人は、非常に入院が増えて忙しくなって30人の看護師さんを増やして、30人でしたか、20何人を増やしたということなのですが、これは最初の頃にあった病棟の神経、精神両方の混合病棟、この病棟を開いたことによる影響という意味ではないのですか。これを開いたことによって、経常収支が非常によくなったということがありますが、それがしいては今のような働き方改革に結び付いてしまったということになると、今後の展開としてどうするかという問題がちょっと残るのですが、その辺は問題なかったのですか。
 
○国立精神・神経医療研究センター富澤企画戦略室長
 脳とこころのケア病棟については、適切な障害の7対1の看護基準を取っていますので、そのために必要な看護師を確保しています。病棟の改修は平成29年度に行い、財政面で効果が現れたのが平成30年度になります。今、お話しいただいているのは、その次の年度のことですので、脳とこころのケア病棟が、この22人の増と関係するのかという議論とはちょっと違うかと思っています。
 
○祖父江部会長
 分かりました。ありがとうございました。このセッションは終わりにしたいと存じます。大分時間を押していますが、全体を通して何か改めてここを聞きたい、何か改めて質問があるという委員の先生はいらっしゃいますか。よろしいですか。もしなければ、全体のまとめに入りたいと思います。
 それでは、法人の監事から監査結果を御報告いただきたいと思います。監査等を踏まえて、現在の法人の業務運営の状況と今後の課題や改善方法などについても、できたらコメントをお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター増田監事
 監事の増田と申します。よろしくお願いいたします。私どもの監査結果ですが、資料2-4に添付されている監査報告書となっています。ここでは監査の結果ですが、適正、適法の意見を表明させていただいています。
 併せてですが、私ども2名の監事で業務監査と会計監査を実施しています。今まで説明がありましたように、当センターの研究機関と医療機関の連携、それが有効に機能しているかどうかという点について、いろいろな会議に陪席をする又は責任者の方、適宜いろいろな方とざっくばらんに意見交換をさせていただいています。その際に、皆さんのお話の中から運営状況がどうなのかということを、確認をしています。
 また併せて、会計と債務の面ですが、現在、累損が26億強という金額になっています。ただいまお話がありましたように、現時点でようやく出血が止まってきたかなという印象を受けています。これは1つは受託研究が増えてきたということで、それに伴う間接費です。オアヘッドの部分が、収益に貢献しているということもあります。それから、もう1つはやはり病院の運営そのものも、かなり精緻に行っているということで、月次でデータは出てきますが、病院長の下では日次に現状で病床にどれくらい入っているかということも把握されていますので、かなり精緻にその辺りの検討をされているかと考えています。その結果ですが、ようやく水面下から今後は頭が上がっていくのかなと期待しているところです。
 もう1つですが、これだけ累損を抱えていますので、組織の継続性ということで考えて見ますと、着目しなければならないのはキャッシュフローの所です。特に令和2年度、今のこのコロナの状態ではキャッシュフローの所は、かなりポイントになるのではないかなと考えています。その点は、年度末に向かってどのような状況になるのかということを担当の方との意見交換、それを私どもも注視しているという状況です。私からは以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常によくまとめていただいたかと思います。それでは、最後に理事長から今後の展開なども含めながら、全体を含めたコメントを頂きたいと思います。理事長、よろしくお願いいたします。
 
○国立精神・神経医療研究センター水澤理事長
 よろしくお願いいたします。長時間にわたって、いろいろな御指摘ありがとうございました。私からは3点述べたいと思います。
 まず研究開発について、本日申し上げたように神経難病でも病態治療薬が患者さんの手元に届けられるようになりました。しかし、まだその効果は不十分ですので、それをもっと有効なものにしなければならないということ。また、まだまだ疾患はたくさんありますので、ほかの治療がない疾患にもそれを拡大、発展させていかなければならないという大きな課題が残っています。精神疾患においては、先ほど申し上げたように大規模レジストリと申しましたが、何とかそういう方向で精神疾患の本態、原因を解明していきたいと本気で思っています。もちろん、当面は標準的治療の均てん化が重要ですので、それも続けていきますが、いずれにしてもアカデミックホスピタルとしては日本で最大の病床を持っています。それを活かした臨床研究を推進するために、特定領域型になると思いますが、臨床研究中核病院を目指し、かつIT、AI(人工知能)を活用した効率化を図っていきたいと思っています。
 次に、病院経営です。最後に話題になりましたが、構造的に精神科診療での診療報酬の安さ、神経難病での診療報酬の少なさといったこともありますので、より適切な診療報酬等への提言をしていきたいと思っています。
 3点目は施設の管理ですが、先ほども少し話がありましたように非常に老朽化しています。時々修理をしていますが、本格的な建て替えが必要だろうと考えています。米国のNIHの予算では、神経、精神疾患領域では100億米ドルということで、がんの研究の64億米ドルをはるかにしのぐような形で、脳と心の時代に対応しています。日本でも是非NCNPを御支援いただいて、この新しい時代に対応していきたいと思っていますので、引き続き御支援をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に今後の方針、あるいは内容の濃いまとめを頂いたと思います。よろしいでしょうか、以上で国立精神・神経医療研究センターの実務評価、中長期目標期間見込評価を終わりにしたいと思いますが、本当に長時間、活発な御議論いただきましてありがとうございます。もしよろしければ、これで終わりにしたいと思います。どうもありがとうございました。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室星野室長補佐
 事務局です。今後の流れについて、御連絡します。本日、御議論いただきました令和元年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価については、この後、本部会における御意見や法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえて、厚生労働大臣による評価を行ってその評価結果について法人に通知するとともに、公表することになります。決定した内容については、後日、委員の皆様にお送りします。各委員におかれましては、事前に電子媒体でお配りしている評定記入用紙に必要事項を記入いただきまして、7月28日火曜日までに事務局宛メールにて御送付いただきますようお願いいたします。
 次回は7月29日水曜日13時30分から、国立がん研究センターと国立国際医療研究センターの評価について、本日と同様にWeb会議で開催したいと思っています。開始時間が本日よりも30分早いので、御注意ください。事務局からは以上です。
 
○祖父江部会長
 長時間にわたってありがとうございました。ちょっと至らぬところが、ほかのところでよくやっているのですが、今日のシステムは初めてでしたので、少しどたばたしましたが、今日は全員出席で本当にありがとうございました。御苦労さまでした。またよろしくお願いいたします。これで失礼します。