第17回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会 議事録

日時

令和2年7月15日(水) 14:03~17:56

場所

航空会館7F大ホール(701+702+703会議室)

出席者

委員

議題

 
1 開会
2 議事
(1)国立研究開発法人国立長寿医療研究センターの令和元年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価について
(2)国立研究開発法人国立成育医療研究センターの令和元年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価について
(3)その他
3 閉会
 

配布資料

【国立研究開発法人国立長寿医療研究センター】

資料1-1 令和元事業年度 業務実績評価書(案)
資料1-2 令和元事業年度 業務実績概要説明資料
資料1-3 令和元事業年度 財務諸表等
資料1-4 令和元事業年度 監査報告書
資料1-5 第2期中長期目標期間 見込評価書(案)
資料1-6 第2期中長期目標期間 見込評価説明資

【国立研究開発法人国立成育医療研究センター】

資料2-1 令和元事業年度 業務実績評価書(案)
資料2-2 令和元事業年度 業務実績概要説明資料
資料2-3 令和元事業年度 財務諸表等
資料2-4 令和元事業年度 監査報告書
資料2-5 第2期中長期目標期間 見込評価書(案)
資料2-6 第2期中長期目標期間 見込評価説明資料

議事

第17回 厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室星野室長補佐
 お待たせしました。定刻となりましたので、ただいまから第17回厚生労働省国立研究開発法人審議会高度専門医療研究評価部会を開催いたします。委員の皆様には、大変お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。議題に入るまでの間、議事進行を務めさせていただきます、医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室の星野と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は、前村委員、中野委員から御欠席の連絡を頂いております。また福井委員ですが、15時30分頃から出席される予定である旨の御連絡を頂いております。出席委員に関しましては、過半数を超えておりますので、会議が成立することを御報告いたします。
 続きまして、本日の議題を御説明いたします。本日は、国立長寿医療研究センター及び国立成育医療研究センターにつきまして、「令和元年度業務実績評価」及び「中長期目標期間見込評価」に係る意見聴取を行います。議事の流れとしては、評価項目ごとに「年度評価」及び「見込評価」の順に法人から続けて説明をしていただいた後、委員の皆様から御意見、御質問を頂きたいと存じます。
 それでは、大坪審議官がお見えになりましたので、審議官より一言御挨拶いただければと思います。
 
○大坪大臣官房審議官(国立高度専門医療研究センター担当)
 厚生労働省大臣官房審議官の大坪です。またこの季節がやってまいりまして、皆様には御多忙のところお集まりいただきまして、本当に恐縮に存じます。折々で法人の活動についてお話を聞く機会がありますが、こうした形でまとめて総合的にいろいろなお話を聞かせていただく機会は本当に貴重だと思っております。本日もどうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室星野室長補佐
 ありがとうございました。それでは、ここでカメラは退席いただきたいと思います。
 続いて、途中になりましたが、見込評価について御留意いただきたい内容としては、事前にメールで御案内したとおりです。見込評価は、中長期目標期間の最後の事業年度に実施するもので、見込評価の結果は、法人の業務及び組織の全般の見直し、並びに次期中長期目標の策定に活用されます。見込評価の方法は、中長期目標期間終了時の直前の年度までの業務実績及び中長期目標期間終了時に見込まれる業務実績等に係る自己評価の結果等を踏まえ、中長期目標の達成状況等について、総合的に評価していただきます。最後に、評定記入用紙には、S~Dの評定に併せ、次期中長期目標期間の業務実施に当たっての留意すべき点等についての御意見を記述していただくようお願いいたします。ただいま御説明した見込評価の目的や方法については、評定用紙と一緒にお手元にお配りしている資料に記載しておりますので、必要に応じて御参照ください。見込評価の説明は以上です。
 それでは、本日の会議資料の御確認をお願いします。本部会におきましては、ペーパーレス推進の一環として、資料の一部を紙面ではなくタブレットに入れております。委員の皆様のお手元に議事次第と座席表、その他に紙媒体として資料1-2、1-4、1-6、2-2、2-4、2-6として、各センターの年度評価の業務実績説明資料と監査報告書、中長期目標期間の見込評価説明資料を配布しております。また別添資料として、委員名簿もお配りしております。議事次第に記載されている資料1-2から2-6までは、全てお手元のタブレットに収納しておりますので、そちらで資料の閲覧をお願いいたします。それ以外に、各センターの個別のデータを委員限りの非公開資料としてタブレットに収納し、参考資料5については、説明資料の補足資料として紙媒体でも配布しております。そのほか、委員の皆様のお手元には、評価を御記入いただく用紙として、センターごとに令和元事業年度評価評定記入用紙、見込評価評定記入用紙を配布しておりますので、7月22日水曜日までに事務局に御提出いただければと思っております。資料の不足、乱丁等がありましたら事務局までお申し付けください。よろしいでしょうか。
 続きまして、タブレットの使用方法について簡単に御説明いたします。資料をめくる場合は、指で画面を上下になぞっていただいたり、下部ツールバーの上下矢印を押していただくなどでおめくりください。御不明な点がありましたら、事務局までお願いいたします。事務局からの説明は以上ですが、何か御質問等はありますでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、以降の進行は、祖父江部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○祖父江部会長
 よろしくお願いいたします。本日は皆様、新型コロナの蔓延がまた再燃している中お集まりいただき、本当にありがとうございます。今回はこういう形での開催ですが、場合によりますと次回からWeb会議という形になるかもしれません。今、検討していただいている最中です。先ほど大坪審議官からもありましたが、やはりこういうふうに集まる会が最近なかなかまれですので、非常に貴重な機会ですので、できるだけの議論をしていただけたらと思っている次第です。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、全体の議題に入る前に、今年2月に文書によって審議を行った、第16回の高度専門医療研究評価部会について、厚生労働省国立研究開発法人審議会運営規程第2条第2項の規定に基づき、少しだけ報告いたします。この件は、国立精神・神経医療研究センターに設置されていた自殺総合対策推進センターの業務について、新法人への移管がなされることになったことが1つ、それから、もう1つは横断的な研究推進組織の設置が提案されたということです。これは、実は4月から動いているかと思います。それから、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律の改正が行われました。以上のことに伴い、高度専門医療研究センターの第2期中長期目標の一部を改正するに当たって、独立行政法人通則法第35条の4第4項に基づき、高度専門医療研究評価部会の意見聴取を行ったということです。本年2月10日から2月17日に書面審議を行いましたが、その結果、中長期目標の一部変更については特に御意見はなく、3月18日付けで厚生労働大臣より中期目標の一部の変更指示が行われました。これは、皆さん御承知のとおりだと思います。報告は以上です。よろしくお願いいたします。これは、報告事項ですので、御了解いただけたらと思います。
 それでは早速、本題の議題に入りたいと思います。まず法人からの説明、次に質疑ということで、順番にやっていきたいと思います。これは例年のとおりです。国立研究開発法人長寿医療研究センターの令和元年度の業務実績評価及び中長期目標期間見込評価、全体の6年間の評価、見込みも含めての評価についてです。それでは、国立長寿医療研究センターの令和元年度実績評価及び見込評価につきまして、議論をお願いしたいと思います。まず最初に、法人の理事長からの御挨拶を頂けたらと思います。荒井先生、よろしくお願いいたします。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 本日は、よろしくお願いいたします。国立長寿医療研究センター理事長の荒井です。まず、私から簡単に概要を説明いたします。令和元年度資料の4、5ページを御覧ください。当センターも独法化して10年が経過しました。当センターのメインの研究開発テーマは、ここにあるように、高齢者の自立阻害の2大要因である認知症、そして運動器疾患やフレイルなどの老化に関わる病態に関する研究開発ということであり、センター内センターを作り、課題達成最大化を志向した組織づくりをしてまいりました。5ページを御覧ください。メインのターゲットは認知症と老化研究であり、この2つのテーマを囲んで基礎研究、疫学研究、ゲノム研究、臨床研究、そして工学研究とあるこの様々な領域の研究勢力を結集して、この2つのテーマについて研究開発を進めています。こういった体制を取っている研究所は、世界でもほとんどないと。日本でも、もちろん唯一の組織であり、アジアにもほとんどないと自負しております。そういった関係で、こういった体制で今後とも研究開発を進めていきたいと思っております。
 見込資料の24ページを御覧ください。先ほどお話がありましたように、昨年から新型コロナウイルス感染症が日本の国内でも世界的にも広がっておりますが、この新型コロナウイルス感染のメインのターゲット、あるいは重症化する、あるいは亡くなられる方は、ほとんど高齢者であるということです。当センターでは、幸運なことに患者さんは全く出なかった、スタッフを含めて全く感染者は出なかったわけでありますが、高齢者に対してこれをどのように啓発していくかということが、ナショナルセンターとしての当センターのやるべき使命であろうということです。
 お手元にも幾つか資料を用意させていただいていると思いますが、「高齢者のための新型コロナウイルス感染症ハンドブック」であったり、どうしても高齢者の場合、外出の自粛ということで身体活動が低下してしまう、それによってフレイルが悪化したり、あるいは要介護状態になってしまうということを懸念して、「在宅活動ガイド2020」も発出いたしました。それから、これから熱中症も問題になってまいりますので、「高齢者のための熱中症対策ハンドブック」、そして一番右側にありますが、「健康長寿教室テキスト」という形で、高齢者のフレイル対策、感染症予防と同時にフレイル対策をいかに進めるかということが、今後の介護予防を含めた高齢者の健康寿命の延伸に極めて重要であるという視点から、こういった活動をしてまいりました。当センターだけではなく、老年医学会とも連携して、施設の高齢者に対する感染予防対策、あるいは認知症の方に対する対策といったことについても提言を出してまいりました。ここにはお示ししておりませんが、アジアのメンバーと一緒に、高齢者に対するコロナウイルス対策についてのレビュー論文も既に2本出しております。そういう形で、研究開発とともに、こういった新型コロナウイルス感染症といった国家的な危機があったときに、長寿医療センターとしてしっかりと対応していくということをやってまいりました。以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。また後で、理事長先生からはまとめを頂きますし、逐次、質疑応答に御参加いただくことになっています。
 それでは、評価項目1-1及び1-2の「研究開発の成果の最大化に関する事項」に係る業務実績及び自己評価について議論したいと思います。まず、進め方としては、法人のほうから年度評価、これは主に資料1-2ですが、それと同時にその項目についての見込評価、これが主に資料1-6に当たると思いますが、そういった順で御説明を進めていただきたいと思います。その後、質疑応答という流れでやっていきたいと思います。説明時間は20分で、質疑時間は18分となっていますので、要領よくお願いできると有り難いと思います。それぞれ終了時間の1分前になりましたら、ベルを1回、終了時間になりましたら、ベルを2回鳴らしますので、説明は時間内に収めていただくようお願いいたします。それでは、説明をよろしくお願いいたします。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 まず1-1から説明させていただきます。4月に所長職を拝命させていただきました新飯田と申します。よろしくお願いいたします。
 業務実績概要説明資料の6ページからの説明となります。このページのⅠ、当センターの中長期目標は記載のとおりです。Ⅱの目標と実績の比較には、昨年度の成果のうち顕著だった3つの研究を記載させていただいています。これらについて、次のページから説明させていただきたいと思います。
 7ページを御覧ください。当センターの研究領域の特性が顕著に反映された、3つの研究のロードマップです。上から順番に、まず昨年度の血液バイオマーカー研究では、臨床実装に向けた性能評価を行い、実用性の高いことの再確認をしました。
 2つ目は、ゲノム医療推進事業の一環で、当センターが担当する認知症ゲノム研究です。2つの新しい認知症関連Locusを同定しました。3番目のコホートの脳画像解析研究では、身体的フレイルと脳の認知機能領域の萎縮とが関連性を持っているということを発見しました。
 個々の研究について、説明させていただきます。8ページを御覧ください。まず、認知症バイオマーカーですが、脳内のAβの蓄積を予測する世界初の血液バイオマーカーの実用化に、今、世界が注目しています。昨年度は、実臨床においてどれだけの適応性能があるかということについて検討を行いました。例えば、Aβ-PET画像の診断では、専門の読影医の診断では陽性となるケースが、標準化されたコンピュータの評価法では陰性となるような微妙なケースがしばしば生じます。資料の左のグラフを御覧ください。小さくて申し訳ないですが、縦軸は血液マーカーの値、横軸はAβ-PETの定量値です。点線はそれぞれのカットオフラインです。緑のプロットは、PETでは点線の左、すなわち陰性の判定ですが、血液マーカーの値では点線の上、すなわち陽性を示しています。右のグラフを御覧ください。こちらは横軸が初回のPETと2回目のPETの変化率を示しています。資料の下に3例の実際の脳画像の変化を示していますが、それらを含め緑のプロット群は右にシフトしており、Aβの増加を示していました。このことから、このバイオマーカーは、初回のPET検査では判定できなかった局所のアミロイド凝集を確実に捉えていたということが分かりました。アルツハイマー病のリスク者を、無症候の段階でスクリーニングできる成果で、臨床的にも意味のある検査法と言えます。
 右の図を御覧ください。このバイオマーカーを検査の基軸に据えて、Tauなど他のバイオマーカーを補完的な検査として組み込むことで、アルツハイマー病の病態進行の把握、あるいはアルツハイマー病以外の認知症の病型分類、すなわち患者層別化を可能にします。診療のみならず、治験への被験者リクルートの経済的、時間的効率を格段に高める可能性があります。昨年度は、この研究スキームをAMEDに提案し、多施設共同の大型研究プロジェクトとして採用いただきました。
 9ページを御覧ください。日本人アルツハイマー病の新規関連座位の研究です。アルツハイマー病患者4,000人と対照群4,000人のSNP genotypingデータを用い、ゲノムワイド関連解析、いわゆるGWASで解析を行いました。その結果、4番染色体上に新規のアルツハイマー病感受性遺伝子として、FAM(family)を同定しました。この遺伝子多型の遺伝統計学的なオッズ比は0.6倍で、アルツハイマー病の防御的因子であることが分かりました。
 左下にeQTL mappingという表があります。これは、ある遺伝子多型が個々の臓器において遺伝子発現に実際に影響しているかということを見るものですが、今回、同定した遺伝子多型は、矢印に示したように、脳内で発現が上昇していました。一方、多因子疾患では、個々の遺伝子一個一個は病気の発症に与える影響は小さいものですが、それらを相加的に計算することで病気のなりやすさというものを予測できます。これをポリジェニックスコアと呼んでいます。右上の波線のグラフがそのスコアの分布図ですが、御覧のように、今回、同定した多型を考慮した赤い線は、考慮しなかった場合の青い線よりも、右側にずれています。このことは、多型がアルツハイマー病発症に関連付いていることを意味します。
 もう1つの座位を発見しています。これは、今回の日本人8,000人のデータと公開データである欧米人6万4,000人のデータを用いたメタ解析で同定しました。右下の図ですが、6番染色体上のHLA Locusに未報告の新たな疾患関連座位を同定しました。昨年、同様に新規の疾患感受性遺伝子SHARPINを報告しましたが、日本からアルツハイマー病の新規遺伝子を報告した例はこれまでありませんでした。今回は更に2つの新規Locusを同定しました。いずれも世界で最初のもので、当センターの成果です。
 10ページ、地域住民コホートの脳画像解析の研究です。当センターは、2,000人を超える住民の健康調査を20年追跡しているコホートを維持しています。2010年からは、2年ごとに脳のMR画像を取得しているところですが、6,000枚に及ぶ追跡画像データは世界随一と言われています。昨年度は新しい試みとして、MR像とフレイルのサルコペニアのパラメータの関連解析を行いました。その結果、身体的なフレイルの指標である握力と歩行速度の低下が、認知機能関連部位の萎縮と関連性があるということが明らかになりました。特に、図の真ん中を見ていただくと分かると思いますが、歩行速度の低下のある群は、認知機能や社会性と関連する脳領域の萎縮と非常に関連が強かったという結果が出ています。2,000例を超える規模でのこういった解析は極めてまれで、当該領域において希少なエビデンスを提供したところです。また、こうした大規模なデータは共有化できるようになっていまして、昨年度からは、台湾の研究チームとの国際共同研究に活用されています。こうした成果から、自己評価をSとさせていただいたところです。
 続きまして、見込評価を御覧ください。7ページです。まず、認知症血液バイオマーカーですが、ただいま説明しました昨年度の成果を折り込んだ上で、Aβ検査法の適正使用指針というものを作成し、これまで継続してきました厚労省、PMDAとの協議をさらに前進させ、実用化に近づける予定です。
 8ページ、認知症ゲノム研究です。第2期の期末までにジェノタイピング2万例を達成する見込みでしたが、先月に達成しました。更に積み重ねていく予定です。認知症のRNA-seqで得られたトランスクリプトームデータについては、生涯変化しないポリジェニックリスクスコアと統合させた解析を進めており、新たな疾患発症予測アルゴリズムなどを開発していく予定です。
 9ページです。地域コホート研究における脳画像解析研究では、期末までに10年目の画像取得を終了し、そのデータを基に日本人の標準的な脳の形態的な加齢変化を取りまとめる予定です。また、現在調査中の食習慣の違いによる脳の加齢変化の違いについても、論文化して情報発信ができる見込みとなっています。以上までが、評価項目1-1の説明です。
 業務実績概要に戻ります。11ページを御覧ください。研究・開発の推進及び基盤整備の概要について説明させていただきます。研究基盤は研究開発の屋台骨で、ナショナルセンターにふさわしい研究基盤構築に尽力しているところですが、今回はゲノム医療の推進基盤、長寿医療支援ロボット開発基盤、認知症予防のためのエビデンス構築基盤について説明させていただきます。
 12ページを御覧ください。周知のように、先進国ではゲノム医療、精密医療の推進速度が上昇しているところです。ゲノム医療の推進基盤となっているのが、バイオバンクとゲノムセンターですが、長寿のバイオバンクは、認知症を中心に患者検体等の試料・情報を収集し、分譲を行う研究インフラです。昨年度、病院受診者の登録数は、これまで最高の1,248人、累計で9,495人となりました。このほかに、コホート研究参加者の登録が2,700あり、累計で1万4,000人を超え、両方を合わせて2万3,500人規模のバイオバンクとなっています。一方、分譲は延べ17件、約3,000例の試料・情報が研究者に提供されています。昨年度中に創出されたバイオバンク活用論文は16編でした。認知症の試料・情報の保管数においては、国内最大、外部機関からも多数の問合せがあります。名実ともに、認知症研究における日本の研究インフラとして、重要な役割を担っていると実感しているところです。
 13ページです。こちらはメディカルゲノムセンターですが、バイオバンクの検体からゲノム情報を取得して、情報と紐付けて蓄積しています。当該年度のデータ格納数は、資料に記載のとおりです。当センターでは、左側の図のように、主要なデータはバイオバンク経由でメディカルゲノムセンターのサーバー室に集約されます。現在進行中のレジストリ研究など、当センターで収集されるデータは可能な限り、このように一元的に管理するようにし、6NCの連携業務やAMEDのゲノムデータの集約基盤、MGeND整備事業等に対応するほか、東北メディカルメガバンクとも直接接続可能なデータセンターを整備しました。ここで管理するデータリソース、いわゆるビッグデータは、現代医療研究の要となっています。格納された情報のうち臨床については、質、量ともアジア最大級であり、日本人データに限定すれば、当然のことですが世界一の収集数となっています。アジア認知症ゲノムコンソーシアム及びアメリカのアルツハイマー病ゲノムコンソーシアムから、データの活用の依頼が届いており、日本を代表する研究資源と見ていただいていると実感しているところです。
 14ページを御覧ください。長寿ならではの長寿医療支援ロボット開発基盤です。ここではロボットの発案から開発、実装までを一気通貫で行える国内唯一、世界でもまれな医療ロボに特化した開発基盤です。企業との共同研究が中心ですが、昨年はAMEDの支援で介護ロボットを操作する介護士の動線解析を行い、操作の習熟度を数値化するなどして、作業効率化やロボットの改良に結び付くデータを取得するシステムを構築しました。また、右側ですが、昨年は杖ロボットの開発を行いました。このロボットは人の足の動きを感知して自走しますので、足の筋力の衰えた高齢者は、ロボットの杖のグリップの部分を軽く握るだけで、安定した歩行を確保できます。高齢者から直接データを取り込むことができる施設として、非常に有用な研究基盤と考えています。
 15ページ、認知症予防のエビデンス構築基盤です。周知のように、認知症の根本的な治療法はまだ開発されていません。こうした現状から、認知症の一次予防に関する研究や試みに注目が寄せられています。その一方で、エビテンスの希薄な予防法の拡散も見受けられます。当センターでは、総数3万人に及ぶ国内最大の高齢者住民コホートを立ち上げ、一人一人のデータを一元的に集約し、予防法開発に資するデータ基盤構築を行っているところです。IT技術を駆使したオリジナルの対面式の検査パネル、認知機能の評価ツール、ウィズコロナの時代にも適用できるWebでの認知機能検査ツールなどを開発しました。昨年度は、これらのツールの多言語化を進めました。英語、中国語、スペイン語など複数の言語に翻訳しています。台湾語バージョンについては、既に台湾のコホート研究に導入されたところです。認知症予防開発に資するこういったエビデンス取得には、長い時間と大規模なデータ収集が必要で、ナショナルセンターならではの取組と自負しているところです。以上のように、昨年度の基盤構築の進捗状況から、自己評価をSとさせていただいたところです。
 続きまして、見込資料を御覧ください。11ページです。研究基盤整備の見込みとなります。バイオバンクについては、当初10年以上掛かると言われた患者収集の1万例の目標ですが、7年目の今期中に達成見込みです。バイオバンクと連動するメディカルゲノムセンターにおいては、全ゲノム解析数を伸ばしていく予定で、期末までに2,000例の格納を達成する見込みです。また、昨年度から取り組んできたゲノム情報とmiRNA発現情報を統合するeQTL DBを、今、構築中です。これにジャミラ(JAMIR-eQTL)と名前を付けました。この完成を見込んでいます。ジャミラが公開されれば、世界で最初のmiRNA-eQTL DBとなります。かなりのアクセス数があるのではないかと、見込んでいるところです。
 12ページを御覧ください。長寿医療支援ロボット開発基盤では、動線分析による介護士の動作効率を検証するシステムを完成させて、期末までにはこのデータを現場に還元できる見込みです。また、杖ロボットについては、提携するベンチャー企業も見付かり、知財化を含め早期の実用化に向けた作業を進める予定です。
 最後の13ページを御覧ください。認知症予防のエビデンス構築基盤においては、期末までに予定していた6,500人のベースラインデータが取得できる見込みです。取得したデータは、開発中のデータベースに格納し、その先にある収集、蓄積される経時的なデータとともに、近い将来、第三者も利用できるデータベースに構築していく予定です。以上で研究関連の説明を終わります。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。きれいに対比しながら、御説明いただいたと思います。それでは質疑、あるいはコメントを頂きたいと思いますが、評価者の先生方、いかがでしょうか。何かありませんか。
 では、まず私から口火を切らせていただきますが、全体に前から進めておられる研究が段々形になってきていると思いました。非常にいい線が出てきているなという感じがしています。その中で、ちょっと2、3お聞きしたいと思ったのですが、アルツハイマー関連の新しい新規関連のSNP Locus、これが2つ見付かってきたというのは、重要な成果だと思います。これは、関係性が聞こえにくいところもあって分かりにくかったのですが、両方とも欧米人でもあり、日本人でもあるのですか。東アジア特有とも書いてあるのですが、その辺はいかがでしょうか。こういうものには、日本、あるいは東アジアだけに見られて、欧米とはちょっと違うというようなものもあれば、コモンのものもあるということですが、その辺のことをもう一回御説明いただけると有り難いと思います。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 まず1つ目のスニップは、日本人を含めた東アジア人特異的なものです。
 
○祖父江部会長
 そうですか。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 はい。海外のデータベースも全部参照しましたが、欧米人にはこのスニップはないです。ですから東アジア人特異的で。
 
○祖父江部会長
 スニップそのものがないのですか。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 そうです。ですから、これは東アジア人の特異的なスニップということが分かりました。先ほど申し上げたように、これは予防因子、疾患抑制因子という点も特徴です。
 
○祖父江部会長
 むしろodds ratioがマイナスなのですね。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 そうです。ですから、逆に、ネガティブ(リスク)なものを持っている人が、むしろ人口的には多いということになります。
 
○祖父江部会長
 そうですか。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 もう1つのほうは。
 
○祖父江部会長
 6番染色体のほうですね。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 そうですね、HLA Locusに見付かったのですが、これは6万4,000人の全体のものをトータルして出てきたので、恐らくこれは欧米人とのコモンかと。
 
○祖父江部会長
 共通ですか。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 はい。日本人が持っていたものが、全体の数値を押し上げていったと考えています。
 
○祖父江部会長
 なるほど。日本人が8,000人、欧米人が6万4,000人で、今まで見付かってきてなかったところが、8,000人が入って見付かったということなのですね。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 そうです。
 
○祖父江部会長
 結構、日本に強いのかなという感じがしましたが。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 はい。ただ、日本人単独でやりますと、それほど強くないので、恐らくもう少しnを増やせば引っ掛かってくるだろうと思っています。やはり、きちんとこういうジェノタイピングをホールでやっている研究は、これまで日本にほとんどないのです。欧米で出たものを後追いする研究ばかりで。
 
○祖父江部会長
 そうですね。アルツハイマーで日本初ということで、非常にいいお仕事だと思います。ますます発展されることを期待します。
 もう一点は、それと関連するかもしれませんが、RNAやeQTLで発現などを見ておられますが、1つはそうやってコントロールと比べて、いわゆるGWAS的に見ていくというやり方があると思います。もう1つは、modifier geneと言いますか、経過や予後、病型など、そういうものをmodifyする遺伝子というのが、ほかのいろいろな変性疾患などでは見付かってきているのですが、先生方の例えば臨床的な長期経過の中で、非常に早く悪くなる人に関連している遺伝子など、何かそういうものは見付かっていませんか。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 孤発性に関しては見付かっていないです。これからは多分ロングリードでやらないと新規のものは見付かってこないだろうと思っています。今は全部ショートリード、今回使ったのはSNP genotypingなので、この解析法では見付かってこない。でも、今、注目されているロングリードだと、先生がおっしゃったようなものも含めて引っ掛かってくるというか、研究方法として非常に注目を浴びているので、新しい知見が今後出てくるのではないかと思います。
 
○祖父江部会長
 是非、よろしくお願いします。特にノンコーディングのロングリードは、シーケンスが今後非常に重要だと思いますので、変性疾患では、是非よろしくお願いします。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 ほかにはいかがですか。
 
○深見委員
 大変順調に、いろいろ研究成果が出ているのではないかなと思います。お伺いしたいのは、見込評価の11ページの複数のオミクス解析の統合、統合解析ができるようになってきたという、データベースの構築というものです。この図から言いますと、ゲノムとmRNA、それからmiRNAなどのデータベースの構築かなと理解しているのですが、例えば1つの強みであるAβのタンパク質の解析データというものがたくさんあるにもかかわらず、こういったデータベースにタンパク情報がなぜ入っていないのかというところが1つなのですが。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 2つ理由があります。まず1つは、MS(質量分析装置)の解析クオリティとして私どもが求めているのは、もうワンランク上ぐらいの解析能力がないと見付かってこないだろうという推測はしています。それから、やはりタンパクは、先生も御存じのように数が多過ぎるということがあり、なかなかこういうビッグデータにするまでに時間とお金が掛かって、とても難しい。まず、基本となるゲノムからの核酸ベースのほうが確実に取れる、それからロスが少ない、サンプリングするときのテクニカルなところが非常に安定していますので、非常にやりやすい。ところが、タンパクやメタボロミクスになりますと、サンプリングのところでもバイアスが掛かったり、いろいろなことが起こりますので、長寿センターの場合は、まずこの核酸中心でビッグデータをそろえています。ただ、発現も一緒に見ていますので、これはタンパクと関連しますから、かなりビッグデータとしては貴重な情報が蓄積されてきています。
 13ページの表を御覧になって分かりますように、トランスクリプトームに関しては、まだ910例という数字を挙げていますが、これからずっと増やしていく予定です。ただ、臓器をいろいろ取っていかなくてはいけないという問題も出てきます。それから、認知症においては、今度は死後脳なども使っていかなくてはいけないというハードルの高さも出てきますので、今のところはまだ血液など、そういったものに限定してやっているところです。
 
○深見委員
 これは独自でというより、どこかと共同で、でしょうか。データベースは、今1つの研究所というわけではなく、ネットワークで解析しているのではないかなと思うのですが。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 今回、ジェノタイピングに関しては、東北メガバンクが協力してくれました。それから、一部サンプルに関しては、新潟大学の脳研も参加しています。先ほどのは論文ができていますので、間もなく投稿します。共同研究の形で出させていただくことになっています。
 それから、トランスクリプトームに関しては、先週アクセプトされたばかりで、また新しいバイオマーカーが出てきています。
 
○深見委員
 おっしゃっているように、そういうアルツハイマーもフレイルなどとの関係性があるということが、やはり重要なので、アルツハイマーのゲノムというわけではなく、もう少し広い、おっしゃっていた患者さんの代謝の情報など、タンパク質と絡めたようなデータベースの構築を、是非ほかとネットワークを作りながら、普遍的なデータベースを作っていただけたらと思います。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 先生のおっしゃるとおりです。本当に日本にそれをきちんとやっていただきたいと、常々私もいろいろな所で申し上げています。実は私自身はメタボロミクスを最初に手掛けたのです。メタボロミクスの検出物質数がまだ2,000種ぐらいだったので集めやすいと思ったのですが、やはり数が少なすぎて断念した経緯があります。ただ、メタボロミクスは非常に重要だと思っていまして、先生がおっしゃるとおり、総合的なデータベースを構築する必要性はあると思います。そうすると、認知症に限らずいろいろな病気に使えますので。先ほど言いましたmiRNAのeQTLは、これは認知症に関係なく使えますので、そういう期待を持って見ています。
 
○大西委員
 どうもありがとうございました。大変、進展しているなという感じがします。ところでAβのマーカーの件ですが、これは非常に感度が高いと言いますか、PETで分からないものが分かるというところは理解できたのですが、そうしますと、非常に感度が高いものですから、経時的に変化していく様子というのは分かるのでしょうか。つまり、一定の年齢になってしまうと、全ての人が陽性になってしまうのかなと心配をしています。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 経時的なデータというものは、まだ2ポイントぐらいですが、取っています。やはり数値は若干ですが上昇しています。そこは、前向きな研究を更に継続することで何か新しい情報が入ってくるのではないかと期待しているところです。
 
○大西委員
 そうしますと、臨床的にどうやって使っていくかということについては、まだ研究の途上だと考えたほうがよろしいでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 創薬ベースでは、患者さんのリクルートが一番大きいと思います。それからもう1つは、Aβの有無というのが非常に大きな診断の基準になっていますので、そこで大きく分ける、有る無しで分けることができると思います。ただ、無症候の場合は、それから追っていって、どの時点で病気になるかとその人をフォローすることはできると思いますが、そういうような方々が病院に来るかどうかというのは、ちょっと分からないです。その点は鷲見先生から何かコメントがあれば。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見理事・病院長
 すぐに臨床的にこの成果を実用化するわけではないと思います。今お話が合ったように、治療薬がないことには、早期診断しても非常に困ることになるので、まずは治療薬の開発があって、この研究ができると思っています。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 私から簡単に追加させていただきます。現状では、PETが非常に高価なので、その代わりにバイオマーカーで安く治験対象者をリクルートしようということが、最初の目標です。今、J-MINT研究というのを我々はやっています。私が研究代表者で、認知症のリスクの高い方を対象として、運動や栄養や生活習慣の介入、そして脳トレ、そういった多因子介入をすることによって、認知機能の低下が抑制されるかという大規模な臨床研究を全国規模で行っています。その中でバイオマーカーを測定していますので、そのバイオマーカーをJ-MINT研究の中で測定をして、その結果を分析することによって、ある程度そういった多因子介入に反応しやすいグループを、こういったバイオマーカーで見付けることができるかもしれないとは思っています。その結果が出るのが2年後ですので、もう少しお時間を頂ければと思います。
 
○大西委員
 ありがとうございました。
 
○藤川委員
 評価1-2のロボットの話なのですが、27、28年頃は正直余り洗練されていないというか、いろいろなアイデアはあるものの、どこに絞るのかまだまだという感じだったものが、ある程度方向性も絞られてきたのかなという気がします。中長期の見込評価では12ページで、単年度だと14ページ、例えば介護職員に関連するようなロボットは相当喫緊の課題で、この辺は相当進んでいるのか、実用化される時期がどの程度まできているのかというのが、12ページを見るとまだよく分からないので、その辺り。ある程度4つぐらいに絞られているのかなとは見られるのですが、それがどの辺で現実に使われて、どのぐらいのインパクトがあるのかなというところを、教えていただけたら有り難いなと思います。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 ロボットセンター長からお伺いしたところでは、これは患者さんではなく介護職員を対象としています。そういう意味では、割と早く実用化できる。つまり、天井に半天球型のカメラを装着して、それをずっと追っかけるのですが、決まった人が大体対応しますので、非常にデータを取りやすい。そのデータから、こういう動きをすれば効率がいいと。これは、熟練者とそうでない方との差が非常によく出るのだそうです。その熟練者のデータで、こういう動きをすると患者さんが楽に移乗できるという指導ができるということをおっしゃっていますので、これはまだ研究自体はAMEDの支援を受けながらやっているところで、もうちょっと時間は掛かると思いますが、既に少しずつ出てくるデータ自体を現場には反映できるような状態にはなっていると聞いています。
 もう1つ、この杖ロボットのことは質問にはありませんでしたが、これはベンチャーなどに興味を持っていただいたことで、販売なども意識しているということをおっしゃっていましたので、割と早めにいくのではないかということを期待しています。
 
○祖父江部会長
 よろしいですか。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 追加ですみません、傾聴ロボットとありますが、これも割と実用化が進んでいます。傾聴ロボットを認知症の方に使うのですが、いろいろとコミュニケーションする中で、その情報をAIで分析して、認知症の方が暴れたりしないような形の声掛けをできるような方向の研究にならないかということで、今、研究を進めているところです。
 
○藤川委員
 多分、コロナのことによって、またいろいろこの辺りの環境が激変しているのかと思いますので、仕切り直しみたいなところもあるのかもしれないのですが、非常に開発をしていただくと大きなインパクトがあるようなことだと思います。是非、頑張っていただきたいと常々応援していますので、よろしくお願いします。
 
○祖父江部会長
 そろそろ時間ですか。ほかにはありませんか。1つだけいいですか、先ほど、いろいろな前向きのレジストリあるいはコホートをインテグレートして、オールジャパン的な形で今後やっていってほしいという御意見がありましたが、私も是非そういう拠点化と言いますか、ほかでそういうことがやれる組織が余りないと思うのです。ですから、例えば循環器などでも、脳卒中の全国の拠点を作って、脳卒中センターみたいなもので、そこから経過を追うデータを集めていこうということをやっています。それから、がんはもともと10年間ずっとやってきて。ただ、そこのバックにいずれも法整備があるのです。ですから、そういう何かドライブを掛けるものがあると、拠点化が非常に進んでくるのではないかと思っています。オールジャパンを目指した次の6年が始まるかということが、また後でこの次のステップとして議論に出ますので、そこで是非お考えいただいて、御提言いただけると有り難いなと思っています。どうもありがとうございました。
 それでは、このセッションはこれで終わります。次は、評価項目1-3から1-5の「医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項」について議論したいと思います。先ほどと同様の流れですが、時間も同じです。説明20分、質疑18分ということで、見込評価と今年の評価を交互に御説明いただけると有り難いと思います。それでは、鷲見院長からよろしくお願いいたします。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見理事・病院長
 それでは、評価項目1-3から1-5までを病院長の鷲見が説明させていただきます。少し資料が行ったり来たりになりまして、煩わしいかと思いますけれども、最初に評価項目1-3の医療の提供に関する事項を説明させていただきます。令和元年度業務実績概要説明資料の16ページを御覧ください。本日は3つのポイントに絞ってお話したいと思います。1つは認知症の分野、2つ目にフレイル、ロコモの分野、3つ目に患者さんの視点に立つ良質かつ安全な医療の提供という3点です。
 続いて、資料の17ページを御覧ください。まず、もの忘れセンターの活動です。初診は現在1,054名、再診6,048名で、2月末からのコロナウイルス感染症の影響もあって、初診で50名、再診で400名ほど減少しているのですが、国内最大規模の外来を維持しております。家族教室を中心とした本人、家族の支援、地域からの相談業務も順調に継続できています。また、昨年度に紹介させていただいた「脳活リハ」と呼んでいる脳-身体賦活リハビリテーション、これは認知の方へのリハビリテーションの療法です。当センターの認知リハビリテーションプログラムには幾つかの特徴があって、この図に示しているような、一人一人に合わせた多彩な手法を用いた認知機能の直接的な改善とか、あるいは本人に対して過剰に何か努力を強いるようなそういうものではなくて、残存機能、残っている機能の向上を目指すというリハビリテーションを行っています。
 実績として、昨年は開始したばかりだったので106名の実施でしたが、今年度は延べ2,996名まで膨れ上がっています。まだ1年ですので、あくまでプレリミナリーな結果ですが、1年後の認知機能が維持されている、それから、患者満足度は非常に高いということが分かってきています。
 今年度、特に御紹介したいのは、認知症大綱の大きな旗印である予防に関して研究が開始されたことです。これは資料18ページを御覧ください。右側の図から説明させていただきます。認知症予防を目指した多因子介入によるランダム化比較試験が開始されました。これは、2012年からフィンランドで始まったFINGER研究とリンクした研究ですが、FINGERを超えてランダム化介入研究であること、それから、先ほど少し理事長も言われましたが、認知症のバイオマーカー研究も組み合わされている点が大きな特徴です。また、研究体制の中に民間企業が多数参画している点も特徴です。AMEDから研究費を頂いて、コロナ感染症の影響で現在やや停滞を余儀なくされてはいますが、令和2年3月までに287例が既に登録されていまして、今年度中には目標の介入群・対照群を合わせて440例が達成できる見込みです。
 図の左側を御覧ください。患者登録システムであるオレンジレジストリです。中でも軽度認知障害を登録するMCIのオレンジレジストリを進めていて、昨年11月までに1,503例が登録されています。ここから得られた成果として、ここにあるような軽度認知障害の人たちの認知症リスクと言われている要因の頻度を見ています。高血圧は約50%、糖尿病は約20%の罹病歴があって、半数には運動習慣がありませんでした。また、BMIを見ていただくと、低いほうに大きくシフトしていて、5人に1人が低栄養の範疇にあるということが分かりました。一部、MRIが撮像できているのですが、その撮像できた対象者の半数以上に、中等度以上の白質病変が存在することも分かりました。
 左下段の図に示すように、このオレンジレジストリを利用した治験や臨床研究も多数進展しています。先ほど研究所長が紹介した認知症の血液バイオマーカー研究や、miRNAをゲノム研究に加えて、聴覚・嗅覚障害と認知症の関係を見たEscargot研究、それから、高血圧・心房細動と認知症の関係を見るStrawberry研究、レビー小体型認知症に対するゾニサミドの有用性研究などが行われています。
 それでは、5年間の総括である第2期中長期目標期間見込評価概要説明資料を御覧ください。15ページになります。ただいまお話しましたように、平成27年10月から開始されたオレンジレジストリは順調に同意数、登録数を増やして、レジストリの活用研究も増やしてきました。また、平成29年度末から治験を紹介する仕組み、これは「CLIC-D」と言っているのですが、これを構築し、運用を開始しています。アミロイドPETが陽性で臨床症状のない登録者が30例を超えてきておりまして、現在、複数の企業と話合いが進んでいます。また、先ほど紹介したJ-MINT研究が令和元年から開始されました。
 次に、ロコモフレイルセンターの活動についてです。先ほどの令和元年度の資料に戻っていただきまして、19ページを御覧ください。当センターの病院の2本目の柱であるロコモフレイルセンターでは、世界初のロコモ、フレイルに対する包括的診療を行って、令和元年度には154名、累計655名の患者数に達しました。継続して経過観察できている患者さんは240名です。昨年から開始した栄養指導による介入や運動指導による介入が本格化し、栄養指導は112名に、運動指導は102名に実施されています。資料の右側に示したような運動機能の非常に詳細な評価に加えて、これは企業も関連しているのですが、CTやエコーによるサルコペニアの評価も開発されています。
 続いて、資料20ページを御覧ください。これは1つの具体例ですが、高齢者の運動器疾患は、高齢者の活動性やサルコペニアの進展に非常に大きな影響を与えますが、その中でも高齢者に多い脊椎圧迫骨折の治療と予後維持についての研究を、今日はお示しします。
 腰椎の圧迫骨折は、痛みを伴って高齢者の活動性を著しく阻害する疾患です。467例を1年間追跡したデータで、経皮的椎体形成術はそれほどやられていなくて、まだ7名ですが、結果として関節がうまくできない、偽関節ができてしまうかどうかということは、1年後の歩行能力に悪影響はありませんでした。受傷1年後の歩行能力に有意に影響を与える因子は、これは下に示していますけれども、年齢、認知症があるかどうか、受診時のアルブミン値、すなわち低栄養が非常に大きいということが分かりました。それから、受傷1年後の生活自立度に影響を与える因子は、年齢、認知症の有無、受傷前の生活自立度でした。この研究は、当センターが中心となって学会と共同して進めている研究です。
 次に、見込評価資料の16ページに戻っていただきまして、今のところのまとめになります。ロコモフレイルセンターを中心としたサルコペニアの病態解明と、画像診断法の開発の流れをお示ししています。同じく見込評価資料の17ページを御覧ください。骨格筋量の運動器疾患に対する影響は、今まで余り重要視されてきませんでしたが、次第にその性質が明らかになりつつありまして、これまでの、いわゆる整形外科的な治療だけではなくて、骨格筋を含めた治療的アプローチが提唱されてきています。昨年から、慢性疼痛と骨格筋量の関連も少しずつ明らかにしてきています。今年度の資料では、先ほど御紹介した骨粗鬆症性の椎体骨折についてお話しましたが、高齢者の寝たきりの原因として大きい脊柱管狭窄症や大腿骨骨折、それから、こういった疾患による慢性疼痛のサルコペニアに対する影響をいろいろ調べていまして、ここに示しているように、中段にあるような幾つかの論文が、2020年から出始めています。腰部脊柱管狭窄症と骨粗鬆症性椎体骨折のデータベースは、両疾患とも約1,000例と、単一施設のデータベースとしては国内最大で、骨格筋量のデータを縦断的に追跡するレジストリは、ほかに類を見ないものです。
 続いて、同じく見込評価資料の18ページを御覧ください。これは参考までにお出ししたのですが、ナショナルセンターですので、やはり病院と研究所が併設されていて、一体になって研究をやっているというところが特徴です。また、この領域においても、認知症においてもそうなのですが、基礎研究と一体となった研究を進めているということで、ここで両者がいろいろな研究をやっているということをお示ししています。
 令和元年度の資料に戻っていただきまして、21ページを御覧ください。医療の提供に関する事項では、3点お示しします。1つ目は、退院後の自宅療養を、退院時から切れ目なく円滑かつ安心にできるように支援するという、トランジショナル・ケア・チームと呼んでいますが、このチームの活動を紹介します。今は栄養法が非常に多様ですし、それから、排泄支援もいろいろ複雑、そして、薬物投与技術も非常に複雑になってきています。実際に自宅の環境でどのぐらい家族ができるかということに関して、いろいろな指導が要るようになってきているわけです。これは、医療が高度化したことによって、どうしてもこのようなトランジショナル・ケア・チームのようなチーム医療の需要が高まっているということです。平成元年度は119名の患者さんが登録されました。そのうち再入院は21名で、82%が自宅生活を継続できています。延べ訪問回数も昨年220回だったのですが、今年度は436回と、倍増しています。
 2つ目は、訪問リハビリテーションです。機能低下や能力低下を持つ人の安全な生活の維持ということだけではなくて、自宅や社会での役割の創出、あるいは人生を支えるといったことまでを目的に、平成28年から開始しています。令和元年度は、回復期リハ病棟の患者さんだけではなくて、地域包括ケア病棟の退院患者さんの訪問リハビリテーションも開始しました。グラフを見ていただくと分かるように、利用者数は右肩上がりです。680人で、平成30年度に比べて大幅に増加しています。
 3つ目は、アドバンス・ケア・プランニングを支えるリーダーやファシリテーターの養成です。自己決定の支援と人生最終段階におけるモデル医療の確立ということにおいて、これは次の1-4の人材育成とも関連するのですが、アドバンス・ケア・プランニングを支えるリーダーとかファシリテーターの養成が、どうしても不可欠です。令和元年度は540名を養成しました。高齢者の医療にとって、人生最終段階を支えるということは非常に重要な課題です。従来、どうしても悪性腫瘍の最終段階というところで利用されることが多かったと思いますが、当センターでは悪性腫瘍ではない非がん疾患のアドバンス・ケア・プランニングを試みている点が特徴です。
 見込評価概要説明資料に戻っていただきまして、19ページを御覧ください。トランジショナル・ケア・チームの活動と、アドバンス・ケア・プランニングのファシリテーター養成が、この5年間で広がってきていることを示しています。
 続いて、評価項目1-4、人材育成に関する事項の提供に関する事項の説明をさせていただきます。令和元年度資料に戻っていただきまして、1-4を御覧ください。人材育成に関する事項では、これも3点を強調したいと思います。第1点目は認知症サポート医研修、第2点目は認知症初期集中支援チーム員研修、第3点目は国際的な研修活動についてです。続けて資料23ページを御覧ください。平成17年から育ててきた認知症サポート医は、令和元年度に1万1,255名に到達しました。新オレンジプランの到達目標として掲げられた平成32年度までに1万名の目標を、1年前倒しで達成しました。地域における認知症医療の旗振り役、それから、次に述べる認知症初期集中支援チームのチーム員、あるいは病院における認知症対応多職種チームの中心としての役割といった、医療・介護連携の中心として、次第にその役割が明確になってきています。昨年6月の認知症大綱のKPIでは、1万6,000人養成をということですので、令和元年度はテキストの改訂も行い、今後、一層充実した研修を続けていきたいと思っています。
 2点目は、右側にある認知症初期集中支援チーム員研修です。こちらに関しては、認知症の人や家族が認知症だと気付いても、なかなか医療や介護につながらない、つながっても、またすぐに途切れてしまうということが課題として挙げられていました。これに応えるために、認知症初期集中支援チームは、専門家のチームがこちらから本人、家族を訪問して、相談に乗って、本来つながるべき医療や介護につなげていく。また、つないだ後も継続しているかどうかをモニターするという役割を担っています。この「初期」という言葉は、認知症ケアパスの起点に当たるという意味です。病気の初期という意味では必ずしもないということです。新オレンジプラン、この間出た認知症大綱いずれにおいても重要な位置付けと言われています。平成27年度からチーム員研修を開始していまして、平成29年3月末までに、ほぼ全市町村にチームが立ち上がりました。研修を受講したチーム員が、チーム員に伝達講習をするということを認めているので、受講生は少しずつ減少していますが、チーム員の勤務交代や、まだ受講できていなかったチーム員を受講させたいという希望がありまして、予想以上に受講希望が続いています。令和元年度はチームを自己評価するための指標作りを行いまして、対象を把握してから訪問するまでの時間、医療・介護への引継数、困難事例への対応数、支援対象者数などが有効というように決定されました。
 資料24ページを御覧ください。3点目は、国際的な認知症・高齢者医療に関する人材育成及び啓発体制の構築支援です。主に、海外における人材育成及び認知症啓発体制構築支援と、海外からの研修受入れからなります。海外における人材育成に関しては、中所得国としてタイ、低所得国としてラオスを選んで、各国の研究機関及び研究者の協力の下、現状及び啓発・教育に関しての課題抽出を行っています。ロシアにおいては、認知症の予防だけではなく、パーソンセンタードケアなどの認知症高齢者への接し方、あるいは医療関係者の教育の重要性、日本の高齢者医療の歴史について触れた医療関係者向けの研修会を実施しました。海外からの研修受入れとしては、中国、台湾、モンゴル、タイなど12か国から93名の受入れを行っています。令和2年2月には、Geriatric Medicine and Dementia Seminarを開催して、認知症の予防、今日紹介している当センターのいろいろなセンター内センターの紹介、あるいは老年医学に関する当センターの取組を中心として、講義と現場視察を行っていただきました。
 まとめとして、見込資料の18ページを御覧ください。サポート医研修では予定より早く目標人数に達したこと、サポート医の活動に対して診療報酬が付いた等を、特に強調したいと思います。これらの研修は、日本ではもちろん、世界でも類例のない研修であるというように自負しております。
  続いて、評価項目1-5、医療政策の推進等に関する事項を説明します。令和元年度資料に戻っていただきまして、資料25ページを御覧ください。令和元年度の政策提言は、以下の3つを紹介させていただきます。1つは、「アドバンス・ケア・プランニング推進に関する提言」、2つ目は、「透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」、3つ目は、「高齢者の医薬品適正使用の指針」の策定、これら全てに当センターの職員が参画委員として参画しています。
 続いて、資料26ページを御覧ください。本年度は3つの成果を報告させていただきます。第1に、「高齢者在宅医療・介護サービスガイドライン2019」を日本老年医学会、日本在宅医学会、当センターが共同で策定して、全文を一般向けに公開しました。特徴は、ほかのガイドラインとは違って、いわゆる診療概念的な生命予後とか治癒率ではなくて、患者さんの満足度やQOL、ADL、介護者のQOLや介護負担などをアウトカムとして重要視した点です。
 2つ目は、全国の医療ケア従事者に対してアドバンス・ケア・プランニングの推進に関する提言を発表しました。アドバンス・ケア・プランニングは北米や欧州で始まった概念ですので、日本人の特性、文化に合った内容にしていく必要があります。ここにポイントとして示したように、日本人の性質も踏まえて、本人の意思を可能な限り推定して、尊重することが重要であることを明らかにしています。各専門職の職業倫理としての価値観に加えて、本人の価値観を尊重する。それから、本人の人生を核として医療・ケアの意思決定を進めていくということです。そのために、アドバンス・ケア・プランニングに対して「人生会議」という言葉を日本語として日本語化することが進められています。
 3つ目は、サルコペニアの新しい診断基準の改正で、これは2017年に発表されたサルコペニア診療ガイドラインに追加される内容です。骨格筋量の測定装置のない施設や地域の医療現場での診断を容易にするために作成されました。握力や5回椅子立ち上がりテスト、下腿周囲長に質問票を組み合わせた形が基準になっています。
 これもまとめとして、見込評価概要説明資料の23ページを御覧いただければと思います。この5年間の国への政策提言をまとめました。主に認知症領域が多くなっています。そして、医療の均てん化としては、先ほど御紹介した2種類のガイドラインを策定しています。
 最後に24ページを見ていただくと、これは先ほど理事長から説明がありましたが、コロナ関連の情報発信です。これはホームページに全て載せていまして、当方の予想を超える非常に多数のアクセス数を頂きました。是非御利用いただければと思います。説明は以上です。どうもありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。それでは御質問、御意見等はありますでしょうか。よろしくお願いいたします。
 
○藤川委員
 認知症サポート医研修ですが、順調にこの期に入ってどんどん伸びているとは思いますし、フォローアップ研修とかそういったこともやられて、やりっ放しではないというところはあるとは思いますが、実際にどのように使われると言うと変ですが、そういう研修医、サポート医研修を受けた方が、具体的にどういう有用なことができているのかということが余り主張されなくて、数のことが多いので、そういうところが非常に重要なのかなと。そういうフェーズとしては、数よりも、どのように役に立っているかということが重要なのかと思うので、そういう説明ももう少ししていただいて。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見理事・病院長
 ありがとうございます。これは、本当にずっと我々も最初は手探りで、平成17年に始めたときには、要するに、認知症の人のことを相談する医者が全然日本にはいないのではないかと。この時点では、例えば私が所属している認知症学会の専門医はまだなかったので、全然相談する医者がいないということで、まず相談できる医者を増やそうというのが当初の目的でした。ただ、やはりそれだけでは限界もありますので、最近は一番大きいのは、先ほど少し紹介した認知症初期集中支援チーム、これはその地域の多職種チームですが、その中核にチーム医師として参画する、それがこのサポート医の先生です。ですので、正に地域の介護も医療もつないだ所にこの先生がいて、しかも、自宅へ訪問するという仕組みの中の中核にいるという点が、1つ大きな役割になりました。
 もう1つが、先ほど少し紹介した病院の中の多職種チームです。認知症の人は入院するといろいろな問題が起きて、やはり病院の中でも非常に大変になったりするのですが、それを防ぐために病院の中に認知症対応の多職種チームを作るということ、これは、もうずっと2011年頃からやってきているのですが、その中心医師がサポート医であるということです。ですから、病院の先生が随分サポート医研修を受けるようになりました。これまでどうしても地域の先生方というのは開業医の先生がサポート医になられるケースが多かったのですが、最近、病院の先生も随分サポート医研修を受けてくださるようになって、病院の先生がサポート医になるケースが増えてきています。ですので、やっと医師の中でも、いろいろな医師の方にサポート医という役割を担っていただけるようになってきたかなと思っています。あと、もちろん地域の住民の方や、地域の医師会での講習会の講師、あるいは、かかりつけ医認知症対応力向上研修というのがあるのですが、それの講師なども務めていただいています。
 フォローアップ研修に関しては、当センターが任されているわけではなくて、これは各県に任されています。ですから、各県が各医師会と相談してやっているというのが実状ですので、実は当センターとしてはフォローアップ研修までは関われていません。ただ、地方によっては、そういうことが難しい地域もあるので、そこは我々が時々出張して行って相談には乗っています。
 
○藤川委員
 建前としてはというか、研修を終わられた方が、いろいろなチームの中で中核的な役割を果たすことはあるとは思いますが、やってみると、やはりうまくいかないことというのはいろいろあって、どちらかと言うと、やってみて、またこういう問題が出てきたから、こういうように変えていますというような、レベルアップしているところが見えるといいかなと。非常に困っている分野だと思いますので、人だけ増やしてもうまく動かないということが、余りにもあちらこちらで起きているということですので。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見理事・病院長
 御指摘のとおりだと思います。これは先ほど平成17年から増やしてきたと言いましたけれども、実働部隊は恐らくこの6割ぐらいなのです。それこそ、もう亡くなられた先生もおられますし、医療をやめてしまった先生もおられるので。
 
○藤川委員
 肩書きを取られる方、多分、結構いらっしゃると思いますので。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見理事・病院長
 そうですね。だから、継続な研修はやはり大事だと思います。
 
○藤川委員
 是非、締めくくりの年度にはそういうことも見えてきて、さらに次の目標計画のときに、更なるレベルアップで、数だけではなく質が上がるということをやっていただきたい。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見理事・病院長
 ありがとうございます。
 
○花井委員
 評価項目1-3のロコモフレイルセンターにおいて、例えば包括的な多職種連携による画期的な外来システムということでいろいろやられていて、いろいろ介入すればよいのだろうと。運動したほうがいいとか、歩いたほうがいいとか、栄養もバランスが良ければいいとか、疼痛もロキソニンシップを貼っていたほうが痛くないから歩くとか、いろいろあるのですが、こういうチームで包括的にやれば、それはテーラーメイドにその人に合わせていろいろな介入ができると思いますが、事実上、日本全体の中においては、近くのクリニックに通っているだけで、痛み止めのシップだけもらっていますとか、たまたま栄養のことを言われたから注意していますみたいな形で。つまり、この医療資源にかかわらず、どのような介入が一番エビデンスとして有効とか、そういうような、若しくは理想的な介入が全部できなくても、これだけはやるべしみたいな優先順位とか有効性とか、そういったこととともに、いわゆるリソースの少ない所でも実現できることとか、そういうことはお考えになられるのでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見理事・病院長
 はい、もちろんそうです。ただ、今、1年目のデータが出たところで、介入に関しては本当にまだ始まったところなのです。ですから、これはもう少し時間を頂きたいと思います。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 よろしいですか。介入も3年ぐらいたっているのですけれども、我々のセンターがやっていることを、ほかの病院でできるとは思っていないので、他の病院でどれだけできるかということが、これからポイントになってくると思います。診療報酬もなかなか付きにくいということなので、それについてはサルコペニア・フレイル学会、私が一応代表理事をやっているのですが、そこで指導士というのを養成しておりまして、主にメディカルスタッフを中心に、運動とか栄養が中心的な介入の方法になりますので、そういった指導が外来レベルでできるようにということを、そういった指導士を増やしてできないかということを今考えています。あとは、フレイルサポート医というのを、今、東京都のほうが試みているのですが、それについても連携して、まず東京都でやっていただいて、それがうまくできるかどうかということで、全国展開ができないか。そういったときに、国立長寿のほうでバックアップをするという仕組みで今考えています。
 
○祖父江部会長
 よろしいですか。ほかに何かありませんでしょうか。
 
○斎藤委員
 21ページの所のトランジショナル・ケアのことでお伺いしたいのですが、これから高齢者がどんどん増えてくると、このトランジショナルというのは、すごく重要だと思われます。先生方だけではなくて、その家族であり、地域である人たちが参画していかなければいけないと思いますが、数字を拝見すると、まだまだ少なくて、どのぐらいの影響度があるのだろうと、ちょっと心配になるのですが。これをもう少し全国的に大きく広めるような計画、あるいはアイデアというのはお持ちなのでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター鷲見理事・病院長
 これは確かに是非全国的に、まだ我々も試行的にやっていて、先ほどの話と同じように、一体どういうことをやってあげるのが一番いいのか、そういうことを今、手探りしている段階です。御指摘のように、大変これは重要というか、役に立つというか、やはり医療がどんどん高度化しているので、家庭とのギャップが結構大きいと思うのですね。ですから、ここを埋めるための技術はとても大事だと思いますが、どのようなことが大事なのか。それから、結構これがターミナルになってしまう方も多いので、そこも含めて検討が必要なのかと思っています。本当に全国にこれを早く広げられればと思っていますけれども。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 これは、恐らく大学病院のような高度先進医療病院では、なかなか提供は難しいと思いますが、当センターのように中規模の病院で、急性期から亜急性期、在宅といった、シームレスにそういった医療を在宅までやっていくといった病院は、必ずこういった仕組みを導入しなければいけないかなと考えています。問題も、保険診療との兼ね合いとか、あるいは地域の訪問看護の方々、あるいは在宅で診ておられる医師会の先生方との連携ということですので、そういったことをしっかりと当センターで、データを蓄積して意欲的に展開をする予定で今やっているということで、もう少しお時間を頂ければと思います。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。今の地域包括ケアシステム、トランジショナル・ケアということで、私も今の質問に絡む質問というか、これは少し軸がずれるかもしれませんが。今、先生がおっしゃったように、急性期から、いろいろな地域包括ケア病床とか、回復期リハとか、それから介護型、在宅もありますし、そういういろいろな病床の機能別に、各病院が持ちながら地域をやっている、患者さんを受け入れているということがあります。疾患別で見ると、先生の所は認知症とフレイルを中心にやっておられるので、当たらないかもしれませんが、例えば急性心筋梗塞で来られて、心筋梗塞自体は結構最近は治るので、例えば5年たち、10年たつと、心不全になられますよね。今、心不全が非常にアウトブレイクになっていて、どういう介護をどこでやられているのかというのが非常によく分からないのです。心臓リハというのもありますし、心臓リハは非常に予後に影響するというエビデンスが、どうも出ているようなのですが。リウマチもそうですね、リウマチも前に比べて非常に予後が良くなってきているので。では、リウマチに特化する部分とジェネラルの部分で、どういう病床をどういう形で利用していったらいいのかということが、意外と十分フィットしながら疾患ごとにやられていないと。例えば脳卒中の慢性期と心不全の慢性期が、一緒に地域包括ケア病床の中でごちゃごちゃになっているとか、そういう状態がしばしば見えるのです。
 その辺の高齢社会医療学みたいな、前にそういう部門もお持ちになっているという話をお聞きしたのですけれども、そういう実際の実態がいいのか悪いのか、あるいは、それがどういう方向を向いているかというような、高齢社会医療学というのでしょうか、何と言ったらいいか分かりませんが、そういうことを具体に調査している所というのは、余りないような感じがするのです。鳥瞰的に見ているのが。保険点数のちょっとした変わりで、ガッと動いてしまうということが、今、世の中に行われていて、やはり適正にやられているかどうかというののアセスメントが、なかなかやられていないような感じもしているのです、実際に見てみると。その辺は先生の所のテーマというようにはなっていかないのですか。その辺を。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 それは非常に大事な点です。例えば循環器、心筋梗塞、心不全に関しては、循環器病センターと決定的に違うのは、我々側のアプローチです。なかなか高度の医療は我々の所ではできませんけれども、心筋梗塞を起こして徐々に心機能が弱って心不全になると、そういった方々が地域包括ケア病棟から在宅に行くと、そのシームレスなケアをいかに展開していくかということを、当センターでモデルを作るということを今やっています。やはり心臓の場合は心リハが大事ですし、在宅のリハも同時にやっていますので、心リハからうまく在宅のリハにつなげていくとか、あるいは先ほどのトランジショナル・ケア・チームを入れていくとか、そういった形でモデルを作っていくことを今考えています。また、社会科学研究センターと最近、リウマチのコホートを始めていますので、地域のリウマチの患者さんと同時に、病院のリウマチの患者さんのデータをレジストリ化して、きちんとフォローしていくという仕組みを作っています。
 
○祖父江部会長
 先生がおっしゃったモデルケースというか、そういうものをどしどし出していっていただけると、非常に見える形になってくるのではないかという感じがしますので、是非、よろしくお願いしたいと思います。時間はまだあるのですか。ないようですので、それでは、ありがとうございました。ほかによろしいでしょうか、この項目は。
 それでは、次の評価項目に移りたいと思います。評価項目2-1から4-1、「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項」について議論したいと思います。ここは時間が短くて全体で14分、説明は8分、質疑は6分ということですが、よろしくお願いいたします。
 
○国立長寿医療研究センター小森企画戦略局長
 企画戦略局長の小森でございます。残りの事項について私から説明させていただきます。最初に、令和元年度業務実績について、概要を説明資料に基づき説明します。
 まず、業務運営の効率化に関して、28ページを御覧ください。経常収支率ですが、ページ上、青囲みの所にあるように、令和元年度の実績は96.8%です。効率的な業務運営に関する事項ですが、経常収益については67億6,800万円、診療報酬の上位基準への移行などにより、前年度に比べ約1.7億円、およそ3%の増となっています。経常費用についても、競争入札による水道光熱費の削減で3,600万円削減、また、診療材料の価格交渉で300万円ほどの減と、節減に努めています。また、後発医薬品シェアも80.7%と、前年度より0.7%の増となっています。右の一般管理費については6,781万円、情報システム系のオペレーターサービス委託費等の削減により、前年度に比べ1,682万円の削減となっています。
 29ページ、運営状況について説明します。まず医業収支ですが、収益は対前年度比1億7,000万円の増、3%の増となっています。入院収益が45億1,400万円、一昨年度と比べ5,900万円の増となっています。外来収益は19億4,100万円で、一昨年度と比べ1億300万円の増となっています。医業費用ですが、64億5,600万円と一昨年度と比べ1,200万円の減となっています。費用が減少したのは、会計基準の改訂により退職手当一時金が1億2,400万円減となったことなどによるものです。収支差は3億1,200万円のプラスとなっています。
 医業外収支ですが、収益が対前年度比1億3,900万円の減、費用が対前年度9,500万円の増で、収支差は▲6億7,200万円となっています。収益減は主に研修収益の減、費用の増は会計基準改訂に伴う交付金対象者の退職給付引当金に掛かる費用増などによるものです。総収支差は3億6,000万円のマイナスです。この項目の自己評価はBとしています。
 次に30ページ、財務内容の改善に関する事項について説明します。外部資金の獲得状況ですが、令和元年度は21億1,800万円、前年度比で8%の増となっています。寄附金の受入れについては2,018万円で27%の減です。そのような中で、クラウドファンディングなど新しい資源獲得手法も取り入れているところです。31ページの右側にあるように、このような外部資金獲得の努力の結果、外部研究資金は運営費交付金に比して0.86倍まで増えています。この項目の自己評価はBとしています。
 最後に32ページ、その他業務運営に関する重要事項です。Ⅱ[1]の内部統制の適切な構築として、多数回の監査を実施しています。次に[2]ですが、人材交流を積極的に進めたほか、ワークライフバランスの観点から特別休暇(夏期休暇)の取得時期の範囲を見直し、1暦年の範囲内で取得可能とするなどの措置を講じています。この項目は自己評価Bとしています。
 引き続き、第2期中長期目標期間見込評価について、概要説明資料に基づき説明します。資料1-6の26ページを御覧ください。[1]の効率的な業務運営ですが、経常収益については、新外来棟を平成30年に開棟したことから、平成30年度より大幅に増加しています。経常費用については、契約の見直しなどにより費用の節減に努めています。一般管理費については、平成26年度比15.7%減となっています。[2]の電子化の推進については、民間から専門人材を登用し、大幅なコスト削減と情報セキュリティの強化を図っています。
 次に、第2期中長期目標期間の財務運営状況について説明します。27ページを御覧ください。これまでの5年間を振り返り、経常収益が順調に伸びる一方、経常費用も伸び、経常収支差、総収支差ともに残念ながら拡大傾向にあります。ただ、償却前収支は平成30年度以降は3億円を超え、稼ぐ力はついてきています。
 28ページ、財務内容の改善に関する事項です。経常収支差、総収支差が伸びているという現状なども踏まえ、当センターとしても外部資金の獲得に努めているところです。その結果、令和元年度の外部資金獲得額は、平成27年度と比べ102%増、倍増以上の伸びとなっています。また寄附金についても獲得に努めているところで、令和元年度は平成27年度と比べ72%増となっています。
 最後に29ページ、その他業務運営に関する重要事項について説明します。Ⅱですが、内部統制部門において様々な監査を行っているほか、人事の最適化のため様々な機関と人事交流を進めています。また、各種ハラスメント規程を整備したり、院内保育所を設置したりするなど、職場環境の改善に努めています。説明は以上です。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。それでは、ディスカッションをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
 
○藤川委員
 努力をされているのは分かるのですが、一応、目標の累積での経常収支比率ということで言えば、100%を達成するのはかなり難しくなってきているというか、年々、どうしても悪くなってしまっているので。減価償却前であればというお話がありましたが、何か策はおありなのかどうかという辺りを少し御説明いただけると有り難いです。
 
○国立長寿医療研究センター小森企画戦略局長
 非常に目先のことを申し上げれば、償却前収支が3億円を超えていますので、ある意味、建物の会計上の期間を超えて大切に使っていくという当たり前のことをやっていくのはもちろんですが、それ以外にもいろいろ、人件費の削減などに取り組んでおり、やや不合理な手当があるようなところは削減をしているということに取り組んでいるところです。今後、そういったことについては、効いてくるのかなと思っております。
 
○祖父江部会長
 1つは、経常収支差の幅がだんだん、マイナス幅が大きくなってきてしまっているというお話、これは実際に令和元年は3億8,200万円マイナスということで、これを挽回する1つの方法として、先ほど外部資金ということをおっしゃったのですが、この外部資金は、この間はトータルとして2倍ぐらいになっています。その中身ですが、企業との連携みたいなことはどれぐらい増えてきて、今後も含めてどう考えておられるかを少しお聞きできればと思ったのですが。
 例えば、先ほどのロボットは前からやっておられますよね。あれが、どれぐらいの費用というか、インカムを生んでいるかということ。もう1つは、先ほど来の、非常に日本として世界に打って出るようなバイオリソースのデポジットがありますよね。海外からの引きもどんどん来るのですが、そういうナショナルセンターの集めたものを海外企業へ展開していくのは、倫理的にも法律的にもなかなか難しいバリアがあるのです。これはどこのナショナルセンターでも抱えている問題です。その辺をどう考えておられるか、主に企業との連関の中でどう展開していきたいか、これは非常に重要な問題ではないかと思っています。コメントを頂けると有り難いです。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 企業との連携については、工学部門が重要だと思っていますので、今のところ20数社との連携ということで、企業から得ている寄附、研究費は3,000万から4,000万円の間であり、なかなか億単位にはなっていない状況です。最初に私がポンチ絵でお示ししたように、やはり認知症と老化をターゲットとして工学を入れるというのは我々の特徴だと思っていますので、これから工学部門の充実を図っていくことにより、ロボット産業からの資金を増やしていきたいという計画ではあります。現在、室長をまだ募集しているところであり、もちろん基礎研究を軽視するわけではありませんが、工学と基礎研究と疫学研究と臨床研究、実験の研究をバランスよくやっていければと。その中で、いかに企業との連携を図っていくかということを模索していきたいと思います。隣にあいち健康プラザというのがあるので、データベースを製薬企業が欲しがっているということもあり、そういったところでの資金も経営に貢献するのではないかと思います。
 
○祖父江部会長
 データベースのところで何かお話はありますか。
 
○国立長寿医療研究センター新飯田研究所長
 今、6センターと製薬協との協議会があり、正直言って、製薬協はかなり認知症のデータベースを使いたがっています。そこに関してどのようなインカムが取れるかというのは、なかなか難しいのですが、他センターとの兼ね合いもありますので、それは考えていきたいと思っています。これは実際に会議の中で出てきたお話ですが、例えば会員制、企業に会員になっていただいてデータベースを使っていただくなどという話も実はあります。ただ、倫理的な問題もありますので、そう簡単ではありません。
 それから、先ほど先生がおっしゃったバイオバンクのバイオリソースのデポジットのことですが、これは売買することはできませんので、あくまでも実費を負担していただく形で研究者に分譲していく、これは実績があります。研究費の中から皆さんお支払いになりますので、そんな大きな金額ではありません、ほんの数百万円程度が、僅かですが、バイオバンクのお金を稼ぐという言い方はよくありませんが、そのようなことはあります。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。アカデミア対アカデミアは、バイオリソースもデータもどんどんやり取りできて、実費ぐらいはもちろん頂けるということですが、対企業や対外国となりますと、アカデミアについてもナショナルセンターについても高い壁があります。外国ですと、それが非常に重要な資金のリソースになっているわけですが、日本ではなかなかそれが進んでいないということがあり、今後、この問題を是非、一緒に考えていただけると有り難いと思っております。いかがでしょうか、ほかに何か。
 
○斎藤委員
 情報化のことで少しコメントを、そして現状をお伺いしたいのですが。老朽化したシステムと書いてあり、多分、仮想化をしてサーバーを減らしていらっしゃるのだろうなと、いろいろ御努力なさっているのだなということが、この短い文章から分かるのですが、システムは毎年のように変わっていく、そうすると、そろそろクラウドを考えていただいたほうがよろしいのではないかと思います。専門家を雇うと書いてあります。そのような専門の方がいらっしゃるのであれば、クラウドをいかすことが十分可能だと思いますので、それを御検討していただければと思います。もし、もう検討していらっしゃるのであれば、その状況を教えていただきたいと思います。
 クラウドにするとすごく安くなるという幻想があるのですが、そんなにすぐ安くはなりません。ただ、最新のものを使える、分散できるのでバックアップが非常に強固になりますので、今後、データをいかして、それを飯の種にしていこうということであれば、是非その辺りを強化していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター小森企画戦略局長
 正に、先生の御指摘のとおりです。私どもは、まずサーバーについても仮想化で台数を半減させております。それから、幾つかのネットワークがうちのセンターの中を走っているのですが、そのネットワークの特性に応じて、クラウド化したほうがより経済的でしかも安全なもの、そうでないものもあります、そういったものの仕分けをしながら、そういったことも含めて、しっかり取り組んでまいりたいと思います。
 つい最近まで当センターのITの専門職というものがありませんでしたが、特に俸給表みたいなものも作り、今まで大体4分の1ぐらいの値段で更新などもできるようになり、メーカーとの交渉力も非常についてきましたので、今後とも先生の御指摘をいかして刷新を図っていきたいと思っております。
 
○大西委員
 御説明をありがとうございます。外部資金のところで質問です。令和元年度の事業実績の30、31ページを御覧いただきますと、目標と実績の比較ということで、外部資金の獲得に努められたということが、数字として挙がっています。21億円という結構大きな数字になっていますが、31ページの損益計算書の中の経常収益の中に、これが全て含まれているという理解でよろしいのでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター小森企画戦略局長
 はい、損益計算書の中にも、もちろん収益は入れております。ただ残念なことに、研究費は間接経費で、これは通常3割と言われていて、3割部分は黒字として残りますが、残りの7割は、実際、研究に使われてしまうので、この頂いたお金が全部黒字になるということではありません。そうは言っても、多いときは1割から3割ぐらいは収益化する形で残るということです。
 
○大西委員
 そうしますと、この経常収益の中に全てばらまかれているということでよろしいのでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター小森企画戦略局長
 はい、そういうことです。
 
○大西委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 大西先生、よろしいですか。
 
○大西委員
 はい。
 
○祖父江部会長
 時間が少し超過しておりますが、この後、全体の振り返りといいますか、今まで質問しようと思ったけれどもできなかったなど、もし、そのようなことがありましたら、出していただけたらと思います。よろしいですか。
 
○福井部会長代理
 大変遅れて来て申し訳ありません。基本的には、規模が小さく、これだけの少ないスタッフで、私としては素晴らしいアウトカム、アウトプットを出されていると思っています。1つ伺いたいのは、アルツハイマーなどの研究のリーダーシップをとってきた柳澤先生の後の研究体制がどのようになっているのか、研究の継続性はどうなっているのでしょうか。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 前所長の柳澤の後任は、新飯田所長ですが、その後の研究体制は、バイオマーカーについては中村室長だったのですが、今、部長に昇格していただき、中村部長を中心にバイオマーカーの研究を行っています。それから、創薬をやっておりました河合部長も定年になりました。その下に室長がいますので、その室長に創薬を頑張っていただいているという状況です。中村部長は定年がきたのですが、定年を延長して、今は大きな研究費を取っていただきましたので、その5年間の研究期間に、しっかりとバイオマーカーを発展させていただくということで、やっていただいております。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。次の6年間をどう組み立てていくかという議論が、この後またあります。そのときに、今の話は非常に重要だと思いますので、またよろしくお願いいたします。
 それでは、最後に、法人の理事長と監事の方からヒアリングを行うことになっております。まず、監査報告書というものがありますので、現在の法人の業務運営の状況、今後の課題あるいは改善方針等について、法人の監事より御説明をお願いしたいと思います。
 
○国立長寿医療研究センター二村監事
 監事の二村です。監査報告書に関しては、財務諸表等の中の26ページに監事の意見として監査報告書が掲載してあります。今回、会計基準改訂により様式が変更されていますが、監査の結果のとおり、法人の業務は法令等に従い適正に実施され、役員の職務の執行に関しては、法令等に違反するような重大な事案はないというところです。
 課題に関しては、私たちも理事会や運営会議に出席させていただいて、収益をどう改善していくかをいつも見ているのですが、収益を上げる、あるいは費用を削減することに関しては、理事長をはじめ病院長の先生から、いろいろな策が出ていることは確認しております。ただ、その効果がすぐ出るかというのは大変難しいかなと思いながら、見守っているところです。以上です。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。今のことで、何かよろしいですか。それでは最後に、法人の理事長から、今までの議論を踏まえて、今後の課題あるいは方針等を含めて、お話を頂きたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○国立長寿医療研究センター荒井理事長
 まず、当センターのメインの研究テーマであります認知症に関しては、今年の国会で認知症基本法ができるのではないかと期待しておりました。ただ、今回のコロナ騒ぎで、今のところ成立していないという状況です。まず、委員長がおっしゃったように、認知症の基本法をベースに研究を発展させていきたいと思っております。
 認知症に関しては、基礎研究ももちろんそうですし、予防のための疫学研究、そして臨床的な介入研究、これを全てやっておりますし、ゲノム研究も含めて、認知症に関してはあらゆる研究を行っていると思いますし、工学的なアプローチも行っているということで、人材育成も含めた形で厚生労働省に御指導いただきながら、研究開発を進めさせていただいている状況です。ですので、政策に資する研究をしながら、しっかりと認知症の将来的な施策を見据えたシンクタンクとしての役割を果たしていきたいと考えております。がんや脳卒中、心臓病については基本法があるという中で、認知症についても、もうすぐできてくると期待はしていますが、データベース作りと認知症の登録制というのは、やはり今後やっていかなければいけないであろうと考えており、その中心は我々のセンターで担うべきであろうと考えております。
 ただ、がんだと一般的に症状が進行して病院を受診して手術なり化学療法を受けたり、脳卒中であれば急激に症状が現われて病院を受診するのですが、認知症の場合は、その潜在的な方をいかにピックアップして登録するか、これはかなりハードルが高いことだと思っております。それについては、今まで我々がやってきたサポート医であったり、初期集中支援チームであったり、地域の認知症疾患医療センターと連携してデータベースを作ること、これを次の中長期の目標にできないかと。まだそれは十分にこちらで議論をしていませんが、そういったデータベース作りが、まず大事であろうと思っています。
 その次は、フレイル、サルコペニアといった老年病態のデータベースといった形になると。今、遺伝子の解析も認知症が中心となっていますが、次のターゲットはフレイル、サルコペニア、その他の老年疾患であろうと思っております。当センターはまだまだ規模が小さくて、スタッフの数も限られておりますし、赤字であるということで、どんどんスタッフを増やすわけにはいきませんが、現状のスタッフの中でできるだけ優秀なスタッフを、もし必要な場合は補充していき、バランスよく、そして、我々がぬきんでているところには、しっかりと資金などを包括して、研究を発展させていきたいと考えております。
 
○祖父江部会長
 ありがとうございました。今、理事長からまとめの御発言を頂きました。先ほど、福井先生からも御質問を頂きましたが、今、特に力を入れていただいているのが認知症です。これは途中でも議論が出ましたが、オールジャパンの1つの非常に大きな核として、今後の次の6年間を。がんや循環器は、もう既にそのような法律などをベースにして形を作っておりますので、是非、そのような構築をやっていっていただけると有り難いと思っているところです。
 今日、拝見して、非常にプログレスがあったと個人的にも理解しておりますので、今後とも頑張っていただけたらと思っております。これで終わりますが、よろしいですか。
 今日はコロナの盛んな中、お出でいただき、ありがとうございました。非常に良い議論ができたと思っております。ありがとうございました。これで終わります。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室星野室長補佐
 それでは、これから10分間の休憩に入りたいと思います。よろしくお願いいたします。再開は16時10分からでよろしくお願いいたします。
 
  (国立研究開発法人国立長寿医療研究センター退室)

-休憩-

  (国立研究開発法人国立成育医療研究センター入室)
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室星野室長補佐
 次の審議に入りたいと思います。祖父江部会長よろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 今日はコロナの大変なときにお集りいただきまして、本当にありがとうございます。全体で2時間弱だと思いますが、議論を進めたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、国立成育医療研究センターの令和元年度の業務実績評価及び中長期目標期間見込評価、過去6年間のまとめについてですが、議論をお願いしたいと存じます。議論に先立ちまして、法人の理事長の五十嵐先生から、御挨拶をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
 
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長
 成育医療研究センターの理事長の五十嵐です。今日は高度専門医療研究評価部会にて、私どものセンターの業績を説明する機会を頂きまして、誠にありがとうございます。
 私どものセンターは、小児・周産期における高度先進医療と研究を担当しております。小児の難治性疾患の約6割は遺伝子の異常によるものとされております。したがいまして、センターを挙げて遺伝子疾患の原因究明、あるいは原因に応じた治療法の開発に取り組んでいます。
 一方、昨今の医療の進歩によりまして、従来でしたら亡くなっていた子供たちが救命されるようになってまいりました。長期生存も可能になっております。しかしながら、それに伴いまして、いわゆる医療的ケア児というコンセプトに入るお子さんたちが毎年増えており、昨年は約2万人にまで増加しております。こうした子供たちの長期的な管理や、新たな合併症対策なども必要になっています。それから、我が国の特徴の1つでもありますが、いわゆる低出生体重児が全出生の9.4%を占め、一時期に比べると少しだけ減りましたが、高止りの状態になっています。その結果として、子供の頃から生活習慣病や、発達障害などの中枢神経疾患の発症が増えており、学校にも非常に大きな影響が出ております。これらの新しい課題に積極的に取組むことも必要になっています。さらに、社会的な課題として、貧困あるいは虐待というのも非常に大きな課題で、これに対する研究、対応も必要と考えているところであります。
 我が国の小児医療は、これまで主として身体的疾患への医療あるいは研究が主だったと思います。しかし、人間、子供あるいは青年は、身体・心理・社会的な存在です。バイオ・サイコ・ソーシャルな存在だと考えています。このバイオ・サイコ・ソーシャルな面から子供や青年を捉え、支援していく、そういう医療あるいは保健を目指したいと考えているところです。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。非常に包括的な全体を見通すお話を頂いたと思います。それでは早速、一番最初の「研究開発の成果の最大化に関する事項」ということで、評価項目1-1、1-2に係る業務実績及び自己評価について議論したいと思います。やり方ですが、法人のほうから年度評価及び見込評価の順に、各項目について御説明いただいて、質疑応答に移りたいと思っております。説明時間は20分、質疑応答の時間は18分となっておりますので、できるだけ簡潔に説明を頂けると有り難いと思います。終了時間の1分前になりますとベルを1回鳴らします。終了時間になりましたらベルを2回鳴らしますので、よろしくお願いいたします。それでは、法人のほうから御説明をお願いできたらと思います。よろしくお願いします。
 
○国立成育医療研究センター松原理事・研究所長
 まず、評価項目1-1については、研究所長の松原から、そして1-2につきましては、臨床研究センター長の斉藤より説明させていただきます。まず評価項目1-1から説明させていただきます。令和元年度の説明資料の5ページ目を御覧ください。本年度のこの項目に関する自己評価は、昨年度に続きましてSとさせていただきました。主な研究成果としまして、3つ挙げていますので、順次説明させていただきます。
 6ページを御覧ください。まず最初の成果ですが、医師主導による再生医療の治験を行ったということ。これは、ES細胞に由来する肝臓の細胞を用いたヒトの移植を世界で始めて行ったという成果です。肝臓の再生医療製品の開発に、今後つながっていくものと考えております。そこに図とともに説明が書いてありますが、成育医療研究センターでは、以前より、ES細胞から再生医療等製品としてHAES細胞というものを開発してまいりました。そして2019年度は、いよいよこれを医師主導治験ということで、実際に新生児に対して実施いたしました。アンモニアの代謝異常症を持っている、生後6日目の新生児に対して実施いたしました。そこに絵が書いてありますが、この再生医療等製品のHAES細胞を、患者さんの門脈経由で投与したということで、非常に安全に実施することができました。この効果などについては、これから順次、解析が進んでいく予定です。反響が非常に大きく、国内外で新聞その他で報道されております。今年になりましてから、5月に第2例目も安全に実施しておりまして、今後、発展が期待されるものです。特に今回の新生児に関しましては、肝臓移植までの橋渡し治療として、これを続けていく予定です。
 2番目の成果は、7ページを御覧ください。これは、小児急性リンパ性白血病の治療抵抗性サブグループの遺伝子異常を明らかにして、その迅速な診断法を確立したというものです。がんでは最近様々な融合遺伝子が発見されてきており、それが予後、あるいは治療の方針の大きく影響するということは分かっておりますが、本年度、成育で見付けましたMEF2D融合遺伝子の陽性例が、小児の急性リンパ性白血病の2、3%を占めて、非常に予後不良なサブグループであることを明らかにいたしました。その真ん中の所に、全生存率が書いてありますが、矢印で示しましたように、この一群の方の予後が悪いということが分かりました。そこで、これに対する迅速な診断法を確立いたしまして、それをただ研究として発表するだけではなくて、衛生検査センターを開設いたしまして、これを国内の医療機関に希望があれば提供するということで開始いたしました。このことによって、国内の医療機関におけるこのタイプのリンパ性白血病の予後が大きく改善するのではないかと期待しております。
 続きまして、3番目の成果として、8ページを御覧ください。2011年度より、環境省の事業といたしまして、10万人の母子を対象に、様々な子供の健康と環境に関する全国調査、いわゆるエコチル調査というのが始まっております。この中で、成育医療研究センターは、医学的な子供の側面について、いろいろな評価を続けてまいりました。この2019年度に関しましては、そこの中央のカラムの一番上に書いてありますが、61種類の先天奇形の有病率を出生時データを用いて発表いたしました。これまで、こういった先天奇形に関する有病率については、国内でははっきりした統計はありませんでした。その中で、例えば二分脊椎症、口唇裂有病率は、従来言われたよりも低いということなどを報告いたしました。これは今後、日本の医療を考えていく、あるいは疫学的な側面を考えていく上で、大変重要な成果だと私たちは考えています。以上が令和元年度の実績です。
 続きまして、中長期の見込評価説明資料、資料2-6の5ページを御覧ください。こちらに関しまして、自己評価はやはり昨年と同様にSとさせていただきました。この5年間の中から主な研究結果を3つ挙げさせていただきました。
 6ページを御覧ください。小児難病に対するES細胞を用いた再生医療の治験開始ということで、先ほど御説明させていただきましたが、これが1つございます。ES細胞由来の肝臓の細胞を移植したということがありますが、この期間中、もう1つ大きな世界初のものがありました。左下を御覧ください。ES細胞から小さい小腸を作成することに、世界で初めて成功いたしました。これは現在、例えば薬剤の腸管の吸収に関わる様々な試験に使えるということで、企業からも共同研究の依頼がきております。将来的には治療にも結び付けたいと考えております。これらはいずれも、成育で開発して成育として臨床につなげていくという成果となります。
 2つ目の成果です。7ページを御覧ください。アレルギー疾患の発症予防研究です。この5年間の大きな成果としましては、このページの左側のカラムの所にあるように、卵アレルギーの発症の予防に成功いたしました。発症を8割減らしたということで、これは非常に社会的にも注目されまして、Lancet誌に掲載されたほか、様々なメディアでも取り上げられました。画期的な世界初の成果ではないかと思います。こういったことも踏まえまして、ランダム化比較試験を開始しております。2020年度内に650名の被験者リクルートを完了しており、今後、大きな研究成果の発表を考えております。
 それから、真ん中の下の所に、抗IgE抗体、妊娠マウスと書いてあります。抗抗IgE抗体を用いまして、出生前にアレルギーを抑えるというようなことを、動物実験でもう既にProof of Conceptとして実証いたしましたので、これを臨床に結び付けたいと考えております。
 それから、3つ目の成果として、8ページを御覧ください。希少・未診断疾患イニシアチブという事業を、全国的に開始しております。これは、診断のつかない難病に対して、次世代シーケンサーを中心とした遺伝子解析で診断を付けていこうというプロジェクトですが、その中で成育が非常に大きな役割を担っております。これまで全国から寄せられた検体の中で全く診断のつかない563の症例で、新規の遺伝病も含む発見など、診断を解明しております。これは研究的意義と同時に、こういった難病に悩んでおられる御家族に、非常に福音となったということを、研究成果として挙げております。以上、簡単ではありますが、評価項目1-1について、説明させていただきました。
 
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 引き続き、評価項目1-2について御説明いたします。資料2-2の令和元年度実績評価説明資料にお戻りください。9ページからです。自己評価は、令和元年度はSとさせていただきました。令和元年度内に承認申請ができた2例及びデータベースについて御説明いたします。10ページです。まず1つ目は、医師主導治験におけるムコ多糖症Ⅱ型中枢神経症状に対するイデュルスルファーゼ ベータ、遺伝子組み換え製品ですが、これを脳室内に直接投与するというものに対する申請です。絵にありますように、頭部に植込み型の脳脊髄液リザーバを装着して、薬物を脳室内に直接投与するものです。2016年から臨床試験を開始しており、6例のデータを集めて、令和元年度に承認申請することができました。令和元年度の3月17日に希少疾病用医薬品に指定され、同じく3月31日に薬事承認申請を行っております。治験が終了した後も、承認を得るまでは企業治験として第Ⅱ相試験を継続して、患者さんの要求に応えるということも実施しております。恐らく2020年度内に薬事承認、保険収載になると考えております。
 続いて11ページは、低亜鉛血症に対する医師主導治験による小児用製剤の開発の事例です。こちらも、以前から成育医療研究センターの中に作った製剤製造所において治験薬を作り、成育センターだけで治験を行って、企業にデータを導出したという例です。12例の患者さんに対して治験を行い、データの導出に関しても企業と折衝して、まず特許を共同で出願する。データについては、マイルストーンを作って、それぞれの達成度に応じて成育に収入が入るという形の契約を結ぶ予定です。もう契約書も出来まして、現在中身のチェック中です。こちらも2020年度中に薬事承認、保険収載となるということです。
 続いて12ページです。こちらはリアルワールドデータ関係の仕事でして、「小児と薬情報収集ネットワーク整備事業」というのがあり、以前より厚生労働省から事業費を頂いて実施しているものです。小児医療施設11施設、クリニック32施設の協力医療機関から、電子カルテシステム中の病名、処方、検査、こういったデータと、患者さんの同意が得られた問診情報を、ゲートウェイサーバを通してデータベースセンターに送り、そこに成育からアクセスしてデータの検索、抽出をすることによって、必要な利用したいデータを取ってくるというものです。
 具体的に申しますと、右の真ん中の絵ですが、医療情報として小児と薬情報データベースの中から情報を得て、さらに文献情報あるいはFDA、PMDA等の規制情報を専門家の検討会議にかけて、有益な情報として出すというところです。例えば添付文書では、小児の医薬品については多くのものが小児での使用経験がない、あるいは安全性が確立していない、こういった表現になっておりますが、果たして本当にそうかどうかというところをこのデータベースでチェックしたものです。降圧剤3品目、抗てんかん剤あるいはアレルギー用薬、こういったものについて調査したところ、中には500例近くの幼児、乳児に対する投与があったもの等がありましたので、これらのデータを成育センターのホームページで公開するとともに、厚生労働省からの医薬安全性情報に掲載していただきました。今後は添付文書の改程、あるいはもう少しデータが集まると、恐らく一変申請、公知申請、こういったものにつながるということで、小児への適応追加を目指して利用するという状況で進めております。
 続いて、第2期中長期計画の説明をさせていただきます。資料2-6の9ページです。自己評価はSとさせていただきました。目標と実績の比較に幾つか項目を載せていますが、中長期が始まった平成27年過ぎ辺りから、それぞれの項目が飛躍的に数を伸ばしております。これは、旧臨床研究中核病院に指定していただいた後に、いろいろなデータの洗い出しあるいは試験の洗い出しをして、掘り起こしも含めて支援した結果だと思っております。
 10ページを御覧ください。こちらは、そのうちの1つとして医療機器として承認され、保険にも収載された事例です。無心体双胎に対するラジオ波焼灼術の適応拡大についてです。これまで成育の周産期・母性診療センターを中心に臨床研究をしていた状況でしたが、これらのデータを使って承認申請できないかということで、PMDAあるいは厚労省の担当者と定期的に相談をし、当初は臨床試験が必要という話でしたけれども、各種データを論文化することによって公知申請の枠での申請が可とされ、それに対する情報をまとめて、平成29年12月に機器会社が承認申請をしたものです。そして、平成30年7月に承認され、平成31年3月に保険に収載されたものです。
 続いて11ページを御覧ください。先ほど御説明させていただいた小児用製剤の開発についてです。こちらについては、2016年以前から、製薬会社と剤形についての相談をしておりました。中身は低亜鉛血症に対する酢酸亜鉛です。小児の場合は、年齢とともに体重を考慮して投与量を設定する必要がありますが、既存のものは錠剤しかなくて、これを粉砕すると非常に飲みにくい味になるというところで、味の目隠しをするためにも顆粒剤が必要だということで開発を始めました。同じ頃、当センターの中に小児製剤ラボを設置して、この中で当センターの職員が治験薬の製造の準備をして、製薬会社とともに治験薬を製造し、当センターの病院で医師主導治験を実施いたしました。後の御説明は先ほどの令和元年度と同様で、データの有料による企業への導出、それから特許の出願というところで協力をさせていただいたところです。
 続いて12ページです。小児治験ネットワークの御説明をさせていただきます。こちらは、中長期の前の平成22年から設立を始めて、真ん中のグラフにありますように、平成27年から一段と治験の実施数等が増えている状況です。現在、53施設がこのネットワークに加入しておりますが、設立当時は27施設と半分ぐらいでした。施設数が増えても、左の表の中にありますように、小児施設については当初からそんなに増えていないのですが、大学病院あるいは国立病院、こういったところが非常に多くなっております。つまり、アカデミアあるいは企業からこのネットワークの有用性が評価されているというところかと思っております。
 さらに、治験の効率化のために幾つかの作業をいたしました。1つは、治験手続の統一あるいは電子化、そして中央IRBの設置です。こういったことをやりながら各施設の支援をするわけですが、支援といっても各施設の特徴がありますので、各施設にいらっしゃるCRC、臨床研究コーディネーターの育成をまず考えました。昨年度もそうなのですけれども、これで3年目になりますが、こういったCRCの養成の会議あるいは研修会をこのネットワークの中で開催し、それぞれ力を付けていただくことを目指しております。真ん中のグラフに211、213という数字がありますが、延べの臨床試験の数、施設の数、こういったものが増えておりますので、日本の小児医療の治験の発展に、少しでも寄与できているのではないかと考えております。以上で説明を終わります。
 
○祖父江部会長
 それでは、ただいまの御説明に対して何か御意見、御質問等をよろしくお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。何かございますか。深見先生、どうぞ。
 
○深見委員
 毎年、大変進展した面白い研究を伺って、とても面白く聞かせていただいています。前にも聞いたかもしれないのですが、ES細胞から再生医療製品HAES、このHAESというのはミニ肝臓、肝細胞という理解でよろしいのですか。尿素サイクル異常症の新生児に対して実施しているということなのですが、実際に肝臓の障害を持つほかの疾患にも適応ができるのかをお伺いしたいと思います。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所副所長
 深見委員、貴重な御質問をありがとうございます。梅澤から御説明させていただきます。HAESはES細胞を原料として作製した肝臓の細胞です。ですので、皆様方がよく御存じのミニ肝臓というものとは一線を画したもので、あくまでも尿素サイクル異常症、アンモニア代謝能といった薬効に特化させた肝臓細胞というように御理解いただければと思います。そういった意味では、ちょっとここから専門の言葉になってしまうのですが、ゾーン1、いわゆる肝臓の中にはアンモニア代謝能を有する細胞が分画でありまして、その細胞を製造したと御理解いただければと思います。また、ほかの疾患への適応拡大ということですが、肝臓の細胞は500ぐらいの機能がありますので、その中でHAESというES由来の肝臓細胞が持つ機能が役に立つ局面又は疾患があれば有効であると考えております。これは将来の話になるかもしれませんが、現在、肝不全等を念頭に置いて検討しているところです。以上です。
 
○祖父江部会長
 ほかにはいかがですか。大西先生、どうぞ。
 
○大西委員
 今の話の続きなのですが、その次のステップとして肝移植を実施すると書いてありますけれども、これはES細胞から作った肝ではなくて、生体肝移植ということになりますか。
 
○国立成育医療研究センター梅澤研究所副所長
 御質問ありがとうございます。こちらに記載しております「Bridge to Transplantation」というのは、HAESを投与することで肝移植までの橋渡しを行うという意味で記載させていただきました。以上です。
 
○大西委員
 もう1つ続けてよろしいでしょうか。次の小児急性リンパ性白血病のサブグループの遺伝子異常を明らかにされたというところなのですが、御説明の中で、この診断法を確立して公開されたということでもって、医療機関への提供が開始されたということで、その結果として予後が改善していくのではないかということを伺いました。それは、各医療機関で引き続き研究をされて、その成果としてそういうことが期待できるということでよろしいのでしょうか。

○国立成育医療研究センター松原理事・研究所長
 私からお答えさせていただきます。これまでは、小児の急性リンパ性白血病も、様々な表面マーカーとか既存の遺伝子検査などで分類をして、それだけである程度の予後を推定して治療を開始していたわけですが、このグループの融合遺伝子が陽性であるととても予後が悪いということが分かりますので、初期からそこを予想して非常に強い治療ができるということで、恐らく治療成果が上がってくるのだろうと現時点では考えております。将来的には、この融合遺伝子をターゲットにした薬剤とか、そういったものも研究としては進めてまいりたいと思いますが、当面は臨床の患者さんを御覧になっている現場のドクターに、早めにこういった予後の悪いものであるということを知らせてあげるということで、治療成績が上がるのではないかと考えております。
 
○大西委員
 よく分かりました。
 
○祖父江部会長
 ほかにいかがでしょうか。斉藤先生、どうぞ。
 
○斉藤委員
 単純な質問です。資料2-6の12ページの真ん中の棒グラフなのですが、平成30年と令和元年を比べると令和元年のほうが数が多いのに、なぜ棒グラフが下がっているのかが不思議だったのですが。
 
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 この棒グラフは左側の試験数を表していて、213と書く場所が悪かったのです。もう少し上に行くと、オレンジ色がもう少し伸びていて、42まで伸びているはずです。申し訳ございません、表現が悪かったと思います。
 
○斉藤委員
 それでは、右肩上がりが継続していると理解してよろしいのですね。
 
○国立成育医療研究センター斉藤臨床研究センター長
 はい、さようでございます。
 
○斉藤委員
 ありがとうございます。
 
○祖父江部会長
 では、深見先生、またお願いいたします。
 
○深見委員
 自分の興味でお伺いして申し訳ないところがあるのですが、卵アレルギーをなぜカボチャの粉末で防げるのかというところがちょっとわかりません。今年度のではないのですが。卵のアレルギーは、アレルゲンが大きくて未消化のものが抗原性が大きくてなるのかなというのが私の理解だったものですから、そういった大きなタンパク質を消化できないことによるアレルギーを、カボチャの粉末でどうして防げるのだろうというのがすごく疑問です。すみません、ちょっと教えていただけますか。
 
○国立成育医療研究センター松原理事・研究所長
 お答えさせていただきます。7ページの所です。成育でのアレルギー疾患の研究者のこれまでの研究によりますと、卵アレルギーというのは従来、卵を赤ちゃんに食べさせることによってアレルギーが生じるのだと信じられていたのですが、実はそうではないと。卵を食べる前に、環境の中に卵のアレルゲンが非常にたくさんある。家の中で調べてみても、卵のアレルゲンがいっぱいなのです。ですから、食べる前に皮膚から感作されて、そこでアレルギーを持ったところに卵を食べてしまうと、非常に強い症状が出てくると。要するに、食べる物に対しては、早期から食べさせることによって、むしろアレルギーを発症しなくなることを見いだしたということです。
 カボチャの粉末というのはコントロール、プラシーボに近いもので、カボチャ自身に何か作用があるわけではありません。何も食べさせないと被検者に分かってしまいますので、卵を混ぜないカボチャの粉末だけを食べていただいて、それで実際どちらに分類されたか分からないように試験を行ったということです。
 ですから、皮膚を通じて卵の抗原に感作される前に経口摂取するとアレルギーを発症しなくなるという、これまで信じられていた従来の考えとは全く逆の発想で防止できたということです。
 
○深見委員
 表の解釈を間違えていて、カボチャがコントロールというようには理解していなくて、カボチャと合わせることによって下がるのかなと思ったので、分かりました。
 
○福井部会長代理
 戦略かつ重点的な研究開発の項目のところで伺って恐縮ですが、再生医療とかゲノムという流れの中で素晴らしい成果を出されていると思いますが、この流れとは全く違ったテーマや、研究のアイデアを持っている人を育てるといった仕組みはあるのでしょうか。非常に大雑把な質問ですみません。
 
○国立成育医療研究センター松原理事・研究所長
 御質問ありがとうございます。今日は代表的なものを御紹介させていただきましたが、成育ではこれ以外にも、例えば内分泌疾患、特に性分化疾患、そういったものをたくさん全国から検体を集めてやっております。そういった中で、実際に病院の内分泌で臨床だけやっている先生も結構興味を持ってくださって、臨床の合間に研究所に来て論文を書いたりということをやっていただいております。アレルギーに関しても、病院でアレルギーを実際に診ているドクターが結構興味を持って、研究に足を踏み入れてくれるということもやっております。あとは、よその大学からもそれぞれの分野に応じて勉強に来たいという方がいらっしゃいますので、できるだけそういった臨床のバックグラウンドを持っている人に研究に興味を持っていただけるように、様々な研究部でそういった人たちをエンカレッジするような受入れをしたり、トレーニングをしたりしております。
 
○祖父江部会長
 ほかにはいかがでしょうか。私から1つだけ、先ほど理事長先生からも、いわゆる長期的な予後というか経過観察というのは、今後必要になってくるだろうということでした。前のときもちょっとこれに触れた質問をさせていただいたことがあるのですが、今、非常に先端的な介入的治療をされておられて、非常にいい成績を出しておられるので、素晴らしいと思いますが、例えば今の肝細胞にしても、胎児のいろいろなインターベンションにしても、それからムコ多糖の例もありましたし、今のアレルギーもあって、そういうものの長期予後のフォローアップというか、その辺はどのぐらいまでどのようにやられているのかというのを、もしあれば教えていただけると有り難いなと思います。
 
○国立成育医療研究センター松原理事・研究所長
 御質問、どうもありがとうございます。成育では成育コホート研究というのを2つ走らせており、主に成育で生まれた方を中心にどういった病気を発症するのかということを、2つの研究グループで追跡しております。その中から、つい最近ですと、例えば小さい頃からペットを飼っているとアレルギーになりやすいのか、なりにくいのかということの成果、これは最近発表してマスコミに取り上げられましたけれども、実は小さいときからペットを飼っていてもアレルギー発症には差がないという結果でした。あるいは、小さいときから水泳をやっているとアレルギーにいいのではないか、喘息を発症しにくいのではないかということについても追跡をしてみたら、実は全然差がなかったとか、抗ヒスタミン剤を子供の風邪のときなどに処方すると、熱性痙攣を起こしやすいということがこれまで言われていたのですが、コホートの調査をしてみると実はそんなことはないとか、そういったこともあきらかになってきております。いつまでそういったお子さんたちを追跡できるか分からないのですけれども、できれば成人して次の世代をもうけるまでの間、このコホートの研究を続けていきたいと考えております。これはナショナルセンターとして、とても重要なミッションだと考えております。
 
○祖父江部会長
 そうすると、今、胎児期まで遡ってやっておられるいろいろな治療がありますよね。そういうものも、今後は今のような形でフォローしていこうというスタンスでやっておられると理解していいですか。
 
○国立成育医療研究センター松原理事・研究所長
 もちろんです。
 
○祖父江部会長
 分かりました。
 
○国立成育医療研究センター松原理事・研究所長
 胎児で治療された方が、生まれてからその後、本当に正常に発達を遂げていくのかと、これも重要なフォローアップの項目だと考えております。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございます。
 
○福井部会長代理
 もう一点だけ伺います。今のコロナのこともありまして、特に子供さんはマスクをして手洗いをして、風邪の患者さんがものすごく少なくなったと聞いています。先生方のこの研究の中に感染症に関わるテーマは余り入っていないようですが、感染症に関して研究は続けられているのでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター松原理事・研究所長
 研究所の中にも感染症を研究しているグループは2つあります。1つはEBウイルス感染のグループです。これは全国のEBウイルス感染の検体を一手に引き受けて解析しておりますが、そちらで様々なEBウイルスに感染しやすい遺伝子のタイプを見付けたりとかしており、そういった研究をしております。もう1つは、サイトメガロウイルスです。これは妊娠期からの先天的な感染、母体での感染が重要になってきますが、例えば難聴との関連もありますので、これに関して専門的に調べているグループがあります。ただ、残念ながらコロナに関しては、研究所ではやっておりませんで、むしろ非常に臨床的な側面を、病院の感染症専門のドクターが臨床研究として進めているという状態です。
 
○祖父江部会長
 ほかにはよろしいでしょうか。これもちょっと前に少しお聞きして、まだ私自身が十分理解できていないところがあるのですが、確か先生から発達障害とかそういう、小さい頃は小さい頃で問題なのですけれども、成人化してからも非常に問題になるケースが実は大きな問題で、今至る所にあると思います。それの対応というのは、ちょっと先生方のテーマの中には、今の質問とよく似て入っていないようにも見えるのですが、その辺は何か、次の6年間のテーマの中に入ってくるのかもしれませんけれども、その辺はどうされようとされているのか教えていただけると有り難いなと思います。
 
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長
 理事長の私からお話いたします。非常に重要な国民的な課題だと思います。ADHD、それから読み書き障害とかアスペルガー症候群、これに悩んでいる御家族は本当に多いと思います。私どもの心の診療部で積極的に、医師だけではなくていろいろな職種の方が対応して、それに応えるようなことをしております。それから、読み書き障害というのも結構多いのですが、これも特殊な読み書きのトレーニング方法の本等も作って広めたりもしております。
 ただ、残念ながら研究者自身が非常に少ない所で、ちょうど精神科と小児科の両方のセンスが必要だというところもありまして、なかなか臨床家を育てるのに精一杯で、脳のどこに障害があるとか、そういうところまで研究するところまでは、まだ十分できておりません。これについては、精神・神経センターの研究がありますので、時々コラボレーションをしてはいるのですが、御指摘のように非常に大きな問題ではあるのですけれども、残念ながら対応は十分ではないという、そのような状況ではないかと思います。
 
○祖父江部会長
 確か同じような質問を前にもしたことがあったので、ちょっと重複するかもしれませんが、この後、次の6年間をどうするかとか、次のテーマをどう据えてチャレンジしていくかという話が、次のステップとして出てまいりますので、そういう非常に重大だけれども、なかなか十分にやられていないというところを、是非考えていただけると有り難いと思っておりますので、よろしくお願いいたします。いかがでしょうか。何かほかにはございますか。先ほどベルが鳴ったような気が、鳴りましたか。どうもすみません。ちょっと時間が超過してしまいまして、失礼いたしました。
 それでは、これは大体これぐらいにして、次に移りたいと思います。次は、その他の業務の質の向上に関する事項ということでして、評価項目1-3から1-5、「医療の提供等、その他の業務の質の向上に関する事項」について議論したいと思います。今と同じように、2つの資料を行き来しながら御説明いただくということになると思いますが、よろしくお願いいたします。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 では、病院長の賀藤から説明させていただきます。まず、今年度の実績評価説明資料、資料2-2の13ページを御覧いただければと思います。1-3、医療の提供に関する事項においては、自己評価Sを付けさせていただきました。
 14ページを御覧いただければと思います。先ほどから話題にはなっておりますが、実際に、肝移植前の新生児期に、ES細胞から作った肝細胞を移植するということを行ったのは、昨年度の10月でした。御質問がありましたように、これは一時的に抗アンモニア血症を下げるという作用がありますが、それがずっと一生続くということは現在ではまだ難しいために、体重がある程度、6キロ以上になったときにドナーから肝臓を頂いて、生体間移植をするということに現在しております。そのドナーからの肝移植を今年の3月に行って、それでもって退院したということになっておりますので、ここに書かせていただきました。
 実際は、ES細胞から作った肝細胞を門脈に、ここの写真にあるように手で入れるような形になるのですが、結局はどのくらいの細胞の数を、どのくらいの濃度で、どのくらいのスピードで入れるかというのは、塞栓を起こさないように、効果が得られるような形で入れなくてはいけないものですから、その前には当然動物実験を行っております。また、余剰肝、頂いたドナーからの肝臓で余った肝臓を保存しておいて、その肝細胞を使ってやるということを、実際は2013年、14年とやっておりましたので、その経験がいきて、昨年度、実際にES細胞から作った肝細胞移植を行ったということです。
 15ページ、胎児治療ですが、胎児の出生してからすぐに手術が必要な疾患に関して、実際に治療を開始しております。1つは左側にあります横隔膜ヘルニア、これについては国際臨床試験をやっておりまして、昨年度、明らかに効果が高いと、もう試験はおしまいでいいでしょうということで、もうおしまいになりまして、今後、保険承認を受けて、申請をしていく予定になっています。横隔膜ヘルニアのこういう試験をやっておりましたので、常時うちのNICUには2人から3人、多いときには4人ぐらいの横隔膜ヘルニアがいるという状況で、日本で一番多い状況になっています。
 次に、今、早期安全性試験に入っているのが重症大動脈弁狭窄症、胎児期にバルーンで大動脈弁を広げるということを開始しました。これをやらないと、単心室になってしまう、逆に左心低形性症候群という病気になってしまい、その後の予後が余り良くないということで、それにならないような予防策ということで、大動脈弁の狭窄を広げるバルーンを、今、早期安全性試験として、全国から患者を待っている状況です。
 次に、開始したばかりなのが脊髄髄膜瘤の胎児手術、これは直視下手術になります。それの早期安全性試験を阪大と一緒に共同研究として開始、これはしたばかりです。
 次に16ページにいきますと、昨年、遺伝子細胞治療推進センターというものを開設しました。御存じのように、小児の疾患というのは、ほぼ6割から7割が遺伝子の病気ですが、その遺伝子治療というものが、まだ日本では世界と比べて大変遅れているという現状がございましたので、その遺伝子治療を日本に定着させるためのワンストップ、いわゆる企業から見てワンストップで全てができるというセンターがあればということで、昨年これを開設しました。ということで、これは全て臨床研究所と一緒になって、病院と三位一体となって作ったもので、企業との共同試験、又はそれに関して保険診療に求めていくシステムというものを全て、そこでワンストップでできるセンターというものを開設しました。開設したときに講演会を行ったのですが、予想以上の多くの企業から御参加を頂きまして、大変盛況で自分たちもびっくりしています。現在はいわゆるキムリア、CAR-Tの実施はもうしておりますが、あとは血友病の遺伝子治療の治験というものを始めております。というので、今後はこういう日本における遺伝子治療、世界からちょっと遅れた遺伝子治療というものを、日本に定着させているため、このセンターを活用して実施していきたいと思っております。
 次に17ページですが、1-4、人材育成に関する事項、これは自己評価Aを付けさせていただきました。
 18ページにいきますが、リーダーとして活躍できる人材の育成というところで、今年は1月に当センターの腫瘍外科の診療部長が、千葉大の小児外科の教授に選任されております。ということで、毎年のようにアカデミア、大学、又はそれに準ずる施設へ人材を輩出している状況です。また、下段にありますのは、どのくらい臨床研究というか、学会発表に行っているかということを、数字で表したものなのですが、小児科学会の口演演題、又はポスターの発表というものを、都内の主な施設と比べさせていただきました。数字は演題数とパーセント、これは全演題数に対する割合ということになりまして、最近ずっとそうなのですが、当センターは、日本小児科学会の学術集会において、口演演題、又はポスター演題については、最も多い数を発表して、自分たちの臨床研究というものを社会に認めてもらう活動をしています。
 次に19ページですが、毎年、小児医療の講習会ということで、コロナの今の時期ですが、今年もやる予定にしています。「成育サマーセミナー」というものを実施しております。これは主に初期研修医、又は小児科の専門医を目指す先生方を、若手を対象にしたサマーセミナーで、大変評判もよく、毎年多くのドクターに来ていただいています。今年は今度の土日にWebで開催するように提案しているのですが、今のところ100人以上から御応募を頂いて、いわゆる若手の小児科医を育てるためには、大変貢献しているのではないかと考えております。
 20ページですが、これは新生児科のドクターたちが一生懸命にやっている、いわゆるシミュレーションによるセミナーで、蘇生の訓練のセミナーをやっています。「NeoSim-J 2019」を昨年度やりました。小児医療の場合ですと、蘇生でPALSというのがあるのですが、それよりも少しハイレベルな、もっと専門的な新生児の蘇生に関しての訓練を行うということです。これは国内では唯一のもので、新生児医療に特化して、様々なテーマを扱うシミュレーション、シミュレーターを使ったセミナーをということで、大変多くの、全国から毎年20から30名の先生方に来ていただいて、それでもって座学から実際にやってみるということまでやっております。なぜこれが必要かと言うと、とにかく新生児という特殊領域での蘇生ということで、なかなか経験することが最近なくなってきたということがあります。これをきちんと、基本的なものから応用までシミュレーションを使った理論、又は実践からということで、新生児の蘇生に関しての勉強会をさせていただいています。
 次に21ページ、1-5、医療政策の推進等に関する事項ですが、これは自己評価Aということにさせていただきました。
 22ページ、まず、小児治験ネットワークの活動は先ほど御説明しましたので、ここでは省きまして、小児治験ネットワークと小児科学会とのコラボレーションに関して、ちょっと説明させていただきます。小児医薬品の開発のために、小児領域における新薬開発促進のための医薬品選定等に関する研究班というのが、これは小児科学会が受けるという形で、組織作られたのですが、全部の研究事業やその全体的な裏方は、小児治験ネットワークが小児科学会から委託される形で全部行っております。それによって、海外の小児治験ネットワーク又は企業とのコラボレーションというものを全部、一応小児科学会の下で、小児医薬品のネットワーク、開発を今行っている状況で、今オンゴーイングでこれをやっております。
 次に23ページ、これは先ほどのウイルス感染ではありませんが、今、国として行っている薬剤耐性菌、アクションプランというものが、厚生労働省を中心としてやられていますが、うちの感染症科感染制御部が中心となって、全国レベルで今、この活動をしています。左側の一番目の所ですが、いわゆる小児医療施設協議会いうのがありまして、そこで中心となって、多剤、カルバペネム系の抗菌薬使用量をもっと減らそうということで運動をやって、実際に少なくなってきて、それとともに緑膿菌の感受性が良くなってきたということの証明をするグラフです。
 あとは、一番顕著なのは、一番右側の[4]なのですが、これは幾つか、うちの感染症科のドクターが主任研究者の研究班でやっていることですが、主な3か所、府中、あとは姫路と世田谷で、医師会の先生と一緒にコラボしまして、風邪と言われたのに、どの抗生物質を処方していますかということを、お互いに見える化しました。お互いに風邪と思っているのに、どういう処方をしているか、どんな種類の抗生物質を使っているかを見える化したところ、それだけで、これが顕著で、小児科と内科に分かれていますが、各々反省があってということなのですが、風邪に対する抗菌薬の使用量が大分減ってきたということを証明することになりました。ただそれだけで、風邪に対する抗菌薬の使用量が減ってきたということです。いろいろとそのほかこともやっているのですが、この研究を中心にやった神戸・姫路でのことが、一応表彰されています。
 次に1-5、24ページです。「もみじの家」というのがあるのですが、そこで初めて昨年度は小児の緩和医療というものを実践しました。どうしても病棟の中になりますと、面会や食事の制限がありますので、もみじの家に移ってもらいまして、家族と一緒に過ごす、兄弟と一緒に過ごす、食べたいものはお母さんが作って食べさせてもらう、いろいろなことをやっていく、散歩にも行けるということ、まだまだですが、やっとそれが実践できまして、昨年はお二人の患者さんにおいて、小児緩和ケアを推進することができました。これは御家族に、また兄弟にも大変喜んでいただいて、大変よかったと思っています。
 次に、資料2-6の中長期の目標期間見込評価説明資料について説明させていただきます。13ページ、1-3の医療の提供に関する事項ですが、これは自己評価Sを付けさせていただきました。
 14ページですが、胎児治療というものを日本に定着させたのは、やはり大きな貢献であろうと思っています。中長期前ですが、双胎間輸血症候群、胎児胸水に対しての保険収載、先ほどの無心体双胎に対する保険収載も当センターが中心となって行って、当然、日本における胎児治療の多くのものを成育で行って、全国からの紹介を受けております。先ほど申し上げましたような、今度は胎児自体の治療、生まれてから手術しなければいけない胎児の治療を、胎児期に行っていくということを、今、推進しています。
 次に15ページ、これは、やはり当センターの特色である臓器移植ということになります。肝臓、腎臓の移植をやっておりまして、昨年度からは小腸の移植も開始しました。まだ実際には行っていませんが、昨年度11月に小児心臓移植の実施施設として認められておりまして、これで肝臓、腎臓、小腸、心臓の臓器移植の認定施設となっております。特に肝臓移植に関しては、毎回この評価のところで御紹介しておりますように、世界もトップの症例数と生存率を保っておりまして、この技術を東南アジア各国、またイスラムの諸国に何とか持っていきたいと思い、海外の各施設に教えに行っておりまして、今ではインドネシア、特にインドネシアでは、もう自立して肝臓移植ができるところまでになりました。一方、臨床研究としては、先ほどから御紹介申し上げておりますヒトのES細胞由来の肝細胞の移植まで、今持っていったというところです。
 16ページ、ここに書いてありますように、小児がん拠点病院という事業に参加させていただきまして、名実ともに日本でトップの小児がんの医療施設となりました。左側には患者の数、左側の下段には小児の造血細胞移植数の増加、昨年は39という数ですが、これでも日本でトップという、一番多いという数になります。無菌室は2つでは足りなくなりまして、4つで今は動かしています。あと、小児がん新規診断数は、2018年、2019年もそうですが、ダントツで日本で成育がトップということになっています。
 また、小児固形腫瘍においては、90%以上を成育が今受けて診断をして、病理診断を受けているという状況です。これには大学病院レベルでも診断がなかなか難しいものがときにあり、成育で行った中央診断によって、診断名が悪性から良性、良性から悪性に変わるということが20%ぐらい起きていますので、これは大変大きな貢献だろうと思っています。今後は、やはりそういう大変予後が良くなってきました小児がんの患者の長期のフォローアップをどうしていくかということが、大きな検討課題の1つであろうと考えています。
 次に17ページで、人材育成に関する事項ですが、これも自己評価Aとさせていただきました。
 18ページ、これは同じようなことですが、毎年1人か2人はアカデミア、又は世界的な組織へ人材を送っているということと、小児科学会においては、日本で一番の口演演題数、ポスター発表数であるということですので、今後とも学会の発表において、若手の教育、臨床研究をやっていくことの重要性を教えていきたいと思っています。
 次に19ページですが、1-5、医療政策の推進等に関する事項では、自己評価Aということです。
 20ページ、ここでどうしても一番強調しなければいけないのは、やはり「もみじの家」と言われる医療的ケア児とその家族をサポートする施設を作って、目に見える形で社会に示したということだろうと思います。こういうように医療が進歩してきたことによって、長寿社会になりましたが、同じことが小児で起こっている。小児も死ななくなりましたが、完璧に治ったのではなく、障害というもの、自宅で医療を行いつつ長生きする子供がいるのだと、それが増えてきたのだと。そのこと自体は医療の発達なのですが、そのことによって死ななかったことが、本当にその家庭にとって幸せだったのかどうかということに、最先端の医療をやっていると大きな疑問を持ってきました。そこで家族をサポートしたいということで、こういう施設を民間からの100%の寄附で作ることがかないました。逆にこういう施設を作ることによって、社会に医療的ケア児がいる、この人たち、家族をサポートしなくてはいけないということを強調することができて、現在、医療的ケア児という言葉が、いわゆる社会的にも普通に載るようになりましたし、このサポートシステムが社会として何とかしなくてはいけないということになってきているのだろうと思います。
 次に21ページです。これは余り目立たないのですが、今でも日本の小児の死亡のベスト1、2、3位を占めるのが事故です。小児の事故というものは、起こると大抵はお母さんが悪い、自分が悪いということになっていますが、これはとんでもないことで、これは違う、親が悪いでも誰が悪いでもない、これは社会の責任である、企業の責任であるということを示さなければならないと考えています。そこで、これは消費者庁の事業ですが、ネットワーク事業というのがありまして、事故の件数、何が何でそういうことが起こったかということを、毎年報告しております。大抵、日本の65%のデータを報告しています。
 22ページですが、妊娠と薬の情報センター、小児慢性特定疾病情報センターというものを立ち上げて、小児慢性特定疾病の情報供給、あとは妊娠においてどういう薬が大丈夫かということを作って、それで全国の妊婦さんの不安に応えてきたということがあります。
 最後ですが、23ページ、内閣府のAIホスピタル事業というのに参加させていただいて、今後、小児医療において、小児病院において、どういうAIを応用して、小児の医療にとって、周産期にとって、AIを使ったからこそ、温かい医療をどのように供給できるかということを、今、実際にやっている最中です。AIを使った診断、又は在宅医療のホウケンということを今やっている最中です。以上です。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。ちょっと時間が少なくて申し訳ありませんでした。いかがでしょうか、コメントあるいは御質問はございますか。花井先生、どうぞ。
 
○花井委員
 直接どの項目ということではないのですが、例えば遺伝子治療のセンターのようなものを設置したりして、今は小児難病と言いますか、特定ゲノムによって分かっている難病などの遺伝子治療に非常にスポットライトが当たっています。その反面、この前もいろいろな患者会とコミュニケーションをしていたところ、診断がつくまでに時間が何年掛かるかというのが、欧米に比べてかなり長いという現状があるということでした。難病法のほうも330あるのですけれども、小児のうちに診断がついていなければおかしいのに、大人になってからやっと診断がついたと。小児難病というか、遺伝性の疾病であれば、それも病気によってすぐに症状が出たりとか後から出たりとか、いろいろややこしくはありますが、例えば、成育医療センターで初めて診断がつくという例は多いものかどうか。それから、全国的に診断がつかない患者さんに対して、成育医療センターとして診断につなげていくような試みがあるのかどうか。この2点について教えてください。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 先ほど、研究所の松原先生が言っていました、IRUD-Pという遺伝子の網羅的な解析でやっていくシステムがあります。日本全国からの診断がつかない、何だろうということには、遺伝子診断を全部無料でやっていくシステムがありますので、それを応用していただけると、遺伝子レベルでの診断ができる。全ての疾患がそれで分かるわけでもないし、100人IRUD-Pに頂いても、多分診断できる人はまだまだ半分以下だろうと思っていますが、そういうシステムは整っていますので、それをやっていくことが一番大切かと思っています。とにかく、気軽に遺伝子診断ができるシステムだということです。
 それから、新しい疾患かどうかというのはあれなのですけれども、免疫不全と思っていた患者さん、乳幼児期、赤ちゃんで免疫不全で、下血などで消化管の出血があり、消化管の下血ばかりしていて、クローンか潰瘍性大腸か診断がつかなかったというのがあります。そういう患者さんの遺伝子検索をしたところ、遺伝子がモウカっていた免疫不全症候群であることが分かりました。これは、骨髄移植をすれば全て治ってしまう病気だということが分かりました。それは、1つの疾患開発チームが確立しています。
 そういうことで、何だろうと思って遺伝子を早く調べてみたら、医者が想定しているものとは別の病気だったということが分かるようになってきましたので、少しは改善していけるのかと思っています。
 
○国立成育医療研究センター松原理事・研究所長
 ちょっと追加させていただきます。資料2-6の8ページを御覧ください。これは、研究開発に関する事項として御説明させていただいたのですが、ちょっと時間が足りませんでした。ここに、「希少・未診断疾患イニシアチブ」と書いてありますが、花井評価委員がおっしゃったような、診断がつかなくて困っている患者さんの検体を、全国から送っていただいて、遺伝子を中心に調べます。特に、子供の難病の半分以上は遺伝性疾患と考えられますので、それで診断をつけるというプロジェクトを動かしてきています。これについては、毎年数億円のお金をつぎ込んで診断を提供しております。まだまだ予算が少ないので、年間に受けられる検体数は限られていますが、こういう形で診断がつかない、何年も診断がつかない、という患者さんの診断をつけるというプロジェクトを続けてきております。
 
○花井委員
 IRUD-Pにはすごく期待していますが、例えば周産期というか、これだけ何となく診断をつけて、治療法も確立した血友病に至っても、確定保因者について産科で全然そこの対応がよく分かっていない。いわゆる伴性、X染色体の劣性遺伝であるということは教科書に書いてあって、一応家族歴のある人は、「実は父がヘモフィリア患者です」と言ったりすると明らかに分かりますが、ただ、それでもまだ頭をつかまれたりとか、障害を残したりという例があります。
 もちろん、自分たちは5,000人の疾病の患者だから、「なんでそんなことが分からないんだ」と思うのですが、それが300人ぐらいの希少な疾病になると、みんなが知っているわけではない。そうすると、周産期の産科、日本の場合はクリニックで生まれている場合が多いので、そういう所でこういうのにアクセスできたり、何かつながっていくようなシステムがあればいいと思います。血友病ですらできていないのだから、ほかの難病はえらいことになっているのではないかと思うし、そういう声も聞いています。
 余り厳しいことを言うと、今度は産む所がなくなるのです。「そんな難しい患者さんはうちには来ないでください」などということになりますので、そこのバランスが必要なのですが、そういうのが早期診断とか治療につながるもっとプライマリーなレベルでの啓発などができればと思っています。成育医療センターにはそういうことを期待しています。
 
○祖父江部会長
 1つよろしいでしょうか。今のお話ともちょっと絡みます。あと半年ありますけれども、この6年間、これは大変素晴らしいことだと思います。胎児治療というこの治療法の、日本の3分の1を先生方の所がやられているということで、定着させたということだと思います。それから臓器移植、特に生体肝移植も、全国の70%を実施していただいているということで、これも本当にアウトスタンディングだと思います。それから、後に説明された小児がんとか固形がん、これは診断ということになっていますが、いずれも素晴らしい成果だと思います。こういう疾患は日本で1か所、先生の所のようなアウトスタンディングな所があって、全国から患者さんが来られて治療をするということで非常に意義が出るというか、治療効果が出るというか、非常にリーダーシップを取れる疾患の治療だと思います。
 もう1つ、今の質問とも絡むのは、全国の均てん化ということです。1か所に患者さんを集めれば治療できるという疾患と、それから全国津々浦々にあって、なかなか1か所に集めてやっていくことができないようなものがあります、先ほどの発達障害などはその例かもしれません。そういう全国津々浦々の治療に結び付くような均てん化ということについては、非常に重要な段階に来ているのではないかと感じます。その辺のお考えがあればお聞かせください。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 私どもがそのように考えていたわけではないのですが、全国から研修をしたいと言って一番来てくれるのが心の診療です。読み書き障害又は自閉症の診断とそのフォロー、あとは、そういう家族関係についてということでは、大変多くの施設から、実際に研修に来たいということがあり、今はなるべく受けるようにしています。やっと読み書き障害とか自閉症については、東北と九州でもやってくれる所が増えてきました。沖縄県でもやってくれるようになりました。そのような形で今は広めています。とにかく、なるべく多くのドクターに知っていただかないといけない、早期診断、早期治療が大切なところでもあるということが最近分かってきましたので。今でも断らざるを得ないぐらい来ていただいています。その他、外科系は技術を学ぶということで、それはどの施設からも来ていただいています。
 もう1つは、最近少しやり始めたのですが、地方にいる小児科の先生が何かを勉強したいときには来ていただいて、その代わりうちの若手を派遣します。そうすると、地方で小児科が2人しかいないような所でも、若手ですので行けば何かの足しになるだろうということです。その代わり、うちに来て半年間勉強していただいてから、また帰っていただきます。そういうことで、小児の専門医療を実際に知りたい、腎臓なら腎臓、心臓なら心臓、あと内分泌なら内分泌と、地方にいても勉強できるシステムということで、今は2つのビームラと一緒にやり始めたところです。これを、なるべく地方の負担にならないような形、うちから若手を派遣しながら、その間に来てもらうということで今やりつつあります。今は少しずつ契約が進んでいるところです。
 
○祖父江部会長
 福井先生、どうぞ。
 
○福井部会長代理
 いつも違う側面からの質問で申し訳ありません。がんだけではなくて、日本の小児医療全体のリーダーシップを取られていて素晴らしいと思います。患者さんや家族の満足度などのデータは取られているのでしょうか。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 患者満足度調査というのは毎年しています。やはり至らない点もありますし、すごく高い評価を頂くところもあります。それは、患者満足度調査をさせていただいています。
 
○祖父江部会長
 ほかにはよろしいでしょうか。ありがとうございました。時間が超過しておりますので、ちょっと先を急がせていただきます。
 続いて評価項目2-1から4-1、「業務運営の効率化、財務内容の改善及びその他業務運営に関する事項」についてです。先ほどと同じ流れで、ただ時間が全体で14分、8分、6分ということですので、よろしくお願いいたします。説明をお願いいたします。
 
○国立成育医療研究センター桐生企画戦略局長
 私から説明させていただきます。資料2-2、令和元年度のほうを御覧ください。25ページ、2-1の業務運営の効率化です。自己評価はBとさせていただきました。26ページでは2点取り上げました。1点目は、医薬品や医療材料等の経費削減です。棚卸資産を縮減させたり、医薬品や医療材料の購入に関しては、企業との交渉やベンチマークシステムを導入して、経費削減に努めました。2点目は、下の働き方改革です。これに関しては、特に医師の負担軽減等を図りました。経営的には支出が増えるところもありますけれども、フェローやレジデントと言われる非常勤医師の常勤化を進めました。また、病棟薬剤師の配置、さらには医師事務作業補助者の増員等、一昨年度に続けて昨年度も充実させています。
 27ページは、財務内容の改善です。自己評価はBとさせていただきました。28ページで3点ほど挙げています。
 [1]は、大規模建物整備計画の作成ということで、場当たり的な整備にならないように整備計画を作成しています。特に老朽化してきているということで、重要な計画を立てさせていただいたと考えています。右上の[2]は、外部医療機関からの検体検査の受託です。従来は研究ベースでいろいろな検体を受け取っていましたが、経営改善も含めて有料の検査を導入し始めています。大きくは2点あります。1つ目は衛生検査所を開設したということ、2つ目は先進医療の申請。申請を1件行っています。昨年度申請して、承認を頂いたのは今年度になってからです。[3]は、健全な財務内容です。平成28年度から4期連続の黒字決算を達成させていただきました。
 29ページは、その他の事項です。これは、自己評価をCとさせていただきました。後ほど説明しますけれども、不適切なことがありましたのでCとさせていただきました。
 30ページに3点挙げています。[1]は、ハラスメント対策等の充実です。特に、パワーハラスメントなどの対策を講じています。[1]の[2]ですが、患者さんやその家族からの暴力行為や迷惑行為から職員を守るということで、警察OBの雇用を決定するといった対策も講じています。右側の[2]は、広報の推進です。広報企画室を設置し、広報を進めています。マスコミで取り上げていただく機会も増えています。
 下のほうの[3]、ちょっと不適切な内容ということで2点挙げています。1点目は、左側に書いてある余裕資金の運用における事例です。これは、余裕資金を有価証券で運用したところですけれども、独立行政法人の通則法の中で、国債とか地方債以外の有価証券を取得する場合には、主務大臣である厚生労働大臣の指定が必要という規程があり、その指定を外れた資産運用をしてしまった、不適切な運用ということで厚生労働省からも御指導を頂きました。もう1点は、右側にある政府調達の入札における不適切な対応です。これは、病院情報システム、いわゆる電子カルテシステムですが、その入札が昨年11月にあり、それに対して、入札の参加者から、政府調達の苦情処理検討委員会に苦情申立がなされ、結果的に私どもが政府調達の議定書に違反するということで御指導を頂きました。
 この2点が不適切ということで、自己評価をCとさせていただきました。この不適切な事例に関しては、私どもとしても真摯に受け止めて、改善は図ったところです。引き続きコンプライアンス向上に努めていきたいと思っております。
 資料2-6、見込評価説明資料の24ページを御覧ください。業務運営の効率化は自己評価Bとさせていただきました。
 25ページは具体的なことですが、これは、先ほどの単年度と同じような評価の内容となっています。5年間引き続きの運営効率化について、継続してやっているということです。
 26ページの3-1、財務内容の改善は、自己評価をBとさせていただきました。
 27ページで、具体的な内容が3点挙げてあります。[1]は、経営危機からの回復です。先ほど、4年間連続黒字ということで申し上げましたけれども、その前年が大変大きな赤字だったということで、そこからの黒字回復ということで挙げさせていただきました。[2]は省略させていただきます。[3]の競争的資金についても獲得を図ってきています。
 28ページは、その他の事項です。これは、自己評価をBとさせていただきました。様々な取組を行っています。29ページ、具体的な例としては、ハラスメントの研修などを行っているというのを先ほど申し上げました。下のほうの広報や寄附獲得ということでは、右下のほうにありますが、ナショナルセンターで初めてのクラウドファンディングを活用した寄附活動などの試みを行っています。以上、御説明とさせていただきます。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。御質問、御意見がありましたらお願いいたします。藤川先生、よろしくお願いいたします。
 
○藤川委員
 まず最初に、一般管理費についてです。単年度の説明資料の25ページです。定量的指標の所で、目標値▲10%というところが、実績は+7.2%となっています。これについての内容を説明していただけますか。
 
○国立成育医療研究センター桐生企画戦略局長
 御質問ありがとうございます。一般管理費に関しては、目標値が毎年10%削減ということですが、今年度は+7.2%ということです。これに関しては、情報セキュリティ対策の費用が増えたことと、働き方改革の影響などで、どうしても固定経費が増えてしまっているということがあります。
 
○藤川委員
 この中長期目標期間において、当センターは非常に前に進んだというか、今までは研究の数も少なかったということもあったかと思いますが、いろいろ環境整備をされて、研究と臨床をうまくリンクしたり、非常に先進的でユニークな内容の研究もどんどん出てくるようになりました。しかも、大きな赤字だったものを、かなりのメスを入れて黒字化されました。最初のうちは、今年だけでこれからはそんなに厳しくやらないのではないかと言っていたのに、何年も連続して黒字であったりということで、非常に努力もされていると思うのです。そのひずみは大丈夫なのですかという話も、この審議会の中でありました。
 そういうところが、例えば離職率において、勤続1年未満の方は9.8%ということなので、逆に、長期に勤めている方はすごく高いのかなと。それは、ある意味ヘルシーな部分もあったりするところはあるのかもしれないのですが。あとは、専門・認定看護師数の計画がやや進まないというようなところは、ちょっとゆとりがなかったりするのかどうか。あるいは、不適切な事例というのが2つ出ていますが、政府調達のほうは、独法業界ではやや有名な案件になってしまっています。私も、報告書と定提案書という苦情委員会の内容は拝見しましたが、ちょっと大丈夫かなというか、ガバナンスといったような面で、やや苦しいというか、働いている皆さんにいろいろひずみが出ていたりしないのかというところが、ちょっと不安になりました。
 そういうところもあって、監事の監査報告において、先取りになってしまいますけれども、「総じて適正」という言葉を使ったりされているのかと思うのです。また、実際には法令上問題のある行為であったり、あるいは内部統制的にもちょっと問題になってしまうようなことがあって、組織の風土といった面で心配な部分もあるのかと思ったりしました。その辺りを説明していただけますか。
 
○国立成育医療研究センター桐生企画戦略局長
 御質問ありがとうございます。私どもとしても、御指摘いただいたような内部統制、ガバナンスやコンプライアンスについては不十分なところもあり、引き続き、これは継続的に改善を図っていく、若しくは見直し、PDCAを回していくものだと思っています。
 その上で幾つか御指摘がありました点に関してです。確かに経営改善で疲弊しているところもあります。特に、事務職員の削減などもかつてありましたので、そういう影響が出ているところもあるのではないかと思っていますが、経営的に改善してきたこともあって、働き方改革で人を増やしたりといった改善もしているところです。看護師の離職率に関しては、御指摘のように、新採用の人の離職率は減っているのですが、何年かたった人の離職率が少し高止まりしているところもありますので、今、離職要因の調査などをしているところです。また、専門や認定の看護師に関しては、ちょっと言いにくいところがあるのですが、なかなか小児をやっている病院の看護師からすると、この資格を取るのは少し魅力が少ないところもあると伺っています。少し長くなりましたが説明させていただきました。
 
○国立成育医療研究センター小野財務経理部長
 財務経理部長の小野と申します。政府調達の案件について簡単に御説明させていただきます。政府調達については、内閣府から御指摘を頂いており、今回は規程のほう、契約事務取扱細則についても改正してあります。そもそも、前回の入札でも同じ規程だったものですから、規程そのものに問題があるだろうということも御指摘いただきましたので、今後は間違えた運用をすることがないよう規程を改正して、取り組んでいきたいと考えております。以上です。
 
○福井部会長代理
 一言だけ。賀藤先生が3年前か4年前に、ほとんど医療機器を買わないようにしたとおっしゃったのが非常に印象的だったのですけれども、最近は大丈夫でしょうか。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 大丈夫です。それからは、希望順ですが、各診療科が希望するものは、基準はありますけれども、全部買いそろえています。今年度は新型コロナで財政がどうなるかさっぱり分かりませんし、悲観的な財政になるだろうと思っています。それでも、一応機械の整備はきちんとやっていかないと医療が継続できませんので、ほぼ整備は終わっていて、それをまた継続していくという形にしております。
 経営の立て直しで、いろいろなところにひずみが来たということですが、人の手当て、あとは機械とか設備の手当ては、この2年間で大分やってきたつもりです。最近は、ちょっと余裕が出ているかと思っています。
 
○祖父江部会長
 昨年まで、全国的に見てもすごい黒字を出しておられましたので、相当の病院の経営改革をされたのだろうと思います。過去5年間を見ると、平成27年から平成28年まで、すごくジャンプアップしています。それが、何とかずっと続いているのですが、令和元年はちょっと落ちてきています。この要因というか、この変化は何によっているのか。210人の常勤職員を働き方改革で雇われたというのも、相当な雇い幅ではないかという感じがするのですけれども、そこにはどういうものがあったかを教えていただけますか。
 
○国立成育医療研究センター賀藤病院長
 これは、人件費が一番多いです。まず、各病棟に全て病棟薬剤師を入れました。小児入院医療管理料を取っていると、病棟薬剤師業務加算は全く取れないので、全部持ち出しになります。ですので、病棟薬剤師を9人雇いました。あと、医師事務作業補助者は50対1だったのを25対1まで持ってきて、今は20対1まで持っていこうと思っています。そのほか事務職も増やしています。あと、恥ずかしながら、病棟にはクラークがいる体制ではなかったので、クラークも入れました。そういうことで、医師と看護師の周りに事務系を置くような形にしましたので、ほぼ人件費というものだろうと考えております。
 あとは、フェローと非常勤医師の常勤化についてです。御存じのように、非常勤が週3時間の勤務で15時以降働くと、全部時間外勤務手当を払わなくてはいけません。これでは、病院が逆にやっていけなくなってしまいます。というのは、時間外勤務時間が100時間などというのはざらでしたので。それを何とかしなくてはいけない、働き方改革をしなくてはいけないということで一生懸命考えたのですが、良い方法がありませんでした。そこで、30時間延ばせないのだったら常勤化することにしました。ただ、給与については、非常勤の前年度の年収の平均を取って、それで新しい俸給表を作りました。ですので、常勤化しても医師のほうの給与は思ったより増えませんでした。というのは、時間外勤務時間が逆に大変減少したのです。それは、各々が効率化を図ってくれたことが一番大きいのだろうと思います。そういうことで、医師のほうの人件費はプラスマイナス大きな差はなかったのですが、周りの事務系、又はサポートしてくれるほうにお金を出したということが一番大きいだろうと思っています。
 
○祖父江部会長
 それは、正に働き方改革で体質改善みたいな格好で、今後の展開に向けた仕込みのような感じを受けました。どうもありがとうございました。全体を通して、し忘れた質問等がありましたら出していただけますか。よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。
 最後に、法人の理事長先生と監事からのヒアリングをさせていただきます。まずは、監事のほうから、現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、あるいは改善方針等についてコメントをお願いいたします。
 
○国立成育医療研究センター石原監事
 監事の石原です。監事報告は、資料2-4で提出しておりますが、若干敷衍しながら申し上げます。令和元年度のセンターの業務運営は、研究成果の面を含めて総じて順調でした。財務面でも、先ほどから出ているように、給与費等の増加を映じて黒字幅は縮小していますけれども、4期連続の経常収支黒字を達成しています。したがって、まず有効的かつ効率的に運営がなされていることを御報告申し上げます。
 ちなみに、第2期中長期計画の6年間で、センターは経常収支率100%というよりも、センターの機能維持・向上を目指し、23億円の黒字を出そうという自己目標を持っておられます。平成27年度から令和元年度までの5年間で、約21億円の黒字を出してまいりましたので、目標の92%を積み上げているという状況です。ただ、令和2年度が始まっておりますけれども、新型コロナの影響もあって、厳しい状況になっていることを申し上げておきます。
 令和元年度の話に戻ります。順調なのですけれども、もっとも内部管理面で説明があったように、電子カルテシステム入札手続及び一部余資運用の不備がありました。これらは、決して不正とか疲弊ということではなくて、監事の私が思いますに、規程等の条文の解釈に思い込みで読み込み不足があって、そこが起因となってこういうことが起こったと、そのように見受けております。今は、きちんと是正が図られていることを申し上げます。
 監事の目から見ても、今後センターには、電子カルテシステムの円滑な更新、臨床研究中核病院の申請・承認、大規模建物整備計画、さらには広く6NC共通の連携推進といった課題があると思います。我々監事の任期もあと1年になりましたけれども、センターがコロナ禍に負けずに打ち勝ちながら、引き続き健全かつ安定した経営が維持されるよう、必要に応じてしっかり意見具申してまいりたいと思っております。ありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。よろしいでしょうか、何かコメント等がありますか。ありがとうございました。それでは、最後に理事長より、本日の議論も踏まえながらコメント等を頂けたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 
○国立成育医療研究センター五十嵐理事長
 本日は、大変貴重な御指摘を頂きまして誠にありがとうございました。私どもは一致団結して頑張っております。しかしながら、新型コロナの影響は無視できない状況になっています。今までは、妊婦や子どもの患者のためのコロナ感染症病棟を設け、予定していた手術を延期するなど、いろいろ対策を取ってまいりました。実際に最近になって子どものコロナ感染症患者も入院しております。そうは言いましても、私どもの目標は、コロナ感染症対策だけではなく高度先進医療や優れた医療の全国への均てん化もしなければいけません。それから、冒頭申し上げましたように、日本の小児医療・保健は非常に弱い点が世界的に見てもありますので、何とかキャッチアップして、アジアのリーダーとして頑張っていかなければいけないと考えている次第です。
 本日は御指摘を頂き、ありがとうございました。御指摘を頂いて、改善に努めたいと思います。本日はどうもありがとうございました。
 
○祖父江部会長
 どうもありがとうございました。時間が余り取れなくて、行き届きませんで申し訳なかったと思います。それにもかかわらず、活発な御議論を頂いたことに感謝申し上げます。これで、国立成育医療研究センターの議事を終了いたします。
 以上で、本日の全体の議事を終了いたしました。最後に事務局のほうから、今後の流れなどについて連絡事項をお願いします。
 
○医政局研究開発振興課国立高度専門医療研究センター支援室星野室長補佐
 事務局です。今後の流れについて簡単に御説明いたします。本日御議論いただきました、令和元年度業務実績評価及び中長期目標期間見込評価については、この後、本部会における御意見や、法人の監事及び理事長のコメント等を踏まえ、厚生労働大臣による評価を行い、その評価結果について法人に通知するとともに公表いたします。決定した内容については、後日委員の皆様にお送りさせていただきます。
 また、各委員におかれましては、本日、評定記入用紙の御記入を終えている場合は、机上に評定用紙を置いたまま御退席ください。まだ御記入いただけていないという委員におかれましては、後日御提出していただくという形を取らせていただきます。その場合は、7月22日までに事務局宛てにメールで御送付いただきますよう、お願いいたします。
 次回は、7月21日(火)14時から、国立循環器病研究センターと、国立精神・神経医療研究センターの評価を予定しております。会場は、本日と同じこの会議室になります。開催方法については、現在の新型コロナウイルス感染症の状況等を踏まえ、部会長とも御相談し、Web会議を含めて検討したいと考えております。開催方法については、今週中をめどに委員の皆様にお知らせさせていただければと考えております。
 最後に、本日配布した資料の送付を御希望される場合は、事務局から送付させていただきますので、机上の封筒に資料を入れていただき、御退席いただきますようお願いいたします。事務局からは以上です。
 
○祖父江部会長
 長時間にわたってどうもありがとうございました。これで終了いたします。