第2回 職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会 議事録

労働基準局安全衛生部化学物質対策課

日時

令和元年10月18日(金) 14:00~16:30

場所

中央合同庁舎5号館 共用第8会議室
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

議題

  1. (1)関係者からのヒアリングについて
  2. (2)その他

議事

○課長補佐 若干時間より早いのですが、皆さんおそろいですので始めたいと思います。本日は、大変お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。
 定刻になりましたので、ただいまより、第2回職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会を開催させていただきたいと思います。本日は全委員に御出席を頂いておりますので、今後の議事進行は座長のほうによろしくお願いいたします。
○城内座長 それでは、本日の議事に移りたいと思います。前回の事務局からの御提案を踏まえて、本日は関係者からヒアリングを行いたいと思います。事務局と相談し、本日は化学物質管理に関する関係者として、東京応化工業株式会社の豊島様、高木様、そして経済産業省の藤沢企画官にお越しいただいております。また、本検討会の参集者でありますJEC連合の宮腰委員、UAゼンセンの高橋委員からもお話いただく予定としています。
 ヒアリングは、初めに経済産業省の藤沢企画官から御説明いただいた後、東京応化工業株式会社の豊島様、高木様、JEC連合の宮腰委員、UAゼンセンの高橋委員の順で進めていきたいと思います。
 まず、ヒアリングを始める前に、事務局から資料の確認をお願いいたします。
○課長補佐 本日、お手元のタブレットに資料1~7まで御用意しており、資料1が前回の検討会において出された主な意見、資料2、資料3が前回御意見いただいたものを踏まえて事務局で御用意したものですが、業種別の労働災害の発生状況、作業環境測定の状況の資料を用意しています。資料4が経済産業省様から頂いた今日の御発表資料、資料5が東京応化工業様より御用意いただいた本日の御説明資料、資料6がJEC連合様の御説明資料、資料7がUAゼンセン様の御説明資料となっています。御不足はございませんでしょうか。
○漆原委員 今、資料1を拝見したのですが、この所の記載のまとめ方についての発言というのは可能でしょうか。
○課長補佐 後ほどまた御説明します。
○漆原委員 分かりました、結構です。
○城内座長 よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、ヒアリングに移る前に、資料1~3、今御指摘もありましたが、事務局から説明をお願いいたします。
○課長補佐 分かりました。今、御意見を頂きましたが、初めに資料1~3まで通しで御説明し、その後、御質問などをお受けしたいと思います。
 まず、資料1を御覧いただくと、前回検討会において出された主な意見を事務局でまとめたものです。1~7番まで項目を挙げていますが、まず基本的な考え方として、後ほど資料2、資料3で御紹介しますが、化学物質による災害、作業環境の状況を分析し、業種などを見て優先順位を付けていくべきではないか。規制を考える上で、実際に実行できるかどうかを、きちんとリスクベースで考えるべきではないか。中小企業に対しても、きちんと情報伝達するなど、対応できるような仕組みを作っていく必要があるのではないか。もう1つは、管理濃度が定められている化学物質だけではなく、許容濃度などが明らかになっているような多くの物質について、きちんとインダストリアル・ハイジニストなどが管理する形が必要なのではないかという御意見を頂いています。
 2番目、人材育成の関係でもいろいろと御意見が出されましたが、まずはベテランの社員から退職していく中で、きちんと人材育成をしていく、これは重要な課題ではないか。それから、これは実態についての御意見だと思いますが、社外の専門家に相談しているというケースは少ないのではないか。3つ目に、単に労働安全衛生だけではなくということだと思いますが、1つの部署で様々な管理が行われているということで、それに対応する人材も多面的に考える必要があるのではないかという御意見。化学物質の管理はリスクベースで行うことが必要であって、質的な判断ができる人材の育成が必要だという御意見。日本でも、海外で行われているようなインダストリアル・ハイジニストの養成によって、化学物質を管理するような仕組みの導入を検討するべきではないかという御意見を頂いています。
 3番目、これは現場のばく露防止措置などに関する御意見ですが、作業環境測定の結果の報告を義務付けるべきではないかという御意見。中小企業でもリスクアセスメントがきちんと実施できるような制度を考える必要があるのではないか。少し具体的な御意見になりますが、ばく露防止措置の手袋についての選定基準がないのが問題ではないかという御意見。マスクについて、適切に選択をして使用されていることを事業者に確認させるような仕組みが必要ではないかという御意見を頂いています。
 4番目、健康診断の関係ですが、1つ目として非常に作業環境がいい、第一管理区分が継続していて、実際のばく露がほとんどないような場合については、健康診断の頻度を減らすなどの軽減もできるようにするべきではないかという御意見。それから結果の保存ですが、例えば30年、40年保存するようなものもあるので、結果について集約して保存するような仕組み、過去を含めて追いかけられるような仕組みを作る必要があるのではないかという御意見を頂いています。
 5番目、情報伝達の関係ですが、サプライチェーンを通じて川上から川下までうまく化学物質の情報伝達ができるような仕組みを作るべきではないかという御意見です。2つ目として、欧米では化学物質というのは限定をせずに、ラベルやSDSでの情報伝達の対象となっていますが、日本は限定している。まずは限定を外すという考え方から取り入れるべきではないかという御意見。それから、これは実行上の話になると思いますが、SDSについては、常に最新の情報にしておく仕組みが必要ではないかという御意見を頂いています。
 6番目、化審法や化管法など、他の法令との整合性・連携を図り、重複や齟齬のないようにするべきという御意見。他省庁の所管の法令であって、目的が異なったとしても手段が同じであれば共通化していく必要があるのではないかという御意見を頂いています。
 その他の御意見として、個別の物質についての御意見ですが、ナノ物質など、個別の化学物質に関する研究なども課題になっているのではないかという御意見を頂いています。
 続いて、資料2、資料3も簡単に御紹介します。前回、化学物質による労働災害が、例えば法定の物質によって起こっているのか、それとも法定外の物質で起こっているのかを表にしてまとめたものを説明したのですが、資料1の初めの御意見にあったとおり、業種別に分析する必要があるのではないかという御意見を頂いたので、前回お出しした災害発生状況を業種別に分類したものを資料2として付けています。
 資料3は国で行っている統計調査の結果で、それをそのまま紹介させていただきますが、作業環境測定の結果、管理区分がⅠ~Ⅲまで、どのような割合になっているかを業種別にまとめたものです。1枚目が粉じん作業、2枚目が有機溶剤の業務、3枚目が特化物となっていて、御覧いただけばお気付きになるかと思いますが、業種によって管理区分Ⅲである事業場の割合に差があるという状況が見て取れるかと思います。例えば粉じん作業でいうと、鉄鋼業などが特に値としては高くなっているし、有機溶剤の業務だと、繊維工業が値としては管理Ⅲの割合が特に高いとなっています。特化物については、木材・木製品製造業が特に高い。そのほか、プラスチック、鉄鋼業、非鉄金属製造業などが高い値となっている。作業環境測定の結果を見ると、かなり業種別の開きというのがあるのではないかという実態にあるかと思われます。私からの説明は以上です。
○城内座長 ありがとうございました。漆原さんから御質問。
○漆原委員 突然申し訳ありません。本日はヒアリングが中心ということで、どこまで冒頭のこの部分に意見が言えるのかどうなのか分からなかったので、最初に発言してしまいました。第1回の主な意見という資料を拝見すると、1から7まであって、なんとなくこれを基に報告書を作るのかなという、提出の雛形のような作りになっている気がしています。
 その中で、ハイジニストについての記載が2か所あり、多分前回発言したと思っていたのですが、第1回の検討会の中のイメージでは、ハイジニストがやはり必要だねという意見はそれほど出ていなかったような気がしています。確か、私が発言したところですが、欧米のような高度なハイジニストを養成するよりも前に、まずやることがあるだろうという発言をしました。もし、この流れで報告書的なものが作れるのであれば、是非そのことを記載していただければと思っています。以上です。
○城内座長 事務局、どうぞ。
○課長補佐 すみません。議事録から正確に書き起こした形ではないので、拾えていない御意見もあると思います。そこは十分気を付けて今後も運営していきたいと思います。
○城内座長 そのほか、御意見ございますか。お願いいたします。
○永松委員 教えていただきたいのですが、先ほど御発言がありましたが、このようなものは今後どのような取扱いをされるのかというのを、まず教えていただきたいのですが。いわゆる意見を洗い出したということであるのかなと私は理解していて、これを洗い出した結果、今後どうするのかというのはまた別の場の議論であるということでよろしいのでしょうか。
○課長補佐 今回お示しした資料1が、例えば何かの基になるということではなくて、前回、大体このような意見が出ましたと。本日も、恐らくヒアリングの中でいろいろな御意見が出ると思いますし、次回もそうだと思いますが、そのようなものを我々で整理しながら、今後の議論につなげていきたいと考えています。
○名古屋委員 お聞きしたいのですが、資料3を見ると全部100%になっています。これは、実施した事業場の数、多分そこを100%にしてⅠ、Ⅱ、Ⅲと分けていると思うのですが、実施した事業場の数を書かないとまずいのではないですか。例えば、鉱業、採石、砂利と書いてありますよね。私の知る限り、採石と砂利は100%とは言いませんが、ほとんどやっていませんよね。これが入っていると、どの事業所でも全部やっていると思われてしまうので、どのぐらいの業種の中に何%やっているのかきちんと書かないと、集めた所、例えば1,000あった所に10しか集めなかったら100%ですよね。この統計だと、何も分からないのではないかと思うので、その辺もきちんと書かないと、後々何も使えないデータになってしまうので。いかにもやってるよと思っているのですが、やっていない業種がたくさん入っていますねということがあるので、その辺きちんとしないとまずいのではないかと思います。
○城内座長 よろしいですか。では、そのような対応がもし可能であればしていただくということで、よろしくお願いいたします。そのほか、御意見、御質問等ございませんでしょうか。明石委員、どうぞ。
○明石委員 すみません、次回で結構なのですが、資料2に業種別と発生件数が載っているのですが、できればこれにプラスしてクロス集計で起因別、爆発とか何かそれが分かると、業種別にどのような問題があるのか分かると思うので、すみません、次回で結構なので、できれば頂ければと思います。すみません、ありがとうございます。
○城内座長 よろしいでしょうか。では私から。資料2の物質名が特定できていないものの理由を、簡単に御説明いただけますでしょうか。
○課長補佐 実は、この集計は労働者死傷病報告というものを基に集計しておりますが、労働者死傷病報告にこの物質を使っていましたということが明確に書かれていない場合があるので、そこは不明なものと整理して、分かっているものを整理させていただいたということです。
○城内座長 ありがとうございます。そのほか、御質問、御意見等ございませんでしょうか。
 それでは、ヒアリングに移りたいと思います。ヒアリングの進め方ですが、初めに20分程度で御発表いただいた後、委員の皆様から質議応答を15分程度で行う形で進めていきたいと思います。では、初めに経済産業省の藤沢企画官より御発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○経済産業省藤沢企画官 経済産業省化学物質安全室の藤沢と申します。どうぞ、本日はよろしくお願いいたします。このような機会を頂きまして、誠にありがとうございます。私からは、化審法のリスク評価と届出制度の概要について説明させていただければと思います。時間が限られていますので、本日はリスク評価と製造輸入量の届出制度に中心を置かせていただきます。
 1ページのスライドは、化審法の目的です。化審法は、人の健康を損なうおそれ又は動植物の生息・生育に支障を及ぼすおそれがある化学物質による環境の汚染を防止するために、製造・輸入、使用について規制をする法律です。環境を経由しての暴露という点が労働環境の暴露とは異なるところではないかと思っております。
 概要ですが、3つの柱があります。1つは新規化学物質の事前審査、ここは安衛法ともかぶる部分があろうかと思います。2つ目が上市後の化学物質の継続的な管理措置ということ、3つ目が化学物質の性状に応じた規制、これはPCBのような「第一種特定化学物質」を規制するということです。
 2ページのスライド2です。こちらが化審法の体系図です。ちょっと細かい図ではあるのですが、これがほぼ化審法の体系を表しています。まず上市前ですが、新規化学物質とあります。これは、1トンを超えるもので上市したいものを事前に審査するという制度になっています。このため、分解性・蓄積性・人毒、生態毒といったデータセットをそろえて審査を受けるということになります。
 点線で囲んだ部分は、上から低生産は年間1トンから10トンまで、少量新規は年間1トン以下、中間物、低懸念高分子が、特例項目となっています。低生産と少量新規の部分は、平成29年度の法律の改正により、製造・輸入量で規制をしていましたが、環境排出量での規制に変更しております。具体的には、少量新規ですと、今までは製造・輸入は全国合計で1トンまで、また1社1トンまでということになっていましたので、例えば3社から1トン申出があった場合、許可される数量は、単純計算で1社0.33トンという計算になりました。平成29年改正では、用途証明を出してもらい、例えば電子材料であれば排出係数が0.01になりますので、1トン希望した場合、環境排出量は0.01トンということになります。そうすると、3社が1トンを希望しても環境排出量の合計は0.03トンになるので、各社1トンずつ製造・輸入を許可することができるという、そういった制度に変わっております。低生産もキャップが10トンまでということで、同じような形で運用しております。
 中間物は、全てほかの化学物質に変わるということを確認できれば確認するということになっていますし、低懸念高分子も試験をやって届出をすれば、それでOKという簡単な方法になっております。ここまでの話が上市前の話です。
 次に、上市後ですが、そこにいろいろな種類の化学物質のカテゴリーが書かれています。一番下の、一般化学物質(およそ28,000物質)ですが、これは、1973年に化審法ができた当時の既存化学物質2万物質プラス、その後新規の審査で公示された物質が約8,000追加になっています。
 上のほうに書かれている第一種、第二種特定化学物質が規制物質となります。第一種特定化学物質は、PCBのような難分解・高蓄積、毒性ありというものですので、製造・輸入、使用が禁止されるということになります。第一種化学物質にいくまでは、監視化学物質という毒性の分からない状態を通って進んでいくことになります。第二種特定化学物質は難分解・低濃縮、人の毒性ありというものになります。こちらは製造・輸入できるのですが、事前に申請をしていただいて必要があれば減産をする、そういった命令が掛けられるような立て付けになっております。
 平成21年度の化審法の改正により、一般から第二種特定化学物質にいく流れで国がリスク評価を行って評価・判断をしていくという制度に大きく変わっています。その話が次の3ページ以降です。3ページはリスク評価の考え方ということで、これは皆さん御存じだと思いますので飛ばさせていただいて、4ページのスライドに進みます。一般化学物質から優先評価化学物質、そして第二種特定化学物質に流れていく、そういったスキームです。まず一般化学物質ですが、右のスクリーニング評価の吹き出しの所に、用途別出荷量(化審法に基づく一般化学物質の届出データ)とあります。こちらで製造・輸入量を把握し、用途も把握いたします。それで、優先度マトリックスを使ってスクリーニング評価を実施するということになります。当然、その際は分かっている有害性のデータを活用いたします。それでリスクが十分に低いと言えない化学物質については、優先化学物質に指定されます。現在、223物質が指定されているところで、次のリスク評価(一次)というところに進んでいるものです。
 リスク評価(一次)のものですが、223物質を一度にできませんので、まずこの中でも優先順位を付けてリスク評価に当たるわけです。優先評価化学物質に指定されると、吹き出しの一番右の所にあるとおり、詳細な用途別出荷量等の届出をしていただいて、その後いろいろな暴露データ、PRTRデータとか環境モニタリングデータ、また有害性データも個別に集めてリスク評価を実施いたします。その結果、リスクの懸念が想定されるものについては長期毒性を決定する必要がありますので、有害性調査指示というのを事業者に出して毒性試験の実施を指示いたします。それで結果が出てきて有害性が決まれば、第二種特定化学物質に指定していくと、そういった流れになっております。
 スライド5ですが、これはスクリーニング評価に用いる優先度マトリックスです。横軸に有害性クラス、縦軸に暴露クラスを持ってきていて、リスクの懸念ありなし、「高」、「中」、「低」というものを付けて、それでリスクが高そうだというものについては優先評価化学物質になっていきます。中程度のものについては、専門家のエキスパートジャッジを受けて、優先評価になるものもあれば、ならないものもあります。低のものは引き続き一般化学物質になると、こういういった考えです。
 6~8ページには、それぞれの有害性クラスのクライテリアが書かれています。こちらは参考にしていただければと思います。スライド8を御覧ください。暴露クラスの付与ということですが、化審法では製造・輸入・用途別出荷数量というものを取りますので、そこにスクリーニング評価用の排出係数一覧の排出係数を掛け算して、全国でどれだけ排出しているだろうかということを推計いたします。その推計の結果、そこにあるように暴露クラスを5段階に分けていきます。一番多いのが環境排出量で10トン以上のものということになります。
 スライド9に、暴露評価に用いる排出係数の事例があります。用途番号が101番から49種類のものになっております。101は中間物、102が塗料用ということで、49種類というかなりざっくりとした用途分類でスクリーニング評価を実施しています。
 10ページは、製造数量等の届出です。一般化学物質の場合、製造・輸入量と用途別出荷量、この際、有効数字は一桁です、要するにオーダーが分かればいいという程度の精緻さです。これを使ってスクリーニング評価を実施いたします。一方、優先評価化学物質は、都道府県別製造・輸入量、都道府県別・用途別出荷量、オーダーはトンベースで提出してくださいとなっています。これらのデータを使って、第二種特定化学物質に指定すべきかどうかといったリスク評価が実施されます。一般も優先も基本的には取得する項目は同じでして、数量の精緻度というものが変わってきているということになります。
 11ページのスライドは、一般化学物質等の実績の届出内容の変更ということです。これは、そこに黒字で書いてあるように、届出を化合物質ごとに1区分とすることを原則としました。今までの実績報告では、官報整理番号、これは既存化学物質ができたときに付けた名前ですが、*の「例えば」という所を見ていただくと、官報整理番号が2-1015アルキル(C2~4)アクリルアミドという物質の例があります。これはアルキル基の炭素数が2、3、4と違ったものや、また構造が異なったものが、全てこの番号で読んでいます。しかしながら、実際にリスク評価をやるときは、有害性が違ったりとかしますので、それぞれに分けてやらなければいけません。今まではそれらが1つのものとして報告されてきたのですが、今年度から、これらの中を分けて出してくださいとしました。一言で言うと、CASベースで出してくださいというお願いをしております。
 12ページに、届出の項目があります。実際、出荷数量と用途番号の部分が、一般と優先評価化学物質とではちょっと精緻度が違っているといったお話です。スライド13は、今までの一般化学物質の実績の届出状況です。およそ2万8,000件の届出で、会社数としては1,300から1,400程度が届出をしている。物質数としては7,000弱の物質が届出されているということになります。届出物質の数量分布ですが、製造・輸入が100トンまでのものが6割程度ということで一番多く占めています。あとは100~1,000トンが2割程度という感じになっています。
 14ページに進みます。今までの話は、スクリーニング評価の話が中心だったのですが、次はリスク評価(一次)です。こちらは、いろいろなツールを使って環境濃度を予測いたします。これは、入手できるデータとして都道府県別の出荷数量というものをベースに計算していくということに加え、中にはPRTRデータの対象物質があるものは、これらのデータも活用して、できる限り精緻なリスク評価を進めています。環境中の濃度を推計する数理モデルというものを御紹介させていただこうと思い、14ページ以降に用意いたしました。1つは単一媒体モデルです。これは大気なら大気、水なら水というように媒体ごとに計算するモデルになります。もう1つ、対になる多媒体モデルというのがあります。大気に行ったり水に行ったり、さらに底質に行ったりというその媒体間の移動量を計算しながら、どこに一番たまりやすいかというのを計算していく、そういったモデルです。略称で紹介させていただいていますが、ネットで引いていただくと詳細が出てくると思いますので、御興味がありましたら見ていただければと思います。
 15ページ、その中でもPRAS-NITEという、我々の独立行政法人のNITEが開発した化審法のためのモデルというのがあります。こちらは大気と水を中心に計算ができるものです。このモデルの特徴としては、その図の左下の部分にある楕円の部分ですが、化審法は環境中の濃度予測というものが大事になりますので、工場の中心から100m離れた所からの濃度を予測していく、そういったモデルになっています。
 最後のページはMETI-LIS、ADMARです。これは、それぞれに分離して活用することができますが、ここではちょっと面白い使い方を御紹介いたします。METI-LISというのは、正に事業所から出てきた化学物質の大気での濃度分布を予測するものです。建屋の構造や煙突の高さといったものも計算の中に含めることができるので、かなり精緻な計算をすることができます。ただ、これはやはり数百mオーダーの部分、要するに工場の近傍辺りを調べるようなモデルになります。一方でADMAR、これは産総研が開発したソフトですが、日本全国を5kmメッシュとか1kmメッシュで濃度予測していくことができるモデルです。
 これらを組み合わせると、例えばPRTRデータというのは点源ですので、点源を使ってMETI-LISを使って濃度予測を実施する。一方で自動車のような排ガスから出てくるような物質を調べる際には、バックグラウンドの濃度というのがかなり影響することがあります。その際にはADMARを使ってバックグラウンドを計算して、そこに工場の近傍のMETI-LISのデータをプラスする。そうすると、より精度の高い濃度予測ができることになります。NITEでこういった使い方を紹介しておりますし、産総研で昔やっていた詳細リスク評価の中でもこういった手法が紹介されているところです。特に工場内の濃度予測という観点では、METI-LISのようなモデルを活用されるといいのではないかということで御紹介させていただきました。簡単ですが、以上です。
○城内座長 どうもありがとうございました。それでは、質疑応答に移ります。御質問のある方は、挙手をお願いいたします。何かございませんか。では、最初に私から質問いたします。非常に膨大なデータがあると思うのですが、例えば詳細用途別出荷量等についてのデータというのは、事業所は別として、データとして公開されているのでしょうか。
○経済産業省藤沢企画官 詳細なものは、まだ公開まではいっていないと思います(詳細なものも公開しております)。ただ、一般化学物質の場合は全て公開して、3社以上のデータについては、ここにある1~100トンにはこういう物質があるというような形で公表しているところです。
○城内座長 なぜお伺いしたかと言うと、先ほどの労災のデータだと物質が分からないというのがあって、逆に経済産業省でお持ちのデータと突合せ等ができれば、少しは推定などができるのかなと推察いたしました。
○経済産業省藤沢企画官 確かにそういうことができればよいと思いますが、化審法では、メーカーが出荷した先までしか分からないという限界があります。ですので、第一次出荷先から第二次出荷先、第三次出荷先といったところまで追えていないというところがあり、そこは我々もPRTRデータを活用しているというのが実情です。
○城内座長 そのほか、委員の先生方、何か御質問等はありませんか。
○課長補佐 2点ほどお伺いしたいことがあります。途中で御説明にありましたスクリーニング用の排出係数をどうやって導き出しているのかという点が1つと、もう1つは、優先評価化学物質という扱いになった時点で何らかの規制というか、制限というものは掛かるものなのかということ、これをお伺いしたいと思います。
○経済産業省藤沢企画官 まず1つ目ですが、OECDの暴露タスクフォースの中で排出係数というのがありますので、それをベースに日本の実態に合わせて作り上げているのが、こちらの排出係数です。やはり海外の情報と合わないところがあるので、企業にヒアリングをして実態を調べて、それに合わせていくという形になっております。それと、スクリーニング評価と優先化学物質で用いる排出係数はその詳細度が違ってきます。まず、詳細な用途として280幾つあり、その中がいくつかの大きな用途にわかれ、その用途に入っている排出係数の最大値をスクリーニング用の排出係数として採用しています。スクリーニング評価のほうが環境に排出しやすいというふうに計算されてきます。その次のステップとして優先評価では、だんだん詳細になって、実態に合わせていくという形になっています。
 もう1つが、ごめんなさい。
○課長補佐 優先になった時点で何か規制はないかと。
○経済産業省藤沢企画官 規制としては情報伝達をしてくださいということです。スライド2にありますが、優先評価化学物質の所の一番右に情報伝達の努力義務というのがありますので、これは優先化学物質だという情報伝達をしてくださいというお願いをしているところです。
○城内座長 そのほかはありませんでしょうか。私からまた1点です。暴露の評価をなさるわけですね。私の理解だと、化審法では暴露の評価をした後、例えばこれは基準を超えているとか超えていないとかという評価はなさっていないと思うのですが、その先はどういうことを考えていらっしゃるのかということです。例えば、環境基準と突き合わせるというようなことはしていないわけですよね。
○経済産業省藤沢企画官 環境基準値のようなものがある場合は、そういったものと当然比較をしております。それでリスクの懸念がある場合は、特に法律にはないのですが、一応事業者にリスクの懸念があるということをお伝えしているところです。
○城内座長 その先、取り締まるとかではなくて、ですよね。
○経済産業省藤沢企画官 自主的に自主管理を進めていただくという観点で連絡をしております。
○城内座長 そのほか御質問等はございませんか。よろしいでしょうか。それでは、質疑応答はここまでとしたいと思います。経済産業省の藤沢企画官、どうもありがとうございました。
○経済産業省藤沢企画官 どうもありがとうございました。
○城内座長 それでは、続いて東京応化工業株式会社の豊島様、高木様より御発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○東京応化工業 豊島と室長の高木と申します。早速、スライドの説明に移ります。まず、簡単にどういった事業場があるかといったところです。スライドの3ページを御覧ください。東京応化の国内拠点で、8拠点7工場あります。本社は化学物質は扱っておりません。この中で、左下の相模事業所という所が開発、製造技術、品質保証といったもので、一部製造ラインもありますが、開発拠点となっています。湘南事業所は、当社の中でも機械の調整を行っている事業所になります。それ以外が、化学物質を使ったフォトレジストとか、その付属薬品といったものを製造している化学工業関係の拠点になります。
 4ページの海外拠点です。主な拠点が台湾に2拠点、韓国に1拠点、アメリカに1拠点、中国に1拠点ありまして、それ以外は営業所といった事業所になります。今回は日本国内のリスクアセスメントの実施方法を御説明いたします。
 スライドの5ページ目を御覧ください。東京応化の製造工程の特徴として、勤務体系は8時~17時の日勤が中心になります。一部ラインもの、フィルムに感光剤を塗布するような工程はありますが、基本的には日勤の工程になります。原料を調合して、溶解、攪拌、ろ過、充填といったところが、基本的な工程になります。特徴としては多品種少量生産で、約2,000種類の原材料、化学物質、有機溶剤といったものを取り扱っています。非常に多品種で少量の取扱いになっています。あと、高温とか高圧に伴うような一般的な化学プラントは、一部反応でありますが、数百リットルから2,000リットル程度の規模の製造工程になります。
 本日、皆様に御説明するのは、私はこのリスクアセスメントを会社内で継続して実施することを担当しています。年に1回ぐらい説明会を開くわけですが、説明会をやっていて、自分でも説明できないというところがありまして、それを何とか実際に担当する人にうまく説明するにはどうやったらいいのかなというところで、いろいろ困っていたもので、それを改善した点を御説明したいということで、この資料を持ってきました。
 スライドの7ページを御覧ください。まず、化学物質の危険性評価です。これが一般的な実施手順になると思います。担当者を決定して、作業項目とか使用化学物質を特定する、それで危険・有害性のリスクを評価します。その評価点によって優先度を決定します。優先度が高いものに対しては対策を実施する。このようなPDCAを回すというのが一般的な形になっています。その手順の概要は、リスクアセスメント実施一覧表によってリスクアセスメントを実施していくわけですが、一般的な表と同じような形になっています。
 スライド8を御覧ください。細長い表が全体になります。左端の部分を拡大すると、工場、部門、係があって、どういった作業をやっていると。それに対してどのようなリスクがあるか。そういうことを抽出する部分が一番左側の部分になります。その後、真ん中の部分で、その洗い出されたリスクに対して、作業・設備・化学物質の危険性リスク評価と、これが左側の青色の部分です。化学物質の有害性リスク評価が右側の水色の部分になります。1つの作業とか化学物質に対して、危険性リスク評価と有害性リスク評価を実施していくという形になっています。その後、リスク低減策を実施した後に、どういうリスクレベルになるかということが右側の部分になります。全体的に、リスクアセスメント実施一覧表は、このような構成になっています。これを全社に展開しているということになります。
 スライドの11ページを御覧ください。まず、危険性リスク評価の部分を少し詳しく見ます。これも一般的なものと一緒ですが、重篤度と発生確率でリスク評価を出して、「管理点」というのが当社の独特のやり方になるのですが、何か特別教育とか手順書による標準化とか、何か管理ポイントがあれば、ある一定のリスクレベル、下がることにしましょうといったルールでやっています。重篤度については、ケガの程度、致命傷になり得るとか、重傷だとか軽傷だとか、この辺は担当者の判断で、大体このぐらいであろうというところで重篤度を決定します。発生確率については、可能性については、極めて高い場合は6点、高かったら4点だとか、6、4、2、1と4段階に分けています。頻度については4、2、1と3段階に分けています。これらを足し合わせて評価点にするというルールでやっています。管理点はマイナスでレベルが下がるわけです。このようなルールでやっています。
 スライドの12ページを御覧ください。このような形でリスク評価をやるわけですが、それぞれ部署ごとに一覧表を持っているので、昨年に国内工場の全部をまとめて集計してみました。そうすると、当社の傾向が如実に表れていまして、重篤度が10点となったものだけを抽出してグラフ化したものが、これになります。御覧のように、一番上の「皮膚・眼の薬傷」という所が突出して各担当がリスクが高いと評価しているものでした。あとは、はさまれ・巻き込まれ、転落とか。やはりフォークリフトの事故なども、起こってしまうと非常に重大災害になりますので、その辺も抽出されています。あと、静電気による火災が結構起きていることもありますし、皆さんこれは見えないものですから、もし起こったらまずいというところがあるから出ているのかなと思います。
 ただ、この集計をやってみて感じたのですが、下にちょっと書いてありますが、重篤度が高いという判断をした化学物質の内容を見ると、それほど腐食性が高い化学薬品だけではなくて、もし眼や手に付いたとしても、それほど影響がないような化学物質も全部、10点として評価されていたと。ちょっとこれは担当者任せになっているなということを感じまして、13ページですが、今までは重篤度というのは担当者の判断で致命傷だ重傷だというのを10、7、4、3、1でやっていたわけですが、これを化学物質ごとにGHS分類でクラス分けして、その化学物質は急性毒性が区分1だから10点だとか、眼損傷性が区分1だから7点だとか、このような4段階に化学物質を分けて、使っている化学物質に対してリスク評価をやっていこうという形にしようと考えています。そうすれば、リスク評価のばらつきも抑えられるのではないかということを感じます。
 ただ、GHS分類に基づいて区分分けをすると、弊社の場合、ある神経毒性があるような非常に危険な化学物質を扱っているのですが、それのGHS分類を見ると7点なのです。だから、必ずしもこの評価点が妥当かどうかというところは、経験とか過去の災害などに基づいて決めていく必要があるのではないかと思っています。これが、まず1つ改善を目指しているところです。
 次に、これも説明していてなかなか説明できなかったところで、どのように解消したかというところの御説明です。一般的なリスク評価の基準というのはどのような形なのかというところです。先ほど、弊社の中に機械系の工場があるという話をしましたが、そこで機械系業界のリスク評価基準があったのです。それを14ページに示しています。やはり致命的で頻繁だとリスクが高いとか、このように赤、オレンジ、黄色、青というようなリスク評価の分布になっています。
 ただ、ちょっと思いますに、重篤度が1の致命的なリスクが、まれだから中間でいいのかというところは感じるのです。一旦起こったら致命的なのに、たまにしかその作業がないから中間でいいのかと言うと、それは矛盾というか。
 あと、もう1つの当社のリスク評価基準がありまして、「A国」と書きましたが、多分、皆さん「あそこの国だろうな」と思われていると思いますが、そちらの評価基準を見ますと、やはり機械系のリスク評価基準と非常に似ているということで、致命度が5段階になっていて、発生頻度も5段階です。これも、死亡災害発生可能で年間1回未満だからリスクが低くていいのかなというところは感じたところです。当社内で3つのリスク評価基準があるわけですが、ほかの2つの基準は似通っていて、先ほどの経産省の説明にもありましたが、このようなリスク評価になっています。これが一般的なリスク評価だと思います。
 これが当社のリスク評価ですが、重篤度、発生可能性、頻度の3つの足し算だと申しました。掛け算が主だと思うのですが、やってみて意外と足し算のいいところというのが、リスクの段階を細かくできるところです。これは、先ほどの14ページと15ページのリスクの図と合わせるには、どうしたらいいかというところを工夫したものです。要は、左側が重篤度で、これは5段階に分けています。右側が作業の頻度と可能性を足したもので、これもマトリックスにすると10点から2点まであって、発生頻度プラス可能性を右側の列に並べて、当社の場合は足し算ですので、こういうリスク評価点の分布になるということです。
 17ページを御覧いただきますと、これの12点から20点がリスク高としようかと。6から11が中で、3から5が低というように割り振って、そのような優先度にすると、リスク高の分布が赤になるわけですが、こうやって見ると、致命傷が10点の場合は発生確率が低くてもリスク高になっていると。意外とやり方がよかったと自己満足しているわけですが、この改善をする前までは、ほかのリスク評価の方法と比べることができなかったのですが、そのようにして数値化して、合わせて1つの表にすると、ほかのリスク評価のマップと比べることができます。そして、結果として致命傷の場合は全部リスク高となっていたと。このような比較の仕方があると思います。
 あと、先ほど管理ポイントによるリスクの低減がルールになっているというお話をしましたが、それが18ページです。例えば工学的な隔離対策、グローブボックスを使うといった完全な対策を実施した場合はマイナス10点にして、どういった場合でもリスクが中若しくは低になると。このようなマイナス10点から6段階に分けて、こういった対策をするとリスクのレベルがこうなると。このようにすれば、現場の担当者も、どういった対策を取ればどこまでリスクが下がるかというのが分かりやすいのではないかと、そういった工夫をしました。以上が薬傷とか巻き込まれとか、危険性のリスクアセスメントになります。
 次が、化学物質の有害性評価です。これも基本的には今の考え方とほぼ一緒で、有害性レベルをA、B、C、D、Eに分けて、取扱時間、揮発性とか飛散性といった化学物質の特性から、有害性のリスク評価をやっていこうというものです。21ページになりますが、これは私の失敗と言うか、最初は換気ポイント、要は局排があるとか、全体換気しかないとか、その換気ポイントによって作業環境レベルを出していました。取扱量と揮発性・飛散性、換気ポイントで作業環境レベルを出して、年間作業時間と合わせてばく露レベルを出すと。そのばく露レベルと有害性から、これもマトリックスでリスクレベルを出して、優先度として高中低を出していたわけです。これだと非常に説明をしづらくて、それが22ページですが、こういう数字になっていて、これだとどこが高とか中とか、説明ができないのです。23ページもそうですが、有害性のA、B、C、D、Eと、ばく露レベルで、先ほどと似たような分布になっています。これを何とか担当者にうまく説明できるようにしたいなと考えました。
 また21ページに戻ります。要は、どういう換気が必要かということを認識するには、その化学物質の有害性と飛散性、それから、まずはそこでリスクレベルを出す必要があるだろうと。そのリスクレベルによって、どういった局排が必要だとか、グローブボックスが必要だとか、保護マスク程度でいいとか、それが分かるようにしようとしたのが、右側の改善後になります。
 24ページを御覧ください。換気ポイントを入れる段階もあるのですが、まず、1)の取扱量と揮発性・飛散性から、これもマトリックスで組んで、揮発性の高いものと取扱量が多いものが3点と3点だったら、足して6点とします。これも、6、5、4、3、2というように、足し算なので、段階になります。作業時間は1,500時間とか書いてありますが、これを5段階に分けまして、これも点数化して5、4、3、2、1と分けています。これと先ほどの取扱量と揮発性・飛散性の点数を合わせてマトリックスにすると、11点から3点までの段階になります。
 25ページを御覧ください。11点から3点が右側の列です。縦軸が有害性になるわけですが、要はA、B、C、D、Eを10点、7点、4点、3点、1点と数値化すれば、これもやはり足し算で高中低のマトリックスに組んで、ほぼ先ほどの機械系、A国のリスク評価と同じようなものになると。こうやっていけば、ある程度は説明することもできる。要は14点以上をリスク高とする、黄色は10点から13点だと、9点以下ならOKだということで、これだと何で高なのか、何で中なのかということについて、このようなルールだからと説明できるわけです。それが25ページになります。
 こういった化学物質と、その揮発性・飛散性、作業時間によってリスクレベルを出して、その後で、リスクが高だったらどういった換気が必要かと。例えば完全密閉とか専門家の提言に基づく対策が必要だとか、そういうような対策をすれば、ほぼ黄色はこれだけだと。おおむね対策完了だと若干残るとか、これが26ページです。その後、27ページですが、全体換気、局所排気だったらやはりリスク高は残ってしまうとか、全体換気だったらこれだけのリスクになると。このような換気のレベルによってリスクを下げるというものが、ビジュアル化と言うか、担当者が見れば分かるということで、やりやすいのではないかというところで、そういう工夫をしたということです。ただし、これは非常に定性的で、それが作業環境の測定値と整合性を取っているかとか、そういったところまではできていなくて、あくまでも段階を分けてルール化したというところになります。
 最後に28ページに、まとめと課題として挙げておきました。国内拠点のリスクアセスメント評価結果を集計しました。そうすると、評価のばらつきが結構あると。こちらの工場では7点だけれども、こちらの工場では10点だとか、結構ばらつきがあったということで、何とかそれを合わせる方向にしたいということです。安全対策については、管理的な対策と工学的対策を識別して、なるべく工学的な対策に誘導する必要があると。視覚化すれば説明もしやすいし、把握もしやすいのではないかというところです。
 あと、下から2番目ですが、課題として、取り扱う化学物質の種類が非常に多いということです。作業環境測定の対象外の原材料もたくさんありますし、なかなか実測値に基づく評価が困難だという状況になっています。あと、個別に化学物質を評価すると、どうしても取り扱う時間が少なくなってしまうので、その辺が課題かなと。例えば個々の化学物質を評価するのではなくて、工程全体として評価するとか、何らかの、もう一歩違うような評価方法が必要かなというところは感じています。以上で終わります。
○城内座長 ありがとうございました。それでは、質疑応答に移りたいと思います。御質問のある方は挙手をお願いいたします。
○漆原委員 最後の28ページのまとめと課題の一番最後の所の「個別に化学物質を評価すると短くなる」という所の説明についてお聞きします。これは、ばく露の時間を抑える方向になっているということなのか、どうしても点数を下げるために志向されているのか、あるいは先ほど工程という話がございましたが、工程で全部を見ると、その単体のばく露時間はそれほど長くはないのだけれども、お示しいただいたリスクアセスメントの表の性質上、そうなってしまうのかというところを説明いただければと。
○東京応化工業 どうしても個別に原材料を評価してしまうので、例えばリスクの高い化学物質、同じリスクAの化学物質をその工程では何時間も取り扱っている、原材料を合わせると結構な時間になるのだけれども、それを分解してしまうと、ばく露時間が個別には短くなってしまうので、ちゃんと評価できているのかなというところは懸念を持っているところです。そこは、なかなかどのように評価したらいいかというのが難しいところで、そこまでいっていないということです。
○名古屋委員 評価をするときの改善というのは定期的にやられているのでしょうか。例えば作業者自体が見たときに評価とちょっと違ってくるから、この評価は違うのではないかと。どういうタイミングを取って評価改善をしているのでしょうか。
○東京応化工業 このリスクアセスメントの見直しは、年に1回はやることになっています。これも工場ごとに違うところはあるのですが、管理が行き届いている工場は、リスクアセスメントの担当を毎回変えていくのです。担当者を年に1回変えて、今年はあなたが担当、次の年はこの人が担当と。変えていって、違う目で見ているので、そういった見直しは掛かっていると思います。
○名古屋委員 そうすると、担当者の勉強にもなって、担当者のレベルアップにもなりますね。
○東京応化工業 そうですね。だから、今までは管理点とリスク評価を一緒にして、その後でリスクの高、中、低を出していたのですが、9ページを見ていただければ分かると思うのですが、例えば危険性リスク評価で、重篤度、可能性、頻度を足してリスクレベルを出します。今までは、この後にすぐに管理ポイントで出していたのです。管理ポイントで下がる前のリスク評価が今までは見えなかったのです。これを管理ポイントで下げる前の優先度も出して、その時点で管理ポイントで評価すると。その説明を入れていなかったのですが、今回の改善の中には、そういったこともありまして、管理ポイントを入れないとリスクは高いのだと、それが分かるようにしたということです。
○永松委員 リスクアセスメントのプロセスが分かるやり方だと思いまして、多くの方に非常に分かりやすくて定着に結び付くのかなと思いました。
 1点、教えていただきたいのですが、工学的対策が最も求められるものではあるのですが、工学的対策の技術的な基準だとか、あるいは工学的対策が困難で不十分な場合に何を組み合わせるのがいいのかとか、その辺が、ある意味では職場によったり人によったりするところもあると思うのです。そこら辺の工夫を何かされていれば教えていただきたいと思うのですが。
○東京応化工業 ある意味、工学的な対策が取れる所は非常に少なくて、まだまだ、どちらかと言うと保護具とか、標準化とか、表示に頼る部分が多いというのが現状です。ただし、それをそのままではまずいというところで、この方法で洗い出して、工学的な対策に持っていきたいなとは考えています。今、その段階です。理想と現実はなかなか違うというところです。
○名古屋委員 換気のところをよくやられているのですが、例えば22ページの所を見ていくと、換気プラス防護マスクでマイナス5で、局排装置だとマイナス4になっています。でも、局排装置がちゃんと稼動していて漏えしてなかったら、保護マスクがなくても同じレベルになるはずです。そうすると、例えば作業環境測定を実施している中で、第1管理区分になって局排装置から漏えいしてこないということになったら、局排そのもの自体でもマイナス5という評価ができるような考え方になるので、その辺はうまく使っていくと良いと思います。ただ物と物を組み合わせてリスクが変わるのではなくて、単独でもその成果がそこに表れてくると、もうちょっと現実的な評価になるのかなということで。ただ単に、多いから作業環境測定の実施が難しいのではなくて、できた個別の所でもちょっと評価を変えてあげるという形があったら、うまく評価できるのかなとちょっと思いました。せっかくやられているので。
○東京応化工業 ただ、実際の現場の感覚から言うと、幾ら局所排気があっても、その使い方がまずいというのはあります。そうなると、完全に捕集できるようにここに置いてと言うといいのですが、なかなか作業種によっていろいろな使い方をやって、ある意味では、やはりマスクがないとリスクを排除できないかなというところはあると思うので、そこは一般的な常識とは違うと思うのですが、若干付けたということですね。
○三柴委員 制度論が専門の人間なので、その観点からお尋ねいたします。アセスメントをした後の対策を決めるところで、その経済的、技術的、人的な難しさというのは、どこかで評価されているのでしょうか。あるいはプロセス的にはどこで酌み取っているのかということを伺いたいなと。要するに、お金が掛かるかとか、この物質は使わないと製品ができないとか、あるいは人的なというのは教育のやりやすさとか、経営者の納得のしやすさとか、そういうところは、評価されているのか。評価されているとすれば、プロセス的にはどこで酌み取られているかということです。年に1度のチェックの機会があるとお聞きしたので、そこなのかなとは察しましたが、いかがでしょうか。
○東京応化工業 この説明には入れなかったのですが、一応リスクアセスメントの結果は、安全衛生委員会の中で報告するようになっています。それは労使折半の委員会なのですが、その中で、この対策のままでいいのかとか、それは安全衛生委員会の中で協議する事項になっています。やはりコストの面もありますし、あと予算を取らなければいけないとか。工場間のばらつきなども、中央安全衛生連絡会というのがありまして、その中で協議する形になっています。
○三柴委員 そうすると、そこでの議論によっては、アセスメントそのものに一定の影響が及ぶということはあり得るのか、そこは、頑としてアセスメントはアセスメントで客観的にという姿勢なのか、そこまで教えていただけますか。
○東京応化工業 アセスメントは担当者レベルでやりますが、それが妥当かどうかというのは、工場全体として責任者が見るということです。
○城内座長 そのほかにございますか。
○課長補佐 簡単な質問なのですが、実際にリスクアセスメントをやられる際に、作業者の方というのは参加しているのでしょうか。
○東京応化工業 例えば係長だけがやるとか、そういうことではなくて、要はローテーションで担当が変わっていくのです。
○課長補佐 担当者というのは、例えば責任者のような方ではなくて、実際に作業をやられているような方が順番にやっていくということなのですか。
○東京応化工業 そうです。その中から、いろいろな改善なども出てきますし。
○環境改善室長 22ページなどに有害性のばく露の評価の所があるわけですが、これはコントロール・バンディングのように取扱量などでやっていると思うのですが、非常に簡単に考えると、ばく露というのは測れるので、作業環境測定もありますし、個人ばく露測定もできるのですが、そういうものは全然取り入れないということなのですか。
○東京応化工業 本当に対象物質が限られているのですね。今のところ、非常に定性的にしか当社の場合はやっていないですね。その辺は、課題とは思っています。定量的なところにまではいっていないということです。
○城内座長 そのほかにございますでしょうか。では、どうもありがとうございました。質疑応答はここまでにしたいと思います。東京応化工業株式会社の豊島様、高木様、どうもありがとうございました。
○東京応化工業 ありがとうございました。
○城内座長 続きまして、JEC連合の宮腰委員より御発表いただきます。よろしくお願いいたします。
○宮腰委員 それでは、JEC(ジェック)連合からの意見を出させていただきたいと思います。まず最初に、JEC連合という組織について、冒頭ちょっとお話をさせていただきたいと思っております。JEC連合といいますのは今、組織的には10万人の組織でございまして、いわゆる名前のとおり、日本化学エネルギー産業労働組合連合会という長い名称でありますが、それを略してJEC連合という名前にしているところです。
 我々の産別の中には石油部会、化学部会、セメント部会、医薬化粧品部会や塗料部会、それに分類されない又は分類しているものも一部あるのですが、中小・一般部会というのもあり、JEC連合の中ではこの化学部会という組織が一番大きな、今、大体6万人ぐらいいる組織になっております。先ほど言ったとおり、我々は化学・エネルギー産業に従事する労働組合で構成された連合会でありまして、名前のとおり、化学製品の製造又は販売、流通、そういった部分に携わっている、そういった日頃から化学物質には触れることが非常に多い環境にある中で仕事をしている者の集まりでございます。
 その中で、我々として、現行の事業場における化学物質の管理に関する制度への要望になります。我々はあくまでも、有害性を認められたものに関しては、きちんとそういった部分にのっとって作業をしているわけでありますし、労働組合として、やはり働く者から1人もそういった部分での被害者やそういった人たちを出したくないということは当然の考え方ですので、その部分は皆さんと変わりない考え方でございます。
 その中で今回お話させていただきたいのは、資料としては2点ですが、口頭でもう一点だけお話をさせていただきたいと思っています。その2点に関しては、これまでの中で有害性や保健衛生上の危害が認められないような事例が一部にあった中で、そこに関する意見として今回出させていただきたいと思っているところです。
 そもそも、なぜ労働組合がこのようなことを言うかと言いますと、物質そのものが有害性があるのではないかというように言われている中においても、そこで働いている、作っている、従事している作業員からしますと、全くそういった認識を持っていない状況もございますし、いろいろな健康診断等についても、そういった部分で被害が出ているという状況でもない。そういった中において危害が認められるとなると、いろいろな部分、販売の部分が落ち込んでいくのではないか、それが落ち込んでいくことによって企業体質も落ちるのではないか。そういった部分を非常に懸念している中において、扱っている企業の労働組合の委員長から、「この部分を何とかしてもらえないか」という相談を受けている中で進めてきている内容です。
 その中でまず1点目が、ちょっと次の資料になりますが、ポリ塩化ビニルについてです。ポリ塩化ビニルの安衛令別表9の通知対象物とすべき検討に係る経緯という部分が、この四角に囲ってある中にございます。2015年度に、化学物質のリスク評価に関わる企画検討会報告において、継続検討すべき物質であるというように勧告されております。2016年度にはGHS分類として区分を指定されており、化学物質のリスク評価に係る企画検討会報告書の中で、今後の考え方を整理すべき物質という形で、確か4物質だったと思いますけれども、その中の1物質にこのポリ塩化ビニルが指定されました。その中で、物質固有の有害性ではなくて、粉状としての有害性であるというように結論付けられたところでした。それを受けまして、2017年度に安全衛生部長の名前におきまして、「粉状物質の有害性情報の伝達による健康障害防止の取組について」といった通達が出され、ポリ塩化ビニルを扱っている業界団体の中でSDSの見直しが図られたという経緯でした。
 ただ、このポリ塩化ビニルの部分につきましては、物質及び混合物に固有な有害性情報に関する情報伝達を目的に整理をされている、GHSの整理がされているわけです。このGHSの分類があるということで、それ自体に固有の有害性があるといった誤解又は風評被害、その中で、これを使っている現場もそうですし、さらにポリ塩化ビニルを作っている、生産しているメンバーもそうでありますし、さらにはそれを使う消費者、その部分にも混乱を招くおそれがあるのではないかということを懸念をしていたというところです。この別表9に追加するに当たりましては、GHSの分類というのは非常に必要であると思っておりますが、どうしても結果に先んじた中でGHSを定めたといったプロセス、そういった部分の見直しを今後していただく余地があるのではないかということも、これを進めている中で思っていたところです。
 また、2016年度に報告書が出されておりまして、不活性の粉状物質の吸入自体が問題となる物質というのは非常に多岐にわたっている、その中で、法に基づく表示の通知義務を課すべき固有の有害性があるか、こちらに留意して検討する必要があるということも、報告書の中では記載をされております。また、同様の状況にありますほかの粉じんについても、GHSの分類に反映させずに単にSDSの中で情報を伝達する、そういったような整理もできるのではないかということも、その中で考えられていたところでした。
 次のページが酸化チタンに関してです。こちらも、酸化チタンを扱っている単組からの要望の中で動いてきた内容でございます。酸化チタンの健康障害防止措置検討に係る経緯ということが下に書いてあります。これは、もっと早い段階、2009年度に有害ばく露作業報告対象物質として選定されたものでしたが、2017年度、化学物質による労働者の健康障害防止措置に係る検討会での検討が開始をされました。2018年度になり、物質特有の有害性か粉じんとしての有害性かが未確定である、そういった状況であるということから、措置検討会の中で検討が一旦中断になっております。化学物質のリスク評価検討会に議論を差し戻して、研究機関に長期発がん性の試験を委託し改めて有害性の評価を実施するという形になっております。
 これまでの経緯の中で考えられたのが、措置の検討会につきましては、化学物質のリスク評価に関わります企画検討会又はリスク評価検討会の議論を経て、そういった規制措置等が必要とされた物質について健康障害防止措置を検討する会議であると思っており、検討中の物質は間もなく規制されるというように認識されるのが一般的です。その中で、酸化チタンにつきましては、議論をリスク評価検討会に差し戻した結果については非常に適切ではありますが、そもそもの初期のリスク評価における有害性評価小検討会又は発がん性評価ワーキンググループでの検討の在り方には、見直しの余地が若干あるのではないかと考えているところです。特に、このIARCの区分に依存するようなプロセスの中で、IARCでの区分根拠となりました論文、これがいろいろなところで出されておりましたけれども、その質又は試験の信ぴょう性・正当性、これに少し疑問な部分もあり、これをきちんと見極めた上で俎上に乗せるべきではなかったのかと考えているところです。
 いずれにしましても、物質固有の有害性と粉状としての有害性の見極めによります議論の混乱、先ほどのポリ塩化ビニルも含めまして、混乱が続いているということもございます。そういったことから、検討中のこういった風評被害又は使用現場の混乱といった部分も踏まえた上で、これは第1回のときにも私のほうからお話させていただきましたが、特にその中でも酸化チタンにおきましてはナノ物質、これに関して職場の中では非常に心配しているという声が上がっておりますので、この管理の在り方につきまして、国際的な議論も踏まえた新たな指針を早急に取りまとめる必要があるのではないかと考えているところであります。
 最初のところに戻りますけれども、これを少しまとめたのが3ページ目になります。3ページ目に書いていますが、検討過程での非有害性の実証を鑑みていく中で、候補物質のリストアップの在り方の部分については、やはり見直しの余地があるのではないかと考えております。また、労働者としましては当然ですけれども、真に有害性がある物質につきましては、前にありましたベンジンであったりオルト-トルイジンもそうでしたが、早期の規制や適切な管理下におかれるべきである、私たち労働組合としてもそういった立場にございます。ただし、不用意な検討そのもの自体が、風評被害又は使用現場での混乱を一部製品の中で招いていることも一方では御理解いただきながら、化学物質の管理・規制は、あくまでもレギュラトリーサイエンスに基づいた考えの上のもので、国民の生命と健康の保護が今後図られるように、検討プロセスを柔軟に見直せるような体制を取っていただきたいと考えているところです。
 私は今、労働組合に携わっておりますけれども、もともとの出身は製造現場で働いていた、交代勤務で化学製品を作っていた者ですので、やはり有害の部分についてはちゃんとのっとって対応してきている、その中において、あえてこういう意見を出させていただいております。
 ここの中で、資料はちょっと付けておりませんが、今現在、もう一点だけその中で危惧しているものがあります。製品名は改めて今回は出さないようにさせていただきたいと思っております。これは、いわゆるちょっとした原料の部分で、毒性物の新規の指定に関わる部分で今検討されている内容です。こちらの問題点として今、我々として話をしているのは、この製品そのものがGHS分類で欧州では4という形にありながら、国内のほうでは2で、国際の調和が取れていないという状況が散見されていることです。その中で、「我が国では国連勧告の分類はそれにされていないのではないですか」というところが指摘として挙げられています。
 さらに、なぜ私が今この製品を出せないのかと言いますと、毒性試験をしている最中でして、固体のものなのかミストのものなのかという部分が、どうも毒性試験の入口の部分でちょっと勘違いされているようです。固体のものをミストにして毒性試験をしますと、どうしても毒性が高くなってしまう。ただし、それは固体のもので、ミストで扱うことはない中で毒性だと言われている部分がちょっとおかしいのではないかということを、我々としては今訴えているところです。
 ただ、こちらについても毒性があるとするならば、我々はすぐにでも、手を避けてでもそういった部分で粛々と対応を取らなければいけないという立場ですので、すみません、この部分については口頭だけでお話をさせていただくこととさせていただきたいと思います。JEC連合からは以上です。
○城内座長 それでは質疑応答に移りたいと思います、御質問のある方は挙手をお願いいたします。ございませんでしょうか。
○大前委員 すみません、よく理解できなかったところがございます。3ページの一番最初、「近年、化学物質管理・規制の検討において、結果や有害性として保健衛生上の危害が認められない」と、これはどういう意味ですか。結果としてOKだったら全然問題ないのではないかと思うのですが。
○宮腰委員 そこに行き着くまでにすごく時間を要していたというところもございます。結果的にそうであったからよかったというのはそのとおりだと思っていますが、ただ、そこに行き着くまでにはかなり現場の中で混乱を来していたという部分もございますので、なるべくそういった不要な混乱は最小限にとどめていただきたいということが我々からの思いです。
○大前委員 続けてよろしいですか。やはりよく分かっていないのですが、リスク評価をやるときのプロセスとしては、現在存在するデータを使ってリスクがあるかないか、例えばIARCの場合ですと1や2Aや2B等々で発がん性がありそうだということをもって、ではリスク評価をやろうか、そういう定性評価ではなく定量評価という形でリスク評価をやろうかという形でものが選ばれて、[KDO1] 最終的にはリスク評価委員会から措置検のところまで行くことになるわけですが、そのプロセス自体にそれほど違和感を感じないのです。先ほどのお話、[KDO2] 例えば措置検で酸化チタンのことが例として挙げられましたけれども、酸化チタンに関しても、結局は酸化チタン自体の性状でこの実験結果が本当に使えるかどうかということで今、1回戻っているような形になっていると思います。そういうプロセス自体は、そんなに皆さんに混乱を起こすようにはなっていないと思うのです。
 それから風評被害はちょっと別の話ですね。風評被害というのは、要するに労働者の場合ですと現場に正しく情報が伝わっていないということなので、これは正しく伝える必要があるということだと思います。風評被害のことはちょっと別にして、余り違和感は持っていないのですが。
○宮腰委員 実のところ、結果論で言えば違和感というのは多分ないと思っています。ただ、我々、最初の段階から「これはちょっとおかしいね、有害ではないんじゃないの」という、入口からずっと携わってやってきていると、何となく最初に基づいている根拠になっている部分がちょっと疑問だなというところが一部出てきたりとか。すみません、私もそんなに科学的見地が高いわけではないので、それすらが正しいかどうかというのは怪しい部分もありますが。その中で、途中のプロセスについては、最終的にはそのプロセスがあるからこそ、今、段階を戻っているのだというようには思っていますが、そこへ行くまでの最初の段階の部分をもう少しきちんと検討いただけないかということを今お願いしているところです。
○名古屋委員 リスク評価の検討会で委員をやっているのでお話すると、要するにリスク評価をやるときというのは、年間500kg以上の有害物を取り扱っていないとリスク評価対象物質になりません。リスク評価に係わる企画検討会へ対象物質の報告書が集まってくるまでに1年掛かります。その後、今度、報告書の有った事業場の内からばく露濃度が高いと推測される事業場の作業者に対してばく露濃度測定するのです。ここのところが大きな問題で、例えば取り扱っている所が100以上あったとしても、では測定させてくれる所はどれぐらいあるかといったらほとんどない、皆さん拒絶する。そうすると、報告書のあった事業所の数に対して何個以上の事業場でばく露の測定をしなさいと決められているので、そこを確実に実施するために1年、2年掛かるわけです。その状態で長くなる部分もあるので、プロセスの中できちんとはやられているのだけれども、現場の協力。それからリスク評価をいろいろやっている形の中で、本当に今まで違和感なくきちんとやられて評価されて、270物質ぐらい実施していて、その内の20何物質が規制対象物質になっています。それだけやっていますけれども、きちんとやっている、その全部を見ていくと、多分大前先生が言われるように何も違和感なくてできてくるのではないか。ただ長くなる部分は、どちらかと言うと、現場とのばく露濃度測定のところでかなり行き詰まっている部分があるからということを理解していただければ有り難いと思います。
○環境改善室長 教えていただきたいのですが、風評被害が具体的に何を指しているのかと、使用現場の混乱というのがよく分からない。もともと、風評被害というのは、本来リスクがないものが、あたかもリスクがあったかのように評価されることだと思うのです。リスクがあるかどうか分からない状態で風評被害というのは、そもそも言葉の定義上あり得ないと思うのですが、その辺、ちょっと御説明いただけますか。
○宮腰委員 言葉の定義上でいきますと、確かに実際に表に出ていない中では風評被害ということにはならないと思います。先ほどの話で、ポリ塩化ビニルについても結局はそういったリスクがない、粉体としてのリスクがあるという形にはなりましたが。その部分で、出来上った製品そのものにはリスクがないということでありましたので、それはもう風評被害になっております。それが有害となったときには風評被害が出るのではないかというようなおそれを感じた中で、我々としては動いていたという考え方でございました。ちょっと言葉的におかしいでしょうけれども。
○環境改善室長 現場の混乱というのは。
○宮腰委員 現場の混乱ですね。もともと現場では有害性がないというようにずっと判断をしてきて、長くその製品を作ってきました。その中で、急にそれが有害性だと言われたときに、やはり現場のほうは本当にそれを今までどおりに扱っていていいのかどうかという部分で、いろいろと混乱を来していた。ただし、それが有害であるのであれば、当然粉体の部分についてはもう絶対にならないように、マスクもしながら対策はもう既に取っておりましたが、それが有害だとなったときにはどういうように作業すればいいのかということで、いろいろと混乱を来していたと伺っています。
○城内座長 私も関わっていたことでいろいろ御指摘を頂いたので、少しお答えしたいと思います。酸化チタンとポリ塩化ビニルの問題について個別にこれからどうしようということは、ここでは議論する立場ではないかなと思っていますので、総論的にお答えしたいと思います。個別の問題があるものについては、それはGHSもそうですし日本の法令でもそうだと思いますが、確かなデータがあれば、今もそうですし過去もそうだったと思うのですが、書換えはあります。御懸念があれば、多分データがあればGHS上というか、欧州でもそうですが、書き換えるシステムはちゃんとあるので、そうしていただければ良いと思います。多分、前の段階でいろいろな御懸念があって、いろいろ御相談なさったりとかしていると思います。
 ただ、今もいろいろお話があったのですが、評価は今まであるデータでやりましょうと決めていますので、それをなしにすると評価は何もできなくなる。そういうことで、もし危険有害性があったりリスクがあったら、その情報をまず病気にならないために出しましょうというスタンスでやってきていますので、実際の現場で今まで使ってきたのに、何もないのになぜ突然GHSで分類されるわけみたいな話は実はたくさんあります。それは本当に申し訳ないかなと思います。ただ、逆に言うと、日本ではそういうシステムが今まで何もなくて、事故もいっぱい起きてきたということもありますので、そこのところをどちらも考えていただいて、お互いにいろいろ考えながら進んでいくしかないかなと思っています。申し訳ありません。
 そのほか、御意見等ございますでしょうか。それでは質疑応答はここまでとしたいと思います。JEC連合の宮腰委員、どうもありがとうございました。
 最後にUAゼンセンの高橋委員より御発表いただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○高橋委員 UAゼンセンの高橋です。先週の金曜日まで加盟組合のヒアリングをしておりまして、資料がまとまっていなくて大変恐縮なのですが、現場からの生の声をできるだけお伝えしたいということで本日ご用意いたしました。足りない部分については口頭で御説明したいと思います。
 まず、UAゼンセンの正式名称は全国繊維化学食品流通サービス一般労働組合同盟と言いまして、名前のとおり非常に幅の広い業種の組合に加盟いただいている産別組合です。今現在、約2,400の組合に加盟いただいており、人数は179万人です。大まかに構成を申し上げますと、女性が6割、パート、短時間で働いている方が6割の組織です。企業規模で申しますと、300人未満が全体の7割を占めるということで、多くは全国の中小企業の組合だということです。
 UAゼンセンの中では、業種によって大きく3つの部門と呼んでいる組織に分かれております。製造、流通、サービスでして、このうち、今回は製造部門に所属する中小の組合にヒアリングをいたしました。
 まず、ヒアリングの結果に入る前に、UAゼンセンの取組ということでお話をしたいと思います。産別組合としましては、やはり職場の安全ですとか健康に関しては、労働組合も率先して取り組むべきという方針を掲げておりまして、毎年、「全国安全週間」とその準備月間に合わせて、「職場総点検運動」を実施しております。組合の目線で職場の安全衛生を必ず年に1回は確認しましょうということで、毎年実施しております。その中で、このポイントは必ず見てください、というものをチェックシートの形式で設けて、それを基に各組合でチェックを頂いています。
 4ページ目をご覧ください。今年、製造部門が行ったチェックリストの結果の一部を抜粋してお持ちしました。化学物質に関連する項目は3つになります。回答を頂いた組合は251組合で、組合員規模で申しますと、1,000人以上が28組合、300~999人が60組合、300人未満が163組合となります。設問の内容ができているか、あるいは、できていないかというチェックシートになりますので、回答は○×△になるわけですが、意味としましては、○はできてます、△はある程度できてます、×ができてませんということになります。まず、化学物質のリスクアセスメントが実施されていますか、ということについてですが、できている、ほぼできているがほぼ8割から9割ですので、おおよそできているのだと捉えることができますし、これについては、企業規模に関係なくほぼできているように見えます。ただ、ある程度できているというのが10%ぐらいありまして、このある程度というのが何を意味するのかというのが1つ疑念でした。それから、300人未満については、できてないという組合がある程度存在するということが分かります。
 次に、危険有害度を低減させる措置を講じていますか、ということについてですが、この設問では化学物質だけではなくて、機械、設備も含めて低減させる措置を講じていますかということになっていますので、その辺は注意する必要があります。ここでは、1,000人以上の大手の組合については、ほぼできているという結果だったのですが、企業の規模が小さくなりますと、○が減り△が増え、ほぼできている、ある程度できているという組合が増えてくるという結果になっております。
 3番目の、全ての危険有害な物質に有害性を警告するラベルが貼り付けてありますか、ということについてですが、企業の規模に関係なく、大体7割ぐらいの組合でできていますという結果でした。残りの2割については、ある程度はできているという回答でした。以上の結果を見てみると、化学物質の管理はおおよそできているということではありますが、労働組合としてはできるだけこれを100%に近づけていきたいと思っております。また、ある程度できているというのがどういう意味なのかにちょっと疑念が残りますので、その辺をヒアリングの中でも聞いてみることにしました。
 1ページ目に戻り、中小企業における化学物質管理の現状と課題についてです。今回、加盟組合の幾つかにヒアリングをいたしました。薬品メーカーが5社、繊維加工メーカーが1社で、いずれも中小企業です。結果を一言で申し上げますと、化学物質管理の理想的な姿には届いていないけれども、法規制の対応を含めて、違反をしないようにやっていますということでした。ただ、中小企業は大手に比べて人数にしても会社の資金にしても不足しているということ、さらには、サプライチェーンにおける企業の位置付けから、いろいろな形で情報提供を依頼されるケースが多くて、限られた経営資源の中でかなり厳しい対応と言いますか、忙しく仕事をしている、そのような回答が多く寄せられました。
 では具体的に御紹介していきたいと思います。まず、管理部署とか担当者ということです。化学薬品メーカーにおいては、やはり扱っているものが化学物質ということもありまして、専門の部門あるいは部署がありまして、それなりに対応を取られている印象を受けました。企業によって体制は違いますが、職場ごとに担当者を置いたり、あるいは、複数の工場を持っている企業では、それぞれの担当者が定期的に集まって情報交換を行ったりということで、化学物質に関する安全の取組を積極的になされている印象です。
 一方の繊維加工メーカーですが、こちらについては担当部署はないということで、スタッフ部門のある1名の方がその他の業務と兼任して化学物質の管理を行っているということでした。この方は、もともと専門家ではないということで、前任から業務を引き継いで、
かなり苦労されたというお話でした。今、担当になってから7年になり、前の担当の方もかなり長い間されていたということです。担当になって1年目は、化学物質の管理業務しかできないほど、作業の内容も多ければ提出書類も非常に複雑で難しかったということですが、7年たった今ではほかの仕事もできるようになってきましたということです。やはり専門の知識がないとなかなかこの仕事はできないし、その担当者に負担がのし掛かる状況にあるということです。一方で、企業規模が小さいからということだと思うのですが、1人だから効率的にできる仕事もあるという例も紹介していただきました。例えば、新たに規制物質が追加されたとなったときに、取引先からこの物質を使っていないかどうか調査をしてほしいという依頼が入ってくるわけですが、企業規模が小さいので、この方がほぼ入出庫の管理を1人で担当しているということで、過去に遡って調査をする必要がある場合、どこにどんなデータがあるかが分っており、例えば部下がいてその人に仕事を命じるよりも、自分でやったほうが仕事がスムーズに進むとおっしゃっていました。また、後任はいらっしゃいますかと聞きましたら、今はいませんということでしたし、自分がもしこの担当から外れたら、もう二度とこの仕事はしたくないということもおっしゃっておりました。それぐらい非常に負担の多い仕事なのだろうと思います。
 続いて、安全教育、作業標準書についてです。どの企業においても導入教育をはじめ、年間を通じて様々な安全教育がされているということでした。基本的にはOJTというのが多かった気がします。それから作業標準書については、法改正などがあったときに見直しをするということで、随時見直しをするということは行っていないというお話でした。一方、不休業災害が実際には発生しておりまして、これをどうしたものかと懸念をされているそうです。ルールを厳罰化すれば当然減るだろうということではあるのですが、どこまでも厳罰化すればいいというものでもありませんので、対応が難しいということでした。それから、後の話にも関わってきますが、例えばハード面で対策をしようと思ったときには、やはり企業の経済的な負担がかなり大きくなるので、なかなかこれは難しいということもあるようです。さらには、保護具を用意するのもそれなりに費用が掛かるものですので、中小企業にとっては大きな負担になっているというお話もありました。
 続いて、SDSやラベルの貼付けについてです。製品として出荷する化学物質については、当然SDSを交付してラベルを貼っていますということだったのですが、一方で、社内で使っている薬品については、例えば研究開発で作成した試験管レベルの化学物質については、まだできていませんということでした。理由としては、扱っている薬品の種類が非常に多いということと、安定性の試験を外部に委託すると、それなりに費用が掛かるということで、試験管レベルで使用しているときにはこういったことはおこなっていなくて、これをスケールアップするときに安定性試験を初めて行って、SDSを作ってラベルを貼るということでした。先ほどのチェックリストの結果にありましたうちの3番目で、ほぼできているというのが20%ぐらいありましたが、中小も大手も関係なく研究開発はされていると思いますので、そういった研究レベルの化合物が一部出来ていないということが結果に反映されているのではないかと考えております。
 続いてリスクアセスメントについてです。一言で申しますと、リスクアセスメントをしていますかと聞かれたら、していますと答えます、という回答でした。ただ、リスクアセスメントの実施について十分満足しているかというと、そうではありませんという答えが返ってきました。具体的にどういうことかと言いますと、3つほど理由を挙げることができます。まずは、薬品の種類が多いということです。先ほどのラベル貼り、SDSの話にも通じるものなのですが、扱っている薬品の種類が多く、特に中小企業はニッチな製品を作っているため、少量多品種を扱っているということです。年間を通じて同じ薬品を作っているわけではなくて、時期ごとに少量ずつ種類の違う薬品を作っているので、扱っている化学薬品の数が非常に膨大だということらしいのです。企業規模の割に取り扱う薬品の種類が多いので、なかなか全てのリスクアセスメントを行うまでには至っていませんということでした。ある組合の方に聞きましたら、数年単位でリスクアセスメントをする予定を立てていますということもおっしゃっていましたので、それぐらい数がたくさんあるというのと、担当する人がいないということなのだろうと思います。
 2番目が、今も言いましたが人手が少ないということです。化学薬品メーカーでは、担当部署を設けておこなっているのですが、それでもやはり化学薬品の種類が多いので、なかなか作業が進みませんとおっしゃっていましたし、繊維加工メーカーでも同じ意見でした。人がいればもう少し早くできるのだけれど、というお話です。
 3つ目の十分ではないと言っている理由は、リスク低減措置のことです。意見の中では、低減措置の実施は努力義務なので実施をしていませんという話も出てきました。語弊がないように申し上げておきますが、危険性ですとか有害性が高いにもかかわらず低減措置を行わないということではなくて、リスク評価をした結果、それほどリスクが高くないので、それ以上リスクを下げるというような低減措置はしていませんということで捉えていただきたいと思います。また、例えリスク低減措置をしなければならない、あるいは施すことになったときにも、本来は最終的な手段であるはずの個人の保護具で対応せざるを得ないというのがほとんどでして、それありきでリスクアセスメントをやっています、という言い方もされていました。代替物質を見つけたりとか設備を改善するのは、中小にとってはなかなか負担が大きいことですので、最終手段であるはずの保護具で対応しなければいけなくて、本当にこれでリスクアセスメントをやっていると言ってもいいのでしょうか、ということをおっしゃっていました。作業者にリスクを負わせることになりかねないので、リスクアセスメントが十分にされているとは思えないという意見でした。
 3ページ、法規制に対してです。一言で申し上げますと、管理というのは法律で決められておりますので、法違反をしないようにやっていますということです。ただ、制度変更があると何かと負担を強いられるのは私たち中小企業ですというのが、皆さんがおっしゃっていた共通の意見だったと思います。4つほど書きました。1つ目は、これは安全というよりも企業経営についてということだと思います。規制によって使えなくなったり使いにくくなった化学物質が増えてきたのだけれども、例えば長期安定性があるというのは、製品性能の安定につながるので、工業的には非常に有用な化学物質であるのに、これが使えなくなると、中小としては代替物質を見付けるのはなかなか難しいし困るということです。あるいは、規制物質が増えてくると、逆に、新しく化学物質を作り出すのが難しくなってくるので、競争力が下がってしまうことにもなるのです、というお話がありました。
 2つ目は、規制となる化学物質が追加されると、取引先から、使っていないかどうかという調査が当然ありますし、それを過去の納入品に遡って確認をするのに、非常に労力が掛かるということです。さらには、3番目になりますが、供給先ですとか外部委託における管理状況の確認が求められたり、さらには、場合によっては顧客の管理状況まで確認を求められることがあって、中小でそこまで確認をするのは負担が大きいというお話がありました。4番目は、安全というよりも、どちらかと言うと取引慣行に関わるところかもしれませんが、最近、サステナビリティの取組が非常に広がっているということです。例えば、グリーン調達ですとかCSR調達を取り入れる企業がどんどん増えてきています。環境ですとか人権に配慮した原材料・製品かどうかまで回答を求められることもあれば、さらに、業界によっては自主規制としていろいろな認証システムを持っていて、この認証システムを入れないと取引しません、ということもあると聞いております。法律とは別の管理となりますが、化学物質管理という枠組みの中で、担当者は様々な要望に広く答えなければいけないということで、従来に比べるとかなり作業量も増えてきて、非常に負担となっていますということでした。
 それから、化学物質の廃棄についても意見がありました。廃棄も企業の責任ではあるのですが、実際の廃棄業者は意外と少なくて、あったとしても非常に費用が高いということです。これも中小企業には負担になっているので、情報提供などをしていただけると有り難いというお話でした。
 以上を踏まえて要望としてまとめると2つになると思います。1つ目は、職場で運用ができる制度にしてくださいということです。法律は当然守るのですが、業務量が非常に増えてきているので、職場できちんと対応ができるような制度にしてほしいということでした。例として、先ほども触れましたが、研究開発で扱っているような非常に少量な薬品については、リスクアセスメントの対象から外すとか、そういった対応はできないだろうか、というお話がありました。
 2番目は、安全を確保するための補助金を出してもらえないかというお話でした。化学物質に対してはある一定レベルの安全水準が確保されるべきだと思うのですが、実際には企業規模によって差が生じているように感じられます。企業の経済的な理由で作業者個人にリスクが転嫁されることはあってはならないと思いますので、一定の安全水準を確保するのに必要な最低限の補助については是非考えていただきたいと、これは多くの担当者の皆さんからお話がありました。
 まとまりのない話で大変恐縮ですが、中小企業の担当の方は非常に苦労されているというのが第一印象でした。その中で、最低限、法律を守ることはやるのだけれども、法律が掲げる理想に対してどうかというと、やはり理想と、今、自分たちがやっていることにギャップを感じていらっしゃるという印象を受けましたので、申し添えておきたいと思います。私からは以上です。
○城内座長 ありがとうございました。それでは質疑応答に移りたいと思います。御質問のある方は挙手をお願いします。
○中澤委員 1点御質問したいと思います。このアンケートは組合員の方へのアンケートなのでしょうか。あるいは経営者サイドに対するものなのでしょうか。それから、私の知見だと、中小企業で化学物質そのものを作っているメーカーはあまり多くないという認識を持っていまして、どちらかと言うと、その物質を製品化したものを利用するユーザー側のほうが圧倒的に多いのではないかと思っています。ここのところで試験管の話を、SDSの話をされておりましたが、この会社さん自体というのは研究開発の部類に入るような企業さんということですか。
○高橋委員 ありがとうございます。まず1点目のアンケートですが、労働組合を対象に行っております。組合に対してこのチェックリストに従って回答してくださいとしていて、それぞれの会社、あるいは職場で、できている、できていないという回答を頂いています。それから2番目ですが、私どもUAゼンセンの加盟組合では、メーカーよりもユーザーのほうが圧倒的に多いと思いますが、その中でも、中小規模で化学薬品を作っている組合がありまして、今回は化学物質に関する検討会ということでしたので、両方の立場からの意見ということでお聞かせいただいたということです。
○城内座長 そのほかございませんでしょうか。
○三柴委員 貴重な御報告をありがとうございます。2点伺いたいのですが、1つは、資料の最後に付けていただいた資料の表の部分についてです。一番最後のラベルの貼付けについてのデータで、○の数が企業規模によって違うという理由がよく分からない。というのも、例えば300~999人の規模についてはラベルの貼付け率が低いわけですが、Q1を見ると、リスクアセスメントはむしろ1,000人以上よりよくなっているということで、この矛盾は誤差と見ていいのかよく分からない。このデータを信用すると、そのまま受けると、ユーザー側、譲渡提供者でないユーザー側が独自にラベルを貼り付けていることを前提にしないと、この誤差は説明できないように思うのですが、その点どう、何かお感じになられていることがあったら教えていただけないかと、まず1点目はそこなのですが、お答えいただければ。
○高橋委員 ありがとうございます。私もこの数字を見たときに何でこの差があるのだろうと思いました。ただ、第1回検討会の資料でも、リスクアセスメントをされている企業の割合ですとか、ラベルの貼付けをされている割合の結果が出ていて、確かラベル貼付けをしている割合のほうが少なかったのではないかと記憶しているのですが、それと同じ傾向ではないかと思っております。ラベルを貼り付けて出荷しているものと内部で使っているものの差なのかどうかというのは、個別に聞いていかないとなかなか分からないもので、全体の集計の中での数字としてしか把握できていません。
○三柴委員 分かりました。ありがとうございました。もう一点だけ。これはちょっと突っ込んだお尋ねになってしまい、お答えになりにくいかもしれないのですが、例えば建設安全などで調査を掛けると、実のところ、現場労働者のリスク対策力というのが、従前は、少なくともこれまではかなり信用できた。要するにお行儀のいい労働者と言ったら語弊がありますが、そういう方が非常に多くて、海外であれば、そもそも設計段階から安全にすることが重要だけれども、日本の場合は、現場労働者はかなり信用できるからそこで何とかできるという感じを受けました。では化学物質についてはどうなるのだろうということです。確かに労働力の高齢化とか限界があるから、そこにばかり頼れないということは構造的にあるわけですが、日本的な経営を考えたときに、例えばトヨタ式の改善という方法も、基盤はそこではないか。というように、現場の改善力を信用するということがあるとするならば、それは変わったのか、あるいは変えるべきなのかという点について御見解があったら、ちょっと難しいと思いますが。
○高橋委員 まず企業規模によって、それは随分変わってくるのではないかと思います。先ほど東京応化さんの御説明がありましたが、大手の企業になりますと、法的な規制を含めてやらなければいけないことが増えてきましたので、職場の安全のレベルを上げるために積極的に取り組んでいて、以前に比べると管理のレベルが上がってきていると思います。そこに、個人の安全力をどのように上げていくのかについては、多分企業が一番苦慮しているところではないかと思います。先ほどの東京応化さんの話ですと、化学物質管理の担当者を毎年変えているというお話でしたが、あれがOJTの理想とする姿ではないかと思うのです。今回、中小の話を聞きますと、必ずしもそのようにはなっていません。しかも、そこでさらにユーザーとメーカーではやはり体制が違っていて、中小でもメーカーは、例えば作業主任者を取りにいきなさいとか、個人のレベルを上げようとすることは組織の中の方針としてやられているようですが、ユーザーになると、さすがにそこまではないような気がします。管理部門やスタッフ部門が中心となって管理をしていますが、基本的な作業は部署に任せて、それを集約しているという感じで、やはり大手と中小では取組方も違うという印象を受けます。
○城内座長 そのほかございますでしょうか。では私から1つお伺いさせてください。例でとても面白いと思ったのは、1ページ目の下、化学物質の管理は大変で、逆に1人のほうが効率的にというお話です。私自身もやれと言われたら、今ここでは労働安全衛生法について主に議論しているわけですが、毒劇法があって化審法があって、PRTR法があって労働安全衛生法があってと、とてもやり切れないではないかと実際思っています。そこで、例えば外部の化学物質管理に精通した人がアウトソーシングとしてあれば利用できるのかとか、実際にそういうのを利用している会社、そういうOBの方とか利用している会社があるのかどうか、その辺はいかがでしょうか。
○高橋委員 私の知る範囲では、そういうことをされている組合は聞いたことがありません。今回ヒアリングに行ってよく耳にしたのは、人がいないというのとお金がないということでしたので、例えば中小で外部に委託することになると、それも、費用対効果でという話になってくるのではないかと思うのです。今、体制は十分ではないかもしれないけれど管理の仕事は運用できているということであれば、今のままでいいとなるのが、多分、中小の大方の方向性ではないかと思います。
○城内座長 一番最初の取っ掛かりが一番大変だと思うので、例えばそこだけでしたらフルでなくてもできるのではないか、あとはそれを少し伝達していけば。ちょっと感じたものですから質問させていただきました。ありがとうございます。そのほか、お願いします。
○環境改善室長 保護具の関係で、リスクアセスメントした結果も含めて保護具に頼らざるを得ないという記述があるわけなのですが、例えば作業環境測定が義務付けられている物質であれば、第1、第2、第3管理区分の世界で、第3管理区分であれば2とか1に戻していく、その前提を守ればマスクは余り要らないという疑問があります。これは、そういう作業環境測定が義務付けられていない物質のことを前提にしているのか、それとも、義務付けられているが、これが実態なのだ、ということなのでしょうか。
○高橋委員 今回はそこまで分けては聞いておりませんでしたので、リスクアセスメント全般ということでお聞きしたらこういう回答が返ってきたということです。保護具として手袋が必要ですという薬品があって、それを卸している取引先に現場査察のような形で訪れたところ、そこでは素手で扱っていた、そのようなこともありますという話も聞きました。
○城内座長 そのほかございますでしょうか。ありがとうございました。それでは、質疑応答はここまでにしたいと思います。UAゼンセンの高橋委員、どうもありがとうございました。
 以上で、本日予定していたヒアリングは全て終了しました。改めまして、検討会を代表して、本日お越しいただいた関係者の方々に感謝申し上げます。どうもありがとうございました。本日ヒアリングした内容については、事務局でまとめていただき、次回共有いただければと思います。もう時間も押していますが、最後に、委員の皆様から全体を通して何か特段の御意見等がありましたらお願いします。よろしいでしょうか。ありがとうございました。では本日の議事はこれで終了となりますが、次回も引き続いて関係者からのヒアリングを行いたいと思います。次回の対象者についても、私と事務局で相談したいと思いますが、よろしいでしょうか。事務局から連絡事項などありましたらお願いします。
○課長補佐 本日、長時間にわたりまして活発に御議論いただきましてありがとうこざいました。本日の議事録については、皆様に御確認いただいた上で公開することとしたいと思います。次回は、12月6日金曜日の14時からの開催を今のところ予定しておりますが、また改めて正式に御連絡させていただきたいと思います。
○城内座長 それでは以上で、第2回職場における化学物質等の管理のあり方に関する検討会を閉会いたします。どうもありがとうございました。