2020年7月29日 第5回化学物質による疾病に関する分科会 議事録

日時

令和2年7月29日(水) 10:00~12:00

場所

中央合同庁舎5号館仮設第4会議室(2階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

参集者:五十音順、敬称略
上野晋、圓藤吟史、武林亨、野見山哲生

厚生労働省:事務局
西村斗利、西岡邦昭、中山始、中村昭彦 他

議題

(1)労働基準法施行規則第35条別表第1の2第4号の1の物質等の検討について
(2)その他

議事

議事録

○古山係長 定刻になりましたので、「第5回労働基準法施行規則第35条専門検討会化学物質による疾病に関する分科会」を開催します。先生方、本日はどうぞよろしくお願いいたします。
委員の先生方におかれましては、大変お忙しい中お集まりいただき、誠にありがとうございます。野見山先生、武林先生、上野先生におかれましては、オンラインでの御参加となりますが、どうぞよろしくお願いいたします。また、武林先生におかれましては、所用により11時頃までの御出席となり、角田先生におかれては、所用のため御欠席と伺っております。
本検討会をオンラインで開催することは初めてとなりますので、御発言いただく際の手順等についてあらかじめ御説明したいと思います。オンラインで御参加いただいている先生方におかれましては、音質の向上や回線の負荷軽減等の観点から、基本的には、御発言を行う際以外はマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
スカイプの画面上にあるマイクのマークをクリックしていただき、斜線が入った状態であればミュートの状態となります。この操作については事務局のパソコンでも行えますので、こちらでも確認し、随時対応してまいります。議論の際に御発言を行っていただく際にはマイクをオンにして、お名前及び発言事項がある旨をお声掛けいただければと思います。座長より順次御指名をさせていただきます。
また、検討会中に接続が途切れる等のトラブルがあった際には、画面上の電話のマークが書かれた赤いボタンを押していただき、その後、再度入室いただくと改善する場合があります。それでも改善しない場合には、お手数ですがあらかじめお知らせしている電話番号宛てお電話いただきますと幸いです。
以上について、オンライン開催に当たりまして大変な御不便をお掛けしますが、どうぞよろしくお願いいたします。
また、事務局で人事異動がございましたため、異動者の紹介をします。まず、補償課長補佐の中山です。続いて職業病認定対策室長補佐の中村です。中央労災医療監察官の和田です。そして、私が係長の古山です。以上です。
写真撮影等はここまでとさせていただきますので、以後、写真撮影等は御遠慮ください。よろしくお願いいたします。それでは、座長の圓藤先生に議事の進行をお願いします。
○圓藤座長 それでは、議事に入る前に、事務局から本日の資料の確認をお願いします。
○古山係長 それでは、資料の御確認をお願いいたします。本分科会はペーパーレスでの開催とさせていただいておりますので、お手元のタブレットで資料の確認をお願いいたします。オンラインで御参加の先生方におかれましては、事前にメールにて送付させていただきました。
本日の資料は、資料1が、最終版の化学物質評価シートになります。資料2として、事務局でこれまでの検討結果及び先生方から事前に頂いておりました、最終版の化学物質評価シートから作成しました検討結果の案になります。
そして、資料3として、今後の検討事項をまとめております。資料4として、今後の検討において、検討対象とする物質の一欄をまとめております。参考資料1として、第4回の検討会において御質問いただきました、告示に規定する症状・障害「血管運動神経障害」「狭心症様発作」について、まとめた資料となります。
また、資料1について評価を行っていただいた先生方のお名前を記載したものを、机上配付資料として御用意しております。先生方、資料の御不足等はございませんか。以上です。
○圓藤座長 それでは、最初に事務局から資料の説明をお願いします。
○秋葉職認官 それでは、資料1について説明いたします。これまでの分科会におきまして、「大臣告示に規定されている化学物質による疾病への新たな症状及び障害の有無」について検討を実施しており、検討方法としては、まず、厚生労働省が実施した調査研究報告書において「化学物質による新たな症状及び障害に関して1報以上の報告があった物質」について、各先生に、新たに告示への追加する症状及び障害があるかを評価いただいたところ、前回の分科会終了時点で、10物質が「追加すべき」又は「次回以降再検討」とされたところです。
資料1は、この10物質について、各担当の先生方に具体的に告示に追加する症状及び障害があるかについて最終評価をいただいたものです。本日は、これに基づき、告示に追加すべき症状及び障害があるか否か、追加すべきであれば、追加すべき症状及び障害の内容について御検討いただき、本議題に関して結論を得たいと考えています。
資料2については、事前に先生方から提出いただいた評価シートから作成した、大臣告示に規定する新たな症状又は障害に関する検討結果を案としてまとめたものになります。
そして、資料3及び資料4ですが、今後の検討事項及びその対象物質についての資料になります。それから、この参考資料1については、前回の分科会において先生方から御質問のあった血管運動神経障害及び狭心症様発作が告示に規定された際の経緯等についてまとめた資料です。資料の説明は以上です。
○圓藤座長 それでは、初めに、前回の検討会で御質問のあった血管運動神経障害及び狭心症様発作が告示に規定された際の経緯につきまして、事務局からの御報告をお願いいたします。
○秋葉職認官 それでは、報告いたします。参考資料1を御覧ください。この症状・障害が規定されている物質は、「カルシウムシアナミド」「ニトログリコール」及び「ニトログリセリン」の3物質であり、これらの物質は、昭和53年4月に施行された大臣告示において初めて規定されました。
告示に規定された経緯ですが、3番の第2段落に記載しております。当概告示を策定するに当たって設置された「業務上疾病の範囲等に関する検討委員会」の詳細な資料及び議事録はありませんでしたが、この検討委員会の報告書、つまり「業務上疾病の範囲等に関する検討結果中間報告書」ですが、読み上げますと、「職業病の報告及びその評価に関する文献の考察を中心として、業務上の疾病の範囲と分類について検討を行った。すなわち、文献については、国内外の調査研究報告及び専門家グループ又は専門機関の評価が加えられた出版物を可能な限り収集し、検討した。加えて、我が国及び諸外国の関連法規も参照するとともに、現行の労働基準法施行規則第35条の規定が定められた経緯も考慮した。」と記載されていました。
そのため、当時、可能な限りの文献を収集し、それらの知見からこの記載となったものと推測されるところです。以上です。
○圓藤座長 この件については、後ほどニトログリセリンの審議があろうかと思います。そのときに、もう一度議論したいと思います。また、必要であればニトログリコール、カルシウムシアナミドについても記載がありますので、まとめて検討したいと思っております。
何分、この血管運動神経障害という障害名については非常に古く、昭和53年から施行された告示に規定されているということで、その当時の医学的知見でもって、このような表現になったと思われます。それから40年以上たっており、その間の医学の進歩に基づく知見がございますので、それを加味して、どう考えていくのか、総合的に検討すべきだと思っております。後ほどそこのところを議論したいと思いますが、それでよろしいでしょうか。
                                  (異議なし)
○圓藤座長 では、そのようにさせていただきまして、まず資料1に基づいて、上から順に議論したいと思っています。「弗化水素酸(弗化水素を含む)」について、各委員から「◎、○、△、×」の評価とともに理由を説明していただきまして、議論していきたいと思います。「追加すべき」と記載されたものについては、事前に「評価の理由」「文献等」「文献等にある職業ばく露の状況」「告示上の表記」について、再確認していきたいと思います。
それでは、「弗化水素酸」について、私から説明いたします。弗化水素酸で私は告示上の表記として、低カルシウム血症と組織壊死を加えてはいかがかという提案をしております。
理由は、弗化水素酸は浸透性が高く、組織の深部まで浸透する。その際、腐食作用により組織壊死を生じます。また、遊離した弗化イオンはカルシウムイオンと結合することにより、低カルシウム血症を来します。この2つに関係する論文は多数あります。
それから、低マグネシウム血症がございますが、低カルシウム血症を伴っていますので、低マグネシウム血症についてはあえて記載しなくてもいいのではないかと思いました。
それから、骨壊死もございますが、これは「組織壊死」という言葉の中に含まれているとみなして、告示上の表記に加えなくてもいいのではないかと私は考えました。以上です。
何かこのことにつきまして、御意見はございますでしょうか。なければ、上野先生、御説明をお願いいたします。
○上野委員 私は弗化水素酸に関しては、これまでの議論の中で急性ばく露というものを想定して追加してもよいのだということだったので、そういう点からは、低カルシウム血症というのは非常に重要で、それによって続発性のQT延長が生じて、致死性の不整脈に至るというのが、そこに示したMacKeeという方のレビューなどでも示されております。
もう一つ、議論の中で腎障害の話がありましたが、私の見解としては、直接的な因果関係を証明したものが見当たらないということで、これは外していいのではないかということで、結論から言うと私は低カルシウム血症というものを追加すべきではないかと考えました。もちろん、圓藤先生が御提案された組織壊死は、当然化学熱傷を起こすことがよく知られておりますので、これを加えることについても、私から特に異存はございません。
○圓藤座長 上野先生の御発言に、何か御意見はございますでしょうか。ないようでしたら、武林先生、お願いいたします。
○武林委員 圓藤先生、上野先生から御説明がありましたが、基本的には現場で急性、あるいは事故的に起こっているとしても、比較的多く起こるものですので、「低カルシウム血症」「組織壊死」という表記を追加すると考えたいと思います。
○圓藤座長 よろしいでしょうか。次に角田先生ですが、評価の所に「腎障害を追加するかどうかが問題であったが、論文のレビュー文献を例として、多くの全身性の影響が挙げられているが、腎臓の症候は限られている。腎障害として引用されている論文でも、皮膚障害他が重く、腎障害はメインと言えず、腎の出血、致死例である」ということで、×にされておりますが、何かほかに追加の御発言はございますか。
○古山係長 本日は、角田先生は御欠席なのですが、事前に資料を送付いたしまして、この点について御意見を伺っております。腎障害の議論だと×とされたということだったのですが、低カルシウム血症、組織壊死については事故例が多いので、含めるとのことで異存はないとのことでした。
○圓藤座長 角田先生の御意見に何か御意見はございますでしょうか。次に野見山先生、お願いいたします。
○野見山委員 先生方がもう御議論されているとおり、低カルシウム血症と組織壊死は症例は十分ですので、この二つを加えていただければと思います。私は記載をしておりませんでしたが、その二つでよろしいかと思います。
○圓藤座長 それでは、全体として弗化水素酸(弗化水素を含む)に対して、低カルシウム血症と組織壊死を症状又は障害の中に明記するということで、本日の議論を終了したいと思いますが、よろしいでしょうか。
                                  (異議なし)
○圓藤座長 続きまして、「砒化水素」です。これは、今まで腎障害を加えることが適当であるという議論であったと思いますが、それでよろしいでしょうか。
                                  (異議なし)
○圓藤座長 そうしますと、腎障害を加えるということで終了したいと思います。
続きまして、ホスフィンについてです。まず、私から説明いたします。ホスフィンは有機リン剤の一つで、コリンエステラーゼ阻害剤です。しかしながら、多彩な症状を記載しているが速やかに回復していることと、死亡例や重篤な障害並びに知覚障害が挙げられていますが、極めてまれな事故であったかと思います。今回の追加する症状又は障害の中には、症例数が不足しているということで外しましたが、何か意見はございますでしょうか。
続きまして、上野先生、お願いいたします。
○上野委員 議論の中では、追加すべき症状が、いわゆるコリンエステラーゼの阻害作用に起因するものであるかどうかというところだったと記憶しています。私が調べた範囲で、そこに示しておりますように、ホスフィンを発生するリン化アルミニウムのばく露事例の報告というものを拾い上げたところ、その中での議論として、ホスフィンの毒性発現機序としてはコリンエステラーゼ阻害作用ではなく、チトクロムCオキシダーゼの阻害作用によるミトコンドリア呼吸鎖障害の可能性が示唆されているので、そういうコリンエステラーゼ阻害作用による症例報告は見当たらないと判断しましたので、私は追加の必要はないのではないかと考えております。
○圓藤座長 武林先生、続きましてお願いいたします。
○武林委員 この物質に関しては、極めてまれな事故的なばく露しか想定できませんので、今回追加する必要はないと考えます。
○圓藤座長 角田先生は、「コリンエステラーゼ阻害の証拠は特に職業ばく露に限定すると、ヒトでは乏しい」とされております。総説の中にコリンエステラーゼの活性低下が意図的摂取によるとする例が総説の中にあるとされてきます。そういうことで、例外で×にしているようです。特に、この件については事務局は聞いておられませんね。
○古山係長 はい。
○圓藤座長 続きまして、野見山先生お願いします。
○野見山委員 私は、先生方がおっしゃった理由で当初から×にしておりますので、×です。
○圓藤座長 ということで、ホスフィンに関しては、今回見送るということでまとめたいと思います。
続きまして、塩化ビニルです。肝機能障害がある、又は肝炎、非アルコール性脂肪性肝炎というものが報告されておりますが、可能性としてはありますが、独立した疾病名として追加する根拠に乏しいように思われました。脂肪性の肝炎(NASH)につきましても、1つの論文に限定されているということで、×にいたしました。上野先生、お願いします。
○上野委員 随分意見を書いておりますが、当初、私は加えるべきかなと思いましたが、皆さんの御意見を伺いまして、もう一度再考した結果を示させていただいております。
調べた中で、そこにあるように、EASL(European Association for the Study of the Liver)という所のClinical Practice Guidelineで、Occupational liver diseasesという項目が記載されておりました。その中で塩化ビニルばく露による、いわゆるTASHにつきましても記載はされているのですが、NAFLDがベースにあると、塩化ビニルのような産業化学物質のばく露によりTASHに進行しやすい、という記載であって、塩化ビニルばく露が直接TASH(NASH)の原因となる、というところまでは言っておりませんでした。他の文献も再度検索しましたが、大体が動物実験レベルのものが多くて、直接的な関連を示しているのは、圓藤先生も御紹介しているCaveらの論文だけのようなので、ちょっとエビデンスとしては不十分ではないかと思います。
それから、肝硬変との関連の記載もあったのですが、これに関してはどちらかと言うと否定的な見解で、むしろ塩化ビニル長期ばく露と門脈周囲の線維化との関連のほうが明らかである、という内容でした。
そのほか、Fedeliらの論文などとも比較したのですが、EASLのガイドラインがFedeliらの論文を引用していなかったというのも分かりましたので、そこら辺にどのような議論の調整があったか分かりません。門脈周囲線維化と門脈圧亢進症の関連も、あまりはっきりしないということで、最終的には非常に混乱を招くかもしれないということで、今回は、特に肝機能障害に関する表現は追加しないほうがいいのではないかなと考えております。
○圓藤座長 武林先生お願いします。
○武林委員 メカニズム的なことは上野先生から十分に御説明いただきました。私は、疫学的な観点からも、現時点では非アルコール性の脂肪性肝炎については十分ではないと判断しまして、×としました。
○圓藤座長 角田先生からは、「肝障害に関しては、慢性肝障害(肝硬変)は、門脈圧亢進の続発症状ではないとされていない。塩化ビニル労働者の肝硬変が報告され、それはウイルス肝炎がある者、cytochrome P450″E1の多型でリスクが高まるとしている。一方、肝機能検査は、塩化ビニルに関連する肝障害の検出には適していないとの報告も引用されている。以上のことより、肝硬変を単独で載せてもよい」とされています。
少し議論したいと思いますが、野見山先生はいかがでしょうか。
○野見山委員 ペーパーはもちろんあるので、私も当初は○にしていたのですが、一貫してそういったペーパーがあるわけでもないので、そういう意味で私も○から×に変更いたしました。
○圓藤座長 そうしますと、角田先生の御意見をどのように読むのかということが議論になると思いますが、角田先生の御意見についての御発言はございますでしょうか。
私は、角田先生がここに書かれたことだけをもって、肝硬変を加えるというのは、かえって混乱を招くのではないか。こういう考え方もあるという学問的進歩の途中であろうと思いますので、今回は見送ったほうがいいのではないかと判断しておりますが、いかがでしょうか。
○古山係長 角田先生から塩化ビニルについて、事前に先生方の御意見を見ていただいた上で御意見を伺っております。角田先生は「上野先生が御説明した話に賛同いたします」ということで、まだレビュー論文でもありますし、加えなくてもいいのではないかという御意見だったということです。
○圓藤座長 ということで、塩化ビニルに関しましては、今回は見送るということでよろしいでしょうか。
                                 (異議なし)
○圓藤座長 ありがとうございます。
続きまして、トリクロルエチレンです。私は、皮膚障害を加えてはいかがかと。トリクロルエチレンの障害は多数報告されており、その機序についてはいろいろ議論されているところですが、皮膚障害であることは間違いないと認識しております。上野先生お願いします。
○上野委員 私も皮膚障害は加えていいかと思います。これはもともと中国の方に非常に多いということだったのですが、私が調べたところによりますと、日本人のTCEばく露による皮膚障害の報告もありましたし、御紹介したWatanabe先生らの症例報告の中では、中国での報告があったHLA-B*1301アレルの保有者がいたというエビデンスも紹介はされております。数は少ないのですが、これは追加していいのではないかと判断いたしました。
○圓藤座長 武林先生お願いします。
○武林委員 これにつきましては、日本のグループが非常に丁寧に明らかにされてきて確立したものだと思います。皮膚障害という表記で追加することに賛成します。
○圓藤座長 角田先生は、「有機溶剤としての性質上、皮膚障害があるし、また近年報告されている論文では、皮膚炎を主に症候とし、また特定のHLAと関連するとされているものの、中国、韓国、日本の作業者で報告されているので、告知に加えてよい」とされています。
HLAとの関連性については、まだまだ議論が必要かと思いますが、皮膚障害というのは、それとは関係なしに多数認められておりますので、皮膚障害という表記でいかがかと思いますが、どうでしょうか。最後に野見山先生お願いします。
○野見山委員 先生におまとめいただいたとおりのことでよろしいかと思います。
○圓藤座長 以上をもちまして、トリクロルエチレンにつきましては、皮膚障害を症状又は障害として明記するという方向でまとめたいと思います。ありがとうございました。
続きまして、沃化メチルです。幾つか議論しましたが、私は少数例の皮膚障害があるものの、告示するには至らないとしました。上野先生お願いします。
○上野委員 臭化メチルの皮膚障害とそろえなければいけないのかという議論があったと思うのですが、必ずしもそういう必要がないということであれば、今回は追加しなくてよろしいかと思います。
○圓藤座長 武林先生お願いします。
○武林委員 全く同じ意見でございます。
○圓藤座長 角田先生も「極めてまれ」という表現があるということで、×にされています。野見山先生お願いします。
○野見山委員 そのとおりだと思います。
○圓藤座長 ということで、沃化メチルに関しては、追加しないということでまとめたいと思います。
次に、アクリル酸ブチルです。私は、気道障害というのが書かれておりますが、限定されているということで×にいたしました。上野先生お願いします。
○上野委員 圓藤先生が御紹介いただいた論文を私も拝見したのですが、その中の報告を見る限りは、直接的な因果関係を示すようなエビデンスとしては十分なものとは言えないと判断しましたので、×とさせていただきました。
○圓藤座長 武林先生お願いします。
○武林委員 報告が事故的であるということも併せて、追加の必要はないと考えます。
○圓藤座長 角田先生からは、「3人の患者の報告があって共通の症状があったとしているが、ほかに気道障害の報告がないため極めてまれであると考える」とされています。野見山先生お願いします。
○野見山委員 当該の論文で、私は最初は○にしていましたが、確かにほかに論文はありませんし、ばく露との因果関係も、この3例だけですので、確定的にならないので×でよろしいと思います。
○圓藤座長 ということで、今回は見送るということでまとめたいと思います。ありがとうございます。
次はニトログリセリンです。私は、狭心症様発作というのがあってもいいのではないかと。作用機序としては考えられるが、揮発性に乏しく、皮膚吸収からのばく露かというように考えております。上野先生お願いします。
○上野委員 事務局からの説明があって、これも私たちはこの血管運動神経障害というのが告示された時代が、昭和53年(1978年)ということです。そこに示してあるように、まず、Furchgottのグループが、いわゆる血管内皮由来弛緩因子、当時はEDRFという名前で血管内皮細胞機能が着目されるようになったというのが1980年です。
その後、EDRFの実態が、皆さんも今は御存じの一酸化窒素であることをIgnarroらが報告したのが7年後の1987年ということで、一酸化窒素、いわゆるNOあるいはNOの供与体、ニトログリコールとか、そういうものによる血管内皮機能の修飾というのは、既に学問的には確立されております。先ほど事務局から説明のあった血管運動神経障害というものが加わった経緯を考えると、これとは別に、今の時代の知見に合わせた狭心症様発作というものを追加したほうがいいと考えております。
○圓藤座長 武林先生お願いします。
○武林委員 こういう物質の場合、新たな疫学的知見が加わるかと言うと、そうではないと思います。今、上野先生から御説明いただいたような、むしろ新しいメカニズムが明確になったことによって、疾患概念として狭心症様発作、これは基本的には離脱の話だと思いますが、これを足すということに特に異論はありません。むしろ、今後検討しなくてはいけないと思ったのです。
そうすると、血管運動神経障害というものをメカニズム上どのように担保して、これを外していくのか、それとも両方残すのかというのは、症状論から考えるのか、メカニズム論から考えるのかは、今後の検討課題だと思います。皆さんの総意に従うことに異論はありません。
○圓藤座長 角田先生も、上野先生と同じような意見を出していただいております。野見山先生、いかがでしょうか。
○野見山委員 狭心症様発作でいいと思います。私は虚血性心疾患と書いていますが、基本的にそれにアグリーいたします。
○圓藤座長 武林先生がおっしゃるように、血管運動神経障害という言葉と、狭心症様発作と並列させていいのかどうかという議論もあろうかと思いますので、我々としては、狭心症様発作というものを残していこうという考え方で大体まとまっておりますが、今までの告示に記載された経緯、それから通達の経緯、時代背景、現在での化学的なメカニズムの考え方、これらを総合して、もう少しこの物質に関しては議論を続けていきたいと思っておりますが、それでよろしいでしょうか。
                                 (異議なし)
○圓藤座長 とりあえず、「狭心症様発作」という言葉として考えておくということはいいかと思います。そこでとどめておきたいと思います。ありがとうございます。
続いて、メタクリル酸メチルです。これは、骨セメントの粉じんばく露の可能性があり、採用できないと私はいたしました。上野先生お願いします。
○上野委員 圓藤先生から御紹介のあった論文以外で、そこに書いてあるWilliamsの論文というのも見たのですが、これも結局、症状についてはアンケート調査のみで、はっきりと前眼部障害を示した報告はないと考えましたので、今回は必要ないと判断しております。
○圓藤座長 武林先生お願いします。
○武林委員 私も、この論文から単独のメタクリル酸メチルと思えなかったので、×としております。
○圓藤座長 角田先生も、「前眼部障害については、懸念されているものの、まだ報告が見当たらないので、告知にあげるほどではない」とされております。野見山先生お願いします。
○野見山委員 私も、これ単独でメタクリル酸メチルが前眼部症状を起こすということは特化できないということで、×だと思います。
○圓藤座長 以上をもちまして、メタクリル酸メチルは追加する告示上の標記は加えないということにいたします。
続きまして、ベンゼンの塩化物です。共通する前眼部障害、気道障害、肝障害以外の知見が認められないということで×にいたしました。上野先生お願いします。
○上野委員 現時点では化合物全体としての共通した追加が必要かと言うと、それに至る十分なエビデンスはないと判断しておりますので、追加は必要ないと考えております。
○圓藤座長 武林先生お願いします。
○武林委員 私からも同じ意見で追加の必要はないと考えます。
○圓藤座長 角田先生から、「ジクロロベンゼン、モノクロロベンゼンの皮膚障害に関しては、ヒト、職業性ばく露とすると該当報告が見当たらない。パラジクロロベンゼンの神経障害の報告はあるが、これは誤飲によるものであり、職業性とは考えられない」としておられます。野見山先生お願いします。
○野見山委員 塩化物全体として皮膚障害を入れる根拠はないと思いますので、加える必要はないと思います。
○圓藤座長 そうしますと、ベンゼンの塩加物に関しては、今回は告示用の表記に加えるものはないといたします。ただし、個別の物質に関しては、必要なら追加するということですので、もし特定の化合物で皮膚障害が多発しているようであれば、それはそれで考えていきたいと思っております。今回は告示上の表記はなしということでまとめたいと思います。以上をもちまして、評価は終わりますが、よろしいでしょうか。
資料2を御覧ください。現時点でのまとめたものが、弗化水素酸(弗化水素を含む)、砒化水素、トリクロルエチレン、ニトログリセリン。ニトログリセリンの「虚血性心疾患」とここに書いていますが、それを加えるかどうかは議論があろうかと思います。これを書くことによって、ニトログリセリンを使っていない人の虚血性心疾患との鑑別、あるいは虚血性心疾患の人に対する治療薬としてのニトログリセリンというのもありますので、混乱を招くのかも分かりません。これはいかがいたしましょうか。
1つは、ニトログリセリンのところで、「狭心症様発作」というように「様」というのを付けているのです。「狭心症発作」としていないところが味噌かなと思っておりますので、通常の「狭心症」と区別する意味で、「狭心症様発作」という言い方のほうがいいのかも分かりません。この件につきまして、皆様方の御意見を頂きたいと思います。
○武林委員 虚血性心疾患を入れるかどうかという議論だと思いますが、疫学的に見ると、確かに心疾患の死亡のリスクは上がっているのですが、恐らく現場では、同時にニトログリコールのばく露もあったのではないかと思います。「狭心症様発作」にとどめておいたほうが適切と考えます。
○圓藤座長 ほかの先生方はいかがでしょうか。
○野見山委員 私は虚血性心疾患と書いたのですが、今、武林先生がおっしゃっていることで、私も同意をいたします。ですので、今回あえてこれを加える必要はないかなと思います。ですので、「狭心症様発作」でよろしいかと思います。
○圓藤座長 では、今回は「狭心症様発作」でとどめておいて、「虚血性心疾患」は外すということでまとめたいと思います。
それから、先ほど言いましたような「血管運動神経障害」という言葉との関係については、引き続き検討していくということでまとめたいと思います。
残りのホスフィン、塩化ビニル、沃化メチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、ベンゼンの塩化物については、追加する症状又は障害はないというようにしたいと思います。よろしいでしょうか。
                                 (異議なし)
○圓藤座長 それでは、新たに大臣告示に規定する疾病についての議論は、ここで終了いたします。
続きまして、議題2「今後の検討事項」について、事務局より説明をお願いいたします。
○秋葉職認官 それでは、事務局より説明いたします。資料3を御覧ください。この資料3は今後の検討事項についての事務局案です。まず、記1の「検討項目及び検討回数について」ですが、「(1)SDS交付義務のある673物質から既に大臣告示等に規定されている物質を除いた物質のうち、当該化学物質による症状及び障害に関して、症例報告が3件以上ある物質、それから、平成30年度の第35条専門検討会において検討されたものの、大臣告示に規定されていない物質」について、現在までに症例報告がなされた物質のうち、一定の症例報告がある物質、これらの二つについて、別表第1の2第4号1に基づく大臣告示に追加するか否かを検討いただきたいと考えています。
具体的な検討の進め方ですが、これまで新たな症状又は障害を追加する際と同様に、厚生労働省で調査研究を行っております。この中で、報告のあった症例等を検討し、追加する物質の候補として73物質に絞り込んでおります。これが資料4を御覧いただきたいと思いますが、この資料4に記載の73物質で、これらにつきまして報告された症例等をまとめた評価シートを事務局で作成して、これまでと同様に各先生方に分担いただき、評価を行っていただいてはどうかと考えております。
資料3に戻っていただいて、「(2)理美容師のシャンプー液等の使用による接触性皮膚炎」及び「(3)の木材粉じんによるがん」につきましては、(1)と同様に調査研究を行っております。(2)につきましては、これまでの化学物質分科会において、検討の議題に上がっており、平成30年の第35条専門検討会報告書において、化学物質分科会を設置して、検討を行うことが妥当とされたところです。調査・研究においては、海外において理美容師向けのパッチテスト用アレルゲンとして市販されているアレルゲンのうち、厚生労働省の研究において、パッチテストの陽性率が高かった18物質を対象として、国内外の研究報告や勧告をまとめております。
これが資料4になりますが、資料4の4ページ目に記載があります18の物質です。このうち、上から6番目の網掛けをしている過硫酸アンモニウムにつきましては、既に大臣告示において、症状又は障害を皮膚障害又は気道障害として規定済ですので、今回の検討の対象外としたいと思います。これを外した残り17物質のうち、まず、これまでの分科会で議論が行われた2物質、すなわち№10のシステアミン塩酸塩(CHC)と、№11のコカミドプロピルベタイン(CAPB)について、調査研究の結果を用いて、御検討いただき、その後残り15物質について御検討いただいてはどうかと考えております。
なお、検討に当たっては、物質ごとに各先生方に御担当いただき、同様に評価を進めてはどうかと考えております。
資料3に戻っていただきますが、「(2)の理美容師のシャンプー液等の使用による接触性皮膚炎」の検討では、感作性についても議論を行う必要があるかと思いますが、この感作性については、後ほど御説明する(5)で扱えればと考えています。以上の(1)(2)についての検討を併せまして、次回から4回程度分科会を実施してはどうかと考えています。
「(3)の木材粉じんによるがん」につきましては、これまでの化学物質分科会において検討の議題に上がっており、平成25年の報告書において、今後も引き続き情報収集が必要とされたところです。調査研究においては、近年の海外の研究報告及び国内の症例報告を収集しております。これらを基に御議論いただければと考えております。
続いて、新たな症状又は障害を追加する検討を行っていた際に議論になりました、「(4)カドミウム及びその化合物の発がん性」、及び「(5)の感作性の取扱い」ですが、こちらについては、(3)と合わせて合計2回程度検討を行ってはどうかと考えています。
以上を踏まえて、記の2として、今後の検討スケジュールを示しております。御覧のとおり、おおむね2か月に1回程度の開催を予定しております。最後の回は、2ページ目に記載しておりますが、第12回として、来年10月頃としております。ここで取りまとめを行い、全体としては全部で7回程度の開催でどうかと考えています。
なお、スケジュールについては、先生方に評価をお願いするものもございますため、その時々の状況等も踏まえて、柔軟に対応していきたいと考えております。今後の検討事項については以上になります。
○圓藤座長 ありがとうございます。非常にたくさんの673物質、絞ったとしても70幾つございます。また、理美容師のシャンプー液に関しても、非常にたくさんの数がございまして、それを全部やっていくのは、大変な作業かと思いますが、まず、優先順位の高いものとして、事前に調査していただいて、3件以上の報告あるいは症例があるものにつきまして、先に検討していきたいと思っております。それと併せまして、理・美容師のシャンプー液のうちの2つの物質について検討すると。それから、木材粉じんによるがん、カドミウムによる発がん、これは発がん性についての評価ですので、今までの症例のあった、ないという形ではない議論が必要であろうと思いますので、発がん性の議論については、少し整理した上で、今までの流れを理解した上で行いたいと思いますので、少し後回しにしたいと思っております。
したがって、感作性の取扱い、これは私は安易に考えておりましたけれども、結構難しいと思いました。といいますのは、感作性があるとはっきりしている物質もあれば、感作性とは限らない皮膚障害がある場合もありますし、感作性の皮膚障害と非感作性の皮膚障害の両方あるケースもあろうかと思いますので、果して分けることができるのであろうかという議論もございますので、それらを含めて後ほど議論したいと思っております。
ということで、資料4の対象物質一覧をまとめていただきたいのですが、事務局からの依頼で、既に報告をまとめていただいておりますが、必ずしも十分ではないことがありますので、先生方独自に追加の論文を探していただいて、御検討いただければと思っております。調査研究報告書は後ほど各先生方にお送りされると思いますが、それを基にプラスアルファーの検索をしていただいて、御検討いただければと思っております。で、前回と同じように、まず2人ずつで、◎○△×のような御意見を頂いた上で、2人の先生が×のものは外していくと。そうでないものに対しては、もう少し詳しく調べていくという作業をしながら絞っていきたいと。前回と同じような流れで行いたいと思いますが、進め方につきまして先生方、御意見はございますでしょうか。それでよろしいでしょうか。大変な作業になります。73+2で75。75を2人ずつで行いますので、1人30物質ぐらいになろうかと思いますが、作業を進めたいと思います。よろしくお願いいたします。
何か進め方で改善点等ございましたら、御発言をお願いしたいのですが。よければ、今までどおりでよろしいでしょうか。
                                 (異議なし)
では、次回10月ですか、10月までにこれの作業進めるということで、夏休み遠出はされないと思いますので、その宿題になろうかと思いますが、よろしくお願いいたします。
本日の項目はおおむね終了したと思いますが、全体を通じて何か御意見や御質問はございますでしょうか。よろしいようでしたら、次回の日程等を含めて、事務局より御説明をお願いいたします。
○古山係長 次回の日程でございますが、先ほど秋葉のほうから今後の検討事項の際に御案内したとおり、10月頃を予定しており、次々回については、12月頃を予定しております。次回につきましては、先生方に評価を行っていく都合もございますので、なるべく10月の遅めということで、予定したいと思っております。また後日、日程調整表を当係から先生方にメールでお送りさせていただきますので、御確認いただき、御返信をお願いしたいと思います。開催方法につきましても、今回のようにオンラインで行うか、従来のように参集していただくかどうかを含めて検討し、また御連絡差し上げたいと思います。
また、先ほど御説明させていただいた評価シートにつきましても、事務局で様式を作成の上、先生方に御依頼させていただきたいと思いますので、どうかよろしくお願いいたします。本日の議事は以上となりますので、終了したいと思います。
本日はお忙しい中、大変ありがとうございました。