2020年6月10日 第1回「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」 議事録

日時

令和2年6月10日(水) 17:00~19:00

場所

労働委員会会館612会議室
(東京都港区芝公園1-5-32)

出席者

参集者:五十音順、敬称略
磯博康、小山勉、杉薫、髙田礼子、高橋正也
嵩さやか、豊田一則、西村重敬、野出孝一、水島郁子

厚生労働省:事務局
松本貴久、西村斗利、西岡邦昭、中山始、中村昭彦 他

議題

  1. (1)脳・心臓疾患の労災認定の基準について(複数業務要因災害等)
  2. (2)その他

議事

議事録

○中村職業病認定対策室長補佐 これより、第1回「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」を開催いたします。本日、司会を担当させていただきます補償課職業病認定対策室の中村と申します。よろしくお願いいたします。初めに、本検討会を開催する前に事務局より御説明させていただきたいと思います。
 今回の検討会は5月25日新型コロナウイルス感染症対策に関する緊急事態宣言が解除されましたが、感染防止の観点からオンラインでの開催とさせていただきました。オンラインでの開催になることについて御理解、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 オンラインでの開催となりますので、委員の皆様方にお願いがあります。意見等を発言する際には、マイクのミュートを解除した上でお名前と発言があります旨の発言をしていただくか、またはインスタントメッセージで発言がありますと送信していただき、さらに、この後選出されます座長から「誰さんお願いします」と指名させていただいた後に発言をお願いいたします。なお、発言が重なった場合には座長が順番を決めることとしますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。また、大変申し訳ございませんが、通信が不安定になったり、通信速度が遅くなったりすることで発言内容が聞き取りにくい場合があることに御了承願います。
 傍聴される方にお願いがあります。携帯電話などは必ず電源を切るかマナーモードにしてください。そのほか別途配布しております留意事項をよくお読みの上、検討会開催中はこれらの事項をお守りいただいて、傍聴されるようお願い申し上げます。また、傍聴される方にも会議室に入室する前にマスクの着用をお願いしておりますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。万一留意事項に反するような行為があった場合にはこの会議室から退室をお願いすることがありますので、あらかじめ御了承ください。傍聴される方にお願いがあります。写真撮影はここまでとさせていただきますので、以後、写真撮影は御遠慮ください。よろしくお願いいたします。
 委員の皆様におかれましては、大変お忙しい中、オンライン会議に御出席いただき誠にありがとうございます。最初に、本検討会に御参集を賜りました委員の先生方を五十音別に御紹介させていただきます。大阪大学大学院医学系研究科社会医学講座公衆衛生学教授の磯博康委員、佐々木病院名誉院長の小山勉委員、小田原循環器病院院長の杉薫委員、聖マリアンナ医科大学予防医学教室教授の髙田礼子委員、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所過労死等防止調査研究センター センター長の高橋正也委員、東北大学大学院法学研究科教授の嵩さやか委員、国立循環器病研究センター病院副院長の豊田一則委員、埼玉医科大学医学部心臓内科名誉教授の西村重敬委員、佐賀大学医学部循環器内科教授の野出孝一委員、大阪大学大学院高等司法研究科教授の水島郁子委員。
 続いて事務局を紹介いたします。大臣官房審議官の松本です。補償課長の西村です。職業病認定対策室長の西岡です。補償課長補佐の中山です。職業病認定対策室認定専門官の西川です。私は職業病認定対策室室長補佐の中村と申します。よろしくお願いいたします。
 それでは脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討委員会の開催に当たりまして、大臣官房審議官の松本より御挨拶を申し上げます。松本大臣官房審議官、よろしくお願いいたします。
○松本大臣官房審議官 審議官の松本でございます。専門検討会の開催に当たりまして、一言御挨拶を申し上げます。まず、先生方におかれましては、日頃より労働基準行政、とりわけ労災補償行政に関しまして、特段の御理解と御協力を賜わっていることに厚く御礼を申し上げます。また、新型コロナウイルス感染症対策としてオンラインで開催をしております本日の会議に御出席を賜わりまして、重ねて御礼を申し上げます。
 御案内のように、現行の脳・心臓疾患で認定基準は平成13年以降20年程度の間、改正を行っていないというものでございます。その枠組みというものは、当初からの基準でとして入っておりました異常な出来事というものに昭和62年に短期間の過重業務というものを追加いたしまして、また、平成13年に長期間の過重業務というのを追加してきた経緯となっております。またその運用状況を見ますと、平成30年度の認定状況では、大半が長期間の過重業務の要件により認定をしているということになっております。このような現行基準のこれまでの改正経緯や運用状況の中、様々な御要望もいただいているところでございますし、また平成30年度と令和元年度の2か年度にわたりまして、医学的知見の調査も我々行ったところでございます。
 本検討会におきましては、最新の医学的知見を踏まえまして、全般的な検証・検討を行っていただきたく考えているところでございます。
 本日は、本年3月31日に成立しました雇用保険法との一部改正をする法律の中におきまして、複数就業者のセーフティネットとして労災保険制度の拡充というものを行ったところでございます。その中で複数就業者の労災認定におきまして、給付額を合算するということと併せまして、複数就業での業務上の負荷を総合評価をして労災認定するというような枠組みも加えたところでございます。
 その運用については、昨年の労政審の労災保険部会の建議におきまして、労働者への過重負荷について定めた現行基準の認定、現行の認定基準の枠組により対応することが適当であると。ただし、脳・心臓疾患、精神障害等認定基準については、医学等の専門家の意見を聞いて運用を開始することにも留意することとされたところでございます。これを踏まえまして、本日先生方の御意見もお伺いできたらと考えております。
 また、次回以降については、脳・心臓疾患の認定基準全般の検討ということでお願いをしたいと考えております。今後活発な御議論を賜わりますようお願いをいたしまして、甚だ簡単でございますが、私からの検討会開催にあたっての挨拶とさせていただきます。よろしくお願いをいたします。
○中村職業病認定対策室長補佐 続いて、開催要綱に従い、本検討会の座長を選出していただきたいと思います。開催要綱では、座長は参集者の互選により選出することとしております。どなたか推薦等はございませんでしょうか。
○高橋委員 すみません、高橋です。
○中村職業病認定対策室長補佐 高橋委員どうぞ。
○高橋委員 磯先生に座長をお願いしてはいかがでしょうか。
○中村職業病認定対策室長補佐 磯先生に座長をという御意見がありましたが、委員の皆様方いかがでしょうか。
(異議なし)
○中村職業病認定対策室長補佐 それでは磯先生に座長をお願いしたいと思います。以後の議事の進行をよろしくお願いいたします。
○磯座長 ただいま御推薦いただきまして、座長をお引き受けすることになりました大阪大学公衆衛生学の磯でございます。それぞれ非常に重要な検討会ですので、医学や法学などの専門家の先生からそれぞれの立場で、専門的な立場から様々な忌憚のない御意見をいただければ有り難く存じます。
 そして、委員の皆様方の力を借りながら円滑な議事の進行を務めたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 まず議事に入る前に事務局から本日の資料の確認をお願いします。
○中村職業病認定対策室長補佐 それでは資料の御確認をお願いいたします。本日の資料は、資料1「「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会」開催要綱・参集者名簿」、資料2「平成13年12月12日付基発第1063号「脳血管疾患及び虚血性心疾患等(負傷に起因するものを除く。)の認定基準について」」、資料3「脳・心臓疾患の認定基準に関する専門検討会報告書(平成13年11月16日)」、資料4「「脳・心臓疾患、精神障害の認定基準について(報告)」(第80回労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会資料)」、資料5「雇用保険法等の一部を改正する法律の概要(労災保険法、労働保険徴収法関係)等」、資料6「第1回脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会における主要論点」、資料7「複数業務要因災害における過重負荷の評価について」、資料8「複数業務要因災害として考えられる事例の例」、資料9「主な検討事項等(案)」、参考資料「団体からの意見要望」となっております。以上です。
○磯座長 それでは、初めに、本検討会の開催要綱について、事務局から説明をお願いします。
○西川専門官 職業病認定対策室で専門官をしております西川と申します。私から資料1、本検討会の開催要綱について御説明をさせていただきます。資料1を御覧ください。資料1については、「脳・心臓疾患の労災認定の基準に関する専門検討会開催要綱」となっております。1の項で「趣旨・目的」を記載させていただいております。この業務による過重負荷を原因とする脳血管疾患、虚血性心疾患等については、労働者災害補償保険制度の下、平成13年12月に改定した認定基準に基づき労災認定を行ってきているところです。なお、平成13年の認定基準の前回の改定から約20年が経過する中で、働き方の多様化であるとか職場環境の変化が生じていることから、最新の医学的知見を踏まえた検証を行う必要があると考えているものです。
 また、法改正の関係ですが、複数就業者に係る労災保険給付等について、複数就業先での業務上の負荷を総合して評価することにより疾病との間に因果関係が認められる場合には、新たに労災保険給付を行うということを内容とする労災保険法の改正案が、先般成立したところです。その認定方法について、医学等の専門家の意見を踏まえて、適切に運用を行っていく必要があるということです。
 このため、今般、大臣官房審議官が、脳血管疾患・心臓疾患の専門医の皆様、疫学・予防医学・労働衛生学の専門家の皆様、そして、労働者災害補償保険法等に精通した法律の専門家の皆様に参集を求めまして、最新の医学的知見に基づき、専門的見地から認定基準について検討を行っていただくというのがこちらの検討会の趣旨・目的ということになります。
 2として「検討事項」を記載しております。先ほどの趣旨・目的に合わせまして、大きく2つ掲げさせていただいております。(1)として、複数就業先の負荷を総合的に評価する場合の留意点の検討とあります。本日御意見を頂くのはこちらの(1)に関する事項となります。(2)として、脳・心臓疾患に関する最新の医学的知見等を踏まえた認定基準の検討というようにあります。次回以降の検討会において現在の認定基準全般にわたっての検証・検討をお願いする予定としております。
 大きな3点目は「検討会の構成等」です。(2)の所で本検討会には座長を置き、検討会を統括する。そして、(3)で、座長は参集者の互選により選出することとさせていただいています。先ほどこの規定に基づきまして、磯先生が座長として選出されています。
 また、(4)ですが、本検討会は必要に応じて参集者以外の専門家の参集を依頼することができるとしております。また、必要に応じて分科会を開催することもできるとしております。
 4は「その他」です。本検討会は、原則として公開という形にしております。しかし、検討事項に個人情報等を含み、特定の個人の権利又は利益を害するおそれがある場合には非公開、個別の事案をこの先、取り扱っていただくようなことがある場合には非公開とすることもあります。この場合は、(2)にありますとおり非公開とした場合には、先生方におかれましては本検討会で知ることのできた秘密については外部に出さないということとしていただき、これは検討会が終了後も同様としていただきますようにお願いを申し上げます。
 資料1の2枚目は、先ほど事務局から御紹介させていただきました参集者の先生方の名簿を付けさせていただいております。資料1の説明は以上となります。
○磯座長 それでは続いて、本検討会で議論を始めるに当たって、現行の脳・心臓疾患の労災認定基準について、事務局から説明をお願いします。
○西川専門官 引き続き西川から御説明をさせていただきます。資料2、資料3について説明をさせていただきます。それでは、皆様、資料2の脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準についての資料を御覧いただきたいと思います。 こちらが労働基準局長の通達という形で、平成13年12月12日に発出した脳・心臓疾患の労災認定基準ということになります。この認定基準に基づいて、現在においても監督署における業務上外の判断を行っているところです。
 なお、資料2の1ページの右肩ですが、平成22年5月に改正したという旨の記載もあります。これは内容の実質的な変更ではありません。
 2ページ先ですけれども、PDFの3ページ目を見ていただくと、第3「認定要件」と書いてあるページがあります。こちらの認定要件のところで、「労働基準法施行規則別表第1の2第8号に該当する疾病として取り扱う」とあります。平成13年当時は、ここは「別表第1の2第9号に該当する」となっていたところです。当時の第9号というのは、その他業務に起因することの明らかな疾病、いわゆる包括条項、バスケットクローズと呼ばれるもので、脳・心臓疾患の労災認定をしておりました。これが平成22年に、職業病の一覧表、別表第1の2を改正しまして、脳・心臓疾患を業務上の疾病として具体的にこの表に第8号として書き込んだことから、その際に認定基準のこの部分の改正をしたものです。
 これ以外の認定基準の内容については、平成13年当時から変わっていないところです。この認定基準の内容ですが、このまま1ページ戻っていただきまして、対象疾病のところと今の認定要件のところを御説明させていただきたいと思います。対象疾病として、8疾病を挙げております。大きなくくりの1の脳血管疾患として、脳内出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性脳症の4つ、そして、2の虚血性心疾患等として、心筋梗塞、狭心症、心停止(心臓性突然死を含む)、解離性大動脈瘤の4つ、合わせて8疾病を挙げています。
 また、「認定要件」の所ですが、3種類というか、3つの要件を挙げておりまして、このいずれかに当たれば業務上、労働災害として認めるという形にしております。(1)が、発症直前から前日までの間において、発生状態を時間的及び場所的に明確にし得る異常な出来事に遭遇したこと。いわゆる「異常な出来事」と呼んでいます。(2)として、発症に近接した時期において、特に過重な業務に就労したこと。これは「短期間の過重業務」と呼んでいます。(3)として、発症前の長期間にわたって、著しい疲労の蓄積をもたらす特に過重な業務に就労したこと。これを「長期間の過重業務」と呼んでおります。冒頭の審議官の挨拶でもありましたけれども、累次の改正によって最初異常な出来事だけ、それから、それに加えて短期間の過重業務、そして、13年には長期間の過重業務が追加されるという形で、この3つの要件のどれかが認められた場合には業務と発病との関連性が高いということで、労災認定の対象としているところです。
 それぞれの認定要件の詳細については、後ほど資料6と資料7で、本日の論点に関する御意見を頂く際に御説明をさせていただきたいと思います。
 現在、平成13年に改定した認定基準については資料3を見ていただくと、平成12年から平成13年にかけて実施していただいた専門検討会の報告書を付けさせていただいております。本日御参集の中で西村先生にはこちらの検討会に御参画いただきました。約140ページの報告書でして、内容の御説明は割愛させていただきますが、当時も医学の先生方、そして、法学の専門の先生方に御議論いただきまして取りまとめていただき、これに基づき現在の認定基準を策定しているものです。資料2、資料3の御説明は以上となります。
○磯座長 今の説明について何か質問等がありましたら御発言ください。特にありませんか。よろしいでしょうか。
 それでは続いて、資料4の説明を事務局からお願いします。
○西川専門官 資料4について説明させていただきます。昨年11月に公労使、公益の先生方、労働者代表の委員、使用者代表の委員からなります労働政策審議会労働条件分科会労災保険部会に報告した脳・心臓疾患と、精神障害、いわゆる過労死等の認定基準の検討についての報告です。
 この上段の「脳・心臓疾患の労災認定基準」にあるところが、この検討会に関する部分となります。先ほどから御説明を申し上げ、また、審議官の挨拶にもありましたとおり、脳・心臓疾患の認定基準については、平成13年度以降は改正をしていないことから、平成30年度、そして、令和元年度までに収集した医学的知見等を踏まえて、令和2年度に検討会で検討を行う予定という報告をこの部会にしているところです。
 医学的知見の収集を終えまして、次回検討会の第2回以降、こちらでも御報告させていただきまして、その知見なども踏まえて認定基準全般の検証をお願いすることになります。
 また、御参考ですが、精神障害については、先般5月末に精神障害の専門検討会の報告書を受けまして、パワーハラスメントの出来事を認定基準に明記するという改正を行ったところです。さらに本年度、医学的知見を収集しまして、令和3年度に全般の検討を行う予定としておりますので、御参考までに申し添えます。資料4については以上となります。
○磯座長 それでは、資料4について何か御質問がありましたら御発言ください。特にありませんでしょうか。ありがとうございます。
 次に、3月31日に成立しました雇用保険法等の一部を改正する法律の概要について、事務局から説明をお願いします。
○小林管理課長補佐 労災管理課長補佐の小林でございます。先ほど審議官から御挨拶にもありました本年3月31日に成立した雇用保険法等の一部を改正する法律の労災保険法、労働保険徴収法に関する部分について、御説明を差し上げたいと思います。
 資料5の最初のポンチ絵を御覧ください。今回の改正の趣旨としては、多様な働き方を選択する方やパート労働者のような方で複数就業している方が近年増加しているという実状を踏まえまして、労災保険のセーフティネットとしての機能を果たしている労災保険の制度の見直しを行いまして、複数事業労働者が安心して働くことができるような環境整備をするといった趣旨で改正を行ったものです。
 次に、主な改正内容という所を御覧いただければと思います。労災保険法関係では2点あります。1点目として、複数の事業主に雇用される労働者の場合に対して、災害が発生していない事業場のほうの賃金額も合算をして労災保険給付を算定するということと、また、複数就業者の就業先の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定を行うということの2点です。
 また、労働保険徴収法の関係で言えば、現行制度でもあります労災保険のメリット制には影響させないといったような改正が行われているところです。
 先ほど労災保険の御説明をしました改正の2点について例を絵で示しておりますので、そちらを御覧いただければと思います。まず、1点目の非災害発生事業場の賃金額を合算ということです。こちらは、業務上の負荷を総合して評価するという場合や、改正前からの制度である業務災害や通勤災害についても、同じように適用される改正内容ですが、例えば複数就業している方が就業先A、就業先Bで、このような形での賃金を得ていたという場合に、改正前であれば、例えば就業先Bで事故が起きた場合には、15万円のベースをもとに保険給付額を算定するということで改正前は行われていたところですが、改正後は災害が発生していない事業場の、この絵で言いますと就業先Aの賃金額を合算して保険給付を算定するということで、改正後であれば35万円で保険給付を算定するという改正が行われているということです。
 2点目は、こちらが今回の検討会にも関係してくるかと思いますが、業務上の負荷を総合的に評価をして労災認定を行うということです。これまで改正前の場合には例えばこの絵で見た場合に、就業先Aと就業先Bのそれぞれの労働時間というのを、別にそれぞれで分けて評価をしていたということですが、例えば今回のような形で業務上の負荷を総合的に評価をする場合には、就業先A、就業先Bの労働時間で働いていた場合には、就業先Aから見た場合の就業先Bの時間も合わせて評価をするということで、例えば、現行の脳・心臓疾患認定基準の労働時間の認定基準というところだけで見れば、改正前であれば、これは機械的にみた場合に労災認定はされないということですが、改正後であれば、労災認定されるという形での業務上の負荷を総合的に評価するというような改正が行われたということです。
 次ページ、こちらは、その法案ができる前の昨年12月23日に、この法律案は今回、国会が通った法律になりましたが、取りまとまるその土台となる公労使で議論させていただきました労働政策審議会労災部会における建議の内容です。こちらの(1)については、先ほどのような改正内容の見直しの方向性が記載されています。また、(2)は、こちらが今回の検討会の中身と重複し、関係してきますが、その場合の業務上の負荷を総合的に評価する場合の認定方法についてということで、このような建議が示されているところです。例えば(2)ですが、複数就業先の業務の負荷を総合して評価し、労災認定する場合については現行の認定基準の枠組みにより対応することが適当である。ただし、脳・心臓疾患・精神障害等の認定基準については、医学等の専門家の意見を聞いて運用を開始することを留意することが適当であるというような形で、建議として労災保険部会で取りまとまったところです。
 参考ですけれども、そのような建議が取りまとまる際に、昨年11月15日に労災保険部会におきまして、それを取りまとめる前に医学専門家の方に、そうした複数就業で業務上の負荷を総合的に評価する際のその医学的な見地からの意見を賜ったものを、御紹介させていただいたことがありましたので、そちらも資料をもって御紹介を本日させていただきたいと思います。
 医学専門家の黒木先生に聴取しましたところ、聴取内容、次の資料に書かれていた内容が下の四角のほうに書かれておりますが、単一、複数の就業先にかかわらず、それぞれの出来事の心理的負荷、客観的な心理的負荷表の基準に照らし合わせて慎重に判断することが必要であるということと、主たる事業場と副業の事業場があった場合に、個別の事例ごとに判断する必要はあるけれども、心理的負荷の強度としては単一事業場で受けた場合と、複数就業先で受けた場合とで異なるということはないというような御見解を頂きましたので、御紹介させていただいたところです。
 以上のような経緯をもちまして、この度、本年3月に法律が成立したということです。雑ぱくな改正法律の御説明とさせていただきます。以上でございます。
○磯座長 それでは、今の資料5について何か御質問ありましたら御発言ください。よろしいでしょうか。もし、御発言あったらミュートを解除してお話しください。特にありませんか。それでは、次の議題に移っていきます。
 ただいま事務局から、平成元年12月23日労働政策審議会労災保険部会の建議の説明がありましたけれども、脳・心臓疾患の認定基準については医学等の専門家に意見を聞いて運用を開始するとの旨の説明がありましたので、複数兼務災害要因の脳・心臓疾患の認定基準について、資料6の主要論点に沿って委員の皆様方から御意見をお聞きしたいと思います。初めに、1の認定基準の適用について事務局から説明をお願いします。
○西川専門官 事務局から御説明をさせていただきます。本日御意見をいただきたい論点についてになります。先ほど、座長の磯先生から御紹介いただきましたように、資料6に論点をまとめております。そして、その資料6を図解したものが、資料7という関係になっています。ですので、この資料6と資料7に基づいて説明をさせていただきます。こちらについては資料の全体ではなく、項目ごとに区切って御説明をいたしますので、項目ごとに御意見を賜われれば幸いでございます。
 それでは、資料6の論点1から御説明をいたします。まず、前提の確認ですが、先ほど、小林から法改正の内容について2点改正があったという説明をいたしました。資料の6と7で、先生方から御意見をいただくのは改正事項の2点目、新しい保険給付、複数業務要因災害という保険給付についてです。また、本日御意見をいただく内容について、先ほど昨年12月の労働政策審議会の建議について御説明を申し上げたところです。脳・心臓疾患・精神障害等の認定基準については、医学等の専門家の意見を聞いて運用を開始することにも留意することが適当であるとされています。
 本日、この建議に基づき脳・心臓疾患について先生方の御意見を伺うものでして、このため、この論点について報告書といった形で最終的な取りまとめをすることは予定していないところですが、先生方の御意見を伺った上で運用を開始していくということになりますので、今回の新しい複数業務要因災害というものについて、どのように複数就業先の業務上の負荷を総合的に評価していくのかという運用上の問題について、御意見をお願いしたいと思います。
 前置きが長くなりましたけれども、資料6の項目1です。まず、資料6の一番頭のところ、(前提)ということが書いています。今回の複数業務要因災害は、それぞれの就業先での負荷、二重就労、三重就労されているときにA社、B社、C社で働いているとして、A社の負荷だけでは業務と疾病との間に因果関係が認められない。B社の負荷だけでは業務と疾病との間に因果関係が認められない。そういった場合に、1社の負荷のみでは業務と疾病との間に因果関係が認められないものの、複数就業先での、このA社、B社、C社の業務上の負荷を総合して評価することにより疾病との関係に因果関係が認められるという場合に新たに保険給付の対象にしていくという趣旨で、法律上、新しい給付を定めたものです。
 このため、前提に書いているところですが、複数業務要因災害に関する保険給付から法律上の定義として業務災害、今までの業務災害に関する保険給付は除くという形になっています。今までの業務災害は今後もずっと業務災害として認められていくことになりますので、そこは変わらない。ちなみに、通勤災害のところも変わらないということになります。実際の労災請求事案の審査に当たりましては、請求書をいただきますと、まずA社の業務災害に該当するかどうか。どこかの会社の業務災害に該当するかどうかを判断していくことになります。業務災害には該当しない。一社の負荷のみでは、業務と疾病との間に因果関係が認められない。そういった場合に、この複数業務要因災害として労災保険給付の対象となるか否かを判断していく。その場合の運用について御意見をいただくというものです。
 その上で、論点として1のところですが、「複数業務要因災害においても、『脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準』(平成13年12月12日付け基発第1063号)ですが、この認定基準に基づき、労災保険給付の対象となるか否かを判断することでよいか」と、論点を出しております。ここで、今の認定基準における認定要件は、先ほど資料2で御説明いたしましたとおり、資料の囲みの中に3点ございます。これは平成13年の検討会の取りまとめ、医学的知見に基づいて定めたものですが、どういった医学的知見に基づいてこれを定めたかについて、資料7を御覧いただければと思います。
 資料7の1枚目です。過重負荷と脳・心臓疾患の発症との関係、医学経験則に基づく考え方ということで、示しております。こちらが、平成13年の専門検討会の報告書にまとめられた医学的知見になります。
 左上に図があります。これは、右のほうが時間的経過の流れ、左から右に時間が経っていくということ、そして、縦軸が血管病変等の進行状態を表わしたもので、一番上までいくと、脳・心臓疾患が発症してしまった状態という図になっています。自然経過でもちろん発病される方もいらっしゃる。これが点線の部分になりますが、自然経過で血管病変等が進行していって、発症に至った、発病に至ったということであると、これは労災としては認められないことになります。ところが、ここに業務によってこの血管病変等が急に悪くなることがあるのではないか。特に、疲労の蓄積などでそういったことが起こるのではないかというのが、イ、ロ、ハの図、矢印になります。
 右側に経験則ということで書いていますが、恒常的な長時間労働等の負荷が長期間にわたって作用した場合に生体のストレス反応が続いてしまって、そして溜まって過大となって、遂に回復し難いものとなる。そういったものを、疲労の蓄積と呼べる。この疲労の蓄積によって生体機能が低下し、血管病変等が増悪することが考えられるのではないか。こういった業務による疲労の蓄積が血管病変等、その自然経過を超えて著しく増悪させ、その結果、脳・心臓疾患が発症した場合には業務起因性がある。つまり、労災であると認めるべきではないかという考え方に基づいて定められたものです。
 その下ですが、これが認定基準にどのように入っているかということですが、恒常的長時間労働等の負荷が長期間にわたって作用した場合には、先ほど御説明した「疲労の蓄積」が生じ、これが血管病変等をその自然経過を超えて激しく増悪させ、その結果、脳・心臓疾患を発症させることがあるとしている。このことから、発症との関連性において業務の過重性を評価するにあたっては、発症前の一定期間の就労実態等を考察し、発症時における疲労の蓄積がどの程度であったかという観点から判断していこうと。この評価期間として、発症前の長期間とは、発症前おおむね6か月をみていこうという形で、今の認定基準はそれに基づいて長期間の過重業務という考え方を定めています。
 そして、この考え方に基づいて次のページ、資料7の2枚目のとおり、認定基準が定められているところです。異常な出来事、短期間の過重業務、長期間の過重業務と分けてお示ししています。この認定基準のうちの長期間の過重業務についてですが、これは先ほど申し上げた評価期間を発症前おおむね6か月間の状態をみているところです。そして、次のような場合、この6か月間のうちに次のような事態があった場合に、業務と発症との関連性が強いと評価することとしている。ということで、1点目は黒の太字のところ、発症直前1か月間に休日労働を含む時間外労働がおおむね100時間を超えるような場合、そして発症直前の2か月の平均、3か月の平均、ずっといって6か月の平均、その平均を取り、1か月当たりの休日労働を含む月の平均の時間外労働がおおむね80時間を超える場合、こういった場合には業務と発症との関連性が強い、すなわち業務災害である、労災であるというふうに判断すべきではないか。
 時間だけではありませんで、このほかにも労働時間以外の負荷要因、例えば不規則な勤務であるとか、拘束時間の長い勤務であるとか、出張の多い業務であるとか、交代制勤務、深夜勤務、そして作業環境、精神的緊張を伴う業務、こういったものがあればそれについても検討していく形で、今の認定基準を示しているところです。
 この労働時間数、いわゆる過労死ラインとも呼ばれている労働時間数ですが、この数字がどのように出てきたかが、資料7の3枚目です。これも専門検討会の報告書でまとめているものですが、この長時間労働と疲労の蓄積の考え方として、睡眠時間に着目して考えているものです。長期間にわたる1日4~6時間以下の睡眠は、脳・心臓疾患の有病率や死亡率を高めるという知見があります。いろいろな報告例ありますが、例を2つ挙げています。睡眠時間が6時間未満では狭心症や心筋梗塞の有病率が高いという知見がある。睡眠時間を5時間以下の方を取ると、脳・心臓疾患の発症率が高いというような報告例があるということで、睡眠時間がこれだけ少なくなる労働時間はどういうものであるだろうということで、この考え方、労働時間の数を示しているということです。
 そこが今度は下の囲みですが、1日のうちに、1日24時間の中で人間は仕事もするし、睡眠もするし、食事や余暇も取ると。いろいろ考えられるのだけれども、仕事の時間が増えていく。今の示している横の帯グラフは、仕事は休憩時間を含んで9.0時間。一応所定労働時間、法定労働時間プラス1時間休憩ということを、まずは想定しているのですが、ここがどんどん残業で増えていくとなると、まず余暇が削られるであろう。そして食事ですとか、どうしても必要な移動であるとか、そこは削れないので、余暇が削られていって、それでも間に合わないとなると睡眠が削られていくであろうという考え方に基づいて、先ほどの時間数を示しているところです。
 1日の睡眠が5時間未満となるような状態は、1日の労働時間が8時間を超えて、更に5時間程度の時間外労働を行った場合ということになります。これが1か月継続しますと月100時間、5時間×5日×4週ということであると、月100時間という水準になってまいります。あるいは1日の睡眠が6時間未満となる状態としては、1日8時間を超えて44時間程度の時間外労働をした場合です。そうしますと1か月で80時間を超える時間外労働をしたと。そういった水準になりますと、やはり睡眠時間が6時間確保できない、5時間確保できない。それが続いていくといった場合に、疲労が蓄積して脳・心臓疾患のリスクを高める。このような場合に労災認定の対象としていくという認定基準です。ここまでが、今の認定基準の考え方です。
 この認定基準の考え方につきまして、本日の論点である複数就業、兼業、副業をしている人の話に戻りますが、1つの事業場の労働時間などの負荷を見た場合には業務災害とは認められない状況であったとしても、その労働者の方が2社、3社で就労しているといった場合に、それらの仕事による負荷を総合的に判断していく方法について、この認定基準の枠組みで考えていくことでいいかどうか。今の認定基準では業務という書き方がされていますが、これはもちろん業務災害の場合はそれで見ていくわけですが、この複数業務要因災害というものの判断については2以上の事業場の業務を指す複数業務という形で、これを読み替えた上で、今の3つの認定要件、異常な出来事、短期間の過重業務、長期間の過重業務、この認定要件に従って判断していくことでよいかというところが、この論点の1で、御意見をいただきたい点となります。
 労働時間についても、睡眠時間との関係で今ほどかなり具体的な説明を申し上げましたが、労働時間の通算、それ自体については次の論点2の(1)で御意見をいただくこととして、この3要件を使って判断していくことについての御意見を、この項目1ではいただきたいと思います。資料6と7の項目1については、説明は以上です。
○磯座長 非常に詳細な御説明ありがとうございました。今の説明について、先生方の御意見を伺うということなのですが、特に、今回の論点1についてはこれまでの業務災害、業務に関する災害の認定基準ですが、それを複数業務と読み替えていいかということがまず一つの大きな論点になるかと思いますが、それについては先生方、御意見はいかがでしょうか。何か御意見、特に御意見ありましたら是非御発言をよろしくお願いします。
○杉委員 よろしいでしょうか。小田原循環器病院の杉ですが。
○磯座長 よろしくお願いします、杉先生。
○杉委員 質問と確認になるのですけれども、AとBとそれぞれにやっている副業ということになると思います。Aが恐らく主で、Bは副業だと思うのですが、その場合にA社は、B社で働いていることは知っている必要があるのでしょうか。それとも認可する必要があるのでしょうか。そのことを伺いたいのですが。
○西川専門官 事務局からお答えいたします。今回の複数業務要因災害の認定にあたりましては、実際、社会の今の状況としては、A社が、ある労働者の方のB社での副業を知っていることもあるし、知らないこともあるだろう。許可制にしていらっしゃる会社さんもあれば、全く何もコントロールしていないという会社さんもあるであろうというのが恐らく実情です。あるいは許可制だけれども、労働者がそれを言ってないこともあるだろうと。いろいろなパターンが考えられるわけですが、この労災認定の判断にあたりましては、そこについては問わないということになってこようかと思います。これはA社の責任を追及するものでもなく、B社の責任を追及するものでもなく、そういった状態にある方が脳・心臓疾患を発症された場合に、その方の発病の原因が全体として仕事といえるであろうか、いえないのであろうかということを判断していくと考えていますので、メインの就業先がある場合であっても、そのメインの就業先が副業の状況を知っていなかったとしても、この総合的な評価を行っていきたいと考えているものです。
○杉委員 分かりました、ありがとうございました。では、これからの議論はそれに基づいてということで、よろしいですね。
○西川専門官 よろしくお願いします。
○磯座長 ほかに御意見等ございませんでしょうか。様々御質問があるかと思いますが。
○小山委員 よろしいでしょうか、小山です。労災の認定に関することがあるのですが、先ほど厚労省の方が言われたとおり、A社が主とすると、その時間外になるのは業務、業務命令ですよね。業務命令で、例えば仕事して。25時間でもいいですけど、25時間でいくわけですけども。それが個人の、先ほど杉先生がおっしゃったとおり、別な会社で25時間を実施してきた場合の、それを合算していくと、当然ながら時間的な計算業務は、例えば1月当たりの100時間とか、80時間とかをオーバーする可能性が高い。それを労災というような形で、仕事の形態は分かりませんが、持っていくと非常に難しい事案が出てくるのではないかなという気はするのですけれども、以上です。
○磯座長 今の御質問について、何か事務局のほうで御発言ありますでしょうか。
○西川専門官 では私のほうから御回答といいますか、御説明でございます。副業するかしないかということの判断につきましては、労働者の方の一義的な判断があった上で働かれているであろうということは、小山先生の御指摘のとおりかと存じます。
 ただ、いずれの会社においても、労働者として使用される指揮命令の下で働いているということにつきましては、1社の場合でも、2社の場合でも同じではないかというふうに考えられまして、そういった使用されて働くということについての業務上のリスクといいますか、それを総合的に評価していく必要があると。
 先ほどからお話に出ている、必ずしも1社にメインで働いていて、そこで選択的に副業をしていると、B社の業務を追加しているという場合だけではなくて、実際に副業をしていらっしゃる方は生計の問題であるとか、自分の自由にできる時間の問題であるとか、いろいろな問題からパート、パートで掛け持ちで生計を維持していらっしゃるという方も相当数いらっしゃるところで、そういったことも全体含めまして副業をされる方というのは増えてきているというところで、どういった補償のあり方が適切かということで、この新しい給付ができてきたところでございます。
 そういったことを前提に、総合的に評価していくことの法改正がなされたものでございますので、その上で実際の運用についての御意見を賜わりたいというのが、事務局の考え方でございます。
○小山委員 また、よろしいですか。結局のところ、そうすると本来はA社、自分が主たる仕事場は本当に環境が良くて、そこで生活できれば労働者というのは一番良いわけですけれども。そういう労働条件になくて、やはりお金が必要だから、それをその副業、それが経済的なことになってしまうのですが、最終的にはこれも時間的な計算も後でされると思うのですが。そうすると、それが先ほど出ていた1項の、40時間+25時間、常にコンスタントに100時間をあっという間に達する可能性あるわけですね。A+Bでいくと。そうすると、この100時間というものが認定されてしまうと、認定というか、この数字で医学上のことも要件が考慮されますが、この時間がやはり独り歩きする可能性があるので、それだけちょっと危惧しているのですが。
○西川専門官 事務局からでございますが、おっしゃるとおり100時間という数字を出せば、これは既に出ている数字ではありますが、数字を出せばその数字に基づいて世の中が動いていくというか、独り歩きするというような御懸念もあろうかというふうには思いますけれども、この100時間というのは、先ほど御説明をさせていただいたとおり、毎日5時間の睡眠が確保できないという水準の時間ということで、相当に長い時間というふうに考えています。健康確保の観点からも、そういった長時間労働をどう防いでいくか。副業先も含めて、長時間労働をどう防いでいくかという問題は取り組んでいかなければいけないものであるというふうには考えています。ただ、実際にそういった労働にあった方が、脳・心臓疾患を発症してしまったという状況、そういった請求を監督署のほうで目の前にしたときに、これが全体として仕事のせいというふうに考えるべきなのか、どうなのかということについて、やはりそれは仕事で、雇われて働く仕事ということで100時間、あるいは80時間といった水準になってくるのであれば、これは認めていく必要があるのかなというようなところで、事務方としては考えているところです。
○磯座長 よろしいですか。今のお2人の先生方の御懸念、非常によく分かりますが、一応私が伺ったところによると、これ就業時間というのは本人の申告と、事業主からの判定といいますか、どのくらい働いているかということと、両方合わせて、労働基準監督署がそれぞれの意見を2つ両方から聞いて、最終的に客観的に判断するという形になっていますので、その辺りはしっかりと運用できるような形にしていくのが重要かと思います。ほかに御意見等ございませんでしょうか。
○西村委員 埼玉医大の西村です。過重負荷の予防で、労働時間が基準を超えると、産業医、看護師から通告や面談等が行われます。就業先が複数の場合、労働時間の把握からの予防が困難ではないかと懸念されます。この点についてはいかがでしょうか。
○磯座長 事務局からお答えください。
○西村補償課長 補償課長の西村です。お答えさせていただきたいと思います。先生方の御懸念はよく分かります。副業・兼業に対しての問題点というのは大きく3つあると思います。1つは、今回こうなった補償の問題です。これが今回クリアになったわけですが、そのほかにも労務管理としての労働時間の管理、これを副業・兼業の場合にどうやっていくのかということが2つ目にあると思います。もう1つは、今、先生がおっしゃった健康管理の問題、副業で2つ以上の事業場で働いている場合の健康管理をどうしていくべきか、このような問題も御指摘のとおりだろうと思っています。
 大きく3つの問題についてあるわけですが、今回は補償の問題はまず解決していこうということになっています。一方、労働時間の管理や健康管理については厚労省の別の審議会で現在検討しているところですので、それを踏まえて労働時間の管理や健康管理についても今後も様々議論がなされていくということです。以上です。
○西村委員 分かりました。
○磯座長 それでは、ほかに御意見等はありませんか。
○高橋委員 高橋です。資料5の右の下の図に関してお伺いしたいのですが、就業先Aでは週40時間、これはA社においては時間外労働は0時間と考えてよろしいでしょうか。
○西川専門官 高橋先生のおっしゃるとおりです。これはA社では、いわゆる法定労働時間だけの就労をしているという図です。
○高橋委員 分かりました。一方、Bでは週25時間、働いているわけですが、これはいわば所定の時間になるわけですね。
○西川専門官 はい、B社にとっては、B社における所定の労働時間ということになると考えています。
○高橋委員 今回のように合算するとなると、所定がいわばこれまで単一業務における時間外となるという理解でよろしいでしょうか。
○西川専門官 はい、そのとおりです。
○高橋委員 そうなると、同じ時間外労働何十時間という表現でも、単一業務か複数業務かによって意味が違うので、今後の議論のために使い分けは可能でしょうか。
○西川専門官 事務局から少し補足をさせていただきたいのですが、今の業務災害に関する労災の脳・心臓疾患の認定基準においても、時間外労働と認定基準上呼んではいるのですが、いわゆる所定時間外労働を指しているものではありません。認定基準の中にあるのですが、その会社の所定労働時間がどうであるかにかかわらず、1週間当たり40時間を超えた部分をこの通達でいう時間外労働とするということにしまして、今の認定基準は書かれています。
 会社によっては、週44時間まで適法という会社も中にはあるのですが、あるいは農業等のように労働時間規制がそもそもないという会社もあるのですが、そういったことにかかわらず、実際に働かれた時間が週40時間を超えた部分について、それを時間外労働という名前で呼んで、それが100時間や80時間になった場合に業務と発病の関連性が高いと評価しているものです。そういう意味で使い分けというのが、難しいのかなと。逆に二重就業の場合も同じように考えて、その会社にとっては所定の部分になるかもしれませんが、週40時間を超えた部分を時間外労働と呼ぶという考え方、逆に統一するほうが今の認定基準の考え方に沿うのかなと考えているところです。
○小山委員 いいですか。
○磯座長 どうぞ。
○小山委員 結局、今、厚労省がおっしゃったのは、1人の方がA社で働こうがB社で働こうが、1日でその方が8時間プラス5時間、13時間働いた。その個人が働いたことが労働だということで、この労災を考えるという考え方なのでしょうか。
○西川専門官 小山先生のおっしゃるとおりです。
○磯座長 ほかにありますか。確かに高橋先生がおっしゃった御意見の趣旨もよく分かるのですが、なかなかそれをA社とB社で重み付けするなど、そういったことについてはまた次の段階になるかなと思いますが、基本的には労働時間で合算するという方針で、まずこれをクリアして次の議論にいきたいと思います。ただ様々な御意見、さらに細部の基準についての御意見はあるかと思いますが、ほかの先生方も含めて一応、今回、業務要因災害を複数として、原則足し算という形で特に大きな反対意見がないようでしたら、次に移らせていただきたいのですが。
○野出委員 佐賀大学の野出です。この内容については、合意をしていて問題はないと思います。1つ、議論の根拠として知りたいのは、同じ1週間当たりの労働時間が同じであっても、単一の所で時間外労働をするケースと複数の時間外労働をするケースがあると思います。一般的には複数の所で働くほうがストレスが多くなる、あるいは勤務の業務が変わってくる、通勤時間等も含めて業務過剰になると思いますが、今回の複数の業務に関して労災を与える根拠として、単一の施設の労働に比べて複数の業務をした場合に、よりストレスが高まるというデータがありましたら、今回の複数業務に関して労災を補償するという根拠になるのかなと思ったのですが、そういうデータは実際ありますか。
○磯座長 事務局からお願いします。
○西川専門官 事務局からお答えをさせていただきます。数字という形のものではないのですが、資料5を御覧ください。資料5の3枚目、先ほど少し小林から触れさせていただきましたが、こちらの法改正に先立ちまして専門医の方に御意見を聞いた内容ということで書かせていただいているこの資料ですが、ここで御意見を聞いた黒木宣夫先生は精神障害の専門の先生です。この先生からお伺いした内容としては、いわゆるストレス、心理的負荷ですが、聴取内容の下のほうのマルですが、もちろん個別の事例ごとに判断していく必要はあるけれども、心理的負荷の強度としては単一事業場で受けた場合と複数就業先で受けた場合とで異なるということはないと御意見を頂いているところです。 
○野出委員 了解しました。基本的には同一と考えているということですね。
○西川専門官 基本的にはそのように考えているということです。
○野出委員 はい、了解しました。
○磯座長 ほかにありませんか。確かに野出先生のおっしゃるとおり複数だと余計に負荷が掛かるという場合もありますし、逆に同じ所よりも自分が少し離れて別の所の環境でやったほうがストレス解消になるという場合もありますので、現状では一緒と考えて進めていくのが妥当なところと考えます。
○野出委員 はい、了解しました。
○磯座長 ほかにありませんか、まだ医学関係で御発言を頂いていない髙田先生、豊田先生、いかがでしょうか。 
○豊田委員 豊田ですが、複数の職場の時間の合算などいろいろ難しい問題があるのはよく分かりました。今のところ、私からは特別な質問はありません。
○磯座長 ありがとうございます。髙田先生はいかがでしょうか。
○髙田委員 髙田です。私からは現在、労働安全衛生分科会で副業・兼業に係る健康確保措置について議論が行われています。その中で副業・兼業に係る文献調査結果ということで、本日午前中に審議会がありまして、その中で高橋先生がいらっしゃる労働安全衛生総合研究所の行政要請研究で文献調査結果の一部が発表されています。
 その中では複数仕事を持つ者のほうが睡眠時間の長さに影響があるという話や、複数業務を持っているほうが業務外の災害発生頻度が高くなっているという報告、あとは余り影響がないとような報告など、まちまちですが、副業・兼業という仕事の持ち方ということで、仕事を複数持っているという場合でも、仕事は1つのほうがいいと考えている中で高要求低リソースの業務、そういったものを重視しているというような脆弱グループの場合には、身体的、精神的に健康が損なわれていたというオランダからの論文の報告がありますので、本来的には複数業務を持っている持ち方によっては、質の違いがあるのではないかというようなところが午前中の議論の中では出てきたところがありましたので、御紹介させていただきます。以上です。
○磯座長 ありがとうございます。様々なデータや文献の調査をした結果は、事務局からまた、先生の今の研究班の報告も含めて紹介があると思いますので、またそこで様々な御意見を頂戴したいと思います。よろしいでしょうか、これについては特に医学分野の先生方からは、特に大きな反対意見はなさそうなので、また最後に意見聴取をします。
 次の議題に移らせていただきます。②の複数業務による過重負荷の評価、認定基準の運用についての(1)の説明を事務局からお願いします。
○西川専門官 事務局から次の項目について説明させていただきます。先ほどの項目についての御意見ありがとうございました。
 項目2の複数業務による過重負荷の評価について、説明させていただきます。先ほど、認定基準に基づき判断していくということについて、おおむね御了解を頂いたかと思っているところですが、この認定基準に基づきまして複数業務要因災害に該当するか否かを判断していくに当たりまして、次のような点について専門家の御意見を踏まえて運用することが必要ではないかということで、3点挙げさせていただいています。そのうち(1)について説明させていただきます。
 「なお」という所で(1)の前に書いていますが、繰り返しますが業務災害に該当する場合には、この複数業務要因災害には該当しませんので、これから御意見を頂く(1)、(2)、(3)全てについて、単独の事業場においては、業務による過重負荷とまでは認められなかったということを前提としての御意見をお願いしたいと思います。
 先ほどからも、かなり御議論が出てきたところですが、(1)については労働時間の通算に関する論点です。今、労働時間といった業務の量を評価しているのが、「短期間の過重業務」と「長期間の過重業務」といった要件です。この「短期間の過重業務」及び「長期間の過重業務」について、労働時間を評価していくに当たりましては、異なる事業場における労働時間を通算して評価することでよいとしています。この2つの要件、「短期間の過重業務」及び「長期間の過重業務」における過重性の評価においては、労働時間の長さというものは業務量の大きさを示す指標であって、最も重要な要因であると認定基準上示されています。
 特に「長時間の過重業務」においては、先ほど御説明させていただいた睡眠時間との関係の考え方に基づきまして、発症前1か月間に休日労働を含む時間外労働がおおむね100時間を超える場合、あるいは発症前2か月から6か月の平均で休日労働を含む時間外労働がおおむね80時間を超える場合に、業務と発症との関連性が強いとしているところです。ここで時間外労働といいますのは、先ほど申し上げましたとおり週40時間を超える労働時間、その会社の所定にかかわらず週40時間を超える労働時間としているところです。
 この長期過重について、異なる事業場における労働時間を通算して評価していく場合にも、通算して週40時間を超える部分を時間外労働時間数と評価した上で、この業務の過重性を評価することでよいかということ。それから短期間の過重業務においては、長期間の過重業務のように時間数で基準を示してはいないところですが、例えば発症直前から前日までの間に特に過度の長時間労働が認められるかどうか、あるいは発症前おおむね1週間以内に継続した長時間労働が認められるか否か、休日が確保されていたかどうかといったような観点から検討して評価することというような認定基準になっているところです。こういった検討に当たりまして、異なる事業場における労働時間を通算して評価してよいかということです。
 これを図にしたものが資料7の4ページ目になります。3つ青い枠がありますが、その一番上の枠になります。資料7、4ページ目の上の図です。例えばということで、先ほどの資料5の例と同じような設定にしていますが、本業で朝8時からお昼休み1時間を含めて、夕方の17時まで働いたということで8時間労働をした。続きまして、1時間おいて18時から23時までダブルワークで副業5時間をしたというような場合、これを単純計算しますと本業で1週40時間、大体1か月で160時間、副業で1日5時間、1週間で25時間、4週間で大体100時間ということになり、これを合算していきますと1か月辺り100時間の時間外労働ということで評価していくべきではないかということです。
 資料8ですが、これは実際の例ということではありませんが、イメージしていただくに当たってのサンプルです。この通算した場合に認定していくとなった場合のイメージとしての事例がこの資料8です。A社で時間外労働をして、B社でダブルワークをしたという事例です。例えばということで、請求人は食料品販売会社A社で店長として勤務をされていました。こちらでは残業もあり、月60時間ぐらいの残業をしていた。ただちょっと生活費が足りないということで、深夜にB社で道路工事の誘導員の仕事を始めました。B社の仕事に慣れてきますと、平日A社の仕事を終えた後、週3回ぐらい、夜に4時間ぐらいダブルワークを行うようになった。
 そうこうしているところ脳出血を発症してしまった。A社の分とB社の分の週40時間を超える部分を通算すると、月の時間外労働時間数が約110時間となる事例です。これは業務災害についてどう考えていくかということになりますが、業務災害が認められる場合というのは、会社に災害補償責任がある場合ということになります。これは会社ごとに見ていくということになりますので、A社、B社それぞれ単独で見ていくということになります。A社の業務単独では月60時間程度の時間外労働、これだけということであれば業務と発症との関連性は高いとはいえないということで、業務外という結論になるわけです。B社の業務も単独で見ると、週40時間を全く超えていないということになりますので、こちらももちろん業務と発症との関連性は高くないということになります。業務災害の判断としては、業務外ということになるわけです。
 労災保険法は、もともと使用者の災害補償責任を保険で担保するという考え方から、業務災害についてはそういった災害補償責任が認められる場合ということで、別の会社の労働時間は通算しない。負荷がないから通算しないということではなく、災害補償責任を会社に問うことができないから、そういった業務災害という枠組みでは労災補償を行うことができないということで通算しない、会社ごとに見る。したがって給付もできないということで今までやってきたところです。
 それで本当にいいのかということで、今回、複数業務要因災害というものを新しく補償の対象にする。ですから、通勤災害をつくったことと同じように使用者の災害補償責任とは別という観点で、それとは切り離したものとしてこういったものは補償の対象とすべきではないかということで、この複数業務要因災害を法改正をもって新しく設けたということです。ここで総合的に評価をさせていただくということになりますと、A社とB社の労働時間を通算する。通算してみると、発症前1か月の時間外労働時間数は約110時間ということです。今の認定基準に基づいて判断していくということになれば、複数業務要因災害として全体としての仕事と発症との関連性は高いと評価をすることができて、労災認定されるということになっていくのではないかという通算の考え方です。
 この考え方について、先ほどもいろいろいただいたところではありますが、改めて御意見を頂ければと思います。項目2の(1)の説明については以上です。
○磯座長 それでは今の資料6の2の(1)についての考え方で説明がありましたが、これに対して何か御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。
○野出委員 よろしいでしょうか、佐賀大学の野出です。結論として、この文書の文言、あるいは数字は妥当だと思いますので問題ないのですが、大事なことはこの数字の根拠だと思います。1週間40時間以上という数字の根拠が、睡眠時間が6時間未満の状況では脳や心臓血管の有病率が高くなるということ。もう1点は、この算出根拠の食事等の平均が5.3時間、余暇が2.3時間という数字から出てきていると思うのですが、このデータはどういう算出で6時間、5時間を出されたのかということと、もう1つは食事時間5.3時間や余暇が2.3時間、この数字の出所を教えていただきたいと思います。
○磯座長 事務局からお願いします。
○西川専門官 事務局から御説明をさせていただきます。今の先生の御質問については、前回の平成13年の認定基準を作ったときの専門検討会の報告書を見ていただきたいと思います。資料3になりますが、PDFの98ページを御覧ください。図の5-5で、労働者の1日の生活時間を図にしたものがあります。これを持ってきたのが先ほどの資料7の図ですが、そこに出典がありますが当時の総務庁の平成8年の社会生活基本調査報告から引いてきた時間数で、NHKが調査しているものとも余り齟齬がないということで、持ってきた数字です。
 これも含めまして、次回以降の認定基準全般の検証の中ではまた新しい資料を出して御検討いただく必要があるかとは思ってはいるのですが、本日の議論については、今の認定基準はこういったものをもとに作られていますということです。96ページ、97ページからは睡眠時間の話を書いていますが、96ページの上の表5-2では、脳・心臓疾患の発症と睡眠時間に関する報告ということで、いろいろと有意差がない調査も中にはあるということですが、有意差があったという調査もたくさんあるということです。その当時に引いた報告がいろいろあり、これらをもとに96ページから97ページに掛けて、1日4時間から6時間程度の睡眠が確保できない状態が継続していたかどうかという視点で考えていこうということで、まとめていただいているものです。
 こういったものについては、次回以降、また検証の対象になってくるかと思いますが、本日の御議論については改正法の施行は法律が成立してから6か月以内で迫ってきているということもありますので、これをやっていくに当たりまして、取りあえずは今の認定基準をもとにどういった形で考えていくかということで御意見を頂ければと思っています。以上です。 
○野出委員 了解しました。複数業務要因に関しては、全く異論はないのでこれで結構なのですが、時間に関しては24年前のデータですので、また新しいデータがあればそれも根拠にしながら議論をしていくほうがよろしいかなと思いました。以上です。
○西川専門官 ありがとうございます。
○磯座長 ほかに御意見等はありませんか。
○西村委員 埼玉医大の西村です。その当時の事情を知る者として、その当時の事情を知る者として、追加の発言をさせていただきます。睡眠時間に基づく負荷評価は科学的エビデンスに基づくものです。就業時間は個人の記録等からの判断は可能ですが、食事や余暇等の時間は、都心部に勤務している人と地方の人とでは、通勤時間が異なることからかなりの差があります。就業者における活動とその時間は、引用のデータを参考にして平均の数字として算定されました。今日、テレワークの普及等で働き方も変化してきています。通勤の状態も異なるため、野出先生がおっしゃっている最新のデータで検証しなくてはいけないと思います。
○磯座長 御意見ありがとうございます。事務局から説明があったように、次回から最新のデータを我々の前にお示しいただいて、またこの件については議論を深めていきたいと思います。ただ、今の段階で事務局として先生方にある程度の合意を頂きたい点は、実際の細かいクライテリアについては少しずつ修正が入るかもしれませんが、基本的には睡眠を中心にして、睡眠のデータもまた新しくしてアップデートしていきますが、このような睡眠も1つの大きな要因でありますので、それを判断基準にしながら、こういった労働時間の合算、異なる事業場にある労働時間を通算して評価するということに対しては、先ほどの議論と非常に関連するのですが、その方針についてはいかがでしょうか。
 特にほかに御意見がなければ、これについてもおおまかな合意を得たということで進めさせていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。ありがとうございます。
 それでは、次に事務局から(2)について説明をお願いいたします。
○西川専門官 ありがとうございました。それでは、項目2の(2)につきまして、御説明させていただきたいと思います。今度は労働時間以外の負荷要因についての論点ということになります。この「短期間の過重業務」及び「長期間の過重業務」におきましては、労働時間を非常に重要な負荷要因としていますけれども、それ以外の負荷要因についても評価するという形での認定基準になっています。こういった労働時間以外の負荷要因を評価するに当たり、これも異なる事業場における負荷を合わせてと言いますか、両方見て評価していくことでよいかということです。
 この労働時間以外の負荷要因とは具体的に何かということについては、「短期間の過重業務」と「長期間の過重業務」で同じ内容が示されていますけれども、(2)の下の囲みの中にありますとおり、不規則な勤務であるとか、拘束時間の長い勤務であるとか、出張の多い業務、交替制勤務・深夜勤務、そして作業環境(温度環境、騒音、時差)とありますが、非常にうるさい所で働くような場合などです。あるいは精神的緊張を伴う業務、こういったものが認められる場合には過重性を高めるということで、評価するべきだということで示されているものです。こういった負荷要因につきまして、労働時間と合わせて検討して業務の過重性を判断していくこととしているところですが、複数業務要因災害につきましても、こういった異なる事業場における労働時間以外の負荷要因も全体として見て評価していくことで、よろしいでしょうかということです。
 これにつきまして、資料7の図を見ていただくと資料7の中段です。A社(本業)ということで時間外労働時間月45時間、出張の多い業務であったという例です。B社(副業)のほうは労働時間月30時間で、倉庫でのアルバイトを想定していて冷蔵庫の中に頻繁に出入りする、激しい寒暖差がある場所への出入りが頻繁な業務であったというケースです。これを全体として評価していくに当たり、時間外労働時間、A社で週40時間を超えた部分が月45時間ということで、B社はB社だけで月30時間ということなので、全体として時間外労働時間は月75時間、かつ出張が多く、そして激しい寒暖差がある場所への出入りが頻繁な業務であることを全体として見て評価していけばどうかということです。
 ただ、この負荷要因というのはチェックが付けばマルといったものではありませんので、1社の場合も、その人が、1か月全体で残業と残業でないものを全部ひっくるめて、例えば200時間あるいは230時間の労働をしているというときに、全体が出張が多いのか、その半分が出張が多いのかでは、当然、評価が変わってきますし、半分は出張が多くて半分は寒暖差があるとか、ちょっとだけ寒暖差があるとか、そういったものはそれぞれの事情に応じて評価をしていくものです。
 異なる事業場における場合につきましても、それぞれこういった負荷要因については、そういった業務がどの程度あるのかも、当然、併せてみていくことになると考えていますけれども、そういったことも含めて単一事業場のときに見ているのと同様に、異なる事業場における負荷を全体として見て評価していくことで、よろしいでしょうかということについて御意見を頂ければと思います。項目2の(2)の説明については以上です。
○磯座長 それでは、今の事務局の説明に関して何か御意見、御質問等はございますか。
○小山委員 小山ですが、1点、いいですか。
○磯座長 どうぞ。
○小山委員 この深夜勤務と拘束時間ですが、ある程度拘束時間が仕事時間に入ってくる場合があります。いわゆる実際の審査に入る場合、これもケース・バイ・ケースですが、これを時間的にどうとらえていくか。夜勤の後は明けで休むはずですね、夜勤勤務というのは。夜勤勤務と拘束時間の長い勤務、これは当直が入るか分からないですが、その区別がまだはっきりしない点があるような気がしますけれども、実際問題として、どういうふうに実際の時間を決めていくべきなのか分からないですが。
○磯座長 いかがでしょうか、事務局から。
○西川専門官 今、小山先生から御指摘がございましたとおり、どうやって見ていくのか、あまり具体的でないではないかという御指摘はよく分かりますというか、そういった御指摘はごもっともかと思います。今の認定基準ですが、いろいろな観点は書いてありますけれども、これこれの観点から検討し評価することというふうに、先ほど先生がおっしゃった深夜勤務であれば、交替制勤務、深夜勤務については出勤シフトの変更の度合い、勤務と次の勤務までの時間、交替制勤務における深夜時間帯の頻度等の観点から検討し評価することと書いてありますけれども、実際にどのようにこれを判断していけばいいのか。あるいは、先ほど先生がおっしゃった2つの項目にダブルで当たると、拘束時間も長いし深夜勤務もある場合にどういうふうに評価していくべきかについて、あまり具体性がないのではないかという御指摘はもっともかと思っています。
 これにつきましても、次回以降の検討の際に何か具体化ができるのか。あるいは、なかなかできなくて総合的に評価していくしかないのかを、御検討いただくことになろうかと思います。実際の運用については小山先生が一番よく御存じかもしれませんが、そういった悩ましい事案につきまして、監督署のほうでは局医の先生、小山先生を含めまして労働局のほうでお願いしている先生に御相談させていただき、医学的知見を踏まえて全体としてこれは仕事のせいと言えそうだ、言えそうでないという御意見も参考にしながら、それも踏まえて決めさせていただいているところです。
 どういった具体化が必要か、できるのか、できるのであればどうやってしていくべきかについては、次回以降の認定基準全般の検証の中で御議論いただきたいと思っています。今回の複数業務要因災害につきましては、大変恐縮ですが、今の認定基準のもとでどういうふうに考えていくべきか。認定基準に従ってやっていいかということについて、御意見を賜りたいと思っている次第です。よろしくお願いします。
○磯座長 ほかに、先生方から御意見等はございませんか。
○野出委員 よろしいですか。
○磯座長 野出先生、どうぞ。
○野出委員 これで合わせて評価するということは、私は問題ないと思います。ただ、1つ、例えば1つ目の事業所と2つ目の事業所を単に足すだけでなく、事業所が非常に離れている場合がありますね、遠い場合。この場合は相加的ではなく相乗的な負荷が掛かるかなと思うのですが、そういった副業している所が離れている場合は、拘束時間の長い勤務という中に含まれるのか、別個にそういった観点からも評価されるのか。そこの辺りはいかがでしょうか。
○磯座長 どうぞ、事務局から。
○西川専門官 事務局から御説明させていただきます。副業の場合に副業先A社とB社が、例えば、今、野出先生から御指摘がありましたように、どれぐらい離れているかによって、その移動にかかる時間が異なってくることは十分想定されるところです。
 ただ、これは労災認定全般に言えることで、先ほど西村先生からも少しあったところですが、例えば睡眠時間の問題につきましても労働者の方の通勤時間は、1社の場合であっても人によって様々というところがございます。ただ、基準を作るときには平均的なケースを想定してというか、今回も統計的な平均値から想定して先ほどの食事等の5.3時間、その中には通勤時間も含まれているのですが、この数字を出しているところです。そういった形で一旦基準を決めた後の状況としては、通勤時間をこの人は長いから、この人は短いからというふうに見ていくと、どこにお住まいを決め、どれぐらいの通勤時間で勤務されるかについては個々人の選択という部分も非常に出てきますので、実際の認定の際にはそこまでは考慮しないというのが現状です。
 したがって、通勤時間が非常に短い方でも、1社の場合で時間外労働が月100時間あれば、認定されていくことになっていきますし、非常に長い方でも60時間しかないということであると認定されないケースが多い状況です。これが複数就業となっても、基本的な考え方は同じで、現時点でそこは評価しにくいと考えています。
 拘束時間ということにつきましても、1つの会社で1人の使用者からいろいろ指揮命令されている中で、休憩時間も含めて始業から終業までの拘束ということと、A社とB社の違う使用者の下でA社とB社の間の時間というのは、使用者から制限を受けているものとはなかなか言い難いところですので、そこは拘束時間という評価にはなってこないと考えているところです。以上です。
○野出委員 よく分かりました。了解いたしました。
○磯座長 それでは、水島先生お願いします。
○水島委員 今の野出先生の質問とも関わるのですが、私は各事業場における負荷を総合的に判断すると理解していましたので、この理解で問題がないでしょうかということです。具体的には先ほど野出先生がおっしゃったような例もありますが、例えば交替制勤務で1つの事業場だけ見た場合には、適正な勤務シフトを取って十分な休息時間があるにもかかわらず、副業することによって十分な休息を取ることなく労働者が労働した場合、これは各事業場における負荷ではなく、労働者が副業を選択したことによって生じる相乗的な負荷だと思います。私はこのような負荷というのは総合的評価に入らないと理解していますが、いかがでしょうか。よろしくお願いします。
○嵩委員 すみません、嵩ですけれども、私も全く同じ質問だったので、お答えを頂きたいと思います。
○磯座長 ありがとうございます。それでは、事務局から発言をお願いします。
○西川専門官 今、水島先生、嵩先生から御指摘いただきました各事業場における負荷を全体として総合するということについては、基本的に御指摘のとおりかなと思っています。例えば先ほどの拘束時間が長い勤務ということでいきますと、A社で拘束時間として評価される部分と、B社で拘束時間として評価される部分が合わさって全体としてその方の仕事による負荷、複数就業先における業務上の負荷となると考えています。ただ、合わせて見るということでトータルの時間が長くなるということは、当然、ありますので、そこはそのように長いものとして評価していくことになると思いますが、いわゆる指揮命令の下にないものをカウントすることはないと考えています。
○磯座長 事務局の考え方を整理したいのですが、基本的に先ほどの労働時間を合算して考える。これは先生方の合意を得た方針ですけれども、この論点2の(2)というのは、労働時間以外の負荷要因に関しては、それぞれ独立して勘案するということでよろしいですか。
○西川専門官 私の御説明が至らなかったかと思いますが、それぞれということではございません。先ほどのお話で拘束時間ということにつきましても、A社の拘束時間とB社の拘束時間を全部通算して、拘束時間として評価するということになると思っています。
○磯座長 分かりました。今の事務局の御回答で、嵩先生、水島先生、よろしいですか。
○嵩委員 はい、大丈夫です。ありがとうございます。
○磯座長 それでは、いろいろな御意見を頂きました。事務局からの説明の論点2の(2)ですけれども、これにつきましては、いわゆる労働時間以外の負荷要因について評価するに当たって、異なる事業場における負荷要因を合わせて評価するという大きな方針ですが、これについて更に御意見等はございませんか。一応、この論点に立って、今後、進めていきたいと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、続いて(3)の「異常な出来事」について説明をお願いします。
○西川専門官 事務局から御説明させていただきます。資料6の項目2の(3)を見ていただければと思います。「異常な出来事」についてです。「異常な出来事」については、これが認められる場合には、単独の事業場における業務災害に該当すると考えられることから、一般的には、異なる事業場における負荷を合わせて評価する問題は生じないと考えてよいか、ということで書かせていただいています。
 現在の認定基準におきまして、異常な出来事として評価していく事項につきましては、下の囲みの中の事項となっています。アが、極度の緊張、興奮、恐怖、驚がく等の強度の精神的負荷を引き起こす突発的又は予測困難な異常な事態、イが、緊急に強度の身体的負荷を強いられる突発的又は予測困難な異常な事態、ウが、急激で著しい作業環境の変化です。アが精神的なもの、イが身体的なもの、ウが作業環境に係るものとなっています。
 こういった、基本的には非常に短い時間であったというものを想定しているもので、こういった事情が1社で認められた場合には、その事業場における業務災害に該当して複数業務要因災害の問題は生じないとなるところです。
 1社だけではこれに当たらないけれども、2社以上の業務を総合的に見て初めてこれに当たるというケースは、一般的には考えにくいのではないか。もちろん、何かレアケースで実際にもしあれば、その際には個別に見ていくことになるかと思いますが、一般的にはこういった異常な出来事と評価されるようなものについては、1社での業務災害となり、異なる事業場における負荷を合わせて評価する問題は生じないのではないか、という考え方について御意見を頂ければと思います。項目2の(3)につきましては以上です。
○磯座長 ありがとうございます。それでは、今の説明に関して何か御質問、御意見等はございますか。
○高橋委員 よろしいでしょうか。
○磯座長 高橋先生、よろしくお願いします。
○高橋委員 御指摘のとおり、異常な出来事というのはかなりレアだと思いますので、A社もB社もそのようなトラウマティックなことが起こるというのは、あまり考えられないかと思います。本省でこういった事例を把握しているか、もしございましたら教えていただければと思います。
○磯座長 事務局、お願いします。
○西川専門官 事務局からお答えします。事務局のほうでも2社でこういったことというのは想定できなかったので、こういった論点の立て方にしています。実際には少なくとも2社でこういったものは、あまり想定できないと考えています。
○高橋委員 了解いたしました。
○磯座長 ほかに、ございませんか。
○豊田委員 豊田ですけど、よろしいでしょうか。
○磯座長 よろしくお願いします、豊田先生。
○豊田委員 作業環境の変化というのが、私、今ひとつピンとこなかったのですけれども、その前の(2)でも温度環境や騒音などの作業環境のことが書かれていて、今回、また異常な出来事で作業環境というのがもう1回出てきますが、これは重複しているだけのようにも思います。(2)と(3)の両方で出てくる意味が何かあるのでしょうか。教えてください。
○磯座長 事務局、お願いします。
○西川専門官 事務局から御説明させていただきます。これは、今の認定基準でそれぞれに書いてあるからということですが、なぜそれぞれにこういったことが出てくるのかというと、この異常な出来事と短期間の過重業務につきましては、発病の直前、どのくらいの期間を見るかということが少し違ってきています。この異常な出来事につきましては昔から認めているものですが、異常な出来事と発症との関連性につきましては、通常、負荷を受けてから24時間以内に症状が発現するとされているので、発症直前から前日までの間を評価期間とするという形で、認定基準は作られています。なので、こういった急激で著しい変化にさらされて24時間以内の発症というケースについては、ここで評価をしていることになります。
 短期間の過重業務につきましては、少し持続するものを想定してのものとなってきます。短期間の過重業務における労働時間以外の負荷要因については、労働時間等も全部合わせて全体的に見ていく形で、今、評価をしています。短期間の過重業務、長期間の過重業務で、所定労働時間内の、例えば作業環境という負荷要因はあるのですが、それだけをもって発病との関連性が高いという事案を想定しているかというと、基本的には想定し難いと考えていて、こういったいろいろな負荷要因を全部ひっくるめて見て、業務と発症との関連性が高いかどうか。特に時間がある程度長い、時間だけで見るにはちょっと足りないかもしれないけれども、ある程度長くて更に加えて温度環境も過酷であった場合などに、一番典型的に使われている判断のやり方という形になってきます。
 あと、短期間の過重業務については発症前おおむね1週間を見ていく形で認定基準を定めているところです。その評価期間の話と、評価の仕方の話で少し違いがあって、こういった2か所にそういった環境に関するものが出ていることになるかと思います。
○豊田委員 ありがとうございました。
○磯座長 私の理解で少し解説しますと、先生がおっしゃったように寒暖差というのは冬になれば割と日常的に起こることですけれども、本当に異常な事態で、例えば原子力発電所が爆発したときの作業ですごいストレスが掛かるとか、そういった本当の異常事態での話だと思いますし、事例については後ほどの委員会で提出してくださると思いますので、またそこで議論したいと思います。ありがとうございました。ほかに何か御質問等はございますか。それでは、異常な出来事については、これが認められる場合、単独の事業所における労働災害に該当すると評価するということで特に問題はございませんか。ありがとうございます。
 様々な御意見をありがとうございました。これで本会議の議題である複数業務要因災害における脳・心臓疾患の認定基準について、検討会の意見交換は以上といたします。皆様方から出された御意見については、事務局において書面で取りまとめ、その上でまた委員の皆様方の御意見を確認して座長へ報告してください。そして最終的な取扱いについては、私、座長に一任させていただくということで、よろしいでしょうか。ありがとうございます。特に御意見がなければそのようにさせていただきます。
 それでは、続いて、事務局から資料9と参考資料についての説明をお願いします。
○西川専門官 御議論、ありがとうございました。最後に、資料9と参考資料についての御説明です。時間も迫っていますので手短に御説明させていただきたいと思います。
 資料9につきましては、本日の検討事項と次回以降の検討事項をお示ししたものです。本日は、複数業務要因災害に関する御意見を頂くということで御議論いただいたところです。次回以降は、先ほどから何度か出てきていますけれども、認定基準全般について御検討、御検証いただくことを予定していて、ここに挙げたような論点を現時点での案ということで示しています。冒頭、審議官からの挨拶にもありましたとおり、現在の認定事例は、その多くが長期間の過重業務によるものですので、その部分の検討が中心になってくると思われます。論点等につきましては、これから先生方からも御意見を頂き、御指摘があれば随時対応していくことになると思っていますが、現時点のものとしてお示ししたものです。
 併せて、認定基準の改正につきまして、全般の検証に係るものとして団体から意見・要望が提出されていますので、御紹介させていただくのが参考資料です。先生方のお手元の参考資料は1-1、1-2、1-3と3つに分けて御提示していますが、1-1と1-2は過労死弁護団全国連絡会議から御提出いただいたものです。1-1につきましては2018年に御提出があったもので、その内容としては、基本的な考え方、対象疾病、認定要件、過重負荷の評価基準、これらの改定をするべきである。そして労働時間の認定方法を認定基準に明記すべきである。そして、この過重負荷の要因についても改定すべきであるということで、認定基準の全般にわたっての改正要望が2018年に出されているものです。
 また、参考資料1-2につきましては、この補充として2020年に提出された意見書です。様々な論点と、本日、御議論いただいた複数職場の就労についての補充意見についても提出されているところです。
 さらに、参考資料1-3は、働くもののいのちと健康を守る全国センターという団体から、2019年に提出されたものです。脳・心臓疾患と精神障害の両方に跨っているものですが、脳・心臓疾患に関しては2ページ目の三に記載されています。認定のための労働時間数を「65時間超」とすること、積極的な労働時間の認定をおこなうこと、労働時間以外の負荷要因についても積極的に評価すること、労働者の多様性を評価すること、特に障害者の障害の特性を十分考慮すること、こういうことが要望されているものです。
 以上が御紹介となります。資料9及び参考資料の説明については以上です。
○磯座長 それでは、事務局の説明に対して何か御意見、御質問等はございますか。よろしいでしょうか。厚生労働省の皆さんも我々委員も、なるべく過重労働にならないように気を付けていきたいと思います。特にございませんようでしたら、本日の検討会はこれで終了いたします。次回の日程等を含めて事務局から何かございますか。
○中村職業病認定対策室長補佐 本日は、複数業務要因災害における脳・心臓疾患の認定基準につきましての御意見、ありがとうございました。次回は認定基準全般の検討を開始する予定ですが、追って日時、開催方法を含めて御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。
○磯座長 ありがとうございました。