2020年4月21日 第4回「精神障害の労災認定基準に関する専門検討会」 議事録

日時

令和2年4月21日(火) 15:00~17:00

場所

中央合同庁舎5号館厚生労働省労働基準局第1会議室(16階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)

出席者

参集者:五十音順、敬称略
阿部未央、荒井稔、黒木宣夫、小山善子、品田充儀、田中克俊
丸山総一郎、三柴丈典、吉川徹


厚生労働省:事務局
松本貴久、西村斗利、西岡邦昭、中山始、中村昭彦 他

議題

(1)精神障害の労災認定の基準について
(2)その他

議事

議事録


○中村職業病認定対策室室長補佐 第4回「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会」をオンラインで開催させていただきます。本日の司会を担当させていただきます中村です。よろしくお願いいたします。
 本検討会を開催する前に、事務局より御説明させていただきます。今回の検討会は、4月7日に新型コロナウイルス感染症対策に関する緊急事態宣言が出されたことを踏まえ、オンラインでの開催とさせていただきました。オンラインでの開催になることにつきまして、御理解、御協力のほどよろしくお願いいたします。オンラインでの開催となりますので、委員の皆様方にお願いがあります。意見などを御発言いただく際には、まずマイクのミュートを解除した上で、お名前と発言があります旨の発言をしていただき、さらに座長から「誰々さんお願いいたします」と指名させていただいた後に発言をお願いいたします。なお、発言が重なった場合には、座長が順番を決めることといたしますので、御協力をお願いいたします。また、大変申し訳ございませんが、通信が不安定になったり、通信速度が遅くなったりすることで、発言内容が聞き取りにくい場合があることを御容赦願います。
 別室で傍聴されている方にお願いがあります。携帯電話などは必ず電源を切るか、マナーモードにしてください。その他、別途配付しております留意事項をよくお読みの上、検討会開催中は、これらの事項をお守りいただいて、傍聴されるようお願いいたします。また、傍聴される方にも、会議室に入室する前にマスクの着用をお願いしておりますので、御協力をお願いいたします。万一、留意事項に反するような行為があった場合には、この会議室から退室をお願いすることがありますので、あらかじめ御了承ください。写真撮影等はここまでとさせていただきます。以後は、写真撮影は御遠慮ください。
 委員の皆様におかれましては、お忙しい中、オンライン会議に御出席いただきましてありがとうございます。本日の委員の欠席について御報告いたします。西村委員、山口委員の2名が御欠席です。また、三柴委員は所用により会議中に離席する場合があります。以降の議事進行は黒木座長にお願いいたします。
○黒木座長 議事に入る前に、事務局から本日の配布資料の確認をお願いします。
○中村職業病認定対策室室長補佐 資料の確認をさせていただきます。資料1は、雇用保険法等の一部を改正する法律の概要等です。資料2は、第4回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会における主要論点です。資料3は、業務による心理的負荷評価表(見直し案)です。資料4は、精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書(案)です。以上です。
○黒木座長 続いて、事務局から報告があります。
○中村職業病認定対策室室長補佐 3月31日に成立した、雇用保険法等の一部を改正する法律の概要(労災保険法、労働保険徴収法関係)について、担当である労災管理課の小林課長補佐から御報告させていただきます。
○小林労災管理課課長補佐 労災管理課課長補佐をしております小林です。資料1に基づいて、本年3月31日に成立した雇用保険法等の一部を改正する法律のうち、労災保険法の部分について御報告いたします。
 労災保険法の改正としては、複数就業者に関する労災保険の保険給付の見直しを行いました。主な改正内容は、資料1にあるように大きく2点あります。いずれも複数就業者が増加している現状を踏まえ、セーフティネットとしての機能を果たしている労災保険法の見直しを行い、複数就業者が安心して働くことができるような環境を整備する観点から行われたものです。
 ①は、複数就業者に関して、災害の発生していない非災害発生事業場の賃金額も合算をして保険給付を算定するということ。②は、複数就業者の就業先の業務上の負荷を総合的に評価して労災認定を行うというものです。この②に関しては、新たに複数業務要因災害に関する保険給付として、新たな保険給付を創設したものです。①の賃金額の合算については、改正前の労災保険法の業務災害、通勤災害、そして今回新たに創設された複数業務要因災害に係る、いずれの保険事由に関しても合算が行われるということです。この法律が成立し、今後、労働政策審議会において政省令等施行に向けた議論をし、準備をすることとしています。
 次の資料は、昨年12月23日の労働政策審議会労災保険部会の建議です。先ほど御説明いたしました法律案を検討していた審議会において、厚生労働大臣宛てに建議がなされたものです。この中に、認定基準について盛り込まれたものがありますので御紹介いたします。具体的には2の(2)の認定方法についてです。建議において、複数就業先の業務上の負荷を総合して評価をし労災認定する場合については、現行の認定基準の枠組みにより対応することが適当である。ただし、脳・心臓疾患、精神障害等の認定基準については、医学等の専門家の意見を聴いて運用を開始することにも留意することが適当であるとされていますので、御紹介いたします。
 次のページは、この建議を取りまとめるまでの議論の中において、医学の専門家から、複数就業者の労災認定に係る見解を聴取させていただいたものです。こちらは、昨年11月15日に労災保険部会で御紹介させていただきました。具体的な認定基準に関しては、主たる事業場と副業の事業場があった場合、個別の事例ごとに判断する必要があるが、心理的負荷の強度としては、単一事業場で受けた場合と複数就業先で受けた場合とで異なることはない、という見解を頂き、御紹介させていただきました。
 以上、先月成立した法律の概要と、また、その法律ができるまでに至った労働政策審議会における議論の御紹介をさせていただきました。以上です。
○中村職業病認定対策室室長補佐 今の説明にあったように、資料1の2ページ目の、令和元年12月23日労働政策審議会労災保険部会建議の資料の中ほどの、(2)認定方法についての3行目のただし書き以下に記載しているとおり、この検討会で、複数就業者の精神障害の認定については、医学等の専門家の御意見を聴かせていただき、運用を開始することを予定しております。現在事務局が考えているスケジュールでは、当検討会の報告書を取りまとめた後、5月以降に複数業務要因災害に関する認定基準の適用について検討していただくことを予定しておりますので、よろしくお願いいたします。
○黒木座長 ただいまの事務局の説明に対して、何か御質問等がありましたら御発言ください。
○黒木座長 丸山先生、何か御発言はありますか。
○丸山委員 医学的には、それで問題ないと思います。
○黒木座長 他の先生方はいかがですか。田中先生いかがですか。
○田中委員 特に問題ないと思います。
○黒木座長 他に御発言がないようでしたら、次に進みます。よろしいでしょうか。それでは、複数就業者の精神障害の認定については、現在の認定基準に当てはめていく方向で、5月以降に検討したいと思います。続いて、資料2の主要論点に従って検討を進めます。初めに、具体的な出来事の追加・修正等についての説明をお願いします。
○岡久中央職業病認定調査官 事務局の岡久です。資料2、第4回精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会における主要論点について御説明いたします。全部を一気に説明せずに、項目ごとに説明していきますので、項目ごとでそれぞれ議論をしていただくことになります。本日は、資料3に業務による心理的負荷評価表(見直し案)を付けておりますので、論点表と心理的負荷評価表を同時にお手元に用意して見ていただくと分かりやすいかと思います。
 主要論点の項目1から御説明いたします。新たに「パワーハラスメント」に関する出来事を追加した場合、現行の心理的負荷評価表の「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の取扱いはどうするべきかという論点です。第2回検討会で積み残しとなっていた論点で、前回、非公開の場でも御議論をいただきましたので、それを踏まえて、今回幾つか事務局案として修正を出しております。
 資料2の四角で囲んだ所が事務局案です。まず、パワーハラスメントに関する新設の項目です。①具体的出来事「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」という名称にした上で、新設してはどうかとしております。第2回検討会では、単に「パワーハラスメントを受けた」ということで提案をしておりましたが、山口先生と西村先生から、もっと具体的に記載すべきという御意見があったことと、過去の支給決定事例などを踏まえ、今回は「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」という、より分かりやすく具体化した案を提示させていただいております。
 なお、このパワーハラスメントの項目を心理的負荷評価表のどこに置くかということですが、いじめ・嫌がらせや、上司とのトラブルといった対人関係の項目の近くに置くことによって、より分かりやすくなるであろうという趣旨で、出来事の類型としては対人関係の上に置かせていただいております。資料3の心理的負荷表の案の⑥の対人関係、こちらが(ひどい)いじめ・嫌がらせになりますが、その上にパワーハラスメントの類型を置くという案を示しております。
 また、資料3の心理的負荷評価表(案)で、「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の項目の1つ右側の、心理的負荷の総合評価の視点に注書きが2つあります。1つ目の注は、「当該出来事の評価対象とならない対人関係のトラブルは、出来事の類型「対人関係」の各出来事で評価する。」と記載しております。こちらは、西村委員からの、パワーハラスメントに該当しないものは30番より下の対人関係の項目で評価することを明記したほうがよい、という御意見を反映したものです。
 資料2に戻って、項目1の②です。パワーハラスメントに関する項目を新設した場合、現在の「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の項目をどうするかということです。こちらも第2回検討会で積み残しになっていた論点です。これについては、第2回検討会において、過去の決定事例の中には、パワーハラスメントに該当しない嫌がらせ・いじめ、暴行の事例があるということで、基本的にはこの出来事を残す方向であったかとは思いますので、改めて今回はこの項目を残すこととの結論を示させていただいております。
 なお、前回の非公開の場で、この出来事を残した場合、この項目で評価される事例のほとんどが暴行の事例であること、次いで、いじめの事例となることから、項目の名称を「暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」へ修正する案をお示ししておりましたが、パワーハラスメントの項目との区別を明確化すべきという御意見が、山口先生や西村先生からありましたので、「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」という案を提示させていただいております。
 項目1の説明は以上ですが、本日欠席されている山口先生から、この項目に関して3点御意見が出されていますので紹介させていただきます。
 1点目は、「上司等から身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の項目の「上司等」を、「等」を抜いて「上司」にしてはどうか。「上司」とすることによって、より下の項目の「同僚」との区別が明確化する、という御意見が出されております。
 2点目として、それに合わせて「等」にはどういうものが含まれるかについては、心理的負荷評価表の右の注の2つ目に、「「上司等」には、職務上の地位が上位の者だけでなく、例えば、職歴の長い者も含み得るものであり、同僚又は部下であっても、業務上必要な知識や豊富な経験を有しており、その者の協力が得られなければ業務の円滑な遂行を行うことが困難な場合、同僚又は部下からの集団による行為でこれに抵抗又は拒絶することが困難である場合等も含む。」というように今はなっており、こういう状況は、「上司に準じて取り扱う」というような形で記載してはどうかという御意見です。
 3点目は、今私が読み上げた注書きについてです。ここには、若干パワーハラスメント指針の記載とは異なっているところが入っています。それは、「職務上の地位が上位の者だけではなく」の次のところです。「職歴の長い者も含み得る」ということを記載しているのですが、パワーハラスメントの指針にはこちらは明記されていませんので、認定基準上はパワーハラスメント指針に合わせた形としてはどうかという御意見を頂いております。
 資料2の項目1の説明は以上です。
○黒木座長 ただいまの事務局の説明に対して、何か御質問等がありましたら御発言ください。品田先生、どうぞ。
○品田委員 「上司等」にするか「上司」だけにするかという点です。対象を明確化するということを考えれば、論理的にいって山口先生の御意見は妥当だと思うのです。しかし、現状においては指針に沿う形で行為者を想定しています。そうすると、その対象を明確に表現することのほうがより重要かと思います。そういう意味において、やはりここは「上司等」にして、事務局から説明があったような注のところを置く、というのが妥当ではないかと思います。この点は山口先生と電話でお話をさせていただいて、皆さんがそれでよければ、それはそれでいいだろうというお話ですので、御意見があればまたお伺いしながら検討させていただければと思います。
○黒木座長 ただいまの御発言に対して、何か御意見はありますか。丸山先生、どうぞ。
○丸山委員 労災認定では、用語の表現と強度があって、関係性が非常に重要だと思います。以前からお伺いしていることでもあるのですけれども、ハラスメントの定義の中で、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」とあります。「相当な範囲を超えたもの」というのはどの程度の強度か。つまり、定義の3つの中で強度に関わる言葉というのは特にこれだと思うのです。それが、どの程度のものを表現しているのかを確認しておきたいのですが、いかがでしょうか。
○黒木座長 ただいまの御発言に対して、事務局から御発言はありますか。
○岡久中央職業病認定調査官 丸山先生の御意見ですが、今回の「強」となる具体例というのは、パワーハラスメントに該当するもので、要は過去の認定事例を複数件見て、その中から代表例を明記していることになります。実際に「相当な範囲」というのは、確かに丸山先生のおっしゃるように、取り方によっても様々取れますし、一律にここを超えたら「強」になる、「中」になるというのは定量的には示せないものなのかと思っています。
 ですから、具体例としては、できるだけ我々としては分かりやすく書いたつもりでいますが、実際に「中」になるか「強」になるかというのは、各局の労災医員の先生方に、この例と照らしてどうかということで判断していただくしか、現状ではないというように考えております。「相当の範囲」というのは分かりにくいという御指摘は、第1回検討会のときから、いろいろな先生から頂いておりますので、そこは今後の事務局の検討課題であると認識しています。説明になっているか分かりませんが、事務局からは以上です。
○黒木座長 丸山先生、いかがでしょうか。
○丸山委員 内容としておっしゃることはよく分かります。ただ、パワーハラスメントという用語だけで、強度を今の感じだと表しているものであるということになるので、本当にそれでよろしいのかということです。そこがちょっと気になってはいます。ただ、今回はその頭に「身体的攻撃、精神的攻撃」という言葉を付けてあります。特に「身体的攻撃」という言葉を付けたので、よりパワーハラスメントの内容が分かりやすくなりました。そういう意味では、かなりⅢという妥当性、次に議論になるところでありますけれども、先に言えばそれはかなり近い意味合いになってきたと思います。
 ただ、指針の定義をそのまま使うということであれば、指針の強度としては必ずしもⅢを表現しているわけではない。つまり、「相当な」というのは日本語として、あるいは英語としてもかなり幅のある言葉だと思います。「ベリー」という場合もあれば、「コンシダラブル」といろいろな幅があると思うのです。その辺が微妙なので、ちょっと運用する上では。前にも申し上げましたけれども、結局のところ「強」であれば認定されます。「中」や「弱」であれば認定されないわけですから、そこの切り分けは非常に重要なのです。それは直接言葉の表現に関わってくるので、パワーハラスメントそのものの言葉の定義は慎重に考えなければいけないと思っています。他の先生方の御意見も伺いたいと思います。
○黒木座長 丸山先生の御発言に対して、何か御発言を頂けますか。品田先生、何か御発言はありますか。
○品田委員 丸山先生の御疑問はもっともだと思います。ただ、具体例の中において、かなり「強」「中」「弱」をイメージできる表現を使っていますので、そこにおいて類別化できるのではないかと思うのです。一般論としてそこの御疑問は分かるのですけれども、議論をしても実務上の実益は余りないかなという気がします。先生の御疑問を持ちながら、頭でイメージしながら具体例を考えていくことが妥当かと思います。
○黒木座長 他の先生方はいかがでしょうか。田中先生、どうぞ。
○田中委員 先生がおっしゃることはもっともだと思いますが、基本的に「弱」「中」「強」の程度を表していくためには、身体的、精神的な暴力の程度で、ある程度区分けしていくことが多分分かりやすいでしょう。パワーハラスメントか、それ以外のいじめかどうかということに対しては、3要件のうちの2つの「優越的な立場」か「業務の範囲を超えた」というところで個別化、差別化を図ることが大事だと思います。
 ただ、最初の検討会の議論にあったように、品田先生もおっしゃいましたけれども、「業務の範囲を超えた」というところの程度をいろいろ具体例で表すのは非常に難しくて、ケース・バイ・ケースになります。やはり今回は、上司によるかどうか、優越的な立場であるかどうか、ということを中心に、パワーハラスメントかそうではないのかということを主に明確にして、業務の範囲を超えたというところについても、やはり事例ごとに対応していく、部会で検討していくことが妥当ではないかと考えております。
 ちょっと話は戻りますけれども、品田先生がお答えになった「上司等」の「等」を外すかどうかということについてです。やはり、優越的な立場であるということをしっかりと定義されているわけですし、実際にも優越的な立場は上司だけに限らないので、「上司等」という表現で、きちっとした形で、脚注は長くなりますけれども、説明するという形が妥当ではないかと思います。
○黒木座長 他にはいかがでしょうか。荒井先生、何か御発言はありますか。
○荒井委員 今の御議論で、「弱」「中」「強」の具体的な例示がありますので、これでイメージができるだろうと思います。
○黒木座長 小山先生、何かありますか。
○小山委員 丸山先生の御意見はごもっともなのですけれども、そうかといって具体的に程度をどう表現するかは、かなり難しいかと思うのです。ここに記載されているような、「身体的攻撃、精神的攻撃」という言葉が入ることでハラスメントの内容がイメージしやすくなると思います。「相当」だけでなくその前に「社会通念に照らして」という表現がありますが、この「社会通念」もどういうのが社会通念かと言いたくなるのですが、あとはそれぞれのケース・バイ・ケースで判断していかないといけないのではないかと思うので、指針としては、この程度の表現でいいかなと思って読んでいました。
○黒木座長 その他にはよろしいでしょうか。吉川先生、何か御意見はありますか。
○吉川委員 丸山先生がおっしゃった点は非常に重要だと思います。やはり、程度というのは重要だろうと思います。その中で1つ気になったのは、内容を改めて読んでみて、身体的攻撃に関して、治療を要する、要さないという部分が「中」と「強」で分かれているところがあります。例えば、上司はそれほど強い形でなくて、ポンと首を叩いたとしても、それを基に病院にかかって、「頸椎捻挫である」というような診断書を延々と出して、少し悪意に取られるような「治療を要する」という診断書を使うような方がおられた場合に、文面どおりそのまま取られると、「治療を要する」が独り歩きするのではないか。それはちょっと気になります。その意味で、そこの解釈については総合的に判断するというところの重視をきちっとしたほうがいいのかという印象を持ちました。
○黒木座長 他には何かありますか。阿部先生、何かありますか。
○阿部委員 結論的にはいいと思うのです。ただ、上司からの身体的攻撃とか、精神的攻撃という定義と、あとは現行の表にある(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けたの表現の違いだけで、中身に違いは余りないのですが、みんながそれとそれで概念は違うのか誤解しないかというのがちょっと気になりました。
○黒木座長 事務局、いかがでしょうか。
○岡久中央職業病認定調査官 阿部先生がおっしゃられた点、確かにパワーハラスメントの項目と、いじめ・嫌がらせのそれぞれ「中」と「強」の例がよく似ているということです。事務局としては、パワーハラスメントと新しく作るいじめ・嫌がらせの明確な区分けというのは、行為者にあると思っています。ですから、上司等の優位者、優位な者から精神的攻撃とか身体的攻撃を受ければ、パワーハラスメントに該当しますし、同僚とか部下といった上位にない者から、精神的攻撃、身体的攻撃を受けると、こちらのいじめ・嫌がらせに該当するという整理をしております。
 言葉の使い方なのですけれども、身体的攻撃、精神的攻撃というのは、パワーハラスメントの指針等で使っておりますので、それをパワーハラスメントの項目のほうには入れております。一方で、いじめ・嫌がらせのほうはパワーハラスメントに該当しないということですので、従来の表現ぶりをそのまま残しているということで、若干、阿部先生がおっしゃるような分かりにくい点はあるかと思いますが、事務局としてはそのように整理させていただいております。
○黒木座長 阿部先生、よろしいですか。
○阿部委員 はい。
○黒木座長 丸山先生、よろしいですか。
○丸山委員 はい。皆さんと議論し、そのことを確認していただいたということで私はよろしいです。
○黒木座長 はい、先生。
○田中委員 阿部先生がおっしゃったことについてです。3要件で、同じ精神的、身体的な暴力があっての中に、更に「職場の環境を害する」というのがパワーハラスメントの定義に入っています。それも含めて、心理的負荷評価表のパワーハラスメントの所での「弱」「中」「強」の解説の所で、「職場環境を害する程度等から評価」という形で、この項目が前回から1つ追加になったのではないかと理解しております。ちょっとの差別化ではありますが、一応のポイントではないかと考えております。
○品田委員 品田です。今の点ですけれども、後で議論されることなのかと思っていましたが、解説をこのような形で入れるほうがよいかどうか。むしろ、総合評価の視点の中に組み込むということも、今、田中先生が言われたような内容ですが、それももう1つのオプションとして後ほど検討したほうがいいかと。後ほどの議論でお願いしたいと思います。
○黒木座長 あとはよろしいでしょうか。ただいまの検討の結果、具体的出来事「上司等から身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」を新設します。現行の「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」で評価していたもののうち、新設する「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の評価対象とならないものは、引き続き本項目で評価する。名称を「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」へ変更する。
 続いて、事務局から論点2の平均的な心理的負荷の強度について説明をお願いします。
○岡久中央職業病認定調査官 資料2の主要論点の項目2番を御説明いたします。1ページです。線で囲んだ所が事務局案です。現在の認定基準は、平成22年度の「ストレス評価に関する調査研究」に基づいて、平均的な心理的負荷の強度を決めており、今回、パワーハラスメントに関する見直しを行う場合にも、前提として、この平成22年度の調査結果を踏まえる必要があると考えております。現在の「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の平均的な心理的負荷はⅢとされており、新設するパワーハラスメントの項目は、もともとこの項目に当てはめて評価されていたものであることや、過去の決定事例から見ても、その心理的負荷は高いものであることから、新設する「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」の平均的な心理的負荷はⅢとするのが妥当ではないかと考えております。
 また、名称等の変更はするものの、残す項目である「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」についても、引き続き平均的な心理的負荷はⅢとするのが妥当であると考えております。
 なお、平均的な心理的負荷がⅢであったとしても、パワーハラスメントに該当するものが全て「強」になるものではなく、それは個々の事案を見て「強」、「中」、「弱」の評価をすることになる、ということについては改めて御説明をさせていただくとして、項目2についての事務局からの説明は以上とさせていただきます。
○黒木座長 ただいまの事務局の説明に関して、何か御質問等がありましたら御発言ください。心理的負荷強度についてということですけれども、いかがでしょうか。田中先生、お願いいたします。
○田中委員 Ⅲで妥当だと思います。
○黒木座長 丸山先生、いかがですか。
○丸山委員 Ⅲでよろしいかと思います。
○黒木座長 品田先生、よろしいでしょうか。
○品田委員 Ⅲで結構だと思います。
○黒木座長 他の先生方はいかがでしょうか。大丈夫でしょうか。ありがとうございます。ただいまの具体的な出来事「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」及び「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」の平均的な心理的負荷の強度は「Ⅲ」とします。
 続いて、事務局から論点3の心理的負荷の強度を判断する具体例の追加・修正の具体的出来事「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」について説明をお願いします。
○岡久中央職業病認定調査官 2ページの項目3、心理的負荷の強度を判断する具体例の追加・修正について御説明いたします。当初は、パワーハラスメントの項目と、残す「いじめ・嫌がらせ」を分けて御説明しようと思っておりましたが、まとめて説明をさせていただいたほうが、皆さんが議論しやすいのかと思いましたので、長くはなりますが項目3の(1)と、4ページの(2)までをまとめて御説明させていただきます。皆さんは、この論点を見ながら、もう一度、資料3の業務による心理的負荷評価表をお手元に用意して説明を聞いていただければと思います。
 項目3の具体例について御説明していきます。項目3の(1)では、新設するパワーハラスメントに関する項目の具体例、(2)では、名称は修正するものの、残す項目である暴行、いじめ・嫌がらせの項目の具体例の案を記載しておりますので、こちらについての御説明をさせていただきます。この具体例は、前回非公開の際に、過去に決定した事案を紹介させていただきましたが、それらを踏まえて具体例の案を作成したものです。
 まず、パワーハラスメントの方ですが、①に「強」の具体例、②に「中」と「弱」の具体例、③に心理的負荷の総合評価の視点を示しております。まず、「強」となる具体例です。ここは非常に大事なところなので読み上げさせていただきます。
 1つ目は、上司等から、治療を要する程度の暴行等の身体的攻撃を受けた場合。2つ目は、上司等から、暴行等の身体的攻撃を繰り返し受けた場合。3つ目は、上司等による下記のような精神的攻撃が執拗に行われた場合。
 下記の1つ目は、人格や人間性を否定するような、業務上必要性がない又は業務の目的を大きく逸脱した精神的攻撃。2つ目は、必要以上の長時間にわたる厳しい叱責、他の労働者の面前における大声での威圧的な叱責など、社会通念に照らしてその態様が相当でない精神的攻撃。
 4つ目は、上司等により、心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃・精神的攻撃が行われた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合。以上が、「強」の例示として示させていただいているものです。
 続いて、②の「中」の場合です。いま御説明した身体的攻撃や、精神的攻撃が反復・継続していない場合には、心理的負荷を「中」と判断している事例が多くあったため、このような記載とさせていただきました。
 「弱」の例については、過去の決定事例からも、具体例として示し得る適当な事例がない中で、前回の御議論も踏まえ、このように「「中」に至らない程度」という表現とさせていただきました。
 最後に③の心理的負荷の総合評価の視点です。現在の「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の項目を参考としつつ、「指導・叱責等に至る経緯や状況」といった視点を付け加えています。このような形で心理的負荷の総合評価の視点については書かせていただきました。
 続いて資料2の4ページです。(2)具体的出来事「同僚等から、暴行又は(ひどい)いじめ・嫌がらせを受けた」について御説明いたします。事務局案としては、①に「強」の具体例、②に「中」と「弱」の具体例を記載しております。名称を変えるという御説明をさせていただいたときに申し上げましたが、この項目で評価されるものは、ほとんどが暴行の事例となりますが、過去の決定事例を参照しつつ、パワーハラスメントの項目と並びを取る形で、心理的負荷の「強」「中」「弱」の具体例を記載したという形になっています。
 ②の下のほうに、「弱」となる具体例を書いております。前回は、現在の「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の具体例を踏まえて、「同僚等の発言により不快感を覚えた」という案としておりましたが、対人関係のトラブルとの区分がはっきりしない、また、パワーハラスメントにも該当するような表現ぶりということで、今回は「パワーハラスメントを受けた」の出来事と同様に、「「中」に至らない程度」という表現とさせていただきました。
 項目3については以上なのですが、山口先生から4点ほど御意見を頂いておりますので紹介させていただきます。こちらは、資料3の心理的負荷評価表の見直し案を御覧いただきながら聞いていただければと思います。
 1つ目は、総合評価です。パワーハラスメントの総合評価の視点の欄が左から3つ目にあります。そこの2つ目のポツで、「身体的攻撃、精神的攻撃等の内容・程度(指導・叱責等が行われた場所、時間帯)等」と。さらにその下のポツで、「その反復・継続する状況(指導・叱責等の長さ、回数、頻度)」と書いていますが、この括弧は不要ではないかと。括弧に書くと、これに限定するのではないかという誤解を招くおそれがあるということで、あえて括弧は必要ないのではないかという御意見が1つ目です。
 2つ目は、総合評価の視点の欄に、「反復・継続する状況」ということは書いてありますが、「執拗性」ということを入れる必要はないか、という御意見です。
 3つ目ですが、山口先生は、執拗の判断は、反復・継続していることで見るのが基本で、程度が強烈なものは、執拗とは異なるものと考えると。そのため、具体例についても、今は、執拗というのは繰り返し継続みたいな形をイメージして作成されておりますが、1回で強烈になるようなものというのも具体例として示すべきではないかということです。
 4つ目ですが、パワーハラスメントの「中」と「強」の欄を見ると、具体的出来事が繰り返しているか、繰り返していないかというような違いはあるのですが、基本的に内容がよく似ているということです。山口先生から具体的に伺っているのは、パワーハラスメントの「中」の具体例の2つ目のポツで、例えば「人格や人間性を否定するような、業務上必要性がない又は業務の目的を逸脱した精神的攻撃」とする、要は「大きく」を取る。また、その下の「必要以上の長時間にわたる厳しい叱責」を「厳しい」をとった「叱責」とするというような形で、その表現ぶりに「強」の例と差異を付けてはどうかという御意見を頂いております。
 以上が項目3の説明になります。よろしくお願いいたします。
○黒木座長 ただいまの説明に対して、何か御意見はありますか。品田先生、どうぞ。
○品田委員 山口先生の御意見について、どういう趣旨であるかを私は直接お聞きし、西村先生とも御相談し、その内容について確認しております。そうした中で、先生の意図に対してどのように思うかということです。まず最初の、括弧書きは要らないという御意見についてです。これは、私も西村先生も要らないのではないかという気がしています。むしろ限定されてしまうこと、分かりやすいという意味ではいいのですが、何らかの要項で書くのはいいのですけれども、ここに書くのはどうかなという気もしますので、この点は私も西村先生も外すことに賛成しております。
 続いて反復・継続のところの「執拗」という言葉を入れるかについてです。これは、確かに入れたほうがいいのではないかという気もします。原案では、総合評価の視点で、「その反復・継続する状況」になっていますが、「その」は要らないにせよ、「反復・継続など執拗性の状況」というようにしておくと、私自身も疑問を持っておりました「執拗」の概念について、少し検討することにおいて、一定程度イメージが湧きやすくなるのではないかという気がします。この点については山口先生にも御理解いただきました。西村先生にも御理解を頂きました。
 3つ目の、具体例として1回で「強」になることを想定するということについては、多分難しいと思いますし、余り適正ではないかと思います。確かに1回で強烈な叱責を受けてショックを受けることはあるのですが、それは執拗という概念の中で解釈できるのではないかという気もします。この点は、またお医者さんの意見をお伺いしたいと思いますが、取りあえずは、1回の事例を表記するのはちょっと難しいかなという気がしました。これは、西村先生も同意見でした。
 4つ目の、「大きく」とか「大声で」という不要表記をなくすということは大賛成です。「強」においてそのような表記がなされている以上、それとの差別化をするために、「中」においてはそれらの表記は外すべきかと思います。
 それから、先ほど解説のことについて田中先生がおっしゃったことについて、例えばこうすればどうかという意見です。解説については、パワーハラスメントも対人関係もそうなのですけれども、いずれも既に書いてある総合評価の視点を繰り返すような形になっていますので、要らないかなと。ただし、田中先生が言われた、「職場環境を害する程度」というところはどこにも出てきませんので、これも総合評価の視点の中に組み込むような形で入れておくことで、この点も判断の材料とすることができるのではないかという気がしますが、いかがでしょうか。
○黒木座長 品田先生がおっしゃった、総合評価の視点の所の括弧の部分「指導・叱責等行われた場所、時間帯」を省く。それから、「指導・叱責等の長さ、回数、頻度」を省く。それから、解説の所の「反復・継続する状況」に、「反復」だけではなく「執拗」を加えるということでよろしいですか。「反復・継続する状況など執拗な」と。
○品田委員 そうです。「反復・継続など執拗性の状況」。ただし、「執拗性」という言葉がよいかどうかはあれですが。「執拗」であるか、この辺はまた表現は考えればいいと思います。
○黒木座長 了解しました。
○品田委員 あとは、「弱」「中」の上段にある解説は要らないのではないかということ。要らない、しかしながら「職場環境を害する程度」については、総合評価の視点の中に組み込むということを御提案したいということです。
○黒木座長 分かりました。精神科の先生方はいかがでしょうか。田中先生、どうぞ。
○田中委員 品田先生から御質問のあった点ですけれども、もちろんひどい叱責であっても、1回だけで「強」にするということはないと思います。ただ、それは絶対的に決められたことではなくて、たった1回限りでも、基本的には1回というのはちょっと難しいと思うのですが、ただ1回限りでも、正にその執拗性が非常に強くて、くどくどと激しく長い時間何かやった場合、1回だけでもそれは大きな心理的負荷になります。そういう個々の事例については、事案ごとに事業者の事実関係も把握した上で判断していくという流れでよろしいかと思います。基本的には、1回の場合には「強」の例からは外すという整理の仕方が適切なのではないかと思います。
○黒木座長 他にはいかがでしょうか。荒井先生、いかがですか。
○荒井委員 複数なのか1回なのかというところを、やはり「中」と「強」の境にするのが妥当だと思うので、田中先生がおっしゃっていることでよろしいと思います。
○黒木座長 小山先生、いかがでしょうか。
○小山委員 私も、この括弧の中はなくてもいいかなと思っていました。それから、田中先生から御指摘のあった、「職場環境の状況」ですが、これは総合評価の視点の重要な項目だと思いますので総合評価の視点に付け加えておいたほうがいいかと思います。反復・継続のところでは、1回でもよほど強烈な叱責で起こり得る可能性を考えると、執拗性の言葉で読み取れるので「執拗性」を入れることに賛成です。
○黒木座長 他の先生方はいかがでしょうか。吉川先生、何かありますか。
○吉川委員 特に追加することはありません。田中先生や、その他の先生の御意見に賛成です。
○黒木座長 田中先生、どうぞ。
○田中委員 品田先生がおっしゃったように、「攻撃の内容、程度、反復」という説明の中に「執拗性」を入れるということですけれども、私もそれには賛成です。用語的には、執拗性というのは回数だけではなくて、くどくどしつこい感じだとか、自分の意見を曲げずにずっと固執して主張するみたいなところもあると思います。反復回数だけではないニュアンスも、少なくとも執拗性というのは持っていると思います。やはり、身体的、精神的な負担として、「執拗性」というのは、それなりに様態を表す代表的な言葉として意外と適した言葉ではないかと思います。それは加えたほうがいいのではないかと思います。
○黒木座長 他にはいかがですか。丸山先生、どうぞ。
○丸山委員 確認します。先ほど品田先生がおっしゃったときには、その執拗性というのは繰り返しだと思いました。1回ということはあり得ないのではないかというお話かと思いました。しかし、今お二方の先生がおっしゃっているのは、1回でもかなり執拗なものがあるのではないかと。だから、その執拗の内容がちょっと異なるようなので、品田先生にその辺を確認したいと思いますが、いかがでしょうか。
○品田委員 ありがとうございます。私も言い方を間違ったなと思いました。おっしゃるとおり、私としては1回というこの証拠調べの段階において、何をもって1回と言うかというのは難しい問題だと思っています。出来事というと1つの出来事を考えていきます。例えば、本人にとっては大きな失敗である、会社としては大した失敗ではないことについて、上司が強い叱責をして、「お前なんか死んでしまえ」と言ったというようなことを、本人は非常に苦にして、例えば自殺するというようなことになった場合、これをどう考えるか。確かに出来事としては1回なのですけれども、それまでの当該上司との人間関係があったりします。そうすると、回数とか継続性という形で証拠を秤量していくのは難しいのです。しかし、その大きな出来事の中において、過去を遡れば執拗な叱責であったのではないかということが推認されていく。そういう意味において、回数とか継続性だけがイメージされる言葉に問題があるので、「執拗」という言葉がやや広範囲に解釈できる言葉として有用ではないかという意味です。丸山先生がおっしゃられたような誤解をさせてしまった私の表現の間違いです。私は、田中先生がおっしゃられたようなことを意図したものです。失礼いたしました。
○黒木座長 そうすると、1回ということだけではなくて、それまでの人間関係の蓄積が、いろいろな本人との葛藤で、いろいろな精神状態に、やはり発病の要因となり得ると。それが前提にあって、ポンと何か大きいことを言われて反応すると、そういうようなことでよろしいわけですね。今おっしゃられた内容について、事務局のほうはいかがですか。整理していただくと、この表はどのような形になりますか。
○岡久中央職業病認定調査官 皆さんから出していただいた御意見を踏まえてまず左からいくと、心理的負荷の総合評価の視点については、括弧書きは取るべきである、という御意見が多数でした。そこは、ここには書かないですけれども、調査要領などで詳細な解説をすればいいのかと考えております。
○黒木座長 括弧を除くということですね。
○岡久中央職業病認定調査官 はい、括弧を除くということです。2つ目は、「弱」と「中」の所にある解説で、「就業環境を害する程度」というのをここに残すか、総合評価の視点に移すか。ここは御意見が2つあったので、今後報告書をまとめるまでに、整理を事務局のほうでさせてもらうことになるのかと考えております。
○黒木座長 解説はそこには残さないということですか。解説の中に書いてある「反復・継続」それから「執拗」という状況をここに加える。
○岡久中央職業病認定調査官 「弱」と「中」の解説の所の今おっしゃられた「内容、程度、反復・継続する状況」というのは、今もう既に総合評価の視点にあります。ここにないものとして「就業環境を害する程度」という視点、これがないわけですから、それを総合評価の視点に移して解説として落とすか、このまま生かすか、意見が今は2つ出ている状態です。最後の取りまとめまでには整理をして、どちらかということで、こちら側で調整をさせていただければいいのかと思っています。
○黒木座長 取りあえず、これは視点には書いて、解説から落とすかどうかがちょっと。
○黒木座長 品田先生、どうぞ。
○品田委員 田中先生に御質問です。これは、解説に残したほうがよいとすれば、何かメリットはありますか。
○黒木座長 田中先生、いかがですか。
○田中委員 いや、基本的に判断の視点として示せればいいので、総合評価の視点に入っていても悪くはないと思います。ただ、総合評価の視点の中で脚注を入れるとしたら、若干ここが混み混みになってしまうかなというぐらいでしょうか。どっちでもいいと思います。
○黒木座長 「弱」と「中」の解説としては多少残しておいたほうがいいのではないですか、どうでしょうか。田中先生、どうですか。
○田中委員 総合評価の視点と解説の内容が重なるということですよね。
○黒木座長 だけど、「程度」という言葉は分からないですよね。総合評価ということは。
○田中委員 そうですね、どうでしょうか。解説に入れることによって、「弱」と「中」があると連続性があるような形になって、正にケース・バイ・ケースで判断するのだろうということが強調されるところがありますので、それはそれで悪くないかと思うのです。確かに、似たような内容を重ねて2か所に書くというのは、ちょっとどうかなと思っています。
○黒木座長 だから、そこはかぶらないように表現をちょっと。
○田中委員 そうですね。総合評価の視点の括弧も削ることになりまして、ここをできるだけ簡潔に表現して、そしたら解説として残すということもあれだと思います。
○黒木座長 事務局はいかがですか。大丈夫ですか。
○岡久中央職業病認定調査官 すみません、もう一点です。「反復・継続する状況」の所に、「執拗性」ということを入れたほうがいいのではないかということ。
○黒木座長 「執拗性」は当然入れるということですね。
○岡久中央職業病認定調査官 はい、入れるということで皆さんの意見が一致したというように認識しています。今の就業環境のところは表現ぶりを、どちらに入れて、どういう形にするかというのは、「就業環境を害する程度」をいずれかに残すということは間違いないと思うのですが、書き方については、こちらのほうで検討させていただければと思います。
○小山委員 「職場環境を害する程度」を総合評価の視点に入れることで評価して「弱」「中」「強」と決めるものですから、解説で重ならなくていいのではないか。「上司等による身体的攻撃、精神的攻撃等が「強」の程度に至らない場合」でいいのでないでしょうか。
○黒木座長 他の先生方はいかがですか。丸山先生、どうぞ。
○丸山委員 これは、しばしば運用のときに、「強」に至らない程度であるから「中」だ、「弱」だということを議論します。ですから、私はある程度解説に、「「中」の程度に至らない場合について」というような表現は入れていただいたほうが、広く運用する上では使いやすいように思います。ただ、重なるかどうかというところはいろいろ議論があるところなので、整えていただければいいかと思います。
○黒木座長 荒井先生、いかがですか。
○荒井委員 「「強」に至らない」という表現はよく使います。「「強」に至らない」という表現は非常に便利で、いろいろなケースでの使い方次第だと思うのですが、なかなかそれ以上の判断を軽視してしまうことがあるので、できれば「強である」「中である」「弱である」というような表現を使っていただくほうが、正しく表現されるという気持ちはあります。ただ、「至らない」という程度を比較した表現をすることもあります。
○黒木座長 そうすると、この解説はあったほうがいい、あるいはこの解説はなくして、総合評価の所に入れるほうがいいですか。田中先生、どうですか。
○田中委員 解説については、あっても決してまずくないと思っています。
○黒木座長 品田先生、どうぞ。
○品田委員 先生方のお話を聞いていて、少し自分自身も理解してきました。やはり、これは田中先生がおっしゃられた「就業環境を害する程度」というのは、この問題を考える上において、指針にも書いてある重要な項目です。いずれにしても、これは総合評価の視点に入れるべきことなのではないかという気が強くしてきました。そういう意味においては、この解説の所に入れて済ませられる問題ではないと思ってきました。
 更に山口先生は、この表現において「程度」「程度」「程度」と3回も出てきますが、この種の文章でこのような繰り返し、内容は違うのですが、これはもってのほかだと厳しくおっしゃっていました。そうすると、ここをうまく表現することはなかなか難しくなるのではないかという気もしますので、どういう言葉で、どういうふうに入れるかは事務局でも考えていただきたいと思うのです。総合評価の視点に入れるほうがいいのではないかと、少し強く思うようになってきました。
○黒木座長 他の先生方はいかがでしょうか。阿部先生、いかがですか。
○阿部委員 私には、解説と総合評価の違いがよく分からないです。多分、現場の医師の先生方が、解説のほうがちゃんとあることによって、使い勝手が良いのかどうかという観点から見直す、どうするかというのを決めていただくのがいいのかと思って聞いていました。
○黒木座長 吉川先生、どうでしょうか。
○吉川委員 私も話を聞きながら、総合評価の中でそれぞれを取り上げていくことが重要だろうと思いました。その中で、この解説のところには、経緯や状況というところの言葉が抜けているような感じがします。実際に現場で評価される方によって、経緯や状況、内容、程度、反復・継続、就業環境の変化、そして会社の対応の有無という5つのポイントが総合評価の中で評価されるという内容になっているのだとすると、それが総合評価の中に入って、解説は「至らない程度」という形の言葉、こっちにはそのメッセージが、「強には至らない」というものが入っていればいいのかなぐらいに思いました。
○黒木座長 ある程度解説は残して、総合評価とダブらないような形にまとめるということでしょうか。
○吉川委員 はい。「強」には至らないよね、だから「中」にしようという判断が、評価をする際の線引きを決める際に、複数人での合意ですし、評価をしていくような、総合評価をする際に、「その程度に至らない」という言葉はあったほうがいいのかと思いました。
○黒木座長 小山先生、いかがでしょうか。
○小山委員 職場環境の場合は、総合評価の視点できちんと書いたほうがいいと思います。解説のところで残すならば、「「強」の程度に至らない場合に」という所で切ってもいいのではないかと思います。あとのことは、総合評価の中で評価していますので。そういう意味で、「強」と「中」「弱」の違いというところ(解説)で、「「強」の程度に至らない場合」というところでいいのではないかと思います。
○黒木座長 事務局から何かありますか。
○岡久中央職業病認定調査官 最後にまとめていただいた御意見では、「就業環境を害する程度」というのは、総合評価の視点に入れるべきだという御意見が多数ありました。ただ、重複しているところがあるので、重複していない、要は「「強」に至らない程度」という解説だけは残しておいたほうがよいのではないか、という御意見が出されていたという認識です。今後、報告書案を作成する場合に、そういう表記にしていければいいかと考えておりますが、いかがでしょうか。
○黒木座長 先生方、よろしいでしょうか。品田先生どうぞ。
○品田委員 書いて駄目というわけではないし、どちらでもいいと言えばどちらでもいいのですけれども、正直言って、「強」に至らない場合が「中」になるというのは自明の理です。それを解説で書いていただいてもほぼ意味がない。むしろ「弱」のところで、「「中」に至らない程度」と書いてありますので、これをまた繰り返すというのも少しおかしいかなという気がしますので、私としては要らないのではないかという意見です。
○黒木座長 丸山先生、いかがですか。リズム的にどうでしょうか。
○丸山委員 リズム的には連続性があるので、入れていただいたほうが混乱は起きないと思うのです。それと、やはりパワーハラスメントの最初に、私が定義についてお話しましたけれども、そういう意味合いからも少し幅があります。つまり、「強」と「中」の間はかなりクリアカットにしておいたほうがいいと思うのですが、それ以外のところでは、ある意味で微妙なところがあるんです、連続しているような。ですから、確かに「至らない場合」というのは、表現としては曖昧かもしれませんけれども、運用上はかなり使いやすいと考えます。載せていただきたい。
○黒木座長 品田先生、どうでしょうか。
○品田委員 どうでしょうかね。ここは、山口先生と西村先生の御意見も後で事務局が聞いて、検討していただくということをお願いしたいと思います。
○黒木座長 ここの部分は、山口先生と西村先生に再度御意見を聞いた上で、また検討するということでよろしいでしょうか。
○品田委員 はい、それでお願いします。
○黒木座長 事務局から、他に確認しておくことはありますか。
○岡久中央職業病認定調査官 項目3については以上で議論していただいたかと考えております。西村先生と山口先生の御意見を聞くようにということは承りました。以上です。
○品田委員 すみません。最後に1つの問題が残っていることを、先生方に御認識いただいたほうがいいと思うので、一言、言いたいと思います。これは何度か言っていたことなのですけれども、請求人本人がパワーハラスメントであると感じたような言動も、この基準に従うと「中」になるようなものであった場合、そうするとこの「中」であるというのは、「必要性や目的を逸脱している等の攻撃である」ということが要求されることになるわけです。一方、上司トラブルで同じような問題をとらえるとすると、上司トラブルの「中」というのは、「業務指導の範囲内である強い指導、叱責を受けた」という表現なのです。そうすると、パワーハラスメントの「中」と上司トラブルの「中」はかなり齟齬があると言いますか、段差がある感じになってしまいます。この点は、また新たに見直しのときに検討しなければならない課題だということを認識しておく必要があるのではないかと思います。
○黒木座長 先生のおっしゃるとおりだと思います。業務指導の範囲と、この逸脱というのは非常に難しいので、ここは今後検討していかなければいけないと思います。他に御意見はいかがでしょうか。よろしいですか。丸山先生、どうぞ。
○丸山委員 「強」の最後の所に、「中」程度であるが、「心理的負荷としては「中」程度の身体的攻撃・精神的攻撃が行われた場合であって、会社に相談しても適切な対応がなく、改善されなかった場合」というのを入れています。他とはちょっと異質な感じがしますが、私は入れていただいたほうがいいと思っています。これは、特に検討されなくてもいいのですか。
○黒木座長 丸山先生がおっしゃった点はいかがですか。
○丸山委員 これについての私の意見ですが、私はこれは入れていただいたほうがいいと思っています。カラセックのデマンド・コントロール・サポートモデルの中でも、サポートの重要性がすごく言われています。それから、ストレスチェック制度の中の、推奨される尺度としての職業性ストレス簡易調査票の中でも、サポートの重要性を入れています。特に欧米では、ヘルプ・シーキング・ビヘイビア、あるいはサイコロジカル・ヘルプ・シーキング・ビヘイビアというのが非常に重要だということになっています。つまり、パワーハラスメントを受けても相談は何もしないというのが結構あるかと思いますが、それでは、いつまでたってもパワーハラスメントはなくならないという面があります。そういう被害を受けた方が積極的に窓口へ、あるいは窓口をちゃんと作らなければいけないということも、こういうところで示唆されますので、入れてよいと思います。
 ただ、こういう場合があります。特に中小・零細企業では、事業主が非常にパワーハラスメントをやっている場合。そういう場合には相談する相手がなかなか見付からない。ですから、相談しようとしても、中にそういう人がいない場合があります。これが、結構過去の認定されている事例の中にあると思うのです。そういうときに、この項目を幅広く使ってもいいのかと思うのですけれども、よろしいのでしょうか。
○黒木座長 丸山先生のおっしゃる意見に対して何かありますか。品田先生、どうぞ。
○品田委員 私も大賛成です。やはり、この種の問題は、保険として会社側がどのようなことをしたかまで含めて配慮と申しますか、考察すべき問題だと思いますから、この条件でいいですし、この点は強調されるべきだと思います。
○黒木座長 確かにこの部分は非常に大事です。支援があるかどうかということが、精神疾患発症に大きく影響するので、これはこのままでいいと思います。他に何か御意見はありますか。吉川先生、どうぞ。
○吉川委員 丸山先生の御意見は、私も非常に重要だと思います。そもそも、中小企業の方たちはそういう状況がないと、相談する窓口がないということで、社会的弱者です。相談窓口がなかったから相談できなかった、だから、それはどのように取り扱うのかということで、公平性の部分でいろいろ意見が出るかもしれませんが、こういう内容を入れておくことによって、中小企業の方への補償を適切に行うことに役立つと思うのです。ですので、中小企業にはそういう窓口がないが、こういう項目を入れておくことで補償されやすくなるので賛成します。
○黒木座長 他の項目に関して何か御意見はありますか。事務局から何かありますか。
○岡久中央職業病認定調査官 項目3の御意見がまとまったということであれば、項目4の業務起因性の評価の範囲について御説明させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○黒木座長 項目4の業務起因性の評価の範囲の説明をお願いします。
○岡久中央職業病認定調査官 項目3については一定おまとめいただいたということで、項目4について御説明いたします。資料は4ページの下になります。項目4では、業務起因性の評価の範囲を論点として挙げています。精神障害の業務起因性の判断は、発病前6か月とされていますが、現在の認定基準においては、いじめやセクシャルハラスメントのように出来事が繰り返されるものについては、「発病の6か月よりも前に開始されている場合でも、発病前6か月以内の期間にも継続しているときは、開始時からの行為を評価すること」とされています。これは、前回平成23年度の検討会で取りまとめられた意見を踏まえて、認定基準に明記されているものです。
 現在も、「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」の項目は、この取扱いに沿って業務起因性の判断を行っております。この項目から新たに切り出されるパワーハラスメントについても同様の取扱いでよろしいでしょうかという、念のための確認になります。項目4の説明は以上です。
○黒木座長 ただいまの事務局からの説明に関して、何か御意見はありますか。田中先生、どうぞ。
○田中委員 身体的攻撃、精神的攻撃というのは、セクシャルハラスメントと同じように、トラウマに至って、かなり時間的に複雑な経過を取るケースが多いので、やはり6か月以内にこだわらず、その前から出来事を拾ってあげたほうがいいと思います。
○黒木座長 他の先生方はいかがでしょうか。6か月以内に限定しないということでよろしいですか。
○品田委員 賛成です。
○黒木座長 それでは、6か月以内の期間に継続しているときには、開始からの行為を評価するということでよろしいですか。ありがとうございました。それでは、ここまでの議論を踏まえた報告書(案)について、事務局から説明があります。
○岡久中央職業病認定調査官 資料4の報告書(案)について御説明いたします。本来であれば、全ての論点を御議論いただいた後に、その結果を踏まえて報告書(案)を資料として出させていただくべきものですが、今回は前回の非公開の議論等を踏まえ、議論はおおむね終えているということと、見直しの対象が限定的であるということから、この第4回で心理的負荷評価表の案とともに報告書(案)も出させていただくことといたしました。まず、その点について御了承いただきたいと思います。
 この報告書については、次回の検討会で取りまとめをしていただく予定としておりますので、実際には次回の検討会で御議論いただくものと考えております。本日は、簡単に目次と構成について御説明させていただきます。本日、どうしてもこの点について意見を言っておきたいという委員がいらっしゃれば、御意見を賜るということにさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 報告書の構成について御説明します。報告書(案)は、全体で7項目にわたって作成しております。全体で9ページになっています。最初に項目1、「はじめに」ということで、検討の背景や、検討状況を記載しております。項目2として、「検討に当たっての基本的な考え方」を記述しています。2ページ目に今般の見直しの本題である項目3、「業務による心理的負荷評価表に係る具体的出来事等への追加」。その中で、具体的出来事のパワーハラスメントの追加や、平均的な心理的負荷の強度を記載しています。4ページ以降に、心理的負荷の強度を判断する具体例を記載しております。6ページの項目4では、「業務による心理的負荷評価表に係る具体的出来事等の修正」として、これまでの「(ひどい)嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」に関する修正について、8ページまで記載しております。9ページでは、本日御議論いただきました「業務起因性の評価の範囲」について項目6で記載した後に、項目7で「まとめ」の記述を行っております。
 冒頭に申し上げましたように、この報告書は次回の検討会で正式には御議論していただくことになっておりますが、本日どうしてもここで意見を言っておきたいという委員がいらっしゃれば、御意見を言っていただければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
○黒木座長 ただいま、事務局から報告書の概要を説明していただきましたけれども、何か御質問があれば発言していただけますか。よろしいですか。これは、次回も検討するということでよろしいですか。
○岡久中央職業病認定調査官 はい、次回の検討会で取りまとめていただきますので、そのときに議論していただくことになると思います。
○黒木座長 他に御意見がなければ、引き続き検討するということで、本日の検討会は終了します。次回の日程等について事務局から何かありますか。
○中村職業病認定対策室室長補佐 次回の検討会については、おって日時、開催方法を含めて連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。本日はお忙しい中、大変ありがとうございました。
○黒木座長 どうもありがとうございました。