2020年5月29日 薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会 議事録

日時

令和2年5月29日(金)16:30~

出席者

出席委員(19名)五十音順

(注)◎部会長 ○部会長代理
 

欠席委員(2名)

行政機関出席者
 

 鎌田光明(医薬・生活衛生局長)
 山本史(大臣官房審議官)
 吉田易範(医薬品審査管理課長)
 中井清人(医薬安全対策課長)
 新井洋由(独立行政法人医薬品医療機器総合機構理事・審査センター長事務取扱・執行役員(新薬審査等部門担当)事務取扱)
 山田雅信(独立行政法人医薬品医療機器総合機構安全管理監) 他

 


 

議事

○医薬品審査管理課長 定刻となりましたので、薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会を開催させていただきます。本日はお忙しい中、御参集いただきまして誠にありがとうございます。本日の医薬品部会については、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点から、Web形式での審議とさせていただきます。

 本日のWeb会議における委員の出席状況についてです。飯島委員、大賀委員より御欠席の御連絡を頂いております。本日は現在のところ、当部会委員数21名のうち19名の委員がこのWeb会議に御出席いただいておりますので、定足数に達しておりますことを御報告いたします。

 部会を開始する前に、事務局より所属委員の薬事分科会規程第11条への適合状況の確認結果について御報告させていただきます。薬事分科会規程第11条においては「委員、臨時委員又は専門委員は、在任中、薬事に関する企業の役員、職員又は当該企業から定期的に報酬を得る顧問等に就任した場合には、辞任しなければならない」と規定されております。今回、全ての委員の皆様から、薬事分科会規程第11条に適合している旨を御申告いただいておりますので、御報告させていただきます。委員の皆様方には会議開催の都度、書面を御提出いただいており負担をお掛けしておりますけれども、引き続き御理解、御協力を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

 また、本日のWeb会議に際し、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者においてはマスクを着用したまま説明させていただく場合がありますので、御了承いただければと思います。それでは、杉部会長、以後の進行をお願いいたします。

○杉部会長 それでは、事務局から審議の進行方法の説明をお願いいたします。

○事務局 本日はWebでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について御説明させていただきます。審議中、御意見や御質問をされたい委員におかれましては、まず御自身のお名前と発言したい旨を御発言いただきますようお願いいたします。その後、部会長から順に発言者を御指名いたします。御発言いただく際には、マイクがミュートになっていないことを確認の上御発言いただき、発言が終わりましたら、またマイクをミュートに戻していただきますようお願いいたします。

 なお、発言者が多くなり、音声のみでの判別が難しいほど混雑した際には、一度皆様の発言を控えさせていただき、発言したい委員については、こちらのSkypeのメッセージ欄に記入していただくよう、事務局又は部会長からお願いさせていただく場合があります。その場合には記入されたメッセージに応じ、部会長より発言者を指名させていただきます。

○杉部会長 これまでの説明に御質問、御意見等はありますか。大丈夫ですね。

 それでは、本日の審議に入りたいと思います。まず事務局から、資料の確認と審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて報告を行ってください。

○事務局 事務局です。本日の会議に係る資料の確認をさせていただきます。本日は、あらかじめお送りした資料のうち、資料1~資料13-4までを用いますので、お手元に御用意いただければと思います。このほかに資料14として、審議品目の薬事分科会における取扱い等の案を、資料15として、各審議品目に係る専門協議の専門委員リスト、資料16として、競合品目・競合企業リストを事前にメールでお送りしております。なお、システムの動作不良などがありましたら、会議の途中でも結構ですので、事務局までお申し付けください。

 続いて、本日の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについて御報告いたします。資料16を用いて説明いたします。資料16の1ページの「オンジェンティス錠25mg」です。本品目は「レボドパ・カルビドパ又はレボドパ・ベンセラジド塩酸塩との併用によるパーキンソン病における症状の日内変動(wearing-off現象)の改善」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤として、こちらに記載の3品目を競合品目として指定しております。

 2ページが「オノアクト点滴静注用50mg他1規格」です。本品目は「敗血症に伴う下記の頻脈性不整脈:心房細動、心房粗動、洞性頻脈」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないことから、競合品目はなしとしております。

 3ページが「サムスカ錠7.5mg他6規格」です。本品目は「抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)における低ナトリウム血症の改善」を予定効能・効果としており、競合品目はなしとしております。

 4ページが「バフセオ錠150mg他1規格」です。本品目は「腎性貧血」を予定効能・効果としており、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。

 5ページが「ダーブロック錠1mg他3規格」です。本品目は「腎性貧血」を予定効能・効果としており、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。

 6ページが「リベルサス錠3mg他2規格」です。本品目は「2型糖尿病」を予定効能・効果としており、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。

 7ページが「ゼオマイン筋注用50単位他2規格」です。本品目は「上肢痙縮」を予定効能・効果としており、こちらの3品目を競合品目として選定しております。

 8ページが「エンスプリング皮下注120mgシリンジ」です。本品目は「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防」を予定効能・効果としており、こちらに記載の3品目を競合品目として選定しております。

 最後の9ページが「セルメチニブ硫酸塩」です。本品目は「神経線維腫症1型」を予定効能・効果としており、同様の効能・効果を有する薬剤はないので、競合品目はなしとしております。以上です。

○杉部会長 今の事務局からの説明に特段の御意見等はありますか。大丈夫でしょうか。それでは、本Web会議開催の審議事項に関する競合品目・競合企業リストについては、先生方の了解を得たものといたします。それでは委員からの申出状況について、報告をお願いいたします。

○事務局 事務局です。薬事分科会審議参加規程第11条に基づき、各委員からの申出状況について御報告いたします。本日、全ての議題を通して退室委員はいらっしゃいません。それぞれの議題ですけれども、議題1で議決に参加しない委員として大森委員です。議題2のオノアクトについて、議決に参加しない委員はいらっしゃいません。議題3のサムスカについて、議決に参加しない委員として大森委員、代田委員、山田委員です。議題4のバフセオについて、議決に参加しない委員として大森委員、武田委員です。議題5のダーブロックについて、議決に参加しない委員として大森委員、武田委員です。議題6については、議決に参加しない委員はいらっしゃいません。議題7のゼオマインについて、議決に参加しない委員として川上委員、杉委員、代田委員、武田委員、山田委員です。議題8のエンスプリングについて、議決に参加しない委員として武田委員です。議題9のセルメチニブ硫酸塩については、議決に参加しない委員はいらっしゃいません。以上です。

○杉部会長 今の事務局からの説明に、特段の御意見等はありますか。よろしければ、先生方に御確認いただいたものといたします。

 それでは、審議事項の議題に移りたいと思います。議題1について機構から概要を説明してください。

○医薬品医療機器総合機構 議題1、資料1、医薬品オンジェンティス錠25mgについて、機構より説明させていただきます。お手元の紙資料で、資料1の審査報告書を御覧ください。以降は、審査報告書の1番下の全67ページの通し番号で御案内させていただきます。

 まず、4ページ1の項、起原又は発見の経緯等を御覧ください。本剤は、オピカポンを有効成分とするパーキンソン病の治療薬です。本剤はレボドパの代謝酵素であるCOMTを阻害し、血漿中レボドパの脳内移行を効率化することにより、パーキンソン病における運動症状の日内変動(wearing-off現象)の改善をもたらします。今般、国内外の臨床試験成績を基に、本剤の製造販売承認申請がなされました。なお、本剤は2020年5月時点で、欧米を含む30を超える国又は地域で承認されております。現在御覧いただいているページの10行目辺りに、米国では審査中と記載していましたが、本年4月末、本剤は米国でも承認されております。本品目の審査に関して、専門委員として資料15に記載されている委員を指名しました。

 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。審査報告書の34ページの表27を御覧ください。こちらの試験一覧にお示ししておりますが、本剤の開発は本剤の有効性が検証された海外の第III相試験の成績を日本人に外挿するブリッジング戦略に基づくものとされております。本剤25mg及び50mg群が設定された海外の第III相試験、302試験と記載している試験をブリッジング対象試験とし、wearing-off現象を伴うレボドパ製剤で治療中のパーキンソン病患者を対象とした国内第II相試験が対応するブリッジング試験として実施されました。

 続いて、報告書の38ページの表32を御覧ください。国内の第II相試験ではブリッジング対象試験と同様、主要評価項目は治療期終了時における1日平均OFF時間のベースラインからの変化量とされました。本剤の25mg群及び50mg群で、共にプラセボと比較して有意なOFF時間の短縮が認められましたが、本剤50mg群では25mg群を上回る有効性は認められませんでした。一方、審査報告書45ページの表43にお示ししているように、ブリッジング対象試験である海外302試験では、プラセボに対し有意なOFF時間の改善が認められたのは本剤の50mg群のみでした。このように、国内第II相試験では海外302試験と異なり、本剤25mg群より高用量側で有効性が頭打ちとなる傾向が認められました。しかしながら、国内第II相試験の25mg群と海外302試験の50mg群で認められたOFF時間の変化量は同程度と判断しました。

 また、これらの試験成績に加え、事後的な検討に基づくものにはなりますが、審査報告書の48ページからの7.R.2の一連の考察にお示ししておりますように、日本人と白人の曝露量を比較した結果、日本人における曝露量が白人の約2倍となることが示されていました。このことから、主にこの薬物動態の違いが影響して、日本人における用量反応曲線が白人よりも低用量側に移動したと考えられ、25mgを日本人の推奨用量とした上で、海外試験の有効性の結果を日本人に外挿することは可能と判断いたしました。以上により、wearing-off現象を有する日本人の進行期パーキンソン病患者において、本剤は有効であると判断しました。

 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書の51ページから記載している7.R.4の安全性についての項を御覧ください。国内外の臨床試験の比較において有害事象の発現状況に大きな違いはなく、また既承認のCOMT阻害薬と同様の安全性プロファイルであったことから、既存のCOMT阻害薬と同様の注意喚起を行うことで対応可能と判断いたしました。

 以上の検討の結果、本剤は承認して差し支えないとの結論に達し、当該部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はそれぞれ毒薬及び劇薬に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○杉部会長 委員の先生方から何か御質問はありますか。本日は対面での審議ではないので、御発言のある先生はまずマイクを入れて、御自身のお名前を御発言ください。いかがでしょうか。

○奥田委員 奥田です。聞こえますか。

○杉部会長 奥田先生、どうぞ。

○奥田委員 添付文書のこととも関連するので、用法・用量について1点お伺いいたします。この報告書には、レボドパ錠の投与前後及び食事の前後1時間以上空けて経口投与するというように添付文書に記載されておりますが、これはレボドパ錠と同時に服用してはいけないお薬ですね。確認です。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。御指摘ありがとうございます。御指摘のとおりです。同時投与ではなく、時間をずらして服用する薬剤です。

○奥田委員 ここはきちんと患者さんに説明しないと、多分なかなか難しいかもしれないと思ったので指摘させていただきました。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えさせていただきます。非常に貴重な御指摘をありがとうございます。特にこの剤に関しては、患者さんごとに投与タイミングをきちんと決めていただく必要がありますので、作成予定の患者様向け資材では、投与スケジュールのようなものを図示して、レボドパ製剤と本剤をそれぞれ服用していただくタイミングが、より分かりやすくなるような説明資材などを準備して対応する予定です。

○奥田委員 よろしくお願いいたします。

○杉部会長 そのほかの先生、いかがでしょうか。特にないようでしたら議決に入りたいと思います。なお、大森先生におかれましては、利益相反に関する申出に基づき議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。特に異議はないようですので、承認を可として薬事分科会に報告させていただきます。

 続いて、議題2に移りたいと思います。議題2について、機構から概要の説明をお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 議題2、資料2、医薬品オノアクト点滴静注用について、機構より説明させていただきます。資料2の審査報告書を御覧ください。以降の説明においては、審査報告書の下部に青字で記載されているページ数の通し番号で御説明いたします。

 審査報告書の5ページ、起原又は発見の経緯等の項を御覧ください。本剤の有効成分であるランジオロール塩酸塩は、短時間作用型アドレナリンβ1受容体遮断薬です。本剤は、本邦において2002年に、手術時の下記の頻脈性不整脈に対する緊急措置、心房細動、心房粗動、洞性頻脈を効能・効果として承認されました。その後2006年、2013年、2019年に頻脈性不整脈に係る効能・効果で追加承認をされています。海外では2020年2月時点において、本剤が承認されている国又は地域はありません。今般、国内臨床試験成績に基づき、敗血症に伴う下記の頻脈性不整脈、心房細動、心房粗動、洞性頻脈に係る効能・効果及び用法・用量を追加する製造販売承認事項一部変更承認申請が行われました。

 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に御説明いたします。有効性については、審査報告書の7ページの表3を御覧ください。国内において、頻脈性不整脈を呈する敗血症患者を対象に、原則として頻脈性不整脈に対する治療を実施しない既存治療群を対照とした非盲検無作為化並行群間比較試験が実施されました。主要評価項目は、登録24時間後における心拍数を6094/分に調節できた被験者割合とされ、本剤群で既存治療群と比較して有意に高い結果でした。また、副次評価項目とされた登録28日後の死亡割合及び登録168時間後までに、新たな不整脈を発現した被験者の割合は、いずれも既存治療群と比較して本剤群で低いものでした。これらの結果から総合的に、頻脈性不整脈を有する敗血症患者の治療における臨床的に意義のある本剤の有効性が示唆されたと判断しました。

 続いて、安全性について説明いたします。審査報告書の16ページ、7.R.3 の安全性についての項を御覧ください。頻脈性不整脈を有する敗血症では、血管拡張に伴う相対的循環血液量の減少や心機能低下といった血圧低下のリスク因子を有する場合もあり、本剤の薬理作用により血行動態が更に悪化することが想定されます。しかしながら、実際に臨床試験で認められた心肺蘇生を要する心停止や重篤な低血圧は、いずれも本剤の中止・減量及びその他の処置により回復・軽快したことから、審査報告書32ページの1.2項及び33ページ1.3項に記載したように、本剤投与前及び投与中に、低血圧リスクに関して十分に注意喚起することで管理可能と判断いたしました。

 具体的には、投与前は感染症管理及び呼吸・循環管理等の敗血症に対する適切な治療下で血行動態が維持されている患者に対し本剤を適用を考慮すること、心機能及び血圧を観察して投与の可否を慎重に判断すること、投与開始時及び増量時は、特に慎重に心拍数及び血圧を観察すること、過度の血圧低下が認められた場合は速やかに本剤の減量又は投与を中止すること等を、添付文書及び医療従事者向け資材にて注意喚起する予定です。

 以上の注意喚起に基づき、敗血症に対する治療経験が十分にある医師が、投与対象を慎重に選択し、適切な全身管理を行うことができる体制の下で使用することを前提とすれば、本剤は敗血症に伴う頻脈性不整脈に対し、速やかな心拍数管理が可能で、かつ副作用発現時等における速やかな中止も可能な薬剤として、臨床現場に提供する意義があると判断しました。

 以上のような検討を行った結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。

 本品目は、新効能医薬品及び新用量医薬品としての申請であることから、本申請に係る効能・効果及びその用法・用量の再審査期間は4年とすることが適当であると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○杉部会長 委員の先生方から、今の御説明に対して何か御質問等はありますか。特にないでしょうか。では、私から言っておきたいのですが、よろしいでしょうか。添付文書の件です。敗血症性のショックというのはワームショックですよね。末梢が開いてしまっているのでノルアドレナリンを入れて末梢を締めて血圧を上げるということになります。それに伴って脈が早くなることもあろうかと思いますが、説明ではカテコラミン等を使用し、その後頻脈があれば使用するということが書いてあり、先ほどの説明にもそれがありました。しかし、添付文書にカテコラミン投与した後で頻脈があればなどの文言がないのです。カテコラミンとβブロッカーは、ちょうど反対のものになりますので、カテコラミンを投与しておいて、またβブロッカーを投与するとは何事かというように、保険審査のときに査定されるのではないかとちょっと心配するのですが、その点はいかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明申し上げます。御意見ありがとうございます。ただいま御指摘いただいた点については、添付文書の2ページの5.7項に、先生からも御説明いただいたように、まず循環作動薬の投与を含む循環管理を十分に行った上で、血行動態が維持されている患者を投与対象とすることとしております。ただ、御指摘いただいたカテコラミンに関しての明記がないという点は、この5.7項への記載あるいは臨床成績の項で、今回の国内臨床試験における対象患者はカテコラミン投与がなされた患者であるという旨の記載を追加することで、臨床試験の対象患者を明確にすること等を考えております。いずれの方策が可能かというところに関しては申請者とも相談して、引き続き検討させていただきたいと思います。

○杉部会長 そのほかに、先生方からいかがでしょうか。それでは、議決に入りたいと思います。本題について、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので承認を可として、薬事分科会に報告させていただきます。

 続いて、議題3に移りたいと思います。議題3について、機構から概要の説明をお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 議題3、資料3、サムスカ錠7.5mg他6品目につきまして、機構より説明いたします。紙資料は3の審査報告書を御覧ください。

 審査報告書の通し番号7ページ目、1の起原又は発見の経緯等の項を御覧ください。抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)は、バソプレシンが生理的調節機構を逸脱して過剰に又は不適切に分泌され、バソプレシンV-受容体を介する抗利尿作用により、希釈性の低ナトリウム血症を来す疾患で、放置すれば徐々に悪化して中枢神経症状を呈するようになり、脳ヘルニア等により死に至ることもある重篤な疾患です。国内の推定患者数は、平成28年度末の下垂体性ADH分泌異常症の特定医療費受給者証所持者数によると2,789例となっております。本剤は、非ペプチド性のバソプレシンV-受容体拮抗薬であるトルバプタンを有効成分とし、腎集合管でのバソプレシンによる水再吸収を阻害することで水利尿作用を示します。本剤は、本邦において、2010年にループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留を効能・効果として承認され、その後2013年、2014年に、それぞれ肝硬変における体液貯留及び常染色体優性多発性のう胞腎に係る効能・効果で追加承認をされております。

 海外では、20199月時点で欧米を含む45の国又は地域で、SIADHにおける低ナトリウム血症の治療薬として承認されております。

 本邦では、本剤は、医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議において、医療上の必要性が高いと評価され開発要請がなされ、今般、国内臨床試験成績等に基づき、製造販売承認事項一部変更承認申請がなされました。本品目の審査に関して、専門委員として資料15に記載しております委員を指名しました。

 本品目の審査の概略について、臨床試験成績を中心に説明いたします。有効性について、審査報告書10ページ、7.1項を御覧ください。国内において、低ナトリウム血症を有するSIADH患者を対象とした非盲検非対照試験が実施されました。主要評価項目は、海外臨床試験を参考に、審査報告書の12ページ、第2段落にてお示しするように、最終投与翌日の血清ナトリウム濃度の正常化割合とされ、その結果は81.3%と事前に規定された閾値を上回りました。

 海外では、審査報告書13ページ、7.2項に示すように、プラセボ群が設定されたSALT-1試験及びSALT-2試験が実施され、審査報告書15ページの表11に示すように各試験で主要評価項目においてプラセボ群に対する本剤群の優越性が示されました。また、審査報告書20ページの表18に示すように、こちらはSALT-1試験とSALT-2試験の統合データのうちSIADHの部分集団の成績を示したものになりますが、こちらの集団においてもプラセボと比較して本剤の有効性が期待できる成績が示されております。これらの成績により総合的に、日本人SIADH患者において、本剤による低ナトリウム血症の改善効果が期待できると判断いたしました。

 続いて、安全性について御説明いたします。審査報告書通し番号の28ページ、7.R.4.1、低ナトリウム血症の急速補正及び神経学的後遺症についての項を御覧ください。国内外の臨床試験で、臨床的に問題となるような低ナトリウム血症の急速補正が認められた症例について、その数は多くはなく、いずれも本剤を中止することにより速やかに改善しました。しかしながら、急激な血清ナトリウム濃度の上昇によって、浸透圧性脱髄症候群(ODS)が生じた場合、重要な転帰をたどるおそれがあることから、血清ナトリウム濃度が125未満のような低ナトリウム血症を急速補正することにより、ODSのリスクが高いと考えられるような患者に投与する場合は、通常の開始用量の7.5mgよりも更に低用量の3.75mgから投与開始するといった対応が適切と判断いたしました。

 加えて、審査報告書29ページの7.R.4.2項及び7.R.4.3項に記載していますように、脱水及び体液量減少並びに脱水に伴う腎機能障害について注意喚起を行うことで、対応可能と判断いたしました。

 以上の検討の結果、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、当部会において御審議いただくことが適当であると判断いたしました。本剤は希少疾病医薬品としての申請であることから、再審査期間は10年とすることが適切と判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほどよろしくお願いします。

○杉部会長 今の説明に委員の先生方から何か御質問がありましたら、よろしくお願いいたします。

○堀委員 堀です。患者の立場から質問させていただきます。薬の性状についてお尋ねしたいのですが、今回サムスカ錠とOD錠と顆粒があります。OD錠に関しては口の中で溶けやすくて水なしで飲めるということなので、水分制限をする人にはとてもいいと思うのですが、顆粒を作っているメリットを教えていただいてよろしいですか。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。御指摘ありがとうございます。もともと本剤の製剤のラインナップについては、冒頭で御説明しましたように、他の効能効果の開発の一貫で顆粒剤が開発されておりまして、今回追加予定の適応に関して追加の製剤が開発されたわけではありません。御指摘のように今回の適応に関しては、ある程度飲水制限が必要になる一方、本剤投与開始後はある程度それを解除していただいて、飲水も一定程度は可能になります。そうした対応と患者様ごとのライフスタイルを考慮して適した剤形を選択していただくことになると考えております。

○堀委員 分かりました。それではスタートしてから担当の医師と患者のライフスタイルを考慮しながら、この3つを、3種類を分けて投与すると考えてよろしいのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 はい、御指摘のとおりです。

○堀委員 かしこまりました。ありがとうございます。以上です。

○杉部会長 ありがとうございました。そのほかに、先生方いかがでしょうか。特にございませんでしょうか。現在でも、これは心不全又は肝硬変に使われている薬でございますので、どうぞよろしくお願いいたします。それでは御質問がないようでしたら、議決に入りたいと思います。大森先生、代田先生、山田先生におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可といたしまして薬事分科会に報告させていただきます。

 続きまして、議題4に移りたいと思います。議題4につきまして、機構から概要の説明をお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 議題4、資料4、医薬品バフセオ錠150mg、同錠300mgの製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。

 腎性貧血に対する薬物治療は現在、赤血球増血刺激因子製剤(以降、ESAと略します)が主に使用されておりますが、ESAはいずれも注射剤であり、また抗エリスロポエチン抗体陽性赤芽球癆がまれに報告されております。本薬はバダデュスタットを有効成分とする経口剤です。本薬は低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素に対する阻害作用を有することから、エリスロポエチン産生を増加し、赤血球造血を亢進することが期待され、開発に至りました。今般、腎性貧血患者を対象とした国内臨床試験により、本薬の有効性及び安全性が確認され、医薬品製造販売承認申請がなされました。

 なお、本薬は海外において承認されている国はありません。本品目の専門協議では、本日の配布資料15に示します専門委員を指名しております。

 以下、本薬の有効性・安全性について、臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性について、まず血液透析患者について説明いたします。審査報告書に青字で表記しております通し番号の45ページ、表52を御覧ください。ESAで治療中の血液透析患者を対象とした国内第III相試験において、主要評価項目である投与20週及び24週の平均ヘモグロビン値は、本薬群のESAであるダルベポエチンアルファ群に対する非劣性が検証されました。また、審査報告書通し番号47ページ、表57を御覧ください。ESA未治療の血液透析患者を対象とした国内第III相試験においても、本薬投与によりヘモグロビン値が上昇し、ヘモグロビン値に応じて本薬の用量を調節することでヘモグロビン値は目標範囲とされた1012/dLで維持されたことを確認いたしました。

 次に、保存期慢性腎臓病患者における有効性について御説明いたします。審査報告書通し番号40ページ、表43を御覧ください。主要評価項目である投与20週及び24週の平均ヘモグロビン値について、本薬群のダルベポエチンアルファ群に対する非劣性が検証されました。また、ヘモグロビン値に応じて本薬の用量を調節することで、ヘモグロビン値はおおむね目標範囲とされた1113/dLで維持されたことを確認しました。

 最後に、腹膜透析患者における有効性について説明いたします。審査報告書通し番号42ページ、表48を御覧ください。投与20週及び24週の平均ヘモグロビン値は、おおむね目標範囲とされた1113/dLであることが確認されました。以上の血液透析患者、保存期慢性腎臓病患者及び腹膜透析患者における検討から、機構は腎性貧血に対する本薬の有効性は示されたと考えました。

 続きまして、安全性について御説明いたします。審査報告書通し番号5657ページの表656667を御覧ください。国内第III相試験の結果から、ダルベポエチンアルファ群と比較して、本薬群で臨床的に問題となる傾向は認められないことを確認しました。

 また、審査報告書通し番号58ページ以降を御覧ください。本薬の作用機序、非臨床試験及び臨床試験成績から、特に注意すべき有害事象並びに類薬で報告された有害事象を中心に検討を行いました。血栓塞栓症については、本薬群でダルベポエチンアルファ群と比較して、臨床的に問題となるような違いは認められていないことを確認しました。ただし、ヘモグロビン値上昇に伴う血栓塞栓症の発現リスクがあり、本薬群とダルベポエチンアルファ群のいずれも重篤な血栓塞栓症が複数認められていること、同一の作用機序を有する類薬で血栓塞栓症について添付文書の警告の項で注意喚起されていることを踏まえ、類薬と同様に本薬でも添付文書の警告の項で血栓塞栓症に関する注意喚起をする必要があると考えました。

 以上の審査の結果、腎性貧血に対する本薬の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、承認して差し支えないと判断し、本部会で御審議いただくことが適当と判断しました。本申請は、新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しました。また、薬事分科会では報告を予定しています。御審議よろしくお願いいたします。

○杉部会長 それでは、委員の先生方からの御質問を受け付けたいと思います。まず最初に、長島先生から御質問があると伺っております。長島先生、よろしくお願いいたします。

○長島委員 長島です。本医薬品バフセオと議題5のダーブロック錠及び競合医薬品である既存類薬のエベレンゾ、これは全て同一の作用機序です。バフセオとダーブロックは効果・効能が腎性貧血です。エベレンゾは透析患者という縛りがありますが、透析患者においてこの3剤ともに使用可能であり、保存期慢性腎臓病患者においてはこの2剤が使用可能です。これらにおける臨床上の使い分けはどうなっているのでしょうか。教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明いたします。長島先生から御説明いただきましたように、ロキサデュスタットにつきましては、現時点では、透析患者を対象とした臨床試験成績に基づき、透析患者における腎性貧血を効能・効果として承認されております。また、現時点で本薬と同じ作用機序を有する薬剤が3剤ございますけれども、例えば併用薬に関する規定ですとか、妊婦の患者さんに対する投与規定とか、それぞれ異なる点がございまして、それぞれのニーズに合わせて臨床現場では使い分けがなされるものと考えております。

○長島委員 その辺の分かりやすい資料等を、是非提供していただければと思います。

○医薬品医療機器総合機構 検討させていただきたいと思います。御意見ありがとうございました。

○杉部会長 そのほかの先生、いかがでしょうか。

○堀委員 堀です。本当に基本的なことで申し訳ないのですが、資料4と資料5、今、長島先生がおっしゃったように同じ効能になると思います。その用法・用量のところで、両方とも1日1回経口投与としか書いてなくて、食事との関連が書いておりません。この資料を読んでも16.2.1の所で食事の影響というのがあり、空腹時と食後投与では食後投与のほうがよかったと書かれていますが、この食事に関する投与のタイミングというのは、どのように決めたらいいのでしょうか。教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明させていただきます。まず、バフセオ錠について御説明させていただきます。本薬につきましては食事の影響試験を実施しておりまして、血中濃度が一番高くなるときの濃度が多少食後で低くなるデータは得られましたけれども、投与して血中からなくなるまでの時間の血中総濃度には大きな影響はございませんでした。この結果を踏まえまして、国内第III相試験の患者さん向けを対象とした臨床試験では、食事の規定を設けずに、本薬を投与して検討しておりまして、食事の前後、つまり食事をする前あるいは食事をした後に投与した場合で有効性と安全性を比較したところ、大きな違いはなかったというデータを踏まえて、今回、用法・用量では食事に関する規定を設けておりません。ですので、本薬につきましては、食事に関する規定は特に注意喚起は不用と考えております。この後に御説明させていただきますダーブロックにつきましても同様です。

○堀委員 ありがとうございます。そういたしましたら、それは患者が投与する時間を決めて、間に例えば24時間空けるとか、そのような規定というのはあるのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 1日1回投与ですので、例えば夜飲んで次の日の朝に起きた後にいつのタイミングで飲むのかというような問題があるかと思いますけれども、本薬につきましても、またこの後に御説明させていただきますダーブロックにつきましても、血中から消失する時間が、それほど長いものではございませんので、1日1回経口投与を用法としているほかの薬剤と同じように、患者さんのニーズ、生活習慣に合わせて服用していただければと思います。

○堀委員 ありがとうございます。それはとても便利ですね。了解いたしました。失礼いたします。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございました。

○杉部会長 そのほかの先生方から何か御質問いかがでしょうか。特にございませんでしたら、議決に入りたいと思います。大森先生、武田先生におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。それでは、本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として薬事分科会に報告させていただきます。

 続きまして、議題5に移りたいと思います。議題5について機構から概要の説明をお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 議題5、資料5、医薬品ダーブロック錠1mg他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。腎性貧血に対する薬物治療は現在、赤血球造血刺激因子製剤(以降、ESAと略します)が使用されていますが、いずれも注射剤であり、また抗エリスロポエチン抗体陽性赤芽球癆がまれに発現することが報告されています。本薬はダプロデュスタットを有効成分とする経口剤です。本薬は、低酸素誘導因子-プロリン水酸化酵素に対する阻害作用を有することから、エリスロポエチン産生を増加し、赤血球造血を亢進することが期待され、開発に至りました。

 今般、腎性貧血患者を対象とした国内臨床試験により、当該患者に対する本薬の有効性及び安全性が確認され、医薬品製造販売承認申請がなされました。なお、2020年3月時点において、本薬は海外において承認されている国又は地域はございません。本品目の専門協議では、本日の配布資料15に示します専門委員を指名しております。

 以下、本薬の有効性及び安全性について、臨床試験成績を中心に御説明させていただきます。有効性に関しては審査報告書、青字の通し番号52ページ、表51を御覧ください。ESA投与中の血液透析患者を対象とした国内第III相試験において、主要評価項目である投与4052週時の平均ヘモグロビン値変化の本薬群とダルベポエチンアルファ群の群間差の95%信頼区間の下限値が、事前に設定した非劣性マージン-1.0/dLを上回ったことから、本薬群のダルベポエチンアルファに対する非劣性が検証されました。

 続きまして、審査報告書通し番号57ページ、表62を御覧ください。保存期慢性腎臓病患者を対象とした国内第III相試験において、主要評価項目である投与4052週時の平均ヘモグロビン値の本薬群とエポエチンベータペゴル群の群間差の95%信頼区間の下限が、事前に設定した非劣性マージン-1.0/dLを上回ったことから、本薬群のエポエチンベータペゴル群に対する非劣性が検証されました。

 さらに、審査報告書通し番号59ページ、表65を御覧ください。腹膜透析患者を対象とした国内第III相試験において、主要な有効性評価項目である投与4052週時の平均ヘモグロビン値が目標範囲内(1113/dL)であった被験者割合は95.5%であったことを確認しました。以上より、機構は、腎性貧血患者に対する本薬の有効性は示されたと判断しました。

 安全性に関しましては、審査報告書通し番号69ページ、表70及び表71を御覧ください。血液透析患者における有害事象の発現状況をお示ししております。本薬群とダルベポエチンアルファ群で有害事象の発現割合に大きな差は認められず、また本薬群で認められた有害事象はほとんどが軽度又は中等度でした。

 続きまして、審査報告書通し番号70ページ、表72を御覧ください。保存期慢性腎臓病患者における有害事象の発現状況を示しております。本薬群とはエポエチンベータペゴル群で、有害事象の発現割合に大きな差は認められず、また本薬群で認められた有害事象はほとんどが軽度又は中等度でした。

 さらに、審査報告書通し番号71ページ、表73を御覧ください。腹膜透析患者における有害事象の発現状況を示しております。これらの患者では、保存期慢性腎臓病患者と比較して、重篤な有害事象の発現割合が高い傾向が認められておりますが、腹膜炎等の腹膜透析患者特有の背景によるものであり、保存期慢性腎臓病患者と比較して、本薬の安全性に特段問題となる傾向は認められていないことを確認しました。

 最後に、審査報告書通し番号72ページ、7.R.2.5.1項を御覧ください。本薬の注目すべき有害事象として、本薬の血栓塞栓症の発現状況について検討しました。国内第III相試験において、血栓塞栓関連事象の発現割合は本薬群とESA群で同程度であったものの、本薬群のみで重度の事象、副作用、重篤な副作用及び中止に至った副作用が認められたこと、また本薬はHIF-プロリン水酸化酵素を阻害しHIF経路を活性化することを考慮しますと、本薬と同一の作用機序を有するロキサデュスタットと同様に、警告欄で血栓塞栓関連事象について注意喚起を行うことが適切と考えました。また、血栓塞栓関連事象の発現状況は、製造販売後も引き続き情報収集し検討する必要があると考えました。

 以上より、機構は、血栓塞栓症の発現に十分注意しながら使用することで、本薬の安全性許容可能と考えました。機構での審査の結果、腎性貧血に対する本薬の有効性は示され、安全性は許容可能と考えられたことから、医薬品リスク管理計画に係る承認条件を付した上で、本薬を承認して差し支えないと判断し、本部会で審議されることが適当と判断しました。なお、本品目は新有効成分含有医薬品であることから、再審査期間は8年、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当せず、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しました。薬事分科会では報告を予定しております。

 なお、本薬の添付文書案について誤記載があったため、報告申し上げます。添付文書案の4ページを御覧ください。16.6.1の腎機能障害患者において、AUCが「約2~8倍増加した」旨が記載されておりますが、正しくは「約2~6倍増加した」となります。機構からの説明は以上になります。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○杉部会長 今の説明に関しまして、先生方から何か御質問ございますでしょうか。

○赤羽委員 赤羽ですが、御質問させていただいてよろしいでしょうか。

○杉部会長 お願いします。

○赤羽委員 御説明ありがとうございました。説明にはなかったのですけれども、生殖発生毒性試験におきまして、ラットとウサギを用いた実験で、子供の出生数が若干少なかったというようなことが書かれておりました。これはもともと、この薬剤の主たる標的になると思われますPHT2という酵素のノックアウトマウスが胎生致死になるという報告と合っているかなと思うのですけれども、ただし、それは非常に高い用量でそういったことが起こったので、実際の臨床用量ではこれは大丈夫であろうということが5.5には記載されています。

 それに対しまして、この薬剤が妊婦さんにも使用されるということで、一応臨床用量では、そういった問題はないであろうということは納得できるのですけれども、添付文書の9.5、妊婦に対する使用の所に一切何も説明がなされていないということに、少し大丈夫かなという懸念があります。

 それで、先ほどのバフセオ錠のほうも、妊婦さんに使用することが可能であるということで、バフセオ錠のほうは胎生致死ということは毒性試験で特に認められなかったようなのですけれども、それ以外の恐らく血栓とか、あるいは血流が低下するなどの影響であるかもしれないのですが、胎児に少し影響があったということが、一応妊婦への使用の所で、9.5なのですが、動物を使った実験についても一言説明書きがあります。それで、今お示しいただきましたダーブロック錠のほうに関して、添付文書にこれを記載しなかったということに関しては、何か事前にそこは協議をした上で、こういう理由で記載する必要がないであろうという、そういったことがありましたら御説明を頂ければと思います。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。バフセオは、非臨床試験において、最大臨床用量に近い曝露量で所見が認められましたが、本剤は最大臨床用量と非臨床試験において生殖発生毒性が認められた用量との曝露量に大きな開きがあったことから、注意喚起の記載が異なっています。

○赤羽委員 御説明ありがとうございます。それから、あともう1点よろしいでしょうか。

○杉部会長 どうぞ。

○赤羽委員 先ほどのバフセオ錠の説明のところで、長島先生から同じ標的に対する薬剤の使い分けの違いについての御質問があったときに、妊婦さんなどを対象としたときの使い方にも使い分けがあるという御説明があったのですが、具体的に何かそこに違いがあるのでしたら御説明いただければと思います。

○医薬品医療機器総合機構 既に承認されていますエベレンゾ錠については、妊婦が禁忌になっている。一方、バフセオとダーブロック錠については禁忌になっていないといったところが主な点と思っております。

○赤羽委員 ありがとうございました。以上です。

○杉部会長 ありがとうございました。そのほかの先生からいかがでしょうか。何か御質問ございますでしょうか。

○武田委員 すみません、武田でございますが。

○杉部会長 武田先生、よろしくお願いします。

○武田委員 添付文書の2ページ目、6番の用法及び用量と、それから7番の用法及び用量に関する注意の所なのですが、先ほどのバフセオと違ってかなり用量が細かく変わるお薬ですよね。7.1の赤血球造血刺激因子製剤で未治療の保存期慢性腎臓病患者の開始用量が、ヘモグロビン濃度が9未満か9以上で違っていると、これは多分何かデータがあると思うのですが、その下の投与量調節も1mgから24mgまで8段階に分かれていて、4週間は空けて増量する、あるいは減量するということなのですけれども、ここまで細かくしないといけないのか、その辺の御説明を頂きたいのですが。

○医薬品医療機器総合機構 開始用量について、保存期慢性腎臓病患者を対象とした臨床試験において、4mgで全ての患者に投与を開始したときに、急激なヘモグロビン値の増加が認められてしまったため、ヘモグロビン濃度に応じて4mgか2mgを選択することが妥当と考えられ、このように設定されております。

 次に、投与量調節について、8段階の用量調整で臨床試験が行われており、このような投与量調整によりヘモグロビン値が適正に管理されておりますので、注意喚起をさせていただいております。以上です。

○武田委員 ヘモグロビン濃度が9.0/dL以上の場合は2mgで開始しますよね。そうしますと、投与量調節の1段階目は1mgと書いてあるのですが、これはどこで1mgが出てくるのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 減量すると1段階目の1mgになるということです。

○武田委員 減量した場合に、そこへ行くということですね。分かりました。

○杉部会長 よろしいでしょうか。では、そのほかの質問はいかがでしょうか。特にないようでしたら議決に入りたいと思います。大森先生、武田先生におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題につきまして承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。御異議がないようですので、承認を可として、薬事分科会に報告とさせていただきます。

 続きまして、議題6に移りたいと思います。議題6につきまして、機構から概要の説明をお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 議題6、資料6、医薬品リベルサス錠3mg他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明申し上げます。本剤は、GLP-1アナログであるセマグルチド(遺伝子組換え)を有効成分とする2型糖尿病治療薬です。セマグルチドは皮下投与製剤であるオゼンピック皮下注2mg等として、既に本邦において承認されており、本剤は同一有効成分の経口投与を可能とした製剤です。本剤は2020年4月現在、米国及び欧州において承認されております。本品目における専門協議では、資料15に示す先生方を専門委員として指名させていただいております。

 それでは、本剤の有効性及び安全性について、主な臨床試験成績を中心に説明させていただきます。有効性につきまして、審査報告書の40ページの表38を御覧ください。食事・運動療法で十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病患者を対象とし、本剤単独療法下での有効性及び安全性を検討することを目的とした、プラセボ対照無作為下二重盲検並行群間比較試験が国際共同試験として実施されました。その結果、主要評価項目であるベースラインから投与26週時までのHbA1c変化量について、本剤3、7及び14mg群のいずれについてもプラセボ群に対する非劣性が示されました。

 また、審査報告書の33ページの図1を御覧ください。食事及び運動療法又は食事及び運動療法に加え経口血糖降下薬1剤による治療で十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病患者を対象とし、本剤単独療法下での有効性及び安全性を検討することを目的としたプラセボ及びリラグルチド対照無作為化並行群間比較試験が実施されました。その結果、いずれの本剤群においても投与52週時までのHbA1cの低下が認められています。

 続いて、審査報告書の37ページの図2を御覧ください。食事及び運動療法に加え、経口血糖降下薬1剤による治療で十分な血糖コントロールが得られていない2型糖尿病患者を対象とし、本剤と経口血糖降下薬1剤との併用療法下での安全性及び有効性を検討することを目的としたデュラグルチド対照無作為化並行群間比較試験が実施されました。図2においては併用薬ごとのHbA1cの変化量の推移を示していますが、併用薬の種類によらず、いずれの本剤群においても投与52週時までHbA1cの低下が認められております。

 続いて、安全性につきまして、審査報告書の57ページの表59を御覧ください。本剤単独療法下でのプラセボ及びリラグルチド対照試験において、本剤を含むGLP-1受容体作動薬に特徴的な事象である胃腸障害につきましては、プラセボ群よりも発現割合が高い傾向が認められましたが、本剤と同じGLP-1受容体作動薬であるリラグルチドと比較すると、低血糖を含め安全性上の懸念は認められておりません。本剤と経口血糖降下薬1剤との併用療法下で実施された試験結果を踏まえ、本剤の安全性プロファイルは、単独療法及び併用療法いずれにおいても既存のGLP-1受容体作動薬と大きく異なるものではなく、オゼンピック皮下注と同様の適切な注意喚起がなされることを前提とすれば、本剤の安全性は許容可能と判断しました。

 なお、本剤は添加剤であるサルカプロザートナトリウムを含有することにより、セマグルチドは主に胃から吸収されます。実施された臨床薬理試験の結果、本薬の曝露量は食事の有無、飲水量、他の錠剤が胃に存在することにより影響を受けることが示されており、第III相試験においては本剤1錠を1日の最初の食事の少なくとも30分前に約120mLの水と共に経口投与し、服用後少なくとも30分は飲食及び他の薬剤の経口摂取を避ける旨が規定され、本薬が投与されています。臨床薬理試験及び各第III相試験の結果を考慮すると、医療現場においても第III相試験での規定と同様の投与方法で本剤を服用することが重要であり、添付文書及び情報提供資材において本薬の服用方法を記載するとともに、根拠となる臨床薬理試験の結果について情報を提供する予定です。

 以上のとおり、機構での審査の結果、本剤を承認して差し支えないという結論に達し、本部会で審議されることが適当と判断いたしました。本剤は新投与経路医薬品に該当することから、本剤の再審査期間は6年とすることが適当であり、製剤は劇薬に該当し、生物由来製品及び特定生物由来製品のいずれにも該当しないと判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。御審議のほど、よろしくお願い申し上げます。

○杉部会長 それでは、委員の先生方から御質問を受けたいと思いますが、2人の先生からの御質問がございます。まず最初に、長島先生からの御質問、よろしくお願いいたします。

○長島委員 既に既存の皮下注の製剤がありますが、それとの使い分けについて質問します。審査報告書の76ページの下のほう、「臨床的位置付けについて」を見ると、77ページの一番上のほうで、既存の皮下注等の受容体作動薬と本剤の投与対象は同様であるというように書いてあって、少し戻って76ページ、下から5行目、「特に、経口剤による治療を望む患者にとって最適な治療の選択肢となる」と書いてありますが、この使い分け、位置付けは単に患者さんの希望だけなのか、それ以外にどちらかを選ぶ条件とか要件というのはないのか、いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答え申し上げます。基本的には審査報告書に記載しておりますとおり、本剤の安全性・有効性は既存のGLP-1受容体作動薬の皮下注製剤と比較して大きく異なるものではありませんので、投与対象となる患者さんについてもほぼ同じと考えております。その上で、本剤は経口投与とすることで利便性は向上すると考えられますので、経口剤を好まれる患者さん、若しくは自己投与を行うことに障壁のある患者さんには本剤が選ばれるといった使い分けになると想定しています。

○長島委員 これは、例えば経口剤が余り望ましくない、ふさわしくない患者像というようなものはないのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答え申し上げます。本剤は先ほど御説明しましたとおり、服用方法にいくつか条件がございますので、そういった服用方法が困難な生活習慣の方にとっては本剤よりは皮下注製剤のほうが望ましい可能性はあると考えています。

○長島委員 患者さんの希望によるという場合には、患者さんにとってそれを選択するための分かりやすい資料というものが必要になるかと思いますので、そちらの資料作成を是非お願いいたします。以上です。

○医薬品医療機器総合機構 ありがとうございます。本剤の投与方法に関する資料について、患者さん向けも含めた情報提供資材を作成する予定ですので、そちらを用いて情報提供させていただきたいと考えています。

○杉部会長 ありがとうございました。それでは、続きまして川上先生のほうからの御質問、いかがでしょうか。

○事務局 川上委員のほうの御質問を事務局から読み上げさせていただきます。「添加剤のサルカプロザートナトリウム、こちらがセマグルチドの酵素的分解の阻害を有するので、有効成分としてセマグルチドとサルカプロザートナトリウムの配合剤と考えるのが自然なように思われますが、見解を教えていただけますでしょうか」という御質問を頂いております。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答え申し上げます。本剤は御指摘のとおりサルカプロザートナトリウムを有することによって本薬の吸収が促進されるという特徴を有しております。そのサルカプロザートナトリウムを有効成分として扱うかどうかが御指摘と理解しました。この添加剤につきましては、それ単体で2型糖尿病に対する有効性又は安全性に関して影響を及ぼすというわけではなく、有効成分の吸収に対してのみ影響しますので、添加剤と判断しております。

○杉部会長 よろしいでしょうか。それでは、そのほかの先生、何かいかがでしょうか。

○奥田委員 今の点でコメントです。

○杉部会長 奥田先生、どうぞ。

○奥田委員 私も最初、この添加剤は有効成分なのかなと思ったのですが、よく見ると、この分解の阻害というのは、pHを調節していることによるというふうに書かれているので、添加物でもよいのかなと、ある意味で緩衝剤みたいに働いているので添加剤でもいいのかなと思いました。逆にこの説明の中で、そこのところが余り明確でなくて、何かすごく働いているような形で書かれているように取られてしまうのが、少し気になった次第です。以上です。

○杉部会長 ありがとうございました。堀先生、何かございましたか。

○堀委員 ありがとうございます。よろしいでしょうか。先ほどの長島先生の関連質問です。今まで皮下注が、注射があったと思うのですけれども、今回は経口投与できる状態ということで、患者にとっては本当に喜ぶ患者さんもいらっしゃると思います。副作用の件なのですけれども、副作用は注射、皮下注の場合と、今回の経口投与の薬の場合と、副作用は違いがあるのでしょうか。教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答え申し上げます。セマグルチドの皮下注製剤、つまりオゼンピック皮下注と本剤を直接比較した臨床試験は実施されていないので、実際安全性についてどれほどの差が現れるのかについて明確にお答えすることはできないのですが、セマグルチドではないものの同じ作用機序の薬剤を対照薬とした試験は複数実施されており、当該試験結果を確認する限り安全性プロファイルは、皮下注製剤とも大きく変わるものではないと考えております。

○堀委員 やはり患者にとってみると、もちろん治ることというのも1つなのですけれども、副作用はかなり懸念するところがあると思うので、できましたらば、これから徐々にそういうデータも示していただけたら有り難いと思います。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。本剤及びオゼンピック皮下注につきましては、製造販売後の調査を実施しますので、そちらの結果を基に必要な対応をさせていただきたいと考えております。

○堀委員 そうですね、今までの皮下注との比較というのも、とても大切なものだと思いますので、よろしくお願いします。

 あともう1点、すみません、これはちょっと私の意見なのですけれども、よろしいでしょうか。製剤の性状についてお尋ねしたいのですけれども、添付文書の3.2の製剤の性状を拝見しておりますと、3mg、7mg14mg、みんな同じ形をしております。白色から淡黄色の錠剤というふうに書いてあるのですけれども、この3つは色は異なるのでしょうか。それとも同じなのでしょうか。教えてください。

○杉部会長 機構のほう、いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答え申し上げます。こちらの3つの錠剤につきましては、同じ色になります。今回の製剤の特徴として、吸湿性が高く、また遮光が必要であるため、使用直前にPTPシートから取り出して服用していただくということになります。したがって、基本的にはPTPシートに入っている状態で保管されることになるのですが、PTPシートの色が3つの規格の製剤毎に異なっています。赤と青と緑と非常に明るい色をしているので、認識できるのではないかと考えています。

○堀委員 なるほど、ありがとうございます。添付文書の図を見ると錠剤の裏面の所は皆同じだと思うのですけれども、表面の所が3、7、14と数字が書かれています。これがかなり小さいので、目が老眼の方とか、非常に分かりにくいのかなと思うのです。今、おっしゃっていたように、包装に入っている場合は分かると思うのですけれども、大体の皆さんが包装から出してしまって、事前に他の服用する薬と小さな袋に入れて、飲まれる方もいらっしゃるので、これは私の意見なのですけれども、もう少しこの表面の数字の刻印を大きくしていただけたら有り難いと思いました。以上です。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘ありがとうございます。本剤の使い方として、漸増していくことになりますので、異なる規格のもの、例えば3mgと7mgの錠剤が同時に手元にあることは余りないかと考えています。また、先ほど御説明したとおり、本剤は服用直前にPTPシートから取り出して飲んでいただくということを注意喚起しておりますので、取り違いのリスクは、それほど大きくないと考えています。

○堀委員 分かりました。例えばちょっと飲み残しがある方とかもいらっしゃるかと思うので、その場合、今、段階的にというふうにおっしゃっていましたが、特に今回14mgに関しましては7mgを2つ飲んではいけないということが書かれておりました。やはりそこの部分が患者は何となく誤解して、「7mgが残っているから2つ飲んでしまおう」みたいな感じに思うところがあるので、それも事前の用法及び用量に関連する注意に書かれているところみたいに、きちんと患者向けの資材に書いていただけたら有り難いと思います。以上です。

○医薬品医療機器総合機構 適切な御指摘ありがとうございます。資材を用いて情報提供させていただきたいと思います。

○堀委員 ありがとうございました。

○杉部会長 ありがとうございました。それでは、森先生のほうから御質問よろしくお願いいたします。

○森委員 コメントしてよろしいでしょうか。

○杉部会長 大丈夫です。

○森委員 まず、今回Web形式で行われていまして、製剤のパッケージを確認できなかったことは残念でございましたので、今後何らかの御配慮を頂ければと思っております。今回、このセマグルチドを主成分としましたリベルサスの経口錠と、既に承認を頂いていますオゼンピックの注射薬と2つの使い分けという問題がございます。この2剤は有効性・安全性プロファイルは非常に近接していまして、ほぼ同等の効果を持っている薬剤でございますが、注射薬の利点としましては1週間に1回でよいということと、それからその際に御家族などが安全確認しやすいというメリットがあります。また、経口薬は経口で利便性が高いものの、服薬に幾分の注意が必要で、朝、食前に十分な水分を取り、ほかの薬剤と一緒に併用しないようにといった注意喚起は守られなければいけませんので、そういった服薬の管理が難しい方にとっては注射薬を選択するということも十分利便性があるものと理解しています。また、2つの薬剤に共通して、非常に有効性が高い、血糖値がよく下がるという点が共通していますので、高齢者の方や腎機能低下の症例の方々には、低血糖に対する注意喚起が必要で、特にスルホニルウレア薬やインスリンと併用なさる際にはあらかじめ減量いただく等の注意が十分に必要であり、この点につきましてもオゼンピック同様に、今回の経口薬のリベルサスにつきましても、十分な資材による情報提供を頂ければと思っています。以上です。

○杉部会長 ありがとうございました。

○医薬品医療機器総合機構 御指摘いただきありがとうございます。情報提供資材で対応させていただきたいと思います。

○杉部会長 そのほか何か御質問ございますでしょうか。

○山田委員 山田ですけれども、よろしいでしょうか。

○杉部会長 山田先生、どうぞ。

○山田委員 やはり、新添加剤の安全性について、少し気になるので確認させていただきたいのですけれども、機構での審査では安全性は問題ないということで、毒性試験等々の試験もされているということですけれども、この毒性試験というのは、慢性試験も当然のことながら実施されたということなのでしょうか。1つ目の確認です。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答え申し上げます。添加剤として含有されるサルカプロザートナトリウムについて、反復投与毒性試験は実施されています。

○山田委員 分かりました。ありがとうございます。それで、この審査資料の8/96と書いてあるページの真ん中辺りに、「機構は、SNACの高用量投与によって」というセンテンスがありまして、その真ん中辺りに最大無作用量と臨床で用いる用量の間には49倍以上の差があるというふうに記載があります。一方で、添付文書のほうを確認しますと、添付文書案の2枚目ですか、15.2.2、サルカプロザートナトリウムの非臨床評価という所の真ん中辺りでは、これは安全性に関わる数値として276倍という数値が出てきて、これは多分、毒性用量とCmaxの間を比較して276倍という数字が出てきています。このと審査報告書の数字と添付文書の数値が違うのは、比較しているものが違うので仕方がないと思うのですけれども、でも何か審査報告書では49倍、添付文書では276倍という数字、より安全に見えるような数字が書いてあるのが少し疑問があるのですけれども、この点はいかがなのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。審査報告書に記載している49倍というのは安全域となります。つまり、毒性が認められた用量より1段階低い用量との比較になります。

○山田委員 最大無作用量との比較ですよね。

○医薬品医療機器総合機構 ご指摘のとおりです。一方で、添付文書に記載されているのは、毒性所見が認められた際の用量になります。

○山田委員 審査報告書で比較したときの数値と違う数字をわざわざここで使った意味は、何かあるのですか。

○医薬品医療機器総合機構 機構よりお答えいたします。添付文書には、毒性試験で認められた事象を説明しています。つまり臨床用量に比較して何倍の用量を投与したときに、記載したような所見が認められたという記載としていることから、所見が認められた際の血中濃度に関する記載をしています。

○山田委員 この審査報告書を見て判断した後で、この添付文書を見ると、何か見かけ上は安全性がより良いというような印象を受けるので、少し奇異に感じました。でも、内容は分かりました。添加剤ですので、添付文書にもこの添加剤が実際どれぐらい含まれているかというのは一切出てこないということになるわけですね。

○医薬品医療機器総合機構 錠剤の場合は添加剤の分量は記載しないということになっておりますので、本剤についてもどの程度含まれるかというのは記載していません。

○山田委員 分かりました。以上です。ありがとうございました。

○杉部会長 ありがとうございました。そのほかの先生、いかがでしょうか。特になければ議決に入りたいと思います。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、承認を可としまして、薬事分科会に報告させていただきます。

 続きまして、議題7に移りたいと思います。議題7につきましても、機構から概要の説明をお願いいたします。

○医薬品医療機器総合機構 議題7、資料7-1及び7-2、医薬品ゼオマイン筋注用50単位他の製造販売承認の可否等について、機構より御説明します。

 資料7-1の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全50ページの通し番号で5ページ、「1.起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等」の項を御覧ください。痙縮は伸張反射の亢進を特徴とする運動障害であり、脳卒中、脳性麻痺、頭部外傷、多発性硬化症等を原因疾患として引き起こされ、随意運動を妨げるとともに、筋肉のスパズムによる疼痛や不眠の原因となり、日常生活動作に支障を来たすとされています。

 本剤は、A型ボツリヌス菌により産生されるA型ボツリヌス毒素からボツリヌス菌由来の複合タンパク質を取り除いたものを有効成分とした注射剤となります。A型ボツリヌス毒素は末梢のコリン作動性神経終末に作用し、神経伝達物質であるアセチルコリンの放出を阻害することにより、随意筋の筋力を弱め、筋緊張状態を緩和する作用を示すと考えられています。今般、上肢痙縮に対する有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。

 本剤は2020年1月現在、上肢痙縮等の適応に対し、欧米等を含む73の国又は地域で承認されています。なお、本邦では複合タンパク質を含むA型ボツリヌス毒素を有効成分とするボトックス注用50単位他が上肢痙縮等の適応に対して承認されています。本申請の専門委員として、資料15に記載されている8名の委員を指名しております。

 臨床試験成績を中心に審査の内容を説明させていただきます。まず、有効性について、審査報告書の通し番号で22ページの表18を御覧ください。脳卒中後の上肢痙縮を有する患者を対象とした国内第III相試験の二重盲検期では、痙縮の重症度について筋緊張の亢進状態を6段階で評価するMASスコアを用いて有効性が評価されました。表18に示しましたように、主要評価項目である手関節の屈曲のMASスコアのベースラインから投与12週後までの変化量の時間曲線下面積であるAUCにおいて、本剤250単位群及び本剤400単位群と各プラセボ群との間に、それぞれ統計学的な有意差が認められました。

 また、審査報告書の通し番号で23ページの表20に示しましたように、非盲検継続期の本剤400単位投与における手関節、手指関節、肘関節及び母指関節の屈曲、並びに前腕の回内におけるMASスコアのベースラインからの変化量の推移から、反復投与による継続的な改善が認められました。以上の成績等を踏まえると、本剤の上肢痙縮に係る有効性は示されていると判断いたしました。

 次に安全性ですが、審査報告書の通し番号27ページから35ページの「7.R.2 安全性について」の項に示しましたように、国内第III相試験及び海外第III相試験における有害事象の発現状況に加え、本剤の作用機序や海外の製造販売後安全性情報等を踏まえると、本剤の安全性は許容可能と考えております。ただし、本剤投与時に注目すべき事象である遠隔筋への影響や過敏症反応については、海外の市販後において重篤な有害事象の報告があったことも踏まえ、類薬と同様に適切な注意喚起を行う必要があると判断いたしました。

 用法・用量について審査報告書の通し番号41ページ、中段より下の「機構は~」から始まる段落を御覧ください。国内第III相試験成績を踏まえ、本剤の用量については1回あたりの最大用量を400単位とし、その範囲内で患者の症状によって、対象となる緊張筋の種類や数を考慮しながら用量は必要最小限となるよう適宜減量しながら投与すること、また投与間隔についてはボトックスと同様に通常12週間以上とすることが適切であり、患者の症状に応じて投与間隔は10週間まで短縮することが可能と判断いたしました。ただし、本剤が10週以上12週未満の間隔で投与された臨床試験は国内第III相試験のみであり、当該投与間隔での投与経験は限られていることから、製造販売後において本剤が10週以上12週未満の投与間隔で投与された患者における安全性等を検討する必要があると判断いたしました。

 なお、本剤の使用に際しては、他のA型ボツリヌス毒素製剤と同様に、施術に必要な知識・技術等を十分に有する医師のみが使用し、廃棄等についても厳格に管理する必要があることから、本剤の適正使用に必要な措置を講じるための流通管理及び薬剤管理に関して、審査報告書の通し番号47ページに記載したとおりの承認条件を付すことが適切と判断しております。

 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であるため、再審査期間は8年、原体及び製剤はいずれも毒薬に該当し、生物由来製品に該当すると判断しております。薬事分科会では報告を予定しております。説明は以上となります。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○杉部会長 ありがとうございました。それでは先生方からの御質問をお受けしたいと思いますが、まずは長島先生からよろしくお願いいたします。

○長島委員 長島です。本剤とボトックスの使い分けについて教えてください。ボトックスは効能が上肢痙縮だけではなくて、より幅広いのですが、まず本剤が今後上肢痙縮だけではなくほかの部位にも拡大していく予定があるのか。2つ目は、投与間隔を10週まで短縮する必要がない患者の場合、ボトックスと本剤をどう使い分けるのか。本剤の方に何か期間短縮以外のメリットあるいはデメリットがないのか。この比較について教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明します。審査報告書の通し番号42ページを御覧ください。本剤の臨床的位置付けについて、ボトックスとの比較を記載している箇所となります。本邦では上肢痙縮に係るボツリヌス毒素製剤としてボトックスが既に承認されていますが、ボトックスの有効成分は神経毒素成分であるA型ボツリヌス毒素と無毒性成分である複合タンパク質からなり、その免疫原性は主として複合タンパク質の一部が関与するとされています。ボトックスでは中和抗体産生による二次的な効果の減弱が報告されています。そのため、中和抗体産生による効果の減弱を避ける観点から、ボトックスでは投与間隔を12週間以上とする必要があり、12週間以内に効果が認められなくなった場合には再投与ができない等、痙縮に対する治療が制限されると考えられています。

 一方、本剤は、複合タンパク質を含まないA型ボツリヌス毒素のみを有効成分としているため、中和抗体産生による効果の減弱の可能性が低くなることが期待されること、先ほど御説明した国内第III相試験において、本剤を10週間隔で投与したときの有効性、安全性に大きな問題が認められなかったことから、本剤は症状に応じて投与間隔を10週まで短縮できる薬剤となります。

 また、効能・効果ですが、先生がおっしゃるように、ボトックスにつきましては、上肢痙縮以外にも下肢痙縮や痙性斜頸等、様々な効能・効果で承認されています。本剤については、今回上肢痙縮について御審議いただいているところですが、現在下肢痙縮に係る開発も実施中です。

○長島委員 よろしいですか、先ほどお聞きしたかったのは、投与間隔を10週まで短縮する必要がない患者ではボトックスと本剤をどう使い分けるのかということです。例えば、この複合タンパク質がないことの効果は中和抗体産生による効果減弱を避けるということだけで、ほかに何か効果なり安全性なりのところでメリットなりデメリットはないのか、どのように臨床上使い分けていいのかが分からないので教えてください。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明します。本剤とボトックスについては、安全性上、特に大きな違いはないと考えています。この点については、本剤の国内臨床試験、海外臨床試験、あるいは海外の市販後の安全性情報等から確認しています。

 また、投与間隔を10週まで短縮する必要がない患者での使い分けについては、ボトックスでは通常12週間以上投与間隔を空ける必要があり、例えばボトックスで中和抗体が認められ、投与後10週で効果が認められなくなった患者でも、ボトックスを再度投与するときには12週まで待たなければいけなくなりますが、そのような患者に対し本剤を投与したときに効果が持続したということも報告されていますので、ボトックスで効果減弱が認められた患者に、本剤が使用される可能性はあると考えています。

○長島委員 ボトックスで効果減弱以外の場合には、本剤を第1選択で使うという動きはないのでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明します。ボトックスについては、本邦では1996年から承認されていまして、臨床上これまで広く使われていて安全性情報も豊富であると考えています。一方、本剤については今回初めて御審議いただきますが、中和抗体の観点から、投与間隔も含め、ボトックスと本剤が使い分けられると考えていますが、基本的にはボトックスと本剤について安全性に大きな違いはないと判断しておりますので、臨床では、患者の状態を踏まえて医師の判断により使い分けがなされるものと考えています。

○長島委員 臨床向けの資材を作るときに、そこのところをもう少し整理して作っていただけますようにお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 コメントありがとうございました。本剤については流通管理に関する承認条件を付すこととしており、医師についても登録した医師が本剤を投与するなど、適切に管理していきたいと思います。

○杉部会長 そのほかの先生はいかがでしょうか。

○武田委員 武田です。今の長島先生の御質問に関連するのですが、ボトックスの適応を見ますと、上肢痙縮の投与間隔は12週以上ですが、最初に認可された眼瞼痙攣や片側顔面痙攣、痙性斜頸は投与間隔は8週以上とされています。これは多分、かなり昔の話なので治験のやり方が変わっていたりして8週になってしまったと思うのですが、今の御説明で複合タンパク質が含まれているので12週以上空けないと抗体ができるという話になると、ここはちょっと矛盾するのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より御説明させていただきます。先生のおっしゃるように、ボトックスのほかの適応については投与間隔が8週以上とされる用法もありますが、上肢痙縮と比較してそれらの効能・効果、例えば眼瞼痙攣では1回の投与量は少なくなっています。

○武田委員 ボトックスの適応は今、非常にたくさんあるのですが、その中で重度の原発性腋窩多汗症があります。そちらは16週以上空けるとされているのですが、この違いはどうして起こってきているのでしょうか。今、資料がなくてもよろしいと思うのですが、要するに、先ほど長島先生の御質問と同じで、これからこのゼオマインというのはいろいろな臨床試験をやって適応が拡大してくるときに、ボトックスの投与間隔の違いをどう説明するのかが、余りはっきりと分からないので、もう一回討議したほうがよろしいのではないでしょうか。

○石川委員 石川です。神経内科医なのですが、私も審議の係の方に詳細に調べていただくということで話したいと思います。基本的に、私の知っている範囲の知識として、ただ単に間隔が短い長いということではなくて、途中でおっしゃっていましたが、量の問題があるのです。眼瞼痙攣等は投与量が少ないのでいいのですが、痙性斜頸などといった非常に強い症状のときは量が多くなってくるので、これを投与間隔を短くすると余計に副作用と言いますか、一過性に筋力低下が出たり、例えば関係のないところの呼吸筋麻痺が出たりする恐れがありますので、そういうことを加味して、対象の疾患の患者さんの症状と用量とを加味して、投与間隔の違いが出てくるとボトックスでは考えられていたと思います。ですので、今回のゼオマインに関してはまだ上肢痙縮だけで、しかも眼瞼痙攣ではなく比較的複数の筋肉の上肢に関する投与で、今回はここで示された期間であって、ボトックスとは直接的には比較できないのかなと思っています。正確によく調べていただければと思いますが、現時点ではそう理解しています。私の見た限りにおいては、この期間は余り問題ないのかなと思って見ていました。むしろ、途中で御指摘がありましたが、今回は適応の対象が上肢だけなので、下肢にはまだ十分検討されていないといったことを添付文書等にきちんと書いていただくことが必要ではないかなと思っています。以上です。

○杉部会長 先生、御指摘ありがとうございました。機構から何かありますか。

○医薬品医療機器総合機構 コメントありがとうございます。今回は上肢痙縮に関して御審議いただいておりますので、今後本剤について効能追加された際には、その投与間隔について十分検討したいと思います。

○杉部会長 機構からの話はいかがですか。先ほど、途中で聞こえなくなったのですが。

○医薬品医療機器総合機構 投与間隔について、今回10週から14週の範囲で国内第III相試験が実施され、その投与間隔で本剤を反復投与したときの有効性、安全性が確認されていますので、本剤の投与間隔は通常12週間以上とし、患者の症状に応じて10週まで短縮できるという用法・用量が適切と判断いたしました。今後、本剤において、上肢痙縮以外の効能が開発された際には、その投与間隔の適切性について提出された試験成績も踏まえ判断していきたいと考えます。

○杉部会長 ありがとうございました。それでは議決に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。川上委員、代田委員、武田委員、山田委員におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして議決への参加を御遠慮いただくことにします。また、私についても同様の取扱いとします。本議題について承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、承認を可として薬事分科会に報告させていただきます。

 続きまして、議題8に移りたいと思います。機構から概要をお願いします。

○医薬品医療機器総合機構 議題8、資料8、医薬品エンスプリング皮下注120mgシリンジの製造販売承認の可否等について、機構より御説明いたします。資料8の審査報告書を御覧ください。審査報告書の一番下、全68ページの通し番号で5ページ、起原又は発見の経緯及び外国における使用状況に関する資料等の項を御覧ください。視神経脊髄炎スペクトラム障害(以下、NMOSDと略します)は、重度の視神経炎と横断性脊髄炎を特徴とする中枢神経系の自己免疫性炎症性脱髄疾患です。本剤の有効成分であるサトラリズマブ(遺伝子組換え)は、インターロイキン-6(以下、IL-6と略します)受容体に対するヒト化モノクローナル抗体であり、本剤はIL-6シグナルを阻害し、B細胞による抗アクアポリン4抗体(以下、抗AQP4抗体と略します)等の、自己抗体の産生を抑制することで、NMOSDの再発抑制作用が期待されております。

 今般、NMOSDに対する本剤の有効性及び安全性が確認されたとして、製造販売承認申請が行われました。海外では、2019年8月に欧米において承認申請が行われ、現在審査中です。なお、本邦におけるNMOSD患者数は約4,370人と推定されており、本剤は希少疾病用医薬品に指定されております。本申請の専門委員として、資料15に記載されている8名の委員を指名しております。

 それでは、審査の内容について、臨床成績を中心に説明させていただきます。まず、有効性について、審査報告書の一番下、全68ページの通し番号で30ページの表29を御覧ください。NMOSD患者を対象とした国際共同第III相試験において、主要評価項目である二重盲検期間における初回の再発までの期間について、本剤群とプラセボ群との間に統計学的な有意差が認められました。

 一方、審査報告書の通し番号で、34ページの表33を御覧ください。NMOSDの病原性に関連する抗AQP4抗体の陽性・陰性別の初回の再発までの期間を検討したところ、抗AQP4抗体陰性のNMOSD患者では、本剤群とプラセボ群との結果に明確な差異は認められず、部分集団解析結果ではあるものの、抗AQP4抗体陰性の患者において、本剤の有効性が期待できると判断することは困難であると考えました。

 次に、効能・効果について、審査報告書の通し番号62ページの有効性及び効能・効果についてを御覧ください。抗AQP4抗体陰性の場合は、NMOSDの詳細な発症機序は明らかになっておらず、抗AQP4抗体の陽性・陰性別で、臨床症状は類似していても背景となる病態は異なると考えられること、本剤の抗AQP4抗体陰性の患者に対する有効性は明らかになっていないことから、本剤は原則として抗AQP4抗体陽性の患者に投与することが適切と判断いたしました。この点について、審査報告書の通し番号63ページ上部の効能・効果に関連する注意を御覧ください。添付文書の効能・効果に関連する注意の項に、本剤は抗AQP4抗体陽性患者へ投与することを注意喚起する必要があると判断いたしました。

 戻って恐縮ですが、最後に、審査報告書の通し番号38ページの7.R.2、安全性についての項を御覧ください。臨床試験における有害事象及び副作用の発現状況、並びに感染症関連の事象、好中球減少、白血球減少、無顆粒球症関連の事象等の個別の事象について検討した結果、他の抗IL-6抗体製剤であるトシリズマブ(遺伝子組換え)製剤及びサリルマブ(遺伝子組換え)製剤と同様の注意喚起をすることで、本剤の安全性は許容可能と考えております。

 以上の審査を踏まえ、本剤を承認して差し支えないとの結論に達し、本部会で御審議いただくことが適当と判断いたしました。本剤は新有効成分含有医薬品であり、希少疾病用医薬品であることから、再審査期間は10年間、生物由来製品に該当し、原体及び製剤はいずれも劇薬に該当すると判断しております。なお、薬事分科会には報告を予定しております。説明は以上です。御審議のほどよろしくお願いいたします。

○杉部会長 ありがとうございました。先生方から何か御質問ございますか。非常に患者さんの少ないことに対する注意ですが。長島先生、どうぞ。

○長島委員 抗AQP4抗体陰性の患者に対する投与に関しては、現在、審査中の米国及び欧州において、どのように判断されているかお分かりですか。

○医薬品医療機器総合機構 機構より説明させていただきます。欧米については現在審査中で○○○○○○に承認の可否が判断される見込みですが、最終的な効能・効果については確定的な情報がまだ得られていないため分かりません。しかしながら、本品目は、4月時点で○○か国で承認申請が行われており、そのうちカナダにおいては、投与対象を抗AQP4抗体陽性の患者に限定して、6月頃に承認される見込みであるという情報が得られております。

○長島委員 分かりました。○○以降、その結果が出ましたら、また教えていただければ幸いです。

○医薬品医療機器総合機構 承知いたしました。

○杉部会長 そのほかの先生、いかがでしょうか。特になければ議決に入りたいと思います。武田先生におかれましては、利益相反に関する申出に基づきまして、議決への参加を御遠慮いただくことといたします。本議題につきまして、承認を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、承認を可といたしまして、薬事分科会に報告させていただきます。

 続きまして、議題9に移ります。議題9につきましては、事務局から概要の説明をお願いいたします。

○事務局 事務局でございます。議題9、資料9、セルメチニブ硫酸塩を希少疾病用医薬品として指定することの可否につきまして、御説明いたします。資料9のうち、2つ目の「希少疾病用医薬品該当性事前評価報告書」を用いて御説明させていただきます。報告書1ページ目ですが、申請者が「アストラゼネカ株式会社」、予定される効能・効果が「神経線維腫症1型」となっております。こちらは希少疾病用医薬品の指定の可否になりますので、希少疾病用医薬品の3要件を1つずつ御説明させていただきます。

 まず、1つ目の要件の「対象患者数」ですが、今回の神経線維腫症1型は指定難病となっておりまして、本邦における患者数は5万人未満と考えております。

 続きまして、2つ目の要件の「医療上の必要性」ですが、神経線維腫症1型で最もよく認められている良性腫瘍が大体2050%の患者さんで認められることが報告されておりまして、これらの腫瘍が神経に沿ってあらゆる箇所に出現しまして、疼痛ですとか、神経機能、運動機能などに影響を与えることが知られております。現時点で、特に治療法等が確立されている疾患ではありませんので、本剤は医療上の必要性はあるものと考えております。

 最後に、「開発の可能性」ですが、本剤は国内臨床試験を計画中でございまして、また医師主導試験が海外でも実施中というところで、開発の可能性はあると考えております。従いまして、希少疾病用医薬品の指定の3要件を満たしていると考えておりますので、御審議のほどをよろしくお願いいたします。

○杉部会長 ありがとうございました。先生方から何か御質問はございますか。希少疾病用医薬品として指定したいということです。特になければ議決に入りたいと思いますが、よろしいでしょうか。本議題につきまして、指定を可としてよろしいでしょうか。ありがとうございます。指定を可として、薬事分科会に報告させていただきます。

 続きまして、報告事項に移ります。報告事項につきまして、これも事務局から説明をお願いいたします。

○事務局 事務局でございます。報告事項の議題1~4につきまして、事務局からまとめて御報告させていただきます。まず、報告事項の議題1ですが、医薬品キンダリー透析剤AF5号とAF5P号、それから5Eの製造販売承認についてです。本剤は、既承認の透析剤の組成を基本として設定された透析型の人工腎臓の灌流液でして、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の電解質イオン濃度やブドウ糖の濃度を既承認の透析剤の濃度の範囲内に設定した類似処方医療用配合剤になります。今般、定期的に血液透析が施行されている慢性腎不全患者を対象とした臨床試験成績等に基づきまして、扶桑薬品工業株式会社より製造販売承認申請がなされております。機構における審査の結果、本剤を既承認の透析剤と同じく、「慢性腎不全における透析型人工腎臓の灌流液として用いる。(無糖の透析では血糖値管理の困難な患者及び他の重炭酸型透析液では高カリウム血症、高マグネシウム血症の改善が不十分な場合、又は高カルシウム血症を引き起こすおそれがある場合に用いる)」の効能・効果で承認して差し支えないと判断されております。

 続きまして、報告事項の議題2になります。報告事項の議題2につきましては、医薬品フェントステープ0.5mg、同テープ1mg、2mg、4mg、6mg、8mgの製造販売承認事項一部変更承認となります。こちらは、フェンタニルクエン酸塩を有効成分とする経皮吸収型の製剤でして、非オピオイド鎮痛剤及び弱オピオイド鎮痛剤で、治療困難な中等度から高度のがん疼痛及び慢性疼痛に対して、他のオピオイド鎮痛剤から切り替えて使用する薬剤として承認されております。今般、久光製薬株式会社より、オピオイド鎮痛剤を使用していない中等度から高度のがん疼痛に対しまして、本剤を使用可能とすることを目的として、国内臨床試験成績に基づいて、製造販売承認事項一部変更承認申請がなされております。機構における審査の結果、本申請を承認して差し支えないと判断されております。

○事務局 続いて、報告事項の議題3、医療用薬品の承認条件についてです。資料12を御覧いただければと思います。リツキシマブ(遺伝子組換え)を有効成分とする医薬品リツキサン点滴静注100mg、同点滴静注500mgの承認条件に係る御報告です。本剤は、平成26年8月に「難治性のネフローゼ症候群(頻回再発型あるいはステロイド依存性を示す場合)」の効能・効果が承認され、その際に、通し番号の2ページに記載されている承認条件が付されております。この度、全薬工業株式会社から、承認条件に基づき実施された使用成績調査の結果、本調査結果に対する承認取得者の考察及び対応に関する報告書が提出され、機構において評価されました。

 本調査は、本剤を使用した全症例を対象に、平成26年8月29日より実施され、平成28年4月15日までに投与が開始され、調査表が固定された916例の情報に基づいてまとめられております。本調査において収集された有効性及び安全性に係る情報から、新たな懸念は認められませんでした。

 7ページのIIIの総合評価を御覧ください。機構は、提出された資料から、承認条件である製造販売後調査が適切に実施され、有効性、安全性に係る情報が収集されていること、収集された情報に基づいて本剤の適正使用に必要な措置が講じられていることから、承認条件は対応されたものと判断しております。以上を踏まえ、承認条件は満たされたものと判断いたしました。

○事務局 最後に、報告事項の議題4、医療用医薬品の再審査結果について御報告いたします。資料13-1~13-4になります。まず、資料13-1ですが、有効成分名は「エキセナチド」、販売名が「バイエッタ皮下注5μgペン300及び同皮下注10μgペン300」。資料13-2ですが、有効成分名「エキセナチド」、販売名が「ビデュリオン皮下注用2mgペン」。資料13-3が、有効成分名「A型ボツリヌス毒素」、販売名が「ボトックス注用50単位及び同注用100単位」。資料13-4が、有効成分名「ブプレノルフィン」、販売名が「ノルスパンテープ5mg、同テープ10mg及び同テープ20mg」になります。

 これらの品目につきましては、製造販売後の特定使用成績調査に基づいて再審査申請が行われまして、審査の結果、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第14条第2項第3号に掲げられている承認拒否事由のいずれにも該当しないこと、すなわち効能・効果、用法・用量等の承認事項について変更の必要がない「カテゴリー1」と判定をさせていただいております。事務局からの報告事項は以上になります。

○杉部会長 ありがとうございました。委員の先生方のほうから、今の報告事項に対して、何か御質問はございますか。それでは、特にないようですから、報告事項については御確認いただいたものといたします。本日の議題は以上ですが、先ほどの議題7のときに、石川先生のお話の後で、私どものほうに機構からの音が聞こえなかったので、少し時間が取られたことをお詫び申し上げます。

 それでは、事務局から何か報告はございますか。

○事務局 ありがとうございました。次回の部会ですが、7月15()午後5時から開催する予定でございます。状況に応じて、部会の開催方法につきましては追って御連絡させていただきますので、引き続きよろしくお願いいたします。

○杉部会長 それでは、本日はこれで終了としたいと思います。御参加いただきまして、本当にありがとうございました。

( 了 )

備考
本部会は、企業の知的財産保護の観点等から非公開で開催された。

照会先

医薬・生活衛生局 

医薬品審査管理課 課長補佐 荒木(内線2746)