2020年7月21日 令和2年第5回目安に関する小委員会 議事録

日時

令和2年7月21日(火)18:00~33:00
令和2年7月22日(水)15:00~18:45

場所

九段第3合同庁舎 2-1会議室(11階)

出席者

公益代表委員
 藤村委員長、戎野委員、鹿住委員、中窪委員
労働者代表委員
 伊藤委員、小原委員、冨田委員、永井委員
使用者代表委員
 池田委員、佐久間委員、高原委員、橋本委員
事務局
 坂口労働基準局長、村山安全衛生部長、五百籏頭賃金課長、小城主任中央賃金指導官、
水島副主任中央賃金指導官、手計賃金課長補佐、松本賃金課長補佐

議題

令和2年度地域別最低賃金額改定の目安について

議事

(第1回全体会議)
 
○藤村委員長
 ただ今から第5回目安に関する小委員会を開催いたします。
 まず、事務局から説明があればお願いします。
 
○手計賃金課長補佐
 事務局からの説明は、ございません。
 
○藤村委員長
 それでは、前回の小委員会においては、目安を取りまとめるべく鋭意調整を進めましたが、労使の見解に隔たりが大きいことから、本日も、引き続き真摯に御議論いただき、労使の一層の歩み寄りをお願いいたします。
 労使双方から、これまでの主張に追加等があればお願いいたします。
 
(発言なし)
 
○藤村委員長
 労使のご主張には特段の変更はないようですので、全体会議で開きを詰めるのは難しいと思います。 公労・公使で個別に御意見を伺いながら、開きを詰めていきたいと思いますが、よろしいですか。
 
(異議なし)
 
○藤村委員長
 それでは、公労会議から始めたいと思います。
 
(第2回全体会議)
 
○藤村委員長
 ただ今から、第2回目の全体会議を開催します。
 お手元に公益委員見解を配布しておりますので、事務局から読み上げてもらいます。よろしくお願いします。
 
○水島副主任中央賃金指導官
 朗読します。令和2年度地域別最低賃金額改定の目安に関する公益委員見解。令和2年7月21日。
 1令和2年度地域別最低賃金額については、新型コロナウイルス感染症拡大による現下の経済・雇用・労働者の生活への影響、中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況、今後の感染症の動向の不透明さ、こうした中でも雇用の維持が最優先であること等を踏まえ、引上げ額の目安を示すことは困難であり、現行水準を維持することが適当との結論を下すに至った。目安小委員会の公益委員としては、地方最低賃金審議会においては、地域別最低賃金の審議に際し、上記見解を十分に参酌し、地域の経済・雇用の実態を見極め、地域間格差の縮小を求める意見も勘案しつつ、適切な審議が行われることを希望する。
 2(1)目安小委員会は、今年度の目安審議に当たって、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、特に地方最低賃金審議会における自主性発揮が確保できるよう整備充実や取捨選択を行った資料を基にするとともに、最低賃金は経済を支える上でも、地域の労働者の生活と賃金、地域産業の持続性を支える上でも重要な役割を果たしていることを踏まえつつも、感染症による経済・雇用への厳しい影響がみられる中、雇用の維持と事業継続、労働者の生活・くらしを守ることを最優先課題として官民、労使を挙げて尽力している状況について特段の配慮をした上で、諸般の事情を総合的に勘案して審議を行ってきた。今年度の公益委員見解を取りまとめるに当たっては、①感染症の影響下の厳しい中にあっても、賃金引上げが可能な企業は、賃上げに前向きに取り組むことを通じ、可処分所得の継続的拡大と将来の安心の確保を図り、さらに消費の拡大につなげるという経済の好循環を継続・拡大させることや、非正規雇用労働者の処遇改善が社会的に求められていることに応じていくことが望ましいこと、②他方、感染症により経営状況が急激に悪化した企業が少なからず生じ、政府の支援策も活用しながら、労働時間の削減や労働者に休業をさせる等により雇用維持の努力をしている状況において、最低賃金引上げが雇用調整の契機とされることは避ける必要があること、③雇用情勢については、令和元年の有効求人倍率は全ての都道府県で1倍を超え令和元年の雇用者数も増加傾向にあるものの、足下では、休業者数がリーマンショック時のピークを大幅に超える水準まで急増し、有効求人倍率の低下や失業率の上昇が見られるなど、感染症が雇用に与える影響を注視する必要があること、④賃金改定状況調査結果第4表の賃金上昇率や春季賃上げ妥結状況等における賃金上昇率など賃金に関する指標は引き続きプラスの水準を示しているが、前年より上げ幅は縮小していること、加えて名目GDP成長率も大幅に下落していること、⑤令和元年の雇用・経済に関する指標は感染症の影響が生じる前のものであり、直近のこれらの指標についても、各企業の労使の努力に加え、雇用維持と事業継続を支援するための経済対策による下支え効果が含まれていることなどから、目安の参考とするには慎重な検討を要すること、⑥世界的に感染状況が拡大している中、日本においても緊急事態宣言解除後に再び新規感染者数の増加が見られるとともに、感染症による経済・雇用等への影響は地域・産業ごとに違いが見られるが、相当に広範囲に及んでおり、今後の感染症の動向や経済・雇用への影響が予断を許さない状況であること、等、様々な要素を総合的に勘案し、検討を行ったところである。目安小委員会の公益委員としては、中央最低賃金審議会が地方最低賃金審議会の審議の結果を重大な関心をもって見守ることを要望する。
 (2)生活保護水準と最低賃金との比較では、前年度に引き続き乖離が生じていないことが確認された。なお、来年度以降の目安審議においても、最低賃金法第9条第3項及び平成29年全員協議会報告の3(2)に基づき、引き続き、その時点における最新のデータに基づいて生活保護水準と最低賃金との比較を行い、乖離が生じていないか確認することが適当と考える。
 (3)来年度の審議においては、新型コロナウイルス感染症等による様々な影響を踏まえながら、経済の好循環継続の鍵となる賃上げに向け、日本経済全体の生産性の底上げや、取引関係の適正化など、賃上げしやすい環境整備に不断に取り組みつつ、最低賃金についてはさらなる引上げを目指すことが社会的に求められていることも踏まえ、議論を行うことが適当と考える。
 (4)最低賃金引上げが及ぼす影響については、平成29年全員協議会報告の3(2)及び4(3)に基づき、引き続き、影響率や雇用者数等を注視しつつ、慎重に検討していくことが必要である。以上です。
 
○藤村委員長
 ありがとうございました。公益委員としては、これを中央最低賃金審議会に示したいと考えておりますが、よろしいでしょうか。
 
(異議なし)
 
 それでは、この公益委員見解を、小委員会の報告として、中央最低賃金審議会に示したいと思います。
 それでは、目安に関する小委員会報告を取りまとめたいと思いますので、配布をお願いします。事務局から読み上げをお願いします。
 
○水島副主任中央賃金指導官
 朗読します。中央最低賃金審議会目安に関する小委員会報告。令和2年7月21日。
 1はじめに。令和2年度の地域別最低賃金額改定の目安については、累次にわたり会議を開催し、目安額の提示の是非やその根拠等についてそれぞれ真摯な議論が展開されるなど、十分審議を尽くしたところである。    
 2労働者側見解。労働者側委員は、今回のコロナ禍の中、最低賃金を改定しないことは社会不安を増大させ格差を是認することと同義であり、中賃の役割からしてあってはならない。春季生活闘争では、労使の真摯な交渉を経て賃上げが行われており、この流れを最低賃金の改定により労使関係のない労働者にも波及すべきと主張した。また、政労使で賃上げの重要性を確認し、ステップを踏んで最低賃金を引き上げてきた流れを止めるべきではなく、この流れを断ち切れば、デフレ回帰を惹起しかねないと述べ、雇用の確保と企業の持続性を担保することが現下の最重要課題であることは否定しないが、そのことと最低賃金引上げの重要性は分けて考えるべきと主張した。更に、新型コロナウイルス感染症対策の予算措置はGDP押上げ効果があるとされており、最低賃金発効は早くても10月であることから、現下の厳しさだけをもって目安の示し方を議論すべきではない。今後の日本経済の再生に向けて、内需拡大や落ち込んだ消費マインドの上昇が必要であり、労働者が生活や雇用に不安を抱える中、最低賃金を引き上げることは、社会安定のセーフティネットを促進するメッセージとなり得ると主張した。昨年度の目安答申の公益委員見解にあった通り、消費税増税による物価変動等の状況を勘案した審議を行うべきであり、とりわけ物価上昇に伴う実質賃金を維持することは基本である。今回のコロナ禍によって労働者の生活も苦しくなっていることも踏まえた審議を行うべきであり、特に、緊急事態宣言の中、社会機能を維持するために欠かせない仕事を担っているエッセンシャルワーカーと呼ばれる労働者は、最低賃金近傍で働く方も少なくなく、感染の不安や恐怖と闘いながら働き続けた労働者に報いるべきであり、最低賃金の引上げは社会的要請であると主張した。また、現在の最低賃金は最高額の1,013円でも2,000時間働いて年収200万円程度に過ぎず、日本の最低賃金は国際的にみても相当低位にとどまっている。最低賃金は十分なセーフティネット機能を果たし得る、ナショナルミニマムにふさわしい水準に引き上げるべき。今年中に800円以下の地域をなくすこと、トップランナーであるAランクが1,000円に到達する考えを堅持したいと述べた。地域間格差は、地方から隣県や都市部への労働力流出の一因である。加えて今回のコロナ禍は、大都市への労働力集中による経済の一極集中と感染リスク増大という弊害を明らかにしたことも踏まえれば、ランク間格差縮小に向けた抜本的な対応をとる必要があり、引き続き格差是正につなげる姿勢を見せるべきだと主張した。労働者側委員としては、上記主張が十分に考慮されずに取りまとめられた下記1の公益委員見解については、不満の意を表明した。
 3使用者側見解。使用者側委員は、コロナ禍によって、日本経済はこれまでに経験したことのない危機的な状況に直面しており、緊急事態宣言や休業要請等は大規模な需要喪失と幅広い業種や地域に影響をもたらし、宣言解除後も以前の状況に戻っていない。とりわけ、経営基盤が脆弱な地方の中小企業・小規模事業者に甚大な影響を与え続けているとの認識を示した。また、多くの企業が助成金等を活用した休業等を実施した結果、休業者は354万人超とリーマンショック時を2倍以上上回っている。雇用調整や解雇は今後も悪化する可能性があり、当分の間、感染症拡大防止と事業活動の両立を余儀なくされる中、今年度の力強い景気回復は期待できないとの見方が強いと述べた。地方の中小企業・小規模事業者から最低賃金引下げを望む声が多く聞こえる中、今年度、有額の目安を示すことは、事業継続と雇用維持のため、各種給付金・助成金を受けながらかろうじて持ちこたえている多くの中小企業・小規模事業者を更なる窮地に追い込むことになるとの強い懸念を示した。近年の最低賃金は、政府の引上げ方針という時々の事情への配慮を求められ、中小企業・小規模事業者の経営実態と乖離した状況が続いた結果、昨年度の影響率は過去最高の16.3%に達しており、全国の中小企業・小規模事業者から、年ごとに高まる影響率を考慮し、中小企業・小規模事業者の実態に基づいた納得感のある水準の決定を求める声が多く寄せられ、特に今年は、先行きの見えない深刻な経済情勢の中、引下げを求める声も強まっていると主張した。全世代型社会保障検討会議における「今は官民を挙げて雇用を守ることが最優先課題である」との総理の発言や、「中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況を考慮し、検討を進める」との総理の指示を重く受け止めて審議に臨むべきと主張した。コロナ禍により日本はもちろん世界が「非常事態」にあることを認識するべきであり、中小企業・小規模事業者の経営状況は極めて厳しく、新型コロナウイルス感染症の影響だけでなく、働き方改革にも対応しなければならない中で、多くの企業は事業継続と雇用維持にぎりぎりの努力を続けていると述べた。「緊急事態」である今年度は、3要素のうち「通常の事業の賃金支払能力」を最も重視して審議すべきであり、その観点から新型コロナウイルス感染症による中小企業・小規模事業者の経営への影響を示すデータを十分に踏まえて検討すべきと主張した。今年度の目安は、事業継続と雇用維持を最優先とするメッセージを各地方最低賃金審議会に発信するため、リーマンショック後の目安と同等以上の配慮が必要であり、据え置き・凍結とすべきと強く主張した。
 4意見の不一致。本小委員会(以下「目安小委員会」という。)としては、これらの意見を踏まえ目安を取りまとめるべく努めたところであるが、労使の意見の隔たりが大きく、遺憾ながら目安を定めるに至らなかった。
 5公益委員見解及びその取扱い。公益委員としては、今年度の目安審議については、平成29年全員協議会報告の3(2)で合意された今後の目安審議の在り方を踏まえ、加えて、新型コロナウイルス感染症による経済・雇用・労働者の生活への影響等に配意した上で、諸般の事情を総合的に勘案し、下記1のとおり公益委員の見解を取りまとめたものである。目安小委員会としては、地方最低賃金審議会における円滑な審議に資するため、これを公益委員見解として地方最低賃金審議会に示すよう総会に報告することとした。また、地方最低賃金審議会の自主性発揮及び審議の際の留意点に関し、下記2のとおり示し、併せて総会に報告することとした。更に、中小企業・小規模事業者が継続的に賃上げしやすい環境整備の必要性については労使共通の認識であり、生産性向上の支援や官公需における対応を含めた取引条件の改善等に引き続き取り組むことを政府に対し強く要望する。また、行政機関が民間企業に業務委託を行っている場合に、年度途中の最低賃金額改定によって当該業務委託先における最低賃金の履行確保に支障が生じることがないよう、発注時における特段の配慮を要望する。
 以下は、公益委員見解と同様のため、省略します。以上です。

○藤村委員長
 ありがとうございました。今の内容を小委員会報告としてとりまとめようと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)
 
 それでは、審議会で私から報告することとしたいと思います。事務局から、次回の審議会の日程の連絡をお願いします。
 
○手計賃金課長補佐
 次回の中央最低賃金審議会は本日19時15分から、こちらの会議室(九段第3合同庁舎11階共用会議室2-1)で行います。
 
○藤村委員長
 皆様、よろしくお願いいたします。
 
○冨田委員
 一言、発言してよろしいでしょうか。
 
○藤村委員長
 どうぞ。
 
○冨田委員
 労働者側を代表して、一言お礼を申し上げたいと思います。これまでに経験のない環境、労使の意見の隔たりが例年以上に大変大きい中、目安の取りまとめに向けて最大限のご尽力いただいた公益委員の皆様に感謝申し上げます。また、使用者側委員におかれましては、最後まで真摯な協議を続けていただいたことに、感謝と敬意を表したいと思います。さらに、事務局の皆様のご苦労にも、感謝申し上げます。労側としては、公労使の三者構成を維持することに対する強い思いを今後とも大事にしていきたいと考えています。来年度の目安審議においても、これらを十分に踏まえ、目安の取りまとめに向けて最大限の取組を行ってまいりたいということを申し上げたいと思います。
 
○池田委員
 使用者側を代表して、一言申し上げます。今年度の結論につきましては、中小企業や地域経済の状況を御考慮の上、真摯な御議論の結果としてご提示いただいたと認識しています。来年度の審議に関しましては、新型コロナウイルスの影響により先行きが全く見通せない中、経済、雇用、中小企業の状況を含め様々な影響を踏まえて議論していくことが重要だと考えています。なお、今年度の結論を踏まえて、雇用の維持に関して、経済団体として今後も最大限の取組を行っていきたいと考えています。最後になりますが、公益委員の先生方、労働者側委員の皆様、事務局のご尽力に、感謝申し上げたいと思います。
 
○藤村委員長
 それでは、本日の小委員会はこれをもちまして終了といたします。議事録の署名につきましては、冨田委員と橋本委員にお願いします。
 本当に長時間の御審議、大変お疲れ様でした。ありがとうございました。