2020年7月15日 令和2年第3回目安に関する小委員会 議事録

日時

令和2年7月15日(水)13:00~16:00

場所

労働委員会会館講堂(7階)

出席者

公益代表委員
 藤村委員長、戎野委員、鹿住委員、中窪委員
労働者代表委員
 伊藤委員、小原委員、冨田委員、永井委員
使用者代表委員
 池田委員、佐久間委員、高原委員、橋本委員
事務局
 坂口労働基準局長、村山安全衛生部長、五百籏頭賃金課長、小城主任中央賃金指導官、
 水島副主任中央賃金指導官、手計賃金課長補佐、松本賃金課長補佐

議題

令和2年度地域別最低賃金額改定の目安について

議事

(第1回全体会議)
 
○藤村委員長
 ただ今から第3回目安に関する小委員会を開催いたします。
 まず、お手元の資料について、事務局から御説明をお願いします。
 
○手計賃金課長補佐
 本日は、お手元の資料の他に、各種団体の要望書の一部を回覧していますので、ご参照をお願いします。
 続きまして、資料についてご説明します。参考資料をご覧下さい。前回の目安小委で委員からご要望のありました資料になります。第2回の目安小委におきまして、「未来を拓くパートナーシップ構築推進会議」の資料について、ご要望がありました。2ページは会議の開催要領になります。会議の趣旨は、労務費等の価格転嫁に関し、下請中小企業振興法第3条に規定する振興基準の遵守等個社による自主行動宣言を通じ、発注側たる大企業と受注側たる中小企業の協議を促進するとともに、サプライチェーン全体の生産性向上等の取組を推進し、大企業と中小企業が共に成長できる持続可能な関係を構築する、こととされています。
 3ページは第1回会議の出席者一覧で、事務局が議事要旨を基に作成したものになりますが、労働界の代表と経済界の代表がメンバーとして出席しています。
 4ページ以降は、内閣府と中小企業庁が提出した資料になります。通し番号の5ページですが、新型コロナウイルス感染症下におけるパートナーシップの重要性ということで、感染症の影響を乗り越えるため、大企業とのパートナーシップの下、中小企業への取引条件のしわ寄せを防ぐとともに、事業継続に向け、テレワーク導入、サプライチェーン全体でのEDI化が必要、他方、大企業との連携による社会課題の解決や、地域コミュニティへの貢献など、中小企業の強みを活かした新たな動きも現れ始めている、感染症克服後に、日本経済を成長軌道に復帰させるとともに、地域社会を維持するためには、このような動きを後押ししていくことが必要、とされています。
 続いて通し番号の8ページをご覧下さい。製品等の価格への転嫁の状況ですが、中小企業の労働生産性は、実質労働生産性が上昇する中、価格転嫁力が低迷し伸び悩んでいて、リーマンショック時には、中小製造業の価格転嫁力が大きく低迷しています。
 次に9ページをご覧下さい。官公需における対応についてですが、毎年閣議決定する「国等の契約の基本方針」において、人件費相当額を適切に含んだ適切な予定価格の作成、年度途中に最低賃金額の改定があった場合の適正な価格での契約金額の見直し等を定めています。
 続きまして11ページをご覧下さい。「パートナーシップ構築宣言」の仕組みですが、取引先との新たなパートナーシップ構築を宣言し、サプライチェーン全体の共存共栄と新たな連携、振興基準の遵守、特に取引適正化の重点5分野(価格決定方法、型管理の適正化、現金払の原則の徹底、知財・ノウハウの保護、働き方改革に伴うしわ寄せ防止)に重点的に取り組むことを代表権のある者の名前で宣言するとされ、この宣言は、全国中小企業振興機関協会が運営するポータルサイトに掲載・公表されます。また、2020年度下期の取引価格交渉がまとまる本年8月に向け宣言の働きかけを行うとされています。振興基準に違反し主務大臣の指導・助言を受けた場合など宣言を履行していないと認められる場合には宣言のサイトへの掲載を取りやめることがあり得るとすることで宣言の実効性を担保、同時に宣言企業に対しては、企業向け支援策の優先採択、審査において加点することを検討するとされています。
 事務局からの資料の説明は、以上です。
 
○藤村委員長
 ただ今ご説明いただきました資料について、何かご質問等がありましたら、お願いします。
 
○冨田委員
 前回小委員会における労側委員の求めに応じて資料を提出いただいたことについて、まずは感謝申し上げたいと思います。
 その上で、この資料にある「パートナーシップ構築宣言」の仕組みは、先ほど事務方からご紹介いたただいたとおり、ここにおられる経営者団体の皆様方と議論したものです。加えて、この件につきましては、従来から私どもとして、サプライチェーン全体で生み出された付加価値の適正分配の必要性を訴えておりまして、その分配を実現するために一番必要なのが、まさに、中小企業の皆様方の価格転嫁力を引き上げていくことだと思っております。
 今日現在、このサイトに既に88件のパートナーシップ宣言の登録が確認されております。私どもとしても、構成組織や地方組織を通じて、この取組の重要性を労使の皆様と共有した上で、中小企業の経営力の強化と地域の活性化に向けて、しっかりと周知活動を充実させてまいりたいと思っております。そうしたことを含め、この場で、最低賃金の引上げにおける環境整備がそれぞれの労使の取組、経営者団体同士の取組の中で進んでいくこともこの場の中で確認させていただければと思います。どうも、ありがとうございました。
 
○橋本委員
 冨田委員からお話のあったパートナーシップですが、日商の調査等でも、中小企業の約7割がコスト増加分を価格転嫁できないという現状があります。この問題をいかに是正するかが非常に重要で、毎年の審議でも生産性の向上、とりわけ中小企業の生産性の向上が大事だということは、労側の皆様とも共通の認識だと理解しています。
 私どもとしても、宣言が効果的に展開されるように期待するところでありますし、我々も強く協力していきますが、大企業の場合、購買部門や経営トップの了解の下に宣言に至ることが必要であり、若干時間かかる、今後2~3年で本当に実効性が表れてくることを期待しています。この点については、労側の皆様と一緒に注視していきたいと考えています。
 
○藤村委員長
 他にございますでしょうか。よろしいですか。
 それでは、 前回の小委員会で、労使双方から今年度の目安について基本的な考え方が表明されました。前回の双方の主張を整理しましたので、最初に御確認いただきたいと思います。
 まず、労働者側委員の御意見です。エッセンシャルワーカーと呼ばれる労働者は最低賃金近傍で働く方も少なくない。緊急事態宣言下、感染の不安や恐怖と闘いながら働き続けた労働者に報いるべき。最低賃金の引上げは社会的要請である。政労使で賃上げの重要性を確認し、ステップを踏んで最低賃金を引上げてきた流れを止めるべきではない。この流れを断ち切れば、デフレ回帰を惹起しかねない。新型コロナウイルス感染症対策の予算措置はGDP押上げ効果があるとされている。最低賃金発効は早くても10月であり、現下の厳しさだけをもって目安の示し方を議論すべきではない。今後の日本経済の再生に向けて、内需拡大や落ち込んだ消費マインドの上昇が必要である。労働者が生活や雇用に不安を抱える中、最低賃金を引き上げることは、社会安定のセーフティネットを促進するメッセージとなり得る。最低賃金を改定しないことは社会不安を増大させ格差を是認することと同義であり、中賃の役割からしてあってはならない。春季生活闘争では、労使の真摯な交渉を経て賃上げが行われており、この流れを最低賃金の改定により労使関係のない労働者にも波及すべき。昨年度の目安答申の公益委員見解にあった通り、消費税増税等の物価変動の影響に関する審議を行うべき。また、新型コロナウイルス感染症拡大による労働者の生活への影響を踏まえた審議を行うべき。現在の最低賃金は最高額の1,013円でも2,000時間働いて年収200万円程度に過ぎない。また、日本の最低賃金は国際的にみても相当低位にとどまっている。最低賃金は十分なセーフティネット機能を果たし得る、ナショナルミニマムにふさわしい水準に引き上げるべき。今年中に800円以下の地域をなくすこと、トップランナーであるAランクが1,000円に到達する考えを堅持したい。地域間格差は、地方から隣県や都市部への労働力流出の一因である。加えて今回のコロナ禍は、大都市への労働力集中が経済の一極集中と感染リスク増大という弊害を明らかにした。ランク間格差縮小に向けた抜本的な対応をとるべき。中小・小規模事業者が賃上げしやすい環境の整備も必要である。以上が労働者側委員の御見解です。
 次に、使用者側委員の御意見です。コロナ禍によって、日本経済はこれまでに経験したことのない危機的な状況に直面している。緊急事態宣言や休業要請等は大規模な需要喪失と幅広い業種への影響をもたらし、宣言解除後も以前の状況に戻っていない。とりわけ、経営基盤が脆弱な地方の中小企業に甚大な影響を与え続けている。多くの企業が助成金等を活用した休業等を実施した結果、休業者は354万人超とリーマンショック時を2倍以上上回っている。加えて、雇用調整や解雇は今後も悪化する可能性がある。当面の間、感染症拡大防止と事業活動の両立を余儀なくされる中、今年度の力強い景気回復は期待できないとの見方が強い。地方の中小企業から最低賃金引下げを望む声が多く聞こえる中、今年度有額の目安を示すことは、事業継続と雇用維持のため、各種給付金を受けながらかろうじて持ちこたえている多くの中小企業をさらなる窮地に追い込むことになると懸念している。全国の中小企業から、最低賃金について、年ごとに高まる影響率を考慮し、中小企業の実態に基づいた納得感のある水準の決定を求める声が多く寄せられている。特に今年は、先行きの見えない深刻な経済情勢の中、引下げを求める声も強まっている。全世代型社会保障検討会議における「今は官民を挙げて雇用を守ることが最優先課題である」との総理の発言や、「中小企業・小規模事業者が置かれている厳しい状況を考慮し、検討を進める」との総理指示を重く受け止めて審議に臨むべき。近年の最低賃金は、政府の引上げ方針という時々の事情への配慮を求められ、中小企業の経営実態と乖離した状況が続いた結果、昨年度の影響率は過去最高の16.3%に達している。コロナ禍により日本はもちろん世界が「非常事態」にあることを認識するべき。中小企業の経営状況は極めて厳しく、新型コロナの影響だけでなく、働き方改革にも対応しなければならない中で、多くの企業は事業継続と雇用維持にぎりぎりの努力を続けている。「緊急事態」である今年度は、3要素のうち「通常の事業の支払能力」を最も重視して審議すべき。その観点で新型コロナによる中小企業の経営への影響を示すデータを十分に踏まえて検討すべき。今年度の目安は、事業継続と雇用維持を最優先とするメッセージを各地方最低賃金審議会に発信するため、リーマンショック後の目安と同等以上の配慮が必要であり、据え置き・凍結とすべき。以上が使用者側委員から出された御見解です。
 私から御紹介した、労使それぞれの御主張について、追加・補足意見があればお伺いしたいと思います。
 
○冨田委員
 労働者側委員の見解、基本的な考え方については、今ご説明いただいたとおりですが、1頁目の最後、最低賃金を改定しないことは社会不安を増大させ格差を是認することと同義であり、中賃の役割としてあってはならないとありますが、この中賃の役割について、労側の思いを補足の意見としてを述べさせていただきたいと思います。
 昭和53年に目安制度を導入した際の答申には、その目的として全国的な整合性の確保に資する見地から目安制度を導入したという記述がございます。たしかに現在はコロナ禍の収束や、今後への影響度合い、経済の再生がいつになるかなどが見通せないところですが、そうした中で中賃として目安を示さず、全てを地方の事情に委ねるということは、全国的な整合性を図るために指導性を発揮する中賃としての責任を放棄することに繋がると考えています。過去示さなかった時とは決して状況が同じではない中、目安を示さないのは、労側としてはあり得ないという考えを持っていることを補足させていただきます。
 
○藤村委員長
 過去の状況と同じではないとは、どういう意味でしょうか。
 
○冨田委員
 たとえば、使側の先生方が、前回の小委員会の際にも、今回の危機的状況は、リーマンショックを上回るものなので、リーマンショック以上の配慮を求めるといったようなご発言があったかと思います。この発言の趣旨は、おそらく、支払能力のところから来ていると思うのですが、支払能力の解釈についても現状と過去の状況は違うのではないかと思っています。
 そもそも、リーマンショックの時は、リーマンショックによって、特定の業種を含め、相当大きな影響があったわけですけれども、今の厳しさは、あくまでも政府の緊急事態宣言の下、一番苦しい数字が出ているところでありますので、そうしたことを総合的に勘案すると、そのことだけをもって、目安の審議をするべきではない、中賃の役割と責任から考えるとやはり中央が責任をもって目安を示していくべきだと考えておりますので、補足させていただきました。
 
○藤村委員長
 わかりました。使用者側は、どうでしょうか。
 
○池田委員
 使用者側の見解・主張は、目安を示さずということではなく、据え置き、凍結という目安を示すべきと言うことを、改めて申し上げたいと思います。その上で、前回の会議の終わりに、労働者側から使用者側の見解に労働者という言葉がないという発言がありましたので、その点について申し上げます。
 事業は、労働者の頑張りなくして継続できません。労働者の頑張りは認識しております。こうした認識は、使用者側の見解の前提であり、だからこそ、危機的な経済状況にあっても、労働者の雇用を維持することが最優先であると考えています。今年度は、特にそのための審議とするべきと訴えておりまして、労働者の雇用の維持のためにも、今年度の目安は据え置き、凍結とし、労使で懸命に努力をしていくべきと考えています。
 
○藤村委員長
 わかりました。
 この後は、公労・公使で個別に主張を伺いながら、開きを詰めていきたいと思いますが、よろしいですか。
 
(異議なし)
 
 それでは、本日は、公使会議から始めたいと思いますので、労働者側委員の皆様はいったん控え室でお待ちください。
 
(第2回全体会議)
 
○藤村委員長
 ただ今から、第2回目の全体会議を開催します。
 本日は本年度の目安の取りまとめに向けて、個別に意見を伺いながら、鋭意調整を進めさせていただきました。
 しかしながら、現時点では依然として双方の主張の隔たりが大きいことから、本日の取りまとめは断念し、次回に持ち越すことにしたいと思います。よろしいしょうか。
 
(異議なし)
 
○藤村委員長
 それでは、次回の日程と会場について、事務局から連絡をお願いします。
 
○手計賃金課長補佐
 次回の第4回目安に関する小委員会は、7月20日(月)15時30分から、中野サンプラザ15階エトワールルームで開催いたします。
 
○藤村委員長
 それでは、本日の小委員会はこれをもちまして終了といたします。
 議事録の署名につきましては、永井委員と池田委員にお願いします。皆様、どうもお疲れ様でした。