薬事・食品衛生審議会薬事分科会血液事業部会令和2年度第1回安全技術調査会議事録

日時

令和2年7月22日(水)10:00~12:00

開催形式

Web会議

出席者

 

出席委員:(10名)五十音順、敬称略



欠席委員:敬称略
 
  • 岡崎 仁



国立感染症研究所:敬称略
 
  • 松岡 佐保子



日本赤十字社:敬称略
     
  • 村井 利文
  • 佐竹 正博
  • 石丸 健
  • 後藤 直子
   


事務局:
 
  • 古元 重和  (血液対策課長)
  • 中村 梨絵子   (血液対策課長補佐)
  • 野寺 快明  (血液対策課長補佐)

 

議題

  1. 1.感染症安全対策体制整備事業について
  2. 2.NATコントロールサーベイ事業について
  3. 3.日本赤十字社のヘモビジランスについて
  4. 4.HEV NATスクリーニングの導入について
  5. 5.新型コロナウイルス感染症に係る安全対策について
  6. 6.その他

配布資料

資料ページをご参照ください。

議事

 
 
○野寺課長補佐 定刻となりましたので、血液事業部会令和2年度第1回安全技術調査会のWeb会議を開催いたします。本日の会議は公開で行いますが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきます。マスコミ関係者の方々におかれましては、ご理解とご協力をお願いいたします。本日はお忙しい中、ご参集いただき誠にありがとうございます。この度、新型コロナウイルスの感染拡大防止の観点からWebでの審議とさせていただいております。
本日のWeb会議における委員の出席についてです。岡崎委員よりご欠席とのご連絡をいただいております。本日は安全技術調査会委員11名中10名の出席をいただいていることを報告いたします。本日は参考人として、国立感染症研究所血液・安全性研究部第2室の松岡佐保子室長にご出席いただいております。また、日本赤十字社血液事業本部より、村井利文副本部長、佐竹正博中央血液研究所所長、石丸健技術部次長、後藤直子技術部安全管理課長にご出席いただいております。
続いて、全ての委員の皆様より、薬事分科会規程第11条に適合している旨をご申告いただいておりますので報告いたします。委員の皆様には、会議開催の都度、書面を提出いただいておりご負担をおかけしておりますが、引き続き、ご理解、ご協力を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。
議事に入る前に、会場にお越しいただいている委員の皆様におかれましては、本日の資料の確認をお願いいたします。タブレット上に、マル1議事次第から参考資料までのPDFファイルが表示されているかご確認をお願いいたします。ファイルが表示されていない場合や不足がある場合には、お近くの職員にお声かけください。タブレットの使用方法については、お手元のペーパーレス審議会タブレット操作説明書をご覧いただき、ご不明の点等がある場合は事務局までお声かけください。
この会場以外の場所から参加されている委員の先生方におかれましては、事前にメールでお送りした厚労省の資料の掲載ページから資料をご参照いただければと思います。参考資料については別途メールでお送りしておりますので、そちらをご参照ください。なお、参考資料については、企業の知的財産保護の観点等から、個別企業が特定できる情報及びデータの詳細等については、会議中にご発言されないよう宜しくお願い申し上げます。
また、本日のWeb会議に際して、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、説明者においてマスクを着用したまま説明させていただく場合がありますので、ご了承いただければと思います。間もなく議事に入りますので、カメラ撮影はここまでといたします。それでは、以降の進行を濵口座長にお願いいたします。
○濵口座長 皆さん、おはようございます。それでは、事務局から、審議の進行方法の説明をお願いします。
○野寺課長補佐 本日はWebでの審議のため、対面での進行と一部異なる部分がありますので、審議の進行方法について説明いたします。審議中にご意見、ご質問をされたい委員におかれましては、まず、ご自身のお名前と発言したい旨をご発言いただきますようお願いいたします。その後、座長から順に発言者をご指名いただきます。ご発言いただく際はマイクがミュートになっていないことをご確認の上、ご発言ください。また、ノイズを減らすため、ご発言が終わりましたらマイクをミュートにしていただきますようお願いいたします。
なお、発言者が多くなり音声のみでの判別が難しいほど混雑した際は、一度、皆様にご発言を控えていただき、発言したい委員についてはチャットにその旨のメッセージを記入していただくよう、事務局又は座長からお願いする場合があります。その場合には、記入されたメッセージに応じて座長より発言者をご指名いただきます。
○濵口座長 これまでの説明について、ご質問、ご意見等はございますか。それでは、議事に入ります。議題1「感染症安全対策体制整備事業について」事務局より説明をお願いします。
○野寺課長補佐 感染症安全対策整備事業は、新たな病原体が移入した場合などに備えて、血液対策課が国立感染症研究所に実施を依頼している事業です。令和元年度の実績の報告について、大隈委員よりお願いいたします。
○大隈委員 国立感染症研究所の大隈です。宜しくお願いいたします。本事業の昨年度の実績を報告いたします。資料1「感染症安全対策体制整備事業実績報告」をご覧ください。
まず、1.事業の目的です。我が国では、血液製剤の安全性確保のため、献血ドナーに対して様々な病原体に対する血清学的検査および核酸増幅検査が実施されております。しかし、近年世界各国で新興感染症の報告が後を絶ちません。本来は国内に存在しなかった病原体が輸入感染症として侵入するリスクがあり、献血血液への混入が危惧されております。
令和元年の年末には、中国の武漢で新型コロナウイルス感染症が報告され、短期間のうちに本邦を含め全世界に広がりました。これまでもジカ熱、デング熱、チクングニア熱、ウエストナイル熱、黄熱など、世界でアウトブレイクした新たな感染症についても、今後、日本に移入されることが想定されており、血液の安全性確保のために迅速かつ的確な対応が求められているところです。
そこで、平成25年度から新たな病原体の国内移入に備え、実効性の高い対策として、厚生労働省の血液対策課と日本赤十字社との連携のもと感染症リスク管理体制の整備を行って参りました。本事業では、国内に侵入して日本の献血血液への混入リスクのある病原体について、血中ウイルス量の低い無症候性感染者が献血する場合を想定して高感度核酸検査法を整備し、将来的な血液の安全性対策に資することを目的としております。昨年度は以下のことを実施して、新たなリスクの早期把握と評価を行いました。
2.実施内容です。(1)これまでに本事業で開発したチクングニアウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルスの3種類のウイルスを一度に検出できるマルチプレックス高感度核酸検出系の開発、(2)献血で検査落ちとなった血液検体におけるデングウイルス、チクングニアウイルス、ジカウイルス及び黄熱ウイルスの核酸検査の実施、(3)海外における血液安全に関する情報の収集及び交換を行いました。
まず、(1)のチクングニアウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルスの3ウイルス同時検出高感度核酸検査法の開発についてです。これまで本事業において、チクングニアウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルスの高感度核酸検査法を開発してきました。昨年度は、それぞれのウイルスに至適化したプライマー、プローブ配列を用いて、オリゴDNAの濃度や標識色素を至適化することにより、これらの3種類のウイルスを検出するマルチプレックスPCR法による高感度核酸検査法を開発いたしました。
1-1)国際標準品の核酸量の評価です。チクングニアウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルスの核酸検査用には国際標準品が制定されておりますが、それぞれの1国際単位(IU)が、およそ何コピーのウイルスRNA量に相当するかについては情報が公開されておりません。そこで、マルチプレックス核酸検出系を開発するに当たり、どの程度の核酸量に相当するのか検討いたしました。
それぞれのウイルスについて、増幅配列に対して人工ssRNAを合成して核酸量を決定し、定量PCRの標準品として用いて、各ウイルスの国際標準品希釈液を定量いたしました。その結果、チクングニアウイルス国際標準品の1IUは8.54コピー、ジカウイルス国際標準品の1IUは0.84コピー、黄熱ウイルス国際標準品の1IUは6436.4コピーに相当しました。
1-2)マルチプレックス核酸検出系の検出感度の評価です。各ウイルスの増幅配列に対して人工ssRNAを合成して核酸濃度を決定した後に希釈して、マルチプレックス核酸検出系とこれまでに各ウイルスに対して開発した核酸検出系(シングルプレックス)とで、各核酸量における検出率を8重測定法で比較しました。チクングニアウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルス全てにおいて、シングルプレックスとマルチプレックスの検出感度はほぼ同等で、1反応当たり5コピー以上の検出率はともに全て100%でした。
1-3)マルチプレックス核酸検出系の特異性の評価です。各種ウイルス核酸及びヒト末梢血由来DNA、ヒト血漿由来RNAについて、マルチプレックスの交差反応性について確認して、シングルプレックスで検出した場合とCt値を比較しました。これについては表1に結果をまとめてあります。
マルチプレックスはデングウイルスの4種の血清型(DENV-1~4)、日本脳炎ウイルス(JEV)、ウエストナイルウイルス(WNV)、ヒト末梢血由来DNA、ヒト血漿由来RNAとは非特異的な交差反応を示しませんでした。また、マルチプレックスは標的とする3種類のウイルスと特異的に反応し、シングルプレックスと同等のCt値を示しました。
(2)献血で検査落ちとなった血液検体におけるデングウイルス、チクングニアウイルス、ジカウイルス、及び黄熱ウイルス核酸検査の実施についてです。日本赤十字社のご協力のもと、令和元年度に関東圏内で収集された献血血液のうち、検査落ちした血漿の20人プール100検体(合計2,000人分)を得ました。これらの検体について、デングウイルス1~4型、チクングニアウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルスの核酸が検出されるか否かを検討しました。
デングウイルスは、これまでと同様に1~3型の血清型について同時に検出するマルチプレックス検出、及び4型を特異的に検出する検出系を組み合わせました。チクングニアウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルスについては、令和元年度開発したマルチプレックス核酸検出系で評価しました。陽性コントロールについては、先程の国際標準品等を用いました。陰性コントロールについては、健常人のプール血漿を用いました。その結果、全ての検体において、いずれのウイルス核酸も検出されず、陽性コントロールは全て陽性、陰性コントロールは全て陰性でした。この結果を表2にまとめております。
(3)海外における血液安全に関する情報の収集及び交換についてです。WHOの血液安全に関するカンファレンスに定期的に参加するとともに、各国の血液行政に携わるネットワーク会議(Blood Regulators Network)に加盟し活動することによって、感染症リスクの早期察知及び評価に基づく安全対策の検討を行いました。また、国立感染症研究所の病原体関連部署とも連携しており、情報の収集や交換を行いました。
3.考察と課題です。本事業によって蚊を媒介するデングウイルス、チクングニアウイルス、ジカウイルス、黄熱ウイルスを高感度に検出できるシングルプレックスとマルチプレックスの核酸増幅検査が用意されました。ウイルスを媒介する蚊の活動期に複数の国から本国を訪れる可能性がある場合など(東京オリンピックなど)は、複数の蚊媒介性のウイルスが健常献血ドナーの血液に混入するリスクが否定できず、リスクモニタリングをシングルプレックスとするかマルチプレックスとするかは状況に応じて選択できる体制を整えることができ、広く日本のドナー血液の安全性の確保に貢献できると思われます。
また、これらの核酸検査系を用いて、検査落ちとなった献血血液において各ウイルスのスクリーニングを実施しました。その結果、検査した2,000人分の血液において、デングウイルス、チクングニアウイルス、ジカウイルス及び黄熱ウイルスは全て陰性でした。これらのウイルスの国内でのアウトブレイクは起こっておりませんが、実際に献血された血液を用いてモニタリングを実施して陰性を確認するとともに、偽陽性などの不具合が発生しないことを確認して、これを毎年継続できていることには意義があると考えております。
これらの病原体が国内に移入した際に、血液の安全性確保の緊急対策法として有用な手法の1つであることが示唆されました。昨年末より、新たなリスクとして新型コロナウイルス感染症が報告されておりますので、今後は、このウイルスのRNAの高感度検出法についても整備する必要があると考えております。
4.結論です。本事業では、血液を介して感染し得る病原体に関する情報を継続して収集し、日本にリスクのある病原体については、高感度核酸検査法を開発してモニタリングを継続しており、我が国への感染症リスクの早期察知およびアウトブレイクに備えた体制整備に貢献していると考えております。今後も血液に混入しうる新たなウイルス感染症などについて常に注視・情報収集し、血液の安全性確保のために適宜対応していくことが必要と考えております。
5.令和2年度実施予定内容です。(1)新型コロナウイルスに対する高感度核酸検査法の開発、(2)検査落ちとなった献血血液検体や臨床血液検体を用いた核酸検査の実施、(3)海外における血液安全に関する情報の収集及び交換を実施したいと考えております。説明は以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまのご説明について、ご意見やご質問がございましたら、委員の先生方からお願いしたいと思います。本日はWebでの参加もございますので、発言のある先生は、マイクを入れてご自身のお名前を言ってからご発言ください。宜しくお願いいたします。いかがでしょうか。
○朝比奈委員 医科歯科大学の朝比奈です。
○濵口座長 どうぞ、お願いいたします。
○朝比奈委員 高感度の方法を開発されたということで、非常に宜しいかと思います。現在の新型コロナもそうですが、どのように流行が変化していくのか読めず、時々刻々と変化する面があると思います。蚊を媒介とするウイルス感染症のスクリーニングをどのような状況になったら実際に開始するかなど、何か具体的なスキームはございますか。
○大隈委員 ご質問ありがとうございます。具体的なスキームは、まだしっかり確定しておりません。この方法については、日本赤十字社とも情報を共有させていただいており、体制を整備することが大事かと考えております。まず、これらの体制を十分準備して、今後、感染症の動向を見ながら、こういう検査法を実際に実施していくことを検討していく必要があるかと考えております。
○朝比奈委員 ありがとうございました。
○濵口座長 他に何かございますか。宜しいでしょうか。それでは、大隈委員、ありがとうございました。
○岡田座長代理 宜しいでしょうか。
○濵口座長 どうぞ。
○岡田座長代理 岡田です。日赤の検査落ちの検体を使って実際の検査をやったということですが、やるのであれば、例えば、蚊の活動が活発になる9月、10月の東京で採血された血液、あとは成田の空港の近くで9月、10月に採血された血液を使うと、もし、そういう所でローカルな感染が起こっていれば検出しやすいと思います。実際にやるのならば、全国からの血液ではなくてある特定の地域、知らないうちに感染が起こっているような率が比較的高い地方の血液を使って、なおかつ、蚊の活動が活発な時期の血液を使ってやった方が、モニタリングとしては有効かと思います。
○大隈委員 ご質問ありがとうございます。先生のおっしゃるとおりだと思います。日本赤十字社からいただいた血液については、夏以降に集められた献血血液と聞いており、恐らく、秋口の分も含まれていると考えております。いただいている血液は、基本的に関東圏内で得られたものと聞いておりますので、そういう地域は含んでいると思いますが、更に、その中で特にここということは聞いておりません。今後、もし必要であれば、日本赤十字社に相談して検討していきたいと思います。
○濵口座長 宜しいでしょうか。ありがとうございました。それでは、ただいまのご意見も参考にしていただき、引き続き、今年度の事業の実施をお願いしたいと思います。
それでは、議題2「NATコントロールサーベイ事業について」に移ります。事務局より、説明をお願いします。
○野寺課長補佐 NATコントロールサーベイ事業は、NATの精度管理の実情を把握するために、血液対策課が国立感染症研究所に実施を依頼している事業です。令和元年度の実績の報告について、松岡参考人より宜しくお願いいたします。
○濵口座長 コネクションがうまくいっていないようなので、議題3に移りたいと思います。「日本赤十字社のヘモビジランスについて」というところで、日本赤十字社より資料のご説明をお願いしたいと思います。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 日赤の後藤です。資料3をご覧ください。日赤で行っているヘモビジランスについて、昨年の結果を中心にお話いたします。
次のページをご覧ください。本日は、医療機関から報告いただいた輸血感染症のまとめ、続いて輸血副作用のまとめをお話いたします。
次のページをお願いします。輸血後に感染が疑われ、医療機関からご報告いただいた症例数の推移を、病原体別に示しました。個別NAT導入後の年間報告数は100例以下が続いており、特にHBV感染疑いの事例の減少がはっきりしてきました。
次をお願いします。輸血による感染が特定された事例の推移を、報告年ごとに示しました。2014年に個別NATを導入するまではHBVの特定例が多く、個別NAT導入後はHEVと細菌感染事例がメインとなっております。
次をお願いします。輸血によるHBV・HCV及びHIV感染が特定された症例について、原因血液の採血年と安全対策の導入状況とともにお示ししました。HCV・HIVについては、プールNATの時代でも発生数はかなり少なく抑えられていましたが、HBVは年に10件ほどの発生がありました。2014年に個別NATを導入して以降は、HBVも年に1例以下の発生となっております。
次をお願いします。この中で感染数の多いHBVの原因献血者について、検査システムごとの感染状況をお示ししました。一番左の20プールNATのときには、HBc抗体陽性である感染既往の献血者が半分以上でしたが、真ん中のHBc抗体判定基準を厳格化した後は感染既往の血液がなくなり、個別NAT導入後は新規感染の個別NAT陰性の血液による感染事例のみとなりました。
次をお願いします。2019年の解析結果をお示しします。報告件数はBが8例、Cが24例、細菌感染疑いが25例、CMV疑いが7例、HEV疑いが7例、パルボウイルスB19が3例、そしてHAV・HGV・EBVがそれぞれ1例の合計77例で、輸血による感染が特定されたのは細菌感染の2例、HEVの5例、パルボの2例、HGVの1例の合計10例でした。
次をお願いします。遡及調査はガイドラインにもあるように、大きく分けて医療機関発と供血者発の2種類があります。例えば医療機関発の場合のHBVであれば、輸血された患者に陽転が認められたということで報告をいただきます。輸血した血液はスクリーニングで個別NAT陰性なので、保管検体を用いたNATは実施しませんが、この血液が個別NATウインドウ・ピリオドに採血されたものかどうかは分かりません。そこでウインドウ・ピリオドを超えた時期の次回献血、又は事後検査の結果を確認し、これが陰性であれば当該の血液がNATウインドウ・ピリオドでなかったということが確認できます。右側の遡及調査の場合は、複数回献血者の陽転情報を基に調査を行います。ウインドウ・ピリオドを基に定めた遡及調査期間内の献血血液について、受血者の感染状況を調査しています。
次をお願いします。次回献血又は事後検査依頼による献血者の追跡状況を示しました。症例の調査が終わったときに献血者の次回献血のないものについては、献血者に事後検査依頼を行います。また、依頼に応じていただけなかった場合もその後の献血があるかどうかについて、定期的に調査をしています。これらの方々が追跡対象に該当します。追跡対象の献血者の9割以上について、その後の検査又は献血でウイルスが陰性であるということが確認されていることが分かりました。昨年度の後半は、判明している実績が低いのですけれども、新型コロナの影響などもあり、未確認の事例が多いと推測されました。
次をお願いします。輸血によるHEVの感染症です。昨年は5例の特定例があり、累計は39例となりました。
次をお願いします。症例の内訳は、医療機関からの自発報告から判明したものが3例で、原因血液については赤血球、洗浄赤血球、血小板、FFPと多岐にわたり、ジェノタイプはいずれも3でした。感染症の転帰は、幸い全て軽快又は回復となっておりました。自発報告の症例は輸血後に肝機能障害が認められ、Bでもない、CでもないということでHEVの調査をすることが多く、これにより報告が上がってきます。したがってALTの最高値は比較的高いのですが、遡及調査で判明したものについては肝機能障害が認められず、日赤から情報提供して改めて確認されたような事例も例年あります。
次をお願いします。今まで報告された輸血後HEV感染症39例を、自発報告と遡及調査の事例に分けて示しました。重篤化が懸念されるジェノタイプ4は3例ありました。また、死亡例は2例ありましたが、遡及調査由来の死亡例の1例はE型肝炎は直接の死因ではなく、自発報告の方の死亡例1例も、E型肝炎を含めた複合的な要因による死亡とされております。
次をお願いします。輸血による細菌感染についてです。初流血除去や保存前白血球除去の安全対策を導入後、血小板製剤による細菌感染は合計19例となりました。原因となった細菌の内訳は右に示したとおり、レンサ球菌、ブドウ球菌、大腸菌がトップ3になっておりました。
次をお願いします。昨年の2症例を示しました。原因となった細菌はどちらも黄色ブドウ球菌で、原因となった製剤は採血4日目の血小板製剤と、院内調製の洗浄血小板でした。どちらも滴下不良を起こし、2例目は輸血セットを差し替えて輸血完了したとのことです。いずれの症例も抗生剤投与などにより、回復又は軽快されております。
次をお願いします。細菌感染の1例目の事例の経過をご紹介します。採血4日目の血小板を輸血開始したところ、開始5分で滴下不良、製剤に白色沈澱物を認めて輸血を中止し、血液センターに苦情品として連絡がありました。日赤で細菌培養試験を実施したところ、細菌が検出されたため、医療機関に受血者の状況を調査しました。すると、輸血翌日の深夜に発熱を認め、抗生剤投与で改善したということが分かりました。患者の血液培養及び血小板から黄色ブドウ球菌が検出され、献血者の面談時に採取させてもらった鼻腔のスワブからも黄色ブドウ球菌が検出され、これらに差異を認めなかったことから、献血血液による細菌感染であろうということが特定されました。
次のスライドは、輸血感染症のまとめです。今までお話したことのまとめとなりますので、説明は省かせていただきます。
次をお願いします。輸血の副作用についてお話いたします。輸血による副作用・感染症が認められ、日赤にご報告いただいた事例は、昨年は副作用が2,400例ほど、感染症が77症例でした。
次をお願いします。非溶血性の副作用の内訳は、軽微なアレルギーが46%ぐらいということで半分弱、次いで重症アレルギー、発熱、TRALIやTACOを含む呼吸困難、血圧低下と続いております。
次をお願いします。PMDAの報告対象となる重篤症例と非重篤の症例に分けると、全体の約3分の1が重篤症例で、内訳は重症アレルギーや呼吸困難がメインであり、残りの3分の2は軽微なアレルギーや発熱などの副作用が占めておりました。
次をお願いします。製剤別の副作用では血小板と赤血球による副作用が多く、次にFFPとなっていました。下のグラフで示しましたが、赤血球はアレルギーの他に、発熱と呼吸困難の割合が高くなっていました。血漿が多い製剤であるPCとFFPについては、圧倒的にアレルギーの割合が高くなっております。次に、TRALIとTACOの症例の評価結果を示しました。TRALIが疑われ、TRALIの評価を行った症例が133例あり、このうちTRALIと評価されたものが3例、possible-TRALIとなったものが1例と、評価した件数の2.7%のみでした。TRALIではないとされた症例のうち、100例は心原性肺水腫と考えられ、TACOが疑われた17症例とともにTACOの評価を行ったところ、TACOと評価されたものが57例、その他ボリュームオーバーロードの事例が60例となっておりました。
次をお願いします。2004年以降のTRALIとTACOの評価状況のグラフです。ここ10年はTACOと心原性肺水腫のボリュームオーバーロードとなった事例が、とても目立つようになってきました。2019年にTRALI、TACOともに新しい評価基準が提唱されており、日赤もこれらの新しい基準への来年1月の移行に向け、現在検討を進めているところです。
次をお願いします。今まで報告されたTRALI症例375例のうち、製剤から抗白血球抗体が検出された150例についてまとめました。原因製剤は赤血球が最も多く、FFP、血小板と続いております。抗白血球抗体陽性となった献血者の内訳を、左側の棒グラフに示しました。30代以降の女性がほとんどで、下に示した献血者全体の男女年代別割合と比較すると、30代以降の女性が多いという特徴がよく分かるかと思います。男性献血者で抗体を持っている方も、3分の1程度認められますが、抗体を産生するようになった理由等については、まだ不明です。
次をお願いします。TACOの事例の患者の内訳と、原因製剤を示しました。原因製剤は半分以上が赤血球製剤で、患者は女性がやや多いです。左のグラフが患者の年代・性別分布で、右の全ての輸血を受ける患者の年代・性別とほとんど同じカーブであるため、年齢だけがTACOのリスクファクターではないということが推測されました。
次をお願いします。最後に、輸血の副作用のまとめです。即時型と遅発型を合わせて33件の報告があり、被疑薬とされたのはほとんどが赤血球製剤でした。主に重篤例の患者血液の不規則抗体などの検査を行ったところ、11例で示した抗体が検出されておりました。
最後にまとめのスライドを示しておりますが、こちらも今までのまとめなので、読み上げは割愛させていただきます。以上となります。
○濵口座長 ありがとうございました。だだいまの日本赤十字社からのヘモビジランスのご説明について、委員の先生方からご意見やご質問を受けたいと思います。いかがでしょうか。内田委員、どうぞ。
○内田委員 国立医薬品食品衛生研究所の内田です。6ページの「病原体別解析結果」で教えていただきたいのです。パルボウイルスB19が2件ということですけれども、この濃度は分かっているのでしょうか。FDAでは、10の4乗コピー/mL以下は問題ないということで出されているかと思うのです。それよりも低いものだったのかどうかが分かっているかということです。
それからHGVを調べているというのが、かなり特殊なケースかと思うのです。これはどのような症状でというか、どのような形で分かったものなのか、そちらで把握されているようでしたら教えていただきたいと思いました。宜しくお願いします。
○濵口座長 ご回答をお願いします。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 申し訳ありません。音が途切れ途切れで、質問の内容がよく聞き取れなかったのです。もう一度お願いできますか。
○内田委員 1つは、パルボウイルスB19が2件特定されていると思うのです。この濃度がどれぐらいか、コピー数がどれぐらいだったのかということが確認されているかどうかということです。聞こえましたか。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 パルボウイルスの製剤中の濃度については、測定はしているのですけれども、すみません、今は手元に資料がないのです。以前、運営委員会でご質問があったときにもお答えしたと思いますが、非常に低い濃度であったということは記憶しております。
○内田委員 FDAでは10の4乗コピー/mL以下であれば、使用しても問題ないということだったと思うのです。それよりも低かったのか、それよりは高かったのか、そこら辺のところだったということでしょうか。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 それよりは低かったということです。
○内田委員 もう1点は、HGVについてです。HGVをこのような形で調べるのは、かなり珍しいかと思ったのです。どのような形でこちらの病原体が特定されてきたのかということ、どのような症状でHGVを調べることになったのか。肝炎の症状でHBVやHCV、HEVではなくて更にHGVを調べたという、そういう経過はお分かりでしょうか。
○濵口座長 後藤さん、聞こえますか。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 明確には聞こえなかったのですけれども、HGVの件かと思います。この症例は、文献検索の中から輸血で感染した事例が報告されているものがあり、これを基に血液センターの方から報告された医療機関に調査を行い、そして保管検体の検査を行って検出されたということで報告したものです。
○濵口座長 宜しいでしょうか。他にいかがでしょうか。
○熊川委員 福岡大学病院の熊川です。質問を宜しいでしょうか。TRALIとTACOの評価について、基礎的なことですが、教えてください。TACOと心原性肺水腫の分け方について、改めて教えてください。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 TRALIとTACOの評価の手順について、日赤では日赤独自のTACOの評価基準を用いております。適切に輸血が行われてもTACOが起きるのかというのを検討するために、元々、心原性肺水腫が起きやすい、ボリュームオーバーロードが起きやすい状態である心不全のある方や腎不全のある方を除外した形で、TACOの評価を行っております。ですから、このグラフでTACOと評価された方は、心不全等の元々の疾患がないにも関わらず、輸血によってオーバーロードが起きた事例です。心原性肺水腫とされているのは、本当に心原性肺水腫の所見があった事例と、元々心不全等があってボリュームオーバーロードになりやすい方の事例の両方を含んでいます。
○濵口座長 宜しいでしょうか。
○熊川委員 はい、ありがとうございます。そこで一言、コメントを続けて構いませんか。20枚目の資料ではTRALIということで報告が上がっていて、実際的にはTACOの症例が多かったということですが、これは当院でも、9年前に経験したのです。心不全というのは、どうしても心収縮力の低下と受けとめてしまうので、心エコーでその所見がないので、鬱血があるからTRALIではないかということで日本赤十字社に副作用報告を出したら、結果的にTACOだったという調査結果をいただいています。昨今は拡張性心不全というのがよくコメントされていますので、そういう状況でTACOが起こりやすいということについて、特に高血圧症に罹患している高齢者ではあり得るということをコメントさせていただきました。
○濵口座長 他にいかがですか。では岡田委員、どうぞ。
○岡田座長代理 血小板による細菌感染の報告が2例あるのですけれども、どちらも輸血の落ちが悪いというのが共通しているのです。例えば日本赤十字社として医療機関の方に、血小板製剤の落ちが悪かったら細菌感染の可能性があるから、使用を中止するような通知等は出す予定なのでしょうか。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 細菌感染については情報媒体等を用いて、定期的にお知らせしていく必要があると考えておりますので、今後検討させていただきたいと思います。
○岡田座長代理 この2症例に関してスワーリングは、医療機関の方は確認していたのですか。
○日本赤十字社技術部後藤安全管理課長 輸血の前には、必ず外観やスワーリングが確認されているというようにご報告をいただいております。
○濵口座長 ありがとうございました。日本赤十字社においては引き続き血液安全監視の一環として、情報収集をお願いしたいと思います。
それでは次の議題4「HEV NATスクリーニングの導入について」に移りたいと思います。日本赤十字社より、資料のご説明をお願いします。
○日本赤十字社技術部石丸次長 日本赤十字社技術部の石丸の方から資料4に沿って説明をいたします。輸血用血液製剤のHEV安全対策についてはHEV NAT全数検査に向けた技術開発として平成30年度からHBV,HCV,HIVに加え、HEVも同時に検出する試薬、以下、4価NAT試薬としますが、その開発を試薬メーカーと取り組んできたところであり、その進捗状況については、令和元年第1回安全技術調査会において、報告させていただいたところです。
今般、ここの4価NAT試薬の評価試験が終了しまして、現行NAT試薬と同等な性能を有し、かつ、HEVを高感度に検出できることが確認できましたことから、4価NAT試薬を用いたHEV NATの全数検査を開始することとしましたので報告いたします。
それでは、まず4価NAT試薬を用いたNATシステムを簡単に紹介させていただきます。現行のNATシステムはHBV DNA,HCV RNA,HIV RNAのいずれかが陽性であれば検出することができるマルチプレックス試薬を使用しています。4価NAT試薬はこのマルチプレックス試薬にHEV RNA検出用のプライマー・プローブを追加して開発したもので、一度の検査でHBV,HCV,HIVとは別にHEVを検出することができます。そのロジックは図1に示しております。
また、抽出・増幅・検出を全自動で行う既存の検査機器をそのまま使用することができ、検体量や検査所要時間も現行とほぼ同じであるため、検査体制を大幅に変更することなく、導入することが可能です。
次に、4価NAT試薬の評価試験について報告させていただきます。先に結果を申し上げますと、評価試験として分析感度試験、特異性試験、再現性試験、重感染陽性検体反応性試験及び並行試験の5つの試験を行った結果、4価NAT試薬は、現行試薬と同等な性能を有し、かつ、HEVを高感度に検出できるということが確認できました。それでは、個々の検査について結果を報告させていただきます。
2ページ目をお願いします。(1)分析感度試験になります。WHOの国際標準品を用いて算出した95%検出限界を表1に示します。いずれの項目も現行NAT試薬と同等の検出感度でありまして、NATガイドラインにも適合した結果となりました。
(2)特異性試験に使用した陽性パネル163本の内訳を表2に示します。これらの全てのパネルは全例検出することが可能でした。
(3)再現性試験です。同時再現性試験及び日差再現性試験として、分析感度試験で使用したパネルの8重測定を3日間行ったところ、全て陽性と判定されました。また試薬ロット間の再現性試験として分析感度試験及び特異性試験の結果を2ロット間で比較したところ、同等の結果が得られました。
3ページ目をお願いします。(4)重感染陽性検体反応性試験です。重感染陽性検体は、例えばHBVとHCVであれば、表3に示した濃度になるように各々のウイルスをスパイクして、高濃度・低濃度という組み合わせ、低濃度・高濃度、それと低濃度・低濃度という3検体を調製しています。そして、他のウイルスの組み合わせにおいても、合計18検体を調製しまして、いずれの検体においても高濃度、又は低濃度でスパイクしたウイルスの検出が可能でありました。
最後、(5)並行試験です。本試験は関東甲信越ブロック血液センターの検体1万5,213本を用いて、4価NAT試薬と現行NAT試薬で並行して測定を行いました。結果を表4に示しますが、HBV,HCV,HIVは現行NAT試薬と99.928%の一致率を示しました。HEVの陽性率は0.184%でした。以上、評価試験の結果より、4価NAT試薬は現行NAT試薬と同等な性能を有し、かつ、HEVを高感度に検出できることが確認できましたので、4価NAT試薬を用いたHEV NATの全数検査を令和2年8月5日採血の検体から実施することといたします。なお、HEV NAT実施済みの輸血用血液製剤については、製造工程の違いにより順次供給を開始いたします。また、新鮮凍結血漿(FFP)及びFFPを使用して製造する合成血については、貯留保管6か月後の来年2月以降から順次供給する予定です。以上となります。
○濵口座長 はい、ありがとうございました。ただいまのご説明について私の方から少しコメントをしたいと思います。先程、安全対策整備事業の中で話がありましたWHO関連の血液行政の会議の中でHEVに対しては世界的に対策が進められようとしています。国によって、かなり温度差はありますが、今回、日本がこういった形で更に先を進むような形でのスクリーニングができるようになるというのは、ある意味で他の国々にとっても非常に有用な情報だと思いますので、これがスタートしたところで、私の方からも情報提供したいと思っております。コメントは以上です。他に何か委員の先生方から何かこれについて、ご意見、コメントがございましたらお願いします。
○白阪委員 3ページ目の並行試験で今、解釈についてもお話があったのですが、4価NAT試薬で陽性本数が12、現行NAT試薬で7と、この乖離についてはちょっと判別が、濃度のせいかというご説明もあったのですが、内訳についてはそれ以上調べておられますでしょうか。例えば、B,C,Iどれが陽性であったとか、あるいは12本と7本とその内訳については調べておられますでしょうか。
○濵口座長 ご回答ください。
○日本赤十字社技術部石丸次長 この陽性本数の内訳ですが、4価NAT試薬と現行NAT試薬、両方とも陽性になったのが4本です。この4本の内訳は、HEVが3本、HBVが1本になります。その他の片方の試薬だけ陽性になったものについては、この資料に書いてあるとおり、低濃度か、非特異か見分けられないほどの、恐らく検査がもうこれ以上できないような検体でしたので、ウイルスの特定はできておりません。
○白阪委員 ありがとうございました。このことは今後もこれ以上解析は難しいのでしょうか。今後もこういうことが起こると、大きな問題なのか、それともこれは非特異的なものとして考えれば良いのか、その辺のご見解を伺いたいと思います。
○日本赤十字社技術部石丸次長 現状におきましては、今回現行試薬も4価NAT試薬も、現時点で最高に感度の高い検査法ということになります。ですので、やるとしても複数回測定といった方法ぐらいしかありませんので、現時点ではこれ以上、解析を続けるのは難しい状況です。
○白阪委員 了解いたしました。ありがとうございます。
○濵口座長 はい、他にいかがでしょうか。
○長村委員 東大医科研の長村です。既存のPCR機器でできるようになったということで、非常に素晴らしいことなのですが、1点だけ確認します。現在、抽出・増幅・検出を全自動で行う機械を使っておられるということで、この抽出・増幅・検出というのは一見良いようで、元のRNA cDNAというのが途中で再検できない、そこからも一回振り返ることができないと考えて宜しいでしょうか。もし、おかしいなと思って再検する場合には、本当の元の血漿とか血液に戻るということで宜しいですか。
○日本赤十字社技術部石丸次長 はい、そのようなご理解で問題ありません。
○長村委員 了解しました。
○濵口座長 ありがとうございました。他はいかがでしょうか。それでは、岡田先生。
○岡田座長代理 この並行試験でE型肝炎が28本見つかって、これ実はすごい曝露数で、大体500から600本に1件ぐらい、このEのRNAが検出されたということなのですが、それで恐らくこれから遡及の対象者が出てくるのですが、その中で、新鮮凍結血漿に関しては、6か月間の貯留保管があるので、来年2月からということなのですが、今、ここにもう6か月分のFFPがあるのであれば、その6か月間の間にまた検査をやってしまって、もう陰性のものを供給するようにしたらどうでしょうか。というのは、これだけ件数が多いと、貯留保管中のFFPの中にも、恐らくかなりの量のHEV陽性の血漿が入っていると思います。それで、実際入っているのが分かっているのに出すというのは倫理的に問題もあるし、あと、技術的に測定できない、例えばセグメントが短かすぎて、この感度が出せないとか、何か事情があるのであれば、別ですが、この検出頻度から考えると、やはり今は貯留保管をしているもの、FFPに関しても速やかに検査をやって、それで陰性のものを供給するということが必要ではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 日本赤十字社の佐竹です。おっしゃることはよく理解できます。こちらとしての問題はそれをやるワークロードと言いますか、そこはやはり非常に大きいかと思います。当然凍結されていますので、それを全部引き出してきて、それをもう1回PCRをかけると。1日数千本のFFPが出荷されていますので、それをもう1回PCRをかけるということは大きな問題になろうかと思います。それがどこまですることが可能かどうかということは、ちょっとこれから検討させていただきたいと思います。
○岡田座長代理 分かりました。
○濵口座長 宜しいでしょうか。ご検討をお願いしたいと思います。他はいかがでしょうか。ないようでしたら、引き続きこのNATスクリーニング導入についての対応を進めていただきますように、日赤にはお願いしたいと思います。それでは議題の2については接続がうまくいきませんでしたので飛ばしておりましたが、ここで一度議題の2に戻りたいと思います。「NATコントロールサーベイ事業」について、松岡参考人からお願いします。
○松岡参考人 松岡です。聞こえていますでしょうか。
○濵口座長 はい、クリアです。
○松岡参考人 宜しくお願いします。NATコントロールサーベイ事業の2019年度の実績を報告いたします。資料をご覧ください。1.事業の目的ですが、最近のNAT技術の進歩は目覚ましく、我が国においても2013年から2014年に血漿分画製剤の原料プールと輸血用血液のNATスクリーニングの試験法が、それぞれ新しいマルチプレックス法に更新されました。それを踏まえて、2014年、NATガイドラインの改正が行われ、輸血用血液スクリーニングへの個別NAT導入に伴う、NATに必要とされる検出限界値の改正が行われました。以降、2016年度に新しいマルチプレックス法を用いたHBV NATの検出感度と特異性の実情把握を目的として、WHOのHBVジェノタイプ国際参照パネルを用いた第8回NATコントロールサーベイを、2017年と2018年度にはHIV-1 NATの検出感度と特異性の実情把握を目的として、WHO HIV-1サブタイプ国際参照パネルを用いた第9回NATコントロールサーベイを実施いたしました。
2019年は、新しいマルチプレックス法を用いたHCV NATの検出感度と特異性の実情把握を目的として、HCVサブタイプ国際参照パネルを用いた第10回NATコントロールサーベイを、輸血用血液のNATスクリーニング試験及びHCV確認試験、並びに血漿分画製剤の原料血漿プールのNAT試験を対象として実施いたしました。
2.実施内容ですが、1)の参加施設は表1にまとめました。輸血用血液製剤のNAT実施施設8施設と国内外の血漿分画製剤製造所等の5施設、オブザーバーとして、試薬メーカー1施設、研究施設1施設が参加いたしました。
2)パネルの調製です。HCV NATの検出感度や特異性の評価のためのHCVジェノタイプ国際参照パネルは、現在、WHOにて未だ制定されていないため、国内献血を用いてHCVジェノタイプ国内参照パネル候補品を国立感染症研究所にて作製し、多施設共同研究を実施し、候補品のリストを国際標準品に基づいて制定し、昨年度の部会で承認をされました。表2にありますように、材料としまして、この新規に制定したHCVジェノタイプの国内参照パネル、HCV-RNA国内標準品、市販のHCVジェノタイプ血漿パネルを用いて評価用のパネルを作製いたしました。陽性検体の希釈には国内献血由来の陰性血漿を用いました。原料血漿プール及び輸血用血液のHCV NATで必要とされる検出限界値の3倍濃度に当たる300IU/mLに検体を希釈調整しました。計15検体をブラインド化したパネルを参加者に送付いたしました。
3)測定です。(1)輸血用血液製剤のNAT実施施設と研究施設はProcleix Ultrio Elite ABD Assayを用いて測定しています。この試験法は個別検体のスクリーニング試験と、スクリーニング陽性検体のウイルスを識別するための識別試験とからなっています。参加施設はスクリーニング試験とHCV識別試験の両方の試験法を用いて検体ナンバー01~15について日を変えて2回測定いたしました。
(2)血漿分画製剤の原料血漿プールNAT実施施設と試薬メーカーは、コバスTaqScreen MPX v2.0を用いて測定いたしました。この試験法はHBV、HCV、HIV-1の3ウイルスを検出すると同時に種類を同定します。参加施設は、同様に検体ナンバー01~15について日を変えて2回測定いたしました。
4)結果です。表3をご覧ください。(1)輸血用血液製剤のNATについては、日本赤十字社ブロック血液センター全8施設において、改正後のNATガイドラインに基づいて実施しているNAT試験は、スクリーニング試験法とHCV確認試験法の両方においてHCVに関する精度管理が適切に実施されていました。全施設においてHCV genotype 1a,1b,2a,2a/c,2b,3,4,5,6のHCVを検出できることを確認いたしました。陰性対照は全て陰性と判定されました。
表4をご覧ください。(2)血漿分画製剤の原料血漿プールNATについてです。血漿分画製剤の原料血漿プールNAT実施施設全5施設において、改正後のNATガイドラインに基づいて実施しているNAT試験は、HCVに関する精度管理が適切に実施されておりました。全施設においてHCV genotype 1a,1b,2a,2a/c,2b,3,4,5,6のHCVを検出できることを確認いたしました。陰性対照は全て陰性と判定されました。
(3)研究施設及び試薬メーカーにおけるNAT、こちらについても同様に全てのgenotypeのHCVを検出できることを確認いたしました。陰性対照は全て陰性と判定されました。
3.考察です。2019年度に実施したHCVジェノタイプ国内参照パネルを用いた第10回NATコントロールサーベイにて、輸血用血液のNATスクリーニング試験とHCV確認試験、血漿分画製剤の原料血漿プールのNAT試験において、国内献血由来HCV陽性検体(1b,2a,2b)を検出できることを確認いたしました。また、市販のパネルを用いて作製したHCV陽性検体(1a,1b,2a/c,2b,3,4,5,6)も、問題なく検出できることも確認いたしました。陰性対照は全て陰性と判定されました。試験対象施設全13施設において、HCV NAT試験に関する精度管理が適切に実施されていることを確認いたしました。
4.2020年度の実施計画です。表5をご覧ください。HIV-1はサブタイプ間の組換え体が存在し、ある地域における流行に重要な役割を果たしている組換型流行株(CRFs)が複数報告されております。2020年度はWHO HIV-1 CRF国際参照パネルがありますので、こちらを用いてHIV-1の新しいマルチプレックス法におけるHIV NATの検出感度と特異性の実情把握を目的とした、第11回NATコントロールサーベイの実施を計画しております。
5.輸血用血液のNATスクリーニングの試験法の変更についてです。先程、お話がありましたように、試験法が2020年8月よりHEVの検出を加えたクワドロプレックス法に更新される予定でありますので、2021年度は、輸血用血液のNATスクリーニング実施施設を対象に、新しい試験法におけるウイルスNATの検出感度と特異性の実情把握を目的としたNATコントロールサーベイの実施を計画しております。以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまの説明につきましてご意見、コメントがございましたら、委員の先生方からお願いいたします。いかがでしょうか。宜しいでしょうか。
○白阪委員 大阪の白阪ですが、宜しいでしょうか。
○濵口座長 白阪先生、宜しくお願いします。
○白阪委員 これは確認ですが、表1で近畿大学ブロック血液センターとなっているのは近畿大学でしょうか。
○松岡参考人 そちらは私の誤記で訂正した資料を提出させていただきましたが、近畿ブロック血液センターの間違いです。修正します。すみません。
○白阪委員 ありがとうございます。それから、2020年度のHIV-1のコントロールサーベイの実施ですが、引き続き宜しくお願いしたいと思います。ありがとうございます。以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。他、いかがでしょうか。宜しいですか。それでは、ただいまのご意見を参考に、引き続き今年度の事業の実施をお願いしたいと思います。それでは、もう一度議題に戻りまして、議題5「新型コロナウイルス感染症に係る安全対策について」に移りたいと思います。まず、資料5-1、1.製剤の安全性について、(1)輸血用血液製剤の安全性について、事務局よりご説明をお願いいたします。
○中村課長補佐 血液対策課の中村と申します。宜しくお願いいたします。まず、重ねてのお願いとなり大変恐縮ですが、参考資料として共有しております資料につきましては、企業の知的財産保護の観点等から、個別企業が特定できる情報及びデータの詳細等については会議中、ご発言されないように宜しくお願いいたします。また、こちらの参考資料につきまして特段のコメント等がございましたら、後日、事務局にご一報いただければと思います。宜しくお願いいたします。資料のご説明に移らせていただきます。
資料5-1、1.の(1)ですが、今般、新型コロナウイルス感染症の国内発生に伴い、新型コロナウイルス感染症に係る血液製剤の安全性等の現状について、どうなのかということです。採血事業者及び製造事業者等においても、個別に安全対策等をとられていると思いますけれども、今般、省内の研究事業におきまして、本調査会の座長も務めていただいております濵口先生の研究班において、こちらの安全対策等に関する検討をいただきましたので、こちらの検討に基づきまして、今回の対応についてということで現状等をお示ししています。
現状ですが、輸血用血液製剤の安全性について、今、新型コロナウイルス感染症(又は感染疑い)と診断された方からの献血は受け入れておらず、献血後に感染と診断された方については遡及調査等を行っています。また、新型コロナウイルスに係るスクリーニング検査等は行われていないという状況です。
○野寺課長補佐 聞き取れませんと佐竹先生からメッセージが来ています。
○中村課長補佐 声量の問題でしょうか。
○野寺課長補佐 音声が。
○中村課長補佐 今は聞こえますか。
○日本赤十字社佐竹中央血液研究所所長 聞こえます。
○中村課長補佐 宜しいでしょうか。現状をもう一度ご説明します。現状ですが、新型コロナウイルス感染症(又は感染疑い)と診断された方からの献血は受け入れておらず、献血後に感染と診断された方については遡及調査等を行っております。また、新型コロナウイルスに係るスクリーニング検査等は行われていないという状況です。下に四角で研究班の検討結果(概要)とお示ししていますが、検討いただきまして、安全性の確保の観点から現時点での対応は科学的に妥当と考えられるということです。そして、今後の対応の案としまして、引き続き情報収集に努め、新たな知見を踏まえ必要な対応を行うということでお示ししています。以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。それでは、研究班の方から説明をお願いしたいと思います。大隈委員、お願いします。
○大隈委員 宜しくお願いいたします。これにつきましては資料5-2をご覧ください。血液製剤の新型コロナウイルスに関するウイルス安全性についてということで、本研究班におきまして現状を検討しました結果、以下の見解で一致しましたのでご報告したいと思います。
「輸血用血液製剤の安全性について」という所ですが、1ポツ目で、「血流感染で感染するリスク」について、新型コロナウイルス感染者におきましては、血中にウイルスが存在するケースはそれほど多くはありません。また、ウイルス血症(RNAaemia)になっているケースは重症の患者に多く見られておりまして、SARSに比較してウイルス濃度は高くないとの報告がございます。
こうした状況のもと、WHOのガイドラインがございまして、それに基づき、リスクとベネフィットのバランスを考慮に入れた対応が求められております。
このガイドラインにおきましては、マル1製剤の安全性、マル2採血所での献血者や採血事業従事者の安全性、マル1及びマル2を踏まえたマル3安定供給の備えについて対応が述べられています。
マル1製剤の安全性についての日赤の対応としましては、これまでの類似ウイルスについての血液安全性に関する経験上の事象と、中国での献血者から得られた血液での核酸検査の結果(陽性率、コピー数)などから、直ちに安全性に対する踏み込んだ対処をする状況にはないとしています。
これに対し、研究班では、現時点での日赤の対応は科学的に妥当であると考えますけれども、輸血に関する新型コロナウイルスの情報は少ないので情報収集に努め、新しい知見が得られた場合に対応できるようにすることが重要であると考えております。
研究班からのコメントですが、現時点での日赤の対応は安全性確保の観点から妥当と考えます。ただし、今後、新型コロナウイルスに関する血液を介する感染及びそれに基づく健康被害のリスクが増大した場合には、核酸検査や病原体不活化法の導入等の積極的な対処を考慮すべきと考えます。
マル2の採血所の安全対策についての日赤の対応としましては、献血会場におけるウイルス感染予防対策の実施を行っておられます。本研究班からのコメントとしては、献血会場が感染クラスターの場にならないように、引き続き十分に対処を行うべきと考えます。
マル3の安定供給の備えについての日赤の対応としましては、供給量では、コロナ感染拡大の状況下では医療機関での不急な手術等の延期等により、日赤の予定供給量の92~93%で推移しているとのことです。緊急事態宣言解除後の現在では102%程度であり、今後、もし国内で一定程度、感染が広がっても、供給は理論上可能とされています。
WHOのガイドラインでは、血液の供給不足を懸念し、COVID-19回復者からの献血を一定期間経過後に再エントリーを可能としております。研究班からのコメントとしましては、供給体制が堅持できている現状では、COVID-19回復者からの献血を至急考慮すべき状況ではないと考えます。しかしながら、可能性の問題として、供給が厳しい状況が発生した場合においては、COVID-19回復者からの献血を可能とする条件を考えておくべきと考えております。これにつきましては以上です。
○濵口座長 ありがとうございます。引き続き、日本赤十字社の方から取組についてご説明をお願いします。
○日本赤十字社 血液事業本部の村井でございます。資料5-3-1を用いましてご説明申し上げます。今の関連事項といたしまして、12ページ目をご覧いただきながらご説明させていただきたいと思いますのでご準備の方をお願いいたします。新型コロナウイルス感染拡大時における需給状況について(推測)です。1の感染者数規模による献血者数への影響(推測)ですが、2018年度のデータで国内の総人口は約1億2,500万人、献血者数は延べ人数で470万人ですから、総人口における献血率は3.8%ということになります。
この献血率を踏まえまして、国内の感染者規模が2万人から1,000万人まで拡大したとき、献血協力の減少数の影響を推測した表となります。それぞれの感染規模数に3.8%を乗じて算出しています。上から現下の2万人程度の感染者数であれば756人となり、一番下のカラムにございます1,000万人であれば37万8,000人ほどの影響であろうと推測しています。
一方、2にございます感染拡大による輸血用血液製剤の供給量への影響ですが、今年の2月から6月の供給状況を血液製剤別に供給予定数、供給実績数、減少率を示した表です。特に緊急事態宣言が発出された4月7日から5月25日の間は、日本外科学会や日本輸血細胞治療学会等から、不急な手術の延期などを要請する通知が発出されたこともございまして、太枠で囲んだ4月、5月の輸血用血液製剤の需要は、通常の予定数から2か月平均で7.6%程度減少しているところです。これを献血者数に換算しますと、楕円で囲った約36万人分に相当し、先程、ご説明申し上げました1,000万人の感染者数規模の献血者数、減少数の38万人とお概ね同数です。このことから、感染拡大による献血者の減少と供給量の減少はほぼ相殺されるということになりますので、万一、1,000万人まで感染者数が増加したといたしましても、必要な血液量の確保は可能であると推測しているところです。
仮に推測どおりに相殺されない場合であっても、減少となる分の献血血液を新型コロナウイルス回復者の方の確保に頼るよりは、献血にご協力をいただいていない残り90数%の圧倒的多数の方に献血のご協力を頂くことが、より現実的であるというふうに考えているところです。
今、研究班からのお話にもありましたように、回復者の方の再燃や再再燃の事例が散見される中で、リエントリーを拙速に進めた場合、献血会場での安全性が脅かされることやクラスターとなった場合、そうでなくても献血会場は危険である等の風評が全国的に広がり、献血者確保に相当なダメージを受けるということを危惧しています。血液の確保や安定供給に支障を来すことが懸念され、こちらの影響の方が大きいと思われますので、私どもといたしましては、リエントリーについては慎重を期すべきであると考えているところです。以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまの研究班及び日本赤十字社からの報告につきまして、委員の先生方からのコメント、ご質問があればお受けしたいと思います。いかがでしょうか。
○荒戸委員 北大の荒戸です。
○濵口座長 お願いします、荒戸先生。
○荒戸委員 輸血用血液製剤の安全性について、研究班の検討結果の4ポツ目ですが、「日赤はこれまでの類似ウイルスについての血液安全性に関する経験上の事象、中国での献血者から得られた血液での核散検査の結果などから」と言っていますけれども、これの具体的な内容を教えていただけますか。
○大隈委員 ご質問、ありがとうございます。研究班の方からお答えいたします。これまでの類似ウイルスについての血液安全性に関する経験上の事象、ということにつきましては、日本ではありませんけれども、これまでSARSウイルス等がアウトブレイクした際に経験されていまして、その際には、一応、そのSARSの感染者の方からの献血をご遠慮いただくことになっているかと思います。
それから、中国での献血者から得られた血液での核酸検査の結果につきましては、陽性率は非常に低くて、確か4,000人ぐらいを調べて4人ほどです。非常に低い陽性率が認められております。コピー数につきましても、これまでに報告があるものとしては、確か10の2乗台です。100何十といった非常に低いコピー数が認められていて、SARSとかのコピー数に比べると、かなり低いコピー数になっているという結果が得られています。これで宜しいでしょうか。
○荒戸委員 ありがとうございました。
○濵口座長 確か武漢で行われたNATスクリーニングのトータルの数は、4,000でなくて7,500弱だったかなと記憶していますが、いずれにしてもそのうちの4名ということで説明いただいています。他、いかがでしょうか。宜しいですか。それでは、続いて資料5-1、1.(2)の血漿分画製剤の安全性について事務局よりご説明をお願いします。
○中村課長補佐 事務局です。(2)の血漿分画製剤の安全性についてですが、現状といたしまして、国内で流通している血漿分画製剤については、現在、製剤の製造過程においてウイルス低減化の対応が十分に行われているということで、今後の対応(案)としましては、引き続きウイルス低減化の対応により、安全性を確保するということでお示ししています。
以上です。
○濵口座長 ありがとうございます。それでは、研究班の方からの報告を、大隈委員、お願いします。
○大隈委員 ご説明いたします。血漿分画製剤の安全性につきましては、新型コロナウイルスはエンベロープを持つ直径約100nmのRNAウイルスであります。分画製剤の各製造所においては、ウイルス安全性を担保するために適切なモデルウイルスの設定がなされておりまして、製剤の製造工程においてウイルスの低減化の対応が十分に図られていることを確認いたしました。
なお、諸外国におきましては、新型コロナウイルス既感染者からの献血を一定の条件下で許可していますけれども、海外で得られた血漿を元に製造された血液製剤のうち、国内で流通しているものは血漿分画製剤のみです。以上です。
○濵口座長 ありがとうございます。ここでご意見をお伺いしたいのですが、その前に、今の中で個別企業での特定のデータについてのディスカッションが実はあったのです。ここについては会議中、ご発言に少しご留意いただいてお願いしたいと思います。いかがでしょうか。委員の先生方からコメント、ご意見をお願いしたいと思います。宜しいですか。
○長村委員 東大医科研の長村です。
○濵口座長 長村先生、どうぞ。
○長村委員 1つ質問です。武漢からのviremiaは非常にきつかったということで、もしデータがあれば教えていただきたいのですが、実際に本当にコロナに罹っている人のウイルス量、血中のウイルス量というのは何かデータがあるのでしょうか。全てどのぐらい高くて回復期どのぐらいとか、そういう文献でも良いのですが、できれば日本のデータがあれば教えてください。実際の患者さんのウイルス血症、PCR、そういうデータがもしあればです。
○濵口座長 様々、データはあるかと思いますが、研究班の中では、一応、患者さんの中から出てきたコピー数の中で一番高いと言われている、170コピー/mLという数字を最大の日本人のリスクと考えて、これを基にクリアランスの測定を行っています。
○長村委員 ありがとうございます。結構、上がるということですね。感染がひどい場合、viremiaが確実にある。着実に上がるということですか。
○濱口座長 はい。
○大隈委員 ウイルス血症におきましては、新型コロナウイルス感染症の方、皆様に見られるわけではなくて、特に重症の方に多く見られます。中国武漢献血者でのウイルス血症のコピー数は低いものですけれども、患者さんにおきましては重症であれば10の4乗ぐらいのコピー数は見られますので、かなり違うものとは考えます。
○長村委員 ありがとうございます。
○濵口座長 他は、いかがでしょうか。
○熊川委員 福岡大学病院の熊川です。
○濵口座長 どうぞ。
○熊川委員 先程、今後の供給体制についての予測の所で、今後も陽性者が増えた場合であっても、ちょうど緊急事態宣言のときのように外科等の手術を控えられる状況などで必要量が減れば、何とか供給が追い付くのではないかと考えていらっしゃったので、将来的にも、ある程度日常の医療が控えられるということが織り込み済みと受けとめても、宜しいでしょうか。
○濵口座長 これは、日本赤十字社の方からご回答をお願いします。
○日本赤十字社村井副本部長経営企画部長 血液事業本部の村井でございます。私どもとしましては、やはり供給が漸減するであろうと考えております。緊急事態宣言が解除された後も、当初計画より99%程度の供給にとどまっていることから、多少なりとも供給が減っていくだろうと考えているところです。
○熊川委員 ちょうど当院の状況ですが、続けて宜しいでしょうか。
○濵口座長 どうぞ。
○熊川委員 心臓血管外科が大血管手術をしておりますので、一度の手術で数十人分の血液を使う手術をしていますが、5月に入ってからは供給が厳しいということで、大きな手術を控えていただいたという状況がございます。今後もそういう状況になると厳しいと思う場合もありますし、コロナで高血圧の患者さんが受診を控えていらした間に、急に大動脈解離を起こして緊急入院し、緊急手術をするということもありましたから、控えられない部分の使用ということもございます。一度に何十人分の血液を使うという状況になりますと非常に厳しい供給の状況がありますので、そういうこともあり得るということ。あと、ECMOを使う患者さんもいらっしゃるのですが、ECMOでは体外循環をしますから輸血が必要な方もいらっしゃいます。全身状態が悪くなると血液凝固障害を併発しECMOの方でも1か月、2か月続けると輸血依存となる方もいらっしゃいますので、一部、厳しい輸血を必要とする患者さんがいらっしゃるということも、ご理解いただきたいと思います。以上です。
○濵口座長 宜しいでしょうか。他、いかがですか。他に意見はございませんか。それでは、資料5-1の2.新型コロナウイルス既感染者の献血制限について、事務局よりご説明をお願いします。
○中村課長補佐 事務局です。2.新型コロナウイルス既感染者の献血制限について、資料5-1です。現状といたしましては、新型コロナウイルス感染(または感染疑い)と診断された方からの献血は受け入れていないという状況で、献血血液を確保するために、ホームページやラブラッド等を通じた献血協力の依頼を行っているということです。この内容等について研究班からも検討いただいているところですが、今後の対応(案)としましては、再燃及び再々燃の事例の感染性に関する詳しい情報を収集し、供給量の状況も考慮した上で、既感染者の献血制限について検討する。検討に当たっては、献血者の安全性を確保する観点を考慮し、併せて、献血従事者の安全性確保の観点も考慮する。また、引き続き献血協力の依頼を行うなど、献血推進に取り組むということでお示ししています。以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。少し先程の議論と被るかもしれませんが、日本赤十字社から再度ご意見をいただきたいと思います。
○日本赤十字社村井副本部長経営企画部長 先程、申し述べさせていただいたとおりですけれども、さらにお話をさせていただくと、基本的に新型コロナウイルス感染者が増えるということで、献血者数が減少して献血協力数が減るということよりも、企業の在宅勤務やテレワーク等の巣ごもり、時差出勤、大学の休校、キャンパスへの立入制限、多くの人が集まるイベントの中止等の感染防止対策による影響で、予定していた献血会場の中止による献血協力数の減少が非常に大きいところです。
我々としましては、今後も献血会場の安全対策を維持・継続した上で、より一層、行政、献血協力団体、報道機関等の協力を得まして、コロナ禍であっても献血は必要であるという情報を発信し続けて、国民の理解と協力を得るということが重要であると考えているところです。以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。それでは、これにつきましても研究班からの報告をお願いします。
○大隈委員 ご説明いたします。資料5-2の2ページ目の下の方をご覧ください。新型コロナウイルス既感染者の献血制限につきまして、全国の輸血用血液製剤の安全性について、マル3の安定供給の備えについての日赤の対応は、現状のCOVID-19回復者の献血制限の解除の必要性はないとの立場ではありますが、研究班として献血制限の解除の必要性について検討いたしました。
WHOや海外の基準では、COVID-19診断後、回復してPCR咽頭スワブで陰性が2回確認されたか、症状が完全に回復して28日以降とされているものが多いですけれども、28日以降に症状が再燃して咽頭スワブで陽転する事例が国内で散見されることから、上記の基準はこれらのデータを踏まえると安全とは言えないと思います。
研究班からのコメントとしましては、COVID-19回復者の再エントリーの条件は、今後、再燃及び再再燃の事例の感染性に関する詳しい解析結果が出てから、供給量の状況と照らし合わせて検討すべきと考えます。特に献血血液の安全性のみならず、献血における献血従事者や他の献血者の安全性を確保する観点からの考慮も必要と考えています。説明は以上です。
○濵口座長 ありがとうございました。ただいまのご説明につきまして、コメント、ご意見がございましたらお願いします。宜しいでしょうか。ありがとうございました。当面、今後の対応としては事務局の案で宜しいかと思っております。その時点での安全対策が妥当であったかについては、今後、定期的に検証する必要があると考えており、研究班において情報収集に努めるとともに、新しい知見が得られた場合、きちんと対応できるよう、最低でも、今後、年に2回程度の検証の機会を設ける予定にしております。事務局においても引き続きご対応をお願いしたいと思います。
最後に、議題6、その他ですが、事務局から何かございますか。
○野寺課長補佐 特にはございません。
○濵口座長 ありがとうございました。本日の議題は以上となります。他に委員の先生方からご意見がございましたらお願いしたいと思います。それでは、事務局に議事進行を戻したいと思います。
○野寺課長補佐 濵口座長、ありがとうございました。次回の安全技術調査会の日程は別途ご連絡を差し上げます。これにて血液事業部会令和2年度第1回安全技術調査会を終了いたします。ありがとうございました。
 
(了)