令和2年度第1回化学物質のリスク評価検討会(発がん性評価ワーキンググループ)議事録

厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課化学物質評価室

日時

令和2年6月11日(木)13:30~15:36

場所

中央労働委員会会館 612会議室

議題

  1. 中期発がん性試験の候補物質の選定について
  2. 遺伝子改変動物を用いた発がん性試験結果の評価等について
    1. 4- (1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノール 【経ロ】
    2.   p53KOマウス      
    3.   rasH2マウス
    4. 二酸化窒素 【吸入】
    5.   p53KOマウス      
    6.   rasH2マウス
  3. その他

議事

 

○神田有害性調査機関査察官 それでは、定刻となりまして、皆様おそろいのようでございますので、始めさせていただきたいと思います。
 本日は大変お忙しい中、令和2年度第1回発がん性評価ワーキンググループに御参集いただきまして、誠にありがとうございます。 私、本日、座長の先生に進行をお渡しするまで司会を務めさせていただきます、有害性調査機関査察官の神田と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
 まずは、委員の皆様の出席状況でございますが、全員御出席いただいております。また、本日は、日本バイオアッセイ研究センターの方々にも御出席いただいております。
 なお、本日の会議は、新型コロナウイルス感染症の状況に鑑みまして、一般の傍聴者の方なしということで開催させていただいております。なお、取材の記者の方も1名いらっしゃるというふうに伺っているのですけれども、まだ到着されていないようでございます。
まず、本年4月に事務局のほうに異動がございましたので、御紹介させていただきたいと思います。
 4月1日付で化学物質対策課長に木口が着任しておりますので、一言御挨拶申し上げます。
○木口化学物質対策課長 先生方、大変お忙しい中、また、コロナの対応がまだ続いている中、お集まりいただきまして、大変ありがとうございます。4月1日付で化学物質対策課長を拝命いたしました木口でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 新しい化学物質がどんどん出てきて新たな健康障害の可能性が懸念されるという中、いかにそういうスピードに立ち遅れないような形で労働者を守る対策が打てるかという面でこのリスク評価の検討委員会には大変重要な役割を果たしていただいていると思っております。ひとえに先生方の御協力のたまものでございます。大変ありがとうございます。
 今日もいろいろと新しい課題などもあるようでございますけれども、できるだけ施策に生かしていけるような方向で議論を進めていただければ、大変ありがたく思います。
 どうぞ本日もよろしくお願いいたします。
○神田有害性調査機関査察官 また、改めまして、私、4月1日から有害性調査機関査察官を拝命いたしまして、リスク評価を担当することになりました神田と申しますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、以後の議事進行を座長の平林先生にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○平林座長 平林でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
まず、事務局から資料確認をお願いいたします。
○神田有害性調査機関査察官 資料ですが、本日も、ペーパーレス開催ということで、お手元のタブレットのほうに全部収納させていただいております。下のボタンを押していただきまして、資料が出ている画面を出していただければと思います。
 
○若林委員 すみません。出ていないですね。
○神田有害性調査機関査察官 下の丸いボタンをちょっと押していただければ閲覧できます。
○若林委員 もう1回押す。分かりました。失礼しました。
○神田有害性調査機関査察官 次に、このファイルを開けていただければ、中身を見ていただけるようになっております。一番上に、タブレットのみに収納ということで2019年第3回発がんワーキングの資料、こちらは3月に持ち回り開催という形でさせていただいた分の資料を念のために入れております。その下に参考資料を入れさせていただいております。参考資料を押していただきまして開けていただきますと、参考1から参考8まであると思います。こちら、参考1が開催要領や参加者名簿、参考2がリスク評価の実施状況、参考3-1から5がスクリーニングされて行う発がん性試験に関する各種の基準などを入れております。参考4-1と4-2ありますけれども、こちらは遺伝子改変動物を用いた発がん性試験に関する決まり事とかになります。参考5から8までが、今回、議論をいただきます遺伝子改変動物を用いました発がん性試験の予備試験として実施していただいた4週間毒性試験の報告書になってございます。
 戻っていただきまして、資料のほうの確認でございますけども、議事次第プラス参考資料一覧というものがありまして、その後に、資料が全部で6まであります。資料1から3のものが、中期発がん性試験の候補物質の一覧、資料2から資料5まで、こちらが遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の実施報告書ということになります。資料は枝番がついていますけれども、枝番の6がそれぞれの試験結果の概要ということになっております。資料6としまして、遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の結果の評価の基準 (案)ということで、事務局としてのたたき台のようなものをつけております。
 以上が資料になりますので、大丈夫でしょうか。
 よろしければ、資料は以上でございます。
○平林座長 ありがとうございました。それでは、本日の議題に入りたいと思います。
まず、中期発がん性試験の候補物質の選定について検討を行っていただきたいと思います。事務局から説明をお願いします。
○神田有害性調査機関査察官 では、資料1-1から1-3のほうでございます。こちらは、紙でも配らせていただいております。ちょっと大きめの紙、A3の用紙で配らせていただいております。皆様、御案内のとおり、厚生労働省では、化学物質の発がん性スクリーニングということで、ラット肝中期発がん性試験を実施しているところでございます。その対象物質の選定に当たっては、この発がん性評価ワーキングでお願いしているところでございます。
 本来であれば、リスク評価に係る企画検討会のほうで絞込みを行っていただいた上で、こちらの発がん性ワーキングで決定という手順ではありますが、申し訳ございません、スケジュールの都合上、企画検討会よりもこちらの発がん性ワーキングが先の開催となりましたので、今回は、先にこちらのほうで検討していただいて、後から企画検討会で確認をいただくという形を取らせていただきたいと思っております。
 今見ていただきました資料1-1から1-3まででございます。資料1-1、こちらが、中期発がん性の試験の対象とする物質の一覧でございます。その対象物質は、遺伝毒性のワーキンググループなどで遺伝毒性が認められた物質などを対象としております。それを一覧にしたものがこちらになっています。
 1-1でございますけども。物質名のところに色をつけております。ピンクで着色したものが国の委託事業で実施した形質転換試験の結果、遺伝毒性評価ワーキングのほうで陽性と評価された物質になります。緑で着色している物質が、変異原性試験の結果で陽性の物質でありますとか、あるいは、既存の遺伝毒性等の情報を踏まえて、遺伝毒性評価ワーキングにおいて強い遺伝毒性ありと評価された物質でございます。
 最後のほうに少しついているのですけれども、水色で着色しているものが遺伝毒性評価ワーキングでの検討開始する前から強い変異毒性の物質であるとして、行政指導の対象としていたものということになります。
 資料1-2ですが、今の1-1の中から製造量の多いものを抽出していったものになります。先ほどのリストから製造量や輸入量のデータがないものや公表されていないもの、また、1,000t未満のものを除外しまして、多いものから並べてみたというものでございます。
 1-2を見ていただきますと、ラット肝中期発がん性試験 (伊東法)という欄があります。これに○、×、△をつけております。この欄の中で○をつけてある物質、これは、8つありますけれども、これを事前に検討した事務局案として、この中から6物質を今年度の中期発がん性試験を対象物質として選んでいただけたらというふうに考えているところです。
 ○、△、×をどうやってつけたかと言いますと、あらかじめ、バイオアッセイ研究センターにお願いして試験の可否について検討していただきました。その結果、分析可能と判断できるのが○ということになります。△のものが、これは、すぐには分析の可否が判断できない、例えば試験の実施には分析方法の確立が必要など、そういった理由があってすぐには判断できないものが△、これも8つあります。試薬の入手や分析が非常に困難で試験の実施が困難であると判断されるものについては×をつけていただいております。なお、ここのセルで灰色に着色しているもの、こちらは、昨年度の検討対象になっていた物質で、昨年の検討の中で×と判断されたものなどになります。
 それと、もう一つ、資料1-3ということで、バイオアッセイ研究センターの検討結果を詳細に示したものを添付しておりますので、必要に応じて御覧になっていただければというふうに思います。
 資料の説明は以上でございます。
○平林座長 ありがとうございました。
○内田化学物質評価室長 すみません。補足でちょっと御説明をさせていただきたいと思います。全体の構図等に関して、別途ペーパーで、こういう発がん性スクリーニングのフローという資料をお配りさせていただいていますかと思いますけれども、ございますでしょうか。
 皆様には、御案内のところかと思いますけれども、平成25年からこういう形でスクリーニングということで取り組ませていただいております。今回、お決めいただくのは真ん中にございます肝中期発がん性試験 (ラット6週)と書いてある伊東法のものを6物質選んでいただくという形になってございます。
 先ほど、ピンクとか緑とか、いろいろございましたけれども、判断ができない物質ということで3つありますけれども、そのうちの一番左の遺伝毒性がある物質ということで、既に、例えば新規化学物質については、届出をする際に変異原性試験というものを実施していただいておりまして、そこで強い変異原性があるということで指導対象になっているもの、これが青でございます。
 それから、変異原性試験を通じて、その結果、変異原性が認められたというものが緑、それから一番右が形質転換試験を経由してやってくるものがピンクという流れになってございます。
 それで、実は、中期発がん性試験については、3月にも持ち回りで評価いただきまして、全て陰性という形になりましたけれども、実は、これまで38物質やってございます。その中では、陽性となったものが一つのみということで、具体的には、参考資料の参考2というところ、すみません、失礼しました。参考資料3-2に中期発がん性試験の実施状況ということで、これまでの試験結果というのを掲げてございますけれども、全体38物質のうち、陽性となったものが一つという状況でございます。これにつきましては、2月に遺伝毒性ワーキングを開いたときにもいろいろと議論が少しございまして、この陽性になったものも形質転換試験からではなくて、変異原性試験を通じてやってきたものということで、形質転換からやってきたもので陽性となったものはないといったような状況もございまして、形質転換試験が有効に機能しているのかとか、そういった議論が少しあったところでございます。
 これらにつきまして、もう少しちょっといろいろ検証というか、どこかのタイミングで御検討いただいて、いろいろと必要に応じて見直しなりをしていかなければいけないというふうに思っておりますけれども、大変申し訳ございませんけど、今年度のものにつきましては、従来どおりの形で、もともとの資料2にございますリストの中から全体として、すみません、資料1-2でございますけれども、この中で○がついているのが8つございますけれども、基本的には、この中から6つを選んでいただくという形なのかなというふうに思っております。
 ただ、1点、申し訳ございません、上から2つ目、ベンジリジン=トリクロリドにつきましては、一番右の備考に書いてございますけども、IARCで2Aがついているという状況でございますので、基本的には、発がん性評価を受けているということで、○にはしておりますけれども、対象にはならないかというふうに思っているところでございますけれども、そういったことも含めて御検討をお願いできればというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○平林座長 ありがとうございました。それでは、日本バイオアッセイ研究センターから補足があれば御説明いただきたいと思います。
○バイオアッセイ/加納氏 今説明いただいたことで特に追加はございませんが、個別の物質で、もし議論の中で御質問があれば、それについて対応したいと思います。
○平林座長 ありがとうございました。それでは、中期発がん性試験候補物質について御意見をいただきたいと思います。
 事務局からの御提案では、この資料1-2の中の○のついている8物質ということでしたが、一番上のものについては、既にIARCの評価が出ているため対象外になるということです。従って7物質が候補に挙がっていて、そこから6選ぶというようなことかと思いますが、いかがでしょうか。
○小川委員 すみません。質問してもよろしいですか。
○平林座長 はい、小川先生。
○小川委員 ちょっと自分が不勉強で申し訳ないのですけど、形質転換試験というのは、どの試験、Bhas42を使われている試験でイニシエーション、あるいは、プロモーションに主眼を置いた試験だったのか、確認させていただけますか。
○内田化学物質評価室長 Bhas42Bhas42ですかね、を用いた試験という形になります。
○平林座長 いいですか。
 津田先生。
○津田委員 いや、今のはよく分からなかったのですけれども、を用いた試験というのは、何を用いた試験。
神田有害性調査機関査察官 Bhas42Bhas42。
○津田委員 すみません。何を用いた試験なの。
○内田化学物質評価室長 ちょっとお待ちください。すみません、申し訳ございません。
○小川委員 Bhas42はBhas42、二つあって。今調べていただいているので。
○若林委員 食薬センターでやっているんですよ。
○平林座長 若林先生、お願いします。
○若林委員 多分、食薬センターでやっている形質転換試験だと思うのですけど、違いますか。
○小川委員 でも、資料1-1にバイオアッセイさんの名前があるので、もし、そこでわかりますか。
○平林座長 そちらでやっていらっしゃる。
○小川委員 食薬さんとバイオアッセイと、ボゾさんで。
○内田化学物質評価室長 すみません。Bhas42Bhas42細胞を用いる形質転換試験ということになります。
○小川委員 そのうちの、イニシエーションを主眼に置いたものと、プロモーションを主眼に置いたものと、そういう言葉を使うのが適切かどうか分かりませんが。
○西川委員 多分、プロモーションに重きを置いた試験。
○小川委員 プロモーションに主眼を置いた方法ですね。遺伝毒性なしの品目を検索対象にしているので、多分、そういうことかなとは思ったのですけれども。その形質転換試験で陽性だったものについてラット肝中期発がん性試験を実施したということですね。分かりました。ありがとうございます。
○神田有害性調査機関査察官 事務局でございます。Bhas42細胞を用いる形質転換試験ということでございますが、当リスク評価では、プロモーション試験のみについて規定するというふうな形で基準が定められておりますので、プロモーションということになろうと思います。
○平林座長 はい。そうしましたら、先ほどのフローからしても、まず、緑の物質である二つの物質、メタクリル酸2- (ジメチルアミノエチル)とチモールについては、事務局案どおりの候補にして差し支えないということでよろしゅうございますでしょうか。そこは、よろしゅうございますか。
 そうしますと、プロモーション効果だけが認められたとされる残りの5物質から4物質を選ぶということになろうかと思いますが、そこで何か順番をつけるようなものが何かありますか。
 特段ないようであれば、もともと事務局が作ってきたこの評価にしても、産生量ですとか、流通量といったようなことが多い順に並んでいるというふうにお聞きしていますので、上から順番に4つ四つを選ぶというようなことかしらと思います。最後に挙がっている1,8-オクタン-ジ-カルボン酸、別名がセバシン酸だそうですけど、これをほかの4つのどれかを除いても入れたほうがいいというような情報があれば、そこを検討して、特になければ順当に上から順番に行くというようなことでいかがかと思いますが。
○バイオアッセイ/加納氏 バイオアッセイで調べた情報では、1,8-オクタン-ジ-カルボン酸、340番なのですが、これは、ひまし油を原料として合成されたもので、いろんな物質の情報、詳しいことは得られなかったのですが、LD50などの情報ものすごいではものすごくものすごい低くて、低毒性物質というふうに考えられております。
 なので、私としては、順位としては下のほうなのかなという考えです。
○平林座長 ありがとうございました。
○若林委員 形質転換の作用濃度等についての比較はできますか。活性が、例えば強・中・弱ですとかに分けた場合に、形質転換での活性はどうでしょうかという質問です。
○バイオアッセイ/加納氏 形質転換が陽性・陰性の情報しか得ておりませんで、そこら辺の比較はちょっとしておりません。
○平林座長 ほかに何か御意見はないでしょうか。
西川先生、ないですか。
○西川委員 特にはないですけど、先ほど、LD50が小さいということは。
○バイオアッセイ/加納氏 LD50が、すみません、大きい。
○西川委員 大きいのですね。
○バイオアッセイ/加納氏 で、毒性が低いと。
○平林座長 津田先生、よろしゅうございますか。
小野寺先生。
○小野寺委員 どれを取っても、多分、一緒だと思うのですけど、その順番で、有意な差をつけるだけの根拠というのもないので、実験のしやすいさとか、原料の入手しやすさとか、その辺のところから決めていくこともいいのかなと思います。
○平林座長 ありがとうございました。小川先生もいいですか。
○小川委員 特にコメントはありません。実施可能なものから実施するということもありますし、あと、やはり遺伝毒性があるものも、もう少し見ることと、形質転換の意義も少し今後検討することが必要かと思いました。
○平林座長 ありがとうございました。そうしますと、よろしゅうございますか、バイオアッセイセンター。
○バイオアッセイ/加納氏 私どもも結構です。
○平林座長 ということは、事務局が提案してくださったこの8物質のうち、最初の物質についてはIARCの評価が出ているということで対象外、なので、その次の二つ、5077と、違う。ごめんなさい、それは違う。852と、つまりメタクリル酸2- (ジメチルアミノエチル)と、それから543のチモール、それから形質転換が陽性になったところのノナン酸、それから3,5,5-トリメチルヘキサン酸、それから炭酸ジフェニル、2-sec-ブチルフェノール、そこまでですかね。その6物質を候補にしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
○内田化学物質評価室長 ありがとうございます。
○神田有害性調査機関査察官 ありがとうございます。
○平林座長 ありがとうございました。
 では、次の議題に移りたいと思います。遺伝子改変動物を用いました発がん性試験結果の評価等についてであります。
事務局から説明をお願いします。
○神田有害性調査機関査察官 では、議題2の遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の評価等についてでございます。
資料としましては、資料2から資料5のほうになります。
 遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の評価は、試験の導入を承認いただいてから今回が初めての評価実施ということになります。参考資料4-1を御覧になってください。こちらが、当時、承認いただいた内容ということになります。先ほど、ラット肝中期発がん性試験の対象物質について御検討いただきましたが、この中期試験の課題といたしましては、皆様御案内のとおりかと思いますが、臓器の標的性が疑われて、その調査結果のみでは発がん性の強度が評価できないこと、あるいは、経口ばく露による調査が不能なガスや蒸気、粉じんなどの物質はどうするかといったことが、以前から挙げられていたところでございます。
 そのため、平成28年の第2回の発がん性評価ワーキング、平成29年1月16日に開催させていただいたものにおきまして、遺伝子改変動物による発がん性試験の導入を諮らせていただき、御承認をいただきましたものでございます。
 導入が決まってから初めて実施した、遺伝子改変動物による発がん性試験の結果の報告を、日本バイオアッセイ研究センターからいただきましたので、今回の発がんワーキングで評価いただきたいと思います。
 資料は2から5になっております。枝番が6がついているものにつきましては、バイオアッセイセンターのほうに、改めて作成いただいた結果の概要となっておりますので、まず、こちらのほうから御覧いただければというふうに思います。
 
○内田化学物質評価室長 すみません、補足です。経緯も含めて、少し御説明をさせていただきます。また、先ほどお配りしたフローの資料をちょっと御覧いただければと思いますけれども、今し方説明がありましたように、遺伝子改変動物による発がん性試験につきましては、今回初めて評価をいただくという形になってございます。これは、スクリーニングの過程で実施するものが初めてということで、2物質ございます。一つは、4-(1,1,3,3―テトラメチルブチル)フェノールということでございますけれども、こちらにつきましては、中期発がん性試験で陰性だったものを、この遺伝子改変動物の試験をやっているというものでございます。
 もう一つは、二酸化窒素、こちらにつきましては、一酸化窒素が変異原性試験で陽性であったと、で、ガス状であるということ踏まえて、遺伝子改変動物による発がん性試験に持ってきたというものでございます。
 実は、この遺伝子改変動物の発がん性試験、昨年9月に一度、2-ブロモプロパン、酸化チタンについて評価いただきました。そちらのほうは、長期発がん性試験、ラットと、この遺伝子改変動物を組み合わせてやるという形のもので、このスクリーニングの過程とは、ちょっと別の形の評価をいただいた経緯がございますけれども、その際に何に基づいて評価をするのかきちんと整理をすべきだといったような御指摘もいただいたところでございます。
 そういったことも踏まえまして、今回、資料6ということで、遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の結果の評価基準 (案)というものをお出ししてございます。肝中期発がん性試験のほうは評価基準というのを別途ございまして、こちらについては参考資料のほうにも入っておりますけれども、陽性面積等を考慮して判断してということで、比較的はっきりとした評価基準ということが設けられているところでございますが、こちらの遺伝子改変動物の評価基準については、なかなかちょっとバイオアッセイとも相談はいたしましたけれども、ちょっと難しいところがあって、取りあえず素案という形で、こういった形で整理をさせていただいているところでございますので、また、いろいろと御意見を踏まえながら改編をしていきたいというふうに思っております。
 かいつまんで申しますと、発がん性の判断基準ということで、動物の種類ですとか、あるいは、雌雄ごとの評価基準については、原則、以下のとおりということで、これはバイオアッセイのほうで整理をされている区分けということで発がん性を示す明らかな証拠がありですとか、発がん性を示す証拠あり (some evidence)、それから、発がん性を示す不確実な証拠、それから、丸4として、発がん性を示す証拠なしということで、ここに書いてあるような判断根拠を基に整理をされているという状況でございます。
 ただし、これは原則ということでございまして、下にございますように、上記判断には、統計解析、あるいは腫瘍の種類や発生時期、他臓器にわたる腫瘍発生、それから、前腫瘍性病変の発生状況等の生物学的意義、当該動物種における背景データ、用量反応関係の有無、試験の実施状況、及び被験物質の特性等も考慮して判断をする、結論するという形で、それぞれの物質の状況、いろいろございますので、そういったものを踏まえて御判断いただくということにしてございます。
 また、これら試験に用いた動物の種類、あるいは、雌雄ごとの評価結果を基に、全体として、動物の種類ごとの特性等も勘案して、発がん性があるか否か (陽性・陰性)について総合的に御判断をいただきたいというふうに思っております。
 加えまして、仮に陽性という形になった場合には、以下、その後どうしていくのかということで御判断いただくことがございます。三つございますけれども、一つ、がん原性指針の作成の要否の判断ということ、それから二つ目といたしまして、リスク評価に進むかどうかという判断、それから最後に、3ページ目になりますけれども、その後、例えば陽性となった場合に、さらに長期がん原性試験に行くのかどうか、そういったことについても、併せて御判断いただきたいというふうに思っておりますが、まず、それぞれ2物質について、その陰性・陽性の御検討をいただいた上で、仮に陽性のものがあるということになれば、もう少し詳しく御検討いただければというふうに思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
○平林座長 ありがとうございました。そうしましたら、まず、1物質目から行きます。日本バイオアッセイ研究センターのほうから試験結果の概要について説明をお願いしたいと思います。
 まず、4- (1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールについてお願いします。
○バイオアッセイ/加納氏 日本バイオアッセイ研究センターの加納です。よろしくお願いします。
○津田委員 ちょっと、すみません。
○平林座長 ごめんなさい。ちょっと待ってね。
○津田委員 もう一度聞きますが、この物質は、この流れでいうと、一番上の遺伝性毒性はなかったのですね。この流れの上でちょっと説明してください。
○内田化学物質評価室長 すみません。遺伝毒性につきましては、変異原性については陰性で、ほ乳類の染色体異常試験については陽性という。
○津田委員 ややこしいわけですね。それで、これで言うと、それでという理由と、はっきりしないということで、中期発がんのほうに落ちてきたと、そういうことですね。
○内田化学物質評価室長 はい。
○津田委員 それで、陰性だったから横へ流れて遺伝子改変のほうへ来たという経過を経ているわけですね。
○内田化学物質評価室長 そういうことでございます。
○津田委員 分かりました。次いで、次の物質も一緒に説明しておいてください。
○内田化学物質評価室長 次の二酸化窒素につきましては、変異原性試験で陽性になったもので、ガス状になりますので、そこから遺伝子改変動物……。
○津田委員 もうそれは、こっちへ直接来て中期発がん性試験のほうは通らずに、吸入試験を遺伝子改変動物でやったと、そういうことですね。
○内田化学物質評価室長 はい。
○津田委員 分かりました。
○平林座長 では、よろしくお願いします。
○バイオアッセイ/加納氏 資料2-6を御覧ください。よろしいでしょうか。p53ヘテロ欠損マウスの試験結果になります。資料は9ページまでございまして、5ページから腫瘍の発生状況、6ページに生存率グラフ、7ページに体重グラフ、8ページには陽性対照物質の発生状況を示しています。
 被験物質は、4- (1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールになります。
 物質の構造式、物理化学的性状等につきましては、1-2と1-3に示したとおりでございます。
 製造・輸入量につきましては、平成29年度2万3,364tとの報告があります。
 用途は樹脂、非イオン界面活性剤、ゴム添加剤の製造中間体です。
 許容濃度等につきましては、管理濃度は未設定。日本産業衛生学会、ACGIH等では、許容濃度が未設定。IARCでも発がん性の評価などはされておりません。ドイツ研究振興協会 (DFG)では、:MAK valueとして、0.5ml/m3との設定がされております。
 遺伝毒性のほうにつきましては、Ames試験で陰性、チャイニーズハムスターの肺由来線維芽細胞を用いた染色体異常試験では陽性の結果があります。
 次、2ページ目、試験の結果に行きます。p53ヘテロ欠損マウスを用いた結果になります。
 3の方法ですが、媒体対照群、被験物質投与群3群、陽性対照群として、2-Methoxy-5-methylaniline、別名パラクレシジン投与群の計5群の構成で、対照群と被験物質投与群は雌雄各25匹、陽性対照群は15匹としました。
 投与は毎日1回強制経口投与で26週間実施、用量は、雌雄とも、0、50、100、200 mg/kg、陽性対照物質は、雌雄とも300 mg/kgとしました。観察・検査としては、一般状態観察、体重・摂餌量の測定、血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、解剖時の肉眼的観察、臓器重量測定及び病理組織学的検査を行いました。
 4の投与用量の設定理由になります。本試験に先立ちまして、4週間の用量設定試験を基に設定しました。雌雄のC57BL/6Jマウスを用いて、1群、各10匹に0、30、100、200、300 mg/kgの用量で、毎日4週間の強制経口投与をしました。
 結果、雌の300 mg/kgで1匹の死亡が認められ、これは腎臓病変による死亡と推察されました。試験終了時の最終体重には差は見られていません。
 被験物質の毒性標的器官は主に腎臓において重量増加や近位尿細管の再生像など、肝臓で重量増加など、血液造血系でヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値の低値などが見られています。雌の300 mg/kgで腎臓病変による死亡が1例見られ、雌雄の300 mg/kgで認められた近位尿細管の再生像は広範囲に見られ、尿細管への傷害も広範囲に起きたと判断できることから、300 mg/kgは26週間試験の最高用量としては高過ぎると考えました。
 一方で、その下の用量、200 mg/kgでは、近位尿細管の再生像は全例に見られましたが、その程度は減弱し、体重増加に抑制は見られないこと、血液学的検査、血液生化学、臓器重量への影響も減弱したことから、200 mg/kgは26週間耐え得る用量であると判断しました。
 従って、最高用量を200 mg/kg、公比2で100、低用量を50 mg/kgとしました。
 あと、陽性対照群として、今回初めての試験ということで国際共同検証試験、ILSIの試験を参考に4週間の毒性試験を実施しまして、その結果を基に雌雄とも300 mg/kg体重としました。
 5番目、結果になります。生存率のグラフは6ページ、体重のグラフを7ページに示しております。ちょっと一緒に見れませんが、すみません。動物の生存率、媒体対照群と比較して雌雄とも200 mg/kgで低下が認められています。200 mg/kgでの生存率は雄が80%、雌が68%でした。一般状態では、雌雄とも被験物質投与の影響と考えられる異常所見は認められませんでしたが、体重は雌雄の200 mg/kgで増加抑制が見られました。摂餌量は投与期間として対照群との間に差は見られませんでした。
 次、3ページ目の病理組織学的検査の結果です。雄の腫瘍性病変を5ページ、表1に示しています。雄では全ての臓器において、投与による腫瘍の発生増加は見られませんでした。次、雄の非腫瘍性病変になります。腎臓で慢性腎炎の発生増加が最低用量の50 mg/kg以上で認められ、200 mg/kgで生存率の低下が見られましたが、主な原因は、この腎臓病変によるものでした。
 骨では、骨異栄養症の発生増加が200 mg/kgで認められました。
 次に、雌の腫瘍性病変の結果です。表は5ページの表2になります。雌でも全ての臓器において、被験物質投与による腫瘍の発生増加は見られませんでした。
 次に、雌の非腫瘍性病変です。これも雄と同様に変化が見られました。腎臓で慢性腎炎の発生増加が最低の50 mg/kg以上で、200 mg/kgで雌の生存率の低下が見られましたが、主な原因は、この腎臓病変によるものでした。
 雄と同様に、骨でも骨異栄養症の発生増加が50 mg/kg以上で認められました。
 最後、6のまとめになります。p53ヘテロ欠損マウスを用いて4- (1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールの26週間にわたる強制経口投与によるがん原性試験を行った結果、雌雄p53ヘテロ欠損マウスに対するがん原性を示す証拠は得られなかった、no evidence of carcinogenic activityと結論しました。
 本試験の結果は以上ですが、7として陽性対照物質の評価を記載しました。陽性対照の腫瘍の発生状況を8ページ、表3と4に示しています。陽性対照物質として、2-Methoxy-5-methylanilineを雌雄15匹に300 mg/kgで26週間反復強制経口投与しました。
 腫瘍性病変の発生は、雌雄とも膀胱に認められ、雄では、移行上皮癌の発生、移行上皮乳頭腫と移行上皮癌を併せた発生が有意な増加を示しました。雌では扁平上皮乳頭腫と移行上皮乳頭腫を併せた発生が有意な増加を示しました。
 表には示しておりませんが、前腫瘍性病変である乳頭状ないし結節状過形成 (PN過形成)が雌雄とも有意な発生増加を示しました。雌雄とも対照群0匹に対して、陽性対照群では雌雄とも5匹ずつ、33%の発生が見られました。
 以上から、雌雄とも、陽性対照物質による膀胱腫瘍及び前腫瘍性病変の発生増加が認められ、本試験の有効性が確認されました。
 p53KOマウスの結果は以上であります。
○平林座長 ありがとうございました。それでは、今御説明いただきました試験概要について御意見をいただきたいと思います。
○小野寺委員 いいですか。
○平林座長 小野寺先生。
○小野寺委員 陽性対照で出てくる腫瘍の数というのは、この程度なのですか。15匹中、2匹とか3匹。
○バイオアッセイ/梅田氏 マルチプリシティ、多数見られたかという御質問ですか。
○小野寺委員 いや、8ページに書いてありました陽性対照群のうちの300 mgを投与した動物15匹中、いわゆる膀胱腫瘍が1例、2例というのですけど、これ、陽性対照としては標準の数なのか。
○バイオアッセイ/梅田氏 そうですね。陽性腫瘍が2匹で、扁平上皮乳頭腫が2匹で、特に雌のほうですよね、少ないのは。2匹、1匹とか、例数が少ないので陽性対照はこれでいいかどうかといった御質問ということですよね。
○小野寺委員 そう言うことです。
○バイオアッセイ/梅田氏 少なかったと思います。ただ、もともと、この系統で膀胱の移行上皮の腫瘍というのはまれな腫瘍でして、バイオアッセイでデータがそろっているわけではないのですけれども、今回、初めての1回目の遺伝子改変事業の御報告になりまして、過去にちょっと2試験はやっておりますけれども、ヒストリカルデータ、コントロールデータとしてはそんなにそろってはいないのですが、外の文献等の情報を得ますと、膀胱の腫瘍は1%未満、まれな腫瘍であるというふうに、ILSI ACTのアクトプログラムの論文ですけれども、そちらのほうに書かれておりまして、この物質の基準は、15匹中の2匹程度であっても、それに関連する非腫瘍性の前腫瘍性病変が明らかであればいいのではないかといった論文もありますので、そういったものを根拠にバイオアッセイで行ったこの陽性対照も非常に少ないですけれども、この程度でも出たというふうに、腫瘍があったというふうに判断するものだというふうに考えております。
○小野寺委員 ありがとうございます。腫瘍の発生数、腫瘍自体の数としては、これでもいいと思うのですけれども、この前がん病変の過形成ですね。そういうものもここに記載していただけると、すごく陽性対照としての有意性というのが明らかになると思いましたので、ちょっと質問しました。
○バイオアッセイ/梅田氏 資料の作成の助言ですね、ありがとうございます。
○平林座長 若林先生。
○若林委員 陽性対照物質の選定なのですけれども、次のrasH2マウスの場合は、N-Nitroso-N-methylurea、発がん物質としては非常によく使われて有名な物質ですけども、私ちょっと不勉強かもしれないですけど、この2-Methoxy-5-methylanilineというのが陽性物質として、あまり使われていないような気がします。これを選んだ理由は何ですか。
○バイオアッセイ/加納氏 参考にしましたILSIの共同検証試験で、多くのラボでパラクレシジンと一般的に言われていますが、これを使った陽性対照において試験を実施しています。それで、やっぱりその試験でも、陽性対照での発生数が少ないのではないかという話がございます。今、論文を持っていないですが、ラボによって発生数がかなり試験ごとに違うような印象を受けています。 我々も、次回報告する試験でパラクレシジンを同じように使っておりますが、今回と違う結果が得られています。これが陽性対照として適切かどうかという議論は、内部でもしております。
○平林座長 ありがとうございます。西川先生、御記憶ですか。パラクレシジン、多分、p53でかなり一時期はやったというか、使われたような記憶がかすかにございますのですが。
○西川委員 僕は、あまり、それは記憶ないですね。ですが、今回は低頻度ながら、有意に膀胱の腫瘍が増えたということなので、一応、陽性コントロールとしての意義はあると思いましたが、やはり今後もp53KOマウスの試験を継続して行うのであれば、陽性対照については少し検討が必要かなと思います。
○平林座長 ありがとうございます。
 津田先生。
○津田委員 全く同じ意見でして、これ、これから使われることが多くなってくると思うのです、そんなに多くの2年実験もやれないので。そうすると、やっぱりバックグラウンドがしっかりしていないと、こういうふうに少ししか出ない、やっと緩い統計学有意際で出たということになると、本当にそうかという話になってくるので、若林先生が言われたように、やはり、どこでも知られた標的がマルチフルな還元物資を使って、ある程度、データを持っていただく、それを公開する。それからもう一つは、このマウスはどうしてもバックグラウンドの系統によって感受性が違ってきますね。そうすると、やっぱり、このまま投与をしないで放っておいて75週まで見て、どこに腫瘍があるかと、データを、やっぱり要ると思います。それで、バイオアッセイさんだけにということでなしに、全体として要るので、集めるなりして、データをきちんと持ってほしいと思います。
 これだと、ちょっと誰も、判断に苦慮するのだと思うのですけど。不足かな、どうするかなと判断できないと思います。
○平林座長 ありがとうございます。どうぞ。
○バイオアッセイ/梅田氏 ちょっとこちらから御質問というか、先生方に御相談したいかなと思っていることが、この陽性対照の内容でもあるのですけれども、バイオアッセイでも、先ほど、加納のほうから言いましたように、この結果をこれでいいのかといった議論を一度しておりまして、ほかのMNUという物質もp53に投与して、やってデータをちょっと出してみたのですけれども、出てくる腫瘍の種類がmalignant lymphomaのみなのですね。パラクレシジンのほうは、膀胱の腫瘍で匹数が少ないと。MNUにしてみると、今度はmalignant lymphomaは、そこそこ例数的には出るのですけれども、このmalignant lymphomaのみの腫瘍でいいのかなといった、ちょっと悩みもありまして。この後、また加納のほうから御報告しますけれども、rasH2のほうはMNUを使いますと、ちゃんと上皮系の腫瘍も、肺の腫瘍ですとか、胃の腫瘍ですとか、その上malignant lymphomaも出るのですけれども、多臓器にわたった腫瘍が出てきて、rasH2マウスのほうにおいては、MNUが陽性対照としてうまくいっている感があるのですけれども、p53に関しましては、MNUであってもlymphomaしか出ないのかといったところがどうなのかなというふうにちょっとバイオアッセイでも悩んでおりまして、先生方の御意見をいただけると大変ありがたいなと思っております。
○平林座長 小野寺先生。
○小野寺委員 この場合の陽性対照の陽性の考え方として、一つは、そういうp53KOヘテロノックアウトとしても、系統によって全然感受性が違う、いわゆる系統差がもろに出てくる可能性が強いものと、臓器ごとによって異なり、malignant lymphomaは試験によって、すごくばらつく腫瘍です。特殊な臓器、腫瘍発生が稀な臓器、例えば膀胱とか何かまれに発現する腫瘍は、結構頻度が少なくてもそんなにばらつかないという、腫瘍ごとによって、発生頻度に違いがあるので、これを一定にするというのは、非常に難しいことだと思います。
 それで、陽性というのはどういうことかというと、この場合の試験の陽性対照の意味というのは、僕自身の考え方だと、p53のヘテロノックアウトはいわゆる感受性が腫瘍に対して高くなっているかというのを見るだけの話で、感受性が高くなっているかというのを指標にするのが目的であって、臓器ごとの腫瘍発生についての標準を指標にすると、相当な匹数を使わないと出てこないと思います。これだけの数、たかだか15、20匹ぐらい使っただけで、その臓器での発生が一定になるということは、僕自身は生物学的には難しい、あり得ないと思うのですね。
 ですから、この陽性対照という意味をもうちょっとこの中に入れるときに、腫瘍の感受性が高くなると、いわゆる発がん発生率が高くなるというところに指標を置いた陽性として考えたほうがいいのかなと思います。
○バイオアッセイ/梅田氏 ありがとうございます。
○平林座長 若林先生。
○若林委員 もう一点、陽性対照について、これ、考え方なのですけども、MNUのrasH2を使っているときには、単回腹腔内投与ですよね。こちらのほうは、300 mg/kgで、強制投与で26週間しているので、やはり陽性対照に関しては動物ですとか、あとはやる人たちの労力を考えて、単回投与で量を少なくして、効率的に発がんするような物質を選んでおいたほうが、私は、今後、使う上においてはいいような気がしますけれども、その点についても、ぜひ考慮してください。
○平林座長 ほかに。
○バイオアッセイ/梅田氏 ありがとうございます。持ち帰ってバイオアッセイでも検討させていただきたいと思います。
○平林座長 西川先生、追加で。
○西川委員 2種類のトランスジェニックマウスを使って、中期発がん性試験をやろうというのは、最初議論があって、どちらかにしたほうがいいのではないかみたいな意見もあって、一応、もめたのですが、取りあえず両方やってみようということでスタートした、そういう経緯を記憶しております。
 p53KOの場合は、医薬品のほうでも、最近ほとんど実施されなくなっています。rasH2についても、どうも発がん性の検出力があまり高くないのではないかというような意見もあって、医学研究医薬品などではいろいろ議論されているところですが、経緯からいって、p53KOマウスは、今後実施しなくてもいいような方向になる可能性もあるので、そういった場合を想定して、陽性対照についても併せて検討していただくのがいいのではないかと思っております。
○平林座長 ありがとうございました。ほかに。
 p53KOマウスは感受性としては、遺伝毒性物質については検出力があるにしても、非遺伝毒性物質については、なかなか検出力がないというようなことも言われているところでもございますし、あと、いろんな物質を曝露しても出てくる腫瘍は殆どがmalignant lymphomaになるということは、バックグラウンドとして知られていることでもございますので、系統試験系として発がんの感受性が上がるということだけから判断出来ると考えれば、malignant lymphomaしか観察できなくてもいいのかなというふうには思うのですけれど、一方で、西川先生が御指摘のとおり、検出力には、かなり限定的というふうなことも分かってまいりましたので、(p53KOとrasH2の)両方を取りあえず使ってみるというような経緯で始めたというふうにおっしゃっていただきましたけれど、今後、少し整理をしていくということもあるのかなというふうに考えます。そんなところでよろしゅうございますか。
○西川委員 それに加えて、バイオアッセイの菅野先生が紹介していたように、26週では確実にがん原性を検出できない場合もあるので、特にp53KOの場合は、もう少しより長期の実験期間というか、投与期間が必要になる可能性もあるということだと思います。
○平林座長 ありがとうございます。
 ちょっと系統試験系の背景の方に大分話がシフトしてしまいましたので、本題に戻らせていただきたいと思います。この物質についての発がん性につきましては、お示しいただいたデータから判断して、陰性ということでよろしいかどうかというところに話を戻したいと思いますが、その点はいかがでございましょうか。
 ありがとうございます。そうしましたら、この剤、4- (1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールにつきましては、陰性と評価いたすということで。
若林委員 いや、p53だけで、まだ、rasH2があります。
○平林座長 ごめんなさい。
○神田有害性調査機関査察官 rasH2のほうもお願いいたします。
○平林座長 そうだ。ごめんなさい。ちょっと先走りましたね。p53KOマウスを使った試験系につきましては、結果は陰性ということで御判断いただいたということで、次に行きたいと思います。
 次の説明をいただいていいですか。
○バイオアッセイ/加納氏 それでは、同じ物質でrasH2マウスの結果です。資料3-6を御覧ください。よろしいでしょうか。10ページございますが、5ページ、6ページに腫瘍の発生状況、7ページに生存率、8ページに体重、9ページに陽性対照の結果を示しています。
 1ページ目、物質につきましては、先ほどと同じですので省略します。
 2ページ目になります。動物種はrasH2マウスを用いました。
 方法につきましては、投与用量も前と同じになりますので省略しますが、異なるのは陽性対照として、MNUを単回腹腔内投与し、その後、26週間飼育しました。
 4番目の投与用量の設定理由です。4週間の用量設定試験の結果を基に設定しました。雌雄のrasH2マウス (non-Tg)を使いましたが、1群各10匹に先ほどと同じ0~300 mg/kgで4週間強制経口投与をしました。
 結果、雌雄とも全群で動物の死亡、一般状態に毒性症状は見られていません。体重は、雌雄とも投与群でやや高値傾向で推移しました。
 毒性の標的器官は、主に腎臓において重量増加や近位尿細管の再生など、肝臓で重量増加、小葉中心性の肝細胞肥大、単細胞壊死など、造血系で網状赤血球比の高値、脾臓重量の高値などが見られました。この中で腎臓の雌雄300 mg/kgに認められた近位尿細管の再生像は広範囲に認められ、尿細管への傷害も広範囲に起きたと判断できることから、300 mg/kgは26週間の投与には耐えられないものと考えました。
 一方で、近位尿細管再生像は200 mg/kgでも全例に見られるものの、その程度は減弱したことから、200 mg/kgは、26週間投与に耐え得る用量と判断しました。
 従って、先ほどのp53と同じですが、200 mg/kgを最高用量、以下公比2で中用量を100、低用量を50 mg/kgとしました。
 陽性対照物質の投与用量は国際共同検証試験の方法を参考に雌雄とも75 mg/kgとしました。
 5番の試験の結果です。生存率が7ページ、体重が8ページに示しています。動物の生存率は雌雄とも媒体対照群と比較して差を認めませんでした。一般状態では、雌雄とも被験物質投与の影響と考えられる異常所見は認められず、体重、摂餌量も投与期間を通して媒体対照群との間に顕著な差は見られませんでした。
 3ページ、病理組織学的検査の結果です。雄の腫瘍性病変を5ページに示しています。本試験は、rasH2マウスを用いた26週間試験の初回の報告ということから、当センターで行った対照群の蓄積データがないために、rasH2マウスの背景データを取得する目的で、本試験に先立ちまして実施した無処置動物50匹のデータを評価の参考としました。また、文献によるヒストリカルコントロールのデータも評価の参考としました。
 腫瘍の発生状況です。雄では胃 (前胃)で腫瘍の発生が見られました。前胃の扁平上皮乳頭腫の発生が媒体対照群、50、100 mg/kgで0匹に対して、200 mg/kgで2匹、8%見られ、Peto検定とCochran-Armitage検定では有意な増加傾向を示しました。扁平状上皮癌の発生は200 mg/kgで1匹、これは有意な増加は示しておりませんが、扁平上皮乳頭腫と扁平上皮癌を合わせた発生、200 mg/kgで3匹、12%は、これもPeto検定とCochran-Armitage検定で有意な増加を示しました。
 雄の胃の扁平上皮乳頭腫は、発生が極めてまれな腫瘍であり、当センターの雄rasH2マウスの無処置動物50匹の発生率は2%、50匹中の1匹でした。
 また、文献のヒストリカルコントロールデータでは、Paranjpe、Nambiar、Takaokaらの報告と比較しておりますが、試験単位での最高発生率は6.7%、本試験の200 mg/kgでの扁平上皮乳頭腫の発生、25匹中の2匹、8%は、この試験単位での最大発生率を超えていることから、被験物質投与による影響と考えました。
 扁平上皮癌の発生も極めてまれな腫瘍であり、当センターの背景データでは、2%、50匹中の1匹でした。文献等の比較でも、これは試験単位での最大発生率が6.7%、本試験の200 mg/kgの扁平上皮癌は、25匹中の1匹、4%ですので、この範囲内であるものの、試験単位での上限に近い発生率でした。これらのことを考慮しまして、扁平上皮乳頭腫と扁平上皮癌を合わせた発生、25匹中の3匹、12%の被験物質投与による影響と考えました。
 従って、雄に認められた胃の扁平上皮乳頭腫、及び扁平上皮乳頭腫と扁平上皮癌を合わせた発生増加は、rasH2マウスに対するがん原性を示す証拠と考えました。
 次、雄の非腫瘍性病変です。
 腎臓では、慢性腎炎の発生増加が200 mg/kgで認められました。
 肝臓になりますが、小葉中心性の肝細胞肥大の発生が200 mg/kgで認められました。
 次、雌の腫瘍性病変になります。6ページに雌の腫瘍の発生状況を示しております。雌では、被験物質投与による腫瘍の発生増加は認められませんでした。
 雌の非腫瘍性病変です。これも雄と同様腎臓で慢性腎炎の発生増加と程度の増強が100と200 mg/kgで認められました。
 6のまとめになります。rasH2マウスを用いて4- (1.1.3.3-テトラメチルブチル)フェノールの26週間にわたる強制経口投与によるがん原性試験を行った結果、雄rasH2マウスに対するがん原性を示す証拠が得られた (some evidence of carcinogenic activity)と結論しました。
 雌rasH2マウスに対するがん原性を示す証拠が得られなかった (no evidence of carcinogenic activity)と結論しました。
 試験結果は以上ですが、7番として、陽性対照の評価を記載しました。陽性対照の発生状況は、9ページに示しております。陽性対照物質として、MNUを雌雄15匹、75 mg/kgで単回腹腔内投与し、その後、26週間飼育しました。腫瘍性病変の発生は、雄で皮膚の扁平上皮乳頭腫、肺の細気管支-肺胞上皮腺腫と癌を合わせた発生、胸腺の悪性リンパ腫、胃の扁平上皮乳頭腫、及び扁平上皮癌の発生がそれぞれFisher検定で有意な増加を示しました。
 7匹の途中死亡動物の死因は全て悪性リンパ腫、担腫瘍動物数は、媒体対照群で2匹、8%に対しまして、陽性対照群で15匹、100%でした。
 雌では、胃の扁平上皮乳頭腫、及び扁平上皮乳頭腫と癌を合わせた発生、胸腺、脾臓及び全臓器の悪性リンパ腫の発生がFisher検定で有意な増加を示しました。11匹の途中死亡の死因は10匹が悪性リンパ腫、1匹が胃の腫瘍であり、担腫瘍動物数は、媒体対照群5匹、20%に対しまして、陽性対照群が15匹、100%でした。
 以上の結果より、雌雄とも陽性対照物質投与による明らかな腫瘍の発生増加が認められ、本試験系の有効性が確認されました。
 以上であります。
○平林座長 ありがとうございました。
 それでは、この結果について御意見をいただきたいと思います。
○小野寺委員 いいですか。
○平林座長 はい、小野寺先生。
○小野寺委員 確かに、高濃度200 mg/kgでは影響がないとは言い切れないのですけれども、この結果で発がん性ありという判断というのは、非常にむずかしいです、個人的にはすごく微妙なところで、もう少し何か強いエビデンスが欲しいなと思うのですよ。例えばの話なのですけど、5ページにある、雄のところの欄の表の1なのですけれども、確かに、Peto検定では、前胃に関しては、有意差はつくんですけども、これは200 mg以外が1例も発生していないので、どこかに1例でも発生すれば、多分、有意の差はつかないと思うのです。
 それと、もう一つは、いわゆる100 mgのところが、ほかの腫瘍はほとんどゼロというのと、それと、あと50 mgと200 mgで、その下の全臓器の血管腫と血管肉腫を見ても、2、1と2、3例ということで、ほとんど微妙な差だと思うのです。ですので、この腫瘍の中で、乳頭腫と、血管腫と血管肉腫という、いわゆる腫瘍性の病変なのですけど、ここに過形成とか、あと、いわゆる例えば前胃の腫瘍でも大きさとか、severityとかいうのをもう少しそこのグレードとして入れれば、同じ腫瘍の数でも用量によっての影響というのがクリアになると思うのですけど、その辺での考察というのは何かありますでしょうか。
○平林座長 はい、お願いします。
○バイオアッセイ/梅田氏 先生のおっしゃるとおりだと思います。この3匹という匹数で、判断するのは、実はバイオアッセイでも難しかったというのが正直なところです。1本目だったこともありまして、先ほど、加納から報告したとおりのほかの文献等を比べたりとか、そういう形で、判断した形で、実は前腫瘍性の過形成等の変化は認められていません。全くゼロだったというのではなくて、たしかコントロール、低用量でも低用量群あったような気はするのですけれども、投与による増加というのを認めておりません。
 また、マルチプリシティは上がってなかったものですから、ここにあるだけのデータになります、今回。この胃の腫瘍が、文献的にほとんど出てなかったか、発生匹数が少なかったものですから、さすがに3匹は多いのかなといった形での最終的な判断です。かなりバイオアッセイでも、この判断は難しかったのが正直なところです。
○平林座長 西川先生……。
 若林先生。
○若林委員 繰り返します。これらの胃の乳頭腫、がんに関しては、自然発生的発生については、以前の論文では、パーセンテージは低いのですけど、出てはいるのですよね。
○バイオアッセイ/梅田氏 はい。
○若林委員 全くゼロではなくて。
○バイオアッセイ/梅田氏 全くゼロではなくて、出てはおります。
○小野寺委員 それと、もう一つ、この物質での刺激性というのはないのですか。発生したところが前胃なので、ゾンデで経口投与なので、一番最初に高濃度に曝露される場所なので、用量が200 mgになったときに、そういう物理的な刺激があれば、このぐらいの変化が出てきてもおかしくはないというか、可能性としては全くないとは言い切れないので。
○平林座長 西川先生。
○西川委員 いいですか。この本試験のコントロールでは全く胃の腫瘍が出てない。それから、1例ですが投与群でがんが出ていることから、全くエビデンスがないとは言えないということなので、some evidenceという結論になっているのかと僕は思うんですが、どうでしょうか。
○平林座長 ありがとうございます。
 ほかに。小川先生。
○小川委員 確かに、弱いという印象は受けますけれども、このデータを見る限りにおいては、やはりコントロールで投与の刺激ということでいうと、0、50、100でもいずれもないということからすると、この試験においては、陽性と取らざるを得ないという判断になると思います。
○平林座長 はい、西川先生。
○西川委員 繰り返しになりますけども、クリアなエビデンスと言っているわけじゃないのです。何かsome evidenceがあるというようなことなので、そういう範疇に入るのかなと思います。
○平林座長 確かに、これをもって陰性とはなかなか言えないというところかと思いますが、ほかに津田先生、よろしゅうございますか。
○津田委員 僕はもう陽性とは言えない。で、これでもって2年の試験に持っていく理由になりにくい。もっとほかに重要なのがいっぱいあるような気がします。
○西川委員 そういうことです。
○津田委員 そういう意味で、ここで2年試験に持っていくような判断はしないほうがいいと思います。
○平林座長 そうしますと、この結果は、some evidenceというところであって、今後の流れということを考えると、このフローからいくと、長期の試験ということの可能性が出てくるわけでございますが、そこについては、少し優先順位というものを考えて、この剤について、今回の結果を受けてすぐに対処しなければならないということではないだろうというようなまとめになろうかと思いますが、それで、よろしゅうございますでしょうか。
 そうしますと、結果としては、この剤につきましては、some evidenceということではありますが、陽性という評価になろうかと思います。
○内田化学物質評価室長 すみません。1点、ほかに判断いただくこととして、がん原性指針に追加するかということもありますけれども、今のお話からすると、強い陽性であるわけでもないということを考えれば、そこに追加するということもしなくてもいいという御判断でよろしいですか。
○平林座長 そうだと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。はい。
○内田化学物質評価室長 あと、もう一点、リスク評価に持っていくということに関しては、それは持っていって、さらに、いろいろと情報は集めて判断をするという形でよろしいですか。
○平林座長 それは、もちろん、そうだと思いますが、優先順位は必ずしも高くないという御判断でよろしかったかと思います。
○内田化学物質評価室長 かしこまりました。ありがとうございます。
○平林座長 ありがとうございました。
 そうしましたら、次の剤に行ってよろしゅうございますか。
 次の剤、二酸化窒素の試験結果について、バイオアッセイセンターから説明をお願いいたします。
○バイオアッセイ/鈴木氏 では、私のほうからは、二酸化窒素のp53KOマウスとrasH2マウス、2種類の遺伝子改変動物を用いた吸入による中期がん原性試験結果について御説明をさせていただきます。
 まず資料4-6を御覧ください。
 最初に、p53KOマウスを用いた試験のほうから説明をさせていただきます。被験物質の二酸化窒素ですが、構造式、分子量、それから物理化学的性状については、御覧のとおりです。分子量46の刺激臭のある赤褐色の気体、または茶色の液体でございまして、気化時には、水と反応して硝酸を生じます。空気よりやや重いということでございます。
 当センターの試験では、液化ボンベを事前に準備いたしまして、業者さんに作っていただいたんですけれども、液化ボンベより気化させた二酸化窒素を清浄な空気と希釈混合いたしまして、動物を収容したチャンバーに供給して、マウスにばく露してございます。
 被験物質の製造量につきましては、平成29年度の実績におきまして、他の、これは二酸化窒素単独という統計はございませんで、他の酸化窒素と合計で1,000トンから2,000トン未満というような数値が出ております。
 用途としましては、合成ゴムを原料とする情報がございました。
 許容濃度につきましては、日本産業衛生学会では、未設定でありますが、ACGIHのほうでは0.2 ppmという作業環境許容濃度、TLV-TWAですが、設定をしています。
 次に、遺伝毒性についての情報です。少し古くて、いわゆるGLP試験で行われているようなものではないのですが、in vitroの試験では、エームス試験、染色体異常試験、DNA鎖切断試験、これらで陽性の報告がございます。
 in vivoの試験では、マウス白血球及び精母細胞の染色体異常試験、それから、マウス骨髄細胞を用いました小核試験、それとショウジョウバエの変異原性試験等で陰性という報告がございました。
 ここから2ページ目になりまして、具体的にp53KOマウスを用いました試験の結果について説明をさせていただきます。
 二酸化窒素をp53KOに26週間、経気道で全身曝露をいたしまして、そのがん原性を検索いたしました。
 本試験は、被験物質投与群3群と対照群1群の計4群の構成で、各群雌雄とも25匹、合計で200匹の動物を用い使用ました。被験物質の投与は、二酸化窒素を1日6時間、1週5日で、26週間にわたり動物を全身曝露することにより行いました。
 投与濃度は、雌雄とも対照群の0 ppm、投与群は10 ppm、20 ppm、40 ppmといたしました。観察・検査といたしましては、一般状態の観察、体重及び摂餌量の測定、血液学的検査、血液生化学的検査、尿検査、解剖時の剖検、臓器重量測定及び病理組織学的検査を行いました。
 只今、行った濃度について述べましたが、次に、その濃度設定理由について御説明いたします。
 投与濃度は、遺伝子改変動物でない通常のC57BL/6Jマウスを用いまして、4週間の予備試験を行い、決定しました。
 二酸化窒素を0、5、10、20及び40 ppmの濃度で曝露した結果、動物の死亡は認められませんでした。一般状態の観察では、曝露開始日と2日目の、これは曝露後のみなのですけれども、そのときの観察で雌雄全ての動物に自発運動量の減少、それと不整呼吸が見られました。体重は1週目と4週目で、雄で低値が見られまして、摂餌量も雄では1週目と4週目、雌では1週目に低値が見られました。臓器重量は、肺重量の高値が雌の20 ppm以上の群と雄の40 ppm群に見られました。病理組織検査では、鼻腔に滲出液の貯留が40 ppmの雌雄に見られました。また、呼吸上皮細胞のエオジン好染性変化と、鼻腺の呼吸上皮化生が全ての投与群の雌雄に見られました。肺では、炎症性細胞の浸潤が40 ppm群の雌雄に見られました。なお、病理組織学検査で見られた所見の程度は全てが軽度でした。
 以上、4週間のこの試験の結果、マウスの一般状態、体重、摂餌量、肺重量及び病理組織学検査結果に影響が見られましたが、毒性の程度はいずれも重度なものではなかったので、40 ppmの濃度で26週間にわたって動物に曝露をしても、毒性兆候は示されるものの死亡を増加させることはないと考えましたので、本試験の最高濃度は、4週間の予備試験と同じく、最高濃度を40 ppmとして、以下20 ppm及び10 ppmを設定しました。
 それでは、本試験の検査結果について、主にグラフと表で説明させていただきます。6ページのほうを御覧ください。
 上段が雄、下段が雌です。御覧いただきますように、生存率には差はありませんでした。
 次の7ページに、体重の推移を示しております。生存率のグラフと同様に、上段が雄、下段が雌です。雄の40 ppm群では、試験期間を通して、最大で約9%程度の体重増加の抑制が見られております。特に、1週目の体重増加抑制が顕著でありますが、次ページに摂餌量のグラフを示しておりますが、1週目、グラフの一番端になりますけれども、そこも顕著な低値が見られております。
 次に、腫瘍の結果について説明します。少し戻りますが、5ページを御覧ください。
 表1に雄、下段の表2に雌の腫瘍発生を示しております。雄では、肺の細気管支-肺胞上皮腺腫の発生がPeto検定とCochran-Armitage検定で有意な増加傾向を示しました。雌では、腫瘍の発生増加はありませんでした。
 雄の40 ppm群で2匹見られた細気管支-肺胞上皮腺腫は、文献によるヒストリカルコントロールデータには、雄のp53KOマウスには発生は認められず、本試験の40 ppm群の発生率は、この値を超えていました。しかしながら、対照群との2群間の検定では、有意な増加を示しておりませんで、前がん病変とされるような非腫瘍性病変の発生も認められておりません。
 したがいまして、がん原性を示す証拠、some evidenceと判断するには不十分と考えました。
 結論といたしましては、p53KO雄マウスに対するがん原性を示す不確実な証拠ということにいたしました。
 非腫瘍性病変としては、雌雄とも鼻腔から肺にかけての呼吸器に炎症、または、その修復に関わる所見が見られましたが、腫瘍に発展するようなものは見られませんでした。
 p53KOマウスに関する試験に関しては、以上でございます。
○平林座長 ありがとうございました。
 そうしましたら、この結果について御意見をいただきたいと思います。
○小野寺委員 いいですか。ちょっと、教えてほしいのですが、ページ8の摂餌量のこの初日で落ちる、この1群だけ落ちるという理由は何なのですか、アクシデントなのですか。
○バイオアッセイ/鈴木氏 これは、予備試験の説明のところで少しお話ししましたが、曝露を開始しまして、初日、特に初日なのですけれども、非常に動物の状態が曝露直後、悪い状況になります。そういった状況が1日、2日、3日ぐらいまで続くのですけれども、徐々によくなっていきまして、動物の状態が悪いので、当然、餌の食いも悪い。ただ、不思議なことに3日ぐらいたつと、ばく露後の状態観察でも、そういった呼吸の異常を含めて、特に見られなくなりまして、グラフにありますように、翌週は、過剰に摂取して体重は戻るというようなことを、(今)予備試験の4週間試験のお話を先ほどしましたけれども、実は、その前に2週間試験のさらに当たりをつけるための予備試験は行っておりまして、それも、実は同じ濃度でやっています。そのときには、もうちょっと間隔を狭くして、観察をしていたのですけれども、やはり、同じように初日、2日目で、3日目ぐらいから、だんだん回復してくるというようなことがありましたので、決して事故ということではなくて、そういう動物が不思議なことに3日もすると慣れてしまうというような状況だったのだと思います。
○小野寺委員 いや、僕が思ったのは、自分でも実験やって、確かに、そういうことというのはあり、投与初日は忌避をしたり、いろいろあるのですけど、これは公比2でやっていて、幅はそんなに大きくないのですね。10、20、40と、その中で、40だけが断トツに、こういう初日で餌が食わなくなって、次の日にそれをリカバリーして超えるということというのは、あまり経験したことがないので、もしも1日目、初日で落ちたらば、1週目、3週目とずっと継続して低値というか、下の域を行くのが普通なので、それより上がるというのは、この吸入試験の何か特徴なのかなというのは、ちょっと気になったもので、こういうグラフというのは、なかなか見たことがなくて。あと、投与3週目辺りから以降は、ほかの濃度と変わりない推移をするわけですね。それは体重なんかも影響がないというので、こういうことがあるということは、初日のところというのは、ちょっと気をつけなければいけないのかなというのと、40というのは、結構、この濃度はMTD(最大耐量)というか、毒性が出るようなのかなというのがちょっと気になったところです。ありがとうございます。
○平林座長 ほかには。
 若林先生。
○若林委員 用語の使い方、some evidenceとequivocal evidenceの違いというのは、何か定義みたいなものはあるのですか。これ、数字で言いますと、前のsome evidenceに関しては、扁平上皮がんが1例あって、ほかのいわゆる腺腫は2例なのです。1例、扁平上皮がんがあるので、例some evidenceになって、腫瘍が2例ですとequivocal evidenceなのです。some evidence、equivocal evidenceの使い方に関して、何か線引きみたいなものがあるんですか。
○バイオアッセイ/鈴木氏 正直言って線を引きたいのですけれども、くっきりとした線を今引けずにいるというのが正直なところで、背景データとか、そういったものを今模索しながらやっているというところが実情でございます。
○若林委員 分かりました。
○小野寺委員 では、一ついいですか。すみません、腫瘍のこと。肺腫瘍で2例出ているのですけど、これの組織学的にというか、びまん性なのか、結節性とか、数とか、大きさとかの違いはどうでしょう、がんには多分なっていないと思うのです。腺腫の程度というのは、今までの前例から見て、どういうレベルなのでしょうか。
○バイオアッセイ/梅田氏 腺腫ですけれども、大変小さな腺腫が1匹に1個あるだけです。さらにちょっと補足させていただきますと、この剤、肺に炎症性細胞浸潤が認められまして、これは4週からずっと見られる炎症性変化なのですけれども、この炎症に伴って上皮が増えてくるという、そういった兆候が全く見られませんでした。今回、見られたこの2匹の腺腫も、そういった炎症性の病変を現したところとは、全く別のところに独立して見られたものですから、ちょっと事故で見られたといったら変ですが、たまたま現れただけかなという印象は、ちょっと病理のほうでは強かったというのがあるのですが。ちょっと正直申しまして、今回、こうやって前の剤と並べてみたら、3匹のほうはsome evidenceというふうに結果を出していて、今回、こちらの2匹のほうは、equivocal evidenceというような状況になっているのは事実なのですが、線引きというのは、ある意味、全く何の増加もなければnon-evidenceです。統計的に有意、特にFisherではなく、傾向検定のみが上がってしまった場合には、これが本当に投与による増加なのかどうかといったところで判断せざるを得ないかなというふうに考えております。
 それによって、より確からしい増加であれば、some evidenceに持っていくべきだと思いますし、それが、もう分からなかったらequivocal evidenceというふうに下げざるを得ないのかなというふうに感触としては思っているのですが、それも、ちょっと実際は難しいと私も思っております。
○平林座長 西川先生。
○西川委員 先ほどの試験がコントロールゼロに対して、投与群3匹であるところ、この試験はコントロールゼロに対して、投与群2匹ですが、雌ではコントロールにも1匹出ているのですね。だから、エビデンスとしては、先ほどよりもやはり弱いという考えが妥当かなと思います。
○平林座長 ありがとうございます。
 ほかに。津田先生よろしゅうございますか。
○津田委員 動物について、IARCの発がん性の評価、先生も御覧になったことあると思うのですけれども、当初はそういう議論があったのですけれども、結局は、クリアエビデンスであるかどうかということで、決めてしまったということで、今は、それで評価されています。
 というのは、マルチプル腫瘍が出た場合に、1個だけで進めるかという議論も出てくるので、インシデンスでクリアエビデンスというふうに使っていますので、この辺がつけられたのは、全くネガティブかどうは分からないけれども、気持ちとしてちょっとという、そういうことだと思います。
○平林座長 ありがとうございます。
 小川先生。
○小川委員 既に言われたことで全てと思うところではありますが、前の剤については、良性病変と腫瘍性のがんと両方あってというシーケンスが見えていて、今回については、腺腫が一応あるのだけれども、過形成のような病変が全くなくて、ぽんとそれだけがあるということからも、先ほどよりも、さらに弱いものが偶発的に出てしまったという可能性が高く、この投与に依存した発がん性とは言えない状況と思いました。
○平林座長 ありがとうございました。
 そうしますと、かなり時間も押してきましたので、p53KOの結果につきましては、equivocalというような御判断でやむを得ないというか、最初に御説明のあった資料6の案、発がん性判断基準に従いますと、丸3の不確実な証拠というような分類をせざるを得ないというようなことかと思います。
 引き続きまして、rasH2の結果について、御説明いただきたいと思います。
○バイオアッセイ/鈴木氏 ではrasH2マウスの試験について説明させていただきます。
 資料5-6を御覧ください。
 試験方法としましては、ただいま説明させていただきましたp53KOを用いました試験と同じですので、項目の1、被験物質から3の方法までは省略をさせていただきます。
 4の投与濃度について説明させていただきます。こちらの予備試験の動物は、non-TgのrasH2マウスを用いておりますが、p53KOマウスを用いた試験の様式と同じく、40 ppmをトップドーズといたしまして、以下20、10、5 ppmで実施しております。
 見られた所見もほぼ同じであります。投与による動物の死亡は認められませんでした。一般状態の観察では、投与期間初期、曝露後の観察で、これも最初の1日、2日目のお話なのですけれども、全動物に自発運動量の減少と不整呼吸が見られ、雌では異常鼻音も見られました。体重は雄では1週目のみ、雌では2週目から4週目に体重の低値が認められました。臓器重量では、肺重量の高値が雄の20 ppm以上と雌の10 ppm以上の群に見られました。病理組織学検査では、鼻腔と肺に影響が見られまして、鼻腔では、滲出液の貯留が雌雄の10 ppm以上の群、移行上皮のびらんまたは潰瘍が雄の20 ppm群以上、それと雌の10 ppm以上で見られました。肺では、細気管支肺胞領域に上皮の増生が雌雄の40 ppm、炎症が雄の20 ppm以上の群と雌の10 ppm以上の群に見られました。出現頻度や程度は濃度段階を反映いたしたものでありましたが、病理組織学的検査で見られた所見の程度は、多くは軽度のものでありました。
 以上の結果から、雌雄マウスの一般状態、体重、肺重量、病理組織学的検査結果に影響が見られたものの、毒性の程度は重篤ではないものと判断いたしまして、40 ppmの濃度で26週間曝露をいたしましても動物の生存に影響を与えるものではないというふうに判断いたしまして、26週間試験のトップドーズも同じく40 ppm群といたしまして、以下20 ppm、10 ppmといたしました。
 それでは、結果について、先ほどと同じようにグラフのほうで説明させていただきたいと思います。
 7ページに生存率を示しております。上段が雄、下段が雌です。御覧いただきますように、生存率に差がありませんでした。
 次の8ページに、体重の推移を示しております。こちらも上段が雄、下段が雌です。雄の40 ppm群では、試験後半で、雌の40 ppm群では試験期間を通して体重増加の抑制が見られました。その範囲なのですけれども、大体6%から7%、1週目の一番高いところでも先ほど御質問をいただいた1週目のところ、雄のところで7%ぐらい、雌のほうはちょっと大きくて、こちらのほうは12%ぐらいの抑制(程度といったかもしれません)になっています。
 次ページに、餌のグラフも示しておりますけれども、こちらのほうも、先ほどと同じように、1週目に摂餌量は下がって、その翌週はリバウンドのように増えているという傾向が、先ほどのp53KOマウスの試験と同様でございます。
 次に、腫瘍の結果について御説明いたします。少し戻りまして、5ページに表1、雄の腫瘍性病変を示しております。脾臓の血管腫と血管肉腫の発生が40 ppm群に1匹ずつ認められております。血管腫と血管肉腫を合わせた発生の2匹はPeto検定とCochran-Armitage検定で有意となります。
 一方、対照群と40 ppm群との2群間では、有意な増加は示されておりません。
 脾臓の血管腫と血管肉腫は、当センターで過去に実施したrasH2マウスの3試験においても、対照群あるいは投与群も関係なく、用量にも関係なく、発生していた腫瘍でございます。
 血管腫と血管肉腫を合わせた発生は、それぞれの試験で、対照群で0~2匹、これは、まさに今回の試験と同じ範囲に含まれるわけではありますけれども、認められております。
 また、本試験においては、雄の脾臓腫瘍に関する肝の非腫瘍性病変を含めて認められておりません。これは、この脾臓腫瘍の発生ががん原性を示す証拠、some evidenceと判断するには不十分と考えておりまして、結論といたしましては、雄rasH2マウスに対するがん原性を示す不確実な証拠としています。equivocal evidence of carcinogenic activityとしております。
 雌の腫瘍発生は、6ページの表2に示しております。雌では、腫瘍性病変の増加はありませんでした。非腫瘍性病変としては、雌雄とも鼻腔から肺にかけて呼吸器に炎症、または鼻部修復に関係する所見が見られましたが、腫瘍に発展するような所見はありませんでした。
 rasH2マウスに関する試験の結果は、以上でございます。
○平林座長 ありがとうございました。
 そうしましたら、ただいまの結果につきまして、御議論いただきたいと思います。
○西川委員 いいですか。
○平林座長 はい、西川先生。
○西川委員 血管腫、血管肉腫がいろんなところで発生するのですけども、さっきの物質の試験で示したように、全臓器での血管の腫瘍の発生については検討されていますか。
○バイオアッセイ/梅田氏 はい。データはここで出せていないのですけど、報告書のほうでは、全臓器のデータを出しております。ここに載せていないのは、もう有意差も何もついていないので挙げていない。
○平林座長 いや、それを合計したときにどうかという御質問かと思いますが。
○バイオアッセイ/梅田氏 増加を示さなかったかと思います。すみません、ちょっと確認をしたほうがいいですね。
○平林座長 今の結果だけを足し算して、雄は1.1.1.4ということかなと思いましたが。
○津田委員 多分、それは血管腫だから、複数の臓器にわたって発生している可能性もあるので、ちょっと確認をしたいですね。
○平林座長 そうですよね。
○バイオアッセイ/鈴木氏 訂正します。報告書には載せてないです。
○津田委員 これ、見て分かるじゃないですか。1.1.1.4です。
○西川委員 いや、だから、一つの個体で複数の部位に血管腫瘍が発生している場合もあるのです。
○平林座長 なのかということですよね。
○津田委員 先生の御質問は、マルチプリシティのことですか。
○西川委員 違います。
○津田委員 全身臓器で、血管……。
○西川委員 ただ単純にこの数字を足し合わせていいかどうかという確認なのです。そうすると、結構、多いですよ、これ。
○津田委員 1.1.1.4です。
○バイオアッセイ/梅田氏 すみません。
 すみませんでした。先生おっしゃるとおりです。1.1.1.4の発生になりますので、Peto検定、有意差、p値が0.05未満で増加傾向、矢印一つですけれども。
○平林座長 そういう意味では、さっきのp53KOマウスよりはある程度、所見があるということ。血管肉腫がどこの臓器にできたとしても、血管肉腫ということでまとめるということは可能かとは思いますので、そういった形で、1.1.1.4の発生数ということであれば、それなりの結果ではあるかというふうに思いますし、Peto検定をされていて、有意差がついているというような結果というふうにもお聞きしました。
 ほかに何か御意見はありますでしょうか。
 それを踏まえても、equivocalでよろしゅうございますか。
○西川委員 いや、僕はsome evidenceのほうがいいかなと思います。
○平林座長 some evidenceと。
○津田委員 血管腫とそれ臓器に取れば、そういうことになります。
○バイオアッセイ/鈴木氏 バイオアッセイとしても、最初にまとめをしたときにも、そういうふうな傾向があるであろうというふうに判断をしております。
○平林座長 それでもというのは、つまり。
○バイオアッセイ/鈴木氏 脾臓のみで判断した場合も全部の臓器で血管腫と血管肉腫を合わせたものを考えても、どちらにしてもequivocalであるというふうに判断をしております。
○小野寺委員 結局、この表というのは、臓器ごとの発生数でしか表されてないので、投与群全体の中で、どこの臓器に関わらず血管腫、血管肉腫の数が増えているかどうかという検定をすれば、良いと思います。
○津田委員 それは、今の1.1.1.4です。
○小野寺委員 はい、ですから西川先生が言ったように、1.1.1.4があって、高濃度において、some evidenceということの結論のほうがよろしいのではないかという意見です。
○平林座長 それを踏まえた上でのequivocalという結論を出したという御説明を今いただいたように思うのですけれど、それは正しいのでしょうか。
○バイオアッセイ/梅田氏 バイオアッセイのほうでも、全臓器で発生率、検定を出して検討したときもequivocalという意見が強かったのですが、ちょっとどのように御報告するのがよかったかなといった反省点も、実はあったかなとも思います。1臓器に対して明らかに上がっていれば分かりやすい結果なのかなというふうには思うのですが、もちろん、全臓器では上がっているかどうかというのを考慮しなければいけないというのも、もう一方であると。今回、両方を並べてみまして、どちらも0.05未満の有意差は一つといったところで、強弱もあまりなかったので、1臓器で上がっていることが表せれば、この程度の増加はあったというのを表せるのかなと思って、今回こういう形で報告させていただいたのですけれども。といいますのは、ヒストリカルデータの全臓器というのも持っていなかったものですから、臓器ごとのほうですと、今バイオアッセイで何試験か出て、このときには4試験あったものですから、過去の3試験と比較をしたりとか、そういうヒストリカルデータの比較が臓器別ですとできたものですから、equivocalに持っていく根拠を示すのに脾臓における発生率はゼロから2匹程度は出る腫瘍であると。その範囲の中での増加であったという判断ができるのかなと思いまして、そういうふうに報告書をまとめさせていただいたのですけれども、そこもなかなか、これでよかったのかなといったところも実際はありますので、こういった先生方の御意見をいただければと思っております。
○平林座長 そうしますと、血管内皮が発がんの標的組織というふうに考えれば、どの臓器に発生したとしても血管腫あるいは血管肉腫ということでまとめるということは、一つの考え方としてあると思います。
 西川先生はその立場でお話をされていますし、そこからすると、決して少ない発生数ではないだろうということで、some evidenceとしてもよろしいかというような御意見かと思いますが、津田先生はいかがですか。
○津田委員 同じことです。ただ、それで、これでもって2年、中期発がん試験をやるかというのは、別の議論です。
○平林座長 はい、分かります。もちろんです。
 ということで、そうしますと、この剤の今回の結果につきましては、陽性は陽性ということになろうかと思いますが、some evidenceということで、先ほどの結果と同じような扱いになろうかと。同じ扱いというのは、つまり、結果としては陽性と判断されるものの、がん原性指針に追加する必要はなかろうということ、それから、リスク評価については、いずれ機会があればまとめていただくことは必要かとは思いますけれども、必ずしも優先順位は高くないだろうというような判断ということでいかがでしょうか。よろしゅうございますか。
 はい、ありがとうございました。
 そうしますと、あとは、事務局のほうから、これ以降のことについて説明をいただくということでよろしゅうございますか。
○神田有害性調査機関査察官 ありがとうございました。
 では、今いただいた議論を基に、資料6の基準の関係で少し御説明させていただきます。
○内田化学物質評価室長 すみません、ありがとうございました。
 それで、今回、資料6ということで、前回の議論を踏まえて、評価基準みたいなものを、取りあえず書き出して、作ってはみたものの、今日の御意見を聞くと、なかなか線引きも難しいといったこともあって、なかなかこういう形でお示しするのが本当に適当なのかどうかという気もしてきました。
 実は、有害性評価小検討会で長期発がん性試験の評価をいただいていますけれども、そちらのほうは、別にこういう評価基準はなくやって、個別、それぞれの状況を踏まえながら、いろいろと判断をされているという状況なのですが、今後、遺伝子改変動物を用いた試験について、評価を行う場合、この評価指針をさらにいろいろ改善しなければいけないかとは思いますけども、ベースにしてやっていったほうがいいのか、もう別にここではなくてもいいということなのか、ちょっとそこの御判断をいただければ、大変恐縮でございますが。
○平林座長 これまでの御意見としては、見直したほうがいいのではないかという御意見が多かったようには思いますけれども、いかがでしょう、津田先生。
○津田委員 いや、今、ちょっと話していたところですけども、それぞれいっぱい出てくると思うのです。というのは、この系統のにも腫瘍発生において、バックグラウンドが結構あるのです。そして、それが遺伝子改変p53KOとrasH2遺伝子を入れたりしますと、それが表面に出てくる。そういうものなのです。その系系統のマウスで見ると、やはり悩むようなデータがいっぱい出てくる。環境中にあって、そんな強くない発がん物質では、こういう難しいことが出ると思います。それでもやっと、辛うじて、有意が出たのを、2年試験に持っていくお金があるかどうかという、厚労省さんの判断にもよってくると思います。
○小野寺委員 いいですか。
 結局、厚労省さんの試験の結果で何か判断できるほど強烈な差というのは、なかなか出てこないと思うのです。ですので、何かの遺伝毒性のとか、いわゆる強さのパラメータの一つの、指標として、優先順位とか、そういうものを決めるときの段階として、これがこういう陽性でp53とか、遺伝毒性疾患じゃなくて、遺伝子改変動物でやったものが、それだけの試験の結果だけで、2年間がん原性試験原性試験を決めるというのは、非常に乱暴だと思うので、一つのデータとして捉えればいいのかなという気が。もしもこの試験で完全に陽性だというのが分かれば、逆に2年間の試験はやらなくてもいいと思うのです。
○平林座長 そういうことですよね。
○内田化学物質評価室長 分かりました。なかなか難しいところではありますけど、強烈な結果が出れば、がん原性指針なりに、そういうところに反映できるかも分からないけれども、なかなか今の状況だと、ちょっとこれだけをもってやるのは難しいというお話でございますよね。分かりましたp53KOマウスを使っていくかどうかも含めて、今後、今の、このスキーム、平成25年からやっていますけれども、ちょっと本当にこういう形で引き続きずっとやっていくのがいいのかどうかも含めて、よく検証しなければいけないのかなと思っておりますので、ちょっと、また改めて御相談をさせていただくということにさせていただければと思っております。よろしゅうございますでしょうか。
○平林座長 ありがとうございます。
 そうしますと、以上になりますでしょうか。
○神田有害性調査機関査察官 はい。
○平林座長 その他、何かございますか。
○神田有害性調査機関査察官 最後、その他ということでございますが、本日検討の議題のうち、中期発がん性物質については、検討いただいた案を基に6月22日に開催される企画検討会のほうで御説明させていただきたいと思います。
 また、先ほど、議論いただきました遺伝子改変動物を用いた発がん性試験の結果の評価につきましては、今後、開催されます有害性評価小検討会のほうに御報告させていただきたいと思っております。
 以上でございます。
○平林座長 座長の不手際で少し時間をオーバーしてしまいました。申し訳ございませんでした。
 以上で本日の発がん性評価ワーキンググループを閉会とさせていただきます。
 本日は、お疲れ様でした。ありがとうございました。

午後3時36分 閉会