第10回 保健医療分野AI開発加速コンソーシアム(議事録)

日時

令和2年1月31日 13:00~15:00

場所

航空会館201会議室

議題

(1)ロードブロック解消のための工程表、俯瞰図に基づくAI 開発促進のための工程表について
(2)その他

議事

 

○黒羽研究企画官 それでは、定刻になりましたので、第10回保健医療分野AI開発加速コンソーシアムを開催させていただきます。皆様方におかれましては、御多忙にもかかわらず御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
初めに、事務局より本日の出欠について御報告いたします。本日は、辻井構成員、松尾構成員、間野構成員、宮田構成員、米田構成員より御欠席との連絡を頂いております。
本日の御欠席の構成員の代理出席ですが、辻井構成員の代理として、国立研究開発法人産業技術総合研究所人工知能研究センターの市川副センター長、米田構成員の代理として、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所の近藤所長のお二方に御出席いただいております。
また、本日は参考人として、内科系学会社会保険連合の小林理事長、外科系学会社会保険委員会連合会の岩中会長のお二方に御出席いただいております。次に、オブザーバーですが、本日は、内閣官房情報通信技術(IT)総合戦略室、個人情報保護委員会、総務省、経済産業省、文部科学省、当省データヘルス改革推進本部から御出席いただいております。その他の事務局及び関係部局等からの出席者については座席表に記載のとおりですので、個別の紹介は割愛させていただきます。カメラ撮りはここまでとさせていただきます。
それでは、以後の議事進行につきましては、座長にお願いいたします。
○北野座長 それでは、議事を進めていきたいと思います。議事に入る前に資料の確認をいたしますので、事務局から説明をお願いいたします。
○黒羽研究企画官 本日はペーパーレスにて実施させていただきます。資料は、議事次第、資料1から資料6、参考資料1から参考資料5及び過去9回分の資料をお手元のタブレットに収納しております。タブレットの操作方法については「操作説明書」を御確認ください。また、御不明な点がありましたら職員が参りますので、事務局まで御指示をお願いいたします。以上です。
○北野座長 早速、議事に入らせていただきます。本日の進め方ですが、始めに議事(1)「ロードブロック解消に向けた工程表、俯瞰図に基づくAI開発促進のための工程表について」です。これまでコンソーシアムでAI活動のロードブロックについて整理を行い、またAIの開発・利活用が期待できる領域について俯瞰図を取りまとめました。今回と次回で、ロードブロックの解消に向けた工程表、俯瞰図に基づくAI開発促進のための工程表を取りまとめていきたいと思っています。
まず、前回の議論の振り返りと、今後の会議の進め方の案について事務局から説明いただきます。そして、これまでもいろいろ多くの御意見を頂きました医療関係職種の人材育成について、文部科学省の取組について御発表いただきます。その後、工程表の素案について、事務局から発表していただき、取りまとめに向けて討議の時間を設けたいと思っています。
議事(2)の「その他」においては、診療現場でのAI導入の現在の状況、それに対する考えについて、参考人の小林先生、岩中先生から、お話を頂く予定です。それでは、議事(1)について、事務局から前回の議論の振り返り等の説明をお願いします。よろしくお願いします。
○三宅バイオテクノロジー専門官 資料1を御覧ください。初めに、これまでの議論について説明いたします。AI開発及び利活用促進に向けて、本コンソーシアムは平成30年7月から全8回の議論を行い、令和元年6月に報告書を取りまとめております。当該報告書では記載のとおり、画像診断支援領域を中心に開発段階に応じたロードブロックについて議論し、迅速に対応すべき事項を取りまとめ、また、重点6領域を中心に、AIの活用が期待される領域の整理を行い、俯瞰図を作成いただいたところです。
前回の第9回のコンソーシアムにおいては、今後の議論の進め方として、令和元年度中にロードブロック解消に向けた工程表、俯瞰図に基づくAI開発促進のための工程表を作成することを確認いたしました。また、工程表が取りまとめられた後には、フォローアップを行うワーキンググループを設置するという方針について確認いただいたところです。スケジュールの表に記載のとおり、本日は、後ほど資料3、資料4を用いまして、工程表の素案について説明し、御意見、御助言いただければと思っております。次回(3月)のコンソーシアムで工程表の取りまとめを行う予定です。
次のページを御覧ください。工程表の素案を用いた議論に入る前に、前回のコンソーシアムで頂いた御意見について説明いたします先ほど申したとおり、前回は開発段階におけるロードブロックについて御議論いただきましたが、頂いた御意見、論点について、事務局で大きくグループ分けし、対応方針の案を記載しています。
「2-1.IRB関係」について、「(2)対応方針案」の表に記載のとおり、論点としては、「一括審査の推進が必要ではないか」「倫理的審査の中身の善し悪しの考え方の整理、事例集が必要ではないか」といった御指摘がございました。
多機関共同研究の場合の一括審査、中央審査につきましては、現在の対応状況ですが、現行の倫理指針に基づき、必ずしも自施設のIRBで審査する必要はないことを確認しております。また、倫理審査については、本年指針の見直しが実施されますが、倫理審査委員会への付議につきまして、多機関共同研究の場合は原則、一研究一審査とする予定としております。工程表に反映しており、後ほど御説明いたします。
審査の中身について、審査委員会の体制に関する基準等はありますが、何が倫理的によいか、注意点は何か、AIに特化したものについて、現時点においては、厚労省としても取組がないのが正直なところですが、倫理的、法的、社会的課題の検討に関する研究事業などで、AIを利用した研究を議論する際の注意点等について検討してはどうかと、案を記載しております。
「2-2.情報の利活用」についてです。次のページの表をお願いいたします。アノテーションの質の担保について、持続的に質の高いアノテーションを実施することが重要との議論がございました。一方で、アノテーションの仕方、粒度は開発目的によって異なり、個別の研究課題において、技術開発も行いながら検討を実施しているところです。このため、方針の案としては、統合イノベーション戦略推進会議等での議論を踏まえ、引き続き研究事業の中で技術開発等を推進することとしています。
また、「機関ごとに医療情報を含め、データの扱いにばらつきがある」といった御指摘がありました。その下に記載のとおり、医療情報システムの安全管理、研究開発のための臨床情報収集の際の病院情報システムの構築・運用、医療機器の利用・開発時のサイバーセキュリティにつきましては記載のようなガイドラインが存在し、また改定にも現在取り組んでいるところです。
「ゲノムデータの家族での連携、世代を超えた連携が必要ではないか」との御意見もございました。データの連携、形式については、AIに特化した課題ではなく、情報利活用の一般的な課題ではありますが、「必要に応じて個別に実施される」と記載しています。
匿名化については、個人情報保護委員会、健康・医療戦略室で匿名加工情報等についてガイドライン・事例集等が既に作成されているところです。画像診断支援AIに係る研究において、AMEDで現在実施いただいている学会主導の研究で、情報の匿名化、主に画像情報について取り組んでおり、学会ごとの手法、検討内容を整理し、来年度に取りまとめいただき、公表いただいてはどうかと、案を記載しております。
「2-3.医療従事者を対象とした人材育成」については、医療従事者に限らず幅広いリテラシー教育、専門教育がAI戦略2019に基づき実施されているところです。厚労省としては、厚労科研において人材育成に関する取組が一部なされており、例えば2019年度に、AIを活用したがんゲノム医療の育成に関する研究等も実施されております。なお、文部科学省では令和2年度から、新たに人材育成に関する取組を開始する予定であり、本日、この後に文部科学省の方より御説明いただきます。
今後の方針としましては、厚労科研の研究結果を活用しつつ、また今後始める文部科学省等の人材育成事業を注視していくとしています。
そのほかの御指摘事項については、AIの開発が期待できる領域として、「デジタルセラピューティクスといった領域もあるのではないか」といった御意見もございました。また、過去に取得した診療データを用いての企業との共同研究につきまして、次世代医療基盤法に基づく情報の利活用という手段もございますが、昨年12月に認定事業者が初めて認定されております。判断の責任問題をはじめ、AIに関する倫理的課題についても御意見いただきました。特に、社会実装に向けた議論としては、「AIのアプリケーションをどのようにして臨床現場に届けるか」「安全性に関する周知やソフトウェア更新をどう運用するか」「レジストリを蓄積して臨床研究や開発のPDCAをどう回すか」といった指摘もございました。これらについて、対応の方針(案)は記載のとおりです。資料1の説明は以上です。これらの御意見と、対応の方針(案)を踏まえまして、工程表の素案を作成しており、工程表の議論の際には、御意見、御助言いただければと思っております。以上です。
○北野座長 本件に関して、御意見、御質問がございましたら、5分程度の議論をしたいと思います。いかがでしょうか。基本的には今までの議論をまとめているものなので、抜け落ちているもの、意図と違うというものがなければ、このようなまとめになるのではないかと思っていますが、特にございますでしょうか。よろしいですか。
なければ、次に進みたいと思います。次は、文部科学省の人材育成施策について、文部科学省高等教育局医学教育課の荒木企画官から御説明を頂ければと思います。よろしくお願いします。
○文部科学省高等教育局医学教育課荒木企画官 文部科学省高等教育局医学教育課の荒木と申します。高等教育局ですので、大学等を中心とした人材養成という観点で様々な事業をやらせていただいております。その中で、来年度、政府予算案として要求しているものについて、資料2を基に説明させていただきます。資料2の頭紙に「先進的医療イノベーション人材養成事業」と書いています。2ページを御覧ください。先進的医療イノベーション人材養成事業保健医療分野におけるAI研究開発加速に向けた人材養成産学協働プロジェクトという長い名称ですが、これが名を体を表しているということです。背景・課題につきましては、ここに出席されている有識者の先生方は当然御存じの部分で、特に我々は、このコンソーシアムで御提言いただいた報告を踏まえて、人材養成が重要だ、特にAI人材ということを含めて予算要求をさせていただいております。少し繰り返しになると思いますが、御辛抱いただきまして、少し説明させていただきたいと思います。
背景・課題です。AI教育については、保健医療分野に限らず全般的な充実が政府の全体の戦略で求められております。特に保健医療分野については、患者等に対する多様な医療データを活用したAI技術の社会実装の実現性が高いものが多いということですので、非常に期待が高い分、そこの部分の人材養成については、まだまだ不十分ではないのかという御指摘がされております。
それに応える形でやるというのが事業ですが、AIを含めた科学技術を保健医療分野において開発・推進できる人材ということです。そこの前には、「重点6領域」というのは、このコンソーシアムで御提言いただいたもので、ここを中心にやるべきではないかというのが3つ目のマルです。あとは諸外国のAI開発を考えると、我が国も大学、医療現場、企業等の関係者が一丸となって対応する必要があるということです。
事業概要です。取組内容を書いていますが、医療系学部を有する大学を中心に、保健医療分野におけるAI研究開発の重点6領域について、民間企業・団体等の協力を得て、医療現場のニーズ・知見を用いて、AI技術開発を推進する医療人材を養成したいと思っています。
具体的には、イメージを横に書いていますが、大学病院を有する大学、あるいは保健医療関係の大学の医療資格保有者を対象にして、その方にAI技術を推進・活用できるような人材養成プログラム、単純に言いますと、大学ですので修士課程とか博士課程を作っていただいて、そこで人材を養成し、その方々が卒業して横に展開していっていただくと。その際に、民間企業・団体からの御指導、あるいは研究機関との連携を図ることで、正にAI技術の提供であったり、プログラムの評価を頂く、あるいはやはり大学、大学病院ということで、医療従事者ですと現場の課題を発見しやすいというのもありますし、作ったAIプログラムについて、例えばブラックボックスは何が問題なのかとか、あるいは使い勝手のいいAI技術になっているかというのが、保健医療従事者がやるべき素養なのかなと思っておりますので、そういう観点でのプログラム作りをイメーージしております。
事業期間については最大5年間ということで、もし政府予算案が通りましたら、来年度からということになります。選定件数ということで額は少し縮まったのですが、結果としては2拠点で、1拠点が1億円という形で、まず拠点を形成して、そこから横展開を図るためのプロジェクトとさせていただいております。
期待される効果は、書いていますように、AIの活用による新たな診断方法・治療方法の創出であったり、働き方改革で言われていますように、後で内保連、外保連の先生方からもお話があるかもしれませんが、例えば医療従事者の負担軽減にもつながれば、最終的にはいいかなと思っております。以上が、主のプロジェクトの説明でございます。
次のページに付けていますのが、今年度から開始しているもので、AIとも少し関係があるということで今回提出させていただきました。医療データ人材育成拠点ということで、医療のデータというのがどんどんたまるような制度、あるいは法制度も整備されてきております。これをどのように活用していくかということです。AI技術についても、この医療データを活用していく形になると思いますが、その医療データの活用基盤の運営構築のための人材も不足しているだろうと。医療データという特殊なデータですので、そのクレンジング、あるいはどういう視点で構築していくかということについても、まだまだ人材が不足しているということで、これは今年度にスタートで、これも2拠点ということですが、東京大学を中心とした1つのグループ、もう1つは京大を中心とした関西広域のグループ、この2グループで今年度からスタートしております。こちらの医療データの拠点と、もし始めることができれば、新たに来年度から、このAIのプロジェクトをうまく連携させることによって、更に相乗効果を高めたいと現在では思っているところです。以上です。
○北野座長 これに関して、質問、コメント等はございますでしょうか。事業概要にあるAIの技術開発を推進する医療人材の育成・教育拠点についてですが、具体的にどのような活動が行われることをイメージすればよろしいのでしょうか。
○文部科学省高等教育局医学教育課荒木企画官 少し説明不足で恐縮です。具体的に言いますと、事業概要のイメージ図の所で申し上げますと、基本的には大学、医学部ですと大学病院を付設しておりますが、大学の医療資格保有者を対象に、AI技術、すなわちプログラミングも含めたAI技術を推進・活用できる人材となるような養成をすると。ですので、例えば企業や研究所から先生として来てもらうとか、例えば他の大学の理学部とか工学部の先生方に来てもらって、医療系の大学院のコースを作っていただきますので、大学院生にその技術を教えることによって、例えば臨床系の先生に大学院に入っていただいた際に、自分たちの分野での課題というのがあると思いますが、それをAI技術を活用して、正に作ってもらうということをトレーニング、訓練することによって、そういう方がどんどん新たなプログラムを作っていけるのではないかと思っています。
後で内保連、外保連の先生方からも御発表がありますように、既にそういう素養のある先生方が個別にたくさん作られているかもしれませんが、その裾野を広げるという意味でも、医療従事者の方にAIの開発の素養を付けていただくような修士課程や博士課程を作っていただきたいというようなことです。
○山内構成員 今お聞きしていて、日本は割とゲノムの研究などもそうなのですが、医者がバイオインフォマティクスをやろうとすることが多いと思います。今の発言を聞いていると、「医療資格保有者」と書いてあるのですが、例えば医師がAIのそういうことを学んで開発をというようなことを考えていらっしゃるように思えますがいかがでしょうか。やはり医療者と、AIの工学部の方とか、企業の方とか、専門家の方々がいて、一緒にという感覚でいくような方向性をチームでというのがいいのではないでしょうか。日本でもやっとチーム医療が進んできて、看護師、薬剤師、医師がそれぞれの役割をやって、チームでという形が医療現場でも非常に根付いてきていて、医師がAIの開発をしなくていいと私は思うのです。医師は医療現場での活用の仕方を提供して、ただ、提供したり医師が医療現場で使うに当たって、どうやって機械学習をして、どうやって学んでいって、どうやってこれができてきたのかと、よく言われるブラックボックスがどうなのかということが分からないと医師も不安なので、それをちゃんと教育して、そして、それを医療現場のニーズをAIの開発の方に伝えて、一緒にそれを作っていけるというスタンスも考えていただきたいと思いました。
医療資格者がAIの開発をというのではなくて、一緒にという形のスタンスを、もう少し明らかにしていただけたらなと思います。そういうスタンスを考えていらっしゃるのかという御質問と、もし考えていらっしゃるのであったら、そういうスタンスを明らかにしてほしいなとは思いました。
もう1つは、そういう点でいくと、文科省として、医学部での教育というのをどう考えていらっしゃるかということがあります。今の医学部の学生は本当に勉強しなくてはいけないことが多くて、もうぎりぎりの限度だと思うのですが、私たちがAIに関して学べるといったら、ネットとかテレビとか、機械学習とは何ぞやとか、アノテーションはどうするのかとか、そういうものでしか学んでいけないのです。今の医学部の学生が医療現場に出たときには、さあAIを使ってみなさいということになってしまうと思うので、少なくともそういうターミノロジーの基礎知識みたいなものも医学部で学んでいかなければいけないような時代に、もう早急になってくると思いますので、その辺も文科省のほうで是非御検討いただけたらなとは思いました。

○文部科学省高等教育局医学教育課荒木企画官 貴重な御助言をありがとうございます。まず前者についてです。確かに、この事業、プロジェクトを考える際に、羽鳥先生をはじめとして、このコンソーシアムのメンバーの一部の先生にもいろいろとお伺いに行きました。確かにおっしゃるとおりで、AIならAIの技術的な理工系の専門家の先生を中心に、そこに医学の知識なのか、あるいは保健医療従事者にAIの技術的な知識を、どちらがいいのだろうというような議論もあります。その中で、先ほど申し上げましたように、まず課題を現場で見付けられるかどうか。そして、先生がおっしゃったように、ブラックボックスが何かというのは、実際に使用されている現場の先生でないと分からないとか、あるいは現場の実装というのが一番近い分野だと思いますので、その際に現場で全然使えない、この手順では使えないというようなAIだと困るというようなことで、まずは保健医療従事者の方にAIを、望むべき姿は、AIの技術の専門家の先生に、保健医療分野の先生とタッグを組んでやると。これは望ましい姿ですし、こういうことも併せてやるべきだと思いますが、まず、できるだけ早くということを考えた際に、保健医療の先生方、特にドクターの方々は大変臨床でも忙しいのは重々承知していますし、そのための働き方改革も進んではいるところなのですが、そういうことに関心のある先生方が多くて、個別に技術も出てきているということも伺いましたので、最終的には両方でやりたいのですが、まずは保健医療従事者の先生方に、AIの技術を学んでいただくような講座がいいのかなということで提案しております。でも、実際にはこれは応募になりますので、どういう形のものが出てくるかは別としても、試案の段階では、そういうような議論もあって、こういう形にさせていただいております。提言の部分については、しっかりと受け止めたいと思っています。
2点目の学部教育の段階においては、医学部については医学教育モデルコアカリキュラムというものがございます。この中でも、時宜に適した形でいろいろな項目を加えているところです。今、先生からも御提言をいただきましたし、正に、臨床の現場に出たときに、既にうAIが、ある程度出てきつつある、あるいは今の学生の場合、かなり出てきているかもしれませんが、そういう素養というのも重要だと思いますので、次期の改定におきまして、どのように検討するかというのは是非、項目として忘れないようにしておきたいと思います。
○北野座長 ありがとうございました。
○山本構成員 私も山内構成員が思ったことと全く同じことを思いました。今の御説明を聞いて、短期的に急いでいるから、まずは医療従事者、医療の知識のある人を取りあえず育てるということなのですが、それだけだと長期的には技術の開発力は上がらないと思うので、ちょっと違うところですが、生物統計家育成支援事業というのをAMEDがやられていて、生物統計家というのは薬剤師とか医師が兼ねている場合もあるのですが、純粋な生物統計学という研究領域としてあるわけです。実際に見ていると、医療従事者が兼任する場合は、技術力というか、能力的には頭打ちになることが多くて、取りあえず目の前の課題を解決することはできますが、それで更に専門領域をどんどん高いレベルを目指すかというと、そういう方も中にはいらっしゃいますが、皆さんそうなるわけではないので、更に技術をどんどん進めていくためには、専門家と言うか、理工系のそれなりの方が医療の知識を付けていくというようにしないと、長期的には伸びないと思いますので、短期的なやり方として、今回これをされるという御説明なので、そこは了解しますが、中長期的には、それだけだと間に合わないのではないかという気はいたしました。
○文部科学省高等教育局医学教育課荒木企画官 御助言は十分に承知いたしました。ありがとうございます。
○羽鳥構成員 しかるべき大学を選定するにあたっては、客観的公平的に選んでいただきたいと思います。
あまり何もかもこの大学に任せるというのでは、偏りも負荷も過大になると思われます。
○北野座長 重要なポイントだと思いますので、コメントをお願いします。
○文部科学省高等教育局医学教育課荒木企画官 反論するつもりは全くないのですが、適切な審査をしているつもりでありますが、今のお言葉も含めまして、本当は、ある程度拠点を増やすという方法もあると思いますし、集中して進めていくという方法もありますが、もし予算が通って、公募された際には適切な審査をさせていただきたいと思います。
○北野座長 1つ質問があります。医学部の中にコースを作るという話があったと思うのですが、今、AI教育と言ったときに、全領域でAIのカリキュラムを作るということをやっているわけです。しかも認定制度でやっているわけです。それで、教える人が足りなくて、どうしようかといっているところで、更に医学部だけでコースを作るということは、やれる所はやられたら良いと思うのだけれども、リソース的にできないという所もかなり出てくるので、むしろ工学部のコースを取って医学部の単位で認定するということを、もう少し弾力的に運用しないと、現実的ではないような気がするのです。つまり、学部を超えた単位認定の柔軟化というものを徹底的にやらないといけないと思います。今、確か工学部の幾つかの拠点に関してクロスで、学部を超えて単位認定をするということは幾つかあったと思いますけれども、これを本当に自由化するぐらいのことであったり、場合によっては学校を超えて、この拠点のAIのコースは他の大学からの受講者にも単位認定するなどの、結構思い切ったことをやっていかないと現実的にはほぼ追い付かないというような感覚なのです。その辺まで踏み込まれるのか、それとも特定の大学に予算を配布するという話になるのか。どちらにいくのかで、思想が全く違うと思うのです。その辺はどのようにお考えなのかというところのコメントをお願いします。
○文部科学省高等教育局医学教育課荒木企画官 非常に痛いところと言うか、正に人材が不足しているというのは、教える人の人材も不足しているということです。今御指摘いただきましたように、医療データについて、これは結果として東大と京大が中心なのですが、例えばそれぞれ連携大学と一緒にやってくださいということを条件としています。単一ではなくて、しかも国公と私立を合わせてやってくださいということを条件に募集しています。特に、京大は関西の公立、私立も含めて入っていますし、そのときには、おっしゃったようにクロスアポイントメントを使っているかどうかは別としても、各大学から講師に来てもらってやるとか、あるいは御指摘のように他学部、特に工学部の先生、理学部の先生も講師と言うか、入っていただいて、教養の形での大学院レベルですので、大学院としてやられているということですので、今度のAI人材の養成についても、医学部単独と言うより、しかも1大学の単独と言うよりも連携してやっていただきたいということは公募要綱にも書き込もうと思っております。
○北野座長 分かりました。これは、まだ議論をすることはいろいろとあると思います。本日は他にも議論する内容が多く、次にいかなければいけないので、短かめでお願いいたします。
○厚生労働省データヘルス改革推進本部葛西プロジェクトチーム技術参与 資料に「保健医療データプラットホーム」と記載いただき、ありがとうございます。「保健医療データプラットホーム」についてアドバイスをしている者です。「保健医療データプラットホーム」の「保健医療」という言葉については、非常に悩むのですが、簡単に言うと、介護データと医療はデータの構造が全く異なります。介護データはかなりフラットで、医療は構造化されています。医療に関しても、レセプトと診療情報はデータ構造が全く異なります。更に「保健医療データプラットホーム」には健康が入ってくるのです。そのため、むしろ私自身の中での悩みは、健康情報を扱うことであったり、介護情報を扱う人材のほうが圧倒的に少ない点なのです。
医療と工学者の壁をできるだけ取ることも大事なのですが、介護と医療、また医療もレセプト系と診療情報系、健康系と言った、横断的にの情報分析を行わなければ全く意味がないと考えます。皆様に是非お考えいただいて、この保健医療データプラットホームをいろいろな方々に使っていただけると有り難いと思っているという次第です。○北野座長 ありがとうございます。いろいろあると思いますが、先を急がせていただければと思います。次に、引き続き事務局から資料3、資料4に関して説明をお願いします。
○三宅バイオテクノロジー専門官 それでは、資料3をお願いいたします。「資料3、ロードブロック解消のための工程表について」です。
2ページ目は、これまでの議論の状況の振り返りです。前回は、「重点6領域」について、表の青色の部分の考慮すべき開発段階が何であったか。また、その開発段階ごとのロードブロックが何であったかといった点について御議論いただきました。今回と次回においては、黄色の塗りつぶしの箇所の工程表の作成について御議論をお願いしたいと考えております。
3ページ目からは、事務局で省内関係部局と相談しつつ作成した工程表の素案です。右下の四角に、前回確認いただいたロードブロックの整理を記載しています。ロードブロックのレベルとしては、Aの「法改正が必要な事項」、Bの「運用ガイドラインの作成や制度の運用の変更が必要な事項」に分類されるものが優先順位の高いロードブロックになるだろうと考えております。
4ページ目からが素案です。形式としては、左に開発段階、そして、領域。重点6領域のうち、手術支援といった領域特有のロードブロックがありましたら、そこに領域名を書こうと思いましたけれども、前回のコンソーシアムの議論において、結局、大体ロードブロックとしては共通するものが多い。ただ、手術と介護では求められる基準が違うといったようなレベル感については領域特有のものを考慮する必要があるという結論でした。ここに挙げたロードブロックについては、領域としては「共通」と記載しています。その横がロードブロック、それに対する着手・対応済みの事項で、ここまでは前回の資料等にも記載があったところです。その右が取組事項、これは新しく記載をした部分です。
資料1の繰り返しになる部分も多くありますが、説明いたします。開発段階(1)IRBについてロードブロックとしては、審査の質の均一化、中央IRBの話、人材の不足等について御指摘がありました。今後の取組事項としては、医学研究等に関する倫理指針の見直しにおきまして、倫理審査委員会への付議について、多機関共同研究の場合、原則一研究一審査とする予定です。来年度の前半に指針の改正、ガイダンスの作成を行いまして、周知活動を実施するとしております。
5ページ、(2)Informed Consentについてです。制度の認知度の問題や情報の第三者提供に関して学術研究の範囲等について議論がなされました。医学研究等に係る倫理指針の見直しで、電磁的方法によるインフォームド・コンセントを可能にするなど、新たな手続を規定する予定です。
また、指針の改正に伴いまして、インフォームド・コンセントに関する新たな規定の周知のみならず、研究を実施する上で個人情報の保護に関する関連法令が適用されるケース、研究倫理指針が適用されるケースに関する整理の再確認を行うと記載しております。
6ページ、(3)アノテーション/ラベリングです。ツールの開発、質の担保といった指摘がありました。現在、AMEDで行われている画像診断支援AIに関する研究の中でも、技術開発に関連する検討を実施しております。アノテーション/ラベリングそのものについて技術開発要素も大きいということで、引き続き、技術開発の推進等を行っていくと記載しております。
7ページ、(4)データ転送・標準化/匿名化についてです。今、安全にデータを扱う上でのルール及びセキュリティの確保といったところの御指摘がありました。記載のとおり、様々なガイドライン等が作成され、改正される予定です。また、中ほどの電子カルテの標準化については、医療情報化支援基金の活用等により技術動向を踏まえた電子カルテ及び医療情報システムの標準化を推進することと記載しております。現在、省内で検討中であり、これ以上の情報を本日はお示しすることができません。
8ページ、(5)クラウドでの計算/データストレージについてです。ガイドラインについて記載しているほか、データヘルス改革の一環として、AI開発基盤に必要なデータの収集、研究者や民間等が利活用できるサービスの実現を目指すこととしておりまして、そのためのクラウド環境の設計・開発に要求されるセキュリティや認証方法条件を検討する調査研究を今年と来年に実施し、その結果を踏まえて、クラウド環境の同定・推進を進めることと記載しております。
9ページ、(6)臨床での検証についてです。現場でのAIの使用に当たって、適正使用のための留意事項、問題が発生した場合の責任の所在等について議論がありました。医療機器の品質、有効性及び安全性の確保については、薬機法において採用しているところです。また、診断・治療等を行う主体は医師であり、医師がその最終的な判断の責任を負うことが示されております。AIの開発状況を踏まえ、引き続き検討するほか、AIに関する倫理的法的社会的問題の抽出、検討等を行う研究事業等は継続することを記載しております。
10ページ、(7)PMDA審査等/薬事承認についてです。AIの特性を配慮した薬事制度の整備が必要ではないかということですが、ロードブロックで唯一、Aが付いているものになります。
これについては、昨年末、臨時国会で改正薬機法が整理、公布されまして、改正薬機法の円滑な施行に向けた政省令の整備、研究事業等を実施する予定としております。
11ページ、(8)商用展開/アップデートについてです。現在、研究として行われているAI開発について、各学会が、それぞれの現状や環境に応じた持続可能なエコシステムが築けるかを検討しているところです。それは来年度、最終年度で行うと記載しております。
12ページ、(9)その他として、国民への普及啓発、医療関係職種に関する人材育成、AIの評価・質についても御指摘があり、それに対して記載しております。
ここで、参考資料4をお願いいたします。参考資料4は内閣府が取りまとめた資料です。関係府省庁のAI関連の指針・原則・ガイドライン俯瞰について、どういったものがあるのか、これまでも構成員の先生方から御質問がありました。全体としては、「人間中心のAI社会原則」というのが一番上にありますが、その下にあるように、関係府省において、分野横断的なものと、分野個別のものについて様々な指針・原則・ガイドライン等が作成されております。分野横断的な動きも見ながら、医療に関して必要な検討を今後も実施することを工程表として考えております。資料3の工程表については以上です。
続いて、「資料4、俯瞰図に基づくAI開発促進のための工程表について」です。本年6月に取りまとめていただいた「健康・医療・介護・福祉分野においてAIの開発・利活用が期待できる領域」の俯瞰図で、3ページが6月にまとめていただいたものです。
4ページです。このうち、過去に「重点6領域」と呼んでいたものを青枠で囲んでいます。また、前回のコンソーシアムで、デジタルセラピューティクス(医師の管理下で患者自身が使用する治療目的のプログラム)、例えば禁煙の支援のようなアプリケーションといったものが想定されますが、そういったものが俯瞰図から抜けているのではないかという御指摘、御議論がありました。それについては、実際に患者さんが使う医療技術・支援技術に当たるということで、医薬品開発のための研究基盤というわけではなく、診断・治療支援領域の中に、gとしてデジタルセラピューティクスという分野を追加した案をお示ししております。また、この後、整理のために記号を付加しております。
5ページは、平成29年のコンソーシアムの前身となる「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会」における工程表です。記載のとおり、赤字で示していますが、ゲノム医療、画像診断支援、診断・治療支援、医薬品開発、介護・認知症、手術支援で取り組むとされておりまして、実際、このとおりに進んできたと考えております。
これらを踏まえて、作成した工程表の素案が6ページ以降です。7ページからが俯瞰図に基づく工程表(案)です。素案ですけれども、AI戦略に基づく取組の推進、コンソーシアムにおける議論(ロードブロック解消のための工程表)に沿った取組、フォローアップの際にロードブロックが何であるのか、継続的な検討も行いつつ必要な制度的な問題等についての取組を行うといったようなこと。その下に、俯瞰図に基づきまして研究開発推進、実用化に資する取組として、現在、厚生労働省で実施されているものが何であるか、今後の予定がどうであるかといったことを記載しております。
予防、診断・治療支援、介護・認知症、そして基盤として医薬品開発、ゲノム医療、人工知能開発基盤、その他として法改正について記載しております。
資料4について、各領域の研究課題についての補足資料としてタブレットの中にどういった研究かといったものを、20番、俯瞰図、工程表、参考資料集というものもありますので、併せて御参照いただければと思います。説明は以上です。
○北野座長 資料3、資料4と2つありますので、まず、資料3から議論したいと思います。資料3のロードブロックの解消のための工程表に関してのコメント、質問等がありましたら、ここで議論したいと思いますが、いかがでしょうか。
では、そのイシューに関しては、今までずっと議論してきたところで、サマリーをベースにアクションが、ある程度書いてあるということですが、こちらの令和2年度(2020年度)からのアクションのところで漏れているものとか、違うのではないかといったことがあるのかということが1つのポイントになると思います。どうでしょうか、これを見ていただいてご意見があればお願いします。
○末松構成員 ロードブロックの資料3の5、6ページ辺りでしょうか、インフォームド・コンセントのひな形を作成し共有すべきということで、これは大賛成です。先般、紹介しましたAMEDの事業の「画像兄弟」でも、これはなかなかソリューションが出ない。各論的なことですけれども、例えば、ニューラルネットワークという一番基本中の基本のものがあるので、画像を使ったAIの開発は加速するのではないかという期待を持って始めて成果もそれなりに出てきたのですが、臨床現場で患者さんの情報を取るときに、皮膚科や眼科の先生は自分で説明するわけですよ、インフォームド・コンセントを。ところが、CTとか超音波は、つまり医学放射線学会と超音波学会ですけれども、自分が説明するわけではないわけです。それから、大学によっても全然インフォームド・コンセントの文章が今のところばらばらで、それを何とか「画像兄弟」の中で、画像系のものを一括してインフォームド・コンセントが可能かどうかということで、一応検討はやっているのですが、まだ答えが出ていないというか非常に難しいです。 今、ここで指摘したいのは、そういうインフォームド・コンセントのheterogeneityの問題もさることながら、厚労省に見解を伺いたいのは、参考資料5を提示させていただいています。イギリスのやっていることが全部いいことだとは思っていませんが、参考資料5の一番最後の所ですけれども、お時間のあるときに是非見ていただきたいのは、イギリスのナショナルヘルスサービス(NHS)のホームページですが、青い所がこれですので見ていただくと分かるのですが、黄色い吹出しの所は、該当する文章の訳文が書いてあります。右ページの左側の列の一番下を見ていただきたいのです。これはデータの二次利用に関する定義をかなり踏み込んで書いてあります。このとおりにしろと言っているのではなくて、このぐらいのことをやらないと、民間と公的機関で協力してAIの開発を促進しようということは恐らくできないだろうと。つまり、「二次利用が可能なのは、NHS、自治体、大学や病院の研究者、新たな治療法の研究を行う医学部」までは学術研究という扱いで日本と同じですが、その後に「企業」と書いてあり、企業での二次利用を何らかの形で促進しますよということを、このように厚労省のほうで踏み込んで言っていただいて、それがあるからインフォームド・コンセントも産業利用をやることが本来の姿だということを、踏み込むことができないのでしょうかという質問です。
この中にはいろいろ意味の大きいことも書いてあって、このAIとは関係ありませんが、一番右側の列の上から2つ目は「患者個人情報の二次利用についてオプトアウトすることができる」、その下に、「オプトアウトした場合でも疾病大流行時等には情報を本人の同意なしに使える」ということを書いてある。正に、そういう状況がくるかもしれない状況です。そういった踏み込み方を厚労省のイニシアチブでやるということができないのかどうかをお聞きしたいのですが、いかがですか。○黒羽研究企画官 御意見ありがとうございます。こちらの位置付け等について、今後、研究していきたいとは思っていますが、今までの御議論の中では、例えば前回の9回目の資料の中にもインフォームド・コンセントのひな形を作って、そういうの活用いただくことを御提案させていただいているところです。
今、理事長から示していただいた資料の位置付けについて、日本の法令などに該当するかということも確認しないと、現状では、それを厚労省としてお示しできるかどうかというのは即答できないということです。今後、研究していきたいと思います。
○北野座長 ここのところは、前回までの議論のインフォームド・コンセントのところで一番議論していたところですよね。オプトアウトでやれるかどうかは研究の範囲なのか、商用利用なのか、商用利用だったら、個別製品の競争優位のところはオプトインが必要だろうけれども、そうではないところはオプトアウトでいけるかどうかという形で、個人情報保護委員会の見解はどうかといったことをいろいろ議論したところなので、これは、もう一回初めから勉強しますではいけないと思います。今まで何回も議論した意味がないと思うのです。これは立場を鮮明にしないと進まないと思います。
○黒羽研究企画官 それについては資料3の19ページ目に、共同研究を行う場合、どこまでが学術研究なのかというのを整理していただいたものを示しています。共同研究の中でも学術研究に当たるようなものについては、オプトアウトができるというような整理をさせていただいていると理解しております。
○北野座長 ここの面白いのは、NHSのものは学術研究かどうかというところでの区切りをしていなくて、単純に企業が使うかもしれないと言い切っているというところが我々の議論より踏み込んでいると思います。そこのところを我々は本当に踏み込むかどうかということをきちんと議論しなくてはいけない。民間企業の開発もオプトアウトで可能とするのかというのが一つの議論のポイントです。もちろんプライバシーの問題とか、いろいろありますから配慮は必要なので、何でもかんでもということには多分ならないと思いますが、そこのところをどうするかということは、非常に大きな問題ではっきりさせる必要があります。
もう1つは、前回のこの議論の中で大坪審議官から次世代医療基盤法があるから、それでできると言うのだけれども、ただ、いろいろ話を聞いていると次世代医療基盤法のデータベースはsynchronizationが弱いのですよね。この辺りの話は現実どうなのか、本当に使えるかどうなのかをきちんと議論しないといけないと思います。もし、次世代医療基盤データベースが余りうまく使えないということになると、ここのオプトイン、オプトアウトの議論はその全体から覆ることになります。そこのところは多分、このコンソーシアムの最大のポイントなので、もう少し議論する必要はあると思います。
○山本構成員 私は原文をまだ読んでいないのですが、最近のLancetに、日本人の、それも医学生が、何かレターですか、コレスポンデンスを出したというのが話題になっていて、何かというと、世界各国のワクチン接種率と、その政府の信頼度、国民による信頼度が相関しているというデータを出したという話で、日本は割と低いとなっていたという、それがLancetに出てしまった話があったのですが、正にそういう話だと思うのですよね。これは、診療データをただ単に利用するというのは、医療者から見たときには、別に診療内容には何も影響しませんので、患者さんに直接何か被害が被るとか、何か不利益が被るということは、まずないというように医療者は考えているのですけれども、残念ながら、そのように患者さんには伝わっていないし、むしろ患者さん側は、何か個人情報を使って何か悪いことをするのではないかとか、何か変なことが起こるのではないかとか、ちょっと疑心暗鬼になる部分があって、そこはきちんとしなければ。それと、それは何の目的でやるか、誰かが勝手に何か利益を上げるためにやるのではないかという気持ちもやはりあると思いますし、そこが日本はまだ、いわゆるペーシェント、何でしたか、PPIですよね、要するに、医療者と患者さん、それから、行政と国民の間が余りフラットになっていないというか、コミュニケーションが取れていないところが一番こういうところに出てくるのではないかという気がはするのです。ここは一番大事なところなのですが、専門家とかだけで話しているだけでは片づかないかなと思います。法律がどうのこうのではなくて、恐らく医療が良くなって、自分たちがちゃんと利益を享受できるから、自分たちの医療情報を使わせるという、やはり国民的理解の素地がないと、勝手に、幾らこちら側が一生懸命インフォームド・コンセントの文章を整えたとしても、そこは余り役に立たないのではないかと、私は現場から考えるとそのように思います。今すぐできることではないのですが、やはりそういうつもりでやらないと、いつまでもこういう狭い中でしゃべっていても解決しないのではないかという気はします。
○北野座長 ありがとうございます。あと、次世代医療基盤法のデータベースはこういうことに関して使うということは非常に難しいことなのですか。大変重要なポイントだと思うのです。
○末松構成員 分かりやすく説明すると、ミンチ肉を見てそれがティーボーンステーキのヒレなのか、サーロインなのか、まあそういうことですよね。要するに、臨床タグ情報の対応がきちんと付いていないものをゲノムのデータだけをばらばらにしましたとか何か言っても、ミンチ肉から元の肉がどこの骨にくっ付いていたかなんて、分かるわけないじゃないですか、そういうことだと思います。ワークしない法律をつくっているのは時間の無駄だという、そういうことですよ。
○三宅バイオテクノロジー専門官 補足させていただきます。末松理事長からお示しいただいた参考資料5のような強力な二次利用のポリシーについては、一律にこのような方針で統一することは大変難しいとは思います。医療情報の二次利用により、開発、更なる公衆衛生の発展等に資するようにするといったところは推進しておりまして、企業による二次利用が可能なようなインフォームド・コンセントを取ってはいけないというようなことはありません。
○末松構成員 そこは、お立場はよく分かります。分かるのですが、このように解釈していいですよということが書いてあるのに対して、NHSの真反対のドイツはすごく厳しいです。私はイギリスがいいと言っているのではない。イギリスも、NHSの一番最初を見てください。左の上ですが「個人の医療情報は、本人の医療に役立つと共に、サービスのプランニングや治療法研究に役立つ」とはっきり書いてあるのです。こういうのが大事なのではないですか。こういうデータを二次利用すると、こういうベネフィットがありますよと。ところが、倫理委員会によっては「そういうデータの提供が、あなたの医療に役立ちます」と書いてはいけません、という所はけっこうあります。例えば自分のゲノムというのは、先祖1,000人ぐらいのゲノムから自分のゲノムが成り立っているとか、それが今度子孫にいくとか、そういうシェアの気持ちとか、ベネフィセンスとか、ジャスティスに相当するものが生命倫理の原則に反しないので、そういうリテラシーを、もっと厚労省は、いろいろ大変なのは分かるのですが、踏み込んでほしいなという気持ちです。
○厚生労働省データヘルス改革推進本部葛西プロジェクトチーム技術参与 私も全く同じ意見です。厚労省の答弁ではなく、厚労省にアドバイスをする立場から、少し御紹介します。例えばNDBとか、DPCとか、これは、ミンチ肉で例えるならば、どこの肉かというのがはっきりしているデータベースです。それから、去年、健保法を法改正を行い、NDBの民間利用も可能となっており、公益性に資するものであれば使えるとなっているのです。更に今、私が一生懸命活動しているのは、例えば、がん登録とか、全ゲノム、パネルのゲノムは理事長も御存じのとおり、二次利用は最初からOKで進めていますので、それらの民間利用です。是非、皆様から御意見を頂きながら、厚生労働省としても、一個一個改正を進めるものと考えます。ただ、基本的に大きく違うのは、海外、例えばNHSなどは、いわゆる全体像として医療情報は、基本的に、まず国民のものであり、患者のものであり、その利益に資するのであれば使えるべきであるという基本ポリシーを強く持っている点です。アメリカもHIPAA やHITECHは早くからあります。医療情報は国民・患者のものであることを、いろいろな所で言い続けないと、どこかで忘れてしまわれがちです。そのため各法を直していくのかというのは、これからの大きな課題だと思っております。
○北野座長 分かりました。
○渡部構成員 これ、研究と企業という、何か、この切り分けそのものが余り合っていないのだと思うのですね。例えば薬を研究したら、それを事業化して使うのは決まっているわけで、企業と言うときに、そういうストレートに研究の医療現場に届けるということと、例えば、プラットフォーマーが、今、Cookieを使って広告を送ってくるとかがあって、その辺って、やはり国民の抵抗はすごくあるのだと思います。だから、もう少しボーダーラインが別の所にあって、プラットフォーマーなアクティビティは別の角度から保護しようとしているので、そちらでカバーできるのか、個別にやらないといけないのかというのがあると思いますが、少しカテゴリーをバリューチェーンというか、もう一回整理し直すところからやったほうがいいような気がします。
○北野座長 この議論は、やはり非常に重要で、この委員会の最も重要なトピックだと思います。前回に、このところをリキャップして、もう少し更に踏み込んで整理する必要があると思います。前回の議論では、次世代医療基盤法があり、それを使えば、オプトアウトで開発も可能としようと目指している範囲はカバーされるから、これ以上踏み込まなくても大丈夫だというのが現状の整理の大前提なのです。それが使い物にならないのだったら、もっと踏み込んだ整理をしないことには話にならないので、そこは非常にクリアにしておく必要があります。これは次世代医療基盤法のものが使えるという前提だったら、ここまでの整理で良いですが、それが使えないのであれば、もっと踏み込んだ整理をしていかないことには、日本での医療関係のA I開発は、その一つのルートが塞がれることになります。ここのところをどうするかというのは非常に重要なポイントなのです。今日、まだ他にも議論することがあるので、これだけやっているわけにいかないのですけれども、この辺を集中討議するようなことをやらないといけないと思います。。
○羽鳥構成員 日本医師会は何でも反対だと思われているかもしれませんが、この議論に関しては、全く、末松先生、山本先生のおっしゃるとおりだと思います。例えば、私、今、難病小児慢性疾患のWeb登録準備をしていますが、これも患者さんご自身のためになるというよりも、次の世代が、治療薬の恩恵にあずかることのために登録してもらいたいということです。それで数多くの方が登録してくれて、始めて新しい創薬ができるのだと思います。それができないようなことを幾らやっていても、余り意味がないと思います。がん対策基本法は、公衆衛生に資するという観点から、個人情報の扱いを受けずに登録できます。循環器対策基本法においても、同じ扱いになれば、データベースも充実するのですが、公衆衛生に資するというのを、強調していろいろやっていかないと、ここの議論は本当に止まってしまうと思います。
もう1つは、日本医師会は、次世代医療基盤法を立候補したいぐらいやろうと思いますけれども、今の話を聞いて、大変ショックを受けています。
○北野座長 今の御議論からそういう公衆衛生に資するというようなデータの使い方をやるのだということを、このコンソーシアムのステートメントとして、やはり言うべきなのではないかなという感じがしてきました。なぜデータを、もっと利活用する、二次利用を広くやるかということは、これは患者個人にフィードバックをされるかどうか分からないけれども、次世代、更にもっと広くのパブリックヘルスに通ずるということを、非常に明確に謳うようなステートメントを考えて出しても良いのではないかという気がします。そういうことがないと、先に進めない気がするのです。、今の議論を堂々巡りでやっているというのは良くない、という感じがします。
俯瞰図に関して、何かあれば、クイックコメントを頂いて、参考人のゲストの方々のレクチャーをいただきたいと思いますが、何かありますか。俯瞰図は大体良いですね。分かりました。
それでは次に、診療現場がどのような状況かということで、今後の社会実装の見込みも含めて診療現場の先生方がどのような認識をされているか、内科系学会の社会保険連合の小林理事長、外科系学会の岩中会長から御発表いただきたいと思います。まず、小林理事長からお願いいたします。
○内科系学会社会保険連合小林理事長 資料5に基づいて説明いたします。私は内科系学会社会保険連合で理事長をしております。内科系学会は137学会が所属しており、診療報酬に関連した提案をする学会です。このAI診療に関連して緊急アンケート調査をしましたので、まず、その内容について説明いたします。あと、外保連と内保連でAI診療についての意見のすり合わせをしましたので、その内容については、岩中先生の所でまとめて説明させていただきます。資料6で説明いたします。
まず、資料5です。本アンケートは、人工知能の発達とともに技術が向上しているAI診療について、社会保険との関係を整理し、次々回改定時に向けた、つまり2022年度改定に向けた情報収集を目的として実施いたしました。実際、2020年の改定では既にAI関連の新しい技術提案が2件なされており、多分、2022年は相当な数のAI関連技術提案がなされると思いましたので、それに備えてアンケート調査をしております。
期間は12月10日から20日までで、10日間という非常に短い期間なのですが、対象は合計で321名で回答者数は168名です。共通アンケートはですが、右の菱形の内容は左の四角の中に書いております。(1)AI診療について期待していますか、(2)「AI医療のミスは医師の責任」という方針についてどう思いますか、(3)AI診療の診療報酬の在り方についてどう思いますか、(4)AI診療の使用状況、という質問内容で、実際に使用している人たちは31名おり、その中で追加のアンケートが28名となっております。
次のページです。回答者数168名に関しては、かなりのボリュームがあるので信頼性があると思います。まず、(1)のグラフですが、AI診療に8割方が期待しているということで期待の大きさが伺えます。(2)「AI医療のミスは医師の責任」という方針についてどう思いますかという質問に対して、現時点では約15%と45%を合わせて6割の方が納得している状況です。(3)は、AI診療に診療報酬をつけるべき、あるいは、AI診療と医師の両方につけるべきを合わせると、63%が診療報酬を付けるべきだと考えているということです。
その理由は、その右側に書いてありますが、診療報酬をつけるべきというのは、やはり導入コストの補助が必要ということと、普及のためには診療報酬をつけるべきだと。それから、次のオレンジ色の所は、AI診療には検査料をしっかり付けていただいて、医師には判断料が必要だと、要するに、責任が医師にあるのであれば、それを利用する医師にも診療報酬を付けてほしいと、あとは、まだ時期尚早であるというものと、最後は、AIはあくまでも支援ツールであるので、判断責任を負う医師主体で診療報酬をつけるべきであると言われております。右上の(4)AIの使用状況についてですが、現状で実際に使用しているのは、ほんの2%程度ということです。
3ページは、追加アンケートです。実際に使っている製品について書かれております。(5)は皆さんも御存じかもしれませんので割愛します。(6)どの分野で使用予定又は使用しているかということに関しては、やはり画像診断が一番多く、54%です。その中でも、右の点線内に掲げておりますが、放射線、病理診断、内視鏡の分野で使われ始めているということです。
最後のページです。任意アンケートで、いろいろな方々の御意見を受けております。1.欧米の状況の(4)ですが、2019年6月の米国医師会総会で、「医療AIによる医療支援の責任を医師のみではなく、それを開発したベンダーにも求める」という決議がなされております。それから、2.AI診療の状況の(3)で、内視鏡検査においては、ベテランの内視鏡医と同等以上の精度で診断ができるという意見がありました。
最後に、3.その他は、中国の状況です。これは平安集団と読むのでしょうか。オンライン診療をやるときには、最初にチャットで対応するのはAIで、終了後の時点でオンライン受診可能な医師がリストアップされ、その医師の出した処方箋の内容もAIがチェックするというシステムが出来上がっているということです。最後の行ですが、「オンライン診療の普及と一緒にAIの実用化も日本では考えるべきと思います」という御意見がありましたので、参考にしていただければと思います。
私個人の意見は、先ほど説明がありましたように、この「保健医療分野AI開発加速コンソーシアム」の前段階でやられていた「保険医療分野におけるAI活用推進懇談会」では、2018年、2020年の診療報酬改定がロードマップの中にも記載されていましたが、今回のコンソーシアムの中のロードマップ案の中には、その診療報酬の改定が含まれていません。ないのですけれども、実際、診療現場の混乱が起きないように診療報酬の改定をロードマップに含めることを願うものです。あと、外保連の岩中会長の資料も併せて御議論いただければと思います。説明は以上です。
○北野座長 ありがとうございました。それでは、岩中会長、よろしくお願いいたします。
○外科系学会社会保険委員会連合岩中会長 外保連の岩中でございます。お手元の資料6を御覧ください。外保連は、外科系学会社会保険委員会連合といい、外科系の技術を取りまとめている団体で、108の外科系の学会が所属しております。
今日、こちらにお示しするものには、これからの懸念という少しきつい言葉が書いてあります。これは、このコンソーシアムに対する懸念ではなく、これからのAI診療が進んでいくことに関して、診療現場で結構心配していることがあるのです。それに関して、今日少し提案させていただきたいという気持ちで参りました。釈迦に説法のような話がたくさんありますが御容赦いただきたいと思います。
1ページです。先ほど小林理事長からもありましたが、懇談会で6領域を選定していただき、その中の画像診断ではAMED等でかなり精力的な研究が行われております。欧米では、既に一部のもので臨床試用が始まっています。一方、AI診療が導入された場合に、診療現場でどのような課題や懸念が生じるかについて、まだ具体的な議論がほとんどできていないというのが現状ではないかと。
今回、診療現場で生じる様々な課題に対して発信を行っている、内保連、外保連という団体から、これから生じるであろう具体的な課題について少し提案させていただきたいと思います。今日の皆様の御議論の中では、資料3の開発段階で言えば、臨床での検証、PMDA審査、商用の展開の辺りの比較的診療現場に即したような話で、皆様と情報を共有したいと思っております
2ページです。今もあったように、既に一部の領域で臨床導入は始まっています。今後、更に診療領域、手術支援領域で臨床導入をするとなると、先ほども小林理事長からお話がありましたように、今回の2020年の診療報酬改定で2件のAI支援技術が出てまいりました。結果的には、医療技術評価分科会で少しエビデンス不足だという形で採択はされませんでしたが、2022年の改定ではかなりいろいろなものが、それなりのエビデンスを持って出てくるのではないかと。そうすると診療現場が少し混乱する可能性がありますので、その辺りに関して少し意見を言わせていただきたいと思います。
この3つ目のポツにあるように、臨床導入に向けて、やはり医師主導の開発の部分がどうしても不可欠です。そこにあるように、臨床に必要な目的・課題の設定、適切な臨床データの使用、感度・特異度・AUCなどの把握と精度管理、解析結果の適切な解釈等があります。最終的には、AI診療が入ってくると実際問題、診療現場で医師負担の評価と働き方へのフィードバックという辺りぐらいまでは、やはり診療現場と一緒に御議論いただければと思っております。
3ページです。実際問題、AI技術が開発の段階から実際の診断に入ってくるまでには様々なプロセスがあるわけです。概要をざっくり申し上げると、そこにあるように、何度も何度もフィードバックを繰り返しながら、最終的には薬事承認を取り保険収載をするという形に持っていかないと、結局、患者のためにはならないと考えております。ただ、これらのことをするためには、非常に多くの段階で医師が主体的に関与することが必要になってきます。ですから、その辺りに関して、診療現場に是非いろいろな情報を提供していただくと同時に、診療現場の意見を吸い上げていただきたいと思っているところです。
4ページです。実際にAI技術を診療報酬の観点から見ると、現在、新しい医療技術が入ってくるときには、いろいろな導入に向けた方法があります。特に医療技術ということになると、主に議論されるのは、医政局にある先進医療部会、保険局にある医療技術評価分科会で技術審査が行われます。
薬事審査がまだ通っていない技術は、先進医療部会で審査して、個別の施設で我が国の患者のデータを集めて審査につなげていくという形になります。混合診療なので、新しい技術部門は患者に実費を請求するということから、なかなか症例数が集まらなくてデータの集計に非常に時間が掛かるということが、先進医療部会でも今、かなり問題になっているところです。一方、薬事審査が通っている技術であれば、医療技術評価分科会という中医協の下部組織で直接議論されるのですが、現在、2年に1度の改定の流れなので、基本的には2年に1回しか審査ができません。そうすると、加速度的に進歩しているAI診療を適正な時期に的確に審査できるかということに関して、時間軸としては物足りないかと思っております。
5ページです。生々しい話で恐縮ですが、実際に診療技術の診療報酬について、診療現場で、病院経営をしたり、いろいろな診療に当たっていると、病院の収入は、これからのAI技術をどれぐらい伸ばしていくかということとしっかり結び付いています。例えば、我々外科系の新しい技術では、外保連は外保連の試案を作っており、診療治療に対して医師に必要な技術度や難易度を評価します。実際に処置や技術を展開するために必要な人員は何人ぐらい要るのか、実施に必要な時間はどれぐら要るのかということで、人件費を決められたルールで計算します。
それに更に付け加えて、診療報酬の中には、包括されているために実際に会計の中に入れ込んで償還することのできない医療材料や薬品等がたくさんあります。そういうものを付け加えて、最終的に、私たちが医療技術評価分科会に、これぐらいの点数で、この技術を認めてくださいませんかという形で提案するわけです。
一方で、医療技術を展開するためには、そこに(C)と書いてあるように非常に高額な医療機械を使うことがあります。私たちは病院の中で何億円という機械を日常診療でよく使っています。こういうものを使うときに1回当たりの使用料は幾らぐらいするのかと、これはなかなかブラックボックスで、実際の診療報酬の中に入れるのは計算が難しいのです。明確な基準はないのですけれども、それなりに高額のものを使うものは勘案していただいていると信じています。
ただ、一方で、こういう形で技術料を提案するので、当然、AI診断で、技術度が、例えば、スキルがそれほどなくても簡単に診断できるようになれば、幾ら医師が最終的に責任を持つといっても技術料は下げてもいいのではないかとか、AI診断のお陰で1時間に2、3人しか診断できなかったものが10人診断できるようになれば時間が減り人手も減りますと、そして、診療報酬はどういう形になるのかという辺りが、私たち診療現場にいる者にとっては結構、心配の種で考えなければいけないことだと思っております。
一方で、こういう診療技術が入ってきて患者にとって良い診療を提供できるのであれば、患者にとって良いのは間違いないわけです。貢献に関してどういう評価をするかということも考えなければいけない。AI技術が入ってくると、技術度が下がる部分もあれば、逆に、AI技術を使いこなすための技術加算も場合によっては必要になってくると。同時に、AI技術が進んできて実際に診療現場に入ってくると、その技術の精度をより高め、進歩させるためにいろいろなフィードバックをしたり検証したりすることが必要です。その辺りの作業量に関する医師の尽力と言うか、努力みたいなものをどういう形で認めていただけるのかというのは、診療現場としては大変心配しているところです。
6ページです。先ほど少し申し上げましたが、AI技術が入ってきたときに、どのようにPDCAサイクルを回して、より発展させていくかと。そのスピードがどんどん進歩してくると、2年に1回の改定では到底間に合わない。このコンソーシアムでも、その辺りの話はある程度、何度か議論していただいているようですが、実際の診療現場との間で情報共有をしながら、今後、どのように進めていけばいいのかというのが、私たちとしては大変関心のあるところです。働き方改革上は、確実に医師の支援になることは間違いないので、その辺りのところを評価しながら、将来的に、診療現場の中にAI診療をどういう形で落とし込んでいくかというのが大変気になっているところです。
7ページです。以前、CTやMRIが導入されたときには、高額な機械を導入しないと患者が来ないということで、皆さんも御存じのように、日本のCTやMRIの保有台数は欧米に比べてとんでもない数が出回っているのです。それが患者にとって本当によろしいのかと。そのために病院経営や適切な医療が提供できないのであれば、考えなければいけない部分も実際にあることは間違いないと思っています。
例えば、最近ではda Vinciというロボット支援手術が、今、既に日本に400数十台入っています。ロボット支援機械がないと若い外科医が集まらないから、そのためにロボットを入れるのだという病院もあるぐらいで、本末転倒な状況になっていることも事実です。ですから、今後、AI技術をどういう施設に、どういう形で適切に導入していくかということも大変重要かと。
もう1つは、先ほど小林理事長からもお話がありましたように、AI診療の誤診、治療ミスの責任は一体、誰が負うのかと。医師が全部負うべきなのか、AI診療機器メーカーも関係するのかという辺りも考えなければいけないのですが、あくまでも、AI診療は医師の支援業務であるという形になっておりますので、現時点では医師が責任を負うのでしょうけれども、先ほど少し話がありましたように、既に、ある一部の診断領域ではベテランの医師よりもAIのほうが正答率が高いという現実が出始めていますので、今後、その辺りに関しての倫理的な問題も解決していただかなければいけないのかと、それに関しては、是非、診療現場の医師の情報を手に入れていただきたいと思っております。
8ページです。今日、小林理事長と私が来させていただいた理由としては、コンソーシアムでの検討結果を診療の現場の連中に、きちんと議論ができるような検討会の設置が必要ではないかと思っています。既に内保連と外保連の共同で作業部会を稼働させたところです。一方で、来週、日本医学会連合の加盟学会協議会がありますので、私から学術団体として、診療報酬等は一旦置いておいて、診療現場の人間がどういう形で縦軸、横軸を上手にかませながら、ある一定の方向に向かってAI診療をどう捉えていけばいいかという辺りを検討したいと提案させていただくつもりです。
ただ、一方、日本医学会連合での話、内保連、外保連の話は、あくまでも、学術団体なり団体がやっている話で、これを実際に日常診療に実装していく手順として、できれば、今回のコンソーシアムほど大掛かりでなくても結構なのですが、所管する行政の官庁等も一緒に議論ができるような形で進めていただけると、大変、有り難いと思っております。
既に、欧米では一部のAI診療が入っていますし、加速的に進むAI診療に、我が国としても遅れを取らない対応が不可欠だと思っており、先ほどから何度も議論がありますが、やはり産業界の支援を受けないとAI診療は進まないわけです。やはり、そこに医師目線を是非入れていただきたいと。今後、コンソーシアムの工程表等の実装の段階で、先ほど理事長もおっしゃいましたように、診療報酬だとか少し生々しい話かもしれませんが、現実的に診療現場にこれをどう導入するのかという部分まで、できたら、御検討いただけると有り難いと思っております。発表は以上です。
○北野座長 ありがとうございました。今のお二人の先生の発表に対して、御質問、コメント等を頂ければと思います。
○保科構成員 御説明ありがとうございました。資料6の2ページの医師主導の開発は、とても重要であると私自身も感じています。医療データをAIのアルゴリズムで扱っておりますが、AIで、大変有効そうな示唆が出るケースは多々あります。ただアルゴリズムと相性がよいケースがある一方で、特定のコンディションでうまくフィットしないケースがあり、その時に医療知識がないと、何故このケースではうまくフィットして、このケースではフィットしないのかということが理解できないというところがあります。
今、議論いただいたとおり、検証部分の医師とAIのアルゴリズムを作る人間の密接なコミュニケーションは非常に重要です。さらに、共同で研究開発というところもそうなのですが、進化を続けるAIを日本の医療現場でどう運用し、進化させていくのか。今、議論の中にあったように、診療報酬なども含めて、運用する上での仕組み作りは、今後医療現場へのAI導入を加速する上で非常に重要なポイントと感じております。
○北野座長 今のコメントに関して、何かございますか。
○外科系学会社会保険委員会連合岩中会長 おっしゃるとおりで、私たちも、それがどうしても必要だと思います。くどいようですが、実は、もう欧米ではどんどん加速度的に臨床導入が始まっています。日本は国民皆保険制度で、全ての診療行為を厚生労働省とともに規則で決めていくのですが、欧米の場合、特にアメリカは民間保険なので、お金を持っている人ならどんどんその保険に入っていく。ですから、FDAさえ通ってしまえば、なし崩し的にいろいろな診療が始まっています。その結果はこれから戻ってくるのでしょうが、我が国でやるAI診療に関しては、日本人のデータ等をきちんと使わせていただいて、やはり日本の医療技術、工学技術等で進めていきたいと思っておりますので、是非、その辺を御指導いただきたいと思います。
○北野座長 先ほどのAIが入っていないと患者が来ないというCTスキャンの話に関連したところで、3年ぐらい前になりますが、World Economic Forumで、いろいろなサーベイをやったことがありました。AIが診断してくる病院のほうが人間だけが診断する病院よりも行きたいか行きたくないかとか、AIが裁判官なのは良いか悪いか、AIの兵士と戦いたいかとか、幾つかあるわけです。その中で、AIがある所に絶対に行くという回答が一番多かったのは医療でした。使い方はどうかということはあるにしても、そういう所に行きたいということが、幾つかのカテゴリーの中で医療が一番多かったのが非常に印象的だったと思います。時間がそろそろ終わりですが、もう1つ何か御質問はございますか。
○山本構成員 一番進んでいるのは画像診断だと思いますが、先ほどお示しになられた中で、中国のAIが診療支援と言うか、前裁きをやって、診療後に処方のチェックをしているということがありましたが、あのようなところはすごくいいと思います。循環器病の対策の会議に出たときにお聞きしたのですが、救急隊が最初の一報を聞いたときに脳卒中かどうかということを判断して、すぐに脳卒中の急性期治療ができる所に回さないといけないのですが、その正確度がなかなか上がらないという話がありました。
我々、専門家はそういうところをキーワードで判断していくので、キーワードでうまくアルゴリズムを使って判断していくところにも使えると思います。そこは、確かに医療者がアイディアを出していく、現場にニーズがある話だと思います。やはり医療者と企業がうまく手を組んでやっていかないと、恐らく、使える所はいろいろな領域があると思います。
インフォームドコンセントと言うか、これを使うことが、みんなのためになるのだということを、ちゃんと皆さんに分かっていただいて、それこそ経済的なトリクルダウンよりも、もっと皆さんに、医療については割と、医療が進むと貧富を問わず、ほとんどの国民がその利益を享受できる、そういう意味では公平な領域だと思うので、是非、そういうことを強く出したほうがいいと思います。
○北野座長 分かりました。ありがとうございました。
○豊田構成員 岩中会長に質問いたします。懸念事項の中に、AI診療を導入できない医療機関があり得ると、患者の集客ができなくなるのではないかということがスライドにあります。導入できない医療機関とは、どういう施設を想定されているのでしょうか。例えば、小さい診療所レベルをいうのか、赤字経営になるから駄目と考えるのか教えてください。
○外科系学会社会保険委員会連合岩中会長 いろいろなものが混じっていると思います。1つは、逆に、AI診療を導入することで医師の負担が減るということです。例えば、医療の格差や地域医療の偏在等で、地方ほどAIを利活用していても医師不足、様々な判断不足を補うとか、いろいろなパターンがありますので、どの医療機関がAIを導入するかしないかというのは医療機関任せになるわけです。
やはり小さなクリニックや、もともと経営基盤が弱い所に、高額なAI技術を導入するのは難しい。一方、既にアメリカでほぼ始まっているのですが、スマホでパチッと皮膚の写真を撮り、これは悪性黒色腫だという皮膚科診断は、逆に、自分の専門外であっても、そういうものが役に立ちますので、そういうものに関しては積極的に導入されると思います。AI技術の中身、導入のための価格、AI技術を使いこなせる技量があるかどうかという辺りの判断で必然的に決まってくるのかと。今の時点で、ここは無理だと言えるような具体的なAI診療がありませんので、まだコメントできません。
○豊田構成員 分かりました。いろいろ伺って、、経営がうまくいかなかったら当然困りますが、もう1つ、やはり先生方が心配なさっているのは、ミスやトラブルが起きることであり、とても怖い話だと思います。それを考えると、昨今では、病院の中でミスが疑われるようなトラブルがあったときや困ったことが起きたときには医療安全の担当者が対応していて、インフォームド・コンセントについても医療安全では最も大事だと言われるようになり、説明用紙や雛型も、今まで取組んできた人たちがかなり学んでいて、患者の意見を聞きながら取り入れていますので、是非、医療安全の専門家の方々にもっと積極的にAIの分野にも参加していただいて、患者も巻き込んで話し合って決めていただきたいと思いました。岩中先生、名乗らずにすみません。私は患者、家族の立場として発言しています。ありがとうございました。
○北野座長 時間が過ぎております。
○黒羽研究企画官 ただいまいただいた内保連、外保連の御意見については、関係部局に共有させていただき、今後、どういう検討会やワーキングなどが設定できるかどうかということも含めて、個別に検討させていただきたいと思います。また、コンソーシアムの工程表に実装するという御意見も頂きましたが、それについても、検討させていただきたいと思います。以上です。
○北野座長 今日は時間も過ぎておりますので、ここまでにいたします。次回は3月12日(木)の予定です。今日の大きな議題としてはインフォームドコンセントのところに戻ってきて、末松先生から、NHSのかなり踏み込んだ文書のご紹介をいただき、我々として踏み込むのかどうかということを迫られています。
同時に、ドイツは非常に厳しい風土ですが、我々は、いきなりイギリスの考え方にいくかどうかと言うよりは、ドイツの状況やイギリスの状況を見て、さらにそのほかの国の状況も横目で見ながら我々としてはどうするかということを明確にしていきたいと思います。先ほど言ったように前回の議論では、次世代医療基盤法があるからということで、そちらに移行するのだからここではそれ以上踏み込まないという議論だったのですが、どうもそれがミンチ肉であるという話になると、改めて踏み込むかどうかという議論をしなければいけないのだと思うのです。
その辺りのことも含めて、次回ここで議論するのか、ワーキンググループのようなものを作り、もう少し徹底的に討論するのか、何らかのことはやらないと、そこを曖昧にしてこれを議論していても、このコンソーシアムをやっている意味がないというか、そこが関ヶ原と言うか、ここが最初から重要なポイントだったので、その辺りをどうするかということを事務局と相談していきます。かなり難しい議論になるのは私も分かっており、事務局には大分、御苦労をおかけすることになると思います。これに関しては、何らかの形で立場を明確にする必要があると思います。どのように議論するかという立て付けも議論させていただきたいと思います。よろしくお願いします。
○黒羽研究企画官 御議論いただきまして、ありがとうございました。先ほど北野座長からありましたお話について、今までの話を整理して、次回お示しするという形で御議論いただくこととさせていただきたいと思います。
○北野座長 よろしくお願いします。第10回保健医療分野AI開発加速コンソーシアムを閉会いたします。本日は、ありがとうございました。