2020年3月25日 第51回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会 議事録|厚生労働省

健康局難病対策課移植医療対策推進室

日時

令和2年3月25日 (水) 14:00~16:00

場所

WEB会議にて開催

出席者

委員(五十音順)

議題

  1. (1)臓器提供に係る環境整備について
  2. (2)その他

配布資料

  1. 資料1臓器提供に係る環境整備について
  2. 資料2臓器提供に係る環境整備について(図表)
  1. 参考資料1患者・家族の意思尊重のための院内体制
  2. 参考資料2臓器提供における地域連携体制構築

議事

議事内容
○磯部委員長 ただいまから、第51回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会を開催いたします。委員の皆様におかれましては、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。事務局からWEB会議に関する説明、委員の出欠状況の報告と資料の確認等をお願いいたします。

○曽山補佐 皆様には事前に御連絡させていただいておりますけれども、今般の新型コロナウイルス感染症の発生状況を勘案し、今回はWEB会議にて臓器移植委員会を行わせていただきます。事前にアプリケーションの設定・テスト等、御協力を頂きましてありがとうございました。
それでは、WEB会議の進め方について説明させていただきます。既にテストの段階で確認していただいていると思いますが、画面の下のほうに4つのマーク、アイコンがあると思います。一番左のビデオのマークがONになっていることを御確認ください。また、左から2番目のマイクのマークが斜線になっております。現在、ミュート状態になっていることを御確認ください。もし斜線が入っていない、ミュート状態になってない場合には今の状態でクリックをして、斜線の状態にしてミュートとしていただければと思います。今後、御発言を頂く場合にはマイクをONにして、まずお名前をおっしゃって、その後に御発言をお願いいたします。また、御発言が終わりましたら、再びミュートにしていただくようお願いいたします。ここまでで何か御不明な点はありますか。会議中も御不明な点等がありましたら、事前にお伝えしている電話番号にお掛けいただければ、お電話にて御案内いたしますので、いつでもお問合せください。

続いて、本日の委員の皆様の出欠状況について御連絡いたします。本日は小笠原邦昭委員、平澤ゆみ子委員、渡邊淑子委員から御欠席との連絡を頂いております。また、本日は参考人として北里大学病院移植支援室の吉田一成先生、聖隷浜松病院救急科•救命救急センターの渥美生弘先生、日本臓器移植ネットワークの芦刈淳太郎医療情部部長に御参加いただいております。
ここで移植医療対策推進室長、井口豪より一言、御挨拶をさせていただきます。

○井口室長 委員の皆様におかれましては御多忙なところ、会議に御参加いただきまして誠にありがとうございます。また、日頃から移植医療への御支援・御協力を頂きまして、厚く御礼申し上げます。本日、臓器提供に係る環境整備などについて御審議を頂く予定としております。
既に御案内のとおり、新型コロナウイルス感染症が発生しており、厚生労働省としても3つの「密」、密閉、密集、密接な対話を避けてくださいというお願いをしております。そのような中で、どのようにしたら密な御議論がいただけるかということで、このWEB会議を設定させていただいております。委員の皆様には御不便をおかけすることもあると存じますけれども、忌たんのない御意見を賜りたく、よろしく御審議のほどお願い申し上げます。

○曽山補佐 引き続き資料の説明をさせていただきます。本日の委員会においては、事前にお送りしている資料を御準備いただければと存じます。資料1が「臓器提供に係る環境整備について」ということで、こちらは文書での資料です。資料2も、タイトルは「臓器提供に係る環境整備について」ですが、こちらは図表を中心とした資料となっております。また、参考資料1ということで、北里大学病院から御提出いただいている資料、参考資料2ということで、聖隷浜松病院の渥美先生から御提供いただいている資料があります。参考資料2のほうは、厚労科研の中での成果ということで御報告いただきます。それでは、今後の議事進行を磯部委員長にお願いいたします。

○磯部委員長 それでは議題に入ります。本日の議題は議事が1つと、その他となっております。まず、「医療機関が患者による意思表示の有無を把握する取組」について、事務局から御説明をお願いいたします。

○曽山補佐 各項目において我々のほうから資料1、資料2を用いて説明させていただいた後に、各項目の中で参考人から、それぞれの取組成果を御説明していただくということになっております。
それでは資料1の1、「医療機関が患者による意思表示の有無を把握する取組」についてを御説明いたします。お手元に資料1と資料2の1ページを御準備いただければと思います。まず、図表を見ていただければと思います。資料2の1ページで、「医療機関が臓器提供を行う上での課題と対応案」というタイトルが付いております。「脳死下臓器提供のプロセス」というところで、診療の開始からその後の経過が書いてあるところです。その次に「課題」という記載があり、各プロセスの中での課題を記載しております。
その次に「対応案」ですが、今回、資料1の項目1で取り上げるのは課題の2番目にあります。患者に臓器提供の意思があっても把握されない場合があるということです。患者さんが臓器提供に関する意思表示をされているということは、皆様も御存じのところかと思いますが、それぞれの意思の把握に関しては、施設での取組に少し差があるようです。対応案としては患者の臓器提供に関する意思表示の有無、内容を事前に幅広く把握することで患者さんの御意思を尊重する、しっかりと汲み取るという仕組みを導入してはどうかということです。
資料1の文書のほうを御覧いただければと思います。項目1は、先ほどの説明とやや重複することもありますが、患者の臓器提供に関する意思を尊重するためには、医療機関が患者の臓器提供に関する意思表示の有無、又はその内容を把握することが重要であると考えられます。しかし、そこは必ずしも円滑に把握できていない場合もあるということです。
こうした中で一部の医療機関では、受診した患者さんが意思表示をしているかどうかを入院時の問診等で情報収集するなど、患者の意思表示の有無をあらかじめ把握する方法を確立し、ルーティンとして実施している所があると聞いております。北里大学病院の取組が参考資料1に記載されておりますので、後ほど参考人から御説明いただければと思います。
このような各施設の取組があるという情報を我々も把握した上で、現在、令和元年度から厚生労働省で取り組んでいる事業として、臓器提供施設の連携体制構築事業というのがあります。こちらは資料2の5ページです。委員の皆様には以前にも御説明させていただいたところですが、臓器提供経験事例が多い施設と少ない施設が連携し、経験が少ない所のサポートを拠点施設、経験が多い施設がサポートしていくという取組を行っているところです。先ほど申し上げた臓器提供に関する意思表示の有無の把握、また、その内容の把握をこの連携体制構築事業の参加施設において、令和2年度より導入していくということを方針として進めていきたいところです。こちらに関して委員の皆様方から御意見を頂戴できればと思います。

○磯部委員長 ただいまの事務局からの説明に関連して、吉田参考人より参考資料1を用いて、具体的な御説明をお願いいたします。

○吉田参考人 では、参考資料を基に御説明させていただきます。皆様も御存じのように、アンケートを取ると5割ぐらいの人は、脳死で提供してもいい、あるいは心臓死を含めると8割ぐらいの方が、提供してもいいということを言っておられますが、実際にはなかなかそういうようになっていないというのが現実です。診療科の現場にあたるのは大体が救急ですが、その背景には家族等、かなり複雑なものがあるだろうということです。それから、救急で担ぎ込まれた所では、家族の皆さんはかなり慌てておられますので、臓器提供ということは当然、余り頭にありません。まずは自分の近しい人に助かってもらうということが第一にあると思います。
これは救急も同じで、我々の施設では腎移植を割合古くから、1971年の開院の次の年からやってきております。例数としては600例近くですが、今のところ臓器提供は脳死が5例、心臓死が2例ほど行っております。その次の3枚目のスライドが、我々の三次救急の概要です。2割ぐらいの方がそのまま亡くなってしまいます。疾患の概要としては、20%ぐらいがCPA、いわゆる心停止で来られます。循環器、外傷等が多いということです。救急医療としてはEICUが20床、救急病棟が18床、GICUが10床という概要になっております。

次のページです。実際に救急の現場でどうなのかというと、患者さんの家族が来られても臓器提供ということは、まず頭にないことが多いのです。ましてや家族としては、そんなことは考えてもいないというのが多いと思います。そこで、御本人がもしもの場合に臓器提供ということを家族が知っているとしても、そういうことを思い出すことは非常にないだろうということです。それから救急も当然、救命救急を目指していますのである意味、臓器提供になるということは救命ができなくなったということですから、救命救急の医師あるいは医療関係も、なかなかそういうことに思いを馳せることはないだろうということです。
そこで我々は次の次のスライドにあるように、救急に担ぎ込まれた方々やその家族に、臓器提供の意思の抽出ということで、三次救急の場合には左側にあるような調査票を作ってお配りしております。これは患者さんやその家族が事務に来られたときに事務の方から、まずは救命救急を第一にしますが、それができない場合もあるので、その場合に御本人がそういう意思表示カード等をお持ちなのか、保険証や運転免許証にそのことが書いてあるのか、あるいはそれが分からなくて、もしもの場合に専門職員、これは大体が医療支援室の院内コーディネータ―になりますが、そこから説明を聞いて御判断されるかどうかということを尋ねております。これは事務の方がきちんと説明をして、誤解のないようにしてこれを渡しています。ある意味、事務の方はある程度事務的にこれをお渡しするということをしています。

大体どのぐらいの配布があって回収があるかということです。我々の救急では2,500人ぐらいが担ぎ込まれ、そのうち家族が来られない方もおられますので、8割ぐらいの方にこの調査票が渡っています。この調査票の回収率は98%くらい、ほぼ100%に近いということです。
三次救急の調査票ですが、「家族が回答した本人の意思表示」というのが、その次のページにあります。意思表示のない人が7割ということで、アンケート調査と大分乖離する結果になっております。さらに、そのことを家族が知っているかどうかということですが、ほとんど知らない。家族がその説明を希望するという方が5、6%ぐらい、希望しないが4割ぐらいです。あとは「分からない」という回答がやはり多い。この「分からない」というのが非常に困るのですが、ここを実際にきちんと決められるように、前もってということが必要になってくるかと思います。

次のページが、患者の家族が御本人の意向を認識しているかどうかということです。ネットワークでは13%ぐらいが、意思表示をしていることを認識ということですが、我々の救急外来で4%で、本人がそういう意思表示をしているかということの認識は、家族にはほとんどないということです。それで「意思表示無し」というのが7割なので、この辺はアンケートと大分乖離をするということが言えると思います。実際にこの調査票を配って、組織提供あるいは臓器提供が増えるかなと思ったのですが、残念ながらそうではありませんでした。
現状としてはその次にありますように、今までの脳死提供が2011年から脳死下で5例、心停止下で2例(2011年以降では2例ですが、それ以前には20例以上あります)、組織としては眼球提供が2017年で25例と、神奈川県下では一番多かったのですが、その後、神奈川県もアイバンクの体制も変わり、土日の対応がないということがありましたので、これも現在は減ってきてしまっています。実際に三次救急に患者さんが搬送された場合、外来でそのまま亡くなるという方もおられます。これは家族としてはかなりショックですので、いわゆるグリーフカードというものをお渡しして、将来的にグリーフのケアをしてあげたいと。ただ、これに関しては今、保険的な点数が付くということが全くありませんので、病院の志としてやっています。
それから、いわゆる終末期として考える症例、CPAなどですが、これは助かる場合もありますが、残念ながらそうでない場合には先ほどの調査票を基に、こういう意思があるかどうかということを院内コーディネーターに知らせ、連絡をすることになっております。その中で進んでいって、臓器提供・組織提供になる人はなりますし、その後、全院的に多職種カンファレンスということで、いわゆるグリーフカンファレンスを行っております。これは組織・臓器提供になっても亡くなられるわけですので、このグリーフをケアするということを我々の所ではしております。

そういうことで、その下に結果として脳死提供は5例でしたが、そのうち6割が家族の意向ということが、この調査票から汲み取られたわけです。4割が医療者の提示です。心臓死のほうは100%家族の意向ということで、少ないけれども、こういう意思を汲み取ることは、やはり重要かと思っております。角膜・組織提供についても、次のスライドにありますように、角膜のほうは家族からの意向が8割、組織のほうが9割くらいです。
この調査票の運用ですが、まずは事務の方が齟齬のないように十分な説明をしてお渡ししています。その上で、専門職員からの説明を聞きたい方がピックアップされます。これは院内のカルテ上に分かるようになっております。それを見て救急の医療者も、全くそういう意思がない人に対してはアプローチをしませんし、ある程度そういう意思がおありになる方については、積極的にアプローチをします。そこを救急側が迷わないように、ある程度の道筋を付けるということをしております。やはり家族の方々が現場で意意思表示カード等々を思い出されるということは非常に少ないものですから、そのきっかけになるというように思っております。
まとめとしては、脳死・心臓死からの提供と思っておられる方が多いのですが、その辺がなかなか意思表示につながっていない、更に家族が認識することはもっと少ないということで、救急の現場でこの意思表示に思い至るということのきっかけに、こういう調査票を使っています。以上です。よろしくお願いします。

○磯部委員長 ありがとうございました。ただいま事務局及び参考人から御説明いただきましたことにつきまして御意見、御質問を伺いたいと思いますが、まず、私から確認させていただきたいと思います。
事務局からの御提案は、手挙げ方式といいますか、現在の拠点施設の参加施設に臓器の提供意思表示の有無を把握するような取組をするということでした。御説明いただいた北里大学の取組は、1つの例示といいますか、こういった効果が得られると、そういった形で御説明いただいたものと理解しましたが、そういうことでよろしいのでしょうか。

○曽山補佐 事務局でございます。今、磯部委員長からおっしゃっていただいたように、北里大学の実際の事例というところで、実際、どのように運用されているかということも委員の皆様にお聞きいただいたところですが、これを1つの実施例として令和2年度からの連携体制構築事業の中で取り組むことを考えています。その中で、資料1の中にもございますが、資料1の項目1の中の3ポツ目の※3ですが、「公募要綱において、任意の方法により」と書いてございます。今、北里大学病院での取組というところをお話いただいたところではありますが、各医療機関、病院において、それぞれに合うやり方、やりやすい方法があるかと思いますので、それは、それぞれの方法というところで取り入れていただければと考えているところです。

○磯部委員長 それともう一点。以前、この臓器移植委員会の中で、重症の脳死になり得るかもしれない患者さんが入院されたときに早期からコーディネーターを付けるような形で説明を始めていく、説明を始めていく、そういった御提案があったかと思いますが、このシステムはそれとはまた別のことと捉えてよろしいものですか。

○曽山補佐 ありがとうございます。事務局から説明させていただきます。再び資料2の、図表になりますけれども1ページ目を御覧いただければと思います。その中に脳死下臓器提供のプロセスというところを幾つか記載させていただいているところです。「診療の開始」のプロセスの中に「家族の心情に配慮しながら、以下を同時並行で実施」と書いてありますが、その課題の中で診療を担当する医師、看護師等が説明やケアに十分な時間を取れない場合があるというような課題もあるということを聞いているところです。その中で、家族への状況説明や家族からの診療に関する希望の聞取りというのは、この課題に対する対応案として、今、磯部委員長から御指摘いただいたように、いままでの委員会でメディエーターという名称で紹介させていただいたところは、引き続き研究班で養成プログラム等も考えて進めておられるところですし、日本臨床救急医学会で令和2年の学会の中で、そのメディエーターという名称での、そういう役割の方の養成プログラムを実施すると聞いているところです。先ほど北里大学病院から説明いただいた内容はまたそれとは別で、臓器提供に関する意思表示の有無の把握ということですので、それとはまた少し違うというところで御理解いただければと思います。

○磯部委員長 分かりました。そうしましたら、委員から御意見、御質問を頂ければと思います。

○横田委員 日本医科大学の横田ですが、よろしいでしょうか。

○磯部委員長 どうぞ。

○横田委員 吉田先生、説明、ありがとうございました。いつも北里大学の取組は本当に勉強になるので、我々も本当に参考にさせていただいているのですが、先生の資料のスライド10の所で2017年が眼球提供数が非常に多く、その後、2019年にかけて少なくなっているのは、全ての集計がまだ済んでいないからということなのか、あるいは、何か異常があったのかというのが1点と、どうしても、組織に比べると臓器のほうは少ないとこのグラフからは読み取れるのですが、やはりそのように考えてよろしいのか。その2つについて教えていただきたいのですが、いかがでしょうか。
○磯部委員長 それでは吉田参考人、お答えをお願いします。

○吉田参考人 ありがとうございます。1つ目は、2017年に眼球提供が非常に多かったのが、このぐらい多くなっていたのですが、その後に神奈川県の腎・アイバンクのコーディネーターが、昔からおられた方が辞められて、それで体制的に、全部、24時間対応ができなくなってしまったということがございます。そこで随分、神奈川県はいろいろと工夫をしたのですが、結局は、例えば土曜日に出た場合には月曜日まで待ってもらうというようなことがあったものですから少なくなったということがございます。2019年は集計がまだなので、これはもうちょっと増えますが、2017年よりは少ないというのが現状です。今のところも、神奈川県の腎・アイバンクのコーディネーターは、なかなかそのように動けていないということです。いままでおられた方が24時間・365日対応ということでストレスがかなり多くて、すぐに辞められてしまうというようなことがございましたので、このようなことになってしまったと。
それから、臓器提供はやはり少ないのです。1つは、三次救急で担ぎ込まれてすぐお亡くなりになる方が結構おられます。そうなると、いわゆる死の受容というものができていない。そこで臓器提供にまで結び付けるのはかなり難しい症例があると思います。救急の先生方は、こういうことで絶えず前向きにやっていただいておりますが、現実的にはそうだと。それから、先ほど申し上げたように相模原地区は、まだ意思表示カードを持っている率が少なく外来で見ても3、4%なので、まず、これからこの辺りの意識改革をしないといけないかと思います。

それから、御質問とは別なのですが、1つだけ付け加えたいということと、強調したいことは、我々の所は意思表示カード以外に、専門職員から説明を聞きたいかということを質問紙に入れているというところはすごく大事かと思っています。例えば、コーディネーターからすると、提供がある意味、患者さんあるいは救急の人たちに見え見えということがありますので、先ほど曽山補佐が言われたようなメディエーターみたいな、そういう方々に専門職員として付き添っていただいて、残念ながら、それがコーディネーターにということはすごくいいことかと思っています。そこは、これからのいろいろな法整備や改革をお待ちしているということです。よろしいでしょうか。以上です。

○横田委員 ありがとうございました。

○磯部委員長 ほかに御意見、御質問はございますか。

○木下委員 京都の木下ですが、よろしいでしょうか。

○磯部委員長 どうぞ。

○木下委員 角膜のことも入り、吉田参考人の調査票の運用はシステム的にはうまく動いていると感じました。私は眼科ですのでアイバンク関係のことですが、やはり家族が認識しているかどうか、御本人の提供の意思を認識しているかどうかというところがいつも問題になっています。少なくとも調査票を運用することで、そこのところのシステムはうまくいっているようですね。
ですから、是非、これはさせていただきたいと思いました。あと、実際に摘出をどうするかというところで、神奈川には若干の問題点があるのかもしれません。
それから、吉田先生が臓器移植とともに組織移植を同じように扱っておられているところは非常にうれしいと思います。臓器移植は法律で規定されるところですが、組織は臓器移植に関する法律のようなものがありませんが、実際のコーディネーションと言うか組織を、あるいは臓器を提供してもらうときに、ある意味で一体感を持って今後も動いていかないといけないと思いますので、是非、先生のこのような取組を日本全体で、参考として動いていくといいと感じました。

○吉田参考人 吉田ですが、よろしいですか。

○磯部委員長 どうぞ。

○吉田参考人 1つは、組織コーディネーターもこの中にいるというのは、我々の移植医療支援室が、提供、臓器移植、ここは骨バンクがありますので、組織のコーディネート、三様になっているのでこのようになっている。それから、調査票ですが、最初は少し心配しました。事務の人が患者さんの家族からすごく非難されるのではないかということをかなり心配したのですが杞憂でした。今のところトラブルになった例は全くありません。粛々と事務の方からきちんとした説明をすれば、意外にトラブルはないのではないかと思っております。よろしいでしょうか。

○磯部委員長 ありがとうございました。

○有賀委員 有賀ですが、しゃべっていいですか。

○磯部委員長 どうぞ。

○有賀委員 北里大学の吉田参考人が御説明になった方法論は、多分、吉田参考人の所が最初ではなくて、幾つかの施設で似たようなことをやったという記憶が私にはあります。昭和大学もできるかと考えながら、そうは言いながら、いろいろな仕事に紛れて具体的にはやらなかったのです。幾つかの施設で多分やって、なおかつ、だからどうだという話が余り出てこなかったのは、それによって顕著に移植が増えたという実感がなかったのかもしれません。
吉田参考人の施設では、この方法論によって臓器提供が出たという実感をお持ちなのでしょうか。救急医の中で熱心に説明するという人がいれば、そこそこ移植の件数を稼げたという歴史的なこともありますので、体系的にこの手の話を日本全国でやっていくことに全く反対するという問題ではなくて、吉田参考人御自身が、これによって相当いい線いったとお思いかどうかというところを、究極的に聞きたいと思い質問いたしました。よろしくお願いいたします。

○磯部委員長 吉田参考人、どうぞ。

○吉田参考人 有賀委員、なかなか厳しい御質問をありがとうございました。ここに示したように、これをやりだしたのは2008年ぐらいからですが、実は余り増えておらず頭を抱えているところです。1つは、これを出して実際に説明を聞きたいとおっしゃる方は6%ぐらいしかいない。その中から、先ほども言ったように、ここの救急は急に亡くなる方が多いものですから、なかなかそういうことに結び付いていかないというのが現状です。
ただ、唯一言えることは、普段からこのように構えておくと、何かあったときにはこれが非常にうまくいくかと。そういう意味では、眼球提供が増えたというのはこれの成果かと思っています。ただ、有賀委員が言われるように、臓器提供になかなか結び付いていないというのは私も非常に悩んでいるところです。ここは何かいい手があれば教えていただきたいぐらいです。
私は移植医ですから、救急の先生にこうしてくれ、あのようにしてくれというのは言えない立場ですので、その辺りは、むしろ、有賀委員や横田委員から言っていただくと非常に有り難いと思います。
○有賀委員 有賀です。吉田参考人、どうもありがとうございます。吉田参考人の施設でそういう御感想をお持ちだという話は、それはそれで貴重だと思います。厚生労働省の方が、体系的に……の形を持って組み立ててやっていこうということであれば、それはそれで大変意義のあることだと思います。
結果がどのように出るかという話はよく分かりませんが、文化水準と言うか、医療の提供の全体像を徐々に変えていくと言ったら変ですが、吉田参考人の取組を普遍的な形で三次救急ではない所でもやっていくことができるようになるほうが、多分、よろしいのではないかと、漠然としておりますが感想と御礼です。

○吉田参考人 吉田ですが、よろしいでしょうか。

○磯部委員長 どうぞ。

○吉田参考人 これは三次救急の調査票なのですが、現在は全病棟に広げて、入院された方は、すべからくこういうことを聞かれるようになっています。その中には、ある程度、専門職員から話を聞きたいという方がおられます。ただ、それはかなりお年の方だったり、なかなか臓器提供に結び付いているとは思えないのですが、臓器提供という局面があるのだということは少しずつ皆さんに知っていただいていると思っております。

○有賀委員 どうもありがとうございます。長い臓器提供の歴史の1コマとして、こういうことをやっていく意義はあるのではないかと思っております。あとは、横田委員、よろしくお願いいたします。

○磯部委員長 ほかに御意見、御質問はございますか。

○湯沢委員 水戸医療センターの湯沢です。

○磯部委員長 湯沢委員、どうぞ。

○湯沢委員 多分、前任地の筑波大学が日本で初めて、入院時の意思表示の確認を全患者にしたと思います。当時の深尾先生が始めたものですが、入院前から意思表示をしているかどうかの確認があったのですけれども、実は全然増えていなかったのです。その後、筑波大学はどうなったかというと、3年前に臓器提供に非常に積極的な医師が救急に赴任したことがあり、劇的に増えていったと。それは、説明を希望する6%で分からないとか、説明を希望しない人に対しても、積極的に終末期の医療としての臓器提供の在り方を説明しているからで、それだけで年間5、6例の提供が出てくるというのが現状です。
説明を希望した中からも、ごく僅かに出ているのは確かなのですが、現状、残念ながらそれよりもはるかに救急医の活躍が多いというのが我々移植医も感じるところで、恐らく、救急の先生方もそこを一番感じているのではないかと思います。ただ、だからといって、入院時の意思確認は必要ではないということですが、そこから拾い上げてくることも必要だとは思いますので、それだけではなく、やはり両方からのアプローチが必要なのではないかと私は感じています。以上です。

○磯部委員長 よろしいでしょうか。ほかに御発言のある方はいらっしゃいますか。

○秋山委員 秋山ですが、よろしいでしょうか。

○磯部委員長 秋山委員、どうぞ。

○秋山委員 吉田参考人が行われている三次救急外来調査票は、適切な取組だと思いました。現在、運転免許証や健康保険証で意思表示の機会があり、これは重要な機会で、自分がまだ対象者ではないときに冷静に考える機会になっています。恐らく、三次救急外来調査票は、運転免許証の情報を思い出す機会になっているかと思います。三次救急外来の最初の時点で患者・家族は、まだ臓器提供について自分たちが対象だとは考えていない状況だと思いますが、このときに情報提供していただくことが次のステップにつながっていくのではないかと思いました。以上です。

○磯部委員長 ほかにはいかがでしょうか。この外来調査票は大変よく出来ているものだと思いますが、今回の厚労省からの企画は1つの参考として独自のものを、それぞれの施設から手を挙げて御提案いただく。それから、配布の方法等についても、新たなものを御提案いただくと考えてよろしいですか。

○曽山補佐 そのように御認識いただいて結構です。

○磯部委員長 前向きな御意見が多いと思います。幾つか、効果の判定が難しいとか、実効性が上がっているかどうかという御意見もございましたので、その辺りを踏まえて、進めていただければと思います。事務局、これは審議事項ではなく、御説明を伺って、皆さんの御意見を伺えばよろしいということですか。

○曽山補佐 そのような御議論の内容でよろしいです。

○磯部委員長 ほかに追加で、御意見のある方はいらっしゃいますか。では、このような形でお進めいただきたいというのが、皆さんの御意見だと思います。どうもありがとうございました。
では、次に進みます。次は、「臓器提供が行われる可能性がある事例に関し、関係者内の早期かつ漏れのない情報共有を促す取組」についての議題です。事務局より、説明をお願いします。

○曽山補佐 事務局です。資料2の1ページ目を御覧ください。臓器提供のプロセスの「家族への告知」の中で、臓器提供の機会があること、承諾に係る手続に際して主治医以外の者による説明があること等ということで、御家族への情報提供のことが書いてあります。ただ、現状では課題として、家族の心情への配慮、医療機関の負担等から臓器提供に関する情報提供がなかなか行われない。臓器提供の経験が少ない医療機関等では、家族に対して情報提供が行われにくいというような課題があるというところです。
そこで「対応案」ですが、項目の2です。適切なタイミングで臓器提供に関する連携ができるように、関係部署への連絡の目安となるような医学的基準を設定するということが、対応案としてはどうかということです。
資料1、文書のほうを御覧ください。患者さん、あるいはその家族の臓器提供に関する意思を尊重するためには、患者の家族に対して臓器提供の機会があるということなどについての的確な情報提供が必要と考えられますが、日本臓器ネットワークにより行われた臓器提供に関する意識調査によると、予後不良な患者の家族に対する臓器提供に関する情報提供については、「多くの場合情報提供している」、「どちらかというとしている」と回答した医師は、回答した全医師の約15%ということがアンケートの結果として報告されています。これは資料2の4ページ目に参考のデータが載っています。
つまり、臓器提供に関する情報提供の実施率には、施設間で差があるということですが、どのような背景があるのか、どのような要因があるのかということに関して、研究班の報告によりますと、患者の家族に対する情報提供の実施が少ない背景には、施設における臓器提供の経験が少ない場合、あるいは情報提供を実施するかどうかについて、担当医のみにより判断が実施され、チームによる検討がされていないという要因もあるということが報告されているところです。

2ポツ目です。事例の発生について、適切なタイミングで臓器提供に関係する部署に連絡する仕組みを設けることで、事例が発生したその医療機関内における医療従事者間の情報共有、②ですが、連携している施設間での情報共有による臓器提供経験の多い施設からの速やかな支援ということで、こちらは後ほど説明しますが、連携体制構築事業の中での情報共有ということを想定しています。また、適切なタイミングでの情報共有ということで、臓器提供を行う上での課題に関する情報収集等につながることが考えられるのではないかということです。
これらを踏まえまして、先ほども申し上げました令和2年度の「臓器提供施設の連携体制構築事業」の参加施設において、予後不良な患者が「医学的項目による基準」を満たすことが確認された場合に、連携施設から拠点施設に対してその旨を連絡するということを取組として取り入れていくという方針を考えています。
こちらは参考資料2です。本日、参考人として御参加いただいている厚生労働科学研究班の横田班長の研究班の分担研究者である聖隷浜松病院の渥美先生から、この医学的項目による基準を満たした場合の情報共有について、後ほど御説明いただければと思います。事務局からの説明は以上です。

○磯部委員長 ありがとうございました。それでは、引き続きまして渥美参考人より参考資料2を用いて具体的な御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

○渥美参考人  よろしくお願いいたします。聖隷浜松病院救命救急センターの渥美です。私は横田先生が代表をされている研究班の中で、今、「臓器提供における地域連携体制構築」という点で、静岡県の中で取組をさせていただいています。
この連携体制構築事業が起こる背景としては、先ほど曽山先生から御説明があったとおり、経験が少ない施設でどうしても情報提供、医療側から患者さんの御家族にすることが少ないというところがあると思っています。ですので、経験の少ないところに地域で助け合う体制整備ということで始めさせていただいています。
資料ですが、最初は2018年度から始めたのですが、静岡県では厚労省の御指導、横田先生の御指導を頂きながら、県の担当者とともに静岡県臓器提供サポートチームの立ち上げを始めています。県内で臓器提供の経験がある先生方にお集まりいただいて、臓器提供の可能性がある患者さんが出たときに、どう支援ができるかという議論を始めたところです。さらに今年度2019年から、臓器提供施設連携体制構築事業が始まりまして、当院が基幹施設ということで選んでいただいたものですから、静岡県全体がこの連携体制構築事業に乗っかって、引き続き連携体制の構築を進めているところです。今年度、行ったことは、連携施設、静岡県内の5類型施設がほとんどですが、そこに参加していただいて、カンファレンス、セミナーを行いました。あと実際に事例が発生したときに、違う施設から支援に行く、若しくは見学に行くということを始めさせていただいたところです。
「救急現場の思い」という1枚を見ていただければと思いますが、これは提供現場、救急を行っている私どもの思いなのですが、まずは患者さんを救命するということを第一に行っているわけです。その中で、その主治医が患者さんが臓器提供の可能性があることに気付いて、自分でその説明をするということは、かなり慣れた人でないとできないというのが現状だと思います。ですので、そこには目の前の患者さんが臓器提供の可能性があるのではないかということに誰かが気付いて、その主治医と一緒に、救命できなかった場合ですが、臓器提供についての検討も進めていくということが必要なのだろうと思っているところです。
世論調査によると、終末期となった患者さんで臓器提供を希望する人は40%以上いるというデータになっています。その意思をしっかりサポートしていくことが必要だと思っています。それは、救急・集中治療における終末期医療のガイドラインにも明文化されているところです。
では、いざ臓器提供の説明を患者さんの御家族にしようと思ったときに、気を付けないといけないのは、その目の前にいる患者さんが本当に臓器提供の適応がある患者さんなのかどうか。逆に言うと禁忌であることがないかどうかというのは、先に知っておかないと安心してそのお話ができないというような現状があります。一旦、その話を御家族にして、その後でやはり禁忌事項があって、臓器提供ができないということになると、もともと悲しい思いをしている御家族に、ちょっと希望を見せた中で臓器提供ができないということになってしまうので、そうならないような配慮をしっかりしていく必要があるかと思っています。そのためには、その臓器提供を主眼に置くような事務局が、臓器提供の適応に関して、しっかりアドバイスをするようなシステムが必要なのだろうと。今現在は都道府県のコーディネーターなり、JOTのコーディネーターがその役割をしていただいているのですが、その辺りを連携体制事業の中でもしっかり行っていく必要があるのだろうと思っています。
資料をおめくりいただいて、「情報共有」です。来年度からの私どもの考えているところですが、脳損傷が強くて意識レベルが悪い方、それに薬物中毒やショックなどで意識が悪いだけではなくて、脳の損傷があって意識レベルが悪い方、脳死に移行する可能性が高い方ということになるのですが、そういう症例がある場合は一定の基準で事務局に報告するようなシステムができたらいいのではないかと考えています。その基準としては、GCSで3点。これを満たしたときに事務局と共有できるようになったらいいのかなと思っています。
これが共有できるようになった際の効果として想定しているのが、一番最後のスライドです。まずは急性期の重症患者さんに対して、適切なタイミングで家族支援が提供できるようになる。これ以上よくならないというところも含めて、しっかり医療スタッフ側でディスカッションした中で、家族支援をするということができるようになるのではないかと考えています。
先ほど御説明したとおり、臓器提供の説明後に臓器提供ができなくなるということは避けたい。この連携施設間でやることによって、救急現場にいるスタッフが臓器提供の可能性があるということに気付けるようになるのではないかなと思っています。今は県のコーディネーターに相談してということになるのですが、その相談する入口が各施設ばらばらだと思っています。それがある程度一定になっていく可能性があるかなと。さらにその先には、このGCS3という患者さんの各施設でリストができることになると思うので、そのリストを見ながら振り返りをすることによって、臓器提供につながらなかった症例がどんなところに問題があったのか、そんなことができるようになるのではないかなと思っています。今は臓器提供ができた症例の振り返りはできているのですが、それよりもっと大切ななぜできなかったかというところの振り返りがなかなかできていないということが現状だと思っていますが、そこにフォーカスを絞っていくことができるのではないかと思います。その振り返りをすることによって、その臓器提供システムの質の改善につながるだろうと。
1ページ前に戻っていただきたいのですが、その連携事務局が今は多分、都道府県のコーディネーター1人がその判断をしているかと思いますが、そこに支援医師の複数のメンバーがいて、あと連携の事務局がいて、その中での検討をするようになると、その支援医師というのは県内の幾つかの施設の代表が来ているものですから、各実施施設でいろいろな経験をもとに臓器提供できそうな患者さんに気付きやすくなる。そこから臓器提供のシステムの改善につなげていくということが、各施設でできるようになっていく可能性があるのではないかなと思っています。
こんなことを想定しながら、厚労科研の中で連携体制をつくりながら、さらに情報共有をするシステムを試していきたいと思っているところです。以上で説明を終わらせていただきます。

○磯部委員長 渥美さん、御説明ありがとうございます。質疑に移りますが、私から1点伺います。最後の連携事務局ですが、具体的には事務局の場所や人員の職種は伺いましたが、対応の時間や様々な負担があるかと思います。具体的にどのように運用をされているのか教えていただけますか。
 
○渥美参考人 今、当院の場合は連携事務局は当院のソーシャルワーカーさんが担当してくださっていて、あと事務員です。あと当院の中の院内コーディネーターが事務局として動いてくださっています。支援医師というのは、県内の5類型病院の中核になっているような先生方に参加をしていただいています。あとは都道府県のコーディネーターが、その情報共有には参加をしていただいています。

○磯部委員長 緊急の場合もあろうかと思いますが、対応の時間や連絡の方法はどうなさっているのですか。

○渥美参考人 まだ具体的にそこまで動いていないので、つかめていないところですが、今までは各病院から、この人は臓器提供になるのではないかということで都道府県のコーディネーターにまず連絡が入って、その情報を共有するような形を取っています。ですので、一定の基準でというところは今はまだ動いていないというのが現状です。それを一定の基準に達したところを送っていただいて、その中で判断をしていこうと思っていますが、恐らく都道府県コーディネーターのように24時間体制というのはなかなか難しいのかなと思っています。ですので、翌朝、気付いたところで情報を送っていただいて、それに対してリアクションを起こしていくというのが現実的なところかと思っています。

○磯部委員長 ありがとうございます。そうしましたら委員から、御質疑、御意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

○横田委員 渥美先生、御紹介ありがとうございました。非常にこの連携体制構築ということで、日本のモデルにもなるような既にシステムは出来上がっていると思うのですが、幾つか教えてほしいところがあるので、質問させてください。1つは、スライドの2枚目の一番下の内容の所で、経験のある施設が具体的には先生の聖隷浜松病院だと思うのですが、連携施設に対して「日常診療も維持するための支援」と書いてあるのですが、実際、診療の支援、補助もするのか、あるいは法的脳死判定の支援医師のことを言っているのかというのが1点です。
2ページ目の所で、連携施設は「静岡県内の5類型施設」とあるのですが、具体的には何施設ぐらいがこの事業に加わっているのか、この2点を教えてください。

○渥美参考人 1点目の「日常診療も維持するための支援」という所ですが、今、具体的に動き出しているのは、脳死判定の支援ができるようにと考えています。ただ、そこは動いていません。実際の声としては、やはり臓器提供するとなると、どうしても救急がその時間ストップしてしまう時間ができてしまう。それを近隣の施設の中で、この施設は今ちょっと取れないというような情報の共有だけでも、かなりスムーズにということが言われています。これは言っていいのかあれですが、「日常診療を維持するために」というのは、うちの施設ではなくて市内の別の病院で、かなり臓器提供が出ている病院があるのですが、そこが主に話してくださっているところです。将来的には、脳波を実施する支援があると嬉しいなということを各施設の方はおっしゃっています。その辺は将来的にできるかどうかということを、これから探っていきたいと思っているところです。
2点目に関しては。

○磯部委員長 施設ですね、施設の数。

○渥美参考人  県内5類型施設が23施設あるのですが、そのうち実際にしっかり臓器提供の準備をしていこうという施設が18か19です。その中で連携施設に参加してくださっているのは、病院の施設として参加しますという意思表明をしてくださった施設で、現在は11施設です。

○磯部委員長 よろしいでしょうか。

○横田委員 ありがとうございました。よく分かりました。

○磯部委員長  ほかに御意見、御質問はありませんか。

○吉田参考人  幾つか渥美先生がおっしゃるように、提示をしてその後に撤回というのは、絶対避けなくてはいけないことだと思いますので、我々の所ではいわゆる専門職員、院内のコーディネーターですが、この辺の知識を持っていて、最初に救急から患者さんに言う前にコンサルトを受けて、これは止めておいたほうがいい、これは大丈夫だなどということは話されています。ですので、そういう方が施設で共有でサポートされるのは非常にいいかなと。ただし、この方々はやはり24時間対応になると思いますので、複数人置かないと疲れてしまうと思います。我々の所はコーディネーターが2人いて、順番に24時間、電話を持って対応しています。さらに言えば、現在、当直師長にこの件について勉強していただいて、ある程度のそこのハンドリングができるようにしてあります。当直師長の所に話を持ってくれば、これは駄目だなどのある程度のことはできるということをしています。
あと神奈川県の中に4大学が法医を持っていますので、まずは法医の先生にコンサルトできるようなシステムを作っています。このことに関して、法医の先生方は大丈夫でしょうかということは、これは四六時中どこかにはコンサルトできるということにしています。それから、外傷のものは事件性があるとできないので、神奈川県警と年に1、2回は症例検討会をして、こういう症例については我々も司法解剖になるだろうから止める、あるいは神奈川県警としても、こういうことは協力できるということを話し合っているということですので、そういうことで何か御参考にと思いまして、発言させていただきました。

○磯部委員長 ありがとうございます。ほかにはいかがですか。

○有賀委員 渥美先生の御説明は、大変よく分かったのですが、実は渥美先生による御発表と渥美先生が発表される前に事務局が説明してくださったところの紙を見合わせますと、一体どうなのだろうと思うのは、事務局の説明の2の◯の1つ目、2ページにいくと「次のような要因もある」と。4行目に「臓器提供の経験が少ない」、その次に「チームによる検討がなされず、担当医のみによりうんぬん」とあります。このチームによる検討がなされずにうんぬんの部分は、先生の厚生科学研究の考察の中で、確かにチームによる検討は乏しいという局面をやはり指摘せざるを得ないのでしょうか。つまり、5類型の病院で何だかんだ言いながら、臓器提供になると救急がストップする、それから脳死の判定において脳波を取るのが難しいなどという、そういう話は分かるのですが、チームによる検討が乏しいために、したがって本件は詳しい人が参加しなくてはいけないという話になってしまうのですか。チームによる検討というのは、結構やっているのではないかなという気もするのですが、その辺りをちょっと教えてください。

○磯部委員長 渥美参考人、どうぞ。

○渥美参考人 御質問ありがとうございます。ここに関しては、チームの検討をやっているか、やっていないかというのは調査しておりません。なので、ここに書いてあることは厚労科研から出した結果というわけではないということだけ、先にお伝えさせていただくことなのですが、ただ、実際の現場での実感として、やはり治療をしている主治医というのは治療を一生懸命やっているものですから、そこから終末期に切り替えるというのは、なかなか難しいだろうなと感じているところです。
だからそれ以外、本当に直接治療に携わっていない、ちょっと客観的に見られているグループ、誰でもいいのです。集中治療医でもいいですし、ICUのベッドコントローラーをやっている看護師さんでもいいのですけれども、そういう方が、「ひょっとしたらこの人、終末期じゃないの」という一言、声を掛けられるかどうかというのは大きいのではないかなと印象を持っているところです。

○有賀委員 もうちょっとよろしゅうございますか。今、終末期という問題に、先生は気が付く必要があると言うのですが、そもそもそのような患者さんを受け持った医療チームにあっては、ただ「御臨終です」と言うだけではなくて、御家族がおられたら、病態の推移なりを説明するというプロセスがあるので、私自身は終末期そのものの認識がある、終末期医療としてやっているのではないかなと思うのですよね。その終末期医療の中で、ひょっとしたらという部分が、多分気が付かないというようなことではないかなと思うので、そういう意味では、チームによる検討の雛形の中に、今言った問題意識をどのように読み込むのかという部分が大変必要なのではないかなという感じですよね。
多分渥美先生と私と、究極的には同じ所へ行き着くのだと思いますけれど、問題の認識の仕方は、今言った医療上の部分がないと、医療のクオリティーが本当に良くなっているかという話には、多分ならないのではないかなということをちょっと懸念したので、質問させていただきました。

○渥美参考人  おっしゃるとおりだと思います。そこでディスカッションはすぐ始まるというわけではなくて、やはり何となくそばにいながら診療の経過を共有し、立ち話をするようなところからディスカッションが始まるのかと思っています。

                      (一時的にスピーカーの音声が途切れる)
(横田委員に聞き取った発言概要)
○横田委員 東北大学久志本成樹教授の分担研究班の報告から、アンケート調査の結果としてチームとしてではなく、主治医が個人の努力で行っていることが多いことが言われています。私の報告書の中に入っていた資料なのですけれども、東北大学の久志本教授の研究班で、アンケートの結果としてこのような結果が出ています。これは何を言っているかというと、いわゆるある施設でキーパーソン、非常に積極的に関わる研究医がいたとしますと、その先生が仮に異動した場合に、その後そういう情報提供の手順が全くなくなってしまう。ですから、やはり渥美先生が今やっているような病院として、組織として体制づくりをしたほうがいいのではないかと、こういう趣旨の、アンケート結果からの報告だとこのように記憶しています。追加です。

○磯部委員長 他にはいかがでしょうか。

○湯沢委員 水戸医療センターの湯沢です。施設として働いていただいている聖隷浜松病院、渥美先生、すごい仕事をしていただいているなという思いがあります。そこで実は、今、連携している施設が、まだ少ないうちはいいと思うのですが、これが今後メリットに気が付いてどんどん参加してくるような事態になったときに、間違いなく拠点施設は疲弊してしまうと思うのですね。ましてや24時間、本当に仕事ができるかというところが、そんなにとんでもなく増えなければいいのですけれども、もし増えたときに、拠点施設だけではとても担い切れるものではないという思いがあります。この機能がネットワークができればいいのですが、とてもできるとは思えませんし、アメリカなどですとOPOという施設がしっかりこの役割を果たしていると思うのですが、結局はそのように専門であっせんというか、連携局になるような施設が必要なのではないかと思っております。今回近づいたのは連携体制構築事業で、渥美先生にしっかり頑張ってもらうしかないと思うのですが、将来的に厚生労働省としても、やはりOPOみたいな施設を作って支援しているような体制づくりというのはいかがなものなのでしょうか。今回連携不良ではありませんが、とてもこれが将来的につながっていくこととは思えないのですが、いかがでしょうか。

○磯部委員長 これは事務局、いかがでしょうか。

○井口室長 先生御指摘のOPOについて、我々も問題意識を持っております。一方で日本の中でナショナルOPOを1つ作って、そこで全部支援するのだということが果たして現実的なのかなというのも思っております。1つ我々の中でアイディアとして持っているもの、これはまだ決定事項というわけではないですし、どちらかというと、この連携体制構築事業の推移を見守りながらということになりますけれども、1つの連携体制構築事業の、いわゆる拠点病院が持つ支援施設を一定数に保ちながら、拠点のグループを全国に広げていく、連携施設が日本全国どこかの拠点病院、若しくはどこかの連携病院になっていると。そういった形でホスピタルベースのOPOのようなものにできたら、1つ、手としてはあるのかなと考えております。

○磯部委員長 湯沢委員はいいですか。

○湯沢委員 OPOとして活動するのであれば、やはりその地方地方で特性に合わせた形が必要なのではないかと思って、私もナショナルOPOではなくて特化したOPOではないかと思っておりました。是非そうなればと思います。

○磯部委員長 ありがとうございます。発言者のほう、よろしいでしょうか。質問ございますか。

○渥美参考人 私どもの所、聖隷浜松病院は拠点施設と言っても一般病院ですので、移植をやっているわけでもないですし、余りマンパワーが多いとか、そういう状況にはないのですね。なので静岡県では、提供する側の救急病院同士がお互いに助け合おうと。うちが拠点としていろいろな連携の要にはなるようにしているのですが、お互いに助け合えるように、支援に行くときも、絶対に聖隷浜松病院から支援に行くというわけではなくて、連携病院の中でお互いに支援していただくとか、そういうところも進めているところです。1か所だけに負担が掛かるようなシステムになると、かなり大変なのかなと思っているところです。以上です。

○磯部委員長 ありがとうございます。ほかに御発言の方いらっしゃいますか。

○秋山委員 今回の事業に感想を述べてもいいでしょうか。

○磯部委員長 どうぞ。

○秋山委員 今回の静岡県の取組で、カンファレンスやセミナーを定期的に開催されていること、そして、事例発生時の支援の連携がとてもすばらしいと言いますか、大切だと思いました。私は児童虐待に関する仕事をしていますが、臓器提供とは異なると思いますけれども、常に児童虐待を念頭に入れておくことが大切で、事例が少なければ、ついいつの間にか頭から離れて、またその事例に当たってもすぐに思い通りに動くことができないということがあります。そこで定期的にカンファレンスやセミナーがあることは、常にイメージトレーニングができますし、即座に適切な対応に結び付けることができるのではないかと思いました。
それから、またこれも虐待に関してですけれども、院内にプロジェクトチームが設置されていますと、事例が少ない病院では事例の度にチームを結成することで、大事になると感じて事例を挙げにくいという声を聞いたことがあります。そこで、この臓器提供の提供未経験の施設や少ない施設は、サポートチームがあることで速やかに支援に入っていただけるし、どんなことでも相談しやすい環境ができるのではないかと思いました。以上です。

○磯部委員長 ありがとうございます。ほかに回答、御質問はございますか。

○木幡委員 吉田先生、渥美先生、どうもありがとうございました。お二人のお取組を聞いていて本当にすばらしいと思いますので、是非どんどん進めていただけたらと思いました。やはり患者・家族からすると、運ばれた病院によって情報の格差があったり、提供ができたりできなかったりというのは、やはりおかしいと思いますし、あってはならないことだと思いますので、全ての人に提供する権利、しない権利も含めてあると思うのですね。
ただ残念ながら、今はまだ一般の人が本当に移植医療について十分な知識がないと思いますので、この提供施設の役割というのはものすごく大きいと思います。ですので、いろいろ大変なこともおありかと思いますが、先ほどの調査票ですとか、あとは私は以前、藤田医科大学病院でも、そういった診療申込書の一番下の所に、輸血をしてもいいか、宗教上の理由で輸血を拒否しますかなどの質問とともに臓器移植のことが書かれていたのを見たことがあるのですが、そういうフラットな形で書いていただくことで、しかもそれは皆さんのことを思って、患者さんのことを思ってこういうことを伝えているのですという思いでやれば、決して嫌な思いはしないと思いますので、是非そのように進めていただけたらなと思います。やはり一番あってはならないのは、「臓器提供したかったのに、なぜあのとき教えてくれなかったのか」というようなことであって、是非ともこの提供施設の皆さんには、個人の意思が尊重されるための取組を進めていただけたらなと思いました。ありがとうございました。

○磯部委員長 ありがとうございます。いかがでしょうか。

○猪股委員 熊本労災病院の猪股ですが、よろしいでしょうか。ちょっと御質問なのですけれども、先ほどの渥美先生のお話を聞いていて、熊本県内でも幾つかの病院がそれぞれ複数ケースを出していて、臓器提供に慣れた人が複数出てきているという状況にあります。慣れた人というのは救急医ですが、そういう人たちが県内で集団を作って、場合によっては提供経験数が多い病院の院内コーディネーター等も含めて1つの集団を作って拠点になっていくというのが現実的なのかなと、伺っていて思いました。1つの病院が担うというのはかなり厳しいことではないかなと思ったのです。
ここで1つ御質問なのですが、県のコーディネーターの存在です。情報の集約等で無視できない存在だと思うのですけれども、熊本県内では日赤病院に1人いらっしゃるだけで、その人が県のコーディネーターとして全県の担当をされているわけですけれども、その方、県のコーディネーターとチームとの関係性というのはどのようになっているか、あるいはなっていくべきかとお考えでしょうか。

○磯部委員長 渥美参考人、どうぞ。

○渥美参考人 ありがとうございます。本当に先生のおっしゃるとおり、慣れている人が仲間になって進めていくという中で、では本当に、県のコーディネーターは静岡県も1人なのですけれども、本当にみんな仲良くやっているというのが正直なところです。どうしても慣れている人と言っても、10年例以上経験している人というのはなかなか医療スタッフではいないというのが現状で、県のコーディネーターは何十例という経験がございますので、そこを補完し合いながらやっていくのが一番いいだろうと思っているところです。御質問ありがとうございました。

○猪股委員 ありがとうございました。

○磯部委員長 いかがでしょうか。そうしましたら特に御意見がなければ、この連携体制構築事業として、連携施設と拠点施設の情報共有を進めていただくという御提案には、皆さん御賛同されていらっしゃいますので、是非進めていただければと思います。事務局のほうは、この案件についてはこれでよろしいでしょうか。

○曽山補佐 結構でございます。ありがとうございます。

○磯部委員長 事務局のほうから臓器提供を更に増やすための、2つの取組について御提案いただきまして、お認めいただきました。こういった試みを通じて、臓器提供がさらに盛んになるような仕組みを作っていっていただきたいと、今日の御提案を通じて感じました。
用意された議題についての議論は以上でございますが、ほかにこの場で御発言の方、御意見のある方はございますでしょうか。

○加藤委員 渥美先生、横田先生、大変様子が分かってきました。ありがとうございます。先ほど最終ということが出たのですけれども、どなたかに質問というわけではないのですが、先達て横田班の中に、田中先生という末梢組織移植のことを一生懸命やっておられる先生がおいでになります。聞こえていますでしょうか。

○磯部委員長 聞こえています。

○曽山補佐 事務局も聞こえております。

○加藤委員 臓器移植は大変大事なことなのですけれども、私も臓器移植自体たくさんやってきたのですが、それ以外に組織移植ということが非常に対象者も多いし、それから重要ではないかなということも思っているのですけれども、なかなかこの組織移植という言葉自体が一般市民の中にまだ浸透していないということもあって、その辺りのところを、別に申し込んでいなくても移植の1つに分けられてもいいと思います。もう少しそんなものが浸透するような形で、全体が思ってもいいなということを考えております。以上です。

○磯部委員長 ありがとうございます。事務局、何か今の課題についてコメントございますか。組織移植ですね。

○曽山補佐 組織移植、そして臓器移植ということに関しましては、御家族あるいは患者さんに対する情報提供というところでも、いかに連携するかというところが長くテーマとして考えられているということは我々も認識しております。なので、我々移植医療対策推進室としても臓器移植、そして組織移植というところの連携ということで、我々も必要な支援ということができればと考えておりますので、引き続き情報共有させていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

○磯部委員長 はい、よろしくお願いいたします。そうしましたら以上で議事は全て終了いたしました。それでは最後に、事務局のほうからお願いいたします。

○曽山補佐 本日は御議論いただきましてありがとうございました。また、WEB会議というところで委員の皆様、また参考人の皆様にはお手数をお掛けしましたけれども、御協力いただきまして誠にありがとうございました。事務局におきましては、本日頂きました御意見を踏まえまして、引き続き臓器移植に係る環境整備に取り組んでまいりたいと考えております。なお、本日御議論いただいた内容につきましては議事録を作成し、その後に公開させていただきます。今後の臓器移植委員会の開催につきましては、別途調整、御連絡させていただきますので、よろしくお願いいたします。またWEB会議終了の際には、右側の赤いボタンをクリックして切断をお願いいたします。事務局からは以上です。

○磯部委員長 ありがとうございました。以上で終わりでございますが、厚労省は感染症対策が大変かと思いますけれども、どうぞ、そちらのほうもよろしくお願いしたいと思います。それでは本日の委員会はこれで終了です。どうも御苦労様でした。ありがとうございます。

○曽山補佐 ありがとうございました。

照会先

健康局難病対策課移植医療対策推進室

代表:03(5253)1111
内線:2365