2020年3月16日 第3回国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループ 議事録

政策統括官付参事官付統計企画調整室

日時

令和2年3月16日(月)17:00~19:00

場所

 厚生労働省専用第22会議室
(中央合同庁舎第5号館18階1806号室)

出席者

構成員(五十音順、敬称略、○:主査)

  大久保 一郎
  小塩 隆士
 ○加藤 久和
  小山 泰代
  津谷 典子
  樋田 勉

構成員以外の関係者

  家田 裕介 (埼玉県保健医療部保健医療政策課
         保健所・衛生研究所・県立大学担当主査)
  大岩 洋(千葉県健康福祉部健康福祉指導課企画情報班班長)
  西郷 浩(早稲田大学政治経済学術院教授)
  清田 正彰 (大阪府健康医療部健康医療総務課課長)
  (代理出席 前林 豊久
  (大阪府健康医療部健康医療総務課企画グループ総括主査))


事務局

  鈴木政策統括官
  武藤参事官(企画調整担当)
  中村世帯統計室長
  細井統計企画調整室長
  川田世帯統計室国民生活基礎統計専門官
  寺坂審査解析室総合解析係長

議題

1 国民生活基礎調査の推計方法の見直しについて
2 国民生活基礎調査におけるオンライン調査の導入について

議事

 


○細井統計企画調整室長
 それでは定刻になりましたので、ただいまから第3回国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループを開会させていただきます。委員の皆様方におかれましては、お忙しい中を御出席いただきまして、誠にありがとうございます。本日の出席状況ですが、臼井委員が御欠席でございます。また、本日は審議協力者といたしまして、早稲田大学政治経済学術院の西郷先生、埼玉県保健医療部保健医療政策課の家田主査、千葉県健康福祉部健康福祉指導課の大岩班長、大阪府健康医療部健康医療総務課の清田課長の代理として前林総括主査の皆様に御出席いただいております。本日の審議は19時までを予定しておりますが、審議状況によりましては予定時間を若干過ぎる可能性もあるかと存じます。そのような場合、御予定のある方は御退席いただきまして構いませんので、よろしくお願いいたします。それではこれ以降の進行を加藤主査にお願いをいたします。カメラ撮りはここまでとさせていただきます。お願いいたします。

○加藤主査
 皆様、本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。早速ではありますが、第3回ワーキンググループの議事を進めてまいりたいと思います。
 1つ目の議事となります推計方法の見直しについてですが、資料についてはお手元のタブレットにありますように、資料1から資料3と3つあります。円滑に議論を行うために、資料を1つごと区切る形で進めさせていただきたいと思います。それでは事務局より資料1について御説明をお願いいたします。

○中村世帯統計室長
 それでは資料1の1ページを御覧ください。昨年12月に開催いたしました第2回ワーキングにおきまして、新たな推計方法による試算結果について御議論いただいた中で、父子世帯について過大推計となっているため、父子世帯のデータに付与する拡大乗数の見直しを行いまして、第3回のこのワーキングで再集計結果をお示しすることとなりました。1ページのイメージ図ですが、父子世帯の拡大乗数については、当初左側のひとり親と未婚の子のうち、②の母子以外の所を使っておりましたが、見直し後は右側の③の所、母子・父子共通で作成し直して、世帯票、所得票の主な数値を再集計しております。
 2ページ目を御覧ください。ここからが平成22年と平成27年の再集計結果でして、表1については、世帯構造、世帯類型別世帯数と平均世帯人員の表です。表側の平成22年と平成27年の所、現行というのは現在の公表値、新推計①というのが前回のワーキングでお示しした推計値、新推計②というのが、今回の拡大乗数を見直した再集計結果となっております。前回資料と同じように、現行と新推計①あるいは②を比べまして、国勢調査結果に近いほうを黄色のマーカーにしております。ピンクの枠の所を見ていただきますと、父子世帯については、青い矢印の所、過大推計でありました新推計①の値が新推計②では大体半分ぐらいに減少しておりまして、国勢調査結果に最も近い値となっております。父子世帯以外の区分を見ますと、おおむね現行よりも国勢調査結果に近い値となっておりまして、また、新推計①と②では、近似した値ということになっております。したがいまして、ここについては父子世帯は相当改善が行われたと考えております。
 次に3ページを御覧ください。表2は、平成22年データを用いまして、世帯構造、世帯類型別の世帯数を都道府県別に再集計しております。4種類の推計値と国勢調査結果を比較しておりますが、赤枠の結果の所、前回ワーキング資料と同様に、この4種類の推計値のうち平成22年国勢調査結果に最も近い都道府県の数をカウントしております。ピンクの枠の父子世帯については、青い矢印の所を見ていただきますと、新推計①で15の都道府県であったものが、新推計②では31と倍増しておりまして、国勢調査結果とのかい離というのは縮小されていると考えております。また、父子世帯以外の区分でも、新推計はおおむね国勢調査に最も近い値となっております。これが7ページ目まで続きます。
 次に8ページを御覧ください。表3は年齢階級別の世帯人員数を見たものです。現行と新推計②を比較しますと、平成22年と平成27年ともに一部の年齢階級を除きまして、新推計②のほうが国勢調査結果に近い結果となっております。また、新推計①と②を比べますと、ほぼ同じくらいの値になっておりまして、大きな変化はありません。以上が世帯票の主な結果ということです。
 次に9ページ目を御覧ください。ここからは平成21年と平成26年の所得票のデータを用いた主な項目の再集計結果です。表4を御覧ください。1世帯当たりの平均所得金額について、新推計②を現行や新推計①と比較しております。まず、真ん中の平成21年の結果ですが、赤字の増減②の所を見ていただきますと、全世帯では現行よりも164,000円の減少、高齢者世帯では27,000円の微減、一方、児童のいる世帯は13,000円の微増となっております。平成26年のほうを見ていただきますと、全世帯では現行よりも289,000円の減少、高齢者世帯は114,000円の減少、児童のいる世帯は165,000円の減少となっております。また、新推計①と新推計②の変化を青い矢印でお示しておりますが、この2つの値を見ると大きな変化はありません。母子世帯で「母子・父子」共通の拡大乗数で再集計した結果、各種世帯の平均所得への影響は小さかったと考えております。
 次に10ページ目を御覧ください。表5-1は、平成21年所得で所得金額階級別の分布、中央値などを見たものです。表の中の増減欄に緑色の枠とか紫の枠とか青い枠がありますが、これは全世帯、児童のいる世帯、母子世帯それぞれの中央値の属する階級を示しております。いずれの世帯も、おおむねこの階級よりも下の階級の割合が増加し、上の階級が減少しているという結果になっております。新推計①と新推計②の比較では、ほぼ変わらない結果になっております。
 次に11ページを御覧ください。表5-2は平成26年所得で同様に見たものです。全世帯と児童のいる世帯は、平成21年と同じように傾向は変わっておりませんが、母子世帯だけは中央値が若干上昇し、分布の変化もやや違う動きになっております。ただし、この傾向というのは、新推計①でも同じような結果となっております。
 次に12ページを御覧ください。表6は平成21年所得で相対的貧困率の変化を見たものです。増減②の青枠の所を見ていただきますと、新推計②と現行を比べますと、相対的貧困率は0.4ポイント上昇、子どもの貧困率は0.2ポイント低下、大人一人の所は0.5ポイント上昇となっております。また、新推計①と②を比べますと、相対的貧困率と子どもの貧困率ではそれほど大きな変化はありませんでした。大人一人の所は50.2から51.3と1.1ポイント上昇しておりまして、現行との増減で見ましても、-0.6から+0.5と変化の方向が逆転しております。
 そこで席上配布資料を御覧ください。大人一人の貧困率について、世帯構造別に寄与分解してみました。左のほうが第2回のワーキングでお示した新推計①によるもの、右のほうが新推計②、今回の試算結果となります。新推計②の上の表の部分を見ていただきますと、貧困率要因が-0.4、シェア要因が+0.9、差引き+0.5となっております。ここで前回とは変化の方向が逆転したということです。真ん中のグラフを見ていただきますと、赤枠の所、父子世帯の率要因とシェア要因ともに非常に下げ幅が小さくなったことが最も効いているということで、それ以外の母子世帯とかその他の部分については、ほぼ同じような高さになっているということです。新推計①では父子世帯が貧困率を大きく押し下げる要因だったものが、母子・父子共通の拡大乗数でやると、その押し下げ幅が小さくなったということで、変化の方向も変わったということだろうと思っております。
 次に資料1の13ページに戻っていただきまして、表7-1と表7-2は平成22年と平成27年の生活意識の変化を見たものです。いずれの世帯でも1ポイントを超えるような大きな増減は見られませんでした。以上がこの母子世帯の拡大乗数を見直した結果となっております。説明は以上です。

○加藤主査
 ありがとうございました。前回のワーキンググループで提示されました試算結果では、父子世帯が過大推計となっていたわけですが、この問題を解消するため拡大乗数の作成区分を見直して、改めて再集計した結果の説明が事務局よりございました。新推計②ということで見させていただいたわけですが、これを受けまして委員の皆様、御質問、御意見等ありましたら是非お願いいたします。どなたからでもよろしくお願いいたします。特によろしいでしょうか。どうもありがとうございます。
 それでは引き続きまして、資料2について御説明をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

○中村世帯統計室長
 それでは、資料2の1ページを御覧ください。第2回のワーキングにおいて、新たな推計方法による試算結果について、委員の皆様から貴重な御意見をいろいろ頂きました。この中で、今後のワーキングでの検討や取りまとめに際し、メンバー間で共有しておいたほうがよいと思われることを3点ほど資料にしております。1点目は、新推計の世帯数の結果については、国勢調査結果との比較だけではなくて、人口推計とも比較・検証すべきというものです。2点目は、所得票の結果の変化については、新推計と現行推計のウエイト(拡大乗数)がどのように変化したことが原因なのか調べておく必要があるのではないかというものです。3点目は、新推計の「仕事の有無」であるとか「雇用形態」の構成割合の結果が、国勢調査や労働力調査の結果と一致しない理由については、それぞれの設問や調査時期・期間、こういった違いがあることから、その違いを確認しておくべきというものです。
 2ページを御覧ください。まず1点目の人口推計との比較・検証ですが、表は年齢階級別の世帯人員数を見ております。人口推計は薄い茶色がかった所です。現行と新推計①②のうち、最も人口推計に近いものを黄色のマーカーにしております。前回お示しした国勢調査結果との比較と同様に、各年齢階級の多くの区分で、現行よりも新推計①あるいは新推計②のほうが人口推計に近い結果になっております。上にコメントがありますが、コメントの※の所、「80歳以上」の所を見ていただくと、実は新推計①や新推計②の結果が人口推計よりも100万以上少なくなっております。これは、国民生活基礎調査や国勢調査の集計では、入院者等の世帯人員が含まれておらず、一方で人口推計にはそういう方たちも含まれた集計になっていることで、この部分のかい離が出ていると考えております。
 次に、3ページを御覧ください。所得票の結果の変化について、ウエイトがどのように変化したことが原因なのかということです。まず左の表は、平成27年所得票の新推計②の層別の実際の拡大乗数です。右の表は、現行の層別の仮想の拡大乗数を示しております。所得票の結果というのは、平均所得とか所得分布、割合を見るということが目的となっております。簡易調査年の調査地区数というのは、全国一律で国勢調査区の地区数に比例して抽出するため、各個票データにウエイトを掛けても掛けなくても同じ結果になるので、ウエイトを持たせておりません。今回は、拡大乗数がどの程度変化したのかを見るために、新推計②の結果である総世帯数と実際の調査サンプル数の比で新推計②の拡大乗数の平均値を求めて、仮想的に現行の拡大乗数というものを作っております。表の中の各層は、全て7,908となっております。
 左の表を右の表で割ると下の表になります。青と赤のグラデーションになっておりますが、青は7,908より大きく、赤は小さい。また、色が濃いほど拡大乗数の変化が大きいということです。例えば、単独(男)の19歳以下は9.46となっておりますが、拡大乗数は現行の9.5倍になったことを示しているということです。結果としては、若年の単独世帯の拡大乗数が大きくなる一方で、おおむね40歳以上の各世帯構造では拡大乗数が小さくなっているといった結果になっております。
 4ページを御覧ください。4ページの左上の表は、3ページで作った拡大乗数の変化の表です。左下の表は、1世帯当たり平均所得金額でして、赤が所得が低く、青が高いというものです。右のグラフがこれらの相関図となっており、相関係数は-0.306ということで、弱い負の相関になっております。グラフの中に赤い縦線が入っておりますが、これよりも右側が拡大乗数が大きくなったものです。黒い四角い点線の部分を見ていただくと、ここは拡大乗数が大きくなり、相対的に所得が低いグループでして、おおむね黄色の単独の男女とか、ピンクのひとり親と未婚の子の世帯、こういったところが多く入っております。
 一方で、緑の楕円の点線の部分を見ていただくと、ここは相対的に所得が高いグループで、紫の夫婦のみ又は夫婦と未婚の子の世帯、青の三世代世帯など、拡大乗数の変化幅はそれほど大きくなく、拡大乗数が現行よりも大きくなっている所もありますけれども、どちらかと言うと小さくなっている所のほうが多いという分布になっております。全体の所得分布とウエイトの変化から、所得を押し下げるほうが若干勝ったために、現行に比べて新推計②の所得が低下したのではないかと考えております。
 5ページを御覧ください。3点目の各調査の就業に関する設問や調査時期・期間の違いについてです。設問を見ていただくと類似しているものの微妙に選択肢に違いがあるといったこと、それ以外には、例えば調査時期とか期間も記載のとおり違いがあるということです。一番下は参考で、国勢調査や労調との結果の違いを生む要因としては、こういった項目等の違いだけではなくて、実際の結果として、仕事の有無の不詳の者の数の違いもそれなりに国勢調査が大きく、労調は小さいと。国民生活も国勢調査の半分ぐらいという結果になっていると。こういったことが確認しておいたほうがいいという事項でお示ししたものです。説明は以上です。

○加藤主査
 事務局から、前回のワーキンググループで委員の皆様から頂いた御意見に対する回答について、御説明がありました。この点について委員の皆様、御質問、御意見等がございましたら、よろしくお願いいたします。特に2番目の所得票の変化については、今後の非常に重要なところではないかなと思いますので、この点については非常に有り難いなと思っておりますが、委員の皆様、御自由に御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。では津谷先生、お願いいたします。

○津谷委員
 先ほど主査からもお尋ねがありましたが、これは自明なのですが、新推計①と新推計②を比べると、新推計①では父子世帯が過大に推計されていたものが新推計②では修正されて、国勢調査の結果に近くなっていることがわかります。ほかの点ついては、①でも②でもほとんど差がなかったわけですので、ここでは新推計②を使ったことは適切であったと思います。当然のことながら、貧困率をどうするのかという問題は政治的にも政策的にも大変重要な課題です。
 これとは少し違うのですが、前回言ったことに関連があるので、一言付け加えたいと思います。資料2の最後に、国勢調査及び労働力調査と国民生活基礎調査の「仕事の有無」および「雇用形態」という項目がありますが、これらは調査によって定義や回答の選択肢が相当違うものもあるように思います。また、調査の時期も違います。仕事は、辞めたりまた就いたりと、就業にはいろいろなことがありますので、質問の仕方や調査の時期によって違ってくるわけです。また、仕事の有無が不詳という場合もありますが、この不詳をどのように処理するのかによって結果が変わってきます。不詳は除いて、不詳ではない者だけで集計するとか、いろいろなことが考えられるかと思います。
 また、ここに何名の不詳があるという値が出されています。当然、不詳が何名という絶対値は大切なのですが、国勢調査は全数調査である一方、国民生活基礎調査は非常に大規模ではありますがサンプル調査で、労働力調査は基本的に毎月実施されている経常調査ですので、不詳の絶対数だけではなく、サンプル全体で不詳の占める割合がどれぐらいあるのかという数値もここに示しておかれるとより有用だと思います。絶対数が違うのは元の調査の規模が違いますのである意味当然で、全数調査である国調が一番多いわけです。例えば、国調の場合、子どもや高齢者を別にして、生産年齢人口をベースにしてどれぐらい不詳があるのかという割合も、出し方はいろいろとあるかもしれませんけれども、もし御存じでしたら教えていただけるといいと思います。

○中村世帯統計室長
 まず、資料2の5ページの一番下の参考の不詳の数ですが、国勢調査は全数なのですけれども、国民生活基礎調査の296万というのは推計値数です。要は、不詳の割合が国勢調査に比べて国民生活は2分の1ぐらいしか発生していないというふうに見ることができるかと思います。

○津谷委員
 そうですか、分かりました。半分ぐらいということですね。

○中村世帯統計室長
 はい。

○加藤主査
 よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。先ほど申し上げるのを忘れてしまったのですが、新推計②のほうが好ましいということもあって、こちらの所得票の変化の所も新推計②を使っていただいているということです。それも含めて御意見等がございましたら、どなた様でもお願いいたします。

○中村世帯統計室長
 よろしいですか。資料の貧困率の所、先ほどの資料1のほうなのですが、父子世帯が是正されたことによって、貧困率の方向が前回はマイナスだったのが、今回、大人一人の所はプラスに変更になったと。これは恐らく父子世帯の割合が低くなって、押し下げる要因が小さくなったということだろうと思います。これは、このような理解でよろしいということで、皆様よろしいのでしょうか。

○加藤主査
 いかがでしょうか。私もそう思って理解しているつもりなのですが。よろしいでしょうか。今、事務局から御説明がありましたように、貧困率については今後いろいろな議論が出てくるのではないかと思います。そのときの1つの考え方として、今の話として承る必要があるかなと思っております。よろしいでしょうか。

○津谷委員
 その解釈でおおむね間違っていないと思います。ただ、特に父子世帯は、絶対数もそうですが、割合としても非常に小さいものですので、これは統計的に頑強でない傾向があり、時には大きく数値が動きますので注意が必要です。ここでは、恐らく新推計②に基づいておやりになることが最適だと思います。どう見ても新推計①は、父子世帯に掛かったウエイトが大きすぎると思います。やはり小さな数値を扱うときにはそれなりに注意が必要だということは、今後もしこれについて御説明される場合がありましたら、一言付け加えられるとよろしいかと思います。近年、子どもの貧困は政策的、政治的に大変重要な課題になっていますので、父子世帯や母子世帯の推計については慎重にやっていかないといけないと思います。

○加藤主査
 新推計②を採用するというのは、まさに津谷先生がおっしゃったように、父子世帯の数の少なさもあって、母子世帯、父子世帯を一緒にして新推計②というのにしたということもありますので、その点を含めて貧困率の変化の所では、気を付けて説明をしていかなければいけないのかなと思っております。いかがでしょうか。ほかにどなたか御発言等はございますか。西郷先生、お願いいたします。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 集計、どうもありがとうございます。人口推計に関してなのですが、私もこのことを申し上げた構成員の1人だったと思うのですけれども、私の説明の仕方が良くなくて。国勢調査が行われている年であれば、国勢調査の数字をそのまま使えるわけですが、国勢調査が行われていないときにも人口推計の値は使えるので、国勢調査が行われていないときの検討として、人口推計を使ったらどうかという意味のつもりでした。今回は、平成22年と平成27年は人口推計との比較が行われているわけですが、それ以外の年は特になさっていませんか。

○中村世帯統計室長
 平成22年と平成27年しか見ておりません。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 そうですか。

○中村世帯統計室長
 そもそも今回、試算はその2か年分しかやっておりませんので。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 なるほど、分かりました。

○加藤主査
 よろしいですか。

○樋田委員
 御説明ありがとうございました。今回の資料2の2については、私が前回御質問させていただいたところなのですが、ちょっと質問の仕方が悪かったこともありまして、少し作業をお手伝いさせていただいたものを、ブラッシュアップしていただいて、このような図表にまとめていただきました。このような図表で見みると、新推計と従来の推計で所得がなぜ変化したのかということが、ウエイトの変化という視点から説明ができます。平成27年に限らず、必要に応じて年でも確認をしておいて、説明等の資料にしておくとよいのではないかと思います。以上です。

○加藤主査
 ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。もしまた何かあれば、最後に御意見を頂ければと思います。
引き続きまして、資料3について御説明をお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。

○中村世帯統計室長
 資料3の1ページを御覧ください。今後のこのワーキングの検討の進め方及び検討事項ですが、新たな推計方法の検討については、本日のワーキングを含めて3回御議論いただきました。大まかな整理としては、資料に書いてありますように、まず「世帯票」については、課題とされていた国勢調査結果とのかい離が縮小することが確認されたのではないかと考えております。なお、「仕事の有無」「雇用形態」の構成割合については、国勢調査との調査時期等の違いがあって、さらに両調査の回答不詳数の差が大きいと。こういった特性を持つ項目については、必ずしも国勢調査結果に近づくとは限らない。言い換えれば、それぞれの調査結果にある程度の差異が生じるのはやむを得ないのではないかと考えております。2つ目のまた書きですが、世帯票と同様の拡大乗数を用いる「健康票」と「介護票」については、現行の推計結果と比較しても大きな変化はなかったということで、政策判断が変わるようなものではなかったと考えております。
 一方で、「所得票」及び「貯蓄票」については、単独世帯の増加等により、現行の推計結果から、平均所得金額とか平均貯蓄額というのが大きく減少することなどが確認されております。ただ、これらについては真の値がないということで、この結果が妥当なのかどうかという評価が難しいと考えております。
 2ページを御覧ください。そこで、4回以降のワーキングについては、所得票及び貯蓄票に焦点を当てて、更なる検討を進めてはどうかと考えております。具体的には、検討すべき点として(1)新たな推計方法による再集計結果をどのような方法で評価するのかということ。(2)は、これまで行った新推計①あるいは新推計②以外に何か考えられる推計方法があるのか。この2つについて更に検討を深めてはどうかと考えております。本日はこの2点について、皆様方からお知恵を拝借できればと思っております。この2つについて一定の結論なり方向が出た後については、下に書いてあるように、新たな推計方法を何年の調査結果から適用するのか、あるいは既に公表している調査結果について遡りをどうするのかといったところについて検討してはどうかと考えております。
 次に、3ページを御覧ください。3ページは、これまでやった推計方法以外に考えられる推計方法として、事務局で考えた案です。例えば、上段の現案については、調整係数を作成する際に所得票の有効回答世帯数を用いているわけですが、右の表1-1で所得票の有効回答世帯数を層別に見ると、黄色のマーカーの所のように、非常に数値が小さい所があります。要は、安定した調整係数が得られないのではないかという問題意識を持っております。下の新案の所なのですが、ピンクの矢印のように、調整係数には所得票よりも有効回答世帯数が大体4、5倍ある世帯票を用いて、全国推計世帯数との比を算出し、緑の矢印のように、世帯票の有効回答世帯数と所得票の有効回答世帯数の比をもって補正するという方法も検討の余地があるのではないかと考えております。
 4ページを御覧ください。左の表1-2は、これまでやった現案の層別の調整係数です。右の表2-2というのが今御説明した新しい案の層別の調整係数になっております。ばらつきの具合を比較すると、現案の調整係数の最大値というのが14万9,586、最小値が2,654と大体56倍ぐらいの開きがあります。一方で、新案のほうで見ると最大値が4万3,977、最小値が2,968ということで、15倍ぐらいの開きに縮小するということです。また、下のほうに標準偏差等の数字も出しておりますが、現案では標準偏差が1万7,194に対して、新案では5,157というように、新案のほうがばらつきの小さい調整係数が得られるので、所得票の推計結果がより安定したものになるのではないかと考えております。そもそもこういったやり方が妥当なのかどうかということも含めて、仮に試算してみる価値があるということでしたら、次回のワーキングに再度、試算結果をお出しして御議論いただきたいと考えております。説明は以上です。

○加藤主査
 今、事務局から御説明いただいたものについて、論点が幾つかございますので、少し整理しながら進めさせていただきたいと思います。まず1点目ですが、事務局から、今後は所得票と貯蓄票にポイントを絞って、推計結果の評価方法や現案以外の推計方法の検討を行い、最終的に新しい推計方法をいつから適用するか等、検討の進め方や検討事項についての提案を頂いたところです。評価方法を実際にどうするのかといった細かな部分については後ほど議論するとして、まずはこのような検討方針について委員の皆様、御質問、御意見等がありましたらお願いできればと思います。よろしくお願いいたします。まずはこの検討の方針ということで、よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、今後このような検討方針でいきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、所得票と貯蓄票の新しい推計方法についての検討事項ですが、まずは推計結果の評価方法について委員の皆様、御質問、御意見等がありましたらお願いいたします。樋田先生、西郷先生、何かもし御意見等がございましたらお願いできればと思います。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 先ほど事務局からも御説明がありましたとおり、本当の姿というのが分からない中でやるので、新しいものが従来のやり方と比べていいかどうかというのはなかなか難しいですよね。ただ、ここで挙がっている現案以外に考えられる推計方法というのは、一種の縮小推定というものなのですかね。観察度数が少ない所の値を観察度数が多い所に寄せるようなやり方なので、もしかしたら理論的に正当化できるような根拠はあるのかもしれないなと思いました。今のやり方がかなり不安定だろうなというのは、確かに間違いないのではないかと思います。今のところはそれぐらいしかコメントできませんが、すみません。

○加藤主査
 いかがでしょうか。

○樋田委員
 西郷先生の御指摘に特に付け加えることはないのですが、ウエイトがこれだけばらついているというのは、推定精度の低下の原因にはなり得ると思います。この新しい方法が推定量として適切な性質を持っているのか検証した上で、実際の推定に利用可能なのかを検証していくというのは価値があるかなと思います。以上です。

○加藤主査
 いかがでしょうか。

○津谷委員
 やはりここでは、まず所得票及び貯蓄票の標本規模が小さいことに注意が必要です。そして、それを層化すると、データ規模は更に小さくなります。資料3の3ページに示されているように、黄色のハイライトが付いていますけれども、ケース数は非常に少ないです。ですので、先ほども申しましたが、統計の原則として、あまりにも小さな数値を扱う時には気を付けなくてはいけないということで、統計的に安定化させる1つの方法としてこの式が示されているということだと思います。分母に層別の所得票有効回答世帯数を使うのではなく、世帯票はずっと規模が大きいので、層別の世帯票の有効回答世帯数を使って安定させるということだと思います。そして、それを補正する形で調整係数を掛け合わせて見ていくということだと思いますので、西郷先生がおっしゃったように、そちらのほうに収束するということになります。
 ただ、この方法がいいのかどうかについての絶対的な判断基準はないわけですが、1つの原則として、不安定な数値をできるだけ避けるというものがあります。小さな数である数値を割ると、結果は非常に大きな数になってしまいます。もともとそれほど大きな差がないのに、非常に大きな差異があるかのような結果が人為的に作り出されてしまうことを避けるという意味で、これ以外に何か良いやり方が考えられるのかといわれても私は思い付きませんので、これでやってみてはどうかと思います。どれぐらい手間が掛かるのかということについて心配はありますが、検討を重ねていく中でこの新案が出されましたので、現案と新案を比較をした結果をベースに次回の検討を進めてはいかがかと思います。

○加藤主査
 いかがでしょうか。小塩先生、お願いいたします。

○小塩委員
 新しい案は非常に魅力的ですので、もし作業量が飛躍的に膨らむというわけではなければ是非試していただいて、今までの案と比べてどれぐらい違ってくるのかというのを私もチェックしたいと思います。それから、もちろんこのようにウエイトを変えると平均の所得は変わるはずなのですが、先ほどちょっと見せていただいた貧困率の推計では、中央値はあまり変わらないような印象を受けたのですが、そのように理解してよろしいですか。もしそうだったら、あまり貧困率には大きな影響はないかなという気もいたします。

○中村世帯統計室長
 等価可処分所得の中央値なのですが、現行が250万、新推計①が249万、新推計②が249万ということで、ほぼ変わらないということです。

○加藤主査
 よろしいですか。いかがでしょうか。お願いいたします。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 それこそ今、社人研におられる石井太さんがまだ統計情報部におられた頃の話ですが、今の所得票というのは、世帯票の中から一部が抜かれて、その部分だけを使って推計が行われるという形になっているのですけれども、昔、石井さんがおられた頃に、せっかく世帯票の情報があるので、世帯票の情報を使って所得票の情報の推定の精度を上げるというような試算をしていただいたことがあったように記憶しています。その研究の結果というのは、正式の公表には特に活かさないという形に整理されているのでしょうか。
 例えば、世帯票の中にも、確か去年の所得か何かを聞いているものがありましたよね。所得に関連するような情報というのが世帯票の中にもいくばくかはあり、世帯票のほうがサンプルサイズが大体4倍ぐらいのイメージであるので、そうすると世帯票の推計というのは、所得票に比べれば比較的正確に行えると。だから、世帯票に含まれている情報というのを言わば補助情報のように使って、それで所得票の推計精度を上げるという試算を確かしていただいたことがあったように記憶しています。それが国民生活基礎調査の標本の設計をいかす1つの道かなと私自身は思っていたのですが、その後、石井さんたちがなさった試算の結果がどのように扱われているのかというところまで、私はよく覚えていません。

○中村世帯統計室長
 申し訳ありません。それは、イワサキ先生を座長に、研究会の。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 いや、それよりもずっと前の話になるので。

○中村世帯統計室長
 もっと前ですか。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 10年以上前の話だと思います。

○樋田委員
 15年ほど前ですかね。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 15、16年前ですよね。2006年とか、それぐらいだったと思います。

○中村世帯統計室長
 ちょっと確認させてください。

○加藤主査
 もし、万が一資料が残っていたら是非お願いしたいと思います。

○中村世帯統計室長
 取りあえず新案の試算については、次のワーキングで出せるように検討させていただきます。これ以外に御議論いただきたいのは、評価の方法をどうするのかというところでして、何か御提案いただければと思うのですが、よろしくお願いいたします。

○加藤主査
 一番難しいところですね。次回以降ということなのですが、何かもしアイディアとか、お気付きになられた点があったら言いっぱなしでも構わないかと思います。評価の方法ということで、これはなかなか難しいですね。何かございますか。もし難しければ少し時間を頂いて、なかなかすぐにアイディアは出てこないかなとは思うのですが。

○中村世帯統計室長
 よろしいでしょうか。

○加藤主査
 お願いいたします。

○中村世帯統計室長
 過去の研究会とかでは、今の公表値というのはブートストラップという方法で標準誤差などを求めております。それと同じ方法で、新たにやった試算結果も同じブートストラップで、何百回かやって誤差評価をするという方法が1つあるのかなというのは、私ども事務局で考えていることではあるのですが、そういった方法というのをまずやってみるという話であれば、それはそれで準備を進めていきたいと思っております。

○加藤主査
 今の事務局の御提案について、いかがでしょうか。

○西郷早稲田大学政治経済学術院教授
 それはかなり大変な作業になるとは思いますが、もしやれるようであれば、やっていただければと思います。現案以外に、例えば3ページに書いてある方法で誤差の大きさがどの程度かという評価をしていただくと、恐らくは新案のほうがかなり安定的だという結果は期待できるのではないかなと思います。ただ、それでばらつきが小さくなったからといって偏りが小さくなっているかというと、その証拠としては使えないということになりますので、そこはちょっと悩ましいところではあります。やっていただくのは是非やっていただいたほうがいいと思いますが、それでばらつきが小さくなったからといって、その方法が前のやり方よりも正しいという結論にはならないというところが、ちょっと評価が難しいところだと思います。

○津谷委員
 恐らく西郷先生もおっしゃっていることだと思いますが、資料3の1ページの「世帯票」についてはという所、そして「健康票」と「介護票」、私は一応これが落としどころというか、結論だろうと思います。ただ、最後の「所得票」と「貯蓄票」は、その影響で相当減少したということだと思います。 その理由についてはそれなりに検討されたと思うのですが、まだこれだけでは十分はないと考えられているのでしょうか。これは政策的、政治的なインプリケーションが非常に大きいものですので、もう少し検討したいというお気持ちがあるのではないかと思います。ですので、この分母は、リサンプルしたために規模の小さいものになってしまっていますので、所得票ではなく、より規模の大きい世帯票を使ってもう少し安定した数値を出して、その結果にどれぐらいの差が出るのかを検討していただきたいと思います。作業は大変かと思いますが、その結果をここで見せていただいて、更に検討するということです。
 ただ、先ほどから何度もご指摘が出ていますが、なぜこの作業が難しいかと言うと、判断に必要な基準がはっきりしないということがあるからです。つまり、どれが正しいのか判断する確固たる基準がない。統計的に不安定であるということ自体、一般的によろしくないわけですが、数値がある程度安定してきたらその値が正しいのかというと、必ずしもそうではないかもしれない。それがより適切なものなのかどうかについての判断が、非常に難しいわけです。特に所得や貯蓄といった経済的リソースのデータは、きちんと計量することが難しいものです。国勢調査で収集される人口や世帯についてのデータと比べて、経済的なデータの収集はより難しいといえます。ただ、ここでは所得や貯蓄をみることは恐らく避けて通れないだろうということですので、どういうスタンスでこの評価をしていくのかということも含めて、私たちもそうですが、調査実施当局にもお考えいただいて、次回のワーキンググループで、それについて更なる話合いをするということになるのではと思います。
 これについての専門家、実証データを使って分析をされている研究者の方はおられると思うのですが、所得や貯蓄のデータの分布についてよくご存じでも、判断の基準についての合意があるのかというと難しいのではないかなと思います。すみません、感想です。

○加藤主査
 津谷先生も西郷先生もおっしゃるように、真の値が分からないので、もしかしたらばらつきが大きいほうがいいのかもしれないということもないわけではないので、そこは分からないのですが、ただ、やはりプロセスとして納得のいく方法できちんとやっていかないと、説明責任が取れないのかなという気はいたします。ほかにいかがでしょうか。何かこの場でおっしゃることはありますか。もしよろしければ、今の事務局の御意向に従って、更にもう1つの新案について少しお進めいただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございました。
 それでは次に移ります。2つ目のメインイベントなのですが、2つ目の議事のオンライン調査の導入についてです。こちらも資料については、資料4と資料5の2つがあります。資料5については、大阪府を筆頭とする近畿6府県連名の提出資料となりますので、1つ目の議事同様、資料1つごとに区切らせていただき、進めていきたいと考えております。それでは事務局より、資料4について御説明をお願いいたします。

○中村世帯統計室長
 資料4の1ページを御覧ください。この資料は、第1回のワーキングで提示させていただきました。私どもはオンライン調査を導入するに当たって、単純にオンラインを載せるということだけではなくて、現行の調査票の種類、ルート、時期といったものも併せて見直すのかといったところも含めてどうするのかを、まず大きな方向性として決めなくてはならないということです。1回目はあまり時間がなかったものですから、もう一度改めて資料を出させていただきました。
 具体的な内容については、1ページにあります。現行でこういうやり方をしているということがあって、赤字にあるように今のやり方を維持してオンライン化するのか、再編等を行ってやるのかということについて、御議論をお願いしたいと考えております。簡単ですが、説明は以上です。

○加藤主査
 ありがとうございました。第1回のワーキンググループで一度御議論いただいた内容となりますが、オンライン調査を導入するに当たっては、現行の調査方法を維持した形でオンライン化を図るべきか、それとも調査票の再編や調査時期・系統の一元化などを行った上で、オンライン化を図るべきか。まずは、この点について検討する必要があるとの説明が、改めて事務局からありました。この点について、委員の皆様から御意見、御質問がありましたら、お願いいたします。津谷先生、何かありますか。

○津谷委員
 これには長い経緯があり、今回また復活してきた課題であるということを以前にも申し上げました。国民生活基礎調査は基幹統計調査ですので、そのオンライン化は政府統計全般における基本的な方向性であるということは認識されねばならない、つまりオンライン化は努力義務としてやっていかねばならないことです。ただ、この国民生活基礎調査には皆様御存じのとおり、5つの調査票がありますので、この5つの調査票をそのままの形でオンライン化したときにどうなっていくのかについては、多くの懸念があります。コストの問題もありますし、この調査にオンラインでどれぐらいの割合が回答をしてくれるのか。そして、調査票の一部だけをオンラインで回答するといったことが出てきたときに、どのように処理をするのかなど、多くの問題が出てくるのではないかと思います。
 もし調査票を全てオンライン化するとなると、ある程度の回答率を確保するためには、恐らく相当な数の質問項目を削除したり、調査項目を簡略化しなくてはなりません。そうすると、この調査が提供する統計データの時系列の連続性が大きく損なわれるということになります。以前にも、オンライン化のためには質問項目の何割ぐらいを削減する必要があるのかということについて御説明を頂いたかと思いますが、厚生労働行政にとって外せない、大変重要な調査項目も、恐らく相当たくさんあるのではないかと思います。そうすると、どの項目を削ったり簡略化するのかについて、厚生労働省の中でどのように調整するのかということを考えても、優劣をつけることは難しいのではないでしょうか。
 とはいえ、政府基幹統計調査のオンライン化を目指すということが今後の課題として明記されている以上、オンライン化は避けて通れません。概算要求で予算が取れるということを前提にしてですけれども、一度試験調査を実施してチェックしてみる必要があるのではないかと思います。ただ、後者の調査方法を大きく見直して、相当数の調査項目を削減、若しくは修正するということについては、そこにいくまでに調整と検討が必要かと思います。そうしないと、恐らく今後の課題として挙げられた問題への十分な対応にならないのではないか、統計委員会が提示した課題への答えにならないのではないのかと思います。今後の課題である以上、やるしかないのですが、その結果がどうなるのかについては、やってみなければ分からない。出たとこ勝負のようなことを申し上げて恐縮ですが、政府統計調査のオンライン化という全体の方向性の下で、まず試験調査として、現行の調査方法を維持してオンライン調査を導入してみるということが1つのやり方かなと思います。前に進まないと、いつまでたっても尻込みしていると捉えられかねません。
 とはいえ、繰り返しになりますが、もっと簡単に対応できることであれば、ここまでこの課題を引っ張ることはなかったわけです。決して対応をさぼっていたわけではなく、できるものであれば既に何年も前にやっていたはずのことですので、恐らくこれは最も難しい課題の1つであると思います。

○加藤主査
 いかがでしょうか。

○大岩千葉県健康福祉部班長
 国の方にお伺いしたいのですが、例えば折衷案ということで、調査票は簡素化したもの、ただし回答は当面、調査員による回収、調査票の紙の郵送、そしてオンラインという3つの選択肢という、2つのいいとこ取りの折衷案という方法はできるのですか。

○中村世帯統計室長
 オンラインを導入しても全面オンラインになるわけではなくて、調査員回収がメインとして残り、オンラインを希望する方はオンラインになり、今やっている面接不能の方は郵送になる、あるいはオンラインになるということだろうと思っており、3種類のやり方はずっと動いていくのだろうと思っています。これは他の調査も同じですので、全面オンラインというのはあり得ないと思います。
 それから調査票の簡素化だけと言うのですが、実は調査票の簡素化というのが非常に重たい課題かなと思っております。統計委員会にもお諮りしないといけませんので、例えば何割か削るというところがクリアできるかが不透明だろうと思っています。

○大岩千葉県健康福祉部班長
 分かりました。

○家田埼玉県保健医療部主査
 今、現行の調査方法を維持した場合と見直した場合とを比較した資料を見ながら議論が行われているかと思います。もしも現行の調査方法を維持したままオンライン調査を導入した場合、現場の調査員、及び保健所にかかる負担は、当然大きくなります。郵送回収が試験的に導入された際も、オペレーションも複雑になって、いろいろ混乱がありました。オンライン調査を導入すること自体は基本的に向かうべきところだとは思うのですが、仮に時間が掛かったとしても、調査方法の見直しをした上でオンライン化を実現する。つまりオンライン回答を原則とした調査方法に移行する形が、調査を実施する現場の立場からすると望ましいと思います。

○加藤主査
 ほかに御質問等がありましたら、どうぞ。

○前林大阪府健康医療部主査
 後ほど、提出をさせていただいた資料についても説明いたしますが、私どもとしましても、オンライン化を導入するに当たって、やはり現行の調査方法にそのままオンラインが乗ってくると、我々もそうですけれども、どうしても調査員の負担が更に重くなってきます。今、自治体では調査員を確保するのに非常に難儀しており、他の調査の調査員に比べても結構大変だという声も聞きます。同じ方にずっとやっていただいているのが現状なのですけれども、その方が辞めたいと言ったときに、どうしても次の方を探すのに非常に苦労しています。今回オンライン化という大きな見直しをするに当たって、トレードオフで事務も簡素化をする、少しでも簡素化をしていただくようなことを併せてやらないと、現場としてはなかなか持たないかなと思っております。

○加藤主査
 いかがでしょうか。個人的にはなかなか難しい点もあるのかなと思うのですが、もし調査を2種類という形ですると、全く違う調査になってしまうという危惧もあります。また逆に言えば、今ある調査を2種類に統合させるための時間的な問題、あるいは検討などを考えていくと、これも大変な話です。今、大阪府や千葉県や埼玉県からも伺ったように、現場としてもなかなか難しいということで、そう簡単な話ではないのかなとは思っているのですが。すみません、何も答えていないと思います。ほかに御意見はありますか。

○津谷委員
 実査を担当される市区町村及び都道府県からの御意見、ごもっともだと思います。国勢調査のオンライン化も、2010年調査では東京都だけを対象に試験的に実施し、次の2015年の調査でそれを全国に拡大しました。その際に何が一番大変だったかと言うと、オンラインで回答した人と紙媒体で回答した人を区別すること、その区別をきちんと現場の調査員がつけることだったと聞いています。誰がどの方法で回答したのかをきちんと区別して、漏れや重複がないように確認する作業が、非常に手間がかかって大変だったという意見が多くの調査員から寄せられたため、2020年調査では、まず回答者全員に紙媒体の調査票を配ってしまって、その中でオンラインで答えられる人は答えていただくという方法をとるようにしたとのことです。しかし、このような方法をとると、オンライン回答率はあまり伸びないのではないか、下手をすると2015年調査よりも下がることもなきにしもあらずではないかと、危惧しております。
 ただ、国勢調査は全数調査であり、比較的シンプルな調査票の構造をもっていることから、恐らく実施における規模の経済が働く最も典型的な調査の1つであり、オンライン化に非常に適した調査です。それに対して、国民生活基礎調査はある意味でその対極にあります。この調査は、もともと異なった複数の調査が1つの調査としてまとめられたため、最大で5つの調査票があって、その中のいくつかの調査は世帯票からリサンプルされて実施されています。調査ルートも保健所ルートと福祉事務所ルートの2つがあるという経緯がありますので、これをそのままオンライン化するのは、とても無理だという御意見もあるやに聞いております。
 これについては、以前にも今後の課題として統計委員会の基本計画の中に書かれ、厚労省で検討を重ねた結果、対応は難しいという結論に至り、そのように回答したという覚えがあります。今回、またこれが復活して、今後の課題として挙げられているということです。これへの再度の対応が必要ですので、調査票を見直して簡略化し、さらに2割から2割5分ぐらいの調査項目を削るとなったときに、先ほど加藤主査もおっしゃったように、今までの国民生活基礎調査とはある意味別の調査になってしまうのではないか。基本的な調査項目についてはある程度はカバーできると思いますが、相当数の質問項目が除かれると、実質的に今までとは違う調査になってしまうのではないかという心配があります。とはいえ、統計委員会への回答には、何らかの客観的根拠が必要であろうと思います。この調査は厚生労働省が実施している最大のサンプル調査であり、そのデータはいろいろな政策立案に使われておりますので、必要な情報をすくい上げるように留意しながら、何らかの落としどころを見付けるしかないと思います。いきなりはできませんので、そのための何らかの試験調査は必要であろうと思います。それには予算も必要ですし、規模の小さなものでもかまわないと思います。
 また、先ほどご指摘のあった調査員の確保についてですが、国勢調査の調査員でも高齢化が進んでおり、実施が大変になってきています。とはいえ、国調は多額の予算があり、国の第一義的な調査として法的に回答が義務となっていることから、国民生活基礎調査とは全く違う背景があります、今回の課題に対して、何らかの形で回答をすることは避けられませんので、そのための説得的なデータ、情報が必要です。以前、私も全国調査の責任者を科研費プロジェクトでやったことがありますので、調査環境が本当に難しくなってきていることはよく分かっております。実査を担当される皆さんの御苦労は理解しているつもりですけれども、大変だから調査をやめることはできないことを御理解いただき、ご協力とご尽力をお願いします。調査の実施には必ず負担が伴います。負担をなくそうと思ったら、調査をやらないのが一番手っ取り早いわけですけれども、そういうわけにもいきません。だれかが過重な責任を担うということではなく、実査を担当する調査員の皆さんと地方自治体の担当者、そして厚生労働省が協力して話し合い、何らかの合致点を探るしかないと思いますが、いかがでしょうか。

○加藤主査
 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。これは、本当にどうすればいいのかがよく分からないというか。

○中村世帯統計室長
 まず実査の方からオンライン原則という話がありましたが、後ほど大阪府から出ている資料にもオンライン原則という要望が書かれています。平成27年の国勢調査は、まずオンラインでと調査員がお願いに行って、そして一定期間を置いた後に、オンラインで回答があったかどうかを市町村が確認をして調査員に伝えて、回答がない所については調査員がもう一度世帯を訪問すると。そのような確認の作業や誤配付をなくすといったことに非常に手間があって、自治体の方からはそのやり方は改めてほしいという要望があったと聞いています。それを受けて、今年実施する国勢調査は、初めに紙の調査票を配り、オンラインのやり方も配り、一斉にやるというやり方に変えると聞いています。ですので、国民生活基礎調査にオンラインを導入する場合も、オンラインに優先するのか、今回の国調と同じようなやり方をするのかということも含めて、これから議論をしていきたいと思っています。
 もう1つ、津谷先生から何らかのプレ調査というようなお話がありました。まず統計委員会の答申としては、2022年の大規模調査でオンラインの導入ということが言われております。したがって、今2020年ですので、間に何かプレ調査をやるというのは、オンラインシステムの開発なども含めると現実的には難しいと思っています。やり方としては、国勢調査を最初に東京都だけでやったということもありますので、国民生活も初めから全国一斉ということではなくて、地域を限定してやるというのが現実的な方向ではないかなと思っています。
 どちらにしても、私どもが統計委員会から言われているのは、非標本誤差を縮小というのが一番の目標です。これは何かと言うと、回収率がどんどん低下していって、回収できない部分のひずみがどんどん大きくなって、それを少しでも良くする、非標本誤差を小さくするという手段として、オンライン回答というのがあるのではないかと。ですので、オンラインを導入したから調査員回収を減らすという議論ではないのだろうと思っています。

○加藤主査
 よろしいですか。もしほかに御意見があればお願いいたします。ありがとうございます。それでは意見も出尽くしたかと思いますので、今まで頂いた御意見については、次回のワーキンググループまでに、事務局で整理をしていただければと思います。
 続いて今の議論とも絡みますが、本日、審議協力者として御出席いただいております大阪府の前林主査から、資料5について御説明をお願いいたします。

○前林大阪府健康医療部主査
 大阪府の前林です。国民生活基礎調査をはじめ、保健統計の調査事務を府のほうで担当させていただいております。現場の調査員等からは、世帯を回ったときに、オンライン回答はできないのかとよく言われるという声を聞いております。大阪府としましても、以前からオンライン化は進めてほしいということをずっと要望をしてきたところです。今回、委員の先生方で導入に向けて御議論いただいているということで、調査を行う自治体、それから調査員の立場から、資料5を提出いたしております。こちらの資料については、近畿2府4県、大阪府、滋賀県、京都府、兵庫県、奈良県、和歌山県の連名で出しております。今までの議論でもございますけれども、こちらとしては、オンライン調査の導入が、回収率の向上に資するということに合わせて、調査員とか我々自治体にとっても事務負担の軽減となる、両方をうまく実現するような抜本的な見直しになってほしいと、今後の議論において御配慮いただきたいということで、資料を提出させていただきました。
 資料5です。現行の調査方法で、我々はどういったことに課題を感じているかですけれども、まず、調査員の対面による調査にはなかなか限界がきているのではないかと。調査員には今調査地区を頑張って回っていただいているのですが、不在の世帯とか面接不能の世帯が非常に増加をしていまして、何回も何回も世帯を回っていただいており、非常に負担が大きくなっているのかなと。それから世帯の方からすると、見ず知らずの調査員の方に来られても、今は個人情報等々を気にされる方が非常に多くなってきていますので、そういった意味でちょっと抵抗感等もありまして、調査拒否も増えているのではないかと。紙の調査票を、調査員、保健所、都道府県の本庁、厚生労働省と長い間保管をして、郵送してということには、大変な数を扱いますので、やはり紛失等々のリスクがあるのではないかと。それから紙の調査票で、これも大変な数の調査票が必要になってきますので、少し調査の方法として非効率ではないかなというようなことを感じております。単に現行のやり方にプラスして、オンラインを乗せていくようなことであれば、今申し上げたような課題についてはそのまま残るのかと思いますので、何とかその部分も改善ができるような見直しができないかとこちらとしても考えておりまして、提案という形で書いております。
 提案の1は、先ほどから申し上げていますように、オンライン回答を原則としてほしいということです。できれば国勢調査では先に紙を配るという方法がいいのではないかということで、されているということですけれども、国民生活基礎調査はかなりサンプル数も少ない、調査地区も国勢調査に比べると非常に少ないかと思いますので、1つの保健所で相手にする調査員はそんなに多くありませんので、もう少し国勢調査に比べると保健所の職員と統計調査員が密に連絡は取れるのではないかと思っております。国勢調査での今回のやり方は、見て検証していく必要はあるかと思いますけれども、国勢調査が駄目だからということで、国民生活基礎調査でも同じでないと駄目というのは、ちょっと考えていただきたいと思っております。
 それから郵送回答の本格導入です。昨年度から郵送回答ができることになっているのですが、今のやり方では、一度も会えなかった世帯のみ郵送回答ができるということ。しかし、もともと郵送で回答したいと希望される方がかなりいらっしゃいます。そういう方については、今はできないとなっているので、そこは希望される方についても郵送回答ができるような方向にしていただきたいと思っています。
 それから、やはり回収率を確保する必要があると思います。調査員による回収が大事というのはそのとおりだと思います。回答が漏れている、オンラインであるとか郵送で回答ができていない方については、調査員がしっかりと回収をして回ることで、回収率も確保できるのではないかと考えております。
 2は少し細かいところで、留意点というかオンライン調査をやるのであればこういったことに気を付けていただきたいということを書いております。
 裏面では、今説明させていただいたことを図示しております。表の左側が現行の調査で、数字で網掛けにしてあるのは、調査員が実際に地区を回る回数を表しています。現状では、2019年ですが、真ん中の6月の調査日の前に、都合3周、調査員が世帯を回る必要があると。まずは1回目、チラシを郵便受けに投函をして、2回目で調査のお知らせ、これもチラシですけれども配布して、3巡目に調査票と記入のしかたを配布すると。この3巡目のところで、3回訪問しても会えない方については、最終的には郵便受けに投函をしていますけれども、複数回、調査員の方には回っていただいていると。調査日が終わりましたら今度は回収、4周目として回収をしまして、この場合も可能な限り不在世帯を繰り返し訪問していただいていて、最後に保健所に提出する前の日に、一度も面接できなかった世帯には再度、一式調査票をセットして郵便受けに投函をして、この方だけが今は郵送回収の対象になっていると。このように、今のやり方だと、少なくても5周は調査員が地区を回らないといけないことになっています。
 見直しの一例と書いておりますが、細かいことは今後の議論が必要かと思うのですが、例えば、そもそも調査の依頼を郵送でできないだろうかと。今は調査員が実際に回って名簿を作ったり、調査票を紙で配布したりしているのを、郵送の形にする。あなたの世帯は当たりましたと、回答はオンラインでお願いできますかというような形で調査のお願いをすると。調査日を終えた段階で、オンラインで何割かの回答があるかと思いますので、そこをシステム上で確認をした上で、オンラインで未回答の世帯に対して、調査員が訪問をして、その際にも紙を希望される世帯には紙を配布はしますけれども、オンラインで回答するという方については、オンラインでいついつまでにまた回答をしてくださいとお願いをして回ると。最終的にオンライン、それから郵送で未回答の世帯を確認した上で、最後に調査員が再度回収に回るという形でやれば、確認のやり方とかをうまくやっていかないといけないという課題は御指摘のとおりだと思うのですけれども、調査員にとってはかなり世帯を回る回数が減るのではないかと。
 例えばこのようにやり方自体を見直していただければ、メリットの所ですが、調査員と接触せずに回答していただける世帯も一定増えるかということも考えられますし、調査員の巡回の負担が減らせること。それから、オンラインや郵送回答の比率が高まれば、調査員や我々自治体の事務の効率化というか、簡素化というか、たくさんの紙を扱わなくてもいいというのは、かなり助かるかと思っています。こちらの提案も詰まっていないところがたくさんあるというのは承知しております。今後1年掛けて御議論をして、最終的に結論を出していただくというスケジュールになっていると思いますので、今回の提案が一部でも、あるいは段階的にでも構いませんので、少しでも実現をするように議論をしていただければと思っております。私の説明は以上です。

○加藤主査
 ありがとうございました。近畿6府県を代表して、大阪府の前林主査より、国民生活基礎調査の課題と改善に向けた御提案についての説明を頂きました。この点について、委員の皆様、御質問、御意見等がございましたらお願いできればと思います。また、事務局からも御意見を頂ければと思っております。まずは委員の皆様、何か御質問、御意見等はございますでしょうか。

○小塩委員
 実際に調査を担当されている方から非常に重要な御提案を頂きました。オンラインをベースにいきましょうということですので、これは非常に画期的な御提案だと思います。確認のために質問を2つさせていただきたいのですが、1つは、調査は全部で5種類あるのですが、その内容については今のままでいいというお考えなのでしょうか。調査のやり方をオンラインをメインにするということなのでしょうか。もう1つは、先ほど国勢調査のときに非常に大きな問題になった点として、紙で答えていない人のチェックが大変だということだったのですが、このようにやり方を改めてオンラインをメインにすると、そういう現場での回答者、未回答者のチェックや、この人は回答していないから調査員に行っていただきましょうといったチェックは問題なくやれるとお考えでしょうか。その2点をお伺いしたいと思います。

○前林大阪府健康医療部主査
 まず、5つの調査票が最大あると思いますが、多分5つの調査を一個一個オンラインにしてやっていただくのでは、なかなか回答が大変かと思います。回答しても回答しても出てくるというようなことがあると思いますので。ですから1回で、しかも難しいかもしれませんけれども、調査項目もできる限り必要最小限のものに集約をした上で行う。今は保健所ルートと福祉事務所ルートと、時期も2期に分かれていますけれども、それは1回でやったほうがいいのではないかと考えています。
 未回答世帯の確認ですが、やはりオンラインシステムを組んだときに、回答している方、してない方はリアルタイムで確認ができると。そういうシステムができるというのがまず前提だと思うのですが、その上で例えば、現状の保健所と調査員の関係でいきますと、大阪府の場合は9つの保健所に分かれていまして、多くても4、5地区ぐらいしか当たらないですし、少ない所だと1地区とか2地区になるので、保健所の担当者からすると、2名とか5名とかの調査員とやり取りをすることになる。ですので、例えば保健所の職員が毎日システムから回答状況を確認して、調査員が今日回るというときに、1本電話のやり取りをすれば、今日はこの方の回答があったとか、あるいは昨日の晩のうちに回答があったとか、こういったことはある程度リアルタイムに近く、情報共有は可能ではないかと思っております。例えば保健所で20、30人の調査員とやり取りをするとなると本当に大変かと思うのですが、現実にはそうはならないので、そういった意味で、ある程度リアルタイムで情報共有はできるのではないかと思っております。

○小塩委員
 ありがとうございます。

○加藤主査
 ほかにいかがでしょうか。

○家田埼玉県保健医療部主査
 今の大阪府さんからの回答の補足のようになるのですが、先ほど小塩先生から、回答者の情報をどれだけ把握できるか、それは大丈夫でしょうかというお話を頂きました。そこについては、埼玉県も不安に思う部分が少なからずあります。今の国勢調査では回答した人としていない人の把握が難しかったので、基本的に紙媒体を配る形に改めるというお話があったのですが、今回の国勢調査にしても、オンライン回答という回答方法がある以上は、調査員がオンライン回答した人を把握するという手間はあると思います。オンラインを導入する場合は、オンライン回答した人をリアルタイムでチェックできるようにすることが必須だと思います。国勢調査ではオンライン回答の状況確認についてどういう改善をしようとしているのか、厚生労働省で何か情報を把握されていたら教えていただけないでしょうか。そうした調査のオンライン回答の状況をリアルタイムで保健所の担当者だとかが把握するシステムというのは、どのようになっていくものなのでしょうか。

○中村世帯統計室長
 国勢調査のオンラインシステムについては独自のシステムを作っておりまして、オンラインで回答があった者については、システム上でフラグが立って、それを自治体のほうで見られるということになる。そういう自治体側でも見られる仕組みは、国民生活基礎調査をやる場合にも当然必要だろうと思っています。ただ、郵送回数のほうは難しいと思っています。例えば今は住宅・土地統計調査については、郵送希望の方は市町村に郵送で返ってくるのです。そして、市町村で確認できる、郵送で返ってきたというフラグを市町村で立てられる。けれども、国民生活でやろうとすれば、保健所とか福祉事務所に郵送で返すのではなくて、国に返してもらうようになる。それも一定期間の長い期間で返ってくると。そうすると、そこからまた民間委託をして、受付をして、郵送で返ってきたというフラグをリアルタイムで情報に入れるというのが、現実的にはなかなか難しいと思っていまして、郵送の課題が依然として残るのだろうと思っています。

○家田埼玉県保健医療部主査
 ありがとうございます。もう1つよろしいでしょうか。オンラインを遂行せよということが国として大きな流れになっているのは、恐らく紙媒体を減らすことにより、紙媒体を経由することによるミスやかかる手間を最小限にすることが大きな目的と思われます。そういう意味では、経由地を省いて国に直接回答する、郵送回収をするという形を基本とすることは、そうした大きな目的にも合致すると思うのですが、そちらについてはやはり難しいものなのでしょうか。

○中村世帯統計室長
 基本的に、これまでの経験というか、調査員調査がいいのか、郵送回収がいいのか、回収率の面から見ると、明らかに調査員回収がいいというのがはっきり分かっているわけです。要は、調査員が訪問して郵送回収にしますかといったときに、では郵送でやりますよと答えて、本当に郵送で答えてくれているのかどうかの確認が難しいと思っています。今、郵送回収を国民生活でやっているのは、調査員が何回も訪問しても会えない世帯に、最終手段としてポスティングをして、郵送で返してもらうお願いをするという、基本は調査員回収は減らさないというやり方で、できるだけその郵送回収でプラスアルファを見込もうと思っているわけです。ということなので、少なくとも郵送を希望しますと手を挙げた方が本当に郵送で返してくるかというのは、ちょっと。私どもは、当然100%いかないのは当たり前なので、回収率は調査員回収に比べて落ちるというのを前提で考えなくてはいけない。回収率を上げるのを大前提で考えているわけなので、あまり安易に郵送回収にすることによって、全体の回収率が今8割弱ぐらいになっているものが、一気に6割になってしまうとか、こうなるのが一番危ない、それが郵送回収だと思っています。

○加藤主査
 ほかにいかがでしょうか。

○大久保委員
 オンラインを原則にしてということですけれども、今までの経験でいうと、調査日までに何%ぐらいオンラインで回答されているかという、予測としてはどのくらいになるのでしょうか。

○中村世帯統計室長
 取りあえず、国勢調査の結果では、1回目東京都だけやったときは1割程度です。

○大久保委員
 1割。

○中村世帯統計室長
 はい。27年の国勢調査結果では37%ぐらいと聞いています。ですから、調査事項が十数問という簡易なもので30何%なので、国民生活のほうを考えたときには、ちょっとそこまでは現実的には厳しいのかなという感覚をもっています。

○大久保委員
 そうすると、大阪府さんの資料を見ると、調査日までに5%ぐらいしかなく、もしかしたら多くはオンラインで回答はないという、予測としてそんな感じでしょうか。

○前林大阪府健康医療部主査
 ちょっと資料にも書かせていただいているのですけれども、オンライン回答者にはインセンティブを付与するということで、現状でも予算が150円ぐらい付いているのですが、調査回答をしていただくためのインセンティブとして、物品の購入をして一緒に渡しています。大阪府の場合はハンドタオルとか、たわしとか、そういったものしか買えないですけれども、調査票と一緒に配布をして、回答してくださいねとしているのですが、ここで書いているのはいわゆる電子マネー的なもの、これもできないかと考えています。というのは、大阪府で健康増進のスマホのアプリをリリースしまして、最初10万人を目標にするということでリリースをしたのですが、3、4万人ぐらいで全然頭打ちになってきまして、目標を達成できそうになくて、QUOカードPayという所に協力を頂いて、1人300円の登録キャンペーンを打ちました。一応予算の都合で、トータル1,000万円組んでいましたので、3万3,333名まで300円お渡ししますというキャンペーンを打ちましたら、1か月足らずで今まで3、4万人だった登録者がぐっと増えて10万人目の前まできたと。これは大阪の特徴なのかもしれませんけれども、300円でも電子マネーはかなり強いと感じたところです。ですので、いろんなあの手この手で調査に回答していただけるような知恵を出してやって、少しでも上乗せできればいいと思っております。

○加藤主査
 失礼しました、大岩さんどうぞ。

○大岩千葉県健康福祉部班長
 大阪府さんの案のとおり、千葉県でもオンライン未回答世帯の確認、保健所の職員が多くても4調査区、調査員さんが4人、少なくても1人か2人なので、保健所で十分確認・対応できると思います。ですので、この報告についてはいいと思います。

○加藤主査
 ほかに、事務局から何か追加することはございますか。

○中村世帯統計室長
 オンライン優先にするかどうかは、またこれからいろいろ検討させていただきたいと思います。それで、資料の2ページですが、右側の見直し例の一番初めのオンライン調査の依頼の部分、これは国から郵送というようなイメージで、住基台帳を使うようなイメージを持っておられるのだと思うのですが、実は私どもで住基台帳の仕組みをホームページで見たり、一部の自治体に直接聞いたりしてみました。住民基本台帳法という法律があって、その法律に基づいて国とか地方公共団体が法令で定める事務をやるといった場合とか、例えばシンクタンクみたいな所が統計調査をやるとか、世論調査をやるために名簿を整備するといったために、この住基台帳の氏名とか出生年月とか、そういったものを閲覧できるという仕組みはもう既にできております。実際の運用というのは、各市区町村がしておりまして、例えば転入、転出の多い3、4月には、そういう閲覧を認めてない自治体がそこそこあるのだろうと思っております。ある自治体は公務であれば認めるというのもあるのですが、公務ですら3、4月は駄目とか、自治体によって期間も違うのですけれども、ちょうど国民生活の準備調査をやる4月というところは、そのように自治体によっては閲覧すらもできない所があるので、住基台帳を使って住所を特定して、民間に委託するというやり方は、統一的にできないのが現実だろうと思っております。その点、何かいい別の案というか、そういうものはあるのでしょうか。

○前林大阪府健康医療部主査
 確かにおっしゃるとおりで、法改正を伴ったりとか、非常にハードルは高いのだろうと思って書いているのですが、いろいろこちらも調べたところ、例えば都道府県が住基台帳、住基ネットを使えるというように、これも法改正が必要ですけれども、やろうと思ったらできるということもあります。そうなると、なかなか手間が逆に増えるのではないかというところもあるのですが、例えば名簿のほうは都道府県で作って、仕上がったものを国にお渡しするとか、そういったこともあり得なくはないかなと思っています。
 それから、法改正が必要とかそういうことで、非常にハードルが高いと、すぐには当然できないということでしたら、この調査日の前の部分については、例えば調査員が回った段階でオンラインを希望されるかどうかを確認するとか、運用のほうで少しでも紙の調査票を配らずに済むようにと、そういったこともできるのではないかなということも議論の中でしておりました。

○加藤主査
 よろしいですか、ほかに御意見等はございますでしょうか。もしなければ、今近畿6府県さんから貴重な御提案を頂いたわけですが、このような御意見も参考にしながら今後検討を進めていきたいと思っております。ここまでで、何かまだ意見としてお話をされたい方はいらっしゃいますでしょうか。なければ、本日予定していました議題は一応ここで終了とさせていただきたいと思います。委員の皆様におかれましては、後日、御不明な点や御意見がございましたら、今月中に事務局宛てメールで御連絡をお願いできればと思います。
 それでは、事務局にお返しさせていただきます。

○細井統計企画調整室長
 皆様、長時間にわたりまして御審議いただき、ありがとうございました。これをもちまして、第3回国民生活基礎調査の改善に関するワーキンググループを閉会させていただきます。次回、第4回のワーキンググループにつきましては、6月から7月頃の開催を予定しております。日程調整も含めまして、別途事務局より御連絡いたしますので、皆様方におかれましては引き続き御協力いただきますよう、お願い申し上げます。本日はお忙しい中、御出席いただきまして誠にありがとうございました。
 

                                          (了)

照会先

政策統括官付参事官付統計企画調整室

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