第20回社会保障審議会統計分科会 生活機能分類専門委員会 議事要旨

日時

令和2年4月3日(金)~5月20日(水)

場所

持ち回り開催

出席者

<委員(五十音順)>

 

議題

(1)ICD-11 V章の和訳について
(2)WHO-FICネットワーク年次会議の報告(ICF関連)について
(3)生活機能分類普及推進検討ワーキンググループの令和元年度の活動状況報告について
 

議事要旨

 
 
各委員に対して、資料を送付し、議題ごとの意見を聞いた。概要は以下の通り。


<議事1>ICD-11 V章の和訳について
資料2について 石川委員、井上委員、七種委員、林委員、藤田委員より意見が出された。なお、個別項目に対する意見については事務局からICFWGに伝達した。
 
○意見の概要
(石川委員)
・実際に臨床で使っている言葉や日常的な言葉で表現できることがあればそちらを使用することを優先した方が良いと思う。何よりも使い慣れた言葉であればイメージがしやすくなるものと考える。
(井上委員)
・VA40~VA42.1:ここで使われている“家事”の中に、調理が含まれるのかどうかが不明確。場合によってはVA42の和訳の変更が必要と思う。例えば“家事(調理を除く)”など。
・VA54:「感情的な影響」という言葉はわかりにくい。「感情への影響」ではどうか。
(七種委員)
・「健康状態の感情的な影響」は「健康状態による感情的な影響」の方が言葉として整理できる。
(林委員)
・VA42は、「調理以外」とは英文にはないので、「家事を行う」でよいと思う。
・VA54: 「感情的な影響」→「感情への影響」
・これらの和訳が、英語版同様ブラウザの形でwebにオンラインで公開されることを期待する。
(藤田委員)
・基本的にICF専門委員会の皆様のご意見を尊重しWG案が採用されることに賛成。
 
審議結果
資料1 承認
資料2 項目内容を一部修正して承認
 
 
<議事2>WHO-FICネットワーク年次会議の報告(ICF関連)について
奥平委員、橋本委員、林委員、藤田委員より以下の意見が出された。
 
○意見の概要
(奥平委員)
・ネット会議やE-Learningは、今回のCOVID-19のこともあり、急速に普及するでしょう。
(橋本委員)
・児童向けのWHODAS(KIDDAS)については、日本での活用も期待されるため、今後も進捗情報を注視したい。
(林委員)
・新型コロナ対策で社会そのものの「機能」をICFで測れないか、(例えばロックダウンした町の人々の活動範囲など)といったことも検討できればよいと思う。
(藤田委員)
・評価ツールについては各国でも実装段階ではなく、国レベルでの整備が望まれているようですが、臨床的使用に耐えうる程度の精緻さを求めるとどうしても実装が遅れてしまうと思う。
・ICFの概念からその利用は医療の現場に限らず、病院外でこそ汎用化されるべき。
・東京パラリンピック開催前の現在が日本でICFを広められる好機。
・評価ツールが未完成であってもICFのコードでカテゴライズされた内容を活用していくことは可能ではないか。
・具体的には障害を持ちながらも社会的にご活躍されICFに賛同していただける有志の方に、ICFによるコーディングを行い、公表可能な範囲でweb上に載せて一般の方に見ていただき、ICFについて理解していただくと良いのではないか。
・様々な装具・ICTを利用した援助やアイディア、促進因子となる各種サービスにも関連したICFのコードを振り、日本中にいるICFを利用して生活の問題を改善したいと望む方々がコードによって整備された情報を検索できるようなサイトを開設し、利用していただくとICFの普及につながるのではないか。
 
 
<議事3>生活機能分類普及推進検討ワーキンググループの令和元年度の活動状況報告について
出江委員、鎌倉委員、七種委員、才藤委員、正立委員、林委員、藤田委員より以下の意見が出された。
 
○意見の概要
(出江委員)
・理学療法士、作業療法士の国家試験でICFの理念と活動参加といった構成因子の意味だけでなく、コーディングまでが問われるようになっており、卒前教育は深まっていると推察する。
・今後、ホームページが整備され、当委員会から教育ツールが公表されることにより、多職種で卒前卒後の教育内容が標準化されることが期待される。
(鎌倉委員)
・ICF情報集約サイトは情報発信に良い案であると思う。
(七種委員)
・今後は分科会について介護サービス従事者を意識したメニューもあって良いのではないか。
・実際に訪問介護員の研修でもICFの利活用はそれなりの効果があり、医療介護連携についても共通理解の視点として有効なので、今後、福祉専門職や介護従事者の参加促進と周知活動はICF利活用においても重要な課題であると考える。
(才藤委員)
・年度内に実地で使える方向で努力していただきたいと思う。
・さらに推進するためにも継続が望ましいと考える。
(正立委員)
・介護保険の分野では、科学的介護の推進を図るため、2017年度からVISITの運用が開始され、また2020年度からはCHASEの運用が開始される予定。
・特にCHASEにおける収集の対象項目については、信頼性・妥当性があり科学的な測定が可能なもの、国際的に比較が可能なものなどの基準にしたがって優先順位がつけられている。
・生活機能分類普及推進WGでは、既存の評価手法(FIMやBI)のICFコードへのリコード作業を行っているが、今後VISITやCHASE等への対応や連携についてお考えがあれば、ご教示いただきたい。
(林委員)
・シンポジウムは有用であった。今後も続けていただきたい。
・シンポジウムのポスターセッションで、教育現場でのICF利用についての興味深い報告が複数あった。
・WG2は「教育ツール」とのことだが、ICFに関する教育と、教育現場でのICFの活用とがありうる。後者についてもなんらかの形で取り組めないか。
(藤田委員)
・WGで「科学的で再現性のあるアプローチ」を用い、統計分類としての機能を保ち、向上させるのは医学的、学問的にも非常に意義深いことだと思う。
・WGの「簡潔で直感的な説明文」の作成により医療関係者以外の方々にも親しみやすいツールとして受けいれられやすくなると思われる。
・「リコード」により既存の手法を用いている分野へのICFのマッピングも重要だが、V章や既存手法に記載されていないICFの環境因子などの範囲をどのように実用化していくかという点も気になる。
・第8回厚生労働省ICFシンポジウムでも参加職種をみると医療職が多く、所属も大学や病院が多くなっている。
・介護・福祉・教育職の方々のご意見も積極的に反映させ、急性期/回復期/慢性期の病院外でも十分に活用できるような分類としてリリースされることを希望する。シンポジウムの参加理由も研究がメインとなっている。
・日本でのICF導入で期待したい内容としては、「科学的で再現性のある学問的な部分」と「実用性を保ち、個々人の実生活で生活機能を高めるためのツールとして実際的に用いる部分」があり、両者は時に相反するアプローチが必要なことがある。
・ICFその他の手法を用い評価していく側の意見だけではなく、評価される方々の意向が反映されて日本版ICFが成長・発展していくことを望む。
・医療費だけでカバーしきれない生活機能向上に寄与するニーズをSDGs実践企業にも伝えられるような機能がICF情報集約サイトもしくは別途新設サイトにて実装されることを望む。
 
 
<中村委員長コメント>
今回は書面開催でしたが、委員の皆様から多くのご意見をいただきました。
ありがとうございました。
ICD-11 V章の和訳につきましては、わかりやすさの必要性が求められる中でWHODASとの関連性など、和訳の難しさをあらためて痛感いたしました。委員からのご意見を今後に生かすことも含めて、和訳が改善されたと思います。
WHO-FICネットワーク年次会議(ICF関連)の報告、生活機能分類普及推進検討ワーキンググループ令和元年度活動状況の報告、ありがとうございました。
委員からICFの現状と今後の進むべき方向性など示唆に富むご意見がよせられました。今後の本委員会の方向、活動の力になるものと思います。
ご参加、ご意見ありがとうございました。
 
以上

照会先

政策統括官付参事官付国際分類情報管理室 渡、高橋

代表03-5253-1111 内線7493