第4回 生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会 議事録

日時

令和2年3月3日(火) 10:00~12:00

場所

航空会館 5階 501・502会議室
(東京都港区新橋1-18-1)

出席者(五十音順)

 

議題

・現行の検証手法の課題
・最低限度の生活に関する検討
・現時点におけるこれまでの議論と今後の検討課題の整理
・その他

議事

(議事録)
○駒村委員 おはようございます。少し定刻より早いようですけれども、委員がそろいましたので、ただいまから、第4回「生活保護基準の新たな検証手法の開発等に関する検討会」を開催いたします。
議事に入る前に、本日の委員の出席状況と、本日の資料の確認を事務局からお願いいたします。
○梶野社会・援護局保護課長 本日の委員の御出欠の状況でございますが、全ての委員に御出席いただいております。阿部委員は御都合により11時半頃御退席の予定です。また、高橋総務課長は公務のため、遅れて出席の予定です。
なお、今日は新型コロナ感染予防のため、一般傍聴席は設けないということにしております。
続きまして、本日の資料でございますけれども、議事次第に続きまして、
資料1 現行の検証手法の課題についてマル2
資料2 最低限度の生活に関するこれまでの意見を踏まえた検討
資料3 現時点におけるこれまでの議論と今後の検討課題の整理(案)
参考資料1 現行の検証手法の課題について
参考資料2 生活扶助基準における新たな検証方法の開発に向けた年次計画
となっております。
資料の不足等がございましたら事務局までお申しつけください。
○駒村委員 それでは、本日の議事に入りたいと思います。
まず、資料1について、事務局から御説明お願いいたします。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料1について御説明申し上げます。
タブレットでは02、資料1でございます。
まず、1ページ目でございますが、現行の検証手法の課題については、前回の第3回において、「1 水準検証における比較対象の設定について」、「2 年齢・世帯人員・級地制の体系検証等について」を御議論いただいたところでございます。
本日は、右の「3 基準見直しの影響把握の方法について」、「4 その他」という2つについて御議論いただければと思っているところでございます。
それでは、中身の説明に入っていきたいと思います。
2ページで、基準見直しの影響把握について、でございます。
まず、現状といたしまして、平成29年の検証におきましては、これまでの基準見直しによる影響の把握を行った上で検証作業を行ったところでございます。
この基準見直しの影響の把握を具体的に申し上げますと、(1)としまして、平成25年8月から平成27年度にかけて行った生活扶助基準の見直し、それから、平成27年11月に行いました冬季加算の見直しについての影響把握、それから(2)としまして、平成27年7月に行った住宅扶助基準の見直しについて、影響把握を行ったところでございます。
このうち(1)の生活扶助基準の見直しによる影響の把握については、以下の3つの観点から行ったところでございます。
マル1 生活保護世帯に適用される基準額に与えた影響
マル2 生活保護世帯の家計(消費支出の内容)に与えた影響
マル3 生活保護世帯の生活実態及び生活意識に与えた影響
という3つの観点でございます。
それぞれの把握結果の詳細につきましては、4~6ページに掲載してございます。また、これらの把握に用いた生活保護関係の統計調査の概要につきまして、7ページで1枚にまとめて掲載しているところでございます。
また(2)の住宅扶助基準に関しましては、住宅扶助の限度額が減額となった世帯の状況、それから、床面積が15㎡以下の住居に居住する単身世帯における減額の適用状況について調査を行ったところでございます。
以上のとおり、平成29年検証においては、このような影響把握を行った上で、検証作業を行ったところでございます。
平成30年10月から実施している今般の生活保護基準の見直しの影響につきましても、平成29年12月にまとめられた部会の報告書においては「その実態を継続的に把握し、今後の検証の際には参考にする必要がある」という指摘がなされたところでございます。
続きまして、2ページ目でございますが、これらを踏まえた検討課題をまとめているところでございます。
まず、平成30年10月から実施している今般の基準見直しの影響を把握する方法について、平成29年検証で行った影響把握の方法、また、その結果を踏まえて、これまでに実施している調査に加えて、さらに把握すべき事項の有無なども含めて、どのように考えるかという点。
次に、前回と同様に、先ほど御紹介いたしました生活保護世帯に適用される基準額に与える影響、家計に与える影響、生活実態及び生活意識に与える影響という3つの観点から影響の把握を行うことについて、どのように考えるかという点でございます。
このうち、生活実態及び生活意識の把握という点に関しましては、第2回及び第3回の検討会においてお示ししております「社会保障生計調査」と「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」の個票データを用いまして、生活保護世帯の生活の質の面から見た消費支出、それから、生活実態の分析による家計内容の把握、社会的必需項目の不足に関する指標における生活保護世帯と一般世帯との比較分析を行った資料をお示ししているところでございますが、これらを把握する必要性について、どのように考えるかという点でございます。
なお「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」につきましては、昨年7月に3回目の調査を実施しております。ただ、調査周期については不定期となっております。このため、今後も引き続き3年に1度の頻度で定期的に本調査を実施することについて、社会的必需項目の選定も視野に入れつつ、設問内容等についても改めて検討を行う必要性なども含めて、どのように考えるかという点でございます。
それから、最後の○ですけれども、今般の基準見直しにおきましては、有子世帯の扶助・加算ということで、児童養育加算、母子加算、教育扶助、生業扶助の高等学校等就学費についても見直しを行っておりますが、これらの見直しによる影響把握について、どのような方法が考えられるかという点でございます。
以上が、基準見直しの影響把握の方法についての現状と課題でございます。
次にもう一つ、その他、というところで、最後の8ページ目でございますけれども、こちらにつきましては、生活扶助基準の定期検証年以外の年における社会経済情勢の生活扶助基準への反映方法について、でございます。
現状につきましては、既に何回か御説明しておりますが、まず、生活扶助基準の改定につきましては、政府経済見通しの民間最終消費支出の見通しなどを踏まえ、その時々の社会経済情勢を総合的に勘案して改定を行っているところでございます。
その後、定期的な検証を行っているところでございますけれども、例えば、平成29年の検証におきましては、3つ目の○に書いておりますが、平成26年のデータを用いて検証を行ったところ、調査の実施年以降の平成26年から当時把握可能であった平成28年までの社会経済情勢の変化については、消費支出、物価、賃金の動向に一貫性がないことから、当時の政府の判断として、平成30年の生活扶助基準への反映は行わないこととしたところでございます。
これらを踏まえまして、検討課題としましては、現状の民間最終消費支出の見通し等を踏まえて、また、その時々の社会経済情勢を総合的に勘案して行う現行の生活扶助基準の改定方法について、どのように考えるかという点。
もう一つは、水準の検証に用いる調査の実施年以降の社会経済情勢の変化の検証結果の反映について、どのように考えるかという点。
以上が検討課題として、ここでお示している点でございます。
簡単ではございますが、以上でございます。
○駒村委員 ありがとうございます
では、議論に入りたいと思います。
今、御説明ありました資料1について、委員の皆さんから御意見、御質問があればと思いますが、いかがでしょうか。
阿部委員、お願いします。
○阿部委員 おはようございます。
いくつかありますが、まず、基準見直しの影響把握の方法で、生活の質の比較といったところです。前回、6ページで説明しているのですが、22年と28年の個票データを比べるという、たしか本当に単純集計か何かを比べただけで、そこからは余り評価できなかったと思っておりますので、やはり、次回のときには、もう少し統計的にも洗練された方法で、この個票データを比べなければいけないということ。
それと、去年もうやったわけなのですが、次回、パネルでできないかということです。同じ世帯でひも付けできないかということなのです。もしそれができるのであれば、より正確に影響を把握することができるのではないかなと思いますので、そこのところは、御検討いただきたいなと思います。恐らくこの22年、28年の比較であっても、前回もこのお話があったと思いますけれども、個票データをもう一度、二次利用申請をして、きちんと比較することができれば、もう少し、22年と28年の比較でもいろいろ出てきたかなと思いますが、そこのところはできていない状況なので、そこは御検討いただきたいなと思います。私のほうも余力がないかどうかは考えてみます。
もう一つ、今後、この調査をどうするかという話です。先ほど社会的必需項目の選定を視野に入れつつということをお話しくださいましたけれども、私もこれをやっていて、今回、MISを10年ぶりにやらせていただいて、やはり生活必需品の中身が相当変わってきているなと思います。高齢者の方でも相当変わってきているなと思いますので、もし、この見直しを今後続けていくのであれば必要なのですが、でも、全部中身が変わってしまいますと、過去との比較ができなくなってしまうので、新しいものとミックスさせながら項目のリストを変えていくことが必要かなと思いました。
3つ目が有子世帯の扶助加算の変化です。これについては、正直なところ余り影響把握はきちんとできていないかなと思います。
一つは、例えば総額として、変える前と変えた後で、変えた後は、例えば申請制になったところもありますよね。なので、どれぐらい扶助額自体が、総額が変わったのかということを見るのが一番簡単な方法かなと思います。
もう一つは、例えば家庭の生活実態調査のように、定期的に被保護世帯を調査することであれば、子どもの生活の中身を聞いていく。例えばクラブ活動をしていますかといったことを聞いていくことによって、子どもの生活の質の中身を聞いていく方法もあるかなと思います。でも、以前どれぐらいしてきたかというデータがないのですよね。
今、既に変わった影響を見るためには、ここの部会では余りやらないのですけれども、ヒアリングをするのも1つの手かなと思います。しんぐるまざあず・ふぉーらむさんですとか、またはケースワーカーの方たちで、実際に子どものある世帯を見ていらっしゃるような方々にお聞きして、実際に、例えばクラブ活動とかの費用を申請するようになるとか、どのような問題が生じているか、上がってくるのかとか、全く音沙汰なしになってしまったのかとか、そういったことをやはり現場から聞きたいなという気持ちはすごくあります。
3つ目のところを、いろいろなやり方を検討していただければなと思いました。
以上です。
○駒村委員 3つありまして、1つ目はデータパネル化の話ですね。
○阿部委員 パネル化もできますし、もう少し単純集計以外のもので比較しましょうという話です。
○駒村委員 分析を深めるということですね。
2つ目が支出項目の見直し。3つ目が加算の分析が不十分ではないかと。加えて、ヒアリングということが、現実的にできるかどうかを検討してもらいたいと。
今の点、事務局から何かありますか。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 最初の平成22年と平成28年の比較検証、現在実施している令和元年の調査との比較も当然含むと思いますけれども、比較検証に当たって、確かに統計的な分析というのは、我々も考えていきたいと思っております。
もう一点のパネル調査に関しては、なかなか難しい面があると思います。一般世帯については国民生活基礎調査の後続調査として行っておりまして、こちらは無作為抽出ですので、なかなか同じ世帯にはならないと思います、同じ世帯が当たっている可能性もありますけれども。
○阿部委員 一般世帯でなく、被保護世帯だけでもパネル化できないのか。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 被保護世帯についても、検討課題ではあるのですけれども、どれだけの世帯に御協力いただけるかという点です。基本的に、この分析に当たっては、家計簿調査を書いていただいている世帯に対して、この意識調査も行うことによって、消費との関係を見ているわけなのですけれども、そもそも家計簿調査のほうが、家計簿を書かなくてはいけない調査ですので、ご協力いただくのに難しい面があるとは思いますけれども、どのようなことができるかという点については、検討していきたいと思っております。
○駒村委員 ほかの部分はどうですか。ヒアリングの話も出たかと思います。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 学習支援費のクラブ活動経費のことも御指摘をいただいております。こちらは確かに実費払いに変わりましたので、その実際の運用の状況については、我々も把握していく必要はあると思っていますので、ヒアリング等も含め、どのような方法があるかという点は検討していきたいと思っております。
○駒村委員 データについては、なかなかパネル化は難しいとはいうものの、この検討課題の1つは、検証手法の開発も含まれていると思いますので。生保世帯のパネルデータは今まで多分存在しない。
山田先生、この辺はどうですか。
○山田委員 事実上、1年間であれば、消費パネルデータはできますけれども、1年間の調査期間のどこに改定が挟まっているかで、いわゆるパネルデータを生かした分析ができるか、できないかというのが決まってくると思います。少なくとも1年間の月次の消費パネルというのは、今でも存在しているかと思います。
ただ、繰り返しになりますけれども、改訂の前後が、ちょうど1年間の調査期間中に、同一人物について追えるかどうかというのがポイントで、改定が例えば調査期間の初めの月や終わりの月に行われていると、パネル的な分析はできないという理解です。
○駒村委員 だから、阿部委員が言っているのは、今、山田委員が言っていることと同じことだと思うのですけれども、変更の前後で、同じ世帯がどのようにその影響を受けて、消費行動が変わっているかを見なくてはいけないという趣旨なので。
○阿部委員 消費行動もそうなのですけれども、私が言っていたのは家庭の生活実態調査のほうで、3年ごとにやっているのですよね。海外ではデプリベーションのパネル、動態分析とかもやっているので、もし、そこが同じ世帯に当たればやることはできるのです。
○駒村委員 両方ということですよね。消費行動とデプリベーションの両方が必要ではないか。
一方、協力依頼をいただかなければいけないということで、かなりデータ数とか、代表性という意味では、なかなか辛い部分もあるのではないかと。でも、この辺は重要な御指摘だと思いますし、世帯が変わってしまっていると、その影響を見られませんので、本当にできるかどうか、ちょっと検討していただきたいと思います。
それから、ヒアリングの件は、いろいろ工夫を考える必要はあるのかなと思います。こちらから出向いてお話を聞くという方法もあると思いますので、いろいろ御検討いただければと思います。
ほかはいかがでしょうか。
山田委員、お願いします。
○山田委員 私からは3点ありまして、1点目は、やはり保護基準が変わったときに、他制度への影響というのが非常に懸念されているところです。他制度は他省庁にまたがるものもありますから、データの入手可能性については、なかなか難しいと理解しているのですけれども、例えば前回の改定時にも就学援助の関係がどうなったかというのは、やはりものすごく私は気にしていたのですけれども、そこら辺はやはり省庁が違うためにデータ的によく分からない。
こちらとしては潜在的に本来だったら就学援助を受けられていたかもしれない世帯が、実際に改定によって受けられなくなったというのは、どれくらいあるのかというのが知りたいわけですけれども、そういったデータが取れていません。これは省庁間を挟んでなかなか難しい点はよく理解しておりますけれども、やはり何とか省庁間の交渉で、そういったデータが取れるように、他制度への影響が把握できるようにしていただきたい。基準見直しの影響把握の中の非常に重要な点だというのが1点目になります。
2点目としては、阿部委員のパネル化したらということにも関わるのですけれども、実は、被保護世帯をパネル化して追うことの1つの前提は、基準が変わったとしても、保護確率が変わらない。被保護世帯になる確率が変わらないという前提を置いているのですけれども、実際、もっと大きな目で見れば、基準が変われば、被保護になる確率とか、もしくは保護廃止になる確率、また、保護廃止になってから戻ってくる確率にもいろいろと影響があるので、実は、同一世帯を追えるパネルができたとしても、出入りはどうなったかという、基準見直しによってどのように出入りが異なったかというのが、影響把握としては、不完全にしか見えてこない。
そこで、やはり一斉調査のほうで、いろいろな工夫でどのような出入りをしているかという質問項目を付け加えたりして、そこら辺の出入りが見られるようにしていただかないと、実際には、基準見直しの影響というのが、全体像が把握できていないのではないかというのが2点目になります。
3点目は、その他に関してなのですけれども、これはいつも部会では議論の最後のほうにその他ということで出てくることもありまして、議論が尽くせていない点もありますけれども、そうした中での議論の一つは、やはり経済の先を見通しているような指標というのが、民間最終消費支出の見通ししかないという理解をしております。そうした先を見通すような、別の指標というのが、取ってこられるのかどうかというのが一番のネックになっておりまして、それができないとなると、やはりここを検討するのは非常に難しいのではないかと考えております。
マクロ経済スライドのように、高齢世帯に影響を与えるようなものがあり、一般の低所得高齢世帯にもものすごく影響を与えますので、そういった見通しとの兼ね合いも、多分これから高齢世帯が多くなっていくにつれて見ていかなくてはいけないでしょうし、そういった見通しをどうするのかというのは考えなくてはいけないことなのですけれども、全世帯についての適当な別の指標があるかどうかというのが、最大の問題点ではないかと思います。
私からは以上です。
○駒村委員 1番目の話は、生活保護受給世帯へのインパクトから少し波及する部分で、むしろそこのみならず、生保基準が連動している他制度にどう跳ねるかということですから、むしろ国民全体というか、特に低所得世帯に対するインパクトが大きいものになっているのではないかと、この辺も視野に入れておくべきではないのかという御指摘で、これは当然ながら大事なテーマなのかなと思います。
それから、出入りの問題、その他の問題です。その他の問題も非常に大きなテーマです。
これは事務局、今の山田先生のいくつかのコメントに対して、何か返答するようなところはございますか。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 まず、3点目の先を見通す指標については、元々昭和58年に現行の改定方式になったときから、その見通す指標が民最であったということでありますが、要は、翌年度の改定をどのように決めるかというものです。予測する指標を何にするかという点、そういうものがあるかどうかというところですので、確かに現状においては、なかなかそのような見通す指標がないということで、なかなか難しい問題ではあります。残念ながらこちらから何かこういうものがありますというわけではないというのが現状でございます。
もう一つの点で、基準が変わったことによる保護の出入りの話ですけれども、一応前回の基準の見直しによる影響について、こちらの参考資料1の3ページですが、基準部会において、このような推計を示しています。これは被保護者調査のデータを用いて、平成25年時点の個票データで、世帯の構成が動いていないという前提を用いて、平成27年度の基準で計算したときに最低生活費が収入充当額を下回る世帯数を推計したわけであります。
あくまでもこれは推計ですけれども、その結果として、例えば総世帯でいきますと、縦の左から5行目ですが、収入充当額が最低生活費を超えるケースの発生率は0.10%であったという結果はお示ししているところでございます。あくまでも推計値でありますので、これがお求めのものになっているかというのはわかりませんが、このように影響を見たということでございます。
○駒村委員 8ページの、その他の部分は少し難しいテーマです。
資料の確認ですけれども、8ページの現状ところで「その時々の社会経済情勢を総合的に勘案して改定を行っている」というこの1つ目の○のフレーズは、文章で2つ「踏まえ」「踏まえ」と入っていますけれども、これは中央社会福祉審議会の意見具申そのものがこういう書き方になっていたのか、確認までに教えてください。後でもいいです。
あと、細かい話で「参考資料P9」というのは、10ページのほうですね。ちょっと確認してください。9ページは住宅扶助の話になっています。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 申し訳ございません。
○駒村委員 お願いします。
○梶野社会・援護局保護課長 あと一点、山田先生の就学援助の他制度への影響ですけれども、前回の基準の見直しのときに、平成30年1月に政府全体として、今回の基準額が減額となる場合に、できる限り、就学援助、保育料免除も含めて、その影響が及ばないように対応することを基本的な考え方として関係省庁にお願いをしたということでありますけれども、いずれにしても生活保護基準を見直すときは、他制度への影響もよく考えていかなければならないと思っています。
○駒村委員 山田委員、お願いします。
○山田委員 ありがとうございます。
お答えいただいた点、確かに参考資料の3ページのほうで、確かに見られるのですけれども、実際にその後どうなったのかとか、実際に今度入るほうがどうなったのかというのは、これは非常にデータの制約が厳しい中でやっていただいたとは思うのですけれども、一斉調査のほうには、何とかそういうような項目を入れ込んで、出入りが追えるように、実際として、出入りがどうなっているのかというのが、特に地域によっても異なってくるかもしれませんし、ちゃんと分かるようにしていただきたい。
○駒村委員 それは技術的には可能なのですか。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 被保護者調査においては、各世帯の保護開始月は把握しておりますので、何月から開始したというのは分かりますので、その辺りをどのように工夫してできるのかということは、ちょっと検討してみたいと思います。
○山田委員 あとは、履歴でひも付けが各年度でできて、出入りが分かるような形というのが、テクニカルにできるのかというのが気になるということです。
○駒村委員 というのは、全国的なデータではなければいけないのか、大規模都市でサンプル的にやってもいいのか。それはどうですか
○山田委員 級地によっても基準額の影響は異なってくると思いますので、全国規模のほうが、もちろんリソースがあればという前提ですけれども、望ましいと考えております。
○阿部委員 一つ一つの世帯で入ったのがいつで、出たのがいつで、何カ月間出て、入ってきたという、そういうデータということですか。
○山田委員 具体的なデータ設計というのは、調査票を見ながら考えるのが筋だと思いまして、今、ここに調査票がないのですが、そのようなデータということです。
○阿部委員 恐らく開始とか廃止は、福祉事務所ごとに、開始世帯は何世帯、廃止世帯が何世帯で、そのうち高齢者世帯が何世帯というマクロデータしかないですよね。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 資料1の7ページでございますが、一番上に「被保護者調査」というのがございます。この中の「年次調査」の中の真ん中辺りに「調査事項」と書いております。この中で、世帯の状況として、当該世帯の保護開始・廃止年月日というのは把握してございます。この調査は全数調査になっておりますので、毎年7月末ですので、1年たったときに、この世帯が落ちているとか、そこは把握できるということにはなります。
○駒村委員 廃止、開始の理由というのは書いてあるのですね。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 廃止理由についても把握しておりますので、そちらを分析して、基準の見直し前後で動向が変わるのかどうかとかいう分析は可能かと思います。
ただ、調査設計上、基準の見直しによる保護廃止という項目自体は取っておりませんので、恐らくその他のところに入ってくるとは思います。
○駒村委員 山田先生が言うように、地域によってインパクトが違うわけですけれども、福祉事務所のほうは、制度変更の影響かどうか、当然ながら把握しているわけですよね。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 保護の廃止に当たって、収入と最低生活費を比較していますので、直接的に基準が引き下がり、収入が動かない場合で、上下が逆転するような場合であれば、そういう事例があったというのは、事務所は把握していると思います。
○駒村委員 岩永委員、何かありますか。
○岩永委員 今のお話なのですけれども、保護が廃止になる、開始になるというのは、理論的には、最低生活費を下回ったか、上回ったか、ただそれだけだと思います。しかし、前にケース記録を分析したことがあるのですが、正直言ってケース記録を見ても、そのあたりの判断について、よく分からないのです。
理論上、1円でも上回るか、下回るかすると生活保護の該当・非該当が決まるはずですけれども、辞退届を書かせて問題になったりしたケースもあったり、そこは何と言うのでしょうか、私はケースワーカーをやったことはないので、よく分からないのです。そこで、昔の保護の動態調査のように、もうちょっと詳しく聞いたら把握できるのか。今ですと開始のときの貯金の取り崩しが一番多いとか、あれは当たり前というか、何というかという感じで、その中に基準見直しの影響というのを1個置いたら、確かに見た目には分かりやすくなりますけれども、それがどういう意味なのかというのは、なかなか解釈しづらいのではと思います。
併せていいですか。
○駒村委員 今の部分は、記録なりデータが必ずしもクリアに基準変更の影響がどうか、その回答者や記録の内容から見ても分からないのではないかという話ですね。
次の話は別の話ですか。
○岩永委員 関係するのですけれども、私も山田先生がおっしゃった1点目と2点目はすごく同感です。この話と関連して、例えば住宅扶助について。今回、平成30年の見直しだけではなく、参考資料1の8ページに住宅扶助の見直しのことは書いてくださっているのです。
これは平成27年に調べて、平成28年時点のもので、このときは、下の※のところにあるような、契約更新時まで猶予するとか、あとは経過措置を設けているということだと思うのです。住宅扶助は、家賃という支払い先がクリアな扶助だと思います。この基準額が変わったことで、生活保護を受けられなくなったという世帯は、住宅転居などという理由で、割と把握しやすいような気もするのです。
保護廃止の理由として、住宅扶助基準が変わったことによって、そこが捕捉されなくなって、生活保護から出なくてはいけなくなった。未転居というのは、この時点では40%前後ですけれども、この後、契約が変わって、住宅扶助基準変更の影響がみられるとか、生活扶助だけではなくて、冬季加算も住宅扶助もいろいろな扶助を見直しているので、住宅に絞ってみても、動態の把握が可能なのではと、ちょっと思いました。
○駒村委員 住宅扶助のほうが、いろいろ回答のバイアスがなくてクリアではないかということですね。
○岩永委員 それだけです。
○駒村委員 分かりました。1つのアイデアだと。
それから、出入りの問題は、なかなか把握するのが難しい部分もあるかなという御指摘だと思います。
事務局、この点は何かありますか。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 先ほど岩永先生から1円でも下回れば廃止になるという御指摘がありましたけれども、現実の運用としましては、その状態が6カ月続くと見込まれる場合は廃止、そうでなければ一旦停止するということになります。この間、収入や最低生活費が動く可能性があり、例えば、就労収入がある場合に、その収入が若干不安定ですと、一瞬逆転しても、その状況が続くかどうか分かりませんので、微妙なところになるのであれば、とりあえず1回停止して、その後、継続的に観測して、その状態が続くようであれば廃止になるというのが、運用上の取扱いになっているところでございます。
○駒村委員 ほかの点については、いかがでしょうか。
岩永委員、お願いします。
○岩永委員 先ほど阿部先生がおっしゃったことにも、私も同感で、基準の見直しのうちの有子世帯の加算、教育扶助の部分などで実費を支給するということについては、やはり運用を見てみないと分からないと思うので、私もヒアリングしてもよいのではと思いました。というのも、ちょっと聞くに、かなりケースワーカーで運用の仕方が違うと。領収書を取っておかないと駄目だとか、あらかじめ見積書を出せというケースワーカーもいるとか、いろいろなことを仄聞しますので、実態としてどうなっているかということを聞いてみる必要もあるのではと思います。
あと、基準見直しについては、これもまた、運用部分ですけれども、新聞報道ベースで、計算ミスをしたとか、入力ミスをしたとかというので、きちんと給付されなかった事例が報道されています。これらも基準見直しの影響かと思いますので、把握しておく必要があるのではと思います。
○駒村委員 この辺の運用に関しては、当然ながら厚労省は多分関係部局には通知していると思いますけれども、実際の実態把握はされているのですが。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 学習支援費につきましては、実際の支給状況がどのようになっているか、各自治体の協力を得まして、今、把握しているところであります。
先ほどの領収証の徴収について、事前に出すか出さないかという点については、運用としては、なるべく御負担をかけないような方法でお願いをしているところです。ただ、現場でどうなっているかというのは、我々も全国1,000の全ての事務所を把握しているわけではありませんので、御指摘のようなことがあるかどうかというのは、この時点では言えませんけれども、領収書が必ず事前になくてはいけないという運用にはなっていないところでございます。
○駒村委員 割と大事な部分だと思うのです。ローカルルールがいろいろできてしまっていると、これはこれで、やはり生活保護制度としてどうかと思うところがありますので、給付がどうなっているかとともに、ローカルルールというか、どういう手続になっているかというのは、ちょっと把握しておかないと、せっかくこういうものを入れても、実際は出ていないとなると、問題かなと思いますので、ちょっと踏み込んだ質問ですけれども、今後のテーマとして覚えていただきたいなと思います。
ほかはいかがでしょうか。
渡辺委員、ありますか。
○渡辺委員 ほかの先生方がおっしゃったことと重複する部分もあるのですが、1つ目の家庭の生活実態及び生活意識に関する調査は、定期的に実施をして状況を把握するのがよいかと思いました。本調査がユニークな点は、被保護世帯も調査をしているため、一般世帯と被保護世帯の比較ができること、そして諸外国を見ても比較できる調査はなく、定期的に実施していただいたらいいかと思います。
必需品の内容について、入れ替えをというお話もありましたけれども、阿部先生が御指摘のとおり、長期的に動向の把握が可能となるように、基本的に大きな入れ替えはしないほうがよい一方で、時代とともに必需品の内容が変わっているということもあるので、そうすると、阿部先生も以前御研究されていましたけれども、我が国においての必需品は何かという必然品項目調査を事前にプレ調査としてやって、その後、剥奪の本調査を実施するというのが、理想としてはいいかなと思いました。
もし、プレ調査を実施するとなると、次の本調査の実査が令和4年となるため、令和3年ぐらいに実施しなくてはいけないとなる。となると、来年の今ぐらいには、例えば統計調査の申請をクリアしておかなくてはいけないとか、そういう結構タイトなスケジュールになってくるので、計画的に実施はしていただきたいなと思いました。
廃止、開始理由で、どれぐらい基準額に影響を与えたかというところで、廃止理由に、基準額変更の影響を入れるというのは、何を示すのかは一義的には分からないのではないかという御指摘もありましたけれども、分かりやすいと言えば、分かりやすいですし、停止になる可能性もあるとするのだとしたら、それによって停止世帯が出てくるのであれば、停止理由のところも分かるようになると、何かしらのきっかけにはなるのかなと思いました。
以上です。
○駒村委員 山田委員、ありますか。
○山田委員 2つあります。
1つは、今、渡辺委員からも出ましたように、被保護者調査で、これは停止については把握されているのですか。把握されていないのだとすると、もし基準額の変更が停止のほうに影響が出てくるのであれば、やはりそこは把握する必要があるのかなというのが、調査票の制約というのも厳しいのですが、可能であればしたほうがいいのかなと思います。
あとは、開始理由で、貯蓄取り崩しというのは、いつも私もこの統計を使っていて、非常に解釈に苦しむところであって、生活保護を受給するために、貯蓄を取り崩していたことの背景には、もっと真の理由があるはずなので。もし、そうした生活保護を受給するために貯蓄を取り崩し、受給開始になったという背景にある本当の理由が分からないので、ここをもう少し、貯蓄取り崩しをさらに枝番で、どういう理由があるのかというのを聞くようにしないと、特に生活保護を受給する高齢者がこれから増えていくので、今でも増えていますけれども、どうしてそうなったのかという理由が、分からない部分が、何とか解明されるといいなと思うところです。
以上です。
○駒村委員 先ほど渡辺委員から話があった必需品、これは当然短期で変わらないけれども、長期では社会・経済の状況によって変わっていくのは当たり前の話ですから、先ほどの話は、一つの重要な点かなと思います。
それから、少し議論があった部分は、廃止、停止等々が、どのぐらいちゃんと厳密に把握できているのかという、岩永委員のほうから、そこが若干ブラックボックス的な部分があるのではないかという危惧があると、完全に把握しきれているかどうか分かりませんよという危惧があるという御指摘だった。その辺の精度を高めればいいのではないかという指摘もあったということだと思います。
時間もありますので、次のテーマに入りたいと思います。
事務局から、資料2について、御説明お願いします。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 それでは、次に資料2でございます。タブレットでは03、資料2になります。
本検討会ではこれまで、最低限度の生活を送るために必要な水準、それを検証・検討するための手法について御議論を賜っているところでございます。今回のこの資料におきましては、これまでの主な意見を各検討課題の論点に沿って分類・整理するとともに、それを踏まえた検討課題を改めて再整理したものになります。なお、第2回検討会において事務局からお示しております、最低限度の生活に関する検討に係る論点は、1ページの枠囲みのとおりとなっているところでございます。
これに対する主な意見を以下で書いているところです。
2ページですが、検討課題1の最低限度の生活を送るために必要な水準について、これまでの主な意見を3ページ目にかけて、まとめているところでございます。
お時間の関係もありますので、ここは省略させていただきまして、次の4ページ目で、これまでの意見を踏まえた検討課題としてまとめているものでございます。
1つ目の○でございますが、生活保護において保障すべき最低生活の水準について、基本的には、一般国民の消費水準との比較における相対的なものとして設定されるという考え方に立つと、経済の変動によって消費水準が低下することになった場合の下支えについて「セーフティーネットの役割を果たせる水準」と「国民からの信頼と納得を得られる水準」という、このマル1、マル2の2つの観点から検討することについて、どのように考えるかという点でございます。
2つ目の○でございますが、このうち前者の「セーフティーネットの役割を果たせる水準」という観点から考えた場合、現行の基準が、健康で文化的な最低限度の生活を実質的に保障しているのかを検討・検証していくことについて、どのように考えるかという点。
その際、これまで貧困の概念も見てきたところですけれども、貧困は金銭的なものだけではなく、様々な影響を受けることも踏まえ、生活の質的な観点から、貧困を捉える相対的剥奪などの貧困概念との関係について、どのように考えるかという点でございます。
3つ目の○でございますが、貧困の概念を見てみますと、衣食住に必要な費用に着目して貧困を捉える考え方から、社会参加や健康状態も含めた生活の質に着目して貧困を捉える考え方の変遷が見られ、また、過去の審議報告における生活保護基準に関する基本的な考え方についても、衣食住に要する費用のみではなく、社会的経費にも着目する必要性について言及されております。これらの点を踏まえて、最低限度の生活を送るために必要な水準について、どのように考えるかという点でございます。
4つ目の○は、運用面についてですが、生活保護制度が保障する生活の水準は基準だけで決まるものではなく、生活保護世帯の実際の生活を考える上では、資産の保有限度などを含めた制度の運用と密接に関係することから、自立に向けた支援なども含め、総合的に検討していく必要性について、どのように考えるかという点でございます。
5つ目の○は、先ほどのマル1、マル2のうちのマル2の部分ですが、後者の「国民からの信頼と納得が得られる水準」という観点から考えた場合、生活保護制度が公費を財源として運営されていることや、これまでの検証結果との整合性等を踏まえ、一般低所得世帯の消費実態との均衡を図るという、これまでの考え方を基本とすることについて、どのように考えるかという点でございます。
次に、社会的経費については、一般世帯においても個別性が高い経費であり、必要となる経費も様々であることを踏まえて、どのように考えるかという点でございます。
最後でございますが、生活保護受給者の社会生活自立を図っていくためには、金銭給付のみならず、適切な支援が必要であることについて、どのように考えるかという点でございます。
以上が、これまでの意見を踏まえて、検討課題1の概念的な整理を踏まえた検討課題として、事務局において改めて整理させていただいた課題でございます。
次に、5~6ページ目でございますが、こちらは検討課題2としまして、最低限度の生活を送るために必要な水準を検証・検討するための手法に関する内容になります。
主な意見としては、5ページに掲載させていただいたとおり、様々なご意見を賜ったところでございます。
これを踏まえて、検討課題として整理したものが6ページ目でございます。
まず、1つ目の○につきましては、最低生活費の算定については、これまでも時代の変遷に合わせて様々な方法が採られているが、唯一この方法が正しく何でも説明できるような方法はないことから、これまでの検証手法も含め、多角的な観点からの検証を行い、いくつかの考え方や方法を組み合わせながら、算定していくことを基本的な方向性とすることについて、どのように考えるかという点でございます。
2つ目の○ですが、最低限度の生活を考えるにあたり、どの年齢階級やどの世帯類型にも通じるものを明確にすることは難しいことを踏まえ、どのような検証・検討手法が考えられるかという点でございます。
3つ目の○でございますが、今年度の調査研究として行っております「MIS手法による最低生活費」や「主観的最低生活費」の研究成果を今後の検証・検討に活用する方法について、これらの検証方法の特徴を踏まえつつ、どのように考えるかという点でございます。
これまでの御意見を踏まえますと、例えばということでございますが、総体としては、これまでの検証結果との整合性を踏まえ、一般低所得世帯の消費実態との均衡を図る考え方を基本としつつ、特定の年齢階級や特定の世帯類型における生活実態から見られる需要等については、消費実態のみではなく、今回の調査研究で実施しているような理論生計費の考え方も部分的に取り入れることについて、どのように考えるかという点でございます。
この点に関しましては、これまでの基準部会において報告のあった検証手法に関する資料を後ろの11~13ページに掲載しております。また、今年度実施している調査研究の概要につきまして、最後の14ページに掲載させていただいているところでございます。
6ページに戻り、4つ目の○になりますが、併せてということで、研究成果の活用方法を検討するにあたり、各手法の抱える課題について、どのように考えるかといった点でございます。
下から3つ目の○ですが、基準部会報告書の指摘を踏まえて、昨年度実施しました「生活保護世帯における生活の質の面からみた消費支出や生活実態等の分析」の結果を踏まえ、現在の生活保護基準の水準や体系について、どのように考えるかという点です。
また、その次の○ですが、生活保護世帯や一般低所得世帯の生活実態を多角的に把握する観点から、このような調査・分析を継続的に実施し、今後の検証・検討に活用していくことについて、どのように考えるかという点でございます。
ここにつきましては、第2回、第3回の検討会において、いろいろご意見を賜っておりますが、主な意見は7~8ページ目に掲載させていただいているところでございます。
6ページに戻りまして、最後の○ですが、諸外国の公的扶助制度ということで、こちらも第2回、第3回において御紹介したところでございます。こちらについて、公的扶助制度の制度設計や社会保障制度上の位置づけが国によって様々であり、生活保護制度との単純比較はできない中で、参考にすべき点があるかどうかも含め、どのように考えるかという点でございます。こちらにつきまして、第2回、第3回における主な意見としましては、9~10ページ目に、それぞれ参考として記載させていただいているところでございます。
資料2の説明は以上でございます。
○駒村委員 ありがとうございます。
では、委員の皆様から、今の資料について、御質問とかコメントがあればと思いますが、いかがでしょうか。
山田委員、お願いします。
○山田委員 4ページの2つの観点から検討ということで「セーフティーネットの役割を果たせる水準」と、もう一つ「国民からの信頼と納得を得られる水準」ということなのですけれども、これは非常に微妙な表現であって、今、誰が生活保護制度を支持するのかという、そういう主観的調査を用いた研究も進められているところだけれども、重要なのは国民がどう捉えるかということです。
私は、国民が、もし自分自身が受給者の立場になった場合に、どうその水準を考えるのかという観点が、やはり重要ではないかと思っています。いわゆるこの国民の立場を、どのように考えるべきかというのは、2つの観点から、ということを踏まえますので、ちょっと慎重に考えたほうがいいのではないかなと思いました。
以上です。
○駒村委員 ここのところは大変難しいテーマだと思います。
セーフティーネットの役割を果たす水準というのは、我々のこの検討会でも議論できるわけでありますけれども、国民の信頼と納得となってくると、このページの下から3番目にも同じことが触れられていますけれども、ある種、均衡みたいな議論が出てきてしまうということで、これが相矛盾することもあるかもしれないということですし、今、山田委員が言ったように、受給者になる可能性は自分にもあるのだと考えて見ていくのか、あくまでも納税者的な視点しかないのかということもあります。
この観点というのを実際に、どう消化するかというのは、しかも恐らく、こういうデータを分析して議論をしているときに、今の足元の状態を見ると、経済の様子とかが変わってきてしまうので、大分時間がずれてしまって議論をする可能性もあるわけです。
そういう意味では、そのときそのときの感覚的な問題とは別に、きちんとしたバランスというか均衡の考え方も一方では入れておかなければいけないという趣旨程度で理解していいのかということで、国民の納得と同意を部会なり検討会でやれということは大変難しい作業だと思いますので、この考え方というのは、やはり均衡的な発想は大事だというようなことを意味しているのかなと思います。これは下から3番目のところに関わってくるのかなと思います。
この部分に関して、今の山田委員の指摘も含めて、何か事務局からありますか。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 ここの部分については、これまでの御議論を踏まえてこちらで記載しているものですが、下から3つ目の○のとおりなのですけれども、基本的には、やはり公費を財源としているということを踏まえると、先ほど駒村座長からもお話がありましたけれども、一般低所得世帯との均衡も必要な観点になってくるのではないかということで、課題として記載させていただいているところでございます。
○駒村委員 ほかはいかがでしょうか。
山田委員、どうぞ。
○山田委員 少し超越的な議論になるかもしれませんけれども、今の部分を突き詰めていくと、例えば公的年金給付水準が緩やかに下がっていく中での最低限度の生活というのをどう考えるのかとか、やはり大きな視点で見ると、基礎年金の給付水準が、マクロ経済スライドで非常にダメージを受けますから、そうした場合に、特に高齢期で国民年金しかない方たちの中には、潜在的に生活保護の受給者になるかもしれない人たちも増えてくるわけなので、国民からの信頼と納得を得られるといった場合には、やはり制度的な環境要件というのですか、社会保障全体も考えつつ、そういった意味も含めて、単なる均衡ということではなくて、大きな諸条件も変わっている中で考えていただければなと思いました。
○駒村委員 いかがでしょうか。
ここのところは、かつては良い条件があったのでしょうね。当然セーフティーネットをクリアできるし、国民の信頼と納得を得られる水準というのも、社会が改善して社会保障制度が全体的に充実すれば、そこも引き上げられる。だけれども、2番目を支える条件が変わってきたときに、2番目の条件を重く見すぎるために、今度はセーフティーネットの条件をクリアできないような事態も起きるのではないかと。どちらが大事かというのは、なかなか比較はできないけれども、やはりセーフティーネットをちゃんと保障しなければいけないのは間違いないわけでありますので、そういう意味では相対的な基準、世の中が豊かになれば、健康で文化的の意味も変わってくるので、当然そこは充実していく。
一方で、世の中の社会保障制度、他の制度も、貧しくなったら、際限なく苦しい生活の人たちに合わせて、際限なく下げていいのかとなってくると、そこにはおのずとセーフティーネットの保障すべき水準があるだろうと。ある種、歯止め的なものもちゃんとなければいけない。他の制度の影響も受けてきますので、山田先生がおっしゃるように、単なる均衡というよりは、動態的な部分も考えていかなくてはいけないので、そこは単に平べったく置くのではなくて、非常に悩ましいというか、前から言われている話ですけれども、改めて重要性が増してきたということだと思います。
この点についてはいかがでしょうか。
阿部委員、お願いします。
○阿部委員 この部分のところでは、6ページの中でも触れられているように、オールオアナッシングで議論をすると、収拾がつかないのではないかなと。つまり全部均衡させる、または全部理論的にやる、例えばMISとかですと、恐らく議論は収拾つかないかなと思います。
でも、費目だとか、ものというのは、国民の中に納得できるものがあると思うのです。例えば食費であったり、子どもの教育費であったり、最低限の社会費だったりといったものは、やはり最低限の生活を守るという意味での理論生計費な考え方を取り入れていき、でも、そのほかの部分、例えば娯楽費とか、そういうのが、国民的な納得が得られないのであれば、そういったものは、もう下に合わせていきましょうみたいな形でもいいのかなと思うので、やはりここから先はオールオアナッシングの考え方から少しずつ離脱していくべきではないかなと思います。
○駒村委員 この点について、ほかの委員はいかがでしょうか。あるいはほかの点でも結構です。岩永委員、もしこの辺のところ、歴史的な点からも何かあれば。
○岩永委員 基本的に生活保護制度の歴史では、基準がずっと低かったと言われてきて、それを引き上げるための努力が生活扶助基準の算定方式だったと私は理解しています。それが、近年の保護率の増加と、90年代に保護率が底をついてから、上がってきた局面でどうするかというのが、今の課題かなと理解しています。
国民が納得を得られるというのを、私ももちろん考えざるを得ない部分だと思うのですが、一方で、私は政治家ではないので、国民に選ばれたわけでも、信託されたわけでも何でもないので、研究者のできる範囲でやるということかなと思います。と同時に、そう考えてみると、この委員会は、検証手法の開発なのですけれども、根本から議論しろということで、最低限度の生活は何かということを考えるところから始めたわけですが、この議論を検証にどうつなげてくのかというのが、これからどのように議論していくのか難しいなと、今の話を聞いて改めて思いました。
○駒村委員 国民から信頼と納得というのは、政治家でも何でもないので、これに対して責任を負えないということですけれども、そういう意味では、ここに触れていることは、均衡的な発想なのだろうと思います。あとは、いろいろな費目選びのときに、どういう費目を選んで考えていくのかを様々なデータから得て、一般の方の考え方をこのデータから抽出して反映していくという以上のものでもないのかなと。それ以上の改定なり、水準に対しては、最終的にはこれまでもそうですけれども、政治的な判断も当然ながらあるのだろうと思いますので、そこまで我々が責任を持つという意味ではないとは思います。
ただ発想としては、入れておかなくてはいけないということだろうなと、従来の発想と保護率の上昇という話をどうつなげるかというのは、私も簡単に答えが出せない部分ではありますけれども、ここしばらくの改定を見ていると、やはり一般世帯の消費行動、構造が変化することをまともに受けてしまっているので、見直しが厳しくなってきていることを非常に悩んできているというのが、この検討会が始まった直接的な理由だということだと思います。
受給世帯が増えているか、減っているかというのは、別にそれは結果論ですから、そこを見ながら議論しているわけではないだろうと思います。あくまでも検討会、あるいはこの部会の見方としては、この間の検証方法が、デフレの影響等々を受けて非常にひずみのあるものになってしまっていて、厳しいものになっているのではないか。ひずみというのは、消費行動のパターンの影響を真正面から受けてしまっているというのを非常に悩んでいるという趣旨だと。
○岩永委員 先生がおっしゃっていることはそうだと思うのですけれども、私が先ほど言ったのは、最初に基準を下げたのは2002年で、それは90年代から、だんだん保護率が上がってきて、基準のことを検討しなくてはいけないかなというのが、2000年代初頭だったということを念頭に置いて発言したまでです。
○駒村委員 この委員会の前段階の話、大きな流れということですね。分かりました。
山田委員、お願いします。
○山田委員 今の委員の皆様の発言で、頭が整理されたのですけれども、公費が財源だから均衡を図るというよりは、マル2の「国民からの信頼と納得を得られる水準」というのは、検証手法の開発というこの検討会に任されたミッションからすると、先ほど必需項目の話もありましたけれども、そういった形で国民に一般的な必需等をすくい上げるということがマル2に資するかなということで、理解しました。
○駒村委員 渡辺委員、ありますか。
○渡辺委員 6ページのところで、「一般低所得世帯の消費実態との均衡を図るという、これまでの考え方を基本としつつ」と書かれていて、これは例えばというところで、あくまでも例示と受けとめました。ただ、前回の基準改定では、これがもはや基本とできないのではないかというところから出発したのではないかと思いました。今、いろいろな調査研究事業が立ち上がっているところで、MISをやっていたり、主観的最低生活費をやっていたりしています。阿部先生からもオールオアナッシングではなくて、とご意見ありましたが、いろいろなところから多角的に検証しているところで、恐らくその結果、アプローチによって幅がある結果が出てくるとは思うのです。平均的な世帯所得・消費がずっと下がってきた中で、相対的にずっと決めていきましょうというところから、もはや離れなければいけない、生活保護はレース・トゥ・ザ・ボトムではないのだというとき、ここの「基本としつつ」というところは、少なくとも、まだいろいろな調査の検証結果が出てきていない中においては難しい。こうも書きづらいのかなとは思いました。
○駒村委員 まだ取りまとめる状態でもないわけですから、まだ研究途上のものもたくさんありますので、そういったものが出てきてから、どうそれを反映させていくのかというのは、次のステップの議論だと思います。
ほかはいかがでしょうか。今の部分以外のところでも結構です。もしなければ、次のテーマがありますけれども、よろしいですか。
では、資料3について、事務局より説明お願いします。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 それでは、資料3について御説明申し上げます。
資料3は、現時点におけるこれまでの議論と今後の検討課題の整理(案)ということで、まとめさせていただいております。
昨年の3月以来、検討してきたわけでございますが、それを踏まえまして、表紙の下のところで、1つ目の○ですが、本資料は、検討会におけるこれまでの議論を踏まえ、検討事項ごとに、その現状や各委員からの意見及び今後の検討課題を事務局においてまとめたものということで、これまでの議論を全体的に再度まとめているものでございます。ですので、資料1、資料2と重複する部分がございます点については、御了承いただきたいと思います。
2つ目の○ですが、今後、次回の基準検証に向けて、さらに検討を要する課題等について議論を重ね、令和2年度内を目処に検討内容の取りまとめを行うこととしてはどうか、ということでございます。
それでは、資料の中身に入って行きたいと思います。大きく3つの項目に分けております。まず、1ページ目でございますが、先ほどの議論と重なる部分がありますが、「最低限度の生活を送るために必要な水準」ということでございます。
これまでの現状としましては、まず、1)で貧困の概念について整理してきたというところでございます。
次に、2)で生活扶助基準の改定方式について、資料を示しながら御紹介してきたところでございます。
また、3)で生活扶助基準の水準検証の考え方について、基本的には現在の検証手法は、一般低所得世帯との消費実態の均衡という点から行われていることを御紹介してきたところでございます。
これを踏まえての主な意見としては、2ページ目に記載してございまして、ここは先ほどの資料2から抜粋しているものでございます。
こちらを踏まえまして、3ページ目の検討課題ということで、今も様々な御議論をいただきましたけれども、このような課題について、今後さらに検討していくということであろうと思っているところでございます。
それから、大きな2つ目としては4ページ目でございますが、この「最低限度の生活を送るために必要な水準を検証・検討するための手法」でございます。
こちらもこれまでの基準の検証手法、それから、生活保護基準部会において、かつて報告のありました検証手法について御紹介してきたところでございます。それに対する主な意見として、中段以降に記載しているものでございます。
次の5ページ目でございますけれども、この検討の中で、生活の質の面から見た消費支出、生活実態等の分析を御紹介してきたところでございます。これを行うに至った趣旨を○の1つ目、2つ目で記載したところでございます。
そして、中段以降の枠囲みの中で、これまでお示ししてきました主な分析結果について、抜粋してまとめているといったところでございます。
この検証・分析に対する先生方の御意見を6ページ目に記載してございます。
7ページ目は、併せて、諸外国における公的扶助制度の検討も行ってきたところでございまして、これに関する意見を、7ページ目の下にまとめているところでございます。
8ページ目は、これらを踏まえた検証手法に関する検討課題となります。こちらも先ほどの資料2からの抜粋でございますけれども、このような検討課題を記載してございます。
9ページ目でございますが、次年度の検討課題(案)ということで、こちらにお示ししております。翌年度以降、引き続き検討会を開催していくわけでございますが、その検討課題ということで、主に3つ挙げております。
1つ目は「MIS手法による最低生活費の試算」や「主観的最低生活費の試算」の研究成果等を踏まえた検討というものがあると思っています。
2つ目が、これも調査研究で行っております、マーケットバスケット方式による最低生活費の算出事例を踏まえた検討があると思います。
3つ目が、級地制度の現状と課題ということで、こちらについては、基本的に級地制度につきましても、この2つ目のポツですけれども、平成29年検証においても、級地制度に関する検討を行ったものの、級地制度の見直しを含む級地制度のあり方については、今後も引き続き議論を重ねていく必要があるとの指摘がなされているといったところで、引き続き積み残しの課題と理解しておりますので、改めて、この現状と課題について、部会での検討に向けて、御議論いただければと思っているところでございます。
10ページ目以降が、大きな3つ目として「現行の検証手法」というところで、こちらも既に第2回、第3回で御議論いただいたものをまとめたものです。
10ページ目が、1)で水準検証における比較対象の設定ということで、アとして所得階層をどうするか、イとしてモデル世帯をどう考えるか、ウとして展開後の基準と一般世帯の消費水準の格差をどう考えるかという点でございます。
11ページ目に、これに関する主な意見をまとめているところです。
12ページ目が、2)で年齢・世帯人員・級地別の体系検証ということで、こちらは指数展開による検証手法、1類、2類の区分、検証に使用している統計データについて、それぞれの課題を書いているところでございます。
そして、これに関する主な意見を下に記載しているところです。
13ページ目は、本日御議論のありました内容でございますので、御議論いただいた内容を踏まえて、今後検討していくことになろうかと思っております。
14ページ目は、第3回の検討会資料で示している課題と、本日の資料で示している課題を記載しているものでございますが、今日、御議論いただいた内容についても含まれるものと考えているところでございます。
資料の説明は、以上でございます。
○駒村委員 ありがとうございます。
阿部委員はもう退室されたのですね。
では、ほかの委員の皆さんから、この資料について御質問、御意見があればと思います。
11ページ辺りの高齢者の貯蓄の扱いですよね。ここがとても難しい点かなと。資産の運用の問題の中でも、最近はデキュムレーションというのか、今、増やすことばかり注目されています。取り崩していくというか、使っていくプロセスが大事になってくるわけですけれども、実はここが非常に下手なのではないかということで、単に貯蓄残高を寿命で割っているということになると、非常に合理的に不確実もなく、若い人と同じ消費行動ができると。つまりものを買いに行けるとか、自分の資産を、これから起きる不確実性をちゃんと把握して、あたかもそれができて、取り崩しているような前提で議論をしているわけですけれども、そんな前提でいいのかということです。
資産を取り崩すということに関する研究を少し深めていかないと、寿命で割って、ある程度のペースで取り崩しているという前提で議論していいのかどうかというのは、この計算によっては本体のいろいろなデータに跳ねていきますので、この辺はよくよく考えなければ、今までとちょっと違うことも考慮しておかないといけないのかなと思いますので、関連する研究なり、意外に取り崩していないのではないかと、取り崩せないのではないかという考え方もあるわけです。相続させたいと思って取り崩しているわけではなくて、実は取り崩せなくなっているのではないかというような問題もありますので、これは少し深めていかないといけないことかなと思います。
これは私が最近関心のある事項ですけれども、ほかに何かありますか。
岩永委員、お願いします。
○岩永委員 来年度の検討課題を書かれている9ページのことに関連して確認なのですけれども、級地制度が変わると、今の議論が根本から変わるような話だと思います。そこで、そもそも級地は何で6級地に地域差を分けているのかということについて、まず確認しておきたいのです。
○駒村委員 事務局に対する確認事項ですね。お願いします。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 級地についてですが、元々生活保護基準は、法律上、地域の状況も踏まえて決めるとなっており、生活保護法8条2項において、所在地域別ということも勘案事項の中に入っている点も踏まえて、級地について決めております。現行は6区分ということなのですけれども、過去に遡りますと、これが3区分だったり、4区分だったり、5区分だったりという時代もあったわけでございます。直近の見直しとしては、昭和62年に、1級地の1、1級地の2、2級地の1、2級地の2、3級地の1、3級地の2ということで、それまで3級地だったものを3級地6区分に見直したという経過がございます。
今とはちょっと反対の傾向かもしれませんけれども、この当時は地域によって消費の差が逆に広がっているという認識の下で、3級地制から3級地6区分制に変えたところでございますけれども、それ以降、この区分と、それぞれの級地に指定されている各自治体の貼り付けは根本的に見直すことがなくきているところでございます。この間、平成の大合併等の市町村合併もありまして、かなり状況は変わっておりまして、ここにつきましては、基準部会の報告においても、現状と合っているかどうかという問題意識は示されておりまして、積み残しの課題と認識しているところでございます。
○駒村委員 岩永委員、よろしいですか。
○岩永委員 消費の差というのは、消費水準の差でいいですか。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 あくまでも昭和62年当時の考え方ですけれども、市町村ごとの1人当たり生活扶助相当消費支出を回帰式によって求めて、それをベースにして指定を行ったということでございます。回帰式を用いておりますのは、全国消費実態調査では対象になっていない市町村がありますので、そこを踏まえて、回帰式を立てて理論値を求めて区分するという考え方が、その当時は採用されたというところでございます。
○岩永委員 というのも、生活保護は理念的には国で1つなのです。つまり全国の中で質的な差は設けないということです。だからナショナル・ミニマムとよばれてきた。今の話は、地域によって消費水準の差があるので、つまりすごくお金が少なくても暮らせる、同じものを買うにしてもお金が少なくて、住宅などが一番分かりやすいですけれども、そういうところがあるので、地域差を設けるのであって、質的な差はない。というか設けない。もしかしたらあるのかもしれないのですけれども、そういうのは設けない。全国一律引き上げていくものとして、生活保護は制定された経緯があると思うので、今に至っても質的な差は設けないということだと思うのです。このことを、確認しておくのが大事かなと思いました。
というのも、先ほどの前段の議論で、渡辺委員がおっしゃったような質的なストッパーが必要だという話を水準均衡だけではなくて、下げ止まりの質的なものを何か見つけようとしているのだと私としては理解しています。それは、MISでやるとか、主観的にとか、いろいろな調査方法で現在調査してますけれども、質的なものを地域ごとに見つけるわけではなくて、一応それは全国で1つだと。何か持ち物調査するにしても、地域で持ち物調査をしたら、多分差が出てくるかもしれないけれども、そうではなくて、全国1つで考えるのだというのは、理論的な考え方として、今後、級地制度を考えていく上でも、そこは変えないということを確認しておいたほうがいいのかなと思います。
○駒村委員 質的という意味が、いわゆる現金給付を中心にした生活保護の場合、どう評価するかだと思うのですけれども、級地をつけることによって、実質的な購買力を等しくしようという調整の方法が級地なのだろうということでは、質的に同じレベルに調整していると。ただ、調整する指数として、この差がよろしいのかとか、級地の割り当てが正しいのかというのが疑問になっているのではないかということですので、質的というのは実質購買力と見れば、お話のとおりかなと思います。
6区分、あるいは地区の割り当て幅、これは恐らく消費行動、特に流通部分の変化みたいなものを受けて、家賃も含めて、どのくらいの差があるものなのか。どう調整すれば、実質的にイコールの購買力になるのかというのを考えるという理解を私はしていましたけれども、岩永委員もそんな理解でよろしいと。
事務局、こういう理解でいいのですよね。
○猪狩社会・援護局保護課長補佐 基本的に当時の考え方というのは、地域における生活様式の差ですとか、そのようなものが消費に現れているという前提のもとで、1人当たり生活扶助相当支出を用いたということですので、この級地制度の議論をするに当たっては、何をもって地域差を考えるかということも、今の岩永先生のお話を踏まえると、検討課題の1つにもなり得るものと思っています。
事務局として、今、これをもって地域差をつけるという考えが何かあるわけではないというところです。
○駒村委員 確かに難しいところはありましたので、様式とか言われても、地域によっては、面積とか住み方も、みんな違いがあるわけですから、それが何らかの消費指数に差が出て、反映されているのだろう、この地域の生活保護はこうであるというよりは、それを何らかの消費行動に反映されているので、それで調整しようという理解だと思いますので、この地域で持つべきものとか、持たないものというような意味で積み上げるという発想ではないということだと思います。
この辺についていかがでしょうか。この辺ではなくてもいいですけれども、なかなか難しい話だと思います。
例えば流通みたいなものとかを考えていったり、サービスの提供コストみたいなものを考えると、やはり人口の動態が変わっていきますから、当然ながら、コンビニエンスストアにしろ、スーパーにしろ、そういったものは、人口減少地域では、恐らく維持できなくなってくることによって、購買力に変化が生まれてくる。もしかしたら宅急便みたいなものがあれば、それを補っているのかもしれませんけれども、そういうコストも含めて、動態的に流通ラインも変わっていくことも考えておかなくてはいけないのかなと思いますので、この辺の実態をどう把握していくのか。
一方では、市町村合併という別の動きもあったわけですので、この辺をどう把握していくのかというのが級地の制度の、昭和62年からの話ですので、大分ひずみがたまっている可能性もあるということですよね。
いかがでしょうか。これに関係なくてもいいのですので。
山田委員からはないですか。
渡辺委員からはありますか。
○渡辺委員 14ページの今後の検討課題というところで、これまでの議論をおまとめいただいたのだと思います。比較対象の設定であるとか、年齢・世帯人員・級地別の体系検証、今日議論した点でもあります基準見直しの影響把握など、いくつかの項目に分けていただいていています。特に前回検証で作業班に入っていた反省も踏まえ、体系検証が複雑化し過ぎていて、先ほどの国民の信頼と納得というところもありましたけれども、何で基準が変わったのかというところも、国民である被保護者の方も、もちろん御理解いただくのが難しい、かつケースワーカーの方でも何でこう変わっていったのかというのが分からないという声も聞きます。
精緻化すると複雑化する傾向もあるのですけれども、この辺は分かりやすい検証と説明は重要だなと、先ほどの議論も踏まえて思いました。
それから、これまでも資産要件の議論がいろいろあったわけでして、資料3の7ページにも諸外国での資産要件についてもいろいろ議論がされていたわけですけれども、最低生活費を考える上でも、繰り返しになりますけれども、やはり資産要件というのも、かなり重要な役割を果たしていて、例えば7ページの最後の○では、イギリスでの現役層と高齢者層で異なる資産要件の基準を設けているという話もあります。日本では、資産要件はこれまで余り変わってきていなかったと思いますので、その辺りも含めて、最低生活費の検証が必要かなと思いました。なので、この検討課題のところに、資産要件も入れていただけるといいかなと思いました。
○駒村委員 やはり最初のコミュニケーションの部分は、おっしゃるとおり、基準部会報告書は非常にテクニカルで、なかなか分かりにくい部分があるのかなと思います。これは部会の発表というか、サマリーの方法にもよるのかなと思いますので、そこは恐らく工夫していかなくてはいけない。
後半部分は、確かに資産を形成している世代と取り崩している世代ですから、若い世代と高齢世代で違う考え方もありかなと思う一方で、社会保障制度の組み方が違う部分もあるので、その辺を踏まえて考えていかないといけない。ただ、資産要件が果たしてフラットでいいのかというのは考えなくてはいけない。少なくとも研究はしなければいけないところだろうと思います。
他の国の社会保障制度、イギリスの社会保障制度、ドイツの社会保障制度、それぞれみんな役割分担が違いますので、その中で、生活保護のあり方というのが、その国その国で特有がありますので、その資産要件の考え方も、そういった全体の中でのバランスを見ていると思いますので、日本においてどう考えていくのか、若い世代と高齢世代をどう考えていくのかというのは、研究はしなければいけないテーマかもしれないですね。
この辺は、事務局はどうでしょうか。
○梶野社会・援護局保護課長 2点目の資産要件につきまして、必要な制度やデータを、御議論いただくときにはきちんと紹介して、御議論に資するようにしたいと思います。1点目につきましても、どうしても複雑性というか、理論的に説得性のあるもので、きめ細かく配慮していくとなると複雑になるのですけれども、行政側の説明の問題があると思いますので、なるべく分かりやすいような説明を、事務局のほうもきちんと心がけていきたいと思います。
○駒村委員 ほかはいかがでしょうか。
若干、時間には余裕がありますけれども、特によろしいですか。
そうしましたら、少し余裕があって終わりますけれども、質疑も概ね議論も出尽くしたようなので、今日の議事はこれで終わりにしたいと思います。
次回の開催について、事務局から御報告をお願いします。
○梶野社会・援護局保護課長 今までは、概ね3カ月に1回というペースでさせていただきましたけれども、次からは、今年度にやっている研究事業の報告が、いろいろたくさんまとめられてきますので、そのように定期的にというよりは、その状況も見て集中的にさせていただくとか、その辺りは少し弾力的にさせていただきたく、これから整理していきたいと思いますので、座長等と御相談をさせていただければと思います。
いずれにしましても、次回の日程は、追って御連絡させていただきます。
○駒村委員 それでは、本日の議論は以上とさせていただきます。
御多忙の中、大変ありがとうございました。お疲れさまでした。