第127回社会保障審議会医療保険部会 議事録

日時

令和2年3月26日(木)15:59~18:13

場所

全国都市会館

議題

1.医療保険制度改革について

議事

議事内容
○荻原推進官 それでは、定刻前ではございますが、委員の皆様おそろいでございますので、ただいまより第127回「医療保険部会」を開催いたします。
委員の皆様におかれましては、御多忙の折、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
本日の委員の出欠状況について申し上げます。
本日は一瀬委員、平井委員、藤原委員より、御欠席の御連絡を頂いております。
なお、会議冒頭のカメラの頭撮りは、ここまでとさせていただきます。
(カメラ退室)
○荻原推進官 それでは、以降の議事運営は、遠藤部会長にお願いいたします。
○遠藤部会長 それでは、皆様、本日もよろしくお願いいたします。
初めに、欠席委員の代わりに出席される方についてお諮りいたします。
平井委員の代理としまして谷長参考人、藤原委員の代理としまして井上参考人の御出席につき、御承認いただければと思いますが、よろしゅうございますか。
(首肯する委員あり)
○遠藤部会長 ありがとうございます。
それでは、議事に入らせていただきます。
本日は「医療保険制度改革について」を議題といたします。
具体的には、傷病手当金について、任意継続被保険者制度について、改革工程表2019における検討項目について、予防・健康づくりについての4つについて議論したいと思います。
それでは、まず、傷病手当金について、事務局から説明をお願いいたします。
○姫野課長 ありがとうございます。保険課長でございます。
資料1について御説明をいたします。
まず1ページをおめくりいただきまして、傷病手当金の概要の資料でございます。こちらは被保険者が業務外の事由による療養のため労務に服することができないときに支給されるものでございます。支給を始めた日から起算して1年6か月を超えない期間支給されることになってございまして、支給件数につきましては、協会けんぽ、健保組合、共済組合を合わせまして約190万件、支給金額にしますと約3600億円となってございます。
その疾病別の構成割合は、このグラフにありますとおりでございますが、新生物(がん)の方が約2割、精神及び行動の障害の方が約3割という状況になってございます。
また、次のページで継続給付の概要としてございますけれども、こちらの傷病手当金につきましては、資格喪失時に受けていた傷病手当金について、1年以上被保険者であった方については資格喪失後も同一の保険者から継続して受給できることになってございます。一番下の支給される期間でございますけれども、被保険者として受けることができるはずであった期間ということで、例えば資格喪失前に6か月傷病手当金を受給している場合には、残り1年分受給することができるという形になってございます。
この点につきまして、3ページでございますけれども、健康保険と共済組合で若干支給期間の考え方に違いがあるところが論点となってございます。健康保険におきましては、支給開始から起算して1年6か月を超えない期間支給する仕組みになっておりますが、一方で共済組合におきましては、支給期間を通算して1年6か月を経過した時点まで支給される仕組みとなってございます。したがいまして、その下の図にありますように、健康保険ですと例えば支給開始から1年6か月までの間に一時期経過が良好になって出勤をしたといたしましても、1年6か月が経過しますとそこで支給がストップする。その後、再度また出勤できなくなった場合にも、1年6か月を超えた後については不支給になってしまいますが、共済組合におきましては、この不支給期間というものは後ろに通算して、合計1年6か月に達するまで支給できるという形になってございます。
この点につきまして、4ページでございますけれども、働き方改革実行計画の中でもこの点について検討課題として指摘がされてございます。特に治療と仕事の両立という観点から、この傷病手当金の支給要件について検討し、必要な措置を講ずるとされておりまして、具体的な時期につきましては、次の5ページでございますけれども、こちらの工程表の中で一番下のところを赤く囲ってございますけれども、傷病手当金の検討につきましては、2021年度中に検討・措置をするという方向性が示されているところでございます。同様の論点は、がん対策推進基本計画の中にも記載をされてございます。
次に7ページでございますけれども、この点も含めまして、過去、医療保険部会における議論の整理をしてございます。まず、2014年7月に議論いたしましたときにつきましては、今の論点に加えまして、3つ目の○でございますが、資格喪失者の継続給付をどうするか、そういった点についても問題提起をいただいてございます。一方で、10月の議論の際には、2つ目の○にありますように、資格喪失者への支給も維持すべきだという御意見をいただいております。この点も2つ目の論点になろうかなと考えてございます。
参考に9ページ以降、支給金額などの推移をつけてございますけれども、9ページにございますように、平成24年度以降、協会けんぽ、健保組合、いずれも支給金額は増加傾向にございます。
また、次の10ページですが、支給件数につきましても同様に増加傾向となってございます。
11ページに疾病別の構成割合を年齢階層別にお示ししてございますけれども、精神及び行動の障害の割合につきましては、50歳未満の階級で最も割合が高いという状況になっておりまして、一方で、がんの方の割合は年齢階級が高くなるほど増加しているという状況でございます。
12ページは支給期間の分布でございますが、平均が164日、支給件数全体に占める分布でございますけれども、30日以下が23%で、90日以内まで積み上げますと48%という形になってございます。
また、13ページですけれども、先ほども継続給付の在り方を見直すべきという論点を頂いておりますが、継続給付を受けている方の状況、協会けんぽについてのみですけれども、詳細をお示ししてございます。傷病手当金の資格喪失後の継続給付を受けている方が協会けんぽの中で約2割いらっしゃいまして、その傷病別の内訳を見ますと、約半数が精神及び行動の障害ということになってございます。
また、14ページ以降は先ほどのがんの基本計画の関連もありますが、がんの生存率が向上しているということと、15ページからは治療形態も変わり、在院日数が短くなり、その一方で外来で通院で治療される方が増加していると、そういったことをお示しするグラフでございます。
16ページについても通院患者の方が増えてきているというグラフになります。
説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいま報告のあった内容について、御意見、御質問を承りたいと思います。
では、佐野委員、お願いいたします。
○佐野委員 ありがとうございます。
この傷病手当金制度というのは、そもそも労働力を回復するための生活の支えというものが趣旨だと考えております。そういう意味で、がん治療のために柔軟に利用したいという趣旨は理解できますし、今日御説明があった支給期間の取扱い、共済組合と違っている部分については共済組合を合わせるということも理解できるなと思っております。
一方で、今日の資料でもそうなのですけれども、1ページの下のグラフですけれども、やはり現状、精神及び行動の障害というのがこれで言いますと全体の約29%を占めております。また、13ページの右側のグラフですけれども、資格喪失者の継続給付の中で精神及び行動の割合が5割以上を占めているという部分がございます。さらに、今日資料はございませんけれども、協会けんぽが公表されているデータを見ますと、これまでの精神及び行動の障害については、平成7年度においては4%ぐらいにすぎなかったものが、その後、平成15年には10%、平成20年には21%、平成25年度でも26%というふうに急激に伸びてきているというのがございます。我々健保連が過去に行った調査においても、やはり精神及び行動の障害の支給件数が約3割で、支給額の6割を占めていると。さらに言いますと、資格喪失者の継続給付においては支給額の7割ぐらいを占めているという部分です。
そういう面で、今回、見直しの論点として資格喪失後の継続給付の問題、先ほども御説明がありましたけれども、及び、精神疾患等の関係の取扱いの2点をぜひとも取り上げていただきたいと思います。
資格喪失後の支給については、本来職場復帰を前提とするような傷病手当金ではなくて、これは休職の意思表示が必要となる雇用保険、こちらのほうで給付すべきではないかということで従来から主張していますし、ぜひ検討いただければと思います。
また、精神疾患については、本当に労務不能であるのかどうかという点について、判断に大変悩む事例が多うございます。そういう意味で、健保組合としても支給において相当苦慮している部分がございます。
さらに、これが資格喪失後となりますと、本当に労務不能なのかどうかということも含めて、保険者のほうで把握することが極めて困難になります。そういう面でも、実態把握もさらにした上で、この支給についての適正化を図ること、また、保険者として調査方法や判断基準についてもぜひ検討いただきたいと思っております。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
それでは、井上参考人、お願いいたします。
○井上参考人 健保組合と共済組合の支給期間の通算の在り方について統合していくという方向につきましては賛同できるかと思いますけれども、質問を2つお願いします。1つはこの1年6か月ということの意味合いはどういうものかということ。もう1つは、これは現在、共済組合のほうでは通算で1年6か月ということですけれども、企業サイドから見ますと、不支給期間がすごく長くなってしまった場合にどうやって把握していくのかという問題もおそらく出てくるのではないかと思いますので、把握する期間の長さも含め、どのような扱いになるのかについて質問をさせていただきます。
○遠藤部会長 では、まずお答えいただきます。どうぞ。
○姫野課長 御質問ありがとうございます。
まず1点目、1年6か月としていることの意味合いでございますけれども、こちらはもともと障害年金につきまして1年6か月のところで判断をしていくという仕組みになっておりまして、そういった意味で、そことのすき間がないようにということで傷病手当金については1年6か月まで出るということがもともとの制度設計の考え方であろうと考えてございます。
それから、不支給期間の長さということですけれども、不支給の期間が空いて、そうしますとどこまで不支給期間を管理していくのかという問題があるのかと思いますけれども、現に今こういった通算をしている共済組合において、特に期間の制限を設けてやっているということは聞いてございません。ただ、もしこれを見直した場合に、各健保組合の皆様にこういった給付管理をしていただくことになりますので、そこは実務的にどういう形にすべきなのかというのは一つ論点になろうかと考えてございます。
○遠藤部会長 よろしいですか。
それでは、安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 ありがとうございます。
傷病手当金についてですが、資料1の4ページに働き方改革実行計画で示されている病気の治療と仕事の両立につきましては賛同いたしますが、傷病手当金の支給要件を改正する際には、今の井上参考人からの御質問にもありましたように、不正受給防止の観点も含めて明確な支給要件が必要になってきますので、そこをはっきりとさせていただけるようご検討願いたいなと思います。
また、長年にわたり私どもから申し上げているのですが、傷病手当金における他の制度との併給調整について、傷病手当金を支給した後に障害年金や労災の休業給付が支給されることによって二重払いが発生し、協会が支給しました傷病手当金を回収する必要が出ております。この回収金の発生を防ぐために、協会としましては、年金や労災の保険者との間で保険者間調整を可能にするなどの見直しの検討をお願いしているところですが、この見直しにつきまして、他の手当等の制度との併給調整の見直しも同時に行わなければならないということがネックになっているとお聞きしております。一時的であれ、加入者に債務を負わせてしまうような仕組みにつきましては早急に解消する必要があると考えますので、計画的に併給調整ができるようご検討をお願いしたいと思っております。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
それでは、菊池代理、お願いいたします。
○菊池部会長代理 ありがとうございます。
継続給付につきましては、業務上災害と異なって退職に当たって雇用上の地位に係る法的保護がないわけですので、先ほど御発言がありましたように、雇用保険をはじめとする他の制度との交通整理というか仕分けが必要だと思うのですけれども、基本的には資格喪失後、退職後の所得保障の措置を講じるニーズ自体は高いのではないかと思います。
それから、支給期間についてですけれども、御説明の中で働き方改革実行計画の中でも支給要件等についての検討と書かれておりますが、支給期間についての検討の前提として、健保法99条4項の「同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病」の解釈、この解釈によってどこまでカバーできるかということをいま一度確認する作業が必要ではないかと思っています。再発ですね。場合によってはがん患者の増加などを含む疾病構造の変化などを踏まえた解釈の変更の余地がないのかどうかと。例えば『健康保険法の解釈と運用』ですね。コンメンタールによれば、結核の再発などが例として出てくるのですが、これはもちろん今でもあるでしょうけれども、例えば現代で言えばがんの再発の場合、どういう理解になるのかと。がんあるいは精神疾患など、病気を持ちながらも可能な限り社会経済活動を続けるというのが今の考え方になってきていると思いますので、そういった現代的な働き方を踏まえた法解釈の変更の余地、可能性、その前提として解釈がどうなっているのかというあたりをちょっと確認させていただきたいと思うところです。
その上で、支給期間については、先ほど御説明があったように、私もこれは障害年金との接続ということで1年6か月と理解しておるのですが、これもちょっと私も不勉強で調べ切っていないのですけれども、実際には1977年の改正で、従来は一般の傷病については6か月で、結核性疾病については1年6か月だったと。これが全ての症例について1年6か月にそろえたという経緯があるようなのですね。このあたりは私も調べ切れていないので申し訳ないのですが、そのあたりの経緯ですとか、その上で年金という接続という先ほどの趣旨がどれほど立法者意思として妥当するのかと。
さらに、共済組合も同じような経緯をたどってきたのかどうかといった辺りを少し確認させていただいた上で、共済にそろえるのかどうかといった議論をさせていただければなというところで、これは今回というわけではなくて次回以降、少しお考え、御準備いただけたらというお願いでございます。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
事務局、よろしいですか。そういうリクエストでありますが、何かコメントがあれば。
○姫野課長 今いただきました御指摘につきまして、確認をして、次回また御説明できるように準備したいと思います。
○遠藤部会長 よろしくお願いします。
ほかにいかがでしょうか。
横尾委員、どうぞ。
○横尾委員 ありがとうございます。
療養に関する給付金ということですけれども、1ページにありますように、「療養のために労務に服することできない場合に対する」という記述がありまして、まさに働く世代への配慮ということが第一義的なものだと思っています。私は後期高齢者医療広域連合を代表して来ていますけれども、もちろん高齢で働いている方はいらっしゃいますし、また、そこに至るまで様々な保険に入りながらやっている方にとっては大変大切なものだと思います。
特に3ページに書いてあります支給期間に関する改善、向上をしようということの意味も含めての資料表示だと思っていますが、まさにこの改善に関しましては、真に一人一人の働き方、生き方に寄り添っていく意味で重要ですし、本格的に福祉社会を日本が実現するという意味では大変重要なマイルストーンであると受け止めているところです。
「がん」のことが後段の資料でも出ていますけれども、「がん」の発生、またそれに伴う疾病が多いわけですが、これに伴いまして特に思うのは、「がんになっても怖くない」、「がん」になっても絶望しなくて済むような社会にしていくということは今後重要ですので、ぜひこういった対応がとても大切だと思っています。
ここでは、資料として協会けんぽによります「がん種別の構成割合」のデータが出ているのですけれども、可能でありましたら、例えば14ページにございます5年生存率につきましては「全がん」のみならず「がんの種類別」も出していただいたほうがいいかなと思います。一般の国民の方もこの「がん種別の構成割合」のデータを見られると思いますが、「がんの種類別」によってはかなり対症療法が明確になって、生存率が延びた方々にとっては、この資料を見ればだいたいそうだなと落ち着いて見られると思われますが、例えば「膵臓がん」等なかなか厳しい「がん」の方もいらっしゃいます。そういった患者の方にとっては、「こんな数字じゃないよと、もっともっと厳しい中、我々は頑張っているのだ」という方もいらっしゃるので、可能でしたら、ぜひそういった資料も啓発のためにも表示していただくといいかなと思っています。
もう一点、資料について思いましたのは16ページでございますが、「推移に関するデータ」、「年齢別のがん」、「精神疾患」等いろいろな疾病のことが書かれています。これを見ると、やはり若い世代、働き盛り世代でもメンタルをダウンさせないような対応や療法が非常に重要だなということが分かります。もう一つは年齢を重ねるごとに新生物、いわゆる「がん」が数値を上げて出てきているわけです。特に気になりましたのは、男性の「がん」の伸び率が55歳以上になって急激に伸びているというふうに、この表示は数ですけれども、思いました。これを考えていくと、女性よりもはるかに55歳からを境に伸びているのです。今回は直接関係ありませんが、ぜひ厚生労働省におかれましては、男性の皆さんにしっかり「がん予防」に関する啓発もしていく必要があるのではないのかなということをこのデータは教えてくれていると思いますので、ぜひお願いしたいと思っています。
併せて関連しまして、末期のケアあるいはホスピスに関してです。知人の関係者が末期ケア病棟に入られたのでお見舞いに行きました。少し前から新しい療法等もされているようでしたけれども、当初は効果があったようでしたが、途中から大きな改善がみられなくて、状況がそのまま推移していくとのようでした。するとどうなったかというと、その方の事例の場合は、特に新しい療法を施さないと治療していないという状況と似ている状況になりますので、何日までに病院から出てくれという話があって、病院からの紹介で新たにそういうホスピス系の施設に行かれているのです。けれども、ホスピス系のところも今度はある程度期間があったら移っていただきたいとか、あるいは、一回退院してまた入っていただきたいとか、そういう仕組みになっているようです。多分、病床の利用等に関する保険適用とかのいろいろなことの点数制との関係だと思うのですけれども、こういったあたりも今後、ホスピスケアのことを国としてある程度重んじていくのであるならば、何か制度的なものとか、少し長期にわたっても大丈夫な在院ができるとか、そういったことも考えていかないと、なかなか大変になるのではないかということを感じましたので、問題提起として最後のところは厚生労働省の事務方にお伝えしておきたいと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。いろいろ御提案をいただきました。本部会での議論の外側の議論もありましたけれども、適切に御対応いただければと思います。
それでは、お待たせしました。池端委員、どうぞ。
○池端委員 池端です。
まず、基本的には皆さんがおっしゃったとおり、私も3ページの支給期間についての整合性に関しては、そろえていただけたほうがよろしいのではないかと思います。ただ、本来この傷病手当金というのができたスタートの時点では、恐らく病気は治療して、そして治って、治った後また元気に働く。その治るまでの間を保障しようという考え方だと思いますけれども、今、疾病構造がかなり大きく変わりました。がんも、完治はできないけれども寛解して、抗がん剤を飲みながら就労ができる体制までいって、またそれが再発する可能性もあるという長い目で見なければいけない。がんの疾病を持ちながら就労するという方に対してどう支援していくか。
特に高齢者の方はがんが多い。それから、先ほどの表にもありましたように、鬱病を中心とした精神疾患、ますますこれはそういう意味では治療しながら就労する。その期間はかなり長期にわたります。しかも、再発もします。再発の期間といっても、完治して再発ではなくて寛解。抗鬱剤を飲みながら、就労しながら、また時々行けなくなってしまうという方がいらっしゃるので、その期間をどこに絞ろうかというのは非常に難しいということで、もちろん1年6か月をどうするかということは別にして、不支給期間があればそれを後で支給するということはぜひやっていただくことがいいと思います。
そういう意味では、疾病構造がどんどん変わっていくことに対して傷病手当金の方も少しずつ変えていかないといけないのではないか。これはそこまで言いだすと広い議論になってしまいますけれども、今回そういう意味でも支給期間をそろえるということは非常に重要だと思います。
一方で、資格喪失後どうするかという問題、これはやはり何人かの委員の方もおっしゃったように、併せた障害年金等々の他の給付制度との整合性を見ながら、どこまで資格喪失後の手当てをするかということはきちんと合わせていかなければいけないのではないかと思います。
繰り返しますけれども、疾病構造ががんにしても、精神疾患にしても、その他の慢性疾患の急性増悪という形で非常に長期間疾病を持ちながら就労するということが多くなったことに対して、柔軟な対応ができる傷病手当金に変えていただきたいと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。大体よろしゅうございますか。
ありがとうございます。それでは、本議題につきましては、これぐらいにさせていただきたいと思います。
続きまして、任意継続被保険者制度についてを議題とします。これも随分これまで御議論いただいたテーマでありますけれども、事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。
○姫野課長 ありがとうございます。資料2につきまして、御説明をいたします。
1ページおめくりいただきまして、まず2ページの部分ですが、昨年11月に当医療保険部会で御議論いただいた際の意見を整理してございます。まず1つ目の○にありますように、任継制度では制度本来の意義が失われているということで、国保への移行に伴う保険料負担の激変緩和が主な意義という実態になっているという御意見でございます。
廃止の方向で議論すべきということで、直ちに廃止することが難しいとしても、将来的な廃止を前提としつつ見直していくことが必要だという御意見をいただいてございます。
一方で、2つ目の○ですけれども、職域、地域の2本立ての現行の医療保険制度の前提であればある程度維持するべきであるという御意見ですとか、また、国保への財政負担の増大、そして4つ目の○ですけれども、60歳以上だけではなくて、実際には現役世代もかなり入っているという状況もあり、丁寧な実態把握が必要ではないかと、そんな御意見をいただいているところでございます。そういった御意見も踏まえまして、資料を少しアップデートしてございます。
まず、少し飛びますけれども、12ページをおめくりいただきまして参考資料の部分になるのですけれども、任意継続被保険者制度の概要をおさらい的に御説明したいと思います。
もう御案内のとおりですけれども、任意継続被保険者制度につきましては、退職後も選択によって引き続き最大2年間、退職前の健康保険の被保険者になることができるという仕組みでございまして、主な加入要件として、喪失前に2か月以上被保険者であったこと。そして、任意継続被保険者になった日から2年入ることができるということ。そして、保険料につきましては従前の標準報酬月額または全被保険者の平均の標準報酬月額のいずれか低い額に保険料を乗じるという形になっています。この3つの要件につきまして、それぞれ見直しが必要ではないかというような御提案も過去頂いているところでございます。
これを踏まえまして、資料戻りますけれども、3ページでございますが、任意継続被保険者の加入者数の推移でございますが、25年度から29年度にかけまして見ますと、協会けんぽ、健保組合、いずれも減少傾向にあるということでございます。
4ページでございますが、年齢構成を見てございます。こちらは協会けんぽのみのデータですが、平成25年度と平成30年度を比較いたしますと、60歳以上の方がやはり多くを占めてございますけれども、その割合が減少しているということで、逆に若年層が増えている状況が見て取れるかと思います。
次の5ページですけれども、任意継続被保険者の方の過去の勤務期間がどれぐらいあったかということですが、協会健保の場合は2年以上の方が7割程度、健保組合の場合は2年以上の方が8割程度となってございます。そして、2カ月から1年未満という勤務期間の方につきましては、協会健保で2割、健保組合で1割程度になってございます。
続きまして、6ページでございますけれども、年代別の任意継続被保険者としての加入期間をお示ししてございます。60歳未満までの若年層で見ますと、加入期間が6か月以下の方が5割以上を占めてございますけれども、60歳以上になりますと加入期間2年間ということが約5割以上ということでございます。一方で、加入年数は年々減少傾向にあるということもお示ししてございます。
7ページでございますが、資格喪失理由別に割合をお示ししてございます。右下に参照条文をつけてございますが、任意継続被保険者の資格喪失事由ということで見ますと、2年経過した、あるいは死亡した、険料を納付しなかったなどが定められておりますけれども、自主的に任意継続被保険者から外れることができない仕組みとなってございます。そういった前提で分布を見ますと、平成30年度でございますけれども、法定満了、2年間経過して資格喪失される方が34%、次いで他の健康保険の資格を取得したという方が32%、保険料未納に伴って資格喪失する方が30%となってございます。
8ページでございますが、平均標準報酬月額がどのような水準になっているかということですが、先ほど御説明しましたとおり、標準報酬の決め方といたしましては、従前の標準報酬かあるいは全被保険者の平均、どちらか低い額ということで定めてございますので、結果的に全被保険者の平均標準報酬月額より下回ってございます。約8割の水準になっているというのがこの図でございます。
9ページは、協会けんぽにおきまして、任意継続被保険者の方が退職時、従前の標準報酬がどのような水準だったかという分布を示してございます。そうしますと、協会健保の被保険者の平均が約30万でございますけれども、これを上回る方につきましては、30万が任意継続被保険者としての標準報酬になりますが、これを上回る方が約33%いらっしゃるということでございます。
最後に10ページでございますけれども、任意継続被保険者の保険料収入に占める法定給付率の割合をお示ししてございます。法定給付率につきましては、一番下の注1で書いてございますけれども、療養の給付ですとか出産育児一時金、傷病手当金などの給付でございまして、高齢者の支援金などは含まれていないものになってございます。
その比較をいたしますと、任意継続被保険者の場合は保険料収入の約2.2倍、全加入者の場合ですと0.6倍ということになりますので、給付費の割合が高くなっている状況でございます。
簡単でございますが、説明は以上になります。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
それでは、ただいまの発言について御意見等を頂きたいと思います。
それでは、藤井委員、お願いいたします。
○藤井委員 ありがとうございます。
国民健康保険の保険料算定が前年度所得に応じたものであり、退職前後に起こり得る急激な所得差を考えれば、保険料負担の急増を軽減する何らかの措置は必要だと思います。ただし、今の制度自体にも問題はあると思っており、最大2年間とされている被保険者期間は可能な限り短縮されるべきでありますし、加入要件となっている2か月以上の勤務期間は長くすべきと考えます。
一方で、今後この制度のあり方を含め、医療費全体の抑制に向けた改善策を検討していく必要はあると思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
佐野委員、どうぞ。
○佐野委員 ありがとうございます。
これまでもいろいろ申し上げてきましたように、任継制度というのは、もともとは退職から再就職までのつなぎの制度であったと認識をしています。特に退職後に加入する制度によって給付率に差があった時代、当然そのときには退職から再就職までの間の給付率の低下を防ぐという目的もあったと認識をしています。
一方で、平成15年に被用者保険と国保の間で窓口負担が原則3割ということで統一をされているわけでございまして、そういう意味でも本来の役割は失われているのではないかと思っています。
そういう面も含めて、健保連としては、従来から制度の廃止もしくは見直しということを求めているわけですけれども、廃止できないという場合、制度見直しに当たっては3点ポイントがあるだろうと思っています。先ほど出ていましたが、1点目は勤務期間ですけれども、現行2か月となっていますが、これはある意味では今、共済組合のほうは1年間となっていまして、被用者保険との差が出ていますので、こちらについては共済組合と併せて、いわゆる勤務期間については1年で統一したらいいのではないかと思っています。
2点目の任継制度の加入期間ですけれども、現行2年でございますが、これは資料の中の6ページのデータを見る限りにおいても、60歳未満のところで言いますと、青と赤を足した1年以内の層が8割程度を占めております。そういう面でも、再就職までのつなぎということを考えた場合には、この加入期間は現行の2年から1年に短縮することでいいのではないかと考えております。
また、保険料の取り方、退職時の標準報酬月額をもとに設定すると。今は退職時の標準報酬月額又は全被保険者の平均の標準報酬月額のうち低いほうということになっていますけれども、退職時の標準報酬月額をもとに設定するとすれば、国保に移った場合の保険料の激変緩和ということにもなるのではないかと考えております。
以上でございます。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
お待たせしました。石上委員、どうぞ。
○石上委員 資料2の4ページの図表を見ると、以前にも申し上げたと思いますが、任意継続被保険者制度の利用者が20歳代から50歳代の世代も近年は増えてきているので、いろいろな理由で雇用を継続できないで離職をした人が多くなっているのだと思います。先ほども議論がありましたけれども、精神疾患や、現状でも問題になっていますが、いろいろな理由で解雇や雇い止めでやむなく離職に至った人たちに切れ目のない医療アクセスを保障するセーフティーネットは非常に重要だと思っています。
加入要件の問題等、様々課題はあると思いますけれども、そういった議論の際には、やはり有期労働者や派遣労働者など、比較的立場の弱い人たちにしわ寄せが回るような見直しは回避すべきだと思いますし、もう一つは、頻繁に被保険者が保険を出入りすることで、市町村の事務コストの問題なども発生するのではないかと考えております。そういったこと全体を含めて慎重な議論が必要だと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
それでは、横尾委員、どうぞ。
○横尾委員 ありがとうございます。
1ページと6ページにありますように、任意継続に関しては医療アクセスを担保するという意味では安心の柱の一つだろうと受け止めていますし、また、1ページの記述がありますように、激変緩和というのは大きな実態の状況ということにあるようにそうだと思います。ただ、今、複数の委員がおっしゃったように、特に象徴的だと思ったのは6ページでございまして、若い方が利用されるケースの場合はどちらかというと半年以内ですので、職を変わる、いろいろな事情があるでしょうけれども、それが大きいのかなと思います。
60歳以上を見てみますと、むしろ2年以上でございますので、定年という形のほうが一つの刻みとしてあるのかなと考えられるところです。
そこで、例えば60歳以上に関しましては、これは税務当局との連携が必要になるかもしれませんが、「このままいきますとあなたの来年の保険料、任意継続を使わなければ高いままです」ということが分かっているならば、例えば予定納税制度が別途ありますけれども、そういった形で防衛と言うと大げさなのですけれども、激変を事前に何とかできるような方法とかも考えられないのかなと思ったりもしたところです。そのことによって急激な税負担で大変ということも少しは緩和できるのかなと感じたりします。
またこれは具体的にあった例ですけれども、後期高齢者の場合にどんなことが起こっているかといいますと、年度の途中で親の世代からの家屋や不動産を引き継いだ場合とか、あるいは退職後もそういったものを経営されていたときに土地の動きとかで売買等があって急に年間の所得が上がる方がおられます。そうすると、そのような場合に割と多いのが、その年度か次の年度の税額確定のときに問い合わせの電話がありますし、中には納得できないという意見を言う方もおられます。これはまさに激変のことなのです。
これらについても、実はそういう売買等があって収入が急に増えた場合、特に高齢者の場合ですけれども、予定納税ということも考えられますよということで、大きな収入があった際にある程度負担をしておけば、負担感は若干でも緩和できるのではないかと思います。そういうことですので、このことについても厚生労働省のほうで何かいい方法を今後検討いただいたらいいかなと思います。
なお、予定納税と仮に私は言っていますけれども、この仕組みについてはまさに税務当局との連携も必要になりますので、ぜひそういったことも検討すべきではないかなと感じているところです。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでございましょうか。
安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 ありがとうございます。
繰り返しになってしまうのですが、健康保険の任意継続被保険者制度につきましては、もう既に制度本来の意義が失われており、現在は国保への移行に伴う保険料負担の激変緩和が、その実質的な意義となっているということで、本来制度の意義が失われた以上、廃止の方向で議論するということが自然な流れではあると思いますが、さまざまな就労形態の方がいらっしゃいますので、直ちに廃止することは難しいようにも思いますので、将来的な廃止を前提としつつ、見直しを進めていただきたいと思います。
なお、協会けんぽでは船員保険がございまして、一定期間休みなく海上で就労し、一定期間失業するというサイクルを繰り返している方がいらっしゃいます。この方たちの場合ですと、健康保険の加入者とは仕事の性質が非常に異なっております。また、船員の方たちと同じような働き方をする方もいらっしゃるので、留意が必要と考えております。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
ほかにいかがでしょうか。
前葉委員、どうぞ。
○前葉委員 ありがとうございます。
これは受けとめる側の国保としては、実質的な意義とされている激変緩和ということについてどう考えていただくかということがあるのですが、13ページをお開き願いますと大正15年からある制度で、今議論になっている1年から2年に延長されたのが昭和51年ということでございますので、非常に歴史のある制度であります。昭和51年当時と今と、平成を飛び越えて令和の時代に何らかの改正をしようとするならば、これはやはり単純に廃止だとか、単純に維持だとかいうような形ではなく、今の働き方だとかあるいは高齢者の方の状況だとかということを踏まえた令和時代の新しい仕組みにしていかなければいけないのではないかということを考えます。
例えば、今ほども大分議論になっている転職ということがかなり、ずっと終身雇用ではなくなってきている中で増えている中で、このつなぎの部分をどうするかということは、当然どれぐらいの長さにするかということは考慮しなければいけないと思いますし、一方で、この60歳以降の方々がさらに定年延長という話もありますが、再任用、再雇用という形でお勤めになっているときに保険がどうなっているのかということを丁寧に、いわばティピカルな典型的なケースを調べて、そして、この任意継続という制度をどうカバーしていくかというようなところをしっかりと押さえていくことが必要であろうかと思います。
昭和51年の仕組みを何としても維持しなければいけないということを主張するのは、私どもの立場からもちょっと難しいかなと思っておりますが、しかし、今の働き方なり今の実際の勤務、雇用の体系ということに併せた保険制度をつくり上げるべきではないかと思っております。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
それでは、菊池部会長代理、お願いいたします。
○菊池部会長代理 1点なのですが、存続を前提とした上での話ですけれども、これは社会保険の仕組みであるという原理原則的な話になってしまいますが、医療保険が基本的には保険者内部での連帯の仕組みであるということを前提とした場合に、平均標準報酬月額を上回る方が任意継続になった場合に、その元の保険者の連帯の仕組みの中に残るという前提としては、やはりその方の従前の標準報酬月額を基準に保険料を算定することが従前の保険者内の保険を支えている被保険者の皆さんとの連帯の輪の中に残る前提としては、公平感とかいった意味からすると、従前の報酬月額にそろえることが適切ではないかという感じがいたしております。
その意味で、先ほど御質問がございましたが、51年改正でいずれか低い額という改正がなされたようなのですが、直感的にはこのあたりで等級が広がってきて、かなり高い人が出てくるようになったので、そういう兼ね合いかなと思ったりもするのですが、ここの辺り、なぜこうなったのかという辺りは、分かるのでしたらお調べいただくとありがたいと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
事務局、コメントありますか。
○姫野課長 今御指摘いただいた点については、今すぐはお答えできないので、また確認して御説明したいと思います。
○遠藤部会長 よろしくお願いします。
ほかにいかがでございましょうか。大体よろしゅうございますか。
ありがとうございます。それでは、本件についてはこれぐらいにさせていただきたいと思います。
続きまして、改革工程表2019における検討項目についてを議題としたいと思います。
事務局から関連の資料の説明をお願いいたします。
○荻原推進官 それでは、資料3を御覧いただきたいと思います。今回、資料3には3つ検討項目を入れさせていただいております。1つ目が金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担の在り方について、2つ目が医療費について保険給付率と患者負担率のバランス等の定期的に見える化等について、3つ目が今後の医薬品等の費用対効果評価の活用についてということでございます。順に御説明させていただきたいと思います。
まず最初に1ページ目以降ですが、金融資産等の保有状況を考慮に入れた負担の在り方についてでございますけれども、2ページに改革工程表の記載について書かれてございまして、高齢者医療制度や介護制度において所得のみならず資産の保有状況を適切に評価しつつ、能力に応じた負担を求めることを検討するとされてございます。
その下、3ページでございますが、後期高齢者世帯の貯蓄の状況についてでございます。平均貯蓄額につきましては約1100万円となっておりますが、分布におきましては、貯蓄がない方が15%強、一方、3000万円以上の貯蓄がある方が10%弱ということで、両方、ない方と高額貯蓄の方の割合が比較的高いのかなとなってございます。
その次、4ページでございますが、こちらについてはそれぞれの年齢階級別の貯蓄と負債の額についてお示ししてございます。40歳未満の世帯につきましては、貯蓄に関しては平均で600万未満という形になっています。一方、60歳以上の世帯については平均で2000万円以上という形になってございます。一方、負債については40歳未満が最も多く、1200万円以上ございまして、徐々に減ってまいりまして、年齢階級が高くなるにつれて少なくなってきているということでございます。
その下、5ページでございますが、医療保険と介護保険におきます食事・居住に関する給付の比較について資料を載せてございます。医療保険におきましては、病院等における食事と居住のサービスに関しましては、入院患者の病状に応じまして、医学的管理の下に保障する必要がございますということで、保険給付の対象としつつ、在宅でもかかる費用として食費、療養病床に関しては居住費について自己負担という形にしてございます。
介護保険に関しましては、基本的には在宅との公平性の観点から、施設におけます食事・居住のサービスについては保険給付の対象外、原則として自己負担としつつ、福祉的な観点から低所得者に対しての補足給付を支給しているということで、そこに違いがございます。
おめくりいただきました6ページ、7ページに介護保険部会のほうに提出された介護保険におけます補足給付の概要について載せてございます。こちらを御覧いただきますと、平成17年の介護保険法改正によりまして、基本的に原則、先ほど申し上げたように保険給付の対象外とした上で、低所得者の方を対象とした補足給付が導入されてございます。その後、平成26年、介護保険法改正におきまして、3点ほど見直しがなされております。基本的に3つありますが、上の2つが平成27年8月に施行されてございまして、その一つが一定額を超えた預貯金等を持っておられる方、具体的に申し上げると単身で1000万円超、夫婦世帯で2000万円超の預貯金等がある方については、所得が低い方であっても対象外とするというふうに改正されてございます。
2点目につきましては、配偶者の方の所得については世帯分離後も勘案するということにしまして、配偶者の方が課税されている場合には対象外とするということになってございます。
3点目については、非課税年金である遺族年金ですとか障害年金も、所得の判定に当たりまして緩和をしていくというのが平成28年8月から改正されてございまして、下の7ページを御覧いただきますと、支給要件の変更に伴いまして、まず平成27年8月に、それぞれの推移を見ていただきますと、支給件数自体が大きく下がってございます。ただし、配偶者を勘案することにしたものによるのか、預貯金を勘案することにしたものによるのか、その影響の度合いについては不明となってございます。
また、もう一点、平成28年8月から非課税年金を所得の際に勘案する変更につきましては、これによりまして第2段階の方が大きく件数が下がりまして、一方で、補足給付を受ける方の中では比較的所得の高い第3段階の件数が上がっているという状況でございます。
続きまして、8ページでございますが、預貯金へのマイナンバーの付番についてでございます。社会保障制度の所得・資産要件を適正に執行する観点ですとか、適正・公平な税務執行の観点等から、金融機関の預貯金区座につきまして、マイナンバーとひもづけて金融機関に対する資力調査ですとか税務調査の際にマイナンバーを利用して照会できるという仕組みになってございます。
そういった仕組みが導入されてございまして、それも踏まえながら、これまでも医療保険部会におきまして、その保有状況を考慮に入れた負担の在り方について御議論いただいてございます。
主な御意見を御紹介しますと、9ページでございますが、実務的な課題ということで幾つか御指摘を頂いております。まず1点目としては、負担能力に応じた負担を求めるという観点から、将来的にはマイナンバーを活用した金融資産等を勘案する仕組みを考えるべきではないかという御意見があります。
その次としては、被用者保険の保険者のほうが金融資産を把握するというのは介護保険と比較しても現実的ではないのではないかという御意見がございました。
3つ目といたしましては、現状、金融資産を正確に把握する仕組みはなく、自己申告ベースであるということを考えると、時期尚早ではないかという御意見もありました。
制度的な課題についてということで、先ほど医療保険と介護保険におけます給付の違いを申し上げましたが、介護保険のほうでは、低所得者への補足給付が福祉的・経過的な性格を有することに鑑みて資産勘案を行っている。その一方で、医療保険においては、そもそも性格が異なるのではないかという御意見がございました。
3つ目、財政効果に関する課題として、事務負担の増加に比べて財政効果はあまり見込めないのではないかといった御意見も頂戴しつつ、引き続きこちらについては検討課題という形になってございます。
10ページにもその後の部会での、今申し上げた内容とほぼ同じでございますが、御意見が挙がってございます。
続きまして、11ページ以降、医療費についての保険給付率と患者負担率のバランス等の定期的に見える化等についてということで、12ページの工程表でございますが、改革に関する国民的理解を形成する観点から、保険給付率と患者負担率のバランスなどを定期的に見える化しつつ、診療報酬とともに保険料、公費負担、患者負担について総合的な対応を検討するということでなってございます。
13ページ、14ページに医療費の動向と医療費の伸び率の要因の分解について、資料として載せてございます。
その下、15ページでございますが、実効給付率の推移について載せてございます。これは各制度と医療保険制度全体の計でございますが、中ほどの緑のグラフが制度全体の計でございまして、るる制度改正をしていく中で実効給付率についてもそれぞれ変化が見られまして、今のところは平成12年、2000年とあまり変わらない給付率になっているということでございます。
その次の16ページに、これまでの診療報酬改定ですとか保険料・患者負担について、るる見直しを行ってまいりました。そちらについて主なものを記載しております。
以下、参考資料ですので、そちらのほうは省略させていただきます。
続きまして、3点目ですが、資料の25ページ以降でございます。今後の医薬品等の費用対効果評価の活用についてでございます。
26ページに改革工程表の記載がございまして、新規の医薬品や医療技術の保険収載などに際して費用対効果や財政影響などの経済性評価や保険外併用療養の活用などを検討するということになってございます。
27ページに費用対効果評価の活用に関するこれまで医療保険部会及び中医協のほうで御議論いただいておりまして、そこでの主な御意見を載せてございます。医療保険部会におきまして、そもそも費用対効果評価を保険収載の際に勘案するかどうかというのは、あくまで中医協での議論を尊重すべきであるといった御意見。そして、有効性、安全性がきちんと確認された医療、医薬品で必要かつ適切なものが保険適用されるということは、医療の質向上に結びつくものなので、それを予算の制約ですとか経済財政により保険適用外にするのはいかがなものか。そういった御意見もございました。
さらに、安全性、有効性が確認された医薬品は速やかに保険収載するという基本原則は維持すべきであるという御意見。また、その下ですが、費用対効果の本格導入の議論を進めるとともに、高額薬剤など新たな課題が出たときに中医協で議論をした上で、薬価制度の中で緊急かつ個別の対応を図るべきといったような御意見もありました。
その下が中医協での主な御意見でございますが、やはり国民皆保険のもとで有効性、安全性が確認された医療であって必要かつ適切なものは保険適用するということを基本的に対応している。その基本原則を変えるのは国民の理解を得られるかどうかというのが大きな課題ではないかといったことでございます。また、評価に相応の期間を要すると想定されることから、ドラッグ・ラグ、デバイス・ラグが生じる可能性も考えると、保険償還そのものの可否の判断に用いることは実効性に乏しいのではないか。そういった御意見がこれまでの御議論いただいた中では挙がっていると理解しております。
28ページでございますが、費用対効果評価制度の概要について記載をしてございます。中医協での議論を踏まえまして、制度そのものは昨年4月から運用を開始してございます。基本的には市場規模が大きいものですとか、あとは著しく単価が高い医薬品、医療機器について評価の対象とするということになってございます。ただし、治療方法が十分に存在しない希少疾患ですとか、小児のみに用いられるような品目は対象外ということにしてございます。保険償還の可否の判断に用いるのではなくて、評価結果は一旦保険収載をした上で、その上で価格調整に用いることとしてございます。
29ページにも、実際に制度導入の際の今後の検討についてということでまとめられてございまして、これまでの検討を踏まえて4つ目の段落になりますが、効率的かつ透明性の高い仕組みとしていくために、諸外国における取組も参考にしながら、選定基準の拡充、分析プロセス、総合的評価、価格調整方法及び保険収載時の活用の在り方などについて検討していくということとなってございます。
30ページですが、こちらについては制度としての対象品目、6品目ほど対象となっているということでして、31ページに実際の評価制度の体制と人材育成のイメージということになってございます。それぞれ役割は分担されてございまして、制度企画・立案・執行・管理をする機関、それが厚生労働省という形になりますが、中ほどに調査・研究・分析・人材育成機関として、現行、国立保健医療科学院のほうで6名の体制で担っている。人材育成及び公的分析に関しては、研究機関、大学のほうに一部そういった実施機能を担っていただいて、実際に取組を進めているという状況かと思っています。
32ページに各国におけますそれぞれの費用対効果評価の活用状況について一覧として載せてございます。財源として、税方式であるのか社会保険方式であるのか、また、人員の実際の体制ですとか評価結果の活用方法、償還可否の決定及び価格交渉に用いる、もしくは価格交渉に用いる、それぞれの各国における制度の概要について一覧で記載させていただいてございます。
その上で、33ページでございますが、現状といたしましては、先ほど申し上げたように、昨年4月から中医協での議論を踏まえまして、費用対効果評価制度運用開始となってございます。その評価の結果については、保険償還の可否の判断に用いるのではなく、一旦保険収載した上で価格の調整に用いることとしてございます。その上で、今後実施状況を踏まえて、組織体制の強化ですとか課題を整理した上で、活用方法についての検討を継続していくこととされてございます。
実際に人材の育成に当たりましては、本年4月より人材育成プログラムが開始予定となってございます。一方で、諸外国と比較をして、その評価における体制の規模ですとか人材については、いまだ不十分であるという課題がございます。現在、評価の対象品目としては6品目が選定され、分析を実施している状況でございまして、論点として、そういった今後の保険収載時の活用なども含めた実施範囲、規模の拡大について、現状の人材育成の状況ですとか諸外国における取組を参考にしつつ、これまでと同様に中医協のほうで引き続き検討していくこととしてはどうかという形でしております。
すみません。説明を一気にしてしまいましたが、以上でございます。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
工程表の中の事柄3つなので、それぞれが全く関係ないわけなので、これは一つずつやっていったほうがよさそうな気がしますから、まず、これまで議論されてきました金融資産の扱い、これも随分当部会で議論してきましたけれども、何かあればお聞きしたいと思います。
○佐野委員 ありがとうございます。
やはり年齢ではなく負担能力に応じた負担を考えていくためには、課税所得だけではなくて、新たに金融資産、非課税年金、この評価も含めた所得区分の設定を検討する必要があるのではないかと思っております。
また、後期高齢者の患者負担割合を検討していくに当たっても、やはりこういった要素も考えていく必要があるのではないかと思っております。
一方で、金融資産の保有状況を考慮するためには当然ながらマイナンバー等を含めてインフラ整備も進めるべきだと思うのですけれども、その中でこの資料で言いますと8ページです。ここに「預貯金口座への付番について」というのが出ているのですけれども、この表を見ても、実際、タイムスケジュールがよく分からない。いつどういうふうになるのか見えない部分がありますので、今後この施策がどのようなスケジュールになっているのか、そこは明確にしていただきたいなと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
横尾委員、どうぞ。
○横尾委員 ありがとうございます。
3ページでございますが、後期高齢者の方々の貯蓄状況のデータがグラフで出ています。現在のところでいいのですけれども、どこにどのように課すことになるのか。例えば基準のラインとか、ここから先は課税をするとか、そういう議論はされているのかどうか、まず教えてください。
○遠藤部会長 事務局、いかがでしょうか。
○込山課長 恐れ入ります。高齢者医療課長でございます。
結論においては、そういった具体的な検討はまだ行われておりません。というのは、もともと部会での御議論でも、やはり先ほど佐野委員からも御指摘あったように、この資産把握のいわゆるインフラ整備がまず必要であって、そういったことの取組状況を踏まえての検討ということになるかと思います。
その先の話として、どういう資産水準の方にどうするのかということについては、恐縮ですが、具体的な検討は進んでおりません。
○横尾委員 では、それを踏まえての意見ということですけれども、まず3ページを見ると、例えば私が後期高齢者の当人であればどう感じるかというと、平均貯蓄額1000万ぐらいと出ているのですが、このグラフを見ると決して多くの人数は平均貯蓄額1000万円に行っていないのです。ですから、きっと驚かれる方が結構いらっしゃるのではないかという印象を持ちました。
実は福祉国家としての施策を本格的に行っている北欧とかベネルクス三国とかを見ていくと、もちろん税負担が高いという前提はあるのですけれども、誕生から天寿を全うされるまで、ほぼ医療についてはみんなの負担で分かち合って支え合っていますので、医療にも福祉にも、さらに教育を無償で享受できる、つまり新たな負担感がない状況だと認識をしているところです。つまり、いわゆる「老後の貯金」があまり必要ないのです。ところが、日本は、かつて「金さん・銀さん」のニュースで出たように、100歳になってもお祝い金をもらわれたら「老後のために貯金します」とおっしゃったのですが、医療のための費用負担がそれだけ必要な状況が続くというのが日本の実情であり、そう大きく変わっていないと思うのです。
それを想定しながら、日本の場合は、ここに示されているデータの貯蓄状況を見ても分かるように、多くの方々は夫婦でやりくりしながら、家族も賄いながら、汗水垂らして努力をして、そして、何とか貯金もしながら万が一のときのために蓄えていらっしゃる方もいらっしゃると思うのです。こういう、ある意味で実直に、地道に努力しながら生活されている方々まで負担が行くという話になると、どんな反応が予測されるかというと、「人生100年時代だけれども、年を取るほど希望は減っていくのだな」というふうになってしまって、気持ちも経済もシュリンクしそうで気になるところです。
もちろん、佐野委員もおっしゃったように、私自身もみんなで支える、負担能力のある方はそれに応じて負担するというのは大前提だと思うのです。
ではありますが、ここら辺は慎重に、よりよく議論していかないと非常に課題ではないかな、大切なところかなというふうに改めて思うところです。
おそらく今回のテーマで出た貯蓄等の金融資産等についての保有状況、それに課することもあるよということになると、多くの方々は、そのデータについて、そこには何が出ているの、実態はどう把握されているの、そして、自分はそこのどこに入るのということを強い関心を持って御覧になると思うのです。ですから、ぜひここら辺はしっかり議論をする必要があると思っているところです。反対という意味ではありません。より適切な必要があると思っています。
そして、その先に考えられるのは、これは以前から申し上げていますけれども、簡単にはシフトできないと思うのです。誕生から天寿全うのときまでみんなで支える社会保障制度を本格的に可能なものとしていくにはどうしたらいいのか。こういうことは、現状とこれまでの考え方にとらわれず、いきなり表に出すとマスコミがいっぱい騒いで変な議論になってしまうのでと言うと失礼ですけれども、誤解のない議論をするためにも、ぜひ事務当局や有識者の方でしっかり、こういったことも議論していただきたいと思っているところです。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでございましょうか。
井上参考人、どうぞ。
○井上参考人 医療保険制度への国民の信頼性を維持していくためにも、やはり公平な制度にしていくことは非常に重要だと思います。その面で、やはり現役世代から見ると、どうも今、負担が現役世代に偏ってしまっているのではないかという思いが非常に強い状況ではないかと思います。1,800兆円ある金融資産の半分以上は60歳以上の高齢者が保有していますし、資料3の4ページにもありましたとおり、さらに現役世代は負債も抱えています。ネットの資産でみると高齢者と現役世代にもっと差が開いてしまう状況もありますので、少なくともこういうアンバランスを解消していくという方向性をしっかり出すことも重要だと思います。当然のことながら、預貯金口座にマイナンバーを付番していくといった基盤整備が非常に重要ですが、ただ、方向性だけでも早く議論を始めるということが制度に対する信頼性を高める上でも重要ではないかと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
ほかに。安藤委員、それから石上委員の順番でお願いします。
○安藤委員 金融資産を把握するだけで本当にいいのかというところがあると思います。やはり、公平性を担保するためには、金融資産だけをここで考慮するようにすると、金等を買いに行ったりという方たちが少なからず出てくるのかなと思います。こういう制度を検討するのであれば、不動産も含めて、実物の資産をしっかりと把握できるような仕組みを作った上で、適用するという仕組みを作ってからでないと難しいのかなと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
石上委員、どうぞ。
○石上委員 ありがとうございます。
今、安藤委員からもあったのですけれども、金融資産のみを考慮することの妥当性がやはり問われると思います。マイナンバー制度で番号を振ることにもかなり、やはり限界があるのではないかと私は思っておりまして、海外の資産も含めて番号を振れない資産もあると思います。なかなかこういったことで本当に公平性、納得性が担保されるのかと思っておりますので、金融資産等の保有状況を考慮した負担のあり方についてはやはり慎重な対応が必要だと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
ほかにございますか。
兼子委員、どうぞ。
○兼子委員 先ほども御指摘がありましたけれども、平均貯蓄額ですが、これについてはやはりもう少しきちんとした分析なり評価をしないと、多分この3ページのグラフからいけば、3000万円以上の人のところが大きく平均を引き上げている。それから、財務省が去年、老後の資金でいろいろごたごたがありましたけれども、ああいったものを念頭に置くと、1000万以下の人たちがほぼ60%を占めている貯蓄額を見ても、負担の問題に踏み込むというのはかなり問題があるのではないかと思います。私自身感じるのは、前々から言っていることになりますが、やはり保険制度というのは公的な保険制度ですので、本人が保険料を払う。それから、公的に負担する。事業主が負担する。それから、本人が払えないものについては救済をする。こういった形で応能負担の考え方がきちんと組まれていかないと、窓口負担のところで細かく収入等を見ていくというのは、ある意味では応益負担のほうにかなり踏み込んでいって、医療保険の在り方が少し変わっていくのではないかという、私はそういう疑問を持っていますので、この点については慎重な形で対応していただきたいと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
ほかに何かありますか。これまでも大分議論はしてまいりました。
課題としては基本的に2つあるように思います。一つは正確な資産の捕捉をどうするのか、どこまで公平性を保ってできるかという議論があったのと、もう一つは、金融資産の勘案は医療保険のどの部分に対してなのか分かりませんけれども、医療保険に導入することに対する理屈づけというか、合理性に関する議論が必要なわけですね。介護保険のほうは、ある意味、福祉のロジックで説明がついたわけです。もともと自己負担の部分を低所得者に対しては補填をする。そのときに資産まで勘案する。これは福祉の世界でやっていたものだから、そういう流れで整理できたわけですけれども、医療保険の保険料とか保険給付にフローだけでなくストックを勘案するということは、どういう論理立てを行うのか。いろいろ意見が分かれるかなと思いますので、今後、この辺は議論させていただきたいと思います。
それでは、次の課題ですが、医療費について保険給付率と患者負担率のバランス等の定期的に見える化等についてと、ちょっとどういう議論をしていいのかよく分からないところもありますし、事務局原案も出ていないのですけれども、何かコメントございますか。
○堀委員 事務局に質問するのはちょっと酷なのかもしれないのですが、というか、私たち審議会の委員自身も考えるべき問題なのかと思うのですけれども、改革工程表に書いてある「支え手の中核を担う勤労世代が減少しその負担能力が低下する中で、改革に関する国民的理解を形成する観点から必要な見える化」と言ったときに、今回、資料として挙げられているデータで「見える化」につながりますでしょうか。これまでも医療保険部会の参考資料で何度も出てきているものだと思いますが、恐らくこれを何度見たとしても国民的理解は深まらないのではないかと正直思うのですね。むしろここで議論すべきは、財政構造移転もあり複雑でわかりにくいデータをわかりやすく「見える化」するにはどうすれば良いか、どういうデータをどのように見せれば、給付と負担のあり方について国民的な納得を得られるのか。将来的に、負担が仮に増えるとしても、こういうものに使われるから負担するのだという場合は負担増にも納得するでしょうし、そうでないならばそっぽを向かれてしまうと思います。例えば個人レベルで、あなたが支払う保険料の中の幾らくらいはこういうものに使われてというように、「あなたベース」というか、個人ベースで理解できるようにしたほうがいいのかもしれませんし、あるいはそうではなくて、ここに「診療報酬とともに保険料・公費負担、患者負担」と書いてありますように、例えば診療報酬改定で何%アップといったときに、それは医療従事者の収入にどのようにつながるのか、質の向上につながるのかを見せることもできるでしょうし、同時にその分、医療費の負担、患者の負担などが増えるということを見せることもできるかもしれません。つまり、片方から見ると、患者の負担が増えるけれども、それは、もう片方から見ると、医療の質を高めるのだというふうに思えば、診療報酬の改定により、仮に結果として医療費の負担が増えたとしても理解できるでしょう。逆も然りです。何が言いたいかというと、これからの「社会保障の持続可能性」を維持するためには、専門家ばかり、玄人ばかりだけではなくて、利害や立場を超えて国民が理解できるように、それこそ連帯を維持するためにはどういう「見える化」が必要なのかということこそ議論した上で、資料を提示する必要があるかと。別のワーキングとかで検討すべきかもしれませんが、こういう参考資料を幾ら見ても、多分国民の理解は深まらないまま、ずっと進むのではないかなと思います。
以上です。
○遠藤部会長 多分これはこの部会で議論するということで、既にある資料についてはこんなものがあるけれども、この趣旨からすると不足部分があるので御意見をいただきたいと、こういう意味で作られた資料だと思います。
それでは、横尾委員、どうぞ。
○横尾委員 ありがとうございます。
全く個人的な感想とコメントで申し上げたいと思いますが、これは先々負担できる世代が減ってくるので、場合によったら個々の負担率を上げるようになりうるよと、そのようなときにちゃんと広く理解してもらうためには、社会保障制度に関する負担の状況をよく説明しなければなりません。そういったことの伏線かなという読み方もできると思っています。
一方では、そのことに関して、どのような理解を得るかというのが今の委員の御指摘と思います。そこで1つの方法は、中学、高校、大学の受験科目の中とか、履修科目の内容の中に、保険の制度をしっかり教えるべきだと思います。「みんなが制度を支えてこうできているのだ」ということをまず理解していただく。そして、特殊事例もしっかり教えたほうがいいと思います。なぜならば、そうしないと、自分が払った分を取り戻せないという発想だけになってしまうと、かなりの方は損得のみの推量でネガティブに受け取りかねないと思います。では、特殊事例は何かというと、「あなたが難病になったとき」ということです。自分の経済負担では到底賄えない、今の最先端の技術による医療を、今のあなたの医療費負担のコストでは到底受けられない医療を、ひょっとしたらあなたは先進医療として受けることができて、そのことによってちゃんと日常に戻ることができる。では、それを個人で負担しているの。いや、そうじゃない、みんなが支えている保険制度があり、全ての保険者が連携しながら、この国としてはこういう制度をしているのだということをしっかり教えたほうがいいと思うのです。
そういう理解ができる形で、二十歳になり、社会人になり、勤労していけば、医療保険制度のことを、大きな制度を分かっていきますので、自分自身や家族のことを思って、「応分の負担をしようかな」となると思います。
なぜこのことを申し上げるかというと、以前にも引用していたと思うのですが、これはベルギーとかオランダの方と話して分かったのですけれども、「僕らは全然ハッピーだよ」と言うのですね。所得税が高い、消費税が高い、のにです。そこで「どうしてそうなのですか」と尋ねたら、先ほど言ったように、「生涯を通じて公的サービスへのアクセスがいつも保障されているから」というのです。
そして、「ただし条件がある」と言われます。続けて「我々が負担している税金を誰々のためだけに使うなら反対だ」と言われます。「でも、みんなのために正しく公平に使うなら、負担が上がってもいいという認識をかなりの人たちが私たちの国では持っていますよ」という話でした。
いきなりそこのレベルまで行かないにしても、これは本当に重要な示唆だと思いましたので、ぜひこういったことを考えていただければと思います。
取り急ぎやれることなら、やはり学習指導要領の中か、受験科目の点数の中に入れれば、否が応でも受験生は勉強しますので、嫌でも覚えて二十歳になりますから、ぜひそういったことも文部科学省と連携していただいたらいいのではないかなと思います。全く個人的な意見です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
それでは、藤井委員、どうぞ。
○藤井委員 今の話と関連するのですが、全国に法人会というのがありまして、私は神田法人会の副会長なのですが、全国で小学生を相手に租税教育セミナーをやっておりまして、私も何回か講師をやってみると、皆さん大変熱心に聞いていただいて、こっちがどきっとするような質問も来るのですね。最近、学校のほうからも要望が来まして、そこで医療費はどうなっているか、保険はどうなっているかというのも教えてほしいという要望も来ておりますので、そういった組織も使って、小学生に分かっていただくという努力も今後できるのではないかなと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
松原委員、どうぞ。
○松原委員 安全性、有効性が確認された医薬品は速やかに保険収載をすると、これが大前提で、皆さんが納得してこの保険を維持しているわけです。ただ、余りにも高いようなもの、例えば遺伝子治療、今回もございましたが、それについては皆さんで十分議論しまして、幾らにするかということを中医協で議論しているわけですし、抗体製剤も、もし高くてもそれが効いて命が長らえるという方がいらっしゃるのであれば、やはり一旦は保険に入れた上で、その後の、どこにその高い値段の問題があるのかを検討してから下げているというのが中医協の仕事であります。やはりこれは大前提は崩すべきでなく、金額については中医協にお任せして計算していただき、下げていただくようにするのが本来の国民皆保険制度を持っている我が国のあるべき姿だと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
池端委員、どうぞ。
○池端委員 今、横尾委員がおっしゃったことに私は全く賛成です。やはりここはいずれ最終的に国民との議論ということになるので、国民がある程度理解をして、上っ面ではなくて本当に中身を理解して、問題点を理解していただかないといけない。まさにそのとおりだと思います。それはもちろん時間が少しかかるかもしれませんけれども、私は、それよりもさらにもっと早くやらなければいけないのは、少なくとも医療を提供する医学部、医学生に対する保険制度に関する教育がまだまだ十分とは言えないと思うのです。私自身も臨床教授として大学で3コマ持っていますけれども、まだまだ理解がされていないので、少なくとも医療提供者側の医師になった時点で、臨床をやる初めに制度をしっかり理解して、自分たちはその保険制度の上で臨床を提供しているということを理解した上で提供することによって、もう少し精緻な議論ができると思いますし、国民との向かい合いもできると思うので、ここは本当に今すぐでもやっていただきたいと前から感じていたので、横尾委員の意見をお聞きしましたので、私も賛同して追加させていただきました。ありがとうございます。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 ありがとうございます。
私も横尾委員の御意見に賛同いたします。当然、保険制度だけではなくて、健康に関する教育というものを小さい頃から大人になるまでの全ての段階において、やるべきであると思っています。そして、健康づくりや食べるものについても、そのような教育をしていくべきであると思っております。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
大変重要な御指摘をされておりますが、一方で、改革工程表に書いてあることをそのまま読みますと、もう少し技術的なことの要求のようにも思えます。言ってみれば保険給付と自己負担とのバランスがどうなっているのか。保険給付の中でも保険料と公費がどうなっているのかということが今はよく分からないので、もっと見える化してほしいので、どういうデータをつくるべきかという要請のように思えます。そのデータをベースにまたいろいろと教育等々の話をするというような、このような筋立てなのかなと思います。データ作成について何か御意見ございますか。例えば15ページの実効給付率の推移というのは、言ってみればこれは時系列で自己負担と保険給付の割合を見ているわけでありますから、これを保険料と公費とに分けるとかいうようなことであれば、一つのアンサーかなと思いますけれども、それだけで十分では当然ないと思うのですが、前半はこのようなことを要求しているのではないかと思います。
それでそれぞれの負担がどうなったのか分かるようになって、それでどう考えるという話になると、まさに教育の問題とか幅広いところの議論になるのかなと思うのですけれども、何かこういう議論をするときに役に立ちそうな見える化の表というかグラフはどんなものがあるかと思いますか。どうぞ。
○横尾委員 たまたまではありますけれども、後期高齢者医療制度は今回、医療費の負担が改定になるのですね。ですから、たとえば、今月、佐賀県の後期高齢者医療広域連合では新聞広告を行い、新聞の下何段かを取って広告を出しました。もちろん、これは広く知っていただくためです。その広告の中に、左側半分の一部に棒グラフを掲載して、1割は75歳以上の後期高齢者の皆さんの負担金です。そして、ほかは若い働き世代からの支援金、国からの公的資金がちゃんと入っていますということをグラフで示して、そのことは明示するようにしているのです。これはできるだけ毎年実施するように努力をしているところです。おそらくいろいろな都道府県の広域連合でもそういう努力はされていると思います。
○遠藤部会長 ありがとうございます。それぞれに努力をされているということです。
それでは、そういう課題があるということで、引き続き議論をさせていただきたいと思います。
それでは、3番目の費用対効果につきまして、御意見等を承りたいと思いますが、いかがでしょうか。
藤井委員、どうぞ。
○藤井委員 高額な医薬品が次々と登場する中、医療保険財政健全化の面からも、費用対効果を図るという視点は大変重要だと考えます。一方で、患者の健康状態が改善したとして、それは本当に薬の効果なのか、そうでないのかという区別をする必要もあり、これは実務的に難しいなと思います。こうした課題を解消し、しっかり機能する仕組みとなるよう、引き続き御検討をお願いしたいと思います。以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
森委員、どうぞ。
○森委員 ありがとうございます。
今日の資料の32ページを御覧いただければと思います。諸外国における費用対効果の活用状況ということで、イギリスの例が出ていますが、2009年か2010年だったと思いますが、イギリスに行ったときにこの仕組みを入れたことによる医薬品へのアクセス制限に反発があって、ちょうどペイシェント・アクセススキームというものができたときで、改めて医薬品への患者アクセスというのは非常に重要だと認識しました。先ほど松原委員からもお話がありましたけれども、やはり国民のために安全性、有効性が確認された医薬品は速やかに保険収載すべきだと思います。
昨年12月、薬機法等の改正が行われました。その改正の趣旨ですけれども、国民のニーズに応えるすぐれた医薬品、医療機器等をより安全、迅速に効率的に提供するとともに、住み慣れた地域で患者が安心して医薬品を使うことができる環境を整備するための制度の見直しになります。医薬品への速やかな患者アクセスを確保するために先駆け審査制度であったり、条件付の早期承認制度が法制化をされました。そういうことからも趣旨に反することになるのではないかと思います。
また、費用対効果は今日の資料にもありますけれども、2019年度から中医協の議論を踏まえて運用が開始されましたが、まだ開始されたばかりであるということ。それから、費用対効果のための人材も十分ではなくて、今後、人材養成に取り組んでいく状況だと思います。そうした中、今後事例を集積して、制度の在り方については中医協で検討していくべきだと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
それでは、佐野委員、それから石上委員の順番でお願いします。
○佐野委員 ありがとうございます。
健保連としては、新規医薬品、また医療技術の保険収載の可否も含めて費用対効果評価結果を活用するということについて中医協のほうで検討を続けるべきだと考えております。
また、今後の費用対効果評価の在り方については、やはり増加していく高額薬剤の取扱い等も含めて、医療保険部会でもきちんと議論する必要があると考えております。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
石上委員、どうぞ。
○石上委員 ありがとうございます。
今後の医薬品等の費用対効果評価の活用についても、制度としては今年度から運用開始されたということですから、まずはその影響の検証、課題の抽出などを行っていくべきであり、保険収載の可否の判断や償還可能な価格までの引き下げといった仕組みの検討は時期尚早ではないかと思っております。資料3の33ページの論点にあるように、最終的には中医協での議論をきちんとやっていくことが基本だと思っておりますので、そこでの議論を継続していくべきだと考えます。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
安藤委員、どうぞ。
○安藤委員 この費用対効果評価の導入につきましては、2010年頃から中医協におきまして議論が開始され、10年近くをかけてようやく導入に漕ぎ着けたと認識しております。保険収載時の活用等も含めました実施範囲や規模の拡大につきましても、引き続き中医協で議論をするべきであると考えております。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
大体よろしゅうございますか。
堀委員、どうぞ。
○堀委員 費用対効果評価のための人材育成や体制を整備するということには大賛成です。保険収載をどうするかというところは、今すぐには難しいとしても、これは今までも私は繰り返しお話ししていると思うのですが、今の基本原則を維持しながらもできることはあるのではないかと。つまり、濃淡といいますか、全てが有効であり、安全であったとしても、100%同じ有効性、同じ安全性と言えるのかとか、必要であり、かつ適切であるとしても、全てが100%同じなのかというと、やはり多少の濃淡はあると思いますので、そういうものを評価する一つの手法として費用対効果もあると思います。いきなり保険収載というのはまた別の議論が必要かと思いますが、保険外併用療養費制度の活用も含め、最初から議論の範疇外というのはどうかと思います。あと、イギリスのところで「医薬品アクセス制限への反発を受けて以下の仕組み」を導入とありますが、確かにそのとおりなのですけれども、だからといってイギリスは費用対効果を完全にやめたかというと、そういうわけではないですし、海外の事例を参照するのもいいですけれども、より詳細を見る必要があるかと。ここで述べられているのは、全ての医薬品のアクセスではなく、がん治療などの超高額薬が中心ですし、他にも費用対効果に加え国民的価値を反映させる仕組みなど、そういうところも丁寧に見ていく必要があるのではないかと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
ほかに何かありますか。
それでは、まず、菅原委員、それから池端委員、お願いします。
○菅原委員 ありがとうございます。
この問題に関しては、私自身は有効性、安全性が確認された薬剤については、基本的に保険収載をして誰もが使えるように原則していくという方向性に関しては完全に賛成をしております。その一方で、非常に財政状況も悪いという中で、その間どういうふうにバランスを取っていくかという一つの仕組みとしてこのような制度が考えられているということだと認識しております。
一つの問題は、有効性、安全性はばっちりオーケーなのだけれども、それが必ずしも社会が求めている医療ニーズと合致しているという保証は今のところないような気がします。もちろん開発に当たっては、ある程度そういうものを開発していただけるようなインセンティブはつけているわけですけれども、恐らくこの制度を使うときに社会的なニーズ、そもそも治療法がないものだとか、そういうものが出てきたときにはおよそ弾力的にこれを使っていくけれども、既にある程度開発されているものがあるところについては、これを厳しく運用していくというような、その運用の仕方についてはいろいろな工夫のやり方があるかなと個人的には考えております。
それから、もう一つ、費用対効果から保険収載は非常に値が悪くて技術的に困難だと反対されてしまう場合でも、非常に効果があるものは実際にあるわけで、それが使えなくなってしまうと非常に大きな問題があります。スレッシュホールドという技術的な閾値までのところに関しては保険で見てあげて、それを超える部分については保険外併用で見ていくというような運用の仕方をすれば、財政と医療、薬剤へのアクセスを両立するような考え方ができるかなと考えております。そういった点を今後御議論いただければ大変ありがたいと思っております。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
池端委員、どうぞ。
○池端委員 ありがとうございます。池端です。
28ページの図に費用対効果評価制度の概要が出ていますが、この表をこの委員の方々はどこまでどう理解できるかということなのですけれども、私は実は中医協でこの費用対効果を議論しているときに1年近く傍聴した時期がありまして、ここにQALYの考え方、ICERの考え方等が出ているかと思いますけれども、これは先ほどの議論、医療の質とコストをどう見える化するかというところの薬剤に関しては見える化する形の一つではないかと思いました。
科学的に分析をするのですけれども、最終的に、例えば自分の命があと1年延びるとしたらどれぐらいお金を使っていいか、国民がどう考えますかということを数字化するというのがこの考え方だと思うので、もちろん費用対効果の制度に関してはかなり専門的な議論になりますので中医協が中心になると思いますけれども、それを受けた上で、ある程度の概要が出た時点で、この場でここの委員が全て理解できるような形でお示しいただくと、それが国民に知れて、そういう制度になっていて、そういうふうにしてこの薬は認められたのかというのが分かってくると思うので、そういう段階という意味で、この場でもその議論の進み方というのをぜひ分かりやすい形で御提示いただくことが必要かと思います。
その意味で言うと、31ページの図でありますように、現在、人材育成機関で国立保健医療科学院の研究センター、6名というのはかなり脆弱なシステムになると思うので、やはりここは人材をしっかり集中的に養成していただいて、論点にもありますようにしっかりした議論ができる形、これも科学者の方々によっては意見が分かれるところもあるとお聞きしていますので、その辺をしっかり議論するための人材育成というのは非常に重要ではないかと思います。
そういう意味で、ただ、最終的には恐らく、先ほどの話にもありましたけれども、科学は万能ではなくて、例えば今回、新型コロナ対策にしても、科学的にここまで認められるけれども、あとはポリティカルな判断でこうするということがあると思います。この薬を科学的には保険収載は難しいけれども、でも、一方でこういうことは絶対必要だよねということが分かれば、それは何らかの形で、別の形で提供できるようにする。そういう政治的なというか、制度的な問題も必要になってくる。そこを考えるのはこの場ではないかと思うので、そういう意味で、今後、引き続きここである程度の情報をいただいて議論していく必要があるかと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ほかにございますか。
松原委員、どうぞ。
○松原委員 費用対効果を検討するのはいいことなのです。しかし、例えばこの薬はこの人にとか、何人にとかいう割り当てで人数を決めているのではありません。医師は現場で患者さんを診ていて、この人にこれが効くと思って投薬したり治療したりするわけです。例えば2~3日か1週間ぐらいしか命が延びないようなもので副作用があったら、それを使うことはありません。実際に使ってみていて余り効果がなければ、高い割に効果がないものはやめようと私たちも考えます。最初から、一方的に割り当てをしているわけではありません。この社会保障審議会で議論をして、これは採用できないとかではなくて、実際に中医協でどれぐらい使って、どれぐらいの費用がかかっているということで考えるべきだと思います。
もう一点は、遺伝子治療をしまして、遺伝子治療の結果、その人が元気になるが、物すごい金額で、その人の生産性はそんなに高くないだろうということで考えるというような議論にならないようにしなければなりません。つまり遺伝子の問題は、誰がその遺伝子を持つかは神様しか分からないことです。その人が苦しんでいるのであれば、国民みんなで救おう、助けようということで皆保険制度ができたわけです。そこのところを忘れて、お金がかかって経済的成果が悪いから駄目だというような議論に結びつくようなことは賛成ではありません。苦しんでいる人の生産性に均しくない費用がかかるなら個人的な負担を求めるというような考え方に結びつくようなことは決してしてはいけないと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
大体よろしゅうございますか。
実は、一言私もお話しさせていただきたいのですけれども、私は中医協の会長を辞めた最後のときの挨拶で、費用対効果は重要だという話をさせていただきました。そのことがその後の議論にどう反映されたかは知りませんけれども、それから費用対効果の議論が始まりました。なぜ費用対効果が重要かというと、やはり高額な薬剤が、今になってみれば大した高額ではないのですけれども、その後相当高額なものが出てまいりましたけれども、その当時もかなり高額なものが出てきた。そうすると、それまでの類似薬効比較方式とか原価計算方式で薬価算定を行うと、例えば抗がん剤などで少ししか効果が向上していなくても、たとえば延命効果が余り違っていなくても、新規性が高いということで原価計算方式で薬価が高く算定されるというようなことが生じている印象がありました。なので、その効果の比較をする形で価格の補正はできないか。そのレベルで私は申し上げたつもりなのですけれども、その後の議論は、学者の先生方がずっと費用対効果のレクチャーをする形で進みました。理論だけでなく費用対効果を利用していたイギリスのNICEを模した制度の議論も進みました。
実はそれを進めますと、そもそもそれまでの日本の薬価基準制度と費用対効果の考え方というのは基本的なコンセプトが違いますので、どういうふうにそれを融合していくのかというところがなかなか見えなかったのです。私は傍聴していましたけれども、延々とそれが続いていったという感じで、最終的には現行の加算部分についてのみ費用対効果評価を入れる形になったわけなので、ある程度落ち着いてきたなという感じはします。
したがいまして、この費用対効果の議論をするときには、全く新しいものをつくればつくるほど現行制度とのハレーションを起こしますから、それをどのようにハーモナイズさせていくかというところが一番重要なのです。そこが決まればどの程度のことをやればいいかということはおのずと出てくる話なのですね。ですから、そういう視点で議論を進めていくべきだと思うし、多分中医協はそんなことは分かっているので、そういう方向の議論になっていくのではないかなと思っています。部会長の立場というよりも、これまで絡んできた立場でお話しさせていただきました。個人的な見解だと思ってください。
ほかに何かございますか。よろしゅうございますか。
ということで、一番議論の蓄積が進んでいるのは中医協ですので、基本的には中医協の議論を見守るというようなことで、適宜必要な情報があればここでも開示していただくという扱いでよろしゅうございますね。
ありがとうございます。
それでは、この件につきましては以上とさせていただきたいと思います。
続いて、資料4「予防・健康づくりについて」、事務局より資料の説明をお願いしたいと思います。
○山下課長 医療介護連携政策課長でございます。
資料4をお開きいただきまして、「予防・健康づくりについて」の資料を説明させていただきます。
1枚目、全世代型社会保障検討会議の中間報告でございます。人生100年時代の安心の基盤は健康だということで、予防・健康づくりについては、個人の健康を改善することで、個人のQOLを向上し、将来不安を解消する。健康寿命を延ばし、健康に働く方を増やすことで、社会保障の担い手を増やす。高齢者が重要な地域社会の基盤を支え、健康格差の拡大を防止するといった多面的な意義が存在しているということ。一方で、今後は国民一人一人がより長く健康に活躍することを応援するため、病気になってからの対応だけではなくて、社会全体で予防健康づくりへの支援を強化する必要がある。
(1)として、保険者努力支援制度の抜本強化ということで、保険者の予防・健康、これに関するインセンティブを高めることが必要だということ。
(2)は、介護インセンティブ交付金の話なのですけれども、あわせて(3)としましてエビデンスに基づく政策の促進ということで、予防や健康づくりの取組を促進するのに当たっては、エビデンスに基づいて効果を確認するための事業をしていかないといけないのではないかということが中間報告で言われております。
続いて、3枚目のスライドに移っていただきまして、2040年を展望した社会保障・働き方改革本部の取りまとめということで、昨年5月29日に、今度は2040年を展望してどのような社会をつくっていくのかというところにつきまして、高齢者の人口の伸びが落ち着いている一方で、現役世代の担い手が急減するというのが2040年。これに対してどのように対応していくかということで、一つの柱としまして、この健康寿命の延伸が打ち出されているところでございます。
4枚目のスライドでございますけれども、健康寿命延伸プランの概要としまして、「I 次世代を含めたすべての人の健やかな生活習慣形成等」、「II 疾病予防・重症化予防」、「III 介護予防・フレイル対策、認知症予防」ということが打ち出されているところでございます。
続きまして、5ページになりますけれども、特に保険者インセンティブの強化というところが出ていまして、さらに6ページですけれども、保険者による予防・健康づくり等のインセンティブの見直しとして、2018年度以降は健保組合・共済組合のグループ、協会けんぽ、国保のグループ、後期高齢者医療広域連合のグループ、それぞれにつきまして予防健康づくりを進めていくために、それぞれのインセンティブの方策が書かれております。
7ページ以降は、それぞれの保険者についてどのように予防健康づくりを進めていくかということでのそれを後押しするような施策について、7ページからずっと用意しているところでございます。
ちょっと飛びますけれども、18ページに移っていただきまして、今度は特定健康診査・特定保健指導の話でございます。特定健診は、40歳以上の方々につきましては保険者が健診をしていただくことになっていまして、併せてその特定健診の後、フォローアップという形で特に対象者として特定保健指導することになっているということでございます。
次のページ、19枚目のスライドを見ていただきますと、2008年度から実際には10年経過した後、特定健診につきまして、実績値としまして、受診者数は2019万人から2858万人へ増え、またさらに特定保健指導につきましては31万人弱から95.9万人まで増えているということでございます。実施率につきましては、まだまだ足りないというところもありますけれども、一方でそれだけの人数が増えてきています。
次に、第三期の特定保健指導の流れとしまして、23枚目のスライドをお開きいただきたいのですけれども、平成30年度以降、第三期の医療費適正化計画で6年かけてこのようにやっていきましょうということとしております。初回面接をした後、3か月以上の継続的支援をするのか、モデル実施をするのか、動機づけ支援相当の対応をするのかということをして、行動計画の実績評価をして、また次年度の評価をしていこうということで、PDCAサイクルを回しながら、特定保健指導を進めていくということでございます。
24枚目のスライド、特に特定保健指導につきましては、今まで実際にこういうことをやってくださいということで、プロセスについても事細かに決めて、それでポイントを決めて180ポイント、例えば面談をしたら何ポイント、電話をしたら何ポイント、メールを入れたら何ポイントというふうにしていたところなのですけれども、そういうプロセスではなくて、結果、つまり、しっかりと、腹囲2センチ、体重2キロ以上の改善を評価していて、そのアウトカムを見ていく。一方、でプロセスについては各保険者のほうで自由に創意工夫してやってくださいということを2018年度から設けてやっているところでございます。
25ページ、26ページは、それにつきまして、例えば日本航空健康保険組合では、ICTを活用して遠隔の面談とか継続的な支援をしながら、一人一人の方に対してフォローをしているという事例。また、26枚目のスライドですけれども、全国健康保険協会、協会けんぽさんにおいては、それぞれこれまでどおりのポイント検証モデルとともに、新手法の検証モデルということで自己管理型の形でそれぞれやって、どのように進めていくかということで創意工夫をしている例でございます。
続いて、27枚目のスライドなのですけれども、こういったことで特定保健指導の効果をずっと毎年毎年私どものほうでワーキングを回して検証しているのですけれども、そこから見えてきたことなのですが、やはり特定保健指導につきましては、特に初めて特定保健指導の対象になった方に対するアプローチに対する効果、これについては非常に効果があるということは見えてきました。けれども、一方で、毎年毎年同じように言われ続けている、言い方を分かりやすく言うとリピーターのように言われている人に対する効果というのは、徐々に徐々に見えてこなくなってくるというようなところも出てきているということでございます。
それと、分かりやすくグレーと青と黄色と赤というふうに分けておりますけれども、これはどういうイメージかというと、特定健診でスクリーニングをした後、特定健診を受けていない方がグレーで、受けた結果、数値としてはそれなりにというような方が青。一方で、このままだとちょっと危なくなるのではないかですかというような数値が出ている方が黄色。そして、この方は既に数値上では危ないですよというのが赤というところで示しているのですけれども、ややともすると特定保健指導というのは、特に様々な人的資源をたくさん投入して、黄色の方々に対して赤に行かないような形で一生懸命やっていただいている。これはこれですごくいい一方で、赤の方々は、本来すぐ受診していただかないといけない。それは放っておくと重症化してしまうというようなことがあるのではないか。ここにも力を入れていく必要があるのではないか。さらに言うと、青やグレーの方々も、言い方はあれですけれども、放ったらかしにしていくわけにはいきませんので、こういったところにも資源を投入しなければいけないのではないかというところもありますので、ややともすると、黄色のところに対して赤に行かないところだけに力を入れているのであれば、もう少し特定保健指導の関わり方というのを考えていかなければいけないのではないかと、今回、特定保健指導の効果を見ていったときに、また、保険者さんの話を聞いたときに出てきた課題であるというところで、27枚目の資料をまとめているところでございます。
最後、28枚目の資料なのですけれども、先ほど全世代型社会保障の検討会議で出てきた中間報告にありますとおり、実証事業ということを来年度、令和2年度からやろうということを考えています。そのときに、実証事業となると、例えば保健事業をやっていた上でどのような効果があるのかという効果が医療費、もしくは介護の費用ということだけで見ていました。しかし、この実証事業では、もう少し経済的な効果とか、もしくは社会的な効果をみていく。例えばどういうことかといいますと、予防を放っておくと、ちゃんと予防している人と比べて、例えば入院期間が長くなっている。もしくは外来の受診が多くなっている。それは医療費という観点で見るだけではなくて、外来に行かないといけない、入院も余計にしなければいけないということは、結果的には働く時間が減ってしまう。もしくは、例えば子供であれば見守りをしなければいけない。介護も見守りをしなければいけない、そのために家族が仕事ではなく、そちらに関わらなければいけないということで、もう少し医療や介護を超えた形での経済・社会的効果を見ていこうということで、それぞれの実証事業の内容でやっていくということを考えているところでございます。
事務局からの説明は以上でございます。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
健康・予防の話でありますので、大変重要な課題であります。御意見もおありになるかと思いますが、いかがでしょうか。
それでは、佐野委員、林委員の順でお願いいたします。
○佐野委員 ありがとうございます。
予防・健康づくりの重要性は今さら申し上げるまでもないと思うのですけれども、1点、新型コロナウイルスの影響等もあって、特定健診ですとか特定保健指導をはじめとする保健事業については相当大きな支障、具体的には事業主との連携であったり、もしくは加入者への働きかけ等ができない状況が生じております。そういう意味で、各種インセンティブの取組評価については、そういう面でも配慮いただきたいと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
林委員、どうぞ。
○林委員 ありがとうございます。
1ページ目のところでございますが、全世代型社会保障検討会議の中間報告の中で、下線部分で歯科健診というものがしっかりと記載されてございますが、歯科といたしましても、保険者の努力支援制度の強化の中で、働く世代の歯科検診の受診率向上をしっかりと取り組んできているところでございますが、まだまだ取組の実態は少ない状態でございます。歯科疾患は歯を喪失する原因となります、う蝕や歯周病というものにつきまして、予防効果というのが他の疾患と比較してかなり明らかに認められているところでございます。また、歯の健康というのは当然のことながら、食事に深く関わり全身の健康とも関わり合いがあるということのエビデンスがかなり示されているところでございます。
現在、働き世代の歯周病対策が喫緊の課題となっておりまして、保険者とともに取組を強化していきたいと考えてございます。
生涯を通じたPHRの充実にも取り組んでいるところでございますが、歯科検診が義務化されているのは、期間といたしましては学童期まででございまして、大学以降では歯科検診というのは努力義務という形での実施となっております。もちろん法制化というものが非常に望まれるところなのですが、なかなか難しい問題もございまして、少なくとも当面、健康経営といった概念の中で、地域職域連携を利用していただきながら、地域の歯科医師会と協力して、歯科健診というものの充実を図っていっていただきたいと、そういったスキームを構築していただきたいと思ってございますので、よろしくお願いいたします。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
では、前葉委員、お待たせしました。
○前葉委員 ありがとうございます。
健康づくり・予防を進めようという方向性、そのとおりだと思います。国保において保険者努力支援制度を適切に運用していただいていること、ありがたく思っております。
その上で、実際にいろいろな事務的なところは国保基盤強化協議会、事務レベルのワーキングで様々議論しておりますので、そのあたりを十分踏まえていただければとお願いしますが、もう少しざっくりとした話を申し上げますと、仮に財務省から厚労省が保険者にもっと頑張らせようというようなことを言われているのであれば、そのお金がついてきた分、どんどん仕組みが細かくなっていって、事務が大変になっていく。あるいはそれに体を合わせにいくことがメインの健康づくり強化になっていこうということになると本末転倒になりますので、ぜひ国というか厚労省は、ニンジンをぶら下げているのか、お尻をたたいているのか分かりませんけれども、単にそういうことだけではなくて、自治体の丁寧な誘導、後押しをしていただければと思っておりますし、そのための情報発信、情報伝達について、ぜひよろしくお願いをしたいなと思っております。
その際、各県の国保連をもっと使っていただいたり、あるいは都道府県自身も保険者になっておられますので、ぜひ、都道府県全体として予防健康づくりが進むように、都道府県の役割も十分に果たしていただければと思っております。我々もそれぞれ一生懸命頑張りますが、あまり細かい査定的なものになってしまうと、結果的に地方分権に反するようなことになってもいけないと思いますので、我々として一生懸命進めますので、ぜひ適切なうまい誘導をお願いできればと思っています。その結果、予防健康づくりが進むということは日本にとっていいことだと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。
ほかにいかがでございましょうか。
では、安藤委員、それから井上参考人でお願いします。
○安藤委員 ありがとうございます。
被用者保険の保険者として、これまでここの資料にもありますように、予防・健康づくりにつきましては、生活習慣病を中心にアプローチをしてまいりました。しかし、本日の資料1の傷病手当金のところで11ページに示されている傷病手当金を申請している方たちの割合なのですけれども、このグラフを見ていただきますと、本当に働き世代の方たちの精神病、精神及び行動の障害というところの部分が20代ですと50%を超えています。これは、非常に問題であると思っていまして、この数値というのが年々拡大しております。30年度ですと申請者の件数が31万件、年間の傷病手当金、精神に関わるところの傷病手当金の費用が620億円となっております。ここの部分を、やはり健康づくりという時にいかにして、傷病手当金をもらう前にとどめておくのかという精神的な健康づくりということに関しても、これから取り組む必要があると思っております。その辺につきましても、やはり国におかれましては積極的な検討をお願いしたいなと思っております。
また、予防・健康づくりの取組を進めるためには、我々、協会けんぽとしましては、加入者の健康状態を把握することが非常に重要であると考えております。特に協会としましては、事業主健診のデータ取得が課題であると考えており、事業主健診データの取得の実効性を高めるためには、やはり労安法へも高確法同様に保険者への提出義務を追加いただくことや、事業主健診でも生活習慣病の服薬歴や喫煙歴の問診項目を必須としていただくこと。そして、血糖検査の取扱いをそろえていただく必要があることなど、制度面におきましてもデータの提供が進むような改善をしていただきたいと思いますので、保険局からも調整をいただけるようにお願いいたします。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございます。重要な御指摘だったと思います。
それでは、井上参考人、お願いいたします。
○井上参考人 資料4の8ページに保険者努力支援制度の全体像が描かれております。予防・健康づくりに対しまして、保険者の努力を支援していくということは正しい方向だと思いますが、ただ、やはりあまり細かいところまで指導で何か決めてしまうということではなくて、やはりその支援によって個人の予防・健康づくり、あるいは医療費の適正化がどうなったのかというアウトカムに重点的に評価を行って、そこを正しく評価するというような制度にしていただきたいと思います。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
それでは、初めての方から、秋山委員、池端委員、横尾委員の順番でいきます。
○秋山委員 ありがとうございます。
予防・健康づくりに関しまして、1点御意見を申し上げます。国民の健康寿命の延伸と医療費適正化の観点におきましては、生活習慣病への効果的で効率的な重症化予防の実施というのは喫緊の課題だと認識しております。一部の保険者では、既に生活習慣病の治療中の方、あるいは未受診の方に対して専門職による保健指導を実施されていると伺っております。一方で、医療機関では看護師による療養指導によって重症化予防の効果が上げられているところです。こうした方々に対して継続的に保健指導、療養指導を行うためには、指導を受ける場、あるいは指導を受ける機会を増やしていくことが必要だと感じております。
地域の実情に応じて、かかりつけ医はもとより、病院の外来あるいは訪問看護事業所等の地域の様々なリソースと保険者が連携して保健指導の場、機会を増やしていくことが必要ではないかと感じています。特に訪問看護では、訪問看護の対象となる患者さんのみならず、御家族に対しての健康増進あるいは予防にもアプローチしますので、非常に高いポテンシャルを持っています。ぜひこうした保険者と看護職との連携強化、あるいはまだまだ数は足りておりませんので、看護職の人員体制の整備を図っていただきながら、生活習慣病の重症化予防のための事業を強化していただきたいと思います。
特に資料4の1ページ目の全世代型社会保障検討会議の中間報告にもございますように、「優れた民間サービスの導入を促進」という観点、それから、その下の「エビデンスに基づく施策の促進」という観点からも、保険者と医療機関の外来や訪問看護事業者の看護職との連携による重症化予防事業をぜひ御検討いただければと思います。
以上でございます。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
では、池端委員、お待たせしました。
○池端委員 ありがとうございます。
まず、医療保険部会でこの発言が適当かどうか分からないのですけれども、これまで予防・健康づくりに関しては、とかく医療費適正化に向けた施策としての重要性も盛んに言われていたかと思うのですけれども、私の知っている限り、実は国内外の論文を見てもなかなかこの予防が医療費適正化につながったということはあまりエビデンスがないように聞きます。ただ、一方、くしくも山下課長が最後に言っていただいた経済的な評価とか社会的効果、評価と、これは非常に重要で、いかに人生100年時代を最後まで元気で豊かに遅れるかということに対しては、この予防・健康づくりが非常に重要だと思うので、ぜひそういう視点も強調して、ここのアウトカムを出していただければと思います。
そういう意味で、健康日本21の頃から言われていた、市町村に対して一定のペナルティーをかけて受診率を上げようとかそういうことがあって、私が知っている限り、実際もう既にきちんと受診して通院・加療しているところのデータだけ取り出して、その受診率につなげるというような、ちょっと姑息的なデータの上げ方というところも一部ありました。こういうことではあまり意味がないので、ここはしっかり腰を据えてきちんとしたデータのもとに、きちんとした指導をやることによって、本来的な人生を豊かに、経済的にも社会的にもいい人生100年時代を送れるということに向けた予防・健康づくりという目で指導が行われれば、非常にいいものになると思いますので、ぜひその辺の視点、医療適正化だけではなくてそういう効果があるのだということをもっと内外にアピールしていただけるといいかなと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
お待たせしました、横尾委員、どうぞ。
○横尾委員 ありがとうございます。
1つ目は保険者インセンティブのことです。個人的に首長として、あるいは後期高齢者医療広域連合の連合長として感じていることは、保険者インセンティブはかなり効いてくると思います。ただ、行政側からの見方としてはどう取っているかといいますと、ちゃんとやれば来るものが来なくなりますので、逆に言えばペナルティーがかかるということを、実は全区長さんに説明をし、そういうことですから地域を啓発してほしいということを努力しています。ここでポイントなのは、紙の資料やチラシを配って放送しても、それだけでは人は動きません。実際に経験して分かったことは、地区担当保健師制度を私どもの多久市はやっているのですけれども、これだと効果もあり、かなり特定健診受診率や指導率は上がっていまして、全国4位と全国7位の大臣表彰を去年いただきました。これには副賞があるかなと思ったら、表彰状が2枚来ただけでございました。これは余談でございます。ですから、要するにそういう細かい取り組みなどのことも含めて、ぜひベストプラクティスが分かるようなことをしていただくといいかなというのが1点目でございます。
2つ目に、そのことに関連して、日本健康会議は大変意味があると思っています。いろいろな保険者の方々の取組や地域の全ての保険者の方々、国の全ての保険者が関わり、自治体、関係者も、そして一番重要なのは、今日は経済関係もお見えですけれども、企業関係がそうやって意識を持ってくださる「健康経営」という理念や目標はとても意味があると思っておりますので、都道府県単位の動きも注目していきたいと思っています。
3点目に、後期高齢者の皆さんのことを思うと、実は人間ドックとか健康チェックに非常に強い関心をお持ちです。本日の委員の皆さんは記憶の中に消えているかもしれませんが、後期高齢者医療制度が始まったときに、健診を受けなくていいよというルールが一部ありましたので、「自分たちはもう捨てられたものか」というような捉え方もあり、それはマスコミ報道でもあり、大変反応が激しくあり、各後期高齢者医療広域連合の事務局は対応に忙殺されたのです。そのあたりも今は少し改善されているわけです。
なぜそうなるかというと、企業に従業員でいる場合、あるいは自治体の職員でいる場合に、実は人間ドックを受けていらっしゃるのですね。これが70歳を過ぎたら健診や人間ドックを受けなくて全然安心かというと、そうではありません。むしろ受けた人は継続的に健診やドックを受けたいという要求がありますので、こういったアクセスの支援も必要かなと思っています。
次にもう一つ申し上げたいのは、今はリテラシーが大事かなと思っています。先ほどの教育的なことと関係しますが、明治維新がうまくいって、その後の日本の国力が高まったのは日本の識字率の高さだと言われていますが、これからはICTリテラシーということが大事です。すなわち、こういった健康データの分析や、理解ができるリテラシーということです。できたら自分の健康データ、PHRに関するリテラシーをぜひ高めるようなことをしていただきたいなと願っています。そうすると、自分の健康データを見ても、こういう統計とかの指標を見ても、自分はこの位置かなとか、ここに気をつけたほうがいいなということが分かりますし、家族の中でそういう議論が出れば本当に、まだまだこれからという若い人たちも強い関心を持っていただくと思いますので、ぜひそういったことも、直接今回のことと関係ないですが、間接的にでも御配慮を政府、厚生労働省でしていただければと思っています。
ほかの委員もおっしゃいましたけれども、最後に思うのは、PHRは技術的にはもう確保できる状況ですので、ぜひ個人でもそういったことはストックでき、活用できるようにしてほしいと思っています。
さいごに、今回の新型コロナウイルス対策の関係です。先日、ある方にお会いしました。その方は海外から仕事で来られている方です。成田空港から日本に入国されたときに空港の手続きで言われたのは、アンケートチェックが十何項目されただけだということなのです。しかし、その内容は、新型コロナウイルス感染に注意してくれ、自主管理してくれということだけで、具体的な規制はほとんどなかったと驚かれていました。今は違うかもしれませんが。
そこで「では、あなたの国はどうですか」と尋ねてみました。この方は、韓国の方です。韓国では、入国手続きのときに、自分の持っているスマホにアプリをダウンロードさせられるそうです。当然、義務づけです。そして何が始まるかというと、電話番号をその場で実際に呼び出してみて確認するそうです。「これで緊急の電話をかけられますね」ということです。そして「それでは、これから毎日の体温などの健康データを上げてください、共有しましょうね」ということで、しっかり健康チェックと管理をやっていくわけです。そして、「出国のときにこのアプリがちゃんと動いてなかったら、あなたは国を出られません」と伝えるそうです。世界はここまで徹底しているのだと思いました。そういう経験をされている方からすると、「日本の対応はこんなに緩くて大丈夫か」と言われました。
たまたま、これから3日間危ないのだという話もありますが、ぜひこういったことはPHRやデジタル革命にも関係のある厚生労働省のほうで、より厳しくではなくて、今や、より良くデジタルデバイス、機器を使って、ネットワークも情報共有もできる時代なので、ぜひそういった指導ができるようにしていただきたいし、どこかに任せるのではなくて、ぜひ厚生労働省リードのもとに、そういったことをしていただくといいなと思いました。
こういったことをある方にお話ししたら、ああ、ほかの国もやっているよと言われましたので、本当に日本はしっかりしていかないといけないと感じています。
以上です。
○遠藤部会長 どうもありがとうございます。
では、堀委員、どうぞ。
○堀委員 予防健康づくりが重要だということは否定しませんし、私自身、大学で健康学部という学部をつくった背景とも共通しますので、そこは理解しています。ただ、先ほどどなたか委員がおっしゃっておりましたけれども、医療費というところで考えると、必ずしもつながらないというところがあります。なので、医療費適正化と予防・健康づくりの在り方については、エビデンスも含めて検証すべきだと思います。
同時に、今の特定健診がこれでいいのかというと、正直、特定健診事業の実施方法も多分かなりばらつきがあって、うまくいっている事業者もあれば、そうでないところもあると思います。自前でやっているところもあれば、委託でやっているところもありますし、特定保健指導者の対象者の選定の時期もかなりばらつきがあります。
また、特定健診で使っているデータの取扱いにもばらつきがあり、少しどうなのかなというところがあります。なので、エビデンスを検証していくという今後の方向性については大賛成なのですが、現状のままで本当にいいのかについては疑問視しております。今回かなり予算が投じられているようですから、ぜひ事業全体の費用対効果、医療費とは関係ない部分だとしても、事業の費用対効果を必ずチェックする必要があると思いますし、エビデンスのデータも必ず見ていただいたほうがいいと思います。
OECDの昨年出された公衆衛生白書にも、日本の健康診断等についてはかなり費用対効果等で問題があると指摘もされていますので、そこも含めて検証が必要だなと思います。
一方で、予防健康づくりは重要だと思うのですけれども、今述べた事業の費用対効果にも関係しますが、どこまで公費あるいは社会保険料を投じるのかというところを考えますと、やはりそこは冷静な議論が必要なのではないかなと。健康づくりも予防も重要ですが、保険者としてどこまですべきか。あるいは、公費としてどこまで出せるのかというところで、そこはもう少し検証していく必要があるかなと。
その意味で、医療費適正化計画も今、特定健診の受診率をひたすら上げようとしていますけれども、恐らく上げても上げても、医療費適正化に与える影響は少なく、多分医療費適正化の目標値は別の理由で達成すると思います。むしろここで保険者努力支援制度のほうで特定健診の指標を入れるのならば、医療費適正化計画のほうはもっと医療費の適正化につながるような、受診行動の適正化につながる、それこそ紹介状なしで大病院に行かない人がどれぐらいいるかであるとか、あるいは都道府県が国保の保険者であるということを考えるならば、国保の保険料がどれぐらい統一されているかとか、あるいは一般会計の繰入れがどれくらい減っているかとか、要は医療費の適正化に保険者が本気で取り組むインセンティブとなる指標が入るべきかと。予防や健康事業の分はそれとは切り離して見ていく必要があるのではないかと思います。
それから、NDBの分析とか医療費の分析などができる専門職の人を増やすことや、日常的な健康行動や受診行動も含め、国民のヘルスリテラシー、コンピテンシーかもしれませんが、そういうものの向上も含めて御検討いただければいいのではないかなと思います。
以上です。
○遠藤部会長 貴重な御意見をどうもありがとうございました。
それでは、藤井委員、どうぞ。
○藤井委員 ありがとうございます。
中小企業を含めまして、企業における健康経営の取組というのは着実に広がっております。これをさらに加速するために、例えば、健康経営の導入を支援する専門家の派遣であるとか、健康経営を推進する人材の育成に対する助成など、中小企業における健康経営の取組に対する支援をお願いできればと思います。また、介護予防やフレイル対策、認知症予防の観点からいえば、自身の運動能力を定期的に把握することは大変重要でありまして、そのためにも、健康診断の項目に運動能力テストを盛り込むなど、現在の自分の運動能力を客観的に確認できる機会を作っていただければと思います。
以上です。
○遠藤部会長 ありがとうございました。
大体よろしゅうございますか。
それでは、予定していた時間を若干過ぎておりますので、この課題については、本日はこれまでとさせていただきたいと思います。いろいろな御意見が出ましたので、それらの御意見を踏まえて今後さらに議論を深めていければと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
それでは、これをもちまして、本日の部会を終了したいと思います。次回の開催日については、追って事務局より連絡をさせていただきます。
それでは、本日は長時間、積極的な御意見をありがとうございました。