第12回アレルギー疾患対策推進協議会 議事概要

厚生労働省健康局がん・疾病対策課

日時

令和2年3月3日(火)~3月6日(金)

議題

1 アレルギー疾患対策の取組状況について
2 都道府県アレルギー疾患医療拠点病院のアンケート結果について
3 中心拠点病院の取組状況について
4 その他

議事概要

資料1 アレルギー疾患対策の取組について
 
(浅野明美委員)
・前回、「アレルギーポータル」の認知度拡大をお願いしたところであるが、ポスターやパンフレットが作成され普及啓発が進んでいることは大変ありがたいが、学校現場への普及活動の状況が不十分ではないか。
 
(浅野浩一郎委員)
・三重県、千葉県の拠点病院モデル事業では、拠点病院が点として活動するのではなく、拠点病院と都道府県内の医療機関がネットワークをつくっている点が成功の鍵。他の都道府県拠点病院についても、都道府県内のアレルギー診療ネットワークづくりを事業内容の中心に据えることが人材育成と並ぶ実効性のあるアレルギー疾患対策ではないか。
 
(荒木田委員)
・眼科の専門医がいる施設が少ない。すぐに育成・拡充することは困難かと思うが、専門家向けの情報提供などを積極的に行うなどの対策をとることも必要ではないか。
 
(海老澤委員)
・モデル事業は、できる限り多くの都道府県に対して機会を与えるべきではないか。
 
(岡本委員)
・アレルギー疾患医療提供体制整備事業に関連して、各都道府県レベルでのアレルギー疾患医療拠点病院や事業において有効な活動を行うため、費用サポートはどうなっているか明らかにする必要があるのではないか。
 
(桐谷委員)
・学校や保育園などで調理に関わる栄養士ばかりではなく、病院、クリニックでの栄養食事指導が出来る栄養士の育成も急務である。栄養士、保育士、幼稚園教諭を目指す学生にも専門学校や大学において、アレルギーについての授業を行う必要があるのではないか。
 
(迫委員)
・都道府県アレルギー疾患医療拠点病院の役割として「医療従事者、保健師、栄養士や学校、児童福祉施設等の教職員に対する講習の実施」が記載されているため、都道府県栄養士会が行う研修会等に拠点病院が協力することを検討してはどうか。
 
(佐藤委員)
・臨床現場では歯科材料アレルギーの患者に遭遇することも多いので、各地域にアレルギー疾患医療拠点病院が存在することは非常に心強い。全国47都道府県に早急な設置を望む。都道府県レベルにおいては、歯科との連携は必要ではないか。
 
(田野委員)
・小児アレルギー疾患の保健指導の手引きについて、普及してよかったが、行政関係者に聞くと現場では思うように活用されていないケースがある。手引きが活用されるよう、研修等を検討してはどうか。
・出産した産院の助産師の指導は、母親にとって影響力が強いため、助産師に正しい知識の普及を促す必要があるのではないか。
・児童養護施設など福祉施設、児童相談所に入所されている方への食物アレルギーの対応、学校や保育園以外の子どもの対応について、自治体と施設の連携が困難であると聞いている。乳児から高齢者までの社会福祉に関わるアレルギー疾患患者への対応や課題を具体的に書いた手引き等が必要ではないか。
・アレルギー疾患医療情報の地域格差をなくしていく為にも、アレルギーに関する講演内容について、統一化することを検討してはどうか。
 
(東田委員)
・今後、全都道府県で拠点病院が選定されるに際して、地方都市でのアレルギー疾患対策や普及啓発活動に予算を配分する必要があるのではないか(均てん化推進)。
・予算案について、厚生労働科学研究費及び保健衛生医療調査等推進事業補助金の予算増額が最も大きくなっている。研究予算の拡大は喜ばしいことであるが、大規模疫学調査を行うためには、全国レベルでの研究組織を形成することが重要ではないか。
 
 
(服部委員)
・食物アレルギーについてアレルギーを明確に伝え、誤食時の対処法などを記した患者カードは大きな助けになるのではないか。
・全国の患者会では「おしゃべり会」を開催し、アレルギーが不安な方が最初に訪れる大きな受け皿になっている。ピアサポーター研修の開催を検討してはどうか。
 
(藤澤委員)
※都道府県拠点病院モデル事業を実施した三重病院としての意見。
・アレルギー疾患医療の均てん化を進めるためには、医師の研修だけでなく、コ・メディカルスタッフを養成することが必要ではないか。三重病院では三重県認定アレルギー療養指導士養成コースを開催。35名が参加(薬剤師50%、看護師45%、栄養士5%)し、非常にニーズが高かった。三重県からも評価いただき、今後、県の事業として継続することになった。
 
(松本吉郎委員)
・生活管理指導表の取組みが市町村によって統一されていない。助成があるところもあればないところもあるため、取組みが強い地域を集計し、今後公表してはどうか。
・2018年4月に適用された保育所におけるアレルギー対応ガイドラインでは、生活管理指導表はかかりつけ医が記入することを必須とし、指導表が子どもを中心に据えた、医師と保護者、保育所の重要なコミュニケーションツールと位置づけられた。今後、さらに拡充して保育所のみならず、小中学校においてかかりつけ医から学校医への提出も検討してはどうか。
 
 

 
資料2 全国アレルギー疾患医療拠点病院アンケート結果について
 
(荒木田委員)
・多様な対象者に研修会を開催するのは大変評価できる。研修会のテーマなどの分類と開催回数等の情報があるとよいのではないか。
 
(海老澤委員)
・拠点施設が連携施設を設けて診療のカバーを行うようにした方が良い。
・成人のアレルギー疾患の診療が課題である。
 
(岡本委員)
・まだ、活動が始まったばかりであり、具体的な成果は評価できない。
・拠点病院の事業(情報提供、人材育成、研究、相談事業)は、拠点病院としての指定を受ける前後でどのように変わったか、あるいは今後変わっていけるのかが重要。
・事業にかかる費用(人件費)も確認する必要があるのではないか。
 
(加藤委員)
・食物アレルギーの経口負荷試験については小児と成人で分けた調査を検討してはどうか。薬剤アレルギーの負荷試験をしているか、など薬剤アレルギーの原因薬同定のための検査の施行状況の調査を検討してはどうか。
 
(桐谷委員)
・患者に情報提供の講習会など定期的に全拠点病院で行ってはどうか。最近、市民公開講座の患者の出席が少ないように感じている。広報の工夫等も必要ではないか。
 
(佐藤委員)
・拠点病院には、歯科用金属のアレルギー検査の実施、もしくは実施している病院や皮膚科の把握をして紹介していただくなど、情報提供を期待する。
 
(田野委員)
・患者は、住んでいる地域の医療を受け、治療がしたいと望んでいるが、地域に受けたい医療がない等で域外の医療機関に受診されている患者も多くいる。医療の地域格差をなくすためにも、更に拠点病院の評価をしてほしい。
・情報提供・人材育成・研究・相談事業をしていない施設では、どんな課題があるのか検討してはどうか。
 
(東田委員)
・地域を統括すべき拠点病院ですら5診療科すべてに専門医が揃っているのは2施設しかない。これは、眼科のアレルギー専門医が極めて少ないことに起因。アンケート結果から眼科領域の診断はできても難治例での管理が困難であるとの回答も得ているので、眼領域での専門医の人材育成を重要な課題に入れるべき工夫が必要ではないか。
 
(藤澤委員)
・診療内容の件数を数値化する等、拠点病院の機能評価システムを構築すべきではないか。
・専門医は眼科が最も少ないが、日本アレルギー学会認定専門医が5科存在しない施設においては、専門医がいない診療科の医師に一定の研修を受けていただくシステムをつくるのどうか。この場合、集合研修は、時間的、予算的に困難であるため、ウェブ配信等でエッセンスを伝える研修会を開催するのはどうか。
 
(松本健治委員)
・眼科領域の日本アレルギー学会認定専門医の絶対数が少ないため、眼科の診療体制が不十分である。また、各拠点病院での研究の実施率が低い。研究10か年戦略に基づく重症アレルギー疾患患者の臨床検体や診療情報を用いた研究が、各都道府県のアレルギー診療拠点病院を束ねて行えるような体制の整備が是非とも必要ではないか。
 
(矢上委員)
・アンケート調査では、「拠点病院の多くが他科連携しており、また実施すべき項目は実施できている」と、多くの施設が回答しているが、その件数や精度などはアンケートからは評価できない。アレルギー疾患医療拠点病院としての医療の質をどのように評価するか、また、拠点病院としての医療の質をより精度の高いものに、もしくは維持していくための検討をしてはどうか。
・拠点病院を担うアレルギー専門医の育成が不可欠であり、そのためには、中心拠点病院の研修プログラムへの研修参加が促進されるとよい。
・「多くの拠点病院が、講演会、啓発活動等の各種情報提供、人材育成の実施、地域の疫学調査を行っている」、と回答しているが、これらの取り組みは医師および医療従事者のみでは実施できず、事務的なサポートが必要。その予算の確保を拠点病院に検討してほしい(リウマチ・アレルギー特別対策事業の事業拡充が必要ではないか)。
 

 
資料3_1 中心拠点病院の現状と課題
(国立成育医療研究センターアレルギーセンター 大矢幸弘先生)
 
(荒木田委員)
・重症患者の受け入れや、数多くの研修会、電話相談などを行う体制などを作っており、中心拠点病院の役割を果たしている。免疫アレルギーTerakoya勉強会では、外部参加者がさらに増えるように工夫したらどうか。
 
(佐藤委員)
・難治性のアレルギー疾患患者を受け入れつつ、人材育成のための拠点病院でもあるということで、今後大いに期待するところである。
 
(田野委員)
・小児アレルギー診療短期重点型教育研修プログラムの研修後アレルギー診療の改善が認められ、アレルギー診療の均てん化に期待している。
 
(松本吉郎委員)
・教育指導について、臨床と教育の両立がかなりの負担となっていることは改善すべき問題である。
 
(矢上委員)
・中央拠点病院(小児、成人)で研修プログラムを実施していくためには、指導ができる人材の育成、その人材のポストが必要。研修プログラムの精度を維持し、継続していくための予算も必要ではないか。
 
 

 
資料3_2 中心拠点病院における事業報告
(国立病院機構相模原病院 臨床研究センター 海老澤元宏先生)
 
(浅野浩一郎委員)
・いずれの施設も、決して多くないスタッフで人材育成にご尽力いただいている。その努力が成果を発揮するためには、育成した人材が都道府県拠点病院にとどまり、アレルギー診療の中核として活動を継続していくことが必要であるため、その状況を調査することが必要。その意味で、中心拠点病院の医師が都道府県拠点病院に出向き、アレルギー診療体制に必要な検査・治療のセットアップに協力するという計画は、医師個人を育成するのではなく、都道府県拠点病院のアレルギー診療体制を構築できる優れた計画だと考える。しかし、2つの中心拠点病院がいずれも関東に存在する状況で、全国の都道府県拠点病院のアレルギー診療体制構築に関与することは困難であり、ブロック単位での中心拠点病院設置を検討が必要ではないか。
 
(荒木田委員)
・成人アレルギーの重症ケースの診療が充実する事の必要性は十分に理解できる。そのためにも、地方の医師が参加しやすい体制を整える必要があるのではないか。また、webでの研修後のフォローは効果的ではないか。
 
(海老澤委員)
・成人のアレルギー疾患の診療支援、都道府県拠点病院への中心拠点病院からのサポートも必要ではないか。
・中心拠点病院での人的サポート(予算化)が必要ではないか。
 
(岡本委員)
・電話相談事業について、今後の相談件数の増加に注目したい。また、成人の相談が多いことも注目。
・相模原病院が実施しているセミナーの意義は高いことが再認識された。
・スタッフの負担軽減に対する取り組みが必要ではないか。ボランティア活動になることはよくない。
 
(佐藤委員)
・電話相談事業が、新聞等で掲載・紹介されたことによって、相談件数が増加したことは、アレルギー疾患で思い悩んでいる人々がいかに多く潜在しているかが窺えた。
・正しい診断、検査、治療が難しいとされる成人アレルギー疾患に対峙できる医療機関の数が極めて限られている現状を知ることができた。将来的には、中心拠点病院と都道府県拠点病院、あるいは都道府県拠点病院と一般の診療所や歯科診療所との遠隔治療なども可能になると、患者さんの時間的、経済的負担軽減に繋がるのではないか。
 
(田野委員)
・成人アレルギー医療の困難さが理解できる。小児から移行期の食物アレルギー、成人の食物アレルギー医療・受診先・治療、相談先がない等、患者会に相談も多く、受診できる病院も限られる。遠方の病院では生活的・経済的・精神的な理由から受診が困難。各地でのアレルギー講演会では小児の食物アレルギーに関する講演は多くあるが、成人の食物アレルギーの話は少ない。
・成人の食物アレルギーの医療の均てん化のために、成人アレルギー研修を行っていただいているが、並行して現状の成人アレルギー治療の対策(内科等学会との連携)や情報発信等を更に進めてはどうか。
 
(東田委員)
・西日本の研修プログラム活用が少ないことへの対策を考える必要ではないか。
 
 

 
その他 ご意見
 
(朝倉委員)
・アレルギー疾患の有病率の情報が必要である。アレルギー疾患医療拠点病院の整備に関しても、有病率と人口からどの程度の医療資源をどこに用意すれば良いのか推定できる。各地方自治体や各地の医療機関・大学などにおいて住民対象の調査を行う際に、アレルギーに関する質問も含めてもらっても良いのではないか。
・電話相談事業を拡大するのであれば、相談者の背景や相談内容から各地のニーズを拾うことができるのではないか。それらの情報を集積・共有する場があっても良いのではないか。
・軽症者が数多く存在し、長く症状と付き合っていく必要があることもアレルギー疾患の特徴である。特に幼小児を含む若年者で、長期にわたる薬剤使用や食事制限の成長・健康・生活への影響を明らかにすることも重要と考える。
 
(桐谷委員)
・小児から治らずに持ち越す成人発症の食物アレルギーを診ていただける病院がまだまだ少ない。移行期医療で切れ目なく繋がるように期待する。
 
(迫委員)
・前回(第11回)の協議会にて話をした(公社)日本栄養士会の食物アレルギー栄養士(給食管理分野)及び食物アレルギー管理栄養士について、令和2年3月現在、食物アレルギー栄養士(給食管理分野)218名、食物アレルギー管理栄養士71名となっている。
 
(佐藤委員)
・歯科材料によるアレルギーの病態メカニズムについては少しずつ明らかになってきているが、レジンアレルギーについては未解明である。
・アトピー性皮膚炎の原因・悪化因子として歯科金属が関与している可能性がある。歯科と皮膚科との連携が必要ではないか。
・口腔内アレルギー症候群のような口腔に関連したアレルギー患者、麻酔薬使用時のアナフィラキシーの対応等、歯科医師のアレルギー疾患の知識向上が必要である。地方公共団体が主催するアレルギー疾患対策の研修会や講習会の対象に歯科医師も含めることを検討してはどうか。
・拠点病院と医師会、栄養士会、薬剤師会、看護協会、そして歯科医師会等の団体と結びついて行くことが法律的にも行政的にも重要である。都道府県のアレルギー疾患医療連絡協議会への歯科医師の参画も必要ではないか。
 
(田野委員)
・中心拠点病院で研修した各地域の先生方の地域課題、患者の改善評価等を明らかにしてほしい。
・患者会は、医療を受けられないような患者に対して、情報を伝え、発信する思いで活動をしている。医療格差の原因の1つに情報がないことが挙げられる。医療の均てん化に向けて患者会への情報発信、共有、連携としての研修会等を開催、または専門職が参加する研修会に患者会も参加し、知識向上したい。
 
(東田委員)
・例えば、鳥取大学、島根大学では小児アレルギー専門医が不在である。両県の広大な地域の基幹病院を見ても鳥取赤十字病院に1人、松江赤十字病院に1人のみであり、これでは食物アレルギーなどの診療を適切に提供できるはずもなく、また、地域での小児アレルギー専門医の育成も不可能。アレルギー疾患対策推進協議会としての検討課題であり、各都道府県への要請や、長期研修後地元に帰るプランなどの作成が必要ではないか。
 
(新田委員)
・基本指針に示された各事項について、進捗状況・達成状況を把握する枠組みを具体的に提示すべきではないか。
 
(藤澤委員)
・遠隔診療について今後、さらに検討していくべきではないか。拠点病院と現場の医療機関を結ぶ形としては、D to D+Pが適切である。D(診療所)to Pについては、さらに需要が多いと思われる。今年度より、一部、この形で診療報酬が認められたが、アレルギー疾患で認められるためには、エビデンスを作る必要があるのではないか。
・現状でも可能な方法には、オンラインのセカンドオピニオン外来の活用がある。拠点病院側としても収益が得られるため、安定して継続が可能。三重病院でもオンラインセカンドオピニオン外来を設置し、今後、地元医師会などに積極的に周知を行い、活性化させたいと考えている。